説明

オートインデューサー−2受容体のモデュレーター

【課題】オートインデューサー−2受容体のアンタゴニストとして有用な化合物を提供する。
【解決手段】下記の一般式(1)で表される化合物。


(式中、Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基など、Rは水素原子、ホルミル基、アセチル基、炭素数1〜4のアルキル基を有するフェニルアルキルカルボニル基、炭素数1〜3のアルキル基を有するN-[(ナフチル)アルキル]アミド基などを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートインデューサー−2受容体のアンタゴニストとして有用な新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌には細胞密度を感知して集団行動を制御する仕組みが存在する。この細胞密度依存的な細菌の行動制御の仕組みは、クオラムセンシングと呼ばれる。クオラムセンシングを行う細菌はオートインデューサーと呼ばれる物質を産生している。オートインデューサーは細菌細胞内で特定のタンパク質の合成を促進する働きを有する。少数の細菌だけが生息している環境ではオートインデューサー濃度が低く転写が促進されないが、細菌濃度が高くなるとオートインデューサー濃度が高くなって、オートインデューサーによって制御されている転写が促進されて特定物質が生産されるようになる。
【0003】
クオラムセンシングによって産生される物質は菌種によって異なるが、代表的なものとして、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa.緑膿菌)のバイオフィルム、ビブリオ・フィシェリ(Vibrio fisheri)の発光物質、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)の赤色色素などが挙げられる。
グラム陰性菌はオートインデューサー−1(AI-1)と総称されるホモセリンラクトン誘導体をシグナル分子とし、グラム陽性菌はオートインデューサーペプチド(AIP)と総称されるオリゴペプチド誘導体をシグナル分子としている。これらは、個々の細菌によって微妙に構造が異なり、同種個体間の情報伝達に関与していると考えられている。
【0004】
一方、細菌の種類を問わないもう一つのシグナル分子が同定され、オートインデューサー−2(以下、「AI-2」ということがある。)と呼称されるに至った。AI-2の実体は4,5-dihydroxy-2,3-pentanedione (DPD)であるが、標的細菌の受容体と結合するときには形態が変化する。AI-2は、例えば海産微生物であるビブリオ・ハーベイ(Vibrio harveyi)のシグナル分子受容体LuxPと結合するときは、環状構造を形成し、さらに1分子のホウ酸と縮合した環状ジエステル体(S-THMF- borate)となる(特許文献1、非特許文献1)。また、例えば、馬のサルモネラ下痢症の主要原因菌であるサルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium:ネズミチフス菌)のシグナル分子受容体LsrBと結合するときには、環形成の立体化学が逆転し、しかもホウ酸の関与のない構造R-THMFとなる(特許文献2、非特許文献2)。AI-2の実体であるDPD及びその受容体結合時の構造を図1に示す。
【0005】
クオラムセンシングの結果として、重篤な感染症の原因菌である緑膿菌等がアルギン酸を主成分とするバイオフィルムを形成して抗生物質に抵抗性を持つこと、口腔常在菌が代謝産物を生産して歯の表面に歯垢(デンタルプラーク)を形成し、これが成人の多くが罹患している歯周病の原因になること等の現状を背景に、クオラムセンシング機構を攪乱し得る薬剤開発が行われている。実用化の例はないが、AI-1からの信号伝達系の阻害を対象とした薬剤開発はかなり進んでおり、例えば特許文献3がAI-1のアゴニスト、又はアンタゴニストとなる化合物を開示している。
一方、AI-2については、それが化学的に不安定であることから信号伝達系の解明研究が遅れており、効果的なアンタゴニスト又はアゴニストの開発例は報告されていない。
【特許文献1】WO2005/005598号公報
【特許文献2】US2006/0063721A
【特許文献3】US2004/0115732
【非特許文献1】Nature, 415, 545 (2002)
【非特許文献2】Mol. Cell, 15, 677 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、オートインデューサー−2受容体のアンタゴニストとして有用な化合物を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ね、以下の知見を得た。
下記一般式(1)で表されるAI-2アナログ化合物(以下、「本発明の第1の化合物」と称することもある。)、及び下記一般式(2)で表されるAI-2アナログ化合物(以下、「本発明の第2の化合物」と称することもある。)は、歯周病の代表的原因菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)及びエイケネラ・コロデンス(Eikenella corrodens)の生育及びバイオフィルム形成を抑制し、AI-2受容体のアンタゴニストとして機能する。
【化1】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、炭素数1〜6のアルキル基を有するフェニルアルキル基、ナフチル基、又は炭素数1〜3のアルキル基を有するナフチルアルキル基を示す。Rは水素原子、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基を有するフェニルアルキルカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基、N-フェニルアミド基、N-(ナフチル)アミド基、炭素数1〜3のアルキル基を有し、シクロアルキル基の炭素数が4〜13である(シクロアルキル)アルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキル基を有し、シクロアルキル基の炭素数が4〜13であるN-(シクロアルキルアルキル)アミド基、炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルキル基を有するN-アルキルアミド基、炭素数1〜3のアルキル基を有するフルオレニルアルキルオキシカルボニル基、又は炭素数1〜3のアルキル基を有するフェニルアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキル基を有するN-(フェニルアルキル)アミド基、炭素数1〜3のアルキル基を有する(ナフチル)アルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキル基を有するN-[(ナフチル)アルキル]アミド基を示す。R及びRにおいて、フェニル基、ナフチル基、及びフルオレニル基は置換基を有していてよい。)
【化2】

(式中、R及びRは上記と同じ。)
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、下記の化合物などを提供する。
【0008】
項1. 下記の一般式(1)で表される化合物。
【化3】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、炭素数1〜6のアルキル基を有するフェニルアルキル基、ナフチル基、又は炭素数1〜3のアルキル基を有するナフチルアルキル基を示す。Rは水素原子、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基を有するフェニルアルキルカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基、N-フェニルアミド基、N-(ナフチル)アミド基、炭素数1〜3のアルキル基を有し、シクロアルキル基の炭素数が4〜13である(シクロアルキル)アルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキル基を有し、シクロアルキル基の炭素数が4〜13であるN-(シクロアルキルアルキル)アミド基、炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルキル基を有するN-アルキルアミド基、炭素数1〜3のアルキル基を有するフルオレニルアルキルオキシカルボニル基、又は炭素数1〜3のアルキル基を有するフェニルアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキル基を有するN-(フェニルアルキル)アミド基、炭素数1〜3のアルキル基を有する(ナフチル)アルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキル基を有するN-[(ナフチル)アルキル]アミド基を示す。R及びRにおいて、フェニル基、ナフチル基、及びフルオレニル基は置換基を有していてよい。)
【0009】
項2. 下記の一般式(2)で表される化合物。
【化4】

(式中、R及びRは上記と同じである。)
項3. 下記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物を含むオートインデューサー−2受容体のアンタゴニスト。
【化5】

(式中、R及びRは上記と同じである。)
【0010】
項4. 下記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物を含むバイオフィルム形成阻害剤。
【化6】

(式中、R及びRは上記と同じである。)
項5. 下記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物を含む歯垢形成阻害剤。
【化7】

(式中、R及びRは上記と同じである。)
【0011】
項6. 下記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物を廃水管内、廃水槽内、循環式浴槽内、遊泳槽内、又はアクアリウム内に投入する工程を含むバイオフィルム形成阻害方法。
【化8】

(式中、R及びRは上記と同じである。)
【発明の効果】
【0012】
本発明の化合物は、AI-2受容体のアンタゴニストとして機能する。
例えばシュードモナス・エルギノーサは菌数が多くなるとバイオフィルムを形成することから抗生物質が効かなくなるが、AI-2アンタゴニストとなる本発明の第1及び第2の化合物はバイオフィルムの形成を阻害することから、抗生物質と併用することによりその効果を増大させることができる。
【0013】
また、口腔内には多数種の細菌が存在し、それらの菌数が多くなると代謝産物とともに歯垢を形成し、歯周病の原因となる。従って、特定菌種間で機能するオートインデューサーAI-1のアンタゴニストを使用しても、特定の細菌による歯垢形成しか阻害できないため、歯周病を予防又は治療することはできない。この点、AI-2受容体のアンタゴニストとなる本発明の第1及び第2の化合物は、細菌種を超えて作用するオートインデューサー受容体のアンタゴニストであることから、複数菌種による歯垢形成を効果的に阻害し、歯周病を効果的に予防又は治療することができる。また、口腔内の常在菌はバランスよく存在することにより、生体防御機能を果たしていることから、常在菌を殺菌することは好ましくない。この点、AI-2受容体のアンタゴニストとなる本発明の第1及び第2の化合物を用いて歯垢形成を阻害すれば、生体防御機能を乱さずに歯周病を予防又は治療することができる。従って、本発明の第1及び第2の化合物は、抗生物質との併用のみならず、単剤としても、歯周病に有効である。
また、廃水管などには多数の細菌が付着しバイオフィルムを形成して汚れや悪臭の原因になるが、AI-2受容体のアンタゴニストとなる本発明の第1及び第2の化合物を用いればバイオフィルムの形成が阻害されて、このような汚れを薬剤で除去し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
(I)本発明の化合物
本発明の第1及び第2の化合物
本発明の第1及び第2の化合物は、文献未記載の新規化合物であり、それぞれ上記の一般式(1)及び一般式(2)で表される。一般式(1)の化合物と一般式(2)の化合物とは5位炭素原子について互いにエナンチオマーの関係にあり、一般式(1)の化合物は5S体であり、一般式(2)の化合物は5R体である一般式(1)及び(2)の各化合物において、Rは水素原子、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するフェニルアルキル基、又は炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するナフチルアルキル基を示す。
【0015】
炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基は、直鎖状であることが好ましく、炭素数は1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。
フェニル基は1〜5個の置換基を有していてよく、このような置換基として、メチル基、メトキシ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、水酸基、アミノ基、フッ素基、塩素基、ヨウ素基、及び臭素基などが挙げられる。
炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するフェニルアルキル基において、アルキル基は好ましくは直鎖状であり、炭素数は1〜4が好ましく、1がより好ましい。このフェニルアルキル基のフェニル基は1〜5個の置換基を有していてよく、このような置換基として、メチル基、メトキシ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、水酸基、アミノ基、フッ素基、塩素基、ヨウ素基、及び臭素基などが挙げられる。
【0016】
また、ナフチル基は1〜7個の置換基を有していてよく、このような置換基として、メチル基、メトキシ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、水酸基、アミノ基、フッ素基、塩素基、ヨウ素基、及び臭素基などが挙げられる。
炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するナフチルアルキル基において、アルキル基は直鎖状であることが好ましく、アルキル基の炭素数は1〜2が好ましく、1がより好ましい。このナフチルアルキル基のナフチル基は1〜7個の置換基を有していてよく、このような置換基としてメチル基、メトキシ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、水酸基、アミノ基、フッ素基、塩素基、ヨウ素基、及び臭素基などが挙げられる。
【0017】
は水素原子、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基、炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するフェニルアルキルカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基、N-フェニルアミド基、N-(ナフチル)アミド基、炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有し、シクロアルキル基の炭素数が4〜13である(シクロアルキル)アルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有し、シクロアルキル基の炭素数が4〜13であるN-(シクロアルキルアルキル)アミド基、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するN-アルキルアミド基、炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するフルオレニルアルキルオキシカルボニル基、又は炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するフェニルアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するN-(フェニルアルキル)アミド基、炭素数1〜3のアルキル基を有する(ナフチル)アルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するN-[(ナフチル)アルキル]アミド基を示す。
【0018】
ベンゾイル基中のフェニル基は1〜5個の置換基を有していてよく、このような置換基として、メチル基、メトキシ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、水酸基、アミノ基、フッ素基、塩素基、ヨウ素基、及び臭素基などが挙げられる。
炭素数1〜8のアルキル基の中では、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基がより好ましい。
炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するフェニルアルキルカルボニル基において、アルキル基は直鎖状であることが好ましく、アルキル基の炭素数は1〜2が好ましい。このフェニルアルキルカルボニル基のフェニル基は1〜5個の置換基を有していてよく、このような置換基として、メチル基、メトキシ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、水酸基、アミノ基、フッ素基、塩素基、ヨウ素基、及び臭素基などが挙げられる。
【0019】
炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有し、シクロアルキル基の炭素数が4〜13である(シクロアルキル)アルキルオキシカルボニル基またはN-(シクロアルキルアルキル)アミド基において、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロプロピル基が挙げられる。(シクロアルキル)アルキルオキシカルボニル基及びN-(シクロアルキルアルキル)アミド基のアルキル基は、好ましくは直鎖状であり、炭素数は1〜3が好ましく、1がより好ましい。
炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキルオキシカルボニル基及びN-アルキルアミド基、若しくはフルオレニルアルキルオキシカルボニル基において、アルキル基は直鎖状であることが好ましく、炭素数は1〜2が好ましく、1がより好ましい。フルオレニル基は1〜8個の置換基を有していてよく、このような置換基として、メチル基、メトキシ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、水酸基、アミノ基、フッ素基、塩素基、ヨウ素基、及び臭素基などが挙げられる。
【0020】
炭素数1〜3のアルキル基を有するフェニルアルキルオキシカルボニル基、及びN-(フェニルアルキル)アミド基において、アルキル基は直鎖状であることが好ましく、炭素数は1〜2が好ましく、2がより好ましい。フェニルアルキルオキシカルボニル基、N-(フェニルアルキル)アミド基中のフェニル基は1〜5個の置換基を有していてよく、このような置換基として、メチル基、メトキシ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、水酸基、アミノ基、フッ素基、塩素基、ヨウ素基、及び臭素基などが挙げられる。
また、ナフチル基は1〜7個の置換基を有していてよく、このような置換基として、メチル基、メトキシ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、水酸基、アミノ基、フッ素基、塩素基、ヨウ素基、及び臭素基などが挙げられる。
【0021】
炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する(ナフチル)アルキルオキシカルボニル基及びN-[(ナフチル)アルキル]アミド基において、アルキル基は直鎖状であることが好ましく、アルキル基の炭素数は1〜2が好ましく、1がより好ましい。このナフチルアルキル基のナフチル基は1〜7個の置換基を有していてよく、このような置換基としてメチル基、メトキシ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、水酸基、アミノ基、フッ素基、塩素基、ヨウ素基、及び臭素基などが挙げられる。
【0022】
一般式(1)及び(2)の各化合物において、RとRとの好ましい組み合わせとしては、下記表1の組み合わせが挙げられる。表1においても、フェニル基、ナフチル基、ベンゾイル基中のフェニル基、フルオレニル基は置換基を有していてよい。また、アルキル基は直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。
【0023】
【表1】

【0024】
(II)本発明の化合物の製造方法
本発明の第1及び第2の化合物の製造方法
一般式(1)及び一般式(2)の化合物の製造工程を図2及び図3に示す。図2を参照しながら説明すると、出発物質である化合物1は、市販されており、例えばbiochem社から購入できる。
先ず、化合物1をNMM存在下、iBuOCOClと DME中で反応させ、濾過の後、濾液にNaBH4水溶液を加えて反応物を還元し、目的のアルコールを得る。次いでSwern 酸化によりアルデヒド2を得た後、Hatakeyama らの方法により、触媒量のQD-4(Hatakeyama et al. Tetrahedron Lett. 2001, 42, 7867.)存在下、DMF中でHFIPAと反応させてヘキサフルオロイソプロピルエステルを得、ナトリウムメトキシドによりエステル交換し、化合物3が得られる。
【0025】
化合物3の水酸基をTBSで保護し、次いで、触媒量のOsO4を用いてオレフィンを酸化することにより、化合物5が得られる。化合物1から化合物5の合成方法は、Tetrahedron Lett.2001,42,7867に記載されている。
化合物5をアセトナイド保護した後、LiBH4でエステルを還元して化合物7が得られる。ここで、化合物7のCbz基を水素添加により脱保護し、Bz2Oを用いRとしてベンゾイル基を導入することができる。これにより、化合物8が得られる。
化合物7または8のベンジルオキシカルボニル基またはベンゾイル基を有する化合物を、Et3Nの存在下、上記例示したR基を有するイソシアネート(O=C=N-R)とトルエン中で還流することにより化合物9が得られる。
【0026】
化合物9のアセトナイドを10%TFA-CH2Cl2で除去した後、得られたジオールをNaIO4で酸化することにより、化合物11が得られる。
次いで化合物11をTHF中TBAFと反応させ、ショートカラムに通した後、残渣をTFA中で撹拌することにより本発明の一般式(1)及び(2)の化合物の混合物が得られる。ここで得られる化合物におけるRとRとの組み合わせは前述した通りである。
一般式(1)及び一般式(2)の化合物におけるRの導入は以下のようにして行った。図3に示すように、一般式(1)又は一般式(2)の化合物において、例えばRがメチル基でRがベンジルオキシカルボニル基である化合物のベンジルオキシカルボニル基を水素添加により脱保護した後、THFまたはTHF/アセトンまたはTHF/メタノール中、0℃, 1-2時間でペンタフルオロフェニルフォルメート、及び酸無水物と反応させ、目的のR(ホルミル基、及びアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基など)を導入できる。同様にして、化合物15又は化合物17をFmoc N-ヒドロキシスクシニミドエステルのようなフルオレニルアルキルオキシカルボニルN-ヒドロキシスクシニミドエステルと反応させ、Rとしてフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基のようなフルオレニルアルキルオキシカルボニル基を導入できる。
【0027】
また、Et2N存在下THF中0℃、1-2時間、化合物15又は化合物17をフェニルアルカノイルクロライド{Ph(CH2)nCOCl}またはその置換フェニル誘導体と反応させ、Rとして炭素数1〜4のアルキル基を有するフェニルアルキルカルボニル基{Ph(CH2)nCO-}またはその置換フェニル誘導体を導入することができる。
同様に、化合物15又は化合物17をフェニルクロロフォルメート(PhOCOCl) またはその置換フェニル誘導体と反応させ、Rとしてフェニルオキシカルボニル基{PhOCO-}またはその置換フェニル誘導体を導入することができる。
【0028】
炭素数1〜3のアルキル基を有し、シクロアルキル基の炭素数が4〜13である(シクロアルキル)アルキルオキシカルボニル基を導入することができる。
同様にしてRとして炭素数1〜5のアルキル基を有するアルキルオキシカルボニル基{(CH2)nOCO-}を導入することができる。
同様にしてフェニルアルキルクロロフォルメート{Ph(CH2)nOCOCl}またはその置換フェニル誘導体と反応させ、Rとしてベンジルオキシカルボニル基以外の炭素数1〜3のアルキル基を有するフェニルアルキルオキシカルボニル基{Ph(CH2)nOCO-}またはその置換フェニル誘導体を導入することができる。
【0029】
また、図2の一般式(2)の化合物において、Rがパラメトキシベンジル基であり、Rが炭素数1〜3のアルキル基を有するフェニルアルキルオキシカルボニル基である化合物をCAN存在下CH3CN/水中、室温で10時間反応させることにより、Rが水素原子であり、Rが上記フェニルアルキルオキシカルボニル基である一般式(1)の化合物と式(2)の化合物との混合物が得られる。
【0030】
(III)本発明の化合物の用途
本発明の第1及び第2の化合物は、AI-2受容体のアンタゴニストとして有用である。
従って、本発明のバイオフィルム形成阻害剤は、本発明の第1の化合物又は第2の化合物を有効成分として含むものである。また、このバイオフィルム形成阻害剤は、抗生剤も含んでいてよい。抗生剤は、バイオフィルム形成を行う細菌に抗菌活性を示す物質であればよく、特にシュードモナス・エルギノーサに抗菌力を有する物質が好ましい。
バイオフィルム形成阻害剤が医薬品として使用される場合は、例えば経口投与のための錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤又は顆粒剤のような内服用固形剤.水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤又はエリキシル剤のような内服用液剤.非経口投与のための注射剤(皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内注射等)などの形態を採ることができる。
【0031】
医薬品としてのバイオフィルム形成阻害剤には、本発明の第1又は第2の化合物が例えば0.0001〜30重量%程度含まれていればよい。
また、バイオフィルム形成阻害剤が廃水管や廃水などを溜めておく貯水槽などの環境に適用するものである場合は、本発明の第1又は第2の化合物を水やエタノールのような溶媒に溶解させた液体状や、本発明の第1又は第2の化合物が単シロップ、植物性樹脂、芳香性粉末、ハチ蜜、種々のエリキシルなどの賦形剤とともに含まれる固形状の形態を採ることができる。
また、本発明の第1及び第2の化合物は、歯垢形成阻害剤の有効成分として含まれていてもよい。この歯垢形成阻害剤は、抗生剤も含んでいてよい。抗生剤は、歯垢形成を行う細菌、例えばストレプトコッカス・ミュータンス、乳酸菌、糸状菌などに抗菌活性を示す物質であればよい。歯垢形成阻害剤は、トローチ剤、チュアブル剤、うがい用の外用剤などの形態を採ることができる。
【0032】
また、本発明の第1のバイオフィルム形成阻害方法は、本発明の第1又は第2の化合物を廃水管内、廃水槽内、循環式浴槽内、遊泳槽内、又はアクアリウム内に投入する工程を含む方法である。具体的には、廃水管、下水処理場の処理槽、循環式浴槽、遊泳槽、又はアクアリウムなどの中に本発明の化合物を投入すればよい。これにより、廃水管壁や排水槽壁にバイオフィルムが形成されて汚れが固着するのが防止される。本発明の化合物の使用量は、水中濃度が0.0001〜10w/v%程度になるようにすればよい。
また、本発明の第2のバイオフィルム形成阻害方法は、本発明の第1又は第2の化合物をヒト又は動物に投与する方法である。投与方法は、経口投与、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射などの公知の方法であればよい。投与量は、1日0.01〜500mg程度となるようにすればよい。
また、本発明の歯垢形成阻害方法は、本発明の第1又は第2の化合物をヒト又は動物の口腔内に投与する方法である。投与方法は剤型に応じた方法とすればよい。投与量は、1日0.01〜500mg程度となるようにすればよい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び試験例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノナン-2-オン系化合物の製例
<工程1>
ベンジル N-[(1R)-2-(t-ブトキシ)-1-(ヒドロキシメチル)エチル]カルバメート (図2の化合物1)の合成
【化9】


Z-Ser(tBu)-OH [N-a-CBZ-O-t-butyl-L-serine](novabiochem社製) (13.3 g, 44.9 mmol)の1,2-ジメチルエタン(DME, 40 mL)溶液(-15℃の冷溶液)にN-メチルモルフォリン(5.92 mL, 53.8 mmol)及びイソブチルクロロフォルメート (7.26 mL, 53.8 mmol)を順次添加した。次いで、同じ温度で2時間攪拌した後、沈殿したN-メチルモルフォリン塩酸塩を濾過により除去し、DMEで洗浄し、濾液及び洗浄液を1L容のフラスコ内で合わせて、氷−塩浴内に置いた。反応混合物を撹拌しながら水素化ホウ素ナトリウム(3.39 g, 89.7 mmol)の水(20 mL, 0℃)溶液を一度に加えて強いガスを発生させ、直ちに水300mL(0℃)を添加した。5分間撹拌後、水層をAcOEtで抽出し、有機層を 飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧留去。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:hexane (1:2))により精製し、減圧下で濃縮し、アルコールを乳白黄色のオイルとして得た (12.2 g,収率96%)。
この化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3) d 27.6, 51.6, 63.4, 64.5, 66.8, 73.7, 128.1, 136.3, 156.3 ppm.
【0035】
<工程2>
ベンジル N-[(1S)-2-(t-ブトキシ)-1-ホルミルエチル]カルバメート(図2の化合物2)の合成
【化10】

?78℃、窒素雰囲気下CH2Cl2(100 mL)にオキサリルクロライド(5.56 mL, 64.9 mmol)を加え、次いでDMSO (10.1 mL, 130 mmol)を滴下し、同温で攪拌した。10分後に、工程1で得たアルコール (12.2 g, 43.3 mmol) のCH2Cl2(25 mL)溶液をジリンジを用いて10分間かけて滴下した。反応混合物を?78℃ で40分間、?45℃で40分間攪拌した後、DIEA (45.2 mL, 260 mmol)を添加した。0℃で20分間攪拌した後、混合物に飽和NH4Cl水溶液 (200 mL)を加えることにより反応停止し、CH2Cl2(300 mL)で3回抽出した。有機層を1N HCl水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:hexane (1:9?1:4))により精製し、アルデヒドを乳白黄色のオイルとして得た (9.79 g, 81%)。
この化合物の分析結果は以下の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.14 (s, 9H), 3.62 (dd, J = 3.6, 9.3 MHz, 1H), 3.95 (dd, J = 3.2, 9.3 MHz, 1H), 4.31-4.35 (m, 1H), 5.14 (s, 2H), 5.63 (d, J = 7.4 MHz, 1H), 7.33-7.38 (m, 5H), 9.62 (s, 1H).
【0036】
<工程3>
メチル2-[(1S,2S)-2-[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ-3-(t-ブトキシ)-1-ヒドロキシプロピルl]アクリレート(図2の化合物3)の合成
【化11】

アルデヒド(9.28 g, 32.3 mmol)、及び上記工程図中に示す構造を有するQD-4 (978 mg, 3.30 mmol)のDMF(75 mL)溶液 (?55℃の冷溶液)に1,1,1,3,3,3?ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート(HFIPA, 7.17 mL, 42.9 mmol)を添加した。同温度で48時間攪拌した後、反応混合物を0.1 N HCl水溶液の添加により反応を停止し、AcOEtで抽出した。有機層を飽和NaHCO3水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧留去。残渣のMeOH(100 mL)溶液 (0℃)にナトリウムメトキシド (178 mg, 3.30 mmol)のメタノール(10 mL)溶液を添加し、30分後に冷却槽を除去して、反応混合物を室温に暖めた。30分間攪拌した後、反応混合物を0.1 N HCl水の添加により反応を停止し、減圧留去。水層をCH2Cl2で抽出し、次いで有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:hexane (1:3))により精製し、メチルエステルを黄色オイルとして得た(12.1 g, 65%)。
生成物の分析結果は以下の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ1.23 (s, 9H), 3.71 (dd, J = 3.1, 9.3 Hz, 1H), 3.76 (dd, J = 2.4, 9.3 Hz, 1H), 3.78 (s, 3H), 4.06-4.13 (m, 1H), 4.86 (s, 1H), 5.06 (s, 2H), 5.93 (s, 1H), 6.97 (s, 1H), 7.26-7.34 (m, 5H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 27.4, 51.9, 65.3, 66.7, 72.1, 72.6, 74.4, 126.3, 128.1, 128.5, 136.4, 138.7, 156.3, 166.1 ppm. MS (FAB) calcd for C19H27NO6, m/z = 365. Obsd, m/z = 365.
【0037】
<工程4>
メチル 2-((1S,2S)-2-[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ-3-(tert-ブトキシ)-1-[1-(tert-ブチル)-1,1-ジメチルシリル]オキシプロピル)アクリレート(図2の化合物4)の合成
【化12】

工程3で得たメチルエステル(7.78 g, 21.29 mmol)のCH2Cl280 mL溶液を?18℃に冷却し、2,6-ルチジン (7.29 mL, 63.87 mmol)及びTBDMS-OTf (7.31 mL, 31.94 mmol)を添加した。?18℃で1.5時間攪拌した後、混合物をAcOEtで抽出した。有機層を(水、飽和KHSO4水溶液溶液および飽和食塩水)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt-ヘキサン(1:10))により精製し、目的化合物を白色固体として得た (10.25 g, 収率100%)。生成物の分析結果は以下の通りである。13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ -5.2, -4.6, 18.1, 25.9, 27.5, 51.5 and 51.8, 54.5 and 54.8, 60.9 and 61.6, 66.6, 68.3, 73.2, 126.4 and 127.0, 127.6 and 127.8, 128.1 and 128.2, 128.3 and 128.5, 136.6, 140.7, 156.3, 166.0 ppm.
【0038】
<工程5>
メチル (3R,4S)-4-[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ-5-(t-ブトキシ)-3-[1-(t-ブチル)-1,1-ジメチルシリル]オキシ-2-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)ペンタノエート(図2の化合物5)の合成
【化13】

工程4で得たメチルエステル(10.21 g, 21.28 mmol)のアセトン(50 mL)溶液を0℃に冷却し、N-メチルモルフォリン-N-オキシド (4.99 g, 42.56 mmol)のアセトニトリル (50 mL)溶液および四酸化オスミウム(500 mg, 1.97 mmol)水溶液 (25 mL)を添加後、反応溶液を室温にした。室温で12時間攪拌した後、反応混合物を0℃にまで冷却し、次いで飽和Na2S2O3 水溶液を加えて反応を停止させた。同温で30分間攪拌した後、混合物をAcOEtで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(1:3))により精製し、目的のアルコールをオイルとして得た (10.76 g, 収率98%)。生成物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ -4.8 and -4.6, -4.2, 18.3, 25.9, 27.2 and 27.5, 51.3, 52.9, 60.4, 65.4, 66.9, 71.9, 80.0, 128.1, 128.2, 128.5, 136.4, 155.9, 174.1 ppm.
【0039】
<工程6>
メチル 4-((1R,2S)-2-[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ-3-(t-ブトキシ)-1-[1-(t-ブチル)-1,1-ジメチルシリル]オキシプロピル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-カルボキシレート(図2の化合物6)の合成
【化14】

工程5で得たジオール (10.93 g, 21.93 mmol)のアセトン(30 mL)及びDMF(70 mL)溶液に、2,2-ジメトキシプロパン(52.26 mL, 425.6 mmol)及びPPTS (10.68 g, 42.55 mmol) のDMF(20 mL)溶液を添加した。室温で24時間攪拌した後、混合物を減圧下で濃縮し、CH2Cl2で抽出した。有機層を飽和NaHCO3水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:hexane (1:6))により精製し目的のアセトニド(11.71 g, 99%)を乳白黄色オイルとして得た。生成物の分析結果は以下の通りである。13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ -4.6 and -4.4, -4.3 and -4.1, 18.3 and 18.4, 25.4 and 25.7, 25.9 and 26.0, 26.4 and 26.5, 27.5 and 27.6, 50.9 and 51.3, 52.2 and 52.4, 59.9 and 60.5, 66.5 and 66.8, 68.9 and 69.4, 71.4 and 71.7, 73.3, 85.5, 111.2, 127.9 and 128.0, 128.2 and 128.4, 128.4, 136.5, 155.6, 172.2 ppm.
【0040】
<工程7>
ベンジル N-(1S,2R)-1-(t-ブトキシメチル)-2-[1-(t-ブチル)-1,1-ジメチルシリル]オキシ-2-[4-(ヒドロキシメチル)-2,2-ジメチルl-1,3-ジオキソラン-4-イル]エチルカルバメート(図2の化合物7)の合成
【化15】

工程6で得たエステル (2.24 g, 4.04 mmol)の2-メトキシエチルエーテル (100 mL) 溶液に水 (3 mL)を添加した。1時間攪拌した後、混合物を70℃まで加熱し、この溶液にLiBH4(2 M)のTHF (4 mL, 8.08 mmol)溶液を5分間かけて滴下した 。同温度で15分間攪拌した後、混合物を0℃にまで冷却し、次いで飽和NH4Cl水溶液及び1 N HCl水溶液を加えて反応を停止し、エーテルで抽出した。有機層を飽和NaHCO3水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。溶液を減圧下で蒸発させ(45℃/0.2 mmHg)、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt-hexane (1:3-2:3))により精製し目的のアルコールを無色オイルとして得た (1.60 g, 75%)。生成物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ -4.9, -3.8, 18.2, 25.9, 26.8, 27.0, 27.6, 41.8, 49.7, 61.8, 62.3, 66.8, 66.9, 72.9, 73.3, 84.4, 110.1, 128.0, 128.1, 128.5, 136.4, 156.2 ppm.
【0041】
<工程8>
N1-(1S,2R)-1-( t-ブトキシメチル)-2-[1-( t-ブチル)-1,1-ジメチルシリル] オキシ-2-[4-(ヒドロキシメチルl)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]エチルベンザミド(図2の化合物8)の合成
【化16】

工程7で得た保護基を有するアミン(1.63 g, 3.10 mmol)に対し、メタノール(50 mL)溶液中Pd(OH)2・2H2O/Cの存在下室温で水素添加を行った。10分間撹拌した後、混合物を濾過しMeOHで洗浄した。洗浄液とろ液を合わせて、濃縮した。
残渣のCH2Cl2 (25 mL)溶液にBz2O (1.33 g, 5.88 mmol)のCH2Cl2 (5 mL)溶液を添加し、室温で1.5時間攪拌した後、混合物を減圧下で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt-ヘキサン(2:3))により精製し、目的とするベンザミドを無色オイルとして得た (1.35 g, 88%)。
この化合物の分析結果は以下の通りである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ0.15 (s, 3H), 0.18 (s, 3H), 0.90 (s, 9H), 1.22 (s, 9H), 1.41 (s, 3H), 1.46 (s, 3H),, OH), 3.30 (t, J = 8.5 Hz), 3.60 (dd, J = 3.9, 8.5 Hz), 3.65 (dd, J = 11.9 Hz, 7.9 Hz, 1H, CHHOH), 3.83 (dd, J = 3.0, 11.9 Hz, 1H), 3.96 (d, J =8.7 Hz, 1H), 4.03 (d, J =8.7 Hz, 1H), 4.25 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 4.26-4.28 (m, 1H), 7.41-7.52 (m, 3H), 7.72-7.78 (m, 2H).
【0042】
<工程9>
N,N’-二置換[4-{(1R,2S)-2-アミノ-3-(t-ブトキシ)-1-[1-(t-ブチル)-1,1-ジメチルシリル]オキシ}プロピル]-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル]メチルカルバメート(図2の化合物9)の合成の一般方法
工程9では種々のR基を導入した。工程9以降の具体的条件は後述する。
【化17】

工程8で得たアルコール(1当量)のトルエン溶液にEt3N(2当量)及びイソシアネート(5当量)を添加し、10〜24時間還流した後、反応混合物をEt2Oで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt/ヘキサン)により精製し目的のカルバメートを得た。収率は、イソシアネートの種類により異なるが、後述するように87〜92%であった。
【0043】
<工程10>
N,N’-二置換(3R,4S)-4-アミノ-5-( t-ブトキシ)-3-{[1-( t-ブチル)-1,1-
ジメチルシリル]オキシ}-2-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)ペンチルカルバメート(図2の化合物10)の合成の一般方法
【化18】

工程9で得たアセトニド及びトリエチルシリル (ca. 10%)のCH2Cl2 溶液 (?15℃の冷溶液)に TFAのCH2Cl2溶液を添加した。同温度で48時間攪拌した後、反応混合物を6N NaOH水溶液の添加により反応を停止し、CH2Cl2で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)により精製し目的のジオールを得た。収率は、後述するように46〜87%であった。
【0044】
<工程11>
N,N’-二置換(3R,4S)-4-アミノ-5-(t-ブトキシ)-3-{[1-(t-ブチル)-1,1-ジメチルシリル]オキシ}-2-オキソペンチルカルバメート(図2の化合物11)の合成の一般方法
【化19】

工程10で得たジオール(1当量)のTHF溶液 (0℃の冷溶液)にNaIO4 (6当量)水溶液を添加した。同温度で6時間攪拌した後、反応混合物を室温にまで昇温させ、2時間攪拌した。混合物をAcOEtで抽出し、飽和Na2S2O3水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン)により精製し目的のケトンを得た。収率は、後述するように76〜99%であった。
【0045】
<工程12・工程13>
N1-置換[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-yl]ベンザミド(図2の化合物13(一般式(2)の化合物)及び図2の化合物14(一般式(1)の化合物))の合成の一般方法
【化20】

工程12で得たカルバメート11のTHF溶液(?18℃の冷溶液)にTHFのTBAF(1.5当量)溶液を添加した。反応混合物を同温度で1.5 hで攪拌し、次いでAcOEtで抽出した。混合物を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧留去。残渣をショートカラムに通したのち、減圧下で濃縮した。0℃に冷却したTFAを残渣に添加し、反応混合物を室温にまで昇温させた。同温度で1時間攪拌した後、混合物を減圧下で濃縮し、スピロジアステレオマーをシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン)により精製し、5R体と5S体とを分離した。収率は、後述するように51〜68%であった。
【0046】
実施例1
上記説明した工程1〜8の後に以下の工程を行った。
ベンジルN-[(5R/S,8S,9R)-1-ベンジル-9-ヒドロキシ-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]カルバメート(13a/14a)(図2の化合物13(一般式(2))及び化合物14(一般式(1))において、Rがベンゾイル基、Rがベンジルオキシカルボニル基である各化合物)の合成
【化21】

【0047】
<工程9>
工程7で得たアルコール7(1.37 g, 2.6 mmol)のCH2Cl2(40mL)溶液にEt3N (719μL, 5.2 mmol)及びベンジルイソシアネート(1.6 mL, 13 mmol)を添加した。19時間還流した後、混合物をCH2Cl2で抽出した。有機層を0.1 N HCl水溶液、飽和NaHCO3水溶液、及び飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン (1:4))により精製し目的のカルバメート9aを黄色オイルとして得た(1.59 g,収率93%)。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ -4.6, -3.7, 18.4, 26.0, 26.3, 26.5, 26.9, 27.6, 44.9, 61.7, 63.4, 66.5, 70.1, 72.5, 73.2, 83.1, 110.5, 127.2, 127.4, 127.7, 127.9, 128.4, 128.5, 136.7, 138.8, 156.3, 156.5 ppm.
【0048】
<工程10>
工程9で得た 化合物9a及びTES (0.5 mL)のCH2Cl2(7 mL)溶液 (?15℃の冷溶液)に TFA(3 mL)のCH2Cl2(3 mL)溶液(?15℃の冷溶液)を添加した。同温度で48時間攪拌した後、反応混合物に6N NaOH水溶液(9 mL)を添加し、CH2Cl2で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン(3:2))により精製し目的のジオール10aを得た(122 mg,収率81%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ-4.8, -4.0, 18.5, 26.2, 27.5, 45.0, 50.9, 61.2, 61.3, 65.0, 66.5, 73.4, 73.5, 75.9, 127.4, 127.5, 127.8, 128.1, 128.5, 128.6, 136.4, 138.2, 156.1, 157.4 ppm.
【0049】
<工程11>
工程10で得たジオール10a(93 mg, 0.15mmol)のTHF(6 mL)溶液 (0℃の冷溶液)にNaIO4(193 mg, 0.9 mmol)水溶液 (2 mL)を添加した。同温度で6時間攪拌した後、反応混合物を室温にまで昇温させ、2時間攪拌した。混合物を酢酸エチルで抽出し、飽和Na2S2O3水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(2:3))により精製し目的のケトン11aを得た(97 mg,収率96%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ-5.1, 18.0, 25.7, 27.2, 45.1, 54.4, 58.8, 66.8, 67.7, 73.6, 73.9, 74.8, 127.4, 127.5, 128.1, 128.5, 128.6, 136.3, 138.1, 155.7, 155.9, 206.0 ppm.
【0050】
<工程12・工程13>
工程11で得たケトン11a(47.1 mg, 0.080 mmol)のTHF(2 mL)溶液(?18℃の冷溶液)にTBAFのTHF 1 M溶液(120μL, 0.12 mmol)を添加した。反応混合物を同温度で1.5 時間攪拌し、次いでAcOEtで抽出した。混合物を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧留去。残渣をショートカラムに通したのち、減圧下で濃縮した。0℃に冷却したTFA(2 mL)を残渣に添加し、反応混合物を室温にまで昇温させた。同温度で1時間攪拌した後、混合物を減圧下で濃縮し、スピロジアステレオマーをシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン(3:2)により精製し、5R体(化合物13a)と5S体(化合物14a)とを分離した。化合物13aの収量は19.9 mg,収率は63%であり、化合物14aの収量は6.7 mg,収率は21%であった。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
化合物13a: 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ43.7, 55.8, 67.2, 67.4, 69.2, 74.4, 97.9, 127.0, 127.6, 128.2, 128.4, 128.6, 128.7, 137.0, 156.9, 157.9 ppm.
化合物14a: 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ46.2, 56.8, 67.6, 68.2, 72.1, 79.8, 97.2, 127.4, 127.6, 128.5, 128.7, 135.6, 137.2, 157.1, 158.3 ppm.
【0051】
実施例2
N1-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-1-メチルl-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]ベンザミドの合成 (13b/14b) (図2の化合物13(一般式(2))及び化合物14(一般式(1))において、Rがメチル基、Rがベンゾイル基である各化合物)の合成
【化22】

上記説明した工程1〜8の後に以下の工程を行った。
【0052】
<工程9>
工程8で得たアルコール8(161mg,0.33 mol)のトルエン(8ml)溶液にEt3N(90μL, 0.65 mmol)及びメチルイソシアネート(O=C=N−R:R=メチル基)(96μL, 1.62 mmol)を添加し、12時間還流した後、反応混合物をEt2Oで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン(2:3))より精製し目的のカルバメート9bを得た(172 mg,収率96%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ-4.7, 3.6, 18.5, 26.0 and 26.2, 26.9 and 27.4, 27.7, 48.6, 61.6, 63.4, 70.4, 72.8, 73.3, 82.9, 110.7, 126.4, 128.6, 131.4, 157.0, 167.0 ppm.
【0053】
<工程10>
工程9で得た 9b(171 mg, 0.31 mmol)及びTES (0.5 mL)のCH2Cl2(7 mL)溶液 (?15℃の冷溶液)に TFA(3 mL)のCH2Cl2(3 mL)溶液(?15℃の冷溶液)を添加した。同温度で48時間攪拌した後、反応混合物に6N NaOH水溶液(9 mL)を添加し、CH2Cl2で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt/hexane (3:2))により精製し目的のジオール10bを得た(114 mg,収率72%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ-4.9, 3.9, 18.6, 26.2, 27.5, 27.6, 49.6, 60.5, 61.4, 64.8, 73.4, 73.6, 75.9, 126.6, 128.7, 131.7, 134.2, 157.8, 166.5 ppm.
【0054】
<工程11>
工程10で得たジオール10b(107 mg, 0.21 mmol)のTHF(6 mL)溶液 (0℃の冷溶液)にNaIO4(268 mg, 1.25 mmol)水溶液 (2 mL)を添加した。同温度で6時間攪拌した後、反応混合物を室温にまで昇温させ、2時間攪拌した。混合物をAcOEtで抽出し、飽和Na2S2O3水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(2:3))により精製し目的のケトン11bを得た(97 mg,収率96%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ-5.3, -5.0, 18.0, 25.7, 27.2, 27.6, 53.0, 58.6, 67.7, 73.6, 74.5, 127.0, 128.5, 131.5, 134.2, 156.3, 166.7, 207.6 ppm.
【0055】
<工程12’>
本工程は、前述した工程12及び行程13の一般的方法とは異なる。
工程11で得たケトン11b(127 mg,0.26 mmol)に0℃に冷却したTFA(3 mL)を
添加した。室温で1時間撹拌した後、水(0.3 mL)を加えて12時間撹拌した。反応混合物を減圧留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(3:1-4:1))により精製し、5R体(化合物13b)と5S体(化合物14b)とを分離した。化合物13bの収量は40mg,収率は49%であり、化合物14bの収量は19mg,収率は23%であった。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
化合物13b: 1H NMR (400MHz, Acetone-d6)δ2.82 (s, 3H), 3,87 (t, J = 8.7 Hz, 1H), 4.18 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 4.24 (dd, J = 8.1, 8.7 Hz, 1H), 4.66 (dd, J = 4.0, 9.0 Hz, 1H), 4.72 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 7.47-7.49 (m, 2H), 7.54-7.57 (m, 1H), 7.90-7.92 (m, 2H). 13C NMR (100MHz, Acetone-d6)δ25.8, 56.0, 68.4, 70.6, 73.2, 98.8, 128.4, 132.9, 135.2, 159.7, 170.9 ppm.
化合物14b: 1H NMR (400MHz, Acetone-d6) δ2.99(s, 3H), 3,87 (t, J = 8.8 Hz, 1H), 4.27 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 4.24 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 4.30 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 4.42 (dd, J = 8.4, 8.8 Hz, 1H), 4.44 (s, 1H), 4.69-4.75 (m, 1H), 7.45-7.49 (m, 2H), 7.53-7.57 (m, 1H), 7.90-7.92 (m, 2H). 13C NMR (100MHz, CD3OD)δ28.3, 56.4, 69.3, 73.4, 78.2, 97.8, 128.4, 129.6, 135.2, 171.0 ppm
【0056】
実施例3
N1-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-2-オキソ-1-フェニル-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]ベンザミド (13c/14c)の合成
(図2の化合物13(一般式(2))及び化合物14(一般式(1))において、Rがフェニル基であり、Rがベンゾイル基である化合物)の合成
【化23】

上記説明した工程1〜8の後に以下の工程を行った。
【0057】
<工程9>
工程8で得たアルコール8(155 mg, 0.31 mol)のトルエン(8 ml)溶液にEt3N(87iL, 0.63 mmol)及びフェニルイソシアネート(O=C=N−R:R=フェニル基)(169iL, 1.56 mmol)を添加し、(12)時間還流した後、反応混合物をEt2Oで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt/ヘキサン(1:3))により精製し目的のカルバメート9cを得た(190 mg,収率99%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ-4.9, -4.0 and ?3.5, 25.9 and 26.0, 26.6, 26.7, 27.6 and 27.8, 48.5, 62.3, 63.1, 71.0, 73.0, 73.3, 82.3, 111.0, 118.1, 122.5, 126.6, 128.7, 128.8, 131.6, 134.7, 138.7, 153.1, 167.8 ppm.
【0058】
<工程10>
工程9で得た 9c(181 mg, 0.29 mmol)及びTES (0.5 mL)のCH2Cl2(7 mL)溶液 (?15℃の冷溶液)に TFA(3 mL)のCH2Cl2(3 mL)溶液(?15℃の冷溶液)を添加した。同温度で48時間攪拌した後、反応混合物に6N NaOH水溶液(9 mL)を添加し、CH2Cl2で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt/hexane (2:3))により精製し目的のジオール10cを得た(142 mg,収率84%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ-4.9, -4.1 and -3.9, 18.5, 26.1 and 26.2, 27.5 and 27.6, 48.6 and 49.4, 60.9, 61.4 and 61.9, 63.3 and 64.1, 64.2, 73.4, 73.6, 75.7, 118.6, 123.2, 126.7, 128.7, 128.2, 131.8, 134.0 and 134.2, 137.8, 154.0, 166.9 ppm.
【0059】
<工程11>
工程10で得たジオール10c(53 mg, 0.09 mmol)のTHF(3 mL)溶液 (0℃の冷溶液)にNaIO4(118 mg, 0.55 mmol)水溶液(1 mL)を添加した。同温度で6時間攪拌した後、反応混合物を室温にまで昇温させ、2時間攪拌した。混合物をAcOEtで抽出し、飽和Na2S2O3水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(1:2))により精製し目的のケトン11cを得た(45 mg,収率82%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ-5.2, 4.9, 25.7, 27.3, 53.0, 58.7, 67.9, 73.7, 74.6, 118.7, 123.7, 127.0, 128.6, 129.0, 131.6, 134.2, 137.5, 166.7, 207.0 ppm.
【0060】
<工程12・工程13>
工程11で得たケトン10c(30.4mg,0.056mmol)のTHF(2 mL)溶液(?18℃の冷溶液)にTBAFのTHF 1 M溶液(140μL, 0.14 mmol)を添加した。反応混合物を同温度で1.5 時間攪拌し、次いでAcOEtで抽出した。混合物を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧留去。残渣をショートカラムに通したのち、減圧下で濃縮した。0℃に冷却したTFA(2 mL)を残渣に添加し、反応混合物を室温にまで昇温させた。同温度で1時間攪拌した後、混合物を減圧下で濃縮し、スピロジアステレオマーをシリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(2:1)により精製し、5R体(化合物13c)と5S体(化合物14c)とを分離した。化合物13cの収量は10.9mg,収率は55%であり、化合物14cの収量は3.6mg,収率は18%であった。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
化合物13c: 13C NMR (100MHz, CDCl3)δ56.5, 67.5, 70.0, 75.8, 99.3, 127.1, 128.5, 128.8, 129.2, 129.5, 132.2, 132.6, 133.8, 156.7, 169.3 ppm.
化合物14c: 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ53.3, 54.5, 68.4, 71.6, 98.0, 127.0, 128.4, 128.9, 129.1, 130.1, 131.8, 133.0, 135.0, 157.4, 169.4 ppm.
【0061】
実施例4
N1-[(5R/S,8S,9R)-1-ベンジル-9-ヒドロキシ-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]ベンザミド(13d/14d)の合成
図2の化合物13(一般式(2))及び化合物14(一般式(1))において、Rがベンジル基であり、Rがベンゾイル基である化合物の合成
【化24】

上記説明した工程1〜8の後に以下の工程を行った。
【0062】
<工程9>
工程8で得たアルコール8(100 mg, 0.81 mol)のトルエン(15 ml)溶液にEt3N(223μL, 1.61 mmol)及びベンジルイソシアネート(O=C=N−R:R=ベンゾイル基)(498μL, 4.04 mmol)を添加し、12時間還流した後、反応混合物をEt2Oで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt/ヘキサン(1:3))により精製し目的のカルバメート9dを得た(559 mg,収率98%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ-4.8, -3.6. 18.4, 26.0, 26.5, 26.8, 27.6, 44.7, 48.5, 61.6, 63.4, 70.5, 72.7, 73.3, 82.7, 110.7, 126.6, 127.0, 127.3, 128.4, 128.6, 131.4, 134.7, 138.6, 156.4, 167.1, 183.9 ppm.
【0063】
<工程10>
工程9で得た9d(199 mg, 0.32 mmol)及びTES (0.5 mL)のCH2Cl2(7 mL)溶液 (?15℃の冷溶液)に TFA(3 mL)のCH2Cl2(3 mL)溶液(?15℃の冷溶液)を添加した。同温度で48時間攪拌した後、6N NaOH水溶液(9 mL)を添加し、CH2Cl2で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(2:3))により精製し目的のジオール10dを得た(135 mg,収率73%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ-5.0, -3.9, 18.5, 26.2, 27.6, 45.0, 49.4, 60.5, 61.1, 64.8, 73.4, 73.5, 75.9, 126.7, 127.2, 128.5, 128.7, 131.6, 134.1, 138.0, 157.3, 166.4 ppm.
【0064】
<工程11>
工程10で得たジオール10d(130 mg, 0.22 mmol)のTHF(6 mL)溶液 (0℃の冷溶液)にNaIO4(284 mg, 1.33 mmol)水溶液 (2 mL)を添加した。同温度で6時間攪拌した後、反応混合物を室温にまで昇温させ、2時間攪拌した。混合物をAcOEtで抽出し、飽和Na2S2O3水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(1:3))により精製し目的のケトン11dを得た(118 mg,収率91%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ-5.3, -5.0, 18.0, 25.7, 27.2, 45.2, 53.0, 58.6, 67.9, 73.6, 74.5, 127.0, 127.5, 128.5, 128.6, 131.5, 134.2, 138.1, 155.7, 166.7, 207.3 ppm.
【0065】
<工程12・工程13>
工程11で得たケトン11d(56.1 mg,0.10 mmol)のTHF(2 mL)溶液(?18℃の冷溶液)に1M TBAF のTHF溶液(220μL, 0.22 mmol)を添加した。反応混合物を同温度で1.5 時間攪拌し、次いでAcOEtで抽出した。混合物を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧留去。残渣をショートカラムに通したのち、減圧下で濃縮した。次に0℃に冷却したTFA(2 mL)を残渣に添加し、反応混合物を室温にまで昇温させた。同温度で1時間攪拌した後、混合物を減圧下で濃縮し、スピロジアステレオマーをシリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(2:1))により精製し、5R体(化合物13d)と5S体(化合物14d)とを分離した。化合物13dの収量は20.4mg,収率は55%であり、化合物14dの収量は5.1mg,収率は14%であった。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
化合物13d: 1H NMR (400MHz, CDCl3)δ3.65(dd, J = 6.8, 8.7 Hz, 1H), 4.22-4.31 (m, 2H), 4.30 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 4.98 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 7.23-7.29 (m, 1H), 7.32-7.40 (m, 6H), 7.50-7.56 (m, 3H). 13C NMR (100MHz, CDCl3)δ43.5,55.6, 67.3, 69.3, 73.6, 98.0, 126.8, 126.9, 127.1, 127.2, 127.3, 127.4, 128.4, 131.9, 133.1, 136.9, 158.3, 169.5 ppm.
化合物14d: 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ46.4, 56.9, 68.2, 72.4, 79.4, 97.3, 127.2, 127.4, 128.5, 128.7, 132.2, 137.3, 158.5, 169.7 ppm.
【0066】
実施例5
N1-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-2-オキソ-1-フェネチル-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]ベンザミド(13e/14e)の合成
図2の化合物13(一般式(2))及び化合物14(一般式(1))において、Rがフェニルエチル基であり、Rがベンゾイル基である化合物の合成
【化25】

上記説明した工程1〜8の後に以下の工程を行った。
【0067】
<工程9>
工程8で得たアルコール8(152 mg, 0.31 mmol)のトルエン(8 ml)溶液にEt3N(85 mL, 0.61 mmol)及びフェニルエチルイソシアネート(O=C=N−R:R=フェニルエチル基)(212 μL, 1.43 mmol)を添加し、12時間還流した後、反応混合物をEt2Oで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:キサン(1:3))により精製し目的のカルバメート9eを得た(180 mg,収率91%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ-4.8, -3.7, 18.4, 26.0, 26.5, 26.9, 27.6, 36.0, 42.2, 48.5, 61.5, 63.2, 70.2, 72.7, 73.3, 82.8, 110.6, 126.2, 126.6, 128.4, 128.6, 128.7, 131.4, 134.9, 138.9, 156.2, 167.0 ppm.
【0068】
<工程10>
工程9で得た9e(155 mg, 0.31mmol)及びTES (0.5 mL)のCH2Cl2(7 mL)溶液 (?15℃の冷溶液)に TFA(3 mL)のCH2Cl2(3 mL)溶液(?15℃の冷溶液)を添加した。同温度で48時間攪拌した後、6N NaOH水溶液(9 mL)を添加し、CH2Cl2で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt/ヘキサン) (2:3)により精製し目的のジオール10eを得た(126 mg,収率87%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ-4.9, -3.9, 18.5, 26.2, 27.6, 35.9, 42.3, 49.6, 60.4, 61.3, 64.7, 73.4, 73.55, 73.58, 75.9, 126.4, 126.7, 128.5, 128.6, 128.7, 131.7, 134.1, 138.5, 157.2, 166.4 ppm.
【0069】
<工程11>
工程10で得たジオール10e(120 mg, 0.12 mmol)のTHF(6 mL)溶液 (0℃の冷溶液)にNaIO4(2 mL)水溶液を添加した。同温度で6時間攪拌した後、反応混合物を室温にまで昇温させ、2時間攪拌した。混合物をAcOEtで抽出し、飽和Na2S2O3水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(2:3))により精製し目的のケトン11eを得た(113 mg,収率99%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ-5.26, -5.00, 18.0, 25.7, 27.2, 36.0, 42.3, 53.0, 58.6, 67.9, 73.6, 67.9, 73.6, 74.5, 126.5, 127.0, 128.5, 128.6, 128.8, 131.5, 134.2, 138.6, 155.6, 166.7, 207.4 ppm.
【0070】
<工程12・工程13>
工程11で得たケトン11e(55.1mg,0.096mmol)のTHF(2 mL)溶液(?18℃の冷溶液)にTBAFのTHF 1 M溶液(220μL, 0.22 mmol)を添加した。反応混合物を同温度で1.5 時間攪拌し、次いでAcOEtで抽出した。混合物を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧留去。残渣をショートカラムに通したのち、減圧下で濃縮した。次に0℃に冷却したTFA(2 mL)を残渣に添加し、反応混合物を室温にまで昇温させた。同温度で1時間攪拌した後、混合物を減圧下で濃縮し、スピロジアステレオマーをシリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(2:1))により精製し、5R体(化合物13e)と5S体(化合物14e)とを分離した。化合物13eの収量は21.2mg,収率は58%であり、化合物14eの収量は5.5mg,収率は15%である。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
化合物13e:13C NMR (100MHz,CD3OD)δ36.6, 43.3, 56.0, 68.0, 70.7, 73.9, 82.6, 99.3, 127.5, 128.4, 129.6, 129.8, 133.0, 135.2, 139.9, 159.6, 170.9 ppm.
化合物14e:13C NMR (100MHz, CDCl3)δ 35.1, 45.0, 56.8, 68.1, 72.9, 78.8, 97.6, 126.4, 127.3, 128.6, 128.7, 129.0, 132.2, 133.3, 158.2, 169.7 ppm
【0071】
実施例6
N1-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-2-オキソ-1-(3-フェニルプロピル)-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]ベンザミド (13f/14f) の合成
図2の化合物13(一般式(2))及び化合物14(一般式(1))において、Rがフェニルプロピル基であり、Rがベンゾイル基である化合物の合成
【化26】

上記説明した工程1〜8の後に以下の工程を行った。
【0072】
<工程9>
工程8で得たアルコール8(145 mg, 0.30 mmol)のトルエン(8 ml)溶液にEt3N(82 μL, 0.59 mmol)及びフェニルプロピルイソシアネート(O=C=N−R:R=フェニルプロピル基)(229μL, 1.48 mmol)を添加し、13時間還流した後、反応混合物をEt2Oで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt/ヘキサン(1:3))により精製し目的のカルバメート9fを得た(184 mg,収率95%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ-4.8, -3.6, 18.4, 26.0, 26.6, 26.9, 27.7, 31.4, 32.9, 40.3, 48.5, 61.7, 63.3, 70.5, 72.8, 73.3, 82.7, 110.7, 125.7, 126.6, 128.3, 128.4, 128.6, 131.4, 134.9, 141.7, 156.3, 167.2 ppm.
【0073】
<工程10>
工程9で得た9f(159 mg, 0.24 mmol)及びTES (0.5 mL)のCH2Cl2(7 mL)溶液 (?15℃の冷溶液)に TFA(3 mL)のCH2Cl2(3 mL)溶液(?15℃の冷溶液)を添加した。同温度で48時間攪拌した後、6N NaOH水溶液(9 mL)を添加し、CH2Cl2で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt/ヘキサン) (2:3)により精製し目的のジオール10fを得た(122 mg,収率82%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ-5.0, -3.8, 18.6, 26.2, 27.6, 31.3, 32.8, 40.5, 49.5, 60.4, 61.0, 64.4, 73.9, 73.6, 76.0, 125.8, 126.4, 128.3, 128.7, 131.7, 134.1, 141.3, 157.3, 166.4 ppm.
【0074】
<工程11>
工程10で得たジオール10f(116 mg, 0.2 mmol)のTHF(6 mL)溶液 (0℃の冷溶液)にNaIO4(241 mg, 1.13 mmol)水溶液(2 mL)を添加した。同温度で6時間攪拌した後、反応混合物を室温にまで昇温させ、2時間攪拌した。混合物をAcOEtで抽出し、飽和Na2S2O3水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(1:2))により精製し目的のケトン11fを得た(98 mg,収率89%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ-5.3, -5.0, 17.9, 25.7, 27.2, 31.4, 32.9, 40.7, 53.0, 58.6, 67.1, 70.4, 73.6, 74.5, 125.9, 127.0, 128.3, 128.5, 131.5, 134.1, 141.3, 155.6, 166.7, 207.5 ppm.
【0075】
<工程12・工程13>
工程11で得たケトン11f(53.9mg,0.092mmol)のTHF(2 mL)溶液(?18℃の冷溶液)にTBAFのTHF 1 M溶液(230μL, 0.23 mmol)を添加した。反応混合物を同温度で1.5 時間攪拌し、次いでAcOEtで抽出した。混合物を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧留去。残渣をショートカラムに通したのち、減圧下で濃縮した。次に0℃に冷却したTFA(2 mL)を残渣に添加し、反応混合物を室温にまで昇温させた。同温度で1時間攪拌した後、混合物を減圧下で濃縮し、スピロジアステレオマーをシリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(2:1))により精製し、5R体(化合物13f)と5S体(化合物8f)とを分離した。(化合物13fの収量は18.8mg,収率は52%であり、化合物14fの収量は6.6mg,収率は18%であった。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
化合物13f:13C NMR (100MHz, CDCl3)δ30.5, 32.8, 40.0, 55.7, 66.9, 74.0, 98.1, 125.8, 127.1, 128.3, 128.5, 132.1, 133.0, 141.2, 157.8, 169.5 ppm.
化合物14f:13C NMR (100MHz, CDCl3)δ30.1, 33.1, 42.4, 57.2, 67.6, 72.3, 80.0, 98.0, 125.9, 127.1, 128.4, 128.5, 128.8, 132.4, 132.7, 141.5, 157.9, 169.8 ppm
【0076】
実施例7
N1-[(5R/S,8S,9R)-1-ブチル-9-ヒドロキシ-2-オキソ-3,6-dジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]ベンザミド(13g/14g)の合成
図2の化合物13(一般式(2))及び化合物14(一般式(1))において、Rがnブチル基であり、Rがベンゾイル基である化合物の合成
【化27】

上記説明した工程1〜8の後に以下の工程を行った。
【0077】
<工程9>
工程8で得たアルコール8(154 mg, 0.31 mmol)のトルエン(8 ml)溶液にEt3N(86μL、0.62 mmol)及びブチルイソシアネート(O=C=N−R:R=ブチル基)(173μL, 1.55 mmol)を添加し、15時間還流した後、反応混合物をEt2Oで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(1:3))により精製し目的のカルバメート9gを得た(173 mg,収率97%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ-4.8, -3.7, 13.7, 18.4, 19.8, 26.0, 26.6, 26.9, 27.6, 31.7, 40.3, 40.5, 48.5, 61.6, 63.2, 70.4, 73.3, 82.8, 110.7, 126.6, 128.6, 131.4, 134.9, 156.3, 167.0 ppm.
【0078】
<工程10>
工程9で得た9g(154 mg, 0.26 mmol)及びTES (0.5 mL)のCH2Cl2(7 mL)溶液 (?15℃の冷溶液)に TFA(3 mL)のCH2Cl2(3 mL)溶液(?15℃の冷溶液)を添加した。同温度で48時間攪拌した後、6N NaOH水溶液(9 mL)を添加し、CH2Cl2で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt/ヘキサン) (2:3)により精製し目的のジオール10gを得た(111 mg,収率77%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ-5.1, -3.8, 13.6, 18.5, 19.7, 26.2, 27.6, 31.7, 40.7, 49.6, 60.4, 61.0, 64.4, 73.5, 73.6, 76.0, 126.7, 128.7, 131.7, 134.1, 157.3, 166.3 ppm.
【0079】
<工程11>
工程10で得たジオール10g(105 mg, 0.19 mmol)のTHF(6 mL)溶液 (0℃の冷溶液)にNaIO4(256 mg, 1.19 mmol)水溶液(2 mL)を添加した。同温度で6時間攪拌した後、反応混合物を室温にまで昇温させ、2時間攪拌した。混合物をAcOEtで抽出し、飽和Na2S2O3水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(2:3))により精製し目的のケトン11gを得た(113 mg,収率99%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ-5.3, -5.0, 13.7, 17.9, 19.8, 25.7, 27.2, 31.9, 40.9, 53.0, 58.6, 67.7, 73.6, 74.5, 127.0, 128.5, 131.5, 134.2, 155.6, 166.7, 207.6 ppm.
【0080】
<工程12・工程13>
工程12で得たケトン11g(36.2mg,0.069mmol)のTHF(2 mL)溶液(?18℃の冷溶液)にTBAFのTHF 1 M溶液(173μL, 0.17 mmol)を添加した。反応混合物を同温度で1.5 時間攪拌し、次いでAcOEtで抽出した。混合物を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧留去。残渣をショートカラムに通したのち、減圧下で濃縮した。次に0℃に冷却したTFA(2 mL)を残渣に添加し、反応混合物を室温にまで昇温させた。同温度で1時間攪拌した後、混合物を減圧下で濃縮し、スピロジアステレオマーをシリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(2:1))により精製し、5R体(化合物13g)と5S体(化合物14g)とを分離した。化合物13gの収量は12.4mg,収率は54%であり、化合物14gの収量は3.2mg,収率は14%であった。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
化合物13g:13C NMR (100MHz, CDCl3)δ13.6, 20.0, 31.3, 40.6, 56.1, 66.9, 69.1, 74.4, 98.3, 127.1, 128.6, 132.2, 133.0, 157.9, 169.6 ppm.
化合物14g: 13C NMR (100MHz, CDCl3)δ13.8, 20.3, 30.9, 43.1, 57.4, 67.7, 72.3, 80.1, 97.9, 127.1, 128.8, 132.4, 132.7, 157.9, 169.8 ppm
【0081】
実施例8
N1-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-1-(2-ナフチル)-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]ベンザミド(13h/14h)の合成
(図2の化合物13(一般式(2))及び化合物14(一般式(1))において、Rが2−ナフチル基であり、Rがベンゾイル基である化合物)の合成
【化28】

上記説明した工程1〜8の後に以下の工程を行った。
【0082】
<工程9>
工程8で得たアルコール8(152 mg, 0.31 mmol)のトルエン(8 ml)溶液にEt3N(85 μL, 0.61 mmol)及び2-ナフチルイソシアネート(O=C=N−R:R=ナフチル基)(259 mg, 1.53 mmol)を添加し、10時間還流した後、反応混合物をEt2Oで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(1:3))により精製し目的のカルバメート9hを得た(186 mg,収率92%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ-4.9, 4.0 and ?3.5, 18.4 and 18.5, 26.0 and 26.1, 26.6, 27.5 and 27.6, 48.5 and 49.4, 61.4 and 62.4, 61.8 and 63.3, 67.9 and 71.1, 73.1, 73.4, 82.3 and 83.5, 110.5 and 111.1, 113.6, 118.9 and 119.1, 124.1, 126.1, 126.6, 127.4, 127.5, 128.5, 128.6 and 128.7, 128.5, 128.6 and 128.7, 129.8, 131.6, 134.0, 134.7, 136.3, 153.2, 168.0 ppm.
【0083】
<工程10>
工程9で得た9h(189 mg, 0.28 mmol)及びTES (0.5 mL)のCH2Cl2(7 mL)溶液 (?15℃の冷溶液)に TFA(3 mL)のCH2Cl2(3 mL)溶液(?15℃の冷溶液)を添加した。同温度で48時間攪拌した後、6N NaOH水溶液(9 mL)を添加し、CH2Cl2で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt/ヘキサン) (2:3)により精製し目的のジオール10hを得た(118 mg,収率76%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ- 4.9, -3.9, 18.5, 26.2, 27.6, 49.4, 60.9, 61.4, 64.1, 73.5, 73.6, 75.8, 114.8, 119.2, 124.5, 126.3, 126.7, 127.4, 127.5, 128.6, 128.8, 130.1, 131.8, 133.8, 134.0, 135.3, 154.1, 167.1 ppm.
【0084】
<工程11>
工程10で得たジオール10h(101 mg, 0.16 mmol)のTHF(6 mL)溶液 (0℃の冷溶液)にNaIO4(207 mg, 0.97mmol)水溶液(2 mL)を添加した。同温度で6時間攪拌した後、反応混合物を室温にまで昇温させ、2時間攪拌した。混合物をAcOEtで抽出し、飽和Na2S2O3水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(1:2))により精製し目的のケトン11hを得た(73 mg,収率76%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ-5.2, -4.9, 18.0, 25.7, 27.3, 53.0, 58.7, 68.0, 73.8, 74.6, 114.9, 119.0, 124.7, 126.5, 127.0, 127.5, 128.6, 128.8, 130.3, 11.6, 133.8, 134.1, 135.0, 152.7, 166.7, 207.0 ppm.
【0085】
<工程12・工程13>
工程11で得たケトン11h(33mg,0.053mmol)のTHF(2 mL)溶液(?18℃の冷溶液)にTBAFのTHF 1 M溶液(120μL, 0.12 mmol)を添加した。反応混合物を同温度で1.5 時間攪拌し、次いでAcOEtで抽出した。混合物を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧留去。残渣をショートカラムに通したのち、減圧下で濃縮した。次に0℃に冷却したTFA(2 mL)を残渣に添加し、反応混合物を室温にまで昇温させた。同温度で1時間攪拌した後、混合物を減圧下で濃縮し、スピロジアステレオマーをシリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(2:1))により精製し、5R体(化合物13h)と5S体(化合物14h)とを分離した。化合物13hの収量は12.4mg,収率は58%であり、化合物14hの収量は2.2mg,収率は11%であった。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
化合物13h:13C NMR (100 MHz, acetone-d6) δ55.1, 67.7, 70.5, 73.9, 99.3, 127.4, 127.5, 128.0, 128.5, 128.9, 129.0, 129.6, 132.2, 133.2, 133.5, 134.4, 134.9, 156.5, 168.3 ppm.
化合物14h: 13C NMR (100 MHz, DMF-d7) δ12.6, 19.1, 23.1, 54.2, 57.8, 69.2, 71.5, 76.1, 96.9, 126.0, 126.3, 127.1, 127.3, 127.6, 127.8, 128.0, 128.8, 130.6, 132.5, 133.0, 133.7, 133.9, 156.4, 166.5 ppm.
【0086】
実施例9
N1-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-1-(2-ネフチルメチル)-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]ベンザミド (13i/14i)の合成
図2の化合物13(一般式(2))及び化合物14(一般式(1))において、Rが2−ナフチルメチル基であり、Rがベンゾイル基である化合物の合成
【化29】

上記説明した工程1〜8の後に以下の工程を行った。
【0087】
<工程9>
工程8で得たアルコール8(219 mg, 0.44 mmol)のトルエン(8 ml)溶液にEt3N(404 μL, 2.21 mmol)及び2-ナフチルメチルイソシアネート(O=C=N−R:R=ナフチルメチル基)(404 mg, 2.21 mmol)を添加し、10時間還流した後、反応混合物をEt2Oで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(1:3)により精製し目的のカルバメート9iを得た(298 mg,収率99%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ-4.8, -3.6, 18.4, 26.0, 26.6, 26.8, 27.6, 44.9, 48.5, 61.7, 63.4, 70.6, 72.8, 73.3, 82.7, 110.8, 125.6, 125.7, 125.9, 126.6, 127.6, 127.8, 128.1, 128.5, 131.4, 132.6, 133.3, 134.7, 136.2, 156.5, 167.2 ppm.
なお、2-ナフチルメチルイソシアネートの分析結果は以下の通りである。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 4.67 (s, 2H), 7.41 (dm, J = 8.5 Hz, 1H), 7.48-7.54 (m, 2H), 7.78 (br-s, 1H), 7.84-7.88 (m, 3H). IR: v 2253 cm-1 (NCO).
なお、Ref. Kurita, K.; Matsumura, T.; Iwakura, Y. J. Org. Chem., 1976, 41, 2070.には、フェニルイソシアネートの合成法が記載されており、これを参考に2-ナフチルメチルイソシアネートを合成した。
【0088】
<工程10>
工程9で得た9i(226 mg, 0.33 mmol)及びTES (0.5 mL)のCH2Cl2(7 mL)溶液 (?15℃の冷溶液)に TFA(3 mL)のCH2Cl2(3 mL)溶液(?15℃の冷溶液)を添加した。同温度で48時間攪拌した後、6N NaOH水溶液(9 mL)を添加し、CH2Cl2で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt/ヘキサン) (2:1)により精製し目的のジオール10iを得た(168 mg,収率74%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ-5.0, -3.8, 18.5, 26.2, 27.6, 45.2, 49.4, 60.5, 61.1, 64.7, 73.5, 73.6, 76.0, 125.5, 125.7, 126.0, 126.5, 127.6, 127.8, 128.4, 128.6, 131.6, 132.7, 133.2, 133.9, 135.5, 157.5, 166.4 ppm.
【0089】
<工程11>
工程10で得たジオール10i(160 mg, 0.25 mmol)のTHF(6 mL)溶液 (0℃の冷溶液)にNaIO4(321 mg, 1.5 mmol)水溶液(2 mL)を添加した。同温度で6時間攪拌した後、反応混合物を室温にまで昇温させ、2時間攪拌した。混合物をAcOEtで抽出し、飽和Na2S2O3水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(1:3))により精製し目的のケトン11iを得た(150 mg,収率99%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ-5.2, 5.0, 18.0, 25.7, 27.3, 45.3, 53.0, 58.7, 68.0, 73.7, 74.5, 125.6, 125.9, 126.0, 126.2, 127.0, 127.6, 127.7, 128.5, 128.6, 131.6, 132.7, 133.3, 134.2, 135.5, 155.8, 166.7, 207.4 ppm.
【0090】
<工程12>
工程11で得たケトン11i(100mg,0.17mmol)のTHF(2 mL)溶液(?18℃の冷溶液)にTBAFのTHF 1 M溶液(363μL, 0.36 mmol)を添加した。反応混合物を同温度で1.5 時間攪拌し、次いでAcOEtで抽出した。混合物を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧留去。残渣をショートカラムに通したのち、減圧下で濃縮した。次に0℃に冷却したTFA(2 mL)を残渣に添加し、反応混合物を室温にまで昇温させた。同温度で1時間攪拌した後、混合物を減圧下で濃縮し、スピロジアステレオマーをシリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(2:1))により精製し、5R体(化合物13i)と5S体(化合物14i)とを分離した。化合物7iの収量は42.1mg,収率は61%であり、化合物8iの収量は10.9mg,収率は16%であった。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
化合物13i:13C NMR (100MHz, CDCl3)δ43.8, 56.1, 69.5, 74.2, 98.2, 124.9, 125.4, 125.9, 126.2, 127.1, 127.5, 127.7, 128.3, 128.5, 132.0, 132.6, 132.9, 133.1, 134.4, 158.3, 169.3 ppm.
化合物14i: 13C NMR (100MHz, CDCl3)δ46.4, 56.5, 68.1, 72.4, 78.9, 97.0, 125.5, 125.8, 125.9, 126.0, 127.1, 128.1, 128.5, 132.0, 132.6, 133.1, 134.8, 158.6, 170.0 ppm.
【0091】
実施例10
N1-[(5R/S,8S,9R)-1-(シクロヘキシルメチル)-9-ヒドロキシ-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]ベンザミド (13j/14j)の合成
図2の化合物13(一般式(2))及び化合物14(一般式(1))において、Rがシクロヘキサンメチル基であり、Rがベンゾイル基である化合物の合成
【化30】

上記説明した工程1〜8の後に以下の工程を行った。
【0092】
<工程9>
工程8で得たアルコール8(210 mg, 0.42 mmol)のトルエン(8 ml)溶液にEt3N(117μL, 0.85 mmol)及びシクロヘキシルメチルイソシアネート(O=C=N−R:R=シクロヘキシルメチル基)(371μL, 2.17 mmol)を添加し、(24)時間還流した後、反応混合物をEt2Oで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(1:3))により精製し目的のカルバメート9jを得た(258 mg,収率96%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ-4.8, -3.6, 18.4, 25.8, 26.0, 26.4, 26.6, 26.9, 27.6, 30.5, 30.9, 38.0, 47.1, 48.5, 61.6, 63.1, 70.5, 72.7, 73.3, 82.7, 110.7, 126.7, 128.6, 131.4, 134.8, 156.5, 167.1 ppm.
【0093】
<工程10>
工程9で得た9j(231 mg, 0.36 mmol)及びTES (0.5 mL)のCH2Cl2(7 mL)溶液 (?15℃の冷溶液)に TFA(3 mL)のCH2Cl2(3 mL)溶液(?15℃の冷溶液)を添加した。同温度で48時間攪拌した後、6N NaOH水溶液(9 mL)を添加し、CH2Cl2で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt/ヘキサン) (2:3)により精製し目的のジオール10jを得た(186 mg,収率86%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ-5.1, -3.7, 18.6, 25.6, 25.7, 26.3, 27.6, 30.5, 38.0, 47.4, 49.5, 60.4, 60.9, 64.4, 73.5, 73.7, 76.1, 126.7, 128.7, 131.7, 134.1, 157.5, 166.3 ppm.
【0094】
<工程11>
工程10で得たジオール10j(178 mg, 0.30 mmol)のTHF(6 mL)溶液 (0℃の冷溶液)にNaIO4(384 mg, 1.79 mmol)水溶液(2 mL)を添加した。同温度で6時間攪拌した後、反応混合物を室温にまで昇温させ、2時間攪拌した。混合物をAcOEtで抽出し、飽和Na2S2O3水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(2:3))により精製し目的のケトン11jを得た(165 mg,収率98%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ-5.3, -5.0, 18.0, 25.7, 26.3, 27.2, 30.6, 38.1, 47.4, 53.0, 58.7, 67.7, 73.6, 74.5, 127.0, 128.5, 131.5, 134.2, 155.8, 166.7, 207.6 ppm.
【0095】
<工程12・工程13>
工程11で得たケトン11j(100mg,0.18mmol)のTHF(2 mL)溶液(?18℃の冷溶液)にTBAFのTHF 1 M溶液(391μL, 0.39 mmol)を添加した。反応混合物を同温度で1.5 時間攪拌し、次いでAcOEtで抽出した。混合物を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧留去。残渣をショートカラムに通したのち、減圧下で濃縮した。次に0℃に冷却したTFA(2 mL)を残渣に添加し、反応混合物を室温にまで昇温させた。同温度で1時間攪拌した後、混合物を減圧下で濃縮し、スピロジアステレオマーをシリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(2:1))により精製し、5R体(化合物13j)と5S体(化合物14j)とを分離した。化合物13jの収量は80mg,収率は51%であり、化合物14jの収量は6.3mg,収率は13%であった。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
化合物13j:13C NMR (100MHz, CDCl3)δ25.7, 26.3, 30.7, 30.8, 37.1, 49.9, 56.3, 66.8, 69.0, 74.5, 98.3, 127.3, 128.7, 132.3, 132.8, 158.4, 169.8 ppm.
化合物14j:13C NMR (100MHz, CDCl3) δ25.9, 26.4, 30.8, 31.1, 37.1, 49.4, 56.8, 67.4, 68.1, 72.4, 80.0, 97.4, 127.2, 127.3, 128.7, 132.3, 132.8, 158.3, 169.7 ppm.
【0096】
実施例11
ベンジルN-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]カルバメート (13k/14k)の合成
図2の化合物13(一般式(2))及び化合物14(一般式(1))において、Rがメチル基であり、Rがベンジルオキシカルボニル基である化合物の合成
【化31】

上記説明した工程1〜8の後に以下の工程を行った。
【0097】
<工程9>
工程7で得たアルコール7(2.95 g, 5.6 mmol)のトルエン(160 ml)溶液にEt3N(1.55 mL, 11.2 mmol)及びメチルイソシアネート(O=C=N−R:R=メチル基)(2.19 mL, 28.0 mmol)を添加し、12時間還流した後、反応混合物をEt2Oで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(1:3))により精製し目的のカルバメート9kを得た(3.13 g,収率96%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ -4.6, -3.8, 26.0 and 26.1, 26.5, 26.8, 27.4, 27.6, 49.9, 61.6, 63.2, 66.5, 69.9, 72.4, 73.2, 83.1, 110.3, 127.6, 127.7, 127.9, 128.4, 136.7, 156.2, 157.0 ppm.
【0098】
<工程10>
工程9で得た9i(1.41 g, 2.42 mmol)のCH2Cl2(70 mL)溶液 (?15℃の冷溶液)に TFA(15 mL)のCH2Cl2(30 mL)溶液(?15℃の冷溶液)を添加した。同温度で48時間攪拌した後、0℃に冷却した6N NaOH水溶液(60 mL)が入った500 mLのナスフラスコに反応溶液を注ぎ込み、3分間撹拌した。CH2Cl2で抽出し、有機層を0.1 NHCl水溶液、飽和食塩水で洗い、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt/ヘキサン) (2:3)により精製し目的のジオール10kを得た(1.02 g,収率78%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ-4.86, -4.03, 18.5, 26.2, 27.4, 27.5, 50.9, 61.2, 64.8, 66.6, 73.3, 73.4, 75.9, 76.6, 127.7, 128.1, 128.6, 136.5, 156.1, 157.9 ppm.
【0099】
<工程11>
工程10で得たジオール10k(519 mg, 0.96 mmol)のTHF(24 mL)溶液 (0℃の冷溶液)にNaIO4(1.23 g, 5.73 mmol)水溶液(8 mL)を添加した。同温度で6時間攪拌した後、反応混合物を室温にまで昇温させ、2時間攪拌した。混合物をAcOEtで抽出し、飽和Na2S2O3水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(1:2))により精製し目的のケトン11kを得た(468 mg,収率96%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ -5.3, 17.9, 25.6, 27.1, 27.5, 54.2, 58.7, 66.7, 67.4, 73.4, 74.7, 127.9, 128.0, 136.2, 155.8, 156.2, 206.2 ppm.
【0100】
<工程12>
工程11で得たケトン11k(1.11 g,2.17 mmol)のTHF(100 mL)溶液(?18℃の冷溶液)にTBAFのTHF 1 M溶液(3.26 mL, 3.26 mmol)を添加した。反応混合物を同温度で1.5 時間攪拌し、次いでAcOEtで抽出した。混合物を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧留去。残渣をショートカラムに通したのち、減圧下で濃縮した。次に0℃に冷却したTFA(40 mL)を残渣に添加し、反応混合物を室温にまで昇温させた。同温度で1時間攪拌した後、混合物を減圧下で濃縮し、スピロジアステレオマーをシリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(3:2))により精製し、5R体(化合物13k)と5S体(化合物14k)とを分離した。化合物13kの収量は347mg,収率は53%であり、化合物14kの収量は225mg,収率は34%であった。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
化合物13k:13C NMR (100MHz, CDCl3)δ29.2, 55.8, 67.3, 67.7, 69.3, 73.4, 128.1, 128.3, 128.5, 135.8, 156.9, 157.8 ppm.
化合物14k:13C NMR (100MHz, CDCl3)δ28.0, 56.5, 67.5, 68.6, 72.0, 79.2, 96.8, 128.2, 128.5, 128.6, 135.7, 157.1, 158.0 ppm
【0101】
実施例12
ベンジルN-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-1(4-メトキシベンジル)-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]カルバメート (13l/14l)
図2の化合物13(一般式(2))及び化合物14(一般式(1))において、Rがパラメトキシベンジル基であり、Rがベンジルオキシカルボニル基である化合物の合成
【化32】

上記説明した工程1〜8の後に以下の工程を行った。
【0102】
<工程9>
工程8で得たアルコール7(150 mg, 0.29 mmol)のトルエン(8 ml)溶液にEt3N(79μL, 0.57 mmol)及び4-メトキシベンジルイソシアネート(O=C=N−R:R=メトキシベンジル基)(204μL, 1.43 mmol)を添加し、12時間還流した後、反応混合物をEt2Oで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(1:3))により精製し目的のカルバメート9lを得た(187 mg,収率95%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ -4.6, -3.7, 18.4, 26.1, 26.6, 26.9, 27.5, 27.6, 44.4, 49.9, 55.2, 61.7, 63.3, 66.4, 70.0, 72.5, 73.2, 83.0, 110.5, 113.9, 127.7, 127.9, 128.4, 128.8, 130.9, 136.7, 156.2, 156.4, 158.8 ppm.
【0103】
<工程10>
工程9で得た9l(200 mg, 0.29 mmol)及びTES (1 mL)のCH2Cl2(14 mL)溶液 (?15℃の冷溶液)に TFA(6 mL)のCH2Cl2(6 mL)溶液(?15℃の冷溶液)を添加した。同温度で48時間攪拌した後、6N NaOH水溶液(9 mL)を添加し、CH2Cl2で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt/ヘキサン) (1:2)により精製し目的のジオール10lを得た(86 mg,収率46%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ-4.9, -4.0, 18.5, 26.2, 27.5, 44.5, 50.8, 55.2, 61.2, 61.3, 64.9, 66.6, 73.4, 75.9, 114.0, 127.8, 128.0, 128.8, 130.3, 136.4, 156.1, 157.4, 159.0 ppm.
【0104】
<工程11>
工程10で得たジオール10l(38 mg, 0.06 mmol)のTHF(3 mL)溶液 (0℃の冷溶液)にNaIO4(75 mg, 0.35 mmol)水溶液(1 mL)を添加した。同温度で6時間攪拌した後、反応混合物を室温にまで昇温させ、2時間攪拌した。混合物をAcOEtで抽出し、飽和Na2S2O3水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(1:2))により精製し目的のケトン11lを得た(38 mg,収率94%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (600 MHz, CDCl3)δ-5.1, 18.0, 25.7, 27.3, 31.0, 44.7, 54.4, 55.3, 58.9, 66.9, 67.6, 73.6, 74.9, 114.1, 128.1, 128.5, 128.9, 130.3, 136.4, 155.7, 156.0, 159.0, 206.1 ppm.
【0105】
<工程12>
工程11で得たケトン11l(106 mg, 0.17 mmol)のTHF(10 mL)溶液(?18℃の冷溶液)にTBAFのTHF 1 M溶液(258μL, 0.26 mmol)を添加した。反応混合物を同温度で3 時間攪拌し、次いでAcOEtで抽出した。混合物を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧留去。残渣をショートカラムに通したのち、減圧下で濃縮した。次に0℃に冷却したTFA(2 mL)を残渣に添加し、反応混合物を室温にまで昇温させた。同温度で1時間攪拌した後、混合物を減圧下で濃縮し、スピロジアステレオマーをシリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(3:2))により精製し、5R体(化合物 13l)と5S体(化合物14l)とを分離した。化合物13lの収量は49 mg,収率は69%であり、化合物14lの収量は14 mg,収率は20%であった。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
化合物 13l : 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ43.2, 55.2, 55.7, 67.2, 67.4, 69.2, 74.3, 97.9, 114.0, 114.1, 128.2, 128.4, 128.5, 128.6, 129.0, 135.6, 156.9, 157.9, 159.0 ppm.
化合物14l: 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ47.6, 55.3, 56.7, 67.5, 68.3, 72.2, 79.6, 97.1, 114.1, 128.2, 128.5, 128.7, 128.8, 129.2, 135.7, 157.0, 158.4, 159.0 ppm.
【0106】
実施例13
フェニル N-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-
アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]カルバメートの合成
図2の化合物13(一般式(2))及び化合物14(一般式(1))において、Rが水素原子であり、Rがベンジルオキシカルボニル基である化合物の合成
【化33】

実施例12で得られた13l (14.3 mg, 0.033 mmol) のCH3CN (0.5mL)/水(0.25 mL)溶液にセリウム (IV) アンモニウムニトライト(CAN) (4.5 mg, 0.084 mmol)を添加した。室温で10時間攪拌した後、CAN (4.5 mg, 0.084 mmol) を混合物に再度添加して同温度で5時間攪拌し、次いで飽和NaHCO3の添加により反応を停止した。混合物をAcOEtで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。スピロシアステレオマーの混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:ヘキサン(3:2-3:1))により精製し化合物13m (2.4 mg, 24%) 及び14m (3.0 mg, 29%)をそれぞれ無色オイルとして得た。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
化合物(13m): 13C NMR (600 MHz, acetone-d6)δ58.5, 66.9, 68.9, 71.5, 79.1, 96.8, 128.7, 129.2, 138.0, 157.1, 158.1 ppm.
化合物(14m): 13C NMR (600 MHz, acetone-d6)δ57.2, 66.8, 68.7, 73.3, 77.0, 79.0, 79.1, 95.6, 128.7, 129.2, 138.0, 157.2, 158.0 ppm.
【0107】
実施例14
(5R/S,8S,9R)-8-アミノ-9-ヒドロキシ-1-メチル-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]
ノナン-2-オン(15/17)の合成
図3の化合物15(一般式(2))及び化合物17(一般式(1))の合成
【化34】

以下、図3を参照して説明する。
実施例11で得た、ベンジルN-[(5R,8S,9R)-9-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]カルバメート13k (49.8 mg, 0.16 mmol) に対し、メタノール(50 mL)溶液中Pd(OH)2・2H2O/Cの存在下室温で水素添加を行った。40分後、混合物を濾過しMeOHで洗浄した。洗浄液とろ液を合わせて、濃縮し、白色固体として化合物15を得た(27.8 mg,収率 96%)。
また、実施例11で得た、ベンジルN-[(5S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]カルバメート14k (51.0mg, 0.16 mmol)から同様に白色固体として化合物17を得た(30.1 mg,収率100%)。
得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
化合物15:13C NMR (100MHz, CD3OD)δ25.7, 56.3, 70.6, 70.8, 75.9, 98.8, 159.7 ppm.
化合物17:13C NMR (100MHz, CD3OD)δ28.2, 56.9, 71.5, 73.6, 81.4, 98.1, 160.1 ppm.
【0108】
実施例15
N-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]フォルムアミド (16a/18a)の合成
図3の化合物16(一般式(2))及び化合物18(一般式(1))においてRがホルミル基である化合物の合成
【化35】

実施例14で得た化合物15(14.3 mg, 0.076 mmol) のTHF (1.5 mL)/アセトン(0.5 mL)溶液(0℃の冷溶液)にペンタフルオロフェニルフォルメート (30μM, 0.15 mmol)を添加した。反応混合物を同温度で2時間攪拌した後、少量のシリカゲル(basic, ca. 200 mg)を添加し、減圧留去した。得られた粉末をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(アセトン/ヘキサン (10:3)により精製し、目的とするフォルムアミド16a (13.4 mg, 収率82%)を白色固体として得た。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100MHz, CD3OD)δ25.6, 25.8, 54.3, 57.4, 67.9, 68.4, 70.5, 73.3, 73.5, 98.8, 159.7, 164.2, 166.9 ppm
また、同様にして17 (16.4 mg, 0.087 mmol)から、化合物18a (15.6 mg)を無色オイルとして収率83%で得た。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100MHz, CD3OD)δ28.1, 28.3, 29.5, 68.5, 69.2, 73.2, 73.4, 78.5, 78.6, 97.7, 160.0, 164.3, 170.0 ppm
【0109】
実施例16
N1-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ
[4.4]ノン-8-イル]アセタミド (16b/18b)の合成
図3の化合物16(一般式(2))及び化合物18(一般式(1))においてRがアセチル基である化合物の合成
【化36】

化合物15 (13.9 mg, 0.074 mmol) のTHF (1.5 mL)/MeOH (0.5 mL) 溶液(0℃の冷溶液)にAc2O (7.7μM, 0.081 mmol)を添加した。反応混合物を同温度で1時間攪拌した後、少量のシリカゲル (basic, ca. 200 mg)を混合物に添加し、減圧留去し、得られた粉末をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(アセトン/ヘキサン(10:3))により精製し、目的のアセタミド16b (15.4 mg, 91%)をオイルとして得た。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100MHz, CD3OD)δ22.5, 25.8, 55.6, 68.6, 70.6, 73.5, 98.8, 159.7, 174.0 ppm.
化合物17 (16.5 mg, 0.088 mmol)から、同様にして化合物18b (18.6 mg)をオイルとして収率92%で得た。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100MHz, CD3OD) δ22.5, 28.3, 55.9, 69.4, 73.4, 78.5, 97.7, 160.0, 174.0 ppm.
【0110】
実施例17
N1-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]-2-フェニルアセタミド(16c/18c)の合成
図3の化合物16(一般式(2))及び化合物18(一般式(1))においてRがフェニルメチルカルボニル基である化合物の合成
【化37】

化合物15 (4.5 mg, 0.024 mmol)(1当量)のTHF (1.5 mL)溶液(0℃の冷溶液)にEt3N (6.8μL, 0.05 mmol) 及びフェニルアセチルクロライド (6.3μL, 0.05 mmol) を添加した。反応混合物を同温度で1時間攪拌した後、少量のシリカゲル(ca. 200 mg)を添加し、減圧留去し、得られた粉末をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (AcOEt) により精製し、化合物16c (5.4 mg)を白色固体として得た(収率74%)。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100MHz, CD3OD)δ28.3, 43.7, 55.9, 68.6, 73.6, 78.5, 99.0, 128.0, 130.1, 136.6, 159.7, 174.7 ppm.
同様にして、化合物17 (6.7 mg, 0.036 mmol)から化合物18c (7.7 mg)を収率70%で白色固体として得た。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100MHz, acetone-d6)δ28.1, 43.3, 56.5, 68.9, 72.4, 78.9, 97.2, 127.4, 129.1, 130.0, 136.7, 157.9, 172.7 ppm.
【0111】
実施例18
N1-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]-3-フェニルプロパンアミド(16d/18d)の合成
図3の化合物16(一般式(2))及び化合物18(一般式(1))においてRがフェニルエチルカルボニル基である化合物の合成
【化38】

化合物9a (5.5 mg, 0.029 mmol) のTHF (1.5 mL)溶液(0℃の冷溶液)にEt3N (2当量)及びハイドロシンナモイルクロライド (8.7μL, 0.059 mmol)を添加した。反応混合物を同温度で1時間攪拌した後、少量のシリカゲル(ca. 200 mg)を添加し、反応溶液を濃縮して得られた粉末をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt)により精製し、化合物16d (7.2 mg)を白色固体として得た(収率77%)。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100MHz, acetone-d6)δ25.6, 32.1, 38.2, 55.9, 68.1, 69.5, 74.0, 79.0, 98.3, 126.8, 129.1, 129.2, 142.2, 157.6, 173.8 ppm.
同様にして、化合物17 (6.4 mg, 0.034 mmol)から化合物18d (7.9 mg)を白色固体として収率72%で得た。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100MHz, acetone-d6)δ28.1, 32.1, 38.2, 56.4, 69.0, 72.4, 79.0, 97.3, 126.8, 129.1, 129.2, 142.1, 157.9, 174.0 ppm.
【0112】
実施例19
フェニルN-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1- アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]カルバメート(16e/18e)の合成
図3の化合物16(一般式(2))及び化合物18(一般式(1))においてRがフェニルオキシカルボニル基である化合物の合成
【化39】

化合物15 (6.8 mg, 0.036 mmol)のTHF (1.5 mL)溶液(0℃の冷溶液)にEt3N (10 μL, 0.072 mmol)及びフェニルクロロフォルメート (9μL, 0.072 mmol)を添加した。反応混合物を同温度で2時間攪拌した後、少量のシリカゲル (ca. 200 mg)を添加し、反応溶液を濃縮して得られた粉末をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (AcOEt/ヘキサン(3:1))により精製し、化合物16e(9.3 mg)を白色固体として得た(収率85%)。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100MHz, CDCl3)δ25.6, 56.3, 67.5, 69.2, 73.6, 97.8, 121.5, 126.0, 129.5, 150.4, 155.4, 157.3 ppm.
同様にして、化合物17 (7.7 mg, 0.041 mmol)から化合物18e (9.0 mg)を白色固体として収率71%で得た。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100MHz, CDCl3)δ28.1, 56.8, 68.4, 72.1, 79.1, 96.9, 121.4, 126.0, 129.5, 150.4, 155.6, 158.0 ppm.
【0113】
実施例20
シクロヘキシルメチルN-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-3,6-ジオキサ-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]カルバメート(16f/18f)の合成
図3の化合物16(一般式(2))及び化合物18(一般式(1))においてRがシクロヘキシルメチルオキシカルボニル基である化合物の合成
【化40】

化合物15 (6.5 mg, 0.035 mmol)(1当量)のTHF (1.5 mL)溶液(0℃の冷溶液)にEt3N (2当量)及びクロロフォルメート (2当量)を添加した。反応混合物を同温度で2時間攪拌した後、少量のシリカゲル (ca. 200 mg)を添加し、減圧留去後得られた粉末をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (AcOEt/ヘキサン(3:1))により精製し、化合物16f (6.0 mg)を白色固体として得た(収率52%)。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100MHz, CDCl3)δ25.6, 26.2, 29.5, 29.7, 37.2, 56.4, 67.4, 69.0, 71.0, 74.5, 98.0, 157.5, 157.7 ppm.
同様にして化合物17 (9.7 mg, 0.052 mmol)から化合物18f (10.7 mg)を収率63%で白色固体として得た。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100MHz, CDCl3)δ25.6, 26.2, 28.0, 29.5, 37.3, 56.6, 68.5, 71.0, 72.0, 79.5, 96.9, 157.7, 157.9 ppm.
【0114】
実施例21
2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル N-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]カルバメート (16g/18g)の合成
図3の化合物16(一般式(2))及び化合物18(一般式(1))においてRが2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジルオキシカルボニル基である化合物の合成
【化41】

化合物15 (7.4 mg, 0.04 mmol)のTHF (1.5 mL)溶液(0℃の冷溶液)にEt3N (11μL, 0.080 mmol)及び 2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル クロロフォルメート (13μL, 0.08 mmol)を添加した。反応混合物を室温で1時間攪拌した後、少量のシリカゲル (ca. 200 mg)を添加し、減圧留去後得られた粉末をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (AcOEt/ヘキサン(3:1))により精製し、化合物16g (13.4 mg)を白色固体として得た(収率81%)。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ25.4, 54.3, 55.9, 67.6, 69.2, 73.5, 97.6, 109.3, 136.2, 138.7, 142.4, 144.3, 155.9, 157.8 ppm.
同様にして、化合物17 (7.2 mg, 0.04 mmol)から化合物18g(12.3 mg)を白色固体として得た(収率78%)。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ28.0, 54.4, 56.6, 67.9, 68.5, 72.1, 79.1, 96.7, 109.3, 138.7, 144.4, 144.5, 156.1, 158.1 ppm.
【0115】
実施例22
2-クロロベンジルN-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]カルバメート (16h/18h)の合成
図3の化合物16(一般式(2))及び化合物18(一般式(1))においてRが2-クロロベンジルオキシカルボニル基である化合物の合成
【化42】

化合物15 (7.4 mg, 0.04 mmol)のTHF (1.5 mL)溶液(0℃の冷溶液)にEt3N (11 μL, 0.079 mmol)及び 2-クロロベンジル クロロフォルメート (12 μL, 0.079 mmol)を添加した。反応混合物を室温で1時間攪拌した後、少量のシリカゲル (ca. 200 mg)を添加し、減圧留去し、得られた粉末をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (AcOEt/ヘキサン(3:1))により精製し、化合物16h (11.0 mg)を白色固体として得た(収率79%)。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ25.6, 56.2, 64.8, 67.6, 69.2, 74.0, 97.8, 127.0, 129.6, 129.8, 130.1, 133.4, 133.8, 156.8, 157.7 ppm.
同様にして、化合物17 (6.8 mg, 0.04 mmol)から化合物18h (10.5 mg)を白色固体として得た(収率81%)。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ28.0, 56.6, 64.8, 68.6, 72.1, 79.3, 96.8, 127.0, 129.6, 129.8, 130.1, 133.4, 133.8, 156.9, 158.0 ppm.
【0116】
実施例23
4,5-ジメトキシ-2-ニトロベンジルN-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]カルバメート (16i/18i)の合成
図3の化合物16(一般式(2))及び化合物18(一般式(1))においてR4,5-ジメトキシ-2-ニトロベンジルオキシカルボニル基である化合物の合成
【化43】

化合物15 (7.3 mg, 0.039 mmol)のTHF (1.5 mL)溶液(0℃の冷溶液)にEt3N (11μL, 0.078mmol)及び 4,5-ジメトキシ-2-ニトロベンジル クロロフォルメート (21 mg, 0.078 mmol)を添加した。反応混合物を室温で1時間攪拌した後、少量のシリカゲル (ca. 200 mg)を添加し、減圧留去後、得られた粉末をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (AcOEt/ヘキサン(6:1))により精製し、化合物16i (12.4 mg)を黄色固体として得た(収率74%)。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ25.5, 56.4, 56.5, 64.3, 67.6, 69.2, 73.5, 97.6, 108.2, 110.9, 126.7, 140.0, 148.4, 153.5, 156.5, 157.8 ppm.
同様にして、化合物17 (6.8 mg, 0.04 mmol)から化合物18i (10.5 mg)を黄色固体として得た(収率81%)。 13C NMR (100 MHz, CDCl3)δ28.0, 56.4, 56.5, 64.4, 68.5, 72.1, 79.0, 96.7, 108.2, 111.0, 126.7, 140.0, 148.4, 153.5, 156.4, 158.1 ppm.
【0117】
実施例24
9H-9-フルオレニルメチル N-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]カルバメート(16j/18j)の合成
図3の化合物16(一般式(2))及び化合物18(一般式(1))においてRがフルオレニルメチルオキシカルボニル基である化合物の合成
【化44】

化合物15 (7.5 mg, 0.04 mmol)のTHF (1.5 mL)溶液(0℃の冷溶液)に Fmoc N-ヒドロキシスクシニミドエステル (27 mg, 0.04 mmol)を添加した。反応混合物を室温で2時間攪拌した後、少量のシリカゲル (ca. 200 mg)を添加し、減圧留去後、得られた粉末をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (AcOEt/ヘキサン(3:1))により精製し、化合物16j (15.8 mg)を白色固体として得た(収率96%)。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100MHz, acetone-d6)δ25.6, 48.0, 56.4, 67.0, 68.3, 69.6, 73.2, 98.0, 120.8, 125.9, 127.9, 128.5, 142.1, 144.9, 157.2, 157.6 ppm.
同様にして、化合物17 (5.5 mg, 0.04 mmol)から化合物18j (11.3 mg)を白色固体として得た(収率95%)。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100MHz, acetone-d6)δ28.1, 48.0, 57.2, 67.0, 69.0, 72.5, 78.4, 97.0, 120.8, 126.0, 127.9, 128.5, 142.1, 145.0, 157.3, 158.0 ppm.
【0118】
実施例25
4-メトキシベンジルN-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-イル]カルバメート (16k/18k)の合成
図3の化合物16(一般式(2))及び化合物18(一般式(1))においてRが4-メトキシベンジルオキシカルボニル基である化合物の合成
【化45】

化合物15 (8.2 mg, 0.044 mmol)のTHF (1.5 mL)溶液(0℃の冷溶液)にEt3N (9 μL, 0.078mmol)及びS-p-メトキシベンジルカルボニル-4,6-ジメチル-2-メルカプトピリミジン S-p-Methoxybenzyloxycarbonyl-4,6-dimethyl-2-mercaptopyrimidine (MZ-SDP)を添加した。反応混合物を室温で3時間攪拌した後、少量のシリカゲル (ca. 200 mg)を添加し、減圧留去し、得られた粉末をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (AcOEt/ヘキサン(4:1))により精製し、化合物16k (12.1 mg)を白色固体として得た(収率78%)。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, acetone-d6)δ 25.6, 55.5, 56.5, 66.7, 68.2, 69.6, 73.2, 97.2, 114.5, 129.8, 130.7, 157.3, 157.6, 160.5 ppm.
同様にして、化合物17 (8.0 mg, 0.043 mmol)から化合物18k (10.5 mg)を白色固体として得た(収率70%).
13C NMR (100 MHz, acetone-d6)δ 28.0, 55.5, 57.0, 66.7, 68.9, 72.4, 78.3, 96.9, 114.5, 129.8, 130.7, 157.4, 157.9, 160.5 ppm.
【0119】
実施例26
N-ベンジル-N'-[(5R/S,8S,9R)-9-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-3,6-ジオキサ-1-アザスピロ[4.4]ノン-8-yl]ウレア(16l/18l)の合成
図3の化合物16(一般式(2))及び化合物18(一般式(1))においてRがN-ベンジルアミド基である化合物の合成
【化46】

化合物15 (7.5 mg, 0.040 mmol)のTHF (1.5 mL)溶液にベンジルイソシアネート (4.9 μL,0.040 mmol)を添加した。反応混合物を室温で2時間攪拌した後、少量のシリカゲル (ca. 200 mg)を添加し、減圧留後得られた粉末をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (AcOEt/ヘキサン(15:1))により精製し、化合物16l (10.2 mg)を白色固体として得た(収率80%)。得られた化合物の分析結果は以下の通りである。
13C NMR (100 MHz, acetone-d6)δ 25.6, 44.3, 56.7, 68.4, 69.6, 74.7, 74.8, 98.4, 127.6, 128.0, 129.1, 141.3, 157.6, 159.8 ppm.
同様にして、化合物17 (8.4 mg, 0.045 mmol)から化合物18l (11.7 mg)を白色固体として得た(収率82%)。
13C NMR (100 MHz, acetone-d6)δ 28.1, 44.3, 57.1, 69.2, 72.5, 79.8, 79.9, 97.4, 127.6, 128.0, 129.1, 141.3, 158.0, 159.9 ppm.
【0120】
AI−2受容体に対する活性の評価
ビブリオ・ハーベイBB170株(プリンストン大学のボニー・エル・バスラー教授から分譲可能)をABグロウス培地(2ml)中で30℃で13〜15時間培養し、ABグロウス培地中で5,000倍に希釈した。黒色の96穴マイクロプレートに90μlの培養液と、既知のAI-2アゴニスト化合物溶液 (30μM),被験AI-2アンタゴニスト化合物溶液 (10?100μM)及びB(OH)3(20μM)の混合物10μlを添加した。30 oCで5-6時間インキュベートした後、プレートをルミネッセンスカウンター (Luminescencer JNRII, ATTO corp.)でルミネッセンスを測定した。カウンティングチャンバーの温度は20 oCにセットした。
AI-2アンタゴニスト化合物溶液 (30μM),被験AI-2アンタゴニスト化合物溶液 (10?100μM)及びB(OH)3(20μM)の混合物は以下のようにして調製した。
【0121】
<アンタゴニストの最終濃度>
反応液中のアンタゴニストの最終濃度は、初期濃度が1/100 希釈されることで調整される。
(例1)アンタゴニストの最終濃度 (100μM):まずアンタゴニストの10 mM DMSO溶液を調製し、その 20μL をとってアゴニスト、B(OH)3 (2μL) およびAB培地 (176 μL) と混合し全量を200μL とする。ここでアンタゴニストは1/10 希釈され、1 mM になっている。次に、その 10μL をウェル中でAB培地 (90μL)と混合し、全量を 100μL とする。ここでアンタゴニストはさらに 1/10 希釈され、最終濃度である 100μM となる。他のアンタゴニストの最終濃度 (50μM, 10μM) も同様にして調製する。5 mM, 1 mM のDMSO 溶液をそれぞれ上記の操作により最終的に 1/100 希釈し、50μM, 10μM とする。
【0122】
<アゴニストの最終濃度>
反応液中のアゴニストの最終濃度は、アゴニストの初期濃度が 1/1000 希釈されることで調整される。
(例2)アンタゴニストの最終濃度 (30μM):まずアゴニストの30 mM 水溶液を調製し、その 2μL をとってアンタゴニスト (20μL)、B(OH) (2μL) およびAB培地 (176 μL) と混合し全量を 200μL とする。ここでアゴニストは1/100 希釈され、0.3 mM になっている。次に、その 10 μL をウェル中でAB培地 (90μL)と混合し、全量を 100μL とする。ここでアゴニストはさらに 1/10 希釈され、最終濃度である 30μM となる。
【0123】
<B(OH)3の最終濃度>
反応液中のB(OH)3の最終濃度は、アゴニストと同様に、B(OH)3の初期濃度が 1/1000 希釈されることで調整される。
(例3) B(OH)3の最終濃度 (20μM):まずB(OH)3の20 mM 水溶液を調製する。以下、上記の「2.アゴニストの最終濃度」の項目と同様にする。
一つのウェル内に、アンタゴニストとアゴニストを共に加えることによって、アンタゴニストがAI-2アゴニストの生理活性をどれだけ抑えているかが観察できると考えられる。ここで用いているビブリオ・ハーベイBB170株は AI-2 アゴニストを取り込み、発光するという性質をもっている。アンタゴニストを共存させると、アゴニストの活性が阻害され観察される発光の強度が弱められる。その強度を観測することによりアンタゴニストとしての活性強度を評価することができる。また、アンタゴニストを加えない場合の発光強度をコントロールとして用いている。
B(OH)3を加える目的は以下のとおりである。図4に示すように、DPD (AI-2 前駆体)またはアゴニストは B(OH)3と結合することでビブリオ・ハーベイBB170がもつレセプターと相互作用し、生理活性を示すと考えられる。図4の左図はAI-2 前駆体である DPD とB(OH)3との結合、右図はアゴニストとB(OH)3との結合の仕方を示す。B(OH)3は天然に存在し、B(OH)3を加えなくても発光は観測されるが、B(OH)3を加えることにより、全体の発光強度が大きくなって観測しやすくなり、また、天然B(OH)3の濃度勾配(偏り)による影響を少なくさせ安定な実験結果が得られると考えられる。
【0124】
1. AI-2アナログ溶液の調製
10mMの被験AI-2アナログ(約1.5?2 mg)のDMSO溶液(約500〜800μl)を調製し、次いでDMSOで1:2及び1:10に希釈し、5 mM及び1 mMのアンタゴニスト溶液を調製した。また、アゴニストは100 mMの水溶液として調製した。
2. 混合物の調製
試験管内のAB培地 (176μM)に、上記のようにして調製したアゴニスト (2μl,30 mM水溶液)、アンタゴニスト (20μl, 1-10 mM DMSO溶液),及びB(OH)3 (2μl,20 mM水溶液) を添加して200μlの混合物 ([アゴニスト]=300μM, [アンタゴニスト]=100?1000μM, [B(OH)3]=200μMを調製した。またコントロール溶液として、DMSO(20 μl)をアンタゴニストに代えて添加した。この溶液の10μlを90μlのAB培地と合わせて、物質の最終濃度をこれらの値の1/10とした)。
【0125】
使用したアゴニストの構造は以下の通りである。
【化47】

図5〜図11に、被験物質のルミネッセンスを、コントロールのルミネッセンスを100%としたときの相対値として示した。図5〜図11に表示した被験アンタゴニスト化合物の記号は、図2及び図3に示されている記号である。また、各棒グラフの左は被験アンタゴニストの最終濃度を10μMとした場合、中は50μMとした場合、右は100μMとした場合の結果である。濃度依存的にルミネッセンスを抑える物質はAI-2受容体のアンタゴニスト活性を有する。
図5〜図11から、13b−k,13m,14b−k,14m,16c−i,16l,18a,18c−h,および18lの化合物がアンタゴニスト活性を示すことが分かる。
【0126】
バイオフィルム形成への影響の評価
96穴平板プレートを使用して,P. gingivalis381株、又はこれに被験AI-2アナログである化合物13k(図2参照)を最終濃度100μMになるように添加した培養液を、1週間培養した(37℃,N2 85%, H2 5%, CO2 10%)。2日毎にプレートの菌液を交換し、さらにプレートをPBSで3回洗浄して浮遊細菌を除去した。コントロールは培養液のみ使用し、被験AI-2アナログである化合物13kは添加しなかった。
次いで、0.1 %クリスタルバイオレットでバイオフィルム(付着細菌)を30分間染色し、蒸留水で洗浄した。次いで、70%エタノールで15分間脱色し、上清の吸光度(OD 595 nm)を測定した。6セットの実験を行った。
結果を図12に示す。100μMの化合物13Kの存在によりP. gingivalis381株によるバイオフィルム形成が有意に抑制されたことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】DPD及びその受容体結合時の構造を示す図である。
【図2】本発明の一般式(1)及び(2)の化合物の製造方法を示す図である。
【図3】本発明の一般式(1)及び(2)の化合物の製造方法を示す図である。
【図4】実施例においてB(OH)3を使用する目的を説明する図である。
【図5】実施例で合成した化合物のAI−2受容体に対するアンタゴニスト活性の強さを示す図である。各棒グラフの左は被験アンタゴニストの最終濃度を10μMとした場合、中は50μMとした場合、右は100μMとした場合の結果である。
【図6】実施例で合成した化合物のAI−2受容体に対するアンタゴニスト活性の強さを示す図である。各棒グラフの左は被験アンタゴニストの最終濃度を10μMとした場合、中は50μMとした場合、右は100μMとした場合の結果である。
【図7】実施例で合成した化合物のAI−2受容体に対するアンタゴニスト活性の強さを示す図である。各棒グラフの左は被験アンタゴニストの最終濃度を10μMとした場合、中は50μMとした場合、右は100μMとした場合の結果である。
【図8】実施例で合成した化合物のAI−2受容体に対するアンタゴニスト活性の強さを示す図である。各棒グラフの左は被験アンタゴニストの最終濃度を10μMとした場合、中は50μMとした場合、右は100μMとした場合の結果である。
【図9】実施例で合成した化合物のAI−2受容体に対するアンタゴニスト活性の強さを示す図である。各棒グラフの左は被験アンタゴニストの最終濃度を10μMとした場合、中は50μMとした場合、右は100μMとした場合の結果である。
【図10】実施例で合成した化合物のAI−2受容体に対するアンタゴニスト活性の強さを示す図である。各棒グラフの左は被験アンタゴニストの最終濃度を10μMとした場合、中は50μMとした場合、右は100μMとした場合の結果である。
【図11】実施例で合成した化合物のAI−2受容体に対するアンタゴニスト活性の強さを示す図である。各棒グラフの左は被験アンタゴニストの最終濃度を10μMとした場合、中は50μMとした場合、右は100μMとした場合の結果である。
【図12】実施例で合成した化合物13kのバイオフィルム形成阻害効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表される化合物。
【化1】

(式中、Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、炭素数1〜6のアルキル基を有するフェニルアルキル基、ナフチル基、又は炭素数1〜3のアルキル基を有するナフチルアルキル基を示す。Rは水素原子、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基を有するフェニルアルキルカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基、N-フェニルアミド基、N-(ナフチル)アミド基、炭素数1〜3のアルキル基を有し、シクロアルキル基の炭素数が4〜13である(シクロアルキル)アルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキル基を有し、シクロアルキル基の炭素数が4〜13であるN-(シクロアルキルアルキル)アミド基、炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルキル基を有するN-アルキルアミド基、炭素数1〜3のアルキル基を有するフルオレニルアルキルオキシカルボニル基、又は炭素数1〜3のアルキル基を有するフェニルアルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキル基を有する(ナフチル)アルキルオキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキル基を有するN-(フェニルアルキル)アミド基、炭素数1〜3のアルキル基を有するN-[(ナフチル)アルキル]アミド基を示す。R及びRにおいて、フェニル基、ナフチル基、及びフルオレニル基は置換基を有していてよい。)
【請求項2】
下記の一般式(2)で表される化合物。
【化2】

(式中、R及びRは上記と同じである。)
【請求項3】
下記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物を含むオートインデューサー−2受容体のアンタゴニスト。
【化3】

(式中、R及びRは上記と同じである。)
【請求項4】
下記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物を含むバイオフィルム形成阻害剤。
【化4】

(式中、R及びRは上記と同じである。)
【請求項5】
下記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物を含む歯垢形成阻害剤。
【化5】

(式中、R及びRは上記と同じである。)
【請求項6】
下記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物を廃水管内、廃水槽内、循環式浴槽内、遊泳槽内、又はアクアリウム内に投入する工程を含むバイオフィルム形成阻害方法。
【化6】

(式中、R及びRは上記と同じである。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−214296(P2008−214296A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56450(P2007−56450)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】