カメラの露出装置
【課題】装置の大型化を招くことなく、広い範囲の光量調節を可能とする。
【解決手段】被写体光を導く開口部1aを備える本体部1と、開口部1aを通過する光の光路中に進退可能に配置されるとともに、互いに相対回転可能な2枚の偏光板A,Bと、2枚の偏光板を互いに相対回転させる駆動と、2枚の偏光板を光路中に進退させる駆動とを行なう1つの駆動モータ8とを具備する。
【解決手段】被写体光を導く開口部1aを備える本体部1と、開口部1aを通過する光の光路中に進退可能に配置されるとともに、互いに相対回転可能な2枚の偏光板A,Bと、2枚の偏光板を互いに相対回転させる駆動と、2枚の偏光板を光路中に進退させる駆動とを行なう1つの駆動モータ8とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体からの光量を広い範囲にわたって調節可能なカメラの露出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラなどの撮影装置において被写体の光量を調節する機構として、遮光性のある羽根を用い、光の通過面積を任意に増減させて露出量を制御する絞り装置が一般的に知られている。
【0003】
しかしながら、明るい被写体を適正な露光量で撮影する場合に、絞り開口径を小さくしすぎると、光の回折現象によって解像度の低下を招く恐れがある。
【0004】
そのため、絞り装置には、光の通過面積を制御する絞り羽根とは別に、減光フィルターを開口部に出し入れできるようにしたものが知られている。被写体光が明るく、絞り羽根による開口では回折現象が発生すると判断された場合には、絞り羽根の開口面積は回折現象が起きない範囲までしか制御せず、それ以上の光量の減衰のために減光フィルターを開口部に挿入させるものである。
【0005】
このような露出装置では、絞り羽根の制御に加え減光フィルターの制御も必要であり、更に減光フィルターの濃度が均一であると、露出の制御範囲は限られてしまうという問題があった。減光フィルターを多段濃度に製作し、絞り羽根と独立して制御できれば比較的露出の制御範囲が広くなるがコストアップの要因となってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、特開2004−118033号公報(特許文献1)には、光の通過面積を制御する絞り羽根とは別に、絞り開口部内に2つの偏光板を備え、一方の偏光板を相対的に回転させることで、回折現象を起こすことなく連続的に露光量を調整するカメラが提案されている。
【特許文献1】特開2004−118033号公報
【特許文献2】特開平5−323264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の技術では、2つの偏光板は常に露光開口部内に配置されており、位相を一致させた場合でも、ある偏光成分がカットされてしまうので任意の撮影状態が得られず、被写体の色相や、反射物の写り方が意図しないものになってしまうという問題があった。
【0008】
また、2つの偏光板の位相を一致させた場合に最も透過光量が多くなるが、偏光板面による反射・吸収により僅かな光量の減衰が起こる可能性があり、暗い被写体を撮影する場合に光量が不足してしまうという問題があった。
【0009】
このような問題を解決する1つの方法としては、特開平5−323264号公報(特許文献2)に開示されているように、2枚の偏光板の相対的な位相を変化させることで通過光量を制御するとともに、2枚の偏光板を光路から退避させることができるように構成することが考えられる。
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載されているような構成をとろうとすると、2枚の偏光板の相対的な位相を変化させるための駆動源と、2枚の偏光板を光路から退避させるための駆動源の2つの駆動源が必要となり、駆動源の配置スペースが大きくなり、装置の大型化及びコストアップを招くという問題点がある。
【0011】
したがって、本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置の大型化を招くことなく、広い範囲の光量調節を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係わるカメラの露出装置は、被写体光を導く開口部を備える本体部と、前記開口部を通過する光の光路中に進退可能に配置されるとともに、互いに相対回転可能な2枚の偏光板と、前記2枚の偏光板を互いに相対回転させる駆動と、前記2枚の偏光板を前記光路中に進退させる駆動とを行なう1つの駆動源と、を具備することを特徴とする。
【0013】
また、この発明に係わるカメラの露出装置において、前記駆動源は、前記2枚の偏光板の相対回転角度を一定に保ったまま一体的に回転させる駆動をさらに行なうことを特徴とする。
【0014】
また、この発明に係わるカメラの露出装置において、前記駆動源は、前記2枚の偏光板を互いに相対回転させる駆動を行なった後に、前記2枚の偏光板の相対回転角度を一定に保ったまま一体的に回転させる駆動を行ない、該一体的に回転させる駆動を行なった後に、前記2枚の偏光板を前記光路中から退避させる駆動を行なうことを特徴とする。
【0015】
また、この発明に係わるカメラの露出装置において、前記2枚の偏光板を互いに相対回転させる駆動では、前記2枚の偏光板を相対的に略90°回転させて、前記2枚の偏光板の位相を一致させるとともに、前記2枚の偏光板の相対回転角度を一定に保ったまま一体的に回転させる駆動では、位相が一致した前記2枚の偏光板を一体的に略90°回転させることを特徴とする。
【0016】
また、この発明に係わるカメラの露出装置において、前記開口部を開閉するための絞り羽根と、該絞り羽根を、前記偏光板の駆動とは独立して駆動するための駆動手段とをさらに具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、装置の大型化を招くことなく、広い範囲の光量調節が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な一実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係わるカメラの露出装置を被写体側から見た構成を示す分解斜視図であり、図2は結像面側から見た構成を示す分解斜視図である。なお、被写体側と結像面側を入れ替えることはもちろん可能である。
【0020】
被写体光を通過させる開口部1aが設けられた地板1の被写体側に、同じく開口部2dを備え、絞り地板1の開口部1aから退避することができる偏光駆動板2が設けられている。偏光駆動板2上に偏光板Aを固定した偏光板A枠3が設けられ、さらに偏光板A枠の上に偏光板Bを固定した偏光板B枠5が備えられている。偏光駆動板2の外周部には偏光板A枠3をガイドするための壁部2eが設けられており、偏光板A枠3の外周部が偏光駆動板2の壁部2eの内周部に嵌合することにより、偏光駆動板2に設けられた開口部2dに対して偏光板Aは同軸に回転可能となっている。さらに偏光板A枠3の内周部には偏光板B枠5が嵌合し、偏光板Aと偏光板Bも同軸に回転可能になされている。
【0021】
偏光板A枠3の外周部には歯車部3cが形成されており、偏光板駆動ギヤ7と噛み合っている。偏光板駆動ギヤ7には地板1に面する側に偏光駆動板2を駆動するための駆動ピン7aが備えられ、図14に示す偏光駆動板の溝部2aに嵌合している。偏光板駆動ギヤ7の回転中心7bと偏光駆動板2の回転中心軸2fは同軸に設けられている。中心に開口部9aを有するカバー板9により、これら偏光駆動板2、偏光板A枠3、偏光板B枠5、偏光板駆動ギヤ7が地板1との間でそれぞれ回転可能に保持されている。偏光板駆動ギヤ7はカバー板9上に固定された偏光板駆動モータ8の出力軸8aに固定されており、偏光板駆動モータ8を駆動させることにより露出動作を行う。
【0022】
地板1の結像面側には、羽根12,13および羽根カバー14が設けられ、地板1に固定された絞りモータ11により羽根12,13が駆動される。
【0023】
図3および図4は組立後の露出装置全体を表す外観斜視図である。
【0024】
次に、本実施形態のカメラの露出装置の動作について図5乃至図9および図14を用いて説明する。図5乃至図9および図14は装置の動作を示すために偏光板カバー9を取り除いた状態の露出装置を被写体側から見た平面図である。
【0025】
図5は地板1の開口部1aを偏光板A、偏光板Bが共に覆った状態を示しており、偏光板Aと偏光板Bの位相は90°ずれた状態となっている。従って透過光量が最小となった状態を示している。この図5の部品構成を示すために更に拡大した図が図14である。
【0026】
偏光駆動板2には左旋回方向に偏光駆動板バネ21が掛けられており、地板1の開口部1aと偏光駆動板2の開口部2cが一致するように位置決めされている。偏光駆動板2の回転中心軸2eの外周部分には円弧状の溝部2aが設けられており、偏光板駆動モータ8の駆動力を伝達する偏光板駆動ギヤ7から伸びた軸部7aが溝部2aに嵌合している。偏光板駆動ギヤ7は最も左旋回した状態となっており、偏光板A枠3の外周部に設けられた歯車部3cと噛み合っている。このとき偏光板A枠3の内周部の凸部3aと偏光板B枠5の外周部の凸部5bが当接した状態となっている。
【0027】
偏光駆動板2と偏光板B枠5の間には右旋回方向に偏光板B枠バネ22が掛けられており、偏光板B枠5の腕部5cが偏光駆動板2の外周部の軸部2cと当接し、偏光板B枠5の回転止めとなっている。
【0028】
この状態から偏光板駆動モータ8を右旋回方向に駆動すると、偏光板駆動ギヤ7も右旋回し、偏光板A枠3の歯車部3cを左旋回させることで偏光板Aは開口部1aに対して左旋回していく。このとき偏光板駆動ギヤ7の駆動ピン7aは偏光駆動板2の溝部2a内を回転移動するだけなので偏光駆動板2は静止したままである。更に偏光板B枠5もバネ22により偏光駆動板2にガタ寄せされているので静止したままである。従って、偏光板駆動モータ8の右回転により、偏光板Aのみが左旋回することとなり、偏光板Bと位相をずらしながら開口部1aの透過光量を徐々に多くすることができる。
【0029】
図5の状態から、偏光板Aが90°左回転した状態が図6である。このとき偏光板A枠3の凸部3aは偏光板B枠5の凸部5aに当接した状態となる。そして偏光板Aと偏光板Bの位相が揃った状態となっており、透過光量が最大となる。
【0030】
透過光量を制御したい場合には、カメラの測光部からの指令や、任意の光量設定を行うことにより、図5と図6の間で偏光板駆動モータ8を制御する。この図5と図6の間の区間のモータ制御を「絞り制御モード」とし、カメラの露出制御モードが「絞り制御モード」となった場合には図5と図6の間で上記の動作を行えるようにする。なお、偏光板駆動モータ8の制御方法は、例えば透過光量を検知するためのカメラ側の測光部と、偏光板駆動モータ8の回転を検知する手段あるいは偏光板Aの回転移動位置を検知する手段を用い、所定の透過光量となるように偏光板駆動モータ8を駆動する。
【0031】
図6の状態から更に偏光板駆動モータ8を右回転させていくと、偏光板駆動ギヤ7は右旋回し、偏光板A枠3は外周部の歯車部3cが噛み合ってさらに左旋回する。偏光板駆動ギヤ7の駆動ピン7aは偏光駆動板2の溝部2aに嵌合しているが、接触することなく回転が可能である。従って偏光駆動板2は静止した状態のままである。偏光板Bは、偏光板B枠5の凸部5aが偏光板A枠3の凸部3aと当接した状態であるので偏光板A枠3の左旋回と一体となって偏光板B枠5と共に左旋回することになる。
【0032】
従って、図6の状態から図7の状態までは偏光板Aと偏光板Bは位相を揃えた状態で90°回転することができるようになっている。このとき図14に示した偏光板B枠5と偏光駆動板2に掛けられた偏光板B枠バネ22に抗して偏光板B枠5が左旋回することになるが、偏光板B枠バネ22のバネ力はそれ程強いものではなく、偏光板駆動モータ8および歯車7,3cの減速比により作動に影響を及ぼすことは無い。むしろこの偏光板B枠バネ22により歯車の噛み合いガタや摺動部のガタを無くし動作を安定させることが出来る。図7の状態になると偏光板駆動ギヤ7の駆動ピン7aが偏光駆動板2の溝部2aの端面2gに当接する。
【0033】
被写体光の偏光成分を制御したい場合には、カメラからの指令(例えば、偏光成分を別の手段などで測定し、最も偏光成分をカットする角度を算出して偏光板駆動モータ8を動作させる)や、任意の偏光制御操作を使用者が行う(例えば、カメラボディやレンズ鏡筒外周部に偏光制御用のレバーやスイッチなどの操作部を設け、ユーザーが操作することにより、任意の偏光効果を得ることが出来るようにする)ことにより、図6と図7の間で偏光板駆動モータ8を制御する。
【0034】
この図6と図7の区間のモータ制御を「偏光制御モード」とし、カメラの露出モードが「偏光制御モード」となった場合には図6と図7の間で上記の動作を行えるようにする。
【0035】
図7の状態から更に偏光板駆動モータ8を右回転させていくと、偏光板駆動ギヤ7は右旋回するが、このとき偏光板駆動ギヤ7の駆動ピン7aは偏光駆動板2の溝部2aの端面2gに当接していることから、偏光板駆動モータ8の回転と同時に、偏光駆動板2が右旋回する。偏光板A枠3および偏光板B枠5も偏光駆動板2と一体となって右旋回する。このとき図14に示した偏光駆動板2と地板1に掛けられた偏光駆動板バネ21に抗して偏光駆動板2が右旋回することになるが、偏光駆動板バネ21のバネ力はそれ程強いものではなく、偏光板駆動モータ8により作動に影響を及ぼすことは無い。むしろこのバネにより摺動部のガタを無くし動作を安定させることが出来る。図8は偏光駆動板2が地板1の開口部1aから退避する途中の状態を示し、図9が偏光駆動板2が地板1の開口部1aから完全に退避した状態を示した図である。
【0036】
偏光板A,Bを開口部1aから完全に退避したい場合には、カメラからの指令や、任意の設定を行うことにより、図9の状態になるまで偏光板駆動モータ8を右回転させるように制御する。この図9の開口全開状態にするモータ制御を「全開モード」とし、カメラの露出制御モードが「全開モード」となった場合には図9の状態となるように動作を行う。
【0037】
なお、図9の状態となったことを検知する検知手段として、偏光駆動板2と地板1の間に機械的な検知手段(金属接点)や光学的検知手段(PI:ホトインタラプター)などを設けても良いし、偏光板駆動モータ8の回転を検知する手段により検知するようにしてももちろん良い。
【0038】
本装置が備わったカメラ装置には、光学的な絞り装置も備え、本装置と合わせて絞り効果を発揮するような構成でももちろん良い。図10乃至図12を用いて絞り羽根の動作を説明する。
【0039】
地板1の結像面側に2枚の羽根12,13が設けられており、地板1の被写体側に絞りモータ11が設けられている。2枚の羽根12,13は絞りモータ11に固定された羽根駆動ピン11aで連結されている。絞りモータ11を地板1の被写体側に設けることで、結像面側のスペースを広げることができ、レンズ鏡筒内の他の部品レイアウトの自由度を増すことができるが、これに限定されるものではなく、羽根カバー14の結像面側などに設けてももちろん良い。
【0040】
図10は羽根が全開している状態であり、絞りモータ11に通電することで羽根駆動ピン11aが右旋回し、羽根12,13により開口部1aを閉じてゆく。図11が開口部1aを略半分閉じた状態であり、図12が開口部1aを全て閉じた状態である。絞りモータ11への電力を制御することで、遮光用の羽根12,13により開口部1aの開口面積を変化させることができるようになっている。
【0041】
図10乃至図12では、偏光板A、偏光板Bが開口部から退避した「全開モード」状態となっているが、絞りモータ11は独立に制御可能となっており、前記それぞれの露出制御モード(「絞り制御モード」、「偏光制御モード」、「全開モード」)で独立して羽根12,13の制御が可能となっている。従って、偏光板を用いた露出制御と併せて光学的な絞り羽根制御が行えるので、露出制御の選択幅を広げることが出来る。
【0042】
例えば被写体光が非常に明るい場合には、図13に示すように偏光板Aと偏光板Bの位相が略45°ずれた状態として被写体光を減光するとともに絞り羽根12,13は中間絞り状態として撮影を行うことが出来る。偏光板Aと偏光板Bによる減光作用が無いと絞り羽根は更に開口径を小さくする必要があるが、偏光板Aと偏光板Bの減光作用により開口面積が小さくなりすぎて回折現象によりフレアが発生した状態の画像となってしまうことを防止できる。また、絞り開口径をある程度大きい状態に保って適正露出の撮影が可能となるので、被写界深度がある程度浅い、すなわちボケ効果を生かした画像を得ることも可能となる。被写界深度をさらに浅くしたい場合には、偏光板A,Bの位相差を更に大きくして減光効果を得るとともに、羽根12,13による絞り開口径を大きくすればよく、逆に被写界深度を深くしたい場合には、偏光板A,Bの位相差を小さくして減光効果を減らすとともに、羽根12,13による絞り開口径を小さくすればよい。
【0043】
また、偏光効果を得たい場合には、「偏光制御モード」を選択し、2つの偏光板A,Bを位相を揃えた状態で開口部1aへ進入させ、任意の偏光効果を得られる角度に偏光板A,Bを操作するとともに、露出制御のために絞り羽根12,13を適正な絞り径となるように偏光板A,Bの操作に連動して制御するようにもできる。従来の偏光板は、レンズの前面などに取り付けられ、手で操作するものであったために操作がやり難かったが、本実施形態では、レンズ鏡筒内に内蔵されており、電動駆動モータ8によって作動されるので操作性を向上させることができる。
【0044】
なお、2枚の絞り羽根12,13は、絞り動作に用いられるだけではなく、絞りモータ11へある程度大きい通電を瞬時に行うことで羽根を高速に閉じ作動させて、シャッターとして用いることが出来ることは言うまでも無い。
【0045】
また、本装置には絞り羽根を構成せずに、別の絞りユニットやシャッターユニットを組み合わせてそれぞれが協働して露出制御を行うようにしてももちろん良い。
【0046】
また、本装置は、カメラ装置のレンズ鏡筒内に収納される、露出制御装置として用いられるものであるが、カメラ本体とレンズ鏡筒部分が一体的に組み立てられたコンパクトタイプのカメラ用の露出制御装置でも、レンズ鏡筒がカメラ本体から着脱可能な交換レンズ鏡筒用の露出制御装置でもよいことは言うまでも無い。
【0047】
以上説明したように、上記の実施形態によれば、露光量の調整が必要ない場合には偏光板を開口部から退避させるとともに、露光量の調整が必要な場合には、2枚の偏光板を開口部に進入させ、一方の偏光板を他方の偏光板に対して相対的に回転していくことにより、連続した詳細な光量調節が可能となる。
【0048】
また、上記の実施形態の露出装置をデジタルカメラなどの表示モニターを備えたカメラに用いると、光量調節の機能以外に、被写体光を表示モニターで確認しながら2枚の偏光板の位相が揃った状態で回転することにより、被写体からの偏光成分を任意に設定することができ、例えば青空の色や樹葉等の色彩コントラストを上げたり、水面・ガラス面等の反射光の成分をカットすることが可能となる。
【0049】
また、開口部が全開した「全開モード」と、2枚の偏光板の相対回転による絞り効果を得る「絞り制御モード」と、2枚の偏光板の同時回転による「偏光制御モード」を任意に選択すると共に、それぞれのモード内で絞り羽根の制御を行うことで様々な露出効果を得ることが出来る。
【0050】
また、1つの駆動源により、2枚の偏光板の相対回転動作と、偏光板の開口部からの退避動作とを行なうことができるので、露出装置の小型化、低コスト化が可能となる。
【0051】
また、1つの駆動源により、2枚の偏光板の相対回転動作と、2枚の偏光板を一体的に回転させる動作とを行なうことができるので、露出装置の小型化、低コスト化が可能となる。
【0052】
また、偏光板による露出制御と遮光羽根による露出制御を組み合わせて光量を調節できるので、露出制御の選択の幅が広くなり、例えば、明るい被写体に対しても、偏光板による減光効果と遮光羽根による光量制御を組み合わせることで被写体深度が浅いボケ効果を生かした画像を得ることができる。また、偏光効果を得た状態で、その偏光状態での適正露出を遮光羽根で得るように制御することができる。
【0053】
そして、2枚の偏光板の相対位置を連続的に変えることによって、透過光量を連続的に変化させて詳細な露出制御を行うステップと、2枚の偏光板の位相を揃えた状態で回転させることで、任意の偏光成分を得る偏光効果制御ステップと、2枚の偏光板を露光開口から退避させて透過光量を最大にするステップを備えることで、小型でありながら露出モードが多彩な絞り装置を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係わるカメラの露出装置を被写体側から見た構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わるカメラの露出装置を結像面側から見た構成を示す分解斜視図である。
【図3】組立後の露出装置全体を被写体側から見た外観斜視図である。
【図4】組立後の露出装置全体を結像面側から見た外観斜視図である。
【図5】偏光板の動作を説明する平面図である。
【図6】偏光板の動作を説明する平面図である。
【図7】偏光板の動作を説明する平面図である。
【図8】偏光板の動作を説明する平面図である。
【図9】偏光板の動作を説明する平面図である。
【図10】偏光板と絞り羽根の動作を説明する平面図である。
【図11】偏光板と絞り羽根の動作を説明する平面図である。
【図12】偏光板と絞り羽根の動作を説明する平面図である。
【図13】偏光板と絞り羽根の動作を説明する平面図である。
【図14】偏光板の構成を示す詳細平面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 地板
1a 開口部
2 偏光駆動板
2a 溝部
3 偏光板A枠
4 偏光板A
5 偏光板B枠
6 偏光板B
7 偏光板駆動ギヤ
7a 駆動ピン
8 偏光板駆動モータ
9 偏光板カバー
9a 開口部
10 ネジ
11 絞りモータ
11a 羽根駆動ピン
12 羽根
13 羽根
14 羽根カバー
15 ネジ
21 偏光駆動板バネ
22 偏光板B枠バネ
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体からの光量を広い範囲にわたって調節可能なカメラの露出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラなどの撮影装置において被写体の光量を調節する機構として、遮光性のある羽根を用い、光の通過面積を任意に増減させて露出量を制御する絞り装置が一般的に知られている。
【0003】
しかしながら、明るい被写体を適正な露光量で撮影する場合に、絞り開口径を小さくしすぎると、光の回折現象によって解像度の低下を招く恐れがある。
【0004】
そのため、絞り装置には、光の通過面積を制御する絞り羽根とは別に、減光フィルターを開口部に出し入れできるようにしたものが知られている。被写体光が明るく、絞り羽根による開口では回折現象が発生すると判断された場合には、絞り羽根の開口面積は回折現象が起きない範囲までしか制御せず、それ以上の光量の減衰のために減光フィルターを開口部に挿入させるものである。
【0005】
このような露出装置では、絞り羽根の制御に加え減光フィルターの制御も必要であり、更に減光フィルターの濃度が均一であると、露出の制御範囲は限られてしまうという問題があった。減光フィルターを多段濃度に製作し、絞り羽根と独立して制御できれば比較的露出の制御範囲が広くなるがコストアップの要因となってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、特開2004−118033号公報(特許文献1)には、光の通過面積を制御する絞り羽根とは別に、絞り開口部内に2つの偏光板を備え、一方の偏光板を相対的に回転させることで、回折現象を起こすことなく連続的に露光量を調整するカメラが提案されている。
【特許文献1】特開2004−118033号公報
【特許文献2】特開平5−323264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の技術では、2つの偏光板は常に露光開口部内に配置されており、位相を一致させた場合でも、ある偏光成分がカットされてしまうので任意の撮影状態が得られず、被写体の色相や、反射物の写り方が意図しないものになってしまうという問題があった。
【0008】
また、2つの偏光板の位相を一致させた場合に最も透過光量が多くなるが、偏光板面による反射・吸収により僅かな光量の減衰が起こる可能性があり、暗い被写体を撮影する場合に光量が不足してしまうという問題があった。
【0009】
このような問題を解決する1つの方法としては、特開平5−323264号公報(特許文献2)に開示されているように、2枚の偏光板の相対的な位相を変化させることで通過光量を制御するとともに、2枚の偏光板を光路から退避させることができるように構成することが考えられる。
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載されているような構成をとろうとすると、2枚の偏光板の相対的な位相を変化させるための駆動源と、2枚の偏光板を光路から退避させるための駆動源の2つの駆動源が必要となり、駆動源の配置スペースが大きくなり、装置の大型化及びコストアップを招くという問題点がある。
【0011】
したがって、本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置の大型化を招くことなく、広い範囲の光量調節を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係わるカメラの露出装置は、被写体光を導く開口部を備える本体部と、前記開口部を通過する光の光路中に進退可能に配置されるとともに、互いに相対回転可能な2枚の偏光板と、前記2枚の偏光板を互いに相対回転させる駆動と、前記2枚の偏光板を前記光路中に進退させる駆動とを行なう1つの駆動源と、を具備することを特徴とする。
【0013】
また、この発明に係わるカメラの露出装置において、前記駆動源は、前記2枚の偏光板の相対回転角度を一定に保ったまま一体的に回転させる駆動をさらに行なうことを特徴とする。
【0014】
また、この発明に係わるカメラの露出装置において、前記駆動源は、前記2枚の偏光板を互いに相対回転させる駆動を行なった後に、前記2枚の偏光板の相対回転角度を一定に保ったまま一体的に回転させる駆動を行ない、該一体的に回転させる駆動を行なった後に、前記2枚の偏光板を前記光路中から退避させる駆動を行なうことを特徴とする。
【0015】
また、この発明に係わるカメラの露出装置において、前記2枚の偏光板を互いに相対回転させる駆動では、前記2枚の偏光板を相対的に略90°回転させて、前記2枚の偏光板の位相を一致させるとともに、前記2枚の偏光板の相対回転角度を一定に保ったまま一体的に回転させる駆動では、位相が一致した前記2枚の偏光板を一体的に略90°回転させることを特徴とする。
【0016】
また、この発明に係わるカメラの露出装置において、前記開口部を開閉するための絞り羽根と、該絞り羽根を、前記偏光板の駆動とは独立して駆動するための駆動手段とをさらに具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、装置の大型化を招くことなく、広い範囲の光量調節が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な一実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係わるカメラの露出装置を被写体側から見た構成を示す分解斜視図であり、図2は結像面側から見た構成を示す分解斜視図である。なお、被写体側と結像面側を入れ替えることはもちろん可能である。
【0020】
被写体光を通過させる開口部1aが設けられた地板1の被写体側に、同じく開口部2dを備え、絞り地板1の開口部1aから退避することができる偏光駆動板2が設けられている。偏光駆動板2上に偏光板Aを固定した偏光板A枠3が設けられ、さらに偏光板A枠の上に偏光板Bを固定した偏光板B枠5が備えられている。偏光駆動板2の外周部には偏光板A枠3をガイドするための壁部2eが設けられており、偏光板A枠3の外周部が偏光駆動板2の壁部2eの内周部に嵌合することにより、偏光駆動板2に設けられた開口部2dに対して偏光板Aは同軸に回転可能となっている。さらに偏光板A枠3の内周部には偏光板B枠5が嵌合し、偏光板Aと偏光板Bも同軸に回転可能になされている。
【0021】
偏光板A枠3の外周部には歯車部3cが形成されており、偏光板駆動ギヤ7と噛み合っている。偏光板駆動ギヤ7には地板1に面する側に偏光駆動板2を駆動するための駆動ピン7aが備えられ、図14に示す偏光駆動板の溝部2aに嵌合している。偏光板駆動ギヤ7の回転中心7bと偏光駆動板2の回転中心軸2fは同軸に設けられている。中心に開口部9aを有するカバー板9により、これら偏光駆動板2、偏光板A枠3、偏光板B枠5、偏光板駆動ギヤ7が地板1との間でそれぞれ回転可能に保持されている。偏光板駆動ギヤ7はカバー板9上に固定された偏光板駆動モータ8の出力軸8aに固定されており、偏光板駆動モータ8を駆動させることにより露出動作を行う。
【0022】
地板1の結像面側には、羽根12,13および羽根カバー14が設けられ、地板1に固定された絞りモータ11により羽根12,13が駆動される。
【0023】
図3および図4は組立後の露出装置全体を表す外観斜視図である。
【0024】
次に、本実施形態のカメラの露出装置の動作について図5乃至図9および図14を用いて説明する。図5乃至図9および図14は装置の動作を示すために偏光板カバー9を取り除いた状態の露出装置を被写体側から見た平面図である。
【0025】
図5は地板1の開口部1aを偏光板A、偏光板Bが共に覆った状態を示しており、偏光板Aと偏光板Bの位相は90°ずれた状態となっている。従って透過光量が最小となった状態を示している。この図5の部品構成を示すために更に拡大した図が図14である。
【0026】
偏光駆動板2には左旋回方向に偏光駆動板バネ21が掛けられており、地板1の開口部1aと偏光駆動板2の開口部2cが一致するように位置決めされている。偏光駆動板2の回転中心軸2eの外周部分には円弧状の溝部2aが設けられており、偏光板駆動モータ8の駆動力を伝達する偏光板駆動ギヤ7から伸びた軸部7aが溝部2aに嵌合している。偏光板駆動ギヤ7は最も左旋回した状態となっており、偏光板A枠3の外周部に設けられた歯車部3cと噛み合っている。このとき偏光板A枠3の内周部の凸部3aと偏光板B枠5の外周部の凸部5bが当接した状態となっている。
【0027】
偏光駆動板2と偏光板B枠5の間には右旋回方向に偏光板B枠バネ22が掛けられており、偏光板B枠5の腕部5cが偏光駆動板2の外周部の軸部2cと当接し、偏光板B枠5の回転止めとなっている。
【0028】
この状態から偏光板駆動モータ8を右旋回方向に駆動すると、偏光板駆動ギヤ7も右旋回し、偏光板A枠3の歯車部3cを左旋回させることで偏光板Aは開口部1aに対して左旋回していく。このとき偏光板駆動ギヤ7の駆動ピン7aは偏光駆動板2の溝部2a内を回転移動するだけなので偏光駆動板2は静止したままである。更に偏光板B枠5もバネ22により偏光駆動板2にガタ寄せされているので静止したままである。従って、偏光板駆動モータ8の右回転により、偏光板Aのみが左旋回することとなり、偏光板Bと位相をずらしながら開口部1aの透過光量を徐々に多くすることができる。
【0029】
図5の状態から、偏光板Aが90°左回転した状態が図6である。このとき偏光板A枠3の凸部3aは偏光板B枠5の凸部5aに当接した状態となる。そして偏光板Aと偏光板Bの位相が揃った状態となっており、透過光量が最大となる。
【0030】
透過光量を制御したい場合には、カメラの測光部からの指令や、任意の光量設定を行うことにより、図5と図6の間で偏光板駆動モータ8を制御する。この図5と図6の間の区間のモータ制御を「絞り制御モード」とし、カメラの露出制御モードが「絞り制御モード」となった場合には図5と図6の間で上記の動作を行えるようにする。なお、偏光板駆動モータ8の制御方法は、例えば透過光量を検知するためのカメラ側の測光部と、偏光板駆動モータ8の回転を検知する手段あるいは偏光板Aの回転移動位置を検知する手段を用い、所定の透過光量となるように偏光板駆動モータ8を駆動する。
【0031】
図6の状態から更に偏光板駆動モータ8を右回転させていくと、偏光板駆動ギヤ7は右旋回し、偏光板A枠3は外周部の歯車部3cが噛み合ってさらに左旋回する。偏光板駆動ギヤ7の駆動ピン7aは偏光駆動板2の溝部2aに嵌合しているが、接触することなく回転が可能である。従って偏光駆動板2は静止した状態のままである。偏光板Bは、偏光板B枠5の凸部5aが偏光板A枠3の凸部3aと当接した状態であるので偏光板A枠3の左旋回と一体となって偏光板B枠5と共に左旋回することになる。
【0032】
従って、図6の状態から図7の状態までは偏光板Aと偏光板Bは位相を揃えた状態で90°回転することができるようになっている。このとき図14に示した偏光板B枠5と偏光駆動板2に掛けられた偏光板B枠バネ22に抗して偏光板B枠5が左旋回することになるが、偏光板B枠バネ22のバネ力はそれ程強いものではなく、偏光板駆動モータ8および歯車7,3cの減速比により作動に影響を及ぼすことは無い。むしろこの偏光板B枠バネ22により歯車の噛み合いガタや摺動部のガタを無くし動作を安定させることが出来る。図7の状態になると偏光板駆動ギヤ7の駆動ピン7aが偏光駆動板2の溝部2aの端面2gに当接する。
【0033】
被写体光の偏光成分を制御したい場合には、カメラからの指令(例えば、偏光成分を別の手段などで測定し、最も偏光成分をカットする角度を算出して偏光板駆動モータ8を動作させる)や、任意の偏光制御操作を使用者が行う(例えば、カメラボディやレンズ鏡筒外周部に偏光制御用のレバーやスイッチなどの操作部を設け、ユーザーが操作することにより、任意の偏光効果を得ることが出来るようにする)ことにより、図6と図7の間で偏光板駆動モータ8を制御する。
【0034】
この図6と図7の区間のモータ制御を「偏光制御モード」とし、カメラの露出モードが「偏光制御モード」となった場合には図6と図7の間で上記の動作を行えるようにする。
【0035】
図7の状態から更に偏光板駆動モータ8を右回転させていくと、偏光板駆動ギヤ7は右旋回するが、このとき偏光板駆動ギヤ7の駆動ピン7aは偏光駆動板2の溝部2aの端面2gに当接していることから、偏光板駆動モータ8の回転と同時に、偏光駆動板2が右旋回する。偏光板A枠3および偏光板B枠5も偏光駆動板2と一体となって右旋回する。このとき図14に示した偏光駆動板2と地板1に掛けられた偏光駆動板バネ21に抗して偏光駆動板2が右旋回することになるが、偏光駆動板バネ21のバネ力はそれ程強いものではなく、偏光板駆動モータ8により作動に影響を及ぼすことは無い。むしろこのバネにより摺動部のガタを無くし動作を安定させることが出来る。図8は偏光駆動板2が地板1の開口部1aから退避する途中の状態を示し、図9が偏光駆動板2が地板1の開口部1aから完全に退避した状態を示した図である。
【0036】
偏光板A,Bを開口部1aから完全に退避したい場合には、カメラからの指令や、任意の設定を行うことにより、図9の状態になるまで偏光板駆動モータ8を右回転させるように制御する。この図9の開口全開状態にするモータ制御を「全開モード」とし、カメラの露出制御モードが「全開モード」となった場合には図9の状態となるように動作を行う。
【0037】
なお、図9の状態となったことを検知する検知手段として、偏光駆動板2と地板1の間に機械的な検知手段(金属接点)や光学的検知手段(PI:ホトインタラプター)などを設けても良いし、偏光板駆動モータ8の回転を検知する手段により検知するようにしてももちろん良い。
【0038】
本装置が備わったカメラ装置には、光学的な絞り装置も備え、本装置と合わせて絞り効果を発揮するような構成でももちろん良い。図10乃至図12を用いて絞り羽根の動作を説明する。
【0039】
地板1の結像面側に2枚の羽根12,13が設けられており、地板1の被写体側に絞りモータ11が設けられている。2枚の羽根12,13は絞りモータ11に固定された羽根駆動ピン11aで連結されている。絞りモータ11を地板1の被写体側に設けることで、結像面側のスペースを広げることができ、レンズ鏡筒内の他の部品レイアウトの自由度を増すことができるが、これに限定されるものではなく、羽根カバー14の結像面側などに設けてももちろん良い。
【0040】
図10は羽根が全開している状態であり、絞りモータ11に通電することで羽根駆動ピン11aが右旋回し、羽根12,13により開口部1aを閉じてゆく。図11が開口部1aを略半分閉じた状態であり、図12が開口部1aを全て閉じた状態である。絞りモータ11への電力を制御することで、遮光用の羽根12,13により開口部1aの開口面積を変化させることができるようになっている。
【0041】
図10乃至図12では、偏光板A、偏光板Bが開口部から退避した「全開モード」状態となっているが、絞りモータ11は独立に制御可能となっており、前記それぞれの露出制御モード(「絞り制御モード」、「偏光制御モード」、「全開モード」)で独立して羽根12,13の制御が可能となっている。従って、偏光板を用いた露出制御と併せて光学的な絞り羽根制御が行えるので、露出制御の選択幅を広げることが出来る。
【0042】
例えば被写体光が非常に明るい場合には、図13に示すように偏光板Aと偏光板Bの位相が略45°ずれた状態として被写体光を減光するとともに絞り羽根12,13は中間絞り状態として撮影を行うことが出来る。偏光板Aと偏光板Bによる減光作用が無いと絞り羽根は更に開口径を小さくする必要があるが、偏光板Aと偏光板Bの減光作用により開口面積が小さくなりすぎて回折現象によりフレアが発生した状態の画像となってしまうことを防止できる。また、絞り開口径をある程度大きい状態に保って適正露出の撮影が可能となるので、被写界深度がある程度浅い、すなわちボケ効果を生かした画像を得ることも可能となる。被写界深度をさらに浅くしたい場合には、偏光板A,Bの位相差を更に大きくして減光効果を得るとともに、羽根12,13による絞り開口径を大きくすればよく、逆に被写界深度を深くしたい場合には、偏光板A,Bの位相差を小さくして減光効果を減らすとともに、羽根12,13による絞り開口径を小さくすればよい。
【0043】
また、偏光効果を得たい場合には、「偏光制御モード」を選択し、2つの偏光板A,Bを位相を揃えた状態で開口部1aへ進入させ、任意の偏光効果を得られる角度に偏光板A,Bを操作するとともに、露出制御のために絞り羽根12,13を適正な絞り径となるように偏光板A,Bの操作に連動して制御するようにもできる。従来の偏光板は、レンズの前面などに取り付けられ、手で操作するものであったために操作がやり難かったが、本実施形態では、レンズ鏡筒内に内蔵されており、電動駆動モータ8によって作動されるので操作性を向上させることができる。
【0044】
なお、2枚の絞り羽根12,13は、絞り動作に用いられるだけではなく、絞りモータ11へある程度大きい通電を瞬時に行うことで羽根を高速に閉じ作動させて、シャッターとして用いることが出来ることは言うまでも無い。
【0045】
また、本装置には絞り羽根を構成せずに、別の絞りユニットやシャッターユニットを組み合わせてそれぞれが協働して露出制御を行うようにしてももちろん良い。
【0046】
また、本装置は、カメラ装置のレンズ鏡筒内に収納される、露出制御装置として用いられるものであるが、カメラ本体とレンズ鏡筒部分が一体的に組み立てられたコンパクトタイプのカメラ用の露出制御装置でも、レンズ鏡筒がカメラ本体から着脱可能な交換レンズ鏡筒用の露出制御装置でもよいことは言うまでも無い。
【0047】
以上説明したように、上記の実施形態によれば、露光量の調整が必要ない場合には偏光板を開口部から退避させるとともに、露光量の調整が必要な場合には、2枚の偏光板を開口部に進入させ、一方の偏光板を他方の偏光板に対して相対的に回転していくことにより、連続した詳細な光量調節が可能となる。
【0048】
また、上記の実施形態の露出装置をデジタルカメラなどの表示モニターを備えたカメラに用いると、光量調節の機能以外に、被写体光を表示モニターで確認しながら2枚の偏光板の位相が揃った状態で回転することにより、被写体からの偏光成分を任意に設定することができ、例えば青空の色や樹葉等の色彩コントラストを上げたり、水面・ガラス面等の反射光の成分をカットすることが可能となる。
【0049】
また、開口部が全開した「全開モード」と、2枚の偏光板の相対回転による絞り効果を得る「絞り制御モード」と、2枚の偏光板の同時回転による「偏光制御モード」を任意に選択すると共に、それぞれのモード内で絞り羽根の制御を行うことで様々な露出効果を得ることが出来る。
【0050】
また、1つの駆動源により、2枚の偏光板の相対回転動作と、偏光板の開口部からの退避動作とを行なうことができるので、露出装置の小型化、低コスト化が可能となる。
【0051】
また、1つの駆動源により、2枚の偏光板の相対回転動作と、2枚の偏光板を一体的に回転させる動作とを行なうことができるので、露出装置の小型化、低コスト化が可能となる。
【0052】
また、偏光板による露出制御と遮光羽根による露出制御を組み合わせて光量を調節できるので、露出制御の選択の幅が広くなり、例えば、明るい被写体に対しても、偏光板による減光効果と遮光羽根による光量制御を組み合わせることで被写体深度が浅いボケ効果を生かした画像を得ることができる。また、偏光効果を得た状態で、その偏光状態での適正露出を遮光羽根で得るように制御することができる。
【0053】
そして、2枚の偏光板の相対位置を連続的に変えることによって、透過光量を連続的に変化させて詳細な露出制御を行うステップと、2枚の偏光板の位相を揃えた状態で回転させることで、任意の偏光成分を得る偏光効果制御ステップと、2枚の偏光板を露光開口から退避させて透過光量を最大にするステップを備えることで、小型でありながら露出モードが多彩な絞り装置を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係わるカメラの露出装置を被写体側から見た構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わるカメラの露出装置を結像面側から見た構成を示す分解斜視図である。
【図3】組立後の露出装置全体を被写体側から見た外観斜視図である。
【図4】組立後の露出装置全体を結像面側から見た外観斜視図である。
【図5】偏光板の動作を説明する平面図である。
【図6】偏光板の動作を説明する平面図である。
【図7】偏光板の動作を説明する平面図である。
【図8】偏光板の動作を説明する平面図である。
【図9】偏光板の動作を説明する平面図である。
【図10】偏光板と絞り羽根の動作を説明する平面図である。
【図11】偏光板と絞り羽根の動作を説明する平面図である。
【図12】偏光板と絞り羽根の動作を説明する平面図である。
【図13】偏光板と絞り羽根の動作を説明する平面図である。
【図14】偏光板の構成を示す詳細平面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 地板
1a 開口部
2 偏光駆動板
2a 溝部
3 偏光板A枠
4 偏光板A
5 偏光板B枠
6 偏光板B
7 偏光板駆動ギヤ
7a 駆動ピン
8 偏光板駆動モータ
9 偏光板カバー
9a 開口部
10 ネジ
11 絞りモータ
11a 羽根駆動ピン
12 羽根
13 羽根
14 羽根カバー
15 ネジ
21 偏光駆動板バネ
22 偏光板B枠バネ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体光を導く開口部を備える本体部と、
前記開口部を通過する光の光路中に進退可能に配置されるとともに、互いに相対回転可能な2枚の偏光板と、
前記2枚の偏光板を互いに相対回転させる駆動と、前記2枚の偏光板を前記光路中に進退させる駆動とを行なう1つの駆動源と、
を具備することを特徴とするカメラの露出装置。
【請求項2】
前記駆動源は、前記2枚の偏光板の相対回転角度を一定に保ったまま一体的に回転させる駆動をさらに行なうことを特徴とする請求項1に記載のカメラの露出装置。
【請求項3】
前記駆動源は、前記2枚の偏光板を互いに相対回転させる駆動を行なった後に、前記2枚の偏光板の相対回転角度を一定に保ったまま一体的に回転させる駆動を行ない、該一体的に回転させる駆動を行なった後に、前記2枚の偏光板を前記光路中から退避させる駆動を行なうことを特徴とする請求項2に記載のカメラの露出装置。
【請求項4】
前記2枚の偏光板を互いに相対回転させる駆動では、前記2枚の偏光板を相対的に略90°回転させて、前記2枚の偏光板の位相を一致させるとともに、前記2枚の偏光板の相対回転角度を一定に保ったまま一体的に回転させる駆動では、位相が一致した前記2枚の偏光板を一体的に略90°回転させることを特徴とする請求項3に記載のカメラの露出装置。
【請求項5】
前記開口部を開閉するための絞り羽根と、該絞り羽根を、前記偏光板の駆動とは独立して駆動するための駆動手段とをさらに具備することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカメラの露出装置。
【請求項1】
被写体光を導く開口部を備える本体部と、
前記開口部を通過する光の光路中に進退可能に配置されるとともに、互いに相対回転可能な2枚の偏光板と、
前記2枚の偏光板を互いに相対回転させる駆動と、前記2枚の偏光板を前記光路中に進退させる駆動とを行なう1つの駆動源と、
を具備することを特徴とするカメラの露出装置。
【請求項2】
前記駆動源は、前記2枚の偏光板の相対回転角度を一定に保ったまま一体的に回転させる駆動をさらに行なうことを特徴とする請求項1に記載のカメラの露出装置。
【請求項3】
前記駆動源は、前記2枚の偏光板を互いに相対回転させる駆動を行なった後に、前記2枚の偏光板の相対回転角度を一定に保ったまま一体的に回転させる駆動を行ない、該一体的に回転させる駆動を行なった後に、前記2枚の偏光板を前記光路中から退避させる駆動を行なうことを特徴とする請求項2に記載のカメラの露出装置。
【請求項4】
前記2枚の偏光板を互いに相対回転させる駆動では、前記2枚の偏光板を相対的に略90°回転させて、前記2枚の偏光板の位相を一致させるとともに、前記2枚の偏光板の相対回転角度を一定に保ったまま一体的に回転させる駆動では、位相が一致した前記2枚の偏光板を一体的に略90°回転させることを特徴とする請求項3に記載のカメラの露出装置。
【請求項5】
前記開口部を開閉するための絞り羽根と、該絞り羽根を、前記偏光板の駆動とは独立して駆動するための駆動手段とをさらに具備することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカメラの露出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−337658(P2006−337658A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161420(P2005−161420)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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