説明

オーバーモールドされたキーパッド及び製造方法

キーパッド及びその製造方法が記載される。一実施形態では、ユーザー情報を入力するためのボタンのそれぞれの場所に位置する複数個のドーナツ形の凹部を有する基材と、非圧縮性流体(例えば、水)で充填された複数個の緩衝体と、可撓性回路層と、複数個の金属膜と、オーバーモールドされた熱可塑性エラストマー層と、を包含するキーパッドが提供される。熱可塑性エラストマー層のオーバーモールド中に、非圧縮性流体で充填された複数個の緩衝体は、可撓性回路層と複数個の金属膜との間の空隙の潰れを防止する。キーパッドの層が組み立てられた後、非圧縮性流体が除去され、これにより可撓性回路層と複数個の金属膜との間に空隙が残される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にキーボードに関し、更に詳細には、オーバーモールドされたキーボード及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子デバイスは、情報をデバイスに入力するためにキーパッドを使用することがある。キーパッドを使用した電子デバイスの例としては、携帯電話、電話、携帯情報端末、コンピュータ、小型コンピュータ、ファックス及び手持ち式の医療用デバイス、例えば、グルコース計及び薬剤注入ポンプが挙げられる。一般にこのような電子デバイス用のキーパッドは、回路基板、フレーム又は基材及びフレーム上の穴に装着されたキースイッチのセットを包含する。キースイッチをクリックすると、キースイッチと回路基板との間の空隙が閉鎖され、回路基板に接触が誘発されることにより、回路基板が対応する電気信号を出力する。
【0003】
キースイッチの構成要素と、フレーム、又は基材との間に間隙が存在することがあり、水又はハンドローションなどの外部環境汚染物がキーパッドアセンブリの内部に進入し、これによりキーパッドの性能が悪影響を受ける可能性がある。オーバーモールドプロセスは一般に、キースイッチの構成要素とフレームとの間に存在し得る間隙を封止するのに使用される。しかしながら、オーバーモールドプロセス中に、オーバーモールドされた材料が、キースイッチと回路基板との間の空隙を平らにするのに十分な圧力をキースイッチの構成要素に加えることがあり、それによりキーパッドが機能しなくなる。また、基材上に結合されるキーパッドに使用されるシリコーン含有材料などの材料が、プラスチックフレームに完全に接着されない場合があり、これにより、外部汚染物質がキーパッドアセンブリに進入することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、出願人らは、オーバーモールドプロセス中に、キースイッチ(スイッチ空洞)と回路基板との間の空隙を維持する製造方法の必要性を認識する。出願人らはまた、キーパッド構成要素及びフレーム又は基材上に気密シールを形成するオーバーモールドされた層材料の必要性を認識する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本発明の新規な特徴は、添付の「特許請求の範囲」に詳細に記載される。本発明の特徴及び利点は、次の、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の発明を実施するための形態、並びに添付の図面を参照することによって、より理解されるであろう。
【図1A】本発明の例示的実施形態によるキーパッドの斜視分解組立て断面図。
【図1B】本発明の例示的実施形態によるキーパッドの斜視分解組立て断面図。
【図1C】本発明の例示的実施形態によるキーパッドの斜視分解組立て断面図。
【図2】本発明の例示的実施形態によるキーパッド用の基材の斜視図。
【図3】本発明の例示的実施形態による可撓性回路層の第1表面の斜視図。
【図4】本発明の例示的実施形態による図3に示した可撓性回路層の第2表面の平面図。
【図5】本発明の例示的実施形態による可撓性回路層の第1表面上のキードーム区域の拡大斜視図。
【図6】本発明の実施形態と共に使用するのに好適な薬剤注入ポンプの斜視図。
【図7】本発明の例示的実施形態によるキーパッドの形成方法における工程の順序を示すフローチャート。
【図8】本発明の例示的実施形態による緩衝体の収縮前の、緩衝体を備えたキーパッドボタンの断面拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1A〜1Cは、本発明の例示的実施形態によるキーパッド100を図示している。キーパッド100は、ユーザー情報を入力するためのボタン104の場所に位置する複数個のスイッチアセンブリ102を包含する。スイッチアセンブリ102のそれぞれは、緩衝体110が接着される(図2に示した)ドーナツ形の凹部108を有する基材106と、緩衝体110の全ての上に配置された可撓性回路層112と、可撓性回路層112に少なくとも部分的に接着された複数個の金属膜114と、複数個の金属膜114上に配置されたオーバーモールドされた熱可塑性エラストマー層116と、を包含する。オーバーモールドされた熱可塑性エラストマー層116はまた、基材106上に周囲方向に連続的に配置される。
【0007】
図1B:基材106は、可撓性回路層112内の開口部118に嵌合する複数個のスエージピン117を包含する。基材106は、ポリカーボネートなどの耐久性プラスチック材料から形成されてよい。
【0008】
複数個の緩衝体110のそれぞれは、エラストマーポリマー材料、例えば、熱可塑性ウレタン又はゴム材料などから形成されてよい。複数個の緩衝体110のそれぞれは、キーパッド100の成形後に直ちに除去される水などの非圧縮性液体で充填されてもよく、これについては以下に図7〜8を参照して説明する。
【0009】
図3を参照すると、可撓性回路層112は、少なくとも2つの導電性区域122と、成形中にキードーム120の可撓性形成を容易にする複数個の穴124と、を有する複数個のキードーム120を有する第1表面119を包含する。キードーム120は、通常約0.5ミリメートル(又は0.02インチ)の距離だけたわんでもよい。
【0010】
図4及び5に図示したように、可撓性回路層112は、複数個の導電性トレース128と、基材106内のスロット131(図2)内に適合する可撓性タブ130と、を有する第2表面126を更に包含する。複数個の導電性トレース128のそれぞれは、フィード132(視覚化の目的のみで示す)により、可撓性回路層112の第1表面119上の導電性区域122に電気に接続される。タブ130は、可撓性回路層112を、キーパッド100により制御されるべきデバイスに電気的に相互接続する。可撓性回路層112は、例えば、マイラー(Mylar)などの変形可能なプラスチック材料から形成されてよい。導電性区域122及びトレース128は、炭素、銀、金、銅、黄銅、アルミニウム、又は他の好適な導電性材料から形成されてよい。導電性区域122及びトレース128は、これに限定されるものではないが、フォトエッチングすること、メッキすること、又は金属の薄板などの導電材料を接着剤で基材上に接着することなど、当業者に既知の技術を使用して可撓性回路層112上に付着されてよい。
【0011】
複数個の金属膜114のそれぞれは、キーストロークフィードバックを最大限にするためにキーパッド設計に通常使用される、市販の薄鋼円盤(スナップトロン社(Snaptron Inc.))である。
【0012】
オーバーモールドされた層116は、優先度及びキーパッドの設計に応じて、例えば、約30ショアAの硬度を有するモンプレーン(Monprene)(登録商標)MP−2730熱可塑性エラストマー(テクノールアペックス社(Teknor Apex Company)(米国ロードアイランド州)〜45ショアDの硬度を有するTexin(登録商標)245(バイエルマテリアルサイエンス社(Bayer Material Science AG(ドイツ))などの、エラストマーポリマー材料から形成されてよい。
【0013】
本発明のキーパッド100は、携帯電話、電話、携帯情報端末、コンピュータ、小型コンピュータ、ファックス及び手持ち式の医療用デバイス、例えばグルコース計及び薬剤注入ポンプが挙げられるが、これらに限定されない様々な電気又は電子デバイスにおいて使用されてよい。本発明のキーパッドを組み込んでよい薬剤注入ポンプ150(例えば、インスリンポンプ)の例示的実施形態が図6に図示されている。薬剤注入ポンプ150は、ハウジング152と、操作情報をユーザーに提供するためのディスプレー154と、ユーザーが情報を入力するための複数個のナビゲーションボタン158を備えたキーパッド156と、電力を薬剤注入ポンプ150に提供するためのキャップ160を備えた区画内の電池(図示せず)と、処理用電子機器(図示せず)と、薬物をカートリッジから輸液セット(図示せず)に接続されたサイドポート162を介してチャンバ内に、及びユーザーの身体内に押し込むための、薬物送達機構(例えば、インスリンポンプ及び駆動機構、図示せず)と、を包含する。
【0014】
図7は、本発明の例示的実施形態によるキーパッドを形成するための方法200を示すフローチャートである。工程210に記載したように、方法200には、ユーザー情報を入力するためのボタン104のそれぞれの場所に位置する複数個のドーナツ形の凹部108を有する基材106と、非圧縮性流体(例えば、水)で充填された複数個の緩衝体110と、可撓性回路層112と、複数個の金属膜114と、熱可塑性エラストマー層116と、を提供することが含まれる。
【0015】
この方法の次の工程には、緩衝体110を基材106内の複数個のドーナツ形の凹部108のそれぞれに接着すること、可撓性回路層112を緩衝体110の全ての上に配置すること、可撓性回路層112内の開口部118のそれぞれを基材106上のピン117と嵌合させること、複数個の金属膜114を可撓性回路層112に少なくとも部分的に接着すること、基材106上の複数個のピン117を複数個のスイッチアセンブリ102にスエージ加工することにより、複数個のスイッチアセンブリ102を形成することが含まれる(工程220を参照)。それぞれの緩衝体110は、基材106内の凹部108に接着されてよく、かつ複数個の金属膜114は、例えば、マイラー(Mylar)接着テープを用いて可撓性回路層112に少なくとも部分的に接着されてよい。
【0016】
工程230に記載したように、熱可塑性エラストマー層116を複数個のスイッチアセンブリ102及び基材106の周囲方向連続部分上にオーバーモールドすることにより、キーパッド100(図8を参照)を形成する。オーバーモールドプロセス中に、熱可塑性エラストマー層116は、基材106の周囲方向連続部分と結合し、複数個のスイッチアセンブリ102上に密封封止を形成する。熱可塑性エラストマー層116を複数個のスイッチアセンブリ102上に形成するために、射出成形プロセス、例えばインサート成形、又はツーショットオーバーモールドが使用されてよい。
【0017】
この方法の最終工程において、例えば、それぞれの緩衝体110に穿刺することにより穴(図示せず)を形成することで緩衝体110のそれぞれから非圧縮性流体を除去することにより、複数個の金属膜114のそれぞれと可撓性回路層112との間に空隙170が形成される(工程240及び図1Cを参照)。それぞれの緩衝体110内に穿刺された穴は、キーが押下されるときに通気孔としての役割を果たす。
【0018】
本明細書に図示及び記載された構造を等価構造で置き換えることができること、及び本発明の記載された実施形態は唯一の構造ではなく、当該実施形態を使用して特許請求の範囲に記載されている発明を実施できることが認識されよう。更に、上記全ての構造は機能を有し、このような構造はその機能を実行するための手段と見なされ得ることを理解すべきである。以上、本発明の実施形態を図示し説明したが、こうした実施形態はあくまで例として与えられたものであることは当業者には明らかであろう。当業者であれば、本発明から逸脱することなく多くの変形、変更、及び代用が想到されるであろう。
【0019】
本発明の実施に際し本明細書で述べた実施形態には、様々な代替例を用い得る点が理解されるべきである。以下の特許請求の範囲は発明の範囲を規定することを目的としたものであり、特許請求の範囲に含まれる方法及び構造並びにそれらの均等物をこれによって網羅することを目的としたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーパッドを形成する方法であって、
ユーザー情報を入力するためのキーボタンのそれぞれの場所に位置する複数個のドーナツ形の凹部を有する基材と、
非圧縮性流体で充填された複数個のポリマー緩衝体と、
可撓性回路層と、
複数個の金属膜と、
複数個のプラスチック接着剤層と、
熱可塑性エラストマー層と、を提供する工程と、
緩衝体を前記複数個のドーナツ形の凹部のそれぞれに接着すること、
可撓性回路層を前記緩衝体の全ての上に配置すること、
前記複数個の金属膜を前記可撓性回路層に接着すること、及び
前記複数個のスイッチアセンブリを前記基材にスエージ加工することにより、複数個のスイッチアセンブリを形成する工程と、
前記熱可塑性エラストマー層を前記複数個のスイッチアセンブリ上にオーバーモールドしてキーパッドを形成する工程と、
前記非圧縮性流体を除去することにより前記緩衝体のそれぞれを収縮させ、それにより前記複数個の金属膜のそれぞれと前記可撓性回路層との間に空洞を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記非圧縮性流体が、水である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
キーパッドであって、
ユーザー情報を入力するためのボタンのそれぞれの場所に位置する複数個のドーナツ形の凹部を有する基材と、
前記基材上に形成された複数個のスイッチアセンブリであって、
前記凹部内に接着された緩衝体と、
前記緩衝体上の可撓性回路層と、
前記可撓性回路層に接着された複数個の金属膜と、を含むスイッチアセンブリと、
前記複数個のスイッチアセンブリ上にオーバーモールドされた熱可塑性エラストマー層と、を含む、キーパッド。
【請求項4】
前記熱可塑性エラストマーが、熱可塑性ウレタンである、請求項3に記載のキーパッド。
【請求項5】
前記熱可塑性ウレタンが、TEXIN245である、請求項4に記載のキーパッド。
【請求項6】
前記プラスチック層が、マイラーから形成される、請求項3に記載のキーパッド。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−507189(P2011−507189A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538065(P2010−538065)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/085655
【国際公開番号】WO2009/076193
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(506221907)アニマス・コーポレイション (15)
【Fターム(参考)】