説明

オレフィン重合触媒のための担体、その製造方法及びその利用方法

球状のマグネシウム化合物は、少なくとも以下の組成物の反応生成物を含む:(a)MgX2−nの一般化学式で表されるハロゲン化マグネシウム(Xは独立してCl又はBr、Rは独立してC−C14アルキル基、C−C14アリル基、C−C14アルコキシ基、又は、C−C14アリルオキシ基、且つ、nは0又は1である)、(b)アルコール化合物、及び、(c)以下の一般化学式(I)で表されるエポキシ化合物(R及びRは独立して水素、C−C直鎖アルキル基若しくは分枝鎖アルキル基、又は、C−C直鎖ハロアルキル基若しくは分枝鎖ハロアルキル基である)。このマグネシウム化合物は、特徴的なDSC曲線及びX線回析像を有しており、オレフィン重合触媒のための担体として用いられ得る。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互援用〕
本願は、2009年10月16日に出願された中国特許出願第200910235562.3号、中国特許出願第200910235563.8号、中国特許出願第200910235564.2号、及び、中国特許出願第200910235565.7号に基づく優先権を主張し、その全ての内容及び全ての目的を本願に援用する。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、オレフィン重合のための触媒組成物を製造するために有用な担体、それを製造するための方法、及び、その利用方法に関する。特に、本発明は、ハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体溶液と、エポキシ化合物との反応により得られる、新しい球状のマグネシウム化合物の担体、その製造方法及びその利用方法に関する。
【0003】
〔背景技術〕
オレフィン重合のための触媒組成物の製造に有用な活性ハロゲン化マグネシウム担体は、当技術分野においてよく知られたものである。一般的な活性ハロゲン化マグネシウム担体は、ハロゲン化マグネシウム及びアルコールの付加体であり、一般的に、球状の粒子の形態を有する。球状の触媒組成物は、ハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体担体と、ハロゲン化チタンのようなチタン化合物及び電子供与体化合物との反応により得られる。上記の触媒組成物をオレフィン重合(特に、プロピレンの重合)に用いる場合、上記の触媒組成物は、高い重合活性と、高い立体特異性とを示し、結果として得られる重合体は良好な粒子形態を有する。
【0004】
これまで公開されているハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体担体は、一般的に、ハロゲン化マグネシウム及びアルコールのみから構成される。一部の公開されているハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体担体は、さらに、微量の水を含んでいる。上記のハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体担体は、スプレー乾燥プロセス、スプレー冷却プロセス、高圧押出プロセス、又は、高速撹拌プロセスのような既知のプロセスにより製造され得る。例えば、米国特許第4,421,674号、米国特許第4,469,648号、国際特許第8707620号、国際特許第9311166号、米国特許第5,100,849号、米国特許第6,020,279号、米国特許第4,399,054号、欧州特許第0395383号、欧州特許公開第700936号、中国特許第1034736号、中国特許第1463990号、中国特許第1580136号、米国特許第6,127,304号、及び、米国特許第6,323,152号を参照のこと。
【0005】
国際特許公開第98/44009号には、化学式MgCl・mROH・nHOの付加体が開示されている(RはC−C10アルキル基、2≦m≦4.2、及び、0≦n≦0.7)。この付加体のX線回析像は、5°と15°との間の2θ回析角度の範囲内において、8.8±0.2°、9.4±0.2°及び9.8±0.2°の2θ回析角度に三つの主要な回析線が存在し、最も強い回析線は8.8±0.2°の2θ回析角度の回析線であり、他の二つの回析線の強度は、最も強い回析線の強度の少なくとも0.2倍であることを特徴としている。上述のX線回析像に加えて、さらに、上記の付加体は、示差走査熱量測定(DSC)のプロフィールによって特徴付けられ、そのプロフィールは、90℃未満の温度にピークが存在しないか、90℃未満にピークが存在する場合でも、このピークに関する溶融エンタルピーは、総溶融エンタルピーの30%未満である。
【0006】
国際特許公開第2003/082930号には、化学式MgCl・mEtOHの付加体が開示されている(2.5≦m≦3.2)。この付加体は、付加体の総重量に対して1質量%以下の水を含有している。この付加体のX線回析像は、5°と15°との間の2θ回析角度の範囲内において、8.8±0.2°、9.4±0.2°及び9.8±0.2°の2θ回析角度に三つの主要な回析線が存在し、最も強い回析線は8.8±0.2°の2θ回析角度の回析線であり、他の二つの回析線の強度は、最も強い回析線の強度の少なくとも0.2倍であることを特徴としている。この付加体のDSCプロフィールは、109℃を超える高い溶融温度ピーク、及び、そのピークに関する103J/g又はそれより低い溶融エンタルピーにより特徴付けられる。
【0007】
国際特許公開第2004/026920号には、化学式MgCl・mEtOH・nHOの付加体が開示されている(3.4≦m≦4.4、及び、0≦n≦0.7)。この付加体のX線回析像は、5°と10°との間の2θ回析角度の範囲内において、9.3±0.2°及び9.9±0.2°の2θ回析角度に少なくとも二つの回析線が存在し、最も強い回析線は9.3±0.2°の2θ回析角度の回析線であり、他方の回析線の強度は、最も強い回析線の強度の0.4倍未満であることを特徴としている。この付加体のDSCプロフィールは、90℃〜105℃の範囲内で一つのみの溶融ピークが存在するということにより特徴付けられる。
【0008】
上述のハロゲン化マグネシウム−アルコール2成分付加体担体に加えて、先行技術文献には、他の形態の活性ハロゲン化マグネシウムについても開示されている。例えば、中国特許第1922212号には、ハロゲン化チタンを伴う、環状エーテル及びアルコールのハロゲン化マグネシウム溶液の反応により得られる担体が開示されている。中国特許公開第101190953号には、金属ハロゲン化物の存在下における、C−Cアルコールの、粉末状マグネシウムとの反応により形成されるマグネシウムを含有する付加体担体が開示されている。中国特許第1590415号には、金属ハロゲン化物の存在下において、均質なマグネシウム化合物溶液を形成するために、C−C低級アルコールと、粉末状マグネシウムとを反応させ、且つ、球状のシリカ担体上にマグネシウム化合物を支持することにより、得られる複合担体が開示されている。中国特許第1016422号、中国特許第1177868号、中国特許公開第101056894号、米国特許第4,727,051号、中国特許第1255436号、米国特許第5,034,361号、米国特許第5,849,655号、米国特許第5,817,591号、及び、米国特許第4,469,648号には、出発原料としてアルコキシマグネシウムを用いることにより得られる活性二塩化マグネシウムが開示されている。
【0009】
〔発明の概要〕
入念な研究の末、本発明者は、新規の球状のマグネシウム化合物が、ハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体溶液と、エポキシ化合物との反応により得ることができることを見出した。この球状のマグネシウム化合物は、既知のハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体担体及び二塩化マグネシウム担体のDSCプロフィール及びX線回析像とは異なるDSCプロフィール及びX線回析像を有する。球状のマグネシウム化合物は、チタン化合物及び任意の内部電子供与体と反応させ、それにより、望ましい水準のオレフィン重合のための球状の触媒組成物を得るための担体として用いてもよい。本発明は上記の原理に基づき成り立つ。
【0010】
本発明の目的は、少なくとも以下(a〜c)の組成の反応生成物を含む、オレフィン重合のための触媒組成物の製造に用いられる担体として有用な新規の球状のマグネシウム化合物を提供することである:(a)以下で定義されるハロゲン化マグネシウム、(b)アルコール化合物、及び、(c)以下で定義されるエポキシ化合物。
【0011】
本発明の他の目的は、特徴的なDSCプロフィールを有する、オレフィン重合のための触媒組成物の製造に用いられる担体として有用な、新規の球状のマグネシウム化合物を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、特徴的なX線回析像を有する、オレフィン重合のための触媒組成物の製造に用いられる担体として有用な、新規の球状のマグネシウム化合物を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、本発明に係る球状のマグネシウム化合物を製造するためのプロセスを提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、オレフィン重合のための触媒組成物の製造における担体としての、本発明に係る球状のマグネシウム化合物の利用方法を提供することである。
【0015】
オレフィン重合のための触媒組成物の製造に用いられる担体として有用な球状のマグネシウム化合物は、良好な粒子形態と、狭い粒子サイズ分布を有しており、その製造プロセスは、単純且つ実行可能であり、そして、エネルギー消費がより少ない。担体として上記の化合物を用いることにより得られる固体の触媒組成物をオレフィン重合(プロピレンの(共)重合)において用いる場合、以下の望まれる効果のうち少なくとも一つを達成する:触媒の高い重合活性、触媒の高い立体特異性、触媒の良好な水素反応性、高いメルト・インデックスを有する重合体の立体規則性、及び、ポリマーファインの低含有量。
【0016】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、実施例1にて得られるマグネシウム化合物担体のDSCのプロフィールを示している。
【0017】
図2は、化学式MgCl・2.7COHで表される既知の二塩化マグネシウム−エタノール付加体のDSCのプロフィールを示している。
【0018】
図3は、実施例1にて得られるマグネシウム化合物担体のX線回析像を示している。
【0019】
図4は、化学式MgCl・2.7COHで表される既知の二塩化マグネシウム−エタノール付加体のX線回析像を示している。
【0020】
図5は、様々な担体のX線回析像を示しており、aはMgClのX線回析像、bはMgCl・2.7COHのX線回析像、cはジエトキシマグネシウムのX線回析像、dは本発明に係るマグネシウム化合物担体のX線回析像を示している。
【0021】
図6は、実施例1にて得られるマグネシウム化合物担体の顕微鏡写真を示している。
【0022】
〔発明を実施するための形態〕
本明細書で用いられている「触媒組成物」という用語は、オレフィン重合の触媒の性質を有する、アルキルアルミニウム化合物及び任意の外部電子供与体のような従来の共触媒に加えて、主に、触媒組成物又はプロ(pro)触媒の意味を示している。
【0023】
本明細書で用いられている「球状のマグネシウム化合物」又は「球状担体」という用語は、マグネシウム化合物又は担体が、球状様粒子の形態を有するということを意味しているが、マグネシウム化合物又は担体の粒子が、完全球形であることを必要とはしていない。同様に、本明細書で用いられている「球状の触媒組成物」という用語は、触媒組成物が、球状様粒子の形態を有することを意味しているが、触媒組成物の粒子が、完全球形であることを必要とはしていない。
【0024】
第1の形態において、本発明に係る発明は、オレフィン重合の触媒組成物を得るために用いられる球状担体として有用なマグネシウム化合物であって、少なくとも以下の組成の反応生成物を含むマグネシウム化合物を提供する:
(a)MgX2−nの一般化学式で表されるハロゲン化マグネシウム(Xは独立してCl又はBr、RはC−C14アルキル基、C−C14アリル基、C−C14アルコキシ基、又は、C−C14アリルオキシ基、そして、nは0又は1である)、
(b)アルコール化合物、好ましくは、一般化学式ROHで表されるアルコール化合物(Rは独立してC−C12アルキル基、C−C10シクロアルキル基、C−C12アラルキル基、又は、C−C10アリル基であり、好ましくはC−Cアルキル基である)、及び、
(c)以下の一般化学式(I)で表されるエポキシ化合物:
【0025】
【化1】

【0026】
(R及びRは独立して水素、C−C直鎖アルキル基若しくは分枝鎖アルキル基、又は、C−C直鎖ハロアルキル基若しくは分枝鎖ハロアルキル基であり、好ましくは、水素、C−Cアルキル基若しくはC−Cハロアルキル基である)。
【0027】
一般化学式MgX2−nで表されるハロゲン化マグネシウムの化合物の例としては、限定するわけではないが、二塩化マグネシウム、二臭化マグネシウム、塩化フェノキシマグネシウム、塩化イソプロポキシマグネシウム、および、塩化ブトキシマグネシウムが挙げられ、二塩化マグネシウムが好ましい。上記のハロゲン化マグネシウムは、単独の化合物が用いられてもよいし、化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
上記のアルコール化合物は、一般化学式ROHで表される化合物であることが好ましい(RはC−C12アルキル基、C−C10シクロアルキル基、C−C12アラルキル基、又は、C−C10アリル基であり、好ましくはC−Cアルキル基である)。また、上記のアルコール化合物はグリコールであってもよい。本発明において有用なアルコール化合物の例としては、限定するわけではないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコール、及び、プロピレングリコールが挙げられる。上記のアルコール化合物は、単独の化合物が用いられてもよいし、化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
上記の一般化学式(I)で表されるエポキシ化合物の例としては、限定するわけではないが、エポキシエタン、エポキシプロパン、エポキシブタン、エポキシクロロプロパン、エポキシクロロブタン、エポキシブロモプロパン、及び、エポキシブロモブタンが挙げられる。上記のエポキシ化合物は、単独の化合物が用いられてもよいし、化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
球状のマグネシウム化合物の形態において、ハロゲン化マグネシウム1モルあたりに用いられるアルコール化合物の量は、4モル〜40モルの範囲内であってもよく、4モル〜30モルの範囲内であることが好ましく、6モル〜25モルの範囲内であることがより好ましく、6モル〜20モルの範囲内であることがなお好ましい。上記のプロセスにおいて、ハロゲン化マグネシウム1モルあたりに用いられるエポキシ化合物の量は、1モル〜10モルの範囲内であってもよく、2モル〜6モルの範囲内であることが好ましい。
【0031】
第2の形態において、本発明は、オレフィン重合のための触媒組成物を得るために用いられる球状の担体として有用なマグネシウム化合物を提供する。当該マグネシウム化合物は、70℃〜250℃の温度範囲で明確な発熱ピークを有することにより特徴付けられる特徴的なDSCプロフィールを有し、上記の発熱ピークは100℃〜220℃の温度範囲で発熱ピークのピーク最大値を有し、これは、40J/g以上の大きさの発熱エンタルピーに相当する。
【0032】
好ましい実施形態では、マグネシウム化合物のDSCプロフィールは、発熱ピークのピーク最大値が、100℃〜200℃の温度範囲に現れることを特徴としている。
【0033】
他の好ましい形態では、マグネシウム化合物のDSCプロフィールは、発熱ピークのピーク最大値が、130℃〜210℃の温度範囲に現れることを特徴としている。
【0034】
さらに他の好ましい形態では、マグネシウム化合物のDSCプロフィールは、発熱ピークのピーク最大値が、130℃〜200℃の温度範囲に現れることを特徴としている。
【0035】
好ましい実施形態では、マグネシウム化合物のDSCプロフィールは、発熱ピークが100J/g以上の大きさの発熱エンタルピーに相当することを特徴としている。
【0036】
第3の形態において、本発明は、オレフィン重合のための触媒組成物を得るために用いられる球状の担体として有用なマグネシウム化合物を提供する。当該マグネシウム化合物は、5°〜15°の2θ角度の範囲内において、少なくとも二つの回析線が存在し、最も強い回析線が10.0±0.4°の回析角2θに存在し、二番目に強い回析線が10.5°〜12.5°の回析角2θ(例えば、11.5±0.4°の回析角2θ)に存在し、二番目に強い回析線が最も強い回析線の少なくとも0.2倍の強度であることにより特徴付けられる特徴的なX線回析像を有する。
【0037】
ある実施形態において、上記マグネシウム化合物のX線回析像は、さらに、5°〜15°の2θ角度の範囲内において現れる回析線のうち、最も強い回析線及び二番目に強い回析線以外の回析線が、最も強い回析線の強度の少なくとも0.2倍の強度を有することにより特徴付けられる。
【0038】
ある実施形態において、さらに、上記マグネシウム化合物のX線回析像は、15°〜32°の2θ角度の範囲内において、20°〜21°の2θ角度の範囲内でピーク最大値を有する幅広い回析ピークが存在することにより特徴付けられる。
【0039】
他の実施形態において、さらに、上記マグネシウム化合物のX線回析像は、15°〜32°の2θ角度の範囲内において、20°〜21°の2θ角度の範囲内でピーク最大値を有する幅広い回析ピーク、並びに、16.5±0.4°及び/又は25.6±0.4°の2θ角度に少なくとも一つのショルダーピークが存在することにより特徴付けられる。
【0040】
どんな特定の理論にも限定されないとすると、MgX、ROH、及び、化学式(I)で表されるエポキシ化合物から得られる本発明に係るマグネシウム化合物は、以下の化学式(II)の構造を有する:
【0041】
【化2】

【0042】
(ただし、p+m+n=2)。
【0043】
例として、二塩化マグネシウム、エポキシクロロプロパン及びエタノールから得られるマグネシウム化合物を必要とするとき、マグネシウム化合物を以下の反応機構により形成することができる。
【0044】
【化3】

【0045】
第4の実施形態において、本発明は、本発明に係る球状のマグネシウム化合物を製造するためのプロセスを提供し、当該プロセスは下記の工程を含む。
【0046】
a)容器内にて(好ましくは密閉容器内にて)、一般化学式MgX2−nで表されるハロゲン化マグネシウム、アルコール化合物、任意の不活性液体媒体を混合し、得られた混合物を30℃〜160℃の温度に加熱し、反応させ、ハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体溶液を形成する工程、
b)上記のハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体溶液と、以下の一般化学式(I)で表されるエポキシ化合物とを30℃〜160℃の温度で反応し、粒子球状のマグネシウム化合物を形成する工程:
【0047】
【化4】

【0048】
(R、X、R及びRは上記の定義通り)。
【0049】
上記のプロセスにおいて、ハロゲン化マグネシウム1モルあたりに用いられるアルコールの量は、4モル〜40モルの範囲内であってもよく、4モル〜30モルの範囲内であることが好ましく、6モル〜25モルの範囲内であることがより好ましく、6モル〜20モルの範囲内であることがなお好ましい。上記のプロセスにおいて、ハロゲン化マグネシウム1モルあたりに用いられるエポキシ化合物の量は、1モル〜10モルの範囲内であってもよく、2モル〜6モルの範囲内であることが好ましい。
【0050】
上記の不活性液体媒体は、液体の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、シリコーンオイル及びそれらの混合物の中から選ばれる媒体であってもよい。上記の不活性液体媒体の例としては、限定するわけではないが、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、ケロシン、パラフィン油、ワセリン油、ホワイト油、メチルシリコーン油、及び、それらの混合物が挙げられる。不活性液体媒体を用いる場合、その量について特別な制限はない。しかしながら、上記の不活性液体媒体は、ハロゲン化マグネシウム1モルに対して、1/3〜20Lの量で用いられることが好ましく、2/3〜10Lの量で用いられることが好ましい。
【0051】
ハロゲン化マグネシウム、アルコール化合物及びエポキシ化合物の例、及び好ましいものとしては、上記の第1の形態で示したようなものが挙げられる。
【0052】
上記のプロセスにおいて、ハロゲン化マグネシウム及び/又はアルコールに存在する微量の水が、ハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体溶液を形成する反応において含まれ得る。
【0053】
上述のプロセスの工程a)において、個々の材料は任意の大きさの容器に加えてもよい。
【0054】
上述のプロセスの工程b)において形成される粒子球状のマグネシウム化合物は、当業者によりよく知られている方法により、ヘキサンのような不活性の炭化水素溶媒で洗浄し、その後、乾燥してもよい(例えば、減圧下での乾燥)。
【0055】
ある実施形態では、製造プロセスは、以下の工程により実行されてもよい:
1)密閉容器内で、ハロゲン化マグネシウム、アルコール及び任意の不活性液体媒体を、撹拌しながら、30℃〜160℃の温度に、好ましくは60℃〜120℃の温度に加熱し、混合物を十分に反応させることにより、ハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体溶液を得る工程、
2)撹拌しながら、ハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体溶液にエポキシ化合物を加え、こうして得られる混合物を30℃〜160℃の温度で、好ましくは60℃〜120℃の温度で反応することにより、粒子球状のマグネシウム化合物を形成する工程。
【0056】
他の実施形態では、製造プロセスは以下の工程により実行されてもよい:
1)密閉容器内で、ハロゲン化マグネシウム、アルコール及び任意の不活性液体媒体を、撹拌しながら、30℃〜160℃の温度に、好ましくは60℃〜120℃の温度に加熱し、混合物を十分に反応させることにより、ハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体溶液を得る工程、
2)エポキシ化合物及び不活性液体媒体の混合物にハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体溶液を加え、こうして得られる混合物を30℃〜160℃の温度で、好ましくは60℃〜120℃の温度で反応することにより、粒子球状マグネシウム化合物を形成する工程。
【0057】
工程1)及び工程2)で用いられる不活性液体媒体の総量は、ハロゲン化マグネシウム1モルに対して、1/3〜20Lの範囲内であり、2/3〜10Lの範囲内であることが好ましい。上記の不活性液体媒体は、工程1)と工程2)との間で任意の適切な比に分配してもよい。例えば、工程1)で用いられる不活性液体媒体と、工程2)で用いられる不活性液体媒体との比は1:10〜5:1の範囲内であってもよい。
【0058】
他の実施形態において、製造プロセスは、以下の工程により実行されてもよい:
1)撹拌しながら、60℃以下の温度条件、密閉容器中で、不活性液体媒体中でアルコールと共にハロゲン化マグネシウムを反応させることにより、ハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体を形成する工程、
2)ハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体溶液にエポキシ化合物を加え、こうして得られる混合物を撹拌しながら60℃〜160℃の温度に、好ましくは60℃〜120℃の温度に加熱し、そして、混合物を十分に反応する工程。
【0059】
この実施形態において、用いられるアルコールの量は、ハロゲン化マグネシウム1モルに対して10モル〜30モルの範囲内であることが好ましく、15モル〜25モルの範囲内であることがより好ましい。
【0060】
本発明に係る球状のマグネシウム化合物は、オレフィン重合のための触媒組成物の製造に用いられる球状担体として有用である。従って、第5の形態において、本発明は、オレフィン重合のための触媒組成物を得るための担体としての、球状のマグネシウム化合物の利用方法を提供する。
【0061】
本発明に係る利用方法によれば、オレフィン重合のための触媒組成物は、粒子球状マグネシウム化合物を、チタン化合物、及び、任意の内部電子供与体化合物に接触することにより形成される。この方法は、中国特許第1091748号に記載されているプロセスのような、それ自体が既知のプロセスにより行われる。
【0062】
オレフィン重合のための触媒組成物を製造するために用いられるチタン化合物及び任意の内部電子供与体及びそれらの使用量は、当業者によりよく知られている。
【0063】
ある実施形態では、触媒組成物は、以下の工程を含むプロセスにより製造される:おおむね、−30℃〜0℃の範囲内、好ましくは−20℃〜−10℃の範囲内の液体温度条件で、粒子球状マグネシウム化合物を冷却された四塩化チタン中又は四塩化チタンと不活性溶媒との混合物中に懸濁する工程;こうして得られる混合物を40℃〜130℃の温度、好ましくは80℃〜130℃の温度に加熱し、0.5時間〜2時間、その温度を維持する工程;その後、ろ過することにより固体を回収する工程;状況に応じて、上記の四塩化チタンの処理を一回又はそれ以上(好ましくは一回〜四回)繰り返し、そして最終的に、こうして得られる固体の触媒組成物を不活性溶媒で数回(例えば二回〜五回)洗浄する工程。上記の不活性溶媒は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素であることが好ましく、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン及びそれらに類するものが挙げられる。
【0064】
粒子球状のマグネシウム化合物と、チタン化合物の反応前、反応中、又は、反応後において、少なくとも一つの内部電子供与体の化合物が、上記の粒子球状のマグネシウム化合物を処理するために用いられてもよい。特に、上記の触媒組成物が、プロピレンの重合に用いられることを目的とした触媒である場合、上記の内部電子供与体の化合物を添加することが、高いイソタクチック性(isotacticity)を備えるプロピレン重合体を得るために不可欠であり得る。
【0065】
上記のプロセスにおいて、球状のマグネシウム化合物中のマグネシウム1モルあたりの内部電子供与体の化合物の使用量は、0モル〜0.5モルの範囲内であってもよく、0.05モル〜0.3モルの範囲内であることが好ましい。そして、チタン化合物の使用量は、5モル〜50モルの範囲内であってもよく、8モル〜30モルの範囲内であることが好ましい。
【0066】
担体としての本発明に係るマグネシウム化合物を用いることにより得られる固体の触媒組成物を、オレフィン重合(特にプロピレンの(共)重合)に用いる場合、当該固体の触媒組成物は、少なくとも一つの以下の望まれる効果を達成する:触媒の高い重合活性、触媒の高い立体特異性、触媒の良好な水素反応性、高いメルト・インデックスを有する重合体の立体規則性、及び、ポリマーファインの低含有量。
【0067】
〔実施例〕
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために提供するものであり、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0068】
試験方法:
1.重合体のメルト・インデックス:ASTM D1238−99(230℃、且つ、2.16kgの荷重)により測定した。
2.重合体のイソタクチック性:以下に基づき実行されるヘプタン抽出法により測定した(乾燥重合体サンプル2gを、6時間、抽出装置内で沸騰ヘプタンを用いて抽出した。そして、残留物質を一定の重量になるまで乾燥し、2gに対する残留重合体の質量の比をイソタクチック性と見なした)。
3.粒子サイズ分布:粒子状のハロゲン化マグネシウムの付加体の平均粒子サイズ及び粒子サイズ分布をMasters Sizer Model 2000(Malvern Instruments Co., Ltd.製)により測定した。
4.DSC曲線:パーキンエルマー社より販売されているDSC7装置により得られるものである(窒素雰囲気下、10℃/分の速度で25℃〜300℃に昇温)。
5.X線回析像:フィリップス社(オランダ)より販売されている黒鉛単色光分光器及びシンチレーション計数管を備えたX'Pert MPD Model多機能X線回析計を用いて以下の条件下により得られるものである(CuKα(λ=1.5406Å)、管電圧が40kV、管電流が40mA、DS=SS=1°スロットシステム、受像スロットが0.3mm、スキャン速度が3°(2θ)/分、且つ、スキャン範囲(2θ)が5°〜75°、サンプルは50ミクロンの厚さのポリエチレン樹脂バッグに封入した)。
【0069】
(実施例1)
(A.球状のマグネシウム化合物の生成)
500mLの反応装置に、二塩化マグネシウム7.2g、ホワイト油180mL、及び、エタノール82mLを連続的に投入し、この内容物を90℃まで撹拌しながら加熱した。この内容物を90℃で1時間反応させ、その後、エポキシクロロプロパン24mLを反応装置に加え、そして、90℃で0.5時間、反応させ続けた。ろ過することにより液体を除去した後、残留固体をヘキサンで五回洗浄し、その後、真空下で乾燥し、球状のマグネシウム化合物を得た。
【0070】
球状のマグネシウム化合物のDSCプロフィールを図1に示す。
【0071】
球状のマグネシウム化合物のX線回析像を図3に示す。このX線回析像において、5°〜15°の2θ角度の範囲内にて、9.95°(100%)、11.1°(15.7%)及び11.41°(36%)の2θ角度で三本の回析線が存在し、15°〜32°の2θ角度の範囲内にて、20.45°(11.3%)の2θ角度でピーク最大値を有する幅広いピークが存在し、且つ、16.37°(7.7%)、25.35°(7.7%)及び30.07°(7.1%)の2θ角度でショルダーピークが存在する。丸括弧内の数値は、最も強い回析線に対する強度(I/I)を示している。
【0072】
図2は、化学式MgCl・2.7COHで表される既知の二塩化マグネシウム−エタノール付加体のDSCのプロフィールを示している。そして、図4は、このハロゲン化マグネシウム−エタノール付加体のX線回析像を示している。図5は、様々な担体のX線回析像を示しており、aはMgClのX線回析像、bはMgCl・2.7COHのX線回析像、cはジエトキシマグネシウムのX線回析像、dは本発明に係るマグネシウム化合物担体のX線回析像を示している。上記のDSCプロフィール及びX線回析像を比べることにより、本発明に係るマグネシウム化合物担体が、当技術分野において周知である二塩化マグネシウム−エタノール付加体担体、及び、二塩化マグネシウム担体とは異なっていることが分かる。
【0073】
(B.球状の触媒組成物の生成)
四塩化チタン100mLを300mLのガラス製反応装置に加え、−20℃に冷却した。次に、上記の球状のマグネシウムを含む化合物を反応装置に加え、そして、その内容物を加熱しながら、フタル酸ジイソブチル1.5mLを反応装置に加え、110℃まで加熱した。ろ過することにより液体を除去し、その後、残留固体を四塩化チタンで二回洗浄し、ヘキサンで三回洗浄し、その後、真空条件下で乾燥し、球状の触媒組成物を得た。
【0074】
(C.ポリエチレンの重合)
窒素雰囲気下で、5Lのステンレス鋼のオートクレーブに、プロピレン2.5L、1mmolのトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液10mL、0.05mmolのメチルシクロヘキシルジメトキシシラン(CHMMS)のヘキサン溶液1mL、上記で得られた触媒組成物10mg、水素ガス1.5L(標準体積)を連続的に投入した。この内容物を70℃まで加熱し、70℃で1時間、重合反応を続けた。オートクレーブを冷却し、その後、圧力をベントした。オートクレーブを開け、そして、得られたプロピレン重合体を回収した。この結果を下記の表2に示す。
【0075】
(実施例2)
球状のマグネシウム化合物を、反応温度を100℃にした点以外は、実施例1の工程Aに示された手順により製造した。
【0076】
この球状のマグネシウム化合物のDSCプロフィールは、75.6℃〜249℃の温度範囲で発熱ピークを有し、上記発熱ピークは、161.5℃にピーク最大値を有し、且つ、そのピークは304.2J/gの発熱エンタルピーに相当する。
【0077】
この球状のマグネシウム化合物は、5°〜15°の2θ角度の範囲内において、10.1°(100%)及び11.59°(39.3%)の2θ角度で、二本の回析線が存在し、且つ、15°〜32°の2θ角度の範囲内において、20.2°(43.5%)の2θ角度でピーク最大値を有する幅広いピークが存在し、そして、16.46°(9.5%)、25.40%(11%)、27.43°(7.3%)及び30.17°(9.1%)の2θ角度でショルダーピークが存在するX線回析像を有する。丸括弧内の数値は、最も強い回析線に対する強度(I/I)を示している。
【0078】
球状の触媒組成物の生成及びプロピレンの重合は、実施例1に示されている手順に基づいて行った。
【0079】
(実施例3)
500mLの反応装置に、二塩化マグネシウム10.5g、ホワイト油180mL、及び、エタノール120mLを連続的に投入し、この内容物を撹拌しながら85℃まで加熱した。この内容物を85℃で1時間反応させ、その後、エポキシクロロプロパン35mLを反応装置に加え、そして、85℃で0.5時間反応させ続けた。ろ過することにより液体を除去した後、残留固体をヘキサンで五回洗浄し、その後、真空下で乾燥し、球状のマグネシウム化合物を得た。
【0080】
この球状のマグネシウム化合物のDSCプロフィールは、77.87℃〜209.83℃の温度範囲で発熱ピークを有し、上記の発熱ピークは、151.37℃にピーク最大値を有し、且つ、これは199.31J/gの発熱エンタルピーに相当する。
【0081】
この球状のマグネシウム化合物は、5°〜15°の2θ角度の範囲内において、10.05°(100%)及び11.55°(28.8%)の2θ角度で、二本の回析線が存在し、且つ、15°〜32°の2θ角度の範囲内において、20.71°(13.1%)の2θ角度でピーク最大値を有する幅広いピークが存在し、そして、16.36°(6.7%)、19.62°(6.3%)、25.40°(15%)及び30.0°(3.8%)の2θ角度でショルダーピークが存在するX線回析像を有する。丸括弧内の数値は、最も強い回析線に対する強度(I/I)を示している。
【0082】
球状の触媒組成物の生成及びプロピレンの重合は、実施例1に示されている手順に基づいて行った。
【0083】
(実施例4)
300mLの反応装置に、二塩化マグネシウム4.8g、デカン100mL、及び、エタノール30mLを連続的に投入し、この内容物を75℃まで撹拌しながら加熱した。この内容物を75℃で1時間反応させ、その後、エポキシクロロプロパン8mLを反応装置に加え、そして、75℃で1時間反応させ続けた。ろ過することにより液体を除去した後、残留固体をヘキサンで五回洗浄し、その後、真空下で乾燥し、球状のマグネシウム化合物を得た。
【0084】
球状の触媒組成物の生成及びプロピレンの重合は、実施例1に示されている手順に基づいて行った。
【0085】
(実施例5)
500mLの反応装置に、二塩化マグネシウム24g、メチルシリコーン油150mL、及び、エタノール90mLを連続的に投入し、この内容物を100℃まで撹拌しながら加熱した。この内容物を100℃で2時間反応させ、その後、この反応混合物を、予め100℃に加熱したエポキシクロロプロパン/メチルシリコーン油(40mL/350mL)混合物に移し、そして、1時間反応させ続けた。ろ過することにより液体を除去した後、残留固体をヘキサンで五回洗浄し、その後、真空下で乾燥し、球状のマグネシウム化合物を得た。
【0086】
この球状のマグネシウム化合物のDSCプロフィールは、95.6℃〜178.7℃の温度範囲で発熱ピークを有し、上記の発熱ピークは、137.67℃にピーク最大値を有し、且つ、これは43.6J/gの発熱エンタルピーに相当する。
【0087】
球状の触媒組成物の生成及びプロピレンの重合は、実施例1に示されている手順に基づいて行った。
【0088】
(実施例6)
300mLの反応装置に、二塩化マグネシウム4.8g、デカン150mL、及び、エタノール54mLを連続的に投入し、この内容物を55℃まで撹拌しながら加熱した。この内容物を55℃で1時間反応させ、その後、エポキシクロロプロパン8mLを反応装置に加え、そして、その後、反応混合物を80℃まで加熱し、0.5時間反応させた。ろ過することにより液体を除去した後、残留固体をヘキサンで五回洗浄し、その後、真空下で乾燥し、球状のマグネシウム化合物を得た。
【0089】
この球状のマグネシウム化合物のDSCプロフィールは、90.2℃〜192.7℃の温度範囲で発熱ピークを有し、上記の発熱ピークは、137.2℃にピーク最大値を有し、且つ、これは102.5J/gの発熱エンタルピーに相当する。
【0090】
この球状のマグネシウム化合物は、5°〜15°の2θ角度の範囲内において、10.14°(100%)及び11.55°(31.9%)の2θ角度で、二本の回析線が存在し、且つ、15°〜32°の2θ角度の範囲内において、20.41°(53.3%)の2θ角度でピーク最大値を有する幅広いピークが存在し、そして、16.72°(11.4%)、25.44°(16.3%)、及び30.15°(13.3%)の2θ角度でショルダーピークが存在するX線回析像を有する。丸括弧内の数値は、最も強い回析線に対する強度(I/I)を示している。
【0091】
球状の触媒組成物の生成及びプロピレンの重合は、実施例1に示されている手順に基づいて行った。
【0092】
(実施例7)
500mLの反応装置に、二塩化マグネシウム7.2g、ホワイト油180mL、2−エチルヘキサノール20mL、及び、エタノール70mLを連続的に投入し、この内容物を撹拌しながら90℃まで加熱した。この内容物を90℃で1時間反応させ、その後、エポキシクロロプロパン20mLを反応装置に加え、そして、90℃で0.5時間反応させ続けた。ろ過することにより液体を除去した後、残留固体をヘキサンで五回洗浄し、その後、真空下で乾燥し、球状のマグネシウム化合物を得た。
【0093】
この球状のマグネシウム化合物のDSCプロフィールは、73.2℃〜229.3℃の温度範囲で発熱ピークを有し、上記の発熱ピークは、180.67℃にピーク最大値を有し、且つ、これは420.4J/gの発熱エンタルピーに相当する。
【0094】
この球状のマグネシウム化合物は、5°〜15°の2θ角度の範囲において、10.0°(100%)、11.0°(17.5%)、及び11.45°(23.4%)の2θ角度に三本の回析線が存在し、且つ、15°〜32°の2θ角度の範囲において、20.8°(21.3%)の2θ角度でピーク最大値を有する幅広いピークが存在し、そして、16.26°(5.3%)、25.3°(4.2%)、及び、26.4°(6.1%)の2θ角度でショルダーピークが存在するX線回析像を有する。丸括弧内の数値は、最も強い回析線に対する強度(I/I)を示している。
【0095】
球状の触媒組成物の生成及びプロピレンの重合は、実施例1に示されている手順に基づいて行った。
【0096】
(実施例8)
300mLの反応装置に、二塩化マグネシウム4.8g、デカン100mL、及び、エタノール30mLを連続的に投入し、この内容物を撹拌しながら80℃まで加熱した。この内容物を80℃で1時間反応させ、その後、エポキシプロパン7mLを反応装置に加え、そして、80℃で1時間反応させ続けた。ろ過することにより液体を除去した後、残留固体をヘキサンで五回洗浄し、その後、真空下で乾燥し、球状のマグネシウム化合物を得た。
【0097】
この球状のマグネシウム化合物のDSCプロフィールは、57.5℃〜236.4℃の温度範囲で発熱ピークを有し、上記の発熱ピークは、198.37℃にピーク最大値を有し、且つ、これは265.7J/gの発熱エンタルピーに相当する。
【0098】
球状の触媒組成物の生成及びプロピレンの重合は、実施例1に示されている手順に基づいて行った。
【0099】
(実施例9)
500mLの反応装置内にて、球状のマグネシウム化合物担体を実施例1の手順に基づき生成した。最後にヘキサンで洗浄し、ろ過することにより液体を除去した。反応装置に直接、−20℃に冷却した四塩化チタン120mLを加え、そして、この内容物を加熱しながら、フタル酸ジイソブチル2mLを反応装置に加え、撹拌しながら110℃まで加熱した。ろ過することにより液体を除去した後、残留固体を四塩化チタンで二回洗浄し、そして、ヘキサンで三回洗浄した。その後、真空下で乾燥し、球状の触媒組成物を得た。こうして得られた触媒組成物は、60.6ミクロンの平均粒子サイズ(D50)、且つ、0.54の粒子サイズ分布SPAN((D90−D10)/D50)を有していた。
【0100】
(実施例10)
500mLの反応装置に、二塩化マグネシウム7.2g、ホワイト油180mL、及び、エタノール82mLを連続的に投入し、この内容物を撹拌しながら95℃まで加熱した。この内容物を95℃で1時間反応させ、その後、エポキシクロロプロパン30mLを反応装置に加え、そして、95℃で0.5時間反応させ続けた。ろ過することにより液体を除去した後、残留固体をヘキサンで五回洗浄し、その後、真空下で乾燥し、球状のマグネシウム化合物を得た。
【0101】
この球状のマグネシウム化合物は、5°〜15°の2θ角度の範囲内において、9.8°(100%)、及び10.7°(50%)の2θ角度に二本の回析線が存在し、且つ、15°〜32°の2θ角度の範囲内において、20.3°(24%)の2θ角度でピーク最大値を有する幅広いピークが存在し、そして、16.6°(12.2%)、25.9°(8.0%)、27.1°(5.2%)、27.86°(5.2%)、及び、29.85°(11.8%)の2θ角度でショルダーピークが存在するX線回析像を有する。丸括弧内の数値は、最も強い回析線に対する強度(I/I)を示している。
【0102】
【表1】

【0103】
表1で示された結果から、本発明に係る球状のマグネシウム化合物担体は、狭い粒子サイズ分布を有していることが分かる。
【0104】
【表2】

【0105】
担体としての本発明に係る球状のマグネシウム化合物を用いることにより得られる触媒をプロピレンの重合で用いる場合、表2で示された結果から、この触媒が、高い重合活性と、高い立体特異性とを有していることが分かる。
【0106】
本明細書に引用された特許、特許文献及び試験方法を本願に援用する。
【0107】
本願発明は、典型的な実施例に基づき示されており、一方で、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り様々な変更及び改変を行うことができるということが、当業者により理解され得る。従って、本発明を実行するために考えられる最良の形態として開示された特定の実施例に制限されるものではないが、本発明は、添付された特許請求の範囲における技術範囲内の全ての形態が含まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】実施例1にて得られるマグネシウム化合物担体のDSCのプロフィールを示す図である。
【図2】化学式MgCl・2.7COHで表される既知の二塩化マグネシウム−エタノール付加体のDSCのプロフィールを示す図である。
【図3】実施例1にて得られるマグネシウム化合物担体のX線回析像を示す図である。
【図4】化学式MgCl・2.7COHで表される既知の二塩化マグネシウム−エタノール付加体のX線回析像を示す図である。
【図5】様々な担体のX線回析像を示しており、aはMgClのX線回析像、bはMgCl・2.7COHのX線回析像、cはジエトキシマグネシウムのX線回析像、dは本発明に係るマグネシウム化合物担体のX線回析像を示す図である。
【図6】実施例1にて得られるマグネシウム化合物担体の顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の組成物の反応生成物を含むことを特徴とする粒子球状のマグネシウム化合物:
(a)MgX2−nの一般化学式で表されるハロゲン化マグネシウム(Xは独立してCl又はBr、Rは独立してC−C14アルキル基、C−C14アリル基、C−C14アルコキシ基、又は、C−C14アリルオキシ基、且つ、nは0又は1である)、
(b)アルコール化合物、及び、
(c)以下の一般化学式(I)で表されるエポキシ化合物:
【化1】

(R及びRは独立して水素、C−C直鎖アルキル基若しくは分枝鎖アルキル基、又は、C−C直鎖ハロアルキル基若しくは分枝鎖ハロアルキル基である)。
【請求項2】
上記のアルコール化合物は、一般化学式ROH(Rは独立してC−C12アルキル基、C−C10シクロアルキル基、C−C12アラルキル基、又は、C−C10アリル基である)で表される少なくとも一つのアルコール化合物であることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム化合物。
【請求項3】
がC−Cアルキル基であることを特徴とする請求項2に記載のマグネシウム化合物。
【請求項4】
上記のハロゲン化マグネシウムは、二塩化マグネシウムであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のマグネシウム化合物。
【請求項5】
及びRは、単独で又は個別で、水素、C−Cアルキル基又はC−Cハロアルキル基を示していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のマグネシウム化合物。
【請求項6】
ハロゲン化マグネシウム1モルあたりに用いられる化合物(2)の量が4モル〜40モルの範囲内であり、且つ、用いられる化合物(3)の量が1モル〜10モルの範囲内であるマグネシウム化合物の形態であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のマグネシウム化合物。
【請求項7】
ハロゲン化マグネシウム1モルあたりに用いられる化合物(2)の量が6モル〜20モルの範囲内であり、且つ、用いられる化合物(3)の量が2モル〜6モルの範囲内であることを特徴とする請求項6に記載のマグネシウム化合物。
【請求項8】
5°〜15°の2θ角度の範囲内において、少なくとも二つの回析線が存在し、最も強い回析線が10.0±0.4°の回析角2θに存在し、二番目に強い回析線が10.5°〜12.5°の回析角2θに存在し、二番目に強い回析線が最も強い回析線の少なくとも0.2倍の強度であることにより特徴付けられる特徴的なX線回析像を有することを特徴とするマグネシウム化合物。
【請求項9】
上記マグネシウム化合物の上記のX線回析像は、さらに、5°〜15°の2θ角度の範囲内において存在する回析線のうち、最も強い回析線及び二番目に強い回析線以外の回析線が、最も強い回析線の少なくとも0.2倍の強度であることを特徴とする請求項8に記載のマグネシウム化合物。
【請求項10】
上記マグネシウム化合物の上記のX線回析像には、さらに、15°〜32°の2θ角度の範囲内において、20°〜21°の2θ角度の範囲内でピーク最大値を有する幅広い回析ピークが存在することを特徴とする請求項8又は9に記載のマグネシウム化合物。
【請求項11】
上記マグネシウム化合物の上記のX線回析像には、さらに、15°〜32°の2θ角度の範囲内において、20°〜21°の2θ角度の範囲内でピーク最大値を有する幅広い回析ピーク、並びに、16.5±0.4°及び/又は25.6±0.4°の2θ角度に少なくとも一つのショルダーピークが存在することを特徴とする請求項8又は9に記載のマグネシウム化合物。
【請求項12】
二番目に強い回析線が11.5±0.4°の回析角度2θに存在することを特徴とする請求項8に記載のマグネシウム化合物。
【請求項13】
マグネシウム化合物のDSCプロフィールは、70℃〜250℃の温度の範囲内に明確な発熱ピークを有し、
上記の発熱ピークは100℃〜220℃の温度でピーク最大値を有し、且つ、40J/g以上の大きさの発熱エンタルピーに相当することを特徴とするマグネシウム化合物。
【請求項14】
上記マグネシウム化合物のDSCプロフィールは、上記の発熱ピークのピーク最大値が、100℃〜200℃の温度範囲に現れることを特徴とする請求項13に記載のマグネシウム化合物。
【請求項15】
上記マグネシウム化合物のDSCプロフィールは、上記の発熱ピークのピーク最大値が、130℃〜210℃の温度範囲に現れることを特徴とする請求項13に記載のマグネシウム化合物。
【請求項16】
上記マグネシウム化合物のDSCプロフィールは、上記の発熱ピークのピーク最大値が、130℃〜200℃の温度範囲に現れることを特徴とする請求項13に記載のマグネシウム化合物。
【請求項17】
上記マグネシウム化合物のDSCプロフィールは、上記の発熱ピークのピーク最大値が、100J/g以上の大きさの発熱エンタルピーに相当することを特徴とする請求項13に記載のマグネシウム化合物。
【請求項18】
以下の工程を含むことを特徴とする請求項1〜17の何れか1項に記載のマグネシウム化合物を製造するためのプロセス:
a)容器内(好ましくは密閉容器内)にてMgX2−nの一般化学式で表されるハロゲン化マグネシウム、アルコール化合物、及び、任意で不活性液体媒体を混合し、こうして得られる混合物を30℃〜160℃の温度に加熱し、且つ、反応させることにより、ハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体溶液を形成する工程、
b)上記のハロゲン化マグネシウム−アルコール付加体溶液と、以下の一般化学式(I)で示されるエポキシ化合物とを30℃〜160℃の温度条件下で反応させ、球状の担体を形成する工程、
【化2】

(R、X、R及びRは請求項1にて定義されたもの)。
【請求項19】
以下の少なくとも一つを特徴とする請求項18に記載のプロセス:
−上記のアルコール化合物は、一般化学式ROH(RはC−C12アルキル基、C−C10シクロアルキル基、C−C12アラルキル基、又は、C−C10アリル基である)で表される少なくとも一つのアルコール化合物である。
−上記のハロゲン化マグネシウムは二塩化マグネシウムである。
−上記の一般化学式(I)において、R及びRは、単独で又は個別で、水素、C−Cアルキル基又はC−Cハロアルキル基である。
−上記の不活性液体媒体は工程a)で用いられ、その不活性液体媒体の量が、ハロゲン化マグネシウム1モルあたり1/3L〜20Lである。
−用いられる上記のアルコール化合物の量は、ハロゲン化マグネシウム1モルに対して、4モル〜40モルの範囲内であり、且つ、用いられる上記のエポキシ化合物の量は、ハロゲン化マグネシウム1モルに対して、1モル〜10モルである。
【請求項20】
以下の少なくとも一つを特徴とする請求項18に記載のプロセス:
−上記の不活性液体媒体は工程a)で用いられ、その不活性液体媒体の量が、ハロゲン化マグネシウム1モルあたり2/3L〜10Lである。
−用いられる上記のアルコール化合物の量は、ハロゲン化マグネシウム1モルに対して、6モル〜20モルの範囲内であり、且つ、用いられる上記のエポキシ化合物の量は、ハロゲン化マグネシウム1モルに対して、2モル〜6モルである。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2013−507492(P2013−507492A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533459(P2012−533459)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【国際出願番号】PCT/CN2010/001632
【国際公開番号】WO2011/044761
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(503191287)中国石油化工股▲ふん▼有限公司 (35)
【出願人】(510016575)中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院 (8)
【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.14,BEISANHUAN EAST ROAD,CHAOYANG DISTRICT,BEIJING 100013,CHINA
【Fターム(参考)】