説明

カプセル化リン脂質−安定化被酸化性材料

被酸化性材料の酸化を低下させる組成物および方法が開示される。リン脂質−安定化被酸化性材料を含んでなる組成物が開示される。組成物は、被酸化性材料、リン脂質、および任意のタンパク質を含んでなる。リン脂質は、水を用いずに被酸化性材料の酸化を低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によって全体を本明細書に援用する2005年12月16日に出願された米国仮特許出願第60/751,020号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、被酸化性(oxidizable)材料の酸化を実質的に無水環境において低下させる、カプセル化組成物および方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
ω3多価不飽和脂肪酸(PUFA)に富んだ食物の消費は、血漿トリグリセリド、血圧、血小板凝集、および炎症を減少させることによって、心臓血管死の減少と関連付けられている。海産食品が最良のω3酸源であるが、多くの人は海産食品の味を好まず、海産食品を容易に入手できず、または海産食品を買う余裕がない。1つの解決策は、食餌をタラ肝油または魚油カプセルで栄養補給することであるが、この解決策は服薬遵守が低い。別の解決策は、乳製品、穀物製品、ベーカリー製品、および栄養バーなどの食物に、ω3に富んだ魚油を直接添加することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
後者のアプローチの課題は、脂質酸化の副産物であるいかなる不快な魚風味または魚臭気も与えることなく、ω3脂肪酸の利点を提供することである。したがってPUFAが酸化から保護されるように、低水分または高水分食物に添加できるPUFAの安定化調製品が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、コア材料と、コア材料をカプセル化する外殻壁とを含んでなるマイクロカプセルを提供する。コア材料は被酸化性材料およびリン脂質を含んでなり、コア材料中のリン脂質濃度は被酸化性材料の約2%〜約50重量%である。
【0006】
本発明の別の態様は、食用材料およびマイクロカプセルを含んでなる食品を包含する。マイクロカプセルは、コア材料と、コア材料を封入する外殻壁とを含んでなる。コア材料は、被酸化性材料およびリン脂質を含んでなり、コア材料中のリン脂質濃度は、被酸化性材料の約2%〜約50重量%である。
【0007】
本発明のさらに別の態様は、被酸化性材料の酸化を低下させる方法を提供する。本方法は、被酸化性材料を実質的に無水環境でリン脂質と接触させるステップを含んでなり、リン脂質の百分率は被酸化性材料の約2%〜約50重量%である。
【0008】
本発明のその他の態様および特徴については、下でより詳細に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、被酸化性材料の酸化を低下させる組成物および方法を提供する。特に本発明は、外殻壁によって取り囲まれる、リン脂質−安定化被酸化性材料のコアを含んでなるマイクロカプセルを提供する。実施例で実証されるように、ω3脂肪酸などの被酸化性材料と、レシチン(被酸化性材料の約2%〜約50重量%)などのリン脂質との接触は、実質的に無水被酸化性材料の酸化を劇的に低下させることが発見された。この主要な発見は、脂肪酸またはその他の被酸化性材料の酸化からの不快な味または臭気を食物に与えることなく、食物にω3脂肪酸またはその他の被酸化性材料を含める手段を提供する。
【0010】
(I)組成物
本発明の一態様は、被酸化性材料およびリン脂質を含んでなる組成物であり、組成物中のリン脂質濃度は被酸化性材料の約2%〜約50重量%である。例示的な実施態様では、組成物中のリン脂質濃度は被酸化性材料の約25%〜約30重量%である。リン脂質は被酸化性材料の酸化を低下させる。組成物を作製するために、リン脂質を溶剤および被酸化性材料と接触させて混合物を形成し、次に混合物から溶剤を除去してリン脂質−安定化被酸化性材料を形成する。適切な被酸化性材料およびリン脂質について後述する。
【0011】
(a)被酸化性材料
本発明で効用を有する被酸化性材料としては、酸化し易い少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する炭素主鎖がある分子を含んでなる材料が挙げられる。二重結合に隣接する炭素からの不安定水素原子の除去はフリーラジカルを作り出し、それは酸素による攻撃を被りやすく、フリーラジカル過酸化物を形成し、それはさらなる酸化のための触媒としての役割を果たす可能性がある。被酸化性材料の酸化は、実施例で詳述するように酸素安定化法(OSI)をまたは過酸化物価(PV)法を使用して判定してもよい。
【0012】
多様な被酸化性材料が、本発明で使用するのに適する。一般に被酸化性材料は、少なくとも1つの被酸化性脂質を含んでなる。被酸化性脂質としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸メチルエステル(FAME)、グリセリド、糖脂質、リン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロール、ステロイドホルモン、ステロール、およびポリイソプレノイドが挙げられる。
【0013】
一実施態様では、被酸化性材料は、それがタンパク質、脂質、および炭水化物の粗製混合物であってもよいように、生物学的起源に由来してもよい。別の実施態様では、被酸化性材料は、タンパク質および/または炭水化物を本質的に欠く脂質混合物であってもよい。さらに別の実施態様では、被酸化性材料は精製脂質であってもよい。
【0014】
さらに別の実施態様では、被酸化性材料は、実質的に不飽和の脂肪または実質的に不飽和の油の調製品であってもよい。一般に脂肪および油は、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、および遊離脂肪酸を含んでなる。脂肪および油のグリセリドは、一般に長さが少なくとも炭素4個の脂肪酸、より好ましくは長さが炭素16〜24個の範囲の不飽和脂肪酸を含んでなる。不飽和脂肪酸は、一不飽和または多価不飽和であってもよい。
【0015】
別の実施態様では、被酸化性材料は、一般にシス配置である少なくとも2個の炭素−炭素二重結合を有する多価不飽和脂肪酸(PUFA)であってもよい。PUFAは、少なくとも18個の炭素原子を有する長鎖脂肪酸であってもよい。PUFAは、炭素鎖のメチル末端(すなわちカルボキシル酸基の反対側)から3番目の炭素−炭素結合中に第1の二重結合があるω3脂肪酸であってもよい。ω3脂肪酸の例としては、α−リノレン酸(18:3、ALA)、ステアリドン酸(18:4)、エイコサテトラエン酸(20:4)、エイコサペンタエン酸(20:5;EPA)、ドコサテトラエン酸(22:4)、n−3ドコサペンタエン酸(22:5;n−3DPA)、およびドコサヘキサエン酸(22:6;DHA)が挙げられる。PUFAはまた、メチル末端から6番目の炭素−炭素結合中に第1の二重結合があるω6脂肪酸であってもよい。ω6脂肪酸の例としては、リノール酸(18:2)、γ−リノレン酸(18:3)、エイコサジエン酸(20:2)、ジホモ−γ−リノレン酸(20:3)、アラキドン酸(20:4)、ドコサジエン酸(22:2)、アドレン酸(22:4)、およびn−6ドコサペンタエン酸(22:5)が挙げられる。脂肪酸はまた、オレイン酸(18:1)、エイコセン酸(20:1)、ミード酸(20:3)、エルカ酸(22:1)、およびネルボン酸(24:1)などのω9脂肪酸であってもよい。
【0016】
別の実施態様では、被酸化性材料は海産食品由来油であってもよい。海産食品は、油が魚油または海産油であってもよいように、脊椎骨魚または海産生物であってもよい。長鎖(20C、22C)ω3およびω6脂肪酸は、海産食品中に見られる。海産食品中のω3とω6脂肪酸の比率は、約8:1〜20:1の範囲である。それからω3脂肪酸に富んだ油が由来してもよい海産食品としては、アワビホタテガイ、ビンナガマグロ、カタクチイワシ、ナマズ、ハマグリ、タラ、ジェムフィッシュ、ニシン、レークトラウト、サバ、メンハーデン、オレンジラフィー、サケ、イワシ、海ボラ、海スズキ、サメ、エビ、イカ、マス、およびマグロが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0017】
さらに別の実施態様では、被酸化性材料は、植物由来油であってもよい。植物および野菜油はω6脂肪酸に富む。亜麻仁油などのいくつかの植物由来油は、特にω3脂肪酸に富む。植物または野菜油は一般に植物種子から抽出されるが、また植物のその他の部分から抽出されてもよい。一般に調理または香味付けのために使用される植物または野菜油としては、アサイ油、アーモンド油、アマランス油、杏仁油、アルガン油、アボカド種子油、ババス油、ベン油、カシス種子油、ボルネオタローナッツ油、ルリヂサ種子油、バッファローゴード油、カノーラ油、イナゴマメさや油、カシュー油、ヒマシ油、ココナッツオイル、コリアンダー種子油、トウモロコシ油、綿実油、月見草油、アマナズナ油、アマニ油(flax seed oil)、ブドウ種子油、ヘーゼルナッツ油、麻実油、カポック種子油、ラッレマンチア油、アマニ油(linseed oil)、マカダミア油、メドウフォーム種子油、芥子油、オクラ種子油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、落花生油、ペカン油、ペキ油、シソ種子油、松果油、ピスタチオ油、ケシの実油、スモモ核種油、カボチャ種子油、キノア油、キバナタカサブロウ油、米糠油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油、茶油、アザミ油、クルミ油または小麦胚芽油が挙げられるが、これに限定されるものではない。植物由来油はまた、水素添加または部分的水素添加されてもよい。
【0018】
さらに別の実施態様では、被酸化性材料は藻類由来油であってもよい。市販の藻類由来油としては、クリプテコジニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii)およびシゾキトリウム(Schizochytrium)種からのものが挙げられる。油が抽出されるその他の適切な藻類種としては、アファニゾメノン・フロスアクアエ(Aphanizomenon flos−aquae)、バシリアロフィ(Bacilliarophy)種、ボトリオコックス・ブラウニイ(Botryococcus braunii)、緑藻類(Chlorophyceae)種、ドナリエラ・テルチオレクタ(Dunaliella tertiolecta)、ミドリムシ(Euglena gracilis)、イソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)、ナノクロロプシス・サリナ(Nannochloropsis salina)、ナンノクロリス(Nannochloris)種、ネオクロリス・オレオアブンダンス(Neochloris oleoabundans)、フェオダクチラム・トリコルナタム(Phaeodactylum tricornutum)、プレウロクリシス・カルテラ(Pleurochrysis carterae)、プリムネシウム・パルヴム(Prymnesium parvum)、セネデスムス・ジモルフス(Scenedesmus dimorphus)、スピルリナ(Spirulina)種、およびテトラセルミス・チュイ(Tetraselmis chui)が挙げられる。
【0019】
代案の実施態様では、被酸化性材料は、香辛料または芳香油であってもよい。適切な香辛料または芳香油の例としては、アンゼリカ油、アニス油、バジル油、ベルガモット(bergamont)油、オレンジ油、黒コショウ油、ショウブ油、シトロネラ油、キンセンカ油、ショウノウ油、カルダモン油、セロリ油、カモミール油、シナモン油、クローブ油、コリアンダー油、レモン草油、イトスギ油、クミン種油、ダバナ油、イノンド種油、ユーカリノキ油、茴香油、ニンニク油、ゼラニウム油、ショウガ油、ブドウ種子油、ヤナギハッカ油、ジャスミン油、杜松実油、ラベンダー油、レモン油、ライム油、ミルラ油、ネロリ油、インドセンダン油、ナツメグ油、パルマローザ(palm Rosa)油、パセリ油、ハッカ油、バラ油、ローズマリー油、ローズウッド油、セージ油、ゴマ油、スペアミント油、タラゴン油、ティーツリー油、タイム油、タンジェリン油、ターメリック根油、ベチベル油、ニガヨモギ油、およびヤラヤラ油が挙げられる。
【0020】
さらに別の実施態様では、被酸化性材料は、アラキドン酸(arachadonic acid)またはプロスタグランジンなどの酸化的に不安定な医薬品を含んでなる医薬製剤であってもよい。医薬製剤はまた、キャリアとして不安定な油を含んでなってもよい。適切な製薬等級キャリア油の例としては、タラ肝油、トウモロコシ油、綿実油、ユーカリノキ油、ラベンダー油、オリーブ油、落花生油、ハッカ油、ベニバナ油、ゴマ油、およびダイズ油が挙げられる。被酸化性材料はまた、ビタミンA、D、K、またはEなどの脂溶性ビタミンを含んでなる製剤であってもよい。
【0021】
代案の実施態様では、被酸化性材料は、元の魚材料からほとんどの水および油を除去した後に残った固体材料である、魚素材またはフィッシュミール調製品であってもよい。フィッシュミール調製品のために使用してもよい魚または海産生物の非限定的例としては、カタクチイワシ、アオギス、カラフトシシャモ、カニ、ニシン、サバ、メンハーデン、ポラック、サケ、エビ、イカ、マグロ、およびホワイトフィッシュが挙げられる。
【0022】
さらに別の実施態様では、被酸化性材料は動物由来脂肪であってもよい。適切な動物由来脂肪の非限定的例としては、家禽脂肪、牛脂、羊脂、バター、豚脂、クジラ脂身、および黄色油脂(植物と動物脂肪の混合物であってもよい)が挙げられる。
【0023】
好ましい実施態様では、被酸化性材料はω3およびω6脂肪酸を含んでなる海産食品油である。別の好ましい実施態様では、被酸化性材料はω3魚油である。さらに別の好ましい実施態様では、被酸化性材料はω3脂肪酸である。
【0024】
(b)リン脂質
組成物はリン脂質をさらに含んでなり、被酸化性材料を安定化させ、したがってその酸化を低下させる。リン脂質は、主鎖、アルコールに付着する負に帯電したリン酸基、および少なくとも1つの脂肪酸を含んでなる。グリセロール主鎖を有するリン脂質は2つの脂肪酸を含んでなり、グリセロリン脂質と称される。グリセロリン脂質の例としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、およびジホスファチジルグリセロール(すなわちカルジオリピン)が挙げられる。スフィンゴシン主鎖を有するリン脂質は、スフィンゴミエリンと称される。エステル結合を通じてリン脂質主鎖に付着する脂肪酸は、長さが炭素12〜22個である傾向があり、いくつかは不飽和であってもよい。例えばリン脂質は、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2、ω6)、およびα−リノレン酸(18:3、ω3)を含有してもよい。リン脂質の2つの脂肪酸は、同一であってもよく、またはそれらは異なってもよく、例としてジパルミトイルホスファチジルコリン、1−ステアリオイル−2−ミリストイルホスファチジルコリン、または1−パルミトイル−2−リノレオイルエタノールアミンが挙げられる。
【0025】
一実施態様では、リン脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリンなどの単一精製リン脂質であってもよい。別の実施態様では、リン脂質は、ホスファチジルコリン混合物などの精製リン脂質混合物であってもよい。さらに別の実施態様では、リン脂質は、ホスファチジルコリンとホスファチジルイノシトールとの混合物、またはホスファチジルコリンとホスファチジルエタノールアミンとの混合物などの異なるタイプの精製リン脂質の混合物であってもよい。
【0026】
代案の実施態様では、リン脂質は、レシチンなどのリン脂質の複合混合物であってもよい。レシチンはほぼ全ての生物に見られる。レシチンの商業的供給源としては、ダイズ、米、ヒマワリ種子、卵黄、乳脂肪、ウシ脳、ウシ心臓、および藻類が挙げられる。その粗製形態では、レシチンはリン脂質、糖脂質、トリグリセリド、ステロール、および少量の脂肪酸、炭水化物、およびスフィンゴ脂質の複合混合物である。ダイズレシチンは、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、およびホスファチジン酸に富む。レシチンは、それが本質的に純粋なリン脂質混合物になるように、脱油して処理してもよい。レシチンを変性させて、リン脂質がより水溶性にしてもよい。変性としては、ヒドロキシル化、アセチル化、および脂肪酸の1つがホスホリパーゼ酵素によって除去され水酸基で置換される酵素処置が挙げられる。
【0027】
代案の実施態様では、リン脂質は、ミズーリ州セントルイスのSolae Companyによって商品名Solecの下に製造されるダイズレシチンであってもよい。ダイズレシチンは、約97%のリン脂質を含有する乾燥脱油酵素非変性調製品Solec(登録商標)Fであってもよい。ダイズレシチンは、約97%のリン脂質を含有する乾燥脱油酵素変性調製品Solec(登録商標)8160であってもよい。ダイズレシチンは、約97%のリン脂質を含有する乾燥脱油ヒドロキシル化調製品Solec(登録商標)8120であってもよい。ダイズレシチンは、約97%のリン脂質を含有する乾燥脱油耐熱性調製品Solec(登録商標)8140であってもよい。ダイズレシチンは、約97%のリン脂質を含有する顆粒形態の乾燥脱油調製品Solec(登録商標)Rであってもよい。
【0028】
好ましい実施態様では、リン脂質はホスファチジルコリンである。別の好ましい実施態様では、リン脂質はホスファチジルエタノールアミンである。特に好ましい実施態様では、リン脂質はレシチンである。例示的な実施態様では、リン脂質はダイズレシチンである。
【0029】
リン脂質と被酸化性材料との比率は、被酸化性材料およびリン脂質調製品の性質次第で変動でき、また変動するであろう。特にリン脂質の濃度は、被酸化性材料の酸化を防止するのに十分な量である。リン脂質の濃度は、一般に被酸化性材料の約1%〜約65重量%の範囲である。一実施態様では、リン脂質の濃度は被酸化性材料の約2%〜約50重量%の範囲であってもよい。別の実施態様では、リン脂質の濃度は被酸化性材料の約2%〜約10重量%の範囲であってもよい。代案の実施態様では、リン脂質の濃度は被酸化性材料の約10%〜約20重量%の範囲であってもよい。さらに別の実施態様では、リン脂質の濃度は被酸化性材料の約20%〜約30重量%の範囲であってもよい。さらに別の実施態様では、リン脂質の濃度は被酸化性材料の約30%〜約40重量%の範囲であってもよい。別の代案の実施態様では、リン脂質の濃度は被酸化性材料の約40%〜約50重量%の範囲であってもよい。好ましい実施態様では、リン脂質の濃度は被酸化性材料の約15%〜約35重量%の範囲であってもよい。特に例示的な実施態様では、リン脂質の濃度は被酸化性材料の約25%〜約30重量%の範囲であってもよい。
【0030】
組成物を構成する被酸化性材料のタイプおよびリン脂質のタイプは、組成物の意図される用途または使用次第で変動でき、また変動するであろう。表Aは、本発明の組成物中で組み合わせてもよい、被酸化性材料およびリン脂質の非限定的例を提示する。
【0031】
表A.本発明の組成物

【0032】
(表A続き)

【0033】
例示的な実施態様では、リン脂質はレシチンであり、被酸化性材料はω3およびω6脂肪酸を含んでなる海産食品油である。代案の例示的な実施態様では、リン脂質はレシチンであり、被酸化性材料はω3脂肪酸である。これらの各実施態様で、組成物中のレシチンの濃度は被酸化性材料の約2%〜約50重量%、より典型的には被酸化性材料の約15%〜約35重量%である。例示的な実施態様では、組成物中のレシチンの濃度は被酸化性材料の約25%〜約30重量%である。
【0034】
(c)追加的構成要素
組成物は、少なくとも1つのタンパク質をさらに含んでなってもよい。タンパク質は、植物タンパク質、動物タンパク質、真菌タンパク質、微生物タンパク質、またはその混合物であってもよい。本発明で使用するのに適した動物タンパク質の非限定的例としては、カゼイン、乳清タンパク質、ゼラチン、またはその混合物が挙げられる。植物タンパク質の非限定的例としては、ダイズタンパク質、トウモロコシタンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質、カノーラタンパク質、エンドウマメタンパク質、またはその混合物が挙げられる。トウモロコシタンパク質は、トウモロコシグルテンミール、またはより好ましくはゼインであってもよい。小麦タンパク質は小麦グルテンであってもよい。好ましい植物タンパク質はダイズタンパク質である。
【0035】
ダイズタンパク質は、ダイズ粉、ダイズタンパク質濃縮物、またはダイズタンパク質単離物の調製品によって提供されてもよい。これらのダイズタンパク質調製品は、典型的にダイズ出発原料から形成され、それはダイズまたはダイズ誘導体であってもよい。好ましくはダイズ出発原料は、ダイズケーク、ダイズチップ、ダイズミール、ダイズフレーク、またはこれらの材料の混合物であってもよい。ダイズケーク、チップ、ミール、またはフレークは、当該技術分野の従来の手順に従ってダイズから形成されてもよい。すなわちダイズケークおよびダイズチップは、一般に圧力または溶剤によってダイズから油の一部を抽出して形成され、ダイズフレークは一般にダイズを粗砕、加熱、および圧扁し、溶剤抽出によってダイズの含油量を低下させて形成され、ダイズミールは一般にダイズケーク、チップ、またはフレークを粉砕して形成される。
【0036】
タンパク質は、当該技術分野で既知の手順を使用して改変して、タンパク質の効用または特徴を改善してもよい。改変としては、タンパク質の変性または加水分解が挙げられるが、これに限定されるものではない。変性または加水分解は化学的に仲介されてもよく、またはそれは酵素的であってもよい。
【0037】
組成物は、リン脂質またはレシチンでない少なくとも1つの追加的抗酸化剤をさらに含んでなってもよい。追加的抗酸化剤は、被酸化性材料をさらに安定化させてもよい。抗酸化剤は天然または合成であってもよい。適切な抗酸化剤としては、アスコルビン酸およびその塩、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、アノキソマー、N−アセチルシステイン、ベンジルイソチオシアネート、o−、m−またはp−アミノ安息香酸(oはアントラニル酸であり、pはPABAである)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、コーヒー酸、カンタキサンチン、α−カロテン、β−カロテン、β−カラオテン、β−アポ−カロテン酸、カルノソール、カルバクロール、没食子酸セチル、クロロゲン酸、クエン酸およびその塩、クローブ抽出物、コーヒー豆抽出物、p−クマル酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジステアリル、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、ドデシル没食子酸、エデト酸、エラグ酸、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、エスクレチン、エスクリン、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、没食子酸エチル、エチルマルトール、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ユーカリノキ抽出物、オイゲノール、フェルラ酸、フラボノイド(例えばカテキン、エピカテキン、没食子酸エピカテキン、エピガロカテキン(EGC)、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)、ポリフェノールエピガロカテキン−3−没食子酸)、フラボン(例えばアピゲニン、クリシン、ルテオリン)、フラボノール(例えばダチセチン、ミリセチン、ダエンフェロ)、フラバノン、フラキセチン、フマル酸、没食子酸、ゲンチアナ抽出物、グルコン酸、グリシン、グアヤク脂、ヘスペレチン、α−ヒドロキシベンジルホスフィン酸、ヒドロキシケイ皮酸(hydroxycinammic acid)、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキノン、N−ヒドロキシコハク酸、ヒドロキシトリロソール、ヒドロキシ尿素、乳酸およびその塩、レシチン、クエン酸レシチン;R−α−リポ酸、ルテイン、リコペン、リンゴ酸、マルトール、5−メトキシトリプタミン、没食子酸メチル、クエン酸モノグリセリド;クエン酸モノイソプロピル;モリン、β−ナフトフラボン、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、オクチル没食子酸、シュウ酸、パルミチルクエン酸、フェノチアジン、ホスファチジルコリン、リン酸、ホスフェート、フィチン酸、フィチルユビクロメル、ピメント抽出物、没食子酸プロピル、ポリホスフェート、ケルセチン、トランス−レスベラトロール、米糠抽出物、ローズマリー抽出物、ロスマリン酸、セージ抽出物、セサモール、シリマリン、シナピン酸、コハク酸、クエン酸ステアリル、シリング酸、酒石酸、チモール、トコフェロール(すなわちα−、β−、γ−およびδ−トコフェロール)、トコトリエノール(すなわちα−、β−、γ−およびδ−トコトリエノール)、チロソール、バニリン酸(vanilic acid)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール(すなわちIonox 100)、2,4−(トリス−3’,5’−ビ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−メシチレン(すなわちIonox 330)、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン、ユビキノン、第三級ブチルヒドロキノン(TBHQ)、チオジプロピオン酸、トリヒドロキシブチロフェノン、トリプタミン、チラミン、尿酸、ビタミンKおよび誘導体、ビタミンQ10、小麦胚芽油、ゼアキサンチン、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。好ましい抗酸化剤としては、トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、およびローズマリー抽出物が挙げられる。追加的抗酸化剤または抗酸化剤組み合わせの濃度は、約0.001%〜約5重量%、好ましくは約0.01%〜約1重量%の範囲であってもよい。
【0038】
(d)組成物の形成
本発明の組成物、すなわちリン脂質−安定化被酸化性材料は、一般に最初にリン脂質を溶剤と接触させて形成される。溶剤は極性または非極性であってもよい。極性溶剤の非限定的例としては、水、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、またはそれらの組み合わせが挙げられる。非極性溶剤の非限定的例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、または(ペンタン、ヘキサン、およびヘプタン混合物である)石油エーテルが挙げられる。リン脂質および溶剤の混合物は加熱し、撹拌し、および/または均質化により混合してもよい。次に被酸化性材料をリン脂質と溶剤との混合物に接触させ、再度混合物を加熱し、撹拌し、および/または均質化により混合してもよい。いくつかの実施態様では、少なくとも1つのタンパク質または少なくとも1つの追加的抗酸化剤を混合物に添加してもよい。
【0039】
極性溶剤を含んでなる実施態様では、水性溶剤中にリン脂質および被酸化性材料の小滴を含んでなるエマルジョンを形成してもよい。エマルジョン中の小滴は、第(II)(d)節で記載される方法を使用してカプセル化してもよい。あるいは、噴霧乾燥、凍結乾燥法、または真空蒸発などの技術分野でよく知られている技術によって、エマルジョンから水相を除去してもよい。得られたリン脂質−安定化被酸化性材料は、それが実質的に無水のままであれば安定している。リン脂質−安定化被酸化性材料はまた、第(II)(d)節で記載される方法によってカプセル化してもよい。
【0040】
非極性溶剤を含んでなる実施態様では、均質な混合物が一般に形成される。非極性溶剤を混合物から除去して、リン脂質−安定化被酸化性材料を形成してもよい。あるいは、第(II)(d)節で記載される方法を使用して、混合物からリン脂質−安定化被酸化性材料を含んでなるマイクロカプセルを形成してもよい。溶剤はカプセル封入工程の前または最中に除去してもよい。
【0041】
(II)マイクロカプセル
本発明の組成物のために実質的に無水環境を提供するために、本発明の別の態様は、コア材料と、コア材料をカプセル化する外殻壁とを含んでなるマイクロカプセルを提供する。コア材料はリン脂質−安定化被酸化性材料を含んでなり、リン脂質の濃度は被酸化性材料の約2%〜約50重量%の範囲である。外殻壁は、実質的に無水環境になるようにコア材料を保護する。
【0042】
(a)コア材料
マイクロカプセルのコア材料は、第(I)(a)節で記載されるような被酸化性材料と、第(I)(b)節で記載されるようなリン脂質とを含んでなり、それは組み合わさって第(I)(d)節で記載されるようなリン脂質−安定化被酸化性材料を形成した。コア材料は、第(I)(c)節で記載されるように、リン脂質またはレシチンでない少なくとも1つのタンパク質または少なくとも1つの追加的抗酸化剤をさらに含んでなってもよい。
【0043】
(b)外殻壁
当業者には理解されるように、外殻壁を含んでなる材料は、コア材料、および意図されるマイクロカプセルの使用をはじめとする多様な要素次第で変動でき、また変動するであろう。一般的に言えば、マイクロカプセルが食物用途において使用される場合、好ましくは外殻壁は食品等級材料である。外殻壁材料は、生体高分子、半合成高分子、またはその混合物であってもよい。マイクロカプセルは1つの外殻壁層または多数の外殻壁層を含んでなってもよく、層は同一材料または異なる材料であってもよい。
【0044】
一実施態様では、外殻壁材料は、植物、真菌、または微生物から抽出される多糖類、または糖類と糖タンパク質との混合物を含んでなってもよい。非限定的例としては、コーンスターチ、小麦デンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、セルロース、ヘミセルロース、デキストラン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、イヌリン、ペクチン、マンナン、アラビアゴム、ローカストビーンガム、メスキートガム、グアーガム、カラヤガム、ガティガム、トラガカントガム、布海苔、カラゲナン、寒天、アルギネート、キトサン、またはジェランガムが挙げられる。
【0045】
別の実施態様では、外殻壁材料はタンパク質を含んでなってもよい。適切なタンパク質としては、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、乳清タンパク質、ダイズタンパク質、米タンパク質、およびトウモロコシタンパク質が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0046】
代案の実施態様では、外殻壁材料は、脂肪または油、および特に高温融解脂肪または油を含んでなってもよい。脂肪または油は、水素添加されまたは部分的に水素添加されてもよく、好ましくは植物に由来する。脂肪または油は、グリセリド、遊離脂肪酸、脂肪酸エステル、またはその混合物を含んでなってもよい。
【0047】
さらに別の実施態様では、外殻壁材料は食用ワックスを含んでなってもよい。食用ワックスは、動物、昆虫、または植物に由来してもよい。非限定的例としては、蜜ろう、ラノリン、シロヤマモモ蝋、カルナウバ蝋、および米糠蝋が挙げられる。外殻壁材料はまた、生体高分子の混合物を含んでなってもよい。一例として外殻壁材料は、多糖類と脂肪との混合物を含んでなってもよい。
【0048】
さらに別の実施態様では、外殻壁材料が半合成高分子を含んでなってもよい。半合成高分子としては、半合成セルロースおよび半合成デンプンが挙げられるが、これに限定されるものではない。半合成セルロースとしては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スルホン化セルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、セルロースエチルフタレート、およびビスコースが挙げられる。適切な半合成デンプンとしては、水溶性デンプン、カルボキシメチル化デンプン、ジアルデヒドデンプン、疎水性加工デンプン、酸化デンプン、エーテル化デンプン、およびエステル化デンプンが挙げられる。
【0049】
いかなる特定理論にも拘束されることはないが、外殻壁は、リン脂質−安定化被酸化性材料のコアを保存して保護するようにコア材料をカプセル化することがある。外殻壁は、リン脂質−安定化被酸化性材料粒子の形状および完全性を保存する。水分を有する食品中でマイクロカプセルを使用する場合、外殻壁は水分に対する実質的バリアの役割を果たし、それによってリン脂質−安定化被酸化性材料のコアを保護して安定化する。換言すれば、外殻壁は一般に実質的に水不透過性である。したがって外殻壁は好ましくは構造的に無傷であり、すなわち外殻は好ましくはコア内への水の容易な侵入を許すように、機械的に傷つけられずまたは化学的に浸食されない。好ましくは、外殻は食品中の微粒子が摂取されるまで実質的に水不透過性である。
【0050】
当業者には理解されるように、外殻壁は一般に、保存中にコア材料を保護するように構築されるが、摂取時には外殻壁は傷ついてコア材料を放出する。したがって外殻壁および外殻壁厚さを構成する材料は、マイクロカプセルが利用される条件、すなわちマイクロカプセルが低水分含量食物に添加されるか、または高水分含量食物に添加されるかどうかによって変動でき、また変動するであろう。
【0051】
(c)マイクロカプセルの物理特性
マイクロカプセルのサイズおよび形状は、本発明の範囲を逸脱することなく変動でき、また変動するであろう。一般にそれらのサイズは、測定されるマイクロカプセルと同一容積を占める球体直径に関して測定してもよい。マイクロカプセルの特徴的な直径は、例えば顕微鏡写真の検査によって直接判定してもよい。マイクロカプセルのサイズは、粒子を形成するのに使用される条件、およびカプセル封入のタイプ次第で変動でき、また変動するであろう。典型的に本発明のマイクロカプセルは、10ナノメートル〜約500μmの直径を有してもよい。
【0052】
マイクロカプセルサンプルの粒度分布は、レーザー光散乱技術によって粒子分析器を使用して測定してもよい。一般に粒度分析器は、粒子があたかも完全な球体であるとして分析し、サンプルについて容積測定ベースで容積測定直径分布を報告するようプログラムされる。適切な粒子分析器の例は、イギリス国ウースターシャーのMalvern InstrumentsからのMalvern Zeta Sizerである。
【0053】
マイクロカプセル外殻壁の厚さは、場合によっては重要な要素であることがある。薄すぎる外殻壁は、機械力に耐えて原形を保つのに不十分な完全性を有することがある。機械的完全性を欠く外殻壁は欠陥および分解を起こしやすいことがあり、それによってコア材料への水の到達を可能にする。厚すぎる外殻壁は不経済であり、消化管内でのコア材料の放出を遅らせることがある。
【0054】
本発明のマイクロカプセル外殻壁の厚さは、外殻重量とコア材料重量との比率に相当する百分率として表わしてもよい。したがって外殻とコアとの重量比は、約65%未満(例えば約1%または5%〜約65%)であってもよい。あるいは、重量比は、約35%未満(例えば約1%〜35%)であってもよい。さらに別の実施態様では、重量比は約15%未満(例えば約1%〜15%)である。その結果、一般に壁とコアとの重量比が約5%〜約15%のマイクロカプセルでは、対応する外殻の厚さはマイクロカプセル直径の約1.5%および約5%である。
【0055】
一例として、約0.1μm〜約60μmの直径を有するマイクロカプセルに対応する外殻壁厚さは、典型的に約0.001μm〜4μmであってもよい。同様に、約1μm〜30μmのマイクロカプセル直径では、対応する外殻壁厚さが約0.01μm〜2μmであってもよい。約1μm〜6μmのマイクロカプセル直径では、対応する外殻壁厚さは典型的に約0.01μm〜0.4μmであってもよい。
【0056】
(d)マイクロカプセルの封入法
本発明は、一つにはその中にコア材料を包含するマイクロカプセルに関する。一般的に言えば、当該技術分野で知られている方法によって、コア材料を外殻壁によってカプセル化し、本発明のマイクロカプセルを形成してもよい。当業者には理解されるように、カプセル封入法は、コア材料および外殻壁を形成するのに使用される化合物、およびマイクロカプセルそれ自体の所望の物理的特性次第で変動でき、また変動するであろう。さらに多層マイクロカプセルを作り出すように2つ以上のカプセル封入法を用いてもよく、または多層マイクロカプセルを作り出すように同一カプセル封入法を逐次用いてもよい。
【0057】
マイクロカプセル封入法としては、噴霧乾燥、回転盤カプセル封入(回転懸濁分離カプセル封入としても知られている)、超臨界流体カプセル封入、気中懸濁マイクロカプセル封入、流動床カプセル封入、噴霧冷却/チリング(マトリックスカプセル封入を含む)、押出しカプセル封入、遠心押出し、コアセルベーション、アルギネートビーズ、リポソームカプセル封入、包含カプセル封入、コロイドソームカプセル封入、ゾル−ゲルマイクロカプセル封入、および当該技術分野で知られているその他のマイクロカプセル封入法が挙げられる。
【0058】
噴霧乾燥カプセル封入法は、当該技術分野でよく知られている。例えばS.Gouin(2004年)Trends in Food Science and Technology 15:330〜347頁、およびLangrishおよびFletcher(2001年)Chemical Engineering Process 40:345〜354頁を参照されたい。噴霧乾燥カプセル封入は、水性2相システム(Millqvistら、(2000年)J.Colloid and Interface Science225:54〜61頁)、および多層マイクロカプセル(EdrisおよびBenrgnstahl(2001年)Nahrung/Food 45:133〜37頁)を含んでもよい。
【0059】
回転盤法を使用するカプセル封入法は、当該技術分野で知られている(米国特許出願公開第20060078598号明細書を参照されたい)。回転盤法は、典型的に成分およびコーティング組成物を含むエマルジョンまたは懸濁液を使用する。エマルジョンまたは懸濁液を円盤表面に供給して、そこに薄い湿潤層を形成でき、それは円盤が回転するにつれて、熱力学的不安定性を誘発する表面張力から、分裂して空中浮遊小滴になる。得られたカプセル化成分をほぼ球体形状に個々に被覆し、またはコーティング組成物のマトリックス中に包埋してもよい。エマルジョンまたは懸濁液がオリフィスを通して押し出されないので、この技術はより高粘度のコーティングの使用を可能にし、コーティング中の成分のより高い負荷を可能にする。
【0060】
超臨界流体を使用するマイクロカプセル封入法は、当該技術分野でよく知られている。例えば米国特許第6,087,003号明細書、Ribeiroら(2003年)J.of Microencapsulation 20:97〜109頁、Ribeiroら(2003年)J.of Microencapsulation 20:110〜128頁、Thiesら(2003年)J.of Microencapsulation 20:87〜96頁、および国際公開第1998/15348号パンフレットを参照されたい。このような方法としては、超臨界流体急速膨張法(RESS)ベースの方法が挙げられる。
【0061】
気中懸濁工程を使用するカプセル封入法は、当該技術分野でよく知られている(国際公開第1997/14408号パンフレットを参照されたい)。一般的に言えば、上昇気流中に懸濁されている内にコア材料を外殻壁で被覆する。コア材料は、典型的に円柱状挿入断片の内外に異なるパターンの孔を有する有孔プレートによって支持される。孔は、一般に外面輪形隙間を通じて十分な空気を上昇させ、沈降するコア材料を流動化するようなサイズである。一般に加熱される上昇気流のほとんどはシリンダー内を流れて、コア材料を迅速に上昇させる。最上部において気流が分岐して減速すると、コア材料は沈降して外床に戻り、下向きに移動してサイクルを繰り返す。一般にコア材料は、カプセル封入工程が完了するまで、数分間に何度も内側シリンダーを通過する。流動床カプセル封入法もまた、当該技術分野でよく知られている。(概説についてはS.Gouin(2004年)Trends in Food Science and Technology 15:330〜347頁を参照されたい)。
【0062】
流動床カプセル封入は、トップスプレー、ウルスター法、または回転流動床カプセル封入であってもよい。コア材料が液体を含んでなる場合、カプセル封入のために遠心押出しを使用してもよい。この工程では、同心ノズルを含有する回転押出し頭部を使用して、液体を含んでなるコア材料をカプセル化する。コア液体のジェットは外殻壁溶液によって取り囲まれる。ジェットが空中を通過すると、それはレイリー不安定性のために分裂し、それぞれ外殻壁溶液で被覆されたコア材料の小滴になる。小滴が飛散している間に溶融外殻壁が硬化してもよく、または溶剤が外殻壁溶液から揮発して、マイクロカプセルを形成してもよい。
【0063】
押出しマイクロカプセル封入法は、当該技術分野でよく知られている。Schultz(1956年)Food Technology 10:57〜60頁、米国特許第2,809,895号明細書、S.Gouin(2004年)Trends in Food Science and Technology 15:330〜347頁を参照されたい。押出しマイクロカプセル封入は、低温または高温で実施してもよい。さらに押出しマイクロカプセル封入は、低水分含量または高水分含量で実施してもよい。
【0064】
コアセルベーション法は、当該技術分野でよく知られている。(概説についてはS.Gouin(2004年)Trends in Food Science and Technology 15:330〜347頁を参照されたい)。ここでの用法では、「コアセルベーション」とはまた、複合コアセルベーションも指す。コアセルベーションマイクロカプセル封入後に得られた外殻は、架橋してもしなくてもよい。さらにコアセルベーションを使用して多層マイクロカプセルを作り出してもよい。このような多層カプセルはコアセルベーション工程のみを通じて作り出してもよく、またはそれらはコアセルベーション工程に加えて別のカプセル封入工程を使用して作り出してもよい。
【0065】
包含カプセル封入法は、当該技術分野でよく知られている。(概説についてはS.Gouin(2004年)Trends in Food Science and Technology 15:330〜347頁を参照されたい)。一般的に言えば、包含カプセル封入は、空洞含有外殻材料中におけるカプセル化成分の会合を指す。水素結合、ファンデルワールス力、またはエントロピー駆動疎水性効果によって、カプセル化成分を空洞内に保つ(S.Gouin(2004年)Trends in Food Science and Technology 15 340頁)。
【0066】
コロイドソームカプセル封入法は、当該技術分野でよく知られている。(概説についてはS.Gouin(2004年)Trends in Food Science and Technology 15:330〜347頁、Dinsmoreら(2002年)Science 298:1006〜1009頁を参照されたい)。典型的にコロイドソームはリポソームに類似しているが、コロイドソーム外殻はコロイド粒子を含んでなる。外殻を架橋または焼結してもよい。
【0067】
アルギネートビーズ、リポソーム、噴霧冷却/チリング、およびゾル−ゲルカプセル封入を使用したカプセル封入法もまた、当該技術分野でよく知られている。(概説についてはS.Gouin(2004年)Trends in Food Science and Technology 15:330〜347頁を参照されたい)。
【0068】
(III)食品
本発明のさらなる態様は、食用材料およびマイクロカプセルを含んでなる食品の提供である。マイクロカプセルは、コア材料と、コア材料をカプセル化する外殻壁とを含んでなる。コア材料はリン脂質−安定化被酸化性材料を含んでなり、コア材料中のリン脂質の濃度は被酸化性材料の約2%〜約50重量%の範囲である。第(II)(b)節で上述したように、マイクロカプセル外殻壁の性質は、マイクロカプセルが組み込まれる食物のタイプ次第で変動する。
【0069】
一実施態様では、食品は液体飲料であってもよい。液体飲料の非限定的例としては、ミルク、味付き乳飲料、ヤギ乳、液体ヨーグルト、豆乳、ライスミルク、果実飲料、果実風味飲料、野菜飲料、栄養ドリンク、エナジードリンク、スポーツドリンク、乳児用調製粉乳、茶、およびコーヒー飲料が挙げられる。
【0070】
別の実施態様では、食品はまた、酪農または卵製品であってもよい。乳製品の例としては、チーズ、アイスクリーム、アイスクリーム製品、ヨーグルト、ホイップクリーム、サワークリーム、カッテージチーズ、バター乳、卵白、および卵代替え品が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0071】
代案の実施態様では、食品は穀物ベース製品であってもよい。穀物に由来する食品の非限定的例としては、朝食用シリアル、パスタ、パン、ベークド製品(すなわちケーキ、パイ、ロール、クッキー、クラッカー)、トルティーヤ、グラノーラバー、栄養バー、およびエナジーバーが挙げられる。食品は、栄養補給剤であってもよい。
【0072】
さらに別の実施態様では、食品は植物由来製品であってもよい。植物由来食品の例としては、テクスチャー加工植物タンパク質、豆腐、コーンチップ、ポテトチップ、野菜チップ、ポップコーン、およびチョコレート製品が挙げられる。
【0073】
さらに別の実施態様では、食品は肉製品または肉類似体であってもよい。肉製品の例としては、加工肉、挽肉、および塊肉製品が挙げられるが、これに限定されるものではない。肉は動物肉または魚介類肉であってもよい。肉類似体は、歯ごたえが動物または魚介類の肉を模倣する、テクスチャー加工された植物または酪農タンパク質であってもよい。肉類似体は、食品中の肉の一部または全部であってもよい。食品はまた、マイクロカプセルが添加されて加熱工程における酸化を防止する、缶詰食品であってもよい。
【0074】
さらに別の実施態様では、食品は、動物のための製品であってもよい。動物は、コンパニオンアニマル、農業動物、または水生生物であってもよい。動物食品の非限定的例としては、缶詰ペットフード、ドライペットフード、農業動物飼料、および農業動物飼料栄養補給剤が挙げられる。飼料はペレット化され、押し出され、またはその他の方法で形成されてもよい。飼料または飼料栄養補給剤は、液体であってもよい。例としては単胃動物のための育成食、仔ウシ代用乳、または動物飼料に栄養補給するのに使用される魚油およびその他の油が挙げられる。
【0075】
本発明の別の態様は、本発明の組成物で処理された食品を提供する。組成物は、食品に噴霧または塗布されてもよい。適切な食品の非限定的例としては、フードバー、栄養バー、スナック、ナッツ、オート麦、クッキー、クラッカー、乾燥魚または海産物、およびペットフードまたはペットのおやつが挙げられる。組成物は、酸化感受性食物に直接添加されてもよい。例としては料理用油、フライ油、オイルスプレー、サラダドレッシング、マーガリン、堅果油、ハーブまたは香辛料油、クリームリカー、室温安定クリーム製品、魚油、魚醤、脂肪可溶性ビタミンと油を含有する栄養補給剤、および被酸化性脂質または油を含有する医薬品が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0076】
非食品
本発明のさらなる態様は、リン脂質−安定化酸化材料、またはリン脂質−安定化酸化材料を含んでなるマイクロカプセルを含んでなる非食品を提供する。非食品は、ヒトのための化粧品、身体保湿剤、または抗老化クリームであってもよく、またはそれはペットの毛油の酸化を防止する、またはペットの臭気を防止する製品であってもよい。非食品は、芳香剤製品または空気清浄スプレー製品であってもよい。非食品は、塗料またはワニスであってもよい。非食品は、鉱物油、合成油、またはバイオディーゼルであってもよい。
【0077】
定義
ここでの用法では、「マイクロカプセル」という用語は、コア材料と、コア材料を取り囲むまたはカプセル化する外殻壁とを含んでなる組成物を指す。
【0078】
「被酸化性材料」という用語は、ここでの用法では被酸化性脂質を含んでなる材料を指す。材料は、粗製混合物または高度精製調製品であってもよい。
【0079】
「リン脂質」という用語は、ここでの用法では、一般に、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、およびジホスファチジルグリセロールなどのグリセロール含有リン脂質を指す。レシチンは、グリセロリン脂質の混合物を含んでなる。
【0080】
「実質的に無水」という用語は、ここでの用法では、リン脂質(phosopholipid)−安定化被酸化性材料が、約90%を超えて無水、より好ましくは、約95%を超えて無水、さらにより好ましくは約97%を超えて無水、およびさらにより好ましくは、99%を超えて無水であることを意味する。
【0081】
本発明の範囲を逸脱することなく、上の組成物、製品、および方法には様々な変更を加えることができるので、上の記述および下述の実施例中に含有される全ての事項は、例示的なものと解釈すべきであり、限定を意味しないことが意図される。
【実施例】
【0082】
以下の実施例は、本発明の様々な実施態様を例示する。
【0083】
実施例1.レシチン−安定化ω3魚油マイクロカプセルの安定性
ω3魚油およびレシチンを含んでなるマイクロカプセルを調製することにより、レシチンがω3魚油の酸化を防止する能力を調べた。このために、増大する濃度のレシチンを使用して調製した魚油のエマルジョンを調製し、カプセル化して噴霧乾燥した。魚油に対するレシチンの百分率は、0.1%〜50%の範囲であった(表1参照)。
【0084】
マイクロカプセルの調製
4781部の水道水を沸点に加熱し、次にそれを70〜80℃に冷却して溶液Aを調製した。これに14部のクエン酸ナトリウムおよび表1に列挙する量のレシチンを添加した。酵素変性レシチン調製品であるSolec 8160、および非変性レシチンであるSolec Fの2つの異なるレシチン調製品を使用した。混合物を70℃に保ち、粉末が溶解するまで撹拌した。次に105部のスープロ(SUPRO)(登録商標)EX 45ダイズタンパク質単離物を添加して混合物を70〜75℃に加熱し、ダイズタンパク質が溶解するまで撹拌した。33%水性クエン酸溶液を添加してpHを3.7〜3.8に調節した。混合物を平方インチあたり4000ポンドで均質化して良好な分散体を得て、それにニュージャージー州パーシッパニーのDSM Nutriceuticalsからのω3魚油(ROPUFA)を表1に列挙する量で添加し、スラリーを1〜2分間混合した。第1段階では平方インチあたり6500ポンド、第2段階では平方インチあたり500ポンドで、スラリーに二段階均質化を施し、魚油およびレシチンの粒子を含んでなるエマルジョンを得た。
【0085】
40℃で2800部の水道水と800部のゼラチンを混合して、溶液Bを調製した。水酸化ナトリウム水溶液でpHを6.5に調節し、400部のアラビアゴムを添加して、外側コーティング組成物を得た。溶液を40℃に保ち、溶液B(4000部)を含有する容器に4000部の溶液Aを添加した。33%水性クエン酸溶液の添加によって、混合物のpHを即座に4の値に低下させた。次に混合物を撹拌しながら5℃に冷却し、次に入口温度200℃および出口温度100℃を使用して噴霧乾燥させた。マイクロカプセル調製品を4〜5℃で保存した。
【0086】
表1.マイクロカプセル作製に使用したレシチンおよび魚油の量

【0087】
酸化的安定性
米国油化学会(AOCS公定法Cd12b−92)によって認可された方法である酸化安定指数(OSI)法を使用して、上で調製したマイクロカプセルの酸化安定性を評価した。この方法は油が酸化に対して抵抗性である期間を測定する。この期間、または誘導期の後、酸化速度が迅速に加速する。OSI手順では、110℃に加熱した気流を油サンプルに通過させ、油サンプルからの溶出空気を、脱イオン水を含有する試験容器に通して泡立てて、その導電率を経時的に連続してモニターする。油が酸化するにつれて揮発性有機酸が発生して水中に捉えられ、それによってその導電率を増大させる。OSI値は誘導期間(時間)と定義され、酸化速度における最大変化を反映する導電率曲線の変曲点(二次微分)を数学的に表す。OSI値が高いほど、油はより安定している。
【0088】
各マイクロカプセルのサンプルを同重量の不活性鉱物油と混合した。ω3魚油(ベースラインA)およびSolec 8160およびSolecFレシチンの1:1混合物(ベースラインB)を含んでなるベースラインサンプルもまた、試験した。OSI値を表2に提示する。レシチンは濃度に依存して、マイクロカプセルのコア中の魚油を安定化した。
【0089】
表2.レシチン安定化油マイクロカプセルの安定性

【0090】
実施例2.カプセル化対非カプセル化レシチン−安定化油の安定性
レシチン−安定化油のカプセル化および非カプセル化調製品の安定性を比較した。ω3魚油および0.1%〜50%(油重量基準)範囲の異なる百分率のレシチンを含んでなるマイクロカプセルを調製し、本質的に実施例1で記載されるようにしてカプセル化した。(タンパク質添加または無添加の)適量のレシチン(3%〜30%)を水に溶解し、適切な体積のω3魚油を添加して混合物を均質化し、エマルジョンを作り出してレシチン−安定化魚油を調製した。噴霧乾燥によってエマルジョンから水を除去し、レシチン−安定化油を形成した。
【0091】
本質的に実施例1で記載されるようにして、OSI法を使用してレシチン−安定化油およびマイクロカプセルの酸化安定性を測定した。図1に示すように、全てのレシチンレベルにおいて、マイクロカプセルはレシチン−安定化油よりも高いOSI値を有し、すなわちより安定していた。
【0092】
実施例3.レシチン−安定化油の過酸化物価
レシチン−安定化魚油の酸化安定性はまた、調製品中の過酸化物のレベルを直接測定することによっても分析された。過酸化物価(PV)はmmol/kg油として表わされる。3.1%、6.4%、12%、20%、または40%のレシチン(油重量基準)を含んでなるレシチン−安定化ω3魚油を実施例2で記載されるようにして調製し、4〜5℃で保存した。レシチン−安定化油中の過酸化物価を0、3、6、9、16、および24日目に判定した。
【0093】
図2に示すように、全時点において最良の保護は20%レシチンによって提供された。より低いおよびより高い百分率のレシチンは、より少ない酸化安定性を提供した。図3で提示される二次プロットは、最適安定化が約25〜30%のレシチン濃度で起き、より低いおよびより高い濃度のレシチンはより少ない安定化を提供することを裏付ける。さらに二相効果は経時的により顕著になった。
【0094】
実施例4.プロパナール生成によってモニターしたマイクロカプセルの安定性
プロパナールは3−炭素プロピル基のアルデヒドであり、ω3脂肪酸の酸化の優れた標識の役割を果たす。したがってプロパナールの生成量を使用してω3油の酸化分解量を推定し、それに続くレシチンによって提供される安定化を判定できる。レシチンそれ自体は不飽和脂肪酸、特にω6脂肪酸であるリノール酸(18:2)を含有し、その濃度は50%を超える。リノール酸(linoleic aid)の酸化分解の標識は6−炭素ヘキサニル基のアルデヒドであるヘキサナールである。プロパナールおよびヘキサナールを検出するように、ガスクロマトグラフィー−火炎イオン化検出(GC−FID)法を最適化した。
【0095】
本質的に実施例1で記載されるようにして、レシチン−安定化ω3魚油を含んでなるマイクロカプセルを調製した。マイクロカプセルのコア材料中のレシチンの濃度は、魚油の0.1%、6.4%、12%、30%、または40重量%であった。プロパナールのレベルを0、1、2、および3日目に測定した。試験したレシチンの百分率では、12%レシチンを含んでなるマイクロカプセル中で、最も低レベルのプロパンを観察した(データ示さず)。12%レシチンを含んでなるマイクロカプセル中で約60時間にわたり、プロパナール発生をモニターした。曲線下のピーク面積を図4に提示する。この実験は、プロパナールの生成が時間に比例することを明らかにした。レシチン中のω6酸の分解産物であるヘキサナールの発生はまた、12%レシチンを含んでなるマイクロカプセル中でも経時的にモニターした(図5)。ヘキサナールの生成もまた時間に比例したが、ヘキサナールのレベルは、プロパナールのレベルよりも一桁低かった。
【0096】
実施例5.マイクロカプセルの構造
本質的に実施例1で記載されるようにして、ω3魚油、6.4%レシチン、およびダイズタンパク質を含んでなるマイクロカプセルを調製した。エタノールおよび酸化プロピレン中で脱水し、その後それらをエポン樹脂に包埋して、TEMのためにマイクロカプセルを調製した。ウルトラ−ミクロトームを使用して極薄切片(約50nm)を切り出し、TEMグリッド上に配置してTEMを通じて視覚化した。図6は、典型的なマイクロカプセルの画像を提示する。コア材料の直径は約1.7μmであり、外殻壁は約130nmの厚さを有した。外殻壁が多くの約16nmのより薄い層を含んでなることに留意されたい。
【0097】
実施例6.マイクロカプセルをさらに安定化する追加的抗酸化剤
本質的に実施例1で記載されるようにして、ω3魚油と6.4%または30%レシチン(油重量基準)のいずれかとを含んでなるマイクロカプセルを単独で、または0.5%ローズマリー抽出物、0.04%パルミチン酸アスコルビル、0.5%混合トコフェロール、またはその組み合わせと共に調製した。これらの調製品の酸化安定性を、OSI法を使用して評価し、それを図7にプロットする。30%レシチンを含んでなるマイクロカプセルは、6.4%レシチンを含んでなるものより長く安定化されている。大抵の抗酸化剤の添加はマイクロカプセルの安定性を多少増大させるが、混合トコフェロールの添加は、30%レシチンを含んでなるマイクロカプセル中で最大保護効果を生じた。
【0098】
実施例7.レシチン−安定化油中の揮発物の分析
ω3脂肪酸の添加は健康上の利点を提供するが、食品への魚油の添加により、魚の味および/または魚臭を食物に与える可能性が高まる。この可能性に対処するために、魚臭気/風味の原因であると推定される5つの揮発物のレベルを6%レシチン−安定化油および23%レシチン−安定化油中で測定した。1−ペンテン−3−オン、E−2−ヘキセナール、Z−4−ヘプテナール、E,E−2,4−ヘプタジエナール、およびE,Z−2,6−ノナジエナールを測定するために、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GCMS)法を最適化した。
【0099】
図8に示すように、5つの揮発物のレベルは、追加的抗酸化剤なしの6%レシチン−安定化油よりも、追加的抗酸化剤なしの23%レシチン−安定化油中でより低かった。トコフェロールの添加は、双方の調製品中のこれらの揮発物のレベルを劇的に減少させた。さらに混合トコフェロールに加えたローズマリー抽出物およびパルミチン酸アスコルビルの添加は、これらの化合物レベルのそれ以上の低下を提供しなかった。
【0100】
実施例8.マイクロカプセルの官能性分析
独自仕様の官能性スクリーニング方法であるSolae定性的スクリーニング(SQS)法を使用して、対照サンプルと比較したマイクロカプセル中の「魚臭」風味の程度を評価した。ω3魚油および異なる百分率のレシチン(1%〜30%)を含んでなるマイクロカプセルを調製して、食味検査員のパネルに提供した。対照サンプルは市販の魚油(Ocean Nature Meg−3カプセル化魚油)であった。各試験サンプルを格付けするために、各査定者はカップの底をテーブルに置いたまま各カップを3回旋回させた。サンプルを2秒間置いた後、各査定者は約10ml(小さじ2杯)を口に含み、それで口内を約10秒間すすいでから吐き出した。次に査定者は表3に提示する尺度に従って、試験サンプルと対照サンプルとの差異を評価した。試験サンプルの「魚臭」が少ないほど、スコアがより低い。
【0101】
各レシチン濃度についての魚臭風味の平均スコアを図9に提示する。最低SQSスコアは、20%レシチンを含んでなるマイクロカプセルで得られた。これらのデータは上掲した化学データを裏付ける。
【0102】
表3.SQS採点システム

【0103】
実施例9.チョコレート風味フードバーのSQSスコア
6.4%または30%のレシチンのいずれかを含んでなる100mgのマイクロカプセルを使用してチョコレート風味フードバーを調製し、微小球の官能的特性をさらに特徴づけた。上で使用したSQS分析を拡大して、追加的官能性属性を含めた(表4参照)。サンプルの全体的な味、チョコレート風味、およびザラザラした口当たりもまた評価した。SQS分析をさらに修正して、試験サンプルと対照サンプルの間の定量的方向差分を評価した。試験サンプルが2、3、または4と格付けされた場合に評価を拡大し、食味検査員に、試験サンプルが、対照サンプル(0を与えられる)と比較して「より多い」または「より少ない」属性を有するとして格付けさせた。したがって試験サンプルが対照サンプルよりもわずかに多い、中程度多い、または極めて多い属性を有した場合、それぞれ+1、+2、+3のスコアを与えた。同様に試験サンプルが対照サンプルよりもわずかに少ない、中程度少ない、または極めて少ない属性を有した場合、それぞれ−1、−2、−3のスコアを与えた。
【0104】
試験サンプルと対照サンプルの間の差を反映する診断用スコアを図10にプロットする。一般には30%レシチンマイクロカプセル含んでなるバーは、6.4%レシチンマイクロカプセルを含んでなるものより少ない魚臭味とより多くのチョコレート味を有した。
【0105】
表4.官能性属性

【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】マイクロカプセルが、同一百分率のレシチンを含有するレシチン−安定化油よりも大きな酸化安定性を有することを例示する。双方の調製品の安定性は、酸化安定指数(OSI)法を使用して測定した。OSI値(時間単位)を異なる調製品中のレシチン百分率に応じてプロットする。
【図2】20%レシチンを含んでなるレシチン−安定化油が、最低レベルの過酸化物を有することを例示する。過酸化物のレベルは、24日間にわたりいくつかの時点において、3.1%〜40%のレシチンを含んでなるレシチン−安定化油中で測定した。過酸化物価(PV)を各レシチン−安定化油について時間に応じてプロットする。
【図3】約25〜30%のレシチンを含んでなるレシチン−安定化油が、最も低い過酸化物価を有することを例示する。PV値がレシチン百分率および時間に応じてプロットされる、二次項プロットを示す。
【図4】12%のレシチンを含んでなるマイクロカプセル内のプロパナールの経時的発生を例示する。GCプロットからのピーク下の面積を時間に対してプロットする。
【図5】12%のレシチンを含んでなるマイクロカプセル内のヘキサナールの経時的発生を例示する。GCプロットからのピーク下の面積を時間に対してプロットする。
【図6】6.4%のレシチン(およびダイズタンパク質)を含んでなるマイクロカプセルのTEM画像を提示する。
【図7】6.4%または30%のレシチンを含んでなるマイクロカプセルに、酸化安定性の増大を提供する追加的抗酸化剤を例示する。OSI値を各タイプのマイクロカプセルについてプロットする。
【図8】追加的抗酸化剤ありまたはなしで調製された、異なる調製品レシチン−安定化油中の特定揮発物のレベルを提示する。
【図9】約20%のレシチンを含んでなるマイクロカプセルが、官能的品質システムであるSolae定性的スクリーニング(SQS)法による判定で、最も低レベルの魚風味を有することを例示する。平均魚臭スコアをレシチン百分率に応じてプロットする。
【図10】30%レシチンを含んでなるマイクロカプセル入りチョコレート風味バーが、6.4%レシチンを含んでなるマイクロカプセル入りチョコレート風味バーよりも良い官能性プロフィールを有することを例示する。各バーの各属性について、対照からの方向差分をプロットする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)被酸化性材料およびリン脂質を含んでなるコア材料、および
(b)前記コア材料をカプセル化する外殻壁
を含んでなり、前記コア材料中のリン脂質濃度が被酸化性材料の約2%〜約50重量%である、マイクロカプセル。
【請求項2】
前記被酸化性材料の酸化が過酸化物価(PV)法によって判定される、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項3】
前記被酸化性材料が実質的に不飽和の脂肪または実質的に不飽和の油である、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項4】
前記被酸化性材料が、魚油、海産油、植物油、および藻類油からなる群から選択される被酸化性油である、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項5】
前記被酸化性材料が、ω3脂肪酸、ω6脂肪酸、およびω9脂肪酸からなる群から選択される、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項6】
前記リン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、およびホスファチジルセリンからなる群から選択される、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項7】
前記リン脂質がレシチンである、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項8】
前記コア材料中のリン脂質濃度が前記被酸化性材料の約15%〜約35重量%である、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項9】
前記コア材料中のリン脂質濃度が前記被酸化性材料の約25%〜約30重量%である、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項10】
前記コア材料が、植物タンパク質、動物タンパク質、真菌タンパク質、および微生物タンパク質からなる群から選択されるタンパク質をさらに含んでなる、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項11】
前記タンパク質がダイズタンパク質、トウモロコシタンパク質、エンドウマメタンパク質、小麦タンパク質、カゼイン、乳清タンパク質、およびゼラチンからなる群から選択される、請求項10に記載のマイクロカプセル。
【請求項12】
前記コア材料が、トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、およびローズマリー抽出物からなる群から選択される、リン脂質以外の抗酸化剤をさらに含んでなる、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項13】
前記外殻壁がゼラチン、アラビアゴム、および高温融解脂肪または油からなる群から選択される、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項14】
前記外殻壁が実質的に不透水性である、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項15】
前記被酸化性材料がω3脂肪酸であり、前記リン脂質がレシチンであり、前記外殻壁が実質的に不透水性である、請求項1に記載のマイクロカプセル。
【請求項16】
前記コア材料中のレシチンの濃度が前記被酸化性材料の約15%〜約35重量%である、請求項15に記載のマイクロカプセル。
【請求項17】
(a)食用材料、および
(b)コア材料と、前記コア材料をカプセル化する外殻壁とを含んでなるマイクロカプセル
を含んでなり、前記コア材料が被酸化性材料およびリン脂質を含んでなり、前記コア材料中のリン脂質濃度が前記被酸化性材料の約2%〜約50重量%である、食品。
【請求項19】
前記食用材料が液体飲料である、請求項17に記載の食品。
【請求項20】
前記食用材料が、乳製品、穀物ベース製品、ベーカリー製品、フードバー、植物由来製品、肉製品、肉類似物製品、および栄養補給剤からなる群から選択される、請求項17に記載の食品。
【請求項21】
前記被酸化性材料がω3脂肪酸であり、前記リン脂質がレシチンである、請求項17に記載の食品。
【請求項22】
前記コア材料中のレシチンの濃度が前記被酸化性材料の約25%〜約30重量%である、請求項20に記載の食品。
【請求項23】
被酸化性材料を実質的に無水環境でリン脂質と接触させるステップを含んでなり、リン脂質の百分率が前記被酸化性材料の約2%〜約50重量%である、被酸化性材料の酸化を低下させる方法。
【請求項24】
前記被酸化性材料の酸化が過酸化物価(PV)法によって判定される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記被酸化性材料が実質的に不飽和の脂肪または実質的に不飽和の油である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記被酸化性材料が、魚油、海産油、植物油、および藻類油からなる群から選択される被酸化性油である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記被酸化性材料が、ω3脂肪酸、ω6脂肪酸、およびω9脂肪酸ω脂肪酸からなる群から選択される多価不飽和脂肪酸である、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記リン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、およびホスファチジルセリンからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記リン脂質がレシチンである、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記被酸化性材料がω3脂肪酸であり、前記リン脂質がレシチンである、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−519980(P2009−519980A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545993(P2008−545993)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/062166
【国際公開番号】WO2007/102915
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(504140299)ソレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)
【Fターム(参考)】