説明

カテーテルナビゲーションおよびチップの位置を特定するための装置および方法

【課題】多くの臨床応用および設定で、血管内電位図を得て、これを使用するためのデバイスおよび方法を提供する。
【解決手段】一実施例では、カテーテル等の留置医療デバイスの位置を決定するために、皮膚に基づくECG波形のピークの検出に基づいて、血管内ECG波形の分析をトリガーするための方法が開示されている。別の実施例では、検出されたP波のエネルギのデータを分析することによって、カテーテルまたは他の医療デバイスの血管系内の位置を決定できる。更に別の実施例では、無菌領域を通して使用可能に接続するために磁気で接続したデバイスを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年1月12日に出願された米国仮特許出願第61/213,474号の利益を主張する2010年6月14日に出願された米国特許出願第12/815,331号の一部継続出願である、2010年8月10日に出願された米国特許出願第12/854,083号の一部継続出願である。これらの出願に開示された全ての内容は、参照によって本明細書の開示の一部とされる。本願は、更に、2010年2月2日に出願された米国仮特許出願第61/282,397号の利益を主張するものである。この出願に開示された全ての内容は、参照によって本明細書の開示の一部とされる。
【背景技術】
【0002】
心臓の刺激伝導系は、特定の電気信号を発生させ、その電気エネルギ分布および挙動は、胸腔内の特定の位置および/または特定の心機能もしくは状態を示す。血管内で、即ち、血管内からまたは心臓内から計測した場合、心血管系の特定の位置の確認および/または機能状態が通常であるか或いは異常であるかの確認に、心臓の電気活動の特定のパラメータを使用できる。更に、位置および状態の種類を局所的におよび正確に確認することによって、こうした状態の治療を最適化でき、治療効果を実時間でモニタできる。
【0003】
代表的には、二種類の臨床応用が取り組まれている。第1の臨床応用は、心血管系を通した血管内デバイスの案内に関し、第2の臨床応用は、心臓の電気活動の非侵襲的または低侵襲的な遠隔モニタリングである。
【0004】
例えば、以下に列挙する多くの臨床応用で、血管内カテーテルの案内、位置決めおよび配置確認が必要とされる。
【0005】
1.例えばCVC、PICC、皮下埋込型ポート等の中心静脈アクセス
【0006】
2.血液透析カテーテル
【0007】
3.ペースメーカリードの配置
【0008】
4.血行動態モニタカテーテル、例えば、スワンガンツカテーテルおよび中心静脈圧モニタカテーテル
【0009】
5.左心内へのガイドワイヤおよびカテーテルの案内
【0010】
カテーテルチップの位置が、患者の安全、手順の持続時間および成功にとって非常に重要である。カテーテルチップのターゲット位置を確認するための今日の至適基準は、胸部X線である。更に、現在、胸部X線確認の限界を越えようとする、電磁技術およびECGに基づく、二種類の実時間案内製品が市販されている。病院では、実時間案内が使用されると、X線の照射数、手順に要する時間、および、手順に要する費用に関して改善がなされる。実時間案内を行った場合、最初の成功率は、75%乃至80%から90%乃至95%まで向上する。更に、ECG案内が使用される病院、例えば、イタリア、ベルギー、ドイツの病院では、患者の90%以上について胸部X線による確認が行われていない。米国では、主に電磁システムが使用されているのに対し、ヨーロッパでは、主にECGを用いたシステムが使用されている。技術の採用に関する米国およびヨーロッパの市場間の相違を決定する他の要因には、以下のものがある。a)治療を行うことを許された、健康管理に携わる職員の種類(米国では、看護士が柔軟に対応する)、b)設置されたデバイスの種類(米国では、PICCがますます一般的に配置されてきている)、c)価格感受性(ヨーロッパの市場は、価格感受性が高いと思われる)、d)現在の案内デバイスは、特定の製造者によって専ら彼らのカテーテルで正常に機能するように商業化されている(案内システムの市場参入度は、カテーテル製造者の市場参入度を反映している)。
【0011】
ターゲットチップ位置がどこに、例えばSVCの下1/3またはRAになければならないのかに関して、様々な意見があった。従って、案内技術は、これらの位置を識別できなければならない。現在の至適基準である胸部X線は、代表的には、2cmよりも優れた精度を必要とする、こうした識別を必ずしも行うことができなかった。更に、ECGを用いたシステムは、心臓の活動に関する生理的情報を使用するので、案内配置を行う上での性能が、生体構造に対して正確である。これは、血管系内のカテーテルチップと、代表的には患者の胸部に配置された外部基準と、の間の距離を計測する電磁的案内システムには当てはまらない。この特徴によって、胸部X線に代わって至適基準となる可能性がある、カテーテル配置の最終的な結果を映像等で記録することに、ECGを用いたシステムを使用できる。
【0012】
利用可能な最も有用な診断ツールの1つであるECGは、心臓の電気活動を波形として記録する。これらの波形を解釈することにより、心律動異常、伝導異常、および電解質平衡障害を同定できる。ECGは、こうした状態を急性冠動脈症候群および心膜炎として診断し、モニタリングするのを支援する。心臓の電気活動は、電流を発生させ、こうした電流は、周囲組織を通って皮膚まで広がる。電極は、皮膚に取り付けられている場合には、電流を検知して、それを心電計に伝達する。電流は、心臓から皮膚まで多くの方向に広がるので、電極は、心臓の電気活動の全体像を得るために、皮膚の様々な位置に配置される。電極は、次いで、心電計デバイスまたはコンピュータに接続され、様々な視点から情報を記録する。これらは、リード(電極導線)および平面(plane)と呼ばれる。リードは、2つの点または極間の心臓の電気活動の図を提供する。平面は、心臓の電気活動の別の図を提供する心臓の断面である。現在、ECG波形の解釈は、波形成分振幅の同定、分析、および、所定の基準と振幅との比較に基づいて行われる。これらの振幅成分の変化は、例えば、STセグメントまたは心臓内の特定の位置の高さ、例えば、P波の振幅等の特定の状態を示す。今日の実務では、ECGモニタは、ECG波形の記録に広く使用されている。ECG振幅成分の自動同定を使用できる用途がますます増えている。特定の場合には、決定支援、および、内在する心臓の状態に対してのECG振幅成分の自動解釈に、ツールを利用できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
患者の遠隔モニタリングは、確立した医療分野である。心臓の状態の遠隔モニタリングは、それが必要とされ且つ可能である程に広くは受け入れられていない。その理由の1つは、心臓の活動に関する信号、特にECG信号を取得する方法が比較的複雑であるということである。現在の遠隔モニタリング技術の別の重要な制限要因は、電話線等の通信転送路を使用することである。こうした転送路は、患者側の終端および医師側の終端の両方でインタフェースを形成するのが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
簡単に要約すると、本発明の実施例は、多くの臨床応用および設定において、血管内電気記録図(つまり心電図/ECG)を得るための、また、これを使用するための、システム、デバイス、および方法に関する。例えば、デバイスは、心臓内で、および、心臓の周囲で、血管内デバイスを案内するのに、例えば、上大静脈、右心房および右心房で中心静脈アクセスデバイスを案内するのに使用できる。このような中心静脈アクセスデバイスには、中心静脈カテーテル(CVC)、抹消挿入型中心カテーテル(PICC)、皮下埋込型ポート、血液透析カテーテル、トンネル型カテーテル、等が含まれる。
【0015】
一態様では、皮膚表面ECG信号を得ると同時に、血管内(腔内)電極を使用して血管内(腔内)電気記録図(ECG)信号を取得するために、1つまたは幾つかの皮膚電極を使用する。同時かつ同期する皮膚表面ECG信号および血管内ECG信号を、幾つかの方法のうちの1つの方法で使用し、これらのECG信号を血管内電極の位置の関数として、例えば、カテーテルのチップの関数として、分析し定量化する。
【0016】
以上に鑑み、一実施例では、ECGに基づくカテーテルナビゲーションおよびチップ位置の決定の行いやすさが向上する。一態様では、例えば、皮膚ECG基準波形を、カテーテルまたは他の留置医療デバイスのチップのところで計測された血管内ECG波形とともに同時にディスプレイ上に表示する。このようにECG信号の取得および表示を同時に行うことにより、カテーテルのチップのところでの血管内ECG波形の解釈を容易に行うことができる。別の態様では、皮膚ECG基準波形を使用し、血管内ECG信号に適用される情報処理アルゴリズムを同期させ、その結果、血管内ECG信号のP波の形状およびエネルギについての変化に関する信頼性が向上する。
【0017】
更に詳細に述べると、一実施例では、皮膚ECG信号を基準として使用でき、血管内ECGの皮膚ECGに対する変化を検出するために、これを血管内ECG信号と比較できる。
【0018】
別の実施例では、同期させた皮膚ECG信号および/または血管内ECG信号を、互いに関連付け、および/または、心臓の定期的な電気活動と関連付ける。例えば、皮膚ECGリードを使用し、検出された皮膚ECG波形のQRS群のRピークを検出できる。皮膚ECG波形のRピークの検出は、血管内ECG波形の同時に対応するセグメント、例えば、P波に対応するセグメントの血管内ECG信号の分析のトリガーに使用できる。このようなトリガーは、不整脈の場合に特に有用である。不整脈の場合、皮膚ECG波形は、代表的には、一貫したP波を示さないが、血管系での位置の関数として変化する、検出可能なP波が血管内ECG波形に確かに含まれる。
【0019】
別の実施例では、皮膚ECGリードを使用して患者の心臓の活動をモニタでき、これと同時に、血管内ECGリードを使用して、カテーテル、または、他の適当な留置デバイスもしくは血管内デバイスを、血管系を通して案内する。他の実施例では、結果的に得られた血管内ECG波形でのノイズを効率的に低減できるようにするために、皮膚ECG波形で検出されたRピークを使用し、血管内ECG信号の相関計算、および、他の種類の信号処理をトリガーする。
【0020】
別の態様では、患者の無菌領域内のカテーテルと、無菌領域の外側のECGケーブルと、の間を使用可能に接続するためのコネクタが記載されている。このコネクタにより、1人のオペレータによって、本明細書に記載されたカテーテルナビゲーションおよびチップ位置の決定を行うための装置を使用できる。
【0021】
別の態様では、特定のECG波形を、血管系の対応する位置に対してマッピングできるアルゴリズムを導入する。一実施例では、アルゴリズムは、血管内ECG信号を検出できるカテーテルまたは他の血管内デバイスのチップのところに存在する、指向性を有する電気エネルギを分析する。別の実施例では、アルゴリズムは、カテーテルナビゲーションを行うことができるように、血管内ECG信号に基づいて、カテーテルチップを血管系の特定の位置に対してマッピングできる。
【0022】
別の態様では、血管内ECG信号によって決定されるような血管系内のカテーテルチップの位置を表示するように、移動するグラフィックインジケータを心臓アイコン上に表示する、簡単なグラフィカルユーザインタフェースが開示されている。グラフィックインジケータには、様々な色彩およびドットや矢印等の様々な形状が含まれていてもよい。グラフィックインジケータの色彩および形状は、血管系内のチップ位置の関数として変化してもよい。
【0023】
別の態様では、適当なインタフェースを介して携帯電話または携帯式電子デバイスに使用可能に接続できるECG信号取得モジュールが開示されている。これにより、携帯電話の使用者が、ECG信号分析を含むECG信号取得モジュールを制御できる。別の実施例では、ECG信号取得モジュールは、他の手持ち操作可能なデバイスまたは遠隔デバイスにインタフェースを介して使用可能に接続されていてもよい。
【0024】
別の態様では、携帯電話によって血管内デバイスをECG信号に基づいて案内できるように、携帯電話または携帯式デバイスに接続して使用するためのユーザインタフェースが含まれる。別の実施例では、ユーザインタフェースにより、ECG信号、カテーテル情報、ならびに、カテーテル配置手順の結果の分析および保存を支援するために、携帯電話を使用できる。別の実施例では、ユーザインタフェースは、携帯電話または手持ち操作可能なデバイスを介して患者を遠隔モニタリングするために、ECG信号の取得を最適化する。
【0025】
かくして、本明細書の詳細な説明が更によく理解されるように、また、当該技術分野に対する貢献が更によく理解されるように、本発明の特定の実施例を概説した。本発明の追加的な実施例が以下に説明され、これらの実施例が、添付の特許請求の範囲の要旨を形成することは勿論である。
【0026】
これに関し、本発明の少なくとも1つの実施例を詳細に説明する前に、本発明の実施例の用途は、以下の詳細な説明に記載した、または、添付図面に示した構造の詳細および構成要素の構成に限定されないということは理解されるべきである。確かに、本明細書中に説明した以外の実施例が考えられ、様々な方法で実施できるものと考えられる。更に、本明細書および上記の概説で使用した表現や専門用語は、説明を目的としたものであって、限定として見なされるべきではないことは理解されるべきである。
【0027】
このように、本開示がその基礎とする考えが、本発明の実施例の幾つかの目的を実施するための他の構造、方法およびシステムを設計する上での基礎として容易に使用できるであろうことは、当業者には理解されよう。従って、特許請求の範囲は、本開示の趣旨および範囲から逸脱しない限り、このような等価の構造を含むものと見なされることが重要である。
【0028】
本発明の実施例のこれらのおよび他の特徴は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から更に明らかになるであろう。または、本発明の実施例を以下に説明するように実施することによってわかるであろう。
【0029】
添付図面に示す本発明の特定の実施例を参照して、本発明を更に詳細に説明する。添付図面は、本発明の代表的な実施例だけを示し、従って、本発明の範囲を限定するものと考えられるべきではないということは理解されよう。本発明の例示的な実施例を、添付図面を使用して、更に具体的かつ詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】本発明の一実施例による装置を示すブロック図である。
【図1B】一実施例による、血管内心電図の取得および処理を行うための電子モジュールのブロック図である。
【図2】本発明の一実施例による血管内デバイス用アダプタを示す図である。
【図3】本発明の一実施例によるカテーテル操向デバイスを示す図である。
【図4】本発明の様々な実施例による、血管内心電図を最適に取得する電極の形態を示す図である。図4Aは、単リード形態を示し、図4Bは、モニタ性および案内性を有する変形例の三リード形態を示し、図4Cは、単接地リードを有する遠隔測定形態を示し、図4Dは、血管内デバイスを案内するためのECGモニタの1つの使用例を示す。
【図5】中心静脈システムの様々な位置での例示的な心電図信号振幅を示す図である。
【図6】中心静脈システムの様々な位置での例示的な心電図信号パワースペクトルを示す図である。
【図7】中心静脈システムの様々な位置での例示的な心電図信号電気エネルギ分布を示す図である。
【図8】本発明の一実施例によるグラフィカルユーザインタフェースを示す図である。
【図9】本発明の別の実施例によるグラフィカルユーザインタフェースを示す図である。
【図10】本発明の一実施例による、グラフィカルユーザインタフェースによって表示された情報の例示的なプリントアウトを示す図である。
【図11】心電図信号を使用して血管内デバイスを心臓内にまたはその近くに位置決めするためのコンピュータを使用する方法についてのブロック図である。
【図12】一実施例による、心電図信号を使用して血管内デバイスを心臓内にまたはその近くに位置決めするためのコンピュータを使用する方法についての、別の決定支援アルゴリズムを示す図である。
【図13】心臓の心臓伝導系を示す図である。
【図14】心臓の伝導系を電気信号が伝播する様子を示す図である。
【図15】ニューロン制御システムによる心血管系の電気活動を示す図である。
【図16】本発明の一実施例による、血管内電位記録信号を分析するための概要を示す図である。
【図17】電気記録図波形演算処理を行うための幾つかの実施例を示す図である。
【図18】図18Aは、アイントホーフェン三角形を形成するように配置されたECGリードを示す図である。図18B乃至図18Fは、一実施例による、グラフィカルユーザインタフェース上に表示されるような皮膚ECG波形および血管内ECG波形の様々な図である。
【図19】一実施例による、グラフィカルユーザインタフェース上に表示されるような皮膚ECG波形および血管内ECG波形の様々な図である。
【図20A】一実施例による、グラフィカルユーザインタフェース上に表示されるような皮膚ECG波形および血管内ECG波形の様々な図である。
【図20B】一実施例による、グラフィカルユーザインタフェース上に表示されるような皮膚ECG波形および血管内ECG波形の様々な図である。
【図20C】一実施例による、グラフィカルユーザインタフェース上に表示されるような皮膚ECG波形および血管内ECG波形の様々な図である。
【図20D】一実施例による、グラフィカルユーザインタフェース上に表示されるような皮膚ECG波形および血管内ECG波形の様々な図である。
【図20E】一実施例による、グラフィカルユーザインタフェース上に表示されるような皮膚ECG波形および血管内ECG波形の様々な図である。
【図20F】一実施例による、グラフィカルユーザインタフェース上に表示されるような皮膚ECG波形および血管内ECG波形の様々な図である。
【図21】一実施例による、グラフィカルユーザインタフェース上に表示されるような皮膚ECG波形および血管内ECG波形の様々な図である。
【図22】特定の実施例による、磁気無菌コネクタを示す図である。
【図23】特定の実施例による、様々な操向可能な無菌コネクタを示す図である。
【図24】一実施例による、グラフィカルユーザインタフェース上に表示されるような血管内デバイスの位置を示す、皮膚ECG波形および血管内ECG波形ならびに心臓アイコンの様々な図である。
【図25】一実施例による、携帯電話上に表示されるような、ECG信号を用いた案内で使用するための様々な可能な図である。
【図26】一実施例による、携帯電話上に表示されるような多数のECG波形の拡大表示を示す図である。
【図27】一実施例による、携帯電話上に表示されるようなECG波形に関連した表示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
添付図面を参照すると、これらの図では、同様の構造に同様の参照番号が付してある。これらの図面は、本発明の例示的な実施例の概略図であって、限定するものでもなく、必ずしも等縮尺に描こうとするものでもないということは理解されるべきである。
【0032】
明瞭化を図るため、「近位」という用語は、本明細書中で説明しようとするデバイスを使用する臨床医に相対的に近い方の方向をいい、これに対し「遠位」という用語は、臨床医から相対的に遠い方の方向をいう。例えば、患者の体内に配置されたカテーテルの端部は、カテーテルの遠位端と見なされ、これに対して、身体の外側に留まっているカテーテル端部は、カテーテルの近位端である。更に、本明細書中および特許請求の範囲で使用される「含んでいる、備えている」(including)、「有する」(has)および「有している」(having)といった語は、「備えている」(comprising)という語と同じ意味を持つ。
【0033】
本発明の実施例は、発明に基づく装置、コンピュータを用いたデータ処理アルゴリズム、および、多くの臨床応用および設定で血管内ECGを取得し、使用する方法を有利に提供する。例えば、デバイスは、血管内デバイスを心臓内およびその周囲で案内することに、例えば、中心静脈アクセスデバイスを上大静脈、右心房、および右心室内で案内することに使用できる。このような中心静脈アクセスデバイスには、中心静脈カテーテル(CVC)、抹消挿入型中心静脈カテーテル(PICC)、皮下埋込型ポート、血液透析カテーテル、トンネル型カテーテル等が含まれてもよい。本発明に基づく装置で案内するのが有利な他のデバイスは、中心静脈システムを通して配置される一時的ペースメーカリードである。左心手順で使用されるカテーテルおよびガイドワイヤもまた、本明細書中に説明した実施例による恩恵を受ける。これは、これらのデバイスを所定位置に案内するのに必要なコントラスト量および放射線量が減少するためである。別の例では、本装置は、心臓の状態を電気活動に基づいて低侵襲的にモニタし、評価するのに使用でき、例えば、心臓の拍動の1サイクルにおける前負荷の評価または鬱血性心不全のSTセグメントおよびT波のモニタリングで使用できる。
【0034】
一態様では、無菌アダプタ、信号取得用電子モジュール、コンピュータモジュール、ソフトウェア、ならびに、周辺デバイスおよび接続部からなる装置を説明する。一実施例では、信号取得用電子モジュールは、身体によって発生された血管内電気信号の取得および処理専用(血管内ECG)であってもよく、別の実施例では、電子モジュールは、血管内ECGおよび皮膚ECGの取得および処理専用であってもよい。
【0035】
一実施例では、電子モジュールおよびコンピュータモジュールは、別々のモジュールであってもよく、別の実施例では、同じモジュールおよび筐体内に一体化されていてもよく、更に別の実施例では、ブルートゥース等の無線接続を介して互いに通信できてもよい。一実施例では、装置は、プリンタを内蔵していてもよいが、別の実施例では、プリンタが外部に設けられ、当該プリンタが装置およびネットワークを介して、例えば、無線で他のデバイスに接続される装置に取り付けられていてもよい。更に別の実施例では、装置を遠隔測定法で使用してもよく、血管内電気記録図を離れた場所に、例えば、電話回線、インターネットおよび/または無線電話で伝送してもよい。以上言及した実施例の任意の組み合わせが可能である。
【0036】
別の態様では、様々な形態により、中心静脈アクセスデバイス等の血管内デバイスを信号取得および処理を行うための電子モジュールに接続できる。一実施例では、デバイスは、2つの端部を有し、各端部に特殊なコネクタが設けられた接続ワイヤからなる。ワイヤの一端は、市販の金属製もしくはニチノール製のガイドワイヤ、または、スタイレットに接続できる。ワイヤの他端は、電子モジュールに安全に接続できる。別の実施例では、デバイスは、コーティングが施されたガイドワイヤ、例えば、遠位端および近位端にはコーティングが施されておらず、cm単位で印が付けてあるニチノールまたはステンレス鋼製のガイドワイヤを含む。このような実施例では、接続ワイヤがコーティングを施されたガイドワイヤの近位端に接続された状態で、コーティングを施されたガイドワイヤが血管内に挿入される。別の実施例では、デバイスは、電気接続ワイヤが設けられたカテーテル−注射器アダプタを含む。電気接続ワイヤの一端は、流体、例えば、カテーテル−注射器アダプタ内を流れる生理食塩水と接触する。電気接続ワイヤの他端は、電子モジュールに接続できる。
【0037】
別の態様では、様々な電極の形態により、血管内ECGを最適に取得できる。一実施例では、血管系内での血管内デバイスのチップの位置についての情報を提供するために、単一のリードを使用する。別の実施例では、チップの位置についての情報を提供すると同時に心臓の活動の三リード同時モニタリングを行うために、変形例の三リード形態を使用する。別の実施例では、遠隔測定を行うために、および、カテーテルのチップから情報を遠隔的に伝送するために、変形例の接地を加えた単一リード形態を使用する。
【0038】
別の態様では、ECG波形の分析を行うために、および、これらの波形に基づく決定を支援するために、アルゴリズムを導入する。これらのアルゴリズムは、血管系の異なる位置の間を識別し、身体(身体の全身の位置および特定の位置)の機能、特に心機能を評価する。様々な実施例において、これらのアルゴリズムは、波形の時間領域解析(形態学的解析(例えば、形状の解析)、統計学的解析(例えば、挙動の解析))を使用する。
【0039】
他の実施例では、これらのアルゴリズムは、波形の周波数領域解析(形態学的解析(例えば、形状の解析)、統計学的解析(例えば、挙動の解析))を使用する。別の実施例では、更に、時間領域および周波数領域の信号エネルギ解析を形態学的および統計学的に行う。ファジーな、統計学的な、および、知識に基づく決定もまた、本実施例によって、決定支援ツールとして考えられる。
【0040】
別の態様では、ユーザインタフェースが提供される。このインタフェースは、有利なことには、データおよび作業フローの解釈を簡単にする。一実施例では、ユーザインタフェースは、ECG波形を示さずに、血管系内および心臓内での使用時における血管内デバイスのチップの位置を示す、簡単なグラフィックを含む。別の実施例では、ユーザインタフェースは、使用時における血管内デバイスのチップの位置の変化を実時間で示す。
【0041】
別の態様では、本明細書中で説明される装置を臨床応用で使用する、本発明に基づく幾つかの方法が提供される。一実施例では、スタイレット、ガイドワイヤおよび生理食塩水を使用して、中心静脈カテーテル(CVC、PICC、血液透析カテーテル、皮下埋込型ポート、等)を上大静脈、下大静脈、右心房および右心室に案内する、コンピュータを用いた方法が提供される。この方法は、有利なことに、不整脈の患者にとって従来技術よりも刺激が少なく、多くの臨床ケースにおいて、胸部X線による中心静脈カテーテルのチップの位置の確認に対する代替策を提供する。別の実施例では、コーティングを施したガイドワイヤを右心内および左心内で案内する、コンピュータを用いた方法が提供される。別の実施例では、中心静脈システムを通して一時的ペースメーカリードの配置を案内する、コンピュータを用いた方法が提供される。別の実施例では、低侵襲性であり、脱分極および心拍を使用して前負荷をモニタする方法が提供される。別の実施例では、低侵襲性であり、P波分析を使用して不整脈をモニタする方法が提供される。別の実施例では、低侵襲性であり、STセグメントおよびT波の分析を使用して心不全をモニタする方法が提供される。
【0042】
別の態様では、1つまたはそれ以上の皮膚電極を使用し、血管系内(腔内)電極を介して血管系内(腔内)電気記録図(ECG)信号を取得すると同時に皮膚表面ECG信号を得る。同時のおよび同期した皮膚表面信号および血管系内ECG信号は、幾つかの方法のうちの1つの方法で使用され、ECG信号を血管系内電極の位置の関数として、例えばカテーテルのチップの関数として、分析し、定量化する。
【0043】
以上に照らして、一実施例では、ECGを用いたカテーテルナビゲーション操作およびチップ配置の使い勝手をよくする。一態様では、例えば、皮膚ECG基準波形が、カテーテルのチップまたは他の留置医療デバイスのところで計測された血管系内ECG波形とともに同時にディスイに表示される。同時発生のECG信号をこのように同時に取得し、ディスプレイに表示することにより、カテーテルのチップのところでの血管系内ECG波形をいつでも解釈できる。他の態様では、皮膚ECG基準信号を使用し、血管系内ECG信号に適用された情報処理アルゴリズムを同期させ、血管系内ECG信号の形状およびエネルギに関するP波の変化についての信頼性を向上する。
【0044】
別の実施例では、同期させた皮膚ECG信号および/または血管系内ECG信号の分析を、互いに関連付け、および/または、心臓の定期的電気活動と関連付けることができる。例えば、皮膚ECGリードを使用して、検出された皮膚ECG波形のQRS群のR波のピークを検出できる。皮膚ECG波形のR波のピークの検出を使用し、これと同時の、血管系内ECG波形の対応するセグメント、例えば、P波に対応するセグメントでの、血管系内ECG信号の分析を行うトリガーにできる。このようにトリガーにするのは、特に、不整脈の場合に有用である。不整脈では、皮膚ECG波形は、代表的には、P波が一貫していないが、血管系内ECG波形は、血管系内の位置の関数として変化する検出可能なP波セグメントを確かに含む。
【0045】
他の実施例では、上述の態様のうちの1つまたはそれ以上を含むECGを用いたシステムを携帯電話または他の携帯デバイスで制御できる、磁気コネクタおよび操向可能な無菌コネクタ、ならびに、ディスプレイおよび制御の解決策の態様が開示されている。
【0046】
図1Aは、本発明の一実施例による装置を示すブロック図である。
【0047】
装置100は、アダプタ(120)を通して市販のおよびカスタム仕様の様々な血管アクセスデバイス(110)に取り付けることができる。このようなデバイスの例には、中心静脈カテーテル(CVC)、抹消挿入型中心静脈カテーテル(PICC)、皮下埋込型ポート、トンネル型カテーテル、血液透析カテーテル、ペースメーカリード用ガイドカテーテル、冠動脈および他の血管の形成術で使用するためのガイドワイヤ、冠動脈および他の血管の形成術用のガイドカテーテル、スタイレット、注射針、等が含まれる。血管アクセスデバイスがスタイレット、ガイドワイヤ、または注射針である場合、その材料は、十分な導電性を備えていなければならず、例えば、ステンレス鋼またはニチノールである。このような場合、血管アクセスデバイスがカテーテルであれば、一実施例によるフックまたはアリゲータクリップアダプタが使用されるべきである。そうでない場合には、生理食塩水を使用してカテーテルの1つの内腔を通して導電路を形成すべきである。このような場合、一実施例による注射器−カテーテルアダプタが使用されるべきである。
【0048】
電子モジュール(130)は、アダプタから、および、患者の皮膚(115)に配置された1つまたはそれ以上の等の電極から電気信号を受け取る。別の態様では、電子モジュールに様々な電気信号を提供するために、2つ以上のアダプタを同時に使用して、2つ以上の血管内デバイスに接続できる。皮膚電極の使用は、特定のデバイス形態において任意である。電子モジュールは、電気信号を処理し、それを、更なる処理および他の関数を実行するコンピュータモジュール(140)に伝達する。一実施例では、電子モジュールおよびコンピュータモジュールは、別々にパッケージングされていてもよく、別の実施例では、これらのモジュールが同じパッケージに一体化されていてもよい。一実施例では、電子モジュールとコンピュータモジュールとの間の接続は、有線接続であってもよく、別の実施例では、ワイヤレス、例えば、ブルートゥースを使用してもよい。
【0049】
コンピュータモジュールは、電子モジュールからの信号を演算処理し、本実施例で説明するようにアルゴリズム(170)を適用する。コンピュータモジュールは、更に、周辺機器(160)、例えば、プリンタまたはラベルプリンタ、および、記憶デバイスに接続されていてもよく、他のコンピュータまたはインターネットに対し、ワイヤレス接続部(150)を含む接続部を備えている。記憶デバイスは、既設のアプリケーションに関する知識および情報のデータベースを記憶することに使用できる。接続インタフェースは、このデータベースを遠隔操作によって、最新の関連した知識および情報に更新するのに使用できる。このような知識および情報は、例えば、新たな臨床ケース、電気記録図と心臓の状態との間の関係に関する新発見である。コンピュータモジュールは、既設の臨床応用の目的に最適化したグラフィカルユーザインタフェース(180)を支援する。
【0050】
図1Bは、血管内心電図の取得および処理を行うための、本発明の一実施例による電子モジュール(2)のブロック図である。
【0051】
患者コネクタインタフェース(10)により、電気リードを患者(5)に接続できる。皮膚電極、および/または、上述したアダプタを使用した血管内デバイスへの電気的接続の任意の組み合わせを使用できる。一実施例では、増幅器(20)は、可変利得四段増幅器である。この増幅器は、患者ケーブルを通して入力される電気信号、例えば、心電図の代表的な値を増幅できる。A/Dコンバータ(30)は、信号を、マイクロプロセッサ(40)が読み取ることができるデジタルフォーマットに変換する。マイクロ演算処理機能(40)を実行する上で、任意の数および形態のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラおよびデジタル信号プロセッサを使用できる。
【0052】
一実施例では、マイクロコントローラは、シリアルインタフェース(70)またはワイヤレスインタフェース(80)を介するコンピュータモジュール(90)とのシリアル通信の制御に関与し、デジタル信号プロセッサ(DSP)は、本明細書中に説明される1つまたは幾つかの本発明に関するアルゴリズムの実行に関与する。別の態様では、通信および演算処理の両方に単一のプロセッサを使用してもよい。
【0053】
マイクロプロセッサ(40)は、更に、コンピュータモジュール(90)からコマンドを受け取り、電子モジュールの様々な構成要素、例えば、増幅器(20)をコマンドに従って制御する。患者絶縁ブロック(50)は、患者を電気ショックから保護するために、電源(60)およびシリアル通信チャンネル(70)を患者インタフェース(10)から電気的に切り離す。一実施例では、絶縁ブロック(50)は、変圧器および/または光カプラ等の結合器を含んでいてもよい。
【0054】
図2は、本発明の一実施例による血管内デバイス用アダプタ(200)を示す。カテーテル、注射器、注射針、ストップコック、輸液ポンプ等の血管アクセスデバイスが、標準的接続部によって互いに接続される。例えば、図2では、2つのデバイス間のこのような標準的接続部を、デバイス(201)については、内径(203)を有するルアー(202)によって、デバイス(250)については、内径(252)および流体開口部直径(253)を有し、ねじ山を備えたポート(251)によって示す。ねじ山を備えたポート(251)およびルアー(202)により、ポート(251)をルアー(202)に螺着し、取り付け、結合すること等によって、2つのデバイス(201、250)を接続できる。
【0055】
アダプタ(200)は、2つの端部(226、227)を有する本体(220)を備える。本体(220)は、例えば、或る程度の弾性を有する強い生体親和性プラスチック材料で形成される。端部(227)は、錐体形状を有する。一実施例では、端部(227)は、端部(227)がデバイス(201)のルアー(202)に容易に嵌着され、流体が流れる接続部をシールできるように、弾性シール部(228)を有する。他の端部(226)は、例えば、デバイス(201)のルアー(202)のような標準的なルアーの形状を備えている。デバイス(250)の、ねじ山を備えたポート(251)は、アダプタ(200)の端部(226)に接続できる。錐体部(227)により、ルアーを備えていないデバイスにも接続できる。独立した錐体部(270)により、使用可能な直径が異なる2つのデバイス間を接続できる。アダプタ(200)の端部(227)は、円錐部(270)の直径(272)の内側に嵌着する。錐体部(270)の端部(271)は、代表的なデバイス(260)の簡単な形状のカテーテル端部(261)に嵌着する。例えば、デバイス(260)は、皮下埋込型ポート用のカテーテルであってもよい。
【0056】
一実施例では、デバイス(201)は、注射針であり、デバイス(250)は、注射器である。流体、例えば、導電性電解質が、アダプタ(200)の所定の直径を有する中央内側ボア即ち内腔(222)を通って流れ、デバイス(250,201)間に流路を形成する。導電性金属リング(240)は、内腔(222)の実質的に円筒形の表面の一部に取り付けられており、好ましくは、流体流れに対して非常に僅かな外乱(perturbation)を発生させる。例えば、金属リング(240)は、内腔(222)の実質的に円筒形の表面の凹所部分内に配置されていてもよい。導電性ワイヤ(233)の1つの端部(230)が金属リング(240)に電気的に接続されている。一実施例では、端部(230)は、金属リング(240)にハンダ付けされる。別の態様では、端部(230)は、内腔(222)の表面と金属リング(240)との間に捕捉され、端部(230)および金属リング(240)は、機械的圧力により良好な電気的接触を維持する。ワイヤ(233)は、剥き出しであってもよいし、絶縁されていてもよい。好ましい実施例では、金属リング(240)は、例えば、接着剤、締り嵌め、プレス嵌め等を使用して、内腔(222)の表面に固定的に取り付けられるが、他の実施例では、金属リング(240)は、内腔(222)の表面に、移動自在に自由浮動態様等で取り付けられていてもよい。
【0057】
ワイヤ(233)は、内腔(222)から本体(220)の外面の開口部まで延びるチャンネル(231)を通される。エポキシ(232)または他の適当な材料を使用し、ワイヤ(233)に作用する応力を除去すると同時に、チャンネル(231)の開口部をシールしてもよい。追加的なシールを提供するために、金属リング(240)は、有利には、チャンネル(231)と隣接して配置されていてもよい。かくして、金属リング(240)、ワイヤ(233)、チャンネル(231)およびエポキシ(232)は、アダプタ(200)を通って流れる流体に対してシールされた電気接続を提供する。コネクタ(234)は、心電図システムに対して標準的な電気接続を提供する。末端形成がなされていないワイヤを使用してもよい。一実施例では、ワイヤ(233)は、チャンネル(231)の開口部で終端し、コネクタ(234)を本体(220)に直接的に取り付けるが、別の実施例では、ワイヤ(233)は、チャンネル(231)の開口部を通って延び、コネクタ(234)がワイヤ(233)の自由端に取り付けられる。
【0058】
一実施例では、内腔(222)の実質的に円筒形の表面は、長手方向に沿ってテーパ状に形成されている。このテーパ形状は、内腔(222)の全長に沿って延びていてもよく、その特定の部分に制限されていてもよい。例えば、内腔(222)の表面は、錐体(例えば、円錐)形状をなしており、近位端に相対的に大きな直径を備えていてもよく、あるいは、別の態様では、相対的に大きな直径が遠位端に配置されていてもよい。
【0059】
一実施例では、デバイス(201)は、皮下埋込型ポート用のカテーテルの内腔に挿入される注射針であり、デバイス(250)は、注射器である。注射器は、生理食塩水で充填されており、これは、アダプタ(200)を通してカテーテルに注入される。かくして、アダプタ(200)が生理食塩水で充填され、導電性金属リング(240)が生理食塩水および導電性ワイヤ(233)と接触するので、カテーテルの内腔とワイヤ(233)との間に電気的な接続が確立される。このようにして、カテーテルのチップの電気信号が、生理食塩水を通して計測されてもよい。電気を伝達するその他の解決策を使用し、アダプタ(200)を使用する血管内電気記録図を取得してもよい。別の実施例では、アダプタ(200)は、輸液ポンプおよび他の種類の高圧注入手段を使用してもよい。変形例では、アダプタ(200)は、金属リング(240)を有していなくてもよく、導電性の末端(230)が電解質と直接的に接触する。
【0060】
図3は、本発明によるカテーテル操向デバイスを示す。この実施例では、カテーテル(300)は、三内腔カテーテルであり、各内腔の遠位端は、互いに対して間隔が隔てられている。カテーテル操向デバイスは、離間した遠位側の内腔開口部が形成された、2つまたはそれ以上の内腔を有する任意のカテーテルで使用できる。カテーテル(300)の1つの内腔(306)の開口端は、カテーテルのまさに遠位端にあり、他端即ち内腔の開口部(305)は、遠位端の手前に配置されており、当該端部即ち第3内腔(307)の開口部は、第2端部(305)と比較して手前に配置されている。開口端(306)と端部(307)との間の距離は、代表的には、1cm乃至数cmである。
【0061】
幾つかの種類のカテーテルは、端部間の間隔が隔てられた多数の内腔を有し、本発明に基づく操向デバイスにはこうしたカテーテルが含まれる。例えば、末梢挿入中心静脈カテーテルの場合、カテーテルの代表的な長さは、50cm乃至60cmであり、内腔遠位端(305,306,307)間の間隔は、1cm乃至数cmである。2つの内腔を有する血液透析カテーテルの長さは、代表的には、20cm乃至40cmであり、これらの2つの内腔の遠位端間の間隔は、1cm乃至数cmである。多内腔中心静脈カテーテル(CVC)の長さは、代表的には、15cm乃至25cmであり、遠位端即ち内腔の開口部間の間隔は、数mm乃至数cmである。
【0062】
カテーテルの近位端には、三つの内腔に枝分かれするカテーテルハブ(301)が設けられている。これらの内腔の各々にルアー(302,303,304)が接続されている。本発明に基づくカテーテル操向デバイスは、押し、引きおよび使用後の取り出しを可能にするハンドル(311)が近位端に設けられたスタイレット(310)と、スタイレットの遠位端(322)に接続された操向部材(320)とを含む。操向部材(320)は、例えば、内腔(307)のような他の内腔の1つの内腔遠位開口部内に延びていてもよい。操向部材(320)は、カテーテル内腔を通ってカテーテルの近位端に戻り、夫々の内腔(304)に対応するルアーを通って近位端のところで露出する。このように配置されると、操向デバイスは設置位置に置かれる。一実施例では、操向部材(320)は、ハンドル(321)を有し、このハンドル(321)を使用して、操向部材を、内腔を通して引っ張ることができる。別の実施例では、ハンドル(321)は、操向部材(320)から取り外し自在である。
【0063】
操向部材(320)は、ポリウレタン、シリコーン、PTFEまたは他の類似の材料で形成されていてもよい。様々な実施例において、操向部材(320)は、任意の種類の生体親和性糸、例えば、縫合糸であってもよい。別の実施例では、操向部材(320)は、ステンレス鋼製のワイヤである。一実施例では、スタイレットは、カテーテル内腔の1つ、代表的には、中央内腔に予め挿入された状態で提供される。操向部材320は、最遠位開口部(306)のところで、スタイレットの遠位端(322)に取り付けられており、内腔開口部(307)を通して内腔(304)に予め挿入される。カテーテルを操向するため、使用者は、操向部材320を引っ張ってカテーテルから出す。この際、スタイレット310がカテーテル内に引き込まれないようにする。かくして、カテーテルチップを所望の方向に曲げることができる。この状態を、湾曲したカテーテルチップ(350)、後方に引っ張られた部材(340)、および、カテーテルに対して初期位置にある部材(330)で示す。スタイレット(310)もしくは操向部材(320)、または、これらの両方が、任意の導電性材料で形成されている場合、これらの各々または両方を使用して、これらの近位端を血管内電気記録システムに接続することによって、電気信号または血管内電気記録図を、カテーテルの遠位チップのところで計測できる。一実施例では、操向部材(320)は、カテーテル内腔の開口部(307)通してスタイレット(310)に結び付けることができる。
【0064】
別の実施例では、スタイレット(310)および操向部材(320)は、単一の構成要素として製造され、別のカテーテル内腔の開口部(305)を通して輪状に戻る延長操向部材を形成する。ルアー(304)および(302)を通って露出する延長操向部材の2つの端部のうちの一方を引っ張ることによって、同じ効果が得られ、カテーテルチップを所望の方向に曲げることができる。別の実施例では、二重内腔カテーテルの場合、スタイレット(310)を1つの内腔に挿入し、操向部材(320)を他方の内腔に挿入してもよい。この場合、近位端を引っ張ることによって、カテーテルチップを曲げる効果を得ることができる。更に別の実施例では、開口部(305)を通して操向部材(320)を内腔(302)に挿入できる。
【0065】
図4A、図4B、図4Cおよび図4Dは、血管内心電図を最適に取得する、本発明の様々な実施例による電極形態を示す。
【0066】
図4Aは、単リード形態を示し、基準電極(410)が、例えば、患者の右腕の皮膚に取り付けられ、他の電極が、アダプタを通して血管内デバイス(415)に取り付けられている。この形態において、右腕の皮膚に取り付けられた基準電極は、単に例示を目的としたものである。必要となるECGの種類に応じて、基準電極をその他の位置に配置することが可能である。右腕に装着した基準電極は、アダプタとともに使用される血管内デバイスのチップとともに、標準的ECGのリードIIと同様のものとすることができる。この場合、上大静脈(401)から得られたECGおよび下大静脈(402)から得られたECGを最適化できる。標準的ECGの他のリードをシミュレートするため、基準電極を皮膚の任意の他の位置に取り付けてもよい。患者の心臓(400)の内部から更に局所的情報を得るために、基準電極は、他の血管内デバイスに取り付けられたアダプタに接続されていてもよい。
【0067】
図4Bは、モニタ性および案内性を有する変形例の三リード形態を示し、これは、四つの電極を有する。3つの電極は、標準的ECGの電極、即ち、右腕(RA,420)、左腕(LA,425)および左脚(LL,430)と対応し、基準として使用される。第4の電極は、アダプタを通して血管内デバイス(C,435)に取り付けられている。この形態では、電子モジュールおよびアルゴリズムは、2つの機能を同時に実行する。即ち、3つの標準電極(RA,LA,LL)が心臓のモニタ機能を実行し、C電極(435)により、デバイスのチップのところでのECGを記録できる。
【0068】
図4Cは、図4Aに示す形態と接地基準(450)とを含む、接地した単一のリードを有する遠隔測定形態を示す。この形態は、遠隔測定システム形態を通してECGを遠隔に伝達するのに使用できる。
【0069】
図4Dは、血管内デバイスを案内するためのECGモニタの1つの使用例を示す。標準入力RA(465)、LA(460)およびLL(470)を有する標準的ECGモニタを使用する。LA(460)は、患者の左腕に接続され、LL(470)は、患者の左脚に接続される。RA入力(465)は、臨床医が、RA電極とカテーテル(C)電極475との間でRA入力を切り換えるのに使用できるスイッチに接続されている。かくして、カテーテル位置のモニタおよび案内のいずれかを交互に行うことができる。
【0070】
図5は、中心静脈システムの様々な位置での例示的な心電図信号の振幅を示す。
【0071】
心臓(504)、右心房(501)、上大静脈(SVC)(502)および下大静脈(IVC)(503)を示す。位置Aは、SVC上部にあり、位置Bは、SVCの下1/3にあり、位置Cは、大静脈心房交差点にあり、位置Dは、右心房にあり、位置Eは、下大静脈上部にある。
【0072】
グラフ510は、位置Aのところで記録された、時間の関数としてのECG波形を示す。波形の絶対振幅は、振幅スケール(590)上に記録される。血管内ECGの場合には、心電図の標準構成要素、即ちP波(560)、R波(570)およびT波(580)が示される。図4Dのようなリード形態で記録された位置Aでの振幅および形状は、同じ電極形態で、皮膚レベルで記録された心電図と類似する。
【0073】
グラフ520は、位置Bでの血管内ECGを示す。この位置での振幅は、位置Aでの振幅よりも高いが、波形の全体形状は、位置AおよびBで類似する。
【0074】
グラフ530は、位置Cでの血管内ECGを示す。大静脈心房交差点の位置Cでは、波形の振幅は、未だ位置Bでの振幅よりも高く、P波は劇的に変化して、R波よりも高くなっている。この波形は、洞房結節の近くにあるということを示す。
【0075】
グラフ540は、位置Dでの血管内ECGを示す。右心房の位置Dでは、振幅は、位置Cと類似しているが、P波は極性が変化し、双極性になる。これは、洞房結節を越えたところでECGの計測が行われていることを示す。
【0076】
グラフ550は、位置Eでの血管内ECGを示す。下大静脈の位置Eでは、波形は、P波の極性が逆になっていることを除き、振幅に関して位置Aでの波形と類似している。様々な位置でのECG波形の相違を使用し、本明細書で導入したアルゴリズムによって、対応する複数の位置間を識別し、心臓および血管の機能を評価する。
【0077】
図6は、スペクトルスケール(690)を使用した、中心静脈システムの様々な位置での例示的な心電図信号のパワースペクトルを示す。
【0078】
心臓(604)、右心房(601)、上大静脈(SVC)(602)および下大静脈(IVC)(603)を示す。グラフ610は、位置Aでの血管内ECGのスペクトルを示す。位置Aでは、スペクトル(610)は、単一中央周波数、即ち、単一帯域(660)を表し、周波数分布スペクトルパワーおよびエネルギが皮膚レベルでの周波数分布スペクトルパワーおよびエネルギと類似している。
【0079】
グラフ620は、位置Bでの血管内ECGのスペクトルを示す。位置Bでは、周波数分布は、2つの主要な帯域を有し、エネルギおよびスペクトルパワーが位置Aでのエネルギおよびスペクトルパワーよりも高い。
【0080】
グラフ630は、位置Cでの血管内ECGのスペクトルを示す。位置Cでは、比較的広い周波数範囲(670)に亘って、複数(3、4個)の主周波数または主スペクトル成分が分布している。このスペクトル分布は、洞房結節周囲のエネルギ分布を示す。スペクトルパワーおよび信号エネルギは、位置Bと比較的して上昇している。
【0081】
グラフ640は、位置Dでの血管内ECGのスペクトルを示す。位置Dでは、スペクトルはより広く、更に広帯域であり、右心房の電気的活動を示す。
【0082】
グラフ650は、位置Eでの血管内ECGのスペクトルを示す。位置Eでの周波数スペクトルは、位置Aでの周波数スペクトルと類似している。様々な位置でのECG波形の相違を使用し、本明細書で導入したアルゴリズムによって、対応する複数の位置間を識別し、心臓および血管の機能を評価する。
【0083】
図7は、中心静脈システムの様々な位置での例示的な心電図信号電気のエネルギ分布を示す。心臓(704)、右心房(701)、上大静脈(SVC)(702)および下大静脈(IVC)(703)を示す。グラフ(710,720,730,740,750)は、様々な位置(A,B,C,D,Eの夫々)でのエネルギ分布を示し、時間における変化を使用し、本明細書で導入したアルゴリズムによって、対応する複数の位置間を識別し、心臓および血管の機能を評価する。
【0084】
暫し図16を考えると、この図には、本発明の一実施例による血管内電子記録信号を分析するための概要が示してある。心臓に参照番号(1600)が付してあり、上大静脈に参照番号(1601)が付してあり、下大静脈に参照番号(1602)が付してあり、右心房に参照番号(1603)が付してある。この実施例では、中心静脈アクセスデバイスを配置するための3つの重要な領域、即ち、上大静脈即ちSVCの下1/3(1605)、大静脈心房交差点即ちCAJ(1606)および右心房即ちRAの上部(1607)がある。
【0085】
グラフ(1620)は、電気エネルギのデータ(profile)を心臓における位置の関数として示す。グラフ(1640)は、心臓の様々な位置で得ることができる様々な電位記録波形を示す。曲線(1630)は、上大静脈から心臓内に前進する血管内カテーテルのチップのところで、上述の領域の各々で検出された電気エネルギの増大を示す。一実施例では、エネルギ曲線は、時間領域で計算され、別の実施例では、エネルギ曲線は、周波数スペクトルを使用して周波数領域で計算される。一実施例では、エネルギは、実際の信号レベルについて計算され、別の実施例では、エネルギの計算前に、ベースライン値または他の平均値が信号値から差し引かれる。ベースライン値を差し引く前および/または後の振幅値の平方を、所定の時間に亘って、例えば、心拍に亘って合計することによって、信号エネルギ即ちパワーが、時間領域で計算される。周波数領域では、周波数成分の値の平方を合計することによって、信号エネルギ即ちパワーが計算される。一実施例では、曲線は、電気記録図全体を使用して計算されるが、他の実施例では、エネルギの計算を行う上で、電気記録図の特定のセグメントだけ、例えば、電気記録図の「P波」に対応するセグメントだけが使用される。このような「P波」セグメントは、洞房結節の電気的活動を示す。
【0086】
エネルギレベルの相違は、SVCから心臓までのカテーテル経路に沿った様々な位置を特徴付ける。これらの領域は、閾値を使用することによって、電気エネルギレベルに関して識別できる。エネルギレベルの閾値(1631)は、上大静脈の下1/3の始点を定義する。エネルギレベル(1621)は、洞房結節から遠く離れた低エネルギ血管領域を定義する。閾値(1631)と(1632)との間のエネルギレベル(1622)は、上大静脈の下1/3に分類した領域(1625および1605)を定義する。閾値(1632)と(1633)との間のエネルギレベル(1623)は、大静脈心房交差点に分類した領域(1626および1606)を定義する。閾値(1633)と(1634)との間のエネルギレベル(1624)は、右心房に分類した領域(1627および1607)を定義する。
【0087】
同様に、グラフ(1640)の電気記録図の、ベースライン(1650)に対する形状および大きさは、心臓における位置と相関し得る。閾値(1631),(1632),(1633),(1634)は、計算に用いられるエネルギの種類、例えば、電気記録図全体、P波および/またはSTセグメントについて特定的に決定される。SVCの下1/3の前では、比較的低レベルのエネルギ(1621)に対応し、P波(1651)およびR波(1652)は、右腕の標準的ECGリードがカテーテルに接続され、電気記録図の信号の計測がカテーテルのチップで行われる場合、大きさおよび形状が、皮膚レベルで記録された標準的心電図リードIIと類似する。SVCの下1/3(1605および1645)では、電位図のエネルギレベルが増大し、電気記録図の振幅が増大し、P波(1653)の振幅およびエネルギが、R波(1654)の振幅およびエネルギの1/2乃至3/4になるまで増大する。大静脈心房交差点(1606および1646)では、電気記録図のエネルギレベルが更に増大し、電気記録図の振幅が増大し続け、P波(1655)の振幅およびエネルギが、R波(1656)の振幅およびエネルギよりも大きいか或いはこれと等しくなるまで増大する。右心房(1607、1647)では、電気記録図のエネルギレベルが更に増大し、電気記録図の振幅が増大し、P波(1657)が双極化し、その振幅およびエネルギがR波(1658)に対して減少し始める。カテーテルのチップに関する位置情報を提供するために、これらの挙動が定量化され、解析され、使用される。
【0088】
暫し図17を考慮すると、この図には、幾つかの電位図波形の演算処理の実施例が示してある。グラフ(1710)および(1720)は、P波分析の実施例を示す。P波は、洞房結節によって発生する心臓の電気的活動に対応するので、P波の変化は、血管内アプローチにおける洞房結節の近接度の決定に対して、最も関連している。従って、洞房結節の近接度および血管内での位置を評価するために、時間領域および周波数領域における信号分析方法、並びに、信号エネルギ基準を電位図のP波セグメントだけに適用できる。グラフ(1710)では、P波分析(1711)について指定されたセグメントは、時点(1713)に開始され、時点(1714)に終了する。P波セグメントの開始時点と終了時点との間の期間中、検出された最高振幅は、P波のピーク(1712)に対応する。P波セグメント分析の開始時点(1713)は、多くの方法で決定できる。一実施例では、心拍を計算し、R波のピークを心拍の最大振幅として検出する。各R波ピークから演繹し、心拍の所定のパーセント、例えば、20%乃至30%が、P波分析の開始時点(1713)を決定する。各R波ピークから得られた心拍の2%乃至5%から演繹し、P波分析について指定されたセグメントの終了時点(1714)を決定する。同様に、グラフ(1720)では、P波分析について指定されたセグメント(1721)は、心臓の拍動の1サイクルの動作の時点(1723)に開始され、時点(1724)に終了する。P波は、この場合、ベースライン(振幅がゼロに等しい)と比較すると、正の最大振幅(1722)と負の最大振幅(1725)とを有する双極性を有する。開始点(グラフ1710の1713およびグラフ1720の1723)と終了点(グラフ1710の1714およびグラフ1720の1724)との間で定義されたP波形について、本発明の実施例に従って、時間領域アルゴリズムおよび周波数領域アルゴリズムが適用される。
【0089】
グラフ(1730)は、信号エネルギ計算の前に、ベースライン控除を行うことによる利点を示す。信号エネルギが、心拍に亘る信号振幅の平方の和として、時間領域で計算される場合、ベースライン(1733)の前後のレベル(1731および1732)間の振幅の変化によって、エネルギレベルが、レベル(1734および1735)間で振幅が変化する信号よりも低くなり、これによって、レベル(1734)がベースラインである。ベースライン値(1733)が、振幅の値(1731乃至1732)から差し引かれ、ベースライン値(1734)が、振幅の値(1734乃至1735)から差し引かれる。ベースライン控除の後、振幅の平方の和が計算される。かくして、この和は、ベースラインの前後の信号変化のエネルギと比例し、それ故、信号の値/挙動の変化を特徴付ける上で更に適当である。
【0090】
グラフ(1740)は、P波(1741)およびR波(1742)を含む代表的な電気記録図波形と、高周波ノイズ(1744)によって覆われたP波と、最大値1743)まで飽和したR波と、を含む歪められた信号を示す。これらの種類のアーチファクト(1744および1743)が存在する場合、元の信号(1741および1742)を回復するのは非常に困難であり、場合によっては不可能である。従って、本発明の実施例に従ってアルゴリズムを使用し、アーチファクトの存在を検出し、アーチファクトの量をできるだけ低減する。アーチファクトの低減後に信号を回復できない場合には、信号エネルギの計算を行うために、信号が廃棄される。導関数およびその積分の高い値、信号エネルギの急激な変化、ベースラインの値または信号から計算された様々な平均値の急激な変化によって、アーチファクトの存在を時間領域で検出できる。周波数領域では、アーチファクトは、DC成分(スペクトルの周波数ゼロ)の値の急激な変化、高い周波数成分の突然の出現、および、スペクトルパワー/エネルギの急激な変化として検出できる。周波数領域では、選択フィルタリングを適用することができ、信号の平均的挙動について「代表的」でない全ての成分を取り除くことができる。選択フィルタリングを行った後、選択フィルタリングの成功の検証を行うことができるようにするために、逆フーリエ変換を使用して時間領域で信号を再構成する。
【0091】
図8は、本発明の一実施例によるグラフィカルユーザインタフェースを示す。
【0092】
ウィンドウ(810)は、取り付けられた電極形態を使用する電子モジュールによって取得されたECG波形を実時間で示す。ウィンドウ(820)は、基準ウィンドウであり、現在ウィンドウとの比較に使用される固定波形(frozen waveform) を示す。一実施例では、ウィンドウ(820)の基準波形は、カテーテルの基準位置で電子モジュールに接続された電極を通して、および/または、皮膚電極の基準形態を使用して、得ることができる。例えば、このような基準波形は、大静脈心房交差点に配置された血管内デバイスに接続された本発明の一実施例によるアダプタを使用して記録されたECGであってもよい。別の実施例では、ウィンドウ820の基準波形は、または、波形のデータベースに記録されるような、また、コンピュータシステムの記憶媒体に記憶されるような、血管内の特定の位置での、または、特定の心臓の状態の代表的な波形であってもよい。電極形態によって、血管内デバイスを使用して、心臓のモニタリングおよび電気記録図の記録を同時に行うことができる場合には、ウィンドウ(830)は、心臓モニタリング用標準的ECGリードの1つを示すが、ウィンドウ(810)は、上述したアダプタのようなアダプタに接続された場合における血管内デバイスのチップでのECGを示す。
【0093】
アイコン(870)は、心臓の表示であり、位置A乃至E(875)は、本明細書中に開示した方法による血管内ECGの分析によって識別できる、心臓および血管系の様々な位置を示す。血管系内の位置がアルゴリズムによって同定されると、アイコン(875)上の対応する場所および文字が強調され、または、幾つかの他の方法で使用者に見えるようにする。バー(884),(885),(886)は、信号のエネルギレベルを示す。「E」バー(885)は、血管内デバイスのチップの現在の位置におけるECGの周波数スペクトルから計算した電気エネルギの量を示す。「R」バー(884)は、基準位置のECGの周波数スペクトルから計算した電気エネルギの量を示す。「M」バー(886)は、皮膚電極からのモニタリングECG信号を使用したECGの周波数スペクトルから計算した電気エネルギの量を示す。ウィンドウ(840)は、モニタリング情報、例えば、心拍数を示す。患者の情報(氏名、施術を受けた日付、等)はウィンドウ(850)に示される。ウィンドウ(860)は、ボタンや、ステータス情報、例えば、スケール、スクロール速度、システムパラメータおよびシステム診断といった、システム制御要素を含む。
【0094】
図9は、本発明の別の実施例によるグラフィカルユーザインタフェースを示す。
【0095】
アイコン(920)は、心臓を示し、位置A乃至E(930)は、血管内ECGを分析することによって識別できる、心臓および血管系内の様々な位置を例示する。血管内の位置がアルゴリズムによって同定されると、アイコン(930)上の対応する場所および文字が強調され、または、幾つかの他の方法では、使用者に見えるようにする。バー(940),(950),(960)は、信号エネルギレベルを示す。「E」バー(940)は、血管内デバイスのチップの現在の位置でのECGの周波数スペクトルから計算した電気エネルギの量を示す。「R」バー(950)は、基準位置でのECGの周波数スペクトルから計算した電気エネルギの量を示す。「M」バー(960)は、皮膚電極からのモニタリングECG信号を使用したECGの周波数スペクトルから計算した電気エネルギの量を示す。ボタン「印刷」(910)により、使用者は、症例を記録する情報を、プリンタで、例えば、患者のチャートに手早く装着するためのラベルプリンタで印刷できる。
【0096】
図10Aおよび図10Bは、本発明の一実施例による、グラフィカルユーザインタフェースが表示した情報の例示的なプリントアウトを示す。
【0097】
図10Aは、カテーテルチップ配置手順がSVCの下1/3で行われた場合のプリントアウト(1000)を示す。フィールド1010は、心臓アイコンを示し、ここで上大静脈(SVC)の下1/3に対応する文字「B」が強調される(1040)。フィールド1030は、洞房結節の近くの大静脈心房交差点にあるカテーテルのチップのところで記録された基準ECG波形を示す。フィールド1020は、手順の終了時に配置された位置でのカテーテルのチップのところでのECG波形を示す。図10Aについて、この位置は、SVCの下1/3にあり、ECG波形は、この位置に対応する。患者の氏名(1001)および施術を受けた日付もまた印刷される。
【0098】
図10Bは、手順の終了時の最終位置が心臓アイコン(1060)の位置C(1090)の大静脈心房交差点にあること以外は同様のプリントアウト(1050)を示す。「洞房結節(SA Node)」フィールドは、基準ECG波形(1080)を示し、「最終位置」フィールド(1070)は、カテーテルのチップが洞房結節のところに配置されていることを示す。最終位置でのECG波形は、洞房結節での基準位置での波形と類似しており、場合によっては一致する。洞房結節の近くというのは、大静脈心房交差点の位置を示す。これらの位置は、医師によっては、同じであると判断される。
【0099】
図11は、心電図の信号を使用して血管内デバイスを心臓内またはその近くに位置決めするためのコンピュータを用いる方法(1100)のブロック図である。
【0100】
血管内デバイスに装着されたアダプタによって、および、任意であるが、皮膚電極を通して、取得された入力信号(1102)(ECG)にアルゴリズムが適用される。エラー検出ブロック(1105)は、リード少なくとも三種類のエラー状態/例外を検出する。このようなエラー状態/例外は、例えば、除細動器が患者に使用されている場合、ペースメーカが刺激パルスを発している場合、および/または、リード/電極がオフ状態にある場合などである。これらのエラー/例外は、異なる取り扱いがなされてもよく、使用者には、例外の存在および例外の取り扱い方法(1110)の情報が与えられてもよい。
【0101】
予備演算処理ブロック(1115)は、信号を増幅し、ノイズを低減し、アーチファクトを取り除いてもよい。一実施例では、現在最も入手し易いECGモニタと同様に、自動ではなく、使用者の制御下で、表示範囲に合わせて信号の尺度を変更(rescaling) する。かくして、ECGの振幅の変化に簡単に気がつく。ハイパスフィルタがベースラインを補正し、呼吸アーチファクト等のアーチファクトを低減する。選択フィルタ、例えば、ウェーブレット変換を使用して、広帯域ノイズ抑制が行われてもよい。他の機器および送電網との電磁インタフェースを、中心帯域が60Hzまたは50Hzのノッチフィルタ(挟帯域フィルタ)によって抑制し、国内または国外の電源に適応させてもよい。高周波ノイズは、ローパスフィルタによって抑制されてもよい。これは、一実施例では、例えば、心臓の1サイクルに対応する移動ウィンドウ等の可変長アベレージング、連続した幾つかの心臓サイクルに亘るECGのアベレージング、等によって実施される。適応フィルタリングブロック(1120)は、エラー信号を少なくすることによって、フィルタ係数を最適化する。
【0102】
時間領域パターン認識ブロック(1130)は、ECG波形の要素、これらの要素の関係、および、これらの要素の時間における挙動を同定する。ブロック1130の時間領域パターン認識アルゴリズム、および、周波数領域パターン認識ブロック1140の重要な態様は、情報履歴である。データ履歴を分析し、この分析に基づいて予測するために、ECGを特定の要素について実時間で分析し、他の要素について、適当なバッファ長のデータバッファを電子モジュールおよび/またはコンピュータモジュールのメモリに維持する。一実施例では、データ履歴バッファの長さは数秒であり、これにより幾つかの心拍に対応するECG信号をバッファにセーブできる。ダブルバッファリング技術により、1つのバッファ内の波形の演算処理を行うことができ、この際、第2バッファは、信号を記憶し続ける。かくして、一方のバッファ内の波形の演算処理中に信号データが失われることはない。一方のバッファでのデータ演算処理の完了後、結果が決定支援アルゴリズム(1150)に送出され、2つのバッファが役割を交換する。データが確実に失われないようにするために、バッファの長さは、データ演算処理の継続時間に適応する。更に、同様のダブルバッファリング技術が周波数領域パターン認識ブロック(1140)に適用される。
【0103】
血管内ECGの場合、目的の要素には、以下に示す1つまたはそれ以上の要素が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0104】
1.P波,Q波,R波,S波,T波,U波、これらのピーク、振幅、継続時間
【0105】
2.P−Rセグメント,S−Tセグメント,T−Pセグメントの継続時間/間隔
【0106】
3.S−Tセグメントの高さ
【0107】
4.P−P間隔およびR−R間隔の分散
【0108】
5.S−T間隔およびR−T間隔の分散等
【0109】
6.P波およびQRS群のピークピーク値
【0110】
7.P波およびR波の振幅の比およびP波およびQRS群のピークピーク振幅の比
【0111】
8.P波の極性:単一正極、単一負局または双極
【0112】
9.P波、QRS群およびT波の導関数
【0113】
10.R−R間隔および心拍の一時的平均
【0114】
11.所定期間に亘るP波振幅/ピークおよびP波ピークピーク振幅の最大値
【0115】
12.所定期間に亘るR波振幅/ピークおよびQRS群のピークピーク振幅の最大値
【0116】
時間領域において、以下に示す追加的な計算が行われる。
【0117】
13.例えば呼吸アーチファクトを除去するための、および、ベースラインに対する変化の分析を可能にするための、ベースライン控除
【0118】
14.ノイズ低減のための波形アベレージング
【0119】
15.信号の振幅の平方の和のような、時間領域での信号エネルギ計算(ベースライン除去前および後)
【0120】
16.信号の変化を評価し、高周波アーチファクトを除去するための第1導関数計算
【0121】
17.第1導関数値の積分(和)
【0122】
周波数領域において、以下に示す追加的な計算が行われる。
【0123】
18.DCおよび準DC成分除去(ベースライン控除および呼吸アーチファクトの除去と等価である)
【0124】
19.選択フィルタリング、即ち、アーチファクトおよびノイズ、例えば、高周波ノイズ、筋肉アーチファクト、カテーテルおよび電極の取り扱いによる信号の変化、等に関連した特定の周波数の除去
【0125】
20.信号を時間領域内に再構成するための逆フーリエ変換。
【0126】
ECG波形から上述の情報を得るために、以下に示す1つまたはそれ以上の技術を含む幾つかの技術を使用してもよいが、これらの技術に限定されるものではない。
【0127】
1.「ピーク検出」
【0128】
2.一次導関数の計算
【0129】
3.1つの心拍の信号に沿った、および、複数の心拍に沿った移動平均
【0130】
4.適応閾値処理
【0131】
5.自己相関
【0132】
ブロック(1125)の高速フーリエ変換は、所定長のバッファに記憶された多数のECGサンプル、例えば、256、512、1024、2048またはそれ以上のデータサンプルに関して高速フーリエ変換を行う。フーリエ変換によって、波形が時間領域から周波数領域に変換される。
【0133】
周波数領域パターン認識ブロック(1140)は、ECGに関して周波数領域で実行されるパターン認識の様々な態様を示す。これには、以下に列挙するもののうちの1つまたはそれ以上が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0134】
1.主成分分析、即ち周波数スペクトルの最上位要素の決定(電気記録図の形態学的要素、例えば、時間領域での特定の波およびセグメントの決定と同様)
【0135】
2.主成分に基づいて計算量を減少するためのデータ圧縮
【0136】
3.主成分の数および形態の決定、特に、スペクトルが主周波数(周波数帯域)を1つだけ、2つまたは多数有するかどうかの決定
【0137】
4.周波数スペクトルからのスペクトルパワーおよび信号エネルギの計算
【0138】
5.広帯域ノイズを減少するための、単一のスペクトルに亘る周波数の程度に沿った移動平均
【0139】
6.アーチファクトをフィルタ除去するための、幾つかのスペクトルに沿った移動平均
【0140】
7.スペクトルの追加的な形態学的要素、例えば、最大周波数、最大周波数に含まれるエネルギ、周波数ヒストグラム、即ちいずれの周波数がどれ程多くのエネルギを含んでいるか、最高最大(highest significant maximum)エネルギピークの周波数、等の決定
【0141】
8.スペクトル分布から決定される主成分および他のパラメータの時間に亘る挙動および平均の計算、例えば、特定の期間に亘る信号エネルギおよびスペクトルパワーの最大値の決定
【0142】
9.スペクトル分析に基づく心臓の特定の状態の決定/評価。この決定/評価は、更に、決定支援ブロック1150および1250でより詳細に実行される。
【0143】
幾つかの決定支援アルゴリズムは、時間領域パターン認識アルゴリズムおよび周波数領域パターン認識アルゴリズムによって提供される情報を使用する。一実施例では、ブロック(1150)は、SVCの下1/3または大静脈心房交差点のいずれかに血管内デバイスを配置するのを支援する。
【0144】
詳細には、ブロック1150は、カテーテルの配置中に最初に大静脈心房交差点に達するという考えに基づく。大静脈心房交差点では、または、洞房結節の近くでは、P波および他の電気的パラメータが最大値に達する。大静脈心房交差点では、P波は、単極である。大静脈心房交差点で洞房結節に達した後、即ち、P波振幅およびスペクトルパワーの最大値に達した後、P波の振幅が大静脈心房交差点で達した振幅の半分になるまでカテーテルを数cm引き戻す。P波が大静脈心房交差点での振幅の半分まで減少する位置において、カテーテルは、上大静脈の下1/3にあるものと考えられる。P波ピーク振幅またはピークピーク振幅、並びに、スペクトルパワーは、血管系における位置をECG波形に合わせてマッピングするのに使用される。
【0145】
更に詳細には、血管内デバイスと関連した血管内ECG信号を受け取った後、信号を複数の所定期間に亘って演算処理し、各所定期間についてP波振幅およびスペクトルパワーを計算する。次いで、最大P波振幅を複数のP波振幅から決定し、関連する最大スペクトルパワーを複数のスペクトルパワーから決定する。これらの最大値が決定された位置を大静脈心房交差点等の心臓内または心臓の近くの所定の位置と関連付ける。次いで、各所定期間について、血管内デバイスの位置を、P波振幅の最大P波振幅に対する比およびスペクトルパワーの最大スペクトルパワーに対する比に基づいて計算し、次いで、血管内デバイスの位置を使用者に表示する。更に、P波振幅およびR波振幅の極性を使用して血管内デバイスの位置を決定してもよい。
【0146】
単一の基準またはこのような基準の組み合わせを使用して、決定を支援してもよい。一実施例では、T1,T2,T3は、経験的に定められた閾値である。これらの閾値は、患者によって異なる。アルゴリズムは、現在の計測値に基づいて閾値を調節する上で適合ループを使用できる。別の実施例では、これらの閾値は、予め定められている。
【0147】
他の実施例では、Pピーク/P振幅またはP波ピークピーク振幅の、Rピーク/R振幅またはQRS群ピークピーク振幅に対する比を使用して、洞房結節に対する位置を決定してもよい。一実施例では、Pピーク/振幅は、Rピーク/振幅のほぼ半分でなければならず、P波は、SVCの下1/3に対応する位置について単極でなければならない。別の実施例では、P波ピークピークは、QRSピークピーク振幅の半分でなければならず、P波は、SVCの下1/3に対応する位置について単極でなければならない。
【0148】
上述したように、決定支援アルゴリズムブロック1150の結果を、例えば、システム(1160)によって同定されたECGの種類に対応する、心臓アイコン上の適当な位置を強調することによって使用者に表示してもよい。
【0149】
図12に示す決定支援アルゴリズムブロック1250は、現在の位置のP波、R波およびP波スペクトルパワーと、同等のリード、例えば、リードIIでの皮膚心電図から決定される、それらのパラメータの値との比較に基づく。閾値T1乃至T6は、各患者に対する適合調節に依存する経験値である。図12に示す基準、または、このような基準の組み合わせを使用してもよい。
【0150】
特に、ECGスペクトルから計算される電気エネルギのレベルに関し、他の決定アルゴリズムを使用してもよい。血管内デバイスを配置する場合、1つの基準は、SVCの下1/3に対応する位置で、血管内ECGから計算される平均電気エネルギが、皮膚レベルで血管内ECGから、または、対応するリード、例えば、リードIIで皮膚ECGから計算される平均電気エネルギの2倍であることである。
【0151】
<中心静脈カテーテルの配置方法>
中心静脈カテーテル(CVC)の配置方法を以下に説明する。
【0152】
1.所与の患者について、血管アクセスデバイス(CVC)の必要な長さを推算または計測する。
【0153】
2.生理食塩水およびアダプタ(200)を使用する場合、工程11に進む。そうでない場合には、以下に説明するように実行する。ガイドワイヤをCVCに挿入し、ガイドワイヤのチップとカテーテルのチップとを面一に整合させる。CVCの外側のガイドワイヤの長さを計測する。この計測は、ガイドワイヤを血管に挿入した後、カテーテルのチップおよびガイドワイヤのチップを再整合できるようにする上で必要である。例えば、無菌巻き尺または縫合糸で計測を行った後、ガイドワイヤをCVCから取り出す。
【0154】
3.血管にアクセスし、推算した必要な長さについてガイドワイヤを挿入する。
【0155】
4.工程1で計測したガイドワイヤの長さがCVCの外側に残るように、CVCをワイヤに被せて挿入する。かくして、ワイヤに被せて挿入したCVCのチップとガイドワイヤチップとが面一に整合する。
【0156】
5.無菌電気アダプタを取り扱い説明書に従ってガイドワイヤに接続する。
【0157】
6.無菌電気アダプタの他端を電気記録システムのECGケーブルに接続する。
【0158】
7.電気記録システムのディスプレイが、電気記録システムの取り扱い説明書に従ったカテーテルチップの所望の位置、具体的には、SVCの下1/3、大静脈心房交差点または右心房を示すのをチェックする。代表的には、カテーテルのチップの位置は、電気記録図のP波の特定の形状およびR波に対するP波の特定の形状によって、および/または、エネルギレベルおよび閾値によって同定できる。
【0159】
8.ガイドワイヤおよびCVCを、スクリーン上のECG波形が所望の位置に達したことを示すまで、面一に整合した状態が変わらないように、一緒に引っ張ったり押したりすることによって、これらの位置を調節する。実際に挿入した長さを推算された長さと関連付ける。
【0160】
9.所望の位置に達した後、電気アダプタを外し、ガイドワイヤを取り外す。
【0161】
10.SVCを所定位置に固定する。
【0162】
11.生理食塩水およびアダプタ(200)を使用する場合には、この工程から続行する。
【0163】
12.既存プロトコルによって現在特定されているように、血管にアクセスし、CVCをガイドワイヤに被せて導入する。
【0164】
13.ガイドワイヤを取り外す。
【0165】
14.無菌アダプタ(200)をCVCに取り付ける。
【0166】
15.アダプタ(200)の電気接続部(234)を電気記録システムのECGケーブルに取り付ける。
【0167】
16.注射器を生理食塩水で充填し、これをアダプタ(200)の他端に接続する。カテーテル内腔を生理食塩水でフラッシングし、カテーテルチップ全体に亘って導電性生理食塩水カラムを形成する。
【0168】
17.電気記録システムのディスプレイに示されたECG波形が、電気記録システムの取り扱い説明書に従ったカテーテルチップの所望の位置、具体的には、SVCの下1/3、大静脈心房交差点または右心房を示していることをチェックする。代表的には、カテーテルのチップの位置は、電気記録図のP波の特定の形状およびR波に対するP波の特定の形状によって、および/または、エネルギレベルおよび閾値によって同定できる。
【0169】
18.スクリーン上のECG波形が所望の位置に達したことを示すまで、引っ張ったり押したりすることによって、CVCの位置を調節する。実際の長さを推算された長さと関連付ける。
【0170】
19.所望の位置に達した後、注射器およびアダプタ(200)を取り外す。
【0171】
20.カテーテルを固定する。
【0172】
<皮下埋込型ポートの配置方法>
皮下埋込型ポートのカテーテルピースの配置方法は、CVCの配置方法と同様である。アダプタ(200)を皮下埋込型ポートのカテーテルに接続し、生理食塩水が入った注射器をユニバーサルアダプタの他端に接続しなければならない。皮下埋込型ポートのカテーテルに配置された注射針に異なる電気アダプタを接続すべきである。所望の位置に達した後、カテーテルを皮下埋込型ポートに接続すべきである。
【0173】
<開端および閉端の抹消挿入型カテーテルの配置方法>
開端および閉端の両方の抹消挿入型カテーテルを本明細書中に説明したように配置できる。PICCの配置方法は、CVCの配置方法と同様である。カテーテルを所望の方向に前進させ損なった場合には、本明細書中に説明した本発明に基づく操向機構を使用してPICCのチップを曲げることができる。
【0174】
<血液透析カテーテルの配置方法>
血液透析カテーテルの配置方法は、CVCを配置するための本明細書中に説明した方法と同様である。カテーテルを所望の方向に前進し損なった場合には、本明細書中に説明した本発明に基づく操向機構を使用して、血液透析カテーテルのチップを曲げることができる。血液透析カテーテルの内腔の各々について、電気記録システムを使用して1つの内腔を右心房内に配置し、他の内腔を大静脈心房交差点に配置するように案内するように、アダプタ(220)を備えた2つの異なるガイドワイヤを使用してもよい。血液透析カテーテルの内腔の各々を、各内腔のアダプタ(220)を電気記録システムのECGケーブルの異なる電極に接続することによって、順次独立して、または、同時に配置できる。
【0175】
<不整脈の患者に中心静脈アクセスデバイスを配置する方法>
従来、不整脈の患者は、血管内ECG法を使用し、中心静脈ライン配置を案内する手順から除外されてきた。これは、P波の形状に目に見える変化がないためである。本明細書中に説明したP波を分析するためのエネルギ基準を使用し、不整脈の患者に中心静脈アクセスデバイスの配置を案内できる。不整脈の患者では、洞房結節によって発生した電気信号は、特定の程度のランダム性を有し、そのため、これらの信号は、一貫したP波を発生させるために同期しない。とはいえ、上述の論考に示すように、洞房結節の電気的活動は、存在し、洞房結節の近傍に代表的な強さの電気信号を発生させる。一実施例では、アルゴリズムは、血管系内の特定の位置のマッピングを行うために、血管内電気記録図から計測したエネルギを使用する。このように、このアルゴリズムは、位置を示すのが電気エネルギだけであって、P波の形状が位置を示さない場合に、不整脈の患者において配置を案内するのに使用できる。
【0176】
<チップ位置および心臓の電気活動の特定の態様をモニタするための方法>
本明細書中に説明したデバイスを使用し、心臓の電気活動の特定の態様を連続的にまたは断続的にモニタできる。電気記録システムに接続された電気アダプタまたはアダプタ(200)をモニタリングに使用できる。電気アダプタは、任意の静脈アクセスデバイスまたは任意の動脈デバイスに導入される、任意のスタイレットまたは他の導電性部材に接続できる。アダプタ(200)は、導電性溶液、例えば、生理食塩水を注入できる限り、更に、任意の静脈ラインまたは動脈ラインに接続できる。アダプタ(200)は、輸液ポンプを使用して導電性流体が身体に挿入される場合にも使用できる。チップ位置、および/または、心臓の電気活動の特定の態様をモニタすることは、多くの臨床状況で実行できる。
【0177】
1.アダプタ(200)は挿入後に、例えば、ベッドサイドでおよび/または在宅看護の状況で、多くの中心静脈デバイスに取り付けることができる。こうした中心静脈デバイスとしては、PICC、CVC、血液透析カテーテル等がある。本発明の実施例で上述した方法と同様の方法を使用することによってアダプタが接続されている場合に、本発明の一実施例に従ってアダプタをこのようなカテーテルおよび電気記録システムに接続することによって、また、生理食塩水をカテーテルに注入することによって、カテーテルのチップの位置を確認でき、および/または、心臓の特定の電気活動をモニタできる。
【0178】
2.アダプタ(200)は、動脈ラインと、動脈ラインに接続された他のデバイスと、の間の動脈ラインに接続できる。動脈ラインおよびユニバーサルアダプタ内の血液によって、血液と電気記録システムとの間が確実に電気的に接続される。かくして、心臓の電気活動を連続的にモニタできる。これは、前負荷の変化のモニタリングを行う場合に特に重要である。前負荷の変化は、ECG波形のSTセグメント中において、心臓の電気的エネルギの変化となる。
【0179】
3.電気記録システムを使用し、かつ、アダプタ(200)を中心静脈ラインと圧力計測システムとの間に接続し、これによって、中心静脈の圧力計測を行いながら、チップ位置および心臓の電気活動のモニタリングを行うこともできる。
【0180】
4.皮下埋込型ポートの場合には、ニードルをポートチャンバに挿入でき、生理食塩水で充填した注射器を使用して、カテーテルを生理食塩水でフラッシングできる。電気アダプタをニードルおよび電気記録システムに取り付けることができる。検出された電気記録図信号には、ニードルが皮膚と接触しているところの皮膚レベルからの情報が含まれ、注入した生理食塩水カラムを通したカテーテルのチップからの情報が含まれる。カテーテルチップまでの経路のインピーダンスは、皮膚までの経路のインピーダンスよりも低いので、検出された信号は、両成分、即ち、皮膚レベルの成分およびカテーテルのチップのところの成分を含む。皮膚レベル信号を差し引くことによって、本発明の実施例に説明したアルゴリズムに従って、カテーテルのチップのところの信号、ひいては、チップ位置および心臓の所定の電気活動を推定できる。
【0181】
図13は、心臓の刺激伝導系を示し、図14は、心臓の刺激伝導系での電気信号の伝播を示す。
【0182】
これらの図は、心臓の伝導機構を示す。この伝導機構は、計測された心臓内での電気エネルギ分布が心臓内の特定の位置を示す理由を説明する。従って、局所的な電気信号、挙動およびエネルギ集中を計測でき、心臓および血管内の位置を更に正確に決定でき、局所的心臓情報を更に正確に表現できる。
【0183】
心臓の伝導システムは、心臓の支配的ペースメーカ即ち洞房結節(1310)で始まる。SA結節の固有心拍数は、毎分60回乃至100回の心拍である。インパルスは、SA結節を出た後、心房を通ってバッハマン束(1350)および節間に沿って、房室(AV)結節(1320)および心室に近づくように伝播する。インパルスは、AV結節を通過した後、心室まで伝播する。最初に、ヒス束(1330)まで下り、次いで、束枝部に沿って、最終的には、プルキンエ線維(1340)まで下りる。通常、接合部組織のペースメーカ細胞および心室のプルキンエ線維が支配的である。これは、これらがSA結節からインパルスを受け取るためである。これらは、SA結節からインパルスを受け取らなかった場合だけ、インパルスを発する。房室接合部の固有心拍数は、毎分40回乃至60回であり、心室の固有心拍数は、毎分20回乃至40回である。図14に電気インパルスの様々な伝播速度を示す。インパルスは、SA結節(1410)から、心房筋(1420)および心室筋(1460)を通って約0.5msで伝播し、束枝部(1440)および(1450)を約2m/sで通過し、プルキンエ線維(1470)を約4m/sで通過し、AV結節(1430)を約0.05m/sで通過する。
【0184】
有利なことに、電気信号および電気エネルギ分布を使用し、不整脈の場合でも、即ち、標準的な皮膚心電図でコヒーレントなP波が計測されない場合でも、洞房結節の近くにあることおよび右心房の電気活動を同定する。不整脈の幾つかの場合には、右心房で発生したランダムな電気信号は、身体を通って皮膚まで伝播するには十分なコヒーレンスを備えていない。それでも、右心房には、電気エネルギが存在し、局所的血管内計測によって非コヒーレントP波として、即ち、ECG波形のPセグメントの大きな電気活動として、検出できる。更に、エネルギの計測は、インパルスの伝導の局所的異常、即ち自動能の異常(不整脈)、インパルスの逆行伝導、再入異常の影響を受け難い。
【0185】
電気信号および電気エネルギ分布は、また、有利なことに、心機能、例えば、心筋の脱分極および拡張と関連した前負荷の定量化にも使用される。
【0186】
電気信号および電気エネルギ分布は、有利なことに、大動脈を通してガイドワイヤおよび案内カテーテルを左心に案内するのにも使用される。この方法は、左心房および冠状動脈へのアクセスを簡単にし、コントラスト量を減少し、血管内デバイスをこうした位置まで案内するのに必要な放射線を低減する上で有用である。別の用途では、本発明に基づく装置は、カテーテルの案内、例えば、スワンガンツを、右心室を通して肺動脈に案内するのにも使用できる。他の血管内デバイスを案内でき、こうしたデバイスを使用して、心血管系の他の位置での血管内の電気活動を計測できる。こうした位置は、本発明の実施例で導入した新たな装置で計測した心電図によって識別できる。
【0187】
図15は、ニューロン制御系による心血管系の電気活動を示す。幾つかの伝導路が、心臓(1530)および血管(1520)の活動を制御する機構と関連している。レセプタ(1510)、例えば、圧力レセプタは、血管の状態および心臓の状態に関する情報を、髄質中心(1500)を通して神経系に伝達する。センサ/レセプタから受け取った情報の処理および反応に、視床下部(1540)および上位の中心(1550)が関連している。これらは、インパルス(1560)を血管および心臓に次々に送り戻す。制御系の電気活動を計測することによって、心臓の状態に関する情報を得ることができる。この情報は、従来、得ることができなかった。
【0188】
図18Aは、アイントホーフェンのECG三角形を示す。ECGリードについてのこの命名規則を、本明細書中、様々な実施例と関連して使用する。患者からECG信号を得るために、代表的には、1つの電極を右腕(RA)に配置し、1つの電極を左腕(LA)に配置し、1つの電極を基準として左脚(LL)で使用する。P波が最も変化する方向を矢印(2200)によって示す。従って、カテーテルのナビゲーションおよびチップの配置のために血管内ECGを使用する場合、一実施例では、右腕(RA)に対応する電極を、カテーテル等の血管アクセスデバイス(110)の近位端に使用可能に接続する(図1A参照)。このようにして、カテーテルの遠位端に対して検出された、例えば、カテーテルに配置された電極を介して検出されたECG波形は、アイントホーフェン三角形のリードIIによって検出されたものと考えることができる。かくして、血管系を通してカテーテルを前進させたとき、リードIIは、P波の最も大きな変化を示し、したがって、洞房結節の近接の検出に最も適している。洞房結節は、大静脈心房交差点に位置し、P波(右心室の電気活動を示す)の生成に関与する。アイントホーフェン三角形のリードIIIに対応する波形は、RA電極がカテーテルに使用可能に接続されている場合、一実施例では、血管系を通してカテーテルをナビゲートするときに、比較的不変のままである。従って、リードIIIは、本明細書中に説明したように多くの目的で役立つ基準リードとして、本発明の一実施例で使用される。一実施例では、本明細書で導入された装置は、本明細書中で血管内ECGリード(カテーテルナビゲーションおよびチップの位置決めを行う)とも呼ばれるリードII、および、本明細書中で皮膚ECGリード(基準波形として)とも呼ばれるリードIIIについて、ECG信号に基づく波形を同時に表示する。
【0189】
図5を再び参照すると、この図は、一実施例による、血管系内および心臓内の対応する位置に対する様々な血管内ECGの波形のマッピングを示す。詳細には、位置Aは、上大静脈(SVC)に対応し、位置Bは、SVCの下1/3に対応し、位置Cは、大静脈心房交差点と対応し、位置Dは、右心室と対応し、位置Eは、下心房および/または下大静脈と対応する。
【0190】
図18Bは、ECGセンサ付カテーテル等の本明細書中に開示したデバイスで得られた、図5の位置Aで計測されるような血管内(リードII)ECG波形(2215)を示す。皮膚ECG波形(2210)は、リードIIIと同等の皮膚基準ECGリードを示す。基準P−R群を(2280)によって示す。位置Aの代表的なP−R群を(2250)によって示す。リードカテーテルおよびそのECGセンサの血管系内での移動に従って、例えば、P−R群(2250)でわかるように、P波がリードIIで劇的に変化するのに対し、P波は、基準(2280)として使用されるリードIIIでは、実質的に一定のままである。
【0191】
一実施例では、2つのECGリード(例えば、図18BのリードIIおよびリードIII)からの波形が、カテーテル配置システムといった装置のディスプレイ上に、例えば、図18B乃至図18Fに示すように同時に表示される。別の実施例では、3つのリード(図18AのリードI、リードIIおよびリードIII)が図20Fに示すように同時に表示されてもよい。
【0192】
本明細書中に説明した方法、装置およびECG電極形態を使用することによって、一実施例では、リード血管内リードIIを使用してカテーテル配置を案内するのと同時に、皮膚基準リード(リードIII)を使用して患者の病態、例えば、患者の心拍数をモニタできる。
【0193】
図18Cは、本明細書中に開示したデバイスで得られる、図5の位置Bで計測されるような血管内ECG波形(2220)を示す。皮膚ECG波形(2210)は、リードIIIと同等の皮膚基準リードを示す。基準P−R群を(2280)によって示す。位置Bでの代表的なP−R群を(2255)によって示す。上述のように、カテーテルのチップに対応するリードIIでのP波は、P−R群(2250)において劇的に変化するが、基準(2280)として使用されるリードIIIでのP波は、ほぼ一定である。
【0194】
図18Dは、本発明の一実施例に開示されたデバイスで得られた、図5の位置Cでの血管内ECG波形(2225)を示す。ECG波形(2210)は、リードIIIと同等の皮膚基準リードを示す。基準P−R群を(2280)によって示す。位置Cでの代表的なP−R群を(2260)によって示す。カテーテルのチップに対応するリードIIでのP波は、P−R群(2260)で劇的に変化するが、基準(2280)として使用されるリードIIIでのP波は、ほぼ一定である。
【0195】
図18Eは、本発明の一実施例に開示されたデバイスで得られた、図5の位置Dでの血管内ECG波形(2230)を示す。ECG波形(2210)は、リードIIIと同等の皮膚基準リードを示す。基準P−R群を(2280)によって示す。位置Dでの代表的なP−R群を(2265)によって示す。カテーテル(265)のチップに対応するリードIIでのP波は、P−R群(2265)において劇的に変化するが、基準(2280)として使用されるリードIIIでのP波は、ほぼ一定である。
【0196】
図18Fは、本発明の一実施例に開示されたデバイスで得られた、図5の位置Eでの血管内ECG波形(2240)を示す。ECG波形(2210)は、リードIIIと同等の皮膚基準リードを示す。基準P−R群を(2280)によって示す。位置Eでの代表的なP−R群を(2270)によって示す。カテーテルのチップに対応するリードIIでのP波は、P−R群(2270)において劇的に変化するが、基準(2280)として使用されるリードIIIでのP波は、ほぼ一定である。
【0197】
図19Aは、本明細書で導入した装置、例えば、カテーテル配置システムの性能を示す。そのスクリーンに幾つかのディスプレイウィンドウが同時に表示される。1つ、2つ、または、それ以上のディスプレイウィンドウが含まれていてもよい。これらのディスプレイウィンドウ(3310および3320)の各々は、1つ乃至3つのECGの波形(リードI、リードIIおよびリードIII)を、任意の組み合わせで、実時間で、再生モードまたは固定モードで表示できる。一実施例では、1つのディスプレイウィンドウ(3310)を使用し、実時間のECGの波形(カテーテル案内リードIIまたは血管内リードII、および、皮膚基準リードIII)を表示し、別のディスプレイウィンドウ(2320)を使用し、固定ECG波形(カテーテル案内リードIIおよび皮膚基準リードIII)を表示する。かくして、使用者は、カテーテル案内リードの変化を、特に、2つの異なるカテーテルチップ位置、即ち、ディスプレイウィンドウ(2320)に固定表示されたチップ位置と、ウィンドウ(2310)に表示された現在(実時間)のチップ位置と、でP−R群において比較できる。
【0198】
上述のマルチウィンドウ比較により、一実施例による以下のカテーテル配置方法を使用できる。即ち、最初に、カテーテルを心房内で、ウィンドウ(2320)で確認できるように(図19B参照)P波がその最大振幅に達するまで前進させた後、P波の大きさがその最大振幅の半分になる位置までカテーテルを引き戻す。P波の大きさがその最大振幅の半分になる、そのような位置は、上大静脈の下1/3(図5の位置B)を示す。
【0199】
図20Aは、皮膚基準リードを使用してカテーテル案内リード(リードII)のP波セグメントを分析する、一実施例による方法を示す。P波そのものが見出されるP波セグメントは、同一の心拍のQRS群の直前にあるという事実によって特徴付けられる。更に、心拍のP波セグメントは、前の心拍のT波に続いて発生する。P波セグメントを検出するために、QRS群のRピークの検出を含むアルゴリズムを適用できる。アルゴリズムは、一実施例では、以下の工程を含む。
【0200】
Rピークを検出する。
【0201】
R−R間隔を計算する。
【0202】
Rピーク前のR−R間隔の所定の割合が、P波が生じる間隔であることを仮定する。P波が発生するこの間隔がP波セグメントと定義される。
【0203】
P波セグメントのPピーク、その振幅および極性を検出する。
【0204】
図11および図12に示すような演算処理アルゴリズム、分析アルゴリズムおよび意思決定アルゴリズムを適用する。
【0205】
一実施例では、上述したアルゴリズムを適用するために、RピークおよびR−R間隔を、血管内リードIIで、即ち、案内に使用されるのと同じECGリードで検出できる。別の実施例では、RピークおよびR−R間隔を、リードIII(皮膚基準リード)を使用して検出できる。特に、図20AのリードIII(2410)でのRピーク検出を、リードIIでのECG波形の任意のセグメントの分析のトリガーとして使用できる。この分析には、図20AのP波セグメント(2420)の分析が含まれる。更に、リードIIの信号品質が許せば、リードII自体で検出されるRピーク(2430)をリードII波形の処理のトリガーとして使用できる。他の実施例では、他のリードを、カテーテルのナビゲーションおよびチップの位置決めに使用されるリード以外のリードでのトリガーとして使用できる。例えば、随意であるが、リードIをカテーテルのナビゲーションおよびチップの位置決めに使用できる。更に、一実施例による装置では、リードIをカテーテルのナビゲーションおよびチップの位置決めに使用できるが、とはいえ、リードIIは、多くの臨床設定に適している。一実施例では、同一のリードによって検出された波形のピークについて、上述のトリガーが生じ得ることに着目されたい。更に、一実施例では、リードIIで検出されたピークをリードIの分析のトリガーに使用できる。かくして、これらのおよび他の変形例が考えられる。
【0206】
本明細書中に説明したような、カテーテルのナビゲーションおよび位置決めに使用されるECGリードとは異なる1つのECGリードについての分析をトリガーすることは、分析のトリガーにいずれのECGリードが使用されるのか、および、カテーテルのナビゲーションおよび位置決めにいずれのECGリードが使用されるのかに関わらず、多くの実際の状況で有利である。図20B乃至図20E、特に図20Eでわかるように、安定したノイズレスなリード、例えば、リードIIIをトリガーすることにより、リードIIECG信号が所望以上の量の信号ノイズを含む場合に、例えば、カテーテルのナビゲーションおよび位置決めに使用される血管内リードII等の他のリードの様々なセグメントの処理性能が向上する。実際上の設定では、使用者は、リードIIの接続を手作業で取り扱うので、ノイズが多いリードIIECG信号が極めて頻繁に現れる。他の状況では、以下でわかるように、本明細書中で導入したトリガーの考えによる利点がある。
【0207】
図20Bは、基準皮膚リードIII(2410)で検出されるRピークおよび対応するR−R間隔が、ナビゲーションリードIIでのPQRSセグメント(2430)の分析をどのようにトリガーするのかを示す。本明細書中に説明したように、ECGリードIIのP波セグメントおよびQRS群は、血管系内でのカテーテルのチップの位置を予測するために、別々にまたは互いに関係を以て分析される。図20Bに示す場合では、P波は、R振幅と等しい大きな正の振幅を有し、双極である(負の第1セグメントを有する)。このような場合、リードII自体でRピークを検出することは、アルゴリズムを使用することにより不可能ではないにしろ、非常に困難である。基準リードIII(2410)で検出されたRピークの検出に基づくリードII(2430)のECG波形分析をトリガーすることにより、カテーテルチップ位置のP波セグメント特性の変化の検出および処理を行うことができる。このような、アルゴリズムによるリードIIのECG波形分析は、図20Bに示す場合では、かえって困難である。これは、このリードでは、Rピークを明瞭に検出するのが困難であるためである。
【0208】
図20Cは、不整脈の患者の場合に、カテーテルナビゲーションリードII(2440)でのP波セグメントの分析をトリガーするのに、1つのリードのRピーク、例えば、リードIII(2410)のRピークでどのようにトリガーするのかを示す。代表的には、図20Cおよび図20Dでわかるように、不整脈の患者では、皮膚ECGリードにP波セグメントは現れない。しかしながら、カテーテルナビゲーションおよびチップ位置決めリード、例えば、リードIIは、カテーテルが洞房結節および大静脈心房交差点に近づくときに、P波セグメントの比較的高レベルの電気活動を検出できる。P波セグメントの電気活動(エネルギ)のレベルは、カテーテルチップが洞房結節を通過して右心房に入るにつれて更に増大する。ナビゲーションリードIIのP波セグメントのこの増大した電気活動の最高レベルは予測できないので、例えば、P波振幅がリードIIのR波の振幅よりも高い場合があるので、皮膚ECGリードのRピークの前記P波セグメントの分析をトリガーすることにより、P波検出およびこれに続くカテーテルチップの配置および位置決めに対する適当な解決策が提供される。
【0209】
図20Dは、不整脈の患者の場合に、ECGリードIIおよびECGリードIIIの両方にP波がない状態を示す。図20Dでは、リードIIは、患者の右腕の皮膚電極に接続されており、リードIIIは、患者の左腕の皮膚電極に接続されている。リードIIIのRピーク(2410)をこの図に示し、識別可能なP波がリードIIにないことを示す対応するセグメントを(2450)として示す。
【0210】
図20Eは、カテーテルナビゲーションリード、例えば、リードIIにノイズが多くまたは不安定であり、それにより、Rピークおよび対応するP波の検出が困難である状況を示す。この場合、上述したように、安定した基準リード、例えば、皮膚リードIIIでのRピーク(2410)を検出することによって、比較的ノイズが多いカテーテルナビゲーションリードのP波セグメント(2460)を見つけて分析するために、上述したトリガーを介して、その能力を確保する。
【0211】
図20Fは、2つのリード(この例では、リードIおよびリードII(図18A参照))を使用して、対応するECG波形(2470)および(2475)を同時に検出し、基準リード(リードIII)の追加的な同時のECG波形(2480)とともに三角形を形成し、カテーテルチップの位置を求める別の実施例を示す。詳細には、リードIおよびリードIIを同時に参照し、これらのリードの相関(またはその欠如)を使用して、ノイズを低減し、P波セグメントおよびQRSセグメントの変化、および、P波とQRS群との間の相対的変化を更に正確に決定することによって、カテーテルチップのほぼ正確な位置を決定できる。
【0212】
図21Aおよび図21Bは、不整脈の場合に、カテーテルナビゲーションおよびチップ位置の確認を行うための、P波セグメント、および/または、P波セグメントとQRS群との関係を使用するアルゴリズムに関する、一実施例による詳細を示す。
【0213】
詳細には、図21Aは、2つの皮膚ECGリード(皮膚電極を使用する)についてのECG波形を示す。図21Aでは、一実施例では、左腕の皮膚電極を使用して、対応するRピーク(2510)が検出されたリードIIIと、右腕の皮膚電極を使用して、P波(2520)がないことが検出されたリードIIとの両方を、左脚の皮膚電極と比較する。従来、こうした代表的な不整脈ECG波形を示す患者は、カテーテルナビゲーションおよびチップ位置の確認を行うためのECGに基づく方法を使用する上での候補とは考えられなかった。P波が皮膚レベルに存在しないので、大静脈心房交差点でのカテーテルチップの位置を決定するのにECG方法を使用することができないと考えられていた。図21Aは、かくして、P波が存在しない位置のナビゲーションリードのPセグメント(P波)の特徴およびエネルギの計算を行うために、皮膚基準リードのRピーク(2510)を使用できる状況を示す。
【0214】
更に詳細には、図21Bは、図20A乃至図20ECGに関連して説明した装置で得られるようなECG波形を示し、本明細書中に説明した装置および方法によって、不整脈の患者であってもECGに基づいたカテーテルナビゲーションおよびチップ配置を使用して治療できるということを示す。図11および図12で説明した演算処理アルゴリズムに起因して、リードIIでカテーテルのチップから得られたECG信号は、従来技術と比較して、正確であり且つノイズが少ない。このため、カテーテルチップが洞房結節の近くにある場合に、P波セグメント(2530)の変化が見えるようになる。こうした変化は、生理学によって正当化されるように、右心房のランダムな電気活動に対応する。このランダムな電気活動およびその変化を、P波セグメント(2530)によって示すように、本明細書で導入する装置で検出できる。このランダムな電気活動は、典型的には、皮膚およびリードIIIに達すると相殺され、このため、従来技術のECG法によって検出するのは困難または不可能である。
【0215】
幾つかの場合では、上述の右心房のランダムな電気活動は、非常に弱く、カテーテルのチップのところでもこれを検出するためには、本明細書中に説明した装置等の装置が必要とされる。カテーテルナビゲーションリードのP波セグメントの変化を観察し、および/または、分析することによって、カテーテルのチップ位置を、例えば、上大静脈(弱く低いエネルギ、または、P波がない)上での位置に合わせて、大静脈心房交差点の位置に合わせて、および、右心房内の位置に合わせて、マッピングできる。図21Bは、基準リード(例えば、皮膚リードIII)でのRピークが、P波セグメント(2530)が存在する位置でのナビゲーションリード(例えば血管内リードII)の対応するP波(P波セグメント)の分析をどのようにトリガーするのかを示す。
【0216】
図11および図12に説明したアルゴリズムに加え、カテーテルまたは他の血管内デバイスを配置する上で、電気記録図スペクトルから計算されるような電気エネルギのレベルに関するアルゴリズム等の他の決定アルゴリズムを使用できるということがわかる。例えば、1つの基準は、SVCの下1/3に対応する位置で、血管内電気記録図から計算した平均電気エネルギが、皮膚レベルでの血管内電気記録図から、例えば、リードIII等の対応するリードにおける皮膚心電図から計算した平均電気エネルギの2倍であると特定する。
【0217】
図11および図12に関連して上文中に開示したアルゴリズムに加え、指向性を有するエネルギおよびこれに基づく意思決定の概念を本明細書に導入する。わかるように、例えば、図18Bの(2250)のところ、および、図18Cの(2225)のところでは、P波は単極、即ち、単一の極性を有し、この極性は正である。これと比較して、図18Dの(2260)のところ、および、図18Eの(2265)のところは、双極P波、即ち、負の成分と正の成分との両方を有するP波を示す。図18Fは、(2270)のところでのP波セグメントが、単極P波セグメントであるが、極性が、図18Bおよび図18Cに示すP波セグメントと比較して逆であることを示す。
【0218】
上述のP波セグメントの極性の変化は、アイントホーフェン三角形(図18A参照)に従った、洞房結節に対するカテーテルチップの位置、および、皮膚電極の位置に起因する。本明細書中に例示した場合では、カテーテルを上大静脈から大静脈心房交差点を通って、さらに右心房を通って下大静脈内にナビゲートするにしたがい、P波セグメントの極性は、これに従って変化する。
【0219】
一実施例によれば、また、上文中の記載を考慮すれば、カテーテルチップ位置を以下のように決定できる。カテーテル配置システム等の本明細書中に説明した装置によって、検出されたP波について、正のエネルギ値および負のエネルギ値を決定する。正のP波エネルギ値は、本明細書中に説明したエネルギ計算アルゴリズムに従って、正のP波エネルギ値(即ち、ECGベースラインよりも上方の値)のみについて、決定される。これに対応して、負のP波エネルギ値は、本明細書中に説明したエネルギ計算アルゴリズムに従って、負のP波エネルギ値のみについて、決定される。本実施例に従って決定されたこれらのエネルギ値(正および負)は、本明細書中では、「指向性エネルギ」値とも呼ばれる。これは、これらの値が、上述した血管内リードII等の、対応するリードに使用可能に接続される適当なセンサを介してP波が検出されている、カテーテルチップの方向および位置に関連しているためである。
【0220】
上述したP波の指向性エネルギは、一実施例によれば、カテーテルのナビゲーションの案内、および、そこでのチップの配置に使用できる。詳細には、一実施例では、右腕電極がカテーテルチップのところで血管内ECG信号を検出する(図20A乃至図20Eに関連して上述した)標準的なアイントホーフェン電極形態が考えられる。他の電極形態も可能であるということに着目されたい。P波エネルギが実質的に全体に正である場合には、カテーテルチップは、洞房結節の上方に、例えば、上大静脈内に配置されているものと考えられる。P波が正のエネルギおよび相対的に少量の負のエネルギを有するが、正のエネルギがR波エネルギに対して小さい場合には、図18Dの(2260)でわかるように、カテーテルチップは、大静脈心房交差点に配置されている。P波セグメントが、その正のエネルギに対して大量の負のエネルギを有し、正のエネルギが、R波エネルギと同じ位である場合には、図18Eの(2265)でわかるように、カテーテルチップは、右心房内にある。P波がほぼ全体に負のエネルギを有する場合には、図18Fの(2270)でわかるように、カテーテルチップは、下大静脈に近づいているか、或いは、下大静脈内にある。このようにして、本明細書で言及した指向性エネルギは、本明細書中に説明した本方法によって、カテーテルのナビゲーションおよびチップの配置に使用される。
【0221】
図22A乃至図22Dならびに図23Aおよび図23Bは、1人のオペレータが無菌領域で本明細書中に説明した装置および方法を使用できる、例示的な実施例によるコネクタに関する様々な詳細を示す。
【0222】
詳細には、図22Aは、磁気吸引性を有する接続体(2915)を示す。この接続体の表面は、導電性を有している。接続体(2915)は、2つのコネクタ(2910)および(2920)に電気的に接続される。コネクタ(2910)は、無菌デバイス/アダプタ(2905)の一端に接続される。無菌デバイス(2905)の他端は、上述したように、無菌ガイドワイヤもしくは無菌スタイレット、または、無菌生理食塩水アダプタに接続できる。コネクタ(2920)は、本明細書で図1Aに示す装置に接続されるECGケーブルの一端に取り付けることができ、あるいは、コネクタ(2920)自体がこのケーブルの一端であってもよい。
【0223】
接続体(2915)の表面には、様々な方法で処理がなされてもよい。一実施例では、導電性表面を有する筐体に磁石が組み込んであってもよい。磁石は、電気コネクタ(2910)および(2920)を金属製表面に引き付け、これらを表面上に係止させ、かくして、コネクタ(2910)と接続体(2915)の導電性表面との間での電気的な接触を確立し、接続体(2915)の導電性表面と他方の電気接点(2920)との間での電気的な接触を確立する。
【0224】
接続体2915は、1人のオペレータによって、本明細書中に説明した方法を用いて無菌領域で使用できる、1つの種類のコネクタを例示する。従って、一実施例では、接続体(2915)は、手順中に1人の無菌状態のオペレータの手が届くように、非無菌領域内でのカテーテル配置手順が開始される前に配置される。次いで、今のところまだ無菌状態ではないオペレータが非無菌状態のコネクタ(2920)の一端をECGケーブルに接続し、図22Aに示すコネクタ端を接続体2915の表面上に「落とす」。磁石が接続体(2915)に組み込まれているので、コネクタ(2920)は、接続体の導電性表面に引き付けられ、その表面に付着する。コネクタ(2920)が取り付けられた、または、コネクタ(2920)に含まれるECGケーブルの端部は、ECGリード自体であってもよく、それによって、ワークフローが簡単になる。
【0225】
手順中、1人のオペレータは無菌である。オペレータは、コネクタ(アダプタ)(2910、2905)が包装された無菌パッケージを開封し、無菌手袋をはめた手で無菌コネクタ端(2915)を保持し、無菌コネクタを接続体(2915)の導電性表面上に落とす。コネクタ(2920)と同様に、コネクタ(2910)は、組み込んだ磁石によって、接続体(2915)に磁気で引き付けられ、これによって、コネクタ(2910)が接続体の導電性表面上に固定される。この方法を使用し、無菌領域の無菌状態を損なうことなく、無菌電気コネクタ(2910)と非無菌コネクタ(2920)との間を電気的に接続することができる。また、この方法は、1人のオペレータによって使用でき、1人の無菌オペレータが、本明細書中に説明した装置を使用できる。
【0226】
図22Bは、コネクタの別の実施例を示す。この実施例では、接続体(2930)は、ワイヤに直接的に接続されている。或いは、接続体(2930)は、ECGケーブル(2935)の一体的な一部分である。この実施例は、図22Aに関連して上述した方法を簡単にする。これは、無菌手順中、無菌アダプタ(2905)に接続された無菌コネクタ(2925)だけを接続体(2930)の導電性表面(2930)に落とせばよいためである。
【0227】
図22Cは、接続体の別の実施例を示す。この実施例では、無菌アダプタ(2905)のコネクタ(2940)は、図22Aに関連して上述したアダプタ(2905)およびコネクタ(2910)と類似している。カテーテル配置手順中、無菌状態のオペレータは、無菌コネクタ(2940)を接続体または嵌め合いピース(2945)に内に落とす。嵌め合いピース(2945)は、内部にコネクタ(2940)を受け入れるカップを備える。磁石がカップに組み込まれており、この磁石は、コネクタ(2940)をカップに引き込み、ここに固定する。これと同時に、カップにより、電気的に接続された状態が確実に確保される。嵌め合いピース(2945)は、ECGケーブル(2950)の一体的な一部分(例えばECGリードの一端)、ECGケーブルに接続するためのワイヤの一端、または、その他の幾つかの適当な形態とすることができる。嵌め合いピース2945を使用するための方法は、図22Bに関連して説明した方法と類似しており、相違点は、雄/雌型接続部を相対的に固定するために、カップ(2945)がコネクタ(2940)を吸い込むことができることである。図22A、図22Bおよび図22Dに関連して説明した実施例の場合のように、接続体に使用される形状および材料は、この接続体で相互接続される構成要素に対して適正に電気的に接触する限り、変えてもよい。
【0228】
図22Dは、コネクタ(2955)に使用可能に接続するための磁石が設けられたカップ(2960)が、ECGケーブルクリップを取り付けることができるコネクタ(2965)を反対側の端部に備えていること以外は、図22Cに関連して説明した接続体と同様の接続体の形態を示す。このように、配置手順中、非無菌オペレータは、ECGケーブルが設けられたクリップを使用することによって、コネクタ(2965)を市販のECGケーブルに接続できる。その後、無菌手順中、無菌オペレータは、図22Cに関連して説明した方法と同様に、無菌コネクタ(2955)をカップ(2960)内に落とす。
【0229】
図23Aは、例えば剛性プラスチック製の強化無菌コネクタピース(3020)を有する、一実施例による操向可能な無菌アダプタ(3010)の詳細を示す。無菌オペレータは、図22Cおよび図22Dにおけるように無菌コネクタピース(3020)を嵌め合いピース(3030)内に落とす代りに、無菌アダプタ(3010)の剛性コネクタピース(3020)を使用して嵌め合いピース内に操向、例えば、押したり回転させたりできる。一実施例では、嵌め合いピース(3030)は、コネクタピース3020を引き付けるために磁石が組み込まれている。別の実施例では、嵌め合いピース(3030)には磁石が設けられておらず、嵌め合いピースとコネクタピースとの間に適当な電気的接続を形成するように、コネクタピース(3020)が嵌着する適当な大きさおよび形状を備えている。
【0230】
図23Bは、磁石を必要とせずに、簡単な嵌め合いピース(3050)に押し込むことができ、且つ、これに使用可能に接続できる、一実施例による操向可能なコネクタピース(3040)を示す。図示し且つ説明した形状に加え、コネクタ(3040)およびその嵌め合いピース(3050)について、その他の形状、例えば、レールやねじ等とすることが可能である。
【0231】
上述したコネクタの実施例の任意の適当な組み合わせを使用できるということが理解されよう。例えば、図23の操向可能なコネクタは、図22Dに示すような嵌め合いピースを有することができる。
【0232】
図24A乃至図24Fは、一実施例によるカテーテルナビゲーションの様々な詳細を示す。図示するように、これらの図は、各々、2つのディスプレイウィンドウを含む。第1ウィンドウは、ECG波形を示し、第2ウィンドウは、心臓の概略図またはアイコン、および、第1ウィンドウのECG波形が対応するECG信号の計測点を示す追加的な位置アイコンを示す。ECG波形と位置アイコンとの間のマッピングは、一実施例では、上述したアルゴリズムおよび方法を使用して行われる。2つのディスプレイウィンドウは、独立して使用されてもよいし、一緒に使用されてもよい。一実施例では、2つのディスプレイウィンドウは、オペレータが、観測されたECG波形をカテーテルチップの位置と関連付けられるようにするために、グラフィカルユーザインタフェース(図1A参照)上に同時に表示される。別の実施例では、ユーザインタフェースを簡単にするために、心臓および位置アイコンウィンドウだけが表示される。
【0233】
位置アイコンは、任意の1つまたはそれ以上の幾つかの可能な形態を含むことができる。こうした形態には、特定の方向への前進を示す矢印、同定可能な位置を示すドット、十字、星印、等が含まれる。これらのアイコンの各々は、位置関係を強調するために、様々な色で着色されていてもよい。別の実施例では、同定可能なチップ位置の各々と、様々な音響とを関連付けることができる。チップ位置を同定する音響およびアイコンは、使用者が、患者の血管系内においてカテーテルを案内すること、および、チップを配置することを補助するために、一緒に使用してもよいし、独立して使用してもよい。
【0234】
一実施例では、簡略化したユーザインタフェースを使用する。この実施例では、心臓アイコンおよび対応する位置アイコンだけを表示する。この場合、ECG波形および位置のマッピングで実行される計算は、使用者には見えない。かくして、使用者がECG波形を解釈することを必要とせずに、ナビゲーションを行うため、および、チップを配置するために、本明細書中に説明した装置を使用できる。心臓およびカテーテルチップ位置アイコンだけを表示する、簡略化したユーザインタフェースを、例えば、図25Bに例示する実施例に示すように、使用できる。
【0235】
更に詳細には、図24Aは、上体の胸腔の外側のカテーテルチップ位置に対応するECG波形、すなわち、皮膚基準ECGリードIII(3110)および血管内カテーテルナビゲーションECGリードII(3115)を示す。アイコン表示ウィンドウには、心臓アイコン(3125)が表示されており、位置アイコン(3120)は、カテーテルが胸腔に向かって移動するのを示す。別の実施例では、矢印状位置アイコン(3120)に代えて、上大静脈の上方および外側の位置を示す十字、ドット、または、任意の他の適当なアイコンを使用してもよい。
【0236】
矢印状位置アイコン(3120)は、カテーテルチップが心臓に向かって移動している事実を裏付けるナビゲーションECGリードIIの変化、例えば、チップが洞房結節に近づいていることを示す、電気エネルギの着実な上昇、および、正の指向性エネルギを有するP波をアルゴリズムが検出した場合にのみ、一実施例による装置によって表示される。アルゴリズムが、カテーテルが血管系を通って前進するにしたがって生じる、血管内ECG信号の電気エネルギの着実な上昇を検出しない場合には、ドット、星印、十字、または、他の適当な位置アイコンが上大静脈の上方および外側の位置に表示される。グラフィックアイコンに加えて、または、これに代えて、これらの位置および状況の各々に関連した音響を再生することができる。
【0237】
図24Bは、上大静脈に対応する位置での、基準リード(3110)およびカテーテルナビゲーションリード(3115)に対応するECG波形を示す。アイコンディスプレイウィンドウは、心臓アイコン(3125)と、この心臓アイコン上の上大静脈を示すドット状位置アイコン(3130)とを示す。この位置は、上述したような装置によって、ECG波形(3110)および(3115)に基づいて決定される。図24Aにおけるのと同様に、任意の適当なアイコン形状および色彩を使用でき、および/または、検出されたECG波形が示す位置にカテーテルのチップが達したときに、音響またはメロディを再生してもよい。
【0238】
図24Cは、上大静脈の下1/3に対応する位置での、基準リード(3110)およびカテーテルナビゲーションリード(3115)に対応するECG波形を示す。アイコンディスプレイウィンドウは、心臓アイコン(3125)と、この心臓アイコン上の上大静脈の下1/3を示すドット状位置アイコン(3140)とを示す。この位置は、上述したような装置によって、ECG波形(3110)および(3115)に基づいて計算される。図24Aにおけるのと同様に、任意の適当なアイコン形状および色彩を使用でき、および/または、検出されたECG波形が示すような位置にカテーテルのチップが達したときに、所定の音響またはメロディを再生してもよい。
【0239】
図24Dは、大静脈心房交差点に対応する位置での、基準リード(3110)およびカテーテルナビゲーションリード(3115)に対応するECG波形を示す。アイコンディスプレイウィンドウは、心臓アイコン(3125)と、この心臓アイコン上の大静脈心房交差点を示すドット状位置アイコン(3150)とを示す。この位置は、上述したような装置によって、ECG波形(3110)および(3115)に基づいて計算される。図24Aにおけるのと同様に、任意の適当なアイコン形状および色彩を使用でき、および/または、検出されたECG波形が示すような位置にカテーテルのチップが達したときに、所定の音響またはメロディを再生してもよい。
【0240】
図24Eは、右心房に対応する位置での、基準リード(3110)およびカテーテルナビゲーションリード(3115)に対応するECG波形を示す。アイコンディスプレイウィンドウは、心臓アイコン(3125)と、この心臓アイコン上の右心房を示すドット状位置アイコン(3160)とを示す。この位置は、上述したような装置によって、ECG波形(3110)および(3115)に基づいて計算される。図24Aにおけるのと同様に、任意の適当なアイコン形状および色彩を使用でき、および/または検出されたECG波形が示すような位置にカテーテルのチップが達したときに、所定の音響またはメロディを再生してもよい。
【0241】
図24Fは、上体の胸腔の外側のカテーテルチップ位置に対応するECG波形、即ち、皮膚基準ECGリードIII(3110)および血管内カテーテルナビゲーションECGリードII(3115)を示す。アイコンディスプレイウィンドウには、心臓アイコン(3125)と、カテーテルが胸腔から遠ざかる方向に、例えば、下大静脈に向かって、移動することを示す矢印状位置アイコン(3170)とが表示される。他の実施例では、矢印状位置アイコン(3170)に代えて、右心房の下方の位置を示す十字、ドット、または、任意の他の適当なアイコンを使用してもよい。
【0242】
一実施例では、装置は、カテーテルチップが心臓から遠ざかる方向に移動している事実を裏付けるナビゲーションECGリードIIの変化、例えば、チップが洞房結節から遠ざかる方向に移動していることを示す、電気エネルギの着実な減少、および、負の指向性エネルギを有するP波を、アルゴリズムが検出した場合にのみ、矢印状位置アイコン(3170)を表示する。アルゴリズムが、カテーテルが血管系を通って前進するにしたがって生じる、血管内ECG信号の電気エネルギの着実な減少を検出せずに、負のP波を検出する場合には、ドット、星印、十字、または、任意の他の位置アイコンが右心房の下および外側に表示される。グラフィックアイコンに加え、または、これに代えて、これらの位置および状況の各々に関連した音響を再生することができる。
【0243】
図25Aは、携帯電話(3210)、タブレットPC、手持ち操作可能な、または、携帯式の他の適当なデバイスのグラフィカルユーザインタフェースのディスプレイウィンドウを示す。詳細には、携帯電話のユーザインタフェースには、2つのECGリード、即ち、基準リードおよびカテーテルナビゲーションリードの波形(3220)が表示されている。携帯電話または他の適当なデバイスは、一実施例では、比較的長い時間(比較的多くの心臓サイクル)に亘ってECG波形を表示できるように、横にした位置に保持される。ディスプレイデバイスが実時間表示モードにある場合には、デバイスを横にする毎に、ディスプレイは、ECG波形の表示に切り替わる。別の実施例では、一度に1つのECGリードしか表示されない。更に別の実施例では、3つまたはそれ以上のリードを同時に表示できる。本発明の実施例に説明したように、別の実施例では、ECG波形の変化を簡単に評価できるようにするために、ディスプレイデバイスのスクリーンを実時間で分割し、(現在位置)ディスプレイウィンドウおよび固定(基準位置)ウィンドウを表示してもよい。図1Aに示す装置と携帯電話(3210)との間の双方向の相互作用により、図25A乃至図27Bに関連して図示し且つ説明した機能を得ることができる。一実施例では、これは、図1Aに示すワイヤレス接続部150を介して行われる。当業者には理解されるように、携帯電話(3210)には、通信を可能にする、対応するワイヤレス接続部が装備されている。
【0244】
図25Bは、図24A乃至図24Fに説明したナビゲーションインタフェースに基づいて、携帯電話(3210)または他の適当な手持ち操作可能な/携帯式のデバイスのスクリーン上に表示される簡略化したユーザインタフェース(3230)を示す。実時間表示モードにあり、ディスプレイデバイスが鉛直に位置決めされている場合には、デバイスは、図25Bに示す簡略化したユーザインタフェースを表示する。実時間表示モードにある場合には、デバイスは、図25Aに示す、デバイスを横にした場合のECG波形の表示と、図25Bに示す、デバイスを鉛直にした場合のナビゲーションユーザインタフェースの表示と、の間で、前後に自動的に切り替える。
【0245】
図26は、一実施例において、携帯電話(3310)、タブレットPC、または、同様のデバイスのタッチスクリーンでのズーム機能およびスクロール機能を示す。使用者は、2本の指(3320)を使用して、ECG波形を見易いようにズームインおよびズームアウトできる。指とタッチスクリーンとを使用することによって、ECG波形記録のスクロールを行うこともできる。
【0246】
図27Aは、一実施例において、ECG波形および/または簡略化したユーザインタフェースおよび患者データを別のコンピュータまたはデバイスに通信するために、携帯電話(3410)、タブレットPC、または、他の適当な手持ち操作可能な/携帯式のポータブルデバイスを使用できることを示す。通信インタフェースを(3420)で示す。このような伝送は、携帯電話(3410)によって、Wi−Fi、携帯電話、または、他の適当なネットワークを介して行うことができる。
【0247】
図27Bは、携帯電話(3410)、タブレットPC、または他の適当な手持ち操作可能な/携帯式のデバイスのグラフィカルユーザインタフェースを示す。このグラフィカルユーザインタフェースは、患者データ(3430)と、デバイスの向きによって定まる、ECG波形(3440)または簡略化した心臓アイコンと、消去やメモリへの記憶等を含む、1つまたはそれ以上の患者記録のブラウジング、制御および処理を行うためのインタフェース(3450)と、を表示できる。
【0248】
本明細書中に説明した装置、アルゴリズムおよび方法は、様々な環境に関連して、様々な構成要素およびシステムを使用して、実施できるということは理解されよう。本発明の実施例の実施に使用できるECGモニタリングシステムの一例は、2009年9月10日に出願された「カテーテルの血管内配置に関する装置およびディスプレイ方法」という表題の米国特許出願公開第2010/0036227号に記載されている。ECGモニタリングシステムの別の例は、2009年4月21日に出願された「中心静脈カテーテル(CVC)のチップの配置方法」という表題の米国特許出願公開第2009/0259124号に記載されている。これらの出願に開示された全ての内容は、参照によって、本明細書の開示の一部に組み入れられる。
【0249】
本発明の実施例に関連して使用できるECGセンサスタイレットの非限定的例は、2009年8月21日に出願された「ECGセンサおよび磁気アッセンブリを含むカテーテルアッセンブリ」という表題の米国特許出願公開第2010/0222664号、および、2010年9月29日に出願された「カテーテルを血管内に配置するための装置で使用するためのスタイレット」という表題の米国特許出願公開第2011/0015533号に記載されている。これらの出願に開示された全ての内容は、参照によって、本明細書の開示の一部に組み入れられる。
【0250】
本発明の実施例は、本開示の趣旨から逸脱することなく、他の特定の形態で実施されてもよい。以上に説明した実施例は、全ての点に関し、例示であって、限定ではないと考えられるべきである。従って、これらの実施例の範囲は、以上の説明によってよりも、むしろ、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の意味および等価性の範疇の全ての変更は、特許請求の範囲の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0251】
2…電子モジュール
10…患者コネクタインタフェース
20…増幅器
40…マイクロプロセッサ
50…患者絶縁ブロック
60…電源
70…シリアルインタフェース
80…ワイヤレスインタフェース
90…コンピュータモジュール
100…装置
110…血管アクセスデバイス
120…アダプタ
130…電子モジュール
140…コンピュータモジュール
150…ワイヤレス接続部
160…周辺機器
170…アルゴリズム
180…グラフィカルユーザインタフェース
200…血管内デバイス用アダプタ
201…デバイス
220…本体
230…端部
250…デバイス
260…デバイス
265…カテーテル
270…錐体部
270…円錐部
300…カテーテル
310…スタイレット
320…操向部材
320…ディスプレイウィンドウ
350…カテーテルチップ
410…基準電極
415…血管内デバイス
1105…エラー検出ブロック
1115…予備演算処理ブロック
1120…適応フィルタリングブロック
1130…時間領域パターン認識ブロック
1140…周波数領域パターン認識ブロック
1150…決定支援アルゴリズムブロック
1160…システム
1250…決定支援アルゴリズムブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の身体内の留置医療デバイスの位置を特定するための方法において、
第1ECG波形の第1ピークを検出する工程と、
前記第1ピークが検出されたときに、第2ECG波形の分析をトリガーする工程と、
前記第2ECG波形の第2ピークを検出する工程と、
前記留置医療デバイスの一部分の位置を前記第2ピークの特徴に基づいて決定する工程と
を備える、位置を特定するための方法。
【請求項2】
請求項1に記載の位置を特定するための方法であって、
更に、前記第2ピークを反復的に検出する工程を備え、
前記位置を決定する工程は、更に、前記第2ピークが反復的に検出される場合の前記特徴の変化に基づいて、前記留置医療デバイスの前記一部分の前記位置を決定する工程を備える
位置を特定するための方法。
【請求項3】
請求項1に記載の位置を特定するための方法であって、
前記第1ECG波形は、皮膚に配置された第1電極を介して取得され、
前記第2ECG波形は、前記身体内の位置に向けられた導電路に使用可能に接続された第2電極を介して取得され、
前記留置デバイスは、カテーテルを含み、
前記留置デバイスの前記一部分は、前記カテーテルの遠位チップを含む
位置を特定するための方法。
【請求項4】
請求項1に記載の位置を特定するための方法であって、
前記第2ECG波形の分析をトリガーする工程は、更に、前記身体内の血管内に配置された前記第2電極を介して、前記分析をトリガーする工程を備える
位置を特定するための方法。
【請求項5】
請求項1に記載の位置を特定するための方法であって、
前記第1ピークを検出する工程および前記第2ピークを検出する工程は、更に、
皮膚に配置された前記第1電極を介して取得された第1ECG波形における、R波ピークを有する第1ピークを検出する工程と、
前記第2ECG波形における、P波ピークを有する第2ピークを検出する工程と
を備える、位置を特定するための方法。
【請求項6】
請求項1に記載の位置を特定するための方法であって、
更に、前記第1ECG波形および前記第2ECG波形をディスプレイの第1部分に同時に描く工程を備える
位置を特定するための方法。
【請求項7】
請求項1に記載の位置を特定するための方法であって、更に、
前記第1ECG波形および前記第2ECG波形の現在の図をディスプレイの第1部分に同時に描く工程と、
前記第1ECG波形および前記第2ECG波形の過去の図を前記ディスプレイの第2部分に描く工程と
を備える、位置を特定するための方法。
【請求項8】
請求項7に記載の位置を特定するための方法であって、更に、
前記留置医療デバイスの前記一部分の前記身体内での位置を表す位置アイコンを、前記ディスプレイの一部分に描く工程と、
前記留置医療デバイスの前記一部分の前記位置の反復的な決定に従って、前記位置アイコンを更新して描く工程と
を備える、位置を特定するための方法。
【請求項9】
請求項8に記載の位置を特定するための方法であって、
前記位置アイコンを描く工程は、更に、前記患者の心臓の描写画像に重ねて前記位置アイコンを描く工程を備える
位置を特定するための方法。
【請求項10】
請求項1に記載の位置を特定するための方法であって、
更に、前記第1ECG波形および第2ECG波形のうちの少なくとも1つを、ワイヤレス伝送を介して、携帯電話または手持ち操作可能なデバイスのディスプレイ上に描く工程を備える
位置を特定するための方法。
【請求項11】
請求項1に記載の位置を特定するための方法であって、
前記第2ECG波形の前記分析をトリガーする工程は、カテーテル位置特定装置のプロセッサによって、自動的に実行される
位置を特定するための方法。
【請求項12】
請求項1に記載の位置を特定するための方法であって、
前記第1ECG波形の前記第1ピークとしてR波ピークを検出する工程は、不整脈によって前記第1ECG波形にP波ピークが存在しない場合であって、前記第2ECG波形にP波セグメントの少なくとも一部が存在する場合に、実行される
位置を特定するための方法。
【請求項13】
患者の身体内の留置医療デバイスの位置を特定するための方法であって、
前記医療デバイスに連結された電極であって、患者の前記身体内への導電路を介して血管内ECG信号を検知する電極を介して、ECG波形のP波を検出する工程と、
前記P波の正の振幅の量と、前記P波の負の振幅の量と、のうちの、少なくとも一方を計算する工程と、
前記P波の前記正の振幅および前記負の振幅のうちの少なくとも一方の前記計算された量に基づいて、前記留置医療デバイスの一部分の位置を決定する工程と
を備える、位置を特定するための方法。
【請求項14】
請求項13に記載の位置を特定するための方法であって、
更に、前記留置医療デバイスの前記一部分の前記決定された位置をディスプレイ上に描く工程を備える
位置を特定するための方法。
【請求項15】
請求項13に記載の位置を特定するための方法であって、
更に、前記ECG信号の前記検出されたP波をディスプレイ上に描く工程を備える
位置を特定するための方法。
【請求項16】
請求項13に記載の位置を特定するための方法であって、
前記正の振幅の量は、前記ECG波形のベースラインよりも上方のP波の振幅の量を含み、
前記負の振幅の量は、前記ECG波形のベースラインよりも下方のP波の負の振幅の量を含む
位置を特定するための方法。
【請求項17】
請求項13に記載の位置を特定するための方法であって、
前記P波を検出する工程、前記量のうちの少なくとも1つを計算する工程、および、前記位置を決定する工程は、反復的に実行されて、それによって、前記P波の前記正の振幅および前記負の振幅のうちの少なくとも1つの前記量の経時的変化が決定される
位置を特定するための方法。
【請求項18】
請求項17に記載の位置を特定するための方法であって、
前記留置医療デバイスの前記一部分の前記位置を決定する工程は、更に、前記P波の前記振幅が正であり、正の振幅が増加している場合に、前記留置医療デバイスの前記一部分が、前記患者の心臓の洞房結節の上方にあり、かつ、該洞房結節に向かって移動していることを決定する工程を備える
位置を特定するための方法。
【請求項19】
請求項18に記載の位置を特定するための方法であって、
前記留置医療デバイスの前記一部分の前記位置を決定する工程は、更に、前記P波の前記振幅が負であり、負の振幅が増加している場合に、前記留置医療デバイスの前記一部分が、前記洞房結節の下方にあり、かつ、該洞房結節から遠ざかる方向に移動していることを決定する工程を備える
位置を特定するための方法。
【請求項20】
請求項13に記載の位置を特定するための方法であって、
前記P波を検出する工程、少なくとも1つの量を計算する工程、および前記位置を決定する工程のうちの少なくとも1つを携帯電話または携帯式デバイスによって少なくとも部分的に制御し、または、モニタする
位置を特定するための方法。
【請求項21】
無菌領域内の第1導電性構成要素を、前記無菌領域の外部の第2導電性構成要素に電気的に接続するための接続デバイスであって、
導電性表面を有する本体であって、該導電性表面が磁性であるように磁気要素が設けられた本体を備え、
前記第2導電性構成要素は、前記接続デバイスに電気的に接続され、
前記第1導電性構成要素は、前記接続デバイスに電気的に接続され、
前記第1導電性構成要素の前記接続デバイスへの電気的な接続は、前記第1導電性構成要素の磁気的に引き付け可能なコネクタを、前記導電性表面に手で触ることなく、前記導電性表面上に配置することによって、前記コネクタが前記導電性表面に磁気で固定されるように行われる
接続デバイス。
【請求項22】
無菌領域内の第1導電性構成要素を、前記無菌領域の外部の第2導電性構成要素に電気的に接続するための接続デバイスであって、
カップ状レセプタクルを有する本体であって、該レセプタクル内に導電性表面を有する本体と、
前記カップ状レセプタクルに近接して配置された磁気要素と
を備え、
前記第2導電性構成要素は、前記接続デバイスに電気的に接続され、
前記第1導電性構成要素は、前記接続デバイスに電気的に接続され、
前記第1導電性構成要素の前記接続デバイスへの電気的な接続は、前記導電性第1構成要素のコネクタの一端を、前記接続デバイスの表面に手で触ることなく、前記接続デバイスの前記カップ状レセプタクルに挿入することによって、前記コネクタが前記カップ状レセプタクル内の前記導電性表面に磁気的に固定されるように行われる
接続デバイス。
【請求項23】
請求項22に記載の接続デバイスであって、
前記第1導電性構成要素の前記コネクタは、堅く、細長い本体の一端に配置されている
接続デバイス。
【請求項24】
請求項22に記載の接続デバイスであって、
前記第1導電性構成要素は、ECGリードを備え、
前記第2導電性構成要素は、ECGシステムに接続するための紐状接続手段を備える
接続デバイス。
【請求項25】
不整脈の患者の身体内の留置医療デバイスの位置を特定するための方法であって、
前記医療デバイスに連結された電極であって、前記患者の前記身体内への導電路を介して血管内ECG信号を検知する電極を介して、ECG波形のP波の少なくとも一部を検出する工程と、
前記P波部分の正の振幅の量と、前記P波部分の負の振幅の量と、前記P波部分の電気エネルギの量と、のうちの、少なくとも1つを計算する工程と、
前記P波部分の前記正の振幅および前記負の振幅のうちの少なくとも一方の前記計算された量に基づいて、前記留置医療デバイスの一部分の位置を決定する工程と
を備える、位置を特定するための方法。
【請求項26】
請求項25に記載の位置を特定するための方法であって、
前記P波部分の正の振幅の前記量と、前記P波部分の負の振幅の前記量と、のうちの、少なくとも一方を計算する工程は、更に、前記P波部分の正の振幅の前記量と、前記P波部分の負の振幅の前記量と、のうちの、少なくとも一方の周波数を検出する工程を備える
位置を特定するための方法。
【請求項27】
患者の身体内の留置医療デバイスの位置を特定するための方法であって、
皮膚に配置された電極を介して皮膚ECG波形を検出する工程と、
前記医療デバイスに結合された電極であって、前記患者の前記身体内への導電路を介して血管内ECG信号を検知する電極を介して、血管内ECG波形を検出する工程と、
前記皮膚ECG波形および前記血管内ECG波形の現在の図を第1ウィンドウに表示する工程と、
前記皮膚ECG波形および前記血管内ECG波形の過去の図を第2ウィンドウに表示する工程と
を備える、位置を特定するための方法。
【請求項28】
請求項27に記載の位置を特定するための方法であって、
前記皮膚ECG波形および前記血管内波形は、時間が同期した態様で表示され、
前記第1ウィンドウおよび前記第2ウィンドウは、単一のユーザインタフェースに含まれる
位置を特定するための方法。
【請求項29】
請求項27に記載の位置を特定するための方法であって、
前記血管内ECG信号を検知する前記電極は、前記患者の血管系内の前記医療デバイスに含まれる
位置を特定するための方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図18D】
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【図18E】
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【図18F】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図20D】
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【図20E】
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【図20F】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図22D】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図24D】
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【図24E】
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【図24F】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26】
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【図27】
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【公表番号】特表2013−518676(P2013−518676A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552060(P2012−552060)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2011/023497
【国際公開番号】WO2011/097312
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(591018693)シー・アール・バード・インコーポレーテッド (106)
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【Fターム(参考)】