説明

カプセルおよびそれを含有する化粧料

【課題】淡水性藍藻類スイゼンジノリを由来とする多糖体を化粧料に配合する場合に、カプセル皮膜を薄くし、塗布時の感触を改良する。
【解決手段】淡水性藍藻類であるスイゼンジノリを由来とするスイゼンジノリ多糖体の水溶液を内包したカプセルを化粧料に配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容液、化粧水、洗顔剤などに代表されるスキンケア化粧料に配合して好適なカプセルおよびそれを含有する化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、内部に有効成分を安定に含有できることや、使用感の良さ、固形物または液状物を特定の用量で配合できるなどの特徴を有することから、球状のカプセルを化粧料に配合することが注目を浴びている。
【0003】
一方、淡水性藍藻類スイゼンジノリを由来とする多糖体は、近年、その抽出方法が、北陸先端大学の金子らにより開発され、化粧料や、医薬品などへの応用が検討されている(特許文献1参照)。その理由は、その保湿効果や、正、負の両イオンを分子内に待つことによる希少金属イオンの吸着効果などによるものである。さらには、このスイゼンジノリから抽出される多糖体が、超高分子量(金子らの測定では、重量平均分子量約10,000,000以上)であるにもかかわらず、水溶性であり、美容液や、化粧水への配合が可能であるため、ヒアルロン酸系化合物と同様に基礎化粧料用成分として期待される素材であることによる(非特許文献1,2参照)。
【0004】
さらに、この多糖体は、分子鎖中のイオンにより分子同士が容易に会合する。この会合は溶液濃度が高いほど起きやすい。また、会合状態にあるとき、保持水分が高いことが知られている。この会合状態が起きるところでは、この多糖体水溶液は液晶性を示すことも知られている。このことから、この多糖体分子は棒状(棒状らせん状)の構造をとると考えられる。
【0005】
従来、カプセルの皮膜主成分として動物由来のタンパク質であるゼラチンが最も良く用いられている。しかし、ゼラチンを主成分にした皮膜を形成するカプセル内部に水溶性の有効成分を充填すると、水分が皮膜に移行して皮膜の崩壊や膨潤を起こすため製品としての流通に耐えがたいという問題点がある。
【0006】
一方、植物由来の多糖類由来原料を用いたカプセルも提案されている。例えばアルギン酸、寒天、ペクチン、キサンタンガム、キトサンなどが挙げられる。しかしながら、これらの原料を用いたものでは、充分に内包成分を含有させるためには皮膜が厚くなり、使用時に皮膜残渣が皮膚上に残り外観上見苦しかったり感触が悪くなったりするという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4066443号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】M.K.Okajima,et.al、Macromolecules、42、3057(2009)
【非特許文献2】M.K.Okajima,et.al、Langmuir、25(15)、8528、(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、淡水性藍藻類スイゼンジノリを由来とする多糖体を化粧料、特に美容液や化粧水のような基礎化粧料に配合する場合、この水溶液をカプセル化し、安定化したものを化粧料に配合できるようにするもので、カプセル皮膜を薄くし、塗布時の感触を改良することのできるカプセルとそれを含有する化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、第1発明によるカプセルは、淡水性藍藻類であるスイゼンジノリ(Aphanothece sacrum)を由来とするスイゼンジノリ多糖体の水溶液を内包してなることを特徴とするものである。
ここで、上記スイゼンジノリ多糖体は、前記特許文献1に記載の方法にて抽出されたものであって、ヘキソース構造をもつ糖構造体およびペントース構造を持つ糖構造体がα−グリコシド結合またはβ−グリコシド結合により直鎖状または分岐鎖状に連結した糖鎖ユニットの繰り返し構造を持ち、前記糖鎖ユニットが糖構造体として乳酸化された硫酸化糖を含み、かつ、前記糖鎖ユニットにおいては、水酸基100個あたり2.7個以上の水酸基が硫酸化され、あるいは全元素中で硫黄元素が1.5質量%以上を占めることを特徴としている。
【0011】
前記スイゼンジノリ多糖体は水溶液中で棒状(棒状らせん状)の構造をとると考えられている。それは、重量平均分子量が約16,000,000のスイゼンジノリ多糖体水溶液の濃度が、0.2%以上で液晶構造をとるためである。液晶構造を確認するためには、所定の濃度で水溶液を調製し、その溶液を直交偏光系で光をあてて観察する。このとき、直交偏光系で光をあてたときに明るく光り、虹色の輝きを確認したとき、液晶構造をとっていると言える。これは、液晶構造による複屈折カラーである。スイゼンジノリ多糖体ではこのように液晶構造が、0.2質量%以上の水溶液で発現するため、その分子は、棒状(棒状らせん状)であると言える。非常に分子量の高い分子構造が棒状のスイゼンジノリ多糖体の水溶液を内包することにより、一般のカプセルよりも低い皮膜濃度でのカプセル化が可能である。すなわち、皮膜厚みを薄くできる。皮膜剤としては、植物由来のアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、カゼイン、ペクチン、寒天、カラギーナン、コーンスターチ、グルテン、デキストリン、グアーガム、アラビアゴム、ローカストビーンゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられ、動物由来の化合物としてゼラチンが挙げられるが、特に化粧料用として使用される場合、植物由来であることが望ましい。
【0012】
次に、第2発明によるカプセルは、前記第1発明において、表皮(外皮膜)がアルギン酸金属塩であることを特徴とするものである。
アルギン酸金属塩は、非常に容易にゲル化し安定な皮膜を作ることが知られており、カプセルの外皮膜として多く利用されている。また、ゲル化させる金属イオンとしては、カルシウムが望ましい。このとき用いる原料はアルギン酸ナトリウムであり、その濃度は、スイゼンジノリ多糖体水溶液を内包した場合、0.01〜0.5質量%、好ましくは0.05〜0.2質量%の範囲が適当である。濃度が希薄すぎると皮膜の強度が弱くなり安定したカプセルとならない。逆に濃度が高くなると皮膜の膜厚が厚くなり使用時に皮膜残渣を生じることになる。
受液としては滴下液の種類にもよるが、皮膜成分としてアルギン酸を用い、皮膜をアルギン酸カルシウムとする場合は、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウムなどの水溶性カルシウム塩を用いることができる。このときの水溶性カルシウム塩の濃度も0.1〜3.0質量%、好ましくは0.5〜2.0質量%に設定するのが適当である。これも、水溶性カルシウム塩濃度が希薄すぎると皮膜の強度が弱くなり安定したカプセルとならない。逆に濃度が高くなると皮膜が硬くなったり、皮膜の膜厚が厚くなって使用時に皮膜残渣を生じることになる。
【0013】
また、第3発明によるカプセルは、前記第1発明または第2発明において、内包する液晶性スイゼンジノリ多糖体水溶液中に化粧料として効果のある水溶性有効成分を同時に溶解させておくことを特徴とするものである。
ここで、水溶性有効成分としては、アルコール系、グリコール系、アミノ酸系、その他植物抽出成分など、保湿性を与えるもの、美白効果のあるもの、その他老化防止効果のあるものなど、化粧料として有効な成分であれば特に限定されるものではない。特に好ましくは、1,3−ブチレングリコール、ヒアルロン酸ナトリウムなどである。この水溶性有効成分の濃度は、スイゼンジノリ抽出物が水溶液中で液晶を示す範囲であれば特に限定されるものではないが、あまり多量に入れるとカプセル外皮膜から溶出する可能性がある。
【0014】
さらに、第4発明は、第3発明において、前記水溶性有効成分を水溶性のビタミンとしたものである。水溶性のビタミンは非常に不安定で熱や光によって分解されるが、本発明によるカプセル化によりこれらの不安定な性質がスイゼンジノリ抽出多糖体水溶液と相互作用することにより改善される。水溶性ビタミンとしては、各種のビタミンB、アスコルビン酸系のビタミンCが挙げられる。
【0015】
本発明のカプセルを製造する方法は、例えば、皮膜成分と内包成分を受液中にノズルを用いて滴下する方法がある。このとき受液は撹拌しておくことが望ましい。ノズルとしては、単筒式ノズルのほか、二重式ノズル、三重式ノズルなどの多重ノズルを用いることも可能であり、目的のカプセルによって用いるノズルを変更することが出来る。また、界面活性剤を使用してエマルションにしてカプセル化する方法や、他の一般的なカプセルを製造する方法で製造しても構わない。
【0016】
次に、第5発明による化粧料は、第1〜4発明のいずれかのカプセルを含有してなることを特徴とするものである。
ここで、カプセル化する外皮膜は親水性の物質が多いので水へ分散した化粧料が主となるが、もちろん油中に分散することも可能である。すなわち、カプセルを水中に分散させたり、油中に分散させたりした粒状物を含む美容液、化粧水、洗顔液などの基礎化粧品が好ましい。
【発明の効果】
【0017】
第1発明によれば、分子が棒状(棒状らせん状)であるスイゼンジノリ多糖体水溶液がカプセルに内包されており、超高分子量でかつ棒状分子であるため、カプセル外皮膜を通過しにくくなり、カプセルにした時に内部で安定な状態となり、薄い皮膜としたときでも安定したカプセルを得ることができる。このため、化粧料用として使用した場合に、皮膚に塗布したときに違和感がなく、外皮残渣も残らない、感触に優れたカプセル化粧料を提供することができる。この場合、内包されるスイゼンジノリ多糖体水溶液の濃度は特に規定されるものではないが、その水溶液が液晶性を示す濃度以上であると、液晶構造をとるためさらに外皮膜より溶出されにくくなる。スイゼンジノリ多糖体の分子が棒状(棒状らせん状)であることは、この分子が、0.2質量%という非常に低い濃度の水溶液で液晶構造を発現することで証明できる。これは北陸先端大学の金子らの測定にて重量平均分子量が約16,000,000のもので確認されている。一般的にスイゼンジノリ抽出物の分子量は重量平均で2,000,000以上であるといわれているが、液晶性を示す水溶液の濃度は、分子量には因らず、その分子の棒状部分の持続長の軸比(棒状の長さ/分子の直径)によるため、分子量が違ってもその水溶液が液晶性を示す濃度はほぼ変わらない。スイゼンジノリ抽出多糖体分子の場合、約0.2質量%で液晶性を示すことから、Floryの格子理論によるモデルに基づく下記経験式(1)から、スイゼンジノリ抽出多糖体分子の持続長の軸比は、約3,000と推定される。軸比が約3,000ということは、ほぼ分子は棒状であるといって良い。
Φ=8/X(1―2/X)・・・・・・(1)
(ここで、Φは、液晶相が発現する臨界体積分率、Xは、軸比である。)
【0018】
第2発明によれば、内包する外皮膜がアルギン酸金属塩とされているので、容易にゲル化し安定な皮膜を形成することができる。ここで、この外皮膜は、ゲル化する化合物が好ましいが、ゼラチンの場合、動物由来のタンパク質で化粧料として好ましくない。また、植物由来の寒天、ペクチン、キサンタンガム、キトサンなどで外皮膜を調製することができるが、外皮膜の強度、感触、製造コストなどの面から好ましくない。本発明では、アルギン酸ナトリウム水溶液を原料として、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウムなどの水溶性カルシウム塩水溶液中に展開し、アルギン酸カルシウムとしてゲル化させて外皮膜とし、スイゼンジノリ抽出多糖体水溶液を内包させたものである。
【0019】
第3発明では、上記スイゼンジノリ抽出多糖体水溶液に水溶性の有効成分を同時に溶解させ、その混合水溶液を内包させるものである。水溶性有効成分のみを内包カプセル化した場合、水溶性有効成分が低分子量のため、カプセルの外皮膜を薄くすると容易に有効成分がカプセル内から溶出してしまったり、あるいは、溶出を防ごうとすると外皮膜の厚みを厚く必要があり、皮膚に塗布したときに違和感があり、擦り込んでも外皮膜が硬いため皮膚上に残ってしまうという問題を引き起こす。本発明によれば、棒状(棒状らせん状)構造を保っているスイゼンジノリ抽出多糖体水溶液中に水溶性有効成分が相互作用にて吸着されており、カプセルの外に溶出する可能性が非常に少なくなるため、安定なカプセルを得ることができ、また外皮膜を薄くできるので皮膚に塗布して擦り込んでも違和感がなく外皮膜の残渣が残らない。
【0020】
第4発明によれば、美白効果があり、皮膚の栄養要素として特に必要とされるビタミンCが安定的に内包されたカプセルを調製することができる。もちろん、この場合、ビタミンCと他の水溶性の有効成分と混合し、併用してもかまわない。また、本発明を実施する際に、スイゼンジノリ抽出多糖体水溶液中に、適量の防腐剤、たとえば、メチルパラベン、1,3−ブチレングリコール、あるいは、粘度調整用のグリコール類を含有させても良い。
【0021】
第5発明によれば、化粧料を調製した際に、内包されているスイゼンジノリ抽出多糖体分子は、棒状高分子化合物であるために外皮膜から溶出することがなく、外皮膜を薄くできるという特徴がある。このため、分散させたカプセルが安定で分散媒体中に内容物が溶出されることがなく、また、皮膚に塗布したときにすぐれた感触を持ち、外皮残渣が残ることがない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明によるカプセルおよびそれを含有する化粧料の具体的な実施の形態について説明する。
【0023】
第1発明において、カプセル内にスイゼンジノリ抽出多糖体水溶液を内包させる方法としては、目的の濃度になるようにスイゼンジノリ抽出多糖体を水にて溶解し、この水溶液をゲル化可能な化合物の水溶液中に滴下し、ゲル化剤を投入してカプセル化させるという一般的な方法を用いる。
【0024】
第2発明では、スイゼンジノリ抽出多糖体水溶液を調製した後、アルギン酸ナトリウムをその溶液中に投入し完全に溶解させる。その溶液を多量の種々のカルシウム塩水溶液に単筒ノズルを用いて滴下する。滴下終了後1時間程度撹拌し、水洗と濾過を行い、スイゼンジノリ抽出多糖体水溶液内包カプセルを得ることができる。この場合、カルシウム塩水溶液は、好ましくは塩化カルシウム水溶液、乳酸カルシウム水溶液である。
【0025】
第3、第4発明においては、上記工程中、スイゼンジノリ抽出多糖体水溶液調製後、その水溶液中にさらに水溶性の有効成分、ビタミンを溶解させ、同様の工程にてカプセル化する。
【0026】
第5発明の化粧料の具体例としては、例えば、美容液、化粧水、制汗剤、ボディーソープ、ボディーローション、デオドラント剤などが挙げられる。ここで、化粧料に配合されるカプセルの配合量としては、化粧料の総量に対して、0.1〜80質量%が好ましく、より好ましくは1〜60質量%である。なお、抗酸化剤の配合量としては0.001〜10質量%が好ましい。
【実施例】
【0027】
次に、本発明によるカプセルおよびそれを含有する化粧料の具体的な実施例について説明する。なお、本発明は以下に述べる実施例に限定されるものではない。以下、カプセルを調製する実施例を「製造実施例」と称し、このカプセルを用いて化粧料を調製する実施例を単に「実施例」と称することとする。
【0028】
(製造実施例1)
ビーカーに水99.35gを仕込み、そこに、スイゼンジノリ抽出多糖体0.5g、メチルパラベン0.15g(防腐剤)を投入し、完全に溶解するまで撹拌する。その水溶液中に皮膜成分となるアルギン酸ナトリウム0.1gを撹拌しながら投入し、完全に溶解するまで撹拌した。
次いで、受液としてカプセルとなる上記水溶液の5倍量の1質量%塩化カルシウム溶液を調製した。この1質量%塩化カルシウム溶液に向けてカプセル成分となる水溶液を単筒ノズルにて滴下し、これを撹拌することによってカプセルを得た。滴下終了後1時間撹拌を行い、形成されたカプセルを掬い上げ、水にて水洗することにより、粒径が1.0〜3.0mm程度のスイゼンジノリ抽出多糖体水溶液を0.5質量%内包したカプセルを得た。
【0029】
(製造実施例2)
上記製造実施例1の水を93.35gにした以外は同様であるが、スイゼンジノリ抽出多糖体水溶液を調製した後、その水溶液に、6.0gの1,3−ブチレングリコールを溶解させた溶液を用いて、製造実施例1と同様の方法でカプセルを得た。
【0030】
(製造実施例3)
上記製造実施例1の水を92.8gにした以外は同様であるが、スイゼンジノリ抽出多糖体水溶液を調製した後、その水溶液に、ビタミンC(アスコルビン酸ナトリウム)0.05gと1,3−ブチレングリコール6.0gとヒアルロン酸ナトリウム0.5gを溶解させた溶液を用いて、製造実施例1と同様の方法でカプセルを得た。
【0031】
(製造比較例1,2)
製造実施例2,3と同様であるが、スイゼンジノリ抽出多糖体を加えない水溶液を調製した。この水溶液を用いて、製造実施例1と同様の方法にてカプセルを調製した。
しかし、カプセル外皮膜が薄いため、内容物が溶出し、また、外皮膜がぶよぶよになって破壊されているものがあったため、美容液への配合はできなかった。このため、製造比較例3としてアルギン酸ナトリウムの濃度を5倍として強固なゲル化外皮膜を持つカプセルを調製した。
【0032】
(製造比較例3)
ビーカーに水92.8gを仕込み、そこに、ビタミンC(アスコルビン酸ナトリウム)0.05gと1,3−ブチレングリコール6.0g、ヒアルロン酸ナトリウム0.5g、メチルパラベン0.15g(防腐剤)を投入し、完全に溶解するまで撹拌する。この水溶液中に皮膜成分となるアルギン酸ナトリウム0.5gを撹拌しながら投入し、完全に溶解するまで撹拌した。
次いで、受液としてカプセルとなる上記水溶液の5倍量の1質量%塩化カルシウム溶液を調製した。この1質量%塩化カルシウム溶液に向けてカプセル成分となる水溶液を単筒ノズルにて滴下し、これを撹拌することによってカプセルを得た。滴下終了後1時間撹拌を行い、形成されたカプセルを掬い上げ、水にて水洗することにより、粒径が1.0〜3.0mm程度のカプセルを得た。
【0033】
(実施例1〜3)
製造実施例1〜3で調製されたカプセルを用いて、以下の配合にて美容液ベースを調製した。
<美容液ベース配合>
水 残 量
グリセリン 8.0
安息香酸 0.15
アラントイン 0.1
PCAナトリウム 0.1
キサンタンガム 0.25
メチルパラベン 0.1
合計100.0
上記美容液ベースと製造実施例1〜3で得られたカプセルをそれぞれの比率が50%になるように配合してカプセル配合美容液を得た。
【0034】
(比較例1)
製造比較例3で得られたカプセルを用いて以下の配合にて美容液を調製した。
はじめに美容液ベースを以下の配合にて調製した。
<美容液ベース配合>
水 残 量
グリセリン 8.0
安息香酸 0.15
アラントイン 0.1
PCAナトリウム 0.1
キサンタンガム 0.25
メチルパラベン 0.1
合計100.0
上記美容液ベースと製造比較例3で得られたカプセルをそれぞれの比率が50%になるように配合してカプセル配合美容液を得た。
【0035】
上記製造実施例1、2および3、製造比較例1、2および3にて準備されたカプセルのつぶれ易さとカプセルの安定性について評価を行った。その結果が表1に示されている。つぶれやすさの評価点としては、手の甲にカプセルを3粒置き、指でカプセルをつぶした時のつぶれやすさについて以下の評価点に基づき評価を行った。
つぶれやすい :5点
ややつぶれやすい :4点
どちらともいえない:3点
ややつぶれにくい :2点
つぶれにくい :1点
カプセルの安定性については、カプセルを硝子容器の中に入れ、軽く5回上下にシェイクした時の安定性を以下の評価点に基づき評価した。その評価結果が表1に示されている。
安定している :5点
やや安定している :4点
どちらともいえない:3点
やや崩壊している :2点
崩壊している :1点
【0036】
【表1】

【0037】
表1から分かるように、スイゼンジノリ多糖体水溶液を内包したカプセルでは、つぶれやすさ、安定性ともに優れていた。
【0038】
次に、実施例1〜3および比較例1のように美容液化粧料に配合した時の評価を行った。実施例1〜3のものは、美容液化粧料として配合してもカプセルは安定しており、皮膚に塗布したとき、カプセルはスムースに指による軽い摩擦によって破壊され、外皮のゲル化膜は完全に消失し、感触も良かった。これに対し、比較例1の美容液化粧料では、カプセルは非常に安定しているものの皮膚に塗布するときカプセル外皮のゲル化膜が厚く堅いので、スムースに破壊されず、完全にゲル化された外皮が消失しないので非常に感触の悪いものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のカプセルは、特に美容液や、化粧水のような基礎化粧料に配合することにより安定したカプセルの配合が可能であり、また有効成分も安定にカプセルに封入することが出来るため、化粧料に有効成分を容易に配合できる。また、スイゼンジノリ抽出多糖体は超高分子量の植物由来多糖類であり、保湿性に優れているため、化粧料に配合した時に肌にしっとり感を与える化粧料の提供が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
淡水性藍藻類であるスイゼンジノリを由来とするスイゼンジノリ多糖体の水溶液を内包してなることを特徴とするカプセル。
【請求項2】
表皮がアルギン酸金属塩であることを特徴とする請求項1に記載のカプセル。
【請求項3】
前記スイゼンジノリ多糖体水溶液中に水溶性有効成分を同時に溶解させたことを特徴とする請求項1または2に記載のカプセル。
【請求項4】
前記水溶性有効成分が水溶性のビタミンであることを特徴とする請求項3に記載のカプセル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のカプセルを含有してなることを特徴とする化粧料。

【公開番号】特開2011−74001(P2011−74001A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226166(P2009−226166)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(391015373)大東化成工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】