説明

カイロ用包装材及びその製造方法

【課題】 熱シール可能な100%プラスチックフィルムによってカイロに適切な包装材を提供するために、ピンホール処理で生ずる裂け目を、安定な通気孔にするための手段条件について検討することを課題とする。
【解決手段】 熱シール可能なプラスチックラミネートフィルム1のピンホール処理により多数の裂け目状ピンホール2を形成し、該ピンホールを圧熱処理して得られる通気性多孔質フィルムからなるカイロ用包装材であり、プラスチックフィルムのピンホール処理で得られる裂け目状ピンホール2を圧熱処理で、この裂け目状ピンホール2の部分的な熱融着部3の形成により安定した小孔状ピンホール4とする。その製造方法としては、熱シール可能なプラスチックラミネートフィルムのピンホール処理による多数のピンホール形成工程、該ピンホールの圧熱処理による通気性多孔質フィルム形成工程を順に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルムからなるカイロ用包装材及びその製造方法に関する。
【0002】
更に詳しくは、封入された発熱剤粉体が、通気孔から外に洩れることのない、また、通気速度が安定均一であるカイロ用包装材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来使用されてきているカイロ用包装材としては、紙または不織布にポリエチレンフィルムなどのシール材をラミネートした構成のものが主流で、通気孔はシール用フィルムに設け、紙または不織布にはできるだけ傷つけないように配慮されている。しかしながら、粘着剤層面の周辺部を含めて部分的に粘着剤の未塗工部を設けることによって剥離紙の取り除きが容易になる反面、通気面となる相手方の包装材との重ね合わせ、周辺部同士で互いに熱接着してカイロ用の袋を形成する際に、粘着剤層の有無による段差によって熱接着面にかかるシール圧が不均一となるために熱接着が不完全となり、シール部が剥がれて粉こぼれを生ずるなどの問題点があった。
【0004】
このような問題点を解決するために、例えば、特許文献1では、使用時に剥離紙の取りはずしが容易で、しかも、熱シールが確実に行われて粉こぼれなどを生ずるおそれのない粘着剤付のカイロを効率よく製造することができるカイロ用包装材として、2枚のプラスチックフィルムの間に不織布を挟んだ複合シートを用いることにより、片面が熱接着面、他の片面が粘着剤層面とされた3層構造の包装材としている。
【0005】
これに対し、安価なプラスチックフィルムのみからなるカイロ用包装材についても、古くから検討されているが、フィルムの設けたピンホールからなる通気孔が貫通孔となって、発熱剤粉体が外に洩れる心配があり、粗大粒子を封入する以外には利用されていないのが現状である。
【0006】
安定した通気孔を得る目的で、フィルムの材質に関する検討も種々行なわれ、例えば、特許文献2には、不織布シートを用いない2層以上のプラスチックフィルム層から構成され、その少なくとも片面がヒートシール層であるカイロ用シート基材が記載され、ここで、そのヒートシール層が、酢酸ビニル含有量10%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メタアクリレート共重合体、低密度ポリエチレンから選ばれる少なくとも1つからなるカイロ用シート基材が提案されている。
【0007】
確かに、100%プラスチックフィルムの包装材は安価であり、鮮明な印刷が可能であることから、広い分野で利用されているが、通気性の包装材としては、収納物の粒子の大きい乾燥剤や脱臭剤などに限定されており、もし微細な粉体に対しても、外に洩れないような通気孔を均一に設けることができれば、大幅にその分野は拡大される。
【0008】
一般に、プラスチックフィルムにピンホール処理された通気孔は、フィルム移動中のピンホール加工であるので、フィルムの流れに引っ張られて孔というより湾曲状の裂け目からなるスリット状のピンホールであり、開孔度が不定に変化し、フィルムを揉んだり振ったりすることにより、粉体が外に洩れたり、温度が上下する不安定なカイロとなり、適切なカイロ用包装材として使用することができない。そこで、これまで、不織布との積層シートが広く用いられていたのである。
【0009】
【特許文献1】特開平8−98856号公報
【特許文献2】特開平7−16252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者等は、ピンホール処理で生ずる裂け目を、安定な通気孔にするための手段条件について種々試験研究をした結果、本発明に到達したものである。すなわち、本発明は、熱シール可能な100%プラスチックフィルムによってカイロに適切な包装材を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のカイロ用包装材は、熱シール可能な積層プラスチックフィルムのピンホール処理により多数のピンホールを形成し、該ピンホールを圧熱処理して得られる通気性多孔フィルムからなる。プラスチックラミネートフィルムのピンホール処理で得られるスリット状ピンホールを圧熱処理で、このスリット状ピンホールの部分的な熱融着部の形成により小孔状ピンホールとするのである。ここで、スリット状ピンホールが湾曲した裂け目状ピンホールであり、該裂け目状ピンホールが部分的な熱融着により形成する熱融着部と小孔状ピンホールであるカイロ用包装材である。
【0012】
その製造方法としては、熱シール可能な積層プラスチックフィルムのピンホール処理による多数のピンホール形成工程、該ピンホールの圧熱処理による通気性多孔質フィルム形成工程を順に行うことを特徴とする。
ピンホール処理は、ピンロールとゴムロール又はブラッシロールとの組み合わせにより、ピンを刺す方向が高融点フィルム側からシール用の低融点フィルム側に向けて行う。また、
ピンホール圧熱処理は、熱ロールとゴムロールの組み合わせにより、圧熱温度70〜130℃の範囲、圧力0.5〜1.5kg/cm2の範囲で行うカイロ用包装材の製造方法である。
【0013】
本発明によると、プラスチックフィルムにピンホール処理して生ずる湾曲状の裂け目は、適切な温度と圧力で圧熱処理されることにより、裂け目にいくかの融着部分が生じ、一つの裂け目に数ケの微小な通気孔が生成し、開孔度の安定した、粉体の洩れないカイロに好適なプラスチックフィルムのみからなるカイロ用包装材が得られるのである。
【0014】
本発明で使用される100%プラスチックフィルムは、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレンなどの比較的融点の高いフィルムと、低融点のポリエチレンで代表されるシール材で構成された複合フィルムがあげられる。シール材層の厚さは、圧熱処理により、適切な通気孔を生成させるために20〜150μm、好ましくは30〜100μmが望ましい。
【0015】
本発明を効率よく実施するには、ピンロールとゴムロールまたは特にブラッシロールとの組み合わせが好ましい。また、ピンを刺す方向は融点の高いフィルム側から低いシール用のフィルム側に向けることが好ましい。これらの条件は、いずれもピンホールの裂け目にいくつかの融着部を作る上に好適である。
【0016】
また、適切なピンの径と刺し込む深度とは相関性があるが、生ずるピンホールの裂け目の径が0.1〜0.5mm程度の範囲が好ましい。0.1mm径以下では、粉体の洩れには好結果となるが、適切な通気度を得るためには、ピンの本数が莫大となり、ピンロールの製作上にも困難を生ずる。また、0.5mm径以上になると圧熱処理により融着部が生成しても粉体の洩れる危険が生ずる。
【0017】
圧熱処理は、熱ロールとゴムロールの組み合わせで好適に行うことができる。圧熱温度は、フィルムの走行速度、またはシール用フィルムの種類によって異なるが、70〜130℃の範囲が適切で、圧は0.5〜1.5kg/cm2で本発明の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0018】
従来の100%フィルムシートに対して単にピンホール処理だけの包装材を使用したカイロは、巻取りの圧力によっても通気条件が簡単に変動し、温度特性や、粉体の洩れに対して極めて不安定で、規格の安定した製品にすることは困難であったのが、本発明に従えば、安定した、美しいカイロを、安価に使えることができ、また、本発明の通気性包装材は、脱酵素剤、乾燥剤など、微粉体を封入する製品に広く利用できるものである。
【0019】
本発明のカイロ用包装材は不織布を用いなくても、積層フィルムのみで安定した通気性能を有するので、価格的にも安価に供給することができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下図面及び実施例によって本発明を具体的に説明する。図1は、本発明のカイロ用包装材の製造工程を示すフローチャートである。図2は、ピンホール処理したプラスチックフィルムに生じた裂け目の顕微鏡写真の模倣図である。また、図3は、プラスチックフィルムに生じた裂け目を110℃で圧熱処理した顕微鏡写真の模倣図である。
【0021】
図1に見られるように、包装材料となる熱シール性プラスチックラミネートフィルム1(例えばポリエステルーポリエチレンの複合フィルム)の巻取り走行中にピンホール処理をする。その結果、湾曲した裂け目が生成したスリット状ピンホール2が多数形成したスリット状ピンホールフィルムとなる。図2にその一例を示すが、裂け目状ピンホール2であるため、フィルムが湾曲した裂け目の内側でめくれると比較的大きな孔となるので、内容物の洩れ出しが生ずるものとなる。本発明では、このスリット状ピンホールフィルムを加熱ロール間に通過させてピンホールの圧熱処理を行なうが、これによって、図3のように、湾曲した裂け目状ピンホール2の一部が熱融着部3となり、連続した裂け目がめくれによる孔の生成がなくなる。この熱融着部3で分断された小孔状ピンホール4の形成によって、丁度適当な通気孔となり、かつ内容物の洩れ出しのない通気性多孔フィルムのカイロ用包装材となる。以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明する。
【0022】
実施例1
ピンの形状が0.70mm径で、尖端から1.5mmのところの径が0.45mm、3.0mmのところの径が0.55mm、7.5mmのところで0.7mm径となる釘状のピン突出部が3mmになるように、3mmピッチに配置した76mm径のピンロールと、同径のブラッシロールの間に、190mm幅のポリエステル12μmとポリエチレンフィルム40μmの熱シール性ラミネートフィルムを95mm幅だけがピン1.5mmの深さまで刺されるように配置し、50m/分の速度でピンホール処理を行なった。この処理で、図2に示すように、ラミネートフィルム1に0.4〜0.45mm径の湾曲した裂け目状ピンホール2が生成していた。続いて110℃の熱ロールとゴムロールで1.0kg/cm2のもとで圧熱処理を行なった。その結果、図3に示すように、湾曲した裂け目状ピンホール2の一部が熱融着部3と小孔状ピンホール4の連続体となっていた。
【0023】
このようにして得た通気性多孔フィルムの包装材を130mm長さにカットし、中に100〜250メッシュの海綿状鉄粉と二酸化珪素粉末及びバーミキニライトの粉体、更に15%食塩水溶液を混合した発熱剤50gを3方シール状に封入して使い捨てカイロAを調製した。
【0024】
得られたカイロは、揉んでも振っても外に発熱剤の粉体は洩れることはなく、また、JIS-S4100による温度測定で最高温度66℃、持続時間18時間以上で快適な温度特性を有するものであった。
【0025】
実施例2、3
実施例1の条件でピンホール処理した500mの巻取られた通気性包装材について、最初から200mの位置、及び500mの位置のものをそれぞれ実施例1と同様にしてカイロB、Cを調製した。これらについても揉んでも振っても外に発熱剤の洩れることはなく、温度特性も表1の如く適切なもので均質なカイロを作ることができた。
【0026】
実施例4
実施例1と同様のピンロールと、ブラッシロールの間に、190mm幅のポリプロピレン15μmとポリエチレンフィルム40μmの熱シール性ラミネートフィルム1を使用してピンホール処理を行なった。この処理で0.43〜0.49mm径の湾曲した裂け目状ピンホール2が生成していた。続いて105℃の熱ロールとゴムロールで1.0kg/cm2のもとで圧熱処理を行なった。得られたラミネートフィルム1を用いて実施例1と同様にして使い捨てカイロDを試作し、粉体の洩れ及び温度特性を実施例1と同様にして試験した。結果は表1に示すとおり良好な結果を有するものであった。
【0027】
比較例1
圧熱処理を省略する以外は実施例1と同様にしてカイロEを調製した。カイロEは10回程度振ることによって発熱剤が少量外に洩れるもので、また、最高温度は74℃、持続時間は11時間で、カイロとして適切なものでなかった。
【0028】
比較例2、3
比較例1と同様にして500mの圧熱処理をしない巻取られた通気性包装材について、最初から200mの位置、及び500mの位置のものをそれぞれ実施例1、比較例1と同様にしてカイロF,Gを調製した。F,Gは発熱剤が外に洩れるものであったり、温度特性のバラツキの大きいものであったりした。
【0029】
以上の実施例、比較例で明らかなように、単にピンホール処理だけの包装材を使用したカイロは、巻取りの圧力によっても通気条件が簡単に変動し、温度特性や、粉体の洩れに対して極めて不安定で、規格の安定した製品にすることは困難である。
【0030】
これに反し、本発明に従えば、安定した、美しいカイロを、安価に使えることができ、また、本発明の通気性包装材は、脱酸素剤、乾燥剤など、微粉体を封入する製品に広く利用できるものである。
【0031】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のカイロ用包装材の製造工程を示すフローチャートである。
【図2】ピンホール処理したプラスチックフィルムに生じた裂け目の顕微鏡写真の模倣図である。
【図3】プラスチックフィルムに生じた裂け目を110℃で圧熱処理した顕微鏡写真の模倣図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ラミネートフィルム
2 裂け目状ピンホール
3 熱融着部
4 小孔状ピンホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱シール可能な積層プラスチックフィルムのピンホール処理により多数のピンホールを形成し、該ピンホールを圧熱処理して得られる通気性多孔質フィルムからなるカイロ用包装材。
【請求項2】
プラスチックフィルムのピンホール処理で得られるスリット状ピンホールを圧熱処理で該スリット状ピンホールの部分的な熱融着により形成する小孔状ピンホールである請求項1記載のカイロ用包装材。
【請求項3】
スリット状ピンホールが湾曲した裂け目状ピンホールであり、該裂け目状ピンホールが部分的な熱融着により形成する熱融着部と小孔状ピンホールである請求項2記載のカイロ用包装材。
【請求項4】
熱シール可能な積層プラスチックフィルムのピンホール処理による多数のピンホール形成工程、該ピンホールの圧熱処理による通気性多孔質フィルム形成工程を順に行うことを特徴とするカイロ用包装材の製造方法。
【請求項5】
ピンホール処理は、ピンロールとゴムロール又はブラッシロールとの組み合わせにより、ピンを刺す方向が高融点フィルム側からシール用の低融点フィルム側に向けて行う請求項4記載のカイロ用包装材の製造方法。
【請求項6】
ピンホール圧熱処理は、熱ロールとゴムロールの組み合わせにより、圧熱温度70〜130℃の範囲、圧力0.5〜1.5kg/cm2の範囲で行う請求項4記載のカイロ用包装材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−44079(P2007−44079A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228607(P2005−228607)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(304002955)ドレンシー株式会社 (5)
【Fターム(参考)】