説明

カバー開閉機構及びカバー装置並びに電子機器

【課題】開閉自在なカバーの半開状態を防止することができるカバーの開閉機構及びそのカバー開閉機構を備えたカバー装置並びにそのカバー装置を備えた電子機器を提供すること。
【解決手段】装置本体101に対して開閉自在に設けられ、付勢手段11により閉状態もしくは開状態が維持されるカバー121の開閉機構10の付勢手段は、カバーが全開状態以外の状態になったときは常に閉方向へ付勢するように配設されている。これにより、カバーは全開状態以外の状態のときは強制的に閉状態とされるので、カバーが半開状態のままとなることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体に対して開閉自在に設けられ、付勢手段により閉状態もしくは開状態が維持されるカバーの開閉機構及びそのカバー開閉機構を備えたカバー装置並びにそのカバー装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の1つであるプリンタに備えられている例えばカードスロットを覆う保護カバーは、閉状態では埃や塵の侵入を防止し、開状態ではユーザの操作をスムーズにするために、各状態でロックされる必要がある。このため、保護カバーの開閉装置には、例えば捩りコイルバネが所謂2安定バネとして使用されている。保護カバーが閉状態と開状態との間を回動する途中で、捩りコイルバネが最大撓みを取るように、捩りコイルバネの一端がプリンタ本体に係止され、他端が保護カバーに係止されている。これによれば、捩りコイルバネが最大撓みとなる保護カバーの回動位置を境として、保護カバーは捩りコイルバネにより閉方向もしくは開方向に付勢されて閉状態もしくは開状態でロックされる(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−59295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した保護カバーは、開閉装置の捩りコイルバネが最大撓みとなる所謂中立点において安定姿勢を取るため、半開きの状態で停止する場合があるが、その場合にユーザは、保護カバーを閉じたものと誤認してそのままにするおそれがある。そして、例えば静電気を帯びたユーザの手が保護カバーに近付いたとき、静電気が保護カバーの隙間からカードスロットに差し込まれているメモリカードに飛んで、書き込まれているデータに悪影響を及ぼすことがある。
【0005】
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、その目的は、開閉自在なカバーの半開状態を防止することができるカバーの開閉機構及びそのカバー開閉機構を備えたカバー装置並びにそのカバー装置を備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的達成のため、本発明のカバー開閉機構では、装置本体に対して開閉自在に設けられ、付勢手段により閉状態もしくは開状態が維持されるカバーの開閉機構であって、前記付勢手段は、前記カバーが全開状態以外の状態になったときは常に閉方向へ付勢することを特徴としている。これにより、カバーは全開状態以外の状態のときは強制的に閉状態とされるので、カバーが半開状態のままとなることを防止することができる。
【0007】
また、前記カバーは、前記装置本体に対して回動することにより開閉し、前記付勢手段は、一端部が前記装置本体に係止され、他端部は、前記カバーが開状態のときは、前記付勢手段の他端部により作用する付勢力の方向が前記カバーの回動中心を通る中立点に対し一方側に近接して位置し、前記カバーが閉状態のときは、前記中立点に対し他方側に遠隔して位置するように前記カバーに係止されていることを特徴としている。これにより、カバーが全開状態以外の状態になったときは常に閉方向へ付勢することができる。また、前記カバーが開状態時の前記付勢手段の他端部と、当該他端部の係止点と前記カバーの回動中心点とを通る直線との成す前記付勢手段の一端部側の角度が鈍角であることを特徴としている。これにより、カバーが全開状態以外の状態になったときは常に閉方向へ付勢することができる付勢手段の配置を確定することができる。
【0008】
また、前記中立点は、前記付勢手段の他端部が変位する範囲の最大値となる位置であることを特徴としている。これにより、付勢手段が最大撓みとなるカバーの回動位置を境として、カバーは付勢手段により閉方向もしくは開方向に付勢されてカバーを閉状態もしくは開状態でロックすることができる。また、前記付勢手段は、捩りコイルバネであることを特徴としている。これにより、カバー開閉機構を簡易な構成とすることができる。また、前記捩りコイルバネは、開拡方向に付勢することを特徴としている。これにより、水平から斜め下方に回動するカバーに適用し易くなる。
【0009】
上記目的達成のため、本発明のカバー装置は、上記各カバー開閉機構を備えたことを特徴としている。また、上記目的達成のため、本発明の電子機器は、上記カバー装置を備えたことを特徴としている。これにより、上記各作用効果を奏するカバー装置又は電子機器を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態に係るカバー開閉機構を備えた電子機器である記録装置の外観構成の全体を示す斜視図である。この記録装置はインクジェット式プリンタ100であり、例えば名刺、カード、L判/2L判、ハガキ、六切やJIS規格のA6判からA4判までのサイズの単票紙に記録することができる機能を備えている。このインクジェット式プリンタ100は、全体が略直方体状のハウジング(装置本体)101で覆われている。そして、ハウジング101の上面における前面側には操作部110が配設され、前面における中央上部には本発明の特徴的な部分であるカバー開閉機構10(図2参照)を備えたメモリカードスロット部(カバー装置)120が配設され、上面における背面側には給紙部130が配設され、前面側には排紙部140が配設されている。
【0012】
操作部110は、略長矩形状の操作パネル111の上部中央に操作状態等を表示する液晶表示パネル112が装着され、この液晶表示パネル112の両側にパワーをオン・オフするパワー系、用紙の頭出し等を操作したりインクのフラッシング等を操作する操作系、画像処理等を行う処理系等の複数のボタン113が配設されている。ユーザは、液晶表示パネル112を見て確認しながら各種のボタン113を操作することができるので、誤操作を防止することができる。
【0013】
メモリカードスロット部120は、複数種類のメモリカードが挿抜可能な複数のスロットが配設されている。このメモリカードスロット部120は、図示矢印a方向に回動してスロット配設部を開閉するカバー121で覆われている。このカバー121が、図2に示すカバー開閉機構10を介してハウジング101に取り付けられている。尚、このカバー開閉機構10の詳細については後述する。ユーザは、インクジェット式プリンタ100をパーソナルコンピュータに接続しなくても、インクジェット式プリンタ100単独の状態でメモリカードスロット部120にメモリカードを差し込むのみで、メモリカードに格納されている画像等を記録することができる。
【0014】
給紙部130は、上方に向かって矩形状に開口した給紙口131を開閉する機能と、給紙する用紙を1枚もしくは複数枚サポートする機能を併せ持ったペーパーサポート132を備えている。このペーパーサポート132は、後端の回転軸を中心に図示矢印b方向に回動可能に取り付けられている。ユーザは、インクジェット式プリンタ100を使用又は不使用のときは、ペーパーサポート132の両側に指を掛けてペーパーサポート132を開閉することができるので、用紙の差し入れを容易に行うことができ、また給紙口131内への埃の侵入を防止することができる。
【0015】
排紙部140は、前方に向かって矩形状に開口した排紙口141を開閉する機能と、内部に設けられた排紙される用紙を1枚もしくは複数枚スタックするスタッカ143を覆う機能を併せ持ったカバースタッカ142を備えている。このカバースタッカ142は、下端の回転軸を中心に図示矢印c方向に回動可能に取り付けられている。ユーザは、インクジェット式プリンタ100を使用又は不使用のときは、カバースタッカ142の上部に指を掛けてカバースタッカ142を開閉することができるので、セッティングを容易に行うことができ、また排紙口141内への埃の侵入を防止することができる。更に、記録後の用紙は常に前面側から排紙されるので、ユーザは用紙を容易に取り出すことができる。次に、本発明の特徴的な部分であるカバー開閉機構10について、更に図を参照して説明する。
【0016】
図2(A)〜(C)は、上記カバー121が閉状態から開状態へ移行するときのカバー開閉機構10の動作状態を示す概略側面図である。このカバー開閉機構10は、捩りコイルバネ(付勢手段)11と、この捩りコイルバネ11のバネ一端部11aの先端が係止されるバネ一端係止部12と、この捩りコイルバネ11のバネ他端部11bの先端が係止されるバネ他端係止部13を備えている。捩りコイルバネ11は、線状のバネ材の両端を直線状に残して中央をネジ状に巻回して筒状にした一般的な捩りコイルバネであり、バネ一端部11a、バネ他端部11b及びバネ本体部11cを備えている。バネ一端係止部12は、ハウジング101におけるカバー121の後方上部にハウジング101と一体形成されている。バネ他端係止部13は、カバー121の後方下部にカバー121と一体形成されている。
【0017】
そして、捩りコイルバネ11は、開拡方向に付勢力が働くように撓ませられて、バネ一端部11aの先端及びバネ他端部11bの先端が、バネ一端係止部12及びバネ他端係止部13にそれぞれ係止されている。これにより、水平から斜め下方に回動するカバー121に適用し易くなる。カバー121は、ユーザが指を掛けて押し下げもしくは押し上げることにより回動中心軸121bを中心に回動して開閉するが、カバー開閉機構10の捩りコイルバネ11は、カバー121が全開状態以外の状態になったときは常に閉方向へ付勢するようになっている。この点について、更に詳述する。
【0018】
図3は、図2(A)〜(C)のカバー開閉機構10の動作状態を重ね合わせて示す概略側面図である。カバー121の回動中心軸121bの回動中心点P1は、図2に示すカバー121の両外側面121a、121aの内側中央奥側、即ち図3に示すバネ他端係止部13のバネ他端係止点P2から手前に所定距離dだけずれた位置に一体的に形成されている。従って、カバー121が回動中心軸121bの回動中心点P1を中心に回動すると、バネ他端係止部13のバネ他端係止点P2は所定距離dを半径とした円弧上を回動することになる。
【0019】
このバネ他端係止部13のバネ他端係止点P2には、捩りコイルバネ11による付勢力Fが、バネ他端部11bに対して直角方向に働いている。そして、カバー121が閉状態と開状態との間を回動する際に、捩りコイルバネ11のバネ他端部11bの位置は変化するので、捩りコイルバネ11による付勢力Fが働く方向も変化する。この付勢力Fの働く方向がカバー121の回動中心軸121bの回動中心点P1を通るときを中立点Nというが、この中立点Nにおいて捩りコイルバネ11は、変位する範囲の最大値、即ち最大撓みを取ることになる。これにより、この中立点Nを境として、捩りコイルバネ11によりカバー121を閉方向もしくは開方向に付勢して閉状態もしくは開状態でロックすることができる。
【0020】
このカバー開閉機構10においては、捩りコイルバネ11のバネ他端部11bの先端(バネ他端係止部13のバネ他端係止点P2)は、カバー121が開状態のときは、上記中立点Nに対し図示左方側に可能な限り近接して位置し、カバー121が閉状態のときは、上記中立点Nに対し図示右方側に可能な限り遠隔して位置するように、カバー121のバネ他端係止部13に係止されている。これにより、カバー121は全開状態以外の状態のときは強制的に閉状態とされるので、カバー121が半開状態となることを防止することができる。
【0021】
また、カバー121が開状態時の捩りコイルバネ11のバネ他端部11bと、このバネ他端部11bの先端(バネ他端係止部13のバネ他端係止点P2)とカバー121の回動中心軸121bの回動中心点P1とを通る直線Lとの成す捩りコイルバネ11のバネ一端部11a側の角度θが鈍角となるように、バネ一端部11aの先端及びバネ他端部11bの先端が、バネ一端係止部12及びバネ他端係止部13にそれぞれ係止されている。これにより、カバー121が全開状態以外の状態になったときは常に閉方向へ付勢することができる捩りコイルバネ11の配置を確定することができる。
【0022】
尚、本実施形態では、バネ他端係止部13をカバー121の一方の外側面121aに1つ形成すると共に、バネ一端係止部12をバネ他端係止部13に対応させて1つ形成し、1本の捩りコイルバネ11をバネ一端係止部12とバネ他端係止部13に係止するようにしたが、バネ他端係止部13をカバー121の両方の外側面121aに1つずつ形成すると共に、バネ一端係止部12を各バネ他端係止部13に対応させて2つ形成し、2本の捩りコイルバネ11を各バネ一端係止部12と各バネ他端係止部13にそれぞれ係止するようにしても良い。また、カバー121の開状態を維持するカバー係止部を備えるようにしても良い。上述したようにカバー121は全開状態以外の状態のときは強制的に閉状態とされるので、カバー係止部によりカバー121を係止しておくことにより、カバーの開状態を確実に維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
回動して開閉するカバーのみならず、スライドして開閉するカバーに対しても同様に適用可能である。また、開閉自在なカバーを有するカバー装置を備えた電子機器であれば、例えばファクシミリ装置、コピー装置、スキャナ等の記録装置を含む一般的な電子機器であっても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係るカバー開閉機構を備えた電子機器である記録装置の外観構成の全体を示す斜視図である。
【図2】図1のプリンタのカバーが閉状態から開状態へ移行するときのカバー開閉機構の動作状態を示す概略側面図である。
【図3】図2のカバー開閉機構の動作状態を重ね合わせて示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 カバー開閉機構、11 捩りコイルバネ、11a バネ一端部、11b バネ他端部、11c バネ本体部、12 バネ一端係止部、13 バネ他端係止部、100 インクジェット式プリンタ、101 ハウジング、110 操作部、120 メモリカードスロット部、121 カバー、121b 回動中心軸、130 給紙部、140 排紙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に対して開閉自在に設けられ、付勢手段により閉状態もしくは開状態が維持されるカバーの開閉機構であって、
前記付勢手段は、前記カバーが全開状態以外の状態になったときは常に閉方向へ付勢することを特徴とするカバー開閉機構。
【請求項2】
前記カバーは、前記装置本体に対して回動することにより開閉し、前記付勢手段は、一端部が前記装置本体に係止され、他端部は、前記カバーが開状態のときは、前記付勢手段の他端部により作用する付勢力の方向が前記カバーの回動中心点を通る中立点に対し一方側に近接して位置し、前記カバーが閉状態のときは、前記中立点に対し他方側に遠隔して位置するように前記カバーに係止されていることを特徴とする請求項1に記載のカバー開閉機構。
【請求項3】
前記カバーが開状態時の前記付勢手段の他端部と、当該他端部の係止点と前記カバーの回動中心点とを通る直線との成す前記付勢手段の一端部側の角度が鈍角であることを特徴とする請求項2に記載のカバー開閉機構。
【請求項4】
前記中立点は、前記付勢手段の他端部が変位する範囲の最大値となる位置であることを特徴とする請求項2又は3に記載のカバー開閉機構。
【請求項5】
前記付勢手段は、捩りコイルバネであることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のカバー開閉機構。
【請求項6】
前記捩りコイルバネは、開拡方向に付勢することを特徴とする請求項5に記載のカバー開閉機構。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載のカバー開閉機構を備えたことを特徴とするカバー装置。
【請求項8】
請求項7に記載のカバー装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−55616(P2008−55616A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231610(P2006−231610)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】