説明

カチオン硬化型樹脂組成物

【課題】本発明は、常態強度と共に耐久強度に優れるカチオン硬化型樹脂組成物及びこのカチオン硬化型樹脂組成物を使用して組み立てた光学装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、
(1)エポキシ樹脂(成分A)、反応性希釈剤(成分B)、カチオン重合開始剤(成分C)、フィラー(成分D)及びシランカップリング剤(成分E)を含有するカチオン硬化型樹脂組成物であって、
前記成分Dがウレタン樹脂フィラー(成分D1)を含むカチオン硬化型樹脂組成物、及び
(2)前記(1)記載のカチオン硬化型樹脂組成物を使用して組み立てた光学装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン硬化型樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光学レンズ、光ピックアップ、光検出センサー、パソコン等のディスプレイ等の精密光学装置には、各装置の構成部品を固定する、又は、被覆する等のために光学装置用接着剤(以下、光学装置用接着剤ともいう)が使用される(例えば、特許文献1)。
光学装置用接着剤として、特許文献2には、光ピックアップの対物レンズを光学装置用接着剤で固定する際に、光学装置用接着剤の硬化時に対物レンズを歪ませない観点から、硬化物が一定の硬さ(柔らかさ)を有するカチオン硬化性樹脂組成物が開示されており、特許文献3には、液晶ディスプレイのシール剤として、バックライトの光漏れ防止、外光の侵入防止等の観点から好適な光硬化性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−251776号公報
【特許文献2】特開2011−080044号公報
【特許文献3】特開2010−126630号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「エポキシ樹脂ハンドブック」、236頁、昭和62年12月25日、初版1刷発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年の小型化又は高性能化が日進月歩の精密光学装置は、構成部品自体の小型化と光学装置内の高集積化の中で、しかも、精密光学装置が高温・高湿度環境で使用される場合でも、長期間にわたる高精度な作動能力が要求されており、精密光学装置に使用される光学装置用接着剤にも、硬化後の室内環境での強度(以下、常態強度ともいう)だけでなく、高温・高湿度環境下での耐久性(以下、耐久強度という)も必要とされる。
さらに、光ピックアップのように、精密・小型に加え、コストの観点からの生産性が要請される光学装置に対しては、短時間で硬化すること(以下、硬化性ともいう)も求められる。
【0006】
本発明は、常態強度と共に耐久強度に優れるカチオン硬化型樹脂組成物及びこのカチオン硬化型樹脂組成物を使用して組み立てた光学装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)エポキシ樹脂(成分A)、反応性希釈剤(成分B)、カチオン重合開始剤(成分C)、フィラー(成分D)及びシランカップリング剤(成分E)を含有するカチオン硬化型樹脂組成物であって、
前記成分Dがウレタン樹脂フィラー(成分D1)を含むカチオン硬化型樹脂組成物、及び
(2)前記(1)記載のカチオン硬化型樹脂組成物を使用して組み立てた光学装置に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、常態強度と共に耐久強度に優れるカチオン硬化型樹脂組成物及びこのカチオン硬化型樹脂組成物を使用して組み立てた光学装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】押し抜き試験の上面図。
【図2】押し抜き試験の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のカチオン硬化型樹脂組成物(以下、カチオン硬化型樹脂組成物ともいう)は、
エポキシ樹脂(成分A)、反応性希釈剤(成分B)、カチオン重合開始剤(成分C)、フィラー(成分D)及びシランカップリング剤(成分E)を含有するカチオン硬化型樹脂組成物であって、
前記成分Dがウレタン樹脂フィラー(成分D1)を含む。
【0011】
(成分A)
カチオン硬化型樹脂組成物における成分Aはエポキシ樹脂であり、アクリル樹脂に比べて、酸素による硬化阻害がなく、また熱時弾性率も高いため(非特許文献1)、光検出器のような光学部品をハウジングに固定する際に光学部品が所定の位置から一定の精度で動かないこと(以下、固定精度ともいう)という観点から、光学装置用接着剤として好ましい。
【0012】
成分Aは、常態強度及び耐久強度に加えて固定精度を確保する観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ポリブタジエン型エポキシ樹脂、ポリイソプレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂及び脂肪族系エポキシ樹脂からなる群から選ばれる1種以上のエポキシ樹脂が好ましい。
【0013】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のフェノール型エポキシ樹脂は、成分Cの存在下でカチオン硬化型樹脂組成物の硬化性を確保する観点とハロゲン低含有化の観点とから、不純物(例えば、合成に使用したエピクロロヒドリン、エポキシ基に閉環していないハロゲン含有の中間体等)を除去すべく精製したものを用いることが好ましい。フェノール型エポキシ樹脂の精製としては、例えば、蒸留による精製、シリカゲルやアルミナ等を用いたクロマトグラフィによる精製、共有結合で結合しているハロゲンを水酸化ナトリウム水溶液のようなアルカリ水溶液で加水分解する精製などが挙げられる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂の精製品として、DIC社のEXA−8067を使用できる。
【0014】
なお、電気腐食(電食性)低減、地球環境保全の観点から、カチオン硬化型樹脂組成物中、ハロゲン量は500ppm以下であることが好ましい。成分AとしてDIC社のEXA−8067を用いると、低ハロゲン化も達成しうる。
【0015】
脂環式エポキシ樹脂としては、固定精度を確保する観点から、分子量300以上の脂環式エポキシ樹脂が好ましく、
ビニルシクロヘキセンモノオキサイド 1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(例えば、ダイセル化学工業社製CEL2000)、
1,2:8,9ジエポキシリモネン(例えば、ダイセル化学工業社製CEL3000)、
3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(例えば、ダイセル化学工業社製CEL2021P)、
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロセキサン付加物(例えば、ダイセル化学工業社製EHPE3150)、
3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、及び
水添ビフェニル型脂環式エポキシ樹脂からなる群から選ばれる1種以上のエポキシ樹脂が好ましい。
【0016】
脂肪族エポキシ樹脂としては、固定精度を確保する観点から、分子量300以上の脂環式エポキシ樹脂が好ましく、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル及びポリエチレングリコールジグリシジルエーテルからなる群から選ばれる1種以上のエポキシ樹脂が好ましい。
【0017】
成分Aとしては、固定精度を確保する観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、DIC社製のエピクロン850またはエピクロン860)及び水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、JER社製のYX8034)がより好ましく、
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(中でも、DIC社製のエピクロン860)が更に好ましい。
【0018】
(成分B)
カチオン硬化型樹脂組成物は、常態強度及び硬化性を確保する観点と、粘度を中心とする液性を調整して塗布作業性等を向上する観点から、反応性希釈剤である成分Bを含む。
成分Bとしては、常態強度及び硬化性を確保し、低粘度化して塗布作業性を向上し、併せて低収縮率化させる観点から、脂環式エポキシ樹脂(好ましくは分子量300未満)、脂肪族エポキシ樹脂(好ましくは分子量300未満)、オキセタン化合物、ビニル化合物などカチオン化可能な官能基を含んでいるものが好ましく、オキセタン化合物がより好ましい。
【0019】
オキセタン化合物として、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXA)、1,4−ビス〔{(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ}メチル〕ベンゼン(XDO)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(OXT−211(POX))、2−エチルヘキシルオキセタン(OXT−212(EHOX))、キシリレンビスオキセタン(OXT−121(XDO))、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(OXT−221(DOX))、3−エチル−〔{(3−トリエトキシシリルプロポキシ)メチル)オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられる。カッコ内は東亞合成社の品番を示す。それぞれのオキセタン化合物は、単独で使用しても、又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
(成分C)
カチオン硬化型樹脂組成物における成分Cは重合開始剤であり、光酸発生剤として作用し、常態強度及び耐久強度に加えて硬化性の観点から、好ましくはエネルギー線の照射によりルイス酸又はブレンステッド酸を発生する化合物であり、スルホニウム塩及び/又はヨードニウム塩が好ましい。
【0021】
スルホニウム塩として、常態強度及び耐久強度に加えて硬化性の観点から、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4,4’−ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、
4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン ヘキサフルオロアンチモネート、
7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
4−フェニルカルボニル−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、
4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。
市販されているスルホニウム塩系カチオン重合開始剤としては、旭電化社製SP−170、SP−172、SP−150、SP−152、サンアプロ社製CPI−210Sなどが好ましく、旭電化社製SP−170、SP−172またはサンアプロ社製CPI−210Sが更に好ましい。
これらの塩は、それぞれ単独で使用しても、又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
ヨードニウム塩として、常態強度及び耐久強度に加えて硬化性の観点から、
ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート等が好ましい。
市販されているヨードニウム塩系カチオン重合開始剤としては、ローディア社製PI2074が好ましい。
これらの塩は、それぞれ単独で使用しても、又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
(成分D及びD1)
カチオン硬化型樹脂組成物における成分Dは、ウレタン樹脂フィラーである成分D1を必須として含むフィラーである。
光学装置用接着剤には、従来から、硬化時の硬化収縮率を低減する目的で、フィラーが使用されてきたが、本発明においては、常態強度と耐久強度の両立という観点から、カチオン硬化型樹脂組成物の構成を設計すると、フィラーの中でも成分D1と後述するシランカップリング剤とが共存する場合に、極めて良好に常態強度と耐久強度の両立を達成できることが見出された。
【0024】
成分D1は、例えば、ポリイソシアネートプレポリマーである原料樹脂と機能性薬剤とブリード調整剤とを混合して混合物とし、原料樹脂を懸濁重合または懸濁架橋することによって得られる。ポリイソシアネートプレポリマーとは、イソシアネート、またはジイソシアネートとポリオールとの反応物であって末端に反応性のイソシアネート基を有するものを指す。ポリオールは、内容的にはポリエステル系、ポリエーテル系、アクリルポリオール系のいずれでもよい。
成分D1の好ましい製造方法は、例えば、特開2002−173410号公報に開示されている。
【0025】
カチオン硬化型樹脂組成物の常態強度と耐久強度の両立の観点から、
成分D1の吸油量は、好ましくは50〜200ml/100gであり、より好ましくは60〜185であり、更に、硬化性の観点も考慮すると、更に好ましくは65〜150ml/100gであり、更に好ましくは65〜120ml/100gであり、更に好ましくは65〜100ml/100gであり、更に好ましくは65〜90ml/100gである。
【0026】
吸油量は、JISK5101−13−2(2004)に準拠し、煮あまに油をトルエンに変え、試料のサンプル量を40gで行う。
(i)試料40gを測定板上の中央部に取り、トルエンをビュレットから1回に煮あまに油4、5滴に相当する量ずつ、徐々に試料の中央に滴下し、その都度全体をパレットナイフで十分に練り合わせ、液性を確認する。
(ii)上記(i)において、液性を確認したときに全体に流動性がなければ、上記(i)のトルエンの滴下と練り合わせ、及び液性の確認を繰返す。
(iii)上記(i)又は(ii)において、液性を確認したときに流動性があれば、そのまま1時間放置して、液性を確認する。
(iv)上記(iii)において、1時間放置後に液性を確認したときに全体に流動性がなければ、上記(i)のトルエンの滴下、練り合わせ、上記(iii)の液性の確認、1時間放置、液性の確認を繰返す。
(v)上記(iii)又は(iv)において、1時間放置した後の液性を確認したときに全体に流動性があれば、終点とする。
【0027】
成分D中の成分D1の含有量は、常態強度と耐久強度の両立の観点からは、
好ましくは10〜100重量%であり、より好ましくは70〜100重量%であり、更に好ましくは80〜100重量%であり、更に好ましくは90〜100重量%である。
【0028】
成分Dを、成分D1と、成分D1と異なる硬化性に好適なフィラー(成分D2)とで構成すると、カチオン硬化型樹脂組成物は常態強度と耐久強度の両立に加えて、好適に硬化性を確保できる。
【0029】
成分D2としては、カチオン硬化型樹脂組成物に良好な硬化性を付与する観点から、有機系フィラーが好ましく、
アクリル系フィラー、スチレン系フィラー、アクリル/スチレン共重合系フィラー、フッ素系樹脂フィラー、ポリエチレン系フィラー、ポリプロピレン系フィラー、及びシリコーン系フィラーからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機系フィラーが好ましく、
アクリル/スチレン共重合系フィラー、ポリエチレン系フィラー、及びポリプロピレン系フィラーからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機系フィラーがより好ましく、
アクリル/スチレン共重合系フィラーが更に好ましい。
【0030】
カチオン硬化型樹脂組成物の常態強度、耐久強度及び硬化性の並立の観点から、
成分D1及びD2の合計量中、成分D1の含有量は、好ましくは50〜100重量%であり、より好ましくは70〜100重量%であり、更に好ましくは80〜100重量%であり、更に好ましくは90〜100重量%であり、更に好ましくは100重量%である(成分D中の成分D1及びD2がこれらの好適組成を有するカチオン硬化型樹脂組成物を第1の態様のカチオン硬化型樹脂組成物ともいう)。
【0031】
第1の態様のカチオン硬化型樹脂組成物は、例えば、LD(レーザーダイオード)、光検出器(PD:フォトディデクタ)、レンズ、プリズムなどの光学部品やレンズ等の光学部品を搭載する光学モジュール等の光学装置を高い固定精度で迅速に固定できるので、組み立て用の光学装置用接着剤として有用である。その他に、ミラー等の光学部品の固定やサスペンションワイヤーの固定にも使用可能である。
【0032】
カチオン硬化型樹脂組成物の常態強度、耐久強度及び硬化性の並立の観点から、
成分D1及びD2の合計量中の成分D1の含有量は、好ましくは10重量%以上50重量%未満であり、より好ましくは15〜45重量%であり、更に好ましくは20〜40重量%であり、更に好ましくは25〜35重量%である(成分D中の成分D1及びD2がこれらの組成を有するカチオン硬化型樹脂組成物を第2の態様のカチオン硬化型樹脂組成物ともいう)。
【0033】
第2の態様のカチオン硬化型樹脂組成物は、例えば、特許文献1、特開2007−35238号公報、特開2007−311006号公報の段落0023に記載の光ピックアップ装置において、スキューネジでアクチュエータの傾きを調整した後の固定等に好適に使用できる。
【0034】
第1の態様のカチオン硬化型樹脂組成物が耐久強度及び硬化性を両立し、第2の態様のカチオン硬化型樹脂組成物が常態強度、耐久強度及び硬化性を並立する観点から、
成分D中、成分D1及びD2の合計量は、好ましくは50〜100重量%であり、より好ましくは60〜100重量%であり、更に好ましくは70〜100重量%であり、更に好ましくは80〜100重量%であり、更に好ましくは90〜100重量%であり、更に好ましくは100重量%である。
【0035】
カチオン硬化型樹脂組成物が耐久強度及び硬化性を両立する観点から、
成分Dの平均粒径は、好ましくは0.5〜150μmであり、より好ましくは1〜100μmであり、更に好ましくは5〜60μmであり、更に好ましくは10〜40μmであり、更に好ましくは15〜35μmである。
なお、成分Dの平均粒径は、HORIBA社製 レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(例えば、HORIBA社製Partica LA−950V2)により測定される。
【0036】
(成分E)
カチオン硬化型樹脂組成物における成分Eはシランカップリング剤であり、カチオン硬化型樹脂組成物の常態強度と耐久強度の両立の観点から、
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメトキシジイソプロポキシシラン、ジエトキシジイソプロポキシシラン、ジエトキシジブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシランなどのトリアルコキシシラン類;及び
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのジアルコキシシラン類からなる群から選ばれる少なくとも1種のシランカップリング剤が好ましく、
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種のトリアルコキシシラン系シランカップリング剤が更に好ましく、
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが更に好ましい。
【0037】
(その他の成分)
カチオン硬化型樹脂組成物は、本発明の効果を奏する範囲内で、光増感剤(成分F)、カチオン硬化型樹脂組成物を製造する際に各成分を個別に前もって希釈するのに必要な反応性又は非反応性の希釈剤などのその他の成分を含むことができる。但し、各成分を個別に前もって希釈するのに必要な反応性の希釈剤は成分Bに含める。
【0038】
光増感剤である成分Fとしては、カチオン硬化型樹脂組成物の硬化性の観点から、例えば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ及びジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素など挙げられる。
成分Fとして、具体的には、
ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノンのようなベンゾイン誘導体;
ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンのようなベンゾフェノン誘導体;
2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン誘導体;
2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノンのようなアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドンのようなアクリドン誘導体;
その他、α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物などが挙げられる。これらの光増感剤は、単独で使用しても、又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。
好ましい光増感剤は、2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬製DETX−S)である。
【0039】
(カチオン硬化型樹脂組成物)
カチオン硬化型樹脂組成物は、各成分を、配合槽に添加して、好ましくは温度50〜80℃で、混合撹拌して調整できる。この場合、成分Cは、成分E又は4−ブチロラクトン等の溶剤に溶解又は分散して添加してもよい。
【0040】
カチオン硬化型樹脂組成物の常態強度と耐久強度の両立の観点から、
成分A及びDの合計量中の成分Dの含有量は、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは20〜60重量%、更に好ましくは30〜60重量%、更に好ましくは40〜60重量%であり、
成分Cの含有量は、成分A100重量部に対して、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは2〜15重量部、更に好ましくは4〜10重量部、更に好ましくは6〜9重量部であり、
成分Eの含有量は、成分A及びCの合計100重量部に対して、好ましくは0.5〜10重量部、より好ましくは1〜8重量部、更に好ましくは1.5〜6重量部、更に好ましくは2〜5重量部、更に好ましくは2〜4重量部である。
【0041】
常態強度及び硬化性を確保する観点と、粘度を中心とする液性を調整して塗布作業性等を向上する観点とから、
成分Bの含有量は、成分A及びDの合計100重量部に対して、好ましくは5〜100重量部、より好ましくは5〜85重量部、更に好ましくは5〜70重量部、更に好ましくは5〜55重量部、更に好ましくは10〜45重量部、更に好ましくは15〜35重量部である。
【0042】
耐久強度及び硬化性の両立、又は、常態強度、耐久強度及び硬化性の並立の観点から、
成分A〜Eの合計の含有量は、カチオン硬化型樹脂組成物中、好ましくは80〜100重量%、より好ましくは85〜100重量%、更に好ましくは90〜100重量%、より好ましくは95〜100重量%、更に好ましくは98〜100重量%、更に好ましくは99〜100重量%、更に好ましくは99.5〜100重量%である。
【0043】
成分Fを含める場合、その含有量は、成分C100重量部に対して、好ましくは0.1〜70重量部、より好ましくは0.2〜50重量部、更に好ましくは0.3〜35重量部、更に好ましくは1〜30重量部、更に好ましくは1.5〜20重量部、更に好ましくは1.6〜17重量部である。
成分Cとしてヨウドニウム塩系PI2074を用いたときは、光増感剤DETX−Sの使用が好適であり、
成分Cとしてスルホニウム塩系のCPI−210Sを使用した場合には、光増感剤を添加しなくても、硬化性に優れる。
【実施例】
【0044】
実施例4〜6及び比較例1〜3の各組成物を以下の原材料を使用して製造した。
(1)成分A(エポキシ樹脂)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製EPICLON860)
水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER社製YX−8034)
【0045】
(2)成分B
3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成社製OXT−211(POX))
キシリレンビスオキセタン(東亞合成社製OXT−121(XDO))
【0046】
(3)成分C(カチオン重合開始剤)
ローディア社製PI2074
【0047】
(4)成分D1(成分D)(ウレタン樹脂フィラー)
根上工業社製P−400T(平均粒径16.5μm)
根上工業社製C−300(平均粒径21.0μm)
根上工業社製GS350T(平均粒径20.0μm)
【0048】
(5)成分D2(成分D)
アクリル−スチレン共重合体樹脂フィラー(根上工業社製GS350T(平均粒径20.0μm))
アクリル−スチレン共重合体樹脂フィラー(根上工業社製BS350TM(平均粒径29.4μm))
なお、表1中では「アクリル−スチレン」を「Ac-St」と表記した。
【0049】
(6)成分E(シランカップリング剤)
信越化学工業社製KBM−403
【0050】
表1に記載の配合に基づき、成分CであるPI2074の3gを、成分EであるKBM−403の3gに溶かし、成分A、成分Cの成分E溶液、成分D及び成分B(合計126g)を、配合槽(NO.300(近畿容器製)、容量300ml、ポリエチレン製)に添加し、50℃の下、撹拌機(RW28(IKA社製)、600rpm)で透明になるまで撹拌して、実施例1〜6の本発明のカチオン硬化型樹脂組成物と、比較例1〜3の組成物を調整した。
【0051】
〔評価条件〕
実施例4〜6及び比較例1〜3の各組成物の硬化後の常態強度及び耐久強度を測定した。
【0052】
(1)常態強度
幅×長さ×厚み=25mm×50mm×2mmのA5052Pグレードのアルミプレートの中央部に、幅×長さ×厚み=10mm×10mm×2mmのポリフェニレンサルファイド樹脂(DIC社製FZ3805−A1)(以下、PPS片ともいう)を乗せ、アルミプレートの長さ方向に垂直なPPS片の両サイドに、実施例4〜6及び比較例1〜3の各組成物を、片サイド当たり0.003cm3点付着させる。点付着は、デジタルディスペンサーML−5000XII(武蔵エンジニアリング社製)を用いてエアーコントロールされたシリンジから射出して行った(図1)。
次に、点付着した組成物に、高圧水銀ランプLC8(浜松ホトニクス社製)で500mW/cm×10sのエネルギー照射を行い、点付着した組成物を硬化させて押し抜き試験用サンプルとした。
押し抜き試験用サンプルの硬化した組成物で張り合わされているPPS片とアルミプレートの、PPS片がないアルミプレートの面側の中央部に対して押し抜き試験をした際の最大圧縮強度(以下、押し抜き強度ともいう)を測定した(図2)。押し抜きは、1軸圧縮試験機(引張圧縮試験機テクノグラフTG−10kN、ミネベア社製)を使用し、直径3mmのシリンダーを圧縮速度10mm/分で前記中央部にあてがって押し抜いた。
点付着した組成物を硬化させた直後の押し抜き強度が、
20N以上である場合を、常態強度が○、
10以上20未満である場合を、常態強度が△、
10未満である場合を、常態強度が×
であると評価した。
【0053】
(2)耐久強度
押し抜き試験用サンプルを、65℃95%RHで100時間の環境下で保存した後に、硬化した組成物で張り合わされているPPS片とアルミプレートの接着部分を目視観察する。接着部分のPPS片と硬化した組成物の界面に、
ウキ又はハガレがない場合を、耐久強度が○、
ウキ又はハガレがある場合を、耐久強度が×
であると評価した。
【0054】
(3)硬化性
実施例4〜6及び比較例1〜3の各組成物の硬化性を試験した。
硬化性は、各組成物を1mm厚に塗布した後、浜松ホトニクス製UV照射機で、
500mW/cm(365nm)を2.5秒間、5秒間、10秒間、15秒間、20秒間又は30秒間照射して、硬化状態を指触で確認した。指触により、
1500mJ/cm以下のエネルギーの照射で固化する場合を◎、
3000〜4500mJ/cmのエネルギーの照射で固化する場合を○、
4500mJ/cm超のエネルギーを照射してもゲル状の場合を△、
4500mJ/cm超のエネルギーを照射しても液状の場合を×とした。
【0055】
以上の結果を表1にまとめた。
【0056】
【表1】

【0057】
硬化性、常態強度及び耐久強度の評価結果を表1に記載した。
実施例1〜3のカチオン硬化型樹脂組成物は、実施例4〜6で試みた照射エネルギーの範囲では常態強度を○にすることができないと考えられる。
しかし、実施例1〜3のカチオン硬化型樹脂組成物は、常態強度が○になるようにエネルギーを照射して固化させることは、例えば、照度を強くしたり、照射時間を長くしたりすることによって可能であり、後述する実施例4〜6及び比較例1〜3の結果をみると、常態強度が○になるようにエネルギーを照射して固化させれば、耐久強度が○になる、即ち、常態強度と耐久強度が両立することが予想される。
実施例4〜6のカチオン硬化型樹脂組成物は、硬化性、常態強度及び耐久強度がいずれも○となっており、これらの性状が並立している。
比較例1〜3の組成物は、いずれも、耐久強度が×となっており、常態強度及び耐久強度が両立しない。
【符号の説明】
【0058】
1:アルミプレート
2:PPS片
3:実施例4〜6又は比較例1〜3の組成物
4:押し抜き試験時のシリンダーの押し抜き方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(成分A)、反応性希釈剤(成分B)、カチオン重合開始剤(成分C)、フィラー(成分D)及びシランカップリング剤(成分E)を含有するカチオン硬化型樹脂組成物であって、
前記成分Dがウレタン樹脂フィラー(成分D1)を含むカチオン硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記成分D1の吸油量が50〜200ml/100gである請求項1記載のカチオン硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記成分D1の含有量が、成分D中、10〜100重量%である請求項1又は2記載のカチオン硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
前記成分Dの含有量が、前記成分Aと前記成分Dの合計量中、10〜70重量%である請求項1〜3のいずれか1項記載のカチオン硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
前記成分Eの含有量が、前記成分Aと前記成分Dの合計100重量部に対して、1〜10重量部である請求項1〜4のいずれか1項記載のカチオン硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
成分Bの含有量が、成分A及びCの合計100重量部に対して、5〜100重量部である請求項1〜5のいずれか1項記載のカチオン硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
光学装置組み立て用の光学装置用接着剤である請求項1〜6のいずれか1項記載のカチオン硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
前記光学装置が光ピックアップ装置である請求項7記載のカチオン硬化型樹脂組成物。
【請求項9】
請求項7記載のカチオン硬化型樹脂組成物を使用して組み立てた光学装置。
【請求項10】
請求項8記載のカチオン硬化型樹脂組成物を使用して組み立てた光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−67732(P2013−67732A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207668(P2011−207668)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000162434)協立化学産業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】