説明

カテーテルのための非伸張性の多層バルーン

バルーンカテーテル(10)が備える多層バルーン(14)は、第1層(30)および少なくとも第2層(31)を有し、その基準直径を超える範囲における半径方向の膨張が制限されて非伸張性となっている。バルーン層を形成するポリマー材料を選択し、および本発明に基づいてバルーンの複数の層を配置して半径方向に拡げることにより、好ましくは高い柔軟性および柔らかさと共に改善された低い伸張度を有するバルーンが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内医療装置の分野に関し、より詳しくは、カテーテルのためのバルーンに関する。
【背景技術】
【0002】
経皮経管冠動脈形成術(PTCA)手技においては、案内カテーテルの遠位端が所望の冠状動脈の小孔内に着座するまで、この案内カテーテルを前進させる。膨張カテーテルの内側管腔内に配置されているガイドワイヤは、最初に、その遠位端が拡張させる病変部を横切るまで案内カテーテルの遠位端から患者の冠状動脈内に進出する。次いで、その遠位側部分に膨張可能なバルーンを備えている膨張カテーテルは、そのバルーンが病変部を越えるように適切に配置されるまで、先行して導入されているガイドワイヤ上において患者の冠状動脈解剖学的組織内で前進する。拡張バルーンは、適切に配置されると、狭窄を動脈の壁に押圧しつつこの壁が拡大して通路を開通させるように(例えば8気圧を超える)比較的高い圧力の液体によって、所定のサイズへと1回若しくは複数回膨張する。バルーンの膨張直径は一般的に、拡張は完了させるが動脈壁を拡げすぎることがないように、拡張する体内管腔の本来の直径とほぼ同じ直径となっている。実際に、血管壁に対するバルーンの制御されない膨張は血管壁に外傷を生じさせ得る。バルーンを最終的に収縮させると、拡張した動脈を通って血流が再開し、膨張カテーテルをそこから取り除くことができる。
【0003】
そのような血管形成術手技においては、動脈の再狭窄、すなわち動脈閉塞の再形成が生じると、さらなる血管形成術手技、あるいは拡張させた領域を修復しあるいは強化するいくつかの他の方法が必要となる。再狭窄の進行を遅らせるとともに拡張した領域を強化するために、医師は、一般的にステントと呼ばれる血管内人工器官を病変部の動脈内に植設する。ステントはまた、内膜フラップあるいは剥離を有した血管を修復し、あるいは血管のうち弱くなった部分を全般的に強化するために用いることができる。ステントは通常、バルーン血管形成術カテーテルと多くの点で類似しているカテーテルのバルーン上で収縮した状態で冠状動脈内の所望の位置に送給されるとともに、バルーンの膨張によってより大きな直径へと拡径する。カテーテルを取り除くためにバルーンを収縮させると、動脈内のうち拡張させた病変部の所定の場所にステントが残置される。
【0004】
カテーテルバルーンは、典型的に、カテーテルシャフトとは別個に製造され、次いで接着剤あるいは他の接合方法によってカテーテルシャフトに固定される。標準的なバルーンの製造においては、金型内において軸線方向の張力、内圧および熱を作用させつつポリマーチューブを二軸方向にブロー成形する。このポリマーチューブは、半径方向および軸線方向に同時に、あるいは最初に軸線方向にそれから半径方向へと順番に伸張する。ポリマーチューブの出発寸法および金型内でブロー成形されるバルーンの完成寸法は、バルーンをブロー成形する間にポリマー材料が伸張しかつ延伸する度合いの尺度であり、かつ完成したバルーンの破裂圧力および伸張度といった重要な特性に影響を及ぼす。ブローアップ比(BUR)、すなわちブロー成形されたバルーンの外径(すなわち金型の内径)とポリマーチューブの内径との比率は、それらの寸法の尺度である。所与のポリマーにおける臨界BURを越えると、バルーンのブロー成形プロセスは不安定となり、ポリマーチューブは多くの場合にバルーンが完全に成形される前に破裂しあるいは裂ける。
【0005】
標準的なブロー成形プロセスにおいて、最初にできた気泡は、金型の壁によって拘束されるまで直径方向に急速に成長する。チューブがバルーンに成長するときのチューブの壁のフープ応力は、次式で近似することができる。
σh=(P・R)/δ
ここで、Pは膨張圧力、Rは膨張の間における任意の時点でのポリマーチューブの平均半径、δはチューブの壁厚である。バルーンをチューブから出発させるために、膨張圧力は、そのブロー成形温度においける伸張のための壁のフープ応力が材料抵抗(典型的に降伏応力)を上回るようなものでなければならない。バルーンは、チューブから出発すると、金型の壁に接触するまでその寸法が急速に拡径する。バルーンが成長するにつれて、半径は増大しバルーンの壁厚は減少する。このことは、定圧でのブロー成形の間における壁のフープ応力の急速な増加をもたらす。成長しつつあるバルーンの壁のフープ応力が材料の極限フープ強度を越えると、破裂が発生する。その結果、バルーンの層を形成するポリマー材料のBUR(すなわち最大達成BR)には限界がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カテーテルバルーンの設計においては、特定の用途における最適な性能をもたらすために、強度、柔軟性および伸張度といったバルーンの特性を調整しなければならない。血管形成ステント送給バルーンは、比較的高い圧力における膨張のための高い強度と、曲がりくねった解剖学的組織に追従して病変部を越える改善された能力のための高い柔軟性および柔らかさとを有することが好ましい。バルーンの伸張度は、バルーン材料の特性、バルーンの壁厚および加工条件といった要因によって左右されるが、バルーンが膨張する間に所望の量だけ膨張するように選択される。伸張性のバルーン、例えばポリエチレンのような材料から製作されたバルーンは、引張力が負荷されるとかなり伸張する。非伸張性のバルーン、例えばPETのような材料から製作されたバルーンは、膨張の間に生じる伸張の量が比較的小さいため、作動圧力範囲内での膨張圧力の増加に応答して半径方向の制御された成長を生じさせる。しかしながら、非伸張性のバルーンは、一般的に、その柔軟性および柔らかさが比較的小さいため、カテーテルの追従性を高めるために高い柔軟性および柔らかさを有しながらも伸張度の小さいバルーンを提供することは困難であった。典型的に、柔らかさ/柔軟性と非伸張性という互いに競合する考慮の対象の間に均衡を得ることができるが、その結果、カテーテルバルーンの伸張性をさらに低下させることができる度合いには限界がある。
【0007】
したがって、必要とされてきたものは、患者の血管系に追従しつつその内部の病変部を越える優れた能力を有するにも関わらず、きわめて低い伸張性を有したカテーテルバルーンである。本発明は、これらのおよび他の必要を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1層および少なくとも第2層を具備するとともに、バルーンの基準直径を越えて限られた量だけ半径方向に膨張する非伸張性の多層バルーンを有したバルーンカテーテルを指向している。バルーンの層を形成するポリマー材料を選択することにより、かつ本発明のバルーンの複数の層を構成して半径方向に膨張させることにより、高い柔軟性および柔らかさと共に改善された低い伸張性を有した好ましいバルーンが提供される。
【0009】
本発明の多層バルーンは、好ましくは、共押出しされるポリマーチューブの層として全体的にあるいは部分的に形成され、バルーンとそこから形成されるバルーンカテーテルの製造を容易にする。この多層バルーンは、典型的に、多層ポリマーチューブをバルーン金型の内部で半径方向に膨張させる従来のブロー成形によって形成される。結果として得られる多層バルーンは、金型の内側表面に対応する膨張形状を有するとともに、バルーンの基準作動直径と一般的に呼ばれる、バルーン金型の内径にほぼ等しい直径を有する。基準圧力は、基準作動直径へとバルーンを満たすために必要な膨張圧力である。本発明によると、このバルーンは、基準圧力を超える圧力においてきわめて小さい量だけ膨張する(すなわち、非伸張性である)。その結果、このバルーンは、基準圧力を超えて増加する膨張圧力において実質的に制御できない量だけ膨張し続けたときに発生し得る患者の血管の損傷を最小化させる。
【0010】
上述したように、ポリマーチューブから形成されるバルーンのブローアップ比(BUR)は、金型の内部で膨張してブロー成形されるバルーンの外径(すなわち金型の内径)と金型内で膨張する前のポリマーチューブの内径との比を指すものと理解されるべきである。多層バルーンの各層は、金型の内径と(金型内で膨張する前の)ポリマーチューブの層の内径との比に基づいた、それ自身のBUR値を有している。一般的には、所与のバルーン壁厚において、バルーンのBURが増加すると、破裂強度が増加するとともに半径方向の伸張度が減少する。標準的な圧力で行われるカテーテルバルーンのブロー成形において、典型的なBURの範囲は、材料および製品の用途に応じて約4.5〜約8.0である。
【0011】
本発明のバルーンの製造方法は、半径方向に高度に延伸するバルーン材料の量を増大させて、膨張圧力が増加しても半径方向の膨張が制限されるバルーン(すなわち、非伸張性のバルーン)を提供する。具体的には、本発明の多層バルーンは、より高いBUR値に膨張させることができるポリマー材料をバルーンの内側層として有しつつ、BUR値の低い材料をバルーンの外側層としている。目下のところ好ましい実施形態において、このバルーンは、第1のポリマー材料の第1層と第2のポリマー材料の第2層とを有する。そして、第2のポリマー材料は、第1のポリマー材料よりもショアデュロメータ硬さが低く、バルーンをブロー成形する間に(破裂しあるいは裂けることなしに)ショアデュロメータ硬さがより高い第1層の材料よりも高いBUR値に膨張させることができ、かつ第2層は第1層に対し内側の層である。例えば、一実施形態において、この多層バルーンの内側層は、約60〜70Dのショアデュロメータ硬さを有する(例えば、PEBAX(登録商標)として商業的に入手可能な)ポリエーテルブロックアミド(PEBA)材料から形成され、外側層は、約70〜72Dとより高ショアデュロメータ硬さを有しているPEBA材料から形成される。しかしながら、同じ材料分類/ファミリの材料あるいは異なる種類の材料を含む、様々に適切な材料を用いることができる。この多層バルーンは、一般的に、2つのあるいはより多くの層(すなわち、異なるショアデュロメータ硬さといった、いくつかの点で異なる材料から形成される層)を有するが、典型的に5つ以上の層は有しない。
【0012】
この多層バルーンの第2(内側)層を形成する低デュロメータ硬さの材料の存在にもかかわらず、本発明の第1実施形態はきわめて伸張性が低いバルーンをもたらす。例えば、本発明のバルーンは、第1デュロメータ硬さの第1(外側)層と、デュロメータ硬さが順番に低い(すなわち次第により柔らかくなる)材料の1つ若しくは複数の内側層とを有しているが、壁厚がほぼ同じであるけれども最も高いデュロメータ硬さの材料(すなわち、本発明のバルーンの最も外側の層を形成している材料)から100%形成されているバルーンよりも伸張性が低い。最も高いデュロメータ硬さの材料から100%形成されたバルーンに比較すると、本発明のバルーンは、典型的に伸張性を増大させると思われているデュロメータ硬さが低い(より柔らかい)材料の層によって、バルーンの壁厚の一部が効果的に置き換えられている。理論によって束縛されることは望まないが、このバルーンは、バルーンの高度に延伸される層の特定の組合せによって、特にバルーンの内側層の延伸を最大化することによって、非伸張性の挙動をもたらしていると考えられる。内側層の延伸は、バルーンの伸張性に大きく影響する。本発明に基づいて異なるBUR値にブロー成形できる異なる材料を選択して配置することにより、このバルーンのBUR値はその外側層から内側層へと連続的に増大し、各層のBUR値が好ましく最大化され、かつ内側層が特に高いBUR値を有している。したがって、このバルーンの各層は伸張性を目的として最適化される。例えば全体的な壁厚を好ましい値に増大させるために、追加の層をこのバルーンに追加することができるが、本発明に基づいた基本的な層の配置は、より高い伸張性のバルーンに帰着することなしに変更することができない。
【0013】
加えて、本発明はまた、伸張性は低いが非常に薄い壁を有したバルーンを提供することができる。例えば、一つの実施形態は、第1デュロメータ硬さの材料の第1(外側)層とデュロメータ硬さが順番に低くなる材料の1つ若しくは複数の内側層とを備え、最も高いデュロメータ硬さの材料から100%形成されているが本発明の多層バルーンよりも壁厚が大きいバルーンに対して伸張性が実質的に大きくなく(例えば約10%〜約20%以上大きくなく)、好ましくはほとんど等しい多層バルーンを指向している。全体的な壁厚が非常に薄いバルーンの実施形態は、バルーンのより薄い壁に起因する改善された小さな輪郭および柔軟性をもたらすが、本発明によると、壁が薄いにもかかわらず低い伸張性をもたらし続ける。
【0014】
バルーンの破裂圧力および伸張性は、バルーンの強度(例えば環状強度)の影響を受ける。一般的により柔らかい材料の環状強度は比較的低いので、バルーンの内側層を形成している低デュロメータ硬さの材料の存在は、全般的に、比較的高い弾性係数のバルーンを提供するとは思われない。しかしながら、本発明の多層バルーンは、好ましくは、最も高いデュロメータ硬さの材料から100%形成されているバルーンよりも高い弾性係数および実質的に低くない破裂圧力を有する。
【0015】
より低いデュロメータ硬さの材料の内側層の存在が、柔らかさが増大した層を提供するので、最も高いデュロメータ硬さの材料から100%形成されているバルーンよりも柔らかくかつ柔軟なバルーンを提供する。
【0016】
強度/柔らかさが異なるポリマー層を有する従来の多層バルーンは、典型的に、様々なバルーン設計の検討によって、内側層から外側層へとデュロメータ硬さが減少するように層を配置している。例えば、より低いデュロメータ硬さの(より柔らかい)材料は、典型的に、対針穴抵抗性、ステント保持等の設計の検討によって外側層とすることが好ましい。これとは対照的に、本発明のバルーンは、最も高いデュロメータ硬さの材料の内側表面上により低いデュロメータ硬さの材料の層を有するように層を配置するとともに、非常に低い伸張性を含む改善された特徴の組合せを生じさせる最大化されたBUR値が生じるように層を構成する。しかしながら、上述したように伸張性のために最適化された本発明のバルーンの内側層と共に、本発明のバルーンの一実施形態は、例えばステントの保持性を高めるために、比較的柔らかい材料の最も外側の層を有する。
【0017】
バルーンの伸張性は、バルーンがバルーンの基準径を超えて拡径するときにバルーンのポリマー壁が伸張/膨張する度合いと理解されるべきである。伸張度の曲線は、増大する膨張圧力の関数としてバルーンの外径をミリメートル/気圧(mm/atm)で表すが、急勾配の曲線あるいは曲線の一部は、より平坦な曲線よりも高い伸張度を示すことになる。「非伸張性」という用語は、約0.03mm/atmより高くない、好ましくは約0.025mm/atmより高くない伸張度を有するバルーンを意味するものと理解されるべきである。これとは対照的に、伸張性のバルーンは、典型的に約0.045mm/atmを超える伸張度を有する。本発明の非伸張性のバルーンは、一般的に、直径が3.0mmのバルーンについて約0.01〜約0.02mm/atmの公称値を上回る伸張度を有する。バルーンの伸張度は、典型的に、壁厚は同じであるが第1の材料(例えば最も高いデュロメータ硬さの材料)から100%形成されているバルーンの伸張度よりも約25%〜約50%低い。
【0018】
目下のところ好ましい実施形態において、多層バルーンの第1層および第2層のポリマー材料はエラストマであり、それは典型的に非エラストマ材料よりも低い曲げ弾性係数を有している。多層バルーンの第1層あるいはまた第2層の形成に適したエラストマーポリマーは、典型的に約40kpsi〜約110kpsiの曲げ弾性係数を有している。したがって、比較的低い伸張度のカテーテルバルーンを提供するために過去に用いられてきたPETのような非エラストマー材料とは異なり、本発明の多層構造の非伸張性バルーンは、バルーンの柔軟性の改善をもたらす望ましくは1つ若しくは複数のエラストマから形成される。
【0019】
本発明の一態様は、カテーテルのための非伸張性の多層バルーンを製造する方法に向けられている。この方法は、全般的に、第1のポリマー材料と、この第1のポリマー材料よりも高い最大達成可能BUR値を有するように決定された第2ポリマー材料とを選択する段階、および第1のポリマー材料の第1層と、この第1層に対し内側の層である第2のポリマー材料の第2層とを有する多層チューブを形成する段階を含む。少なくともいくつかの材料については、(例えば、比較的より高い極限引張強さおよび破断伸びを有する材料が、一般的に、より高い最大BUR値を有すると予想されるため)材料の極限引張強さおよび破断伸びといった特性が暗示的ではあるが、ポリマー材料の最大達成可能BUR値は、典型的に、実験によって決定される。多層チューブの各層の内径は、バルーン金型の内径と(バルーン金型内において半径方向に拡がる前の)多層チューブの層の内径との比が、実質的に、層を形成しているポリマー材料の最大ブローアップ比となるように選択される。したがって、この方法は、金型の内径へとチューブを半径方向に拡大させることが実質的に層を形成しているポリマー材料の最大ブローアップ比へと各層を半径方向に拡げることとなり、かつこの多層バルーンが、基準作業直径を上回るときに第1のエラストマーポリマー材料のみからなるバルーンよりも低い伸張性を有することとなるように、多層チューブを金型内で半径方向に拡げることによってブロー成形多層バルーンを形成する段階を含む。
【0020】
公知の技術であるバルーンカテーテルのための様々な設計は、本発明のカテーテルシステムに用いることができる。例えば、血管形成術あるいはステント送給のための従来のオーバーザワイヤバルーンカテーテルは、通常、シャフトの近位端にあるガイドワイヤ近位ポートからカテーテルの遠位端にあるガイドワイヤ遠位ポートへとカテーテルシャフトの全長にわたって延びる、ガイドワイヤを受け入れるための管腔を具備している。類似の手技のための迅速交換バルーンカテーテルは、一般的に、シャフトの近位端よりも遠位側に位置するガイドワイヤポートからカテーテル遠位端へと延びる、比較的短いガイドワイヤ管腔を具備している。
【0021】
本発明の多層バルーンは、患者の血管に追従して病変部を越える優れた能力のための比較的高い柔軟性および柔らかさを損なうことなしに、制御されたバルーン膨張のための非常に低い伸張性をもたらす。その結果、本発明のバルーンカテーテルは、バルーンの柔軟性、柔らかさおよび制御された膨張に起因する改善された性能を有する。このバルーンは、より低いデュロメータ硬さの(より柔らかい)第2の材料の追加により、伸張性が非常に低いという驚くべき結果をもたらす。したがって、本発明の多層バルーンは、壁厚は同じであるが高いデュロメータ硬さの(より硬い)材料のみから形成されたバルーンよりも非常に低い伸張性をもたらし、あるいは予想される伸張性の増加なしにより薄い壁厚のバルーンをもたらす。本発明のこれらのおよび他の利点は、以下の発明の詳細な説明および添付の例示的な図面からより明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1に示す本発明の特徴を具体化したステント送給バルーンカテーテル10は、全般的に、近位側シャフト部分12、遠位側シャフト部分13、膨張用管腔21、その内部にガイドワイヤ23をスライド自在に受容するように構成されたガイドワイヤ用管腔22を有している細長いカテーテルシャフト11と、遠位側シャフト部分上に取り付けられたバルーン14とを備えている。カテーテルシャフトの近位端上にあるアダプタ17は、ガイドワイヤ用管腔22へのアクセスを提供するとともに、膨張流体の供給源(図示せず)への接続のために構成されたアーム24を有している。図1は、患者の体内管腔18における前進のために膨張していない状態のバルーンを示している。半径方向に拡大可能なステント16は、体内管腔18内での送給および配置のためにバルーン14上に着脱可能に取り付けられている。バルーンカテーテル10は、バルーン14を膨張させていない状態で体内管腔18内を前進し、かつバルーン14およびその上に取り付けられているステント16を拡げるためにバルーンの内部に膨張性流体を導入することによってバルーンを膨張させる。図4は、体内管腔18の壁に対してステントを拡げるためにバルーンを膨張させた状態のバルーンカテーテル10を示している。次いで、バルーン14を収縮させると、カテーテルの再配置および体内管腔18からの除去が可能となり、ステント16は植設された状態で体内管腔18内に残置される。
【0023】
例示の実施形態において、このシャフトは、膨張用管腔21を画成している外側管状部材19と、この外側管状部材19内に配置されてガイドワイヤ用管腔22を画成している内側管状部材20とを備えているが、図1中の2−2破断線に沿ったカテーテルの横断面を示す図2に最も良く示されているように、膨張用管腔21は、外側管状部材19の内側表面と内側管状部材20の外側表面との間の環状空間となっている。バルーン14は、外側管状部材19の遠位端に密封固定された近位側スカート部分と、内側管状部材20の遠位端に密封固定された遠位側スカート部分とを有しており、バルーンの内部15はシャフトの膨張用管腔21と流体的に連通している、図3は、図1中の3−3破断線に沿ったカテーテルの横断面図を示しているが、膨張していないバルーンの内側表面とその内側にあるシャフト11の部分の外側表面との間のスペースは、図示を簡単にするために、図1および図3においてはやや誇張されている。従来公知のように、様々な他の適切なカテーテルシャフト構造を用いることができる。
【0024】
図示されていないが、本発明のバルーン14は、典型的に、患者の体内管腔内への導入および前進のために小さな輪郭の構造を形成するべく、膨張していない状態でその周りに巻きつけられた翼を具備している。その結果、このバルーンは、展開してその成形容積に充填することにより基準作業直径へと膨張する。
【0025】
バルーン14は、第1層30と、この第1層30に対して内側層である第2層31とを有している。図示の実施形態では、第2層31は第1層30の内側表面上にあり、第1層30がバルーン14の外側表面を画成し、かつ第2層31がバルーン14の内側表面を画成している。しかしながら、本発明のバルーン14は、1つ若しくは複数の追加の層(図示せず)を有することができる。追加の層は、そこから形成されるチューブ/バルーンの寸法を所望の値に増加させ、あるいはまた所望の特徴を具備したバルーンの内側あるいは外側の表面をもたらすために用いることができる。したがって、以下に議論する本発明のバルーン14は、少なくとも2つの層を有するとともに、特定の数の層を有するものとして示されない限り、選択的に1つ若しくは複数の追加の層を有するものと理解されるべきである。
【0026】
第1(外側)層30は第1のポリマー材料から形成され、かつ第2(内側)層31は第1のポリマー材料よりも高いBUR値へと拡げることができる第2のポリマー材料から形成される。第2(内側)層31のBUR値は、典型的に、第1(外側)層30のBUR値よりも約15%〜約40%大きい。各層30、31のBUR値は好ましくは最大となっていて、バルーンが高度に延伸した材料の層を有し、したがって非常に低い伸張性を有するようになっている。
【0027】
第1層および第2層30、31を形成するために、ポリアミド、ポリウレタンおよびポリエステルを含む様々に適切な材料を用いることができる。目下のところ好ましい実施形態において、第1および第2のポリマー材料は、非エラストマ材料を代わりに用いることもできるが、バルーンの柔軟性のために比較的低い曲げ弾性係数をもたらすエラストマである。目下のところ好適な材料は、ナイロンおよびポリエーテルブロックアミド(PEBAX)を含むポリアミドのような同一系統/種類のポリマーである。適合性を有するポリマー材料から層を形成することは、熱溶着による層の接合を可能とする。それに代えて、互いの熱溶着に充分には適していない異なる種類のポリマーから層を形成することができるが、その場合には、 バルーン層を互いに接合するために典型的には外側層30と内側層31との間に接続層を設ける。例えば、PET製の内側層およびPEBAXは、典型的に、Primacor(官能化ポリオレフィン)のような接着性ポリマーの接続層をそれらの間に有する。
【0028】
このバルーン14は、より高いBUR値に拡げることができる材料をバルーンチューブの内側層にするとともに、より低いBUR値の材料を外側層とし、各層が半径方向の延伸のために最適化されるようにバルーンをブロー成形する方法によって形成される。その結果として得られるバルーンは、膨張圧力が増大するときに、半径方向の膨張に対して増大する抵抗性を有する。
【0029】
バルーン14は、第1層30とこの第1層30に対する内側層としての第2層31とを有している多層チューブからブロー成形される。しかしながら、上述したように、本発明のバルーンは1つ若しくは複数の追加の層を有することができるため、このバルーンのブロー成形に用いるチューブにも追加の層が同じように形成される。チューブは、様々に適切な方法を用いることができるが、典型的には共押出しによって形成される。例えば、一実施形態において、多層チューブは、少なくとも2つの層が共押出し成形によって形成され、1つ若しくは複数の追加の層は、熱収縮、浸漬塗装、接着あるいは溶着、または追加の層を摩擦接合することによって共押出しチューブに追加される。
【0030】
次いで、多層チューブは、バルーン14を形成するためにバルーン金型内において半径方向に拡げられる。図5は、バルーン14を形成するように構成された形状の内側チャンバ42を有するとともに、拡げられたバルーン14の基準作動直径にほぼ等しい内径を有しているバルーン金型41内における多層チューブ40を示している。この多層チューブ40は、典型的に、従来公知のようにバルーン金型内でブロー成形される間に軸線方向に引伸ばされつつ加熱される。例えば、一実施形態において、チューブはブロー成形の間に約200%長手方向に引伸ばされて、二軸方向に延伸されたバルーンを製造する。チューブの(金型内で半径方向に拡げられる前の)単一壁厚は約0.1〜約0.4mmであり、かつ結果として得られる(金型内で半径方向に拡げられた)バルーンの単一壁厚は約0.01〜約0.04mmであるが、所望のバルーン特性および用途によって左右される。
【0031】
多層チューブ40およびバルーン金型41の材料および寸法は、結果として得られるバルーンの各層がバルーン層のBUR値として表現される実質的に最大可能な量へと半径方向に拡げられるように選択される。目下のところ好ましい実施形態において、外側層30は、より高いショアデュロメータ硬さを有しているので、1つ若しくは複数の内側層よりもその伸びは小さい。各層の伸びは、典型的に、すぐ隣にある外側層の伸びよりも約10%〜約50%、具体的には約20%多い。
【0032】
目下のところ好ましい実施形態において、第1(外側)層30は約72Dのショアデュロメータ硬さのPEBAXであり、かつ第2(内側)層31は約63Dのショアデュロメータ硬さのPEBAXである。PEBAX 72Dの外側層30は典型的に約6〜7のBUR値を有し、かつPEBAX 63Dの内側層31は約7〜8のBUR値を有している。
【0033】
一実施形態においては、中間のBUR値あるいはまたデュロメータ硬さの中間層(図示せず)が、外側層30と内側層31の間に設けられる。例えば、目下のところ好ましい一実施形態において、バルーン14は、PEBAX 72Dの第1(外側)層30と、PEBAX 63Dの第2(内側)層31と、それらの間にあるPEBAX 70Dの中間層(図示せず)とを有する。目下のところ好ましい実施形態において、内側および中間の層は、その周囲にある最も高いデュロメータ硬さの層よりも薄い壁厚を有し、典型的に多層バルーンの総壁厚の約5%〜約15%を互いに構成する。このバルーン14はまた、その内側層から外側層へと順番に増加するBUR値あるいはまたデュロメータ硬さのパターンを同様に持続させる、1つ若しくは複数の追加の層(図示せず)を有することができる。しかしながら、一実施形態において、このバルーン14は、そのすぐ隣りの内側層よりも低いショアデュロメータ硬さを具備する比較的柔らかい最も外側の層(図示せず)を有し、バルーン外側表面へのステント16の埋め込みを容易にしてステントの保持を改善する。そのような比較的柔らかい最も外側の層は、典型的に、約40D〜約55Dの比較的低いショアデュロメータ硬さを有する。
【0034】
本発明の多層バルーンは、本発明の多層バルーンを製造するために用いる最も高いデュロメータ硬さの材料(例えば、多層バルーン14の外側層の72D PEBAX)だけから形成されている同様の構造のバルーンに比較すると、あるいは異なるデュロメータ硬さの材料の層から形成されているが本発明に基づいて多層化されてないバルーンに比較すると、低い伸張性と比較的高い破裂圧力を有している。伸張度は、典型的に、基準圧力(すなわちバルーンの成形容積をブロー成形された基準径へと満たすために必要な圧力)からバルーンの破裂圧力あるいは定格破裂圧力にわたる圧力範囲について決定される。定格破裂圧力(RBP)は、平均破裂圧力から計算される、99.9%のバルーンを破裂させることなく加圧することができる、95%の信頼度の圧力である。
【0035】
多層バルーン14は、約6〜約12気圧、より典型的には約7〜約9気圧の基準圧力と、約14〜約22気圧、より典型的には約18〜約20気圧のRBPとを有している。破裂圧力は、典型的に、最も高いデュロメータ硬さの材料だけから形成されている類似構造のバルーンの破裂圧力とほとんど等しい、より高い、あるいは実質的に低くない(すなわち、約5%を超えず約15%未満でない)。
【0036】
一実施形態において、少なくとも72D PEBAXの外側層と63D PEBAXの内側層とを有している本発明の多層バルーンは、約8〜約9気圧においてバルーンの基準径に到達し、その後、多層バルーンの作動圧力範囲(例えば8〜20気圧)内では約0.01〜約0.02mm/気圧の伸張度という非伸張性の態様で基準径の約8%を超えない直径へと伸張する。
【0037】
より柔らかいデュロメータ硬さの内側層の存在により、本発明の多層バルーンの曲げ弾性係数は、一般的に、外側層30の第1(例えば、より高いデュロメータ硬さの)エラストマーポリマー材料から成るバルーンの曲げ弾性係数の約90%〜約95%であると思われる
【実施例】
【0038】
共押出しによって形成された多層バルーンチューブは、0.0155インチの内径(ID)および0.0365インチの外径(OD)の全体寸法を有している。このチューブは、0.001インチの壁厚の63D PEBAXの内側層、0.001インチの壁厚の70D PEBAXの中間層、および0.0085インチの壁厚の72D PEBAXの外側層を有している。壁厚値は、二重壁厚(DWT)として指定されていなければ単一壁厚である。このチューブは、0.1215インチの内径のバルーン金型内で加熱しつつ加圧することによって単一のブローサイクルでブロー成形され、その結果、0.00163インチの平均壁厚(DWT)と以下のような各層毎のBUR値を有する多層バルーンが得られた。内径0.0155インチの63D内側層のBUR値が7.83(0.1215/0.0155)。0.0175インチの内径の70D中間層のBUR値が6.94(0.1215/0.0175)。0.0195インチの内径の72D外側層のBUR値が6.23(0.1215/0.0195)である多層バルーンをもたらした。算出されたBUR値は、金型の内径あるいはブロー成形されたバルーンの外径のどちらを算出に用いるかによってわずかに変動し得る。結果として得られた多層バルーンは、約0.1214インチの内径および0.1230インチの外径の全体寸法を有していた。
【0039】
多層バルーンの伸張度および弾性係数は、同様に形成されるとともにほぼ同じ壁厚を有しているが72D PEBAXの単一層(100%)からなる比較対象のバルーンと比較された。比較対象のバルーンは、0.0190インチの内径および0.0365インチの外径に押出加工されたバルーンチューブを用いて、0.1250インチの内径のバルーン金型内でブロー成形され、所望の壁厚を有するバルーンに形成された。結果として得られたバルーンは、0.00165インチの平均壁厚、および6.58(0.1250/0.0190)のBUR値を有していた。本発明の多層バルーンおよび比較対象の一体構造バルーンはそれぞれ各約8気圧の基準圧力と、20気圧を超える破裂圧力、より具体的には約25気圧の平均破裂圧力とを有していた。多層バルーンおよび比較対照の一体構造(モノリシック構造)バルーンの伸張度曲線は、図6に示されているが、バルーンのサブ組立体を膨張させるとともに膨張圧力の増大に対するバルーン外径の変化を測定することによって得られた。
【0040】
図6に示したように、基準圧力(8気圧)から20気圧における伸張度は、一体構造の比較対照バルーンにおいて約0.028mm/atmであるのに対し、本発明の多層バルーンにおいては約0.018mm/atmであった。したがって、72D PEBAXだけから作られた一体構造のバルーンよりも低いパーセンテージのバルーン壁厚を72D PEBAXが占めるような、より低いデュロメータ硬さの材料の中間層および内側層の存在にもかかわらず、本発明の多層バルーンはより低い伸張度を有していた。具体的には、PEBAX 72Dの外側層は多層バルーンの壁厚の約87%を構成していたが、これに比較すると一体構造バルーンでは100%である。同様に、図7は、本発明の三層構造のPebax63D/70D/72DバルーンとPEBAX72Dの一体構造バルーンにおける弾性係数(PnからPn+1への弾性係数の値)の増加の比較を示している。本発明の多層バルーンの弾性係数は、図7にグラフで示されているが、一体構造の比較対象バルーンの弾性係数よりも高くなっている。弾性係数の値は、伸張度の曲線データから導き出されるが、具体的には次式から決定される。
E=((Pn+1n+1)/DWTn+1−(Pnn)/DWTn)÷(Dn+1−Dn)/Dn
ここでEは弾性係数、Pは膨張圧力、Dは直径、DWTは二重壁厚である。
【0041】
本発明の三層バルーンの72D PEBAXの外側層のBUR値は、一体構造の72D PEBAXバルーンのBUR値よりも小さい。しかしながら、本発明の多層バルーンは、低デュロメータ硬さの内側層の比較的高いBUR値への膨張を容易にし、全体的なBUR値が比較的高いバルーンを提供する。内側層および中間層のBUR値は約7〜約8と比較的高く、内側層あるいは中間層の材料100%から同様なバルーンを形成するために同じブロー成形手法の使用を試みた場合に可能な値よりも高いBUR値であることが好ましい。例えば、内径0.0195インチおよび外径0.0355インチのチューブを形成するために押出加工されたPEBAX 63Dは、単一ブローサイクルによっては、ブロー成形の間に破裂させることなしに0.118インチ内径のバルーン金型(すなわち,BUR値が6)内にブロー成形することができない。
【0042】
上記の例における多層バルーンの絶対平均壁厚は一体構造のバルーンの壁厚にほぼ等しく、バルーンの伸張度および弾性係数の直接的な比較を可能としている。しかしながら、ここで理解されるべきことは本発明の多層バルーンの壁厚をより薄くすることができるということであり、その場合は伸張度および弾性係数の比較は正規化された壁厚に基づくことになる。
【0043】
カテーテル10の寸法は、主として、利用するバルーンおよびガイドワイヤのサイズ、カテーテルの型、カテーテルが通過しなければならない動脈あるいは他の体内管腔の寸法、あるいは送給するステントのサイズによって決まる。典型的に、外側管状部材19の外径は約0.025〜約0.04インチ(0.064〜0.10cm)、通常は約0.037インチ(0.094cm)であり、かつ外側管状部材19の壁厚は約0.002〜約0.008インチ(0.0051〜0.02cm)、典型的に約0.003〜0.005インチ(0.0076〜0.013cm)で変化し得る。内側管状部材20の内径は、典型的に約0.01〜約0.018インチ(0.025〜0.046cm)、通常は約0.016インチ(0.04cm)であり、かつ壁厚は約0.004〜約0.008インチ(0.01〜0.02cm)である。カテーテル10の全長は約100〜約150cmの範囲であり、典型的に約143cmである。好ましくは、バルーン14の長さは約0.8cm〜約6cmであり、かつ膨張したときの作動直径は約2〜約5mmである。
【0044】
様々な構成要素は、溶着あるいは接着剤の使用といった従来の接合方法を用いて接合することができる。内側および外側の管状部材を持つものとしてシャフトを示したけれども、その内部に並べて押出加工された管腔を具備する二重管腔押出加工シャフトを含む、様々に適切なシャフト構造を用いることができる。同様に、図1に示した実施形態はオーバーザワイヤタイプのステント供給バルーンカテーテルであるけれども、本発明のカテーテルには、迅速交換タイプのバルーンカテーテルといった様々な血管内カテーテルが含まれる。迅速交換カテーテルは、一般的に、カテーテルの遠位端にあるガイドワイヤ遠位ポートからカテーテルの遠位端から比較的短い間隔を開けるとともにカテーテルの近位端から比較的大きい間隔を開けて配置されたガイドワイヤ近位側ポートに延びる、比較的短いガイドワイヤ管腔を具備したシャフトを有している。
【0045】
好ましい実施形態に関連させて本発明を本願明細書において説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更および改善をなし得ることは当業者が認めるところである。さらに、本発明の一つの実施形態の個々の特徴を本願明細書において議論し、あるいはその一実施形態の図面に示し他の実施形態には示さないこともあるが、一つの実施形態の個々の特徴を他の実施形態の1つ若しくは複数の特徴あるいは複数の実施形態の特徴と組み合わせ得ることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の特徴を具体化しているオーバーザワイヤタイプのステント供給バルーンカテーテルの要部破断立面図。
【図2】2−2破断線に沿った図1のカテーテルの横断面図。
【図3】3−3破断線に沿った図1のカテーテルの横断面図。
【図4】膨張させたバルーンを有する図1のバルーンカテーテルを示す図。
【図5】本発明の特徴を具体化する方法によってバルーン金型内部で半径方向に拡大させる前の多層バルーンチューブの縦断面図。
【図6】本発明の多層バルーンと、最も高いデュロメータ硬さの材料から100%形成された単一層バルーンとを比較する、mmで測定したバルーン直径を縦軸とし、気圧で測定した膨張圧力を横軸とした伸張性データのグラフ。
【図7】本発明の多層バルーンと、最も高いデュロメータ硬さの材料から100%形成された単一層バルーンとを比較する、バルーンの弾性係数(kpsi)を縦軸とし、膨張圧力(気圧)を横軸とした弾性係数データのグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)近位端、遠位端および膨張用管腔を有した細長いカテーテルシャフトと、
b)前記シャフトの遠位側部分上にあって前記膨張用管腔と流体連通する内部を有する第1のエラストマポリマー材料からなる第1層と、前記第1の材料より低いショアデュロメータ硬さを有する第2のエラストマポリマー材料からなり前記第1層に対して内側層である第2層とを有する多層バルーンであって、その基準作業直径に膨張するようにブロー成形によって形成され、前記基準直径を超える範囲においては、前記第1のエラストマポリマー材料から構成されて前記多層バルーンと同じあるいはより大きな壁厚を有しているバルーンよりも小さいかまたは同じ伸張度を有している多層バルーンと、
を備えたバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記多層バルーンの第1層は、約70D〜約72Dのショアデュロメータ硬さを有しているポリエーテルブロックアミドである、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記多層バルーンの第2層は、約60D〜約70Dのショアデュロメータ硬さを有しているポリエーテルブロックアミドであることを特徴とする請求項2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記第1層が、前記第2層に直接的に接合されていることを特徴とする、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
前記第1および第2のエラストマポリマー材料のショアデュロメータ硬さの間のショアデュロメータ硬さを有している第3のポリマー材料からなる第3の層を、前記第1および第2の層の間に備えている、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
前記第1、第2および第3のポリマー材料がポリアミドである、請求項5に記載のバルーンカテーテル。
【請求項7】
前記多層バルーンが1つ若しくは複数の追加のポリマー層を有している、請求項5に記載のバルーンカテーテル。
【請求項8】
前記多層バルーンは、前記多層バルーンの第1層より低いショアデュロメータ硬さを具備している比較的低いショアデュロメータ硬さのエラストマポリマー材料の最外側層を有している、請求項5に記載のバルーンカテーテル。
【請求項9】
前記バルーンカテーテルがステント配送カテーテルであり、かつ 患者の体内管腔内における送給および配置のために前記バルーン上に取り付けられた膨張ステントを備えている、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項10】
前記多層バルーンが、前記第1のエラストマポリマー材料からなるバルーンの弾性係数より高い弾性係数を有している、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項11】
前記多層バルーンが、前記第1のエラストマポリマー材料からなるバルーンよりも高いか、等しいか、または実質的に低くない破裂圧力を有している、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項12】
基準圧力から定格破裂圧力における前記多層バルーンの伸張度が約0.03mm/atm未満であって、前記多層バルーンが非伸張性である、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項13】
前記多層バルーンの壁厚が、前記第1のエラストマポリマー材料からなるバルーンにほぼ等しい、請求項1に記載したバルーンカテーテル。
【請求項14】
基準圧力から定格破裂圧力における前記多層バルーンの伸張度は、前記第1のエラストマポリマー材料からなるバルーンの伸張度より低く、かつ 約0.02mm/atm未満であって、前記多層バルーンが非伸張性である、請求項13に記載のバルーンカテーテル。
【請求項15】
a)近位端、遠位端および膨張用管腔を有した細長いカテーテルシャフトと、
b)前記シャフトの遠位側部分上にあって前記膨張用管腔と流体的に連通する内部を有するとともに、約72Dのショアデュロメータ硬さの第1ポリエーテルブロックアミドエラストマーポリマー材料からなる第1層と、前記第1層に対して内側層である約63Dのショアデュロメータ硬さの第2ポリエーテルブロックアミドエラストマーポリマー材料からなる第2層と、約70Dのショアデュロメータ硬さの第3ポリエーテルブロックアミドエラストマポリマー材料からなる中間層とを有する多層バルーンであって、その基準作業直径に膨張するようにブロー成形によって形成され、前記基準直径を超える範囲において、前記第1エラストマポリマー材料から構成されて前記多層バルーンと同じあるいはより大きい壁厚を有しているバルーンよりも小さいかまたは同じ伸張度を有している多層バルーンと、
を備えたバルーンカテーテル。
【請求項16】
基準圧力から定格破裂圧力への前記多層バルーンの伸張度が約0.02mm/気圧未満であることを特徴とする請求項15に記載のバルーンカテーテル。
【請求項17】
基準圧力から定格破裂圧力における前記多層バルーンの伸張度が約0.018mm/気圧より大きくないことを特徴とする請求項15に記載のバルーンカテーテル。
【請求項18】
前記多層バルーンが、第4のエラストマポリマー層を有していることを特徴とする請求項15に記載のバルーンカテーテル。
【請求項19】
ブロー成形された基準作業直径を有するとともにこの基準作業直径を超える範囲における半径方向の膨張が非伸張性である、カテーテルのための多層バルーンを製造する方法であって、
a)第1ポリマー材料と、この第1のポリマー材料より高い最大ブローアップ比を有する第2ポリマー材料とを選択し、内径と、外径と、内径を有する前記第1ポリマー材料からなる第1層と、内径を有するとともに前記第1層に対し内側の層である前記第2ポリマー材料からなる第2層と、を有している多層チューブを形成し、
b)前記金型の内径と前記金型内において半径方向に拡げられる前の前記多層チューブの各層の内径との比が実質的に前記層を形成しているポリマー材料の最大ブローアップ比となるように選択された内径を有しているバルーン金型内において、前記多層チューブを半径方向に拡げることによってブロー成形された多層バルーンを形成し、前記チューブを前記金型の内径へと半径方向に拡げることによって実質的に前記層を形成しているポリマー材料の最大ブローアップ比へと各層を半径方向に拡げられ、前記多層バルーンが、前記基準直径を超える範囲において、前記第1のポリマー材料から構成されて前記多層バルーンと同一あるいはより大きい壁厚を具備しているバルーンよりも小さいあるいは等しい伸張度を有しているようにする、
方法。
【請求項20】
前記第2のポリマー材料が、前記第1の材料よりも低いショアデュロメータ硬さを有しており、前記多層チューブを半径方向に拡げる段階が、約6〜7のBUR値に前記第1層を半径方向に拡げることと、約7〜8のBUR値に前記第2層を半径方向に拡げることとを含んでいる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1および第2のポリマー材料がエラストマーであり、かつ前記多層チューブが共押出によって形成されている、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−519810(P2009−519810A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547253(P2008−547253)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/045826
【国際公開番号】WO2007/075256
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(591040889)アボット、カーディオバスキュラー、システムズ、インコーポレーテッド (42)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT CARDIOVASCULAR SYSTEMS INC.
【Fターム(参考)】