説明

カプセル

【課題】ミクロ−又はナノ−カプセルを提供する。
【解決手段】本発明は、粒子の外側シェル上に二つの異なる官能性基を有する(ミクロ−又はナノ−)カプセルであって、テキスタイル表面に付着することが可能であり(即ち、付着持続性を示し)、そして続いてテキスタイルに粒子を共有結合することが可能である(即ち、繊維に対して反応性である)カプセルに関するものである。本発明のミクロ−又はナノ−カプセルは、バインダーに対する明確な要求を排除し、且つ利用可能なペイロードを増加することにより、従来技術における制限を克服することを目的とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最新のテキスタイルは、クリーニングの容易さ又はアイロン掛けの容易さのような事柄に対する高度な仕様及び要求に適合しなければならない。これを実行するために、材料は、典型的には、シリコーンなどのような処理剤の添加により、製造中に機能化される。
望ましいと消費者に認識されている一つの潜在的事項は、悪臭抑制によるか又は芳香の調節された放出によるかの何れかでそれ以上の新鮮さを提供する機能を有するファブリックに関することである。
機能化は、生産手順の間の幾つかの工程において、またパジングのような周知適用技術の一つにおいて行われ得る。また他には、染色のような確立された製造工程の間に、薬剤が添加され得る。製造工程における実際の添加の時期及び方法は、使用される薬剤の種類に依存している。
テキスタイルの脱臭効果を改良するためにそれらを機能化するための一つの手段は、β−シクロデキストリンのような改質物質を使用することである。このような手法は、米国特許第6861520号明細書に開示されており、ここでは、繊維に前記シクロデキストリンを付着させるために、架橋剤(典型的には、イミダゾリドン)が使用されている。この文献は、この改質繊維が、その後、臭いを捕捉することを教示している。
同様の観点において、国際特許出願公開第03/093571号パンフレット及び米国特許第4882220号明細書に示されているように、マイクロカプセルの付着は確立された技術であり、両方の文献において、カプセルをバインダーの助けにより繊維に接着する方法が例示されている。
【特許文献1】米国特許第6861520号明細書
【特許文献2】国際特許出願公開第03/093571号パンフレット
【特許文献3】米国特許第4882220号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの手法を使用することは、幾つもの欠点を有する。第一に、高濃度のバインダーの使用は、ファブリックの取り扱い中に劣化を生じさせ得、消費者に、柔軟性に欠け、従って、望ましくないとの認識を与える。第二に、臭いの取り扱いにおいて、シクロデキストリンの使用は、シクロデキストリン分子は、非常に低濃度の臭気成分のみを吸収し得る、即ち、使用される場合において、それらが有するペイロードが低いとの事実により制限される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、マイクロ−又はナノ範囲にあり、そしてポリマー状シェルの表面の外側にカチオン性基及び繊維反応性(fiber−reactive)基を有し、それ故、バインダーに対する明確な要求を排除し、且つ利用可能なペイロードを増加することにより、これらの制限を克服することを目的とする、カプセルに関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
ナノ−及びマイクロカプセルは、後の使用のために備えて、物質を保持する都合の良い手段を提供する。前記カプセルは、独特のコア−シェルからマトリックスに至る広い範囲の形態を有し得るけれども、それ以外の使用可能な形態が、「微小球、マイクロカプセル及びリポソーム(Microspheres,microcapsules and l
iposomes)」[編者:アール アルシャディ(R Arshady)、シトラス出版(Citrus Press)、1999年、ISBN:0953218716]に記載されている。前記形態がコア−シェルである場合には、前記シェルはカプセルのコア材を包んでおり、他方、前記形態がマトリックスタイプである場合には、ポリマー状物質全体にわたり活性物質が分散されている。
【0006】
使用において、カプセル封入された物質は、それが適用されている物品が使用されるまでその性質を保持する。保持される物質は、如何なる種類の物理形状における如何なる種類の活性成分であってもよく、そして多くの用途分野において使用することができる。
【0007】
本発明のマイクロカプセルは、粒子の外側シェル上に二つの異なる官能性基を有し、それ故テキスタイル表面に付着可能であり(即ち、付着持続性を示し)、そして続いてテキスタイル上に粒子を共有結合させることが可能である(即ち、繊維に対して反応性である)ことを特徴とする。
我々は、マイクロカプセルが導入されることを可能にし、そして、ポリマー状バインダーを必要とすることなく、エキゾースト工程段階又はパジング工程段階の何れかにおいてテキスタイルに固定されることを可能にするために、二つの異なる成分の特徴を設計した。更に、発明者による新規なマイクロカプセルは洗濯堅牢性であり、そして複数回の洗濯サイクルの後にもそれ等の活性を保持する。
【0008】
従って、本発明は、マイクロ−又はナノ範囲にあるカプセルであって、カプセル表面の外側にカチオン性基及び繊維反応性基を有するという事実を特徴とする。
【0009】
マイクロカプセルにおける主に考慮すべき二つの事項は、用いられる放出の種類及び、表面特性である。特定のカプセルタイプを用いて達成可能な放出タイプは、活性の本質、マイクロカプセルに加えられる負荷及びカプセル封入される物質類に依存する。封入される物質は、不浸透性、浸透性又は半浸透性であってよい。これらの特性は、ポリマー状物質並びに、架橋剤の濃度などのような他の要素を正確に選択することにより、達成され得る。従って、望まれる作用形態にある場合に、どのようにコア物質を放出するのかについての多くの可能性がある。幾つかの可能性を、アルシャディにより詳説されている他の事柄と共に、以下に詳説する。
【0010】
例えば、不浸透性シェルを持つカプセルのコア材の放出は、前記シェルの崩壊により行われ得る。これは、外側からの直接的な機械的手段により、又は熱の適用のような非機械的手段により、行うことができる。
半浸透性シェルを持つカプセルのコア材の放出は、浸透圧により行うことができる。
浸透性マイクロカプセルからの活性物質の放出は、マイクロカプセルを通り、続いてカプセル表面から除去される移送を経由する。
【0011】
本発明は、典型的には、ポリマー状シェル内に、活性成分を含むコアを有するマイクロカプセルである。
本発明において記載されたカプセルの場合には、表面は、繊維反応性基及び付着持続性基の両方を有する。繊維反応性基並びにカチオン性基は、適するモノマー状(或いは、オリゴマー状又はポリマー状)化合物を選択することにより、ポリマー状シェルに混和することができ、ここで、これらの基は既に存在しているか、又は前記基は、前記シェルを適する化合物を用いて処理することにより、重合後に導入することができる。両方法の組み合わせも又可能である。
【0012】
カチオン性基は、如何なる種類のカチオン性基であってもよい。好ましいものは、アンモニウム基である。
例えば、これらの基は、短鎖の、第四級アンモニウム化合物、例えば、ジアリルジアルキルアンモニウム塩(例えばジアリルジメチルアンモニウムクロリド=DADMAC)、トリヒドロキシエチルメチルアンモニウムメソスルフェート並びにアルキルトリメチルアンモニウムクロリドにより配合され得る。同様に、アンモニウム基は、炭素原子数4ないし8のハロゲン化物第四級化ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのような第四級アンモニウム基を混和する、カチオン性ビニルモノマーの重合から誘導され得る。また他には、前記ポリマーは、遊離塩基形であり得、そして酸性化に際してカチオンになる。繊維反応性基は文献から既知である。繊維反応性基の特性は、それらが繊維の官能性基と共有結合を形成することである。”テキスタイル反応性(textile−reactive)”は、ペイロード粒子が繊維、ヤーン、ファブリック、テキスタイル、最終物品(アパレルを含む)、或いは処理される他のウェブ又は基材と強い化学結合を形成することを意味する。繊維の官能性基は通常、ヒドロキシ基、アミド基又はアミノ基である。
【0013】
繊維反応性基は、一つ又はそれより多くの反応性部位(アンカー部)を有し得る。
好ましい繊維反応性基は、メチル基;2,4−ジクロロ−1,3,5−トリアジン(DCT)基;−F、−OH、−O−炭素原子数1ないし4のアルキル、−NH2 、−NH(炭素原子数1ないし4のアルキル)又は−N(炭素原子数1ないし4のアルキル)2 からなる群から選択された一つの置換基によりトリアジンが更に置換され得るモノ−クロロトリアジン基;−F、−OH、−O−炭素原子数1ないし4のアルキル、−NH2 、−NH(炭素原子数1ないし4のアルキル)及び/又は−N(炭素原子数1ないし4のアルキル)2 からなる群から選択された一つの置換基によりトリアジンが更に置換され得るモノ−フルオロトリアジン基;2−スルホオキシエチルスルホニル基;2−クロロエチルスルホニル基;ビニルスルホニル基;アルコキシクロロトリアジン基:又は、2−(スルホチオ)エチルスルホニル基;トリクロロピリミジン基;ジフルオロクロロピリミジン(DFCP)基;ジクロロキノキサリン基、2,3−ジクロロ−チノキサリン(DCC)基及び3−クロロプロピオナミン(CPA)基である。
【0014】
テキスタイル反応性ナノ粒子の表面のテキスタイル反応性フック又は官能性基は、特定の構造要素、繊維、ヤーン、紙、ファブリック又は最終物品と化学的に結合する基から選択される。例えば、セルロース誘導体を基材とするウェブは全てヒドロキシル基を含む。ウール及び他の蛋白質性動物繊維、絹及び再生された蛋白質は、ヒドロキシル基、アミン基、カルボキシレート基及びチオール基(後者は、ジスルフィドとして)を含む。繊維に対して反応性である官能性基を含む反応性モノマーが望ましい。例えば反応性モノマーは、5−及び6−員環状無水物を形成することができる隣接するカルボキシル基を含み得る。前記無水物は、反応性モノマーが加熱され、そして乾燥された場合には、触媒の助けにより形成する。これらの環状無水物は、ヒドロキシル基又はアミン基を含む繊維(例えば、綿又はウール)と反応する。また他には、反応性基は、エポキシド基又は、例えばハロヒドリンのようなエポキシド前躯体を含み得る。エポキシドは、アミン基又はヒドロキシル基と反応し得る。またメチロールアクリルアミド(メチロール基は、綿と反応することが知られている;例えばDMDHEU)は、ナノ粒子マトリックスに共重合され得る。
【0015】
具体的なアミン反応性基は、イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、スルホニルクロリド、アルデヒド、グリオキサール、エポキシド、オキシラン、カルボネート、アリール化剤、イミドエステル、カルボキシイミド、無水物及びハロヒドリンを含む。カルボキシレート反応性基は、ジアゾアルカン化合物及びジアゾアセチル化合物、カルボニルジイミダゾール及びカルボキシイミドを含む。ヒドロキシ反応性官能性基は、エポキシド、オキシラン、カルボニルジイミダゾール、N,N’−ジスクシンイミジルカルボネート又はN−ヒドロキシスクシンイミジルクロロホルメート、アルキルハロゲン化物、イソシアネート及びハロヒドリンを含む。ヒドロキシ基はまた、酵素的に又は過酸化物を用いて酸化され得る。チオール基は、ハロアセ
チル基及びアルキルハロゲン化物誘導体、マレイミド、アジリジン、アクリロイル誘導体、アリール化剤、及びチオール−ジスルフィド変換試薬、例えばピリジルジスルフィド、ジスルフィド還元剤、及び5−チオ−2−ニトロ安息香酸と反応する。
【0016】
ポリマー状シェルの、表面におけるカチオン性基対表面における反応性繊維基との比率は、50:1ないし1:1まで、好ましくは40:1ないし2:1までである。
ポリマー状シェルはまた、別の非イオン性の、及び/又はアニオン性のモノマー単位を含み得る。
適する非イオン性モノマーは、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン及び水溶性のヒドロキシ置換されたアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルである。
適するアニオン性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸及びその塩、ナトリウムスチレンスルホネートなどである。
【0017】
ポリマー状シェルはまた架橋され得る。適する架橋剤は、分子中に少なくとも二つの非共役モノエチレン性二重結合を有するモノマーである。このタイプの化合物の例は、2個ないし24個の炭素原子を含む二価アルコールから誘導されたアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート及び1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、メタリルメタクリルアミド、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、ペンタエリトリトールテトラアクリレート及びペンタエリトリトールテトラメタクリレートである。好ましくは、架橋剤は、重合のために用いられるモノマー混合物の80質量%まで存在し得る。
【0018】
架橋結合は、(マイクロ)カプセル壁が水性基剤に全く溶解しないが、しかし、それに暴露されることにより、大なり小なり膨潤するのみであるという効果を有する。
一般的に、ポリマー状シェルは、500000(工業規格パラメータを使用するGPCにより決定された)までの分子量を有する。好ましくは、分子量は30000ないし100000である。ポリマー状シェルが改質及び/又は(高度に)架橋されている場合には、分子量は十分に大きいものであり得る。
【0019】
ポリマー状シェルの外表面は、改質され得る基が存在する場合には、重合後に改質され得る。
コア物質は、多くの用途において使用され得る、如何なる種類の物理形状における如何なる種類の活性成分であってもよい。
例えば、コアは、固体状化合物又は液体状化合物である。
例えば、カプセルは、マトリックス内に、活性物質を吸収し且つ保持することが可能な第二ポリマー粒子を有する。
【0020】
例えば、コア物質は、紫外線吸収剤、紫外線反射材、活性染料トレーサー物質、酵素、洗浄剤ビルダー、生物活性又は抗微生物/抗真菌剤、帯電防止剤、薬及び医薬、日焼け防止剤、染料(例えば、玉虫色染料、定色染料及び、特定の環境又は化学的な刺激、例えば熱、pH、一酸化炭素、硫酸、又は、例えば微量の血液に対して応答する染料)、顔料、着色剤、芳香剤及び香料、難燃剤又は火炎抑制剤、金属性反射材コロイド、反射性粒子(例えば、雲母)、磁性粒子、サーモクロミック材料、防虫剤、吸熱性又は排熱性相変化剤、漂白触媒、漂白活性剤、軟化剤、ファブリック柔軟剤、ゼオライト及び活性炭からなる
群から選択された一つ以上の活性成分であってよい。
【0021】
通常、活性成分は、カプセル中のマトリックス全体に均一に分散されている。
本発明の一実施態様において、(マイクロ)カプセル及び含有物の全質量に対する割合としての(マイクロ)カプセルのシェルは、カプセルの全質量に基づいて、1質量%ないし50質量%、好ましくは1質量%ないし30質量%、特に好ましくは2質量%ないし20質量%である。
本発明のカプセルの寸法は、10nmないし200μm、好ましくは100nmないし100μm、より好ましくは100nmないし50μmである。
【0022】
カプセルの平均粒径は、米国のベックマンコールター社(Beckman Coulter,Inc.)又はドイツ国のシンパテック社(Sympatec GmbH)により製造された適切な粒径アナライザーにより決定される。
本発明のカプセルは、粉末形態において使用され得るか、又は、それらは液体状配合物として製剤化され得る。液体状配合物は非水性配合物並びに水性配合物であってよい。
本発明の別の観点は、上記カプセルを上記配合物と共に使用して製造された材料である。
好ましくは、前記材料は、本発明の(ナノ)カプセルを用いて処理された繊維、ヤーン、ファブリック、テキスタイル、紙又は最終物品[用語”テキスタイル”及び用語”ウェブ”を用いて、本明細書中に示されている]である。
【0023】
このようなテキスタイル又はウェブは、ペイロード及びその活性の保持が非常に改善されたことを示す。”非常に改善された”は、(ナノ)カプセル中にカプセル封入されたペイロードがウェブ上に保持され、且つその活性が、複数回の洗浄後においてさえも、ペイロードのみよりもより大きく保持されることを意味する。例えば、ペイロードが染料である場合には、処理されたテキスタイル又はウェブは、非常に改善された色堅牢性及び退色抵抗性を示す。ペイロードが反射性材料である場合には、テキスタイルは、ナノ粒子の寸法に応じて、永続的反射性又は真珠の光沢又は輝きを示す。ペイロードとして日焼け防止剤を含む(ナノ)カプセルを用いて処理されたテキスタイル又はウェブは、該テキスタイルを通過する有害な紫外線を吸収、防御、反射又はそれでなければ阻止若しくは実質的に阻止し、そして更に該テキスタイル自体には害がない。ペイロードが抗微生物/抗真菌剤、薬、医薬又は酵素である場合には、生物活性剤は、(ナノ)カプセルに由来するものであって、ウェブからの粒子自体の意図しない脱離又は放出に由来するものではない、プログラム放出によってのみ枯渇される。これは、繊維と、(ナノ)カプセルの官能性基との間の化学結合の永続性に起因している。
カプセルの製造は、例えば、米国特許第6833406号明細書の実施例に開示された公知方法により行うことができる。
【実施例】
【0024】
下記の実施例は本発明の特定の実施態様を記載しているが、しかし、本発明はそれらに限定されるものではない。開示された実施態様に対する多数の変更は、本発明の思想又は範囲から逸脱することなく、本明細書の開示に基づいて行われ得ることが理解されるべきである。従って、これらの実施例は、本発明の範囲を制限することを意味しない。むしろ、本発明の範囲は、添付された特許請求の範囲及びそれらの均等事項によってのみ決定される。これらの実施例において、与えられた全ての部は質量により、そして温度は、特記しない限りは、℃により与えられている。
【0025】
実施例1:
この実施例は、外表面にカチオン性基及び反応性基の両方を有する、マトリックスポリマー状粒子を作製するための予備製法を説明している。
ジアリルジメチルアンモニウムクロリドとアクリルアミドコポリマー[チバサルケアスーパー7(Ciba Salcare Super 7)]とからなる40%水溶液300g、水80g、70%メラミンホルムアルデヒド樹脂[ex−BIP、ビートル(Beetle)(登録商標)樹脂PT−336]12g及びカーボンブラック粉末2gを含む水相を調製した。この水性混合物を、10%硫酸を用いてpH2.0に調節した。
上記水相を、高剪断シルバーソン(Silverson)ミキサーの下で、炭化水素溶剤400g及び20%両親媒性ポリマー状安定剤80gを含む油相に添加した。油中水エマルジョンの温度を30℃以下に保持しながら、混合物を20分間均一化した。得られたエマルジョンは4ミクロンの平均粒径を有する水性液滴を含んでいた。前記寸法は、シンパテック粒子アナライザー[R1レンズ/クイクスセル/水キャリヤー相(R1lens/Quixcell/Water carrier phase)]により決定した。
その後、油中水エマルジョンを、水浴中に浸漬された700mL反応フラスコに移した。次いで、機械的撹拌下で、エマルジョンを80℃に加熱し、そして更に4時間、この温度を維持した。この熱処理は、アミノプラストポリ縮合プロセスにより、マイクロカプセル形成に導いた。炭化水素溶剤中の形成されたマイクロカプセルスラリーは、その後、マイクロカプセルから水を除去するために、これを真空蒸留した。蒸留後、炭化水素溶剤中の乾燥されたマイクロカプセルのスラリーをろ過して溶剤を除去し、そして、マイクロカプセルを乾燥生成物に形成するように乾燥した。
得られた4ミクロン寸法のマイクロカプセルは、コポリマーのDADMAC部分からのカチオン性基及びメラミンホルムアルデヒド樹脂からの反応性メチロール基を有するメラミンホルムアルデヒドポリマーカプセルシェルを持つ内側コア中に、カーボンブラック顔料マーカーを含んでいる。
【0026】
実施例2:
この実施例は、吸収された香料を持つポリマー状ラテックス粒子を有するコアを持つ、実施例1と同様のマイクロカプセルの作製方法を説明している。
40%チバサルケアスーパー7(登録商標)300g、水180g、35%ポリイソブチルメタクリレートエマルジョン40g、オイゲノール4g、ビートル(登録商標)樹脂PT−336、24g及びカーボンブラック顔料5gを含む水相を調製した。得られた水相を、85%ギ酸を添加してpH4.0に調節した。
上記水相を、炭化水素溶剤560g、20%両親媒性ポリマー状安定剤30g及び乳化剤[Ex−ICI、アルラセル(Arlacel)83(登録商標)]5gを含む油相中に、ラボラトリーホモジナイザーを使用して均一化して、油中水エマルジョンを形成した。得られたエマルジョンを1L反応フラスコに移し、そして機械的撹拌下で、55℃に加温した。混合物を55℃で6時間保持して、カプセルシェル形成反応を完了させた。その後、混合物を室温に冷却し、そしてマイクロ粒子を吸引ろ過して、マイクロ粒子からなる湿ったケーキを得た。
形成されたマイクロ粒子は、コアが、オイゲノール香料を有するポリイソブチルメタクリレートの水性エマルジョンを含むこと以外には、実施例1の生成物と同様の表面化学を有していた。
【0027】
実施例3:
この実施例は、水中油カプセル封入法による、反応性物質の特徴を持つマイクロカプセルの作製方法を説明している。
40%チバサルケアスーパー7(登録商標)50.5g、脱イオン水50g及びビートル(登録商標)樹脂PT−336、5.4gを混合することにより、水相を調製した。85%ギ酸を使用して、溶液のpHを3.2に調節した。その後、僅かに曇るまで、溶液を室温で撹拌した。この水性混合物を続いて、水浴中で約35℃に加温した。
これとは別に油相を、ケンワックス(Kenwax)K19(登録商標)100gから調製した。その後、このワックス相を、高剪断ミキサー[ラボラトリーシルバーソンホモ
ジナイザー(Laboratory Silverson homogeniser)]の下で上記水相に添加して、8ミクロンないし10ミクロンの平均粒径を有するモルテンワックス液滴を水中に形成した。
その後、水中油エマルジョンを1L反応フラスコに移し、そして機械的撹拌下で、35℃で2時間、その後、60℃で2時間、撹拌した。この壁形成反応の後、マイクロカプセル分散液を室温に冷却し、そして水酸化ナトリウム希薄水溶液を用いて、混合物のpHを7.0に調節した。
光学顕微鏡下での生成物の検査において、顕微鏡は、カプセル封入されたワックスマイクロカプセルの存在を明確に示した。
【0028】
実施例4:
この実施例は、実施例1のマイクロカプセルが、テキスタイルにポリマー状マトリックス粒子を固定する、パジング工程に導入され得ることを示している。
実施例1のマイクロカプセル5g/Lを用いて、pH4において、表1に示される四つの異なる処理条件(R0 、R1 、R2 及びR3 )の下で、綿ファブリックを、捕捉率100%までパジングした。
【表1】

四つの異なる条件下で処理された綿ファブリックを、下記条件により、ウォスケーター(Wascator)FOM71MPLAB中で、0回、1回、5回、10回及び20回、洗浄した。 洗剤:IEC−標準洗剤タイプA(IEC−A* )30g
水:1リットル
洗浄温度:40℃
洗浄時間:10分
すすぎ:水各20リットルを用いて1分間、を2回
マイクロカプセルのコア中のカーボンブラックマーカーは、データーカラー(Datacolor)+ヘリオス(Helios)により測定した。
表2は、異なる洗浄回数におけるマイクロカプセルの永続性を示す。
【表2】

カーボンブラックマーカーを持つ実施例1のマイクロカプセルの適用は、高い洗浄耐久性を与えた。カチオン性のみでは、20回の洗浄において30%ないし40%の耐久性を
もたらした。
170℃におけるMgCl2 触媒を介するメチロール基の活性化は、洗浄耐久性を70%に高めた。化学バインダーの添加によりもたらされた利点喪失は、R2 とR3 の似た様な挙動により示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ−又はナノ範囲にあるカプセルであって、カチオン性基及び繊維反応性基を表面の外側に有することを特徴とするカプセル。
【請求項2】
ポリマー状シェル内に活性成分を含むコアを有するマイクロカプセルであることを特徴とする、請求項1に記載のカプセル。
【請求項3】
前記カプセルが、マトリックスを通して一様に分散される活性成分を持つマトリックスポリマーを含む、請求項1又は2に記載のカプセル。
【請求項4】
前記カプセルの寸法が10nmないし500μm、好ましくは100nmないし100μm、より好ましくは100nmないし50μmであることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載のカプセル。
【請求項5】
表面のカチオン性基対表面の繊維反応性基の比率が50:1ないし1:1まで、好ましくは40:1ないし2:1までであることを特徴とする、請求項1、2、3又は4に記載のカプセル。
【請求項6】
表面の外側のカチオン性基が第四級アンモニウム基である、請求項1ないし5の何れか一項に記載のカプセル。
【請求項7】
前記反応性基がメチル基;2,4−ジクロロ−1,3,5−トリアジン(DCT)基;−F、−OH、−O−炭素原子数1ないし4のアルキル、−NH2 、−NH(炭素原子数1ないし4のアルキル)又は−N(炭素原子数1ないし4のアルキル)2 からなる群から選択された一つの置換基によりトリアジンが更に置換され得るモノ−クロロトリアジン(MCT)基;−F、−OH、−O−炭素原子数1ないし4のアルキル、−NH2 、−NH(炭素原子数1ないし4のアルキル)及び/又は−N(炭素原子数1ないし4のアルキル)2 からなる群から選択された一つの置換基によりトリアジンが更に置換され得るモノ−フルオロトリアジン基;2−スルホオキシエチルスルホニル基;2−クロロエチルスルホニル基;ビニルスルホニル基;アルコキシクロロトリアジン基:又は、2−(スルホチオ)エチルスルホニル基;トリクロロピリミジン基;ジフルオロクロロピリミジン(DFCP)基;ジクロロキノキサリン基、2,3−ジクロロ−チノキサリン(DCC)基及び3−クロロプロピオナミン(CPA)基である、請求項1ないし6の何れか一項に記載のカプセル。
【請求項8】
前記コアが固体状化合物又は液体状化合物である、請求項1ないし7の何れか一項に記載のカプセル。
【請求項9】
活性物質を吸収し且つ保持することが可能な第二ポリマー粒子をマトリックス内に有する、請求項1ないし8の何れか一項に記載のカプセル。
【請求項10】
前記コアが紫外線吸収剤、紫外線反射材、活性染料トレーサー物質、酵素、洗浄剤ビルダー、生物活性又は抗微生物/抗真菌剤、帯電防止剤、薬及び医薬、日焼け防止剤、染料、顔料、着色剤、芳香剤及び香料、難燃剤又は火炎抑制剤、金属性反射材コロイド、反射性粒子、磁性粒子、サーモクロミック材料、防虫剤、熱吸収性又は熱排出性相変化剤、漂白触媒、漂白活性剤、軟化剤、ファブリック柔軟剤、ゼオライト及び活性炭のような活性物質を含む、請求項1ないし9の何れか一項に記載のカプセル。
【請求項11】
請求項1ないし10の何れか一項に記載のカプセルを含む、液体状配合物。
【請求項12】
請求項1ないし10の何れか一項に記載のカプセル又は請求項11に記載の配合物を使用して製造された材料。
【請求項13】
前記材料が繊維、ヤーン、ファブリック、テキスタイル、紙又は最終物品である、請求項12に記載の材料。

【公表番号】特表2009−517551(P2009−517551A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541720(P2008−541720)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068664
【国際公開番号】WO2007/063001
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】