説明

オレフィン重合触媒系

オレフィンの重合に有用な触媒系が開示される。触媒系は、共触媒と、ハロゲン含有第4〜6族遷移金属化合物および有機アルミニウム−シロキサン含有混合物から調製される担持遷移金属とを含む。有機アルミニウム化合物および有機マグネシウム−シロキサン反応生成物から調製される後者の混合物は、キレート化配位子を取り込む。本発明は、触媒系を作る方法、および、触媒系を用いてオレフィンを重合する方法を包含する。この方法は、便利であり、既知のオレフィン重合方法で用いられる高価な触媒成分を避けるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンの重合に有用な触媒系に関する。この触媒系は、担持遷移金属混合物の一部としてキレート化配位子を取り込む。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン産業において、触媒作用への興味が成長し続けている。従来のチ−グラ−ナッタ触媒を含む多くのオレフィン重合触媒が知られている。ポリマ−特性を向上させるために、シングルサイト触媒、特に、メタロセンが、チ−グラ−ナッタ触媒に取って代わり始めている。シングルサイト触媒は、典型的には、メチルアルモキサンまたは、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−トのような非求核アニオンの塩のような費用のかかる活性化剤を多量に必要とする。活性化剤による高い費用をかけることなく、狭い分子量分布および良好なコモノマ−取り込みのようなシングルサイト触媒の幾つかの利点を取り込むことが望ましい。
【0003】
一つの有用なチ−グラ−ナッタ触媒が、米国特許第4,464,518号に開示されている。第1の成分は、有機アルミニウム化合物を、直鎖および分岐アルコ−ルの混合物と反応させることにより得られる。別途、第2の成分は、有機マグネシウム化合物を、ケイ素含有化合物と反応させることにより得られる。第1および第2の成分が組み合わされ、次に、さらに、ハロゲン含有バナジウムまたはチタン化合物と反応させられる。この生成物と、もう一つの有機アルミニウム化合物との反応により、最終的触媒が得られる。この触媒は、エチレンの重合および、エチレンと、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンまたは1−オクテンのようなα−オレフィンとの共重合に有用であると記載されている。シングルサイト触媒は用いられない。キレート化配位子は用いられない。この触媒は、嵩密度の高いポリエチレン粉末を与えると報告されている。
【0004】
シングルサイト触媒は、典型的には、シクロペンタジエニル系におけるように、純粋に芳香族である少なくとも一つの重合安定性のアニオン性配位子を特徴とする。平面状のシクロペンタジエニル環における全ての5つの炭素が、金属へのη−5結合に関与している。シクロペンタジエニルアニオンが、6π−電子供与体として機能する。ボラタベンゼニルまたはアザボロリニルのようなヘテロ原子配位子とで、同様の結合が起こるようである。
【0005】
シングルサイト触媒は、アルモキサン、ホウ素のアニオン性化合物、トリアルキルホウ素およびトリアリ−ルホウ素化合物のような高価な活性化剤と共に用いられる。
【0006】
米国特許第5,459,116、5,798,424および6,114,276号は、高価な活性化剤の使用を必要としないオレフィン重合触媒を教示している。これらは、キレート化チタン化合物を用いる。同様に、欧州特許第1,238,989号および米国特許第6,897,176号は、高価な活性化剤の使用を必要としない。触媒は、ルイス酸および、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄およびセレンから選択される2以上の原子を含むキレート化遷移金属化合物である。ルイス酸は、塩化マグネシウム、ジアルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、アルキルマグネシウムハライド、アルコキシマグネシウムハライド、マグネシウム金属、またはポリシロキサン化合物で還元されたマグネシウム化合物のようなマグネシウム化合物でもよい。マグネシウム化合物はキレート化配位子を含まず、有機アルミニウム化合物を用いた場合、それもキレート化配位子を含まない。ポリメチルヒドロシロキサンは使用しない。
【0007】
バナジウム(III)およびチタン(III)アミジネート錯体が、MgCl2・2.1EtOHおよびトリエチルアルミニウムから調製された担体と組み合わされた(Polym.Int.54(2005)837)。その触媒を、トリイソブチルアルミニウムおよびエチレンと組み合わせて、このシングルサイト触媒系中での多分散性が低いポリエチレンを得た。ポリメチルヒドロシロキサンも有機マグネシウムハライドも用いられず、用いられるアルミニウム化合物はキレート化配位子を含んでいない。
【0008】
キレート化配位子を含む遷移金属錯体が知られている。米国特許第5,637,660号は、ピリジンまたはキノリンに基づく、キレート化配位子含有遷移金属錯体を記載している。米国特許第6,204,216号は、アルコキシアミンのようなアミン誘導体に基づく、シングルサイト遷移金属錯体を記載している。Science and Technology in Catalysis(2002)517は、塩化マグネシウム上に担持されたフェノキシイミンに基づく、遷移金属錯体を記載している。キレート化配位子を含む遷移金属錯体が知られているが、有機マグネシウムハライドまたは有機アルミニウム化合物中にキレート化配位子を取り込んだ重合触媒は考察されていないようである。これは、種々の触媒系を簡単に調製する上で、多くの利点を有する。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、共触媒および担持遷移金属を含む触媒系である。ポリメチルヒドロシロキサンを有機マグネシウムハライドと反応させ、この生成物を有機アルミニウム化合物と組み合わせる。有機アルミニウム−シロキサン含有混合物はキレート化配位子を含み、遷移金属化合物を担持するために用いられる。キレート化配位子を変えることにより、多くの多用途触媒系を容易に調製することができる。本発明は、触媒系を作る方法、および、触媒系の存在下に行われるオレフィン重合方法を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の触媒系は、共触媒および担持された遷移金属を含む。共触媒は、トリアルキルアルミニウム(例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムまたはトリメチルアルミニウム)、ジアルキルアルミニウムハライド(例えば、ジエチルアルミニウムクロライドまたはジイソブチル−アルミニウムブロミド)またはアルキルアルミニウムジハライド(エチルアルミニウムジクロライドまたはイソプロピルアルミニウムジクロライド)である。好ましくは、共触媒はトリアルキルアルミニウムまたはジアルキルアルミニウムクロライドである。
【0011】
担持された遷移金属の量に対して必要な共触媒の最適量は、担持された遷移金属および共触媒の性質、溶媒の純度、所望の反応速度、反応条件および他の因子を含む多くの因子に依存する。しかしながら、通常、使用量は、遷移金属1モル当たり共触媒が約0.01〜約100モル、好ましくは約0.1〜約50モル、より個好ましくは約1〜約5モルの範囲である。
【0012】
触媒系は、担持された遷移金属も含む。担持された遷移金属は、ハロゲン含有第4〜6族遷移金属化合物と有機アルミニウム−シロキサン含有混合物との反応生成物である。遷移金属化合物は、キレート化配位子または、シクロペンタジエニル配位子のような重合安定性アニオン性配位子を含まない。適当な遷移金属化合物としては、四塩化チタン、二塩化ジイソプロポキシチタン、オキシ塩化バナジウム(V)、三塩化バナジウム、四塩化バナジウム、四塩化ジルコニウムおよび四臭化ジルコニウムがある。四塩化チタンが好ましい。
【0013】
有機アルミニウム−シロキサン含有混合物は、有機マグネシウムハライドとポリメチルヒドロシロキサンとの有機マグネシウム−シロキサン反応生成物と、有機アルミニウム化合物との反応生成物である。好ましくは、有機アルミニウム化合物は、式:AlRn3-n(ここで、nは1〜3の整数であり、Xは塩素または臭素であり、およびRはC1〜C8ヒドロカルビル、水素、アルコキシ、アリールオキシまたはキレート化配位子である。)で示される。有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムシクロヘキソキシドおよびブチルアルミニウムジフェノキシドが挙げられる。
【0014】
所望により、有機アルミニウム化合物はキレート化配位子を取り込む。「キレート化配位子」とは、O、N、SおよびPからなる群より選択される少なくとも2つの供与体原子からの結合により中心遷移金属に結合することができる配位子を意味する。キレート化配位子は、2座、3座または多座配位子であり得る。好ましくは、キレート化配位子は、2座である。
【0015】
キレート化配位子を含む例示的有機アルミニウム化合物:
【0016】
【化1】

【0017】
キレート化配位子を含む有機アルミニウム化合物を調製するための一つの便利な方法は、アルキルアルミニウム化合物を、アミノまたはヒドロキシル化合物で処理し、アルカンを遊離させることである。例えば、トリエチルアルミニウムを2−エトキシエタノールで処理することにより、キレート化配位子が取り込まれ、エタンが遊離され、ジエチル(2−エトキシエトキシ)アルミニウムが生成される:
【0018】
【化2】

【0019】
好ましいヒドロキシル化合物は、ヒドロキシルアミン、2−ヒドロキシピリジン、8−ヒドロキシキノリン、2−ヒドロキシアニリンから調製されるヒドロキシイミン、および2−ヒドロキシベンズアルデヒドから調製されるヒドロキシイミンである。アミンは、例えば、2−アミノエタノールN,1−ジメチルエーテルでよい。
【0020】
有機アルミニウム化合物は、ポリメチルヒドロシロキサンと有機マグネシウムハライドとの反応生成物と組み合わされる。ポリメチルヒドロシロキサンは、繰り返されるSi−O−Si結合を含み、一部のケイ素原子がメチル基および水素原子の両方で置換されている任意のケイ素化合物である。「ポリメチルヒドロシロキサン」には、シロキサンのダイマー、オリゴマー、ポリマーおよびコポリマーが含まれる。適当なポリメチルヒドロシロキサンとしては、例えば、以下のものがある:
【0021】
【化3】

【0022】
有機マグネシウムハライドは、好ましくは式:RMgXで示され、ここでXは塩素または臭素、およびRはC1〜C8ヒドロカルビル、水素、アルコキシ、アリールオキシまたはキレート化配位子である。有機マグネシウムハライドとしては、例えば、エチルマグネシウムクロライド、イソブチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロライド、エトキシマグネシウムクロライドおよびフェノキシマグネシウムブロミドが挙げられる。アルキルおよびアリールマグネシウムハライドは、対応するアルキルまたはアリールハライドをマグネシウム金属と反応させることにより都合良く調製することができる。アルコキシマグネシウムハライドは、対応するアルコール、マグネシウム金属およびHClから調製することができる、またはアルキルマグネシウムハライドをアルコールと反応させることにより調製することができる。アリールオキシマグネシウムハライドは、アルキルマグネシウムハライドおよびフェノールから調製することができる。
【0023】
所望により、有機マグネシウムハライドはキレート化配位子を取り込む。有機アルミニウム化合物または有機マグネシウムハライドの少なくとも一方がキレート化配位子を取り込む。キレート化配位子を含む有機マグネシウムハライドとしては、例えば、以下のものがある:
【0024】
【化4】

【0025】
キレート化配位子を含む有機マグネシウムハライドを調製するための一つの都合の良い方法は、アルキルマグネシウムハライドをアミノまたはヒドロキシル化合物で処理し、アルカンを遊離させることである。例えば、ブチルマグネシウムクロライドを2−エトキシエタノールで処理すると、ブタンが遊離され、キレート化配位子が取り込まれる:
【0026】
【化5】

【0027】
好ましいヒドロキシル化合物は、ヒドロキシルアミン、2−ヒドロキシピリジン、8−ヒドロキシキノリン、2−ヒドロキシアニリンから調製されるヒドロキシイミン、および2−ヒドロキシベンズアルデヒドから調製されるヒドロキシイミンである。アミンは、例えば、2−アミノエタノールN,1−ジメチルエーテルでもよい。
【0028】
好ましくは、有機マグネシウムハライドは、エーテル溶媒またはエーテル−炭化水素混合溶媒中で調製される。適当な溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ヘキサン、ヘプタンおよびトルエン等、並びにそれらの混合物がある。好ましくは、有機マグネシウムハライドをその場で用い、ポリメチルヒドロシロキサンを、有機マグネシウムハライドと溶媒との攪拌下の混合物に、少しずつ加える。好ましくは、ポリメチルヒドロシロキサンを、SiとMgとのモル比が0.1:1〜20:1となる量で加える。より好ましくは、SiとMgとのモル比は1:1〜10:1である。好ましくは、ポリメチルヒドロシロキサンおよび有機マグネシウムハライドを約10℃〜約80℃の温度で、添加後約0.5〜10時間攪拌し、次に、溶媒を減圧により除去する。任意に、溶媒除去前に、反応生成物を、エーテルより高い沸点を有する炭化水素で希釈し、次に、溶媒の一部を減圧により除去してエーテル成分の大部分を除去する。
【0029】
有機マグネシウム−シロキサン反応生成物を、有機アルミニウム化合物と組み合わせる。好ましくは、有機マグネシウム−シロキサン反応生成物を、ヘキサンまたはトルエンのような不活性炭化水素溶媒に希釈し、不活性炭化水素溶媒中に有機アルミニウム化合物を含む攪拌下の混合物に少しずつ加える。任意に、有機アルミニウム化合物をその場で炭化水素中で作り、次に、有機マグネシウム−シロキサン反応生成物を直接加える。例えば、有機アルミニウム化合物がアルコキシ基を含む場合、前駆体アルミニウム化合物を、炭化水素溶媒中にてアルコールと攪拌することができ、次に、有機マグネシウム−シロキサン反応生成物を反応混合物に直接加える。好ましくは、有機マグネシウム−シロキサン反応生成物を、AlとMgとのモル比が1:1〜100:1となる量で加える。より好ましくは、AlとMgとのモル比は1.5:1〜20:1である。
【0030】
次に、有機マグネシウム−シロキサン含有混合物を、ハロゲン含有第4〜6族遷移金属と反応させる。反応は、好ましくは、ヘキサンまたはトルエンのような不活性溶媒中で行われる。好ましくは、反応温度は約0℃〜約150℃、より好ましくは約25℃〜約60℃である。好ましくは、有機マグネシウム−シロキサン含有混合物を、ハロゲン含有第4〜6族遷移金属と、アルミニウム1モル当たり遷移金属1〜20モルの比で反応させる。好ましくは、反応完了後、固体担持遷移金属混合物を分離し、炭化水素溶媒で洗って未反応遷移金属化合物を除去する。
【0031】
共触媒および担持遷移金属を含む触媒系を用いて、オレフィンを重合することができる。重合のための適当なオレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンのようなC2〜C20α−オレフィン、シクロヘキセンのような環式オレフィン、およびエチリデンノルボルネンのような非共役ジエン、並びにそれらの混合物である。好ましいオレフィンは、エチレン、プロピレン、および、それらと、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンのようなα−オレフィンとの混合物である。より好ましくは、エチレンを、C3〜C20α−オレフィンと共重合する。最も好ましくは、エチレンを、1−ブテン、1−ヘキセンまたは1−オクテンと共重合する。
【0032】
任意に、ポリオレフィンの分子量を調節するために、重合において水素を用いる。必要な水素の量は、所望のポリオレフィンの分子量および流動特性に依存する。通常、水素の量が増加すると、ポリオレフィンの分子量が低下し、メルトフローレートが増加する。多くの用途において、水素の不存在下に重合を行うと、ポリオレフィンのメルトフローレートが低くなり過ぎる。
【0033】
共触媒を、担持遷移金属混合物の添加の前後に、重合反応器に直接加えることができる。好ましくは、共触媒の一部または全てを、担持遷移金属の前に加える。任意に、重合反応器への添加前に、共触媒を担持遷移金属と予備混合する。共触媒を予備混合する場合、好ましくは、不活性溶媒中に担持遷移金属錯体を含むスラリーに加える。共触媒の一部を使用し、共触媒の残りを、プレミックスの添加前に反応器に加えることが好ましい。
【0034】
本発明は、触媒系を作る方法を含む。この方法は、(a)ポリメチルヒドロシロキサンを有機マグネシウムハライドと反応させて有機マグネシウムシロキサンを生成し、(b)有機マグネシウムシロキサンを有機アルミニウム化合物と反応させて有機アルミニウム−シロキサン含有混合物を生成し、(c)有機アルミニウム−シロキサン含有混合物をハロゲン含有第4〜6族遷移金属化合物と反応させて担持遷移金属を生成し、および(d)担持遷移金属を共触媒と組み合わせることを含む。共触媒は、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライドおよびアルキルアルミニウムジハライドから選択される。有機マグネシウムハライド(工程(a)における)または有機アルミニウム化合物(工程(b)における)の少なくとも一方がキレート化配位子を取り込む。
【0035】
種々のオレフィン重合方法を用いることができる。好ましい方法は、スラリー、バルク、溶液、および気相法である。スラリーまたは気相法が好ましく用いられる。
【0036】
重合は、約−30℃〜約280℃のような広い温度範囲において行うことができる。より好ましい範囲は約30℃〜約180℃であり、最も好ましくは、約60℃〜約100℃の範囲である。オレフィン分圧は、通常、約0.1MPa〜約350MPaの範囲である。より好ましくは、約0.2MPa〜約10MPaの範囲である。
【0037】
オレフィン重合に用いられる触媒濃度は、多くの因子に依存する。しかしながら、好ましくは、濃度は、1リッター当たり遷移金属約0.01マイクロモル〜1リッター当たり約100マイクロモルの範囲である。重合時間は、方法の種類、触媒濃度および他の因子に依存する。通常、重合は、数秒から数時間の範囲で完了する。
【実施例】
【0038】
以下の実施例は、単に本発明を説明するためのものである。当業者は、本発明の技術的思想および特許請求の範囲に含まれる多くの変形態様を理解する。
【0039】
実施例1
アルコキシマグネシウムクロライド1からの触媒
【0040】
【化6】

【0041】
無水テトラヒドロフラン500mL中にn−ブチルマグネシウムクロライド1モルを含む攪拌下の混合物に、ジエチレングリコールエチルエーテル(1モル)を30分かかって加える。ブタンが発生し、室温で攪拌を1時間続ける。トリメチルシリル−末端ポリ(メチルヒドロシロキサン)(300g;Mnが約2300)を、30分かけて加える。混合物を60℃で1時間加熱し、テトラヒドロフランを減圧により除去する。トルエン(500mL)を加え、混合物を攪拌し、減圧を適用して残留テトラヒドロフランを除去する。トルエン(750mL)を加え、混合物を、トルエン300mL中にジエチルアルミニウムクロライド3モルを含む攪拌下の溶液に加える。有機アルミニウム−シロキサン含有混合物を2時間加熱還流し、室温まで冷却し、四塩化チタン2モルを1時間かけて滴下する。混合物を70℃で2時間加熱し、冷却する。n−ヘキサン(1L)を加え、混合物を濾過する。固形物をn−ヘキサンで充分に洗い、乾燥して担持遷移金属混合物を得る。
【0042】
実施例2
重合
2Lステンレススチール重合反応器を、70℃で乾燥窒素により3回、加圧置換する。反応器を完全に換気し、7mLの容器から1.7MPaの圧力低下として水素を加える。1−ヘキセン100mL、イソブタン1Lおよびトリイソブチルアルミニウム1mmolからなる溶液を反応器に加え、続いて、実施例1からの担持遷移金属混合物6mgを加える。エチレンを加えて、反応器全圧を2.4MPaとする。温度を70℃に維持し、必要によりエチレン圧を供給して2.4MPaで30分維持する。重合を30分続け、反応器を換気して揮発成分を除去する。分子量分布の狭いエチレン−ヘキセンコポリマーが、予想される生成物である。
【0043】
実施例3
ジエチレングリコールエチルエーテルをN,N−ジメチルヒドロキシアミンに置き換えて実施例1の手順を繰り返し、効果的重合触媒であると予想される担持遷移金属混合物を得る。
【0044】
実施例4
ジエチレングリコールエチルエーテルを、2−ヒドロキシベンズアルデヒドおよびアニリンから調製されるイミンに置き換えて実施例1の一般手順を繰り返し、効果的重合触媒であると予想される担持遷移金属混合物を得る。
【0045】
実施例5
アルコキシアルミニウム化合物2からの触媒
【0046】
【化7】

【0047】
トリメチルシリル−末端ポリ(メチルヒドロシロキサン)(300g;Mnが約2300)を、無水テトラヒドロフラン500mL中にn−ブチルマグネシウムクロライド1モルを含む攪拌下の混合物に、30分かけて加える。混合物を60℃で1時間加熱し、テトラヒドロフランを減圧により除去する。トルエン(500mL)を加え、混合物を攪拌し、減圧を適用して残留テトラヒドロフランを除去する。トルエン(750mL)を加え、混合物を、アルコキシアルミニウム化合物2の攪拌下の混合物に加える。アルミニウム化合物は、トルエン300mL中にトリエチルアルミニウム3モルを含む溶液にジエチレングリコールエチルエーテル(3モル)を2時間かけて加えることにより予め調製する。有機アルミニウム−シロキサン含有混合物を2時間加熱還流し、室温まで冷却し、四塩化チタン2モルを1時間かけて滴下する。混合物を70℃で2時間加熱し、冷却する。n−ヘキサン(1L)を加え、混合物を濾過する。固形物をn−ヘキサンで充分に洗い、乾燥して、効果的重合触媒であると予想される担持遷移金属混合物を得る。
【0048】
先の実施例は単に説明のためのものである。以下の特許請求の範囲が、本発明を定義する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライドおよびアルキルアルミニウムジハライドからなる群より選択される共触媒a)と、
ハロゲン含有第4〜6族遷移金属化合物1)と、有機アルミニウム化合物(a)とポリメチルヒドロシロキサンと有機マグネシウムハライドとの有機マグネシウム−シロキサン反応生成物(b)との反応生成物を含んでなる有機アルミニウム−シロキサン含有混合物2)との反応生成物を含んでなる担持遷移金属b)と、
を含んでなり、前記有機アルミニウム化合物または前記有機マグネシウムハライドの少なくとも一方がキレート化配位子を取り込む、触媒系。
【請求項2】
前記有機マグネシウムハライドがキレート化配位子を取り込む、請求項1に記載の触媒系。
【請求項3】
前記キレート化配位子がヒドロキシル化合物から誘導される、請求項2に記載の触媒系。
【請求項4】
前記ヒドロキシル化合物が、ヒドロキシルアミン、2−ヒドロキシピリジン、8−ヒドロキシキノリン、2−ヒドロキシアニリンから調製されるヒドロキシイミン、および2−ヒドロキシベンズアルデヒドから調製されるヒドロキシイミンからなる群より選択される、請求項3に記載の触媒系。
【請求項5】
前記ヒドロキシル化合物がヒドロキシルアミンである、請求項4に記載の触媒系。
【請求項6】
前記有機アルミニウム化合物がキレート化配位子を取り込む、請求項1に記載の触媒系。
【請求項7】
前記キレート化配位子がヒドロキシル化合物から誘導される、請求項6に記載の触媒系。
【請求項8】
前記ヒドロキシル化合物が、ヒドロキシルアミン、2−ヒドロキシピリジン、8−ヒドロキシキノリン、2−ヒドロキシアニリンから調製されるヒドロキシイミン、および2−ヒドロキシベンズアルデヒドから調製されるヒドロキシイミンからなる群より選択される、請求項7に記載の触媒系。
【請求項9】
前記ヒドロキシル化合物がヒドロキシルアミンである、請求項8に記載の触媒系。
【請求項10】
(a)ポリメチルヒドロシロキサンを有機マグネシウムハライドと反応させて有機マグネシウムシロキサンを生成する工程、
(b)該有機マグネシウムシロキサンを有機アルミニウム化合物と反応させて有機アルミニウム−シロキサン含有混合物を生成する工程、
(c)該有機アルミニウム−シロキサン含有混合物をハロゲン含有第4〜6族遷移金属化合物と反応させて担持遷移金属を生成する工程、および
(d)該担持遷移金属を、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライドおよびアルキルアルミニウムジハライドからなる群より選択される共触媒と組み合わせる工程、
を含んでなり、前記有機マグネシウムハライドまたは前記有機アルミニウム化合物の少なくとも一方がキレート化配位子を取り込むものである、触媒系の製造方法。
【請求項11】
請求項1の触媒系を用いてオレフィンを重合することを含んでなる製造方法。
【請求項12】
前記オレフィンが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載のスラリー重合方法。

【公表番号】特表2009−507124(P2009−507124A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530057(P2008−530057)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/031513
【国際公開番号】WO2007/030273
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(501391331)エクイスター ケミカルズ、 エルピー (30)
【氏名又は名称原語表記】Equistar Chemicals,LP
【Fターム(参考)】