説明

カプセル化されたピコプラチン

ピコプラチンは、小細胞肺癌、結直腸癌、およびホルモン抵抗性前立腺癌を含む様々な種類の癌または腫瘍の処置において有望である。本発明は、平均ピコプラチン粒径が約10ミクロン未満であるピコプラチン微粒子の物理的形態の約20〜55重量%のピコプラチンを伴う実質的に乾燥の粉末を含む、ピコプラチンの経口投与のために構成された、ピコプラチンのためのカプセル化単位剤形を提供する。ピコプラチン粒子は、実質的に水溶性、水分散性、水吸収性の炭水化物と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤とを含む製剤の粉末中に分散される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、経口投与のために構成された抗癌有機白金薬物ピコプラチン(picoplatin)のカプセル化された単位投与剤型、単位投与剤型の調製方法、および単位投与剤型の使用方法である。
【背景技術】
【0002】
ピコプラチンは、シスプラチンおよびカルボプラチン等の旧世代の有機白金薬物に対する耐性を有するものを含む、様々な型の悪性疾患の処置に有望な、新世代の有機白金薬物である。ピコプラチンは、小細胞肺癌、結直腸癌、およびホルモン抵抗性前立腺癌を含む様々な種類の癌または腫瘍の処置において有望である。
【0003】
構造的に、ピコプラチンは、
【0004】
【化1】

であり、シス―アンミンジクロロ(2―メチルピリジン)白金(II)、あるいは、[SP―4―3]―アンミン(ジクロロ)(2―メチルピリジン)白金(II)と命名される。化合物は、四配位であり三つの異なるリガンドタイプを有する二価白金の平面四角形錯体である。二つのリガンドはアニオン性であり、二つは中性である;したがって、ピコプラチンにおける白金は+2電荷を担持するため、ピコプラチン自体は中性化合物であり、対イオンの存在は不要である。分子中にα―ピコリン(2―メチルピリジン)の存在をさす「ピコプラチン」の名称は、この物質のUnited States Adopted Name(USAN)、British Approved Name(BAN)、およびInternational Nonproprietary Name(INN)である。ピコプラチンは、NX473、ZD0473、およびAMD473のような文献においても引用され、米国特許第5,665,771号、第6,518,428号、および米国特許出願第10/276,503号に開示される。
【0005】
四配位平面四角形白金(II)は、塩素分子を伴う等、八面体Pt(IV)錯体に酸化しやすいことが周知である。また、平面四角形白金(II)錯体は、リガンド置換反応において、ハロゲン化物、アミン、チオ化合物、および一定の条件下で水等、様々な求核剤によるアキシャルアタック(axial attack)を受けやすい。したがって、ピコプラチンは、光の非存在下では、純粋形状において比較的安定しているが、求核分子的実体の存在下など、一定の条件下で分解されやすくなりうる。非特許文献1を参照。ピコプラチンは、患者に投与されると、塩化物リガンドのいずれかの置換により生じる二つの異なる水の形状へある程度変換されると考えられる。ピコプラチンに加えて、これらの(中性の水による塩素アニオンの置換により生じる)カチオン種は、細胞DNAと相互作用することがまた可能であり、架橋および最終的な細胞死をもたらす。ピコプラチンは、鉄酸化物のような特定の金属酸化物の存在下で不安定であることもわかっている。
【0006】
ピコプラチンは、以前には、静脈内(IV)投与により、溶液において患者に提供されている。標準条件下のピコプラチンは固体であり、水中での溶解性はわずかで乏しい。ピコプラチンの比較的低い水中溶解性(1mg/mL未満)により、100mg以上の範囲の全量を患者に提供するために、相当の体積の液体が静脈内送達されることが必要となる(すなわち、100mgの用量を提供するために、0.5mg/mLの濃度で、200mLほどの液体がIV注入により導入されなければならない)。癌患者のための典型的なヒト投与量は、投与あたり数百ミリグラムのオーダーとなり得、二三週間毎に繰り返されうるため、IV経路によるこの物質の各投与で、相当の体積の液体が患者に送達されなければならない。したがって静脈内投与は、静脈への針の挿入が必要であり、比較的大きい体積のピコプラチン溶液の注入を可能にするために患者が静止していなければならない時間が比較的長くなるため、望ましくない。ピコプラチンは、IV投与剤型中のような溶液中で、特に光分解されやすいことも分かっている。ピコプラチンは動物において経口的に生物利用可能であることが示されているが、水中での低い溶解性、細胞毒性および催奇形性が、有効な経口投与剤型の調製への障害となる。したがって、ピコプラチンの有効な投与剤型が必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Advanced Inorganic Chemistry,F.Albert CottonおよびGeoffrey Wilkinson,Second Revised Edition(1966)and later editions,Interscience Publishers
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、癌で苦しむヒト等の哺乳類に対するピコプラチンの経口投与のために構成された、ピコプラチンのための固体単位剤形を提供する。経口ピコプラチンは、単剤として、または、少なくとも一つの他の抗癌剤と組み合わせて投与されうる。他の抗癌剤は、やはり経口投与されるのが好ましい、非白金系抗癌剤であるのが好ましい。
【0009】
剤形には、実質的に水溶性のカプセルシェルを含み、シェルが、約10〜60重量%のピコプラチンを混合物において含む、実質的に乾燥した微細粒子状材料を含む製剤を封入し、ピコプラチンが、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物と最大約5重量%の有効な量の潤滑剤(または「流動促進剤」)との混合物において、物理的形態が平均粒径約10ミクロン未満の粒子であるのが好ましい。カプセルシェルは、硬または軟ゼラチン、PVA、ポリ乳酸、ポリグリコール酸等の生分解可能および/または消化可能材料で構成されるのが好ましい。ピコプラチンは、1〜5ミクロンの平均粒径を有する微粒子であるのが好ましい。ピコプラチン粒子は、例えばジェットミリングにより微粉化されるか、例えば沈殿により準備されうる微結晶性材料であるか、凍結乾燥プロセスまたは三つのプロセスの任意の組み合わせにより形成される微粒子でありうる。ピコプラチン微粒子は、製剤の粉末のほぼ全ての粒子中に分散されうる。
【0010】
本発明は、約20〜55重量%のピコプラチンであり、平均粒径約10ミクロン未満の微粒子であるピコプラチンと、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤とを含む、実質的に乾燥した粉末を含む製剤を調製するステップと;その後、実質的に水溶性のカプセルシェル中に製剤を封入するするステップとを含む、ピコプラチンの経口投与のために構成されたピコプラチンのカプセル化単位剤形を調製するプロセスも提供する。
【0011】
後述するように、選択的に、製剤は、有効な量の分散剤も含む。
【0012】
本発明は、癌に悩む哺乳類における癌を治療する方法であり、本発明のカプセル化単位剤形、または本発明のプロセスにより調製されるカプセル化単位剤形を含む固体または液体剤形を、哺乳類に有益な効果を提供するために適切な総投与量、ある頻度、および期間で経口投与するステップを含む、方法も提供する。
【0013】
好ましくは薬物適合コーティングを伴う、本発明で有用な他の固体剤形には、ピル、錠剤、サシェ等が含まれる。ピコプラチン単位剤形は、カプセル化液体またはゲル化組成物;コート錠、デポー製剤送達システムまたは摂取可能液体組成物でありうる。
【0014】
典型的には、ピコプラチンの総投与量は、投与あたり約1μg〜400mgである。剤形は、ほぼ毎日の間隔で少なくとも2日間、例えば1〜6週毎の間隔で2〜28日間、哺乳類に投与される。ピコプラチン投与は、デキサメサゾン等のコルチコステロイド、パロノセトロンまたはオンダンセトロン等の5―HT3阻害剤、ロラゼパム等の精神安定剤、またはその任意の組み合わせの使用等の、制吐療法を伴いうる。本剤形中のピコプラチンの量は、容易に変更でき、例えばこれにより、約0.5〜100μgまたはそれ未満等の少量の使用が単位剤形において送達されうる。
【0015】
したがって本発明は、哺乳類、例えばヒト、またはイヌ、ネコ、ウシ、ウマ等の家畜による剤形の摂取時に、哺乳類に少なくとも約10%、20%、30%、40%または50%生物利用可能である、カプセル化ピコプラチンを含む単位剤形を提供する。
【0016】
本発明のピコプラチン経口剤形は、ヒトによる経口摂取後に、最大約40〜50%の生物学的利用能を有する。より具体的には、本発明のピコプラチン経口剤形は、経口摂取後、ヒトにおいて約10〜50%、または約20〜45%、または約30〜40%の生物学的利用能を有する。あるいは、本発明のピコプラチン経口剤形は、経口摂取後、哺乳類において約30〜50%、または約40〜50%の生物学的利用能を有する。
【0017】
別の実施形態においては、本発明は、哺乳類の血液中のピコプラチン濃度を最大化するため、または最大に近づけるために有効な量のピコプラチンを、癌に悩むヒト等の哺乳類に経口投与するステップであり、投与が、少なくとも一日一回約一〜四日間連続して行われるステップを提供する、癌を治療する方法を提供する。本明細書に記載されるように、有効な量のピコプラチンを提供するように、ある量のピコプラチンを含む一つ以上の固体単位剤形の、ヒトの癌患者等の哺乳類による連続した毎日の経口摂取により、投与が行われるのが好ましい。その後哺乳類は、実質的に全て、例えばピコプラチンの約90〜100%を哺乳類の血液中から除去するため、および/またはピコプラチンの投与により生じる任意の免疫抑制性副作用または他の副作用があればその副作用から回復させるために有効な期間、投薬されない。回復期間は約1〜2週、または必要に応じてそれ以上でありうる。複数日にわたる毎日投与のサイクルが、それぞれ後に回復期間を伴って、必要に応じて繰り返されればよい。血漿レベルを最大化または飽和させるために有効なピコプラチンの量は、ヒト癌患者で約300〜500mg/日であり得、毎日単一用量で、または、複数の一日用量で与えられる。この処方計画は、癌を積極的に治療するために、ピコプラチンの循環レベルを速やかに「スパイク」または最大化して、最大耐容レベルを達成する。
【0018】
本発明の別の実施形態においては、本発明は、哺乳類の血液中に長時間にわたり実質的に一定レベルのピコプラチンを提供するために有効な量のピコプラチンを、癌に悩むヒト等の哺乳類に経口投与するステップを提供する、癌を治療する方法を提供する。このようなレベルは、飽和または最大「負荷」レベルと比較して低いものでありうる。これは、例えば、約1.0μg〜10mgのピコプラチンの投薬量の、最長約3〜5週間の毎日の経口投与により達成できる。その後、哺乳類は、循環からピコプラチンを実質的に除去するために有効な回復期間、例えば約1〜2週間、投薬されない。この期間により、ピコプラチンによる任意の免疫抑制性効果、またはその他の副作用があればその副作用から、哺乳類の免疫系が回復しうる。比較的長期の低用量のピコプラチン投与が、回復期間を後に伴って、必要に応じて、例えば2〜10サイクル繰り返されうる。この投与計画は、比較的低いが一定レベルの循環ピコプラチンを提供して、治療的分量のピコプラチンと癌細胞の連続的接触を提供する。
【0019】
場合によっては、毎日の投薬が、長期間の投薬中断を伴わずに、最長1〜2年間続けられうる。この「メトロノーム式投与」は、補助療法または転移の場面、および/または第二の抗癌剤とともに使用する際に、特に有用でありうる。長期間の中断とは、標準的療法において、約2〜3週である。
【0020】
本発明は、癌を治療するための、経口投与のために構成されているのが好ましい非白金系抗癌剤の単位剤形を伴うのが好ましい、経口投与のために構成されたピコプラチンの単位剤形の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
「ピコプラチン」は、薬物の別名であるシス―アンミンジクロロ(2―メチルピリジン)白金(II)、あるいは、[SP―4―3]―アンミン(ジクロロ)(2―メチルピリジン)白金(II)をさし、その構造は上述した。それは遷移金属錯体の一般的クラスに属する化合物であり、この場合には、白金が+2酸化状態にある第三列遷移元素白金の錯体である。
【0022】
本明細書で使用されるところの「単位投与剤型」または「カプセル化された単位投与剤型」とは、経口投与(例えば摂取)のために適合された物理的投与剤型をさし、この投与剤型は、投与剤型投与後にin vivoで薬物の完全および、迅速な、制御された、または延長された放出であり得る放出を提供するように適合された、患者あたり予め選択された用量を提供する。
【0023】
本発明によれば、ピコプラチンおよび賦形剤を含む固体粒子製剤は、貯蔵および経口摂取の間に製剤を含む、典型的にはゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルである、実質的に水溶性のシェル内に含まれる。「実質的に水溶性」とは、カプセルシェルが、製剤の活性成分ピコプラチンが哺乳動物の胃腸(GI)管の粘膜から哺乳動物の血流に吸収され得るように、GI管内で溶解または破壊できるように、十分に水溶性であることを意味する。したがって、摂取された物質の典型的なGI管内滞留時間以内、例えば患者によるカプセル摂取の後、数時間以内、好ましくは約30分未満の時間以内、より好ましくは数分以内に実質的に水溶性のシェルの溶解が起こる。しかし、通常は迅速溶解が好ましいが、必要に応じて、錠剤がさらにコーティングされるか他の方法により、ピコプラチンの制御または持続放出を可能にするように設計されうる。
【0024】
本明細書に使用される用語「カプセルバンド」または「バンディング」は、投与または被験体によりカプセルが容易に分離されてカプセル化ピコプラチン製剤が放出され得ないように、カプセルの両半分同士を合わせる役割をする、カプセルを封入する実質的に水溶性のバンドをさす。
【0025】
ピコプラチンのためのカプセル化剤形の使用は、ケア提供者、患者、剤形のパッケージングに関わる人、および他のカプセルと接触しうる人を、細胞毒性ピコプラチンへの曝露から保護する観点から有利である。粉末形態のピコプラチンは粉塵として吸入され、誤って経口摂取され、または皮膚の傷口から吸収されうる。圧縮成形された粉末で構成される錠剤は、コートされていても摩滅しやすく、錠剤外層から粉塵が形成されやすい。錠剤の取り扱いは、皮膚上の細胞毒性ピコプラチンの沈着と、その後の摂取をもたらしうる。これに対して、ゼラチンまたはHPMC等の固体材料で構成されるカプセルは、カプセルが封入する固体ピコプラチンに対する物理的障壁を形成する。これにより、例えば薬剤師および看護士など、剤形を取り扱う人の、より安全な取扱いが提供される。安全性のレベルをさらに高めるために、両半分を含むカプセルが、充填後にバンドされうる。バンドは、カプセルの両半分の間の継目をカバーし、したがって両半分の不測または意図的な分離、およびその結果としての細胞毒性ピコプラチン粉末の放出を防止する。例えばゼラチンバンドが、カプセルを不可逆的に封止するような方法で、製剤を含むカプセルに固定されうる。
【0026】
本明細書に使用される用語「光減衰性」カプセルシェルは、カプセルシェルにより伝達される光の強度を減衰させるように構成または処理されるカプセルシェルをいう。本明細書における意味では、シェルは、全入射光を完全に遮断または反射しなくても、光減衰性でありうる。「不透明」カプセルシェルは、全入射光を実質的に完全に遮断または反射するシェルである。
【0027】
プロセスは、製造施設で一般に使用される光強度より低い光強度、すなわち書面を読むために十分な強度の照明が使用される場合と本明細書で定義されるところの、「抑えた照明(subdued illumination)」下で行われる。抑えた光は、「安全光」として知られるスペクトル分布の光、すなわち、モルベース(molar basis)でピコプラチン光吸収がより低い強さである、スペクトルの黄色から赤色領域の周波数から主に構成される光も指しうる。ピコプラチンの潜在的感光性のため、実質的に光減衰性のカプセルシェルの使用に加え、本発明のプロセスの実行の間の抑えた照明が、本発明の投与剤型中のピコプラチンの安定性を増強し、高純度を維持するのに役立ち得る。
【0028】
本明細書において使用されるところの「製剤」という用語は、最終投与剤型に圧縮成形され、または成形され、または平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物の物理的存在中のピコプラチンとしてピコプラチンを含む粉末を指し、製剤は、本明細書に定義される用語として、炭水化物を含および潤滑剤をさらに含む。製剤は、分散剤/崩壊剤、抗酸化剤、バッファー、着色剤等の他の成分を含むこともできる。製剤がカプセルシェルにより封入されて、本発明の単位剤形が提供される。
【0029】
本明細書に使用されるところの用語「炭水化物」は、グルコース、フラクトース、ラクトース、スクロース、リボース、ヘミセルロース、セルロース、修飾セルロース(セルロースエーテル等)等の、単量体、二量体、オリゴマー、またはポリマー糖誘導体を含む、医薬組成物中の充填剤として、または増量剤として有用な炭水化物を含む。炭水化物分子には、約1:2:1のモル比の炭素、水素および酸素が含まれる。しかし、デオキシ糖およびそれらのオリゴマー/ポリマー等、この式から逸脱する分子も、物質に水溶性または水吸収性を与えるために十分なヒドロキシル基が存在することを条件として、本明細書で用いられるところの用語「炭水化物」に含まれる。炭水化物は、本発明の原理から逸脱することなく、窒素(例えばアミノ糖)、硫黄(例えば糖スルホン酸)、およびリン(例えば糖リン酸)等の他の要素も含みうる。
【0030】
「実質的に水溶性」の炭水化物とは、炭水化物が、数時間以内、好ましくは数分以内に胃腸(GI)管の水性環境中で溶解できるために十分に水溶性であることを意味する。実質的に水溶性の炭水化物の例は、単糖、例えばグルコースである。
【0031】
「実質的に水分散性の炭水化物」とは、水中で完全に溶解しないとしても、なお十分に親水性であるために水中で自由に分散する、炭水化物を意味する。
【0032】
「実質的に水吸収性の」炭水化物とは、炭水化物が、水中で完全に、またはいかなる有意な程度にも溶解しないが、なおその物理的構造内に水を取り込み、吸着し、または吸収することを意味する。例えば、微結晶性セルロース等のセルロースは、水中で溶解しないが、水の存在下でその重量の数倍の水を吸収して水和する。例えばセルロースによる、このような水の吸収は、ピコプラチンの溶解を助けうる。水吸収性炭水化物によるこのような水の吸収が、水分子を物理的に微細粒子状ピコプラチンの表面の近くに保つことにより、GI管内でのピコプラチンの溶解を助ける働きをすると考えられる。
【0033】
「実質的に乾燥の」材料とは、外からの水が加えられておらず、含有される水の重量%が比較的低く、典型的には約5重量%未満、好ましくは約1〜3重量%未満の水、より好ましくは約1重量%未満の水である、固体の物質を意味する。実質的に乾燥の材料は、本明細書の定義の範囲内では、絶対的に無水である必要はないが、材料中に存在する残留水分の量が制限される。例えば、5重量%の水を含むラクトース一水和物は、投与剤型において炭水化物として使用できる。

【0034】
「粉末」は、比較的微細な粒子に分割された固体の物理的形態の材料を意味する。粉末は、粉砕粉末でありうる。このような粉末は、粗い粉末を所望の微細さに挽くことにより作られうる。微粒状化粉末を形成する好ましい方法は、ジェットミリングである。カプセル化粉末材料は、20メッシュまたは30メッシュスクリーンを通るのに十分な細かさでありうるが、平均粒径10ミクロン未満である必要はない炭水化物等のより粗い粉末と組み合わせられ、またはこれに取り入れられた、粒径10ミクロン未満の微粉末であるピコプラチン微粒子を含む。
【0035】
本明細書に開示される固体ピコプラチンの物理的形態の文脈での「微粒子」とは、平均ピコプラチン粒径が10ミクロン未満、好ましくは7ミクロン未満であり、最も好ましくは微粒子状材料の試料の少なくとも約90%が各々約5ミクロン未満の直径を有する個別粒子で構成される、非常に微細な粉末を意味する。ピコプラチン微細微粒子物の性質が、患者のGI管内におけるその迅速および完全な溶解を助ける。ピコプラチン微粒子物は、微粉化材料、微結晶性材料、凍結乾燥材料、またはその任意の組み合わせでありうる。
【0036】
「微粉化」材料は、粉末を構成する粒子の大部分が約10ミクロン以下の粒径を有する微粒子物である。好ましくは、平均粒径は、約5ミクロン以下である。粒径は、本発明の原理から、逸脱することなく、最低約1ミクロン以下の範囲に及びうる。微粉化固体は、結晶質または非晶質でありうる。
【0037】
「微結晶性」材料は、固体が結晶形であり、結晶が主に特定の大きさである、微細微粒子物である。微結晶性材料は、材料がその中で不溶性である第二の液状材料の添加によるなど、溶媒からの材料の沈殿により調製できる。
【0038】
「凍結乾燥」材料は、材料の溶液を凍結乾燥する工程により得られた固体である。凍結乾燥は、周知のように、溶媒が完全に除去されると、微細粉末状の固体材料が残るような、材料の冷凍溶液からの水のような溶媒、または他の互換性の溶媒の真空昇華を含む。
【0039】
「セルロース」という用語は、本明細書において、大部分がβ(1―4)―結合D―グルコースユニットの線状ポリマーからなるポリマー炭水化物材料を意味する。セルロースは、木材パルプ、綿または細菌等の自然のソースから典型的に得られる。セルロースは、挽かれるか粉砕されて、微細微粒子物状材料がつくられうる。あるいは、Avicel(登録商標)の商標の下で販売されるような微結晶性セルロースが用いられうる。例えば、Avicel(登録商標)は、Avicel PH101(登録商標)でありうる。微結晶性セルロースとは、結晶ドメインをよりそのままに残しながら主にセルロース試料の無定形領域を加水分解する働きをする、部分的酸加水分解を受け易くなっているセルロースを意味する。微結晶性セルロースは、微粉末の物理的形状をとる。
【0040】
本明細書で使用されるところの「改変セルロース」という用語は、化学的または生物学的に改変されたセルロースを意味する。例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、すなわち当技術分野で周知の、ナトリウム塩としてペンダントカルボキシメチル基を持つセルロースは、本明細書の意味の範囲内で改変セルロースである。同様に、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、本明細書で定めた意味の範囲内で改変セルロースである。架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム、別名「クロスカルメロースナトリウム」は、本明細書の意味の範囲内で架橋改変セルロースである。クロスカルメロースナトリウムは、本明細書の用語の意味の範囲内で分散剤または崩壊剤である。
【0041】
本明細書における意味の範囲内で「潤滑剤」または「流動促進剤(glidant)」は、粒子の表面をコートし、粉末処理工程の間、例えばカプセルを充填する際等の微粒子物間運動による摩擦を減らす役割をする物質である。摩擦の低減は、本発明の単位投与剤型または本発明の方法により生成される単位投与剤型を製造するために典型的に使用される例えば粉砕、粉末処理、およびカプセルを充填するプロセスの間の、静電気蓄積、および粒子集塊または凝集の減少に役立つ。
【0042】
「分散剤」または「崩壊剤」は、水性媒体への曝露時、例えば本発明の単位投与剤型が投与された患者のGI管内で本発明の微細な微粒子物製剤の分散を助ける、本発明の製剤の構成要素である物質である。分散剤が、水性媒体中における固体粒子の表面の溶媒和を増加させ、これにより表面湿潤の促進により固体の溶解を助けながら、粒子―粒子接着および集塊を減らす働きをすると考えられる。分散剤の例には、クロスカルメロースナトリウムおよびポビドンが含まれる。ポリ(ビニルピロリドン)としても知られるポビドンは、ポリ(ビニル)バックボーンに沿って複数のピロリドンユニットを持つポリマー材料である。
【0043】
本発明は、実質的に水溶性のカプセルシェルであり、約10〜60重量%、好ましくは約15〜40重量%のピコプラチンであり、平均粒径約10ミクロン未満の微粒子の物理的形態であるピコプラチンと、約40〜80重量%の実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤とを含む実質的に乾燥した粉末を含む、製剤を封入するカプセルシェルを含む、ピコプラチンの経口投与のために構成された、ピコプラチンのための単位剤形を提供する。
【0044】
ピコプラチンの経口投与のために構成された単位剤形は、ピコプラチンを含む製剤を封入するカプセルシェルを含み、カプセルシェルは、実質的に水溶性の材料で形成される。カプセルシェルは、製剤が放出されて溶解し、胃腸(GI)管の粘膜から血流中に吸収されるように、シェルが哺乳類の胃腸管内で溶解するか破壊されうるために十分に水溶性である。
【0045】
摂取に適する任意の可塑性の無毒性水溶性材料を用いてカプセルシェルを形成できるが、カプセルシェル材料は、当該分野で周知のように、硬ゼラチン等のゼラチンで作られるのが好ましい。本明細書に使用されるところの用語「ゼラチン」は、約98〜99乾燥重量%タンパク質である、コラーゲン由来の材料である。本明細書において使用されるところの「ゼラチン」という用語は、約98〜99乾燥重量%タンパク質である、コラーゲン由来の材料である。ゼラチンのおおよそのアミノ酸組成は:21%グリシン、12%プロリン、12%ヒドロキシプロリン、10%グルタミン酸、9%アラニン、8%アルギニン、6%アスパラギン酸、4%リシン、4%セリン、3%ロイシン、2%バリン、2%フェニルアラニン、2%スレオニン、1%イソロイシン、1%ヒドロキシリシン、<1%メチオニンおよびヒスチジン、および<0.5%チロシンである。従来技術において周知のように、ゼラチンカプセルシェルは、GI管内で速やかに溶解するように作られうる。特に、サイズ3のゼラチンカプセルを、シェルとして使用できる。カプセルシェルは、ゼラチン/PEG(ポリエチレングリコールで誘導体化されたゼラチン)、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」)で構成されてもよい。このようなツーピースHPMCカプセルには、Shionogi Qualicapsから入手可能なQuali―V(登録商標)カプセルが含まれる。
【0046】
本発明のカプセルシェルは、バンドされうる。すなわち、カプセルが容易に分離されて細胞毒性ピコプラチン粉末が放出され得ないように、カプセルシェルの両半分の間の継目をカバーし、カプセルシェルの両半分をまとめる役割をする、好ましくは水溶性の材料のバンドで封止されうる。
【0047】
本発明のカプセルシェルは、単位剤形に当たりうる入射光を減衰させるように構成されうる。光に対するピコプラチンの公知の不安定性のため、入射光の減衰が、カプセル剤形中に含まれるピコプラチンの純度を維持するのに役立つ。カプセルシェルは、入射光を有意な程度に、好ましくは典型的な室内照明レベルで少なくとも約50%、または少なくとも約75%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%減衰させうる。これは、適切な不透明化剤、例えばTiOまたはFe等の金属酸化物をシェルに取り込むことにより達成できる。不透明化剤は、光を吸収または反射することにより、入射光を減衰させる役割をする。白色でアルベドが高いTiOは、スペクトルの可視部分全体の光を高効率で反射する。不透明化剤は、例えばゼラチンに含ませることによりカプセルシェルに取り込まれ、または、金属酸化物のピコプラチンとの接触を回避するために、カプセルシェルの上に、好ましくはシェルの外側にコートされた製剤の成分となりうる。これは、カプセルの中身を光から保護するのに役立ち、含有ピコプラチンの高純度を維持するのを助ける。
【0048】
本発明のカプセルシェルは、炭水化物および潤滑剤と混合された、平均粒径約10ミクロン未満の微粒子の物理的形態のピコプラチンを含む粉末を含む、製剤を含む。複数のタイプの炭水化物、潤滑剤、または両者が存在しうる。患者のGI管内でピコプラチン含有粉末の粒子を分散させるのに役立ちうる、分散剤等の追加的な成分も製剤中に存在しうる。存在しうる他の成分には、抗酸化剤等の安定剤、バッファー、着色剤、または抗癌薬を含む他の薬物が含まれる。
【0049】
上述のように、ピコプラチンは平面四配位白金(II)錯体であり、そのような錯体は、本発明の単位剤形が回避または最小化するように構成される、一定の不安定性を持つことが知られている。例えば、平面四配位白金(II)錯体は、上述のように、塩素分子が添加されやすい。塩化物(ハライド)および酸化剤(大気分子酸素)が存在する場合に、塩素分子がin situで形成されうる。したがって、塩化物が製剤から除外されるのが好ましい。亜塩素酸塩、二酸化塩素およびポビドンヨードを含む、例えば殺菌剤として使用できる固体酸化剤は、製剤から除外されるのが好ましい。また、分散剤/崩壊剤等の様々な賦形剤に見られる、=NH、―NH、および―SHを含む部分を含む化合物は、ピコプラチンのような平面四配位白金(II)錯体とin situまたはin vivoで反応しうるため、剤形がそのような化合物をいずれも含まないのが好ましい。
【0050】
ピコプラチンは、錠剤のコーティングにおいて使用される酸化鉄、酸化チタン、酸化銅、酸化鉄、酸化亜鉛等の金属酸化物との接触により分解されうる。そのため、カプセル形態ではピコプラチンを保護するためのピコプラチン製剤のさらなる密接または連続コーティングが必要ないという点で、ピコプラチンのカプセル化経口剤形の使用が、錠剤経口剤形と比べて有利でありうる。
【0051】
カプセル化製剤では、例えば不透明化剤としてカプセルに取り込まれうる酸化チタン等の任意の金属酸化物が、ピコプラチンと物理的に接触しない。酸化チタン等の金属酸化物は、不透明化剤に適するため、ピコプラチンの露光を遮断するためにそれらを使用することが好ましく、そのような不透明化剤をカプセル材料、例えば硬ゼラチンまたはHPMCに取り込むことにより、または金属酸化物不透明化剤を含む材料でカプセルの外側をコートすることにより、金属酸化物による好ましくないピコプラチン分解を伴わずに、光減衰が達成される。
【0052】
シェル中に含まれる固体製剤のピコプラチン分解に対する感受性は、アミノ基等の反応性官能基の存在下で中程度でありうるが、固体材料の比較的不活性の性質のため、製剤の調合等のプロセス、および特に胃中でのカプセル破壊および溶解プロセスの間に、反応性成分の非存在がピコプラチン純度維持を助けうる。カプセル溶解および破壊後、固体製剤が最初に胃酸中に放出される際に存在する微小環境中では、剤型成分の局所的高濃度が、溶解するピコプラチン微粒子物の表面に物理的にごく近接して存在する。高表面積をともなう、これらの小微粒子物が溶液中に完全に通るためには少なくとも数分かかり得、その間に、ピコプラチン以外の製剤の成分が、同様に溶解し、局所的高濃度で、溶解するピコプラチン粒子に隣接して存在する。したがって、これらの胃微小環境中に局所的高濃度で存在しうる物質における、ピコプラチン反応性官能基の非存在が有利である。
【0053】
製剤の粉末に含まれるピコプラチンは、平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物の物理的形態である。ピコプラチン微粒子物は、微粉化材料、微結晶性材料、凍結乾燥材料、またはその任意の組み合わせでありうる。ピコプラチンは、ジェットミリングまたは適度に小さな平均粒径の微粉化粉末を提供できる任意の他のプロセスにより、粉砕または微粉化されうる。微粉化ピコプラチンは、微細微粒子物の存在から生じる好ましい表面積対質量比のため、投与剤型投与後に患者のGI管内における有効な量のピコプラチンの迅速および完全な溶解を助ける。微粉化ピコプラチンは、結晶または無定形固体ピコプラチンで構成されうる。
【0054】
ピコプラチン微粒子物は、粉末が適度に小さな物理的寸法の結晶で構成される、微結晶性固体でもありうる。微結晶性材料は、当該技術分野で公知のように、たとえば高剪断または振動等を伴い、材料が溶解しない液体を添加して溶液から固体を沈殿させて形成されうる。
【0055】
ピコプラチン微粒子物は、ピコプラチン溶液の凍結乾燥により形成されるような、凍結乾燥粉末でもありうる。ピコプラチン微粒子物は、上に列挙した微細微粒子物を形成する方法の任意の組み合わせにより形成されることもできている。例えば、微結晶性材料は、ジェットミリング等により微粉化されて粒径が小さくなり得、または凍結乾燥により水溶液から回収された材料が、微粉化されるなどしうる。
【0056】
ピコプラチン、炭水化物、潤滑剤、および存在しうる任意の他の成分の混合物は、粉末の形状でもありうるが、ピコプラチン微粒子物ほど微細な粉末ではない。製剤は、ピコプラチン微粒子物と他の成分粒子の混合物であり得、または、好ましくは、製剤の粉末をなす粒子は、実質的にそれらの全ての中に、炭水化物等の他成分と混合物中に分散された複数のピコプラチン微粒子物を取り込んでいてよい。製剤の粉末は、例えば、20メッシュスクリーンまたは30メッシュスクリーンを通るのに十分微細でありうる。混合粉末は、粉砕粉末でありうる。成分ピコプラチン粒子の表面積がより大きく、これらのピコプラチン粒子が炭水化物、および任意の分散剤または崩壊剤とより密接に混合されるほど、患者へのカプセル投与後にピコプラチンがより迅速および完全に溶解または分散するため、混合物が、ピコプラチン微粒子物が製剤の追加の成分と密接に混合された密接混合物(intimate admixture)であることが好ましい。ピコプラチンの迅速および完全な溶解は、患者に最大限に有効な処置を提供する観点から、望ましい。
【0057】
カプセルのシェルにより包まれた粉末は、実質的に乾燥の形状である;炭水化物および分散剤等の成分の含水量は、製剤中の水の重量%を最小限にするようにコントロールされる。水は、ある条件下で、ピコプラチンと反応して分解をもたらしうる。したがって、投与剤型の含水量は、組成物の約5重量%未満、好ましくは約1〜3重量%未満、より好ましくは約1重量%未満に限られるのが好ましい。一定の炭水化物、例えばラクトースは、5重量%の水を含む一水和物等の水和物の形状で存在しうると理解され、本発明の原理から逸脱することなく、このような水和物が使用されうるが、実行可能な限り外からの水が排除されるのが好ましい。
【0058】
製剤の少なくとも約10〜20重量%をなし、製剤の最大約55〜60重量%をなしうるピコプラチンは、好ましくは無水であり、調合プロセスの間に、その乾燥状態を維持する条件下で処理される。
【0059】
適切な炭水化物は、単糖、二糖、糖アルコール、セルロース、改変セルロースおよびその混合物からなる群より選択されうる。炭水化物は水溶性、水分散性、または水吸収性である。すなわち充填剤は、水中に完全溶解し、水中に自由に分散し、または十分に親水性であるために相当量の水をその構造中に吸収する。例えば、フラクトースは水溶性であり、一定のヘミセルロースは水分散性であり、セルロースは水吸収性である。二つ以上の炭水化物が、投与剤型中に存在しうる。全炭水化物が、製剤の約40〜90重量%で存在するのが好ましい。
【0060】
単糖の例は、フラクトースである。他の例には、グルコース、キシロース、マンノース、ガラクトース、リボース等が含まれるがこれに限定されない。二糖の例には、ラクトースおよびスクロースが含まれる。
【0061】
糖アルコールの例には、ソルビトール、リビトール、マンニトールおよびキシリトールが含まれる。ヘミセルロースの例は、木材由来のアルカリ可溶性ヘミセルロースである。
【0062】
セルロースの例は、微結晶性セルロースである。別のセルロースは、粉末形状に挽いてある高グレード木材パルプセルロース等の微細に挽いたセルロースまたは粉砕したセルロースである。
【0063】
改変セルロースの例は、カルボキシルメチルセルロースナトリウムである。他の例には、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびメチルヒドロキシプロピルセルロースが含まれるがこれに限定されない。改変セルロースのいくつかの例は水溶性であるが、他は水分散性または水吸収性である。
【0064】
本発明の製剤は、潤滑剤を有効な量含む。潤滑剤、例えば脂肪酸の塩、より具体的にはステアリン酸マグネシウムは、粉砕およびカプセル化の工程の間等の粒子集塊の回避を助けることにより、製剤の粉末、特に10ミクロン未満のピコプラチン粉末を取り扱う際の加工助剤として役立ちうる。潤滑剤は、製剤の最大約5重量%存在しうる。
【0065】
患者のGI管内等の水性媒体中における製剤の粉末の分散を増強する働きをする分散剤は、カプセルシェルの破壊または溶解後の製剤の迅速な溶解を促進する。分散剤は、最初に水性媒体に遭遇したときの粒子の凝集(aggregation)または凝集(clumping)を阻害し、したがって微粉化したピコプラチン粉末の好ましい表面積対質量比を保持するのを助ける傾向がある。分散剤の例は、架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム、別名クロスカルメロースである。別の例は、ポビドン、別名ポリビドン、ポリ(ビニルピロリドン)、またはPVPである。製剤は、約5〜10重量%の分散剤を含みうる。二つ以上の分散剤が、製剤中に存在しうる。
【0066】
製剤は、他の成分を含みうるが、好ましくは酸化剤、金属酸化物、またはハロゲン、=NH、―NH、もしくは―SH部分を含む化合物を含まない。例えば、抗酸化剤が含まれうる。食用色素等の着色剤が含まれうる。
【0067】
したがって、ピコプラチン対炭水化物充填剤対(存在する場合には)分散剤対流動促進剤の比率は、約1:1.5〜3.0:0.1〜0.3:0.25〜0.1である。一実施形態においては、本発明の単位投与剤型は、約50mgの微粉化ピコプラチン、約116mgのラクトース一水和物、約20mgの微結晶性セルロース、約8mgのクロスカルメロースナトリウム、約4mgのポビドン、および約2mgのステアリン酸マグネシウムを、ゼラチンカプセル中に含まれる混合物として含む、約200mgの微粒子材料の製剤を含む。粉末は、約25重量%のピコプラチン、約68重量%のラクトースと微結晶性セルロースとの混合物、約6重量%のクロスカルメロースナトリウムおよびポビドン、および約1重量%のステアリン酸マグネシウムを含むのが好ましい。ゼラチンカプセルは、カプセルのゼラチンまたはセルロースシェルへのTiOの取り込み、またはTiOを含む材料でゼラチンカプセルの外側をコートすることにより、不透明化されるのが好ましい。
【0068】
本発明は、ピコプラチンのためのカプセル化単位剤形であり、ピコプラチンの経口投与のために構成される単位剤形を、調製するためのプロセスであり、平均粒径約10ミクロン未満の微粒子の物理的形態であるピコプラチンと、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤とを含む、実質的に乾燥した粉末を含む製剤を調製するステップと;その後、製剤を実質的に水溶性のカプセルシェル内に配置するステップとを含む、プロセスをさらに提供する。
【0069】
本発明のプロセスで使用する成分材料は、本発明の単位投与剤型のために上記した通りである。本発明のプロセスには、実質的に乾燥の製剤の粉末を調製し、そしてカプセルシェルを材料で満たす工程が含まれる。カプセルシェルは、水溶性であり、そして、上述したように光減衰性であり得る。
【0070】
例として、ラクトース一水和物、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤が、それぞれ20―メッシュ篩を通るように挽かれ得、その後、ピコプラチン微粒子物と造粒機内で混合されうる。ピコプラチン微粒子物は、ジェットミリングプロセスにより、または微結晶、または凍結乾燥、または必要な寸法の微粒子物を提供するこれらの方法の任意の組み合わせにより、前もって調製され得る。分散剤、例えば20―メッシュ篩を通る粉末形状のポビドンが、造粒機中の混合物に加えられうる。その後、成分材料の混合物を形成するために、高―剪断造粒を使用して固体の混合が行われうる。ピコプラチンは、追加的成分と混合する前に、炭水化物、例えばラクトースと予め混合されうる。これは、ピコプラチン粒子上に蓄積される静電気の量を減らすのに役立つ。わずかに水溶性のピコプラチン(約1mg/mLまたは約0.1%の水中溶解性を有する)の、水溶性、水分散性、または水吸収性炭水化物、潤滑剤、および場合によって分散剤との混合は、患者のGI管中での有効な量のピコプラチンの迅速および実質的に完全な溶解を増強するために役立つ。
【0071】
粉砕および混合プロセスの後、製剤が乾燥され得る。例えばトレイ上に薄層に広げられた後、乾燥条件下で保たれうる。例えば、トレイ上の粉末が、約40〜80℃等の適度な温度に暖め得、部分的真空下、または乾燥剤、例えばPの存在下で保たれうる。含水量が固体混合物の5重量%未満、より好ましくは1〜3重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満であるように、残留水分がコントロールされうる。
【0072】
乾燥後、追加の粉砕が行われうる。バルク材料が、必要に応じて、存在し得るより大きな粒子を除去するために、篩を通してふるいに分けられ得る。例えば、微粒子材料の試料の主要な部分は、20―メッシュ篩を通過しうる。好ましくは、粉末のバルクは、30―メッシュ篩を通過できる。
【0073】
製剤の粉末は、制御された大気下での貯蔵、調製プロセスへの適切な乾燥工程の挿入、および大気中の湿気の非存在下での貯蔵等の適切な工学技術および制御の使用により、実質的に乾燥に保たれうる。また、光不安定であることが周知のピコプラチンの光分解の量を最小限にするために、粉末が抑制光下で処理されうる。入射光の制御は、不透明ベッセル中での材料処理、遮蔽下または暗中での運搬および乾燥、または光学処理に使用されうるような安全光の使用等の適切な工学制御により行われうる。本発明のプロセスを行う際の入射光を最小限にすることが望ましい。
【0074】
プロセスの最終混合、乾燥、およびスクリーニングステップが行われた後、製剤の粉末が、公知技術等によりカプセルシェル内に封入される。ここでも、カプセル充填および貯蔵工程が抑制光および実質的に乾燥の条件の下で行われることが好ましい。
【0075】
本発明は、剤形の投与に関する教材とともに、または、政府規制機関により承認済みの剤形の使用を説明する、標識手段、例えばラベル、タグ、CD、DVD、カセットテープ等を含む教材とともにパッケージされた、一つ以上の剤形を提供する。
【0076】
剤形は、識別、濃度、有効期限を含みうる、医師または看護士等のケア提供者に有用な識別情報を提供する手段を含みうる。これは、医療過誤を回避し、ケア提供者および患者に正しい薬が投与されているという付加的レベルの保証を提供するのに役立ちうる。識別情報は、微少光において、例えばカプセルのテクスチャ特性、ピコプラチンおよび用量を示す浮き出し文字等により検出されうるように非視覚的形態でありうる。あるいは、カプセルが、投与情報を伝達するか内容を識別する様式で着色されうる。例えば、治療セッションが三つのカプセルを使用する場合には、ケア提供者に治療シーケンスにおける所与のカプセルの一番目、二番目、または三番目の相対的位置を示すために、カプセルが異なる色等でコードされうる。これは、ケア提供者が治療セッションにおいて患者に投与したカプセルの数を忘れた場合に起こりうる、過剰または過小投与等の医療過誤を回避するために役立つ。
【0077】
感光性化合物として、ピコプラチンおよびその溶液は、例えば不透明材料中にパッケージすることにより、露光から保護される。したがって、本発明の剤形は、可視光に対する露光を最小限にする二次包装により、光から遮蔽されうる。
【0078】
本発明の単位投与剤型または本発明の方法により調製される単位投与剤型は、名目組成と比較して含有ピコプラチンの実際量において±10%の広がりを有しうる。例えば、名目50mgのピコプラチンを含む名目200mgの重量を有する単位投与剤型は、個々の試料についての測定で約45〜55mgのピコプラチンを有しうる。本発明の単位投与剤型は、低く限られた量の様々な不純物を有する。例えば、ピコリン、テトラクロロプラチネートカリウム塩、トリクロロピコリンプラチネート(trichloropicolineplatinate)またはトリクロロアミノプラチネート等の、ピコプラチンの製造または貯蔵からの、可能性のある幾つかの残留不純物の各々を、約1%を超えて含むべきでない。
【0079】
他の有用な経口単位剤形には、参照により本明細書に組み込まれる、2007年2月9日に出願のLeigh等、米国特許仮出願第60/889,171号、および2007年7月16日に出願のA.Chen、米国特許仮出願第60/950,033号に開示されるコート錠が含まれる。
【0080】
本発明は、本発明の単位剤形、または本発明の方法により調製される経口単位剤形、またはその複数を、哺乳類に有益な効果を提供するために適切な総投与量、頻度、および期間で経口投与するステップを含む、癌に悩むヒトにおける癌を治療する方法も提供する。方法は、好ましくは経口投与される第二の非白金系抗癌剤の投与、好ましくは経口投与も含みうる。
【0081】
ピコプラチンが、シスプラチンおよびカルボプラチン等の「第一世代」または「第二世代」有機白金抗癌薬に対する抵抗をもつか抵抗をつけた腫瘍に対して活性でありうることがよく知られている。例えば、本発明の経口投与剤型または本発明のプロセスにより調製された経口投与剤型を用いて、血液系悪性疾患および非血液系悪性疾患、特に非血液系悪性疾患、固形悪性腫瘍の患者等、特に固形腫瘍がシスプラチン、オキサリプラチンまたはカルボプラチン難治性である患者を処置できる。本発明のピコプラチンの経口投与剤型または本発明のプロセスにより調製されるピコプラチンの経口投与剤型により処置できる固形悪性疾患の具体的なタイプには、小細胞肺癌、非小細胞肺癌を含む肺癌、頭頚部癌、GI/胃癌、皮膚癌、卵巣癌、腎臓癌、膀胱癌、中皮腫、ホルモン不応性前立腺癌を含む前立腺癌、、子宮頚部/子宮癌、肝臓癌、精巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、肉腫、乳癌、類癌腫、骨関連癌、白血病、リンパ腫(NHL)等が含まれるがこれに限られない。
【0082】
複数の本発明の経口投与剤型または本発明のプロセスにより調製された経口投与剤型が、約1μg〜約500mg(例えば、50mg〜400mg)の単一の総投与量を提供するため患者に与えられうる。総投与量は、適切な数の単位投与剤型の形状で与えられうる、すなわち200mgの用量のピコプラチンなら、それぞれ50mgのピコプラチンを含む4単位投与剤型が投与されうる。あるいは、単一または多数の単位投与剤型がより頻繁に、例えば1日から数週間(例えば、1〜10週)の期間の毎日与えられうる。所与の投与のための複数の単位投与剤型の全数が、短い時間間隔内に、例えば約五分間以内に投与されることが好ましい。したがって、所与の投与が名目200mgのピコプラチンを含み、各々名目50mgのピコプラチン含む投与剤型が使用される場合には、四つのカプセル全てが実質的に同時に患者に投与されるべきである。合計0.001〜400mgのピコプラチンの投与量レベルでは、平均患者体表面積を1.7mと仮定すると、それぞれ約0.0006〜235mg/mに等しい。この投薬は医学的に必要とするとおり、繰り返されうる。例えば、投薬は医学的に必要とするとみなされるとおり、各処置期間において、単一の投与量が投与されるか、またはある期間(例えば、10週まで)にわたって毎日、処置期間の間に間隔をもって(例えば、周毎の間隔で、ほぼ二週間毎、ほぼ三週間毎、ほぼ四週間毎、ほぼ五週間毎、またはほぼ六週間毎に)繰り返されうる。投薬は、治療被験体中に、所望の期間、例えば一日から最長数週間、すなわち約1〜10週間の毎日の連続投与までの期間中、基本的に一定の治療レベルのピコプラチンを維持するように行われるのが好ましい。
【0083】
本発明の治療方法は、好ましくは順次(前または後)または同時(同時または重複を含む)に、少なくとも一つの追加的薬物および/または放射線療法等の抗癌療法を、本発明の単位剤形(単数または複数)、または本発明の方法により調製される単位剤形(単数または複数)等の単数または複数のピコプラチンを含む単位剤形とともに、経口または非経口的に投与するステップをさらに含みうる。追加的薬物は、抗癌薬、好ましくはPtを含まない薬物であり得、経口投与または静脈内投与されうる。
【0084】
例えば、追加的な抗癌薬には、タキサン(例えばパクリタキセルまたはドセタキセル)、成長因子受容体阻害剤(例えばベバシズマブまたはセツキシマブ等の抗体またはAZD2171(Recentin))、代謝拮抗物質(ロイコボリンを伴うか伴わないカペシタビン、ゲムシタビンまたは5―FU)、PK阻害剤(例えばソラフェニブトシレート)、アントラサイクリン(アムルビシン、ドキソルビシンまたはリポソームドキソルビシン)、メルファランおよびシクロホスファミドを含むビンカアルカロイドまたはアルキル化剤が含まれうるがこれに限られない。有用な薬剤は、(いずれも参照により本明細書に組み込まれる、)2003年9月4日に出願の米国特許出願第10/276,503号;2007年11月5日に出願の第11/982,841号;2007年11月6日に出願の第11/935,979号;2007年11月5日に出願の第11/982,839号;米国特許第7,060,808号および第4,673,668号;国際公開第98/45331号および第96/40210号、および2007年2月9日に出願の米国特許仮出願第60/889,171号、および2008年2月8日に出願の“Use of Picoplatin and Bevacizumab to Treat Colorectal Cancer”と題したMartell等、米国特許仮出願第____号(代理人整理番号295.114PRV);2008年2月8日に出願の“Use of Picoplatin and Cetuximab to Treat Colorectal Cancer”と題したMartell等、米国特許仮出願第____号(代理人整理番号295.115PRV);2008年2月8日に出願の“Picoplatin and Amrubicin to Treat Lung Cancer”と題したKarlin等、米国特許仮出願第____号(代理人整理番号295.116PRV);2008年2月8日に出願の“Combination Chemotherapy Comprising Stabilized Intravenous Picoplatin”と題したMartell等、米国特許仮出願第____号(代理人整理番号295.120PRV)に開示される白金系および非白金系抗癌薬を含む。あるいは、追加的薬物は、白金を含まない抗癌剤であり、癌の合併症を治療するため、または癌の少なくとも一つの症状の軽減を被験体に提供するために、選択されうる。
【0085】
好ましい制癌薬は、表1にリストされるもの等の、有効用量で経口投与されうるものである。
【0086】
【表1】

好ましい薬剤は、アルトレタミン(アルキル化剤)(Hexalen(登録商標))、カペシタビン(代謝拮抗物質)(Xeoda(登録商標))、ダサフィニブ(Dasafinib)(TK阻害剤)(Spryce(登録商標))、エルロチニブ(EGF受容体拮抗薬)(Tarceva(登録商標))、ゲフィチニブ(EGF阻害剤)(Iressa(登録商標))、イマチニブ(TK阻害剤)(Gleevec(登録商標))、ラパチニブ(Tycerb(登録商標))(EGFR阻害剤、Her2阻害剤)、レナリドマイド(TNF拮抗薬)(Revlimid(登録商標))、スニチニブ(TK阻害剤)(Sutent(登録商標))、S―1(代謝拮抗物質)、ソラフェニブ(血管形成阻害剤)、テガフール/ウラシル(代謝拮抗物質)(UFT)、テモゾロマイド(アルキル化剤)(Temodar(登録商標))、サリドマイド(Thalomid)(血管形成阻害剤)、トポテカン(Hycamptin(登録商標))、ビノレルビン(Navelbine(登録商標))、およびボリノスタット(HDI)(Zolinza(登録商標))の経口製剤である。
【0087】
本発明は、別々にパッケージされた、本発明のカプセルまたは本発明の方法に従って調製されたカプセルの単位剤形を、治療コースを提供するために十分な数含むパッケージを含む、キットをさらに提供する。キットは、投与の用量または頻度を指図する指示等の教材をさらに含みうる。例えば、キットは、一週間または数週間等の長期間に十分な一日用量を含み、または毎日投与等、投薬の繰り返し頻度が低い場合には、単回投与のための複数の単位剤形を含みうる。ブリスター包装などにおいて、複数の単位剤形は、別々ながら近くにパッケージされうる。キットは、別々にパッケージされた、好ましくは経口単位剤形の、白金を含まない抗癌剤の複数の単位剤形も含みうる。
【実施例】
【0088】
(実施例1)
経口バイオアベイラビリティ研究
登録される集団は、標準的療法が存在せず、単剤ピコプラチンによる治療が適切な、非血液性進行癌をともなう被験体となる。被験体は、以前に白金剤を受けていてもよく、「白金難治性」と考えられるか(例えば白金ベースの化学療法で治療されることが多い、肺癌、頭頚部癌、卵巣癌または他の悪性腫瘍の被験体)、白金ベースの化学療法を以前に受けていなくてもよい(例えば、肉腫、乳癌、類癌腫等の被験体)。
【0089】
研究デザインは、ランダム化、二―ピリオドクロスオーバー、オープンラベル研究であり、ピコプラチンの単一用量(サイクル1)がIVまたはPOで与えられ、その4週間後にピコプラチンの単一用量(サイクル2)がサイクル1で使用されない経路により与えられる。
【0090】
IV用量は、120mg/mであり、1時間で投与された。この用量は、研究される患者集団に特徴的であると考えられる、大量に前治療された被験体の最大耐量から推定される。
【0091】
用量を制限する毒性の非存在下での、順次研究された(投薬レベルあたり6人の被験体)経口投薬レベル:被験体あたり200mg、300mg、または400mgの総用量。1.7mの平均BSAを仮定すると、これらの用量は、119、164および235mg/mのほぼ平均の用量に等しい。経口製剤の50%の相対的バイオアベイラビリティを仮定すると、これらの経口用量は、静脈内投与約60、90、および120mg/mに等しく、バイオアベイラビリティが約44%であれば、52、72、および103mg/mに等しくなる。
【0092】
研究薬物の各投薬後の、特定の時点でとった血液および尿サンプルが、血漿(結合白金)および血漿限外ろ過液(非結合白金)中の総白金濃度につき分析される。
【0093】
カプセルは、乳白色であり、青いバンドで封止される。処方された用量に適切な数のカプセルが、ボトルから除去され、被験体がカプセルに触れずにカプセルを容易に口内に滑り込ませることができるように、薬物エンベロープ(または他の容器)内に配置される。カプセルを摂取のために被験体へ輸送する間に、光から保護するのが好ましい。
50mgのピコプラチンを含むカプセルの組成が、下表2に与えられる。
【0094】
【表2】

ピコプラチンカプセルは、(服用前4時間の間に限った清澄液の摂取および制吐療法の後に)被験体が処方された総用量を240mL(8オンス)の水とともに5分間で嚥下することにより、経口的に服用される。
【0095】
前投与制吐薬には、研究薬物の直前にPOまたはIV投与される、デキサメサゾン、8〜12mg、(または同等のコルチコステロイド)および5―HT受容体アンタゴニストが含まれる。被験体は、必要に応じて治療後数日間制吐療法、例えば経口ロラゼパム、プロクロルペラジン、または臨床的同等と示される物も受ける。各被験体は、サイクル1および2の間、同じ制吐薬処方計画(薬物、用量および経路)を受けなければならない。
【0096】
結果
119mg/mおよび164mg/mの用量での、経口投与されたピコプラチンの血漿バイオアベイラビリティは、それぞれ、血漿白金のAUCとして測定して39±15%および28±16%(P=NS)であり、血漿限外ろ過液白金のAUCとして44%±4%および27%±10%(P=0.015)であった。これらの用量で表わされる曝露飽和プロフィール。ピコプラチンの経口およびIV投与後の、結合および非結合白金の両者のピーク濃度は、それぞれ3〜5時間および1時間で生じた(IV注入の終了と一致する)。循環血漿半減期は、静脈内注入後に確立されるものと類似し、血漿限外ろ過液(PUF)において55〜77時間の範囲である。両経路によるピコプラチン投薬の4週間後には、バックグラウンドレベルの循環白金だけが検出でき、投薬サイクル間の薬物蓄積が無いことを示唆した。同等の長期間の血漿白金末端半減期が観察され、平均値がIVおよび経口経路によるピコプラチン投与後それぞれ125±10時間および134±20時間(P=NS)で確立された。サイクル1およびサイクル2の投薬の薬物動態の間に差は観察されなかった。全ての用量に良好な耐容性が認められ、経口投与後に重篤な有害事象は見られなかった。経口投与後に骨髄機能抑制(myelosupproession)の所見はなかった。
(実施例2)
予測間欠投与スケジュール
経口服用後の白金曝露の測定に基づいて、間欠的経口服用を伴ういくつかの投薬シナリオが用いられうる。例えば、ピコプラチンが、MTDに接近および/またはMTDを達成する用量で、8週間毎日一回単剤として経口投与されうる。2週間薬物を控えた後に、腫瘍進行または有意な臨床的制限毒性の所見のない患者は、同じ用量のピコプラチンのさらに8週間のサイクルを繰り返すことが認められる。研究する患者集団は、上述の実施例1で研究するものと類似する。すなわち、治癒的療法がなく、単剤ピコプラチンによる治療が適切である、非血液性悪性病変の患者である。例としては、市販の化学療法剤での治療の候補でないかこれを受けないことを選択する、再発性の小細胞または非小細胞肺癌、頭頚部癌、膵臓癌、子宮頸癌、前立腺癌または卵巣癌の患者が含まれうる。経口ピコプラチンの一日用量は、最大耐量(MTD)を確立するために、連続コホートにおいて拡大される。
【0097】
組み合わせ療法において使われるときには、白金化学療法による併行療法が臨床的に適切と感じられる任意の悪性病変、例えば非小細胞肺癌、頭頸部癌、膵臓癌、子宮頸癌、肛門癌または直腸癌のためにカペシタビンを受ける予定の患者において、カペシタビン等の第二の非Pt系抗癌剤とともに、ピコプラチンが毎日一回経口投与されうる。使用される第二薬剤、例えばカペシタビンの用量は、カペシタビンの場合の、結腸直腸または乳腺癌等の関連の癌における単剤および低用量の組み合わせでの臨床試験の関連した適時のデータの審査の後に決定される。さらに、頻度(すなわち毎日7日間行った後7日間療法を止める、または毎日14日間行った後7日間療法を止める)も、研究が開始される時点での、関連した適時のデータの審査により決定される。組み合わせ化学療法は、腫瘍進行または容認できない毒性が生じるまで繰り返される。最初のピコプラチンの一日用量は、実施例1において決定されるMTDの50%であり、その後、第二薬剤、例えばカペシタビンの初期投与量およびスケジュールとの組み合わせにおいて、毎日与えられる経口ピコプラチンのMTDを確立するために、連続コホートにおいて拡大される。第二薬剤の初期投与量および研究スケジュールでの、観察される有害事象およびピコプラチンのMTDに応じて、後の用量コホートが、第二薬剤の研究初期投与量より高いか低い代替的用量での、および/または両薬剤のオン/オフ経口投与の代替的スケジュールでの、ピコプラチンのMTDを求めうる。
【0098】
ピコプラチンは、5〜7週間の治療コースで約4500〜6500cGyの全線量までの、例えば約180〜200cGyの5日/週の放射線療法と組み合わせて、5〜7週間毎日一回単剤として経口投与することもできる。これは、白金化学療法による併行療法が臨床的に適当と感じられる任意の悪性病変のために、放射線療法を受ける予定の患者において行われる。これには、例えばパフォーマンスステータスが良好だが局所再発性の症候性小細胞または非小細胞肺癌、頭頸部癌、膵臓癌、子宮頸癌、乳癌、結腸癌、前立腺または卵巣癌の患者が含まれる。ピコプラチンの初期一日用量は、実施例1で決定されるMTDの50%となり、その後、放射線療法の間に毎日与えられる経口ピコプラチンのMTDを確立するために、連続コホートにおいて拡大される。ピコプラチンは、本カプセルにより、またはコート錠またはピルにおいて、または液状製剤の摂取により、投与されうる。
【0099】
第三の間欠投薬シナリオは、連続3日間の毎日約350〜450mgまでの、ピコプラチン用量の毎日の投与と、その後の約7日間の回復期間からなる。この投与シナリオを用いて、例えば循環中ピコプラチンのレベルを飽和させることにより、最大レベルに接近し、またはこれを達成すること等により、ピコプラチンの最適な治療レベルに迅速に達し、これにより癌細胞を積極的に攻撃することができる。免疫抑制性副作用があるため、回復のための薬物非投与期間が、次の投与サイクルの前の、循環からのピコプラチンの実質的な除去、例えば約90〜100%の除去を可能にすると同時に、免疫系回復を助けうる。
【0100】
ピコプラチンへのより連続的な曝露に耐えられる患者のために、異なる間欠投薬シナリオが考慮される。そのような療法の例は、最長連続約4週(28日)までの、約1μg〜10mgの間の範囲のピコプラチンの毎日の経口投薬と、その後の、ピコプラチンによる免疫抑制効果からの免疫系の回復を助ける、1〜3週間(例えば約14日)のピコプラチン非投与回復期間とからなる。患者の病気のステータスに応じて、いくつかの投薬サイクルが使用されうる。この投薬シナリオは、連続的曝露の間の血液循環ピコプラチンの安定したレベル、および癌細胞への効果を維持することを目的とする。
【0101】
全ての刊行物、特許および特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明が前述の明細書において、その一定の好ましい実施形態に関連して記載され、多くの詳細が説明のために記載されているが、当業者には当然のことながら、本発明は追加の実施形態が可能であり、本明細書に記載される詳細の一部は、本発明の基本的原理から逸脱することなく、相当に変更されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピコプラチンのための単位剤形であり、前記ピコプラチンの経口投与のために構成され、実質的に水溶性のカプセルシェルを含み、前記カプセルシェルが、約10〜60重量%の微粒子状ピコプラチンと、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤とを含む、実質的に乾燥した粉末を含む製剤を封入する、単位剤形。
【請求項2】
前記微粒子状ピコプラチンが、平均粒径約10ミクロン未満である、請求項1に記載の単位剤形。
【請求項3】
前記微粒子状ピコプラチンの約90%が、約5ミクロン未満の粒径を有する、請求項2に記載の単位剤形。
【請求項4】
前記微粒子状ピコプラチンが、微粉化ピコプラチン、微結晶性ピコプラチン、凍結乾燥ピコプラチン、またはその任意の組み合わせである、請求項1、2または3に記載の単位剤形。
【請求項5】
前記微粒子状ピコプラチンが、前記製剤の前記粉末の実質的に全ての粒子中に分散される、請求項1または2に記載の単位剤形。
【請求項6】
前記製剤が、酸化剤、金属酸化物、またはハロゲン、=N(H)、―NH、もしくは―SH部分を含む化合物を含まない、請求項1または2に記載の単位剤形。
【請求項7】
前記炭水化物が、単糖、二糖、糖アルコール、セルロース、修飾セルロース、またはその混合物を含む、請求項1または2に記載の単位剤形。
【請求項8】
前記炭水化物が、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、微結晶性セルロース、またはその混合物を含む、請求項7に記載の単位剤形。
【請求項9】
前記カプセルシェルが、硬ゼラチン、ゼラチン/PEG、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項1または2に記載の単位剤形。
【請求項10】
前記カプセルシェルが、二部の間の継目をカバーするカプセルバンドをさらに含む、前記二部のシェルである、請求項9に記載の単位剤形。
【請求項11】
前記カプセルシェルが、実質的に光減衰性である、請求項1または2に記載の単位剤形。
【請求項12】
前記カプセルシェルが、不透明である、請求項11に記載の単位剤形。
【請求項13】
前記カプセルシェルが、有効な量の不透明化剤を含むか、これにより外側がコートされる、請求項12に記載の単位剤形。
【請求項14】
前記不透明化剤が、TiOである、請求項13に記載の単位剤形。
【請求項15】
前記潤滑剤が、脂肪酸のアルカリ土類金属塩を含む、請求項1または2に記載の単位剤形。
【請求項16】
前記脂肪酸のアルカリ土類金属塩が、ステアリン酸マグネシウムである、請求項15に記載の単位剤形。
【請求項17】
前記製剤が、約5〜10重量%の分散剤をさらに含む、請求項1または2に記載の単位剤形。
【請求項18】
前記分散剤が、クロスカルメロースナトリウムを含む、請求項17に記載の単位剤形。
【請求項19】
前記分散剤が、ポリビニルピロリドンを含む、請求項17に記載の単位剤形。
【請求項20】
前記修飾セルロースが、セルロースエーテルを含む、請求項7に記載の単位剤形。
【請求項21】
前記セルロースエーテルが、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはその組み合わせである、請求項20に記載の単位剤形。
【請求項22】
前記炭水化物が、前記製剤の約40〜80重量%を含む、請求項1または2に記載の単位剤形。
【請求項23】
前記修飾セルロースが、微結晶性セルロースである、請求項7に記載の単位剤形。
【請求項24】
前記ピコプラチン微粒子が、ジェットミリングにより微粉化されている、請求項4に記載の単位剤形。
【請求項25】
前記製剤を封入する、実質的に不透明のバンドされたカプセルシェルを含む、請求項9に記載の単位剤形であり、前記製剤が、約50〜200mgのピコプラチン微粒子と、ラクトースと、微結晶性セルロースと、ステアリン酸マグネシウムと、クロスカルメロースナトリウムまたはポビドンまたは両者を含む、請求項9に記載の単位剤形。
【請求項26】
ピコプラチンの経口投与のために構成された、前記ピコプラチンのカプセル化単位剤形を調製するためのプロセスであり、約10〜60重量%の微粒子状ピコプラチンと、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤とを含む実質的に乾燥した粉末を含む、製剤を調製するステップと;前記製剤を、実質的に水溶性のカプセルシェル内に封入するステップを含む、プロセス。
【請求項27】
前記微粒子状ピコプラチンが、平均粒径約10ミクロン未満である、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記微粒子状ピコプラチンの約90%が、約5ミクロン未満の粒径を有する、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記ピコプラチン微粒子が、微粉化ピコプラチン、微結晶性ピコプラチン、または凍結乾燥ピコプラチン、またはその任意の組み合わせである、請求項26に記載のプロセス。
【請求項30】
前記微粒子状ピコプラチンが、前記製剤の前記粉末の実質的に全ての粒子中に分散される、請求項26または27に記載のプロセス。
【請求項31】
前記炭水化物が、単糖、二糖、糖アルコール、セルロース、修飾セルロース、またはその混合物を含む、請求項26または27に記載のプロセス。
【請求項32】
前記炭水化物が、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、微結晶性セルロース、またはその混合物を含む、請求項26または27に記載のプロセス。
【請求項33】
前記潤滑剤が、脂肪酸のアルカリ土類金属塩を含む、請求項26または27に記載のプロセス。
【請求項34】
前記脂肪酸のアルカリ土類金属塩が、ステアリン酸マグネシウムである、請求項33に記載のプロセス。
【請求項35】
前記微粉化微粒子状ピコプラチンが、ジェットミリングにより作られる、請求項29に記載のプロセス。
【請求項36】
前記カプセルシェルが、二部の間の継目をカバーするカプセルバンドをさらに含む、前記二部の硬質シェルである、請求項26または27のいずれかに記載のプロセス。
【請求項37】
前記カプセルシェルが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項36に記載のプロセス。
【請求項38】
前記カプセルシェルが、硬ゼラチンカプセルである、請求項36に記載のプロセス。
【請求項39】
前記カプセルシェルが、光―減衰性である、請求項36に記載のプロセス。
【請求項40】
前記カプセルシェルが、有効な量の不透明化剤を含むか、これによりコートされる、請求項39に記載のプロセス。
【請求項41】
前記カプセルシェルが、有効な不透明化量のTiOを含むか、これによりコートされる、請求項40に記載のプロセス。
【請求項42】
前記製剤が、約5〜10重量%の分散剤をさらに含む、請求項26または27のいずれかに記載のプロセス。
【請求項43】
前記分散剤が、クロスカルメロースナトリウムを含む、請求項42に記載のプロセス。
【請求項44】
前記分散剤が、ポリビニルピロリドンを含む、請求項42に記載のプロセス。
【請求項45】
前記ピコプラチンが、実質的に無水である、請求項26または27に記載のプロセス。
【請求項46】
前記炭水化物が、セルロースエーテルを含む、請求項31に記載のプロセス。
【請求項47】
前記セルロースエーテルが、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはその混合物を含む、請求項46に記載のプロセス。
【請求項48】
前記炭水化物が、前記組成物の約40〜80重量%を含む、請求項26または27に記載のプロセス。
【請求項49】
前記修飾セルロースが、微結晶性セルロースを含む、請求項31に記載のプロセス。
【請求項50】
請求項26または27に記載のプロセスにより調製される、ピコプラチンのための単位剤形。
【請求項51】
約0.001〜400mgの微粒子状ピコプラチンを含む、請求項50に記載の単位剤形。
【請求項52】
癌に悩むヒトの癌を治療する方法であり、有益な効果を提供するために適切な投与あたり総用量、頻度、および期間で、少なくとも一つの請求項1の単位剤形を経口投与するステップを含む、方法。
【請求項53】
癌を治療する方法であり、(a)ヒトの循環中のピコプラチンの最適な治療レベルを達成するように、癌で苦しむ前記ヒトに対して、ピコプラチンを含む少なくとも一つの単位剤形を、連続的に毎日経口投与するステップと;(b)前記哺乳類が、その循環から前記ピコプラチンを実質的に除去するために有効な期間、前記投与を中断するステップとを含む、方法。
【請求項54】
前記最適な治療レベルが、約3〜5日で達成される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記最適な治療レベルが、循環中のピコプラチンの飽和レベルである、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
癌を治療する方法であり、(a)ヒトの循環中のピコプラチンの均一な亜最大レベルを達成するように、癌で苦しむ前記ヒトに対して、前記ピコプラチンを含む前記少なくとも一つの単位剤形を、連続的に毎日経口投与するステップと;(b)前記ヒトが、その循環から前記ピコプラチンを実質的に除去するために有効な期間、前記投与を中断するステップとを含む、方法。
【請求項57】
前記毎日の投与が、少なくとも一回、約3〜5週間行われる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記投与が、約5〜7週間行われる、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記投与が、最長約1〜2年間行われる、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
ステップ(b)において、前記期間が、約2〜3週以下である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記投与が、最大耐量の10%以下である、請求項56に記載の方法。
【請求項62】
前記単位剤形中の前記ピコプラチンの約10〜50%が、経口摂取後の前記ヒトに生物利用可能である、請求項53または56に記載の方法。
【請求項63】
ステップ(a)および(b)を複数回繰り返すステップをさらに含む、請求項53または56に記載の方法。
【請求項64】
前記ピコプラチンと順次または同時に、少なくとも一つの非白金系抗癌剤を前記ヒトに経口投与するステップをさらに含む、請求項53または56に記載の方法。
【請求項65】
癌に苦しむ哺乳類に治療コースを提供するために、別々にパッケージされた十分な数の請求項1に記載の単位剤形を含むパッケージを含む、キット。
【請求項66】
投与の用量および/または頻度を指示する教材を含む、請求項56に記載のキット。
【請求項67】
別々にパッケージされた、非白金系抗癌剤の複数の経口単位剤形をさらに含む、請求項66に記載のキット。

【公表番号】特表2010−518088(P2010−518088A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549126(P2009−549126)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/001746
【国際公開番号】WO2008/097658
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(398003681)ポニアード ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】