説明

オーバーコート心線およびその製造方法

【課題】 オーバーコート層が確実に除去できるオーバーコート心線であって一度の操作で確実に除去可能なオーバーコート層の長さが従来になく長く、かつ表面がべたつかず他のものに付着しない、すなわちタック性のないオーバーコート心線を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明のオーバーコート心線19は、ガラスファイバ30上に樹脂層が被覆された光ファイバ心線1上にさらにオーバーコート層16が被覆されたオーバーコート心線であって、オーバーコート層16の内面16aの硬化度が70%以上かつ92%以下であり、かつ外面16bの硬化度が95%以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ心線の外側にオーバーコート層が被覆されたオーバーコート心線およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの被覆構造に関しては既に膨大な種類のものが知られており、その中に、ガラスファイバ上に樹脂層を被覆した光ファイバ心線の外周面に更に樹脂のオーバーコート層を形成したオーバーコート心線がある。
【0003】
そのような樹脂の被覆層が複数層設けられたオーバーコート心線の例として、光ファイバ心線の最外層とオーバーコート層との間に、べたつき解消を目的としたシリコーンオイル層を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、光ファイバ心線の最外層とオーバーコート層との間に、離型剤からなる中間緩衝層を設け、トレードオフ関係にある耐側圧性と低温特性とのバランスを図ったものが知られている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−145514号公報
【特許文献2】特開昭62−73214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1,2に記載のオーバーコート心線は、いずれもシリコーンオイル層などが樹脂層の間に存在するので、ある程度は外層樹脂を除去する際の被覆除去性の向上に寄与すると考えられる。しかし、長い寸法(5cm以上)の被覆除去性を満たすまでには至らなかった。外径の太いオーバーコート心線を市販品のメカニカルスプライス(簡易コネクタ)等で接続する場合、メカニカルスプライスの溝に位置決めするために5cm以上被覆を除去しなければならないが、現状では一回の操作で除去できる被覆は3cm程度であり、当該オーバーコート心線をメカニカルスプライスにより接続することは困難であった。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮し、オーバーコート層が確実に除去できるオーバーコート心線であって一度の操作で確実に除去可能なオーバーコート層の長さが従来になく長く、かつ表面がべたつかず他のものに付着しない、すなわちタック性のないオーバーコート心線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のオーバーコート心線は、ガラスファイバ上に樹脂層が被覆された光ファイバ心線上にさらにオーバーコート層が被覆されたオーバーコート心線であって、前記オーバーコート層の内面の硬化度が70%以上かつ92%以下であり、かつ外面の硬化度が95%以上であることを特徴とする。
【0008】
本発明のオーバーコート心線の製造方法は、ガラスファイバ上に樹脂層が被覆された光ファイバ心線上にさらにオーバーコート樹脂を塗布して硬化させてオーバーコート層となすオーバーコート心線の製造方法であって、前記オーバーコート層を硬化させるときに前記オーバーコート層の内面の硬化度を70%以上かつ92%以下とし、かつ外面の硬化度を95%以上とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のオーバーコート心線およびその製造方法により製造されたオーバーコート心線では、オーバーコート層を除去するときに、オーバーコート層が光ファイバ心線上を滑る。これにより、被覆の除去性が向上されて、一度の操作で確実に除去可能なオーバーコート層の長さが従来になく長く、かつ表面がべたつかず他のものに付着しない、すなわちタック性のないオーバーコート心線が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明のオーバーコート心線の軸に垂直な断面図である。
オーバーコート心線19は、ガラスファイバ(裸光ファイバ)30上に樹脂層31を被覆した光ファイバ心線1の外周に、オーバーコート層16を形成してなるものである。オーバーコート心線19の径は0.5mmで、通常の光ファイバ心線1の径である0.25mmより当然に太いものである。この太さにより、布設現場での取り扱い性が向上し、耐側圧性が向上する。
光ファイバ心線1は、その一例を挙げると、0.125mmの直径を有するガラスファイバ30の外側に、プライマリ樹脂層31a、セカンダリ樹脂層31bおよび着色樹脂層31cを順に被覆したものであり、直径が0.25mmである。
【0011】
本発明のオーバーコート心線の特徴的な点は、オーバーコート層16の内面16aの硬化度が80%以上かつ92%以下であり、かつ外面16bの硬化度が95%以上であることである。
オーバーコート層16の表面の硬化度はATR−IRで測定可能である。オーバーコート層16を形成するオーバーコート樹脂に紫外線硬化型樹脂を用いると、前記紫外線硬化型樹脂は硬化前後で分子中に含まれる二重結合の数が変化する。分子中の二重結合が開裂して重合することにより樹脂が硬化するので、硬化後は硬化前よりも分子中の二重結合の数が少なくなる。硬化前の液状の樹脂の分子中の二重結合の数をATR−IRにより測定しこれをAとする。次に、樹脂に十分な紫外線を照射して硬化させた樹脂フィルムの表面の二重結合の数をATR−IRにより測定しこれをBとする。Aのときの硬化度を0%、Bのときの硬化度を100%とし、その間の二重結合の数と硬化度の相関モデルを設定する。オーバーコート層16の内面16aの二重結合の数x1および外面16bの二重結合の数x2をATR−IRにより測定し、そのときの硬化度を前記相関モデルを利用して求めることができる。
【0012】
光ファイバ心線1上にさらにオーバーコート層16を被覆するには、光ファイバ心線1の最外層の外周にオーバーコート樹脂を塗布してそれを硬化させる。オーバーコート樹脂に紫外線硬化型樹脂を用いた場合は、前述のように分子中の二重結合が開裂して他の分子と重合することにより硬化する。このときに、オーバーコート樹脂中の二重結合を有する原子と、光ファイバ心線1の最外層の樹脂の表面に存在する二重結合を有する原子とが架橋反応して、オーバーコート層16と光ファイバ心線1の最外層とは部分的に架橋される。この架橋箇所はオーバーコート層16の内面16aの硬化度が大きいほど増える。したがって、内面16aの硬化度の大きいオーバーコート層16ほど光ファイバ心線1の最外層と強固に結合しているといえる。
【0013】
本発明のオーバーコート心線のオーバーコート層を除去するには、例えば、除去治具の刃をオーバーコート層の端から5cmの箇所に切り込ませ、除去するオーバーコート層を前記刃で端に向かって押して前記オーバーコート層を光ファイバ心線上を滑らせて除去する。
刃を切り込ませるときには、刃が光ファイバ心線に達しないように、オーバーコート層中に刃が止まるように切り込ませる。そして、図2に示すように、刃21を端16eにむけて移動させると、刃21から見て刃が移動する側と反対側(図2における左側)のオーバーコート層16が伸びる。除去治具22を移動させ続け刃21を移動させ続けると、やがてオーバーコート層16が引きちぎられて破断する。刃21をなおも端部16eへ向けて移動させると、図3に示すように、刃21から端部16eまでの除去すべきオーバーコート層16bが刃21に押されて光ファイバ心線1上を滑り、オーバーコート層16bが除去される。
【0014】
オーバーコート層を除去するときに重要なのは、オーバーコート層を光ファイバ心線上で滑らせることである。オーバーコート層と光ファイバ心線の最外層との部分的な架橋箇所の数が多すぎると、オーバーコート層が光ファイバ心線を滑らなくなるほどにオーバーコート層が光ファイバ心線の最外層と強固に結合する。
本発明では、オーバーコート層の内面の硬化度を92%以下とするので、オーバーコート層と光ファイバ心線の最外層との架橋箇所が多すぎることがなく、オーバーコート層を光ファイバ心線上で滑らせて除去することができる。これにより、一度の操作で確実に除去可能なオーバーコート層の長さが従来になく長くなる。
一方、オーバーコート層の内面の硬化度が小さすぎると光ファイバ心線とオーバーコート層が軸方向にずれるという、いわゆる突き出しと呼ばれる問題が生じる。本発明では、オーバーコート層の内面の硬化度を70%以上とするので、突き出しの問題が生じない。
【0015】
オーバーコート層の外面の硬化度が小さいとオーバーコート心線が十分に硬化せずべたつき、一旦ボビンに巻き取られた後に速やかに繰り出すことができなかったり、積層されて接触しているオーバーコート心線の他の部分に付着して、ボビンから繰り出されるときに一部の樹脂が剥げてしまうことがある。また、他のものに付着して異物を取り込んだり、逆にオーバーコート層の一部が剥げる等の問題が生じる。これをタック性があると称する。本発明のオーバーコート心線では、オーバーコート心線の外面の硬化度を95%以上とするので、タック性の問題がない。
【0016】
従来のオーバーコート心線では、タック性の問題が生じないように、オーバーコート層の硬化度が高くされていたので、内面の硬化度が92%を超えていた。したがって、オーバーコート層を5cm以上除去することは困難であった。本発明では、オーバーコート層の内面と外面の硬化度に差をつけて、内面の硬化度は70%以上かつ92%以下にし、外面の硬化度は95%以上(最大100%)とすることにより、被覆除去性が従来になくよく(一度の操作で確実に除去可能なオーバーコート層の長さが従来になく長く)、かつタック性の問題もないオーバーコート心線を提供することに成功した。
【0017】
光ファイバ心線の外周にオーバーコート層を被覆するには、図4に示すように、供給装置41から繰り出した光ファイバ心線1をガイドローラ51で方向を変えて、オーバーコート樹脂46を満たしたダイス42に光ファイバ心線1を通過させて光ファイバ心線1上に樹脂46を塗布し、その樹脂46を硬化装置43で硬化させる。樹脂46は樹脂溜44から供給管45を通じてダイス42に供給される。オーバーコート樹脂46は、紫外線硬化型樹脂を使用することができる。紫外線硬化型樹脂を使用するときは、ダイス42から引き出された樹脂46に硬化装置43内で紫外線を照射して硬化させ、オーバーコート層16(図1参照)の被覆を完了する。
【0018】
オーバーコート樹脂46が硬化されたオーバーコート心線19は、ガイドローラ52によりパスラインの向きを変えられて引取装置48により引き取られ、その後に巻取装置49に巻き取られる。引取装置48と巻取装置49との間にはガイドローラ53(53a,53b,53c)が設けられるが、さらにスクリーニング手段や蓄線装置などが設けられてもよい。
【0019】
なお、図1では、1層のオーバーコート層16を示したがオーバーコート層は2層以上積層されてもよい。その場合、オーバコート層の内面とはオーバーコート層全体の内面であるので最内層のオーバーコート層の内面になる。
【0020】
オーバーコート層が2層以上ある場合、オーバーコート層をいわゆるデュアル塗布方式で塗布してもよい。デュアル塗布方式では、一つの塗布装置に二つ以上のダイスを直列に並べて配置し、ダイスの数だけの種類の樹脂をほぼ同時に塗布するようにしている。そして塗布した複数種類の樹脂をほぼ同時に硬化させる。
【0021】
オーバーコート層には、紫外線硬化型樹脂組成物を使用することができる。例えば、ウレタンアクリレート樹脂、またはウレタンアクリレート樹脂にエポキシアクリレート樹脂やポリエステルアクリレート樹脂等を配合した樹脂を使用することができる。
さらに具体的には、例えば、ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加ジオール、トリレンジイソシアネート及びヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得られるウレタンアクリレート;ポリテトラメチレングリコール、トリレンジイソシアネート及びヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得られるウレタンアクリレート;トリレンジイソシアネート及びヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得られるウレタンアクリレート等から選ばれるオリゴマーと、トリシクロデカンジアクリレート;N−ビニルピロリドン;イソボニルアクリレート;ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加ジオールジアクリレート;ラウリルアクリレート;ビスフェノールAエポキシジアクリレート;エチレンオキサイド付加ノニルフェノールアクリレート等から選ばれる希釈性モノマーとを適宜組み合わせて得ることができる。これらの構成成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの構成成分にポリシロキサン化合物やシリコーン系化合物を添加して用いることもできる。
シリコーン系剥離剤は着色層との界面に局在させる必要性があり、高分子量のものが望ましく、平均分子量8000以上のものであることが望ましい。また、反応性を有するシリコーン系剥離剤を用いてもよい。これらに加えて非反応性の有機高分子を添加することで剥離作用を持たせることもできる。この有機高分子はオーバーコート層を膨潤させる作用と溶剤として働く作用の両面を有する。
【0022】
オーバーコート層の硬化度は、オーバーコート樹脂に含まれる重合開始剤の濃度や重合のためにオーバーコート樹脂に与えるエネルギー強度で調整できる。例えば、紫外線硬化型樹脂を硬化させるときは、紫外線を前記樹脂に照射して、前記樹脂中に含まれる重合開始剤である光開始剤を開裂させる。開裂した光開始剤がきっかけとなってオーバーコート樹脂が重合する。オーバーコート樹脂の外面から紫外線を照射するので、前記外面近くに存在する光開始剤は照射された紫外線エネルギーを受けて開裂するが、オーバーコート層の内面にいくほど到達する紫外線エネルギーが小さいので光開始剤が開裂しにくい。したがって、オーバーコート層内面は外面よりも硬化度が小さくなる傾向にある。そこで、光開始剤の濃度と照射する紫外線のエネルギー量を調整することにより、オーバーコート層内面の硬化度を70%以上かつ92%以下とすると同時に外面の硬化度を95%以上にすることができる。
【0023】
光開始剤は種類により吸収する紫外線の波長が異なる。また、光源によりその光源が発する紫外線エネルギーの波長依存性が異なる。このため光源と光開始剤との組み合わせによっても紫外線により開裂する光開始剤の量が変わるので、硬化度が異なることになる。言い換えると、光源と光開始剤の組み合わせによって硬化度を調整することができる。
【0024】
通常、オーバーコート層は識別のために着色される。オーバーコート樹脂は着色のために顔料を含む。顔料濃度が高いと紫外線が内面に到達するまでに減衰して内面の重合反応が起こりにくくなり硬化度が小さくなる。逆に顔料濃度が低いと内面の硬化度が高くなる。つまり、オーバーコート樹脂に含まれる顔料濃度を調整することによりオーバーコート層の内面の硬化度を調整することができる。一方、外面の硬化度は内面ほどには顔料濃度に影響されない。
【0025】
金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム)などの無機物フィラーを添加し、その添加量を調整することでもオーバーコート層の硬化度を調整することができる。無機物フィラーの添加量を数重量%の範囲内で変えると、無機物フィラー濃度が大きいほどオーバーコート層の外面の硬化度と内面の硬化度に差が生じ、内面の硬化度の方が小さくなる。
【0026】
23℃におけるオーバーコート層のヤング率が300MPa以下であると、オーバコート層に刃を切り込ませて、オーバーコート層の除去部分を端に寄せるように前記刃をオーバーコート心線の軸にそって移動させるときに、オーバーコート層の途中までしか刃が切り込んでいなくても、オーバーコート層が引きちぎられて破断する。逆に、オーバーコート層を容易に破断するためには、23℃におけるオーバーコート層のヤング率が300MPa以下であることが望まれる。
【0027】
また、23℃におけるオーバーコート層のヤング率が140MPaより小さいと、オーバーコート層を引きちぎった後にオーバーコート層が収縮し、オーバーコート層を光ファイバ心線から除去する力がそこで吸収されるのでオーバーコート層を除去する力ために大きな力が必要になる。これはオーバーコート層を容易に除去する点では不利な方向に作用するので、オーバーコート層のヤング率が140MPa以上であることが好ましい。
【0028】
なお、光ファイバ心線1の樹脂層は、1層であっても、2層であっても、更にその上に着色層を有した3層であってもよい。いずれの場合も、その上にオーバーコート層を被覆する。
【0029】
また、光ファイバ心線に含まれるガラスファイバの直径は、通常125μmであるが、80μm以上125μm以下の直径のガラスファイバを使用してもよい。また、光ファイバ心線の直径は、通常240μm以上255μm以下であるが、160μm以上180μm以下の直径の光ファイバ心線を使用してもよい。オーバーコート心線の直径は、例えば400μm以上900μm以下となる。
【実施例】
【0030】
0.125mmの直径のシングルモードのガラスファイバ30に、プライマリ樹脂層31a、セカンダリ樹脂層31bおよび着色樹脂層31cを被覆した直径が0.25mmの光ファイバ心線1に、オーバーコート層16を被覆して直径が0.5mmのオーバーコート心線19を製造した。オーバーコート樹脂には紫外線硬化型樹脂を使用した。オーバーコート樹脂に添加する光開始剤濃度、顔料濃度、照射する紫外線強度を替えた組み合わせにより、オーバーコート層16の外面16bの硬化度および内面16aの硬化度がそれぞれ異なる実施例ならびに比較例1および比較例2のオーバーコート心線19を製造した。
【0031】
各オーバーコート心線19からオーバーコート層16を剥がし、その内面16aの二重結合の濃度および外面16bの二重結合の濃度をATR−IRで測定した。硬化に関与する波数は810cm−1、硬化に関与しない波数840cm−1を用いた。
まず樹脂液のそれぞれの波数での吸光度をA810、A840とし、A810/A840=K1とする。また対象硬化物のそれぞれの波数での吸光度をB810、B840とし、B810/B840=K2とする。
そこで硬化度(%)=(K1−K2)/K1×100と定義する。
結果を表1に示す。
オーバーコート層16を剥がすときは、カッターナイフでオーバーコート心線19にその長さ方向に直線上に切れ目をいれ、その切れ目のオーバーコート層16をピンセットでつまんで、オーバーコート層16を光ファイバ心線1から剥がした。
【0032】
各オーバーコート心線19のオーバーコート層16を加熱しないで、マイクロストリップ(マイクロエレクトロニク社製 0.016インチの穴径の刃)で50mm除去した。具体的には、オーバーコート心線19の端から50mmの箇所にマイクロストリップの刃21を0.05mmの深さまで切り込ませてオーバーコート心線19の径方向に刃を固定し、光ファイバ心線1の端に向けて刃21を光ファイバ心線1の軸に沿って動かして50mmのオーバーコート層16bを除去した。オーバーコート層16bのみが完全に除去されたときを成功とした。オーバーコート層16bが一部残ったり、光ファイバ心線1の最外層の一部が剥げたり、オーバーコート層16bを引き抜くことができなかったときはいずれも失敗とした。各オーバーコート心線19について100回ずつ被覆除去を行ったときの成功率を求めた。各例についての結果を、表1に、99回以上成功したときを○、98回以下しか成功しなかったときを×として示す。
【0033】
オーバーコート心線19のタック性を下記の方法により評価した。オーバーコート心線19を巻き取ったボビンを、図5に示すように、オーバーコート心線19の巻き終わり端部19eが下から上へ巻かれてボビンの胴部55の中間の高さに位置するように配置した。1分間のうちにオーバーコート心線19の端部19eが自重でその内周側に接触したオーバーコート心線19から離れるか否かを調べた。オーバーコート心線19の端部19eがその内周側から離れた場合にはタック性がないと評価して「○」と表示し、離れなかった場合にはタック性があると判断して「×」と表示した。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
実施例および比較例から、オーバーコート層16の内面の硬化度が92%以下だと被覆除去成功率がよいことが分かる。これはオーバーコート層16と光ファイバ心線1の最外層との結合力が弱いからであると考えられる。また、オーバーコート心線19の外面の硬化度が95%以上であるとタック性の問題がないことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るオーバーコート心線の一形態の断面図である。
【図2】本発明のオーバーコート心線のオーバーコート層の除去の開始時の様子を例示する図である。
【図3】本発明のオーバーコート心線のオーバーコート層の除去の途中過程を例示する図である。
【図4】本発明のオーバーコート心線の製造方法の一例を示す図である。
【図5】オーバーコート心線のタック性を調べる方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0037】
1 光ファイバ心線
16 オーバーコート層
19 オーバーコート心線
30 ガラスファイバ
31 樹脂層
41 供給装置
42 ダイス
43 硬化装置
48 引取装置
49 巻取装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスファイバ上に樹脂層が被覆された光ファイバ心線上にさらにオーバーコート層が被覆されたオーバーコート心線であって、前記オーバーコート層の内面の硬化度が70%以上かつ92%以下であり、かつ外面の硬化度が95%以上であることを特徴とするオーバーコート心線。
【請求項2】
ガラスファイバ上に樹脂層が被覆された光ファイバ心線上にさらにオーバーコート樹脂を塗布して硬化させてオーバーコート層となすオーバーコート心線の製造方法であって、前記オーバーコート層を硬化させるときに前記オーバーコート層の内面の硬化度を70%以上かつ92%以下とし、かつ外面の硬化度を95%以上とすることを特徴とするオーバーコート心線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−17551(P2007−17551A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196890(P2005−196890)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(399040405)東日本電信電話株式会社 (286)
【Fターム(参考)】