説明

カテコールアミン認識性を指標に選抜した微生物とカテコールアミン含有組成物

【課題】本発明は、動物・植物生体内にも存在するカテコールアミン等のカテコール骨格を有する化合物を認識し増殖促進する微生物の選抜方法およびプロバイオティック乳酸菌の増殖促進作用を有するカテコール骨格を有する化合物含有組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、カテコール骨格を有する化合物を認識し増殖促進する微生物の選抜方法を鋭意開発したことにより見出し、これにより、カテコールアミン等のカテコール骨格を有する化合物を認識し増殖促進する微生物を見出したことによって上記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物・植物生体内にも存在するカテコールアミン等のカテコール骨格を有する化合物を認識し増殖促進する微生物の選抜方法、カテコール骨格を有する化合物認識性プロバイオティック乳酸菌およびプロバイオティック乳酸菌の増殖促進作用を有するカテコール骨格を有する化合物含有組成物と、カテコール骨格を有する化合物認識性微生物を含有する食品や微生物添加剤及びこの添加剤を用いる食品副産物の発酵飼料、飼料作物・牧草サイレージ、完全混合飼料、発酵粗飼料調製方法並びに食品調製方法を含む、当該微生物の産業有効利用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カテコールアミンは、カテコール骨格を有する化合物の代表的なものであり、動物体や植物体内においてホルモンや神経伝達物質として生理的作用を発揮している(非特許文献1)。動物体内において、カテコールアミンは神経線維末端のみならず、消化管組織、消化管内容物、糞便、尿、血中にも存在しており、過剰なストレス応答によりその濃度が上昇する(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。また、野菜類、種子類、果物類、飼料作物や牧草など、ヒトおよび家畜にとって食経験の豊富な植物体に多量に存在し、ストレス低減作用・抗酸化作用・生体防御作用に関与すると推察されている。植物体のバイオマスを考慮すると、植物由来カテコール骨格を有する化合物含有組成物の潜在量は豊富であり、本含有組成物の機能性成分としての高度有効利用が十分に期待できる。
【0003】
しかし、カテコール骨格を有する化合物を栄養源や増殖促進剤として利用する有用なプロバイオティクスとして利用できる菌は知られていない。
【0004】
プロバイオティクスの代表例である乳酸菌は、食品や飼料製造過程において、有益な発酵促進作用を発揮することから、産業上極めて重要な有益微生物である。また、ヒトや家畜などの生体に摂取されることにより、腸内細菌叢改善などの有益な生理保健効果が期待できる。従って、産業上も生体腸内細菌叢バランスの改善の観点からも、効率の良い乳酸菌の増殖および活性を促進させるための技術確立が求められている。また、ヒトおよび家畜の健康増進作用の観点から、乳酸菌増殖促進成分自体の市場価値も高い。難消化性糖質(フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラクチュロース等)に代表されるプレバイオティクスが好例であり(非特許文献6)、既知の特許・研究報告も数多い。昨今の乳酸菌の増殖促進成分関連の市場規模を考慮すると、有益微生物の増殖促進成分に対するニーズは極めて高いが、カテコール骨格を有する化合物含有組成物による乳酸菌増殖促進作用の報告は国内外を通して見あたらない。
【0005】
近年、家畜用抗生剤の使用量増大による多剤耐性菌出現や環境汚染への懸念が社会問題化し、低減技術の確立が急務の課題である。使用量増大の理由として、家畜の成長促進のみならず、消化管内における有害微生物の増殖阻害を目的とした微生物叢改善への期待が挙げられる(非特許文献7)。乳酸菌増殖促進作用を有する成分であるプレバイオティクスとして、カテコール骨格を有する化合物に動物体内共生細菌叢バランスの改善作用を期待することは、抗生剤代替技術として大変有意義であり、抗生剤低減に資することが強く期待できる。
【0006】
一方、ヒトにおいては、精神的ストレスなどの各種ストレスにより、消化管内の微生物叢は悪化し、有害微生物が多く検出されるようになる(非特許文献8;非特許文献9)。過敏性腸症候群患者の増加や腸内細菌叢バランスの悪化に端を発するアレルギー等の各種疾病の増大が深刻であり、増え続ける医療費問題に対して、予防医学の観点から解決が望まれる。
【0007】
近年、ストレスにともない生体内濃度が上昇するカテコールアミンを認識し増殖促進する病原性細菌の存在が示され(非特許文献10)、上述した家畜やヒトにおける共生細菌叢悪化メカニズムの一端である可能性が考えられた。しかしながら、カテコールアミンを作用点とする共生細菌叢バランスを改善する技術は存在しない。
【0008】
非特許文献11は、グラム陰性菌のバナナ含有神経伝達物質の増殖促進作用を開示している。非特許文献12は、Lactobacillus属細菌のバナナの栄養源としての利用を開示している。バナナに神経伝達物質またはカテコールアミンを含むことは記載されていない。上述のように、非特許文献12には、バナナに神経伝達物質またはカテコールアミンを含むことは記載されておらず、非特許文献11に記載のグラム陰性菌はグラム陽性菌である乳酸菌とは生活環がまったく異なり栄養源も相互に類推可能ではないことから、非特許文献11および非特許文献12を合理的に組み合わせる根拠を見出すことはできないと思われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kulma A. & Szopa J., Plant Science (2007)Vol.172, 433−440
【非特許文献2】Eldrup E. & Richter E−A., American Journal of Physiology−Endocrinology and Metabolism (2000)Vol.279, 815−822
【非特許文献3】Lyte M., Trends in Microbiology (2004)Vol.12, 14−20
【非特許文献4】Alvedy J.et al., Annals of Surgery (2000)Vol.232, 480−489
【非特許文献5】:Ohshiro S., & Tsuda T., 琉球大学農学部学術報告 (1981)Vol.28 , 235−238
【非特許文献6】Roberfroid M−B., British Journal of Nutrition (1998)Vol.80, 197−202
【非特許文献7】Prescott J−F.,Animal Health Research Reviews (2008)Vol.9, 127−133
【非特許文献8】Holdman L−V. et al., Applied and Environmental Microbiology (1976)Vol.31, 359−375
【非特許文献9】Takatsuka H. et al., International Journal of Hematology (2000)Vol.71, 273−277
【非特許文献10】Freestone P−P. et al., BMC Microbiology (2007)Vol.7, 8
【非特許文献11】Lyte M., FEMS Microbilogy Letters (2006)Vol.154, 245−250
【非特許文献12】TSEN J−H. et al., J. Gen. Appl. Microbiol. (2003)Vol.49, 357−361
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術において、抗生物質は、多剤耐性菌出現や環境汚染への懸念から、低減すべきものとして国際的にも注視されている。また、カテコールアミンによる消化管微生物叢の変容メカニズムが明らかになりつつある中で、カテコールアミン等のカテコール骨格を有する化合物認識性を指標とする安全かつ有益な微生物の選抜方法が存在しない。このため、本作用を積極的に利用し、カテコールアミンに対して有害微生物と競合するプロバイオティック微生物を利用できない点が問題であった。
【0011】
そこで、本発明は、動物・植物生体内にも存在するカテコールアミン等のカテコール骨格を有する化合物を認識し増殖促進する微生物の選抜方法およびプロバイオティック乳酸菌の増殖促進作用を有するカテコール骨格を有する化合物含有組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、カテコール骨格を有する化合物を認識し増殖促進する微生物の選抜方法を鋭意開発したことにより見出し、これにより、カテコールアミン等のカテコール骨格を有する化合物を認識し増殖促進する微生物を見出したことによって上記課題を解決した。
【0013】
そこで、本発明は、以下を提供する。
(1)カテコール骨格を有する化合物によって増殖活性が上昇するLactobacillus plantarum菌株。
(2)前記増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30% ウシ血清を含む培地(pH6.5)において、
L−ドパの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも1.3倍上昇するか、
ドパミンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも1.4倍上昇するか、
ノルエピネフリンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも1.5倍上昇するか、
エピネフリンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも1.3倍上昇するか、および
ピロカテコールの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも1.8倍上昇する、
からなる群より選択される特徴の少なくとも1つの特徴を有する、項目1に記載のLactobacillus plantarum菌株。
(3)前記増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30% ウシ血清を含む培地(pH6.5)において、
L−ドパの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも3.7倍上昇するか、
ドパミンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも2.4倍上昇するか、
ノルエピネフリンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも4.1倍上昇するか、
エピネフリンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも4.0倍上昇するか、および
ピロカテコールの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも6.3倍上昇する、
からなる群より選択される特徴の少なくとも1つの特徴を有する、項目1または2に記載のLactobacillus plantarum菌株。
(4)前記化合物は、カテコールアミンを含む、項目1〜3のいずれか1項に記載の菌株。
(5)前記化合物が、ピロカテコールまたはその塩、(−)−エピネフリン(アドレナリン)またはその塩、L−(−)−ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)またはその塩、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(L−ドパ)またはその塩、およびドパミンまたはその塩、ドブタミンまたはその塩、(−)−イソプロテレノールまたはその塩、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸またはその塩、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸またはその塩、塩酸(R)−(+)−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−(1H)3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール、塩酸cis−(±)−1−(アミノメチル)−3,4−ジヒドロ−3−フェニル−1H−2−ベンゾピラン−5,6−ジオール、臭化水素酸4−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−チエノ[2,3−c]ピリジン、一臭化水素酸6−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1H−3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール、臭化水素酸(±)−6−クロロ−7,8−ジヒドロキシ−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピン、臭化水素酸R(−)−2,10,11−トリヒドロキシ−N−プロピル−ノルアポルフィン水和物、塩酸R(−)−プロピルノルアポモルフィン、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸および3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸ならびにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1つを含む項目1〜5のいずれか1項に記載の菌株。
(6)前記化合物が、ピロカテコール、(−)−エピネフリン(アドレナリン)、(+)−酒石酸水素(−)−エピネフリン(アドレナリン)、塩酸(−)−エピネフリン(アドレナリン)、L−(−)−ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、(+)−酒石酸水素L−(−)−ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)一水和物、L−ドパ、塩酸ドパミン、塩酸ドブタミン、塩酸(−)−イソプロテレノール、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸および3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸からなる群より選択される、項目1〜5のいずれか1項に記載の菌株。
(7)前記化合物がドパミンまたはその塩である、項目1〜6のいずれか1項に記載の菌株。
(8)前記菌株は、Lactobacillus plantarum TO1000、TO1001、TO1002またはTO1003(受託番号NITE P−958、NITE P−959、NITE P−960またはNITE P−961)である項目1〜7のいずれか1項に記載の菌株。
(9)カテコール骨格を有する化合物を含む、Lactobacillus plantarum菌株の増殖のための組成物。
(10)前記化合物がカテコールアミンである、項目9に記載の組成物。
(11)前記化合物が、ピロカテコールまたはその塩、(−)−エピネフリン(アドレナリン)またはその塩、L−(−)−ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)またはその塩、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(L−ドパ)またはその塩、およびドパミンまたはその塩、ドブタミンまたはその塩、(−)−イソプロテレノールまたはその塩、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸またはその塩、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸またはその塩、塩酸(R)−(+)−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−(1H)3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール、塩酸cis−(±)−1−(アミノメチル)−3,4−ジヒドロ−3−フェニル−1H−2−ベンゾピラン−5,6−ジオール、臭化水素酸4−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−チエノ[2,3−c]ピリジン、一臭化水素酸6−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1H−3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール、臭化水素酸(±)−6−クロロ−7,8−ジヒドロキシ−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピン、臭化水素酸R(−)−2,10,11−トリヒドロキシ−N−プロピル−ノルアポルフィン水和物、塩酸R(−)−プロピルノルアポモルフィン、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸および3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸ならびにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1つを含む項目9または10に記載の組成物。
(12)前記化合物が、ピロカテコール、(−)−エピネフリン(アドレナリン)、(+)−酒石酸水素(−)−エピネフリン(アドレナリン)、塩酸(−)−エピネフリン(アドレナリン)、L−(−)−ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、(+)−酒石酸水素L−(−)−ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)一水和物、塩酸ドパミン、塩酸ドブタミン、塩酸(−)−イソプロテレノール、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸および3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸からなる群より選択される、項目9〜11のいずれか1項に記載の組成物。
(13)前記化合物がドパミンまたはその塩である、項目9〜12のいずれか1項に記載の組成物。
(14)前記菌株は、Lactobacillus plantarum TO1000、TO1001、TO1002またはTO1003(受領番号NITE P−958、NITE P−959、NITE P−960またはNITE P−961)である、項目9〜13のいずれか1項に記載の組成物。
(15)項目1〜8のいずれか1項に記載の菌株を含むプロバイオティクス。
(16)項目1〜8のいずれか1項に記載の菌株とカテコール骨格を有する化合物とを組み合わせたシンバイオティクス。
(17)前記化合物は、体内で存在する場合に前記菌株の1×10コロニー形成単位(cfu)あたり少なくとも5μMで含まれる項目16に記載のシンバイオティクス。
(18)項目1〜8のいずれか1項に記載の菌株と組み合わせて使用するための、カテコール骨格を有する化合物を含むプレバイオティクス。
(19)項目1〜8のいずれか1項に記載の菌株または項目9〜14のいずれか1項に記載の組成物あるいはその両方、あるいは項目15に記載のプロバイオティクス、項目16または17に記載のシンバイオティクス、項目18に記載のプレバイオティクス、あるいはこれらの2以上を含む添加剤。
(20)前記添加剤は、稲サイレージ用である、項目19に記載の添加剤。
(21)項目1〜8のいずれか1項に記載の菌株または項目9〜14のいずれか1項に記載の組成物あるいはその両方、あるいは項目15に記載のプロバイオティクス、項目16または17に記載のシンバイオティクス、項目18に記載のプレバイオティクス、あるいはこれらの2以上を含む食品。
(22)項目1〜8のいずれか1項に記載の菌株または項目9〜14のいずれか1項に記載の組成物あるいはその両方、あるいは項目15に記載のプロバイオティクス、項目16または17に記載のシンバイオティクス、項目18に記載のプレバイオティクス、あるいはこれらの2以上を含む医薬。
(23)項目1〜8のいずれか1項に記載の菌株または項目9〜14のいずれか1項に記載の組成物あるいはその両方、あるいは項目15に記載のプロバイオティクス、項目16または17に記載のシンバイオティクス、項目18に記載のプレバイオティクス、あるいはこれらの2以上を含む飼料。
(24)カテコール骨格を有する化合物によって増殖活性が上昇するLactobacillus plantarum菌株を選択する方法であって、該方法は、
A)Lactobacillus plantarum菌を含む試料を提供する提供工程;
B)硫酸マグネシウム(MgSO)、硝酸アンモニウム(NHNO)、塩化カリウム(KCl)、D−(+)−グルコース、リン酸二水素カリウム(KHPO)およびウシ血清を含む培地中で、カテコール骨格を有する化合物の存在下または不存在下で該試料を培養する培養工程;および
C)該化合物の不存在下で増殖せず、かつ、存在下において増殖したか、または該化合物の存在下において不存在下よりも増殖が促進された菌株を分離する分離工程
を包含する、方法。
(25)前記硫酸マグネシウムは、1.16〜1.74mM、前記硝酸アンモニウムは、8.02〜9.81mM、前記塩化カリウムは、3.83〜5.74mM、前記D−(+)−グルコースは3.96〜39.64mM、前記リン酸二水素カリウムは、2.09〜3.14mM、および前記ウシ血清は15〜30%で前記培地中に存在し、前記培地はpHが6.0〜7.0である、項目24に記載の方法。
(26)前記培養工程は、32〜48時間実施される、項目24または25に記載の方法。
(27)前記培養工程は、25〜40℃で実施される、項目24〜26のいずれか1項に記載の方法。
(28)前記培養工程は、0〜5%CO、および1〜20%Oの条件下で実施される、項目24〜227のいずれか1項に記載の方法。
(29)前記試料は、5×10〜5×10コロニー形成単位/wellの間で前記Lactobacillus plantarum菌を含む、項目24〜28のいずれか1項に記載の方法。
【0014】
家畜飼料の場合、消化管微生物叢を制御するために様々な抗生物質およびその投与方法が開発されている(非特許文献7)。また、飼料・食品にかかわらず、プロバイオティック微生物とりわけ乳酸菌による消化管微生物改善技術が数多く提唱されている。
また、乳酸菌増殖促進作用を有する機能性成分として、これまで難消化性糖質が報告されており、いわゆるプレバイオティクスとして数多く商品化されている。本発明は、これらの技術に応用することができる。
【0015】
本発明の構成および優位な特徴は、カテコールアミンなどのカテコール骨格含有化合物に対する認識性を指標とした微生物選抜方法と、プロバイオティクスとして機能する乳酸菌に対して、増殖促進作用を発揮するカテコール骨格を有する化合物含有組成物である。具体的には、生体内消化管環境を反映する低栄養培地を新規に調製し、カテコールアミン化合物(ドパ、ドパミン、エピネフリン(アドレナリン)およびノルエピネフリン(ノルアドレナリン)等)などのカテコール骨格含有化合物の存在下で、嫌気および好気条件下で培養することにより、カテコールアミンなどのカテコール骨格含有化合物に対して増殖性を示す菌株例として、牧草サイレージ由来Lactobacillus plantarum TO1000、TO1001、TO1002およびTO1003を見出した。これまでに、カテコールアミンなどのカテコール骨格含有化合物に対して増殖性を示す乳酸菌が発見された事例は本発明を除いて存在しない。
【0016】
また、本作用を有するカテコールアミンなどのカテコール骨格含有化合物は、従来報告されている難消化性糖質成分とは化学構造上異なる点でも注目されるべきである。
【発明の効果】
【0017】
カテコールアミンなどのカテコール骨格を有する化合物を増殖因子とする微生物を用いたプロバイオティクス、同化合物のプレバイオティクスとしての利用、およびこれらを含むシンバイオティクスが提供された。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明で使用した神経伝達物質および関連化合物の構造を示す。L−チロシン (a),3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(L−ドパ)(b),ドパミンヒドロクロリド(c),(−)−エピネフリン(アドレナリン)(d),(−)−ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)(e),(+)−酒石酸水素(−)−エピネフリン塩(f),(+)−酒石酸水素L−(−)−ノルエピネフリン塩1水和物(g)が示される。
【図2】図2は、エピネフリンによるLactobacillus plantarum TO1002株の増殖促進を示す。(A)TO1002株を0,0.5,1,5,10,100または500(μM)エピネフリンを含む培地中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度(optical density,OD 600nm)を測定した。100μM エピネフリン添加および無添加培地におけるTO1002株の増殖について,経時的(0,12,24,34,36および38時間)に培養液の濁度(B)およびpH(C)を測定した。(D)100μM エピネフリン添加および無添加培地におけるTO1002株の0,24および36時間後の増殖について,コロニー計数法により解析し,培養液1mL当たりのコロニー形成単位(colony forming unit,CFU)として示した。(E)好気性および嫌気性条件下において,TO1002株を100μM エピネフリン添加および無添加培地で36時間培養し,培養後の培養液の濁度を測定した。(F)TO1002株を0,0.5,1,5,10,100または500(μM)エピネフリン−bitartrate(酒石酸水素エピネフリン塩)を含む培地中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を*(p<0.05),**(P<0.01),***(P<0.001)で示す。
【図3】図3は、ノルエピネフリンによるLactobacillus plantarum TO1002株の増殖促進を示す。(A)TO1002株を0,0.5,1,5,10,100または500(μM)のノルエピネフリンを含む培地中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度(optical density,OD 600nm)を測定した。100μMノルエピネフリン添加および無添加培地におけるTO1002株の増殖について,経時的(0,12,24,34,36および38時間)に培養液の濁度(B)およびpH(C)を測定した。(D)100μM ノルエピネフリン添加および無添加培地におけるTO1002株の0,24および36時間後の増殖について,コロニー計数法により解析し,培養液1mL当たりのコロニー形成単位(colony forming unit,CFU)として示した。(E)好気性および嫌気性条件下において,TO1002株を100μMエピネフリン添加および無添加培地で36時間培養し,培養後の培養液の濁度を測定した。(F)TO1002株を0,0.5,1,5,10,100または500(μM)エピネフリン−bitartrate(酒石酸水素エピネフリン)を含む培地中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を*(p<0.05),**(P<0.01),***(P<0.001)で示す。
【図4】図4は、L−ドパ,ドパミンおよびL−チロシンのLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性を示す。(A)TO1002株をそれぞれ0,0.5,1,5,10,100または500(μM)のL−ドパ,ドパミンあるいはL−チロシンを含む培地中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を*(p<0.05),***(P<0.001)で示す。
【図5】図5は、エピネフリン,ノルエピネフリン,L−ドパ,ドパミンおよびL−チロシンのLactobacillus plantarum TO1000 (A),TO1001 (B),TO1003 (C),JCM1149T (D)に対する増殖促進活性を示す。各菌株をそれぞれ100(μM)のエピネフリン,ノルエピネフリン,L−ドパ,ドパミンあるいはL−チロシンを含む培地中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を*(p<0.05),**(P<0.01),***(P<0.001)で示す。
【図6】図6は、本発明で使用した人工合成アゴニスト物質および関連化合物の構造式を示す。ピロカテコール(A),ドブタミンヒドロクロリド(B),(−)−イソプロテレノールヒドロクロリド(C)が示される。
【図7】図7は、ドブタミンおよびイソプロテレノールのLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性を示す。TO1002株をそれぞれ0,0.5,1,5,10,100または500(μM)ドブタミン(A)あるいはイソプロテレノール(B)を含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を**(P<0.01),***(P<0.001)で示す。
【図8−1】図8−1は、ピロカテコールのLactobacillus plantarum TO1000 (A),TO1001 (B),TO1002 (C),TO1003 (D),JCM1149T株 (E)に対する増殖促進活性を示す。各菌株を0,0.5,1,5,10,100または500(μM)ピロカテコールを含むNo.189−091201培地中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を*(p<0.05),***(P<0.001)で示す。
【図8−2】図8−2は、ピロカテコールのLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性を示す。TO1002株をそれぞれ1,10または100(μM)のピロカテコールを含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を***(P<0.001)で示す。
【図9】供試菌株のグラム染色後の顕微鏡写真を示す。(A)TO1000 (B)TO1001 (C)TO1002 (D)TO1003が示される。
【図10】図10は、recA遺伝子標的multiplex PCRによるL.plantarumグループの判別を示す。M,DNAマーカー;1,Lactobacillus casei JCM1134T;2,Lactobacillus paraplantarum JCM12533T;3,Lactobacillus pentosus JCM1558T;4,Lactobacillus plantarum JCM1149T;5,TO1000;6,TO1001;7,TO1002;8、TO1003。図10は、現在の分類学に従えば、L.plantarumであることの最大の決定要因であるということができる。
【図11】図11は、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸(DHMA)および3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)のLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性を示す。TO1002株をそれぞれ0,0.5,1,5,10,100または500(μM)DHMA(A)あるいはDOPAC(B)を含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を***(P<0.001)で示す。
【図12】図12は、エピネフリン塩酸塩およびノルエピネフリン塩酸塩のLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性を示す。TO1002株をそれぞれ0,0.5,1,5,10,100または500(μM)エピネフリン塩酸塩(A)あるいはノルエピネフリン塩酸塩(B)を含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を**(P<0.01)、***(P<0.001)で示す。
【図13】図13は、異なる光学異性体のドパ、エピネフリンおよびノルエネフリンのLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性を示す。TO1002株をそれぞれ1,10または100(μM)のDL-,L-,D-ドパ(A),DL-,L-,D-エピネフリン(B),DL-,L-,D-ノルエピネフリン(C)を含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を*(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)で示す。
【図14】図14は、エピネフリン,ノルエピネフリン,L−ドパ,ドパミンおよびL−チロシンのLactobacillus plantarum TO1004(A),TO1005(B),TO1006(C)に対する増殖促進活性を示す。各菌株をそれぞれ100(μM)のエピネフリン,ノルエピネフリン,L−ドパ,ドパミンあるいはL−チロシンを含む培地中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を***(P<0.001)で示す。
【図15】図15は、N-オレオイルドーパミン(ODA)、N−アラキドノイルドーパミン(NADA)のLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性を示す。TO1002株をそれぞれ0,0.5,1,5,10,100または500(μM)のN-オレオイルドーパミンあるいはN−アラキドノイルドーパミンを含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を***(P<0.001)で示す。
【図16】図16は、塩酸(R)−(+)−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−(1H)3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール(SKF−38393)、塩酸cis−(±)−1−(アミノメチル)−3,4−ジヒドロ−3−フェニル−1H−2−ベンゾピラン−5,6−ジオール(A−68930)、臭化水素酸4−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−チエノ[2,3−c]ピリジン(SKF−89626)、一臭化水素酸6−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1H−3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール(フェノルドパム(Fenoldopam))、臭化水素酸(±)−6−クロロ−7,8−ジヒドロキシ−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピン(6−クロローPB(6−Chloro−PB))、臭化水素酸R(−)−2,10,11−トリヒドロキシ−N−プロピル−ノルアポルフィン水和物(2,10,11−Trihydroxy−N−propyl−noraporphine=図中では、2,10,11−TPNと表記)、塩酸R(−)−プロピルノルアポモルフィン(Propylnorapomorphine)のLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性を示す。TO1002株をそれぞれ1,10または100(μM)の塩酸(R)−(+)−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−(1H)3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール(SKF−38393)、塩酸cis−(±)−1−(アミノメチル)−3,4−ジヒドロ−3−フェニル−1H−2−ベンゾピラン−5,6−ジオール(A−68930)、臭化水素酸4−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−チエノ[2,3−c]ピリジン(SKF−89626)、一臭化水素酸6−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1H−3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール(Fenoldopam)、臭化水素酸(±)−6−クロロ−7,8−ジヒドロキシ−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピン(6−Chloro−PB)、臭化水素酸R(−)−2,10,11−トリヒドロキシ−N−プロピル−ノルアポルフィン水和物(2,10,11−Trihydroxy−N−propyl−noraporphine)または塩酸R(−)−プロピルノルアポモルフィン(Propylnorapomorphine)を含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を***(P<0.001)、**(P<0.01)で示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当上記分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0020】
(用語の定義)
本明細書において、必要に応じて、以下の略語を用いる。
【0021】
L.:Lactobacillus
L. plantarum:Lactobacillus plantarum
以下に本明細書において用いられる各用語の意味を説明する。各用語は本明細書中、統一した意味で使用し、単独で用いられる場合も、または他の用語と組み合わされて用いられる場合も、同一の意味で用いられる。
【0022】
本明細書において「カテコール骨格を有する化合物」または「カテコール骨格含有化合物」とは、カテコール(o−ジヒドロキシベンゼン)骨格を有する任意の化合物を意味する。カテコール骨格を有する化合物は、いずれの異性体(光学異性体等)であってもよく、D/L体がある場合、両方をさすことが理解される。このような物質としては、例えば、ピロカテコール、カテコールアミン類、カテコール骨格含有カテキン類(たとえば、カテキン、カテキンガラート、エピカテキン、エピカテキンガラート)、ウルシオール(例えば、7−ヘプタデシルカテコ−ル(3B Scientific Corporationから入手可能))などを挙げることができるがこれらに限定されない。例えば、ピロカテコールまたはその塩、(−)−エピネフリン(相当するD体、L体またはD/L体を含む)またはその塩、L−(−)−ノルエピネフリン(相当するD体、L体またはD/L体を含む)またはその塩、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(L−ドパ)(相当するD体、L体またはD/L体を含む)またはその塩、およびドパミンまたはその塩、ドブタミンまたはその塩、(−)−イソプロテレノールまたはその塩、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸またはその塩、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸またはその塩、(R)−(+)−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−(1H)3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオールまたはその塩、cis−(±)−1−(アミノメチル)−3,4−ジヒドロ−3−フェニル−1H−2−ベンゾピラン−5,6−ジオールまたはその塩、4−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−チエノ[2,3−c]ピリジンまたはその塩、6−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1H−3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオールまたはその塩、(±)−6−クロロ−7,8−ジヒドロキシ−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンまたはその塩、R(−)−2,10,11−トリヒドロキシ−N−プロピル−ノルアポルフィン水和物またはその塩、R(−)−プロピルノルアポモルフィン、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸またはその塩および3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸またはその塩、ならびに存在する場合これらに相当するD体、L体またはD/L体が挙げられる。さらに好ましくは、ピロカテコール、(−)−エピネフリン、(+)−酒石酸水素(−)−エピネフリン、塩酸(−)−エピネフリン、L−(−)−ノルエピネフリン、(+)−酒石酸水素L−(−)−ノルエピネフリン一水和物、L−ドパ、塩酸ドパミン、塩酸ドブタミン、塩酸(−)−イソプロテレノール、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸および3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸が挙げられる。別の例としては、以下が挙げられる:塩酸(R)−(+)−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−(1H)3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール、塩酸cis−(±)−1−(アミノメチル)−3,4−ジヒドロ−3−フェニル−1H−2−ベンゾピラン−5,6−ジオール、臭化水素酸4−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−チエノ[2,3−c]ピリジン、一臭化水素酸6−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1H−3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール、臭化水素酸(±)−6−クロロ−7,8−ジヒドロキシ−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピン、臭化水素酸R(−)−2,10,11−トリヒドロキシ−N−プロピル−ノルアポルフィン水和物、塩酸R(−)−プロピルノルアポモルフィン、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸および3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸またはその塩、ならびに存在する場合これらに相当するD体、L体またはD/L体が挙げられる。
【0023】
本明細書において「カテコールアミン」とは、カテコールにアミンを含む側鎖がついた物質の総称である。アドレナリン,ノルアドレナリン,ドパミン、あるいはこれらに基づいて開発された人工合成アゴニスト物質などがあり,ホルモン,神経伝達物質として作用するものも多い。したがって、カテコールアミンは、カテコール環(1,2−ジヒドロキシベンゼン)とエチルアミン構造をもった化合物としても定義することができる。成体内では、チロシン→ドパミン→ノルアドレナリン→アドレナリンという経路で合成され,モノアミンオキシダーゼによって酸化的脱アミノ化を受けて不活化する。カテコールアミンの例としては、(−)−エピネフリンまたはその塩、L−(−)−ノルエピネフリンまたはその塩、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(L−ドパ)またはその塩、およびドパミンまたはその塩、ドブタミンまたはその塩、(−)−イソプロテレノールまたはその塩、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸またはその塩、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸またはその塩、ならびに存在する場合これらに相当するD体、L体またはD/L体を挙げることができる。
【0024】
本明細書において、「Lactobacillus plantarum」または「「L.plantarum」」とは、Lactobacillus属に分類されるグラム陽性細菌であり、特に、以下の微生物学的特徴を有する菌株をいう。
・16S rRNA遺伝子配列の配列解析により、L.plantarum基準株(例えば、JCM1149T株)の16S rRNA配列(DDBJ/EMBL/GenBank accession number,X52653)と例えば99%などの高い相同性を示すこと
・CLUSTALX等によるアライメント解析後のMEGA等による系統樹解析により、L.plantarum基準株と系統学的に近縁な位置関係が認められること
・recA遺伝子を標的にしたmultiplex PCR法により、recAのPCR増幅産物がL.plantarum基準株の同増副産物と同じ電気泳動パターンを示すこと。
【0025】
例えば、特定の菌株としては、Lactobacillus plantarum TO1000、TO1001、TO1002またはTO1003(受託番号NITE P−958、NITE P−959、NITE P−960またはNITE P−961(それぞれ受領番号NITE AP−958、NITE AP−959、NITE AP−960またはNITE AP−961に対応))が挙げられる。これらの菌株は、供試したカテコールアミン等のカテコール骨格を有する化合物の添加により、コントロール区に対して約2.4〜6.3倍と顕著に増殖活性が上昇したことを本発明において見出した。また、Lactobacillus plantarumの他の菌株としてJCM1149T株を挙げることができるが、この株は理研バイオリソースセンターが管理するL.plantarumの基準株であり、同所から入手することができる。なお、本発明者らが本発明において確認したL.plantarumの菌株もまた、カテコールアミン等のカテコール骨格を有する化合物に対して、弱いながらも反応性を有していることが本発明で明らかになった(供試化合物の添加により、コントロール区に対して約1.3〜1.8倍の増殖活性が上昇する。)。
【0026】
Lactobacillus plantarumは、「プロバイオティクス・プレバイオティクス・バイオジェニックス」(財団法人日本ビフィズス菌センター監修、光岡知足編集)2006年の「プロバイオティクスの種類と微生物学的性質」のセクションにおいて、Lactobacillus属において、プロバイオティクスとして効果が報告されている菌種として紹介されている(Ouwehand, A. C., et al.,(2003). Bulletin of the IDF 380 (pp. 4-
19)も参照)。
【0027】
本明細書において、「増殖(活性)」(growth (activity))とは、微生物について言及する場合、その微生物の個体・細胞などが数を増すこと、あるいはその活性をいう。
【0028】
本明細書において「増殖のための組成物」とは、例えば、Lactobacillus
plantarum菌株について言及する場合、その菌株の増殖のための組成物を意味する。本発明では、代表的に、カテコール骨格を有する化合物が含まれ、代謝等によってカテコール骨格を有する化合物を生じる化合物・複合物等の物質もまた、増殖のための組成物の成分として、実質的にカテコール骨格を有する化合物に加えてまたは代替的に使用することができることが理解される。
【0029】
本明細書において「プロバイオティクス」または「プロバイオティクス組成物」とは、ヒトまたは動物の身体に良い影響を与える微生物、またはそれらを含む製品、食品など、またはその組成物をいう。体内のいわゆる「善玉菌」(例えば、乳酸菌)を増やし、消化管内の細菌叢を改善することによって、腸内細菌のバランスを保ち、宿主の健康に好影響を与え、病気になりにくい身体とすることにより作用する。例えば、発酵乳(例えば、ヨーグルト等)・乳酸菌飲料,生菌製剤などがプロバイオティクスとして利用されている。
【0030】
本明細書において「プレバイオティクス」または「プレバイオティクス組成物」とは、プロバイオティック効果を持った微生物を増加させる能力を持った成分、例えば、食餌成分、サプリメント、またはその組成物をいう。腸内細菌に対して好影響を与えるオリゴ糖などの難消化性の炭水化物などを例示することができる。
【0031】
本明細書において「シンバイオティクス」または「シンバイオティクス組成物」とは、プロバイオティクスとシンバイオティクスとを含むもの、またはその組成物と定義される。プレバイオティクスは、特定のプロバイオティクスに対する影響を有する成分として定義されることから、シンバイオティクスは、あるプロバイオティクスが選択されるとそれに適切なプレバイオティクスを選択して組み合わせることによって適宜調製することができる。
【0032】
本発明は、プロバイオティクス、プレバイオティクス、シンバイオティクスの機能を活かし、医薬、ヒトの成長、動物の飼育等の目的の添加剤、医療デバイス、食品、飼料、健康食品もしくは機能性食品などとして用いられる。
【0033】
本明細書において「医薬」とは、当該分野でもっとも広義に解釈され、任意の薬を含み、薬事法上の医薬品、医薬部外品等のほか、人に適用するものだけでなく、動物に適用するもの(獣医薬)をも包含する概念として使用され、腸内細菌叢バランスの改善等のプロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクスの効果によって、それを必要とする疾患、障害または状態の治療または予防を意図する任意の用途の薬剤、組成物等を包含することが理解される。そのような例として、医療分野、獣医科学等における応用が挙げられる。通常、医薬は固体または液体の賦形剤を含むとともに、必要に応じて崩壊剤、香味剤、遅延放出剤、滑沢剤、結合剤、着色剤などの添加剤を含むことができる。医薬品の形態は、錠剤、注射剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、徐放製剤などを含むが、これらに限定されない。本発明の成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等は、医薬的に許容されうる一般的な担体または賦形剤などの成分と一緒にして医薬組成物とすることができる。
【0034】
本明細書において「医療デバイス」とは、当該分野でもっとも広義に解釈され、任意のデバイス、機器を含み、薬事法上の医療機器のほか、腸内細菌叢バランスの改善等のプロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクスの効果を意図する任意の用途の装置、デバイス、器具を包含することが理解される。医療デバイスとしては、たとえば、ステント、カテーテル、インプラントなどが例示される。
【0035】
本明細書において「食品」とは、当該分野で日常的に使用される意味を有し、人間が食することができるすべての食料(飲料を含む)を指し、一実施形態としては加工品を挙げることができる。たとえば菓子類、乳製品、穀類加工品などの加工食品に、本発明の成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等を混入させることができる。また、「健康食品」および「機能性食品」とは、業界で一般的に使用される意味を有し、腸内細菌叢バランスの改善等のプロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクスのために特別に処方された、医薬品または一般の食品とは区別される食品の一種を指す。このような食品の例としては、例えば、食事前または食事とともに被験者に一定期間摂取させる食品を想定することができるがこれに限定されない。
【0036】
本明細書において「飼料」とは、当該分野で日常的に使用される意味を有し、人間以外の動物が食することができるすべての食料(飲料を含む)を指し、一実施形態としては加工品を挙げることができる。たとえば加工飼料に、本発明の成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等を混入させることができる。このような飼料の例としては、例えば、飼料摂取前に家畜等の動物に一定期間摂取させる飼料を想定することができるがこれに限定されない。すなわち、本発明の成分、腸内細菌叢バランスの改善等のプロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等の効果は、動物に対しても有効であるので、公知の一般的な栄養成分と組み合わせて、またはさらに他の有効成分と組み合わせて、本発明の成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等を含有する飼料(ペットフード、家畜用飼料など)とすることもできる。
【0037】
本明細書において「添加剤」とは、主成分に対して、何らかの目的で添加される任意の薬剤をいう。例えば、腸内細菌叢バランスの改善等のプロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等のための添加剤等を例示することができる。
【0038】
本明細書において「治療」または「予防」とは、腸内細菌叢バランスの改善等のプロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等を投与をすることによって、そのような処置を必要とする症状、状態、障害または疾患(腸内バランスの悪化による症状、状態、障害または疾患等)を有意に改善、緩和または予防することを意味する。本発明により腸内バランスの悪化による症状、状態、障害または疾患等が改善される。
【0039】
(好ましい実施形態)
本発明の好ましい実施形態を、以下に掲げる。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでない。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
【0040】
1つの局面において、本発明は、カテコール骨格を有する化合物によって増殖活性が上昇するLactobacillus plantarum菌株を提供する。Lactobacillus plantarum菌株はどのような起源であってもよいが、牧草サイレージ由来のものであれば、食品残さ、サイレージ、発酵TMRに対して添加することにより、プロバイオティック効果を期待した生菌剤として畜産分野において広範な利用が期待される。ヒト糞便由来のプロバイオティック乳酸菌の選抜により、ヒト由来である安全性がより期待される。また、ヒトにとって食経験豊富であり、安全性が経験的に担保されている野菜や漬け物等の発酵食品由来のプロバイオティック乳酸菌の選抜によっても、将来的に、ストレス応答時に有害微生物を積極的に排除しながら消化管環境を維持する機能性食品の開発が期待できる。
【0041】
カテコール骨格を有する化合物もまた、どのような化合物であってもよい。好ましくは、カテコールアミンが利用される。理論に束縛されることを望まないが、本発明の菌株は、カテコール骨格のジヒドロキシ部分を認識し、刺激を受けることによって増殖活性が上昇するものと考えられる。したがって、理論に束縛されることを望まないが、本発明の化合物は、菌株に対してカテコール骨格を認識することができることが重要であり、カテコール骨格の認識が可能な化合物であれば、他の部分がどのような構造をしていてもよく、カテコール自体(ピロカテコール)であってもよいことが理解される。また、いずれの異性体であってもよく、D/L体がある場合は、D体であってもL体であっても本発明に使用することができることが理解される。また、代謝等によってカテコール骨格を有する化合物を生じる化合物・複合物等の物質もまた、本発明の成分として、実質的にカテコール骨格を有する化合物に加えてまたは代替的に使用することができることが理解される。
【0042】
1つの実施形態において、本発明の菌株の増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30% ウシ血清を含む培地(pH6.5)において、以下の少なくとも1つの活性を有する。
L−ドパの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも1.3倍上昇するか、
ドパミンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも1.4倍上昇するか、
ノルエピネフリンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも1.5倍上昇するか、
エピネフリンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも1.3倍上昇するか、または
ピロカテコールの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも1.8倍上昇する。
【0043】
別の実施形態において、本発明の菌株の増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30% ウシ血清を含む培地(pH6.5)において、以下の少なくとも1つの活性を有する。
L−ドパの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも3.7倍上昇するか、
ドパミンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも2.4倍上昇するか、
ノルエピネフリンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも4.1倍上昇するか、
エピネフリンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも4.0倍上昇するか、または
ピロカテコールの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも6.3倍上昇する。
【0044】
1つの好ましい実施形態において、本発明で利用されるカテコール骨格を有する化合物は、カテコールアミンを含む。理論に束縛されることを望まないが、カテコールアミンは、神経伝達物質であり、動物体や植物体内においてホルモンや神経伝達物質として生理的作用を発揮し、また、神経線維末端のみならず、消化管組織、消化管内容物、糞便、尿、血中にも存在することから、潜在量は豊富であり、プレバイオティクス成分としての高度有効利用が十分に期待でき、これを増殖活性成分とする微生物はプロバイオティクスとして利用可能であるところ、このような微生物は今まで見出されていないことから、ユニークな有用性を有する。
【0045】
食品・飼料産業上の極めて重要な有益微生物である乳酸菌に対して、プレバイオティク効果を示す物質としては難消化性糖質(フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラクチュロース等)が研究されている。カテコール骨格を有する化合物の代表例として、ストレスに伴い生体内濃度が上昇するカテコールアミンを認識し増殖促進する病原性細菌の存在が示されていることから、ストレスに伴い出現するカテコールアミンを増殖活性成分とする微生物をプロバイオティクスとして活用することは、病原性細菌の競合阻害に繋がり、ストレスに対する新たな予防または治療法としての効果も期待できる。
【0046】
好ましい実施形態では、本発明で利用されるカテコール骨格を有する化合物は、ピロカテコールまたはその塩、(−)−エピネフリンまたはその塩、L−(−)−ノルエピネフリンまたはその塩、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(L−ドパ)またはその塩、およびドパミンまたはその塩、ドブタミンまたはその塩、(−)−イソプロテレノールまたはその塩、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸またはその塩、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸またはその塩、(R)−(+)−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−(1H)3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオールまたはその塩、cis−(±)−1−(アミノメチル)−3,4−ジヒドロ−3−フェニル−1H−2−ベンゾピラン−5,6−ジオールまたはその塩、4−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−チエノ[2,3−c]ピリジンまたはその塩、6−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1H−3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオールまたはその塩、(±)−6−クロロ−7,8−ジヒドロキシ−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンまたはその塩、R(−)−2,10,11−トリヒドロキシ−N−プロピル−ノルアポルフィン水和物またはその塩、R(−)−プロピルノルアポモルフィン、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸またはその塩および3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸(例えば、塩酸(R)−(+)−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−(1H)3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール、塩酸cis−(±)−1−(アミノメチル)−3,4−ジヒドロ−3−フェニル−1H−2−ベンゾピラン−5,6−ジオール、臭化水素酸4−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−チエノ[2,3−c]ピリジン、一臭化水素酸6−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1H−3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール、臭化水素酸(±)−6−クロロ−7,8−ジヒドロキシ−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピン、臭化水素酸R(−)−2,10,11−トリヒドロキシ−N−プロピル−ノルアポルフィン水和物、塩酸R(−)−プロピルノルアポモルフィン、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸および3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸)ならびにそれらの溶媒和物(例えば、水和物)、ならびに存在する場合これらに相当するD体、L体またはD/L体などを挙げることができる。理論に束縛されることは望まないが、カテコール骨格を有するこれらの化合物は、本発明の微生物が増殖活性成分として認識する特定の構造をしていることが好ましい理由として挙げることができる。
【0047】
好ましい実施形態では、本発明で利用されるカテコール骨格を有する化合物は、ピロカテコール、(−)−エピネフリン、(+)−酒石酸水素(−)−エピネフリン、塩酸(−)−エピネフリン、L−(−)−ノルエピネフリン、(+)−酒石酸水素L−(−)−ノルエピネフリン一水和物、L−ドパ、塩酸ドパミン、塩酸ドブタミン、塩酸(−)−イソプロテレノール、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸および3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸、ならびに存在する場合これらに相当するD体、L体またはD/L体などを挙げることができる。理論に束縛されることを望まないが、これらの化合物は、神経伝達物質として、その効果が確認されているものであり、ストレス対応の物質として認知されていることから、ストレス対応のプロバイオティクスとしての効果が期待されるからである。また、理論に束縛されることを望まないが、これらの化合物の一部は、動物体内において神経伝達物質として機能するだけでなく、食経験の豊富な植物や食品中にも生理活性物質として存在が確認されている。これらの化合物を含む野菜などの植物や食品成分を本研究で発明したL.plantarumと同時摂取した場合において、プロバイオティクスとしてのL.plantarumの効率的な増殖促進が期待されるからである。さらに、理論に束縛されることを望まないが、野菜などの植物や食品成分を摂取した場合に、これらの化合物が一プレバイオティック成分として、生体内に生息するプロバイオティクスの増殖を促進し、腸内細菌叢バランスの改善に寄与することが期待できるという理由も存在する。
【0048】
1つの実施形態では、本発明で利用されるカテコール骨格を有する化合物は、ドパミンまたはその塩である。理論に束縛されることを望まないが、ドパミンは、他のカテコールアミンに比べて、特定の菌株(例えば、TO1002株)において、より低濃度で増殖活性を見出すことができたことから、シンバイオティクスとして利用する場合に、カテコールアミンの投与による副作用を最小限に抑えることができると考えられるからである。
【0049】
1つの実施形態では、本発明の菌株は、L.plantarum TO1000、L.plantarum TO1001、L.plantarum TO1002またはL.plantarum TO1003(受託番号NITE P−958、NITE P−959、NITE P−960またはNITE P−961)である。
【0050】
別の局面において、本発明は、本発明の菌株を含むプロバイオティクスを提供する。
【0051】
別の局面において、本発明は、カテコール骨格を有する化合物を含む、L.plantarum菌株の増殖のための組成物を提供する。このような組成物は、プレバイオティクスとして利用することができ、有用である。本発明の組成物の実施の形態としては、以下のようなものが挙げられる:食品、飲料、飼料、たとえば、L.plantarumを摂取する場合において、何らかの添加物として同時摂取または異時摂取、L.plantarumを含むヨーグルトなどの発酵乳製品にフルーツ(たとえば、バナナ)ソース、野菜ジュース、果物ジュースなど。
【0052】
1つの実施形態では、本発明の組成物に含まれる化合物は、カテコールアミンである。
【0053】
1つの実施形態では、本発明の組成物に含まれる化合物は、ピロカテコールまたはその塩、(−)−エピネフリンまたはその塩、L−(−)−ノルエピネフリンまたはその塩、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(L−ドパ)またはその塩、およびドパミンまたはその塩、ドブタミンまたはその塩、(−)−イソプロテレノール、(R)−(+)−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−(1H)3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオールまたはその塩、cis−(±)−1−(アミノメチル)−3,4−ジヒドロ−3−フェニル−1H−2−ベンゾピラン−5,6−ジオールまたはその塩、4−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−チエノ[2,3−c]ピリジンまたはその塩、6−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1H−3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオールまたはその塩、(±)−6−クロロ−7,8−ジヒドロキシ−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピンまたはその塩、R(−)−2,10,11−トリヒドロキシ−N−プロピル−ノルアポルフィン水和物またはその塩、R(−)−プロピルノルアポモルフィン、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸またはその塩および3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸(例えば、塩酸(R)−(+)−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−(1H)3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール、塩酸cis−(±)−1−(アミノメチル)−3,4−ジヒドロ−3−フェニル−1H−2−ベンゾピラン−5,6−ジオール、臭化水素酸4−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−チエノ[2,3−c]ピリジン、一臭化水素酸6−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1H−3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール、臭化水素酸(±)−6−クロロ−7,8−ジヒドロキシ−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピン、臭化水素酸R(−)−2,10,11−トリヒドロキシ−N−プロピル−ノルアポルフィン水和物、塩酸R(−)−プロピルノルアポモルフィン、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸および3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸)からなる群より選択される少なくとも1つあるいはこれらの溶媒和物(例えば、水和物)、ならびに/または存在する場合これらに相当するD体、L体またはD/L体を含み、これらのうち複数のものを含んでいてもよい。これらの化合物の塩としては、例えば、一価の塩(塩酸塩など)、二価の塩(硫酸塩など)を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0054】
1つの実施形態では、本発明の組成物に含まれる化合物は、ピロカテコール、(−)−エピネフリン、(+)−酒石酸水素(−)−エピネフリン、塩酸(−)−エピネフリン、L−(−)−ノルエピネフリン、(+)−酒石酸水素L−(−)−ノルエピネフリン一水和物、塩酸ドパミン、塩酸ドブタミン、塩酸(−)−イソプロテレノール、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸および3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸、ならびに存在する場合これらに相当するD体、L体またはD/L体からなる群より選択される少なくとも1つを含み、これらのうち複数のものを含んでいてもよい。
【0055】
1つの実施形態では、本発明の組成物に含まれる化合物は、ドパミンまたはその塩である。理論に束縛されることを望まないが、ドパミンは、他のカテコールアミンに比べて、特定の菌株(例えば、TO1002株)において、より低濃度で増殖活性を見出すことができたことから、本発明の組成物をプレバイオティクスとして利用する場合に、カテコールアミンの投与による副作用を最小限に抑えることができると考えられるからである。
【0056】
1つの実施形態では、本発明の組成物の対象とする菌株は、L.plantarum TO1000、TO1001、TO1002またはTO1003(受託番号NITE P−958、NITE P−959、NITE P−960またはNITE P−961)あるいはそれらの複数の菌株である。
【0057】
別の局面において、本発明は、本発明の菌株と組み合わせて使用するための、本発明のカテコール骨格を有する化合物を含むプレバイオティクスを提供する。このようなプレバイオティクスに含まれるべき化合物としては、本明細書において説明した上記のような任意の化合物を挙げることができる。
【0058】
別の局面において、本発明は、本発明の菌株とカテコール骨格を有する化合物とを組み合わせたシンバイオティクスを提供する。このようなシンバイオティクスとして具体的な商品や製品の例としては、例えば、1)食品や植物由来のカテコール骨格化合物と乳酸菌を同時に含むように設計されたヨーグルト(固形、ドリンク)、チーズなどの発酵乳製品;2)食品や植物由来のカテコール骨格化合物と乳酸菌を同時に含むように設計されたタブレットなどの錠剤型サプリメント製品;3)当該L.plantarumで発酵させた漬け物(野菜)やキムチなどの発酵食品」などを挙げることができる。すなわち、乳酸菌と化合物が自然に、あるいは設計的に同時に存在するような食品形態をとれば、本発明のシンバイオティクスに該当することが意図される。そして、本明細書において、菌株およびカテコール骨格を有する化合物を単独で使用する場合が、プロバイオティクスであり、プレバイオティクスということになることが理解される。
【0059】
1つの実施形態では、本発明において利用される化合物は、体内で存在する場合に、本発明の菌株の1×10コロニー形成単位(cfu)あたり少なくとも5μMで含まれることが好ましいが、必ずしもこれに限定されず、これより低濃度でも作用しうることが理解される。したがって、本発明では、上記のcfu以下の菌数だった場合には、より低濃度(たとえば、少なくとも1μM)でも好ましく作用する可能性があることが当業者に理解されるべきである。
【0060】
1つの局面において、本発明は、成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等を含む、医薬を提供する。ここで、本発明の医薬に含まれる成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等の種々の実施形態としては、本明細書において他の箇所、例えば、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等の項において説明されている任意のものを用いることができる。本発明の医薬は、患部に投与する治療補助剤等の形態としても用いることができるが、これに限定されない。
【0061】
1つの実施形態では、本発明の医薬は、薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む。本発明の組成物を医薬または医薬品として使用する場合、その投与剤型としては、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、徐放製剤、カプセル剤、注射剤などが挙げられる。該医薬品は賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、香味剤、着色剤、遅延放出剤などの添加剤を含むことができる。経口製剤の場合、賦形剤として、例えば乳糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロースなど、結合剤として、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ポリビニルピロリドン、ブロックコポリマーなど、崩壊剤として、例えば澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチンなど、滑沢剤として、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油など、香味剤として、例えばココア末、ハッカ油、桂皮末などが使用できるが、これらに限定されない。必要により、徐放性または腸溶性製剤とするためのコーティングを施すことができる。注射用製剤の場合には、pH調整剤、溶解剤、等張化剤、緩衝化剤などが使用されるが、これらに限定されない。
【0062】
本発明の医薬において、含まれていてもよいさらなる医薬は、目的に応じ種々考えられるが、たとえば、他の摂食抑制剤として現在使用されているもの、たとえば、特許文献1〜3に記載されているペプチド、アンフェタミン類のマジンドール等を揚げることができるがこれらに限定されない。
【0063】
1つの実施形態において、本発明の医薬は、1日〜30日間、あるいは、3〜10日間などにわたり投与されることを特徴とする。理論に束縛されることを望まないが、摂食抑制は、一定程度の期間継続されることによりより効果を奏しうるからである。この期間は、体重、食事の回数、量に依存することが理解され、当業者は、投与されるべき箇所の状態(例えば、体重、食事の回数、量等)に応じて、適宜これを変更することができ、30日より長くてもよい。原料が食材であるので、常食として服用されてもよい。
【0064】
本明細書において薬剤等の「有効量」とは、その薬剤が目的とする薬効を発揮することができる量をいう。本明細書において、そのような有効量のうち、最小の濃度を最小有効量ということがある。そのような最小有効量は、当該分野において周知であり、通常、薬剤の最小有効量は当業者によって決定されているか、または当業者は適宜決定することができる。そのような有効量の決定には、実際の投与のほか、動物モデルなどを用いることも可能である。本発明はまた、このような有効量を決定する際に有用である。
【0065】
本発明の有効成分、これらを含む組成物等は、経口的に投与したり、あるいは非経口的に摂取させることができる。一般的には、投与または摂取量としては、本発明の成分として、1被験体あたり1日1回当たり10〜5000mg(0.01g〜5g)であることができる。このような摂取量は、充分安全である。上限および下限としては、これら以外も可能であり、例えば、下限としては、1被験体あたり1日1回当たり1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、0.01g、0.02g、0.03g、0.04g、0.05g、0.06g、0.07g、0.08g、0.09g、0.1g、0.2g、0.3g、0.4g、0.5g、0.6g、0.7g、0.8g、0.9g、1.0gなどを挙げることができる。上限としては、1被験体あたり1日1回当たり1g、1.5g、2g、2.5g、3g、3.5g、4g、4.5g、5g、6g、7g、8g、9g、10gなどを挙げることができるがこれらに限定されず、1被験体あたり1日1回当たり10mg未満、あるいは1mg未満を下限としても良く、1被験体あたり1日1回当たり5g以上あるいは10g以上を上限としてもよい。ヒトの場合は、通常成人1人につき1日1回当たり10〜5000mgでありうる。
【0066】
本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」は、医薬または動物薬のような農薬を製造するときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、賦形剤および/または農学的もしくは薬学的アジュバント以下が挙げられるがそれらに限定されない。
【0067】
別の局面において、本発明は、成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等を含む、医療デバイスを提供する。ここで、本発明の医療デバイスに含まれる成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等の種々の実施形態としては、本明細書においてプロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等の項において説明されている任意のものを用いることができる。
【0068】
1つの実施形態では、本発明の医療デバイスは、ステント、カテーテルまたはインプラントであってもよいがこれらに限定されない。
【0069】
1つの実施形態では、本発明のデバイスは、生体適合性を有する基体(マトリクス)を有していてもよい。基体の形態は、ブロック体(塊状物)が好適である。ブロック体(例えば焼結体等)は、形状安定性を有しており、生体に移植したときに、本発明の成分を徐々に放出することができ、徐放効果が期待できる。基体の形態は、適用部位(移植部位)に応じて、適宜選択するようにすればよい。1つの実施形態では、基体は、多孔質なもの(多孔質体)であるのが好ましい。基体として多孔質体を用いることにより、本発明の成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等の有効成分を、より容易かつ確実に基体に担持させることができる。基体として、粉末状、顆粒状、ペレット状等のものを用いる場合には、例えば、基体とバインダーと前述したような液体とを混練した混練物を、成形することによりデバイスを製造することができる。
【0070】
1つの局面において、本発明は、本発明の成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等を含む、飼料、添加剤、食品、健康食品または機能性食品を提供する。ここで、本発明の飼料、添加剤、食品、健康食品または機能性食品に含まれる成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等の種々の実施形態としては、本明細書においてプロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等の項において説明されている任意のものを用いることができる。このような添加剤、食品、健康食品または機能性食品としては、例えば、食事の前に患者に一定期間摂取させる食品等を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0071】
本発明を飼料、添加剤、食品、健康食品または機能性食品として使用する場合、これらは摂食抑制、PYY分泌活性化を必要とする疾患または状態の予防用として使用され得る。たとえば、動物用飼料、菓子類、乳製品、穀類加工品などの加工食品に、本発明の成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等を、適当な賦型剤と一緒に、また必要に応じて香味剤、着色剤などの添加剤を加えて、混入させることができる。また、「健康食品」および「機能性食品」の場合、たとえばゼラチンカプセル内に本発明の成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等を封入し、あるいは本発明の成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等を含む飲料を調製することによって、腸内細菌叢バランスの改善等のプロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等の投与を必要とする症状、状態、障害または疾患(腸内バランスの悪化による症状、状態、障害または疾患等)を有意に改善、緩和または予防するための、健康維持食品として使用することができる。有効成分の添加量は、通常成人の場合1日あたり約10mg〜約5,000mgに相当する量であるが、この範囲に限定されない。治療前に患者に一定期間摂取させる食品の場合、本発明の成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等を封入したカプセル、あるいは本発明の成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等を含む飲料を調製し使用することができる。このようなカプセルの場合、賦型剤または滑沢剤等とともにカプセルに封入することができる。飲料の場合、甘味料、酸味料、pH調整剤、香料、着色料などを混入することができる。
【0072】
1つの局面において、本発明は、成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等を含む医薬を生産する方法であって、成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等を薬学的に許容可能な賦形剤と混合する工程を包含する方法を提供する。あるいは、本発明は、成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等を医療デバイスまたは医療デバイスの材料に含ませる工程を包含する医療デバイスを生産する方法を提供する。飼料、添加剤、食品、健康食品、機能性食品なども同様に製造することができる。その場合、薬学的に許容可能な賦形剤に代えて、目的に応じた二次成分を用いることができる。ここで、本発明に含まれる成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等の種々の実施形態としては、本明細書において、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等の項において説明されている任意のものを用いることができる。
【0073】
1つの局面において、本発明は、腸内細菌叢バランスの改善等のプロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等の投与を必要とする症状、状態、障害または疾患(腸内バランスの悪化による症状、状態、障害または疾患等)を改善、緩和または予防するための方法であって、該方法は、そのような治療を必要とする患者に成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等を、それらを必要とする部位に送達されるように投与する工程を包含する方法を提供する。ここで、本発明に含まれる成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等の種々の実施形態としては、本明細書において、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等の項において説明されている任意のものを用いることができる。
【0074】
本発明の方法において、その処置、治療または予防を必要とする患者が対象とされ得、そしてこの患者には、経口投与、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、直腸内投与などの投与法を、患者の状態、年齢、性別などに応じて適宜選択される。有効成分の用量は、通常成人の場合1日あたり約10mg〜約5,000mgであり、この範囲に限定されないが、患者の状態、年齢、性別などに応じて適宜選択される。本発明で使用される成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等は無毒性ないし低毒性であると考えられる。
【0075】
本発明の処置方法または予防方法において使用される有効成分の量は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被検体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日〜数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回〜1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間〜1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。
【0076】
本発明の処置方法または予防方法において使用される薬剤の種類および量は、本発明の方法によって得られた情報(例えば、疾患に関する情報)を元に、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、投与される被検体の部位の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明のモニタリング方法を被検体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。疾患状態をモニタリングする頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)のモニタリングが挙げられる。1週間−1ヶ月に1回のモニタリングを、経過を見ながら施すことが好ましい。
【0077】
本発明は、キットなどとして使用されてもよく、その場合、指示書を伴うこともありうる。本明細書において「指示書」は、本発明の治療方法などを医師、患者など投与を行う人に対して記載したものである。この指示書は、本発明の医薬などを例えば、適切な部位に適切な量および適切な時期(例えば、経口の場合食事と一緒または別個)に投与することを指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省またはPMDA、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
【0078】
必要に応じて、本発明の治療または予防では、2種類以上の薬剤(例えば、別の菌株に係る成分、微生物、化合物、プロバイオティクス、プレバイオティクスまたはシンバイオティクス等等)が使用され得る。2種類以上の薬剤を使用する場合、類似の性質または由来の物質を使用してもよく、異なる性質または由来の薬剤を使用してもよい。このような2種類以上の薬剤を投与する方法のための疾患レベルに関する情報も、本発明の方法によって入手することができる。
【0079】
1つの局面において、本発明は、カテコール骨格を有する化合物によって増殖活性が上昇するL.plantarum菌株を選択する方法を提供する。この方法は、A)L.plantarum菌を含む試料を提供する提供工程;B)硫酸マグネシウム(MgSO)、硝酸アンモニウム(NHNO)、塩化カリウム(KCl)、D−(+)−グルコース、リン酸二水素カリウム(KHPO)およびウシ血清を含む培地中で、カテコール骨格を有する化合物の存在下または不存在下で該試料を培養する培養工程;およびC)該化合物の不存在下で増殖せず、かつ、存在下において増殖したか、または該化合物の存在下において不存在下よりも増殖が促進された菌株を分離する分離工程を包含する。
【0080】
1つの実施形態では、本発明で利用される培地において含まれる硫酸マグネシウムは、1.16〜1.74mM、硝酸アンモニウムは、8.02〜9.81mM、塩化カリウムは、3.83〜5.74mM、前記D−(+)−グルコースは3.96〜39.64mM、前記リン酸二水素カリウムは、2.09〜3.14mM、および前記ウシ血清は15〜30%で前記培地中に存在し、前記培地はpHが6.0〜7.0であるがこれに限定されず、これらより多くても少なくても増殖が見られる限り利用することができる。理論に束縛されることを望まないが、これらの範囲が望ましい理由としては、汎用されている乳酸菌用培地(乳酸菌用MRS培地など)よりも生体内の環境を反映する組成となっており、生体内成分として血清を含むことからも、カテコールアミン等のカテコール骨格を有する化合物を認識する乳酸菌を選抜・同定する本実験系としてはより望ましい組成となることが挙げられる。理論に束縛されることを望まないが、これらの範囲が望ましい理由としてはまた、乳酸菌用培地に含まれる酵母抽出物などの微生物由来成分を一切含まないため、培養に供した微生物以外の微生物成分について、培地中への汚染を防止することが期待されること、およびこれにより、培養に供した微生物の性能・性質について、他の微生物由来成分汚染による誤認を防ぐことが強く期待できることが挙げられる。理論に束縛されることを望まないが、これらの範囲が望ましい理由としてはまた、グルコース濃度を従来の培地に比べて極めて低濃度に維持しながら乳酸菌の培養が可能であるなど、生体消化管内、例えば、大腸内などを想定した低栄養条件に設定可能であり、栄養条件によって、菌体の性質が劇的に変化することを考慮すると、一対象として、消化管内等に見出される生体カテコール骨格認識性を指標とする選抜法の性格上、極めて有意義かつ特徴的であることも挙げることができる。
【0081】
例えば、好ましい培地組成としては、1.44 mM MgSO、8.92 mM NHNO、4.79 mM KCl、7.93 mM C12、2.62 mM KHPOおよび30% ウシ血清(bovine serum)を含むもの(pH 6.5)を挙げることができるがそれに限定されない。
【0082】
1つの実施形態では、本発明の方法の培養工程は、32〜48時間実施される。好ましくは、36時間(例えば、プラスマイナス3時間程度範囲は許容される)にて実施され、そして、48時間以内に判定しうることも特徴でありうるがこれに限定されない。低栄養条件培地においてのこのような時間での判定は、従来の方法では困難であったことであり、その点で有利である。
【0083】
1つの実施形態では、本発明の方法の培養工程は、20〜45℃、好ましくは、25〜40℃(例えば、30〜37℃)で実施されるがこれに限定されない。理論に束縛されることを望まないが、これらの温度条件が望ましい理由としては、この温度条件は、通常、L.plantarumの増殖に適切な温度域であるため、バックグラウンドの環境として、より効率的な増殖温度条件に設定する、といった利点があり、また、本発明の菌株は、生体内のカテコールアミン等のカテコール骨格を有する化合物を認識することから、体温や腸管内温度と同等レベルという意味でも有意義であることが挙げられる。
【0084】
1つの実施形態では、本発明の方法の培養工程は、0〜5%CO、および1〜20%Oの条件下で実施され、好ましくは、5% CO、1% Oで実施されるがこれに限定されない。理論に束縛されることを望まないが、これらの範囲が好ましいのは、通性嫌気性菌であるL.plantarumは、通常の大気圧レベルの酸素条件においても増殖が可能であるが、1%程度の酸素条件にすることにより、菌株の嫌気性菌としての本来の特性として、より効率的な増殖が可能となり、評価系として迅速な判定が可能になることが挙げられる。また、理論に束縛されることを望まないが、評価系システム上の利点以外にも、仮想腸管を考えた場合に、腸管内は極めて嫌気条件であるため、低酸素状態にすることにより、より腸管内の反応を反映した系として成立が期待できることも好ましい理由のひとつである。他方で、理論に束縛されることを望まないが、上部消化管(口腔や食道などを含む)は比較的好気状態であることから、広いガス範囲で検討できるという利点も存在する。理論に束縛されることを望まないが、また、二酸化炭素濃度は、通常の細胞培養時に5%に設定されているように、生体内環境を反映する組織・細胞培養モデルとして適切な範囲に設定できる利点も挙げられる。
【0085】
1つの実施形態では、本発明の方法で用いられる試料は、5×10〜5×10コロニー形成単位/wellの間で、好ましくは、1×10コロニー形成単位/wellで前記L.plantarum菌を含むがこれに限定されない。理論に束縛されることを望まないが、これらの範囲が好ましいのは、示した範囲で菌数を設定することにより、48時間以内に適切な濃度域の供試化合物の反応性の評価が可能となるからである。これ以下でも実施することができ、本明細書の記載に基づいて、当業者はその条件を適宜選択することができる。
【0086】
本発明で使用されうる培養容器としては、一般的な培養用ガラス試験管、培養用プラスチック製シャーレなどを使用することができ、選抜系として多サンプルを供試することが可能であり、一般的な12穴〜48穴プラスチック製培養プレートも使用可能である。
【0087】
本発明の選抜法において、供試する微生物自体を何らかの環境中から分離、選抜する「選抜系」は周知の技術で行うことが理解されるべきことに留意すべきである。
【0088】
本発明の方法は、このような周知の方法で取得した微生物について、カテコールアミン等のカテコール骨格を有する化合物の認識性を指標にして検討する「選抜系」を意味することに留意すべきである。
【0089】
すなわち、このような周知な方法を利用して、本発明の出発材料である微生物L.plantarumは、主に植物環境などから比較的頻繁に分離選抜できる。したがって、出発材料自体の分離選抜法も、特別困難な技術と設備を要求するものではなく、微生物操作の知識があれば簡易に取り扱い・入手可能であり、ある程度の一般性があるというべきである。
【0090】
そのような例示の方法としては、例えば、チモシー・オーチャードグラス混播牧草サイレージより以下の方法に従って分離、チモシー・オーチャードグラス混播牧草サイレージを滅菌水で充分にホモジナイズし(1:10 w/v)、サイレージ懸濁液上清を滅菌水で段階希釈後、Man Rogosa Sharpe(MRS)寒天培地(Difco,
Detroit, USA)に塗布し、48時間培養する(30℃、嫌気条件下)。培養後、形成されたコロニーを純粋培養し、使用時まで10%グリセロールを含むnutrient broth (Difco)中で−80℃保存することができる。
【0091】
本発明において供試した微生物は牧草サイレージ由来乳酸菌であるL. plantarumであり、家畜飼料用の発酵貯蔵飼料より頻繁に分離される菌種として既に多数の報告がある(Rossi F. & Dellaglio F., Journal of Applied Microbiology (2007)Vol.103, 1707−1715; Ennahar S. et al., Applied and Environmental Microbiology (2003)Vol.69, 444−451; Stevenson D−M., et al., Applied microbiology and biotechnology (2006)Vol.71, 329−338など)。いずれの場合も、各飼料の懸濁液から、乳酸菌用培地により容易かつ頻繁に分離されている。
【0092】
出発材料の選抜に使用されうる培地としては、例えば、「乳酸菌の科学と技術」(株式会社学会出版センター)の例えば18頁に記載される技術を用いることが例示されるがそれに限定されない。同文献では、巻末に記されている乳酸菌で使用されている主な培地の組成がされており、これらの文献は、本明細書において参考として援用される。
【0093】
出発材料の選抜に使用されうる培地としては、任意の適切なものを挙げることができるが、例えば、これまで周知の培地として、MRS培地、GYP培地、BL培地、BCP加プレートカウント寒天培地、GAM培地、トマトジュース培地などを挙げることができる。これらの培地の組成をみると、いずれも酵母エキスなどが含まれ、グルコース濃度が比較的高いなどに認められる。
【0094】
他方、本発明のカテコール骨格を有する化合物によって増殖活性が上昇するL. plantarum菌株を選択する方法は、このような周知の方法からは容易に想定できないものである。カテコールアミンなどのカテコール骨格を有する化合物の認識性については周知の事実ではなく、本発明の選抜法により、広くL. plantarumなどの乳酸菌株のカテコールアミンなどのカテコール骨格を有する化合物の認識性について評価が可能になったという点でも顕著性が認められる。
【0095】
また、本発明の選抜系で使用した培地は、周知の技術で用いられる培地とは性質を異にしている。例えば、グルコースを例に取ると、本発明の使用した新培地は、最も汎用されているMRS培地の約1/20となる。また、酵母エキスはビタミン源およびアミノ酸源として、使われており、多くの培地に含まれることから、当該分野では必須の成分として共通認識があるところ、本発明の培地のように酵母エキスを含まない、低栄養条件である、などの利点は、本発明において顕著である。
【0096】
1つの例示的な実施形態では、以下のように選抜される。
【0097】
MgSO、NHNO、KCl、C12、KHPO、ウシ血清(bovine serum)を成分とするNo.189−091201培地を開発する。例示的なこの培地に含まれる各成分は、好ましくは以下の濃度およびpHで調製する(1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30%ウシ血清を含む。pH6.5)。推奨される各成分の詳細は以下の通りであるが、同等品であれば培地性能に問題はない。
【0098】
D(+)−グルコース(C12)、和光純薬工業株式会社(試薬特級、041−00595)
リン酸二水素カリウム(KHPO)、和光純薬工業株式会社(試薬特級、169−04245)
硝酸アンモニウム(NHNO)、和光純薬工業株式会社(試薬特級、017−03235)
塩化カリウム(KCl)、和光純薬工業株式会社(試薬特級、163−03545)
硫酸マグネシウム七水和物、和光純薬工業株式会社(試薬特級、131−00405)
ウシ血清(Bovine serum),成体(Adult)、Sigma(B5433)。
【0099】
本培地の含有組成は、本発明で新たに調製したものであり、従来知られたものではない。また、微生物用培地(例えば、大腸菌用LB培地、乳酸菌用MRS培地など)で汎用されている酵母抽出物などの微生物由来成分を一切含まないため、培養に供した微生物以外の微生物成分について、培地中への汚染を防止することが期待される。これにより、培養に供した微生物の性能・性質について、他の微生物由来成分汚染による誤認を防ぐことが強く期待できる。また、グルコース濃度を従来の培地に比べて極めて低濃度に維持しながら乳酸菌の培養が可能であるなど、生体大腸内などを想定した低栄養条件に設定している。栄養条件によって、菌体の性質が劇的に変化するからである。
【0100】
供試微生物を適切な培地(例えばL. plantarum TO1002であれば、MRS培地や上述のNo.189−091201培地)で前培養し、充分に増殖させ、菌体を遠心操作により集菌後、培地上清を除去し、新鮮なPBSあるいは培地で数回、充分に遠心洗浄する。例示的に使用されるNo.189−091201培地に菌体を再懸濁し、各供試されたカテコールアミン等のカテコール骨格を有する化合物とともに、24穴プレートで嫌気条件下(5% CO、1% O)あるいは好気条件下(5%CO、20%O)により培養する(供試微生物の菌数を約1×10 CFU/wellとなるように調整する。CFUはコロニー形成単位)。約36時間培養し、菌体の増殖をコロニー形成数、培養液濁度(OD600)あるいは培養液pH測定等により解析する。
【0101】
これらの条件は、あくまで例示であり、当業者は、本発明の趣旨に基づいて変更することができることが理解される。
【0102】
期待できる本発明の選抜法の有用性としては以下が挙げられる。本発明において見出された選抜技術により、様々な環境由来の微生物のスクリーニングが可能である。例えば、ヒトや家畜糞便由来のプロバイオティック乳酸菌について、ストレス応答時に生体から放出されるカテコールアミン等のカテコール骨格を有する化合物の認識性を指標として選抜することにより、宿主由来である安全性が担保され、将来的に、ストレス認知時に有害微生物を積極的に競合排除しながら消化管環境を維持する機能性食品および飼料の開発を期待することができる。食品残さ、サイレージ、発酵TMRには、「食品・植物由来カテコールアミン」も含まれることから、これらの素材を有効利用した家畜発酵飼料を調製する場合に、本発明の選抜技術により選抜された乳酸菌が「飼料調製用乳酸菌添加物」としての有効活用されることを期待することができる。さらに、糞便由来の大腸菌等の有害微生物の選抜した場合は、ストレス認知時に急激に増殖する有害微生物を特定することに繋がり、当該微生物に対する殺菌・静菌効果を期待した創薬にも資することを期待することができる。また、同時に複数の菌体サンプルを検討できる、という点も重要である。すなわち、理論に束縛されることを望まないが、培養条件および初発の添加菌数については、最適に設定しなければ系が成立しないことから、重要でありうる。
【0103】
本発明の特徴としては、以下をも挙げることができる。すなわち、一般的に、ある種の環境由来の試料から特定菌を生育させるためには、その菌を優先的に増殖・選抜させるための選択培地が用いられており、目的とする乳酸菌の有する新規機能・性質に関する研究や、その選抜試験において汎用されているのが現状である。乳酸菌用の代表的な選択培地として、MRS培地等が知られている。これらの培地の一般的な特徴として、(1)高濃度のグルコースを含有する、(2)ビタミンおよびアミノ酸源としての酵母抽出物などを含む等、目的とする乳酸菌をより効率よくスピーディに増殖させる能力が高いことが挙げられ、ある種の環境試料から乳酸菌を分離・選抜する際に使用することは極めて有意義であり、汎用されていたところ、これとは異なる条件を利用したことに本発明の意義の一つがある。また、植物試料からは極めて高い頻度でL. plantarumが分離選抜されてくることが報告されており、既に数多くの既知文献が存在するところ、周知のこれらの培地では、栄養吸収後の大腸内や植物試料など、一般的に低栄養条件下の生育状況を反映できない。また、培地自体の高栄養成分により、既に効率の良い増殖が達成されてしまうため、未知の増殖促進因子を検討する際に、その作用の判定が困難となる。また、乳酸菌は比較的栄養要求性が高いことも知られているため、詳細な栄養条件を未検討なまま低栄養条件に設定すると、培養すら成立しないなどの問題も発生することがあり、極めて制御が困難であるといえる。
【0104】
周知のMRS培地で分離したL. plantarumの新規機能性を検討する際には、MRS培地でそのまま選抜法を構築することが好ましくない場合があり、適切に設計された培養条件の開発が極めて重要であると考えられる。本発明により、低栄養成分条件下における乳酸菌の増殖選抜試験が可能となり、増殖性についてより精査できる選抜系が構築できたと考えられる。また、「カテコール骨格を有する化合物を認識する乳酸菌を選抜する」という目的をもった研究や技術が存在していない点も見逃せないというべきである。
【0105】
乳酸菌に対してカテコール骨格を有する化合物を添加するトライアルがこれまで未実施かつ未知であった点を考慮すると、本発明で取り組んだ「新規組成培地」、「カテコール骨格を有する化合物の添加トライアル」および「カテコール骨格を有する化合物の作用を判定するために適切な培養・試験条件の設定」により、従来のプロバイオティック乳酸菌培養試験、機能試験、選抜試験では証明や見出すことが困難であった「カテコール骨格を有する化合物を認識し増殖促進するプロバイオティック乳酸菌の選抜」が可能となったと考えられる。
【0106】
(一般技術)
本明細書において用いられる生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、以下を挙げることができる。「プロバイオティクス・プレバイオティクス・バイオジェニックス」(財団法人日本ビフィズス菌センター監修、光岡知足編集);「標準微生物学」(医学書院、山西弘一監修、平松啓一・中込治編集);「乳酸菌実験マニュアル −分離から同定まで−」(朝倉書店、小崎道雄監修、内村泰・岡田早苗著);「プロバイオティクスとバイオジェニクス 科学的根拠と今後の開発展望」(株式会社NTS、伊藤喜久治編集代表);「乳酸菌の保健機能と応用」(シーエムシー出版、上野川修一監修);Lactic Acid Bacteria: Microbiological and Functional Aspects, Fourth Edition(Crc Pr I Llc、Seppo Salminen);Handbook of Probiotics and Prebiotics(Wiley−Interscience、Seppo Salminen)およびHandbook of Probiotics(Wiley−Interscience、Yuan−Kun, Koji Nomoto, Seppo Salminen, Sherwood L. Gorbach)。
【0107】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0108】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0109】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、この実施例等により本発明の技術的範囲が限定されるものではない。以下において使用した試薬類は、特に言及した場合を除いて、市販されているものを使用した。
【0110】
(実施例1:カテコールアミン等のカテコール骨格を有する化合物を認識する微生物を選抜する方法)
本実施例では、カテコールアミン等のカテコール骨格を有する化合物を認識する微生物の新規選抜法を開発した。
【0111】
(材料および方法)
(カテコールアミン認識等のカテコール骨格を有する化合物を認識する微生物の新規選抜法)
1.新規培地
MgSO、NHNO、KCl、C12、KHPO、ウシ血清(bovine serum)を成分とするNo.189−091201培地を開発した。本培地に含まれる各成分は、好ましくは以下の濃度およびpHで調製する(1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30% ウシ血清を含む。pH6.5)。
【0112】
本実施例において、推奨される各成分の詳細は以下の通りであるが、同等品であれば培地性能に問題はないと期待される。
D(+)−グルコース(C12)、和光純薬工業株式会社(試薬特級、041−00595)
リン酸二水素カリウム(KHPO)、和光純薬工業株式会社(試薬特級、169−04245)
硝酸アンモニウム(NHNO)、和光純薬工業株式会社(試薬特級、017−03235)
塩化カリウム(KCl)、和光純薬工業株式会社(試薬特級、163−03545)
硫酸マグネシウム七水和物、和光純薬工業株式会社(試薬特級、131−00405)
ウシ血清(Bovine serum),成体(Adult)、Sigma(B5433)
本実施例の培地の組成は、本実施例で新たに調製したものであり、微生物用培地(例えば、大腸菌用LB培地、乳酸菌用MRS培地など)で汎用されている酵母抽出物などの微生物由来成分を一切含まないため、培養に供した微生物以外の微生物成分について、培地中への汚染を防止することが期待される。これにより、培養に供した微生物の性能・性質について、他の微生物由来成分汚染による誤認を防ぐことが強く期待できる。
【0113】
また、グルコース濃度を従来の培地に比べて極めて低濃度に維持しながら乳酸菌の培養が可能であるなど、生体大腸内などを想定した低栄養条件に設定している。栄養条件によって、菌体の性質が劇的に変化することを考慮すると、一対象として、消化管内等に見出される生体カテコールアミン等のカテコール骨格を有する化合物の認識性を指標とする選抜法の性格上、極めて有意義かつ特徴的であると考えられる。
【0114】
(実験方法)
供試微生物を適切な培地(例えばL. plantarum TO1000であれば、MRS培地や上述のNo.189−091201培地)で前培養し、充分に増殖させた。菌体を遠心操作により集菌後、培地上清を除去し、新鮮なPBSあるいは培地で数回、充分に遠心洗浄した。No.189−091201培地に菌体を再懸濁し、各供試カテコールアミン化合物とともに、24穴プレートで嫌気条件下(5% CO、1% O)あるいは好気条件下(5% CO、20% O)により培養した(供試微生物の菌数を約1×10 CFU/wellとなるように調整した。CFUはコロニー形成単位)。約36時間培養し、菌体の増殖をコロニー形成数、培養液濁度(OD600)あるいは培養液pH測定等により分析した。
【0115】
(結果)
得られた菌株は、Lactobacillus plantarum TO1000、TO1001、TO1002またはTO1003(受託番号NITE P−958、NITE P−959、NITE P−960またはNITE P−961)として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託された。
【0116】
(考察)
本実施例から、期待できる本選抜法の有用性は以下のとおりである。本研究で発明した選抜技術により、様々な環境由来の微生物のスクリーニングが可能である。例えば、ヒトや家畜糞便由来のプロバイオティック乳酸菌について、ストレス認知時に生体から放出されるカテコールアミンの認識性を指標として選抜することにより、宿主由来である安全性が担保され、将来的に、ストレス認知時に有害微生物を積極的に競合排除しながら消化管環境を維持する機能性食品や飼料の開発が期待できる。食品残さ、サイレージ、発酵TMRには、「食品・植物由来カテコールアミン」も含まれることから、これらの素材を有効利用した家畜発酵飼料を調製する場合に、本選抜技術により選抜された乳酸菌が「飼料調製用乳酸菌添加物」としての有効活用されることが期待できる。さらに、糞便由来の大腸菌等の有害微生物の選抜した場合は、ストレス認知時に急激に増殖する有害微生物を特定することに繋がり、当該微生物に対する殺菌・静菌効果を期待した創薬にも資することが期待される。
【0117】
(本実施例で供試した微生物について)
本実施例で供試した微生物は牧草サイレージ由来乳酸菌であるL. plantarumであり、家畜飼料用の発酵貯蔵飼料より頻繁に分離される菌種として既に多数の報告がある(Rossi F. & Dellaglio F., Journal of Applied Microbiology (2007)Vol.103, 1707−1715; Ennahar S. et al., Applied and Environmental Microbiology (2003)Vol.69, 444−451; Stevenson D−M., et al., Applied microbiology and biotechnology (2006)Vol.71, 329−338など)。いずれの場合も、各飼料の懸濁液から、乳酸菌用培地により容易かつ頻繁に分離されている。容易に分離されている菌種であるが、カテコールアミン認識性については周知の事実ではなく、本実施例の選抜法により、広くL. plantarumなどの乳酸菌株の、カテコール骨格を有する化合物等のカテコールアミン認識性について評価可能であると考えられる。
【0118】
(実施例2:種々のカテコールアミンについての認識性)
次に実施例1で分離した菌株について、カテコール骨格を有する化合物の代表格であるカテコールアミンについてその認識能力の実験を行った。
【0119】
(研究方法)
(供試乳酸菌株)
チモシー・オーチャードグラス混播牧草サイレージより分離したL. plantarum TO1000、TO1001、TO1002およびTO1003と、JCM1149Tを供試した。
【0120】
(培養方法)
1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30%成体ウシ血清(Adult bovine serum)を含む培地を開発し、好気(5%CO、20%O)および嫌気(5%CO、1%O)条件下で培養した。
【0121】
(神経伝達物質および関連物質添加による増殖活性試験)
本実施例で供試した神経伝達物質および関連化合物(L−チロシン(a),3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(L−ドパ)(b),ドパミンヒドロクロリド(c),(−)−エピネフリン(アドレナリン)(d),(−)−ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)(e),(+)−酒石酸水素(−)−エピネフリン塩(f),(+)−酒石酸水素L−(−)−ノルエピネフリン塩1水和物(g))を以下に示した(図1にも示す。)。
【0122】
【化1】

【0123】
これらの化合物を含む培地中における供試乳酸菌株の用量依存的、経時的増殖について、コロニー計数、濁度および培養液pH測定により解析した。
【0124】
(統計処理)
すべての実験を3連で実施し、独立した実験として3−9回繰り返した。GraphPad PRISM(Prism software, CA, USA)により、得られたすべてのデータを統計解析した。
【0125】
(結果)
エピネフリン添加(嫌気条件、36時間培養)により、100μMを最大活性とする用量依存的なL. plantarum TO1002の増殖が認められた(図2A)。100μMエピネフリンの添加により、24時間後から顕著なL. plantarum TO1002の増殖と培養液のpH低下が認められた(図2B,C)。これらの増殖促進はコロニー計数法でも確認された(図2D)。
【0126】
エピネフリンの増殖促進活性は好気条件下でも認められ、嫌気条件下の無添加区と同等であることが明らかになった(図2E)。さらに、本活性はエピネフリン酒石酸水素塩(図2F)および同塩酸塩(図12)でも認められ、エピネフリン基本構造が主要活性部位であることが示唆された。同様の増殖促進活性は、ノルエピネフリン(図3)、L−ドパ(図4A)、ドパミン(図4B)においても認められた。化学構造上、カテコール環骨格が存在しないL−チロシンには、本活性が完全に認められないことから(図4C)、カテコールアミン構造がL. plantarum TO1002の増殖促進活性において極めて重要であることが明らかになった。
【0127】
L. plantarum TO1000(図5A)、TO1001(図5B)、TO1003(図5C)およびJCM1149T(図5D)に対する各100μMのエピネフリン、ノルエピネフリン、L−ドパ、ドパミンおよびL−チロシンの増殖促進活性を検討した。TO1000、T1001およびTO1003に対する各カテコールアミン化合物(エピネフリン、ノルエピネフリン、L−ドパおよびドパミン)の増殖促進活性が認められ、菌株毎に各カテコールアミン等のカテコール骨格を有する化合物に対する増殖促進パターンが異なることが明らかになった。JCM1149Tに対しては活性があることは知られておらず、本発明者らが試験したJCM1149Tでは弱い活性しか認められないことから、チモシー・オーチャードグラス混播牧草サイレージ由来のL. plantarum TO1000、TO1001、TO1002およびTO1003株のカテコールアミン化合物認識性の産業的有用性・活用性が期待される。ただし、本発明者らが試験したJCM1149T株でも、カテコール骨格を有する化合物に対して増殖活性を有していることが明らかになった。
【0128】
(実施例3:ピロカテコールおよび人工合成カテコールアミン作動薬(アゴニスト)について)
本実施例では、ピロカテコールおよび人工合成カテコールアミン作動薬(アゴニスト)について、増殖因子であるかどうか試験した。
【0129】
(材料および方法)
(供試乳酸菌株)
チモシー・オーチャードグラス混播牧草サイレージより分離したL. plantarum TO1002を供試した。
【0130】
(培養方法)
1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30%成体ウシ血清(Adult bovine serum)を含むNo.189−091201培地を用い、嫌気(5%CO、1%O)条件下で培養した。
【0131】
(神経伝達物質および関連物質添加による増殖活性試験)
本実施例で供試した神経伝達物質および関連化合物(ピロカテコール(A),ドブタミンヒドロクロリド(B),(−)−イソプロテレノールヒドロクロリド(C))を以下に示した(図6にも示す。)。
【0132】
【化2】

【0133】
これらの化合物を含む培地中における供試乳酸菌株の用量依存的増殖について、濁度測定により解析した。
【0134】
(統計処理)
すべての実験を3連で実施し、独立した実験として3−9回繰り返した。GraphPad PRISM (Prism software, CA, USA)により、得られたすべてのデータを統計解析した。
【0135】
(方法および結果)
生体内で合成されない人工合成作動薬であるドブタミンおよびイソプロテレノールにも同様の増殖促進活性が認められた(図7A,B)。生体カテコールアミン(実施例2を参照)のみならず、人工合成カテコールアミン作動薬においてもL. plantarum TO1002株に対する増殖促進活性が認められたことから、本活性がカテコール骨格を有する化合物の中でも、少なくとも「カテコール環(1,2−ジヒドロキシベンゼン)およびエチルアミン構造をもった化合物」と総称されるカテコールアミンにおいて増殖促進活性が共通することが明らかになった。
【0136】
これらの試験の結果を図8(図8−1および図8−2)に示す。図8−1は、ピロカテコールのLactobacillus plantarum TO1000 (A),TO1001 (B),TO1002 (C),TO1003 (D),JCM1149株 (E)に対する増殖促進活性を示す。各菌株を0,0.5,1,5,10,100あるいは500(μM)ピロカテコールを含むNo.189−091201培地中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度を測定したものの結果である。
【0137】
図8−2は、ピロカテコールのLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性を示す。TO1002株をそれぞれ1,10または100(μM)のピロカテコールを含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を***(P<0.001)で示す。
【0138】
図8−1および図8−2からも明らかなように、エチルアミン構造を含まないピロカテコール添加(嫌気条件、36時間培養)により、100μM を最大活性とする用量依存的なL. plantarum TO1001、TO1002およびTO1003株の増殖が認められた。また、本試験により、JCM1149株がピロカテコールにより、弱いながらも増殖促進することを見出した。無添加培地と比較した際の有意差を*(p<0.05),***(P<0.001)で示す。以上のことから、カテコールアミンのL.plantarumに増殖促進活性において、(ピロ)カテコール骨格が極めて重要な活性部位であることが示唆された。また、エチルアミン構造もなんらかの補助的な構造として機能している可能性もあり、その重要性を否定するものではないが、必須ではないことが示されたといえる。
【0139】
なお、データは示さないが、カテコール骨格は有しないがそれと類似する骨格を有する化合物(レゾルシノール、ヒドロキノン、フェノール、L−アラニン、D−アラニン、プロピルアミン、(S)−(+)−1−アミノ−2−プロパノールおよび(R)−(−)−1−アミノ−2−プロパノール)について、同様の増殖促進活性を調べたところ、全く活性を示さないものが多く、認められたとしても、その活性はきわめて弱いものであり、カテコール骨格を有する化合物の100分の1以下程度しかなかった。以上から、理論に拘泥するものではないが、本発明の増殖促進活性について、強力な活性を持つ構造としては、カテコール骨格(ジヒドロキシ基がオルトの位置)を有することで充分であり、その他の側鎖は必要ないことが考えられる。
【0140】
(実施例4:本発明の菌株の生理・生化学的性状について)
本実施例では、本発明の菌株の生理・生化学的性状を調べた。
【0141】
(分離源と分離方法)
チモシー・オーチャードグラス混播牧草サイレージより以下の方法に従って分離した。チモシー・オーチャードグラス混播牧草サイレージを滅菌水で充分にホモジナイズし(1:10 w/v)、サイレージ懸濁液上清を滅菌水で段階希釈後、Man Rogosa Sharpe(MRS)寒天培地(Difco, Detroit, USA)に塗布し、48 時間培養した(30℃、嫌気条件下)。培養後、形成されたコロニーを純粋培養し、使用時まで10%グリセロールを含む栄養ブロス(nutrient broth)(Difco)中で−80℃保存した。
【0142】
(生理・生化学的性状)
上述の方法で分離された菌株のうち、本実施例で供試した菌株をTO1000、T1001、TO1002およびTO1003とした。16S rRNA遺伝子配列解析により、TO1000、T1001、TO1002およびTO1003のL. plantarum基準株に対する相同性は、すべて99.5%以上であった。グラム染色法による形態学的解析より、これら4菌株はすべてグラム陽性菌であり、桿菌の形態を示すことが認められた(図9および表1)。また、カタラーゼ陰性であり、発酵形式はホモ型発酵であった(表1)。生育温度の検討により、10℃、15℃、30℃および45℃において増殖が認められたが、50℃での生育は認められなかった(表1)。また、生育pH試験により、pH3.5から6.0までのpH領域で生育性が認められ、低pH領域での生存耐性が確認された(表1)。
【0143】
【表1】

【0144】
表2に各種糖資化性試験の結果をまとめた。
【0145】
【表2】

【0146】
以上の生理・生化学的性状解析により、TO1000、T1001、TO1002およびTO1003は、L. plantarum基準株と極めて類似した性状を示すことが認められた。解析した項目において、新種の可能性や未報告の顕著な性質は認められず、現在の微生物分類学の基準によれば、一般的に報告されているL. plantarumであると考えられる。
【0147】
また、分類学の別の方法として、recA遺伝子標的multiplex PCRによるL.plantarumグループの判別を行なった。その手法を以下に示す。
【0148】
MRS寒天培地上で充分に増殖しコロニー形成した供試菌株を、以下の組成に示すPCR反応液中に少量添加し、充分に撹拌した。PCR反応液の組成は、SapphireAmp Master Mix(Takara Bio.,Japan)を25μL、滅菌水を22.85μLおよび、以下に配列と組成を示す各種プライマーMixを2.15μLである(合計50μL)。各種プライマーMixに含まれるプライマーの種類と配列は、
paraF(5’−GTCACAGGCATTACGAAAAC−3’(配列番号1))、
pentF(5’−CAGTGGCGCGGTTGATATC−3’(配列番号2))、planF(5’−CCGTTTATGCGGAACACCTA−3’(配列番号3))および
pREV(5’−TCGGGATTACCAAACATCAC−3’(配列番号4))
である。それぞれのプライマー終濃度は以下の通りである:0.25μM paraF、0.25μM pentF、0.12μM planFおよび0.25μM pREV。上述したPCR反応液を以下のPCRサイクルに供した:94℃ 3分(1サイクル);94℃ 5秒、56℃ 5秒、72℃ 10秒(35サイクル);72℃ 1分30秒(1サイクル)。PCR反応終了後、2.0%アガロースゲル上にて電気泳動した。エチジウムブロマイドによりゲルを染色し、電気泳動結果を得た。
【0149】
結果を図10に示す。図10に示すように、本発明のものが、L.plantarumであることが確認された。
【0150】
(実施例5:カテコール骨格を含むカテコールアミン代謝産物)
本実施例では、カテコール骨格を含むカテコールアミン代謝産物について調査した。 また、カテコール骨格を含むカテコールアミン代謝産物の具体例としては、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸(DHMA)および3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)があり(これらはいずれもSigma−Aldrichなどから入手可能。)、これらを試験した。試験手法としては、実施例1〜3に記載の手法に基づき行なった。その結果を図11に示す。図11に示すように、カテコール骨格を含むカテコールアミン代謝産物でも、同様に、本発明のL.plantarumの増殖活性が認められた。
【0151】
(実施例6:他の物質の例:別の塩での例)
本実施例では、実施例1〜3で実施したカテコール骨格を含有する化合物について、別の塩について調査した。具体的には、エピネフリン酒石酸水素塩あるいはノルエピネフリン酒石酸水素塩のほか、エピネフリンあるいはノルエピネフリン塩酸塩を試験した。試験手法としては、実施例1〜3に記載の手法に基づき行なった。その結果、図12に示すように、カテコール骨格含有化合物が別の塩(酒石酸水素塩に加えて、塩酸塩)でも、同様に、本発明のL. plantarumの増殖活性が認められた。したがって、塩が重要なのではなく、カテコール骨格を有することが、本発明のL. plantarumの増殖活性において役割を果たすことが理解される。
【0152】
(実施例7:他の物質の例:DL体での例)
本実施例では、実施例1〜3で実施した化合物のD体についても活性があるか調査した。具体的にはドパ、エピネフリンおよびノルエピネフリンのD体、L体およびDL体の活性を調査した。D体としては、3,4−ジヒドロキシ−D−フェニルアラニン,D−(−)−エピネフリン(D−アドレナリン),D−(−)−ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)などを試験した。試験手法としては、実施例1〜3に記載の手法に基づき行なった。すなわち、異なる光学異性体のドパ、エピネフリンおよびノルエネフリンのLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性を測定した。TO1002株を無添加培地、あるいは、それぞれ1,10または100(μM)のDL-,L-,D-ドパ(A),DL-,L-,D-エピネフリン(B),DL-,L-,D-ノルエピネフリン(C)を含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度を測定した。
【0153】
濃度域としては、本実施例では、D体、L体およびDL体のいずれについても、0μM、1μM、10μMおよび100μMで行った。
【0154】
その結果を、同様に活性を測定したL体およびDL体とあわせて、図13に示す。結果から分かるように、D体であってもL体であってもDL体であっても、いずれも同様の活性を示した。したがって、本発明の目的では、異性体の構造にかかわらず本発明の目的とする活性が発揮されることが明らかになった。
【0155】
(実施例8:牧草を分離源としたL.plantarumの3菌株での例)
本実施例では、別の供試菌株について同様の実験を行なった。
【0156】
通常、人が口にいれて、食経験も豊富な野菜などから分離したL.plantarumについて同様の効果が見られれば、食品としてより安全なプロバイオティクスなどを提供しうるからである。本実施例では、牧草を分離源としたL.plantarumの3菌株分の追加データの取得し、図14に示すように、実施例1〜3に示したのと同様の活性を有するものが取得できたことが判明した。
【0157】
(実施例9:他の物質の例)
本実施例では、N-オレオイルドーパミン(ODA)、N−アラキドノイルドーパミン(NADA)、塩酸(R)−(+)−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−(1H)3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール(SKF−38393)、塩酸cis−(±)−1−(アミノメチル)−3,4−ジヒドロ−3−フェニル−1H−2−ベンゾピラン−5,6−ジオール(A−68930)、臭化水素酸4−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−チエノ[2,3−c]ピリジン(SKF−89626)、一臭化水素酸6−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1H−3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール(Fenoldopam)、臭化水素酸(±)−6−クロロ−7,8−ジヒドロキシ−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピン(6−Chloro−PB)、臭化水素酸R(−)−2,10,11−トリヒドロキシ−N−プロピル−ノルアポルフィン水和物(2,10,11−Trihydroxy−N−propyl−noraporphine)、塩酸R(−)−プロピルノルアポモルフィン(Propylnorapomorphine)のLactobacillus plantarum TO1002株に対する活性を試験した。
試験方法は、実施例1〜3のものに準じた。
【0158】
ODAおよびNADAについては、TO1002株をそれぞれ0,0.5,1,5,10,100または500(μM)のN-オレオイルドーパミンあるいはN−アラキドノイルドーパミンを含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度を測定した。
【0159】
他方、他の物質については、TO1002株をそれぞれ1,10または100(μM)の塩酸(R)−(+)−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−(1H)3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール(SKF−38393)、塩酸cis−(±)−1−(アミノメチル)−3,4−ジヒドロ−3−フェニル−1H−2−ベンゾピラン−5,6−ジオール(A−68930)、臭化水素酸4−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−チエノ[2,3−c]ピリジン(SKF−89626)、一臭化水素酸6−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1H−3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール(Fenoldopam)、臭化水素酸(±)−6−クロロ−7,8−ジヒドロキシ−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピン(6−Chloro−PB)、臭化水素酸R(−)−2,10,11−トリヒドロキシ−N−プロピル−ノルアポルフィン水和物(2,10,11−Trihydroxy−N−propyl−noraporphine)または塩酸R(−)−プロピルノルアポモルフィン(Propylnorapomorphine)を含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度を測定した。
【0160】
図15に、N-オレオイルドーパミン(ODA)、N−アラキドノイルドーパミンのLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性を示す。無添加培地と比較した際の有意差を***(P<0.001)で示す。
【0161】
図16に、塩酸(R)−(+)−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−(1H)3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール(SKF−38393)、塩酸cis−(±)−1−(アミノメチル)−3,4−ジヒドロ−3−フェニル−1H−2−ベンゾピラン−5,6−ジオール(A−68930)、臭化水素酸4−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−チエノ[2,3−c]ピリジン(SKF−89626)、一臭化水素酸6−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1H−3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール(Fenoldopam)、臭化水素酸(±)−6−クロロ−7,8−ジヒドロキシ−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピン(6−Chloro−PB)、臭化水素酸R(−)−2,10,11−トリヒドロキシ−N−プロピル−ノルアポルフィン水和物(2,10,11−Trihydroxy−N−propyl−noraporphine)、塩酸R(−)−プロピルノルアポモルフィン(Propylnorapomorphine)のLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性を示す。無添加培地と比較した際の有意差を***(P<0.001)、**(P<0.01)で示す。
図15および16に示すように、追加の例についても、実施例1〜3に示したのと同様の活性を有するものが取得できたことが判明した。
なおデータは示さないが、カテコール骨格とは異なるが類似する骨格を有するα−[(tert−ブチルアミノ)メチル]−4−ヒドロキシ−m−キシレン−α,α’−ジオール(通称:サルブタモール)およびキシナホ酸(±)4−ヒドロキシ−a1−[[[6−(4−フェニルブトキシ)ヘキシル]アミノ]m−エチル]−1,3−ベンゼンジメタノール(通称:サルメテロール)は、有意な活性が認められなかった。したがって、本発明の増殖促進活性は、カテコール骨格に拠るところが大きいことが明らかになった。
【0162】
(実施例10:増殖活性倍率の計算)
本実施例では、各菌株をより特徴付けるため、増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30% ウシ血清を含む培地(pH6.5)における増殖活性の変化を計算した。実施例1〜3と同様の実験を行なってその結果を、以下のような計算を行なった。
【0163】
無添加区およびカテコール骨格を含む化合物添加区それぞれの増殖活性を、培養後の培養液の濁度(optical density,OD 600nm)により解析した。各区の値の平均値を算出し、無添加区との相対値を算出することにより(各試験区/無添加区)、各カテコール骨格を含む化合物による増殖活性倍率とした。
【0164】
その結果寄託株について以下のような結果が得られた。
【0165】
L−ドパの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも3.7倍上昇するか、または
ドパミンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも2.4倍上昇するか、または
ノルエピネフリンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも4.1倍上昇するか、または
エピネフリンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも4.0倍上昇するか、または
ピロカテコールの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも6.3倍上昇する。
【0166】
そして、JCM1149T株を含めた本明細書において試験した全株について、上述の培地において、以下のような結果が得られた。
L−ドパの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも1.3倍上昇するか、または
ドパミンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも1.4倍上昇するか、または
ノルエピネフリンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも1.5倍上昇するか、またはエピネフリンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも1.3倍上昇するか、または
ピロカテコールの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも1.8倍上昇する。
【0167】
(実施例11:プレバイオティクスの実施例 錠剤)
本発明により同定した、化合物について、常法により次の組成からなる錠剤を製造する。本発明の成分は、菌株の場合は、乾燥させて菌株末とする。カテコール骨格を有する化合物の場合は、一般の低分子化合物と同様に調製する。これらの錠剤は、例えば、本発明菌株を用いた発酵食品等と別途、併用処方することができる。
本発明の成分 100mg
乳 糖 60mg
馬鈴薯でんぷん 30mg
ポリビニルアルコール 2mg
ステアリン酸マグネシウム 1mg
タール色素 微量。
【0168】
(実施例12:プレバイオティクスの実施例 散剤)
本発明により同定した、化合物について、常法により次の組成からなる散剤を製造する。本発明の成分は、菌株の場合は、乾燥させて菌株末とする。カテコール骨格を有する化合物の場合は、一般の低分子化合物と同様に調製する。これらの散剤は、例えば、本発明菌株を用いた発酵食品等と別途、併用処方することができる。
本発明の成分 150mg
乳 糖 280mg。
【0169】
(実施例13:プレバイオティクスの実施例 シロップ剤)
本発明により同定した、化合物について、常法により次の組成からなるシロップ剤を製造する。本発明の成分は、菌株の場合は、乾燥させて菌株末とする。カテコール骨格を有する化合物の場合は、一般の低分子化合物と同様に調製する。これらのシロップ剤は、例えば、本発明菌株を用いた発酵食品等と別途、併用処方することができる。
本発明の成分 100mg
精製白糖 40 g
p−ヒドロキシ安息香酸エチル 40mg
p−ヒドロキシ安息香酸プロピル 10mg
チョコフレーバー 0.1cc
これに水を加えて全量100ccとする。
【0170】
(実施例14:プロバイオティクスの実施例)
本発明により同定した、プロバイオティック乳酸菌について、常法により次の組成からなるはっ酵乳を製造する。本発明の菌株は、ヨーグルト発酵スターターと同時に添加することで、共発酵とする。乳酸菌スターターとしては、特に限定されなく、通常ヨーグルトの発酵に使用するものを用いることができる。
【0171】
下記配合表に記載の原材料のうち、本発明菌株とスターター以外を一括して混合し、加温、濾過、均質処理する。次いで常法に従い殺菌、冷却、本発明菌株とスターターを添加後、容器に充填し、静置状態で発酵させた後、冷却してプレインヨーグルトやハードヨーグルトを得ることができる。また、本発明菌株とスターターを添加後、常法のタンク発酵方式を実施することにより、ソフトヨーグルトやドリンクヨーグルトの製造が可能である。
本発明の菌株 10kg
乳酸菌スターター 20kg
還元乳 800kg
糖類 10kg
安定剤 1kg。
【0172】
(実施例15:プロバイオティクスの実施例)
本発明により同定した、プロバイオティック乳酸菌について、常法により次の組成からなる家畜貯蔵発酵飼料を製造する。本発明の菌株を、例えば、飼料作物・牧草・食品副産物に添加し、常法のロールベール法等の保存処理を実施する。飼料作物・牧草・食品副産物としては、特に限定されなく、通常家畜飼料に使用するものを用いることができる。本発明の菌株の場合は、乾燥させて菌株末とし、使用する際に50gを10Lの水に溶解させ、飼料作物・牧草・食品副産物にスプレーする。
本発明の菌株 50 g
調合水 10kg
飼料作物・牧草・食品副産物 10 t。
【0173】
(実施例16:シンバイオティクスの実施例)
本発明により同定した、プロバイオティック乳酸菌について、常法により次の組成からなるはっ酵乳を製造する。本発明の菌株は、ヨーグルト発酵スターターと同時に添加することで、共発酵とする。乳酸菌スターターとしては、特に限定されなく、通常ヨーグルトの発酵に使用するものを用いることができる。カテコール骨格を有する化合物の場合は、一般の低分子化合物と同様に調製する。
【0174】
下記配合表に記載の原材料のうち、本発明菌株とスターター以外を一括して混合し、加温、濾過、均質処理する。次いで常法に従い殺菌、冷却、本発明の菌株とスターター、本発明の化合物を添加後、容器に充填し、静置状態で発酵させた後、冷却してプレインヨーグルトやハードヨーグルトを得ることができる。また、本発明菌株とスターターを添加後、常法のタンク発酵方式を実施することにより、ソフトヨーグルトやドリンクヨーグルトの製造が可能である。
本発明の菌株 10kg
本発明の化合物 10kg
乳酸菌スターター 20kg
還元乳 800kg
糖類 10kg
安定剤 1kg。
【0175】
(実施例17:シンバイオティクスの実施例)
本発明により同定した、プロバイオティック乳酸菌について、常法により次の組成からなる家畜貯蔵発酵飼料を製造する。本発明の菌株を、例えば、飼料作物・牧草・食品副産物に添加し、常法のロールベール法等の保存処理を実施する。飼料作物・牧草・食品副産物としては、特に限定されなく、通常家畜飼料に使用するものを用いることができる。本発明の菌株の場合は、乾燥させて菌株末とし、使用する際に50gを本発明の化合物50gと同時に10Lの水に溶解させ、飼料作物・牧草・食品副産物にスプレーする。カテコール骨格を有する化合物の場合は、一般の低分子化合物と同様に調製する。
本発明の菌株 50 g
本発明の化合物 50 g
調合水 10kg
飼料作物・牧草・食品副産物 10 t。
【0176】
(実施例18:飼料添加物の実施例)
本実施例では、本発明の成分を飼料添加物として利用して実施した例を記載する。
【0177】
(方法)
飼料用稲を収穫後、カッターにより約10cmに細切し、サイレージ調製用材料とした。サイレージの処理区には無添加区および各乳酸菌添加区を設け、乳酸菌は原料草1gあたり10菌数(CFU)添加した。サイレージは小規模発酵試験法により調製した。すなわち、細切した飼料用稲100gをポリフレックスバッグ(登録商標)(飛竜 N−9、旭化成パックス株式会社、東京)に入れ、業務用卓上密封包装機(SQ−202、シャープ株式会社、大阪)により脱気と密封を行い、15〜25℃の室温で貯蔵した。
【0178】
調製したサイレージは、サイレージ発酵30および60日目に開封した。微生物数カウント、サイレージの発酵品質および化学成分の分析方法は既報(小林寿美・蔡 義民・上垣隆一・清水雅代・中島麻希子・金谷千津子・岡島 毅・高田良三(2010) イタリアンライグラス(Lolium multiflorum Lam.)に付着する微生物の菌種構成と乳酸菌添加による高水分サイレージの発酵特性.日本草地学会誌 56:39−46)と同様の方法で行った。
【0179】
(結果)
以下に、結果を纏めた表を示す。
【0180】
(表3)30日貯蔵後の稲サイレージからの生存微生物数(表中、abについては異なる上付き文字について、統計的有意差が観察された(P<0.05);ndは非検出;AVは平均値を示し、SDは標準偏差を示す)
【表3】

【0181】
(表4)60日貯蔵後の稲サイレージからの生存微生物数(表中、abについては異なる上付き文字について、統計的有意差が観察された(P<0.05);ndは非検出;AVは平均値を示し、SDは標準偏差を示す)
【表4】

【0182】
(表5)30日貯蔵後の稲サイレージのpHおよび有機酸濃度(表中、abについては異なる上付き文字について、統計的有意差が観察された(P<0.05);ndは非検出;AVは平均値を示し、SDは標準偏差を示す)
【表5】

【0183】
(表6)60日貯蔵後の稲サイレージのpHおよび有機酸濃度(表中、abについては異なる上付き文字について、統計的有意差が観察された(P<0.05);ndは非検出;AVは平均値を示し、SDは標準偏差を示す)
【表6】

【0184】
乳酸菌無添加区は、30日および60日後において充分なpHの低下が認められず、乳酸含量も低いことが認められた。また、両保存期間において、腐敗の原因とされるclostridiaが最も多く検出され、30日目には酪酸も検出された。さらに、乳酸菌無添加区では、カビ、酵母、大腸菌群も多く検出された。
【0185】
他方、本発明の乳酸菌の各添加区において、30日目の段階でpHの顕著な低下が認められ、60日目においても低いpHが維持され、乳酸含量の高い良好なサイレージ品質が維持された。添加区では乳酸菌数が無添加区に比べて高く、カビ、酵母および大腸菌群などの菌数が低いことが明らかになった。
【0186】
以上のことから、本発明の各乳酸菌の添加は、良質な飼料用稲サイレージ調製に極めて有効であることが明らかとなった。
【0187】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本願は、特願2010-232962に対して優先権を主張するものであり、その全体の内容は、具体的に本明細書に記載されているのと同様に本明細書の一部を構成するものとして援用されるべきであることが理解される
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明の好ましい菌株例であるL. plantarum TO1000、TO1001、TO1002およびTO1003などに例示される本発明の菌株は、牧草サイレージ由来であるため、食品残さ、サイレージ、発酵TMRに対して、プロバイオティック効果を期待した生菌剤として畜産分野において広範な利用が期待される。したがって、生理保健効果をも訴求する「乳酸菌飼料添加剤」の開発が期待できる。飼料作物・牧草由来カテコールアミンと乳酸菌の関係解明を通して、「乳酸菌増殖促進剤」の提案による産業的波及効果が期待できる。
【0189】
また、食品残さ、サイレージ、発酵TMRには、「食品・植物由来カテコールアミンなどのなどのカテコール骨格含有化合物」も含まれ、それらのカテコールアミンなどのカテコール骨格含有化合物を認識し増殖促進できることも見逃せない。植物性カテコールアミンなどのカテコール骨格含有化合物に着目することにより、糖類や水分調整といった従来の乳酸菌によるサイレージ発酵調製技術とは異なる観点から、サイレージ発酵促進剤としての付加価値も大いに期待でき、「新規サイレージ調製用乳酸菌添加物」や「乳酸菌増殖促進添加物」として飼料製造産業への技術移転が期待される。また、本発明の選抜技術により、様々な環境由来の微生物のスクリーニングが可能である。例えば、ヒト糞便由来のプロバイオティック乳酸菌の選抜により、ヒト由来である安全性がより期待され、将来的に、ストレス応答時に有害微生物を積極的に排除しながら消化管環境を維持する機能性食品の開発が期待できるため、ストレス環境下の腸内細菌叢の改善により、家畜の健全育成やアニマルフェルフェアに対する配慮のみならず、ヒトを対象とした場合、国民の心身の健康増進への貢献が期待できる。「ストレス・心の時代」が到来した昨今、本作用を基盤とした新ジャンルの機能性飼料・食品の創製により、関連業界への産業的波及効果が期待できる。
【0190】
また、食経験と安全性が担保された植物資源(野菜・果物・種子等)由来の本含有組成物を有効利用することにより、プレバイオティクス様作用を発揮する新規機能性成分としての利用も充分に期待できる。先行例の難消化性糖質は、植物、海草由来成分も多く、製造者および消費者に比較的受け容れられやすいと考えられる。
【0191】
また、植物、昆虫、動物、微生物界に数多く存在するカテコールアミン化合物について、生物界を越えた生物学的意義の解明が期待できる。
【配列表フリーテキスト】
【0192】
配列番号1:paraF 5’−GTCACAGGCATTACGAAAAC−3’
配列番号2:pentF 5’−CAGTGGCGCGGTTGATATC−3’
配列番号3:planF 5’−CCGTTTATGCGGAACACCTA−3’
配列番号4:pREV 5’−TCGGGATTACCAAACATCAC−3’
【受託番号】
【0193】
NITE P−958
NITE P−959
NITE P−960
NITE P−961

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテコール骨格を有する化合物によって増殖活性が上昇するLactobacillus plantarum菌株。
【請求項2】
前記増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30% ウシ血清を含む培地(pH6.5)において、
L−ドパの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも1.3倍上昇するか、
ドパミンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも1.4倍上昇するか、
ノルエピネフリンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも1.5倍上昇するか、
エピネフリンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも1.3倍上昇するか、および
ピロカテコールの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも1.8倍上昇する、
からなる群より選択される特徴の少なくとも1つの特徴を有する、請求項1に記載のLactobacillus plantarum菌株。
【請求項3】
前記増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30% ウシ血清を含む培地(pH6.5)において、
L−ドパの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも3.7倍上昇するか、
ドパミンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも2.4倍上昇するか、
ノルエピネフリンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも4.1倍上昇するか、
エピネフリンの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも4.0倍上昇するか、および
ピロカテコールの非存在下に比べて100μMの該化合物の存在下で、少なくとも6.3倍上昇する、
からなる群より選択される特徴の少なくとも1つの特徴を有する、請求項1に記載のLactobacillus plantarum菌株。
【請求項4】
前記化合物は、カテコールアミンを含む、請求項1に記載の菌株。
【請求項5】
前記化合物が、ピロカテコールまたはその塩、(−)−エピネフリン(アドレナリン)またはその塩、L−(−)−ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)またはその塩、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(L−ドパ)またはその塩、およびドパミンまたはその塩、ドブタミンまたはその塩、(−)−イソプロテレノールまたはその塩、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸またはその塩、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸またはその塩、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸またはその塩、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸またはその塩、塩酸(R)−(+)−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−(1H)3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール、塩酸cis−(±)−1−(アミノメチル)−3,4−ジヒドロ−3−フェニル−1H−2−ベンゾピラン−5,6−ジオール、臭化水素酸4−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−チエノ[2,3−c]ピリジン、一臭化水素酸6−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1H−3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール、臭化水素酸(±)−6−クロロ−7,8−ジヒドロキシ−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピン、臭化水素酸R(−)−2,10,11−トリヒドロキシ−N−プロピル−ノルアポルフィン水和物、塩酸R(−)−プロピルノルアポモルフィン、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸および3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸ならびにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1つを含む請求項1に記載の菌株。
【請求項6】
前記化合物が、ピロカテコール、(−)−エピネフリン(アドレナリン)、(+)−酒石酸水素(−)−エピネフリン(アドレナリン)、塩酸(−)−エピネフリン(アドレナリン)、L−(−)−ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、(+)−酒石酸水素L−(−)−ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)一水和物、L−ドパ、塩酸ドパミン、塩酸ドブタミン、塩酸(−)−イソプロテレノール、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸および3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸からなる群より選択される、請求項1に記載の菌株。
【請求項7】
前記化合物がドパミンまたはその塩である、請求項1に記載の菌株。
【請求項8】
前記菌株は、Lactobacillus plantarum TO1000、TO1001、TO1002またはTO1003(受託番号NITE P−958、NITE P−959、NITE P−960またはNITE P−961)である請求項1に記載の菌株。
【請求項9】
カテコール骨格を有する化合物を含む、Lactobacillus plantarum菌株の増殖のための組成物。
【請求項10】
前記化合物がカテコールアミンである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記化合物が、ピロカテコールまたはその塩、(−)−エピネフリン(アドレナリン)またはその塩、L−(−)−ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)またはその塩、3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン(L−ドパ)またはその塩、およびドパミンまたはその塩、ドブタミンまたはその塩、(−)−イソプロテレノールまたはその塩、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸またはその塩、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸またはその塩、塩酸(R)−(+)−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−(1H)3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール、塩酸cis−(±)−1−(アミノメチル)−3,4−ジヒドロ−3−フェニル−1H−2−ベンゾピラン−5,6−ジオール、臭化水素酸4−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−チエノ[2,3−c]ピリジン、一臭化水素酸6−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1H−3−ベンゾアゼピン−7,8−ジオール、臭化水素酸(±)−6−クロロ−7,8−ジヒドロキシ−1−フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンゾアゼピン、臭化水素酸R(−)−2,10,11−トリヒドロキシ−N−プロピル−ノルアポルフィン水和物、塩酸R(−)−プロピルノルアポモルフィン、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸および3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸ならびにそれらの溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1つを含む請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記化合物が、ピロカテコール、(−)−エピネフリン(アドレナリン)、(+)−酒石酸水素(−)−エピネフリン(アドレナリン)、塩酸(−)−エピネフリン(アドレナリン)、L−(−)−ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、(+)−酒石酸水素L−(−)−ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)一水和物、塩酸ドパミン、塩酸ドブタミン、塩酸(−)−イソプロテレノール、DL−3,4−ジヒドロキシマンデル酸および3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸からなる群より選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記化合物がドパミンまたはその塩である、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
前記菌株は、Lactobacillus plantarum TO1000、TO1001、TO1002またはTO1003(受領番号NITE P−958、NITE P−959、NITE P−960またはNITE P−961)である、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の菌株を含むプロバイオティクス。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の菌株とカテコール骨格を有する化合物とを組み合わせたシンバイオティクス。
【請求項17】
前記化合物は、体内で存在する場合に前記菌株の1×10コロニー形成単位(cfu)あたり少なくとも5μMで含まれる請求項16に記載のシンバイオティクス。
【請求項18】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の菌株と組み合わせて使用するための、カテコール骨格を有する化合物を含むプレバイオティクス。
【請求項19】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の菌株または請求項9〜14のいずれか1項に記載の組成物あるいはその両方を含む添加剤。
【請求項20】
前記添加剤は、稲サイレージ用である、請求項19に記載の添加剤。
【請求項21】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の菌株または請求項9〜14のいずれか1項に記載の組成物あるいはその両方を含む食品。
【請求項22】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の菌株または請求項9〜14のいずれか1項に記載の組成物あるいはその両方を含む医薬。
【請求項23】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の菌株または請求項9〜14のいずれか1項に記載の組成物あるいはその両方を含む飼料。
【請求項24】
カテコール骨格を有する化合物によって増殖活性が上昇するLactobacillus plantarum菌株を選択する方法であって、該方法は、
A)Lactobacillus plantarum菌を含む試料を提供する提供工程;
B)硫酸マグネシウム(MgSO)、硝酸アンモニウム(NHNO)、塩化カリウム(KCl)、D−(+)−グルコース、リン酸二水素カリウム(KHPO)およびウシ血清を含む培地中で、カテコール骨格を有する化合物の存在下または不存在下で該試料を培養する培養工程;および
C)該化合物の不存在下で増殖せず、かつ、存在下において増殖したか、または該化合物の存在下において不存在下よりも増殖が促進された菌株を分離する分離工程
を包含する、方法。
【請求項25】
前記硫酸マグネシウムは、1.16〜1.74mM、前記硝酸アンモニウムは、8.02〜9.81mM、前記塩化カリウムは、3.83〜5.74mM、前記D−(+)−グルコースは3.96〜39.64mM、前記リン酸二水素カリウムは、2.09〜3.14mM、および前記ウシ血清は15〜30%で前記培地中に存在し、前記培地はpHが6.0〜7.0である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記培養工程は、32〜48時間実施される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記培養工程は、25〜40℃で実施される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記培養工程は、0〜5%CO、および1〜20%Oの条件下で実施される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記試料は、5×10〜5×10コロニー形成単位/wellの間で前記Lactobacillus plantarum菌を含む、請求項24に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8−1】
image rotate

【図8−2】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−100655(P2012−100655A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226788(P2011−226788)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】