説明

カツラ専用シリコンリムーバー

【課題】健康を害することなく、かつ作業性もよく接着剤を剥離できるような、カツラ専用のシリコン剥離剤の開発を課題とする。
【解決手段】99%発酵アルコール、N−メチルピロリドン、エトキシエタノール、ヒドロキシプロピルセルロース及びN−ヘプタンを主成分とするリムーバーが上記課題を解決できる。特にその配合比が99%発酵アルコール35.0%〜45.0%、N−メチルピロリドン1.0%〜5.0%、エトキシエタノール15.0%〜20.0%、ヒドロキシプロピルセルロース1.0%〜3.0%及びN−ヘプタン23.65%〜47.51%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カツラ専用シリコンリムーバーに関する。特に、工業用有機溶剤及びフロン並びに塩素系溶剤を使用することなく、硬化したシリコンを容易に毛髪又は皮膚より剥離することのできるカツラ専用シリコンリムーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来接着剤は、有機溶剤系で溶解、剥離していたが、刺激臭や気化物の吸引等有害であり、健康面での問題があった。
【0003】
一般的に接着剤として使用されている樹脂として、ゴム系、アクリル系、酢酸ビニル系の3種が挙げられるが、これらの接着剤を剥離するためには、溶液タイプに変化させる必要があり、有機溶剤又は界面活性剤でエマルジョン化する方法がある。
【0004】
例えば、ゴム系樹脂の溶解剤としては、アンモニア、トルエン、ホルマリン、メタノール等であり、アクリル系樹脂の溶解剤としては、トルエン、ベンゼン、ホルマリン、メタノール等であり、酢酸ビニル系樹脂の溶解剤としては、酢酸エステル、ホルマリン、メタノール等である。しかしながら、ホルマリンやメタノールは、目、鼻、口等から気化したものを吸気する等、作業上及び環境面等に悪影響を及ぼすこととなる。
【0005】
そして、従来の有機溶媒系接着剤リムーバーは、接着剤の剥離時間が短いという利点がある一方、皮膚に付着した接着剤を剥離する場合、炎症や発疹を起こすことがあった。また接着剤が溶解しているため、他所に再付着してその部分がベタつくようになるという、種々の欠点があった。
【0006】
特に、カツラを頭皮に装着する際に使用する接着剤を除去する場合、有機溶剤で除去した溶解液がカツラに再付着することが多く、作業性に問題があった。
【0007】
このように、健康を害することなく、かつ作業性もよく接着剤を剥離できるような、剥離剤の開発が求められているところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−167568号公報
【特許文献2】特開2010−077355号公報
【特許文献3】特願2011−034684号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
健康を害することなく、かつ作業性もよく粘着剤を剥離できるような、カツラ専用のシリコン剥離剤の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決する為に鋭意努力をした結果、N−メチルピロリドン及び他の成分との配分により課題を解決できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は
(1)99%発酵アルコール、N−メチルピロリドン、エトキシエタノール、ヒドロキシプロピルセルロース及びN−ヘプタンを主成分とするカツラ専用シリコンリムーバー。
(2)99%発酵アルコール35.0%〜45.0%、N−メチルピロリドン1.0%〜5.0%、エトキシエタノール15.0%〜20.0%、ヒドロキシプロピルセルロース1.0%〜3.0%及びN−ヘプタン23.65%〜47.51%を主成分とすることを特徴とする(1)記載のカツラ専用シリコンリムーバー。
【0012】
本出願人は、先に水性粘着剤リムーバーを開発し、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル及びブトキシエタノール(またはエタノール)を含有する粘着剤除去組成物の特許出願を行っている(特許文献1)。しかし、本リムーバーは一般的な水性粘着剤に対するリムーバーである。一方、カツラの粘着剤としてはベタツキがない(毛髪が展着しない)、撥水する(シャンプーしてもカツラがとれない)、安全性が高い(体に悪影響を及ぼさない)等の要件を備えていることが求められており、本出願人はシリコン粘着剤が最も適していることを見出した。
【0013】
そして本出願人は、また変性シリコン接着剤に粉状抗炎症剤及び粉状殺菌剤を添加したカツラ専用粘着剤を開発して特許出願(特許文献2)し、更に微粒子ナイロン末を添加したカツラ専用粘着剤をも開発し特許出願(特願2011−034684号(特許文献3))したが、シリコン粘着剤を用いてカツラを接着した場合、上記のような一般的な水性粘着剤リムーバーでは手際よく剥離することが難しいという欠点があった。
【0014】
そこで、本発明者は、剥離剤として公知の成分を種々テストした結果、99%発酵アルコール、N−メチルピロリドン、エトキシエタノール、ヒドロキシプロピルセルロース及びN−ヘプタンの組み合わせが最も効果的であり、その相対量も99%発酵アルコール35.0%〜45.0%、N−メチルピロリドン1.0%〜5.0%、エトキシエタノール15.0%〜20.0%、ヒドロキシプロピルセルロース1.0%〜3.0%及びN−ヘプタン23.65%〜47.51%が好ましいことを見出した。なお、レゾルシン、ソルビタン脂肪酸エステル、グリチルリチン酸ジカリウム及びジメチルシリコンエマルジョンは、それぞれ0.01〜0.05%、0.1〜0.5%、0.01〜0.05%及び0.1〜0.5%が好ましいことが分かった。
【発明の効果】
【0015】
液だれがなく、剥離時間が短縮され、使用量も減少させることが可能なカツラ専用シリコンの剥離剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を具体的に説明するために実施例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0017】
[実施例1]
以下の成分割合でカツラ専用シリコンリムーバーを試作した。
【0018】
【表1】

上記成分中、99%発酵アルコール(エタノール)、N−メチルピロリドン、エトキシエタノール、増粘剤としてヒドロキシプロピルセルロース及び溶剤としてN−ヘプタンは、本発明において必須の成分である。
【0019】
特に、ヒドロキシプロピルセルロースを増粘剤として用いることによりゲル状となり、液ダレがほぼなくなり、また揮発性成分の揮発量が少なくなり、剥離剤の使用量を減少させることができる。
【0020】
なお、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、アロエベラエキス及び混合植物抽出液は保湿剤、イソプロピルメチルフェノールは防腐剤、及びレゾルシンは抗炎症剤として用いており、必要に応じて他の成分と代替することも可能である。ソルビタン脂肪酸エステルは界面活性剤でシリコンを浮かせやすくする効果を有し、グリチルリチン酸ジカリウムは抗炎症剤及びジメチルシリコンエマルジョンは平滑性剤である。
【0021】
[実施例2]
実施例1で試作した本発明品と他社の市販品とを比較する試験を行い、表2のような結果が得られた。
【0022】
【表2】

【0023】
1)引火点測定試験:各試料を「セタ密閉式引火点試験器(30000-0型;ニッペトレーデイング社製)」で引火点を測定し、危険等級を調査する。
2)液ダレ測定試験:高さ600mm×幅600mm×厚さ5mmの透明ガラス板の両脇をブロックで抑えガラス面を垂直とし、上部より垂直に300mm下まで1mm単位で印しをし、油性マジックで記入し、各試料を薬サジに0.1g量り取り、0mmより流し3分後のタレ位置を測定する。
3)剥離時間測定:直径10cmのガラスシャーレー(Fine社製)に0.1gの医療用シリコン(si355)を採り、薄く指で伸ばし6時間放置し自然乾燥させる。次に、各試料0.5gずつ量り取り、乾燥させたシリコンに塗布し、シリコンがシャーレーより剥離されるまでの時間を測定する。また、液剤の場合、揮発性が高いため、剥離するまでの使用量を測定する。(電子天秤:島津製作所製U-4200H型)
4)試験検体:医療用シリコンSI355(T社製)
5)比較試料:
(1)「(仮)変性シリコンリムーバーゲル」 本発明品 日本フィリン社製
(2)「皮膚用シリコンリムーバー」 S社製
(3)「C−シリコンクリーナー」 I社製
(4)「シリコンシーラントクリーナー」 PA社製
【0024】
表2の結果から明らかなように、比較例として示した他社製品は、引火点が低く危険度が高い、液ダレが長い、すなわち服等に付着しやすい、また剥離時間も長く使用量も多く必要という結果が得られた。一方、本発明品は、引火点が高く危険度がそれほどなく、液ダレも短く、また剥離時間が短くて使用量が少ないという結果が得られた。
【0025】
従って、カツラに適した粘着剤であるシリコンをカツラの接着に使用した場合、リムーバー(剥離剤)として本発明品を用いることにより、剥離作業を迅速かつ安全に行うことができることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
99%発酵アルコール、N−メチルピロリドン、エトキシエタノール、ヒドロキシプロピルセルロース及びN−ヘプタンを主成分とするカツラ専用シリコンリムーバー。
【請求項2】
99%発酵アルコール35.0%〜45.0%、N−メチルピロリドン1.0%〜5.0%、エトキシエタノール15.0%〜20.0%、ヒドロキシプロピルセルロース1.0%〜3.0%及びN−ヘプタン23.65%〜47.51%を主成分とすることを特徴とする請求項1記載のカツラ専用シリコンリムーバー。








































【公開番号】特開2012−177024(P2012−177024A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40202(P2011−40202)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(593084627)日本フイリン株式会社 (14)
【Fターム(参考)】