説明

カテーテル電極搭載の低減

【課題】第一プローブ電極及び第二プローブ電極を有するプローブを患者の身体内に挿入することと、体表電極を身体の表面に連結することと、を含む、位置検出のための方法を提供する。
【解決手段】少なくとも第一プローブ電極に連結され、第一アースを有する第一回路構成を用いて、第一プローブ電極と体表電極との間を通過する電流が測定され、プローブの位置座標はこの測定された電流に対応して判定される。第二アースを有する第二回路構成は、少なくともその第二プローブ電極に連結され、第一アースは第二アースから絶縁されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般に、生体内に配置された物体の位置を検出することに関係するものであり、具体的には、インピーダンス測定値を用いた位置検出に関係するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な医療的処置には、センサー、チューブ、カテーテル、投薬装置、及びインプラントなどの物体を、身体内に配置することが含まれる。これらの処置中に、この物体及びその周辺を可視化して医療施術者を支援するため、リアルタイム撮像方法がしばしば用いられる。しかしながら、多くの状況において、リアルタイム撮像は可能でなく、又は好ましくない。代わりに、内部物体の空間座標をリアルタイムで得るためのシステムがしばしば利用される。このような多くの位置検出システムが、先行技術において開発又は構想されている。
【0003】
例えば、米国特許第5,983,126号(Wittkampf)(この開示は参考として本明細書に組み込まれる)には、カテーテル位置を電気インピーダンス法を用いて検出するシステムが記載されている。米国特許出願公開第2006/0173251号(Govari et al.)、及び同第2007/0038078号(Osadchy)(これらの開示は参考として本明細書に組み込まれる)では、プローブ上の電極と身体の表面の複数の場所との間で、身体に電流を通過させることによって、プローブの位置を感知するためのインピーダンスに基づく方法を記述している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態は、プローブの電極と体表電極との間に流れる電流の測定値に基づいて、生体内に配置されたプローブの位置をリアルタイムで判定するための効率的な手段及び方法を提供する。本明細書の以下で記述される方法及び手段は、測定電流のひずみを低減するために用いられ、これにより位置測定の正確性が強化される。
【0005】
よって、本発明の1つの実施形態に従って、
第一プローブ電極及び第二プローブ電極を含むプローブを、患者の身体内に挿入することと、
体表電極を身体の表面に連結することと、
少なくとも第一プローブ電極に連結され、第一アースを有する第一回路構成を用いて、第一プローブ電極と体表電極との間に流れる電流を測定することと、
その測定電流に対応してプローブの位置座標を判定することと、
第二アースを有する第二回路構成を、少なくとも第二プローブ電極に連結することと、
第一アースを第二アースから絶縁することと、を含む位置検出のための方法が提供される。
【0006】
いくつかの実施形態において、第一アースを絶縁することには更に、所定のアース間連結インピーダンスを介して、第一アースを第二アースに連結することが含まれる。
【0007】
典型的に、アース間連結インピーダンスの値は、位置座標の判定の正確性を最大にするよう選択される。
【0008】
いくつかの実施形態において、アース間連結インピーダンスは、500〜5000オームの間である。
【0009】
典型的に、プローブを挿入することには、患者の心臓内にプローブを通すことが含まれ、第二回路構成を連結することには、少なくとも第二プローブ電極を使用して心臓の電気的活性を測定することが含まれる。
【0010】
いくつかの実施形態において、第一及び第二プローブ電極の両方が、位置座標の判定と電気的活性の測定の両方に使用するために連結される。
【0011】
更なる実施形態において、第一回路構成には、一次巻線及び二次巻線を有する絶縁変圧器を含むフロントエンドが含まれ、フロントエンドが少なくとも第一プローブ電極に連結される。このような実施形態において、第一アースを第二アースから絶縁することには、絶縁変圧器の二次巻線は第一アースに連結され、一方で一次巻線は第二アースに連結されることが含まれ得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、電流を測定することには、一般に100,000オームを超える出力インピーダンスを有するフロントエンドを連結して、その電流を少なくとも第一プローブ電極を通して伝送することが含まれる。
【0013】
また、本発明の1つの実施形態に従って、
患者の身体内に挿入するよう適合され、第一プローブ電極及び第二プローブ電極を含んだプローブと、
身体の表面のそれぞれの場所に固定するよう適合された、複数の体表電極と、
少なくとも第一プローブ電極に連結され、第一プローブ電極と体表電極との間に流れる電流を測定するよう構成され、第一アースを有する、第一回路構成と、
その測定電流に対応してプローブの位置座標を判定するよう構成された位置判定プロセッサと、
少なくとも第二プローブ電極に連結され、第一アースから絶縁された第二アースを有する、第二回路構成と、を含む医療システムが提供される。
【0014】
本発明は、以下のより詳細な実施形態と、その図面の記述により、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の1つの実施形態による、ある医療システムの概略絵画図。
【図2】本発明の1つの実施形態による、電極とその関連回路との間の相互作用を示す概略図。
【図3】本発明の実施形態による、位置判定電流に対する機能電極の影響を示す、電気配線概略図。
【図4】本発明の実施形態による、位置判定電流に対する機能電極の影響を示す、電気配線概略図。
【図5】本発明の実施形態による、位置判定電流に対する機能電極の影響を示す、電気配線概略図。
【図6】本発明の1つの実施形態による、位置判定プローブフロントエンドの典型的な実施を示す、電気配線概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の1つの実施形態による、ある医療システム20の概略絵画図である。システム20は、例えばカテーテルなどのプローブ30を含み、プローブ30が患者50の体腔内(例えば、心腔40など)に挿入されるよう適合される。典型的に、このプローブは、例えば心臓内心電図(ECG)、心臓内の電位マッピング、心臓組織の除去の実施、又はその他の医学的機能などの、1つ以上の医学的診断又は治療機能のために、施術者60によって使用される。医療的処置の効果的な適用を促進するために、システム20は、患者の身体内でプローブ30の位置を判定するよう適合される。プローブの位置は典型的には、他の診断用及び/又は治療用データと共に、施術者60に対してモニター70上で表示され、あるいは他の好適な媒体を用いて提示される。
【0017】
プローブ30の遠位先端部は、複数の電極80、82及び84を含み、本明細書では、これらをプローブ電極と呼ぶ。プローブ電極は、プローブ30の挿入管を通るワイヤによってコントロール装置100に接続されており、このコントロール装置には、患者の体内にあるプローブの位置を判定するよう適合された第一回路構成と、1つ以上の診断又は治療機能を実施するよう適合された第二回路構成とを含む。この第一及び第二回路構成は、本明細書において、それぞれ位置判定回路構成及び機能性回路構成と呼ばれ、詳細を後述の図に示す。用語「機能」は、本明細書において、システム20の1つ以上の医学的診断又は治療機能を意味する(例えば、心電図信号の測定及びマッピングなど)。1つ以上のプローブ電極(本明細書では、位置判定プローブ電極と呼ばれる)が、位置判定回路構成に連結されている一方、1つ以上のプローブ電極(本明細書では、機能性プローブ電極と呼ばれる)が、機能性回路構成に連結されている。典型的には、位置判定と医学的診断又は治療機能の両方のために、同じプローブ電極が利用される。よって、第一及び第二電極群は通常、重なり合っている。しかしながら、場合によっては、電極の2つの群は共通要素をもたなくともよい。
【0018】
コントロール装置100は更に、1本以上のケーブル105を通るワイヤによって、複数の体表電極110、112、114、116、118、及び120に接続され、これら電極は患者の体表(すなわち、皮膚)に連結されている。体表電極は典型的に、粘着性の皮膚パッチを含む。本発明の別の実施形態において、この体表電極は数が異なっていてよく、及び他の形態をとってもよい。体表電極は一連の第一体表電極110、112、及び114を含み、これらは本明細書において、位置判定体表電極と呼ばれ、これらは位置判定回路構成に連結されている。体表電極は更に、1つ以上の第二体表電極116、118、及び120を含み、これらは本明細書において、機能性体表電極と呼ばれ、これらは機能性回路構成に接続されている。典型的に、体表電極の2つの群は共通要素をもたないが、場合によっては、これら2つの群は重複してもよい。
【0019】
コントロール装置の位置判定回路構成は、電流を流して測定するよう適合されており、本明細書においてこの電流は、位置判定プローブ電極と位置判定体表電極との間の位置判定電流と呼ばれる。測定された位置判定電流に対応して、位置判定プロセッサ(図2参照)(通常は、コントロール装置100の中に組み込まれている)が、身体内におけるプローブ30の遠位端の座標を見積もる。位置判定プロセッサは典型的に、汎用目的のコンピュータプロセッサを含み、上記の特許出願公開第2006/0173251号及び同第2007/0038078号に記述されている方法により、このプロセッサがソフトウェアでプログラムされて、プローブ座標の見積りを行う。加えて、又は別の方法として、この位置判定プロセッサは他の好適な位置判定方法を採用してもよい。
【0020】
プローブ座標の見積りは典型的に、位置判定電流とそれぞれの体内経路の距離との間の対応に基づく。例えば、プローブ電極80から体表電極110、112、及び114までの距離を、それぞれD1、D2、及びD3と表わすことができ、プローブ電極80から体表電極110、112、及び114までの位置判定電流を、それぞれI1、I2、及びI3と表わすことができる。上記の特許出願に記述されている方法により、距離の比D1:D2:D3は、電流の比I1:I2:I3に基づいて見積もることができる。プローブ電極80の座標は、次に(than)、見積もられた比D1:D2:D3から誘導することができる。
【0021】
プローブ座標の計算は、関連する電極間の位置判定電流に依存しているため、関係のない電極との電気的結合による影響を位置判定電流が受けないようにすることが望ましい。例えば、比I1:I2:I3が機能性プローブ電極82の電気的結合によって変わると、比D1:D2:D3が不正確に見積もられ得る。本明細書で下記に記述される本発明の実施形態による方法は、位置判定電流に対する機能電極の影響を排除又は低減するのに役立つため、これにより患者の体内にあるプローブ30の位置判定を正確かつ高信頼性で実現できる。
【0022】
図2は、本発明の1つの実施形態による、プローブ電極及び体表電極とその関連回路との間の相互作用を示す概略図である。上記のように、コントロール装置100(図2には明示なし)は、位置判定回路構成200、位置判定プロセッサ205、及び機能性回路構成210を含む。位置判定回路200は、1本以上の位置判定プローブフロントエンド(例えば、フロントエンド220及び222)を含み、位置判定プローブフロントエンドはそれぞれ、位置判定プローブ電極(例えば、プローブ電極80及び82)に連結されている。位置判定プローブフロントエンドは典型的に、高インピーダンスのドライバ(例えば、図6に示されているもの)を含み、そのドライバがそれぞれの位置判定プローブ電極と複数の位置判定体表電極との間の位置判定電流を供給する。例えば、位置判定プローブフロントエンド220は、プローブ電極80と体表電極110、112、及び114との間に位置判定電流I1、I2及びI3をそれぞれ供給する。
【0023】
位置判定プローブフロントエンド220のインピーダンスは典型的に、人体を通過する経路のインピーダンスよりはるかに高く、よって、位置判定プローブフロントエンド220はほぼ電流源に等しい。例えば、人体を通過する経路の典型的なインピーダンスは100オームであり、位置判定プローブフロントエンドの出力インピーダンスは、一般に100,000オームである。位置判定電流は一般に交流電源であり、例えば、100〜110kHzの範囲の交流電源である。よって、本明細書において「インピーダンス」という用語は、位置判定電流の周波数範囲わたって測定されたインピーダンス、例えば、100〜110kHzの範囲にわたって測定されたインピーダンスを指す。
【0024】
位置判定回路構成200は更に、電流検出装置230、232及び234を含み、これらの装置は位置判定体表電極110、112及び114に連結され、それぞれ位置判定電流I1、I2、及びI3を測定する。本発明の別の実施形態において、位置判定電流は、時間多重化を用いて単一の電流検出装置によって測定することができる。
【0025】
位置判定電流I1、I2、及びI3に基づいて、上記の特許出願に記載されている方法により、又は他の好適な電流に基づく位置判定方法により、位置判定プロセッサ205が体内50における位置判定プローブ電極80の座標を計算する。
【0026】
コントロール装置の機能性回路構成210は、1つ以上の機能性プローブフロントエンド240及び242を含み、これらフロントエンドはそれぞれプローブ電極80及び82に連結されている。機能性回路構成210は更に、1つ以上の機能性体表フロントエンド(例えば、体表フロントエンド250)を含み、これらフロントエンドは機能性体表電極(例えば機能性体表電極120)に連結されている。機能性回路構成210にECG回路構成が含まれる場合、典型的に、患者の右足に付けられた体表電極が、示差ECG測定のための共通参照となる。これらの場合において、右足の電極は一般に、10,000オームの桁のインピーダンスを経てECG回路構成のアースに連結される。
【0027】
同じシステムのすべての回路は典型的に、直接的又は間接的に、同じ電源(例えば、コンセント電源)によって供給されているため、通常、別個の電気システム回路のアースは高度に連結(highly coupled)されている。更に、電気システムのすべての回路のアースを1つの共通アースに接続するのは、一般的な方法である。例えば、同じプリント基板(PCB)上に実装されたすべての回路は通常、PCBの1層以上のアース層に接続されており、すべてのPCBの全アース層は通常、システムシャーシに接続されており、このシステムシャーシは通常、コンセント電源のアースに接続されている。
【0028】
しかしながら、本発明の実施形態において、位置判定回路構成200及び機能性回路構成210は別個のアース260及び270にそれぞれ接続され、アース260はアース270から慎重に絶縁されている。典型的に、アース270は1枚以上のPCBの1層以上のアース層として実装され、このアース層がシステムの共通アース(例えば、システムシャーシ)に接続され、一方、アース260は専用の戻り経路として実装され、これはそれぞれのPCBアース層からも、システムの共通アースからも絶縁されている。本発明の実施形態による、アース260を絶縁することには、位置判定プロセスの有効性及び正確性を保持するために採用されており、これについては下記に詳しく述べる。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態において、絶縁されたアース260及び270は、位置判定プロセスの有効性及び正確性に対する、寄生的連結の影響を排除又は低減するために、アース間連結インピーダンス280(例えば、コンデンサ)によって更に連結されており、これについては下記に詳しく述べる。
【0030】
図3、4及び5は、本発明の実施形態による、位置判定電流に対する機能電極の潜在的影響を示す、電気配線概略図である。図3は、位置判定電流I1、I2、及びI3に対する機能性プローブ電極82の影響を示し、これら電流は位置判定プローブ電極80と体表電極110、112、及び114との間をそれぞれ流れる(アース260と270との間に連結があると仮定)。位置判定電流I1、I2、及びI3はフロントエンド220によって電源供給され、これらはそれぞれ測定装置230、232、及び234によって測定される。プローブ電極80と体表電極110、112、及び114との間の体内距離を、上記のようにそれぞれD1、D2、及びD3と表わす。(D1、D2、及びD3は図示されていない)。プローブ電極と体表電極との間の体内経路をそれぞれP1、P2、及びP3と表わし、それぞれの体内インピーダンスをZ1、Z2、及びZ3と表わす。位置判定電流I1、I2、及びI3は、本質的に、それぞれのインピーダンスZ1、Z2、及びZ3に比例し、これらは対応する距離D1、D2、及びD3に従属であり、この従属性により位置判定プロセッサの動作の基盤が得られる。
【0031】
機能性プローブ電極82も患者の身体内にあるため、電極82と経路P1、P2、及びP3との間には避けられない電気的連結経路が存在する。図3は、機能性プローブ電極82と経路P1の中間点300との間の連結経路Z4を示す。同様に、プローブ電極82と経路P2及びP3の中間点との間に連結経路が存在する。中間点300は、Z1を2つのインピーダンスZ1a及びZ1bに分けて図3に示されており、ここでZ1a+Z1b=Z1である。この図は、一般的にはより複雑なモデルの単純化モデルであるが、機能性プローブと位置判定プローブとの間の連結の影響を説明するのに役立つ。
【0032】
当該技術分野において既知のシステムの通り、位置判定回路構成のアース260が機能性回路構成のアース270に連結している場合、機能性プローブ電極82を介して、位置判定プローブ電極80とアース260との間に流れる、望ましくない電流が存在する。この望ましくない電流は、望ましい位置判定電流を変化させ、この位置判定プロセスの正確性を低化させる。例えば、フロントエンド220が電流源を含むとき、望ましくない電流が望ましい位置判定電流を低減させるが、各電流は一般に、幾何学的及び生理学的要素のため、異なる程度で低減される。したがって、電流比I1:I2:I3が変化し、これにより位置測定の正確性が低下する。
【0033】
しかしながら、本発明の1つの実施形態により、アース260がアース270から絶縁されており、これにより望ましくない電流が機能性プローブ電極82を介して流れることはできない。その結果、位置判定電流は変化せず、機能性プローブ電極とは無関係に、位置判定プロセスの有効性及び正確性が保持される。
【0034】
図4は、機能性回路構成にECG回路構成が含まれる1つの実施形態を示し、ここでフロントエンド250は電極120に連結され、これは患者の右足に配置されている。右足のECG電極120及び位置判定電極110、112、及び114は、すべて皮膚に連結されているため、電極120と電極110、112、及び114との間には、避けられない電気的連結が存在する。(単純化のために、電極110との連結のみが図に示されている。)したがって、経路P1とアース260との間には、機能性プローブ電極82及び84、機能性プローブフロントエンド240及び242、右足フロントエンド250、及び右足電極120を介して、寄生的電気連結が存在する。(図には示されていないが、他の経路(例えば、P2及びP3)にも、同様の連結メカニズムが適用される)。
【0035】
しかしながら、右足フロントエンド250のインピーダンスは、通常約10,000オームであるため、右足電極120を通る寄生的連結のインピーダンスは、機能性プローブ電極の数を問わず、常に10,000オームを上回る。例えば、40個の機能性プローブ電極の場合を考え、各機能性プローブフロントエンドのインピーダンスが約10,000オームであると仮定しよう。40個の機能性プローブ電極とそれに関係するフロントエンドの集合的インピーダンスは、10,000/40=250オームとなる。この低い集合的インピーダンスは、位置判定プロセスを顕著に阻害し得る。しかしながら、右足フロントエンド250のインピーダンスは10,000オームであり、アース260及び270は互いに絶縁されているため、全体的な寄生的インピーダンスは最高で10,250オームであり、これは位置判定プロセスに対してわずかな影響を有する。
【0036】
図5は、本発明の1つの実施形態を表わし、ここにおいてアース260及び270は互いに慎重に絶縁されており、更に、所定のアース間連結インピーダンス280(典型的にはコンデンサによって実装される)によって連結されている。アース間連結インピーダンスの目的は、下記に説明するように、潜在的な寄生的連結の影響を低減することである。
【0037】
システム20の典型的な構成において、アース270と位置判定体表電極110、112及び114との間に、寄生的連結が存在し得る。このような2つの連結が、Z10及びZ12として図に示されている。加えて、アース270と測定装置230、232、及び234との間にも寄生的連結が存在し得る。このような2つの連結が、Z20及びZ22として図に示されている。Z20及びZ22のような寄生的連結は、例えば、位置判定回路構成(例えば、測定装置230及び232)とPCBの1層以上のアース層との間の寄生的キャパシタンスによって生じ得る。この寄生的連結は、測定装置の読み取りを変化させ、これにより位置判定プロセスの正確性が低下する。例えば、寄生的連結Z10及びZ20(Z12及びZ22)は、位置判定プローブ電極80から、機能性プローブ電極82を経て、測定装置230(232)へとそれぞれ、寄生的電流の流れを可能にし、これにより測定装置の読み取り値が増加し、比I1:I2:I3の正確性が低下する。
【0038】
図5に示す実施形態において、Z10、Z11、Z20、及びZ21などの寄生的連結の望ましくない影響は、アース260と270との間にアース間連結インピーダンス280を導入することによって低減される。この連結インピーダンス280は典型的に、寄生的インピーダンスZ10、Z11、Z20、及びZ21の値よりもかなり低く選択される。したがって、寄生的電流の大半はアース間連結インピーダンス280を通って流れ、測定装置を通る(trough)寄生的電流はこれにより低減される。
【0039】
一方、アース間連結インピーダンス280は、体内インピーダンスZ1、Z2、及びZ3よりもかなり高く選択されるべきであり、これにより、上記で詳しく述べたように、アース260と270との間の絶縁の効果が保持される。
【0040】
典型的なシステムにおいて、位置判定プロセスの正確性を最大にするためのアース間連結インピーダンスの最良の値は、経験的に決定することができる。値の決定は、位置判定プロセスの全体的な正確性が、一般に連結インピーダンスの凹関数であるという事実によって促進される。例えば、典型的なシステムにおいて、合計の寄生的連結は約5,000オームであり、典型的な体内インピーダンスは約100オームである。このようなシステムにおいて、アース間連結インピーダンスの値は、典型的に、約1,000オームとなるべきである。
【0041】
図3、4、及び5は、位置判定プローブ電極(例えば、プローブ電極80)を通って流れる位置判定電流に対する、機能性プローブ電極(例えば、プローブ電極82)の潜在的影響に取り組んだものである。原則として、第二の位置判定プローブ電極から流れる位置判定電流に対して、第一の位置判定プローブ電極による類似の望ましくない影響も存在し得る。
【0042】
図2に戻って、機能性プローブ電極82はまた、位置判定プローブ電極でもあり、位置判定プローブフロントエンド222にも連結されている。よって、望ましくない寄生的電流が、原則として、位置判定プローブ電極80から位置判定プローブ電極82及び位置判定フロントエンド222を介して、アース260へと流れ得る。しかしながら、位置判定プローブフロントエンド222のインピーダンスは典型的に、体内インピーダンスZ1、Z2、及びZ3よりもかなり高いため(図3を参照)、位置判定プローブ電極間の連結の影響は小さい。例えば、位置判定プローブフロントエンド222のインピーダンスは典型的に100,000オームを上回るが、体内インピーダンスZ1、Z2、及びZ3の値は典型的に約100オームである。
【0043】
図6は、本発明の1つの実施形態による、位置判定プローブフロントエンド220の典型的な実施を示す、電気配線概略図である。フロントエンド220は典型的に、絶縁変圧器400を含み、この一次巻線は、交流電源420によって駆動される作動増幅器410によって供給され、この二次巻線は位置判定プローブ電極80に連結され、それぞれ抵抗430及び440を介してアース260へと連結されている。抵抗430及び440のインピーダンスは典型的に、患者の身体のインピーダンスよりもはるかに高い。例えば、抵抗430及び440のインピーダンスは典型的に、60,000オームの桁であり、一方人体の通常のインピーダンスは典型的に100オームの桁である。変圧器400の一次巻線は、共通アース270に連結されており、一方二次巻線は、位置判定回路構成のアース260に連結されており、これは共通アース270と絶縁している。したがって、フロントエンド220は、アース260と270との間にガルバーニ連結をもたらさない。変圧器400の二次巻線とアース270との間にある程度の寄生的キャパシタンスが存在し得るが、高い抵抗440の値により、このような寄生的キャパシタンスの影響が低減され、フロントエンド220がアース260と270との間の絶縁を保持する。この絶縁により、機能性プローブ電極は、位置判定プローブ電極から流れる位置判定電流に影響せず、位置判定プロセスの正確性が維持される。
【0044】
絶縁変圧器400は更に、巻線間の比率を適切に選択することによって、位置判定電流を駆動するのに好適なレベルまで、増幅器410によって生成される電圧を上げるよう適合させることができる。典型的な例として、変圧器400は、一次電圧を20ボルトから100ボルトへと5倍に増加するよう適合させることができる。
【0045】
上述された実施形態は例示のために引用され、また本発明は、以上に特に示され記述されたものに限定されるものではないことが、したがって理解されるであろう。むしろ本発明の範囲には、上記に述べた様々な特徴の組み合わせ及びそれらの一部の組み合わせ、並びに上記の説明文を読むことで当業者には想到されるであろう、先行技術には開示されていない上記の特徴の変形例及び改変例が含まれるものである。
【0046】
〔実施の態様〕
(1) 第一プローブ電極及び第二プローブ電極を含むプローブを、患者の身体内に挿入することと、
体表電極を前記身体の表面に連結することと、
少なくとも前記第一プローブ電極に連結され、第一アースを有する第一回路構成を用いて、前記第一プローブ電極と前記体表電極との間に流れる電流を測定することと、
前記測定電流に対応して前記プローブの位置座標を判定することと、
第二アースを有する第二回路構成を、少なくとも前記第二プローブ電極に連結することと、
前記第一アースを前記第二アースから絶縁することと、を含む、位置検出の方法。
(2) 前記第一アースを絶縁することには、所定のアース間連結インピーダンスを介して前記第一アースを前記第二アースに連結することが含まれる、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記アース間連結インピーダンスの値が、前記位置座標の判定の正確性を最大にするよう選択される、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記アース間連結インピーダンスが、500〜5000オームの間である、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記プローブを挿入することには、前記患者の心臓内に前記プローブを通すことが含まれ、前記第二回路構成を連結することには、少なくとも前記第二プローブ電極を使用して、前記心臓の電気的活性を測定することが含まれる、実施態様1に記載の方法。
(6) 前記第一及び第二プローブ電極の両方が、前記位置座標の判定と前記電気的活性の測定との両方に使用するために連結される、実施態様5に記載の方法。
(7) 前記第一回路構成には、一次巻線及び二次巻線を有する絶縁変圧器を含むフロントエンドが含まれ、前記フロントエンドが少なくとも前記第一プローブ電極に連結されており、前記第一アースを前記第二アースから絶縁することには、前記絶縁変圧器の前記二次巻線を前記第一アースに連結し、一方で前記一次巻線を前記第二アースに連結することが含まれる、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記電流を測定することには、100,000オームを超える出力インピーダンスを有するフロントエンドを連結して、前記電流を少なくとも前記第一プローブ電極を通して伝送することが含まれる、実施態様1に記載の方法。
(9) 患者の身体内に挿入するよう適合され、第一プローブ電極及び第二プローブ電極を含んだプローブと、
前記身体の表面のそれぞれの場所に固定するよう適合された、複数の体表電極と、
少なくとも前記第一プローブ電極に連結され、前記第一プローブ電極と前記体表電極との間に流れる電流を測定するよう構成され、第一アースを有する、第一回路構成と、
前記測定電流に対応して前記プローブの位置座標を判定するよう構成された位置判定プロセッサと、
少なくとも前記第二プローブ電極に連結され、前記第一アースから絶縁された第二アースを有する、第二回路構成と、を含む、医療システム。
(10) 前記第一アースと前記第二アースとの間に連結された、所定のアース間連結インピーダンスを含む、実施態様9に記載のシステム。
【0047】
(11) 前記アース間連結インピーダンスの値が、前記位置座標の判定の正確性を最大にするよう選択される、実施態様10に記載のシステム。
(12) 前記アース間連結インピーダンスが、500〜5000オームの間である、実施態様11に記載のシステム。
(13) 前記プローブが前記患者の心臓内に挿入するよう構成され、前記第二回路構成が、少なくとも前記第二プローブ電極を使用して前記心臓の電気的活性を測定するよう連結されている、実施態様9に記載のシステム。
(14) 前記第一及び第二プローブ電極の両方が、前記位置座標の判定と前記電気的活性の測定との両方に使用するために連結される、実施態様13に記載のシステム。
(15) 前記第一回路構成には、前記電流を少なくとも前記第一プローブ電極を通して伝送するよう連結されたフロントエンドが含まれ、前記フロントエンドは、一次巻線及び二次巻線を有する絶縁変圧器を含み、前記絶縁変圧器の前記二次巻線は前記第一アースに連結され、一方で前記一次巻線は前記第二アースに連結される、実施態様9に記載のシステム。
(16) 前記第一回路構成には、少なくとも1つのフロントエンドが含まれ、前記少なくとも1つのフロントエンドが前記電流を少なくとも前記第一プローブ電極を通して伝送するよう連結されており、前記フロントエンドの出力インピーダンスが100,000オームを超える、実施態様9に記載のシステム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一プローブ電極及び第二プローブ電極を含むプローブを、患者の身体内に挿入することと、
体表電極を前記身体の表面に連結することと、
少なくとも前記第一プローブ電極に連結され、第一アースを有する第一回路構成を用いて、前記第一プローブ電極と前記体表電極との間に流れる電流を測定することと、
前記測定電流に対応して前記プローブの位置座標を判定することと、
第二アースを有する第二回路構成を、少なくとも前記第二プローブ電極に連結することと、
前記第一アースを前記第二アースから絶縁することと、を含む、位置検出の方法。
【請求項2】
前記第一アースを絶縁することには、所定のアース間連結インピーダンスを介して前記第一アースを前記第二アースに連結することが含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アース間連結インピーダンスの値が、前記位置座標の判定の正確性を最大にするよう選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アース間連結インピーダンスが、500〜5000オームの間である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記プローブを挿入することには、前記患者の心臓内に前記プローブを通すことが含まれ、前記第二回路構成を連結することには、少なくとも前記第二プローブ電極を使用して、前記心臓の電気的活性を測定することが含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第一及び第二プローブ電極の両方が、前記位置座標の判定と前記電気的活性の測定との両方に使用するために連結される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第一回路構成には、一次巻線及び二次巻線を有する絶縁変圧器を含むフロントエンドが含まれ、前記フロントエンドが少なくとも前記第一プローブ電極に連結されており、前記第一アースを前記第二アースから絶縁することには、前記絶縁変圧器の前記二次巻線を前記第一アースに連結し、一方で前記一次巻線を前記第二アースに連結することが含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記電流を測定することには、100,000オームを超える出力インピーダンスを有するフロントエンドを連結して、前記電流を少なくとも前記第一プローブ電極を通して伝送することが含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
患者の身体内に挿入するよう適合され、第一プローブ電極及び第二プローブ電極を含んだプローブと、
前記身体の表面のそれぞれの場所に固定するよう適合された、複数の体表電極と、
少なくとも前記第一プローブ電極に連結され、前記第一プローブ電極と前記体表電極との間に流れる電流を測定するよう構成され、第一アースを有する、第一回路構成と、
前記測定電流に対応して前記プローブの位置座標を判定するよう構成された位置判定プロセッサと、
少なくとも前記第二プローブ電極に連結され、前記第一アースから絶縁された第二アースを有する、第二回路構成と、を含む、医療システム。
【請求項10】
前記第一アースと前記第二アースとの間に連結された、所定のアース間連結インピーダンスを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記アース間連結インピーダンスの値が、前記位置座標の判定の正確性を最大にするよう選択される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記アース間連結インピーダンスが、500〜5000オームの間である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記プローブが前記患者の心臓内に挿入するよう構成され、前記第二回路構成が、少なくとも前記第二プローブ電極を使用して前記心臓の電気的活性を測定するよう連結されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記第一及び第二プローブ電極の両方が、前記位置座標の判定と前記電気的活性の測定との両方に使用するために連結される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第一回路構成には、前記電流を少なくとも前記第一プローブ電極を通して伝送するよう連結されたフロントエンドが含まれ、前記フロントエンドは、一次巻線及び二次巻線を有する絶縁変圧器を含み、前記絶縁変圧器の前記二次巻線は前記第一アースに連結され、一方で前記一次巻線は前記第二アースに連結される、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記第一回路構成には、少なくとも1つのフロントエンドが含まれ、前記少なくとも1つのフロントエンドが前記電流を少なくとも前記第一プローブ電極を通して伝送するよう連結されており、前記フロントエンドの出力インピーダンスが100,000オームを超える、請求項9に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−98199(P2011−98199A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−247158(P2010−247158)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(508080229)バイオセンス・ウエブスター・インコーポレーテツド (79)
【Fターム(参考)】