カテーテル装置及び同カテーテル装置を備えるシステム
【課題】体内の標的領域の温度を変更させるために、体液を用いてその場での熱交換が可能なカテーテル装置及び同カテーテル装置を含むシステムを提供すること。
【解決手段】 カテーテル装置420は、細長い可撓性カテーテルと、少なくとも1つの流体管腔と、同カテーテル上に配置される熱交換器440と、同カテーテルのセグメントの周囲に形成された体液誘導スリーブ422と、を備える。同カテーテル装置は体内の標的領域の温度を、体液を用いてその場にて変更可能である。
【解決手段】 カテーテル装置420は、細長い可撓性カテーテルと、少なくとも1つの流体管腔と、同カテーテル上に配置される熱交換器440と、同カテーテルのセグメントの周囲に形成された体液誘導スリーブ422と、を備える。同カテーテル装置は体内の標的領域の温度を、体液を用いてその場にて変更可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、患者の体温を選択的に変更および調節することと、身体構造内の特定標的部位に送達される流体の温度を制御することに関する。詳しくは、本発明は、カテーテルを患者の血管に挿入して、血管内を流れる血液からまたは血液へと選択的に熱を伝達することにより、低体温症または高体温症を治療または誘発する方法および装置と、流体が患者内に存在する間に、標的位置へ送達される同流体の温度を変化させる方法および装置とに関する。
【0002】
本発明はさらに、全身の温度と脳を始めとする体の選択標的部位の温度とを、選択的に変更および調節することに関する。詳細には、本発明は、伝熱カテーテルの伝熱部により脳の温度を下げて、局所的低体温症と温度調節とを提供する脳の領域に接触しているか、同領域内を循環しているか、同領域周囲を循環しているか、同領域に通じている流体を冷却する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
以下の特許出願は、1996年1月11日出願の出願番号第08/584,013号と、1996年12月19日出願の出願番号第08/769,931号との一部継続出願である。同第08/584,013号は、1993年2月10日出願のすでに放棄された出願番号第08/015,774の継続出願であって、かつ米国特許5,486,208として1996年1月23日に発行された、1994年10月18日出願の出願番号第08/324,853号の一部継続出願である。上記文献はすべて本願に参照として組み込まれる。
【0004】
通常の環境下では、人体の体温調節システムは、約37℃(98.6°F)という一定温度を維持している。環境への熱損失は、体内で産生される内部熱によって、正確に平衡を保たれている。
【0005】
低体温症は、一般に体芯温度が35℃以下であることを特徴とする、体温が異常に低い状態のことであり、低体温症は、その重傷度によってさらに臨床的に定義され得る。例えば、体心温度が32℃から35℃の範囲内では穏和な低体温症、30℃から32℃の範囲内では中程度の低体温症、24℃から30℃では重症の低体温症と記述され、24℃よりも低い体温は超低体温症を構成し得る。上記の範囲は、議論のための有効な基礎を提供し得るが、それらは絶対的なものではなく、定義は医学論文に示されているように大いに変化する。
【0006】
高体温症は、体温が異常に高い状態として定義され、高体温症は、高温の環境または周囲に曝されたり、精を出しすぎたり、または熱が出たりした結果起こり得る。体心温度は、熱などの症状により38℃から41℃の範囲となり、暴露および精の出しすぎの場合、多いに高くなり得る。低体温症と同様、高体温症は死に至る可能性がある危険な状態である。
【0007】
低体温症および高体温症はいずれも有害であると共に場合によっては治療を必要とするが、場合によっては、高体温症または低体温症は、特に低体温症は、治療上または他の点で利点があり、それゆえ意図的に誘発されることもある。例えば、心筋梗塞の硬化の場合や心臓の手術の際の心停止の期間により、脳が損傷を受けたり、他の神経が損傷を受けたりする可能性がある。低体温症は心血管手術の間の許容された神経保護手段として医療コミュニティにおいて認められており、したがって、患者は心血管手術の間、低体温症を誘発させた状態にしばしば維持される。その上、低体温症は、脳外科手術の間に神経保護手段として誘発されることもある。また低体温症は、例えば頭部外傷、脊髄外傷、脳卒中(卒中(stroke)と称されることもある)、脊髄手術、または動脈瘤の治療のように脳もしくは脊髄に対する血流を中断するか損ない得る手術や、神経保護が望ましい他の種類の手術を受ける患者にとって、他の状況でも有益であり得る。
【0008】
神経組織、つまり脳や脊髄を始めとする神経系のすべての組織は、虚血性心疾患または出血性心疾患、心停止を始めとする任意の理由による血液の欠乏、大脳内出血、および頭部外傷を含むがそれらに限定されない血管疾患の過程によって特に損傷を受けやすい。それらの各例において、脳組織に対する損傷は、虚血、圧力、浮腫、または他のプロセスによって生じ、この結果、脳の機能の喪失および永久的な神経学的欠損が起こり得る。脳の温度を下げることにより、グルタミン酸塩などの神経伝達物質の傷害後上昇の鈍化、脳の代謝速度の減少、細胞内カルシウムの減少、細胞内タンパク質合成阻害の防止、およびフリーラジカル形成の減少はもちろん、他の酵素カスケード、遺伝的応答さえも含めた、いくつかのメカニズムによる神経保護が与えられる。このように意図的に誘発した低体温症は、外科手術の際の脳や他の神経学的組織への損傷の一部を防止し得ると共に、または,卒中、脳内出血、および外傷の結果としての脳や他の神経学的組織への損傷の一部を防止し得る。
【0009】
特に卒中の治療では、意図的に誘発した低体温症を治療上利用し得る。卒中(脳卒中と称されることもある)は特定の脳の領域内の血管または同領域に通じる血管の遮断(虚血性卒中)または破裂(出血性卒中)に起因して起こる重度に衰弱した複雑な疾患である。卒中の間、脳細胞は酸素欠乏によって損傷を受けるか、圧力の増加によって損傷を受ける。そのような現象は、最終的には脳組織の死や壊死に至り得る。一般に、卒中の治療のための介入における少なくとも1つの目標は、脳組織の機能をできるだけ多く維持することにある。しかしながら、現在の卒中に対する治療は、本質的に主として支持的なものである。例えば血塊溶解薬のような新しい治療薬を利用できるが、それらは虚血性卒中の治療にしか適していないことがあり、脳内出血に関する副作用を避けるために、初期卒中症状のうちの短時間(数時間内)に一般に使用しなければならない。実際、患者は卒中を発症した後数時間経たないと医療施設に到着しないことが多いため、この時間領域で卒中を治療することは困難である。その結果、卒中のほとんどは医学的治療では積極的に治療されない。上記時間領域を延長するための治療や、脳細胞が死なないように保護する治療法は、患者のケアに大きな影響を及ぼし得る。
【0010】
虚血に関する実験的研究によって、卒中または虚血性傷害の最中かそのすぐ後に低体温症処理すると、動物における梗塞した脳組織の体積が減少することが示されている。それゆえ、卒中を患っているか最近患った患者に低体温症を適用することは有効であり得ると考えられている。
【0011】
低体温症が神経保護手段として認容されているにもかかわらず、低体温症は外科的設定の他では広くは使用されていない。また、現行の実施のほとんどは、全身性の治療によって全身低体温症を誘発することにより、低体温症を脳に提供することを意図している。しかしながら、全身低体温症は多くの困難さを呈示し、全身麻酔下にない患者に実施するのは厄介である。患者の全身の温度を下げるには、かなりの長い時間がかかるだけでなく、心不整脈、血液凝固の問題、感染への罹患率の増大、および顕著な震えなどの不快感の問題を始めとする、心身に有害な低体温症の影響を患者が受ける。
【0012】
例えば正常体温(通常37℃)を維持するための体温の調節は、しばしば好ましい。例えば、全身麻酔下の患者では、体の正常体温を調節する機構が完全に機能していない可能性があり、麻酔医は患者の体温を人為的に調節する必要があり得る。同様に患者は、例えば大手術の間に大量の熱を環境へと失ってしまう可能性があり、助けを受けていない患者の体ではその熱の損失を補うのに十分な熱を発生させることができない可能性がある。例えば正常体温維持用の熱を加えることによる、体温を調節する装置および方法が望ましい。
【0013】
特に外科的設定において、血液または他の流体を患者の体外で加熱または冷却してから、体または体内の標的部位を加熱または冷却するために体内に導入するということが時として行われる。しかしながら、患者の体外で流体を加熱または冷却することは、煩雑であると共に精巧な装置を必要とする。例えば、外科手術において、患者の温度はバイパス機械によって調節し得るが、そのバイパス機械で体の外において大量の患者の血液を除去し、加熱または冷却し、患者の血流に再び導入する。この処置の特定用途の1つは、心臓の外科手術の間にしばしば誘発される全身低体温症である。他の例には、神経外科手術や、大動脈または他の血管の外科手術の間に誘発される低体温症が含まれる。
【0014】
バイパス機械などの低体温症を誘発するための外部処置の使用は、大量の患者の血液を長期間ポンプで汲み出す極めて侵襲的な処置である。血液を外部に汲み出すことは、血液にとって有害であり、血液を連続して長期間(例えば1または2時間よりも長い間)患者に汲み入れることは、通常避けられる。さらに、そのような処置は、例えばヘパリンにより卒中患者で別の不都合な結果を示し得る血液凝固を防ぐなどの、患者の全身性治療に必要とされ得る。
【0015】
ポンプによる外部への出し入れを要しない、患者の血液に熱を加えるか患者から熱を除去する手段が、提案されている。例えば、低体温症または高体温症を患っている患者の治療用に開発されたある特定のカテーテル構造がギンズバーグ(Ginsburg)に付与された特許文献1に記載されている。同特許の開示全体は参照により本願に組み込まれる。同特許は、本願が優先権を主張している前述出願のうちの1つから発行された。同特許に開示されたカテーテルは、血管と、加熱または冷却されたカテーテルの一部とに挿入され、患者の血に熱を伝えることにより、患者の体温全体に影響を及ぼす。そのような装置および方法は、血液のポンプによる外部への出し入れに付随する問題を回避し得るが、体全体が低体温症になった時に生じる問題を排除しない。
【0016】
脳の局所的低体温症を達成するための試みがなされており、それには、例えば頭部を冷却したヘルメットまたは覆いに設置する試みや、さらには頭部の局所に冷たい溶液を注入する試みがある。頭部の表面を直接冷却することにより脳を冷却する試みは、頭蓋の隔離的性質のために脳の中心温度を有効に下げることが困難であったり、頭部表面が冷却された場合に、脳自体に十分な伝熱循環を血流が提供することができないことがあったりするという要因から、実際的でないか、効果がないことが判明している。患者、特に全身麻酔下にない患者は、頭部が冷たい溶液に浸されたり直接曝されたりするのに耐えたり、頭部表面が冷却されたりするのに耐えることが困難であると感じるかもしれない。
【0017】
内部での熱付加または冷却による、標的位置への熱の伝達または標的位置からの熱の伝達を促進する装置は、有利である。バルーンカテーテルで特定組織と直接接触させることにより熱を伝えることが、当該技術分野において周知である。例えば、スピアーズ(Spears)に付与された特許文献2では、加熱されたバルーンが、分裂した組織を融合させるために、同バルーンの表面から、経皮的経管冠動脈形成術(PTCA)の間に拡張された動脈壁に、直接熱を加えることが記載されている。しかしながら、この装置は、問題の血管壁と大いに加熱されたバルーン表面との間の直接的な接触により作動していた。
【0018】
バルーン内を通過する伝熱媒体の連続流によって進行中の伝熱バルーンとして機能し得るバルーンも示されている。例えば、サーブ(Saab)に付与された特許文献3では、隣接組織への伝熱調節用にバルーン内に伝熱液体の連続流を維持するために、同心の流入および流出管腔の各々が伝熱バルーン内で終端する。
【0019】
タヘリ(Taheri)に付与された特許文献4は、加熱された塩類溶液などの加熱された流体が、脈打つバルーンの中を通って循環している、バルーンを開示している。伝熱液体がバルーンを通過して流れる時に同液体からの熱が血液に与えられて、患者の低体温症が治療され得る。影響を受ける血液の流れは、通常一定方向に誘導されることもなく、標的部位の温度がタハリ(Tahari)の加熱バルーンによって変更されるとは、開示されていない。血管を遮断しているバルーンの基端側から先端側へと血液を流す通路を提供するための、PTCAに使用されるバルーンなどのバルーンの形態も示されている。例えば、そのような自動潅流バルーン血管形成術用カテーテルが、サホタ(Sahota)に付与された特許文献5に示されており、血管形成術での使用について論じられているサーブ(Saab)に付与された特許文献6に示された複数管腔バルーンは、バルーンを膨張させて血管形成術のための圧力を血管壁および他の完全に遮断された血管通路に対して加えるようにした時に、バルーン血管形成用カテーテルの基端側から先端側へ血液が潅流するように構成された、複数管腔バルーンカテーテルを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第5,486,208号明細書
【特許文献2】米国特許第5,019,075号明細書
【特許文献3】米国特許第5,624,392号明細書
【特許文献4】米国特許第5,269,758号明細書
【特許文献5】米国特許第4,581,017号明細書
【特許文献6】米国特許第5,342,301号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
体内で血液などの液体を加熱または冷却できると共に、その液体を加熱または冷却した後で、標的位置へ誘導することができる装置を考案することが望ましい。患者自身の心臓のみをポンプとして使用して、同液体を所望位置に誘導することができる装置が考案されれば、特に有利である。また、患者の体の標的部位に、同標的部位の温度に影響を及ぼすのに十分な長さの間、加熱または冷却された血液を誘導する方法が考案されれば、それもやはり有利である。
【0022】
低体温症の誘発による、組織(特に神経組織)を保護するための患者の治療方法が望ましい。特的標的組織に誘導された体液をその場で(in situ)冷却することによる、特的標的組織での低体温症の誘発による同特定標的組織の保護は、特に有利である。
【0023】
簡単かつ予測可能な方法でそのような装置を制御するためのシステムもまた望ましい。そのようなシステムが、患者の標的部位の温度に予測可能かつ選択的に影響を与える装置を制御するための患者から得られたフィードバックデータと関連させて、同装置を制御できれば、特に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上述の目的を解決するために、請求項1に記載の発明は、哺乳動物患者の解剖学的構造内に挿入可能なカテーテル装置であって、同解剖学的構造を通って体液は患者の標的領域まで流れることが可能であり、同カテーテル装置は標的領域の温度を変更させるために、体液を用いてその場での熱交換を果たすように機能し、同カテーテル装置は、基端および先端を備えた細長い可撓性カテーテルと、同可撓性カテーテルの全長はその基端と先端との距離として定義されることと、同熱交換流体がその内部を循環可能な少なくとも1つの流体管腔と、同カテーテル上の第1位置に配置される熱交換器と、同熱交換器は、熱交換器と熱交換すべく近接させた状態で流れる体液と熱交換器内を通って循環する熱交換流体との間で、熱を交換するように機能することと、同第1位置は同カテーテルの全長よりも短く延びることと、同熱交換器の少なくとも一部が配置された第1位置を含めたカテーテルのセグメント周囲に形成された体液誘導スリーブと、同体液誘導スリーブは、体液誘導スリーブとカテーテルとの間に体液が流れるスペースを形成することと、体液誘導スリーブは熱交換器よりも基端側に配置された体液流入口と、熱交換器の少なくとも一部よりも先端側に配置された体液流出口と、を有し、体液は、体液流入口を通り流れスペースに入り、熱交換器の少なくとも一部と熱交換すべく近接した状態で流れスペースの中を流れ、次に、体液流出口から出て、患者の身体の前記標的領域と流体の行き来が可能に連通している通路に至ることと、を備えたカテーテル装置、を提供する。
【0025】
請求項2に記載の発明は、患者の身体の標的領域の温度を調節するための請求項1に記載のカテーテル装置において、体液は第1直径を有する第1解剖学的導管を通って標的領域に流れ、第1解剖学的導管は、第1直径よりも大きい第2直径を有する第2解剖学的導管と、接続かつ流体の行き来が可能に連通され、体液誘導スリーブは先端部分と基端部分とを有し、先端部分には体液流出口が配置され、基端部分には体液流入口が配置され、先端部分は、第1解剖学的導管の中を進むと同時に基端部分は第2解剖学的導管の内部に配置されたまま残るような大きさに形成され、第2解剖学的導管から来た体液は、体液流入口を通り流れスペースに入り、熱交換器と熱交換すべく近接した状態で流れスペースの中を流れ、次に、体液流出口から出て、第1解剖学的導管に入り、そして患者の身体の標的領域に至る、ことをその要旨とする。
【0026】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のカテーテル装置において、体液誘導スリーブの先端部分の断面の直径が体液誘導スリーブの基端部分の断面の直径よりも小さい、ことをその要旨とする。
【0027】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のカテーテル装置において、先端部分は、先端部分に形成された肩部を有し、肩部は解剖学的導管内でぴったり合う封鎖を形成する大きさおよび形状にされ、それによって第2解剖学的導管から第1解剖学的導管への体液のほぼすべての流れが、体液誘導スリーブを通って流れるようにされる、ことをその要旨とする。
【0028】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のカテーテル装置において、熱交換器は、熱交換流体がその内部を循環する少なくとも1つのバルーンを有し、熱交換フィンは複数のローブを備える、ことをその要旨とする。
【0029】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載のカテーテル装置において、少なくとも1つの熱交換フィンは、少なくとも1つの外側に延びる長手方向フィンを備える、ことをその要旨とする。
【0030】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載のカテーテル装置において、少なくとも1つの熱交換フィンは、少なくとも1つの外側に延びる環状フィンを備える、ことをその要旨とする。
【0031】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載のカテーテル装置において、少なくとも1つの熱交換フィンは、少なくとも1つの外側に延びるらせん状フィンを備える、ことをその要旨とする。
【0032】
請求項9に記載の発明は、請求項1に記載のカテーテル装置において、少なくとも1つの熱交換フィンは、複数の外側に延びる突起を備える、ことをその要旨とする。
請求項10に記載の発明は、請求項1に記載のカテーテル装置において、カテーテルは患者の体内に挿入される挿入部と作業管腔とをさらに備え、挿入部は先端から基端より短い地点まで延び、作業管腔は挿入部の少なくとも一部を通って延びる、ことをその要旨とする。
【0033】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載のカテーテル装置を備えたシステムであって、作業管腔を通過可能な大きさに形成されたガイドワイヤとさらに組み合わされたシステムを提供する。
【0034】
請求項12に記載の発明は、請求項10に記載のカテーテル装置を備えたシステムであって、作業管腔内に薬剤を注入する装置とさらに組み合わされたシステムを提供する。
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載のシステムにおいて、注入装置が、血栓溶解剤、抗凝固剤、神経保護剤、バルビツール剤、抗発作剤、酸素化潅流液、血管拡張剤、血管痙攣防止剤、血小板活性化防止剤、および血小板凝着防止剤、から成る薬剤の群から選択される薬剤を収容する、ことをその要旨とする。
【0035】
請求項14に記載の発明は、請求項10に記載のカテーテル装置を備えたシステムであって、作業管腔を通過可能な診断用プローブとさらに組み合わされたシステムを提供する。
【0036】
請求項15に記載の発明は、請求項14に記載のシステムにおいて、診断用プローブは、血管造影カテーテル、温度センサ、圧力センサ、血液ガスセンサ、および酵素センサ、から成る群より選択される、ことをその要旨とする。
【0037】
請求項16に記載の発明は、請求項10に記載のカテーテル装置を備えたシステムであって、作業管腔にX線撮影用の造影剤を注入する装置、及び作業管腔に注入されたX線撮影用の造影剤をイメージングするイメージング装置、とさらに組み合わされたシステムを提供する。
【0038】
請求項17に記載の発明は、請求項10に記載のカテーテル装置を備えたシステムであって、作業管腔を通過可能な治療装置とさらに組み合わされたシステムを提供する。
請求項18に記載の発明は、請求項17に記載のシステムにおいて、治療装置は、血管形成術カテーテル、塞栓摘出用カテーテル、閉塞部材送達カテーテル、塞栓部材送達カテーテル、電気燒灼装置、およびマイクロカテーテル、から成る治療装置の群から選択される、ことをその要旨とする。
【0039】
請求項19に記載の発明は、請求項1に記載のカテーテル装置において、体液流入口には弁が設けられ、弁は開放状態と閉鎖状態との間で作動可能であり、開放状態では体液の流れが体液流入口を通って体液誘導スリーブの中に入り、閉鎖状態では体液の流れが体液流入口を通って体液誘導スリーブから外へ出るのを防止する、ことをその要旨とする。
【0040】
請求項20に記載の発明は、請求項1に記載のカテーテル装置において、カテーテルは先端シャフト部分を有し、先端シャフト部分は体液誘導スリーブよりも先端側で体液誘導スリーブ内部から延び、先端シャフト部分はその内部を通る中央管腔を備え、中央管腔は流れスペースと第1位置で流体の行き来が可能に連通し、通路と連通し、標的領域と第2位置で流体の行き来が可能に連通する、ことをその要旨とする。
【0041】
請求項21に記載の発明は、請求項20に記載のカテーテル装置において、体液誘導スリーブは第1位置よりも先端側の先端シャフト周囲で封鎖される、ことをその要旨とする。
【0042】
請求項22に記載の発明は、その場での熱交換を果たすために、哺乳動物患者の身体の流体含有部分に配置されるカテーテル装置であって、同カテーテル装置は、基端および先端を備えた細長い可撓性カテーテルと、可撓性カテーテルの全長はその基端と先端との距離として定義されることと、可撓性カテーテルは患者に挿入される挿入部を備え、挿入部は先端から基端より短い地点まで延びることと、カテーテル上の第1位置に配置される熱交換器と、熱交換器は、熱交換器と熱交換すべく近接させた状態にある体液と熱交換器内を通って循環する熱交換流体との間で、熱を交換するように機能することと、第1位置はカテーテルの全長よりも短く延び、熱交換器は湾曲され、その曲率の外径に沿った外表面を有すると共にその曲率の内径に沿った内表面を有し、外表面および内表面は実質的に異なる熱透過率を有することと、を備えたカテーテル装置、を提供する。
【0043】
請求項23に記載の発明は、請求項22に記載のカテーテル装置において、上側表面は下側表面よりも熱透過率が実質的に大きい、ことをその要旨とする。
請求項24に記載の発明は、請求項23に記載のカテーテル装置において、頭部に流れてくる血液が上側表面と熱を伝えるべく近接した状態で通過するように、ヒト患者の大動脈の湾曲に沿って配置される大きさおよび形状に形成される、ことをその要旨とする。
【0044】
請求項25に記載の発明は、患者の温度に制御可能に作用するシステムであって、同システムは、基端及び先端を備えた細長い可撓性カテーテルと、熱交換器と、を有するカテーテル装置と、熱交換器は、同熱交換器と熱交換すべく近接させた状態にある体液と同熱交換器内を通って循環する熱交換流体との間で、熱を交換するように機能することと、患者からのデータを検知する複数のセンサと、センサの少なくとも一つからのデータは体温を含むことと、センサの少なくとも一つからのデータに応答し、目標とする体温を達成及び維持するために、センサからの信号を受け取り、カテーテル装置の運転を制御する制御装置と、を備えたシステム、を提供する。
【0045】
請求項26に記載の発明は、請求項25に記載のシステムにおいて熱交換ユニットをさらに備え、熱交換ユニットは熱交換流体と熱を交換するように機能する、ことをその要旨とする。
【0046】
請求項27に記載の発明は、請求項26に記載のシステムにおいて、熱交換ユニットは固体熱電冷却器からなる、ことをその要旨とする。
請求項28に記載の発明は、請求項26に記載のシステムにおいて、目標パラメーターが温度であり、センサが温度センサであり、かつ制御装置が熱交換ユニットを作動させるように機能し得る、ことをその要旨とする。
【0047】
請求項29に記載の発明は、請求項25に記載のシステムにおいて複数のカテーテル装置をさらに備え、制御装置がカテーテル装置の各々を制御するように機能し得る、ことをその要旨とする。
【0048】
請求項30に記載の発明は、請求項29に記載のシステムにおいて、少なくとも1つのカテーテル装置が第1位置において前記体液に熱を与え、少なくとも1つのカテーテル装置が第2位置において前記体液から熱を奪う、ことをその要旨とする。
【0049】
請求項31に記載の発明は、患者の温度に制御可能に作用するシステムであって、同システムは、各々が基端および先端を備えた細長い可撓性カテーテルと、カテーテル上の第1位置に配置された熱交換器と、を有する複数のカテーテル装置と、可撓性カテーテルの全長はその基端と先端との距離として定義され、可撓性カテーテルは患者の体内に挿入される挿入部を有し、挿入部は先端から基端より短い地点まで延び、熱交換器は、熱交換器の表面から延びる複数の熱交換フィンを有し、熱交換フィンは熱交換を高めるための増大された表面積を有し、熱交換器は、熱交換器と熱交換すべく近接させた状態にある体液と熱交換器内を通って循環する熱交換流体との間で、熱を交換するように機能することと、第1位置は前記カテーテルの全長よりも短く延びることと、各々が患者からのデータを検知し、そのデータに応答して信号を生じる、複数のセンサと、オペレーターが目標パラメーターを特定し得る手動入力装置と、センサからの信号および目標パラメーターを受け取り、信号に応答し、かつ目標パラメーターに関連してカテーテル装置の各々の運転を制御する制御装置と、を備えたシステム、を提供する。
【0050】
請求項32に記載の発明は、請求項31に記載のシステムにおいて熱交換ユニットをさらに備え、熱交換ユニットが前記熱交換流体と熱を交換するように機能する、ことをその要旨とする。
【0051】
請求項33に記載の発明は、請求項32に記載のシステムにおいて、熱交換ユニットが固体熱電冷却器からなる、ことをその要旨とする。
請求項34に記載の発明は、請求項32に記載のシステムにおいて、目標パラメーターが温度であり、センサが温度センサからなり、かつ制御装置が熱交換ユニットを作動させるように機能し得る、ことをその要旨とする。
【0052】
請求項35に記載の発明は、請求項31に記載のシステムにおいて、少なくとも1つのカテーテル装置が第1位置において体液に熱を与え、少なくとも1つのカテーテル装置が第2位置において体液から熱を奪う、ことをその要旨とする。
【0053】
本発明は、熱交換するように近接して流れる血液または他の体液との間で熱を交換するように機能する同熱交換器を備えた細長い可撓性カテーテルを一般に有する熱交換カテーテル装置を提供する。本発明は、哺乳動物患者の体の特定領域(例えば、脳、脳の選択部分、脊髄、器官、腹腔内器官、脾臓、肝臓、心臓、心臓の一部、肺、腎臓、筋肉、腫瘍、外傷が生じた部位)を選択的に加熱または冷却するためのそのような熱交換カテーテル装置の使用方法に関する。
【0054】
本発明の装置によれば、i)基端と先端とを有する細長いカテーテルと、前記可撓性カテーテルの全長は、その基端からその先端までの距離として定義されることと、ii)熱交換流体が内部を循環可能な少なくとも1つの流体管腔と、iii)カテーテル上の第1位置に配置された、熱交換フィンを備えた熱交換器と、患者の外から延び、患者に挿入されるカテーテルの少なくとも一部を通る作業管腔と、を一般に備え得る熱交換カテーテル装置が提供される。熱交換器は、交換器と熱交換すべく近接させた血液とカテーテル内を通って循環する熱交換流体との間で、熱を交換するように機能する。熱交換器が配置される「第1位置」は、カテーテル全長よりも短く構成され、通常カテーテルの先端か先端付近にある。熱交換器は特に、内部に熱交換流体を循環させ得るバルーンまたは他の構造を備えうる。熱交換フィンは、熱交換が起こる効率を高めるためのバルーンの複数のローブであるか、表面積を増大させる突出部(例えば、外側に延びる突起、リブなど)であり得る。また、カテーテル装置のいくつかの実施形態において、熱交換器が配置された(かつ熱交換器より基端側へ一定距離延び得る)カテーテルの一部の周囲には体液誘導スリーブが形成され、熱交換器と熱交換すべく近接させた血液または他の体液を誘導し得る。そのような体液誘導スリーブは、利用し得る体液(例えば、血液)を、スリーブの基端が配置されている、ある解剖学的導管(例えば下行大動脈)から、スリーブの先端が配置されている第2の解剖学的導管(例えば、頸動脈)まで誘導するために使用することができる。スリーブは、スリーブの外側とおよび第2の解剖学的導管との間にぴったり合う封鎖を形成する肩部を形成するような大きさおよび形状にし得る。
【0055】
さらに、カテーテル装置は、(ガイドワイヤまたは塞栓摘出カテーテルなどの)装置や、または作業管腔に挿入される薬剤(血栓溶解剤またはバルビツール剤などの)と組み合わせて、設けられ得る。
【0056】
本発明のカテーテル装置は、絶縁面と伝熱面とを有する湾曲した熱交換バルーンをさらに備えてもよく、脳へ流れる血液が伝熱面を通ると共に体の他の領域に流れる血液が絶縁面を通るように配置され得る。
【0057】
最後に、本発明の他の態様は、温度などの体の状態を検知すると共に検知した体の状態に応答してカテーテルを制御する制御システムと組み合わせたカテーテル装置である。その制御は、患者の標的領域が予め選択した温度に達した時に熱交換器をオンオフ切換えたり、予め選択した温度から温度が外れた時に熱交換器を再び作動させたりするなどである。
【0058】
本発明の方法によれば、哺乳動物患者の体の選択領域の温度を調節または変更する方法が提供される。そのような方法は以下の工程を含む。
a.患者の体の解剖学的導管を通って選択領域まで体液が流れている患者の体の前記解剖学的導管内に、上述の特徴を有するカテーテル装置を挿入し、解剖学的導管を通って選択領域まで流れる体液が前記選択領域に達する前に熱交換器と熱交換すべく近接させた状態で通過するように、カテーテルを配置する工程
b.カテーテル装置の熱交換器を使用して、熱交換器と熱交換すべく近接させた状態で通過する体液の温度を変更し、続いて前記体液が患者の体の前記選択領域の温度を変更する工程。
【0059】
さらに本発明の方法によれば、脳(例えば、右総頸動脈、左総頸動脈、無名動脈、右内頸動脈、左内頸動脈など)に通じる血管内にカテーテル装置を配置し、同カテーテル装置を脳または脳の一部を冷却するために使用して、卒中または他の傷害(例えば、虚血の器官、低酸素症、出血、外傷など)の後の神経の損傷を抑止し得る。
【0060】
さらに本発明の方法によれば、選択した身体領域まで流れている体液(例えば、血液)を選択的に加熱または冷却し、続いてそのような体液を、同体液が選択身体領域から流れている時の元の温度かそれに近い温度に戻すために、上述の特徴を有する2つ以上のカテーテル装置が、患者の体内の異なる複数の部位に同時に配置される。これに関して、脳を潅流して脳卒中または他の傷害を受けた後の脳を冷却するために、ある熱交換カテーテル装置が動脈に配置され、血液が脳内を循環した後でその血液を再び温めるためか、患者の体の脈幹を流れている血液に熱を加えて冷却領域以外の位置で体を正常体温に維持するために、第2のカテーテルが下大静脈または他の適切な静脈に配置され得る。
【0061】
本発明の他の態様は、所定温度が標的組織で設定され得るか維持され得るように、体液を用いて熱交換を制御する方法を提供する。さらなる態様として、所定温度が標的組織に対して設定され(例えば脳に対して特定の低体温の温度が設定され)、別の温度が別の領域に対して選択され(例えば体芯温度は正常体温であり)、2つのカテーテルは両方の予め選択した温度を維持するために同時に制御される。
【0062】
本発明のさらなる態様および詳細は本明細書において以下に述べる好ましい実施形態の詳細な説明を読んで理解すれば、関連技術の当業者には明らかである。以下に開示した各実施形態は、本発明の任意の他の変形および態様の、単独か組み合わせたものとみなし得る。
【発明の効果】
【0063】
本発明によれば、体内の標的領域の温度を変更させるために、体液を用いてその場での熱交換が可能なカテーテル装置及び同カテーテル装置を含むシステムが提供された。更に、患者の標的部位の温度に予測可能かつ選択的に影響を与える装置を、同患者から得られたフィードバックデータと関連させて、制御可能なシステムが提供された。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】経皮的に患者の血管内に挿入された本発明のカテーテルを示す図。
【図2】加熱または冷却された流体がバルーンを通って流れ、バルーンがカテーテルの先端近くに増大された表面積を提供するカテーテルを示す図。
【図3】先端の抵抗加熱体と伝熱表面積をさらに増大させるための長手方向リブを有するバルーンとを備えたカテーテルを示す図。
【図4A】カテーテル本体の先端に長手方向フィンを有するカテーテルを示す図。
【図4B】カテーテル本体の先端に半径方向リブを有するカテーテルを示す図。
【図4C】カテーテルの先端に伝熱面積を増大させるためのらせん状フィンを有するカテーテルを示す図。
【図5】本発明の制御機構を説明するフローチャート。
【図6】図5の制御機構の影響下における標的組織の温度の略図。
【図7】ワイヤコイル抵抗加熱器および金属ホイル冷却体を用いる、患者の血流を選択的に加熱および冷却するための好ましいカテーテルを示す図。
【図8】患者の血管内に挿入された本発明のカテーテルの先端を示す図。
【図8A】温度変更領域を示す、A−A線に沿って切断された図8のカテーテルの断面図。
【図9】本発明の内部管腔を通過する流体を加熱または冷却するための典型的なカテーテルの側面図。
【図10】図9に示されているものと類似のカテーテルの先端のさらに詳細な図。
【図11】本発明の内部管腔を通過する流体を加熱するための代替カテーテルの側面図。
【図11A】A−A線に沿って切断された図11のカテーテルの側面図。
【図12】本発明の内部管腔内に体液を流入させるための複数の潅流オリフィスを有する、内部管腔を通過する流体を加熱または冷却するためのカテーテルの別の代替実施態様の側面図。
【図13】液体が外部から内部管腔内に注入されるときに、内部管腔内への体液の流入を防止するように閉鎖される複数のフラップを示す、図12に同じように示されているカテーテルの一部の破断側面図。
【図14】流体が外部から内部管腔内に注入されないときに、内部管腔内に体液を流入させるために開放しているフラップを示す、図13に同じように示されているカテーテルを示す図。
【図15】モニター装置、制御装置および複数の伝熱部を有する熱カテーテルを備え得る、患者に連結された伝熱カテーテルシステムの斜視図。
【図16】制御装置、使い捨て部品、再使用可能部品、熱交換バルーンカテーテルおよび種々のセンサを有する伝熱カテーテルの略斜視図。
【図17A】左総頸動脈内に配置された本発明の変形伝熱カテーテルの略斜視図。
【図17B】伝熱流体の循環を支持するためのバルーン伝熱部を有する、本発明の1つの態様によるフィン付き熱バルーンカテーテルの先端部の略斜視図。
【図17C】C−C線に沿って切断された図17Bに示されているカテーテルの略断面図。
【図17D】D−D線に沿って切断された図17Bに示されているカテーテルの略断面図。
【図17E】E−E線に沿って切断された図17Bに示されているカテーテルの略断面図。
【図18A】大動脈、無名動脈、および右総頸動脈内に配置された本発明の変形伝熱カテーテルの略斜視図。
【図18B】流体含有身体領域と連絡し得る開口部によって規定された血液誘導スリーブを用いて形成された、図18Aの伝熱カテーテルの詳細斜視図。
【図18C】C−C線に沿って切断された図18Bに示されているカテーテルの略断面図。
【図18D】D−D線に沿って切断された図18Bに示されているカテーテルの略断面図。
【図18E】E−E線に沿って切断された図18Bに示されているカテーテルの略断面図。
【図18F】F−F線に沿って切断された図18Bに示されているカテーテルの略断面図。
【図18G】G−G線に沿って切断された図18Bに示されているカテーテルの略断面図。
【図19】下行大動脈内には基端開口部を、左総頸動脈には先端開口部を有する血液誘導スリーブを有する、大動脈内に示されている伝熱カテーテルの略図。
【図20】大動脈および左総頸動脈内に配置されている、細長いシャフトと、らせん形フィンを有するテーパー付きカテーテル本体とを用いて形成された本発明の変形伝熱カテーテルの略斜視図。
【図21A】閉鎖性肩部と弁アセンブリとを用いて形成された別の変形熱カテーテルの略斜視図。
【図21B】図21Aに示されているタイプの熱カテーテルのための、閉鎖位置にある基端または先端弁を示す図。
【図21C】図21Aに示されているタイプの熱カテーテルのための、開放位置にある基端または先端弁を示す図。
【図21D】図21A〜Dに同じように示されているスリーブ弁の同期開放および閉鎖に対して測定された心拍周期と大動脈血流のグラフ。
【図22】大動脈領域に配置するように設計し得る、複数の伝熱領域を有する伝熱カテーテルの図。
【図23A】先端が冠状動脈口内に挿入された中央管腔への冷却血液用の入口を有する本発明の伝熱カテーテルの1つの変形の略斜視図。
【図23B】線B−Bに沿って切断された図29の断面図。
【図24A】フィンが膨脹可能なバルーンローブである、フィン付き熱バルーンカテーテルの略斜視図。
【図24B】図24AのB−B線に沿って切断された略断面図。
【図24C】図24AのC−C線に沿って切断された略断面図。
【図24D】図24AのD−D線に沿って切断された略断面図。
【図24E】図24AのE−E線に沿って切断された略断面図。
【図24F】図24AのF−F線に沿って切断された略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明は、血液などの体液をその場で(in situ)加熱または冷却し、加熱または冷却された体液を所望の位置に誘導することにより、局所および全身の体温を選択的に調節するための方法および装置を提供する。本発明に従い、例えば、フィン付きバルーンであり得る熱交換器を有するカテーテルを、患者の身体の流体含有部分、例えば、血管内に挿入する。熱交換器の上には血液誘導スリーブが取付けられており、このスリーブは、その(挿入位置に最も近い)基端と、その(カテーテルに沿って挿入位置から最も遠い)先端がどちらも開口している。このスリーブの先端は、スリーブの基端から入る血液などの流体が熱交換器を通って伝熱体に近接して流れるように配置する。熱交換するための近接では、有効な熱交換を生じるのに十分な近接が必要である。熱交換するための近接は、血液の化学的物理的組成、熱交換表面を通る流れの速度、熱交換器を通過する血流のパターン(層状流、乱流など)、熱交換表面と血液との温度差、熱交換表面の材料、ならびに熱交換表面と血液との間の近接などの要因によって左右される。流体は、加熱または冷却された血液が、所望の位置、例えば脳などの標的組織の上流に排出されるようにスリーブの先端から出る。標的組織へ向かって流れる流体を十分な長さの時間加熱または冷却し続けることにより、標的組織の温度が変更される。
【0066】
さらに、低体温症または高体温症を誘発させる場合、本発明は、熱交換カテーテルを制御することにより、標的組織を所望の温度に加熱または冷却し、その温度を維持するように準備する。同様に、患者の体内の異なる位置で異なる熱交換カテーテルを制御することにより、異なる複数の領域を互いに異なる複数の温度に調節可能に維持し得る。さらに、別個の熱交換カテーテル、または同じ熱交換カテーテル上に位置する追加の熱交換領域を使って、標的組織の温度を、所望温度、例えば、中程度の低体温に維持しながら、体芯温度をモニターして、異なる温度、例えば、正常温度(37℃)またはほぼ正常温度に維持し得る。
【0067】
図1は、熱交換カテーテル10の先端部15を示している。カテーテルは、患者の皮膚を介して血管BV内に挿入し得る。図1には、血管内を流れる血流が1組の流れ矢印Fで示されている。カテーテルは、比較的大きな血管、例えば、大腿動脈または静脈、頚静脈内に挿入し得る。というのは、これらの血管は、容易に接近可能であり、安全かつ都合のよい挿入部位を提供すると共に、比較的大量の血液が流れているという多くの利点を提供するからである。一般に、血流速度が大きいと、患者へまたは患者からの伝熱がより速やかになる。例えば、頚静脈は、約22フレンチ、すなわち7mmより少し大きい(1フレンチ=1mm/π)直径を有し得る。このサイズの血管内に挿入するのに適したカテーテルは、血管系の他の領域に挿入するためのカテーテルと比べてかなり大きく作成し得る。アテローム切除用またはバルーン血管形成術用カテーテルは、冠状動脈および類似の血管から閉塞物を除去するのに用いられることがある。これらのカテーテルは、一般に、2〜8フレンチの範囲の外径を有している。しかし、本発明のこの態様に従って形成されるカテーテルは、約10フレンチ以上の外径を有し得るが、この寸法は、本発明の基本原理から逸脱しない限りで大幅に変更し得ることは明らかである。
【0068】
カテーテルは、医療専門家には周知の方法である経皮的セルジンガー法を用いて穿刺部位に入れられる程度に小さくし得る。血管の外傷を回避するために、通常、カテーテルは、挿入時の直径が12フレンチより小さいであろう。しかし一旦血管内に入ったら、カテーテルの先端すなわち作業端は、血流を過度に妨げない限り、どのようなサイズに拡大してもよい。さらに、大腿動脈および静脈ならびに頚静脈は、比較的長くかつ真直ぐな血管である。そのために、かなり大きな長さの温度調節領域を有するカテーテルを都合よく挿入することができる。勿論、これは、伝熱領域の長さが増大すれば、所与の直径を有するカテーテルが所与の温度でより多くの熱を伝達し得るという点で有利である。上述の血管内にカテーテルを挿入する方法は医療専門家の間では周知である。本発明の方法は恐らく病院で最も普通に用いられるであろうが、処置は手術室で実施する必要はない。装置および手順は非常に簡単なので、場合によって、救急車内または屋外でも、カテーテルを挿入したり、処置を開始したりし得る。
【0069】
図2は、カテーテルの先端へまたは先端から熱を伝達するためのさらに別の手段を示している。この実施態様では、カテーテルのシャフト20は内部を貫通する2つの管腔を有している。流体は、カテーテルの基端から流入管腔60を経て伝熱領域62を通って流れ、流出管腔64を通って出る。流入管腔60を介して加熱または冷却された流体を供給することにより、熱は、伝熱領域62に伝熱近接して流れる患者の血液流へまたは血液流から伝達され得る。伝熱領域62はバルーン70の形態であってよい。バルーンの使用は、伝熱を生じ得る表面積を増大させた、いくつかの実施態様においては有利であろう。バルーンの膨脹は、流体が流入管腔60および流出管腔64を通って流れるときの流体の圧力差によって維持される。バルーンは、血管を流れる血液流を過度に妨げないように血管の内径より幾分小さい直径に膨脹させる必要がある。
【0070】
図3は、内部抵抗加熱体28と、膨脹状態で示されているバルーン70とを有するカテーテルを示している。バルーンの表面は、伝熱に利用可能な表面積を増大させる構造、すなわち、フィンを備えている。この実施態様では、膨脹したバルーンにより与えられる、増大される表面積は、バルーン表面上の1組の長手方向フィン75の存在により増大される。図3および図4A〜Cに示されているように、長手方向フィン75、半径方向リブ77、または1個以上のらせん状フィン79をカテーテル本体20上に直接配置し得る。長手方向リブは、他の形状のものより血管を通る血流を制限する傾向が少ないので有利であろう。実際、これらのリブにより、バルーンが膨脹しているときであってもリブ間に通路が維持され得るので、血管を流れる血流が実質上遮断されないことが保証される。抵抗加熱体を用いるカテーテル上にバルーンを加えることにより、バルーンを満たす流体中に電流を流す設計が可能になる。
【0071】
本発明のカテーテルは、カテーテルと血管を流れる血液との間の伝熱速度を最適化するように設計かつ形成し得る。伝熱を最大にするためには表面積が大きいことが望ましいが、カテーテルは、血管を通る流れに対する制限を最小限にするのに適切な形状およびサイズにする必要がある。さらに、カテーテルの温度は、血液内の望ましくない化学変化を防止するように慎重に制御しなければならない。血液が中程度の高温によってさえ容易に変性するので、このことは血液に熱を加えるときには特に重要である。血液を加熱するためのカテーテルの外面温度は、一般に、約42〜43℃を超えてはならない。重度の低体温症で始める患者においては、表面温度が37〜42℃に制御されるカテーテルにより、1時間当たり約1〜2℃の体芯加熱速度が提供されると推定される。この推定値は、血管を通る血流の速度、患者の初期体温、熱を伝達するカテーテルの外表面積などを含めた多くの要因によって大いに左右される。達成される実際の速度は、上記推定値とは実質的に異なり得る。上記推定値は、カテーテルから患者の身体に伝達される電力レベル、従ってシステムが必要とする電源の大きさに関する概算推定値を得るための出発点を提供する。システムに熱を供給したりシステムから熱を除去したりするためには、選択された具体的な送電手段にかかわらず、抵抗加熱コイル、レーザーおよび拡散先端、直接伝達または流体循環、適切な電源が必要であろう。
【0072】
患者の身体から出たり入ったりする熱の合計は
ΔH=Hc+Hi−He
(式中、ΔHは、伝達されたすべての熱の合計、Hcはカテーテルから患者に伝達された熱、Hiは患者の体内で生じた熱、Heは患者から環境に対して失われた熱である)
として表すことができる。通常、健康な患者の場合におけるように、体内温度調節系が環境に対して失われた熱を丁度埋め合わせるだけの熱を生成するとすれば、式は簡単になる。
【0073】
ΔH=Hc
上記式は、経時的な患者の体内温度の変化に関しては以下のように表すことができる。
mc(ΔT/Δt)=(ΔHc/Δt)
(式中、mは患者の体重、cは患者の身体の比熱、(ΔT/Δt)は患者の体内温度の変化の時間速度、(ΔHc/Δt)はカテーテルから患者への熱送出の時間速度である)。75kgの体重と4186ジュール/℃−kgの比熱を有する患者を推定すると(人体の比熱と水の比熱が同じであると想定すると、実際の値は幾分異なる)、1時間(3600秒)当たり1℃の加熱速度では、約87ワット(1ワット=1ジュール/秒)の速度で患者に熱を伝達するカテーテルが必要となるであろう。しかし、この推定は、本発明のカテーテルと一緒に用いられる電源の望ましいサイズについての推定値としては低すぎるであろう。これは多くの理由で予測可能である。先ず、便宜上、患者の体内系が環境に対して失われた量に等しい熱量を生成すると推定した。低体温症患者の場合、これは明らかに該当しない。殆ど自明のこととして、偶発症候性低体温症は、ヒトの体内での熱生成能力が環境に対して失われる熱に圧倒されたときに発生する。カテーテルはこの差を埋め合わせなければならず、したがって、要求される電力レベルはその理由だけでも大きい必要がある。あるいは、低体温症を誘発させるためには、標的組織の温度を低下させるのに十分な熱を血液から除去するか、または全身低体温症の場合には、身体が生成する熱より多い熱を除去する必要があろう。熱を下げる場合、熱交換器の冷却に要する電力は、装置から環境への過剰な熱の放散を含めた冷却装置の効率に大いに依存する。
【0074】
上記推定値は、電源と利用される加熱手段との間の電力損失を考慮していない。そのような損失には、電源と抵抗加熱体との間の送電線、固有の非能率およびレーザーおよび拡散先端を有するシステムにおける他の損失、伝熱シャフトまたは流体循環管腔に沿った熱損失などが含まれ得る。実際に発生するそのような損失はいずれも追加の給電容量によって補う必要がある。さらに、使用電源の大きさを制限することによって本発明のカテーテルの性能を制限することは望ましくない。その代わり、実際に必要とされる量よりかなり過剰な電力を供給し、次いで、その電力をカテーテル自体の実測温度に従って制御し得る電源を使用することが好ましい。先に述べたように、これは、カテーテル本体内に高感度の温度センサを含めることによって容易に達成できる。しかし、上記の計算は、本発明のカテーテルに使用するための電源の大きさを定めるのに有用な予期される下界推定値として用いることができる。
【0075】
代替推定値を、本明細書に記載されている種々の実施態様の予測性能と、公知の外部血液加熱装置に対する電力要件とを比較して計算することができる。そのような外部加熱装置は、一般に1000〜1500ワット、ときにはそれ以上のオーダーの電源を必要とする。本発明に従って形成された装置は、それよりもかなり低い電力しか必要としない。先ず、本発明は、血液を循環させるための外部ポンプを必要としない。この機能は、患者自身の心臓によって提供される。したがって、そのようなポンプを駆動する電力がいらない。次に、本発明は、外部血液加熱システムよりもかなり簡単である。公知システムでは、患者から加熱体を経てまた患者に戻るという比較的長い経路にわたって血液を循環させる。このような長い経路にわたると、本明細書に記載の装置の場合よりも多くの熱が失われるであろう。したがって、公知タイプの外部血液循環および加熱システムが必要とする電力は、本発明のシステムが必要とする電力の予測される上限の概算推定値として用いることができる。そのようなシステムは、上記2つの概算推定値の間の容量を有する電源を備えているのが最も適当である。したがって、適当な電源は、100〜1500ワットの範囲、恐らく300〜1000ワットの範囲のピーク電力を供給し得ると予想される。規定した範囲は、適当なピーク電力容量の推定値である。電源は、最も一般的には、カテーテル本体内の温度センサに応答してサーモスタット制御される。したがって、患者に伝達される実際の有効電力は通常、システムの電源のピーク電力容量よりはるかに小さい。
【0076】
上記の計算は、主として血液を加熱するためのシステムに関する。血液を冷却するためのカテーテルに関しては、温度および電力の束縛は極端なものであってはならない。過度に急速に冷却することで血液を凍結させたり患者にショックを誘発させたりすることのないよう、回避するように注意しなければならない。血液の主成分は、実質的には、多くの懸濁および溶解された物質を含む水である。そのようなものとして、その凝固点は0℃を幾分下回る。しかし、高体温症患者の血液を冷却するか、または人為的低体温症を誘発させるように適合されたカテーテルは、通常、そのように低い温度では操作されないであろう。そのようなカテーテルの外表面は、約1〜20℃の範囲に保持し得るが、実際の温度は、約0℃と患者のそのときの体温との間で変動し得ると現在のところ予想される。さらに、例えば、かなりの長さを有する熱交換バルーンの場合、血液に熱を放散するときに、バルーンの表面温度は、その長さに沿ってさまざまであり得る。バルーンは、その長さに沿って12℃以上もの温度変化があり得る。
【0077】
本発明の別の態様により、初期には低体温症の患者の体温を上昇させたり、初期には高体温症であるかまたは体温を何か他の目的のために正常未満に低下させなければならない患者の体温を低下させたりするための方法がさらに提供される。そのような場合、一般に、所望の温度が、例えば、患者の生理的応答を超えて上回らないように、(全身低体温の場合には全身であり、局所的低体温の場合には、例えば脳であり得る)標的組織をモニターして、冷却を制御することが必要である。そのような場合、本発明のこの態様は、特に、標的組織を選択された体温に維持するために伝熱プロセスを反転させるようになっている。
【0078】
図5に記載されているように、本明細書において、標的組織を好ましい温度に加熱または冷却し、標的組織をそのほぼ好ましい温度に維持するための試料制御機構が提供される。この制御機構を、図5に示されているフローチャートによって説明すると共に、図6に示されているグラフで示す。目標温度として、好ましい温度、例えば、脳組織の場合には温度31℃を予め選択する。熱交換カテーテルの場合には、この予め選択した温度を、例えば、熱熱交換カテーテルに対する制御装置上で所望温度を設定することにより制御装置に伝達する。脳などの標的位置に血液を供給する血管内の血液と熱交換すべく近接するように、血液から熱を除去したり血液に熱を加えたりし得る熱交換カテーテルを挿入する。熱交換器をオンオフ切換えして、熱交換器と熱交換すべく近接して血液を加熱または冷却するように熱交換器を制御し得る、上記制御装置によってカテーテルは制御される。
【0079】
脳の温度は、例えば、脳組織に挿入された温度プローブによってまたは鼓膜などの代用位置での温度の測定によってモニターするか、鼻腔が脳の温度を表す温度測定値を提供する。これによって、検出された温度測定値を得、これを制御装置に伝達する。上方分散設定値を、例えば、予め選択した温度の1/2℃上に定め、これを制御装置に伝達する。この実施例では、それによって、上方分散設定値は31 1/2℃になる。下方分散設定値も、例えば、予め選択した温度の1/2℃下に定め、これを制御装置に伝達すると、この実施例では、下方分散設定値は30 1/2℃になる。
【0080】
熱交換器が冷却しているときに、標的組織の検知温度を予め選択した温度と比較する。検知温度が予め選択した温度より高い場合、冷却を継続する。検知温度が予め選択した温度またはそれより低い場合、制御装置は熱交換器をオフに切換えるように作動する。熱交換器をオフに切換えた後、標的組織の温度を再び測定して検知温度を得る。検知温度が上方分散設定値より高い場合、制御装置は熱交換器に冷却を再始動させるように作動する。この冷却は、温度が再び予め選択した温度に達するまで続けられる。この時点で、制御装置はもう一度熱交換器をオフに切換えるように作動する。患者の身体が標的組織において環境に対する損失速度より大きい速度で熱を生成している場合、温度は好ましい温度と上方分散設定値との間、この実施例では、図6の区分Aで示されているように31〜31 1/2℃の間で揺れ動くことが分るであろう。
【0081】
場合により、熱交換器がオフに切換えられた後、例えば、脳組織が自身で生成する熱より多くの熱を環境に放出している場合には、標的組織の温度は自然に低下し続けるであろう。そのような状況において、検知温度は、下方分散設定値より低くなるまで低下し続ける。そうなると、制御装置は、熱交換器を作動させて、検知温度が再び予め選択した温度になるまで、血液に、したがって標的組織に熱を加える。次いで制御装置は熱交換器をオフに切換える。温度が再び下方分散設定値を下回る温度まで低下すると、上記プロセスが繰り返される。この状況が繰り返されると、温度は、予め選択した温度と下方分散設定値との間、この実施例では、図6の区分Bで示されているように31〜30 1/2℃の間で揺れ動くことが分るであろう。
【0082】
本明細書に示されている実施例は、例示のみを目的としており、本発明の範囲内で多くの変形が予想される。例えば、予め選択した温度や上および下方分散設定値は上述のものと異なっていてよい。上記説明は正常温度を下回る温度に標的組織を冷却する実施例であった。しかし、正常温度を上回る予め選択した温度を選択してもよいし、血液を加熱するかまたは血液から除熱するように制御される熱交換器を、同様な制御機構によって、標的組織の温度を、上および下方分散設定値範囲内の正常温度を超えるほぼ予め選択した温度に維持し得ることが分るであろう。例示されている制御機構において、予め選択した温度を37℃に設定して、検知温度が37℃に達するまで加熱体に血液を加熱させることにより、低体温症患者を正常温度に再び加熱し得ることも容易に理解されよう。温度の行過ぎの予測および防止は、すでに本明細書に文献援用されている米国特許出願第08/584,013号に記載のようにして達成し得る。
【0083】
示されている実施例において、標的組織の温度測定または検知温度と予め選択した温度の比較などのステップはすべて別々の作用として記載されているが、当業者には、それらの作用が相対的に連続的であってよいことが容易に理解されよう。また、標的組織の温度以外の調節基準、例えば、血圧もしくは頭蓋内圧、または他の位置から誘導された温度を、置換かつ調節可能であり、例えば、脳などの領域を冷却し、その領域を比較的安定した冷却状態に維持すると同時に、患者の体芯温度を正常温度に加熱して、患者の体芯温度を正常温度で比較的安定に維持するために、記載されている2つの制御機構を患者の体内の異なる複数の位置に関して同時に開始し得ることも容易に理解されよう。標的組織の温度に変化をもたらす上記方法は、標的組織から上流の血液を冷却するものであったが、他の加熱および冷却法、例えば、脳または脊髄の周囲を循環する脳脊髄液の加熱または冷却を用い得ることが理解されよう。
【0084】
患者の選択的加熱および冷却システムが図7に示されている。このシステムは、基端102と、先端104と、先端近くの発熱表面106と、先端近くの吸熱表面108とを有するカテーテル100を備え得る。発熱表面106は、上述のどの伝熱部品、特に、典型的には0.1〜1mm間隔の50〜1000の巻線を有する状態で示されているワイヤコイル抵抗加熱器を含んでいてもよい。カテーテルの全長は15〜50cmの範囲であり、直径は約1〜5mmであり得る。巻線は、先端近くの10〜20cmの範囲の全距離にわたって延びている。吸熱表面は、典型的には、金、銀、アルミニウムなどの生体適合性伝熱性金属からなる伝熱性金属ホイルであり得る。銅も有用であり得るが、その生体適合性を高めるためには処理またはカプセル封入が必要である。金属ホイルは、典型的には、0.001〜0.01mmの範囲の厚さを有するカテーテル本体の可撓性を高めるために薄くてよい。吸熱表面108は、カテーテルの外に位置する、通常下記に記述するような制御装置120内の冷却器に電気結合し得る。例示されている実施態様においては、表面108は、上述の伝熱性金属の1種から形成された可撓性ロッドまたはワイヤからなる伝熱性コア部材110によって結合されている。あるいは、表面108の基端を冷却器に結合し得るように表面108を基端方向に伸ばして熱結合を達成することができる。後者の場合、表面108の基端部は、血液循環の外での冷却を防止するように断熱するのが好ましい。このシステムはさらに、通常は、カテーテル100に結合するための発熱器と冷却器の両方を提供する制御装置120を備えている。発熱器は、カテーテル上の抵抗加熱器に結合するための直流電源をさらに備え得る。通常、直流源は、典型的には、10〜60VDCの範囲の電圧および1〜2.5Aの電流出力で作動する市販の温度制御式DC電源であろう。電源は、発熱表面106の表面温度を40〜42℃の範囲に維持するように制御し得る。上述のように、血液成分の損傷を防止するためには、表面温度は42℃を超えてはならない。熱交換表面の他の望ましい特徴は上記に説明されている。
【0085】
あるいは、熱交換表面の温度を、実測血液温度および/または実測体温に基づいて制御することもできる。血液温度は、カテーテル上に存在する温度センサで測定できる。例えば、温度センサ112は、カテーテル上に熱交換表面106および108から間隔を置いて配置し得る。温度センサ112は、血流方向に基づき、かつ患者へのカテーテルの導入方式に応じて、熱交換表面の上流または下流に配置し得る。最適には、上流および下流の血液温度を測定するために、1対の温度センサを熱交換表面の両側に1つずつ配置することもできる。また、カテーテルは、発熱表面106の温度を直接制御し得るように、表面106に直接結合された温度センサ(図示せず)をさらに備え得る。患者の体芯温度または患者の体内の種々の領域の温度を直接測定する他の温度センサ(図示せず)を設けてもよく、測定された温度は制御装置120にフィードバックされる。制御装置120内の冷却器は、血液を所望の速度で冷却するのに十分な速度で吸熱表面108から熱を除去し得るいずれのタイプの冷却装置であってもよい。典型的には、冷却器は150〜350Wに定格される。
【0086】
冷却器は、ニュージャージー州08648トレントン所在のメルコア・サーモエレクトリックス社(Melcor Thermoelectrics,Trenton,New Jersey 08648)から市販されているものなどの熱電冷却器である。冷却器は、吸熱表面108からの直接の熱伝導が制御装置120内の冷却器にもたらされるように、コア部材110に直接結合し得る。冷却表面108の温度は、本発明のこの態様に関しては加熱表面106の温度より重要ではないが、通常、0〜35℃の範囲、好ましくは30℃未満に維持されるであろう。冷却表面の温度は直接この範囲内に制御してもよいし、あるいは、冷却温度が全システム特性に基づいてほぼこの範囲内で機能するようにシステムを設計してもよい。
【0087】
制御装置120は、血液温度および/または体温に基づいて発熱表面106および吸熱表面106の温度を制御するための1つ以上の温度制御器をさらに備え得る。少なくとも、制御装置120は、発熱表面106の温度を上記範囲内に制御し、かつ上記のように加熱または冷却モードを逆転させるために患者の血液温度および患者の体温のうち少なくとも1方をモニターし得る。例えば、図10に記載されている制御機構に関して、例えば、先ず、低体温症患者を目標温度に達するまで一定の表面温度速度で血液を温めて治療するオンオフモードで、システムを操作し得る。目標温度に達したら、発熱表面106への電力をオフに切換える。しかし、患者の体温が確実に目標温度より高い最大値を超えないよう確実にするために、血液および/または患者の体温のモニターを続ける。万一最大値を超えたら、過度の体温が低下するまで、システムを冷却モードで操作する。通常、患者を再び加熱する必要はないが、本発明のシステムは、必要なら、さらなる冷却および加熱サイクルを用意し得る。初期に高体温症の患者の場合、冷却および加熱モードを逆転させる。本発明の温度制御機構は実質的にさらに精巧にし得ることが理解されよう。例えば、患者を加熱するための入力は、典型的には、患者の体芯または局所体温が所望の目的レベルに近づくにつれ、伝熱速度を次第に遅くするようにする比例制御機構、誘導制御機構または統合制御機構に基づいて制御し得る。さらに、患者の血液温度および患者の体温に基づいたカスケード制御機構を考案することもできる。例えば、そのような制御機構を、その準備の際に、典型的な患者の生理的特徴を考慮に入れた数学的モデルで患者を加熱したり冷却したりするように、適合させることができる。しかし、目標温度が安全量を超えて上回った場合、伝熱モードを逆転し得る簡単なオンオフ制御機構で十分であろう。
【0088】
本発明の別の態様は、患者の体内の標的位置に送達される流体の温度を流体が体内にある間に調節するための方法および装置を提供する。この方式での流体温度の調節は、薬剤、溶質または血液の温度をそれらが標的部位に供給される前に加熱または冷却することを含めた多様な用途に役立つ。注入された流体の温度の調節は、脳内の神経外科的処置を含めた種々の医療処置の準備の際の標的位置自体の温度の調節にも有用である。さらに、そのような方法および装置により、その場で患者の血液を加熱または冷却することにより組織の温度を患者の体温範囲内に制御することができる。患者の血液を加熱または冷却してから、次いで標的組織に流すことにより、当該組織の温度を望み通りに上げたり下げたりし得る。したがって、そのような方法および装置は、低体温症もしくは高体温症の治療、または局所的冷却もしくは加熱の誘導に便利な療法を提供する。
【0089】
図8は、本発明の別の態様に従って形成されたカテーテル212の先端210を示している。カテーテル212は、血管BV内に配置し得る。血管を流れる血流は、図8では1組の矢印Fで示されている。カテーテル212の先端210は、温度変更領域214を備え得るが、この温度変更領域は、カテーテルの基端と先端の間のどこに配置されていてもよいことが理解されよう。先に言及したセルジンガー法などの、カテーテルを種々の血管に挿入する方法は、医療専門家の間では周知である。カテーテル212は、特定の用途に応じて種々のサイズで製造し得る。殆どの使用には、長さが約30〜約130cmの範囲、直径が6〜12フレンチ(1フレンチ=0.33mm)であってよい。カテーテル212は、患者の体内の種々の血管を通って移動させることができ、かつ好ましくはガイドワイヤの助けを借りて体内に配置し得るように可撓性である。
【0090】
図9に示されているように、カテーテル212は内部管腔216を有している。温度変更領域214の内部管腔216の管腔壁に隣接して温度変更機構218を配備し得る。説明に便利なように、温度変更機構218は概略的に示されているが、この機構218は、内部管腔216を通過する流体を温度変更領域214において加熱または冷却する内部管腔の管腔壁216の加熱または冷却に用いられる多様な機構を備え得る。管腔壁を加熱または冷却するための典型的な機構は、カテーテル212の管腔壁近くを通過する加熱または冷却された流体、カテーテル212内に配置された抵抗体、温度変更領域に供給されるレーザーエネルギー、カテーテル本体内に配置される種々の化学物質、熱電結晶などを備え得る。そのような機構を用いると、内部管腔216を通過する温度変更領域での流体の温度を、流体がカテーテル212から出てゆくときに所望の温度範囲内になるように変えることができる。温度変更機構218は、温度変更領域を通過する流体の温度を5〜約42℃加熱するように形成し得る。流体を冷却する場合、温度変更機構218は、流体を7〜約30℃冷却するように形成し得る。温度変更機構218は、カテーテルと内部管腔を通って流れる流体との間の伝熱速度を最適化するように設計し得る。さらに、血液の望ましくない化学変化を防止し得るために、カテーテルの温度は慎重に制御され得る。これは、血液が中程度の高温によってさえ容易に変性するので、血液に熱を加えるときには特に重要である。血液を温めるための管腔壁の温度は、一般に、約42〜43℃を超えてはならない。患者の体芯体温を高めるために供給し得るエネルギーの量は、すでに本明細書に文献援用されている米国特許第5,486,208号に記載されている。また、温度変更機構218は、カテーテル212の外表面を実質的に直接加熱することなく管腔壁の温度を加熱または冷却し得るようにも、カテーテル212内に配置し得る。このようにすると、単にカテーテルの先端を特定の標的部位に配置し、内部管腔216に流体を導入するだけで、カテーテル212を用いて、標的部位を選択的に加熱または冷却することができる。
【0091】
図9および図10に示されているように、本発明のこの態様に従って形成されたカテーテル220は、カテーテルを通過する流体の温度を変えるために伝熱流体を循環させ得る。カテーテル220は、基端224および先端226を有するカテーテル本体222を備えている。基端224と先端226の間には管腔228が延びている。基端224には、患者の外から管腔228に種々の流体を導入し得る基端ポート230がある。カテーテル本体222を貫通しているのは、特に図10に示されているような第1通路232と第2通路234である。第1通路232には第1ポート236が連絡しており、第2通路234には第2ポート238が連絡している。この方式では、加熱または冷却された伝熱流体は第1ポート236に導入され、そこから、管腔228に隣接する第1通路232を通過する。伝熱流体が第1通路232を通過するにつれ、熱は管腔228を通過する流体へまたは流体から伝達されて、流体はカテーテル本体222から出て行く前に所望の温度に加熱または冷却される。第1通路232を通過した後、伝熱流体は、カテーテル本体222を通って逆に循環し、第2通路234を通って第2ポート238から出て行く。
【0092】
図11および図11Aは、カテーテル240を通過する流体を加熱する抵抗加熱装置を有するカテーテルを備えた本発明のさらに別の変形を示している。カテーテル240は、基端244および先端246を有するカテーテル本体242を有している。カテーテル本体242の基端244と先端246の間には管腔248が通っている。流体を患者の外から管腔248内に導入し易くするために基端ポート250が装備されている。カテーテル本体242の管腔248近くには、図17に示されているように複数のワイヤ252が配置されている。これらのワイヤ252は、ポート254を通ってカテーテル本体242から出る。ワイヤ252は、DC電源に接続しても低周波数AC電源に接続してもよい。電流がワイヤ252を通過するとき、エネルギーの一部が熱として放散して管腔壁を加熱する。あるいは、管腔壁を加熱するために、カテーテル本体242内に配置されている電極に電力を供給する高周波すなわちRF電源を用いてもよい。
【0093】
図12〜図14を参照すると、カテーテル256は、外部から注入された流体の加熱もしくは冷却、その場での(in situ)体液の加熱もしくは冷却、またはその両方の組合せに用い得る。カテーテル256は、基端260および先端262を有するカテーテル本体258を備え得る。図12に示されているように、基端260と先端262の間には管腔264が延びている。さらに、基端260には、種々の流体を管腔264内に注入し得る基端ポート266も備えられているが、ポート266は患者の外に配置されている。先端262には、温度変更機構(図示せず)を含む温度変更領域268がある。特定の温度変更機構は、上記または下記の本発明の他の態様に関して説明したものを包含し得る。この方式では、ポート266に注入された流体は管腔264を通過し、他の実施態様に関して既に記載したものと同じように温度変更領域268を通過するときにその温度が変更される。カテーテル本体258は、管腔264への通路を提供するためにカテーテル本体の壁を貫いて延びる複数の潅流オリフィス270を備え得る。図12に矢印で示されているように、血液などの体液がオリフィス270を通過して、管腔264内に入り、そこで、体液は、図示されているカテーテル本体258の先端262から出て行くときに体液の温度が所望の範囲内にあるように温度変更領域268で温度変更される。
【0094】
図13および図14に示されているように、カテーテル本体258の管腔壁は、複数のフラップ272を備え得る。これらのフラップ272を通ってオリフィス270から管腔264に入る体液の通過を制御し得る。これらのフラップ272または類似構造は、米国特許第5,180,364号に記載のように構成してもよく、この特許の開示は本明細書に文献援用される。流体をポート266から管腔264内に注入する際、実質的に注入された流体だけが温度変更領域268を通過するように、注入された流体の圧力および流れ方向により、図13に示されているようにオリフィス270がフラップ272で閉鎖されるであろう。この場合、注入される流体の温度は、流体が先端から出て行くときに所望の範囲内にあるように温度変更されるであろう。図14に示されているように、ポート266に流体が注入されない場合、血管内の体液の圧力により、フラップ272が開いて、体液がオリフィス270を介して管腔264内に流れ込む。この方式では、血液などの体液は、オリフィス270を通り、温度変更領域268を通過することによってその温度が変更され得る。フラップ272のこの配置は、患者の組織の温度を変える用途では特に有利である。カテーテル256を患者内に導入するだけで、オリフィス270を介して管腔264内に流入する血液は、先端262から出るときまでに温度が変更されるであろう。これによって、全身の体温の変更が生じ得るし、カテーテルによって血液を特定の部位に誘導すると、局所的な温度変更が生じ得る。治療のためにさらに溶質または薬剤が必要な場合には、ポート266を介して溶質または薬剤を管腔264内に導入し、その温度を出て行く血液の温度と実質的に同じ温度にし得る。上述のように、本発明のこの態様は、患者の体内に種々の流体が存在する間に、その流体の温度調節に有用な方法および装置を提供する。そのような装置を用いると、薬剤または溶質が標的位置に達する前にカテーテル内で温度を変更させ得る、患者の外からの薬剤または溶質の導入を含めた多様な処置を実施し得る。さらに、医療処置の実施に先だって、カテーテル内で流体を加熱または冷却し、それによって、身体構造の特定の領域を加熱または冷却し得る。別の代替法では、血液などの患者の体液の温度をその場で変更し、低体温症もしくは高体温症の患者を治療するため、または意図的に全身もしくは局所低体温を誘導させ得る。
【0095】
本発明の別の態様は、局所および全身の体温変更のための方法および装置を提供する。選択領域の体温を低下させることにより、特に脳に近接した神経保護作用を提供し得る。少なくとも1つのカテーテルの選択された部分が、例えば、脳領域と接触するか、脳領域もしくはその周辺で循環しているか、または脳領域に流れ込む、血液または脳脊髄液などの流体を冷やし得る。冷やされた体液は、局所的に限定された冷却作用を生成するために選択的に患者の身体の選択領域に誘導され得る。あるいは、例えば、脳全体および脊髄などの他の広い範囲にわたる組織の神経保護を提供するために、患者の全身の温度を低下させ得る。以下にさらに詳細に説明するように、本明細書で提供されている方法および装置は、迅速かつ効果的な伝熱を提供するための増大された表面積またはフィン付き部を用いて形成された熱交換カテーテルを備え得る。ある一定の長手方向寸法を有するカテーテル本体に沿って局所的に限定された伝熱領域は、さらに、内部通路内を流れる流体との有効な伝熱を提供すると同時に、このカテーテルは、さらに、カテーテルの選択部分に沿って局所的な冷却または伝熱ゾーンを提供する。発熱体や冷却体の種々の組合せを、1つのカテーテルの複数の異なる部分に沿って形成するか、または本発明の他の態様に関して同じ様に記載した熱交換装置系列もしくは組み合せの一部として形成し得る。これらの装置および手順はすべて、脳血管損傷の治療において治療に関する利点を提供し得る、大脳領域の冷却および人為的低体温症状態の誘発に特に適した局所的または選択的体温変更に向けられる。このシステムは、手動制御による簡単な伝熱カテーテルであってもよいし、多くのセンサをモニターすると共に、これらのセンサから受信したデータに応答して熱交換カテーテルを制御し得る制御装置を使って操作してもよい。
【0096】
図15に略図で示されているように、本発明のこの態様に関する伝熱カテーテルシステムは、1つ以上の伝熱部分の組み合わせを備えるように形成されたカテーテル制御装置300と伝熱カテーテル302とを備え得る。1つまたは複数の伝熱セクションは、セクション319で示されている、患者に挿入されるカテーテルの部分に位置している。この挿入部は、カテーテルの全長より短く、カテーテルの患者のすぐ体内の位置から、カテーテルを完全に挿入したときにはカテーテルの先端まで延びる。カテーテル制御装置300は、カテーテル302内に熱交換流体または媒体を循環させるための流体ポンプと、伝熱システム内の加熱および/または冷却循環流体用の1つ以上の熱交換部品組合せとを備え得る。制御装置300には、塩類溶液、血液代用溶液または他の生体適合性流体などの伝熱流体源を供給するための容器または流体バッグ306を連結し得る。制御装置300はさらに、例えば、フィードバックや、脳および頭部領域用の温度プローブ308、直腸温度プローブ309、耳温度プローブ311、膀胱温度プローブ(図示せず)などの身体の選択器官もしくは選択部分からの患者の温度情報を供給する固体熱電対であり得る多様なセンサからデータを受信し得る。検知された温度および状態に基づいて、制御装置300は、センサからの入力に応答してカテーテルの加熱または冷却を命令し得る。制御装置300は、第1の検知温度で熱交換器を作動させたり、また第1の検知温度または他の予め設定した温度より比較的高いかもしくは低い第2の検知温度で熱交換器を止め得る。勿論、制御装置300は、身体領域で所望温度または予め選択した温度を達成するために、選択された伝熱セクションを独立して加熱または冷却し得る。さらに、制御装置は、患者の身体の特定の領域で温度を制御する1つ以上の熱交換器を作動させ得る。また、制御装置は、例えば、検知された温度に応答して、外部保温用ブランケットなどの他の装置を作動させたり止めたりし得る。制御装置は、上述し、かつ図5および図6に示されているように機能し得る。
【0097】
また、図15に示されている温度調節カテーテル302は、一連の流入および流出導管を介して伝熱媒体を循環させることにより種々の冷却および/または加熱ゾーンを提供し得る。第1および第2の通路312および314は、カテーテル内の熱交換通路を提供し得、かつ、それぞれ、選択した身体領域内の流体の流れを冷却する伝熱流体の循環用ポンプの吸込口315および排出口317に連結し得る。選択した身体領域をシステムの冷却部品と同時または別々に加熱するために類似の装置を設けてもよい。さらに、カテーテル制御装置300は、閉ループカテーテルシステム内で同一または異なる伝熱媒体を用いた加熱と冷却の両方の機能を果たすために選択的に作動させたり止めたりされる熱電冷却器/加熱器を備え得る。例えば、1つ以上の温度調節カテーテル302の挿入部319上に位置する第1伝熱部分318は、隣接する頭部領域、あるいは、頸動脈または脳に通じる他の血管内で冷溶液を循環させ得る。頭部温度は、患者の外表面に比較的近くにまたは選択身体領域内に配置された温度センサ308により局所的にモニターし得る。カテーテル302の別のすなわち第2の伝熱セクション320は、これも挿入部319上に位置するのであるが、折り畳みバルーン内で加熱溶液を循環させるか、または本発明の他の態様に従って記載されている他の機構の加熱体を介して身体の他の位置に熱を供給し得る。伝熱カテーテル302は神経保護のために脳領域に局所的低体温を提供し得るが、身体の他の部分は、震えなどの不都合な副作用を回避または最小限にし得るように比較的温かく保ち得る。さらに、身体の首の下あたりの加熱は、保温用パッドまたはブランケット322内で身体の比較的下方部分を絶縁またはラッピングしつつ、首から上の頭部領域310は冷却することにより達成し得る。勿論、カテーテル302の多重伝熱セクションは、体芯温度に変化を与えて全身を冷却または加熱するように改変することができ、局所的すなわち限局的体温調節に限定されるのではないものと理解すべきである。
【0098】
図16は、本発明の伝熱カテーテルシステムを示しており、このシステムは、伝熱カテーテル324、使い捨て熱交換プレート338、ポンプヘッドアセンブリ340、塩類溶液バッグ339、センサ348、349および流体流れ管路337を含めた使い捨て部品と、固体熱電加熱器/冷却器342、ポンプ駆動体343および種々の装置用制御装置を含めた再使用可能な部品とを備えている。
【0099】
伝熱カテーテル324は、血液誘導スリーブ325と、カテーテルシャフト326と、熱交換媒体の閉ループ流を用いて操作される例えば熱交換バルーンであり得る熱交換器327とを用いて形成されている。カテーテルシャフトは、薬剤、透視用染料などを注入し、かつ伝熱カテーテルを患者の身体の適切な場所に配置するのに用いられるガイドワイヤ329を受容するための作業管腔328を備えるように形成し得る。カテーテルシャフトの基端は、シャフト内の種々の通路に別々にアクセスさせるためのマルチアームアダプター330に連結し得る。例えば、1つのアーム336は、ガイドワイヤ329を挿入して、伝熱カテーテルを所望の位置に進めるためのカテーテルシャフトの中央管腔328へのアクセスを提供し得る。熱交換器327が熱交換媒体331の閉ループ流用の熱交換バルーンである場合、アダプターは、流入流れ管路333をカテーテルシャフト内の流入通路(この図では示されていない)に連結するアーム332と、流出流れ管路を流出通路(これもこの図には示されていない)に連結する別のアーム334とを備え得る。2つの流れ管路337は、カテーテルシャフト326を使い捨て熱交換プレート338に連結するための流入および流出流れ管路333、335を共に備え得る。さらに、一方の流れ管路、例えば、流入流れ管路333は、必要に応じて閉ループ熱交換バルーンカテーテルシステムを始動させるために熱交換流体331のバッグ339に連結し得る。
【0100】
熱交換プレート338は、使い捨てポンプヘッド340によって熱交換プレートを介してポンプ輸送される熱交換流体用の蛇状経路339を備え得る。蛇状経路339およびポンプヘッド340を有する熱交換プレート338は、再使用可能なマスター制御装置341内に設置するように設計されている。マスター制御装置は、熱電加熱器/冷却器(TEクーラー)などの発熱または除熱装置342を備え得る。TEクーラーは、装置を作動させる電流の極性を変えることで発熱または除熱し得るために特に有利である。したがって、2つの別の蛇状装置を必要とせずに、システムへの熱の供給またはシステムからの除熱を都合よく制御し得る。
【0101】
マスター制御装置は、ポンプヘッド340を作動させて熱交換流体331をポンプ輸送し、流体331を熱交換器327および熱交換プレートの蛇状経路を通って循環させるためのポンプ駆動体343を有している。熱交換プレートは、設置されると、TEクーラーと熱の行き来があるように連絡する状態になり、それによって、TEクーラーは、熱交換流体が蛇状経路を通って循環するときに、熱交換流体を加熱または冷却する働きをし得る。熱交換流体は、患者の体内に配置された熱交換器を通って循環するとき、患者の身体に熱を加えたり、身体から熱を除去したりする働きをし得る。このように、TEクーラーは、所望のように患者の血液に変化を与える働きをし得る。
【0102】
TEクーラーとポンプとは、制御装置344に応答する。制御装置は、多くのセンサ、例えば、患者の耳、脳領域、膀胱、直腸、食道またはセンサを設置するオペレーターが望む他の適当な位置から温度を検知し得る体温センサ348、349などの複数の電気センサへの電気接続345、346、347を介して入力データを受容する。さらに、センサ350は、熱交換バルーンの温度をモニターし得、他のセンサ(図示せず)は、所望により、カテーテルの先端、カテーテルの基端または他の所望の位置で血液温度をモニターするように配備し得る。
【0103】
オペレーターは、手動入力装置351を使って、制御システムの作動パラメーター、例えば、脳についての予め選択した温度を入力し得る。パラメーターは、手動入力装置351と制御装置344との間の接続353により制御装置に伝送される。
【0104】
実用時には、手動入力装置を使用するオペレーターは、制御装置344に1組のパラメーターを供給する。例えば、患者の脳領域および/または全身についての所望温度を予め選択した温度として指定し得る。データは、例えば、センサ位置における患者の検知温度、例えば、患者の実測体芯温度または脳領域の実測温度を示すセンサ348、349から受信する。他のデータ入力は、熱交換器の実測温度、カテーテル本体の先端での血液温度などを備え得る。
【0105】
制御装置はデータを調整し、パラメーターを実行かつ維持するようにシステムの種々の装置を選択的に作動させる。例えば、制御装置は、実測温度が指定温度より高い場合には除去している熱の量を増大させるように、または、実測温度が指定温度より低い場合には除去している熱の量を減少させるようにTEクーラーを作動させ得る。制御装置は、検知された全身または局所温度が所望の温度の場合には、熱交換流体のポンプ輸送を停止し得る。
【0106】
制御装置は、目標温度を定め、さらに上方分散設定値温度および下方分散設定値温度も設定する作動緩衝範囲を有し得る。このようにして、制御装置は目標温度に達するまで熱交換器を作動させ得る。目標温度に達したら、制御装置は上方分散設定値温度が検知されるか、または下方分散設定値温度に達するまで熱交換器の作動を停止し得る。上方分散設定値温度が検知されると、制御装置は、血流から熱を除去するように熱交換器を作動させる。一方、下方分散設定値温度が検知された場合には、制御装置は血流に熱を加えるように熱交換器を作動させる。この制御機構は、先に説明した図5および図6に示されているものと類似である。そのような制御機構をこのシステムに適用すると、オペレーターが実質的に所望温度を調整し得るという利点があり、システムは、目標温度に到達させて、患者を目標温度下に維持する働きをする。同時に、目標温度に達すると、制御装置は、通常、当該電気装置に対する潜在的に有害な行動である、めまぐるしいTEクーラーのオン・オフの切換えや、駆動体の作動・停止をしないように緩衝範囲を定める。
【0107】
また、本発明に従って、制御装置は、いくつかのセンサに同時に応答するように、またはいくつかの熱交換器などの種々の部品を作動させたり止めたりするように設計できることも理解されよう。このようにすると、制御装置は、例えば、目標温度を下回る検知体芯体温度に応答して後に体芯に循環される血液を加熱し、同時に、目標温度を超える検知脳温度に応答して脳領域に向かう血液を冷却するように第2熱交換器を作動させ得る。検知された体温が目標温度であれば、体芯に向かって循環する血液と接触している熱交換器を制御装置がオフに切換え、同時に、制御装置が、脳領域に向かう血液を冷却するように熱交換器を作動させ続けることも可能である。オペレーターが予測し得、かつ制御装置にプログラムし得る多くの制御機構はいずれも本発明に包含される。
【0108】
例示されているシステムの利点は、患者に接触するシステムのすべての部分が使い捨てであるが、システムの実質的かつ比較的高価な部分は再使用可能なことである。したがって、カテーテル、滅菌熱交換流体用通路、滅菌熱交換流体自体およびポンプヘッドはいずれも使い捨てである。熱交換バルーンが破裂して、熱交換通路、したがってポンプヘッドが患者の血液と接触しても、それらの部品がすべて使い捨てなので、患者との交差汚染は発生しないであろう。しかし、ポンプ駆動体、電子制御機構、TEクーラーおよび手動入力装置はすべて、経済性および便宜性のために再使用可能である。さらに、センサは使い捨てであってよいが、センサに結合する制御装置は再使用可能である。
【0109】
本明細書に詳細に説明したシステムは、本明細書で権利請求されている本発明の精神を逸脱しなければ、多くの置き換え、削除および代替を用いて使用し得ることは当業者には容易に理解されるであろう。例えば、蛇状経路はコイルまたは他の適当な形状であってよく、センサは多岐にわたる身体位置を検知し得るし、温度または圧力などの他のパラメーターを制御装置に供給し得、熱交換器は、熱交換流体の循環を必要としない熱電加熱装置などの適切なタイプであってよいが、それらには限定されない。熱交換バルーンを備える場合、スクリューポンプ、ギアポンプ、ダイヤフラムポンプ、蠕動ローラーポンプなどのポンプまたは熱交換流体をポンプ輸送するための他の適当な手段を装備し得る。当業者には自明の上記および他の置き換えはすべて本発明により予想される。
【0110】
図17A〜Eは、本発明の熱交換器の1つの実施態様を示している。図17Aに示されているように、フィン付きバルーン部362を有する熱交換バルーンカテーテル360は、下行大動脈364の少なくとも一部および脳領域に血流を導く血管366内に配置し得る。バルーン部362は、バルーン内の熱交換流体とバルーンに熱交換すべく近接して流れる血液との有効な伝熱を促進するのに十分な程度に薄いが、膨脹されると、流体通路または血管366を故意ではなく閉塞したりするほどには過度に可撓性ではない材料より形成され得ると理解されたい。適切な熱交換特性を有する予測可能なバルーン形状を得るためには、薄く、強力ではあるが、比較的可撓性が低いPETなどの材料が望ましいのは確かである。この実施態様で提供される熱カテーテル360のカテーテルシャフト368は、当業者には公知のガイドカテーテルまたは操縦可能なワイヤオーバーザワイヤ法などの常法により、選択した身体領域または動脈366に関して所望の位置に配置し得る。カテーテル360のバルーン部362は、本明細書に記載のような伝熱流体の閉ループ循環を支持し得る。表面積が増大すると、熱伝導により身体領域内に有効な伝熱が得られ、さらに、バルーンを膨脹させたときにバルーン表面の外側に通路を形成することにより実質的な破裂なしに血液の連続血流が可能になる。
【0111】
図17Bは、シャフト368上に装着された熱交換バルーン360を示しており、シャフト368は、その長手方向軸370と長手方向軸370から半径方向外側に突出する複数の伝熱フィン369、371、373、375により形成されている。伝熱フィンは、例えば、多ローブ式の折り畳みバルーンのローブとして形成してもよい。シャフト368は概して丸く、この実施態様では、シャフトを貫通する作業管腔370を有し、カテーテルの先端で開いている。作業管腔は、例えば、血栓溶解剤、抗凝固剤、神経保護剤、バルビツール剤、抗発作剤、酸素化潅流液、血管拡張剤、血管痙攣防止剤、血小板活性化防止剤、および血小板凝着防止剤を含み得る薬剤の注入に用いることができる。あるいは、作業管腔は、透視用染料の注入、ガイドワイヤ329の受容、または、例えば、血管形成術カテーテル、塞栓摘出用カテーテル、閉塞部材送達カテーテル、塞栓部材送達カテーテル、電気燒灼装置、またはマイクロカテーテルを含めた種々の診断もしくは治療装置のためのガイドカテーテルとして用い得る。中央管腔の外側のシャフトは、ウェブ372によって2つの通路、つまり流入通路374と流出通路376に分割されている。シャフトは、バルーンの先端で流入通路とバルーン内部を連絡している流入オリフィス377、378、379を有している。シャフトは、さらに、バルーン内部と流出通路との間を連絡している流出オリフィス380、381、382を有している。流入オリフィスと流出オリフィスの間の流出通路にはプラグ384が挿入されている。ウェブ372は、シャフトのこの部分における熱交換流体の流れに対する抵抗を低減させるためにプラグと流入オリフィスとの間でシャフトから除去し得る。あるいは、ここでは示さないある実施態様においては、流出通路のプラグと流入オリフィスの間のバルーンの下に比較的閉塞されない熱交換流体の流れを得るための通路を提供する丸い開放管腔を有するチューブを接合し得る。
【0112】
バルーンは、例えば、バルーン内部の熱交換流体とバルーン外部を流れる血液との間で有効な熱交換を可能にする程度に薄い1枚の折り畳めるプラスチック材料285のシート製であり得る。符号286で示されているようにこの材料をシャフトに軽く留めてバルーンのローブを形成し得る。さらに、符号287および符号288に示されているように、プラスチックシート自体を適切な位置で軽く留めてローブを形成し得る。ローブ形状のバルーン表面により、熱交換のための有意な表面が得られると同時に、バルーンのローブ間のスペースを通ってバルーンを通過する連続流が得られる。
【0113】
使用時には、熱交換流体(図示せず)は、中程度の圧力下で流入通路374内にポンプ輸送し得る。熱交換流体は、例えば、滅菌塩類溶液または適切な伝熱特性を有する他の生体適合性流体であってよい。熱交換流体は、流入通路を通ってバルーンの先端の流入オリフィス377、378、379に達する。流体は、流入通路からバルーン内部に流れ込む。次いで、流体は、基端方向にバルーン内部を通って流れ、バルーンの基端の流出オリフィス380、381、382に達する。次いで、熱交換流体は、バルーン内部から流出オリフィスを通り、流出通路376に流れ込み、そこでシャフトから戻って流れ落ち、体外に出る。
【0114】
上述のように、熱交換流体は、バルーンを通って循環し、熱交換流体がバルーンを流れる血液より温かい場合には熱を放出し、熱交換流体が血液より冷たい場合には熱を吸収する。
【0115】
図18A〜図18Eは、局部的に限定された伝熱を提供する内部流体通路392を備えたスリーブを有するように形成された本発明の別の変形熱交換カテーテル390を示している。伝熱カテーテル390は、流体含有身体領域内に配置するための血液誘導スリーブ394を含み得、このスリーブは、内部流体通路392を用いて形成された基端領域396と先端領域398によって規定されており、内部流体通路392は、カテーテル本体394内に流体の流れを導くためにそれぞれ流体を含有する身体領域と連絡している少なくとも1つの比較的基端に近い開口部395と少なくとも1つの比較的先端に近い開口部399によって区画されている。血液誘導スリーブの内部流体通路392内の流体との局部的に限定された伝熱を得るためにスリーブの少なくとも一部内に熱交換器が内側に配置されている。図18A〜図18Eにおいて、示されている熱交換器は、以下に詳細に説明するように、熱交換流体を循環させるために内部通路392の円周上に配置された溝付き閉ループ交換器である。
【0116】
図18Aに示されているように、大動脈364の少なくとも一部と、脳領域に血液を導くために大動脈から分岐している血管399とに、温度調節カテーテル390を配置し得る。カテーテルは無名動脈内に配置するが、例えば、その先端は、特に、右総頸動脈、左総頸動脈、右内頸動脈および左内頸動脈内に配置してもよい。したがって、血液は、カテーテル本体394の内部流体通路392内に配置された熱交換器を通過している間に脳領域に導かれ得る。内部通路392を通って流れる血液を冷却させるように熱交換器を形成し、かつカテーテルを図24Aに示されているように配置すると、脳領域の限局的低体温を有効に達成し得る。温度調節カテーテル390は、例えば、選択的に流体含有身体領域に血液を導くようにカテーテルが配置される、他の選択された流体含有身体領域の温度を調節するために適用可能な方法にも選択され得る。
【0117】
図18B〜Gに詳細に示されているように、カテーテルは基端シャフト400を備えるように形成することもでき、基端シャフトは、中央作業管腔と隣り合った形状の2つの弓形管腔とを有する。2つの管腔は、流入管腔402と流出管路403とからなる。基端シャフトの基端取付け領域404には血液誘導スリーブが取付けられている。このスリーブは、大きなチューブ様形状に形成されたPETシートなどの極く薄い材料製の層405を有している。カテーテルシャフトは、このチューブ内の下流に配置されており、スリーブの長さに沿ってカテーテルシャフトの頂部406と底部407の辺りでシートが接着されている。これによって、スリーブの長さにわたってカテーテルの各側面にそれぞれ流入通路と流出通路である2つの翼様通路408、409が形成される。スリーブを構成するチューブ様構造を形成するために、これらの通路のそれぞれのプラスチックシート製外層を通路410の頂部で互いに連接させ得る。さらに、プリーツ412を形成するために、各通路を構成する2つのプラスチックシート層をスリーブの長さに沿って種々の地点でまたは線411に沿って一緒に連接し得、内層405は、膨脹させたときに通路が波打つようにゆるくてよい。
【0118】
スリーブの基端の取付け領域404から少し離れたところに、流入管腔402とカテーテルシャフトの流入通路409との間に1つのオリフィス415が、また流出管腔403とスリーブの流出通路408との間に1つのオリフィス416が形成されている。スリーブの先端部では、プラスチックシート間で流入通路409と流出通路408が連接されており、その結果、そこには、以下に詳細に説明するように、流体を流入側の下流に流して流出側を通って除去し得るように2つの通路が共有する共有スペース413ができている。スリーブの下のカテーテルシャフトは、薄いプラスチックシート製のスリーブがカテーテルシャフト上に折り曲げられ、適当に小さい断面を有し得るように、図18Bに示されているような縮小構造を有し得る。
【0119】
代替構成法としては、2つのチューブを用いてスリーブを形成し得る。大きい方の外側チューブにカテーテルシャフトを挿入し、僅かに小さい方の内側チューブを外側チューブに挿入するがカテーテルシャフトの上にかぶせる。外側チューブをその長さに沿ってカテーテルシャフトの底部で封鎖し、内側チューブはその長さに沿ってカテーテルシャフトの頭部で封鎖する。内側と外側のチューブは、その間に2つの通路を形成するようにカテーテルシャフトに向い合う線に沿って互いに封鎖する。シャフトと向かい合う封鎖は、先端はずっと延びてはおらず、このことは、流入通路と流出通路の間に連絡用の共有スペースを形成する役目を果たす。
【0120】
そのような装置のさらに別の構成法は、薄いプラスチック製の大型チューブを内側に折り曲げて薄いプラスチック製の2つの層で境界が定められた内部通路を作出する方法であり、薄いプラスチック層はそれらの先端で実質的に結合している。2つのプラスチック層の間のスペースは流入通路と流出通路を構成している。カテーテルシャフトを内部通路内に配置し、2つの層を互いに対しておよびカテーテルシャフトの底部に沿って内部通路の長さにわたってカテーテルシャフトに封鎖し得る。2つのプラスチック層は、さらに、基端開口部から内部通路の先端より一寸手前の点まで内部通路の頭部に沿って互いに封鎖する。これによって、流入通路409と流出通路408が形成されると同時に、スリーブの先端に共有スペース413が残る。
【0121】
使用時には、熱交換流体(図示せず)は圧力下に基端シャフト404の流入管腔402内に導入される。熱交換流体はシャフトを下流に流入オリフィス415に導かれ、この時点で流入オリフィス側で2つのプラスチックシート層間の流入通路409に入る。次いで、流体は流入通路を下流に導かれ、実質的にスリーブの波打ちプリーツを幾分膨脹させる。流体は血液誘導スリーブの先端の共有スペース413に入り、スリーブの流出側のプラスチックシート層の間に形成された流出通路408に入る。流体は、スリーブの長さを戻ってプリーツ通路を通りカテーテルシャフトの流出通路408と流出管腔403の間に形成された流出オリフィス416に戻る。次いで、流体は流出通路を下って身体から出て行く。このようにして、熱交換流体は、熱交換流体と熱交換すべく近接して内部通路を巡る血液との間で熱交換を生成する構造を通って循環し得る。
【0122】
薄いプラスチックシートを使って内部通路を形成することにより、血液誘導スリーブを小さい断面に収縮させること、例えば、内部通路をカテーテルシャフトの縮小断面部分上で包むかまたは縮小断面部分上に折り曲げることができる。これによって、今度は、血管系に挿入するための低断面装置が得られる。プラスチックシートをひだにして形成された波打ち構造は、循環する熱交換流体によって膨脹すると、カテーテル本体内を流れる熱交換流体と内部通路内で熱交換すべく近接する血液または他の体液との間の熱交換表面積を増大させる。
【0123】
図19に示されている別の実施態様では、伝熱カテーテル420は、内部通路423内に配置された熱交換バルーンカテーテル424などの熱交換器を有する、内部通路423を形成する血液誘導スリーブとして形成されたカテーテル本体422を有し得る。熱交換器は、いずれの適当な熱交換器であってもよいが、示されている実施態様において、熱交換器は、伝熱バルーンカテーテル、例えば、前節に記載されているかまたは図17Bもしくは以下の図24Aに示されているタイプのものである。熱交換器は、十分な熱交換能力を提供し、かつ内部通路を流れる流体が適切に流れるのに適当な大きさおよび形状を有していなければならない。
【0124】
血液誘導スリーブは、基端開口部428を有する基端セクション426を有している。さらに、スリーブの基端セクションの壁は、周囲の身体部分から内部通路への流体の潅流をさらに促進するオリフィス430を形成し得る。
【0125】
スリーブはさらに中間セクション432を有する。スリーブの中間セクションの壁は、通常、流体が中間セクションの壁を貫通して内部通路を出て行かないように概して中実である。中間セクション432におけるスリーブ、実際にはその長さにわたる壁は、内部通路内の流体を内部通路の外の血液などの組織から断熱するために断熱性を有する材料から形成し得る。したがって、基端セクション426から内部通路に流入する流体は、中間セクション432を通って血液誘導スリーブの先端セクション434に誘導されるであろう。
【0126】
血液誘導スリーブの先端セクション434は先端開口部436を有している。さらに、血液誘導スリーブの先端セクションの壁は、内部通路から出て血管などの周囲の身体部分へ至る流体の流れをさらに促進するオリフィス438を形成し得る。スリーブの先端436は、熱交換器440の先端近くにあるか、熱交換器の端(図示せず)と同一の広がりを持つか、または図26に示されているように熱交換器から末端側に延びていてもよい。
【0127】
さらに、患者の体外にあるカテーテルシャフトの基端からカテーテルシャフトの先端443まで延びる中央作業管腔442があってよい。中央管腔は、熱交換バルーンの先端を通過するか、さらにはスリーブの先端を通過して延びていてよい。作業管腔は、ガイドワイヤを受容したり、あるいは、染料の注入、凝血塊の溶解もしくはマイクロカテーテルを介した注射の実施または特に図17に示されている作業管腔に関して上述したような作業管腔の他の使用などの追加処置のためにマイクロカテーテルを挿入したりするのに用い得る。作業管腔の上記使用はいずれも、血液誘導スリーブ内での血液の冷却の前、後または最中にでも実施し得ることが容易に理解されよう。カテーテルの冷却機能を阻害することなく、冷却を行うと同時に上記目的のいずれのためにも作業管腔を使用し得ることは、本発明のカテーテルの1つの利点であろう。
【0128】
使用時には、伝熱カテーテルは、流体含有体、例えば、図19に示されているように、動脈系内に配置する。血液誘導スリーブの基端は、例えば、下行大動脈446内に配置し得る。カテーテル本体の先端は所望に応じて配置されるが、例示されているケースでは、血液を脳に供給する左総頸動脈448内に配置されている。スリーブの基端位置での大動脈とスリーブの先端での左総頸動脈との間の圧力差は、血液を、スリーブを介して左総頸動脈内に、またそこから脳に流させるのに十分である。例示されているケースでは、血液は、大動脈内に配置されている血液誘導スリーブの内部通路に入り、内部通路を通って、加熱または冷却された熱交換流体が循環している熱交換バルーン424と熱交換すべく近接して流れる。このようにして、血液は加熱または冷却される。次いで、加熱または冷却された血液は、内部通路の先端から誘導され、左総頸動脈に流れ込む。熱交換器が血液を冷却している場合、冷却された血液は左総頸動脈に導かれ、脳が冷却された血液に浸される。これが十分な長さの時間維持されると、上述の状態の利点を有する脳組織の局所的冷却が生じ得る。
【0129】
血液誘導スリーブの基端開口部423を大動脈弓447からいくらか離れた下行大動脈の下流に配置すると、全体が左総頸動脈内に配置された血液誘導スリーブによって血液を捕捉し、内部通路を通って導いた場合よりも、熱交換バルーンカテーテルを越えて右総頸動脈に達する長い血液路が得られるであろう。この長い通路は、短い通路と比較して高い冷却効果を提供する。また、血液誘導スリーブを少なくとも部分的に大動脈内に配置することにより、例えば、カテーテルの熱交換部を右総頸動脈内に配置した場合に可能であるよりも大きい熱交換器、例えば、大直径を有する熱交換バルーンの使用が可能になる。というのは、大動脈は、右総頸動脈より直径が有意に大きいからである。
【0130】
血液誘導スリーブの先端セクション434は、配置されている血管の周囲に比較的ぴったり合わせて形成することもできる。このようにすると、スリーブの基端と先端の間の圧力差が最大になり、例えば、大動脈から頸動脈に流れる実質的にすべての血液が内部通路を通過し、熱交換器により加熱または冷却される。血液誘導スリーブの壁は、動脈の封止を容易にする閉鎖性肩部を構成し得る。熱交換器は、例えば、カテーテル本体を延びた状態に保持する伝熱バルーンであり、熱交換バルーンは、フィンなどを有しており、それによって、熱交換バルーンのフィン間および内部通路の内壁とバルーンとの間の有意な血流が可能になり、右総頸動脈に流入する全部でなくとも殆どの血液が熱交換器を通って流れ、それによって加熱または冷却処理される。
【0131】
本発明の伝熱カテーテルの別の実施態様が図20に示されている。カテーテル450は、血液などの体液を受容かつ誘導するための血液誘導スリーブ452を装備し得る。スリーブは、その先端領域456より直径が有意に大きい先端領域454を有する実質的に漏斗形状のものであってよい。このようにすると、血液誘導スリーブの外面は、当該動脈の内部などの適切な解剖学的構造に押し付けられるかまたは支えられ得る閉鎖性肩部を形成し得、そのために、当該動脈に流入する殆どまたは実質的にすべての血液は、動脈に入る前に血液誘導スリーブの内部通路464に導かれる。例示されている実施例において、カテーテル本体が挿入される動脈は左総頸動脈であるが、血液誘導スリーブの先端部が他の所望の位置に同じように配置されるように設計し得ることが当業者には容易に理解されよう。
【0132】
先端領域は、実質的に円筒形を有する細長いものであり、先端開口部458で終端し得る。また、基端領域は基端開口部460を有し得、基端開口部は、その開閉またはカテーテル本体内の内部通路464への血液の流入を制御するための弁462を有し得る。
【0133】
基端領域454の内部には熱交換器が収容されている。示されている熱交換器は、伝熱流体を循環させるための伝熱バルーンまたはバルーンローブを内包し得る一連のらせん状フィン466である。あるいは、フィンは、電気抵抗加熱器などの他のタイプの加熱または冷却機構であってよい。
【0134】
伝熱カテーテルは、作業管腔470を備え得るカテーテルシャフト468を装備し、作業管腔470は、熱交換カテーテルが定位置にあるときには患者の体外に延び、したがって、薬剤、透視用染料などの注入に用いたり、伝熱カテーテル配置用のガイドワイヤ472を収容したりし得る。シャフトは、伝熱流体の流れのための通路(図示せず)を有するか、またはカテーテル上の熱交換器もしくはセンサ(図示せず)に連結するための電線(図示せず)をさらに含み得る。
【0135】
使用時には、伝熱カテーテル450は所望の身体位置に配置される。図20においては、カテーテルは、血液誘導スリーブ454の基端部が大動脈474内にあり、その先端部456が左総頸動脈476内にあるように配置されている。血液は大動脈を(矢印「F」で示されている)方向に流れ、弁462が開いていればカテーテル本体の基端開口部460に入り得る。大動脈内の血液と左大総頸動脈内の血液との間の圧力差は、血液を内部通路に流させるのに十分である。血液が内部通路を上流に流れているとき、血液は熱交換フィン466と熱交換すべく近接して流れ、加熱または冷却される。加熱または冷却された血液は、血液誘導スリーブにより左総頸動脈に誘導され、最後に脳を加熱または冷却された血液浴に入れる。この状態が十分な長さの時間維持されれば、脳の局所的な加熱または冷却が生じ得る。
【0136】
本発明の伝熱カテーテルの別の実施態様が図21に示されている。この図に示されているカテーテル490は、患者の身体の血管、例えば、脳領域494に通ずる大動脈内に配置するように設計された血液誘導スリーブ492を備えている。血液誘導スリーブは、実質的に円筒形であるが、カテーテル本体の肩部を形成するわずかに拡大された基端セクション496を有していてよく、この肩部は、血液誘導スリーブが冠状弓から分岐する動脈などの動脈内に配置されているときには閉鎖性肩部498としての働きをし得る。
【0137】
血液誘導スリーブは、チューブ状の形状を有し、基端開口部502から始まる基端セクション496から、先端開口部504で終端する先端まで延びる内部通路500を構成している。図17Bおよび図24Aに記載かつ示されているようなフィン付きバルーン熱交換カテーテル506などの熱交換器は、カテーテル本体内に設置され、スリーブの内部通路500内に完全に内包され得る。フィン508は、円筒形の熱交換バルーンに関して伝熱表面を増大させると共に、基端開口部から、熱交換バルーンのフィンを越えかつフィンの間を通って内部通路の先端から出る血流の流れのフィン間通路を形成する。カテーテルシャフト509は、上述の他の実施態様に関連して説明したように装備してもよい。
【0138】
図21B〜Dは、弁アセンブリ460の開閉を調節する制御システムの操作を示しており、弁アセンブリ460は、内部通路500内の血液の流れを制御するために基端開口部502などのスリーブ492のいずれの部分に沿って形成してもよい。例えば、カテーテルシャフトの周りに、スリーブ492の基端開口部の2つの小葉弁510を配置し得る。弁510は、図21Bに示されているような少なくとも1つの閉鎖位置と、図21Cに示されているような少なくとも1つの開放位置を有し得る。カテーテル本体には逆止め弁などの他の弁を選択してもよく、弁は、選択された時点にスリーブを通過する流体の量を調節するために可変度で開閉し得る。
【0139】
弁510は、図21Dのグラフに示されているように、患者の心拍に従って同期開閉し得る。大動脈血流(L/分)は拍動性であり、かつ、心拍周期中に異なる時間間隔で変動するので、比較的大量の血液が心臓から放出されるときには弁を選択的に開放し得る。同時に、血流がゆっくりのときには、血液を内部通路500内に維持するように弁を選択的に閉鎖し得る。あるいは、カテーテル本体から遠位の動脈に流入するすべての血液を最大に加熱または冷却するために、血液が内部通路を通ってさらにゆっくり流動するように弁を制御して、熱交換器上をゆっくり流れさせるようにすることができる。
【0140】
上述のように、カテーテル制御装置は、心拍、装置内または患者の体内の種々の位置での温度および圧力などの身体状態または検知刺激を同時にモニターし得る。弁510が閉鎖状態(図21B)にあるとき、血液または流体は、内部通路500内に保持され、内部に配置された熱交換器506によって有効に冷却される。閉鎖位置にある弁は、冷却された流体が脳から逆流するのを防止または最小限にし得る。血液が冷却された後、心臓がさらに血液を伝熱カテーテルの方向に送り込み始めると、弁は開放位置(図21C)をとって、比較的温かい流入血液によって、冷やされた血液を閉じ込められた冷却領域から押出すように作動し得る。その後で心臓からの血液の圧力またはサージングが低下すると、弁510は再び閉じ、脳における所望の局所的低体温レベルが得られるまでこの冷却およびポンプサイクルを繰返し続ける。図21Dは今説明したサイクルのグラフである。
【0141】
これまで説明してきた本発明の多くの実施態様は冷却装置または加熱装置として示されているが、これらの変形のいずれの組合せも温度調節装置の系列またはネットワークを構成し得るものと理解されたい。例えば、図22に示されているように、熱交換カテーテル520は、大動脈526領域に配置された複数の折り畳める冷却フィン522を有する伝熱バルーン524を備えている。適当なフィン付き伝熱バルーンは既に記載されている。熱交換カテーテルは、カテーテルシャフト528を装備し得る。熱交換カテーテルは、カテーテルシャフトに沿って冷却バルーン524とは異なる位置に形成された加熱体530を有し得る。シャフト528は、高温の伝熱媒体を加熱体に循環するための1対の長手方向通路(図示せず)および冷たい伝熱媒体を冷却バルーン522に循環するための追加の1対の通路(図示せず)を有し得る。あるいは、加熱フィン530は、抵抗加熱器または当業界では公知の他の加熱体を備え得る。抵抗加熱体の場合、電流はシャフトに巻きついているワイヤ(図示せず)を通って発熱体に流れる。
【0142】
冷却バルーン522は、絶縁底面534を備え得る。したがって、特定の方向、例えば脳に向かって流れる血液は、患者の体内の他の領域、例えば身体のもっと下の方に向かって流れる血液に対して優先的に冷却され得る。図22に示されている実施例では、伝熱領域は、湾曲した冷却バルーンを有しており、バルーンはその曲率の内径に沿って断熱され、その曲率の外径に沿っては伝熱性である。冷却バルーンは、大動脈弓内に配置し得る。血液は心臓によって(矢印Fで示された)大動脈内にポンプ輸送され、一部が冷却バルーン522に熱交換すべく近接してバルーンの頂面523を越えて流れる。この血液は冷却され、次いで、冷却された血液は自然に脳領域に流れる。内部の絶縁曲率半径525を通過して流れる血液は冷却されず、したがって、正常温度の血液は大動脈を通って身体の下方に流れる。例示されている実施例において、冷たい血液は、これらの動脈それぞれにカニューレ挿入する必要なく、大動脈弓から延びるすべての動脈を通って、脳領域に流れることに留意されたい。そのような構成においては、伝熱カテーテルに血液誘導スリーブを装備することも不要である。その理由は、カテーテルを用いなくても冷たい血液を特定の動脈に導く誘導冷却が得られるからである。
【0143】
上述のように、加熱および冷却機構は、伝熱カテーテル524のシャフト528に沿って種々の位置に形成し得る。あるいは、多重加熱および冷却カテーテルを組み合わせたり協働させたりして用いてもよい。先に述べたように、共有カテーテル制御装置は、多重装置を個別または集合的にモニターかつ制御することができ、圧力センサまたは温度センサなどの1つ以上のセンサ(図示せず)に応答し得る。
【0144】
本発明の別の態様が図23に示されており、この態様において、加熱または冷却された血液は、比較的小さい血管を通って腫瘍などの特定の位置または心臓などの器官に誘導され得る。血液誘導スリーブ522を有する伝熱カテーテル550が装備されており、このスリーブは、基端開口部554と先端セクション552を有している。血液誘導スリーブ内には、例えば、上述のようなフィン付き伝熱バルーンであってよい熱交換器558が配置されている。伝熱カテーテルは、血液誘導スリーブの少なくとも内部から先端562に向かって延びるカテーテルシャフト560を有している。スリーブの先端セクションはカテーテルシャフト564の周りで封鎖されている。カテーテルシャフト560は、その血液誘導スリーブ内の1箇所に形成されている血液流入オリフィス568、570とシャフトの先端562の間に延びる潅流管腔566を有している。血液流入オリフィスは、潅流管腔と血液誘導スリーブの内部572との間の流体連絡を与える。
【0145】
使用時には、伝熱カテーテル560は、患者の脈間構造、例えば、大動脈574内に入れ、カテーテルシャフト560の先端562が所望の位置、例えば、冠状動脈口内にあるように配置される。血液誘導スリーブ552の基端とカテーテルシャフトの先端566における大動脈内血液間の圧力差により、血液はスリーブの基端開口部554から、血液は、加熱または冷却される熱交換器と伝熱近接して内部通路を通って血液流入オリフィスに入り、カテーテルシャフトの中央管腔578を通って、中央管腔の末端から出る。このようにして、加熱または冷却された血液の流れは、特定の器官または組織、例えば、心臓または腫瘍に向かって誘導され、そのような器官または組織は加熱または冷却された血液浴に浸される。器官または組織の血液供給が十分な部分を十分な時間この方式で処置すると、当該器官または組織の局所的加熱または冷却が得られるであろう。
【0146】
中央管腔は、末端578から体外の基端開口部まで延びていてよい。このようにすると、中央管腔は、血管形成術および血管形成術用のガイドカテーテルとしての働きを含めた上述のすべての用途のための作業管腔として機能し得る。中央すなわち作業管腔は、ガイドカテーテルとして機能し、かつ中央すなわち作業管腔を介した血管形成術用カテーテルの挿入と冷血液の潅流とを同時に可能にするような大きさにし得る。
【0147】
図17に示した熱交換バルーンの代替構造が図24Aに示されており、この構造において、熱交換領域は、中央の折り畳める管腔908の周りに配置された一連の3つの折り畳めるバルーンローブ902、904、906を用いて形成されている。2つの通路、流入通路912と流出通路914を有する基端シャフト910が形成されている。シャフトの内部は、ウェブ916,917によって2つの管腔に分割されているが、これらの管腔はシャフトの内部で等部分を占めているのではない。以下に説明する理由のために、流入通路は内部の円周の約1/3を占め、流出通路は内部の円周の約2/3を占めている。
【0148】
カテーテルの熱交換領域において、シャフト910と中央の折り畳み管腔908を形成するチューブ911との間には遷移部915が形成されている。流出通路は閉鎖されており、チューブ911は、シャフト910の上に、例えば糊付けにより遷移部915で固定されており、シャフトはチューブ(図示せず)で終端している。このようにすると、図24Cに示されているように、カテーテルのこの部分の流入通路はシャフトの全周を占める。バルーンの先端では、流入通路と3つの折り畳みバローンとの間に流入オリフィス918、920、922が形成されている。熱交換領域の基端では、各バルーンの内部とシャフトの流出通路との間に流出オリフィス924、926、928が形成されている。図30Dに示されるように、流出通路の構造は、3つのバルーンそれぞれの内部連絡が可能になるようになっている。
【0149】
熱交換流体(図示せず)は、シャフト912内の流入通路を下り、管腔908をさらに下って、熱交換領域の先端まで流れ、流入オリフィス918、919、920を通って管腔を出てバルーンローブ919、921、923の内部管腔に入り、3つのバルーンから戻り、流出オリフィス924、926、928からシャフトに再び入り、次いで流出通路914を下ってカテーテルの基端に向かうことが理解されよう。このように、熱交換流体は、バルーンを通って循環し、熱交換流体が血液より温かい場合にはバルーンと伝熱近接して流れる血液に熱を加え、熱交換流体が血液より冷たい場合には血液から熱を除去し得る。バルーンを形成する材料は、バルーン内部の熱交換流体とバルーンの表面と伝熱近接して流れる血液などの体液との間で十分な熱交換を可能にする材料からなる。そのような適切な材料の1つは、熱交換流体の適切な流れに必要な圧力にも十分耐え得る強度を有する極めて薄いプラスチック材料である。
【0150】
ここで記載したのと同じタイプの熱交換バルーンを図17と共に使って、熱交換流体とバルーンに対して熱交換すべく近接して流れる血液との相対温度に応じて血流に熱を加えるか血流から熱を除去し得ることも容易に理解されよう。すなわち、装置内の熱交換流の温度を制御するだけで、同じ装置を同じ位置で交互使用して加熱または除熱し得る。
【0151】
熱交換装置は、熱交換装置と1セットの熱交換装置の使用説明書とからなるキットとしても供給し得る。熱交換装置は、例えば、本出願に記載のような熱交換カテーテルを包含し得る。使用説明書は、一般に、体液含有領域への熱交換装置の挿入法と、体液の温度に変化を与える熱交換装置の温度の設定方法とを使用者に教示する。使用説明書は、本出願に記載されている目的のいずれかを達成するために体液を加熱または冷却する方法を使用者に教示し得る。
【0152】
上述の用途に関連して本発明のすべての態様を説明したが、種々の実施態様および方法についての上記説明は限定的な意味に解釈してはならない。上記は、例示および説明の目的で呈示されている。本発明のすべての態様は、本明細書に記載されている、多様な条件および変数に依存する特定の描写、形状または相対比率には限定されないものと理解されたい。本明細書は、包括的であること、すなわち、本発明をここに開示されている厳密な形態に限定することを意図するものでない。開示されている発明の特定の実施態様の形態および詳細における種々の変更および実質的でない変更ならびに本発明の他の変形は、本発明の開示を参照すれば当業者には自明であろう。したがって、添付特許請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲内に含まれるような、記載された実施態様の変更または変形をすべて包含するものとする。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、患者の体温を選択的に変更および調節することと、身体構造内の特定標的部位に送達される流体の温度を制御することに関する。詳しくは、本発明は、カテーテルを患者の血管に挿入して、血管内を流れる血液からまたは血液へと選択的に熱を伝達することにより、低体温症または高体温症を治療または誘発する方法および装置と、流体が患者内に存在する間に、標的位置へ送達される同流体の温度を変化させる方法および装置とに関する。
【0002】
本発明はさらに、全身の温度と脳を始めとする体の選択標的部位の温度とを、選択的に変更および調節することに関する。詳細には、本発明は、伝熱カテーテルの伝熱部により脳の温度を下げて、局所的低体温症と温度調節とを提供する脳の領域に接触しているか、同領域内を循環しているか、同領域周囲を循環しているか、同領域に通じている流体を冷却する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
以下の特許出願は、1996年1月11日出願の出願番号第08/584,013号と、1996年12月19日出願の出願番号第08/769,931号との一部継続出願である。同第08/584,013号は、1993年2月10日出願のすでに放棄された出願番号第08/015,774の継続出願であって、かつ米国特許5,486,208として1996年1月23日に発行された、1994年10月18日出願の出願番号第08/324,853号の一部継続出願である。上記文献はすべて本願に参照として組み込まれる。
【0004】
通常の環境下では、人体の体温調節システムは、約37℃(98.6°F)という一定温度を維持している。環境への熱損失は、体内で産生される内部熱によって、正確に平衡を保たれている。
【0005】
低体温症は、一般に体芯温度が35℃以下であることを特徴とする、体温が異常に低い状態のことであり、低体温症は、その重傷度によってさらに臨床的に定義され得る。例えば、体心温度が32℃から35℃の範囲内では穏和な低体温症、30℃から32℃の範囲内では中程度の低体温症、24℃から30℃では重症の低体温症と記述され、24℃よりも低い体温は超低体温症を構成し得る。上記の範囲は、議論のための有効な基礎を提供し得るが、それらは絶対的なものではなく、定義は医学論文に示されているように大いに変化する。
【0006】
高体温症は、体温が異常に高い状態として定義され、高体温症は、高温の環境または周囲に曝されたり、精を出しすぎたり、または熱が出たりした結果起こり得る。体心温度は、熱などの症状により38℃から41℃の範囲となり、暴露および精の出しすぎの場合、多いに高くなり得る。低体温症と同様、高体温症は死に至る可能性がある危険な状態である。
【0007】
低体温症および高体温症はいずれも有害であると共に場合によっては治療を必要とするが、場合によっては、高体温症または低体温症は、特に低体温症は、治療上または他の点で利点があり、それゆえ意図的に誘発されることもある。例えば、心筋梗塞の硬化の場合や心臓の手術の際の心停止の期間により、脳が損傷を受けたり、他の神経が損傷を受けたりする可能性がある。低体温症は心血管手術の間の許容された神経保護手段として医療コミュニティにおいて認められており、したがって、患者は心血管手術の間、低体温症を誘発させた状態にしばしば維持される。その上、低体温症は、脳外科手術の間に神経保護手段として誘発されることもある。また低体温症は、例えば頭部外傷、脊髄外傷、脳卒中(卒中(stroke)と称されることもある)、脊髄手術、または動脈瘤の治療のように脳もしくは脊髄に対する血流を中断するか損ない得る手術や、神経保護が望ましい他の種類の手術を受ける患者にとって、他の状況でも有益であり得る。
【0008】
神経組織、つまり脳や脊髄を始めとする神経系のすべての組織は、虚血性心疾患または出血性心疾患、心停止を始めとする任意の理由による血液の欠乏、大脳内出血、および頭部外傷を含むがそれらに限定されない血管疾患の過程によって特に損傷を受けやすい。それらの各例において、脳組織に対する損傷は、虚血、圧力、浮腫、または他のプロセスによって生じ、この結果、脳の機能の喪失および永久的な神経学的欠損が起こり得る。脳の温度を下げることにより、グルタミン酸塩などの神経伝達物質の傷害後上昇の鈍化、脳の代謝速度の減少、細胞内カルシウムの減少、細胞内タンパク質合成阻害の防止、およびフリーラジカル形成の減少はもちろん、他の酵素カスケード、遺伝的応答さえも含めた、いくつかのメカニズムによる神経保護が与えられる。このように意図的に誘発した低体温症は、外科手術の際の脳や他の神経学的組織への損傷の一部を防止し得ると共に、または,卒中、脳内出血、および外傷の結果としての脳や他の神経学的組織への損傷の一部を防止し得る。
【0009】
特に卒中の治療では、意図的に誘発した低体温症を治療上利用し得る。卒中(脳卒中と称されることもある)は特定の脳の領域内の血管または同領域に通じる血管の遮断(虚血性卒中)または破裂(出血性卒中)に起因して起こる重度に衰弱した複雑な疾患である。卒中の間、脳細胞は酸素欠乏によって損傷を受けるか、圧力の増加によって損傷を受ける。そのような現象は、最終的には脳組織の死や壊死に至り得る。一般に、卒中の治療のための介入における少なくとも1つの目標は、脳組織の機能をできるだけ多く維持することにある。しかしながら、現在の卒中に対する治療は、本質的に主として支持的なものである。例えば血塊溶解薬のような新しい治療薬を利用できるが、それらは虚血性卒中の治療にしか適していないことがあり、脳内出血に関する副作用を避けるために、初期卒中症状のうちの短時間(数時間内)に一般に使用しなければならない。実際、患者は卒中を発症した後数時間経たないと医療施設に到着しないことが多いため、この時間領域で卒中を治療することは困難である。その結果、卒中のほとんどは医学的治療では積極的に治療されない。上記時間領域を延長するための治療や、脳細胞が死なないように保護する治療法は、患者のケアに大きな影響を及ぼし得る。
【0010】
虚血に関する実験的研究によって、卒中または虚血性傷害の最中かそのすぐ後に低体温症処理すると、動物における梗塞した脳組織の体積が減少することが示されている。それゆえ、卒中を患っているか最近患った患者に低体温症を適用することは有効であり得ると考えられている。
【0011】
低体温症が神経保護手段として認容されているにもかかわらず、低体温症は外科的設定の他では広くは使用されていない。また、現行の実施のほとんどは、全身性の治療によって全身低体温症を誘発することにより、低体温症を脳に提供することを意図している。しかしながら、全身低体温症は多くの困難さを呈示し、全身麻酔下にない患者に実施するのは厄介である。患者の全身の温度を下げるには、かなりの長い時間がかかるだけでなく、心不整脈、血液凝固の問題、感染への罹患率の増大、および顕著な震えなどの不快感の問題を始めとする、心身に有害な低体温症の影響を患者が受ける。
【0012】
例えば正常体温(通常37℃)を維持するための体温の調節は、しばしば好ましい。例えば、全身麻酔下の患者では、体の正常体温を調節する機構が完全に機能していない可能性があり、麻酔医は患者の体温を人為的に調節する必要があり得る。同様に患者は、例えば大手術の間に大量の熱を環境へと失ってしまう可能性があり、助けを受けていない患者の体ではその熱の損失を補うのに十分な熱を発生させることができない可能性がある。例えば正常体温維持用の熱を加えることによる、体温を調節する装置および方法が望ましい。
【0013】
特に外科的設定において、血液または他の流体を患者の体外で加熱または冷却してから、体または体内の標的部位を加熱または冷却するために体内に導入するということが時として行われる。しかしながら、患者の体外で流体を加熱または冷却することは、煩雑であると共に精巧な装置を必要とする。例えば、外科手術において、患者の温度はバイパス機械によって調節し得るが、そのバイパス機械で体の外において大量の患者の血液を除去し、加熱または冷却し、患者の血流に再び導入する。この処置の特定用途の1つは、心臓の外科手術の間にしばしば誘発される全身低体温症である。他の例には、神経外科手術や、大動脈または他の血管の外科手術の間に誘発される低体温症が含まれる。
【0014】
バイパス機械などの低体温症を誘発するための外部処置の使用は、大量の患者の血液を長期間ポンプで汲み出す極めて侵襲的な処置である。血液を外部に汲み出すことは、血液にとって有害であり、血液を連続して長期間(例えば1または2時間よりも長い間)患者に汲み入れることは、通常避けられる。さらに、そのような処置は、例えばヘパリンにより卒中患者で別の不都合な結果を示し得る血液凝固を防ぐなどの、患者の全身性治療に必要とされ得る。
【0015】
ポンプによる外部への出し入れを要しない、患者の血液に熱を加えるか患者から熱を除去する手段が、提案されている。例えば、低体温症または高体温症を患っている患者の治療用に開発されたある特定のカテーテル構造がギンズバーグ(Ginsburg)に付与された特許文献1に記載されている。同特許の開示全体は参照により本願に組み込まれる。同特許は、本願が優先権を主張している前述出願のうちの1つから発行された。同特許に開示されたカテーテルは、血管と、加熱または冷却されたカテーテルの一部とに挿入され、患者の血に熱を伝えることにより、患者の体温全体に影響を及ぼす。そのような装置および方法は、血液のポンプによる外部への出し入れに付随する問題を回避し得るが、体全体が低体温症になった時に生じる問題を排除しない。
【0016】
脳の局所的低体温症を達成するための試みがなされており、それには、例えば頭部を冷却したヘルメットまたは覆いに設置する試みや、さらには頭部の局所に冷たい溶液を注入する試みがある。頭部の表面を直接冷却することにより脳を冷却する試みは、頭蓋の隔離的性質のために脳の中心温度を有効に下げることが困難であったり、頭部表面が冷却された場合に、脳自体に十分な伝熱循環を血流が提供することができないことがあったりするという要因から、実際的でないか、効果がないことが判明している。患者、特に全身麻酔下にない患者は、頭部が冷たい溶液に浸されたり直接曝されたりするのに耐えたり、頭部表面が冷却されたりするのに耐えることが困難であると感じるかもしれない。
【0017】
内部での熱付加または冷却による、標的位置への熱の伝達または標的位置からの熱の伝達を促進する装置は、有利である。バルーンカテーテルで特定組織と直接接触させることにより熱を伝えることが、当該技術分野において周知である。例えば、スピアーズ(Spears)に付与された特許文献2では、加熱されたバルーンが、分裂した組織を融合させるために、同バルーンの表面から、経皮的経管冠動脈形成術(PTCA)の間に拡張された動脈壁に、直接熱を加えることが記載されている。しかしながら、この装置は、問題の血管壁と大いに加熱されたバルーン表面との間の直接的な接触により作動していた。
【0018】
バルーン内を通過する伝熱媒体の連続流によって進行中の伝熱バルーンとして機能し得るバルーンも示されている。例えば、サーブ(Saab)に付与された特許文献3では、隣接組織への伝熱調節用にバルーン内に伝熱液体の連続流を維持するために、同心の流入および流出管腔の各々が伝熱バルーン内で終端する。
【0019】
タヘリ(Taheri)に付与された特許文献4は、加熱された塩類溶液などの加熱された流体が、脈打つバルーンの中を通って循環している、バルーンを開示している。伝熱液体がバルーンを通過して流れる時に同液体からの熱が血液に与えられて、患者の低体温症が治療され得る。影響を受ける血液の流れは、通常一定方向に誘導されることもなく、標的部位の温度がタハリ(Tahari)の加熱バルーンによって変更されるとは、開示されていない。血管を遮断しているバルーンの基端側から先端側へと血液を流す通路を提供するための、PTCAに使用されるバルーンなどのバルーンの形態も示されている。例えば、そのような自動潅流バルーン血管形成術用カテーテルが、サホタ(Sahota)に付与された特許文献5に示されており、血管形成術での使用について論じられているサーブ(Saab)に付与された特許文献6に示された複数管腔バルーンは、バルーンを膨張させて血管形成術のための圧力を血管壁および他の完全に遮断された血管通路に対して加えるようにした時に、バルーン血管形成用カテーテルの基端側から先端側へ血液が潅流するように構成された、複数管腔バルーンカテーテルを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第5,486,208号明細書
【特許文献2】米国特許第5,019,075号明細書
【特許文献3】米国特許第5,624,392号明細書
【特許文献4】米国特許第5,269,758号明細書
【特許文献5】米国特許第4,581,017号明細書
【特許文献6】米国特許第5,342,301号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
体内で血液などの液体を加熱または冷却できると共に、その液体を加熱または冷却した後で、標的位置へ誘導することができる装置を考案することが望ましい。患者自身の心臓のみをポンプとして使用して、同液体を所望位置に誘導することができる装置が考案されれば、特に有利である。また、患者の体の標的部位に、同標的部位の温度に影響を及ぼすのに十分な長さの間、加熱または冷却された血液を誘導する方法が考案されれば、それもやはり有利である。
【0022】
低体温症の誘発による、組織(特に神経組織)を保護するための患者の治療方法が望ましい。特的標的組織に誘導された体液をその場で(in situ)冷却することによる、特的標的組織での低体温症の誘発による同特定標的組織の保護は、特に有利である。
【0023】
簡単かつ予測可能な方法でそのような装置を制御するためのシステムもまた望ましい。そのようなシステムが、患者の標的部位の温度に予測可能かつ選択的に影響を与える装置を制御するための患者から得られたフィードバックデータと関連させて、同装置を制御できれば、特に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上述の目的を解決するために、請求項1に記載の発明は、哺乳動物患者の解剖学的構造内に挿入可能なカテーテル装置であって、同解剖学的構造を通って体液は患者の標的領域まで流れることが可能であり、同カテーテル装置は標的領域の温度を変更させるために、体液を用いてその場での熱交換を果たすように機能し、同カテーテル装置は、基端および先端を備えた細長い可撓性カテーテルと、同可撓性カテーテルの全長はその基端と先端との距離として定義されることと、同熱交換流体がその内部を循環可能な少なくとも1つの流体管腔と、同カテーテル上の第1位置に配置される熱交換器と、同熱交換器は、熱交換器と熱交換すべく近接させた状態で流れる体液と熱交換器内を通って循環する熱交換流体との間で、熱を交換するように機能することと、同第1位置は同カテーテルの全長よりも短く延びることと、同熱交換器の少なくとも一部が配置された第1位置を含めたカテーテルのセグメント周囲に形成された体液誘導スリーブと、同体液誘導スリーブは、体液誘導スリーブとカテーテルとの間に体液が流れるスペースを形成することと、体液誘導スリーブは熱交換器よりも基端側に配置された体液流入口と、熱交換器の少なくとも一部よりも先端側に配置された体液流出口と、を有し、体液は、体液流入口を通り流れスペースに入り、熱交換器の少なくとも一部と熱交換すべく近接した状態で流れスペースの中を流れ、次に、体液流出口から出て、患者の身体の前記標的領域と流体の行き来が可能に連通している通路に至ることと、を備えたカテーテル装置、を提供する。
【0025】
請求項2に記載の発明は、患者の身体の標的領域の温度を調節するための請求項1に記載のカテーテル装置において、体液は第1直径を有する第1解剖学的導管を通って標的領域に流れ、第1解剖学的導管は、第1直径よりも大きい第2直径を有する第2解剖学的導管と、接続かつ流体の行き来が可能に連通され、体液誘導スリーブは先端部分と基端部分とを有し、先端部分には体液流出口が配置され、基端部分には体液流入口が配置され、先端部分は、第1解剖学的導管の中を進むと同時に基端部分は第2解剖学的導管の内部に配置されたまま残るような大きさに形成され、第2解剖学的導管から来た体液は、体液流入口を通り流れスペースに入り、熱交換器と熱交換すべく近接した状態で流れスペースの中を流れ、次に、体液流出口から出て、第1解剖学的導管に入り、そして患者の身体の標的領域に至る、ことをその要旨とする。
【0026】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のカテーテル装置において、体液誘導スリーブの先端部分の断面の直径が体液誘導スリーブの基端部分の断面の直径よりも小さい、ことをその要旨とする。
【0027】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のカテーテル装置において、先端部分は、先端部分に形成された肩部を有し、肩部は解剖学的導管内でぴったり合う封鎖を形成する大きさおよび形状にされ、それによって第2解剖学的導管から第1解剖学的導管への体液のほぼすべての流れが、体液誘導スリーブを通って流れるようにされる、ことをその要旨とする。
【0028】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のカテーテル装置において、熱交換器は、熱交換流体がその内部を循環する少なくとも1つのバルーンを有し、熱交換フィンは複数のローブを備える、ことをその要旨とする。
【0029】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載のカテーテル装置において、少なくとも1つの熱交換フィンは、少なくとも1つの外側に延びる長手方向フィンを備える、ことをその要旨とする。
【0030】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載のカテーテル装置において、少なくとも1つの熱交換フィンは、少なくとも1つの外側に延びる環状フィンを備える、ことをその要旨とする。
【0031】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載のカテーテル装置において、少なくとも1つの熱交換フィンは、少なくとも1つの外側に延びるらせん状フィンを備える、ことをその要旨とする。
【0032】
請求項9に記載の発明は、請求項1に記載のカテーテル装置において、少なくとも1つの熱交換フィンは、複数の外側に延びる突起を備える、ことをその要旨とする。
請求項10に記載の発明は、請求項1に記載のカテーテル装置において、カテーテルは患者の体内に挿入される挿入部と作業管腔とをさらに備え、挿入部は先端から基端より短い地点まで延び、作業管腔は挿入部の少なくとも一部を通って延びる、ことをその要旨とする。
【0033】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載のカテーテル装置を備えたシステムであって、作業管腔を通過可能な大きさに形成されたガイドワイヤとさらに組み合わされたシステムを提供する。
【0034】
請求項12に記載の発明は、請求項10に記載のカテーテル装置を備えたシステムであって、作業管腔内に薬剤を注入する装置とさらに組み合わされたシステムを提供する。
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載のシステムにおいて、注入装置が、血栓溶解剤、抗凝固剤、神経保護剤、バルビツール剤、抗発作剤、酸素化潅流液、血管拡張剤、血管痙攣防止剤、血小板活性化防止剤、および血小板凝着防止剤、から成る薬剤の群から選択される薬剤を収容する、ことをその要旨とする。
【0035】
請求項14に記載の発明は、請求項10に記載のカテーテル装置を備えたシステムであって、作業管腔を通過可能な診断用プローブとさらに組み合わされたシステムを提供する。
【0036】
請求項15に記載の発明は、請求項14に記載のシステムにおいて、診断用プローブは、血管造影カテーテル、温度センサ、圧力センサ、血液ガスセンサ、および酵素センサ、から成る群より選択される、ことをその要旨とする。
【0037】
請求項16に記載の発明は、請求項10に記載のカテーテル装置を備えたシステムであって、作業管腔にX線撮影用の造影剤を注入する装置、及び作業管腔に注入されたX線撮影用の造影剤をイメージングするイメージング装置、とさらに組み合わされたシステムを提供する。
【0038】
請求項17に記載の発明は、請求項10に記載のカテーテル装置を備えたシステムであって、作業管腔を通過可能な治療装置とさらに組み合わされたシステムを提供する。
請求項18に記載の発明は、請求項17に記載のシステムにおいて、治療装置は、血管形成術カテーテル、塞栓摘出用カテーテル、閉塞部材送達カテーテル、塞栓部材送達カテーテル、電気燒灼装置、およびマイクロカテーテル、から成る治療装置の群から選択される、ことをその要旨とする。
【0039】
請求項19に記載の発明は、請求項1に記載のカテーテル装置において、体液流入口には弁が設けられ、弁は開放状態と閉鎖状態との間で作動可能であり、開放状態では体液の流れが体液流入口を通って体液誘導スリーブの中に入り、閉鎖状態では体液の流れが体液流入口を通って体液誘導スリーブから外へ出るのを防止する、ことをその要旨とする。
【0040】
請求項20に記載の発明は、請求項1に記載のカテーテル装置において、カテーテルは先端シャフト部分を有し、先端シャフト部分は体液誘導スリーブよりも先端側で体液誘導スリーブ内部から延び、先端シャフト部分はその内部を通る中央管腔を備え、中央管腔は流れスペースと第1位置で流体の行き来が可能に連通し、通路と連通し、標的領域と第2位置で流体の行き来が可能に連通する、ことをその要旨とする。
【0041】
請求項21に記載の発明は、請求項20に記載のカテーテル装置において、体液誘導スリーブは第1位置よりも先端側の先端シャフト周囲で封鎖される、ことをその要旨とする。
【0042】
請求項22に記載の発明は、その場での熱交換を果たすために、哺乳動物患者の身体の流体含有部分に配置されるカテーテル装置であって、同カテーテル装置は、基端および先端を備えた細長い可撓性カテーテルと、可撓性カテーテルの全長はその基端と先端との距離として定義されることと、可撓性カテーテルは患者に挿入される挿入部を備え、挿入部は先端から基端より短い地点まで延びることと、カテーテル上の第1位置に配置される熱交換器と、熱交換器は、熱交換器と熱交換すべく近接させた状態にある体液と熱交換器内を通って循環する熱交換流体との間で、熱を交換するように機能することと、第1位置はカテーテルの全長よりも短く延び、熱交換器は湾曲され、その曲率の外径に沿った外表面を有すると共にその曲率の内径に沿った内表面を有し、外表面および内表面は実質的に異なる熱透過率を有することと、を備えたカテーテル装置、を提供する。
【0043】
請求項23に記載の発明は、請求項22に記載のカテーテル装置において、上側表面は下側表面よりも熱透過率が実質的に大きい、ことをその要旨とする。
請求項24に記載の発明は、請求項23に記載のカテーテル装置において、頭部に流れてくる血液が上側表面と熱を伝えるべく近接した状態で通過するように、ヒト患者の大動脈の湾曲に沿って配置される大きさおよび形状に形成される、ことをその要旨とする。
【0044】
請求項25に記載の発明は、患者の温度に制御可能に作用するシステムであって、同システムは、基端及び先端を備えた細長い可撓性カテーテルと、熱交換器と、を有するカテーテル装置と、熱交換器は、同熱交換器と熱交換すべく近接させた状態にある体液と同熱交換器内を通って循環する熱交換流体との間で、熱を交換するように機能することと、患者からのデータを検知する複数のセンサと、センサの少なくとも一つからのデータは体温を含むことと、センサの少なくとも一つからのデータに応答し、目標とする体温を達成及び維持するために、センサからの信号を受け取り、カテーテル装置の運転を制御する制御装置と、を備えたシステム、を提供する。
【0045】
請求項26に記載の発明は、請求項25に記載のシステムにおいて熱交換ユニットをさらに備え、熱交換ユニットは熱交換流体と熱を交換するように機能する、ことをその要旨とする。
【0046】
請求項27に記載の発明は、請求項26に記載のシステムにおいて、熱交換ユニットは固体熱電冷却器からなる、ことをその要旨とする。
請求項28に記載の発明は、請求項26に記載のシステムにおいて、目標パラメーターが温度であり、センサが温度センサであり、かつ制御装置が熱交換ユニットを作動させるように機能し得る、ことをその要旨とする。
【0047】
請求項29に記載の発明は、請求項25に記載のシステムにおいて複数のカテーテル装置をさらに備え、制御装置がカテーテル装置の各々を制御するように機能し得る、ことをその要旨とする。
【0048】
請求項30に記載の発明は、請求項29に記載のシステムにおいて、少なくとも1つのカテーテル装置が第1位置において前記体液に熱を与え、少なくとも1つのカテーテル装置が第2位置において前記体液から熱を奪う、ことをその要旨とする。
【0049】
請求項31に記載の発明は、患者の温度に制御可能に作用するシステムであって、同システムは、各々が基端および先端を備えた細長い可撓性カテーテルと、カテーテル上の第1位置に配置された熱交換器と、を有する複数のカテーテル装置と、可撓性カテーテルの全長はその基端と先端との距離として定義され、可撓性カテーテルは患者の体内に挿入される挿入部を有し、挿入部は先端から基端より短い地点まで延び、熱交換器は、熱交換器の表面から延びる複数の熱交換フィンを有し、熱交換フィンは熱交換を高めるための増大された表面積を有し、熱交換器は、熱交換器と熱交換すべく近接させた状態にある体液と熱交換器内を通って循環する熱交換流体との間で、熱を交換するように機能することと、第1位置は前記カテーテルの全長よりも短く延びることと、各々が患者からのデータを検知し、そのデータに応答して信号を生じる、複数のセンサと、オペレーターが目標パラメーターを特定し得る手動入力装置と、センサからの信号および目標パラメーターを受け取り、信号に応答し、かつ目標パラメーターに関連してカテーテル装置の各々の運転を制御する制御装置と、を備えたシステム、を提供する。
【0050】
請求項32に記載の発明は、請求項31に記載のシステムにおいて熱交換ユニットをさらに備え、熱交換ユニットが前記熱交換流体と熱を交換するように機能する、ことをその要旨とする。
【0051】
請求項33に記載の発明は、請求項32に記載のシステムにおいて、熱交換ユニットが固体熱電冷却器からなる、ことをその要旨とする。
請求項34に記載の発明は、請求項32に記載のシステムにおいて、目標パラメーターが温度であり、センサが温度センサからなり、かつ制御装置が熱交換ユニットを作動させるように機能し得る、ことをその要旨とする。
【0052】
請求項35に記載の発明は、請求項31に記載のシステムにおいて、少なくとも1つのカテーテル装置が第1位置において体液に熱を与え、少なくとも1つのカテーテル装置が第2位置において体液から熱を奪う、ことをその要旨とする。
【0053】
本発明は、熱交換するように近接して流れる血液または他の体液との間で熱を交換するように機能する同熱交換器を備えた細長い可撓性カテーテルを一般に有する熱交換カテーテル装置を提供する。本発明は、哺乳動物患者の体の特定領域(例えば、脳、脳の選択部分、脊髄、器官、腹腔内器官、脾臓、肝臓、心臓、心臓の一部、肺、腎臓、筋肉、腫瘍、外傷が生じた部位)を選択的に加熱または冷却するためのそのような熱交換カテーテル装置の使用方法に関する。
【0054】
本発明の装置によれば、i)基端と先端とを有する細長いカテーテルと、前記可撓性カテーテルの全長は、その基端からその先端までの距離として定義されることと、ii)熱交換流体が内部を循環可能な少なくとも1つの流体管腔と、iii)カテーテル上の第1位置に配置された、熱交換フィンを備えた熱交換器と、患者の外から延び、患者に挿入されるカテーテルの少なくとも一部を通る作業管腔と、を一般に備え得る熱交換カテーテル装置が提供される。熱交換器は、交換器と熱交換すべく近接させた血液とカテーテル内を通って循環する熱交換流体との間で、熱を交換するように機能する。熱交換器が配置される「第1位置」は、カテーテル全長よりも短く構成され、通常カテーテルの先端か先端付近にある。熱交換器は特に、内部に熱交換流体を循環させ得るバルーンまたは他の構造を備えうる。熱交換フィンは、熱交換が起こる効率を高めるためのバルーンの複数のローブであるか、表面積を増大させる突出部(例えば、外側に延びる突起、リブなど)であり得る。また、カテーテル装置のいくつかの実施形態において、熱交換器が配置された(かつ熱交換器より基端側へ一定距離延び得る)カテーテルの一部の周囲には体液誘導スリーブが形成され、熱交換器と熱交換すべく近接させた血液または他の体液を誘導し得る。そのような体液誘導スリーブは、利用し得る体液(例えば、血液)を、スリーブの基端が配置されている、ある解剖学的導管(例えば下行大動脈)から、スリーブの先端が配置されている第2の解剖学的導管(例えば、頸動脈)まで誘導するために使用することができる。スリーブは、スリーブの外側とおよび第2の解剖学的導管との間にぴったり合う封鎖を形成する肩部を形成するような大きさおよび形状にし得る。
【0055】
さらに、カテーテル装置は、(ガイドワイヤまたは塞栓摘出カテーテルなどの)装置や、または作業管腔に挿入される薬剤(血栓溶解剤またはバルビツール剤などの)と組み合わせて、設けられ得る。
【0056】
本発明のカテーテル装置は、絶縁面と伝熱面とを有する湾曲した熱交換バルーンをさらに備えてもよく、脳へ流れる血液が伝熱面を通ると共に体の他の領域に流れる血液が絶縁面を通るように配置され得る。
【0057】
最後に、本発明の他の態様は、温度などの体の状態を検知すると共に検知した体の状態に応答してカテーテルを制御する制御システムと組み合わせたカテーテル装置である。その制御は、患者の標的領域が予め選択した温度に達した時に熱交換器をオンオフ切換えたり、予め選択した温度から温度が外れた時に熱交換器を再び作動させたりするなどである。
【0058】
本発明の方法によれば、哺乳動物患者の体の選択領域の温度を調節または変更する方法が提供される。そのような方法は以下の工程を含む。
a.患者の体の解剖学的導管を通って選択領域まで体液が流れている患者の体の前記解剖学的導管内に、上述の特徴を有するカテーテル装置を挿入し、解剖学的導管を通って選択領域まで流れる体液が前記選択領域に達する前に熱交換器と熱交換すべく近接させた状態で通過するように、カテーテルを配置する工程
b.カテーテル装置の熱交換器を使用して、熱交換器と熱交換すべく近接させた状態で通過する体液の温度を変更し、続いて前記体液が患者の体の前記選択領域の温度を変更する工程。
【0059】
さらに本発明の方法によれば、脳(例えば、右総頸動脈、左総頸動脈、無名動脈、右内頸動脈、左内頸動脈など)に通じる血管内にカテーテル装置を配置し、同カテーテル装置を脳または脳の一部を冷却するために使用して、卒中または他の傷害(例えば、虚血の器官、低酸素症、出血、外傷など)の後の神経の損傷を抑止し得る。
【0060】
さらに本発明の方法によれば、選択した身体領域まで流れている体液(例えば、血液)を選択的に加熱または冷却し、続いてそのような体液を、同体液が選択身体領域から流れている時の元の温度かそれに近い温度に戻すために、上述の特徴を有する2つ以上のカテーテル装置が、患者の体内の異なる複数の部位に同時に配置される。これに関して、脳を潅流して脳卒中または他の傷害を受けた後の脳を冷却するために、ある熱交換カテーテル装置が動脈に配置され、血液が脳内を循環した後でその血液を再び温めるためか、患者の体の脈幹を流れている血液に熱を加えて冷却領域以外の位置で体を正常体温に維持するために、第2のカテーテルが下大静脈または他の適切な静脈に配置され得る。
【0061】
本発明の他の態様は、所定温度が標的組織で設定され得るか維持され得るように、体液を用いて熱交換を制御する方法を提供する。さらなる態様として、所定温度が標的組織に対して設定され(例えば脳に対して特定の低体温の温度が設定され)、別の温度が別の領域に対して選択され(例えば体芯温度は正常体温であり)、2つのカテーテルは両方の予め選択した温度を維持するために同時に制御される。
【0062】
本発明のさらなる態様および詳細は本明細書において以下に述べる好ましい実施形態の詳細な説明を読んで理解すれば、関連技術の当業者には明らかである。以下に開示した各実施形態は、本発明の任意の他の変形および態様の、単独か組み合わせたものとみなし得る。
【発明の効果】
【0063】
本発明によれば、体内の標的領域の温度を変更させるために、体液を用いてその場での熱交換が可能なカテーテル装置及び同カテーテル装置を含むシステムが提供された。更に、患者の標的部位の温度に予測可能かつ選択的に影響を与える装置を、同患者から得られたフィードバックデータと関連させて、制御可能なシステムが提供された。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】経皮的に患者の血管内に挿入された本発明のカテーテルを示す図。
【図2】加熱または冷却された流体がバルーンを通って流れ、バルーンがカテーテルの先端近くに増大された表面積を提供するカテーテルを示す図。
【図3】先端の抵抗加熱体と伝熱表面積をさらに増大させるための長手方向リブを有するバルーンとを備えたカテーテルを示す図。
【図4A】カテーテル本体の先端に長手方向フィンを有するカテーテルを示す図。
【図4B】カテーテル本体の先端に半径方向リブを有するカテーテルを示す図。
【図4C】カテーテルの先端に伝熱面積を増大させるためのらせん状フィンを有するカテーテルを示す図。
【図5】本発明の制御機構を説明するフローチャート。
【図6】図5の制御機構の影響下における標的組織の温度の略図。
【図7】ワイヤコイル抵抗加熱器および金属ホイル冷却体を用いる、患者の血流を選択的に加熱および冷却するための好ましいカテーテルを示す図。
【図8】患者の血管内に挿入された本発明のカテーテルの先端を示す図。
【図8A】温度変更領域を示す、A−A線に沿って切断された図8のカテーテルの断面図。
【図9】本発明の内部管腔を通過する流体を加熱または冷却するための典型的なカテーテルの側面図。
【図10】図9に示されているものと類似のカテーテルの先端のさらに詳細な図。
【図11】本発明の内部管腔を通過する流体を加熱するための代替カテーテルの側面図。
【図11A】A−A線に沿って切断された図11のカテーテルの側面図。
【図12】本発明の内部管腔内に体液を流入させるための複数の潅流オリフィスを有する、内部管腔を通過する流体を加熱または冷却するためのカテーテルの別の代替実施態様の側面図。
【図13】液体が外部から内部管腔内に注入されるときに、内部管腔内への体液の流入を防止するように閉鎖される複数のフラップを示す、図12に同じように示されているカテーテルの一部の破断側面図。
【図14】流体が外部から内部管腔内に注入されないときに、内部管腔内に体液を流入させるために開放しているフラップを示す、図13に同じように示されているカテーテルを示す図。
【図15】モニター装置、制御装置および複数の伝熱部を有する熱カテーテルを備え得る、患者に連結された伝熱カテーテルシステムの斜視図。
【図16】制御装置、使い捨て部品、再使用可能部品、熱交換バルーンカテーテルおよび種々のセンサを有する伝熱カテーテルの略斜視図。
【図17A】左総頸動脈内に配置された本発明の変形伝熱カテーテルの略斜視図。
【図17B】伝熱流体の循環を支持するためのバルーン伝熱部を有する、本発明の1つの態様によるフィン付き熱バルーンカテーテルの先端部の略斜視図。
【図17C】C−C線に沿って切断された図17Bに示されているカテーテルの略断面図。
【図17D】D−D線に沿って切断された図17Bに示されているカテーテルの略断面図。
【図17E】E−E線に沿って切断された図17Bに示されているカテーテルの略断面図。
【図18A】大動脈、無名動脈、および右総頸動脈内に配置された本発明の変形伝熱カテーテルの略斜視図。
【図18B】流体含有身体領域と連絡し得る開口部によって規定された血液誘導スリーブを用いて形成された、図18Aの伝熱カテーテルの詳細斜視図。
【図18C】C−C線に沿って切断された図18Bに示されているカテーテルの略断面図。
【図18D】D−D線に沿って切断された図18Bに示されているカテーテルの略断面図。
【図18E】E−E線に沿って切断された図18Bに示されているカテーテルの略断面図。
【図18F】F−F線に沿って切断された図18Bに示されているカテーテルの略断面図。
【図18G】G−G線に沿って切断された図18Bに示されているカテーテルの略断面図。
【図19】下行大動脈内には基端開口部を、左総頸動脈には先端開口部を有する血液誘導スリーブを有する、大動脈内に示されている伝熱カテーテルの略図。
【図20】大動脈および左総頸動脈内に配置されている、細長いシャフトと、らせん形フィンを有するテーパー付きカテーテル本体とを用いて形成された本発明の変形伝熱カテーテルの略斜視図。
【図21A】閉鎖性肩部と弁アセンブリとを用いて形成された別の変形熱カテーテルの略斜視図。
【図21B】図21Aに示されているタイプの熱カテーテルのための、閉鎖位置にある基端または先端弁を示す図。
【図21C】図21Aに示されているタイプの熱カテーテルのための、開放位置にある基端または先端弁を示す図。
【図21D】図21A〜Dに同じように示されているスリーブ弁の同期開放および閉鎖に対して測定された心拍周期と大動脈血流のグラフ。
【図22】大動脈領域に配置するように設計し得る、複数の伝熱領域を有する伝熱カテーテルの図。
【図23A】先端が冠状動脈口内に挿入された中央管腔への冷却血液用の入口を有する本発明の伝熱カテーテルの1つの変形の略斜視図。
【図23B】線B−Bに沿って切断された図29の断面図。
【図24A】フィンが膨脹可能なバルーンローブである、フィン付き熱バルーンカテーテルの略斜視図。
【図24B】図24AのB−B線に沿って切断された略断面図。
【図24C】図24AのC−C線に沿って切断された略断面図。
【図24D】図24AのD−D線に沿って切断された略断面図。
【図24E】図24AのE−E線に沿って切断された略断面図。
【図24F】図24AのF−F線に沿って切断された略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明は、血液などの体液をその場で(in situ)加熱または冷却し、加熱または冷却された体液を所望の位置に誘導することにより、局所および全身の体温を選択的に調節するための方法および装置を提供する。本発明に従い、例えば、フィン付きバルーンであり得る熱交換器を有するカテーテルを、患者の身体の流体含有部分、例えば、血管内に挿入する。熱交換器の上には血液誘導スリーブが取付けられており、このスリーブは、その(挿入位置に最も近い)基端と、その(カテーテルに沿って挿入位置から最も遠い)先端がどちらも開口している。このスリーブの先端は、スリーブの基端から入る血液などの流体が熱交換器を通って伝熱体に近接して流れるように配置する。熱交換するための近接では、有効な熱交換を生じるのに十分な近接が必要である。熱交換するための近接は、血液の化学的物理的組成、熱交換表面を通る流れの速度、熱交換器を通過する血流のパターン(層状流、乱流など)、熱交換表面と血液との温度差、熱交換表面の材料、ならびに熱交換表面と血液との間の近接などの要因によって左右される。流体は、加熱または冷却された血液が、所望の位置、例えば脳などの標的組織の上流に排出されるようにスリーブの先端から出る。標的組織へ向かって流れる流体を十分な長さの時間加熱または冷却し続けることにより、標的組織の温度が変更される。
【0066】
さらに、低体温症または高体温症を誘発させる場合、本発明は、熱交換カテーテルを制御することにより、標的組織を所望の温度に加熱または冷却し、その温度を維持するように準備する。同様に、患者の体内の異なる位置で異なる熱交換カテーテルを制御することにより、異なる複数の領域を互いに異なる複数の温度に調節可能に維持し得る。さらに、別個の熱交換カテーテル、または同じ熱交換カテーテル上に位置する追加の熱交換領域を使って、標的組織の温度を、所望温度、例えば、中程度の低体温に維持しながら、体芯温度をモニターして、異なる温度、例えば、正常温度(37℃)またはほぼ正常温度に維持し得る。
【0067】
図1は、熱交換カテーテル10の先端部15を示している。カテーテルは、患者の皮膚を介して血管BV内に挿入し得る。図1には、血管内を流れる血流が1組の流れ矢印Fで示されている。カテーテルは、比較的大きな血管、例えば、大腿動脈または静脈、頚静脈内に挿入し得る。というのは、これらの血管は、容易に接近可能であり、安全かつ都合のよい挿入部位を提供すると共に、比較的大量の血液が流れているという多くの利点を提供するからである。一般に、血流速度が大きいと、患者へまたは患者からの伝熱がより速やかになる。例えば、頚静脈は、約22フレンチ、すなわち7mmより少し大きい(1フレンチ=1mm/π)直径を有し得る。このサイズの血管内に挿入するのに適したカテーテルは、血管系の他の領域に挿入するためのカテーテルと比べてかなり大きく作成し得る。アテローム切除用またはバルーン血管形成術用カテーテルは、冠状動脈および類似の血管から閉塞物を除去するのに用いられることがある。これらのカテーテルは、一般に、2〜8フレンチの範囲の外径を有している。しかし、本発明のこの態様に従って形成されるカテーテルは、約10フレンチ以上の外径を有し得るが、この寸法は、本発明の基本原理から逸脱しない限りで大幅に変更し得ることは明らかである。
【0068】
カテーテルは、医療専門家には周知の方法である経皮的セルジンガー法を用いて穿刺部位に入れられる程度に小さくし得る。血管の外傷を回避するために、通常、カテーテルは、挿入時の直径が12フレンチより小さいであろう。しかし一旦血管内に入ったら、カテーテルの先端すなわち作業端は、血流を過度に妨げない限り、どのようなサイズに拡大してもよい。さらに、大腿動脈および静脈ならびに頚静脈は、比較的長くかつ真直ぐな血管である。そのために、かなり大きな長さの温度調節領域を有するカテーテルを都合よく挿入することができる。勿論、これは、伝熱領域の長さが増大すれば、所与の直径を有するカテーテルが所与の温度でより多くの熱を伝達し得るという点で有利である。上述の血管内にカテーテルを挿入する方法は医療専門家の間では周知である。本発明の方法は恐らく病院で最も普通に用いられるであろうが、処置は手術室で実施する必要はない。装置および手順は非常に簡単なので、場合によって、救急車内または屋外でも、カテーテルを挿入したり、処置を開始したりし得る。
【0069】
図2は、カテーテルの先端へまたは先端から熱を伝達するためのさらに別の手段を示している。この実施態様では、カテーテルのシャフト20は内部を貫通する2つの管腔を有している。流体は、カテーテルの基端から流入管腔60を経て伝熱領域62を通って流れ、流出管腔64を通って出る。流入管腔60を介して加熱または冷却された流体を供給することにより、熱は、伝熱領域62に伝熱近接して流れる患者の血液流へまたは血液流から伝達され得る。伝熱領域62はバルーン70の形態であってよい。バルーンの使用は、伝熱を生じ得る表面積を増大させた、いくつかの実施態様においては有利であろう。バルーンの膨脹は、流体が流入管腔60および流出管腔64を通って流れるときの流体の圧力差によって維持される。バルーンは、血管を流れる血液流を過度に妨げないように血管の内径より幾分小さい直径に膨脹させる必要がある。
【0070】
図3は、内部抵抗加熱体28と、膨脹状態で示されているバルーン70とを有するカテーテルを示している。バルーンの表面は、伝熱に利用可能な表面積を増大させる構造、すなわち、フィンを備えている。この実施態様では、膨脹したバルーンにより与えられる、増大される表面積は、バルーン表面上の1組の長手方向フィン75の存在により増大される。図3および図4A〜Cに示されているように、長手方向フィン75、半径方向リブ77、または1個以上のらせん状フィン79をカテーテル本体20上に直接配置し得る。長手方向リブは、他の形状のものより血管を通る血流を制限する傾向が少ないので有利であろう。実際、これらのリブにより、バルーンが膨脹しているときであってもリブ間に通路が維持され得るので、血管を流れる血流が実質上遮断されないことが保証される。抵抗加熱体を用いるカテーテル上にバルーンを加えることにより、バルーンを満たす流体中に電流を流す設計が可能になる。
【0071】
本発明のカテーテルは、カテーテルと血管を流れる血液との間の伝熱速度を最適化するように設計かつ形成し得る。伝熱を最大にするためには表面積が大きいことが望ましいが、カテーテルは、血管を通る流れに対する制限を最小限にするのに適切な形状およびサイズにする必要がある。さらに、カテーテルの温度は、血液内の望ましくない化学変化を防止するように慎重に制御しなければならない。血液が中程度の高温によってさえ容易に変性するので、このことは血液に熱を加えるときには特に重要である。血液を加熱するためのカテーテルの外面温度は、一般に、約42〜43℃を超えてはならない。重度の低体温症で始める患者においては、表面温度が37〜42℃に制御されるカテーテルにより、1時間当たり約1〜2℃の体芯加熱速度が提供されると推定される。この推定値は、血管を通る血流の速度、患者の初期体温、熱を伝達するカテーテルの外表面積などを含めた多くの要因によって大いに左右される。達成される実際の速度は、上記推定値とは実質的に異なり得る。上記推定値は、カテーテルから患者の身体に伝達される電力レベル、従ってシステムが必要とする電源の大きさに関する概算推定値を得るための出発点を提供する。システムに熱を供給したりシステムから熱を除去したりするためには、選択された具体的な送電手段にかかわらず、抵抗加熱コイル、レーザーおよび拡散先端、直接伝達または流体循環、適切な電源が必要であろう。
【0072】
患者の身体から出たり入ったりする熱の合計は
ΔH=Hc+Hi−He
(式中、ΔHは、伝達されたすべての熱の合計、Hcはカテーテルから患者に伝達された熱、Hiは患者の体内で生じた熱、Heは患者から環境に対して失われた熱である)
として表すことができる。通常、健康な患者の場合におけるように、体内温度調節系が環境に対して失われた熱を丁度埋め合わせるだけの熱を生成するとすれば、式は簡単になる。
【0073】
ΔH=Hc
上記式は、経時的な患者の体内温度の変化に関しては以下のように表すことができる。
mc(ΔT/Δt)=(ΔHc/Δt)
(式中、mは患者の体重、cは患者の身体の比熱、(ΔT/Δt)は患者の体内温度の変化の時間速度、(ΔHc/Δt)はカテーテルから患者への熱送出の時間速度である)。75kgの体重と4186ジュール/℃−kgの比熱を有する患者を推定すると(人体の比熱と水の比熱が同じであると想定すると、実際の値は幾分異なる)、1時間(3600秒)当たり1℃の加熱速度では、約87ワット(1ワット=1ジュール/秒)の速度で患者に熱を伝達するカテーテルが必要となるであろう。しかし、この推定は、本発明のカテーテルと一緒に用いられる電源の望ましいサイズについての推定値としては低すぎるであろう。これは多くの理由で予測可能である。先ず、便宜上、患者の体内系が環境に対して失われた量に等しい熱量を生成すると推定した。低体温症患者の場合、これは明らかに該当しない。殆ど自明のこととして、偶発症候性低体温症は、ヒトの体内での熱生成能力が環境に対して失われる熱に圧倒されたときに発生する。カテーテルはこの差を埋め合わせなければならず、したがって、要求される電力レベルはその理由だけでも大きい必要がある。あるいは、低体温症を誘発させるためには、標的組織の温度を低下させるのに十分な熱を血液から除去するか、または全身低体温症の場合には、身体が生成する熱より多い熱を除去する必要があろう。熱を下げる場合、熱交換器の冷却に要する電力は、装置から環境への過剰な熱の放散を含めた冷却装置の効率に大いに依存する。
【0074】
上記推定値は、電源と利用される加熱手段との間の電力損失を考慮していない。そのような損失には、電源と抵抗加熱体との間の送電線、固有の非能率およびレーザーおよび拡散先端を有するシステムにおける他の損失、伝熱シャフトまたは流体循環管腔に沿った熱損失などが含まれ得る。実際に発生するそのような損失はいずれも追加の給電容量によって補う必要がある。さらに、使用電源の大きさを制限することによって本発明のカテーテルの性能を制限することは望ましくない。その代わり、実際に必要とされる量よりかなり過剰な電力を供給し、次いで、その電力をカテーテル自体の実測温度に従って制御し得る電源を使用することが好ましい。先に述べたように、これは、カテーテル本体内に高感度の温度センサを含めることによって容易に達成できる。しかし、上記の計算は、本発明のカテーテルに使用するための電源の大きさを定めるのに有用な予期される下界推定値として用いることができる。
【0075】
代替推定値を、本明細書に記載されている種々の実施態様の予測性能と、公知の外部血液加熱装置に対する電力要件とを比較して計算することができる。そのような外部加熱装置は、一般に1000〜1500ワット、ときにはそれ以上のオーダーの電源を必要とする。本発明に従って形成された装置は、それよりもかなり低い電力しか必要としない。先ず、本発明は、血液を循環させるための外部ポンプを必要としない。この機能は、患者自身の心臓によって提供される。したがって、そのようなポンプを駆動する電力がいらない。次に、本発明は、外部血液加熱システムよりもかなり簡単である。公知システムでは、患者から加熱体を経てまた患者に戻るという比較的長い経路にわたって血液を循環させる。このような長い経路にわたると、本明細書に記載の装置の場合よりも多くの熱が失われるであろう。したがって、公知タイプの外部血液循環および加熱システムが必要とする電力は、本発明のシステムが必要とする電力の予測される上限の概算推定値として用いることができる。そのようなシステムは、上記2つの概算推定値の間の容量を有する電源を備えているのが最も適当である。したがって、適当な電源は、100〜1500ワットの範囲、恐らく300〜1000ワットの範囲のピーク電力を供給し得ると予想される。規定した範囲は、適当なピーク電力容量の推定値である。電源は、最も一般的には、カテーテル本体内の温度センサに応答してサーモスタット制御される。したがって、患者に伝達される実際の有効電力は通常、システムの電源のピーク電力容量よりはるかに小さい。
【0076】
上記の計算は、主として血液を加熱するためのシステムに関する。血液を冷却するためのカテーテルに関しては、温度および電力の束縛は極端なものであってはならない。過度に急速に冷却することで血液を凍結させたり患者にショックを誘発させたりすることのないよう、回避するように注意しなければならない。血液の主成分は、実質的には、多くの懸濁および溶解された物質を含む水である。そのようなものとして、その凝固点は0℃を幾分下回る。しかし、高体温症患者の血液を冷却するか、または人為的低体温症を誘発させるように適合されたカテーテルは、通常、そのように低い温度では操作されないであろう。そのようなカテーテルの外表面は、約1〜20℃の範囲に保持し得るが、実際の温度は、約0℃と患者のそのときの体温との間で変動し得ると現在のところ予想される。さらに、例えば、かなりの長さを有する熱交換バルーンの場合、血液に熱を放散するときに、バルーンの表面温度は、その長さに沿ってさまざまであり得る。バルーンは、その長さに沿って12℃以上もの温度変化があり得る。
【0077】
本発明の別の態様により、初期には低体温症の患者の体温を上昇させたり、初期には高体温症であるかまたは体温を何か他の目的のために正常未満に低下させなければならない患者の体温を低下させたりするための方法がさらに提供される。そのような場合、一般に、所望の温度が、例えば、患者の生理的応答を超えて上回らないように、(全身低体温の場合には全身であり、局所的低体温の場合には、例えば脳であり得る)標的組織をモニターして、冷却を制御することが必要である。そのような場合、本発明のこの態様は、特に、標的組織を選択された体温に維持するために伝熱プロセスを反転させるようになっている。
【0078】
図5に記載されているように、本明細書において、標的組織を好ましい温度に加熱または冷却し、標的組織をそのほぼ好ましい温度に維持するための試料制御機構が提供される。この制御機構を、図5に示されているフローチャートによって説明すると共に、図6に示されているグラフで示す。目標温度として、好ましい温度、例えば、脳組織の場合には温度31℃を予め選択する。熱交換カテーテルの場合には、この予め選択した温度を、例えば、熱熱交換カテーテルに対する制御装置上で所望温度を設定することにより制御装置に伝達する。脳などの標的位置に血液を供給する血管内の血液と熱交換すべく近接するように、血液から熱を除去したり血液に熱を加えたりし得る熱交換カテーテルを挿入する。熱交換器をオンオフ切換えして、熱交換器と熱交換すべく近接して血液を加熱または冷却するように熱交換器を制御し得る、上記制御装置によってカテーテルは制御される。
【0079】
脳の温度は、例えば、脳組織に挿入された温度プローブによってまたは鼓膜などの代用位置での温度の測定によってモニターするか、鼻腔が脳の温度を表す温度測定値を提供する。これによって、検出された温度測定値を得、これを制御装置に伝達する。上方分散設定値を、例えば、予め選択した温度の1/2℃上に定め、これを制御装置に伝達する。この実施例では、それによって、上方分散設定値は31 1/2℃になる。下方分散設定値も、例えば、予め選択した温度の1/2℃下に定め、これを制御装置に伝達すると、この実施例では、下方分散設定値は30 1/2℃になる。
【0080】
熱交換器が冷却しているときに、標的組織の検知温度を予め選択した温度と比較する。検知温度が予め選択した温度より高い場合、冷却を継続する。検知温度が予め選択した温度またはそれより低い場合、制御装置は熱交換器をオフに切換えるように作動する。熱交換器をオフに切換えた後、標的組織の温度を再び測定して検知温度を得る。検知温度が上方分散設定値より高い場合、制御装置は熱交換器に冷却を再始動させるように作動する。この冷却は、温度が再び予め選択した温度に達するまで続けられる。この時点で、制御装置はもう一度熱交換器をオフに切換えるように作動する。患者の身体が標的組織において環境に対する損失速度より大きい速度で熱を生成している場合、温度は好ましい温度と上方分散設定値との間、この実施例では、図6の区分Aで示されているように31〜31 1/2℃の間で揺れ動くことが分るであろう。
【0081】
場合により、熱交換器がオフに切換えられた後、例えば、脳組織が自身で生成する熱より多くの熱を環境に放出している場合には、標的組織の温度は自然に低下し続けるであろう。そのような状況において、検知温度は、下方分散設定値より低くなるまで低下し続ける。そうなると、制御装置は、熱交換器を作動させて、検知温度が再び予め選択した温度になるまで、血液に、したがって標的組織に熱を加える。次いで制御装置は熱交換器をオフに切換える。温度が再び下方分散設定値を下回る温度まで低下すると、上記プロセスが繰り返される。この状況が繰り返されると、温度は、予め選択した温度と下方分散設定値との間、この実施例では、図6の区分Bで示されているように31〜30 1/2℃の間で揺れ動くことが分るであろう。
【0082】
本明細書に示されている実施例は、例示のみを目的としており、本発明の範囲内で多くの変形が予想される。例えば、予め選択した温度や上および下方分散設定値は上述のものと異なっていてよい。上記説明は正常温度を下回る温度に標的組織を冷却する実施例であった。しかし、正常温度を上回る予め選択した温度を選択してもよいし、血液を加熱するかまたは血液から除熱するように制御される熱交換器を、同様な制御機構によって、標的組織の温度を、上および下方分散設定値範囲内の正常温度を超えるほぼ予め選択した温度に維持し得ることが分るであろう。例示されている制御機構において、予め選択した温度を37℃に設定して、検知温度が37℃に達するまで加熱体に血液を加熱させることにより、低体温症患者を正常温度に再び加熱し得ることも容易に理解されよう。温度の行過ぎの予測および防止は、すでに本明細書に文献援用されている米国特許出願第08/584,013号に記載のようにして達成し得る。
【0083】
示されている実施例において、標的組織の温度測定または検知温度と予め選択した温度の比較などのステップはすべて別々の作用として記載されているが、当業者には、それらの作用が相対的に連続的であってよいことが容易に理解されよう。また、標的組織の温度以外の調節基準、例えば、血圧もしくは頭蓋内圧、または他の位置から誘導された温度を、置換かつ調節可能であり、例えば、脳などの領域を冷却し、その領域を比較的安定した冷却状態に維持すると同時に、患者の体芯温度を正常温度に加熱して、患者の体芯温度を正常温度で比較的安定に維持するために、記載されている2つの制御機構を患者の体内の異なる複数の位置に関して同時に開始し得ることも容易に理解されよう。標的組織の温度に変化をもたらす上記方法は、標的組織から上流の血液を冷却するものであったが、他の加熱および冷却法、例えば、脳または脊髄の周囲を循環する脳脊髄液の加熱または冷却を用い得ることが理解されよう。
【0084】
患者の選択的加熱および冷却システムが図7に示されている。このシステムは、基端102と、先端104と、先端近くの発熱表面106と、先端近くの吸熱表面108とを有するカテーテル100を備え得る。発熱表面106は、上述のどの伝熱部品、特に、典型的には0.1〜1mm間隔の50〜1000の巻線を有する状態で示されているワイヤコイル抵抗加熱器を含んでいてもよい。カテーテルの全長は15〜50cmの範囲であり、直径は約1〜5mmであり得る。巻線は、先端近くの10〜20cmの範囲の全距離にわたって延びている。吸熱表面は、典型的には、金、銀、アルミニウムなどの生体適合性伝熱性金属からなる伝熱性金属ホイルであり得る。銅も有用であり得るが、その生体適合性を高めるためには処理またはカプセル封入が必要である。金属ホイルは、典型的には、0.001〜0.01mmの範囲の厚さを有するカテーテル本体の可撓性を高めるために薄くてよい。吸熱表面108は、カテーテルの外に位置する、通常下記に記述するような制御装置120内の冷却器に電気結合し得る。例示されている実施態様においては、表面108は、上述の伝熱性金属の1種から形成された可撓性ロッドまたはワイヤからなる伝熱性コア部材110によって結合されている。あるいは、表面108の基端を冷却器に結合し得るように表面108を基端方向に伸ばして熱結合を達成することができる。後者の場合、表面108の基端部は、血液循環の外での冷却を防止するように断熱するのが好ましい。このシステムはさらに、通常は、カテーテル100に結合するための発熱器と冷却器の両方を提供する制御装置120を備えている。発熱器は、カテーテル上の抵抗加熱器に結合するための直流電源をさらに備え得る。通常、直流源は、典型的には、10〜60VDCの範囲の電圧および1〜2.5Aの電流出力で作動する市販の温度制御式DC電源であろう。電源は、発熱表面106の表面温度を40〜42℃の範囲に維持するように制御し得る。上述のように、血液成分の損傷を防止するためには、表面温度は42℃を超えてはならない。熱交換表面の他の望ましい特徴は上記に説明されている。
【0085】
あるいは、熱交換表面の温度を、実測血液温度および/または実測体温に基づいて制御することもできる。血液温度は、カテーテル上に存在する温度センサで測定できる。例えば、温度センサ112は、カテーテル上に熱交換表面106および108から間隔を置いて配置し得る。温度センサ112は、血流方向に基づき、かつ患者へのカテーテルの導入方式に応じて、熱交換表面の上流または下流に配置し得る。最適には、上流および下流の血液温度を測定するために、1対の温度センサを熱交換表面の両側に1つずつ配置することもできる。また、カテーテルは、発熱表面106の温度を直接制御し得るように、表面106に直接結合された温度センサ(図示せず)をさらに備え得る。患者の体芯温度または患者の体内の種々の領域の温度を直接測定する他の温度センサ(図示せず)を設けてもよく、測定された温度は制御装置120にフィードバックされる。制御装置120内の冷却器は、血液を所望の速度で冷却するのに十分な速度で吸熱表面108から熱を除去し得るいずれのタイプの冷却装置であってもよい。典型的には、冷却器は150〜350Wに定格される。
【0086】
冷却器は、ニュージャージー州08648トレントン所在のメルコア・サーモエレクトリックス社(Melcor Thermoelectrics,Trenton,New Jersey 08648)から市販されているものなどの熱電冷却器である。冷却器は、吸熱表面108からの直接の熱伝導が制御装置120内の冷却器にもたらされるように、コア部材110に直接結合し得る。冷却表面108の温度は、本発明のこの態様に関しては加熱表面106の温度より重要ではないが、通常、0〜35℃の範囲、好ましくは30℃未満に維持されるであろう。冷却表面の温度は直接この範囲内に制御してもよいし、あるいは、冷却温度が全システム特性に基づいてほぼこの範囲内で機能するようにシステムを設計してもよい。
【0087】
制御装置120は、血液温度および/または体温に基づいて発熱表面106および吸熱表面106の温度を制御するための1つ以上の温度制御器をさらに備え得る。少なくとも、制御装置120は、発熱表面106の温度を上記範囲内に制御し、かつ上記のように加熱または冷却モードを逆転させるために患者の血液温度および患者の体温のうち少なくとも1方をモニターし得る。例えば、図10に記載されている制御機構に関して、例えば、先ず、低体温症患者を目標温度に達するまで一定の表面温度速度で血液を温めて治療するオンオフモードで、システムを操作し得る。目標温度に達したら、発熱表面106への電力をオフに切換える。しかし、患者の体温が確実に目標温度より高い最大値を超えないよう確実にするために、血液および/または患者の体温のモニターを続ける。万一最大値を超えたら、過度の体温が低下するまで、システムを冷却モードで操作する。通常、患者を再び加熱する必要はないが、本発明のシステムは、必要なら、さらなる冷却および加熱サイクルを用意し得る。初期に高体温症の患者の場合、冷却および加熱モードを逆転させる。本発明の温度制御機構は実質的にさらに精巧にし得ることが理解されよう。例えば、患者を加熱するための入力は、典型的には、患者の体芯または局所体温が所望の目的レベルに近づくにつれ、伝熱速度を次第に遅くするようにする比例制御機構、誘導制御機構または統合制御機構に基づいて制御し得る。さらに、患者の血液温度および患者の体温に基づいたカスケード制御機構を考案することもできる。例えば、そのような制御機構を、その準備の際に、典型的な患者の生理的特徴を考慮に入れた数学的モデルで患者を加熱したり冷却したりするように、適合させることができる。しかし、目標温度が安全量を超えて上回った場合、伝熱モードを逆転し得る簡単なオンオフ制御機構で十分であろう。
【0088】
本発明の別の態様は、患者の体内の標的位置に送達される流体の温度を流体が体内にある間に調節するための方法および装置を提供する。この方式での流体温度の調節は、薬剤、溶質または血液の温度をそれらが標的部位に供給される前に加熱または冷却することを含めた多様な用途に役立つ。注入された流体の温度の調節は、脳内の神経外科的処置を含めた種々の医療処置の準備の際の標的位置自体の温度の調節にも有用である。さらに、そのような方法および装置により、その場で患者の血液を加熱または冷却することにより組織の温度を患者の体温範囲内に制御することができる。患者の血液を加熱または冷却してから、次いで標的組織に流すことにより、当該組織の温度を望み通りに上げたり下げたりし得る。したがって、そのような方法および装置は、低体温症もしくは高体温症の治療、または局所的冷却もしくは加熱の誘導に便利な療法を提供する。
【0089】
図8は、本発明の別の態様に従って形成されたカテーテル212の先端210を示している。カテーテル212は、血管BV内に配置し得る。血管を流れる血流は、図8では1組の矢印Fで示されている。カテーテル212の先端210は、温度変更領域214を備え得るが、この温度変更領域は、カテーテルの基端と先端の間のどこに配置されていてもよいことが理解されよう。先に言及したセルジンガー法などの、カテーテルを種々の血管に挿入する方法は、医療専門家の間では周知である。カテーテル212は、特定の用途に応じて種々のサイズで製造し得る。殆どの使用には、長さが約30〜約130cmの範囲、直径が6〜12フレンチ(1フレンチ=0.33mm)であってよい。カテーテル212は、患者の体内の種々の血管を通って移動させることができ、かつ好ましくはガイドワイヤの助けを借りて体内に配置し得るように可撓性である。
【0090】
図9に示されているように、カテーテル212は内部管腔216を有している。温度変更領域214の内部管腔216の管腔壁に隣接して温度変更機構218を配備し得る。説明に便利なように、温度変更機構218は概略的に示されているが、この機構218は、内部管腔216を通過する流体を温度変更領域214において加熱または冷却する内部管腔の管腔壁216の加熱または冷却に用いられる多様な機構を備え得る。管腔壁を加熱または冷却するための典型的な機構は、カテーテル212の管腔壁近くを通過する加熱または冷却された流体、カテーテル212内に配置された抵抗体、温度変更領域に供給されるレーザーエネルギー、カテーテル本体内に配置される種々の化学物質、熱電結晶などを備え得る。そのような機構を用いると、内部管腔216を通過する温度変更領域での流体の温度を、流体がカテーテル212から出てゆくときに所望の温度範囲内になるように変えることができる。温度変更機構218は、温度変更領域を通過する流体の温度を5〜約42℃加熱するように形成し得る。流体を冷却する場合、温度変更機構218は、流体を7〜約30℃冷却するように形成し得る。温度変更機構218は、カテーテルと内部管腔を通って流れる流体との間の伝熱速度を最適化するように設計し得る。さらに、血液の望ましくない化学変化を防止し得るために、カテーテルの温度は慎重に制御され得る。これは、血液が中程度の高温によってさえ容易に変性するので、血液に熱を加えるときには特に重要である。血液を温めるための管腔壁の温度は、一般に、約42〜43℃を超えてはならない。患者の体芯体温を高めるために供給し得るエネルギーの量は、すでに本明細書に文献援用されている米国特許第5,486,208号に記載されている。また、温度変更機構218は、カテーテル212の外表面を実質的に直接加熱することなく管腔壁の温度を加熱または冷却し得るようにも、カテーテル212内に配置し得る。このようにすると、単にカテーテルの先端を特定の標的部位に配置し、内部管腔216に流体を導入するだけで、カテーテル212を用いて、標的部位を選択的に加熱または冷却することができる。
【0091】
図9および図10に示されているように、本発明のこの態様に従って形成されたカテーテル220は、カテーテルを通過する流体の温度を変えるために伝熱流体を循環させ得る。カテーテル220は、基端224および先端226を有するカテーテル本体222を備えている。基端224と先端226の間には管腔228が延びている。基端224には、患者の外から管腔228に種々の流体を導入し得る基端ポート230がある。カテーテル本体222を貫通しているのは、特に図10に示されているような第1通路232と第2通路234である。第1通路232には第1ポート236が連絡しており、第2通路234には第2ポート238が連絡している。この方式では、加熱または冷却された伝熱流体は第1ポート236に導入され、そこから、管腔228に隣接する第1通路232を通過する。伝熱流体が第1通路232を通過するにつれ、熱は管腔228を通過する流体へまたは流体から伝達されて、流体はカテーテル本体222から出て行く前に所望の温度に加熱または冷却される。第1通路232を通過した後、伝熱流体は、カテーテル本体222を通って逆に循環し、第2通路234を通って第2ポート238から出て行く。
【0092】
図11および図11Aは、カテーテル240を通過する流体を加熱する抵抗加熱装置を有するカテーテルを備えた本発明のさらに別の変形を示している。カテーテル240は、基端244および先端246を有するカテーテル本体242を有している。カテーテル本体242の基端244と先端246の間には管腔248が通っている。流体を患者の外から管腔248内に導入し易くするために基端ポート250が装備されている。カテーテル本体242の管腔248近くには、図17に示されているように複数のワイヤ252が配置されている。これらのワイヤ252は、ポート254を通ってカテーテル本体242から出る。ワイヤ252は、DC電源に接続しても低周波数AC電源に接続してもよい。電流がワイヤ252を通過するとき、エネルギーの一部が熱として放散して管腔壁を加熱する。あるいは、管腔壁を加熱するために、カテーテル本体242内に配置されている電極に電力を供給する高周波すなわちRF電源を用いてもよい。
【0093】
図12〜図14を参照すると、カテーテル256は、外部から注入された流体の加熱もしくは冷却、その場での(in situ)体液の加熱もしくは冷却、またはその両方の組合せに用い得る。カテーテル256は、基端260および先端262を有するカテーテル本体258を備え得る。図12に示されているように、基端260と先端262の間には管腔264が延びている。さらに、基端260には、種々の流体を管腔264内に注入し得る基端ポート266も備えられているが、ポート266は患者の外に配置されている。先端262には、温度変更機構(図示せず)を含む温度変更領域268がある。特定の温度変更機構は、上記または下記の本発明の他の態様に関して説明したものを包含し得る。この方式では、ポート266に注入された流体は管腔264を通過し、他の実施態様に関して既に記載したものと同じように温度変更領域268を通過するときにその温度が変更される。カテーテル本体258は、管腔264への通路を提供するためにカテーテル本体の壁を貫いて延びる複数の潅流オリフィス270を備え得る。図12に矢印で示されているように、血液などの体液がオリフィス270を通過して、管腔264内に入り、そこで、体液は、図示されているカテーテル本体258の先端262から出て行くときに体液の温度が所望の範囲内にあるように温度変更領域268で温度変更される。
【0094】
図13および図14に示されているように、カテーテル本体258の管腔壁は、複数のフラップ272を備え得る。これらのフラップ272を通ってオリフィス270から管腔264に入る体液の通過を制御し得る。これらのフラップ272または類似構造は、米国特許第5,180,364号に記載のように構成してもよく、この特許の開示は本明細書に文献援用される。流体をポート266から管腔264内に注入する際、実質的に注入された流体だけが温度変更領域268を通過するように、注入された流体の圧力および流れ方向により、図13に示されているようにオリフィス270がフラップ272で閉鎖されるであろう。この場合、注入される流体の温度は、流体が先端から出て行くときに所望の範囲内にあるように温度変更されるであろう。図14に示されているように、ポート266に流体が注入されない場合、血管内の体液の圧力により、フラップ272が開いて、体液がオリフィス270を介して管腔264内に流れ込む。この方式では、血液などの体液は、オリフィス270を通り、温度変更領域268を通過することによってその温度が変更され得る。フラップ272のこの配置は、患者の組織の温度を変える用途では特に有利である。カテーテル256を患者内に導入するだけで、オリフィス270を介して管腔264内に流入する血液は、先端262から出るときまでに温度が変更されるであろう。これによって、全身の体温の変更が生じ得るし、カテーテルによって血液を特定の部位に誘導すると、局所的な温度変更が生じ得る。治療のためにさらに溶質または薬剤が必要な場合には、ポート266を介して溶質または薬剤を管腔264内に導入し、その温度を出て行く血液の温度と実質的に同じ温度にし得る。上述のように、本発明のこの態様は、患者の体内に種々の流体が存在する間に、その流体の温度調節に有用な方法および装置を提供する。そのような装置を用いると、薬剤または溶質が標的位置に達する前にカテーテル内で温度を変更させ得る、患者の外からの薬剤または溶質の導入を含めた多様な処置を実施し得る。さらに、医療処置の実施に先だって、カテーテル内で流体を加熱または冷却し、それによって、身体構造の特定の領域を加熱または冷却し得る。別の代替法では、血液などの患者の体液の温度をその場で変更し、低体温症もしくは高体温症の患者を治療するため、または意図的に全身もしくは局所低体温を誘導させ得る。
【0095】
本発明の別の態様は、局所および全身の体温変更のための方法および装置を提供する。選択領域の体温を低下させることにより、特に脳に近接した神経保護作用を提供し得る。少なくとも1つのカテーテルの選択された部分が、例えば、脳領域と接触するか、脳領域もしくはその周辺で循環しているか、または脳領域に流れ込む、血液または脳脊髄液などの流体を冷やし得る。冷やされた体液は、局所的に限定された冷却作用を生成するために選択的に患者の身体の選択領域に誘導され得る。あるいは、例えば、脳全体および脊髄などの他の広い範囲にわたる組織の神経保護を提供するために、患者の全身の温度を低下させ得る。以下にさらに詳細に説明するように、本明細書で提供されている方法および装置は、迅速かつ効果的な伝熱を提供するための増大された表面積またはフィン付き部を用いて形成された熱交換カテーテルを備え得る。ある一定の長手方向寸法を有するカテーテル本体に沿って局所的に限定された伝熱領域は、さらに、内部通路内を流れる流体との有効な伝熱を提供すると同時に、このカテーテルは、さらに、カテーテルの選択部分に沿って局所的な冷却または伝熱ゾーンを提供する。発熱体や冷却体の種々の組合せを、1つのカテーテルの複数の異なる部分に沿って形成するか、または本発明の他の態様に関して同じ様に記載した熱交換装置系列もしくは組み合せの一部として形成し得る。これらの装置および手順はすべて、脳血管損傷の治療において治療に関する利点を提供し得る、大脳領域の冷却および人為的低体温症状態の誘発に特に適した局所的または選択的体温変更に向けられる。このシステムは、手動制御による簡単な伝熱カテーテルであってもよいし、多くのセンサをモニターすると共に、これらのセンサから受信したデータに応答して熱交換カテーテルを制御し得る制御装置を使って操作してもよい。
【0096】
図15に略図で示されているように、本発明のこの態様に関する伝熱カテーテルシステムは、1つ以上の伝熱部分の組み合わせを備えるように形成されたカテーテル制御装置300と伝熱カテーテル302とを備え得る。1つまたは複数の伝熱セクションは、セクション319で示されている、患者に挿入されるカテーテルの部分に位置している。この挿入部は、カテーテルの全長より短く、カテーテルの患者のすぐ体内の位置から、カテーテルを完全に挿入したときにはカテーテルの先端まで延びる。カテーテル制御装置300は、カテーテル302内に熱交換流体または媒体を循環させるための流体ポンプと、伝熱システム内の加熱および/または冷却循環流体用の1つ以上の熱交換部品組合せとを備え得る。制御装置300には、塩類溶液、血液代用溶液または他の生体適合性流体などの伝熱流体源を供給するための容器または流体バッグ306を連結し得る。制御装置300はさらに、例えば、フィードバックや、脳および頭部領域用の温度プローブ308、直腸温度プローブ309、耳温度プローブ311、膀胱温度プローブ(図示せず)などの身体の選択器官もしくは選択部分からの患者の温度情報を供給する固体熱電対であり得る多様なセンサからデータを受信し得る。検知された温度および状態に基づいて、制御装置300は、センサからの入力に応答してカテーテルの加熱または冷却を命令し得る。制御装置300は、第1の検知温度で熱交換器を作動させたり、また第1の検知温度または他の予め設定した温度より比較的高いかもしくは低い第2の検知温度で熱交換器を止め得る。勿論、制御装置300は、身体領域で所望温度または予め選択した温度を達成するために、選択された伝熱セクションを独立して加熱または冷却し得る。さらに、制御装置は、患者の身体の特定の領域で温度を制御する1つ以上の熱交換器を作動させ得る。また、制御装置は、例えば、検知された温度に応答して、外部保温用ブランケットなどの他の装置を作動させたり止めたりし得る。制御装置は、上述し、かつ図5および図6に示されているように機能し得る。
【0097】
また、図15に示されている温度調節カテーテル302は、一連の流入および流出導管を介して伝熱媒体を循環させることにより種々の冷却および/または加熱ゾーンを提供し得る。第1および第2の通路312および314は、カテーテル内の熱交換通路を提供し得、かつ、それぞれ、選択した身体領域内の流体の流れを冷却する伝熱流体の循環用ポンプの吸込口315および排出口317に連結し得る。選択した身体領域をシステムの冷却部品と同時または別々に加熱するために類似の装置を設けてもよい。さらに、カテーテル制御装置300は、閉ループカテーテルシステム内で同一または異なる伝熱媒体を用いた加熱と冷却の両方の機能を果たすために選択的に作動させたり止めたりされる熱電冷却器/加熱器を備え得る。例えば、1つ以上の温度調節カテーテル302の挿入部319上に位置する第1伝熱部分318は、隣接する頭部領域、あるいは、頸動脈または脳に通じる他の血管内で冷溶液を循環させ得る。頭部温度は、患者の外表面に比較的近くにまたは選択身体領域内に配置された温度センサ308により局所的にモニターし得る。カテーテル302の別のすなわち第2の伝熱セクション320は、これも挿入部319上に位置するのであるが、折り畳みバルーン内で加熱溶液を循環させるか、または本発明の他の態様に従って記載されている他の機構の加熱体を介して身体の他の位置に熱を供給し得る。伝熱カテーテル302は神経保護のために脳領域に局所的低体温を提供し得るが、身体の他の部分は、震えなどの不都合な副作用を回避または最小限にし得るように比較的温かく保ち得る。さらに、身体の首の下あたりの加熱は、保温用パッドまたはブランケット322内で身体の比較的下方部分を絶縁またはラッピングしつつ、首から上の頭部領域310は冷却することにより達成し得る。勿論、カテーテル302の多重伝熱セクションは、体芯温度に変化を与えて全身を冷却または加熱するように改変することができ、局所的すなわち限局的体温調節に限定されるのではないものと理解すべきである。
【0098】
図16は、本発明の伝熱カテーテルシステムを示しており、このシステムは、伝熱カテーテル324、使い捨て熱交換プレート338、ポンプヘッドアセンブリ340、塩類溶液バッグ339、センサ348、349および流体流れ管路337を含めた使い捨て部品と、固体熱電加熱器/冷却器342、ポンプ駆動体343および種々の装置用制御装置を含めた再使用可能な部品とを備えている。
【0099】
伝熱カテーテル324は、血液誘導スリーブ325と、カテーテルシャフト326と、熱交換媒体の閉ループ流を用いて操作される例えば熱交換バルーンであり得る熱交換器327とを用いて形成されている。カテーテルシャフトは、薬剤、透視用染料などを注入し、かつ伝熱カテーテルを患者の身体の適切な場所に配置するのに用いられるガイドワイヤ329を受容するための作業管腔328を備えるように形成し得る。カテーテルシャフトの基端は、シャフト内の種々の通路に別々にアクセスさせるためのマルチアームアダプター330に連結し得る。例えば、1つのアーム336は、ガイドワイヤ329を挿入して、伝熱カテーテルを所望の位置に進めるためのカテーテルシャフトの中央管腔328へのアクセスを提供し得る。熱交換器327が熱交換媒体331の閉ループ流用の熱交換バルーンである場合、アダプターは、流入流れ管路333をカテーテルシャフト内の流入通路(この図では示されていない)に連結するアーム332と、流出流れ管路を流出通路(これもこの図には示されていない)に連結する別のアーム334とを備え得る。2つの流れ管路337は、カテーテルシャフト326を使い捨て熱交換プレート338に連結するための流入および流出流れ管路333、335を共に備え得る。さらに、一方の流れ管路、例えば、流入流れ管路333は、必要に応じて閉ループ熱交換バルーンカテーテルシステムを始動させるために熱交換流体331のバッグ339に連結し得る。
【0100】
熱交換プレート338は、使い捨てポンプヘッド340によって熱交換プレートを介してポンプ輸送される熱交換流体用の蛇状経路339を備え得る。蛇状経路339およびポンプヘッド340を有する熱交換プレート338は、再使用可能なマスター制御装置341内に設置するように設計されている。マスター制御装置は、熱電加熱器/冷却器(TEクーラー)などの発熱または除熱装置342を備え得る。TEクーラーは、装置を作動させる電流の極性を変えることで発熱または除熱し得るために特に有利である。したがって、2つの別の蛇状装置を必要とせずに、システムへの熱の供給またはシステムからの除熱を都合よく制御し得る。
【0101】
マスター制御装置は、ポンプヘッド340を作動させて熱交換流体331をポンプ輸送し、流体331を熱交換器327および熱交換プレートの蛇状経路を通って循環させるためのポンプ駆動体343を有している。熱交換プレートは、設置されると、TEクーラーと熱の行き来があるように連絡する状態になり、それによって、TEクーラーは、熱交換流体が蛇状経路を通って循環するときに、熱交換流体を加熱または冷却する働きをし得る。熱交換流体は、患者の体内に配置された熱交換器を通って循環するとき、患者の身体に熱を加えたり、身体から熱を除去したりする働きをし得る。このように、TEクーラーは、所望のように患者の血液に変化を与える働きをし得る。
【0102】
TEクーラーとポンプとは、制御装置344に応答する。制御装置は、多くのセンサ、例えば、患者の耳、脳領域、膀胱、直腸、食道またはセンサを設置するオペレーターが望む他の適当な位置から温度を検知し得る体温センサ348、349などの複数の電気センサへの電気接続345、346、347を介して入力データを受容する。さらに、センサ350は、熱交換バルーンの温度をモニターし得、他のセンサ(図示せず)は、所望により、カテーテルの先端、カテーテルの基端または他の所望の位置で血液温度をモニターするように配備し得る。
【0103】
オペレーターは、手動入力装置351を使って、制御システムの作動パラメーター、例えば、脳についての予め選択した温度を入力し得る。パラメーターは、手動入力装置351と制御装置344との間の接続353により制御装置に伝送される。
【0104】
実用時には、手動入力装置を使用するオペレーターは、制御装置344に1組のパラメーターを供給する。例えば、患者の脳領域および/または全身についての所望温度を予め選択した温度として指定し得る。データは、例えば、センサ位置における患者の検知温度、例えば、患者の実測体芯温度または脳領域の実測温度を示すセンサ348、349から受信する。他のデータ入力は、熱交換器の実測温度、カテーテル本体の先端での血液温度などを備え得る。
【0105】
制御装置はデータを調整し、パラメーターを実行かつ維持するようにシステムの種々の装置を選択的に作動させる。例えば、制御装置は、実測温度が指定温度より高い場合には除去している熱の量を増大させるように、または、実測温度が指定温度より低い場合には除去している熱の量を減少させるようにTEクーラーを作動させ得る。制御装置は、検知された全身または局所温度が所望の温度の場合には、熱交換流体のポンプ輸送を停止し得る。
【0106】
制御装置は、目標温度を定め、さらに上方分散設定値温度および下方分散設定値温度も設定する作動緩衝範囲を有し得る。このようにして、制御装置は目標温度に達するまで熱交換器を作動させ得る。目標温度に達したら、制御装置は上方分散設定値温度が検知されるか、または下方分散設定値温度に達するまで熱交換器の作動を停止し得る。上方分散設定値温度が検知されると、制御装置は、血流から熱を除去するように熱交換器を作動させる。一方、下方分散設定値温度が検知された場合には、制御装置は血流に熱を加えるように熱交換器を作動させる。この制御機構は、先に説明した図5および図6に示されているものと類似である。そのような制御機構をこのシステムに適用すると、オペレーターが実質的に所望温度を調整し得るという利点があり、システムは、目標温度に到達させて、患者を目標温度下に維持する働きをする。同時に、目標温度に達すると、制御装置は、通常、当該電気装置に対する潜在的に有害な行動である、めまぐるしいTEクーラーのオン・オフの切換えや、駆動体の作動・停止をしないように緩衝範囲を定める。
【0107】
また、本発明に従って、制御装置は、いくつかのセンサに同時に応答するように、またはいくつかの熱交換器などの種々の部品を作動させたり止めたりするように設計できることも理解されよう。このようにすると、制御装置は、例えば、目標温度を下回る検知体芯体温度に応答して後に体芯に循環される血液を加熱し、同時に、目標温度を超える検知脳温度に応答して脳領域に向かう血液を冷却するように第2熱交換器を作動させ得る。検知された体温が目標温度であれば、体芯に向かって循環する血液と接触している熱交換器を制御装置がオフに切換え、同時に、制御装置が、脳領域に向かう血液を冷却するように熱交換器を作動させ続けることも可能である。オペレーターが予測し得、かつ制御装置にプログラムし得る多くの制御機構はいずれも本発明に包含される。
【0108】
例示されているシステムの利点は、患者に接触するシステムのすべての部分が使い捨てであるが、システムの実質的かつ比較的高価な部分は再使用可能なことである。したがって、カテーテル、滅菌熱交換流体用通路、滅菌熱交換流体自体およびポンプヘッドはいずれも使い捨てである。熱交換バルーンが破裂して、熱交換通路、したがってポンプヘッドが患者の血液と接触しても、それらの部品がすべて使い捨てなので、患者との交差汚染は発生しないであろう。しかし、ポンプ駆動体、電子制御機構、TEクーラーおよび手動入力装置はすべて、経済性および便宜性のために再使用可能である。さらに、センサは使い捨てであってよいが、センサに結合する制御装置は再使用可能である。
【0109】
本明細書に詳細に説明したシステムは、本明細書で権利請求されている本発明の精神を逸脱しなければ、多くの置き換え、削除および代替を用いて使用し得ることは当業者には容易に理解されるであろう。例えば、蛇状経路はコイルまたは他の適当な形状であってよく、センサは多岐にわたる身体位置を検知し得るし、温度または圧力などの他のパラメーターを制御装置に供給し得、熱交換器は、熱交換流体の循環を必要としない熱電加熱装置などの適切なタイプであってよいが、それらには限定されない。熱交換バルーンを備える場合、スクリューポンプ、ギアポンプ、ダイヤフラムポンプ、蠕動ローラーポンプなどのポンプまたは熱交換流体をポンプ輸送するための他の適当な手段を装備し得る。当業者には自明の上記および他の置き換えはすべて本発明により予想される。
【0110】
図17A〜Eは、本発明の熱交換器の1つの実施態様を示している。図17Aに示されているように、フィン付きバルーン部362を有する熱交換バルーンカテーテル360は、下行大動脈364の少なくとも一部および脳領域に血流を導く血管366内に配置し得る。バルーン部362は、バルーン内の熱交換流体とバルーンに熱交換すべく近接して流れる血液との有効な伝熱を促進するのに十分な程度に薄いが、膨脹されると、流体通路または血管366を故意ではなく閉塞したりするほどには過度に可撓性ではない材料より形成され得ると理解されたい。適切な熱交換特性を有する予測可能なバルーン形状を得るためには、薄く、強力ではあるが、比較的可撓性が低いPETなどの材料が望ましいのは確かである。この実施態様で提供される熱カテーテル360のカテーテルシャフト368は、当業者には公知のガイドカテーテルまたは操縦可能なワイヤオーバーザワイヤ法などの常法により、選択した身体領域または動脈366に関して所望の位置に配置し得る。カテーテル360のバルーン部362は、本明細書に記載のような伝熱流体の閉ループ循環を支持し得る。表面積が増大すると、熱伝導により身体領域内に有効な伝熱が得られ、さらに、バルーンを膨脹させたときにバルーン表面の外側に通路を形成することにより実質的な破裂なしに血液の連続血流が可能になる。
【0111】
図17Bは、シャフト368上に装着された熱交換バルーン360を示しており、シャフト368は、その長手方向軸370と長手方向軸370から半径方向外側に突出する複数の伝熱フィン369、371、373、375により形成されている。伝熱フィンは、例えば、多ローブ式の折り畳みバルーンのローブとして形成してもよい。シャフト368は概して丸く、この実施態様では、シャフトを貫通する作業管腔370を有し、カテーテルの先端で開いている。作業管腔は、例えば、血栓溶解剤、抗凝固剤、神経保護剤、バルビツール剤、抗発作剤、酸素化潅流液、血管拡張剤、血管痙攣防止剤、血小板活性化防止剤、および血小板凝着防止剤を含み得る薬剤の注入に用いることができる。あるいは、作業管腔は、透視用染料の注入、ガイドワイヤ329の受容、または、例えば、血管形成術カテーテル、塞栓摘出用カテーテル、閉塞部材送達カテーテル、塞栓部材送達カテーテル、電気燒灼装置、またはマイクロカテーテルを含めた種々の診断もしくは治療装置のためのガイドカテーテルとして用い得る。中央管腔の外側のシャフトは、ウェブ372によって2つの通路、つまり流入通路374と流出通路376に分割されている。シャフトは、バルーンの先端で流入通路とバルーン内部を連絡している流入オリフィス377、378、379を有している。シャフトは、さらに、バルーン内部と流出通路との間を連絡している流出オリフィス380、381、382を有している。流入オリフィスと流出オリフィスの間の流出通路にはプラグ384が挿入されている。ウェブ372は、シャフトのこの部分における熱交換流体の流れに対する抵抗を低減させるためにプラグと流入オリフィスとの間でシャフトから除去し得る。あるいは、ここでは示さないある実施態様においては、流出通路のプラグと流入オリフィスの間のバルーンの下に比較的閉塞されない熱交換流体の流れを得るための通路を提供する丸い開放管腔を有するチューブを接合し得る。
【0112】
バルーンは、例えば、バルーン内部の熱交換流体とバルーン外部を流れる血液との間で有効な熱交換を可能にする程度に薄い1枚の折り畳めるプラスチック材料285のシート製であり得る。符号286で示されているようにこの材料をシャフトに軽く留めてバルーンのローブを形成し得る。さらに、符号287および符号288に示されているように、プラスチックシート自体を適切な位置で軽く留めてローブを形成し得る。ローブ形状のバルーン表面により、熱交換のための有意な表面が得られると同時に、バルーンのローブ間のスペースを通ってバルーンを通過する連続流が得られる。
【0113】
使用時には、熱交換流体(図示せず)は、中程度の圧力下で流入通路374内にポンプ輸送し得る。熱交換流体は、例えば、滅菌塩類溶液または適切な伝熱特性を有する他の生体適合性流体であってよい。熱交換流体は、流入通路を通ってバルーンの先端の流入オリフィス377、378、379に達する。流体は、流入通路からバルーン内部に流れ込む。次いで、流体は、基端方向にバルーン内部を通って流れ、バルーンの基端の流出オリフィス380、381、382に達する。次いで、熱交換流体は、バルーン内部から流出オリフィスを通り、流出通路376に流れ込み、そこでシャフトから戻って流れ落ち、体外に出る。
【0114】
上述のように、熱交換流体は、バルーンを通って循環し、熱交換流体がバルーンを流れる血液より温かい場合には熱を放出し、熱交換流体が血液より冷たい場合には熱を吸収する。
【0115】
図18A〜図18Eは、局部的に限定された伝熱を提供する内部流体通路392を備えたスリーブを有するように形成された本発明の別の変形熱交換カテーテル390を示している。伝熱カテーテル390は、流体含有身体領域内に配置するための血液誘導スリーブ394を含み得、このスリーブは、内部流体通路392を用いて形成された基端領域396と先端領域398によって規定されており、内部流体通路392は、カテーテル本体394内に流体の流れを導くためにそれぞれ流体を含有する身体領域と連絡している少なくとも1つの比較的基端に近い開口部395と少なくとも1つの比較的先端に近い開口部399によって区画されている。血液誘導スリーブの内部流体通路392内の流体との局部的に限定された伝熱を得るためにスリーブの少なくとも一部内に熱交換器が内側に配置されている。図18A〜図18Eにおいて、示されている熱交換器は、以下に詳細に説明するように、熱交換流体を循環させるために内部通路392の円周上に配置された溝付き閉ループ交換器である。
【0116】
図18Aに示されているように、大動脈364の少なくとも一部と、脳領域に血液を導くために大動脈から分岐している血管399とに、温度調節カテーテル390を配置し得る。カテーテルは無名動脈内に配置するが、例えば、その先端は、特に、右総頸動脈、左総頸動脈、右内頸動脈および左内頸動脈内に配置してもよい。したがって、血液は、カテーテル本体394の内部流体通路392内に配置された熱交換器を通過している間に脳領域に導かれ得る。内部通路392を通って流れる血液を冷却させるように熱交換器を形成し、かつカテーテルを図24Aに示されているように配置すると、脳領域の限局的低体温を有効に達成し得る。温度調節カテーテル390は、例えば、選択的に流体含有身体領域に血液を導くようにカテーテルが配置される、他の選択された流体含有身体領域の温度を調節するために適用可能な方法にも選択され得る。
【0117】
図18B〜Gに詳細に示されているように、カテーテルは基端シャフト400を備えるように形成することもでき、基端シャフトは、中央作業管腔と隣り合った形状の2つの弓形管腔とを有する。2つの管腔は、流入管腔402と流出管路403とからなる。基端シャフトの基端取付け領域404には血液誘導スリーブが取付けられている。このスリーブは、大きなチューブ様形状に形成されたPETシートなどの極く薄い材料製の層405を有している。カテーテルシャフトは、このチューブ内の下流に配置されており、スリーブの長さに沿ってカテーテルシャフトの頂部406と底部407の辺りでシートが接着されている。これによって、スリーブの長さにわたってカテーテルの各側面にそれぞれ流入通路と流出通路である2つの翼様通路408、409が形成される。スリーブを構成するチューブ様構造を形成するために、これらの通路のそれぞれのプラスチックシート製外層を通路410の頂部で互いに連接させ得る。さらに、プリーツ412を形成するために、各通路を構成する2つのプラスチックシート層をスリーブの長さに沿って種々の地点でまたは線411に沿って一緒に連接し得、内層405は、膨脹させたときに通路が波打つようにゆるくてよい。
【0118】
スリーブの基端の取付け領域404から少し離れたところに、流入管腔402とカテーテルシャフトの流入通路409との間に1つのオリフィス415が、また流出管腔403とスリーブの流出通路408との間に1つのオリフィス416が形成されている。スリーブの先端部では、プラスチックシート間で流入通路409と流出通路408が連接されており、その結果、そこには、以下に詳細に説明するように、流体を流入側の下流に流して流出側を通って除去し得るように2つの通路が共有する共有スペース413ができている。スリーブの下のカテーテルシャフトは、薄いプラスチックシート製のスリーブがカテーテルシャフト上に折り曲げられ、適当に小さい断面を有し得るように、図18Bに示されているような縮小構造を有し得る。
【0119】
代替構成法としては、2つのチューブを用いてスリーブを形成し得る。大きい方の外側チューブにカテーテルシャフトを挿入し、僅かに小さい方の内側チューブを外側チューブに挿入するがカテーテルシャフトの上にかぶせる。外側チューブをその長さに沿ってカテーテルシャフトの底部で封鎖し、内側チューブはその長さに沿ってカテーテルシャフトの頭部で封鎖する。内側と外側のチューブは、その間に2つの通路を形成するようにカテーテルシャフトに向い合う線に沿って互いに封鎖する。シャフトと向かい合う封鎖は、先端はずっと延びてはおらず、このことは、流入通路と流出通路の間に連絡用の共有スペースを形成する役目を果たす。
【0120】
そのような装置のさらに別の構成法は、薄いプラスチック製の大型チューブを内側に折り曲げて薄いプラスチック製の2つの層で境界が定められた内部通路を作出する方法であり、薄いプラスチック層はそれらの先端で実質的に結合している。2つのプラスチック層の間のスペースは流入通路と流出通路を構成している。カテーテルシャフトを内部通路内に配置し、2つの層を互いに対しておよびカテーテルシャフトの底部に沿って内部通路の長さにわたってカテーテルシャフトに封鎖し得る。2つのプラスチック層は、さらに、基端開口部から内部通路の先端より一寸手前の点まで内部通路の頭部に沿って互いに封鎖する。これによって、流入通路409と流出通路408が形成されると同時に、スリーブの先端に共有スペース413が残る。
【0121】
使用時には、熱交換流体(図示せず)は圧力下に基端シャフト404の流入管腔402内に導入される。熱交換流体はシャフトを下流に流入オリフィス415に導かれ、この時点で流入オリフィス側で2つのプラスチックシート層間の流入通路409に入る。次いで、流体は流入通路を下流に導かれ、実質的にスリーブの波打ちプリーツを幾分膨脹させる。流体は血液誘導スリーブの先端の共有スペース413に入り、スリーブの流出側のプラスチックシート層の間に形成された流出通路408に入る。流体は、スリーブの長さを戻ってプリーツ通路を通りカテーテルシャフトの流出通路408と流出管腔403の間に形成された流出オリフィス416に戻る。次いで、流体は流出通路を下って身体から出て行く。このようにして、熱交換流体は、熱交換流体と熱交換すべく近接して内部通路を巡る血液との間で熱交換を生成する構造を通って循環し得る。
【0122】
薄いプラスチックシートを使って内部通路を形成することにより、血液誘導スリーブを小さい断面に収縮させること、例えば、内部通路をカテーテルシャフトの縮小断面部分上で包むかまたは縮小断面部分上に折り曲げることができる。これによって、今度は、血管系に挿入するための低断面装置が得られる。プラスチックシートをひだにして形成された波打ち構造は、循環する熱交換流体によって膨脹すると、カテーテル本体内を流れる熱交換流体と内部通路内で熱交換すべく近接する血液または他の体液との間の熱交換表面積を増大させる。
【0123】
図19に示されている別の実施態様では、伝熱カテーテル420は、内部通路423内に配置された熱交換バルーンカテーテル424などの熱交換器を有する、内部通路423を形成する血液誘導スリーブとして形成されたカテーテル本体422を有し得る。熱交換器は、いずれの適当な熱交換器であってもよいが、示されている実施態様において、熱交換器は、伝熱バルーンカテーテル、例えば、前節に記載されているかまたは図17Bもしくは以下の図24Aに示されているタイプのものである。熱交換器は、十分な熱交換能力を提供し、かつ内部通路を流れる流体が適切に流れるのに適当な大きさおよび形状を有していなければならない。
【0124】
血液誘導スリーブは、基端開口部428を有する基端セクション426を有している。さらに、スリーブの基端セクションの壁は、周囲の身体部分から内部通路への流体の潅流をさらに促進するオリフィス430を形成し得る。
【0125】
スリーブはさらに中間セクション432を有する。スリーブの中間セクションの壁は、通常、流体が中間セクションの壁を貫通して内部通路を出て行かないように概して中実である。中間セクション432におけるスリーブ、実際にはその長さにわたる壁は、内部通路内の流体を内部通路の外の血液などの組織から断熱するために断熱性を有する材料から形成し得る。したがって、基端セクション426から内部通路に流入する流体は、中間セクション432を通って血液誘導スリーブの先端セクション434に誘導されるであろう。
【0126】
血液誘導スリーブの先端セクション434は先端開口部436を有している。さらに、血液誘導スリーブの先端セクションの壁は、内部通路から出て血管などの周囲の身体部分へ至る流体の流れをさらに促進するオリフィス438を形成し得る。スリーブの先端436は、熱交換器440の先端近くにあるか、熱交換器の端(図示せず)と同一の広がりを持つか、または図26に示されているように熱交換器から末端側に延びていてもよい。
【0127】
さらに、患者の体外にあるカテーテルシャフトの基端からカテーテルシャフトの先端443まで延びる中央作業管腔442があってよい。中央管腔は、熱交換バルーンの先端を通過するか、さらにはスリーブの先端を通過して延びていてよい。作業管腔は、ガイドワイヤを受容したり、あるいは、染料の注入、凝血塊の溶解もしくはマイクロカテーテルを介した注射の実施または特に図17に示されている作業管腔に関して上述したような作業管腔の他の使用などの追加処置のためにマイクロカテーテルを挿入したりするのに用い得る。作業管腔の上記使用はいずれも、血液誘導スリーブ内での血液の冷却の前、後または最中にでも実施し得ることが容易に理解されよう。カテーテルの冷却機能を阻害することなく、冷却を行うと同時に上記目的のいずれのためにも作業管腔を使用し得ることは、本発明のカテーテルの1つの利点であろう。
【0128】
使用時には、伝熱カテーテルは、流体含有体、例えば、図19に示されているように、動脈系内に配置する。血液誘導スリーブの基端は、例えば、下行大動脈446内に配置し得る。カテーテル本体の先端は所望に応じて配置されるが、例示されているケースでは、血液を脳に供給する左総頸動脈448内に配置されている。スリーブの基端位置での大動脈とスリーブの先端での左総頸動脈との間の圧力差は、血液を、スリーブを介して左総頸動脈内に、またそこから脳に流させるのに十分である。例示されているケースでは、血液は、大動脈内に配置されている血液誘導スリーブの内部通路に入り、内部通路を通って、加熱または冷却された熱交換流体が循環している熱交換バルーン424と熱交換すべく近接して流れる。このようにして、血液は加熱または冷却される。次いで、加熱または冷却された血液は、内部通路の先端から誘導され、左総頸動脈に流れ込む。熱交換器が血液を冷却している場合、冷却された血液は左総頸動脈に導かれ、脳が冷却された血液に浸される。これが十分な長さの時間維持されると、上述の状態の利点を有する脳組織の局所的冷却が生じ得る。
【0129】
血液誘導スリーブの基端開口部423を大動脈弓447からいくらか離れた下行大動脈の下流に配置すると、全体が左総頸動脈内に配置された血液誘導スリーブによって血液を捕捉し、内部通路を通って導いた場合よりも、熱交換バルーンカテーテルを越えて右総頸動脈に達する長い血液路が得られるであろう。この長い通路は、短い通路と比較して高い冷却効果を提供する。また、血液誘導スリーブを少なくとも部分的に大動脈内に配置することにより、例えば、カテーテルの熱交換部を右総頸動脈内に配置した場合に可能であるよりも大きい熱交換器、例えば、大直径を有する熱交換バルーンの使用が可能になる。というのは、大動脈は、右総頸動脈より直径が有意に大きいからである。
【0130】
血液誘導スリーブの先端セクション434は、配置されている血管の周囲に比較的ぴったり合わせて形成することもできる。このようにすると、スリーブの基端と先端の間の圧力差が最大になり、例えば、大動脈から頸動脈に流れる実質的にすべての血液が内部通路を通過し、熱交換器により加熱または冷却される。血液誘導スリーブの壁は、動脈の封止を容易にする閉鎖性肩部を構成し得る。熱交換器は、例えば、カテーテル本体を延びた状態に保持する伝熱バルーンであり、熱交換バルーンは、フィンなどを有しており、それによって、熱交換バルーンのフィン間および内部通路の内壁とバルーンとの間の有意な血流が可能になり、右総頸動脈に流入する全部でなくとも殆どの血液が熱交換器を通って流れ、それによって加熱または冷却処理される。
【0131】
本発明の伝熱カテーテルの別の実施態様が図20に示されている。カテーテル450は、血液などの体液を受容かつ誘導するための血液誘導スリーブ452を装備し得る。スリーブは、その先端領域456より直径が有意に大きい先端領域454を有する実質的に漏斗形状のものであってよい。このようにすると、血液誘導スリーブの外面は、当該動脈の内部などの適切な解剖学的構造に押し付けられるかまたは支えられ得る閉鎖性肩部を形成し得、そのために、当該動脈に流入する殆どまたは実質的にすべての血液は、動脈に入る前に血液誘導スリーブの内部通路464に導かれる。例示されている実施例において、カテーテル本体が挿入される動脈は左総頸動脈であるが、血液誘導スリーブの先端部が他の所望の位置に同じように配置されるように設計し得ることが当業者には容易に理解されよう。
【0132】
先端領域は、実質的に円筒形を有する細長いものであり、先端開口部458で終端し得る。また、基端領域は基端開口部460を有し得、基端開口部は、その開閉またはカテーテル本体内の内部通路464への血液の流入を制御するための弁462を有し得る。
【0133】
基端領域454の内部には熱交換器が収容されている。示されている熱交換器は、伝熱流体を循環させるための伝熱バルーンまたはバルーンローブを内包し得る一連のらせん状フィン466である。あるいは、フィンは、電気抵抗加熱器などの他のタイプの加熱または冷却機構であってよい。
【0134】
伝熱カテーテルは、作業管腔470を備え得るカテーテルシャフト468を装備し、作業管腔470は、熱交換カテーテルが定位置にあるときには患者の体外に延び、したがって、薬剤、透視用染料などの注入に用いたり、伝熱カテーテル配置用のガイドワイヤ472を収容したりし得る。シャフトは、伝熱流体の流れのための通路(図示せず)を有するか、またはカテーテル上の熱交換器もしくはセンサ(図示せず)に連結するための電線(図示せず)をさらに含み得る。
【0135】
使用時には、伝熱カテーテル450は所望の身体位置に配置される。図20においては、カテーテルは、血液誘導スリーブ454の基端部が大動脈474内にあり、その先端部456が左総頸動脈476内にあるように配置されている。血液は大動脈を(矢印「F」で示されている)方向に流れ、弁462が開いていればカテーテル本体の基端開口部460に入り得る。大動脈内の血液と左大総頸動脈内の血液との間の圧力差は、血液を内部通路に流させるのに十分である。血液が内部通路を上流に流れているとき、血液は熱交換フィン466と熱交換すべく近接して流れ、加熱または冷却される。加熱または冷却された血液は、血液誘導スリーブにより左総頸動脈に誘導され、最後に脳を加熱または冷却された血液浴に入れる。この状態が十分な長さの時間維持されれば、脳の局所的な加熱または冷却が生じ得る。
【0136】
本発明の伝熱カテーテルの別の実施態様が図21に示されている。この図に示されているカテーテル490は、患者の身体の血管、例えば、脳領域494に通ずる大動脈内に配置するように設計された血液誘導スリーブ492を備えている。血液誘導スリーブは、実質的に円筒形であるが、カテーテル本体の肩部を形成するわずかに拡大された基端セクション496を有していてよく、この肩部は、血液誘導スリーブが冠状弓から分岐する動脈などの動脈内に配置されているときには閉鎖性肩部498としての働きをし得る。
【0137】
血液誘導スリーブは、チューブ状の形状を有し、基端開口部502から始まる基端セクション496から、先端開口部504で終端する先端まで延びる内部通路500を構成している。図17Bおよび図24Aに記載かつ示されているようなフィン付きバルーン熱交換カテーテル506などの熱交換器は、カテーテル本体内に設置され、スリーブの内部通路500内に完全に内包され得る。フィン508は、円筒形の熱交換バルーンに関して伝熱表面を増大させると共に、基端開口部から、熱交換バルーンのフィンを越えかつフィンの間を通って内部通路の先端から出る血流の流れのフィン間通路を形成する。カテーテルシャフト509は、上述の他の実施態様に関連して説明したように装備してもよい。
【0138】
図21B〜Dは、弁アセンブリ460の開閉を調節する制御システムの操作を示しており、弁アセンブリ460は、内部通路500内の血液の流れを制御するために基端開口部502などのスリーブ492のいずれの部分に沿って形成してもよい。例えば、カテーテルシャフトの周りに、スリーブ492の基端開口部の2つの小葉弁510を配置し得る。弁510は、図21Bに示されているような少なくとも1つの閉鎖位置と、図21Cに示されているような少なくとも1つの開放位置を有し得る。カテーテル本体には逆止め弁などの他の弁を選択してもよく、弁は、選択された時点にスリーブを通過する流体の量を調節するために可変度で開閉し得る。
【0139】
弁510は、図21Dのグラフに示されているように、患者の心拍に従って同期開閉し得る。大動脈血流(L/分)は拍動性であり、かつ、心拍周期中に異なる時間間隔で変動するので、比較的大量の血液が心臓から放出されるときには弁を選択的に開放し得る。同時に、血流がゆっくりのときには、血液を内部通路500内に維持するように弁を選択的に閉鎖し得る。あるいは、カテーテル本体から遠位の動脈に流入するすべての血液を最大に加熱または冷却するために、血液が内部通路を通ってさらにゆっくり流動するように弁を制御して、熱交換器上をゆっくり流れさせるようにすることができる。
【0140】
上述のように、カテーテル制御装置は、心拍、装置内または患者の体内の種々の位置での温度および圧力などの身体状態または検知刺激を同時にモニターし得る。弁510が閉鎖状態(図21B)にあるとき、血液または流体は、内部通路500内に保持され、内部に配置された熱交換器506によって有効に冷却される。閉鎖位置にある弁は、冷却された流体が脳から逆流するのを防止または最小限にし得る。血液が冷却された後、心臓がさらに血液を伝熱カテーテルの方向に送り込み始めると、弁は開放位置(図21C)をとって、比較的温かい流入血液によって、冷やされた血液を閉じ込められた冷却領域から押出すように作動し得る。その後で心臓からの血液の圧力またはサージングが低下すると、弁510は再び閉じ、脳における所望の局所的低体温レベルが得られるまでこの冷却およびポンプサイクルを繰返し続ける。図21Dは今説明したサイクルのグラフである。
【0141】
これまで説明してきた本発明の多くの実施態様は冷却装置または加熱装置として示されているが、これらの変形のいずれの組合せも温度調節装置の系列またはネットワークを構成し得るものと理解されたい。例えば、図22に示されているように、熱交換カテーテル520は、大動脈526領域に配置された複数の折り畳める冷却フィン522を有する伝熱バルーン524を備えている。適当なフィン付き伝熱バルーンは既に記載されている。熱交換カテーテルは、カテーテルシャフト528を装備し得る。熱交換カテーテルは、カテーテルシャフトに沿って冷却バルーン524とは異なる位置に形成された加熱体530を有し得る。シャフト528は、高温の伝熱媒体を加熱体に循環するための1対の長手方向通路(図示せず)および冷たい伝熱媒体を冷却バルーン522に循環するための追加の1対の通路(図示せず)を有し得る。あるいは、加熱フィン530は、抵抗加熱器または当業界では公知の他の加熱体を備え得る。抵抗加熱体の場合、電流はシャフトに巻きついているワイヤ(図示せず)を通って発熱体に流れる。
【0142】
冷却バルーン522は、絶縁底面534を備え得る。したがって、特定の方向、例えば脳に向かって流れる血液は、患者の体内の他の領域、例えば身体のもっと下の方に向かって流れる血液に対して優先的に冷却され得る。図22に示されている実施例では、伝熱領域は、湾曲した冷却バルーンを有しており、バルーンはその曲率の内径に沿って断熱され、その曲率の外径に沿っては伝熱性である。冷却バルーンは、大動脈弓内に配置し得る。血液は心臓によって(矢印Fで示された)大動脈内にポンプ輸送され、一部が冷却バルーン522に熱交換すべく近接してバルーンの頂面523を越えて流れる。この血液は冷却され、次いで、冷却された血液は自然に脳領域に流れる。内部の絶縁曲率半径525を通過して流れる血液は冷却されず、したがって、正常温度の血液は大動脈を通って身体の下方に流れる。例示されている実施例において、冷たい血液は、これらの動脈それぞれにカニューレ挿入する必要なく、大動脈弓から延びるすべての動脈を通って、脳領域に流れることに留意されたい。そのような構成においては、伝熱カテーテルに血液誘導スリーブを装備することも不要である。その理由は、カテーテルを用いなくても冷たい血液を特定の動脈に導く誘導冷却が得られるからである。
【0143】
上述のように、加熱および冷却機構は、伝熱カテーテル524のシャフト528に沿って種々の位置に形成し得る。あるいは、多重加熱および冷却カテーテルを組み合わせたり協働させたりして用いてもよい。先に述べたように、共有カテーテル制御装置は、多重装置を個別または集合的にモニターかつ制御することができ、圧力センサまたは温度センサなどの1つ以上のセンサ(図示せず)に応答し得る。
【0144】
本発明の別の態様が図23に示されており、この態様において、加熱または冷却された血液は、比較的小さい血管を通って腫瘍などの特定の位置または心臓などの器官に誘導され得る。血液誘導スリーブ522を有する伝熱カテーテル550が装備されており、このスリーブは、基端開口部554と先端セクション552を有している。血液誘導スリーブ内には、例えば、上述のようなフィン付き伝熱バルーンであってよい熱交換器558が配置されている。伝熱カテーテルは、血液誘導スリーブの少なくとも内部から先端562に向かって延びるカテーテルシャフト560を有している。スリーブの先端セクションはカテーテルシャフト564の周りで封鎖されている。カテーテルシャフト560は、その血液誘導スリーブ内の1箇所に形成されている血液流入オリフィス568、570とシャフトの先端562の間に延びる潅流管腔566を有している。血液流入オリフィスは、潅流管腔と血液誘導スリーブの内部572との間の流体連絡を与える。
【0145】
使用時には、伝熱カテーテル560は、患者の脈間構造、例えば、大動脈574内に入れ、カテーテルシャフト560の先端562が所望の位置、例えば、冠状動脈口内にあるように配置される。血液誘導スリーブ552の基端とカテーテルシャフトの先端566における大動脈内血液間の圧力差により、血液はスリーブの基端開口部554から、血液は、加熱または冷却される熱交換器と伝熱近接して内部通路を通って血液流入オリフィスに入り、カテーテルシャフトの中央管腔578を通って、中央管腔の末端から出る。このようにして、加熱または冷却された血液の流れは、特定の器官または組織、例えば、心臓または腫瘍に向かって誘導され、そのような器官または組織は加熱または冷却された血液浴に浸される。器官または組織の血液供給が十分な部分を十分な時間この方式で処置すると、当該器官または組織の局所的加熱または冷却が得られるであろう。
【0146】
中央管腔は、末端578から体外の基端開口部まで延びていてよい。このようにすると、中央管腔は、血管形成術および血管形成術用のガイドカテーテルとしての働きを含めた上述のすべての用途のための作業管腔として機能し得る。中央すなわち作業管腔は、ガイドカテーテルとして機能し、かつ中央すなわち作業管腔を介した血管形成術用カテーテルの挿入と冷血液の潅流とを同時に可能にするような大きさにし得る。
【0147】
図17に示した熱交換バルーンの代替構造が図24Aに示されており、この構造において、熱交換領域は、中央の折り畳める管腔908の周りに配置された一連の3つの折り畳めるバルーンローブ902、904、906を用いて形成されている。2つの通路、流入通路912と流出通路914を有する基端シャフト910が形成されている。シャフトの内部は、ウェブ916,917によって2つの管腔に分割されているが、これらの管腔はシャフトの内部で等部分を占めているのではない。以下に説明する理由のために、流入通路は内部の円周の約1/3を占め、流出通路は内部の円周の約2/3を占めている。
【0148】
カテーテルの熱交換領域において、シャフト910と中央の折り畳み管腔908を形成するチューブ911との間には遷移部915が形成されている。流出通路は閉鎖されており、チューブ911は、シャフト910の上に、例えば糊付けにより遷移部915で固定されており、シャフトはチューブ(図示せず)で終端している。このようにすると、図24Cに示されているように、カテーテルのこの部分の流入通路はシャフトの全周を占める。バルーンの先端では、流入通路と3つの折り畳みバローンとの間に流入オリフィス918、920、922が形成されている。熱交換領域の基端では、各バルーンの内部とシャフトの流出通路との間に流出オリフィス924、926、928が形成されている。図30Dに示されるように、流出通路の構造は、3つのバルーンそれぞれの内部連絡が可能になるようになっている。
【0149】
熱交換流体(図示せず)は、シャフト912内の流入通路を下り、管腔908をさらに下って、熱交換領域の先端まで流れ、流入オリフィス918、919、920を通って管腔を出てバルーンローブ919、921、923の内部管腔に入り、3つのバルーンから戻り、流出オリフィス924、926、928からシャフトに再び入り、次いで流出通路914を下ってカテーテルの基端に向かうことが理解されよう。このように、熱交換流体は、バルーンを通って循環し、熱交換流体が血液より温かい場合にはバルーンと伝熱近接して流れる血液に熱を加え、熱交換流体が血液より冷たい場合には血液から熱を除去し得る。バルーンを形成する材料は、バルーン内部の熱交換流体とバルーンの表面と伝熱近接して流れる血液などの体液との間で十分な熱交換を可能にする材料からなる。そのような適切な材料の1つは、熱交換流体の適切な流れに必要な圧力にも十分耐え得る強度を有する極めて薄いプラスチック材料である。
【0150】
ここで記載したのと同じタイプの熱交換バルーンを図17と共に使って、熱交換流体とバルーンに対して熱交換すべく近接して流れる血液との相対温度に応じて血流に熱を加えるか血流から熱を除去し得ることも容易に理解されよう。すなわち、装置内の熱交換流の温度を制御するだけで、同じ装置を同じ位置で交互使用して加熱または除熱し得る。
【0151】
熱交換装置は、熱交換装置と1セットの熱交換装置の使用説明書とからなるキットとしても供給し得る。熱交換装置は、例えば、本出願に記載のような熱交換カテーテルを包含し得る。使用説明書は、一般に、体液含有領域への熱交換装置の挿入法と、体液の温度に変化を与える熱交換装置の温度の設定方法とを使用者に教示する。使用説明書は、本出願に記載されている目的のいずれかを達成するために体液を加熱または冷却する方法を使用者に教示し得る。
【0152】
上述の用途に関連して本発明のすべての態様を説明したが、種々の実施態様および方法についての上記説明は限定的な意味に解釈してはならない。上記は、例示および説明の目的で呈示されている。本発明のすべての態様は、本明細書に記載されている、多様な条件および変数に依存する特定の描写、形状または相対比率には限定されないものと理解されたい。本明細書は、包括的であること、すなわち、本発明をここに開示されている厳密な形態に限定することを意図するものでない。開示されている発明の特定の実施態様の形態および詳細における種々の変更および実質的でない変更ならびに本発明の他の変形は、本発明の開示を参照すれば当業者には自明であろう。したがって、添付特許請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲内に含まれるような、記載された実施態様の変更または変形をすべて包含するものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物患者の解剖学的構造内に挿入可能なカテーテル装置であって、前記解剖学的構造を通って体液は患者の標的領域まで流れることが可能であり、前記カテーテル装置は標的領域の温度を変更させるために、体液を用いてその場での熱交換を果たすように機能し、前記カテーテル装置は、
基端および先端を備えた細長い可撓性カテーテルと、前記可撓性カテーテルの全長はその基端と先端との距離として定義されることと、
前記熱交換流体がその内部を循環可能な少なくとも1つの流体管腔と、
前記カテーテル上の第1位置に配置される熱交換器と、前記熱交換器は、前記熱交換器と熱交換すべく近接させた状態で流れる体液と前記熱交換器内を通って循環する熱交換流体との間で、熱を交換するように機能することと、前記第1位置は前記カテーテルの全長よりも短く延びることと、
前記熱交換器の少なくとも一部が配置された第1位置を含めた前記カテーテルのセグメント周囲に形成された体液誘導スリーブと、前記体液誘導スリーブは、前記体液誘導スリーブと前記カテーテルとの間に体液が流れるスペースを形成することと、前記体液誘導スリーブは前記熱交換器よりも基端側に配置された体液流入口と、前記熱交換器の少なくとも一部よりも先端側に配置された体液流出口とを有し、体液は、前記体液流入口を通り流れスペースに入り、前記熱交換器の少なくとも一部と熱交換すべく近接した状態で前記流れスペースの中を流れ、次に、前記体液流出口から出て、患者の身体の前記標的領域と流体の行き来が可能に連通している通路に至ることと、
を備えたカテーテル装置。
【請求項2】
患者の身体の標的領域の温度を調節するための請求項1に記載のカテーテル装置であって、体液は第1直径を有する第1解剖学的導管を通って前記標的領域に流れ、前記第1解剖学的導管は、前記第1直径よりも大きい第2直径を有する第2解剖学的導管と、接続かつ流体の行き来が可能に連通され、前記体液誘導スリーブは先端部分と基端部分とを有し、前記先端部分には前記体液流出口が配置され、前記基端部分には前記体液流入口が配置され、前記先端部分は、前記第1解剖学的導管の中を進むと同時に前記基端部分は第2解剖学的導管の内部に配置されたまま残るような大きさに形成され、前記第2解剖学的導管から来た体液は、前記体液流入口を通り流れスペースに入り、前記熱交換器と熱交換すべく近接した状態で前記流れスペースの中を流れ、次に、前記体液流出口から出て、前記第1解剖学的導管に入り、そして患者の身体の標的領域に至る、カテーテル装置。
【請求項3】
体液誘導スリーブの前記先端部分の断面の直径が体液誘導スリーブの前記基端部分の断面の直径よりも小さい請求項2に記載のカテーテル装置。
【請求項4】
前記先端部分は、先端部分に形成された肩部を有し、前記肩部は前記解剖学的導管内でぴったり合う封鎖を形成する大きさおよび形状にされ、それによって前記第2解剖学的導管から前記第1解剖学的導管への前記体液のほぼすべての流れが、前記体液誘導スリーブを通って流れるようにされる請求項2に記載のカテーテル装置。
【請求項5】
前記熱交換器は、
前記熱交換流体がその内部を循環する少なくとも1つのバルーンを有し、前記熱交換フィンは複数のローブを備える請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの熱交換フィンは、少なくとも1つの外側に延びる長手方向フィンを備える請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの熱交換フィンは、少なくとも1つの外側に延びる環状フィンを備える請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの熱交換フィンは、少なくとも1つの外側に延びるらせん状フィンを備える請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの熱交換フィンは、複数の外側に延びる突起を備える請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項10】
前記カテーテルは患者の体内に挿入される挿入部と作業管腔とをさらに備え、前記挿入部は前記先端から前記基端より短い地点まで延び、前記作業管腔は前記挿入部の少なくとも一部を通って延びる請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項11】
前記作業管腔を通過可能な大きさに形成されたガイドワイヤとさらに組み合わされた請求項10に記載のカテーテル装置を備えたシステム。
【請求項12】
前記作業管腔内に薬剤を注入する装置とさらに組み合わされた請求項10に記載のカテーテル装置を備えたシステム。
【請求項13】
前記注入装置が、
血栓溶解剤、
抗凝固剤、
神経保護剤、
バルビツール剤、
抗発作剤、
酸素化潅流液、
血管拡張剤、
血管痙攣防止剤、
血小板活性化防止剤、および
血小板凝着防止剤
から成る薬剤の群から選択される薬剤を収容する請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記作業管腔を通過可能な診断用プローブとさらに組み合わされた請求項10に記載のカテーテル装置を備えたシステム。
【請求項15】
前記診断用プローブは、
血管造影カテーテル、
温度センサ、
圧力センサ、
血液ガスセンサ、および
酵素センサ
から成る群より選択される請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記作業管腔にX線撮影用の造影剤を注入する装置、及び
前記作業管腔に注入された前記X線撮影用の造影剤をイメージングするイメージング装置、
とさらに組み合わされた請求項10に記載のカテーテル装置を備えたシステム。
【請求項17】
前記作業管腔を通過可能な治療装置とさらに組み合わされた請求項10に記載のカテーテル装置を備えたシステム。
【請求項18】
前記治療装置は、
血管形成術カテーテル、
塞栓摘出用カテーテル、
閉塞部材送達カテーテル、
塞栓部材送達カテーテル、
電気燒灼装置、および
マイクロカテーテル
から成る治療装置の群から選択される請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記体液流入口には弁が設けられ、前記弁は開放状態と閉鎖状態との間で作動可能であり、前記開放状態では体液の流れが前記体液流入口を通って前記体液誘導スリーブの中に入り、前記閉鎖状態では体液の流れが前記体液流入口を通って前記体液誘導スリーブから外へ出るのを防止する請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項20】
前記カテーテルは先端シャフト部分を有し、前記先端シャフト部分は前記体液誘導スリーブよりも先端側で前記体液誘導スリーブ内部から延び、前記先端シャフト部分はその内部を通る中央管腔を備え、前記中央管腔は前記流れスペースと第1位置で流体の行き来が可能に連通し、前記通路と連通し、前記標的領域と第2位置で流体の行き来が可能に連通する請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項21】
前記体液誘導スリーブは前記第1位置よりも先端側の前記先端シャフト周囲で封鎖される請求項20に記載のカテーテル装置。
【請求項22】
その場での熱交換を果たすために、哺乳動物患者の身体の流体含有部分に配置されるカテーテル装置であって、前記カテーテル装置は、
基端および先端を備えた細長い可撓性カテーテルと、前記可撓性カテーテルの全長はその基端と先端との距離として定義されることと、
前記可撓性カテーテルは患者に挿入される挿入部を備え、前記挿入部は前記先端から前記基端より短い地点まで延びることと、
カテーテル上の第1位置に配置される熱交換器と、前記熱交換器は、前記熱交換器と熱交換すべく近接させた状態にある体液と前記熱交換器内を通って循環する熱交換流体との間で、熱を交換するように機能することと、前記第1位置は前記カテーテルの全長よりも短く延び、前記熱交換器は湾曲され、その曲率の外径に沿った外表面を有すると共にその曲率の内径に沿った内表面を有し、前記外表面および前記内表面は実質的に異なる熱透過率を有することと、
を備えたカテーテル装置。
【請求項23】
前記上側表面は前記下側表面よりも熱透過率が実質的に大きい請求項22に記載のカテーテル装置。
【請求項24】
頭部に流れてくる血液が前記上側表面と熱を伝えるべく近接した状態で通過するように、ヒト患者の大動脈の湾曲に沿って配置される大きさおよび形状に形成される請求項23に記載のカテーテル装置。
【請求項25】
患者の温度に制御可能に作用するシステムであって、前記システムは、
基端及び先端を備えた細長い可撓性カテーテルと、熱交換器と、を有するカテーテル装置と、前記熱交換器は、同熱交換器と熱交換すべく近接させた状態にある体液と同熱交換器内を通って循環する熱交換流体との間で、熱を交換するように機能することと、
患者からのデータを検知する複数のセンサと、前記センサの少なくとも一つからの前記データは体温を含むことと、
前記センサの少なくとも一つからのデータに応答し、目標とする体温を達成及び維持するために、前記センサからの信号を受け取り、前記カテーテル装置の運転を制御する制御装置と、
を備えたシステム。
【請求項26】
熱交換ユニットをさらに備え、前記熱交換ユニットは前記熱交換流体と熱を交換するように機能する請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記熱交換ユニットは固体熱電冷却器からなる請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記目標パラメーターが温度であり、前記センサが温度センサであり、かつ前記制御装置が前記熱交換ユニットを作動させるように機能し得る請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
複数のカテーテル装置をさらに備え、前記制御装置が前記カテーテル装置の各々を制御するように機能し得る請求項25に記載のシステム。
【請求項30】
少なくとも1つのカテーテル装置が第1位置において前記体液に熱を与え、少なくとも1つのカテーテル装置が第2位置において前記体液から熱を奪う請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
患者の温度に制御可能に作用するシステムであって、前記システムは、
各々が基端および先端を備えた細長い可撓性カテーテルと、前記カテーテル上の第1位置に配置された熱交換器と、を有する複数のカテーテル装置と、前記可撓性カテーテルの全長はその基端と先端との距離として定義され、前記可撓性カテーテルは患者の体内に挿入される挿入部を有し、前記挿入部は前記先端から前記基端より短い地点まで延び、前記熱交換器は、前記熱交換器の表面から延びる複数の熱交換フィンを有し、前記熱交換フィンは熱交換を高めるための増大された表面積を有し、前記熱交換器は、前記熱交換器と熱交換すべく近接させた状態にある体液と前記熱交換器内を通って循環する熱交換流体との間で、熱を交換するように機能することと、前記第1位置は前記カテーテルの全長よりも短く延びることと、
各々が患者からのデータを検知し、そのデータに応答して信号を生じる、複数のセンサと、
オペレーターが目標パラメーターを特定し得る手動入力装置と、
前記センサからの信号および前記目標パラメーターを受け取り、前記信号に応答し、かつ前記目標パラメーターに関連して前記カテーテル装置の各々の運転を制御する制御装置と、
を備えたシステム。
【請求項32】
熱交換ユニットをさらに備え、前記熱交換ユニットが前記熱交換流体と熱を交換するように機能する請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記熱交換ユニットが固体熱電冷却器からなる請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記目標パラメーターが温度であり、前記センサが温度センサからなり、かつ前記制御装置が前記熱交換ユニットを作動させるように機能し得る請求項32に記載のシステム。
【請求項35】
少なくとも1つのカテーテル装置が第1位置において前記体液に熱を与え、少なくとも1つのカテーテル装置が第2位置において前記体液から熱を奪う請求項31に記載のシステム。
【請求項1】
哺乳動物患者の解剖学的構造内に挿入可能なカテーテル装置であって、前記解剖学的構造を通って体液は患者の標的領域まで流れることが可能であり、前記カテーテル装置は標的領域の温度を変更させるために、体液を用いてその場での熱交換を果たすように機能し、前記カテーテル装置は、
基端および先端を備えた細長い可撓性カテーテルと、前記可撓性カテーテルの全長はその基端と先端との距離として定義されることと、
前記熱交換流体がその内部を循環可能な少なくとも1つの流体管腔と、
前記カテーテル上の第1位置に配置される熱交換器と、前記熱交換器は、前記熱交換器と熱交換すべく近接させた状態で流れる体液と前記熱交換器内を通って循環する熱交換流体との間で、熱を交換するように機能することと、前記第1位置は前記カテーテルの全長よりも短く延びることと、
前記熱交換器の少なくとも一部が配置された第1位置を含めた前記カテーテルのセグメント周囲に形成された体液誘導スリーブと、前記体液誘導スリーブは、前記体液誘導スリーブと前記カテーテルとの間に体液が流れるスペースを形成することと、前記体液誘導スリーブは前記熱交換器よりも基端側に配置された体液流入口と、前記熱交換器の少なくとも一部よりも先端側に配置された体液流出口とを有し、体液は、前記体液流入口を通り流れスペースに入り、前記熱交換器の少なくとも一部と熱交換すべく近接した状態で前記流れスペースの中を流れ、次に、前記体液流出口から出て、患者の身体の前記標的領域と流体の行き来が可能に連通している通路に至ることと、
を備えたカテーテル装置。
【請求項2】
患者の身体の標的領域の温度を調節するための請求項1に記載のカテーテル装置であって、体液は第1直径を有する第1解剖学的導管を通って前記標的領域に流れ、前記第1解剖学的導管は、前記第1直径よりも大きい第2直径を有する第2解剖学的導管と、接続かつ流体の行き来が可能に連通され、前記体液誘導スリーブは先端部分と基端部分とを有し、前記先端部分には前記体液流出口が配置され、前記基端部分には前記体液流入口が配置され、前記先端部分は、前記第1解剖学的導管の中を進むと同時に前記基端部分は第2解剖学的導管の内部に配置されたまま残るような大きさに形成され、前記第2解剖学的導管から来た体液は、前記体液流入口を通り流れスペースに入り、前記熱交換器と熱交換すべく近接した状態で前記流れスペースの中を流れ、次に、前記体液流出口から出て、前記第1解剖学的導管に入り、そして患者の身体の標的領域に至る、カテーテル装置。
【請求項3】
体液誘導スリーブの前記先端部分の断面の直径が体液誘導スリーブの前記基端部分の断面の直径よりも小さい請求項2に記載のカテーテル装置。
【請求項4】
前記先端部分は、先端部分に形成された肩部を有し、前記肩部は前記解剖学的導管内でぴったり合う封鎖を形成する大きさおよび形状にされ、それによって前記第2解剖学的導管から前記第1解剖学的導管への前記体液のほぼすべての流れが、前記体液誘導スリーブを通って流れるようにされる請求項2に記載のカテーテル装置。
【請求項5】
前記熱交換器は、
前記熱交換流体がその内部を循環する少なくとも1つのバルーンを有し、前記熱交換フィンは複数のローブを備える請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの熱交換フィンは、少なくとも1つの外側に延びる長手方向フィンを備える請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの熱交換フィンは、少なくとも1つの外側に延びる環状フィンを備える請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの熱交換フィンは、少なくとも1つの外側に延びるらせん状フィンを備える請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの熱交換フィンは、複数の外側に延びる突起を備える請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項10】
前記カテーテルは患者の体内に挿入される挿入部と作業管腔とをさらに備え、前記挿入部は前記先端から前記基端より短い地点まで延び、前記作業管腔は前記挿入部の少なくとも一部を通って延びる請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項11】
前記作業管腔を通過可能な大きさに形成されたガイドワイヤとさらに組み合わされた請求項10に記載のカテーテル装置を備えたシステム。
【請求項12】
前記作業管腔内に薬剤を注入する装置とさらに組み合わされた請求項10に記載のカテーテル装置を備えたシステム。
【請求項13】
前記注入装置が、
血栓溶解剤、
抗凝固剤、
神経保護剤、
バルビツール剤、
抗発作剤、
酸素化潅流液、
血管拡張剤、
血管痙攣防止剤、
血小板活性化防止剤、および
血小板凝着防止剤
から成る薬剤の群から選択される薬剤を収容する請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記作業管腔を通過可能な診断用プローブとさらに組み合わされた請求項10に記載のカテーテル装置を備えたシステム。
【請求項15】
前記診断用プローブは、
血管造影カテーテル、
温度センサ、
圧力センサ、
血液ガスセンサ、および
酵素センサ
から成る群より選択される請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記作業管腔にX線撮影用の造影剤を注入する装置、及び
前記作業管腔に注入された前記X線撮影用の造影剤をイメージングするイメージング装置、
とさらに組み合わされた請求項10に記載のカテーテル装置を備えたシステム。
【請求項17】
前記作業管腔を通過可能な治療装置とさらに組み合わされた請求項10に記載のカテーテル装置を備えたシステム。
【請求項18】
前記治療装置は、
血管形成術カテーテル、
塞栓摘出用カテーテル、
閉塞部材送達カテーテル、
塞栓部材送達カテーテル、
電気燒灼装置、および
マイクロカテーテル
から成る治療装置の群から選択される請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記体液流入口には弁が設けられ、前記弁は開放状態と閉鎖状態との間で作動可能であり、前記開放状態では体液の流れが前記体液流入口を通って前記体液誘導スリーブの中に入り、前記閉鎖状態では体液の流れが前記体液流入口を通って前記体液誘導スリーブから外へ出るのを防止する請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項20】
前記カテーテルは先端シャフト部分を有し、前記先端シャフト部分は前記体液誘導スリーブよりも先端側で前記体液誘導スリーブ内部から延び、前記先端シャフト部分はその内部を通る中央管腔を備え、前記中央管腔は前記流れスペースと第1位置で流体の行き来が可能に連通し、前記通路と連通し、前記標的領域と第2位置で流体の行き来が可能に連通する請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項21】
前記体液誘導スリーブは前記第1位置よりも先端側の前記先端シャフト周囲で封鎖される請求項20に記載のカテーテル装置。
【請求項22】
その場での熱交換を果たすために、哺乳動物患者の身体の流体含有部分に配置されるカテーテル装置であって、前記カテーテル装置は、
基端および先端を備えた細長い可撓性カテーテルと、前記可撓性カテーテルの全長はその基端と先端との距離として定義されることと、
前記可撓性カテーテルは患者に挿入される挿入部を備え、前記挿入部は前記先端から前記基端より短い地点まで延びることと、
カテーテル上の第1位置に配置される熱交換器と、前記熱交換器は、前記熱交換器と熱交換すべく近接させた状態にある体液と前記熱交換器内を通って循環する熱交換流体との間で、熱を交換するように機能することと、前記第1位置は前記カテーテルの全長よりも短く延び、前記熱交換器は湾曲され、その曲率の外径に沿った外表面を有すると共にその曲率の内径に沿った内表面を有し、前記外表面および前記内表面は実質的に異なる熱透過率を有することと、
を備えたカテーテル装置。
【請求項23】
前記上側表面は前記下側表面よりも熱透過率が実質的に大きい請求項22に記載のカテーテル装置。
【請求項24】
頭部に流れてくる血液が前記上側表面と熱を伝えるべく近接した状態で通過するように、ヒト患者の大動脈の湾曲に沿って配置される大きさおよび形状に形成される請求項23に記載のカテーテル装置。
【請求項25】
患者の温度に制御可能に作用するシステムであって、前記システムは、
基端及び先端を備えた細長い可撓性カテーテルと、熱交換器と、を有するカテーテル装置と、前記熱交換器は、同熱交換器と熱交換すべく近接させた状態にある体液と同熱交換器内を通って循環する熱交換流体との間で、熱を交換するように機能することと、
患者からのデータを検知する複数のセンサと、前記センサの少なくとも一つからの前記データは体温を含むことと、
前記センサの少なくとも一つからのデータに応答し、目標とする体温を達成及び維持するために、前記センサからの信号を受け取り、前記カテーテル装置の運転を制御する制御装置と、
を備えたシステム。
【請求項26】
熱交換ユニットをさらに備え、前記熱交換ユニットは前記熱交換流体と熱を交換するように機能する請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記熱交換ユニットは固体熱電冷却器からなる請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記目標パラメーターが温度であり、前記センサが温度センサであり、かつ前記制御装置が前記熱交換ユニットを作動させるように機能し得る請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
複数のカテーテル装置をさらに備え、前記制御装置が前記カテーテル装置の各々を制御するように機能し得る請求項25に記載のシステム。
【請求項30】
少なくとも1つのカテーテル装置が第1位置において前記体液に熱を与え、少なくとも1つのカテーテル装置が第2位置において前記体液から熱を奪う請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
患者の温度に制御可能に作用するシステムであって、前記システムは、
各々が基端および先端を備えた細長い可撓性カテーテルと、前記カテーテル上の第1位置に配置された熱交換器と、を有する複数のカテーテル装置と、前記可撓性カテーテルの全長はその基端と先端との距離として定義され、前記可撓性カテーテルは患者の体内に挿入される挿入部を有し、前記挿入部は前記先端から前記基端より短い地点まで延び、前記熱交換器は、前記熱交換器の表面から延びる複数の熱交換フィンを有し、前記熱交換フィンは熱交換を高めるための増大された表面積を有し、前記熱交換器は、前記熱交換器と熱交換すべく近接させた状態にある体液と前記熱交換器内を通って循環する熱交換流体との間で、熱を交換するように機能することと、前記第1位置は前記カテーテルの全長よりも短く延びることと、
各々が患者からのデータを検知し、そのデータに応答して信号を生じる、複数のセンサと、
オペレーターが目標パラメーターを特定し得る手動入力装置と、
前記センサからの信号および前記目標パラメーターを受け取り、前記信号に応答し、かつ前記目標パラメーターに関連して前記カテーテル装置の各々の運転を制御する制御装置と、
を備えたシステム。
【請求項32】
熱交換ユニットをさらに備え、前記熱交換ユニットが前記熱交換流体と熱を交換するように機能する請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記熱交換ユニットが固体熱電冷却器からなる請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記目標パラメーターが温度であり、前記センサが温度センサからなり、かつ前記制御装置が前記熱交換ユニットを作動させるように機能し得る請求項32に記載のシステム。
【請求項35】
少なくとも1つのカテーテル装置が第1位置において前記体液に熱を与え、少なくとも1つのカテーテル装置が第2位置において前記体液から熱を奪う請求項31に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図8A】
【図9】
【図10】
【図11】
【図11A】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図18E】
【図18F】
【図18G】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図21D】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図24D】
【図24E】
【図24F】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図8A】
【図9】
【図10】
【図11】
【図11A】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図18E】
【図18F】
【図18G】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図21D】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図24D】
【図24E】
【図24F】
【公開番号】特開2010−158531(P2010−158531A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25861(P2010−25861)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【分割の表示】特願2000−565819(P2000−565819)の分割
【原出願日】平成11年8月20日(1999.8.20)
【出願人】(510034982)ゾール サーキュレイション インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】ZOLL Circulation,Inc.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【分割の表示】特願2000−565819(P2000−565819)の分割
【原出願日】平成11年8月20日(1999.8.20)
【出願人】(510034982)ゾール サーキュレイション インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】ZOLL Circulation,Inc.
【Fターム(参考)】
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