説明

オレフィン類の重合用触媒成分および触媒

本発明は、Mg、Ti、ハロゲンおよび特定の式のβ−ケト−エステルから選択される電子供与体を含む、オレフィン類CH2=CHR(ここで、Rは水素または1〜12の炭素原子を有する炭化水素基である)の重合用固体触媒成分に関する。該触媒成分がオレフィン類、特にプロピレンの重合に用いられるとき、高収率で、高いキシレン不溶性で表現される高アイソタクティック指数のポリエチレンを与えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオレフィン類の重合用触媒成分に関し、それから得られる触媒に関し、またオレフィン類の重合における該触媒の使用に関する。特に本発明は、Ti、Mg、ハロゲンおよび特定のβ−ケト−エステル誘導体から選択される電子供与性化合物を含む、オレフィン類の立体特異性重合に好適な触媒成分に関する。該触媒成分は、オレフィン類、特にプロピレンの重合に用いられる場合、高収率で、高いキシレン不溶性で表現される高アイソタクティック指数のポリマーを与えることができる。
【背景技術】
【0002】
オレフィン重合用触媒の製造のために、電子供与性化合物としてある種のケト−エステル誘導体を用いることは、当該技術分野で知られている。例えばUSP 5,049,533は、式R1−CO−Z−COOR2(式中、R1、R2およびZは広く定義される)
であるケトエステル類から選択される電子供与性化合物を含有する、チタンおよびマグネシウムをベースにした触媒成分を記載する。特に、好ましいケトエステルは、Zが6〜20の炭素原子を有する二価の芳香族あるいは多環式炭化水素のものである。全ての実施例において、γ−ケト−エステルが使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
得られるポリプロピレンの、沸騰ヘプタン不溶性によって測定される立体規則性は特段高くなく、また重合活性も充分には満足できない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、先行技術のβ−ケト−エステル誘導体を含有する触媒成分に関して、特定のβ−ケト−エステル誘導体、特に置換したものの使用が、更に高い活性と立体特異性を有する触媒成分を与えるという発見は、非常に驚くべきことである。
【0005】
それ故に本発明の目的は、Mg、Ti、ハロゲンおよび式(I)の特定のβ−ケト−エ
ステル誘導体から選択される電子供与体を含む、オレフィン類CH2=CHR(式中、Rは水素または炭素原子1〜12の炭化水素基である)重合用の固体触媒成分を提供することである。
【化1】

(式中、基RおよびR3は、同一または異なって、任意にヘテロ原子を含んでいてもよいC1〜C20の炭化水素基であり、基R1およびR2は、それらが同時に水素ではないという条件で、Hまたは任意にヘテロ原子を含んでいてもよいC1〜C20の炭化水素基であり、基R〜R3の二つ以上は結合して環を形成することができる)。
【0006】
活性および立体特異性および/またはそれらのバランスの点から見て、上述の式(I)
の全範囲に含まれる化合物を使用することで、良好な結果を得ることができる。とりわけ、R1およびR2の一つが水素か、あるいはそれら両方が炭化水素基かのどちらかの場合、興味深い結果を得ることができる。
【0007】
Rは好ましくは、1〜15の炭素原子、特に1〜10の炭素原子を有する一級アルキルである。とりわけ好適な基はメチル、エチル、イソブチル、イソペンチル、ネオペンチル、2−メチル−ブチル、2−エチル−ブチルおよび2−エチル−ヘキシルである。基R1は、好ましくは一級、二級または三級であり得る、直鎖または分岐状アルキル基から選択される。
【0008】
基R3は、好ましくはアリール、または一級、二級もしくは三級であり得る、直鎖または分岐状アルキル基から選択される。基R2は、好ましくは水素または、一級、二級もしくは三級であり得る、直鎖または分岐状アルキル基から選択される。
【0009】
有用なβ−ケト−エステル誘導体の具体的な例は、エチル 2−プロピル−3−ブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2−メチル−2−エチル−3−メチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2,2−ジ−エチル−3−メチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2,2−ジ−エチル−3−エチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2−プロピル−2−イソブチル−3−ブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2−プロピル−2−シクロペンチル−3−ブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2−ブチル−2−シクロペンチル−3−メチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2,2−ジ−イソブチル−3−メチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2−イソプロピル−3−イソブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2,2−ジ−エチル−3−イソブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2−ブチル−2−イソプロピル−3−イソブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2,2−ジ−イソブチル−3−イソペンチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2−イソブチル−2−イソプロピル−3−イソブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2,2−ジ−エチル−3−シクロヘキシル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 3−フェニル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 3−tert−ブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2−メチル−3−tert−ブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2−ブチル−3−tert−ブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2−(シクロヘキシル−メチル)−3−tert−ブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2−(トリメチルシリル−メチル)−3−tert−ブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2−(トリエチルシリル−メチル)−3−tert−ブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2−イソプロピル−3−tert−ブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2,2−ジ−エチル−3−tert−ブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2,2−ジ−プロピル−3−tert−ブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2−ブチル−2−イソブチル−3−tert−ブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2,2−ジ−イソブチル−3−tert−ブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2,2−ペンタ−メチレン−3−メチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2,2−ペンタ−メチレン−3−tert−ブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 1,3,3−トリ−メチル−2−オキソ−シクロヘキサノエート、および対応するメチル、イソブチルおよびネオ−ペンチル エステル類である。
【0010】
これらの中で、好適なものはエチル 2,2−ジ−エチル−3−エチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2−ブチル−2−シクロペンチル−3−メチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2,2−ジ−イソブチル−3−メチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2,2−ジ−エチル−3−イソブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2−ブチル−3−tert−ブチル−3−オキソ−プロピオネート、エチル 2−イソプロピル−3−tert−ブチル−3−オキソ−プロピオネート、および対応するメチル、イソブチルおよびネオ−ペンチル エステル類である。
【0011】
上で説明したように、本発明の触媒成分は上述の電子供与体に加えて、Ti、Mgおよびハロゲンを含む。とりわけ触媒成分は、ハロゲン化マグネシウム上に担持された、少なくとも一つのTi−ハロゲン結合を持つチタン化合物、および上述の電子供与性化合物を含む。ハロゲン化マグネシウムは好ましくは、チーグラー−ナッタ触媒の担持体として特許文献で広く知られる、活性型のMgCl2である。特許USP4,298,718およびUSP4,495,338が、チーグラー−ナッタ触媒反応の中でこれらの化合物の使用を記載した最初であった。これらの特許から、オレフィン類の重合用触媒成分の中で担持体あるいは共担持体として用いられる活性型のジハロゲン化マグネシウムは、X線スペクトルによって特徴付けられることが知られている。その場合、非活性ハロゲン化物のスペクトル中に現れる最も強い回折線は強度が減少し、より強い回折線のそれに比べて、より低角側に最高強度が移動するハロで置き換えられる。
【0012】
本発明の触媒成分の中で用いられる好ましいチタン化合物は、TiCl4およびTiCl3である;更に、式Ti(OR)n-yy(式中、nはチタンの原子価であり、yは1〜nの間の数字である)のTi‐ハロアルコラートもまた使用できる。
【0013】
固体触媒成分の製造は、いくつかの方法に従って遂行される。
それらの方法のなかの一つによれば、無水状態のマグネシウム ジクロライドおよびβ−ケト−エステル誘導体が、マグネシウム ジクロライドの活性化が起きる条件下で、一緒に粉砕される。こうして得られた生成物は、80〜135℃の温度で、過剰のTiCl4により一度あるいはそれ以上処理される。この処理に続いて、塩素イオンが消えるまで炭化水素溶媒で洗浄される。更なる方法によれば、無水状態のマグネシウム クロライド、チタン化合物およびβ−ケト−エステル誘導体を共粉砕して得られる生成物が、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロメタンなどのようなハロゲン化炭化水素で処理される。処理は、40℃からハロゲン化炭化水素の沸点までの温度で、1〜4時間の間遂行される。得られる生成物は、次いで通常ヘキサンのような不活性の炭化水素溶媒で洗浄される。
【0014】
別の方法によれば、マグネシウム ジクロライドがよく知られた方法で事前に活性化され、次いで80〜135℃の温度で、溶液状態でβ−ケト−エステル誘導体を含む過剰のTiCl4により、処理される。TiCl4による処理は繰り返され、全ての未反応TiCl4を取り除くために、固体はヘキサンで洗浄される。
【0015】
更なる方法は、約80〜120℃の温度で、マグネシウム アルコラートまたはクロロアルコラート(特にU.S.4,220,554に従って製造されるクロロアルコラート)と、溶液状態でβ−ケト−エステル誘導体を含む過剰のTiCl4の間の反応を含む。
【0016】
好ましい方法によれば、固体触媒成分は、式Ti(OR)n-yy(式中、nはチタンの原子価であり、yは1〜nの間の数字である)のチタン化合物、好ましくはTiCl4と、式MgCl2・pROH(式中、pは0.1〜6、好ましくは2〜3.5の間の数字であり、Rは1〜18の炭素原子を有する炭化水素基である)の付加物から誘導されるマグネシウム クロライドとの反応によって製造される。付加物は、付加物の融解温度(100〜130℃)で、撹拌下の操作で、付加物と混和しない不活性炭化水素の存在下に、アルコールとマグネシウム クロライドとの混合により、適切に球状に製造される。次いでそのエマルジョンは素早くクエンチされ、その結果球状粒子の形の付加物の固形化がおこる。この方法により製造される球状付加物の例がUSP4,399,054およびUSP4,469,648に記載されている。こうして得られる付加物は、直接Ti化合物と反応されるか、あるいはアルコールのモル数が一般に3より低く、好ましくは0.1〜2.5である付加物を得るために、前もって熱的に制御された脱アルコール化反応(80〜130℃)に付される。Ti化合物との反応は、付加物(脱アルコール化されたあるいはそのまま)を冷TiCl4(一般に0℃)の中で懸濁して遂行される;その混合物は80〜130℃までに加熱され、その温度で0.5〜2時間保たれる。TiCl4による処理は、一度またはそれ以上遂行される。β−ケト−エステル誘導体は、TiCl4による処理の間に添加され得る。電子供与性化合物による処理は、一度またはそれ以上繰り返される。
【0017】
球形の触媒成分の製造は、例えば欧州出願特許EP−A−395083、EP−A−553805、EP−A−553806、EP−A−601525およびWO98/44001に記載されている。
【0018】
上述の方法に従って得られる固体触媒成分は、表面積(B.E.T法による)が一般に20〜500m2/g、好ましくは50〜400m2/gで、総多孔率(B.E.T法による)が0.2cm3/gより高く、好ましくは0.2〜0.6cm3/gの間を示す。半径10,000Åまでの細孔に起因する多孔率(Hg法による)は、一般に0.3〜1.5cm3/g、好ましくは0.45〜1cm3/gの範囲である。
【0019】
本発明の固体触媒成分を製造する更なる方法は、マグネシウム ジアルコキサイドまたはジアリールオキサイドのような、マグネシウム ジヒドロカルビルオキサイド(dihydrocarbyloxide)化合物を、80〜130℃の温度で、TiCl4の芳香族炭化水素(例えばトルエン、キシレンなど)溶液でハロゲン化することを含む。芳香族炭化水素溶液中でのTiCl4による処理は、一度またはそれ以上繰り返され、β−ケト−エステル誘導体は、一度またはそれ以上のこれらの処理の間に添加される。
【0020】
これらの製造方法のいずれにおいても、望ましいβ−ケト−エステル誘導体はそれ自体で、または別の方法で添加される。それは、例えばエステル化、トランスエステル化などのような公知の化学反応を用いて、望ましい電子供与性化合物に転換できる適当な前駆体を用いることにより、その場で得られる。一般に触媒成分製造のため、β−ケト−エステル誘導体は、MgCl2に対するモル比で0.01〜1、好ましくは0.05〜0.5が用いられる。
【0021】
本発明による固体触媒成分は、それらを公知の方法に従って有機アルミニウム化合物と反応させることで、オレフィン類の重合用触媒に転換される。
【0022】
特に、以下の物との間の反応生成物を含む。オレフィン類CH2=CHR(式中、Rは水素または炭素原子1〜12のヒドロカルボニル(hydrocarbonyl)基である)の重合用触媒が、本発明の対象である。
(a)Mg、Tiおよびハロゲン、ならびに式(I)のβ−ケト−エステル誘導体から選
択される電子供与体を含む固体触媒成分
【化2】

(式中、基RおよびR3は、同一または異なって、任意にヘテロ原子を含んでいてもよいC1〜C20の炭化水素基で、R1およびR2は、同時に水素ではないという条件で、Hまたは任意にヘテロ原子を含んでいてもよいC1〜C20の炭化水素基であり、基R〜R3の二つ以上は結合して環を形成することができる);
(b)アルキルアルミニウム化合物および、任意に、
(c)1つ以上の電子供与性化合物(外部供与体)。
【0023】
アルキル‐Al化合物(b)は、好ましくは、例えばトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウムおよびトリ−n−オクチルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム化合物から選択される。トリアルキルアルミニウム類と、AlEt2ClおよびAl2ET3Cl3のようなハロゲン化アルキルアルミニウム、水素化アルキルアルミニウム、セスキ塩素化アルキルアルミニウムとの混合物を用いることも可能である。
【0024】
外部供与体(c)は、β−ケト−エステル誘導体と同じ型のものであってもよく、またはそれと異なってもよい。好適な外部電子供与性化合物は、シリコン化合物類、エーテル類、エチル 4−エトキシベンゾエートのようなエステル類、アミン類、ヘテロサイクリック化合物で特に2,2,6,6−テトラメチル ピペリジン、ケトン類、および一般式(II):
【化3】

(式中、RI、RII、RIII、RIV、RVおよびRVI、は互いに同一または異なって、水素
または1〜18の炭素原子を有する炭化水素基であり、RVIIおよびRVIIIは互いに同一または異なって、それらが水素ではないということを除いてRI〜RVIと同じ意味を有し;RI〜RVIII基の一つ以上は結合して環を形成することができる)の1,3−ジエーテル類を含む。特に好ましいのは、RVIIおよびRVIIIがC1〜C4アルキル基から選ばれる1,3−ジエーテル類である。
【0025】
別の種類の好ましい外部供与体は、Ra5b6Si(OR7c(式中、aおよびbは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数であり、かつ(a+b+c)の和は4であり;R5、R6およびR7は、任意にヘテロ原子を含んでいてもよい、1〜18の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基である)のシリコン化合物のそれである。特に好ましいのは、aが1、bが1、cが2で、R5およびR6の少なくとも一つが、任意にヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子3〜10の分岐状アルキル、シクロアルキルまたはアリール基から選ばれ、R7がC1〜C10のアルキル基、特にメチルであるシリコン化合物である。そのような好ましいシリコン化合物の例は、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメメトキシシラン、メチル−tert−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、2−エチルピペリジニル−2−tert−ブチルジメトキシシランおよび1,1,1−トリフルオロプロピル−2−エチルピペリジニル−ジメトキシシランである。更に、aが0、cが3で、R6が、任意にヘテロ原子を含んでいてもよい分岐状アルキルまたはシクロアルキル基で、R7がメチルであるシリコン化合物もまた好ましい。そのような好ましいシリコン化合物の例は、シクロヘキシルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシランおよびテキシル(thexyl)トリメチルシランである。
【0026】
電子供与性化合物(c)は、有機アルミニウム化合物と該電子供与性化合物(c)の間のモル比が0.1〜500、好ましくは1〜300、更に好ましくは3〜100を与えるのに適した量が用いられる。前に示したように、オレフィン類、特にプロピレンの(共)重合に用いられるとき、本発明の触媒は、高収率で、高アイソタクティック指数(高いキシレン不溶性X.I.で表される)を有し、従って物性の優れたバランスを示すポリマーを得ることができる。この後に示される比較例に見られるように、内部電子供与体として先行技術のβ−ケト−エステル化合物の使用は、収率および/またはキシレン不溶性に関してはより悪い結果を与えるという事実に照らして、これは特に驚くべきことである。更に、本発明の触媒成分は、狭−中間(4より低いPI値で表わされる)から中間−広(5に近いPI値で表わされる)の範囲の分子量分布(MWD)の広い範囲を有するポリマーを提供できる。
【0027】
それ故、以下の:
(a)上で定義した固体触媒成分;
(b)アルキルアルミニウム化合物および、任意に
(c)1つ以上の電子供与性化合物(外部供与体)
との間の反応の生成物を含む触媒の存在下に遂行される、オレフィン類の(共)重合方法が、本発明の更なる目的を構成する。
【0028】
(共)重合される好ましいオレフィン類は、2〜12の炭素原子を有するα‐オレフィンである。特に、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1およびオクテン−1である。それらの中では、エチレン、プロピレン、ブテン−1、およびそれらの混合物が特に好ましい。重合プロセスは、例えば希釈剤として不活性炭化水素溶媒を使用するスラリー重合、または液状モノマー(例えばプロピレン)を反応媒体として使用する塊重合のような、公知の技術によって遂行される。更に、1以上の流動または機械撹拌床中での気相運転で重合プロセスを遂行することが可能である。
【0029】
重合は一般に、20〜120℃、好ましくは40〜80℃の温度で遂行される。重合が気相中で遂行される場合は、操作圧力は一般に0.5〜10MPa、好ましくは1〜5MPaである。塊重合においては、操作圧力は一般に1〜6MPa、好ましくは1.5〜4MPaである。水素または連鎖移動剤の働きをする他の化合物が、ポリマーの分子量を制御するために使われる。
【実施例】
【0030】
以下の実施例は、本発明を制限するものではなく、それをより良く説明するために与えられる。
特徴付け
β−ケト−エステル誘導体の製造
β−ケト−エステル誘導体は以下に示す手順で製造される。
エチル 2−プロピル−3−ブチル−3−オキソ−プロピオネート
機械的に撹拌された400mLの無水トルエン中の水素化ナトリウム(ミネラルオイル中60%ディスパージョン16.2g)の懸濁液が、室温で窒素雰囲気下に、エチル ペンタノエート(50.0g)で滴下処理された。添加が完了次第、反応混合物は5時間還流され、次いで室温まで冷却され、氷と10%塩酸水溶液の混合物上に注いでクエンチされ、そしてクロロフォルムで抽出された。合わされた有機相は、炭酸水素カリウム水溶液で、次いで水で洗浄され、硫化マグネシウム上で乾燥され、濾過され、ロータリーエバポレーターで濃縮され、真空下に蒸留され32.0g(79%)の標記の化合物を得た。
【0031】
エチル 2−ブチル−2−シクロペンチル−3−メチル−3−オキソ−プロピオネート
機械的に撹拌された無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF、100mL)中の水素化ナトリウム(ミネラルオイル中60%ディスパージョン4.00g)の懸濁液が、室温で窒素雰囲気下に、エチル 2−シクロペンチル−3−メチル−3−オキソ−プロピオネート(17.7g)のDMF(50.0mL)溶液で滴下処理された。反応混合物の撹拌は、水素の形成が終了し反応混合物が透明になるまで、この温度で継続された。その後混合物は、1−ヨウ化ブタン(19.9g)のDMF(50mL)溶液で滴下処理され、室温下に一夜撹拌された。反応混合物は次いで氷と10%塩酸水溶液の混合物上に注いでクエンチされた。形成された有機相は分離され、水相はヘキサンで抽出された。合わされた有機相は食塩水で洗浄され、硫化マグネシウム上で乾燥され、濾過され、ロータリーエバポレーターで濃縮され、そして真空下に蒸留され、16.1g(70%)の標記の化合物を得た。
【0032】
エチル 2−ブチル−3−tert−ブチル−3−オキソ−プロピオネート
ジイソプロピルアミン(22.5mL)の無水テトラヒドロフラン(THF、100mL)溶液が、20℃で窒素雰囲気下に1.6Mのブチルリチウムのヘキサン溶液(100mL)で滴下処理され、この温度で更に30分撹拌され、次いで−70℃まで冷却され、そして1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(IH)−ピリミジノン(DMPU、18.6g)およびエチル ヘキサノエート(21.1g)のTHF(100mL)溶液で30分の間に滴下処理された。添加が完了すると、反応混合物は−70℃で45分撹拌され、その後同じ温度で2,2−ジメチル−プロピオニル クロライド(19.3g)のTHF(50mL)溶液で滴下処理された。混合物は室温までゆっくり暖められ、この温度で一夜撹拌された。最後に、反応混合物は氷と10%塩酸水溶液の混合物上に注いでクエンチされた。形成された有機相は分離され、水相はクロロホルムで抽出された。合わされた有機相はDMPUを除くため食塩水で十分に洗浄され、硫化マグネシウム上で乾燥され、濾過され、ロータリーエバポレーターで濃縮され、そして真空下に蒸留され、21.0g(63%)の標記の化合物を得た。
【0033】
プロピレン重合:一般的手順
4リッターのオートクレーブが、70℃で一時間窒素気流で置換され、次いで30℃でプロピレン気流下に、800mgのAlEt3、79.8mgのジシクロペンチルジメトキシシランおよび10.0mgの固体触媒成分を含む75mLの無水ヘキサンが充填された。オートクレーブは閉じられた。その後、オートクレーブに1.5NLの水素が添加され、次いで撹拌下に、1.2kgの液体プロピレンが仕込まれた。温度が5分で70℃まで上昇され、そしてこの温度で2時間重合が遂行された。未反応のプロピレンが取り除かれた。得られたポリマーは回収され、真空下に70℃で3時間乾燥され、重量が量られ、次いでキシレン不溶フラクション(X.I.)の量を測定するため、25℃でo−キシレンにより分別された。
【0034】
X.I.の決定
2.50gのポリマーが、135℃で30分撹拌下に250mLのo−キシレンに溶解された。次いで溶液は25℃まで冷却され、30分後不溶ポリマーフラクションが濾別された。生じた溶液は、溶解性ポリマーのパーセンテージ、次いで差から、キシレン不溶フラクション(%)を決定するため、窒素気流下に蒸発され、残渣は乾燥され秤量された。
【0035】
多分散指標(P.I.)の決定
この物性は、試験中のポリマーの分子量分布と密接に結びついている。特にそれは、溶融状態におけるポリマーの耐クリープ性に反比例する。該耐性は低弾性値(500Pa)における弾性分離値と呼ばれ、レオメトリックス社(USA)製モデルRMS−800の平行プレートレオメーターを使用して、200℃の温度で、0.1rad/秒〜100rad/秒まで増加する振動周波数で運転して、決定された。弾性分離値から、P.I.は以下の式で導かれる:
P.I.=54.6*(弾性分離値)-1.76
式中、弾性分離値は以下のように定義される:
弾性分離値=G′=500Paでの周波数/G″=500Paでの周波数
ここでG′は貯蔵弾性率、G″は損失弾性率である。
【0036】
実施例
実施例1〜10および比較例11
固体触媒成分の製造
窒素で置換された500mLの四頸丸底フラスコの中に、0℃で250mLのTiCl4が導入された。撹拌しながら、10.0gのミクロ球状のMgCl2・2.8C25OH(10,000の代わりに3,000rpmで運転する以外は、USP4,399,054の実施例2に記載された方法に従って、製造された)と、7.4ミリモルのβ−ケト−エステル誘導体が添加された。温度が100℃まで上げられ、120分保持された。次いで撹拌が止められ、固形生成物を沈殿させて、上澄み液が吸い出された。
250mLの新鮮なTiCl4が添加された。混合物は120℃で60分反応され、次いで上澄み液が吸い出された。固体は、60℃において無水ヘキサン(6×100mL)で6回洗浄された。最後に固体は真空下に乾燥され、そして分析された。固体触媒成分中に含まれる、β−ケト−エステル誘導体の種類と量(重量%)およびTiの量(重量%)が、表1に報告されている。重合結果が表2に報告されている。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mg、Ti、ハロゲンおよび式(I):
【化1】

(式中、基RおよびR3は、同一または異なって、任意にヘテロ原子を含んでいてもよいC1〜C20の炭化水素基であり、R1およびR2は、それらが同時に水素ではないという条件で、Hまたは任意にヘテロ原子を含んでいてもよいC1〜C20の炭化水素基であり、基R〜R3の二つ以上は結合して環を形成することができる)
のβ−ケト−エステル誘導体から選択される電子供与体を含む、オレフィン類の重合用固体触媒成分。
【請求項2】
式(I)のβ−ケト−エステル誘導体において、Rが1〜15の炭素原子を有する一級アルキルである、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項3】
1およびR2の一つが水素である、請求項2に記載の触媒成分。
【請求項4】
1およびR2の両方が炭化水素基である、請求項2に記載の触媒成分。
【請求項5】
基R1が、一級、二級または三級である、直鎖または分岐状アルキル基から選択される、請求項2に記載の触媒成分。
【請求項6】
基R2が、水素、または一級、二級もしくは三級であり得る、直鎖または分岐状アルキル基から選択される、請求項2に記載の触媒成分。
【請求項7】
基R3が、アリール、または一級、二級もしくは三級であり得る、直鎖または分岐状アルキル基から選択される、請求項2に記載の触媒成分。
【請求項8】
活性型のハロゲン化Mg上に担持された、少なくとも一つのTi−ハロゲン結合を有するチタン化合物、および式(I)のβ−ケト−エステル誘導体を含む、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項9】
チタン化合物がTiCl4またはTiCl3である、請求項8に記載の固体触媒成分。
【請求項10】
− 請求項1〜9のいずれか一つに記載の固体触媒成分;
− アルキルアルミニウム化合物および、任意に、
− 一つ以上の電子供与性化合物(外部供与体)
の間の反応の生成物を含む、オレフィン類の重合用触媒。
【請求項11】
アルキルアルミニウム化合物(b)がトリアルキルアルミニウム化合物である、請求項10に記載の触媒。
【請求項12】
外部供与体(c)が、式:Ra5b6Si(OR7c
(式中、aおよびbは0〜2の整数であり、cは1〜4の整数であり、かつ(a+b+c)の和は4であり;R5、R6およびR7は、任意にヘテロ原子を含んでいてもよい、1〜18の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基である)のシリコン化合物である、請求項10に記載の触媒。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一つに記載の触媒の存在下に行われる、オレフィン類の(共)重合方法。

【公表番号】特表2007−530748(P2007−530748A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505410(P2007−505410)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002476
【国際公開番号】WO2005/097841
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(501468046)バセル ポリオレフィン イタリア エス.アール.エル. (33)
【住所又は居所原語表記】Via Pergolesi 25,20124 Milano,Italy
【Fターム(参考)】