説明

カテーテル

【課題】良好な操作性を実現することのできるカテーテルを提供する。
【解決手段】カテーテル10は、メインルーメン20と、メインルーメン20よりも小径のサブルーメン30と、を備える管状本体(シース16)と、サブルーメン30に摺動可能に挿通されて先端部41がシース16の遠位端部15に固定された操作線40と、を有し、操作線40の基端部を牽引することによってシース16の遠位端部15が屈曲する。操作線40は、複数本の細線を互いに撚り合せた撚り線の表面を疎水化してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遠位端部を屈曲させることにより体腔への進入方向が操作可能なカテーテルが提供されている。カテーテルの遠位端を屈曲させる態様の一つとして、遠位端に固定された押し/引きワイヤ(操作線)を近位端側で操作するものが知られている(下記特許文献1を参照)。
操作線は、ガイドワイヤを挿通する主管腔(メインルーメン)よりも小径のワイヤ管腔(サブルーメン)に貫通されており、これを押し込んだ場合にカテーテルの遠位端を屈曲させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−507305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サブルーメンに挿通される操作線には、高い摺動性が求められる。サブルーメンに対する操作線の摺動性が不良であると、操作線の牽引荷重がカテーテルの遠位端まで伝達されることが阻害され、操作線を牽引してもカテーテルの遠位端が迅速かつ確実に屈曲せず、操作性が低下することとなる。
ここで、操作線を牽引してもただちにカテーテルの遠位端部が屈曲しない場合、X線透視下でカテーテルの遠位端部を観察しながら操作線を牽引操作する医師等は、誤って過剰に操作線を牽引してしまうおそれがある。
【0005】
一方、近年のカテーテルは血管内への挿通性などの観点から細径化が進められ、外直径が1mm以下のものが提供されるに至っている。この場合、薬剤等の供給や光学系の挿通などに供されるメインルーメンに所定の内径を確保する観点から、サブルーメンの内径は10〜数十μm以下ときわめて小径に抑えることが望まれている。
【0006】
上記特許文献1に記載のカテーテルでは、円形断面の金属製のワイヤを操作線に用いているが、上述のようにサブルーメンが小径化された近年のカテーテルにおいては摺動性に関して改良の余地があった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、近年のきわめて細径化されたカテーテルにあっても良好な操作性を実現することのできるカテーテルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のカテーテルは、メインルーメンと、前記メインルーメンよりも小径のサブルーメンと、を備える管状本体と、
前記サブルーメンに摺動可能に挿通されて、先端部が前記管状本体の遠位端部に固定された操作線と、を有し、
前記操作線の基端部を牽引することによって前記管状本体の前記遠位端部が屈曲するカテーテルであって、
前記操作線が、複数本の細線を互いに撚り合せた撚り線の表面を疎水化してなることを特徴とする。
【0009】
また本発明のカテーテルにおいては、より具体的な実施の態様として、前記撚り線の表面に疎水性の樹脂層が形成されているとともに、
横断面における前記操作線の外形が非円形の凸形状をなしていてもよい。
【0010】
また本発明のカテーテルにおいては、より具体的な実施の態様として、前記管状本体が、無機フィラーを含有した樹脂材料からなってもよい。
【0011】
また本発明のカテーテルにおいては、より具体的な実施の態様として、前記操作線がそれぞれ摺動可能に挿通された複数個の前記サブルーメンを有していてもよい。
【0012】
なお、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のカテーテルでは、操作線が、複数本の細線を互いに撚り合せた撚り線である。このため、操作線が円形断面の線材である場合と比較して、操作線とサブルーメンの内壁との接触面積が小さくなり、管状本体に対する操作線の摺動性が抑制される。また、操作線は、撚り線の表面に疎水処理を施してなる。このため、体腔内または雰囲気中の水分が液体または気体の状態でサブルーメンの内部に浸入したとしても、サブルーメンの内壁に対して操作線が付着することがない。
このため、本発明のカテーテルにおいては、操作線と管状本体との摺動性がきわめて良好となり、牽引操作による荷重によってカテーテルの遠位端部が迅速かつ確実に屈曲する。
よって、本発明によれば、近年の細径化の傾向によらず、操作性の高いカテーテルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本方法により得られるカテーテルの一例を示す縦断面図である。
【図2】図1のII-II断面図である。
【図3】カテーテルの動作を説明する側面図であり、(a)は自然状態のカテーテルを示す縦断面模式図であり、(b)は操作線を牽引した状態のカテーテルを示す縦断面模式図である。
【図4】操作線の横断面図である。
【図5】シースの製造装置の概要構成図である。
【図6】ダイより押し出される樹脂材料および操作線を示す縦断面図である。
【図7】本実施形態の変形例に係る操作線の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0016】
<カテーテル>
図1は、本実施形態のカテーテル10を長手方向に切った縦断面図である。同図の左方がカテーテル10の遠位端(先端)DE側にあたり、右方が近位端(基端)PE側にあたる。ただし、同図においては、カテーテル10の近位端PE側は図示を省略している。
図2は、図1のII-II断面図(横断面図)である。
【0017】
はじめに、本実施形態のカテーテル10の概要を説明する。
本実施形態のカテーテル10は、メインルーメン20と、メインルーメン20よりも小径のサブルーメン30と、を備える管状本体(シース16)と、サブルーメン30に摺動可能に挿通されて、先端部41がシース16の遠位端部15に固定された操作線40と、を有している。
カテーテル10は、操作線40の基端部42を牽引することによってシース16の遠位端部15が屈曲する。
そして、本実施形態のカテーテル10では、操作線40が、複数本の細線43を互いに撚り合せた撚り線44の表面を疎水化してなる。
【0018】
以下、本実施形態のカテーテル10を、より詳細に説明する。
図2に示すように、カテーテル10は、複数個のサブルーメン30がメインルーメン20の周方向に分散して配置されている。サブルーメン30同士、およびメインルーメン20とサブルーメン30とは、互いに離間して個別に設けられている。
【0019】
より具体的には、本実施形態のカテーテル10は、操作線40がそれぞれ摺動可能に挿通された複数個(3個)のサブルーメン30を有している。
3個のサブルーメン30は、メインルーメン20の周囲に120度間隔で配置されている。
【0020】
図3は、本実施形態のカテーテル10の動作を説明する側面図である。同図(a)は、自然状態、すなわち操作線40の非牽引状態のカテーテル10を示す縦断面模式図である。同図(b)は、操作線40を牽引した状態のカテーテル10を示す縦断面模式図である。
図3各図では、カテーテル10における3本の操作線40のうち、1本のみを図示している。
【0021】
操作線40の先端部41は、シース16の遠位端部15に固定されている。ここで、カテーテル10の遠位端部15とは、カテーテル10の遠位端DEを含む所定の長さ領域をいう。同様に、カテーテル10の近位端部17とは、カテーテル10の近位端PEを含む所定の長さ領域をいう。
【0022】
操作線40の基端部42は、サブルーメン30から近位端PE側に突出し、操作部70に接続されている。
シース16の近位端PE側に設けられた操作部70は、3本の操作線40を個別に、または複数本を同時に牽引してカテーテル10の遠位端部15を屈曲させる機構である。操作部70の構造に関する詳細な図示および説明は省略する。
【0023】
図3(b)に示すように、操作部70を操作して操作線40の基端部42を矢印のように図中右方に牽引すると、カテーテル10の遠位端部15には操作線40を通じて引張力が与えられる。かかる引張力が所定以上であると、カテーテル10の軸心から当該操作線40が挿通されているサブルーメン30の側に向かって、シース16の遠位端部15は屈曲する。
【0024】
ここで、シース16が屈曲するとは、シース16が「くの字」状に折れ曲がる態様と、弓なりに湾曲する態様とを含む。
【0025】
そして、3本の操作線40の牽引長さを個別に制御することにより、カテーテル10の遠位端部15を360度の旋回方向に亘って任意の向きに屈曲させることができる。これにより、内視鏡に挿入されたカテーテル10の全体を軸回転させるトルク操作をおこなうことなく、操作線40の牽引操作のみによって、カテーテル10の遠位端DEの向きを自在に制御することが可能となる。このため、本実施形態のカテーテル10は、たとえば分岐する血管等の体腔に対して、所望の方向に進入させることが可能である。
【0026】
本実施形態の操作線40は、きわめて微細径の線材料からなり、その基端部42をサブルーメン30に対して押し込んだ場合には、当該操作線40は座屈する。よって、カテーテル10の遠位端部15には押込力が実質的に与えられることはない。このため、操作部70の操作によって操作線40に押し込み力を与えたとしても、操作線40がカテーテル10の遠位端部15から外れて遠位端DEより突出することがない。これにより、体腔内に挿入されたカテーテル10の操作に際して被験者の安全が図られている。
【0027】
図4(a)、(b)は、操作線40を長手方向に対する交差方向に切った横断面図である。ここでは、操作線40として二種類の例を示す。
【0028】
同図(a)に示す操作線40は、複数本の細線43を互いに撚り合せて撚り線44とした上で、撚り線44の周面に疎水性の被覆層45を形成したものである。同図(a)では、7本の同一径の細線43を星形に密接させて配置した状態で、これらの細線43を互いに撚り合わせたものを撚り線44として図示している。
【0029】
同図(b)に示す操作線40は、それぞれの周面に疎水性の被覆層45が形成された複数本の細線43を、互いに撚り合わせて撚り線44としたものである。同図(b)では、被覆層45が予め周面に形成された3本の同一径の細線43を互いに密接させて配置した状態で相互に撚り合わせたものを撚り線44として図示している。
【0030】
このように、本実施形態の操作線40においては、撚り線44を構成する個々の細線43の表面が個別に疎水化されていてもよく、または細線43の表面は部分的に疎水化されていて撚り線44の表面の全体が疎水化されていてもよい。また、後述する変形例を用いて説明するように、本発明は、撚り線44の表面の必ずしも全体が疎水化されている必要はなく、サブルーメン30に対する摺動性が向上する効果が発揮される限りにおいて、部分的に疎水化されていてもよい。
【0031】
細線43の材料としては、低炭素鋼(ピアノ線)、ステンレス鋼(SUS)、チタンもしくはチタン合金などの可撓性の金属線のほか、ポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)もしくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ボロン繊維などの高分子ファイバーを用いることができる。
【0032】
細線43の本数は特に限定されないが、2本以上、好ましくは3本以上である。
細線43を撚り合わせてなる撚り線44の外形は、25〜55μmとする。
【0033】
被覆層45としては、疎水性の樹脂材料を用いることができる。かかる樹脂材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド系樹脂、ジクロロジメチルシラン等のシラン化合物、またはシリコーンエステルなどを例示することができる。
このほか、被覆層45としては、プラズマ処理などの表面処理によって撚り線44の表面自体を疎水化して形成してもよい。
【0034】
図4各図に示すように、本実施形態の操作線40は、撚り線44の表面に疎水性の樹脂層(被覆層45)が形成されているとともに、横断面における操作線40の外形が非円形の凸形状をなしている。
【0035】
具体的には、図4(a)に示す操作線40の外形、すなわち被覆層45の外形は、略六角形をなし、6つの鈍頭の頂部46が存在している。
また、同図(b)に示す操作線40の外形は略三角形をなし、3つの鈍頭の頂部46が存在している。
【0036】
操作線40の横断面が真円形状ではなく、非円形の凸形状であることにより、サブルーメン30の内壁面と操作線40とが頂部46のみで接触することとなり、接触面積が微小となる。また、操作線40を撚り線44としていることにより、サブルーメン30の内壁面と操作線40とが長手方向に沿って連続して接触することがない。すなわち、操作線40は、一つの頂部46が、長手方向に離散的にサブルーメン30の内壁面と接触するにとどまり、操作線40の摺動性がきわめて良好となる。
【0037】
したがって、本実施形態のように複数個のサブルーメン30を外層60に形成したカテーテル10において、極めて細径の操作線40によって遠位端部15を屈曲させる場合も、操作線40の摺動性が良好であるため、カテーテル10の操作性に優れる。操作線40の牽引操作に対する遠位端部15の屈曲変形の応答性が高いためである。
【0038】
被覆層(樹脂層)45の厚さは特に限定されない。ただし、図4(a)のように撚り線44の表面の全体を被覆層45で被覆する場合、その厚さは細線43の半径以下とすることが好ましい。これにより、撚り線44の外形形状に基づく頂部46が操作線40の表面に表れることとなる。
【0039】
図1に戻り、本実施形態のシース16は、内層21と、その周囲に形成された外層60とを積層してなる。
内層21は管状の樹脂材料からなり、軸心にメインルーメン20が形成されている。
外層60は、内層21と同種または異種の樹脂材料からなり、サブルーメン30が内部に通孔形成されている。
外層60の周囲には、カテーテル10の最外層として形成された親水性のコート層64が、遠位端部15の一部長さに亘って積層形成されている。
【0040】
内層21には、一例として、フッ素系の熱可塑性ポリマー材料を用いることができる。より具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)を用いることができる。
内層21にフッ素系樹脂を用いることにより、カテーテル10のメインルーメン20を通じて造影剤や薬液などを患部に供給する際のデリバリー性が良好となる。
【0041】
外層60には熱可塑性ポリマーが広く用いられる。一例として、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ナイロンエラストマー、ポリウレタン(PU)、エチレン−酢酸ビニル樹脂(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)またはポリプロピレン(PP)を挙げることができる。
【0042】
コート層64は、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドンなどの親水性の樹脂材料で成形するか、または外表面に潤滑処理を施すことにより、少なくとも外表面が親水性である。
【0043】
また、本実施形態のカテーテル10は、内層21の周囲にワイヤ52を編成してなるブレード層50を備えている。ブレード層50は、外層60に内包されている。
本実施形態においては、操作線40がそれぞれ挿通されたサブルーメン30が、外層60の内部であって、ブレード層50の外側に形成されている。
【0044】
ワイヤ52には、ステンレス鋼やニッケルチタン合金など金属細線のほか、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)またはポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子ファイバーの細線を用いることができる。
ワイヤ52の断面形状は特に限定されず、丸線でも平線でもよい。
【0045】
また、カテーテル10の遠位端部15には、X線等の放射線が不透過な材料からなるリング状のマーカー66が設けられている。具体的には、マーカー66には白金などの金属材料を用いることができる。本実施形態のマーカー66は、メインルーメン20の周囲であって、外層60の内部に設けられている。
【0046】
本実施形態のサブルーメン30は、カテーテル10の長手方向(図1における左右方向)に沿って設けられ、少なくともカテーテル10の近位端PE側が開口している。
操作線40の先端部41は、カテーテル10の遠位端部15に固定されている。操作線40の先端部41を遠位端部15に固定する態様は特に限定されない。たとえば、操作線40の先端部41をマーカー66に締結してもよく、シース16の遠位端部15に溶着してもよく、または接着剤によりマーカー66またはシース16の遠位端部15に接着固定してもよい。
【0047】
本実施形態のシース16は、無機フィラーを含有した樹脂材料からなる。本実施形態の場合、より具体的には、シース16の主要厚さを構成する外層60が無機フィラーを含有している。
【0048】
無機フィラーとしては、一例として、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二酸化チタンを用いることができる。無機フィラーを外層60に混合することにより、サブルーメン30の内壁面の平滑性が向上する。これにより、操作線40の牽引操作時の摩擦低減がさらに十分に図られる。
【0049】
ここで、本実施形態のカテーテル10の代表的な寸法について説明する。
メインルーメン20の半径は200〜300μm程度、内層21の厚さは10〜30μm程度、外層60の厚さは100〜150μm程度、ブレード層50の厚さは20〜30μmとすることができる。
カテーテル10の軸心からサブルーメン30の中心までの半径は300〜350μm程度、サブルーメン30の内径(直径)は40〜100μmとする。そして、操作線40の太さを30〜60μmとする。
カテーテル10の最外径(半径)は350〜450μm程度、すなわち外径が直径1mm未満である。これにより、本実施形態のカテーテル10は腹腔動脈などの血管に挿通可能である。
【0050】
<カテーテルの製造方法>
本実施形態のカテーテル10の製造方法の概要を以下に説明する。
図5は、シース16の製造装置80の概要構成図である。
図6は、ダイ92より押し出される樹脂材料および操作線40を示す縦断面図であり、図5に示す円VIの拡大断面図である。
【0051】
製造装置80は、押出機82と、サイジング装置84と、引取機86とを直列に配置してなる。
押出機82は、シース16を構成する外層60の樹脂材料を投入する材料供給部90と、樹脂材料を押し出して細線化するダイ92とを含む。
サイジング装置84は、押出機82より押し出されたシース16を冷却して所定の径に調整する装置であり、一例として水槽を用いることができる。
引取機86は、対向して走行するローラー88からなり、押出機82より押し出されてサイジング装置84で冷却されたシース16の先端を所定の引取速度で引き取る装置である。
【0052】
図6に示すシース16の成形工程では、芯線22と操作線40とを、互いに離間した状態で樹脂材料と共に押し出して外層60を成形する。
これにより、樹脂材料からなる外層60には、芯線22および操作線40が長手方向に貫通して挿通されることとなる。
【0053】
芯線22は、円柱状に形成された中芯(マンドレル)であり、シース16の成形後に引き抜かれることによってカテーテル10のメインルーメン20を形成する部材である。
芯線22の線径はメインルーメン20の内径に相当する。
【0054】
芯線22の材質は特に限定されないが、一例として、銅または銅合金、炭素鋼やSUS等の合金鋼、ニッケルまたはニッケル合金を挙げることができる。
【0055】
芯線22の表面には、任意で離型処理を施してもよい。離型処理は、フッ素系やシリコン系などの離型剤の塗布のほか、光学的または化学的な表面処理をおこなってもよい。
【0056】
芯線22の周囲には、管状の内層21が被着しており、さらにその外周には、ワイヤ52(図1を参照)を編組してなるブレード層50が網状に形成されている。
【0057】
図6に示すように、ダイ92には、芯線22を挿通してメインルーメン20を形成するための主孔93と、サブルーメン30を形成するための副孔94と、樹脂材料を押し出すノズル部96とが形成されている。
主孔93および副孔94は、ダイ92の押出方向(同図左方)に、所定の長さに亘って形成されている。副孔94は、主孔93の周囲に120度間隔で3個形成されている(同図では1個のみ図示)。
【0058】
そして、ブレード層50および内層21が周着された芯線22を主孔93に挿通し、操作線40を副孔94に挿通した状態で、供給孔95に樹脂材料を導入する。これにより、ブレード層50の表面には、樹脂材料からなる外層60が被覆形成される。
【0059】
引取機86による引取速度や、サイジング装置84における冷却温度、ダイ92とサイジング装置84との距離を調整することにより、ノズル部96から押し出されたシース16を遠位端側(図6における左方)に引っ張って、これを所定径に細線化する。
【0060】
シース16の成形工程では、操作線40の径方向の周囲に気体材料を吹き込みながら樹脂材料を押し出して外層60を成形する。
より具体的には、図6に示すように、副孔94に対して雰囲気圧よりも高圧の気流Fを吹き込む。これにより、成形されるシース16の内部において外層60と操作線40とが接合してしまうことが防止される。気体材料には、空気のほか、窒素などの不活性ガスを用いてもよい。
【0061】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0062】
<変形例>
図7は、本実施形態の変形例に係る操作線40の横断面図である。
本変形例に係る操作線40は、撚り線44の表面の一部に対して疎水性の被覆層45が形成されている点で、図4(a)の操作線40と相違している。
被覆層45は、撚り線44の頂部46を覆う領域に対して形成されている。
より具体的には、本変形例の被覆層45は、操作線40の横断面において、撚り線44の外接円と撚り線44との交点を含む所定の幅領域を覆っている。
【0063】
すなわち、本発明において、撚り線44の表面が疎水化されているとは、サブルーメン30の内壁面と接触する頂部46の表面が疎水化されていることを意味している。
【0064】
本変形例の操作線40においても、サブルーメン30(図1を参照)の内壁面と操作線40とは、疎水性の被覆層45によってのみ局所的に接触する。したがって、上記実施形態に係る操作線40と同様に良好な摺動性を得ることができる。
【0065】
上記実施形態では、外層60の成形工程において樹脂材料とともに芯線22と操作線40とを共に押し出す態様を例示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、治具に保持された芯線22や操作線40に対して樹脂材料を塗工形成してもよく、またはテープ(リボン)状に予め成形した樹脂材料を、芯線22や操作線40に巻き付けて外層60を成形してもよい。
【0066】
また、上記実施形態においては、サブルーメン30をブレード層50の外部に形成する態様を例示したが、本発明はこれに限られない。サブルーメン30を内層21の内部に形成し、その外周にブレード層50を設けてもよい。
【0067】
また、カテーテル10の可撓性を、近位端PE側から遠位端DE側に向かって複数段階に、または連続的に、増大させてもよい。言い換えると、カテーテル10の曲げ剛性を、近位端PE側において高くしてもよい。
これにより、カテーテル10の遠位端部15における屈曲性を十分に確保しつつ、操作時に曲げモーメントがもっとも負荷される近位端部17におけるカテーテル10の曲げ強度を十分に得ることができる。
【0068】
また、本実施形態のカテーテル10は、3本の操作線40がそれぞれサブルーメン30に対して摺動可能に挿通されているが、本発明はこれに限られない。操作線40は、1本、2本または4本以上でもよい。また、サブルーメン30は、操作線40と同数であってもよく、または異数であってもよい。すなわち、サブルーメン30の内部には複数本の操作線40を挿通してもよく、または操作線40が挿通されていないサブルーメン30をシース16に設けてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 カテーテル
15 遠位端部
16 シース
17 近位端部
20 メインルーメン
21 内層
22 芯線
30 サブルーメン
40 操作線
41 先端部
42 基端部
43 細線
44 撚り線
45 被覆層
46 頂部
50 ブレード層
52 ワイヤ
60 外層
64 コート層
66 マーカー
70 操作部
80 製造装置
82 押出機
84 サイジング装置
86 引取機
88 ローラー
90 材料供給部
92 ダイ
93 主孔
94 副孔
95 供給孔
96 ノズル部
DE 遠位端(先端)
PE 近位端(基端)
F 気流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインルーメンと、前記メインルーメンよりも小径のサブルーメンと、を備える管状本体と、
前記サブルーメンに摺動可能に挿通されて、先端部が前記管状本体の遠位端部に固定された操作線と、を有し、
前記操作線の基端部を牽引することによって前記管状本体の前記遠位端部が屈曲するカテーテルであって、
前記操作線が、複数本の細線を互いに撚り合せた撚り線の表面を疎水化してなることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記撚り線の表面に疎水性の樹脂層が形成されているとともに、
横断面における前記操作線の外形が非円形の凸形状をなしていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記管状本体が、無機フィラーを含有した樹脂材料からなる請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記操作線がそれぞれ摺動可能に挿通された複数個の前記サブルーメンを有する請求項1から3のいずれかに記載のカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−207321(P2010−207321A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54807(P2009−54807)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】