説明

オートテンショナ

【課題】圧力室内の作動油に気泡が混入しにくく、製造コストが低いオートテンショナを提供する。
【解決手段】シリンダ9内にスリーブ10を同軸に設け、スリーブ10内にロッド11を摺動可能に挿入してシリンダ9内を圧力室17とリザーバ室18に区画し、圧力室17とリザーバ室18の間を連通する油通路24を設け、油通路24の圧力室17側の端部にチェックバルブ29を設け、ロッド11に固定したばね座12を付勢するリターンスプリング13をシリンダ9の外径側に配置したオートテンショナにおいて、スリーブ10の下部外周とシリンダ9の下部内周との間に筒状のカラー23を嵌め込み、カラー23にスリーブ10を下側から支持する底部23Bを形成し、油通路24をカラー23の上端から圧力室17の下端に至るように形成し、スリーブ10を下方に押圧する押さえばね42を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オルタネータ等の自動車補機を駆動する補機ベルトの張力保持に用いられるオートテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の補機、たとえばオルタネータやカーエアコンやウォータポンプなどは、その回転軸がエンジンのクランクシャフトに補機ベルトで連結され、その補機ベルトを介して駆動される。この補機ベルトの張力を適正範囲に保つために、一般に、支点軸を中心として揺動可能に設けたプーリアームと、そのプーリアームに回転可能に取り付けたテンションプーリと、そのテンションプーリを補機ベルトに押さえ付ける方向にプーリアームを付勢するオートテンショナとからなる張力調整装置が使用される。
【0003】
この張力調整装置に組み込まれるオートテンショナとして、例えば、特許文献1の図1および図3に記載のものが知られている。この特許文献1の図1および図3に記載のオートテンショナは、上端が開口し、下端が閉塞したシリンダ内に作動油と空気を収容し、そのシリンダ内にスリーブを嵌め込み、そのスリーブ内にプランジャを摺動可能に挿入してシリンダ内を圧力室とリザーバ室に区画し、圧力室とリザーバ室の間を連通する油通路を設け、その油通路の圧力室側の端部にリザーバ室側から圧力室側への作動油の流れのみを許容するチェックバルブを設け、前記プランジャから上方に延びるロッドを設け、そのロッドのシリンダからの突出部分にばね座を固定し、そのばね座を上方に付勢するリターンスプリングをシリンダの外径側に配置している。
【0004】
このオートテンショナは、補機ベルトの張力が大きくなると、その補機ベルトの張力によって、圧力室の容積が減少する方向にプランジャが移動し、補機ベルトの緊張を吸収する。このとき、圧力室内の作動油が、プランジャとスリーブの摺動面間のリーク隙間を通って流出し、その作動油の粘性抵抗によってダンパ作用が生じる。
【0005】
一方、補機ベルトの張力が小さくなると、リターンスプリングの付勢力によって、圧力室の容積が増加する方向にプランジャが移動し、補機ベルトの弛みを吸収する。このとき、チェックバルブが開いて、油通路を通ってリザーバ室側から圧力室側に作動油が流れるので、プランジャは速やかに移動する。
【0006】
ここで、特許文献1の図3に記載のオートテンショナは、スリーブをシリンダ内に固定するために、スリーブの下端に設けた底部を、圧力室内に設けたプランジャスプリングで下方に押圧するようにしている。また、圧力室とリザーバ室の間を連通する油通路がプランジャに設けられ、油通路の圧力室側の端部を圧力室の上端に連通させている。
【0007】
また、特許文献1の図1に記載のオートテンショナは、スリーブをシリンダ内に固定するため、スリーブとシリンダの嵌合面間に締め代を設定している。また、圧力室とリザーバ室の間を連通する油通路が、スリーブとシリンダの嵌合面間に設けられた軸方向通路と、シリンダの底面に設けられた径方向溝とからなり、油通路の圧力室側の端部を圧力室の下端に連通させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−127249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記特許文献1の図3に記載のオートテンショナは、油通路の圧力室側の端部が圧力室の上端に位置する上吸込み式なので、リザーバ室内の作動油に気泡が混入したときに、その気泡が油通路を通って圧力室に到達しやすいという問題があった。圧力室内の作動油に気泡が混入すると、ベルトの張力が大きくなったときに、圧力室内の気泡が圧縮することによってプランジャが移動するので、オートテンショナのダンパ作用が低下してしまう。
【0010】
一方、上記特許文献1の図1に記載のオートテンショナは、油通路の圧力室側の端部が圧力室の下端に位置する下吸込み式であるが、油通路のリザーバ室側の端部が比較的高い位置(スリーブの上端)にあるので、リザーバ室内の作動油に気泡が混入したときに、その気泡が油通路に吸い込まれやすく、油通路を通って圧力室内の作動油に気泡が混入する可能性がある。また、スリーブをシリンダ内に固定するため、スリーブとシリンダの嵌合面間に締め代を設定しているので、その締め代を管理するために、シリンダの内周およびスリーブの外周を高精度に加工する必要があり、製造コストが高かった。
【0011】
この発明が解決しようとする課題は、圧力室内の作動油に気泡が混入しにくく、製造コストが低いオートテンショナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、上端が開口し、下端が閉塞したシリンダ内に作動油と空気を収容し、そのシリンダ内にスリーブを同軸に設け、そのスリーブ内にロッドを摺動可能に挿入してシリンダ内を圧力室とリザーバ室に区画し、圧力室とリザーバ室の間を連通する油通路を設け、その油通路の圧力室側の端部にリザーバ室側から圧力室側への作動油の流れのみを許容するチェックバルブを設け、前記ロッドのシリンダからの突出部分にばね座を固定し、そのばね座を上方に付勢するリターンスプリングをシリンダの外径側に配置したオートテンショナにおいて、前記スリーブの下部外周とシリンダの下部内周との間に筒状のカラーを嵌め込み、そのカラーに前記スリーブを下側から支持する底部を形成し、前記油通路を前記カラーの上端から圧力室の下端に至るように形成し、前記スリーブを下方に押圧する押さえばねを設けた。
【0013】
このようにすると、油通路の圧力室側の端部が圧力室の下端に位置する下吸込み式であり、さらに油通路のリザーバ室側の端部が、スリーブの上端よりも低い位置(カラーの上端)にあるので、リザーバ室内の作動油に気泡が混入したときに、その気泡が油通路に吸い込まれにくく、リザーバ室内の気泡が油通路を通って圧力室に到達するのを効果的に防止することができる。また、押さえばねでスリーブを下方に押圧することにより、スリーブをシリンダ内に固定しているので、スリーブの圧入工程が不要であり、またシリンダの内周およびスリーブの外周を高精度に加工する必要もない。そのため、スリーブとシリンダの間に締め代を設定する場合と比較して、製造コストが低い。
【0014】
前記油通路としては、前記カラーの上端からカラーの下端に至るようにカラーの外周側に設けられた軸方向通路と、その軸方向通路の下端から径方向内方に向かって延びるように前記底部の下面に設けた径方向溝と、その径方向溝と交差するように前記底部に設けた貫通孔とからなる構成のものを採用することができる。
【0015】
前記シリンダの開口端に、前記ロッドをスライド可能に貫通させるウエアリングを設ける場合、そのウエアリングで前記押さえばねの上端を支持し、その押さえばねの下端で前記スリーブの上端を押圧するように前記押さえばねを設けることができる。
【0016】
また、前記ロッドのスリーブからの突出部分の外周に設けたリング溝に、スリーブの上端に当接してロッドの移動ストロークを規制するサークリップを装着することができる。ここで、前記押さえばねの下端で前記スリーブの上端を押圧する場合、前記押さえばねとして、上方に向かって次第に大径となる円錐コイルばねを採用すると、押さえばねとサークリップが干渉するのを防止することができる。
【0017】
前記スリーブは、前記ロッドとの摺動面間にリーク隙間を形成する小内径部と、その小内径部の下方に連続する大内径部とからなる構成を採用することができる。このようにすると、ロッドのストローク位置にかかわらず、ロッドとスリーブの摺動面間のリーク隙間の軸方向長さが一定となるので、安定したダンパ力を発揮することが可能となる。
【0018】
このようなスリーブは切削加工で形成することも可能であるが、冷間鍛造または金属焼結で形成すると製造コストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明のオートテンショナは、油通路の圧力室側の端部が圧力室の下端に位置する下吸込み式であり、さらに油通路のリザーバ室側の端部が比較的低い位置にあるので、リザーバ室内の気泡が油通路を通って圧力室に到達するのを効果的に防止することができる。また、押さえばねでスリーブを下方に押圧することにより、スリーブをシリンダ内に固定しているので、スリーブの圧入工程が不要であり、またシリンダの内周およびスリーブの外周を高精度に加工する必要もない。そのため、スリーブとシリンダの間に締め代を設定する場合と比較して、製造コストが低い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施形態のオートテンショナを組み込んだ張力調整装置を示す正面図
【図2】図1のII−II線に沿った拡大断面図
【図3】図2に示すオートテンショナのスリーブ近傍の拡大断面図
【図4】図2に示すオートテンショナの押さえばね近傍の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に、自動車補機を駆動する補機ベルト1の張力調整装置を示す。この張力調整装置は、エンジンブロック2(図2参照)に固定された支点軸3を中心として揺動可能に支持されたプーリアーム4と、プーリアーム4に回転可能に取り付けたテンションプーリ5とを有する。
【0022】
プーリアーム4には、この発明の実施形態に係るオートテンショナ6の一端が連結軸7を介して回動可能に連結され、オートテンショナ6の他端が、エンジンブロック2に固定した支点軸8で支持されている。オートテンショナ6は、テンションプーリ5をベルト1に押さえ付ける方向にプーリアーム4を付勢している。
【0023】
図2に示すように、オートテンショナ6は、上端が開口し、下端が閉塞した筒状のシリンダ9と、シリンダ9内に同軸に配置されたスリーブ10と、スリーブ10内に軸方向に摺動可能に挿入されたロッド11と、ロッド11のシリンダ9からの突出部分に固定されたばね座12と、そのばね座12を上方に付勢するリターンスプリング13とを有する。
【0024】
シリンダ9の閉塞端には、支点軸8が挿入される挿入孔14を有する下部連結片15が一体に設けられている。また、シリンダ9の外周には、リターンスプリング13の下端を支持するフランジ部16が一体に設けられている。シリンダ9は軽量化を図るためにアルミ合金で形成され、冷間鍛造またはダイカストで成形されている。シリンダ9内には、空気と作動油が上下二層に収容されている。
【0025】
シリンダ9の内部は、スリーブ10とロッド11によって圧力室17とリザーバ室18に区画されている。圧力室17はスリーブ10の内側に形成され、リザーバ室18はスリーブ10の外側に形成されている。リザーバ室18内には、圧力室17の容積の3〜6倍の容積の作動油が収容されている。
【0026】
ばね座12は、連結軸7が挿入される挿入孔19を有する上部連結片20と、その上部連結片20の下端外周に形成されたフランジ部21とを有し、そのフランジ部21でリターンスプリング13の上端を受けている。また、ばね座12には、シリンダ9の上部外周を囲む筒状のスカート部22が形成されている。リターンスプリング13は、シリンダ9の外径よりも大きい内径をもつ円筒コイルばねであり、シリンダ9の外径側に同軸に配置されている。
【0027】
図3に示すように、スリーブ10の下部外周とシリンダ9の下部内周との間に筒状のカラー23が嵌め込まれている。カラー23は、スリーブ10の外周に嵌合する筒部23Aと、スリーブ10を下側から支持する底部23Bとからなる。カラー23には、圧力室17の下部とリザーバ室18の下部とを連通する油通路24が設けられている。
【0028】
油通路24は、カラー23の上端からカラー23の下端に至るように筒部23Aの外周側に設けられた軸方向通路25と、その軸方向通路25の下端から径方向内方に向かって延びるように底部23Bの下面に設けられた径方向溝26と、その径方向溝26と交差するように底部23Bに設けられた上下方向の貫通孔27とからなり、油通路24の圧力室17側の端部が圧力室17の下端に連通するようになっている。図において、カラー23の外周には、軸方向に平行な平面に沿ってカラー23の外周を切断した形状の平面部28が形成され、その平面部28とシリンダ9の内周の円筒面との間に挟まれる部分が軸方向通路25となっている。
【0029】
油通路24の圧力室17側の端部には、リザーバ室18側から圧力室17側への作動油の流れのみを許容するチェックバルブ29が設けられている。チェックバルブ29は、圧力室17と油通路24の間を連通する弁孔30を有するバルブシート31と、弁孔30の圧力室17側の開口周縁に形成されたシート面に接触、離反して弁孔30を開閉する球状の弁体32と、その弁体32の移動範囲を規制するリテーナ33と、弁体32をバルブシート31に向けて付勢するバルブスプリング34とからなる。
【0030】
図では、カラー23の底部23Bが、チェックバルブ29を介してスリーブ10を支持しているが、チェックバルブ29を介さずに直接スリーブ10を支持するようにしてもよい。また、バルブシート31のシート面は、カラー23の底部23Bの貫通孔27の圧力室17側の開口周縁に直接形成してもよい。
【0031】
スリーブ10は、ロッド11の外周を摺動可能に案内する小内径部10Aと、その小内径部10Aの下方に連続する大内径部10Bとからなる。ロッド11とスリーブ10の摺動面間(すなわち、ロッド11の外周とスリーブ10の小内径部10Aの内周との間)には微小なリーク隙間35が形成されており、そのリーク隙間35を通って圧力室17内の作動油がリザーバ室18に流出可能となっている。
【0032】
ここで、ロッド11は小内径部10Aを貫通して大内径部10Bに達するまでスリーブ10に挿入され、小内径部10Aの全長にわたってリーク隙間35が形成されている。これにより、ロッド11のストローク位置にかかわらず、ロッド11とスリーブ10の摺動面間のリーク隙間35の軸方向長さが一定となっている。スリーブ10は、切削加工で形成することも可能であるが、冷間鍛造または金属焼結で形成すると製造コストを抑えることができる。
【0033】
図4に示すように、シリンダ9の開口端には、ロッド11をスライド可能に貫通させるウエアリング36と、環状のオイルシール37と、オイルシール37をシリンダ9から抜け止めする止め輪38とが順に組み込まれている。オイルシール37は、環状の芯金39と、ロッド11の外周に接触するゴム製のリップ40と、そのリップ40を径方向内方に締め付けるガータスプリング41とを有する。ウエアリング36は金属製であり、ロッド11の位置がシリンダ9の中心からずれないようにロッド11の外周を支持している。
【0034】
ウエアリング36とスリーブ10の間には、スリーブ10を下方に押圧する押さえばね42が組み込まれている。押さえばね42は、上方に向かって次第に大径となる円錐コイルばねであり、その上端がウエアリング36の下面で支持され、押さえばね42の下端がスリーブ10の上端を押圧している。そして、図3に示すように、押さえばね42は、スリーブ10を下方に押圧することにより、スリーブ10を下側から支持するカラー23の底部23Bをシリンダ9の閉塞端に押さえ付け、カラー23とスリーブ10をシリンダ9内に固定している。
【0035】
図4に示すように、ロッド11のスリーブ10からの突出部分の外周にはリング溝43が設けられ、このリング溝43に、円周の一部を切り欠いたC形のサークリップ44が装着されている。サークリップ44は、ロッド11が下方に移動したときに、スリーブ10の上端に当接してロッド11の下方への移動ストロークを規制し、ロッド11の下端がチェックバルブ29に干渉するのを防止する。また、サークリップ44は、ロッド11が上方に移動したときに、ウエアリング36に当接してロッド11の上方への移動ストロークを規制し、ロッド11がスリーブ10から抜けるのを防止する。
【0036】
次に、このオートテンショナ6の動作例を説明する。
【0037】
ベルト1の張力が大きくなると、そのベルト1の張力によって圧力室17の容積が減少する方向にロッド11が移動し、ベルト1の緊張を吸収する。このとき、圧力室17の圧力がリザーバ室18の圧力よりも高くなるので、チェックバルブ29は閉じた状態となっている。また、圧力室17内の作動油が、ロッド11とスリーブ10の摺動面間のリーク隙間35を通って流出し、その作動油の粘性抵抗によってダンパ作用が生じるので、ロッド11はゆっくりと移動する。
【0038】
一方、ベルト1の張力が小さくなると、リターンスプリング13の付勢力によって圧力室17の容積が増加する方向にロッド11が移動し、ベルト1の弛みを吸収する。このとき、圧力室17の圧力がリザーバ室18の圧力よりも低くなるので、チェックバルブ29が開き、油通路24を通ってリザーバ室18から圧力室17に作動油が流れるので、ロッド11は速やかに移動する。
【0039】
ここで、圧力室17の容積が増加する方向にロッド11が移動するとき、圧力室17の圧力がリザーバ室18の圧力よりも低くなるので、スリーブ10にはシリンダ9の閉塞端から離反する方向の力が作用するが、スリーブ10は押さえばね42で下方に押圧されているので、シリンダ9の閉塞端から浮き上がらない。
【0040】
このオートテンショナ6は、ベルト1の張力変動に応じてロッド11が移動するとき、ロッド11の移動に伴ってリザーバ室18内で移動する部材がサークリップ44だけなので、リザーバ室18内の部材の移動による空気と作動油の攪拌が生じにくく、リザーバ室18内の作動油に気泡が混入しにくい。
【0041】
また、リザーバ室18内の作動油に気泡が混入した場合であっても、このオートテンショナ6は、油通路24のリザーバ室18側の端部が比較的低い位置(カラー23の上端)にあるので、リザーバ室18内の気泡が油通路24に吸い込まれにくい。また、油通路24の圧力室17側の端部が圧力室17の下端に位置する下吸込み式なので、リザーバ室18内の作動油に気泡が混入したときに、その気泡が油通路24を通って圧力室17に到達しにくい。そのため、リザーバ室18内の作動油に気泡が混入した場合にも、その気泡が油通路24を通って圧力室17に到達するのを効果的に防止することができる。
【0042】
また、このオートテンショナ6は、押さえばね42でスリーブ10を下方に押圧することにより、スリーブ10をシリンダ9内に固定しているので、スリーブ10の圧入工程が不要であり、シリンダ9の内周およびスリーブ10の外周を高精度に加工する必要もない。そのため、スリーブ10とシリンダ9の間に締め代を設定する場合と比較して、製造コストが低い。
【0043】
押さえばね42としては、スリーブ10と同径の円筒コイルばねを採用することも可能であるが、上記実施形態に示すように、上方に向かって次第に大径となる円錐コイルばねを採用すると好ましい。このようにすると、押さえばね42とサークリップ44が干渉するのを防止することができる。
【0044】
軸方向通路25としては、カラー23の外周に軸方向に延びる溝を採用することも可能であるが、上記実施形態に示すように、カラー23の外周に平面部28を形成し、その平面部28とシリンダ9の内周の円筒面との間に挟まれる部分を軸方向通路25とすると、軸方向通路25の断面積が広くなり、軸方向通路25を流れる作動油の流速が低くなるので、作動油の流れに乗って気泡が軸方向通路25を通過するのを効果的に防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0045】
6 オートテンショナ
9 シリンダ
10 スリーブ
10A 小内径部
10B 大内径部
11 ロッド
12 ばね座
13 リターンスプリング
17 圧力室
18 リザーバ室
23 カラー
23B 底部
24 油通路
25 軸方向通路
26 径方向溝
27 貫通孔
29 チェックバルブ
35 リーク隙間
36 ウエアリング
42 押さえばね
43 リング溝
44 サークリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端が開口し、下端が閉塞したシリンダ(9)内に作動油と空気を収容し、そのシリンダ(9)内にスリーブ(10)を同軸に設け、そのスリーブ(10)内にロッド(11)を摺動可能に挿入してシリンダ(9)内を圧力室(17)とリザーバ室(18)に区画し、圧力室(17)とリザーバ室(18)の間を連通する油通路(24)を設け、その油通路(24)の圧力室(17)側の端部にリザーバ室(18)側から圧力室(17)側への作動油の流れのみを許容するチェックバルブ(29)を設け、前記ロッド(11)のシリンダ(9)からの突出部分にばね座(12)を固定し、そのばね座(12)を上方に付勢するリターンスプリング(13)をシリンダ(9)の外径側に配置したオートテンショナにおいて、
前記スリーブ(10)の下部外周とシリンダ(9)の下部内周との間に筒状のカラー(23)を嵌め込み、そのカラー(23)に前記スリーブ(10)を下側から支持する底部(23B)を形成し、前記油通路(24)を前記カラー(23)の上端から圧力室(17)の下端に至るように形成し、前記スリーブ(10)を下方に押圧する押さえばね(42)を設けたことを特徴とするオートテンショナ。
【請求項2】
前記油通路(24)が、前記カラー(23)の上端からカラー(23)の下端に至るようにカラー(23)の外周側に設けられた軸方向通路(25)と、その軸方向通路(25)の下端から径方向内方に向かって延びるように前記底部(23B)の下面に設けた径方向溝(26)と、その径方向溝(26)と交差するように前記底部(23B)に設けた貫通孔(27)とからなる請求項1に記載のオートテンショナ。
【請求項3】
前記シリンダ(9)の開口端に、前記ロッド(11)をスライド可能に貫通させるウエアリング(36)を設け、そのウエアリング(36)で前記押さえばね(42)の上端を支持し、その押さえばね(42)の下端で前記スリーブ(10)の上端を押圧した請求項1または2に記載のオートテンショナ。
【請求項4】
前記ロッド(11)のスリーブ(10)からの突出部分の外周に設けたリング溝(43)に、スリーブ(10)の上端に当接してロッド(11)の移動ストロークを規制するサークリップ(44)を装着した請求項1から3のいずれかに記載のオートテンショナ。
【請求項5】
前記押さえばね(42)が、上方に向かって次第に大径となる円錐コイルばねである請求項4に記載のオートテンショナ。
【請求項6】
前記スリーブ(10)が、前記ロッド(11)との摺動面間にリーク隙間(35)を形成する小内径部(10A)と、その小内径部(10A)の下方に連続する大内径部(10B)とからなる請求項1から5のいずれかに記載のオートテンショナ。
【請求項7】
前記スリーブ(10)が冷間鍛造品である請求項6に記載のオートテンショナ。
【請求項8】
前記スリーブ(10)が金属焼結品である請求項6に記載のオートテンショナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate