説明

オレフィン重合触媒及び該触媒を用いたオレフィンの重合方法

【課題】優れた特性を有するポリオレフィンを、効率的且つ安価に製造するためのバナジウム系重合触媒、並びに該触媒を用いたポリオレフィン製造方法を提供すること。
【解決手段】(A)特定のバナジウム化合物、(B)化合物のHOMOエネルギー準位が、-9.90[eV]以下である有機アルミニウム化合物、(C)(C−1)ハロゲン含有有機化合物、および(C−2)酸素から選ばれる少なくとも1種の化合物からなるオレフィン重合触媒、並びに、該触媒の存在下でエチレン、α-オレフィン、環状オレフィンおよびポリエンから選ばれる少なくとも1種以上のモノマーを60℃以上の温度で重合あるいは共重合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バナジウム系化合物、メチル基含有有機アルミニウム化合物およびハロゲン含有有機化合物や酸素の触媒活性化剤から構成される新規なオレフィン重合用触媒および該オレフィン重合用触媒を用いたオレフィンの重合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンは、炭素と水素からなる環境にやさしいクリーンな材料であり加工成形性や物性に優れている。これらの特性から、自動車、電気機器部品、食品包装、飲料・化粧品・医療用容器、土木、農業資材など幅広い分野に用いられており、さらに近年ポリオレフィンに対する物性の要求が多様化しており、様々な特性を持つポリオレフィンが望まれている。と同時に生産性の向上も望まれている。
【0003】
従来からエチレン重合体、エチレン/α−オレフィン共重合体などのオレフィン重合体を製造するための触媒としては、チタン化合物と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒、およびバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒が知られている。
【0004】
近年においては、高い重合活性でオレフィン重合体を製造することのできる触媒としてシクロペンタジエニル基を有するメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)とからなるメタロセン系触媒が知られるようになり、さらに最近では、ジイミン構造の配位子を持った遷移金属化合物からなる新規な触媒系が提案されている(WO96/23010号公開公報参照)。また、本願出願人も、新規なオレフィン重合触媒として、サリチルアルドイミン配位子を有する遷移金属化合物を既に提案している(EP874005公開公報)。
【0005】
現在、製造されているポリオレフィンの中でも、特に、エチレンとプロピレンの共重合体(EPM)、エチレンとプロピレンと非共役ジエンの3元系共重合体(EPDM)、エチレンと環状オレフィンの共重合体(COC)は、各種樹脂の改質材、電線被膜材、防水シート材、ベルトや各種ホースさらには自動車部品材料、電子材料、建材等の機能性樹脂として広範に用いられており、ポリオレフィン市場の大きな区分を占めている。これらEPM、EPDM、COCは、工業的には、その多くは従来から知られているようなバナジウム系触媒(VOCl3、VCl4等)と有機アルミニウム(ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミ二ウムセスキクロリド等)の組み合わせからなる触媒系で製造されている。しかしながら、これらのバナジウム系の触媒は、一般的に重合活性が低いという欠点がある(言い換えれば、活性は重合の初期のみで発現し長期間持続しない、という所謂「初期活性型」触媒である)。特に高温(60℃以上)条件での活性低下は著しく、工業的な製造においては低温重合(一般的に50℃以下)を余儀なくされているのが現状である。この低温重合ですら、十分な活性であるとは言えず、生成物を脱触媒、または脱灰処理するプロセスが必須となっている。また、重合熱の除熱に関しても低温重合であるがゆえに重合コントロールが難しく、コストがさらにかかるという問題も抱えている。
【0006】
既存のバナジウム系触媒の活性が低い(すなわち、「初期活性型」で触媒寿命が短い)理由は、重合活性種が共存有機アルミニウム化合物により容易に還元され、不活性種が生成してしまうためであると一般的に考えられている。この還元により生成した不活性種は、再酸化することにより活性種に戻るため、重合時に再酸化促進剤を添加すれば、生成した不活性種が再び活性種に変換されることになる。したがって、触媒活性を向上させるためには、再酸化促進剤の添加が有効であることになる。これまで、触媒活性化剤(再酸化剤)としていくつかの報告例があるが、例えば、特開平11-322834号公報、特開2002-145922号公報には、塩化炭化水素や亜鉛化合物等が有効であると報告されている。
【特許文献1】WO96/23010号公報
【特許文献2】EP874005号公報
【特許文献3】特開平11-322834号公報
【特許文献4】特開2002-145922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
公知のバナジウム系触媒を用いた系で、より効率的に、より安価に、さらによりよい特性を有するポリオレフィンを製造するための製造方法の開発が産業界から望まれている。例えば、触媒活性がより高い触媒系の開発は、製造時間を短縮でき、より効率的なコスト的に有利な製造方法を提供することになる、さらにこの場合、使用する触媒量を削減でき、単位重量あたりの残存触媒量が低下するため、生成物を脱触媒、または脱灰処理するプロセスを省略可能とし、製品のコスト、さらには品質上極めて有利なものとなる。また、さらにより高温で製造可能な触媒系の開発は、重合熱の除熱ネックを解消することが可能となり、従ってより効率的なコスト的に有利な製造方法を提供することになる。
【0008】
本発明者らは、公知のバナジウム系触媒を用いた系で、ポリオレフィンの新規な製造方法について鋭意検討を重ねた結果、高温(60℃以上)でポリオレフィンを高活性で得ることができる新しい製造方法を見出し本発明を完成させるにいたった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明のオレフィン重合触媒は、
(A)下記一般式(I-A)〜(I-F)で表されるバナジウム化合物から選ばれる1種以上の化合物、
VO(OR1)aX1b ‥(I-A)
V(NR2)(OR3)a X1b ‥(I-B)
VOR4a X1b ‥(I-C)
V(NR5)R6a X1b ‥(I-D)
V(OR7)c X1d ‥(I-E)
VR8c X1d ‥(I-F)
[上記式(I-A)〜(I-F)において、a、b、c及びdは、それぞれ0≦a≦3、0≦b≦3、2≦a+b≦3、0≦c≦4、0≦d≦4、3≦c+d≦4を満たす数である。R1〜R8は、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、X1は、ハロゲン原子を示す。2≦a≦3、2≦c≦4の場合は、R1〜R8で示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。また、環を形成することによりバナジウムが1分子中に2つ以上存在してもよい]
(B)化合物のHOMOエネルギー準位が、―9.90[eV]以下である有機アルミニウム化合物、
(C)(C−1)ハロゲン含有有機化合物、および
(C−2)酸素
から選ばれる少なくとも1種の化合物
からなるオレフィン重合触媒である。
【0010】
特に、高温重合条件下において、高活性でポリオレフィンを製造するためには、上記(A)、(B)、(C)の組み合わせが重要であり、本発明においては(A)下記一般式(I-A)〜(I-F)で表されるバナジウム化合物全般に対して、(B)有機アルミニウム化合物が、下記一般式(II)で表される有機アルミニウム化合物、
(CH)e-Al-R9fX2g ‥(II)
[式(II)中、e、f及びgは、1≦e≦2、0≦f<2、0<g≦2、かつe+f+g=3を示す。R9は、炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基、アルミニウム含有基、珪素含有基を示し、X2は、ハロゲン原子を示す]
好ましくは、ジメチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、あるいはメチルアルミニウムセスキクロリド等、メチル基含有有機アルミニウム化合物、(C)が、酸素もしくは、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素、もしくはトリクロロ酢酸エチル、ジクロロフェニル酢酸エチル、ジクロロ酢酸エチル、あるいはクロロ酢酸エチル等のハロゲン含有カルボン酸エステルである組み合わせからなる触媒系が課題を解決するには特に有効である。
【0011】
また、本発明に関わるオレフィン重合方法は、上記のオレフィン重合触媒の存在下、エチレン、α-オレフィン、環状オレフィンあるいはポリエンから選ばれる少なくとも1種以上のモノマーを重合あるいは共重合させることを特徴し、さらには、重合温度が60℃以上という高温条件下でモノマーを重合あるいは共重合させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るオレフィン重合触媒および重合方法により、バナジウム系触媒を用いた系において、従来では実現不可能であった高温(60℃以上)条件下で、ポリオレフィンを高活性で製造することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明におけるオレフィン重合用触媒およびこの触媒を用いたオレフィンの重合方法について具体的に説明する。
【0014】
なお、本明細書において「重合」という語は、単独重合だけでなく、共重合をも包含した意味で用いられることがあり、「重合体」という語は、単独重合体だけでなく、共重合体をも包含した意味で用いられることがある。
【0015】
本発明に係わるオレフィン重合触媒は、以下に示す(A)、(B)、(C)から構成される。
(A)下記一般式(I-A)〜(I-F)で表されるバナジウム化合物から選ばれる1種以上の化合物、
VO(OR1)aX1b ‥(I-A)
V(NR2)(OR3)a X1b ‥(I-B)
VOR4a X1b ‥(I-C)
V(NR5)R6a X1b ‥(I-D)
V(OR7)c X1d ‥(I-E)
VR8c X1d ‥(I-F)
[式(I-A)〜(I-F)において、a、b、c及びdは、それぞれ0≦a≦3、0≦b≦3、2≦a+b≦3、0≦c≦4、0≦d≦4、3≦c+d≦4を満たす数である。R1〜R8は、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、X1は、ハロゲン原子を示す。2≦a≦3、2≦c≦4の場合は、R1〜R8で示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。また、環を形成することによりバナジウムが1分子中に2つ以上存在してもよい]
(B)下記一般式(II)で表される有機アルミニウム化合物、
(CH)e-Al-R9fX2g ‥(II)
[式中、e、f及びgは、1≦e≦2、0≦f<2、0<g≦2、かつe+f+g=3を示す。R9は、炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基、アルミニウム含有基、珪素含有基を示し、X2は、ハロゲン原子を示す]
(C)(C−1)ハロゲン含有有機化合物、および
(C−2)酸素
から選ばれる少なくとも1種の化合物。
【0016】
以下、成分(A)、成分(B)、および成分(C)について詳細を説明する。
(A)下記一般式(I-A)〜(I-F)で表されるバナジウム化合物
VO(OR1)aX1b ‥(I-A)
V(NR2)(OR3)a X1b ‥(I-B)
VOR4a X1b ‥(I-C)
V(NR5)R6a X1b ‥(I-D)
V(OR7)c X1d ‥(I-E)
VR8c X1d ‥(I-F)
[式(I-A)〜(I-F)において、a、b、c及びdは、それぞれ0≦a≦3、0≦b≦3、2≦a+b≦3、0≦c≦4、0≦d≦4、3≦c+d≦4を満たす数である。R1〜R8は、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、X1は、ハロゲン原子を示す。2≦a≦3、2≦c≦4の場合は、R1〜R8で示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。また、環を形成することによりバナジウムが1分子中に2つ以上存在してもよい]
【0017】
以下、R〜R8を具体的に述べる。
炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、 t-ブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;
ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルケニル基;
エチニル基、プロパルギル基など炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルキニル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基; シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素数5〜30の環状不飽和炭化水素基;
フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;
トリル基、iso-プロピルフェニル基、t-ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ-t-ブチルフェニル基などのアルキル置換アリール基などが挙げられる。
【0018】
上記炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、たとえば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0019】
また、上記炭化水素基は、他の炭化水素基で置換されていてもよく、たとえば、ベンジル基、クミル基、2,2−ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基などのアリール基置換アルキル基などが挙げられる。
【0020】
さらにまた、上記炭化水素基は、ヘテロ環式化合物残基;アルコシキ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などの酸素含有基;アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどの窒素含有基;ボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などのホウ素含有基;メルカプト基、チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフェニル基などのイオウ含有基;ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスファト基などのリン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を有していてもよい。
【0021】
これらのうち、特に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;これらのアリール基にハロゲン原子、炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基またはアリーロキシ基などの置換基が1〜5個置換した置換アリール基などが好ましい。
【0022】
酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基としては、上記例示したものと同様のものが挙げられる。
【0023】
ヘテロ環式化合物残基としては、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、トリアジンなどの含窒素化合物、フラン、ピランなどの含酸素化合物、チオフェンなどの含硫黄化合物などの残基、およびこれらのヘテロ環式化合物残基に炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基、アルコキシ基などの置換基がさらに置換した基などが挙げられる。
【0024】
ケイ素含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基など、具体的には、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチル-t-ブチルシリル基、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリル基などが挙げられる。これらの中では、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基などが好ましい。特にトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基が好ましい。炭化水素置換シロキシ基として具体的には、トリメチルシロキシ基などが挙げられる。
【0025】
ゲルマニウム含有基およびスズ含有基としては、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムおよびスズに置換したものが挙げられる。
【0026】
次に上記で説明したR〜Rの例について、より具体的に説明する。
アルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、 t-ブトキシ基などが挙げられる。
アルキルチオ基として具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。
【0027】
アリーロキシ基として具体的には、フェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基などが挙げられる。
【0028】
アリールチオ基として具体的には、フェニルチオ基、メチルフェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0029】
アシル基として具体的には、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、p−クロロベンゾイル基、p-メトキシベンゾイル基などが挙げられる。
【0030】
エステル基として具体的には、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、メトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、p-クロロフェノキシカルボニル基などが挙げられる。
【0031】
チオエステル基として具体的には、アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基、メチルチオカルボニル基、フェニルチオカルボニル基などが挙げられる。
【0032】
アミド基として具体的には、アセトアミド基、N-メチルアセトアミド基、N-メチルベンズアミド基などが挙げられる。
【0033】
イミド基として具体的には、アセトイミド基、ベンズイミド基などが挙げられる。 アミノ基として具体的には、ジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。
【0034】
イミノ基として具体的には、メチルイミノ基、エチルイミノ基、プロピルイミノ基、ブチルイミノ基、フェニルイミノ基などが挙げられる。
【0035】
スルホンエステル基として具体的には、スルホン酸メチル基、スルホン酸エチル基、スルホン酸フェニル基などが挙げられる。
【0036】
スルホンアミド基として具体的には、フェニルスルホンアミド基、N-メチルスルホンアミド基、
N-メチル-p-トルエンスルホンアミド基などが挙げられる。
【0037】
R〜R8は、これらのうちの2個以上の基、好ましくは隣接する基が互いに連結して脂肪環、芳香環または、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
【0038】
X1は、ハロゲン原子を示し、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
このようなバナジウム化合物の例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
VCl4、VCl3、VCl3・2(OC817OH)、VBr4、VBr3、VBr3・2(OC817OH)、VOCl3、VOBr3、VOCl2、VOBr2、VO(OC25)Cl2、VO(OC252Cl、VO(OC25)Br2、VO(OC252Br、VO(O-iso-C37)Cl2、VO(O-n-C49)Cl2、VO(O-iso-C37)Br2、VO(O-n-C49)Br2、VO(OC253、VO(O-n-C493、VO(O-iso-C373、VO(O-tert-C49)Cl2、VO(O-tert-C492Cl、VO(O-tert-C493、VO(2,3-ジメチル-2-ブチルオキシ)Cl2、VO(2,3-ジメチル-2-ブチルオキシ)2Cl、VO(2,3-ジメチル-2-ブチルオキシ)3、VO(2-メチル-2-ペンチルオキシ)Cl2、VO(2-メチル-2-ペンチルオキシ)2Cl、VO(2-メチル-2-ペンチルオキシ)3、VO(3-メチル-3-ペンチルオキシ)Cl2、VO(3-メチル-3-ペンチルオキシ)2Cl、VO(3-メチル-3-ペンチルオキシ)3、VO(2,3-ジメチル-3-ペンチルオキシ)Cl2、VO(2,3-ジメチル-3-ペンチルオキシ)2Cl、VO(2,3-ジメチル-3-ペンチルオキシ)3、VO(3-エチル-3-ペンチルオキシ)Cl2、VO(3-エチル-3-ペンチルオキシ)2Cl、VO(3-エチル-3-ペンチルオキシ)3、VO(2-メチル-2-ヘキシルオキシ)Cl2、VO(2-メチル-2-ヘキシルオキシ)2Cl、VO(2-メチル-2-ヘキシルオキシ)3、V(O-tert-C49)Cl3、V(O-tert-C492Cl2、V(tert-ブチルオキシ)3Cl、V(2,3-ジメチル-2-ブチルオキシ)Cl3、V(2,3-ジメチル-2-ブチルオキシ)2Cl2、V(2,3-ジメチル-2-ブチルオキシ)3Cl;
次式で表されるような、β−ジケトンを配位子として有するバナジウム化合物;
VO(acac)hi 、VO(mmh)hi 、V(acac)jk、またはV(mmh)jk
ただし、上記式においてacacは、次式で表されるアセチルアセトナト基を表し、mmhは2−メチル‐1、3−ブタンジオナト基を表す。またYは、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子であり、さらに、h、i、j、kは、1≦h≦2、0≦i≦1、2≦h+i≦3、1≦j≦3、0≦k≦3、3≦j+k≦4を満たす。
【0040】
【化1】

【0041】
上記式で表わされるβ−ジケトンを配位子として有するバナジウム化合物としては、具体的には、以下に記載する化合物が挙げられる。なお、以下に示す式において、Xは、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、アルキル基、第1級アルコキシ基、第2級アルコキシ基のいずれかを表わすが、好ましくは塩素である。具体的な例として、
VO(acac)2、VO(mmh)2、VO(acac)X、VO(mmh)X、VO(acac)X2、VO(mmh)X2、V(acac)3、V(mmh)3、V(acac)22、V(mmh)22、V(acac)2X、V(mmh)2Xなどを挙げることができる。
【0042】
これらのβ- ジケトンを配位子として有するバナジウム化合物ではVO(acac)2、VO(mmh)2、V(acac)3、V(mmh)3が好ましい。
また、モノフェノレート化合物、あるいはビスフェノレート化合物、トリスフェノレート化合物等のポリフェノレート化合物を配位子として有するバナジウム化合物も用いることができる。
【0043】
さらには、これまで本願出願人が既に提案している、例えば、特開平11−315109号、特開2002−080515号、特開2002−082015号、特開2002―082016号、特開2002−363210号、特開2003−119211号、特開2004−107486号等に開示されている配位子を有するバナジウム化合物も用いることができる。
【0044】
これらの上記バナジウム化合物は単独で、あるいは2種以上、組み合わせて使用することができる。
【0045】
さらにこのバナジウム化合物は、上述したバナジウム化合物に電子供与体が付加した付加物であってもよい。
【0046】
ここで、上記のバナジウム化合物と付加物を形成する電子供与体の例としては、アルコール、フェノール類、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、有機酸または無機酸のエステル、エーテル、酸アミド、酸無水物、および、アルコキシシラン等の含酸素電子供与体、ならびにアンモニア、アミン、ニトリル、および、イソシアネート等の含窒素電子供与体が挙げられる。
【0047】
このような電子供与体として用いられる具体的な化合物の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、オクタデシルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、クミルアルコール、イソプロピルアルコールおよびイソプロピルベンジルアルコールのような炭素数1〜18のアルコール類;トリクロロメタノール、トリクロロエタノールおよびトリクロロヘキサノールのような炭素数1〜18のハロゲン含有アルコール類;フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ノニルフェノール、クミルフェノールおよびナフトールのような炭素数6〜20のフェノール類(これらのフェノール類は低級アルキル基を有してよい);アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノンおよびベンゾキノンのような炭素数3〜15のケトン類;アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、トリアルデヒドおよびナフトアルデヒドのような炭素数2〜15のアルデヒド類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、吉草酸エチル、クロル酢酸メチル、ジクロル酢酸エチル、メタクリル酸エチル、クロトン酸エチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸アミル、エチル安息香酸エチル、アリス酸メチル、アリス酸エチル、エトキシ安息香酸エチル、γ-ブチルラクトン、δ-バレロラクトン、クマリン、フタリドおよび炭酸エチルのような炭素数2〜30の有機酸エステル類;アセチルクロリド、ベンゾイルクロリド、トルイル酸クロリドおよびアリス酸クロリドのような炭素数2〜15の酸ハライド類;メチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソールおよびジフェニルエーテルのような炭素数2〜20のエーテル類;無水酢酸、無水フタル酸および無水安息香酸のような酸無水物;ケイ酸エチルおよびジフェニルメトキシシランのようなアルコキシシラン;酢酸N,N-ジメチルアミド、安息香酸N,N-ジメチルアミドおよびトルイル酸N,N-ジメチルアミドのような酸アミド類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリベンジルアミンおよびテトラメチルエチレンジアミンのようなアミン類;アセトニトリル、ベンゾニトリルおよびトリニトリルのようなニトリル類;ならびにピリジン、メチルピリジン、エチルピリジンおよびジメチルピリジンのようなピリジン類が挙げられる。これらの電子供与体は、単独であるいは組合わせて使用することができる。
【0048】
(B)化合物のHOMOエネルギー準位が、-9.90[eV]以下である有機アルミニウム化合物
化合物のHOMOエネルギー準位は、PM3パラメーターを用い、MOPAC/PM3により計算することができる。
【0049】
このHOMOエネルギー準位が、−9.90[eV]以下である有機アルミニウム化合物は、上記(A)バナジウム化合物、及び下記記載の(C−1)ハロゲン含有有機化合物もしくは(C-2)酸素の組み合わせからなる触媒系において、高温重合条件下でポリオレフィンを高活性で製造するためには必須である。中でも、好ましくは、下記一般式(II)で表される有機アルミニウム化合物が有効である。
【0050】
(CH)e-Al-R9fX2g ‥(II)
[式中、e、f及びgは、1≦e≦2、0≦f<2、0<g≦2、かつe+f+g=3を示す。R9は、炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基、アルミニウム含有基、珪素含有基を示し、X2は、ハロゲン原子を示す]
具体的には、X2は、ハロゲン原子であり、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子から選ばれ、好ましくは塩素原子、臭素原子、特に好ましくは塩素原子である。
【0051】
また、R9は、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などの炭素数1〜12の炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基)や、-OR14基、-OSiR15基、-OAlR16基、-NR17基、-SiR18基、-N(R19)AlR20基などで表される酸素含有基、窒素含有基、アルミニウム含有基、珪素含有基(R14、R15、R16及びR20は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などであり、R17は、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリメチルシリル基などであり、R18及びR19は、メチル基、エチル基など)である。
【0052】
以下に具体例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0053】
ジメチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、メチルエチルアルミニウムクロリド、メチルエチルアルミニウムブロミド、メチルn-プロピルアルミニウムクロリド、メチルn-プロピルアルミニウムブロミド、メチルイソプロピルアルミニウムクロリド、メチルイソプロピルアルミニウムブロミド、メチルイソブチルアルミニウムクロリド、メチルイソブチルアルミニウムブロミド、メチルペンチルアルミニウムクロリド、メチルペンチルアルミニウムブロミド、メチルヘキシルアルミニウムクロリド、メチルヘキシルアルミニウムブロミド、メチルオクチルアルミニウムクロリド、メチルオクチルアルミニウムブロミド、メチルシクロペンチルアルミニウムクロリド、メチルシクロペンチルアルミニウムブロミド、メチルシクロヘキシルアルミニウムクロリド、メチルシクロヘキシルアルミニウムブロミド、メチルフェニルアルミニウムクロリド、メチルフェニルアルミニウムブロミド、メチルトリルアルミニウムクロリド、メチルトリルアルミニウムブロミド、メチルアルミニウムセスキクロリド、メチルアルミニウムセスキブロミド、メチルアルミニウムメトキシクロリド、メチルアルミニウムエトキシクロリド、メチルアルミニウムイソプロポキシクロリド、メチルアルミニウムイソブトキシクロリド、メチルアルミニウムシクロヘキソキシクロリド、メチルアルミニウムフェノキシクロリド、CH3AlOSi(CH3)3Cl、CH3AlOSi(C2H5)3Cl、CH3AlOSi(n-C3H7)3Cl、CH3AlOSi(iso-C3H7)3Cl、CH3AlOSi(iso-C4H9)3Cl、CH3AlOSi(C6H11)3Cl、CH3AlOSi(C6H5)3Cl、CH3AlOAl(CH3)3Cl、CH3AlOAl(C2H5)3Cl、CH3AlOAl(n-C3H7)3Cl、CH3AlOAl(iso-C3H7)3Cl、CH3AlOAl(iso-C4H9)3Cl、CH3AlOAl(C6H11)3Cl、CH3AlOAl(C6H5)3Cl、CH3AlNH2Cl CH3AlN(CH3)2Cl、CH3AlN(C2H5)2Cl、CH3AlN(iso-C3H7)2Cl、CH3AlN(C6H5)2Cl、CH3AlN[Si(CH3)3]2Cl、CH3AlSi(CH3)3Cl、CH3AlSi(C2H5)3Cl、CH3AlNCH3Al(CH3)2Cl、CH3AlNCH3Al(C2H5)2Cl、CH3AlNCH3Al(n-C3H7)2Cl、CH3AlNCH3Al(iso-C3H7)2Cl、CH3AlNCH3Al(iso-C4H9)2Cl、CH3AlNCH3Al(C6H11)2Cl、CH3AlNCH3Al(C6H5)2Cl、CH3AlNC2H5Al(CH3)2Cl、CH3AlNC2H5Al(C2H5)2Cl、CH3AlNC2H5Al(n-C3H7)2Cl、CH3AlNC2H5Al(iso-C3H7)2Cl、CH3AlNC2H5Al(iso-C4H9)2Cl、CH3AlNC2H5Al(C6H11)2Cl、CH3AlNC2H5Al(C6H5)2Cl、メチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジブロミド、アルミニウムメトキシジクロリド、アルミニウムメトキシジブロミド、アルミニウムエトキシジクロリド、アルミニウムエトキシジブロミド、アルミニウムイソプロポキシジクロリド、アルミニウムイソプロポキシジブロミド、アルミニウムイソブトキシジクロリド、アルミニウムイソブトキシジブロミド、アルミニウムシクロヘキソキシジクロリド、アルミニウムシクロヘキソキシジブロミド、アルミニウムフェノキシジクロリド、アルミニウムフェノキシジブロミドなどが挙げられるが、好ましくは、ジメチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、メチルアルミニウムセスキクロリド、メチルアルミニウムセスキブロミド、メチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジブロミド、より好ましくはジメチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、メチルアルミニウムジクロリドである。また、これらの有機アルミニウム化合物は、2種以上混合して用いることもできる。
【0054】
(C)(C−1)ハロゲン含有有機化合物、(C−2)酸素から選ばれる少なくとも1種の化合物
本成分は、触媒活性化剤として用いるものであるが、(C−1)はハロゲン原子を1つ以上含有する有機化合物であればよい。(C−2)酸素も重合系内に気相フィードするだけで触媒活性化剤として有効である。
【0055】
(C−1)ハロゲン含有有機化合物として具体的には、(C-1a)〜(C-1e)の化合物を挙げることができるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0056】
(C-1a)ハロゲン含有炭化水素
クロロメタン、ブロモメタン、ジクロロメタン、ジブロモメタン、トリクロロメタン、トリブロモメタン、テトラクロロメタン、トリクロロフルオロメタン、トリブロモフルオロメタン、クロロエタン、ブロモエタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン、トリクロロエタン、トリブロモエタン、テトラクロロエタン、トリクロロフルオロエタン、トリブロモフルオロエタン等、炭素原子数1〜50のハロゲン含有炭化水素を挙げることができる。
【0057】
(C-1b)ハロゲン含有アルコール化合物、ハロゲン含有フェノール性化合物
通常、R21-OHで表されるものを使用し、R21は、炭素数1〜50のハロゲン含有炭化水素基である。具体的には、CH2ClOH、CHCl2OH、CCl3OH、CCl3CH2OH、CC6H5Cl2CH2OH、CCl3CH2OH、 CHCl2CH2OH、CH2ClCH2OH、CCl3C5H10OH、CH2FOH、CHF2OH、CF3OH、CF3CH2OH、CHF2CH2OH、CH2FCH2OH、CH2BrOH、CHBr2OH、CBr3OH、CBr3CH2OH、CHBr2CH2OH、CH2BrCH2OH、o-クロロフェノール、m-クロロフェノール、p-クロロフェノール、o-ブロモフェノール、m-ブロモクロロフェノール、p-ブロモフェノール、o-フルオロフェノール、m-フルオロクロロフェノール、p-フルオロフェノールなどを挙げることができる。
【0058】
(C-1c)ハロゲン含有カルボン酸
通常、R22-COOHで表されるものを使用し、R18は、炭素数1〜50のハロゲン含有炭化水素基である。具体的には、CCl3COOH、CC6H5Cl2COOH、CHCl2COOH、CH2ClCOOH、CF3COOH、CHF2COOH、CH2FCOOH、CBr3COOH、CHBr2COOH、CH2BrCOOHなどを挙げることができる。
【0059】
(C-1d)ハロゲン含有カルボン酸エステル
通常、R23-COOR24で表されるものを使用し、R23は、炭素数1〜50のハロゲン含有炭化水素基である。R24は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基などの炭素原子数1〜50の炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基)である。具体的には、CCl3COOCH3、CC6H5Cl2COOCH3、CHCl2COOCH3、CH2ClCOOCH3、CF3COOCH3、CHF2COOCH3、CH2FCOOCH3、CBr3COOCH3、CHBr2COOCH3、CH2BrCOOCH3、CCl3COOC2H5、CC6H5Cl2COOC2H5、CHCl2COOC2H5、CH2ClCOOC2H5、CF3COOC2H5、CHF2COOC2H5、CH2FCOOC2H5、CBr3COOC2H5、CHBr2COOC2H5、CH2BrCOOC2H5などを挙げることができる。
【0060】
(C-1e)ハロゲン含有スルホン酸塩
通常、下記一般式(IV)で表されるものを使用する。
【0061】
【化2】

【0062】
上式(IV)中、Mは周期表1〜14族の元素、R25は炭素原子数が1〜20のハロゲン化炭化水素基、X3は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜20の炭化水素基、炭素原子数が1〜20のハロゲン化炭化水素基である。
mは1〜7の整数であり、nは1≦n≦7である。
【0063】
なお、上記(C-1a)〜(C-1e)、及び(C-2)の化合物は、2種以上混合して用いることもできる。
【0064】
上記(C-1a)〜(C-1e)の中でも、好ましくは、(C-1a)ハロゲン含有炭化水素及び(C-1d)ハロゲン含有カルボン酸エステルであり、より好ましくは(C-1d)ハロゲン含有カルボン酸エステルであり、下記一般式(III)で表される化合物である。
【0065】
【化3】

【0066】
[式中、R10〜R12は、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、R13は炭化水素基を示す。R10〜R12のうち、少なくとも1つ以上はハロゲン原子あるいはハロゲン原子を含む基である。また、R9〜R12で示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。]
【0067】
以下R10〜R12について具体的に述べる。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0068】
炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、 t-ブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;
ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルケニル基;
エチニル基、プロパルギル基など炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルキニル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基; シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素数5〜30の環状不飽和炭化水素基;
フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;
トリル基、iso-プロピルフェニル基、t-ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ-t-ブチルフェニル基などのアルキル置換アリール基などが挙げられる。
【0069】
上記炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、たとえば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0070】
また、上記炭化水素基は、他の炭化水素基で置換されていてもよく、たとえば、ベンジル基、クミル基、2,2−ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基などのアリール基置換アルキル基などが挙げられる。
【0071】
さらにまた、上記炭化水素基は、ヘテロ環式化合物残基;アルコシキ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などの酸素含有基;アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどの窒素含有基;ボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などのホウ素含有基;メルカプト基、チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフェニル基などのイオウ含有基;ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスファト基などのリン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を有していてもよい。
【0072】
これらのうち、特に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;これらのアリール基にハロゲン原子、炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基またはアリーロキシ基などの置換基が1〜5個置換した置換アリール基などが好ましい。
【0073】
酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基としては、上記例示したものと同様のものが挙げられる。
【0074】
ヘテロ環式化合物残基としては、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、トリアジンなどの含窒素化合物、フラン、ピランなどの含酸素化合物、チオフェンなどの含硫黄化合物などの残基、およびこれらのヘテロ環式化合物残基に炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基、アルコキシ基などの置換基がさらに置換した基などが挙げられる。
【0075】
ケイ素含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基など、具体的には、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチル-t-ブチルシリル基、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリル基などが挙げられる。これらの中では、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基などが好ましい。特にトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基が好ましい。炭化水素置換シロキシ基として具体的には、トリメチルシロキシ基などが挙げられる。
【0076】
ゲルマニウム含有基およびスズ含有基としては、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムおよびスズに置換したものが挙げられる。
【0077】
次に上記で説明したR10〜R12の例について、より具体的に説明する。
アルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、 t-ブトキシ基などが挙げられる。
アルキルチオ基として具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。
【0078】
アリーロキシ基として具体的には、フェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基などが挙げられる。
【0079】
アリールチオ基として具体的には、フェニルチオ基、メチルフェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0080】
アシル基として具体的には、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、p−クロロベンゾイル基、p-メトキシベンゾイル基などが挙げられる。
【0081】
エステル基として具体的には、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、メトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、p-クロロフェノキシカルボニル基などが挙げられる。
【0082】
チオエステル基として具体的には、アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基、メチルチオカルボニル基、フェニルチオカルボニル基などが挙げられる。
【0083】
アミド基として具体的には、アセトアミド基、N-メチルアセトアミド基、N-メチルベンズアミド基などが挙げられる。
【0084】
イミド基として具体的には、アセトイミド基、ベンズイミド基などが挙げられる。 アミノ基として具体的には、ジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。
【0085】
イミノ基として具体的には、メチルイミノ基、エチルイミノ基、プロピルイミノ基、ブチルイミノ基、フェニルイミノ基などが挙げられる。
【0086】
スルホンエステル基として具体的には、スルホン酸メチル基、スルホン酸エチル基、スルホン酸フェニル基などが挙げられる。
【0087】
スルホンアミド基として具体的には、フェニルスルホンアミド基、N-メチルスルホンアミド基、N-メチル-p-トルエンスルホンアミド基などが挙げられる。
【0088】
R10〜R12は、これらのうちの2個以上の基、好ましくは隣接する基が互いに連結して脂肪環、芳香環または、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
【0089】
R13は、炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、 t-ブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;
ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルケニル基;
エチニル基、プロパルギル基など炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルキニル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基; シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素数5〜30の環状不飽和炭化水素基;
フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;
トリル基、iso-プロピルフェニル基、t-ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ-t-ブチルフェニル基などのアルキル置換アリール基などが挙げることができる。
【0090】
上記した具体例の中でも、好ましくは、トリクロロ酢酸エチル、ジクロロ酢酸エチル、ジクロロフェニル酢酸エチル、クロロ酢酸エチル、より好ましくは、トリクロロ酢酸エチルを挙げることができる。
【0091】
また、これらのハロゲン含有有機化合物は、2種以上混合して用いることもできる。
【0092】
また、本発明に係るオレフィン重合用触媒は、上記(A)バナジウム化合物、(B) 有機アルミニウム化合物、および(C)(C−1)ハロゲン含有有機化合物、(C−2)酸素から選ばれる少なくとも1種の化合物とともに、必要に応じて後述するような担体(D)を用いることもできる。
【0093】
(D)固体状担体
本発明で用いられる(D)固体状担体は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。
【0094】
このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
【0095】
多孔質酸化物として、具体的にはSiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2など、またはこれらを含む複合物または混合物を使用、例えば天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al23、SiO2-TiO2、SiO2-V25、SiO2-Cr23、SiO2-TiO2-MgOなどを使用することができる。これらのうち、SiO2および/またはAl23を主成分とするものが好ましい。
【0096】
なお、上記無機酸化物は、少量のNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Na2SO4、Al2(SO4)3、BaSO4、KNO3、Mg(NO3)2、Al(NO3)3 、Na2O、K2O、Li2Oなどの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有していても差し支えない。
【0097】
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる担体は、粒径が0.2〜300μm、好ましくは1〜200μmであって、比表面積が50〜1200m2/g、好ましくは100〜1000m2/gの範囲にあり、細孔容積が0.3〜3.0cm3/gの範囲にあることが望ましい。このような担体は、必要に応じて100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して使用される。
【0098】
無機塩化物としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2等が用いられる。無機塩化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコールなどの溶媒に無機塩化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0099】
本発明で用いられる粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、本発明で用いられるイオン交換性層状化合物は、イオン結合などによって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有するイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。
【0100】
また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、また、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物などを例示することができる。
【0101】
このような粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどが挙げられ、イオン交換性層状化合物としては、α−Zr(HAsO4)2・H2O、α−Zr(HPO4)2、α−Zr(KPO4)2・3H2O、α−Ti(HPO4)2、α−Ti(HAsO4)2・H2O、α−Sn(HPO4)2・H2O、γ−Zr(HPO4)2、γ−Ti(HPO4)2、γ−Ti(NH4PO4)2・H2Oなどの多価金属の結晶性酸性塩などが挙げられる。
【0102】
このような粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物は、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/g以上のものが好ましく、0.3〜5cc/gのものが特に好ましい。ここで、細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により、細孔半径20〜3×104Åの範囲について測定される。
【0103】
半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/gより小さいものを担体として用いた場合には、高い重合活性が得られにくい傾向がある。
【0104】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理など、何れも使用できる。化学処理として具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造中のAl、Fe、Mgなどの陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらす。また、塩類処理、有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体などを形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
【0105】
本発明で用いられるイオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4などの陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)、[Al134(OH)24]7+、[Zr4(OH)14]2+、[Fe3O(OCOCH3)6]+などの金属水酸化物イオンなどが挙げられる。これらの化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)などを加水分解して得た重合物、SiO2などのコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物などが挙げられる。
【0106】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分けなどの処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理した後に用いてもよい。さらに、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0107】
これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ペクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
【0108】
有機化合物としては、粒径が10〜300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素原子数が2〜14のα−オレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0109】
重合の際には、各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。
[1] 成分(A)を単独で重合器に添加する方法。
[2] 成分(A)、成分(B)、および成分(C)を任意の順序で重合器に添加する方法。
[3] 成分(A)を担体(D)に担持した触媒成分、成分(B)、及び成分(C)を任意の順序で重合器に添加する方法。
[4] 成分(B)を担体(D)に担持した触媒成分、成分(A)、及び成分(C)を任意の順序で重合器に添加する方法。
[5] 成分(C)を担体(D)に担持した触媒成分、成分(A)、及び成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法
[6] 成分(A)と成分(B)とを担体(D)に担持した触媒成分、成分(C)を重合器に添加する方法。
[7] 成分(A)と成分(C)とを担体(D)に担持した触媒成分、成分(B)を重合器に添加する方法。
[8] 成分(B)と成分(C)とを担体(D)に担持した触媒成分、成分(A)を重合器に添加する方法。
[9] 成分(A)、成分(B)と成分(C)とを担体(D)に担持した触媒成分を重合器に添加する方法。
【0110】
上記[2]〜[9]の各方法においては、各触媒成分の少なくとも2つ以上は予め接触されていてもよい。
【0111】
成分(B)が担持されている上記[4]、[6]、[8]、[9]の各方法においては、必要に応じて担持されていない成分(B)を、任意の順序で添加してもよい。この場合成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
また、上記の成分(D)に成分(A)が担持された固体触媒成分、成分(D)に成分(A)および成分(B)が担持された固体触媒成分、あるいは、成分(D)に成分(A)、成分(B)および成分(C)が担持された固体触媒成分は、オレフィンが予備重合されていてもよく、予備重合された固体触媒成分上に、さらに、触媒成分が担持されていてもよい。
本発明に係るオレフィンの重合方法では、バッチ法あるいは連続法いずれの方法を用いてもよく、上記のようなオレフィン重合用触媒の存在下に、オレフィンを重合または共重合することによりオレフィン重合体を得る。また、バッチ法においては、添加する成分(C)、あるいは成分(D)に担持された成分(C)は、間欠的に添加してもよい。
【0112】
本発明では、重合は溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。
【0113】
液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができ、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0114】
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィンの重合を行うに際して、成分(A)は、反応容積1リットル当り、通常10-12〜10-1モル、好ましくは10-8〜10-2モルになるような量で用いられる。
【0115】
成分(B)は、成分(B)中のアルミニウム原子(Al)と成分(A)中のバナジウム原子(V)とのモル比〔Al/V〕が、通常0.01〜100000、好ましくは0.05〜50000となるような量で用いられる。
【0116】
成分(C)は、成分(A)中のバナジウム原子(V)とのモル比〔(C)/V〕が、通常0.1〜10000、好ましくは0.5〜5000となるような量で用いられる。
【0117】
成分(D)は、モル比〔(D)/(B)〕が通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で、用いられる。
【0118】
また、このようなオレフィン重合用触媒を用いたオレフィンの重合温度は、通常−50〜+200℃、好ましくは0〜170℃、特に好ましくは60〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常、常圧〜100kg/cm2 、好ましくは常圧〜50kg/cm2 の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0119】
得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する成分(B)、あるいは成分(C)の種類及び量の違いにより調節することもできる。
【0120】
このようなオレフィン重合用触媒により重合することができるオレフィンとしては、炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィン、たとえばエチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン;
炭素原子数が3〜30、好ましくは5〜20の環状オレフィン、たとえばシクロペンテン、シクロヘプテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン;
極性モノマー、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ(2,2,1)-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物などのα,β−不飽和カルボン酸、およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの金属塩;
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸 tert-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニルなどのビニルエステル類;
アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステルなどの不飽和グリシジル類;
フッ化ビニル、塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニルなどのハロゲン化オレフィン類などを挙げることができる。
【0121】
また、オレフィンとして、ビニルシクロヘキサン、ジエンまたはポリエンなどを用いることもできる。ジエンまたはポリエンとしては、炭素原子数が4〜30、好ましくは4〜20であり二個以上の二重結合を有する環状又は鎖状の化合物が用いられる。具体的には、ブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、1,3-オクタジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン;
7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエン;
さらに、オレフィンとして、芳香族ビニル化合物、例えばスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレンなどのモノもしくはポリアルキルスチレン;
メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o-クロロスチレン、p-クロロスチレン、ジビニルベンゼンなどの官能基含有スチレン誘導体;
および3-フェニルプロピレン、4-フェニルプロピレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。これらのオレフィンは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0122】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0123】
なお、本実施例及び比較例において、有機アルミニウム化合物のHOMOエネルギー準位は、PM3パラメーターを用いMOPAC/PM3により計算し、極限粘度[η]は、135℃デカリン中で測定することにより決定した。
また、本実施例及び比較例で用いたバナジウム化合物(A)において、下記実施例6〜7、及び比較例16〜20で用いた化合物1については、特開2002−080515記載の方法で容易に合成することができる。上記以外の実施例及び比較例に用いたバナジウム化合物(A)は、市販の試薬を用いた。また、有機アルミニウム化合物及び触媒活性化剤も市販の試薬を用いた。
【実施例1】
【0124】
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製反応器に、トルエン250mlを装入し、温度を80℃に保ち、エチレン100NL/Hで液相及び気相を15分間飽和させた。その後、有機アルミニウム化合物としてジメチルアルミニウムクロリド(HOMOエネルギー準位;−10.16[eV]、以下DMACと略記)0.5mmol、触媒活性化剤としてトリクロロ酢酸エチル(以下ETAと略記)0.5mmol、次いで、バナジウム化合物としてジクロロエトキシバナジウムオキシド(VO(OEt)Cl)を0.0002mmol加え重合を開始した。80℃に保ったままエチレンを100NL/Hで連続的に供給し、常圧下、15分間重合を行った後、少量のイソブタノールを添加することにより重合を停止した。重合終了後、反応物を少量の塩酸を含む1Lのメタノール中に加えてポリマーを析出させた。析出したポリマーは濾取し、メタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥した。その結果を表1に示す。
【実施例2】
【0125】
有機アルミニウム化合物としてメチルアルミニウムジクロリド(HOMOエネルギー準位;−10.51[eV]、以下MADCと略記)を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。重合結果を表1に示す。
【実施例3】
【0126】
バナジウム化合物としてトリクロロバナジウムオキシド(VOCl3)を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。重合結果を表1に示す。
【実施例4】
【0127】
バナジウム化合物としてアセトナートバナジウム(III) [V(acac)3]を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。重合結果を表1に示す。
【実施例5】
【0128】
バナジウム化合物としてアセトナートバナジウム(III) [V(acac)3]、有機アルミニウム化合物としてMADCを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。重合結果を表1に示す。
【実施例6】
【0129】
バナジウム化合物として下記化合物1を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。重合結果を表1に示す。
【0130】
【化4】

【実施例7】
【0131】
バナジウム化合物として化合物1、有機アルミニウム化合物としてMADCを用いた以外は、実施例1と同様にして行った。重合結果を表1に示す。
【0132】
【表1】

【0133】
[比較例1]〜[比較例20]
実施例1の重合条件において、用いたバナジウム化合物、有機アルミニウム化合物の種類、ETAの量、重合温度を変えたこと以外は、実施例1と同様にして行った。各比較例における実施例1との相違事項、及び重合結果を表2に示す。
【0134】
なお、表中、有機アルミニウム化合物において、EADCは、エチルアルミニウムジクロリド(HOMOエネルギー準位;−9.72[eV])、EASQCは、エチルアルミニウムセスキクロリドを示す。
【0135】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明のバナジウム系オレフィン重合触媒を用いた重合方法によって、従来技術では実現不可能であった高温(60℃以上)条件下で、ポリオレフィンを高活性で製造することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I-A)〜(I-F)で表されるバナジウム化合物から選ばれる1種以上の化合物、
VO(OR1)aX1b ‥(I-A)
V(NR2)(OR3)a X1b ‥(I-B)
VOR4a X1b ‥(I-C)
V(NR5)R6a X1b ‥(I-D)
V(OR7)c X1d ‥(I-E)
VR8c X1d ‥(I-F)
[式中、a、b、c及びdは、それぞれ0≦a≦3、0≦b≦3、2≦a+b≦3、0≦c≦4、0≦d≦4、3≦c+d≦4を満たす数である。R1〜R8は、水素原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、X1は、ハロゲン原子を示す。2≦a≦3、2≦c≦4の場合は、R1〜R8で示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。また、環を形成することによりバナジウムが1分子中に2つ以上存在してもよい]
(B)化合物のHOMOエネルギー準位が、―9.90[eV]以下である有機アルミニウム化合物、
(C)(C−1)ハロゲン含有有機化合物、および
(C−2)酸素
から選ばれる少なくとも1種の化合物
からなるオレフィン重合触媒。
【請求項2】
請求項1に記載の(B)有機アルミニウム化合物が、下記一般式(II)で表される有機アルミニウム化合物、
(CH)e-Al-R9fX2g ‥(II)
[式中、e、f及びgは、1≦e≦2、0≦f<2、0<g≦2、かつe+f+g=3を示す。R9は、炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基、アルミニウム含有基、珪素含有基を示し、X2は、ハロゲン原子を示す]
【請求項3】
請求項1に記載の(B)有機アルミニウム化合物が、ジメチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、およびメチルアルミニウムセスキクロリドから選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1記載のオレフィン重合触媒。
【請求項4】
請求項1に記載の(C)が下記一般式(III)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項1記載のオレフィン重合触媒。
【化1】


[式中、R10〜R12は、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、R13は炭化水素基を示す。R10〜R12のうち、少なくとも1つ以上はハロゲン原子あるいはハロゲン原子を含む基である。また、R9〜R12で示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。]
【請求項5】
請求項1に記載の(C)がトリクロロ酢酸エチル、ジクロロフェニル酢酸エチル、ジクロロ酢酸エチル、クロロ酢酸エチルから選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする請求項3記載のオレフィン重合触媒。
【請求項6】
請求項1〜5記載のオレフィン重合触媒の存在下、エチレン、α-オレフィン、環状オレフィンおよびポリエンから選ばれる少なくとも1種以上のモノマーを重合あるいは共重合させることを特徴とするオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項7】
重合温度が60℃以上であることを特徴とする請求項6に記載のオレフィン系重合体の製造方法。

【公開番号】特開2006−290971(P2006−290971A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111491(P2005−111491)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】