カメラシステム及びレンズ鏡筒
【課題】自動合焦及び距離目盛を使用した手動合焦が可能であり、小型なカメラシステム及び該カメラシステムに用いられるレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】光軸周りの回転が可能な操作環と、光軸周りに回転可能な被係合回転部材と、を有し、手動合焦モードと自動合焦モードのいずれかを選択可能で、手動合焦モードが選択され、操作環が第1の位置にあるとき、前記操作環が回転されたときには該回転に応じて前記合焦レンズを任意の位置に駆動し、操作環が前記第2の位置にあるときには、合焦用レンズを被係合回転部材と固定部材との相対移動位置に応じて駆動部により駆動し、自動合焦モードが選択され、操作環が前記第1の位置にあるときは、操作環が回転されたときでも合焦レンズを駆動せず、操作環が第2の位置にあるときには、合焦用レンズを被係合回転部材と固定部材との相対移動位置に応じて駆動部により駆動する制御を行う制御手段と、を具備する。
【解決手段】光軸周りの回転が可能な操作環と、光軸周りに回転可能な被係合回転部材と、を有し、手動合焦モードと自動合焦モードのいずれかを選択可能で、手動合焦モードが選択され、操作環が第1の位置にあるとき、前記操作環が回転されたときには該回転に応じて前記合焦レンズを任意の位置に駆動し、操作環が前記第2の位置にあるときには、合焦用レンズを被係合回転部材と固定部材との相対移動位置に応じて駆動部により駆動し、自動合焦モードが選択され、操作環が前記第1の位置にあるときは、操作環が回転されたときでも合焦レンズを駆動せず、操作環が第2の位置にあるときには、合焦用レンズを被係合回転部材と固定部材との相対移動位置に応じて駆動部により駆動する制御を行う制御手段と、を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動合焦動作が可能なカメラシステム及び該カメラシステムに用いられるレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
手動合焦動作及び自動合焦動作が可能なカメラシステムでは、レンズ鏡筒に回転可能な操作環を備え、手動合焦動作時には操作環の回転に応じて合焦距離を変化させ、自動合焦動作時には、モータで合焦距離を変化させる構成が主に採用される。
【0003】
例えば、日本国特開平6−11643号公報には、自動合焦時には操作環が回転せず、操作環の光軸方向への位置の切替により手動合焦が可能となり、操作環の回転に応じて合焦動作を行うことが可能なレンズ鏡筒が開示されている。
【0004】
日本国特開平6−11643号公報に開示されているように、自動合焦を行い、その後に微調整のための手動合焦を行おうとしたときには、操作環を切り換えて手動合焦を行うことになる。しかし、このような構成のもとで手動合焦を行おうとすると余計な操作を必要としてしまい迅速な合焦を行えないということになってしまう。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、自動合焦及び手動合焦が可能であり、被写体に対する合焦動作を迅速に行い得るカメラシステム及び該カメラシステムに用いられるレンズ鏡筒を実現することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るカメラシステムは、固定部材と、駆動源と、合焦用レンズと、前記駆動源により駆動され、前記合焦用レンズを光軸方向に駆動する駆動部と、光軸周りに回転可能な被係合回転部材と、前記合焦用レンズを光軸方向に駆動するため、光軸方向の第1の位置及び第2の位置に位置することが可能で、前記第1の位置及び前記第2の位置それぞれの位置において光軸周りの回転が可能な操作環と、前記操作環が前記第1の位置にあるか、前記第2の位置にあるのかを検出する操作環位置検出手段と、前記操作環が前記第2の位置にあるとき、前記被係合回転部材と前記操作環とを係合させて前記操作環の回転に伴い前記被係合回転部材を回転させ、前記操作環が前記第1の位置にあるとき、前記被係合回転部材及び前記操作環を非係合とし前記操作環が回転しても前記被係合回転部材が回転しないようにする係合手段と、手動により合焦を行うことが可能な手動合焦モードと自動により合焦を行うことが可能な自動合焦モードのいずれかを選択可能な合焦モード切替操作部と、前記合焦モード切替操作部により手動合焦モードが選択され、かつ前記操作環位置検出手段により前記操作環が前記第1の位置にあると検出され、前記操作環が回転されたときには該回転に応じて前記合焦レンズを任意の位置に前記駆動部により駆動し、前記合焦モード切替操作部により手動合焦モードが選択され、かつ前記操作環位置検出手段により前記操作環が前記第2の位置にあると検出されたときには、前記合焦用レンズを前記被係合回転部材と前記固定部材との相対移動位置に応じて前記駆動部により駆動し、前記合焦モード切替操作部により自動合焦モードが選択され、かつ前記操作環位置検出手段により前記操作環が前記第1の位置にあると検出されたときには、前記操作環が回転されたときでも前記合焦レンズを駆動せず、前記合焦モード切替操作部により自動合焦モードが選択され、かつ前記操作環位置検出手段により前記操作環が前記第2の位置にあると検出されたときには、前記合焦用レンズを前記被係合回転部材と前記固定部材との相対移動位置に応じて前記駆動部により駆動する制御を行う制御手段と、
を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】カメラシステムを構成するカメラの前面側を示す斜視図である。
【図2】操作環が第1の位置に位置する状態のレンズ鏡筒の上面図である。
【図3】操作環が第2の位置に位置する状態のレンズ鏡筒の上面図である。
【図4】レンズ鏡筒の断面図である。
【図5】操作環が第1の位置に位置する状態のレンズ鏡筒の断面図である。
【図6】操作環が第2の位置に位置する状態のレンズ鏡筒の断面図である。
【図7】操作環と被係合回転部材との係合が解除された状態を説明する分解斜視図である。
【図8】操作環と被係合回転部材とが係合した状態を説明する分解斜視図である。
【図9】第2のエンコーダ部の構成を説明する斜視図である。
【図10】カメラシステムを構成するカメラの合焦動作に関わる電気回路のブロック図である。
【図11】合焦動作モード切替サブルーチンのフローチャートである。
【図12】自動合焦動作サブルーチンのフローチャートである。
【図13】手動合焦動作サブルーチンのフローチャートである。
【図14】距離指定合焦動作サブルーチンのフローチャートである。
【図15】カメラシステムの合焦動作の切り替わりをまとめた表である。
【図16】第2の実施形態のカメラシステムを構成するカメラの前面側を示す斜視図である。
【図17】第2の実施形態のカメラシステムの合焦動作に関わる電気回路のブロック図である。
【図18】第3の実施形態のカメラシステムの合焦動作モード切替サブルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
(第1の実施形態)
本実施形態のカメラシステム1は、図1に示すように、カメラ本体2及び交換レンズとしてのレンズ鏡筒10を有して構成されている。レンズ鏡筒10は、被写体像を結像するための光学系部材11を保持している。本実施形態では一例として、カメラシステム1は、カメラ本体2とレンズ鏡筒10とが離合可能な形態を有する。なお、カメラシステム1は、カメラ本体とレンズ鏡筒とが一体となった形態を有するものであってもよい。
【0009】
また、本実施形態では一例として、カメラシステム1は、カメラ本体2に撮像素子9が配設されており、いわゆる電子カメラ、デジタルカメラ等と称される、被写体像を電子的に撮像し記録する構成を有している。撮像素子9は、受光面(画素領域)に入射される光に応じた電気信号を所定のタイミングで出力するものであり、例えば電荷結合素子(CCD)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサ等の形態を有する。
【0010】
カメラシステム1は、自動合焦動作(オートフォーカス動作)が可能に構成されており、カメラ本体2に、自動合焦動作に用いられる自動合焦用センサ部が配設されている。本実施形態では一例として、カメラシステム1は、撮像素子9から出力される信号に基づいて被写体像のコントラスト値を検出し、該コントラスト値が最も高くなるように光学系部材11の焦点調節を行う、いわゆるコントラスト検出方式の自動合焦動作を行うように構成されている。すなわち、本実施形態のカメラシステム1では、撮像素子9が自動合焦用センサ部である。
【0011】
なお、カメラシステム1は、いわゆる位相差検出方式の自動合焦動作を行う構成であってもよい。この場合には、カメラ本体2に配設される被写体像の位相差を検出するセンサが自動合焦用センサ部となる。また、自動合焦用センサ部は、赤外線LEDを用いた三角測量方式による測距センサ等の他の形式のものであってもよい。
【0012】
カメラ本体2の上面部には、使用者が撮像動作の指示を入力するためのスイッチ手段であるレリーズスイッチ3、及び使用者がカメラ本体2の電源オン動作及び電源オフ動作の指示を入力するための電源スイッチ4が配設されている。
【0013】
本実施形態では、レリーズスイッチ3は、押しボタン型のスイッチであって、異なる2つのストローク量(押下量)に応じてオン状態となる、2つの第1レリーズスイッチ3a及び第2レリーズスイッチ3bを具備して構成されている。
【0014】
レリーズスイッチ3を全ストローク量の途中まで押下する、いわゆる半押し操作を行うと第1レリーズスイッチ3aがオン状態となり、レリーズスイッチ3をこの半押し操作よりもさらに押下する、いわゆる全押し操作を行うと第2レリーズスイッチ3bがオン状態となる。カメラシステム1は、第2レリーズスイッチ3bがオン状態となった場合に、撮像動作を実行し、画像を記憶する。
【0015】
なお、レリーズスイッチ3は、第1レリーズスイッチ3a及び第2レリーズスイッチ3bが離れた位置に配設される形態であってもよい。また、レリーズスイッチ3は、押しボタン型のスイッチの形態に限られるものではなく、タッチセンサ等の他の形態のスイッチによって構成される形態であってもよい。
【0016】
また、カメラ本体2には、カメラシステム1の合焦動作のモードの切り替えの指示を入力するための合焦モード切替操作部5が配設されている。使用者が合焦モード切替操作部5を操作することによって、カメラシステム1の合焦動作モードは、自動合焦動作を行う自動合焦動作モードと、手動合焦動作を行う手動合焦動作モード、及び自動合焦動作を行う自動合焦動作モードと手動合焦動作を行う手動合焦動作モードとを組み合わせたモード(以下、合焦動作自動切替モードという。)のいずれかが選択される。これらモードのカメラシステム1の動作は後述するものとする。
【0017】
図示する本実施形態の合焦モード切替操作部5は、一例として、ダイヤルスイッチの形態であり、使用者がダイヤルスイッチを回転させることによって、自動合焦動作モード、手動合焦動作モード及び合焦動作自動切替モードのいずれかを選択することが可能に構成されている。
【0018】
なお、合焦モード切替操作部5の形態は本実施形態に限られるものではなく、タッチセンサ、ボタンスイッチ、またはスライドスイッチ等であってもよい。また、合焦モード切替操作部5は、カメラ本体2が画像表示装置を備え、該画像表示装置に表示されるメニューをボタンスイッチやタッチセンサを介して選択する、いわゆるGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)によって、使用者からの合焦動作モードの切替の指示を受け付ける形態であってもよい。この場合、合焦モード切替操作部5は、GUIの表示及び操作を可能とする構成と、GUIを介して入力された使用者からの指示を記憶する構成とによって構成される。なお、合焦モード切替操作部5は、レンズ鏡筒10に配設される形態であってもよい。
【0019】
また、図示しないが、カメラ本体2には、カメラシステム1に電力を供給するための一次電池または二次電池を収容する電池収容部、及び画像を記憶するためのフラッシュメモリを収容する記憶媒体収容部が設けられている。
【0020】
本実施形態では、カメラ本体2とレンズ鏡筒10とは、一般にバヨネット式マウントと称される係合機構によって離合可能である。なお、カメラシステム1において、カメラ本体2とレンズ鏡筒10とを離合可能とする構成は本実施形態に限られるものではなく、例えばネジ機構を用いる一般にスクリュー式マウントと称される構成であってもよい。また、カメラ本体2とレンズ鏡筒10とは、嵌合や磁石等を用いた機構によって離合可能とされる構成であってもよい。
【0021】
レンズ鏡筒10は、基台部12、固定枠(第1の枠)14、合焦用枠13、駆動部15、指標表示枠16、被係合回転部材(第2の枠、表示部材、距離表示手段)18、及び操作環(回転操作部材、操作手段)17を有して構成されている。なお、被係合回転部材18は、主として円筒状の第1の円筒部材からなり、さらにその外周に嵌合される、薄く、軸方向に第1の円筒状部材よりも短い第2の円筒状部材が固定されて構成されている。そして第2の円筒状部材の外周には、後述する距離目盛18aが表示されている。以下では、被係合回転部材18は、これら第1の円筒部材と第2の円筒部材を一体のものとして説明する。
【0022】
図2に示すように、基台部12は、カメラ本体2に係合するバヨネット部12aを有する。基台部12は、バヨネット部(バヨネット爪)12aがカメラ本体2に係合することによって、カメラ本体2に対して固定される。
【0023】
図4に示すように、レンズ鏡筒10は、この基台部12に対して、撮像光学系としての複数のレンズ等からなる光学系部材11を保持する機構を有する。なお、レンズ鏡筒10が保持する光学系部材11の形態は、レンズの他に、絞り、プリズム、ミラー、フィルタ等を含むものであってもよい。
【0024】
光学系部材(光学系要素、撮像光学系)11は、一部又は全部が前記基台部12に対して光学系部材11の光軸O方向に相対的に移動することによって、合焦距離が変化するように構成されている。ここで、合焦距離の変化とは、合焦させようとする被写体までの距離を変化させることを意味する。またこれは、光学系部材11の焦点を合わせる焦点位置を変化させることを意味する。以下では、光学系部材11のうち、合焦距離を変化させる場合に光軸O方向に移動する部材を、合焦用レンズ(合焦用光学要素、合焦用光学系部材)11aと称するものとする。
【0025】
具体的に、本実施形態の光学系部材11は、光軸Oに沿って配設された複数のレンズ及び絞り機構部19を有して構成されている。そして本実施形態では、光学系部材11の複数のレンズのうちの最も後方(像側)に配設されたレンズが、合焦用レンズ11aである。
【0026】
合焦用レンズ11aは、基台部12に対して相対的に光軸O方向に進退移動可能に配設された合焦用枠13によって保持されている。合焦用枠13は、駆動部15によって、光軸O方向に駆動される。
【0027】
駆動部15の構成は特に限定されるものではないが、本実施形態では、光軸Oと略平行に配設されたスクリュー15a、スクリュー15aを回転させる駆動源(モータ)15c、及びスクリュー15aに螺合するナット15bを有して構成されている。本実施形態では一例として、駆動源15cは、ステッピングモータである。ナット15bは、スクリュー15a周りの回転を規制されており、スクリュー15aの回転に伴い光軸Oと略平行に移動する。合焦用枠13は、ナット15bに従動するようにナット15に係合している。
【0028】
駆動部15は、駆動源15cによりスクリュー15aを回転させることによって、合焦用枠15を光軸O方向に駆動する。なお、駆動部15の構成は本実施形態に限られるものではなく、リニアモータ等の他の形式であってもよい。また、駆動部15は、例えば駆動源等の一部の構成部材がカメラ本体2内に配設される構成であってもよい。
【0029】
また、光学系部材11の合焦用レンズ11a以外の部材は、基台部12に対して位置が固定された第1の枠である固定枠14によって保持されている。
【0030】
なお、本実施形態のレンズ鏡筒10は、焦点距離が固定されたいわゆる単焦点レンズの形態を有していることから、合焦用レンズ11a以外の光学系部材11は固定枠14によって保持されているが、レンズ鏡筒10が、全長が伸縮可能な、いわゆる沈胴レンズ鏡筒である場合や、焦点距離を変更可能ないわゆるズームレンズ又はバリフォーカルレンズである場合には、合焦用レンズ11a以外の光学系部材11も、基台部12に対して相対的に移動する枠部材によって保持されることは言うまでもない。
【0031】
レンズ鏡筒10の外周部には、操作環17、指標表示枠16及び表示部材である被係合回転部材18が配設されている。
【0032】
操作環17は、レンズ鏡筒10の外周部において、光学系部材11の光軸O周りに回転可能、かつ光軸O方向に進退移動可能に配設された略円筒状の部材である。操作環17は、少なくとも一部がレンズ鏡筒10の外周面上に露出しており、カメラシステム1の使用者の手指が係るように配設されている。
【0033】
具体的に本実施形態では、操作環17は、図5及び図6の断面図、及び図7及び図8の斜視図に示すように、レンズ鏡筒10の外周面上に露出して、使用者の手指が係るように外周部に凹凸が設けられた略円筒状の操作部17a、及び操作部17aの内側に所定の隙間を有して配設された略円筒状の内側円筒部(係合枠)17bの2つの略円筒状の部位を有している。
【0034】
なお、図示する本実施形態では、操作部17a及び内側円筒部17bは別部材であって、例えばネジや接着剤によって固定されることによって操作環17を構成しているが、操作部17a及び内側円筒部17bは、一体に形成される形態であってもよい。
【0035】
操作環17は、使用者の手指によって操作部17aに加えられる力によって、光軸O周りに回転する。また、操作環17は、図2及び図3に示すように、光軸O方向に所定の範囲で移動可能であって、外部からの力が加えられていない状態では移動範囲の両端のいずれか一方に選択的に位置するように配設されている。操作環17は、使用者の手指によって操作部17aに加えられる力によって、光軸O方向の移動範囲の一端から他端へ、又は他端から一端へと往復移動可能となっている。
【0036】
以下では、操作環17が選択的に位置する2つの位置のうち、光軸O方向の移動範囲の前方側(被写体側)の端部を第1の位置と称し、移動範囲の後方側(像側)の端部を第2の位置と称するものとする。
【0037】
すなわち、図2、図4、図5及び図7は、操作環17が第1の位置に位置している状態を示しており、図3、図6及び図8は、操作環17が第2の位置に位置している状態を示している。
【0038】
図5及び図6に示すように、操作環17の内周面上には、径方向内側に突出し断面が略三角形状である凸状部17cが、周方向に全周にわたって形成されている。凸状部17cは、光軸Oに沿って前方に向かうにつれて内径が小さくなり、該三角形状の頂点に至るように形成された第1斜面部17dと、第1斜面部17dの前方側において該三角形状の頂点から光軸Oに沿って前方に向かうにつれて内径が大きくなるように形成された第2斜面部17eと、を有している。
【0039】
また、操作環17の内側に配設された固定枠14には、凸状部17cに対向する箇所に貫通孔14aが穿設されている。貫通孔14a内には、ボール14bが遊嵌している。ボール14bは、固定枠14の外周面よりも外側に突出可能であって、板バネである付勢部材14cによって、固定枠14の径方向外側に向かって付勢されている。付勢部材14cは、そのバネ部分(板バネ)が固定枠14の内周面に配置されている。付勢部材14c及びボール14bは、周方向に複数箇所に配設されている。
【0040】
ボール14bは、操作環17が第1の位置に位置している場合には、凸状部17cの第1斜面部17dに当接し、操作環17が第2の位置に位置している場合には、凸状部17cの第2斜面部17eに当接する。凸状部17cが略三角形状の断面を有することから、ボール14bは、操作環17の位置に関わらず、第1斜面部17d及び第2斜面部17eのいずれかに常に当接している。
【0041】
したがって、操作環17が移動可能範囲の前方寄りに位置している場合には、操作環17は、第1斜面部17dに当接するボール14bによって前方に向かって付勢され、第1の位置において移動可能範囲の一端に当て付き、位置決めされる。
【0042】
一方、操作環17が移動可能範囲の後方寄りに位置している場合には、操作環17は、第2斜面部17eに当接するボール14bによって後方に向かって付勢され、第2の位置において移動可能範囲の他端に当て付き、位置決めされる。
【0043】
したがって、本実施形態のレンズ鏡筒10では、操作環17に外力が加えられていない場合には、操作環17の光軸O方向の位置は、第1の位置及び第2の位置のいずれかとなる。例えば、操作環17が第1の位置に位置している状態において、操作環17に加えられる後方への外力が、付勢部材14c及びボール14bが発生する付勢力よりも弱い場合には、当該外力が消失すれば操作環17は第1の位置に戻る。また例えば、操作環17が第1の位置に位置している状態において、操作環17に加えられる後方への外力が、付勢部材14c及びボール14bが発生する付勢力よりも強ければ、操作環17は第2の位置へ移動する。
【0044】
また、レンズ鏡筒10には、少なくとも操作環17が第1の位置に位置している場合に、操作環17の光軸O周りの回転方向及び回転量を検出する第1のエンコーダ手段である第1のエンコーダ部(操作環回転検出部、回転検出手段)21が配設されている。また、レンズ鏡筒10には、操作環17が光軸O方向の第1の位置及び第2の位置のいずれに位置しているかを検出する操作環位置検出手段(位置検出部)22が配設されている。
【0045】
第1のエンコーダ部21は、操作環17に周方向に所定の間隔で設けられた複数のスリット(切り欠き)17nの通過を一対のフォトインタラプタで検出し、該一対のフォトインタラプタの出力信号に基づいて、操作環17の回転方向及び回転量を検出する。本実施形態の第1のエンコーダ部21、及び操作環17に設けられたスリット17nは、いわゆるインクリメンタル形式のロータリーエンコーダと同様の形態を有しているものであり、その詳細な説明は省略するものとする。
【0046】
より具体的に本実施形態では、スリット17nは、図7に示すように、内側円筒部17bの前方側端部に形成されている。第1のエンコーダ部21を構成する一対のフォトインタラプタは、図5及び図6に示すように、固定枠14に固定されている。
【0047】
スリット17nが形成された内側円筒部17bの前方側端部は、操作環17が第1の位置に位置している場合にのみ、一対のフォトインタラプタの検出範囲内に位置する。したがって、本実施形態の第1のエンコーダ部21は、操作環17が第1の位置に位置している場合にのみ、操作環17の光軸O周りの回転方向及び回転量を検出することができる。
【0048】
なお、第1のエンコーダ部21の形態は、少なくとも操作環17が第1の位置に位置している場合に、操作環17の光軸O周りの回転方向及び回転量を検出可能なものであればよく、本実施形態に限られるものではない。例えば、第1のエンコーダ部21は、磁気式のロータリーエンコーダの形態を有するものであってもよい。
【0049】
操作環位置検出手段22は、基台部12又は固定枠14に固定されたフォトインタラプタからなる。操作環位置検出手段22は、操作環17が第2の位置に位置している場合に、操作環17の一部がフォトインタラプタの検出範囲内に進出する位置に固定されている。
【0050】
なお、操作環位置検出手段22の形態は、操作環17の光軸O方向の位置を検出可能な構成であれば特に限定されるものではない。例えば、操作環位置検出手段22は、磁気センサ等であってもよい。
【0051】
また、操作環17には、係合手段(係合部)を構成する係合凸部17gが設けられている。係合凸部17gは、操作環17が第2の位置に位置している場合に、後述する被係合回転部材18と係合し、操作環17と被係合回転部材18とを一体に回転させるためのものである。
【0052】
係合凸部17gは、内側円筒部17bの外周面上において、径方向外側に突出する複数の凸部からなる。図7及び図8に示すように、係合凸部17gを構成する複数の凸部は、互いの間に一定の隙間を有して、周方向に等間隔に配列されている。また、複数の凸部は、径方向外側から見た場合に、後方側の一部が、後方側に向かうにつれて幅が狭くなる略V字状の形状を有している。
【0053】
係合凸部17gと被係合回転部材18との係合の構成については後述するものとする。
【0054】
指標表示枠16は、基台部12に対して位置が固定された、レンズ鏡筒10の外装部材の一部であり、固定枠の機能を有した枠部材(第1の枠)である。指標表示枠16は、固定枠14を介して基台部12に固定されている。指標表示枠16は、操作環17が第1の位置に位置している状態において、操作環17の操作部17aよりも前方側となる位置に配設されている。指標表示枠16には、光軸Oと略平行な短い直線状の指標16aが設けられている。指標16aは、後述する被係合回転部材18に設けられた距離目盛18aを指し示すためのものである。
【0055】
また、指標表示枠16には、指標16aを挟んで略対称に周方向両側に、被写界深度目盛16bが配設されている。被写界深度目盛16bは、光学系部材11のF値(絞り値)に対応した被写界深度を表示するためのものである。そして、その被写界深度目盛16bは、同じ数値のF値を表す文字で対となって指標16aを挟むように表示されている。この対は複数の対があり、対同士は互いに異なる数値のF値を有する。尚、本実施形態の説明においては複数の数値(5.6、11、22)が表示されているが、少なくとも同じ数値からなる一対の数値のみが表示されているだけでもよい。
【0056】
第2の枠である被係合回転部材18は、基台部12に対して光軸O周りに相対的に回転可能であって、操作環17の内側に配設された略円筒状の部材である。言い換えれば、被係合回転部材18は、指標表示枠16に対して光軸O周りに相対的に回転可能である。
【0057】
図3に示すように、被係合回転部材18の外周面には、光学系部材11の合焦距離を表す距離目盛18aが設けられている。距離目盛18aは、光学系部材11の最短合焦距離から無限遠までの距離を示す数値が周方向に配列されている。被係合回転部材18が指標表示枠16に対して光軸O周りに相対的に回転することによって、指標16aが指し示す距離目盛18aの数値が変化する。
【0058】
被係合回転部材18は、光軸O周りの回転範囲が制限されており、指標16aによって距離目盛18aが指し示される範囲内でのみ、光軸O周りに回転可能である。すなわち、距離目盛18aは、指標16aとの組み合わせによって、光学系部材11の最短合焦距離から無限遠までの距離の数値を必ず表示する。
【0059】
被係合回転部材18の光軸O周りの回転範囲を制限する構成は特に限定されるものではない。本実施形態では一例として、被係合回転部材18の後方の端部に、後方に向かって突出する凸部18cが形成されており、この凸部18cが、固定枠14に周方向に互いに離間して配列された一対の壁部の間に位置することによって、被係合回転部材18の光軸O周りの回転範囲は、凸部18cが一対の壁部に突き当たるまでの範囲に制限される。
【0060】
すなわち、固定枠14又は指標表示枠16の固定された第1の枠と、第1の枠に対して回転可能な被係合回転部材18(第2の枠)と、の一方に凸部が設けられ、第1の枠と第2の枠との他方に前記凸部と干渉することによって第1の枠に対する第2の枠の相対的な回転の範囲を規制する回転規制手段が設けられている。
【0061】
本実施形態では、図2に示すように、操作環17が第1の位置に位置している場合には、被係合回転部材18の距離目盛18aは、レンズ鏡筒10の外部から見えない状態となる。一方、図3に示すように、操作環17が第2の位置に位置している場合には、被係合回転部材18の距離目盛18aは、レンズ鏡筒10の外部から見える状態となる。
【0062】
具体的には、被係合回転部材18は、操作環17の操作部17aと内側円筒部17bの間に配設されている。言い換えれば、操作環17の操作部17aである円筒部は、被係合回転部材18の外周面よりもさらに径方向外側に配設されている。そして、操作環17が第1の位置に位置している場合には、操作部17aが、距離目盛18a上に進出して距離目盛18aを覆い隠す。また、操作環17が第2の位置に位置している場合には、操作部17aは距離目盛18a上から退避し、距離目盛18aが外部に露出し表示される。言い換えるならば、操作環17が第2の位置に位置している場合に、被係合回転部材18が外部に露出されている状態となる。
【0063】
そして、本実施形態のレンズ鏡筒10では、被係合回転部材18は、操作環17が第2の位置に位置している場合にのみ、操作環17とともに光軸O周りに回転するように構成されている。また、操作環17が第1の位置に位置している場合には、操作環17は、被係合回転部材18と独立して回転可能である。
【0064】
具体的には、被係合回転部材18の内周部(内周面)には、係合手段を構成する1つの係合ピン18bが、径方向内側に突出するように設けられている。本実施形態では、係合ピン18bは、被係合回転部材18と別部材であって、圧入や接着剤によって被係合回転部材18に固定されている。なお、係合ピン18bは、被係合回転部材18と一体に形成される形態であってもよい。
【0065】
被係合回転部材18は、操作環17の操作部17aと内側円筒部17bの間に配設されていることから、係合ピン18bは、被係合回転部材18の内側に配設されている内側円筒部17bに向かって突出する。言い換えれば、被係合回転部材18の係合ピン18bと、操作環17の係合凸部17gは、互いに向かい合う方向に突出している。
【0066】
係合ピン18bの外径は、隣接する係合凸部17g同士の間隔よりも小さく、係合ピン18bは、隣接する係合凸部17g同士の間にすきま嵌めの状態で嵌合する形状を有している。また、係合ピン18bは、径方向内側から見た場合に前方側が略V字状となる断面形状を有している。
【0067】
図5及び図7に示すように、係合ピン18bは、操作環17が第1の位置に位置している場合には、操作環17の係合凸部17gよりも後方側であって、操作環17が光軸O周りに回転しても係合凸部17gと干渉しない位置に配設されている。
【0068】
また、図6及び図8に示すように、係合ピン18bは、操作環17が第2の位置に位置している場合には、係合凸部17gと同一円周方向上に位置している。言い換えれば、操作環17が第2の位置に位置している場合には、係合ピン18bは、光軸O方向について係合凸部17gと重なる位置に配設されている。すなわち、操作環17が第1の位置から第2の位置に相対的に移動すると、係合ピン18bは、隣接する係合凸部17g同士の間に嵌合する。また、逆に、操作環17が第2の位置から第1の位置に相対的に移動すると、係合ピン18bと係合凸部17gとの嵌合が外れる。
【0069】
以上のような構成を有する係合凸部17g及び係合ピン18bからなる係合手段によって、被係合回転部材18は、操作環17が第2の位置に位置している場合には、操作環17とともに光軸O周りに回転し、操作環17が第1の位置に位置している場合には、操作環17が光軸O周りに回転したとしても回転せずに停止したままとなる。
【0070】
なお、前述したように、係合凸部17gの複数の凸部は、径方向外側から見た場合に後方側が略V字状の形状を有しており、かつ係合ピン18bは、径方向内側から見た場合に前方側が略V字状の形状を有していることから、操作環17が第1の位置から第2の位置に移動する際には、この双方に設けられた略V字状の部位同士が倣うことによって被係合回転部材18が僅かに回転し、係合ピン18bと係合凸部17gとが滑らかに係合する。このため、操作環17を光軸O方向に移動する操作に引っかかりが生じることがなく、操作環17の移動を速やかに行うことができる。
【0071】
また、前述したように被係合回転部材18の回転範囲は、距離目盛18aと指標16aとの組み合わせが光学系部材11の最短合焦距離から無限遠までの距離の数値を表示する範囲に制限されている。このため、操作環17は、第2の位置に位置して被係合回転部材18と係合している場合には、被係合回転部材18と同一の回転範囲内でのみ回転することが可能である。すなわち、操作環17が第2の位置に位置している場合には、操作環17の回転範囲に制限がかけられている。
【0072】
以上のように、操作環17が第2の位置に位置している場合には、固定された第1の枠に対する被係合回転部材18(第2の枠)の相対的な回転の範囲を規制する回転規制手段によって、操作環17の回転の範囲も所定の範囲に規制される。
【0073】
一方、操作環17が第1の位置に位置している場合には、操作環17は被係合回転部材18と干渉しないため、操作環17の回転範囲に制限はない。つまり、操作環17が第1の位置に位置している場合には、操作環17は回転規制手段によって回転の範囲が規制されることなく、無制限に回転可能である。
【0074】
また、本実施形態のレンズ鏡筒10には、被係合回転部材18の基台部12に対する光軸O周りの絶対的な回転位置を検出する第2のエンコーダ手段である第2のエンコーダ部(回転位置検出手段)23が配設されている。
【0075】
図9に示すように、本実施形態では一例として、第2のエンコーダ部23は、いわゆるアブソリュート型のロータリーエンコーダの形態を有して構成されている。第2のエンコーダ部23は、導電体からなる所定のビット数のコードパターン23aと、コードパターン23aに摺動する導電体からなる接点部23bを有して構成されている。
【0076】
コードパターン23aは、固定枠14の外周部に配設されており、接点部23bは、被係合回転部材18に配設されている。被係合回転部材18の光軸O周りの回転位置に応じて、接点部23bが接触するコードパターン23aの位置が変化する。図示しないが、第2のエンコーダ部23は、コードパターン23aと接点部23bとの接触の状態を検出する電気回路を有しており、この検出結果から、被係合回転部材18の基台部12に対する光軸O周りの絶対的な回転位置を算出することができる。アブソリュート型のロータリーエンコーダの構成は周知のものであるため、詳細な説明は省略するものとする。
【0077】
なお、第2のエンコーダ部23の構成は、基台部12に対する光軸O周りの絶対的な回転位置を検出することが可能な形態であれば本実施形態に限られるものではない。例えば、第2のエンコーダ部23は、光学式又は磁気式のアブソリュート型ロータリーエンコーダであってもよいし、被係合回転部材18の光軸O周りの回転位置に応じて抵抗値が変化する、いわゆるポテンショメータと同様の構成を有する形態であってもよい。
【0078】
次に、カメラシステム1の合焦動作に関わる部分の電気的な構成を、図10を参照して説明する。
【0079】
前述したように、カメラ本体2には、レリーズスイッチ3、電源スイッチ4、合焦モード切替操作部5、及び自動合焦用センサ部である撮像素子9が配設されている。また、カメラ本体2には、カメラ本体制御部6、画像処理部7、通信部8、画像表示回路30及び画像表示装置31が配設されている。
【0080】
制御部を構成するカメラ本体制御部(制御手段)6は、演算装置(CPU)、記憶装置(RAM)、入出力装置及び電力制御装置等を具備して構成されており、カメラ本体2の動作を、所定のプログラムに基づいて制御するものである。
【0081】
また、画像処理部7は、画像処理を行うための電子回路部であり、撮像素子9から出力される信号から被写体像のコントラスト値を算出することが可能である。なお、画像処理部7のカメラ本体2への実装形態は、画像処理用の演算ハードウェアを搭載するハードウェア的な形態であってもよいし、カメラ本体制御部6の演算装置が所定の画像処理プログラムに基づいて画像処理を行うソフトウェア的な形態であってもよい。
【0082】
通信部8は、有線通信又は無線通信によって、レンズ鏡筒10に設けられた通信部25を介してレンズ鏡筒制御部24との通信を行うためのものである。また、画像処理回路30は、撮像素子9からの被写体像を画像表示装置31に表示するための回路であり、例えば合焦動作中の被写体像を画像表示装置31に表示させる。
【0083】
レンズ鏡筒10には、前述したように、駆動部15、操作環位置検出手段22、第1のエンコーダ部21及び第2のエンコーダ部23が配設されている。また、レンズ鏡筒10には、レンズ鏡筒制御部24及び通信部25が配設されている。これら通信部25、操作環位置検出部22、第1のエンコーダ部21、第2のエンコーダ部23、及び駆動部15のモータ15cがレンズ鏡筒制御部24に電気的に接続されている。
【0084】
制御部を構成するレンズ鏡筒制御部(制御手段)24は、演算装置、記憶装置、及び入出力装置等を具備して構成されており、カメラ本体制御部6と連係してレンズ鏡筒10の動作を、所定のプログラムに基づいて制御するものである。また、通信部8は、有線通信又は無線通信によって、カメラ本体2に設けられた通信部8を介してカメラ本体制御部6との通信を行うためのものである。これら通信部8と通信部25が有るため、カメラ本体2に対しレンズ鏡筒10を着脱可能としている。
【0085】
次に、以上に説明した構成を有するカメラシステム1の動作を説明する。
【0086】
本実施形態のカメラシステム1では、カメラ本体が電源オン状態である場合に、カメラ本体制御部6によって、図11に示す合焦動作モード切替サブルーチンが所定の周期で繰り返し行われる。合焦動作モード切替サブルーチンは、カメラシステム1が有する複数の合焦動作モードのうち、使用者からの指示入力によって選択されたものを判定し、カメラシステム1の合焦動作モードを指示入力に従って切り替えるためのものである。
【0087】
なお、以下に説明する合焦動作モード切替サブルーチンは、カメラシステム1が撮影動作を行うためのメインルーチンの中に適宜に組み込まれるものである。カメラシステム1が撮影動作を行うためのメインルーチンについては、周知の技術と同様であるためその説明は省略するものとする。
【0088】
本実施形態のカメラにおいては、合焦動作モードとして3つのモードを有する。
【0089】
合焦動作モードの第1のモードは、自動焦点調節のための自動合焦モード(オートフォーカスモード)である。自動合焦モードにおいて操作環17が第1の位置にある場合、第1のレリーズスイッチ3aがオンとなったことを検出すると、操作環17が使用者によって回転操作されたか否かに関わりなく、カメラシステム1が撮像素子9からの出力もしくは撮像素子9とは異なる合焦用センサ部からの出力を基に合焦用枠13を駆動源15cにより駆動する、自動合焦動作を行う。この状態で操作環17が回されてもカメラシステム1は何らの動作も行わない。
【0090】
また、自動合焦モードにおいて操作環17が第2の位置ある場合、操作環17が回転させられたことを検出すると、第2のエンコーダ部23の出力に従って指標16aが指す距離目盛18aの距離表示の数値に合焦するように合焦用枠13を駆動源15cにより駆動する。この動作を、距離指定合焦動作という。
【0091】
合焦動作モードの第2のモードは、手動による焦点調節のための手動合焦モード(マニュアルフォーカスモード)である。手動合焦モードにおいて操作環17が第1の位置にある場合、カメラシステム1は、操作環17が回転させられると、第1のエンコーダ部21によって検出される操作環17の回転方向、回転量及び回転速度等に応じて合焦用枠13を駆動源15cにより駆動する、手動合焦動作を行う。本実施形態では一例として、手動合焦動作では、操作環17が後方から見て反時計回りに回転させられた場合に、合焦距離が無限遠側に変化するように合焦用枠13を駆動源15cにより駆動し、操作環17が時計回りに回転させられた場合に、合焦距離が至近側に変化するように合焦用枠13を駆動源15cにより駆動する。また手動合焦動作では、操作環17の回転量に応じて合焦用枠13の駆動量が決定され、操作環17の回転速度に応じて合焦用枠13の駆動速度が決定される。手動合焦動作時には、使用者は、画像表示装置31に表示されるライブビュー画像等により合焦状態を観察できる。
【0092】
また、手動合焦モードにおいて操作環17が第2の位置にある場合、前述した距離指定合焦動作を行う。
【0093】
合焦動作モードの第3のモードは、自動合焦動作と手動合焦動作を組み合わせた動作を行う合焦動作自動切替モードである。合焦動作自動切替モードにおいて、操作環17が第1の位置にある場合、第1のレリーズスイッチ3aがオンとなったことを検出すると、前述した自動合焦モードと同様に、カメラシステム1が撮像素子9からの出力もしくは撮像素子9とは異なる合焦用センサ部からの出力を基に合焦用枠13を駆動源15cにより駆動し合焦を行う。ただし、合焦動作自動切替モードにおいて操作環17が第1の位置にある場合に、操作環17が回転させられると前述した手動合焦モードと同じように合焦用枠13が駆動源15cにより駆動される点が、自動合焦モードとは異なる。
【0094】
また合焦動作自動切替モードにおいて操作環17が第2の位置にある場合、前述した距離指定合焦動作を行う。
【0095】
以下に、図11に示す合焦動作モード切替サブルーチンについてより詳細に説明する。合焦動作モード切替サブルーチンでは、まず、ステップS01において、合焦モード切替操作部5を介して使用者が選択した合焦動作モードが、自動合焦動作モードであるか否かを判定する。ここでは、合焦モード切替操作部5が、例えばダイヤルスイッチである場合には、ダイヤルスイッチからの出力に基づいて判定する。また例えば、合焦モード切替操作部5が、GUIによって構成されたものである場合には、記憶している予め使用者によって指定された情報に基づいて判定する。
【0096】
ステップS01の判定の結果、自動合焦動作モードが選択されている場合には、ステップS02に移行し、操作環位置検出手段22により操作環17の光軸O方向の位置を求める。すなわち操作環17が第1の位置にあるか又は第2の位置にあるかを操作環位置検出手段22により検出する。ステップS02において操作環17が第1の位置にあると判定した場合には、ステップS03に進み、図12に示す自動合焦動作を行う。
【0097】
カメラシステム1において、自動合焦動作を行うタイミングは特に限定されるものではないが、本実施形態では一例として、図12のフローチャートに示すように、第1レリーズスイッチ3aがオン状態となった場合に、自動合焦動作を行うものとする。
【0098】
カメラシステム1が自動合焦動作を行う場合、自動合焦用センサ部である撮像素子9から出力される信号に基づいて被写体像のコントラスト値を検出し、該コントラスト値が最も高くなるように合焦用枠13を光軸O方向に駆動する。若しくは撮像素子9とは異なる位相差式の自動合焦用のセンサからの出力に基づいて合焦動作を行う。
【0099】
本実施形態のように、カメラ本体1とレンズ鏡筒10とが離合可能(着脱可能)に構成されたカメラシステム1では、自動合焦動作時において撮像素子9からの出力に基づいて駆動源15cを駆動するための指令は、カメラ本体制御部6から出力される。この場合、レンズ鏡筒制御部24は、通信部25を介して入力されるカメラ本体制御部6からの指令に応じて、駆動源15cを駆動する。ステップS03の実行により合焦動作モード切替サブルーチンは一旦終了しここでは説明を省略した撮影メインルーチンへリターンする。
【0100】
なお、カメラシステム1は、自動合焦動作モードが選択されており、かつ操作環17が第1の位置にある場合には、第1レリーズスイッチ3aの状態にかかわらず、常に自動合焦動作を行い続ける形態であってもよい。
【0101】
一方、ステップS02において操作環17が第1の位置にない、すなわち操作環17が第2の位置にあると判定した場合には、ステップS04に進み、図14に示す後述する距離指定合焦動作を行う。
【0102】
また、ステップS01の判定の結果、自動合焦動作モードが選択されていない場合には、ステップS05へ移行する。ステップS05では、カメラシステム1が有する複数の合焦動作モードのうち、合焦モード切替操作部5によって手動合焦モードが使用者により選択されているか否かを判定する。ステップS05において、手動合焦モードが選択されていると判定した場合には、ステップS06に進む。
【0103】
ステップS06では、操作環17が第1の位置にあるか又は第2の位置にあるかを操作環位置検出手段22により検出する。ステップS06の判定の結果、操作環17が第1の位置にあるならば、S07に進み、図13に示す手動合焦動作を行う。
【0104】
ステップS07では、カメラシステム1は、図13に示す手動合焦動作サブルーチンを実行する。カメラシステム1は、手動合焦動作を行う場合には、第1のエンコーダ部21によって操作環17の回転を検出した場合(ステップS20)に、操作環17の回転方向、回転量及び回転速度に応じて合焦用枠13を駆動する(ステップS21)。
【0105】
例えば、レンズ鏡筒10を後方から見た場合に、操作環17が時計回り方向に回転したことを検出した場合には、カメラシステム1は、光学系部材11の合焦距離が短くなる方向に合焦用枠13を移動させる。また例えば、レンズ鏡筒10を後方から見た場合に、操作環17が反時計回り方向に回転したことを検出した場合には、カメラシステム1は、光学系部材11の合焦距離が長くなる方向に合焦用枠13を移動させる。手動合焦動作における合焦用枠13の移動距離及び速度は、第1のエンコーダ部21によって検出された操作環17の回転量(回転角度)及び回転速度(回転角速度)に応じて決められる。
【0106】
図13に示す手動合焦動作は、合焦動作モード切替サブルーチンの実行によって、手動合焦動作以外の合焦動作が選択されるまで繰り返し実行される。すなわち、合焦モード切替操作部5により、例えば、自動合焦動作モードが選択されるか、操作環17が第1の位置から第2の位置に移動されるまで、図13に示す手動合焦動作は繰り返し実行される。
【0107】
なお、本実施形態のカメラシステム1の手動合焦動作時においては、使用者は、いわゆるライブビューと称される画像表示装置31に表示される被写体像の様子を観察することにより合焦の様子を観察することができ、この観察結果に基づいて操作環17を操作する。もちろん、他の合焦動作時においても同様に、使用者は、画像表示装置31に表示される被写体像の様子を観察することにより合焦の様子を観察することができる。
【0108】
ステップS06において操作環17が第1の位置にない、すなわち操作環17が第2の位置にあると判定した場合には、ステップS04に進み、図14に示す後述する距離指定合焦動作を行う。
【0109】
また、ステップS05において、合焦モード切替操作部5によって手動合焦モードが使用者により選択されていないと判定した場合には、合焦動作自動切替モードであると判定する。そして、ステップS08に進み、操作環17が第1の位置にあるか又は第2の位置にあるかを操作環位置検出手段22により検出する。ステップS08において、操作環17が第1の位置にない、すなわち操作環17が第2の位置にあると判定した場合には、ステップS04に進み、図14に示す後述する距離指定合焦動作を行う。
【0110】
一方、ステップS08において操作環17が第1の位置にあると判定した場合には、ステップS09に進み、第1レリーズスイッチ3aがオン状態で有るか否かを判定(モニタ)する。ステップS09において、第1レリーズスイッチ3aがオン状態である場合には、ステップS03に進み、図12に示す前述した自動合焦動作を行う。また、ステップS09において、第1レリーズスイッチ3aがオン状態ではない場合には、ステップS07に進み、図13に示す前述した手動合焦動作を行う。
【0111】
以下に、ステップS04の距離指定合焦動作を説明する。距離指定合焦動作は、図14に示す距離指定合焦動作サブルーチンにより行われる。距離指定合焦動作では、カメラシステム1は、第2のエンコーダ部23の出力信号から算出される指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値に応じた位置に合焦用枠13を駆動する。
【0112】
具体的に距離指定合焦動作では、まずステップS30において、レンズ鏡筒制御部24が、第2のエンコーダ部23の出力値を読み取る。第2のエンコーダ部23の出力値は、被係合回転部材18の基台部12に対する光軸O周りの絶対的な回転位置を表す値である。
【0113】
次にステップS31において、レンズ鏡筒制御部24は、第2のエンコーダ部23の出力値から、指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値を算出する。第2のエンコーダ部23の出力値から、指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値への変換は、例えばレンズ鏡筒制御部24が予め記憶している変換テーブルに基づいて行われる。
【0114】
次にステップS32において、レンズ鏡筒制御部24は、第2のエンコーダ部23の出力値から、指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値と、光学系部材11の合焦距離とが、一致又は近似するように合焦用枠13を移動させる。例えば、指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値が3mであれば、光学系部材11の合焦距離が3mとなるように合焦用枠13を移動させる。その後、リターンしてステップS01に戻る。なお、ステップS30からS32の動作は、レンズ鏡筒制御部24のみではなく、レンズ鏡筒制御部24とカメラ本体制御部6の連係によって行われる形態であってもよい。
【0115】
なお、距離指定合焦動作では、指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値と、光学系部材11の合焦距離とが一致することが理想的であるが、第2のエンコーダ部23の分解能が低い場合には両者を一致させることは困難であるため、両者が近似するように合焦用枠13を移動させる。
【0116】
また、レンズ鏡筒制御部24は、算出した指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値を、通信部25を介して、カメラ本体2のカメラ本体制御部6へ出力する。カメラ本体制御部6は、受信した当該数値に応じて露出値を決定したり、当該数値を撮影した画像にメタデータとして付加する。
【0117】
図14に示す距離指定合焦動作は、合焦動作モード切替サブルーチンの実行によって、距離指定合焦動作以外の合焦動作が選択されるまで繰り返し実行される。すなわち、合焦モード切替操作部5により自動合焦動作モードが選択されるか、操作環17が第2の位置から第1の位置に移動されるまで、図14に示す距離指定合焦動作は繰り返し実行される。
【0118】
図15は、以上に説明したカメラシステム1において、操作環17の光軸O方向の位置及び合焦動作モードの選択状態によって決定される、自動合焦動作、手動合焦動作及び距離指定合焦動作の切り替わりを表にまとめたものである。
【0119】
図15に示すように、カメラシステム1の合焦動作モードとして手動合焦モードが選択されており、かつ操作環17が第1の位置にある場合には、操作環17が回転されると操作環17の回転に応じて合焦用枠13が駆動される手動合焦動作となる。一方、カメラシステム1の合焦動作モードとして手動合焦モードが選択されており、かつ操作環17が第2の位置にある場合には、指標16aが指す距離に合焦するように合焦用枠13が駆動される距離指定合焦動作となる。
【0120】
また、カメラシステム1の合焦動作モードとして自動合焦モードが選択されており、かつ操作環17が第1の位置にある場合には、操作環17が回転されても合焦用枠13を駆動せず、第1のレリーズスイッチ3aがオンとなった場合に撮像素子9からの出力を基に合焦用枠13を駆動する、自動合焦動作となる。一方、カメラシステム1の合焦動作モードとして自動合焦モードが選択されており、かつ操作環17が第2の位置にある場合には、指標16aが指す距離に合焦するように合焦用枠13が駆動される距離指定合焦動作となる。
【0121】
また、カメラシステム1の合焦動作モードとして合焦動作自動切替モードが選択されており、かつ操作環17が第1の位置にある場合には、第1のレリーズスイッチ3aがオンとなれば自動合焦動作となり、操作環17が回転されれば手動合焦動作となる。一方、カメラシステム1の合焦動作モードとして合焦動作自動切替モードが選択されており、かつ操作環17が第2の位置にある場合には、指標16aが指す距離に合焦するように合焦用枠13が駆動される距離指定合焦動作となる。
【0122】
以上に説明したように、本実施形態のカメラシステム1は、カメラ本体2に固定される基台部12に対して固定された位置に配設される指標16aと、基台部12に対して回転可能に配設され距離目盛18aを有する被係合回転部材18と、被係合回転部材18の基台部12に対する回転位置を検出する第2のエンコーダ部23と、操作環17とともに回転可能な被係合回転部材18とを有して構成されている。
【0123】
そして、本実施形態のカメラシステム1は、自動合焦動作時には、被係合回転部材18の回転位置に関わらず、合焦用センサ部である撮像素子9の出力に基づいて焦点調節を行う。また、カメラシステム1は、距離指定合焦動作時には、第2のエンコーダ部23の出力信号から算出される指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値に応じた位置に合焦用枠13を駆動する。すなわち、カメラシステム1は、距離目盛を使用した手動合焦が可能である。また、カメラシステム1における自動合焦動作及び距離指定合焦動作の切替は、使用者が合焦モード切替操作部5及び操作環17を操作することによって実施可能である。
【0124】
以上のような構成を有するカメラシステム1のレンズ鏡筒10では、駆動部15が駆動する部材は、合焦用レンズ11aを保持する合焦用枠13のみであり、駆動部15が駆動する部材を少なくし、かつ軽量なものとすることができる。これにより、本実施形態では、駆動部15を出力の小さい小型なものとすることができ、レンズ鏡筒10を小型化することができる。また、合焦動作を素早く行うことができる。
【0125】
また、本実施形態では、被係合回転部材18を駆動するための動力を伝達する機構が不要であり、少ない部品点数の単純な構成で駆動部15から被駆動部材である合焦用枠13にまで動力を伝達することができる。このため、焦点調節のために合焦用枠13を駆動する際に発生する音の音量を下げることが容易である。焦点調節時に発生する音量を抑制することは、例えば動画像の撮影時において好ましい。
【0126】
また、本実施形態では、合焦モード切替操作部5により手動合焦動作モードが選択され、かつ操作環17が第2の位置に位置している場合には、距離目盛を使用した手動合焦が可能である。これにより、本実施形態では、距離目盛18aを使用して予め手動で所定の合焦距離に設定しておき、焦点調節動作を行わずに素早く撮影するという撮影手法を実施することができる。
【0127】
例えば本実施形態では、指標表示枠16に被写界深度指標16bが設けられていることから、使用者は、レンズ鏡筒10の外周部に露出している距離目盛18a、指標16a及び被写界深度指標16bを見ることによって、合焦する被写体距離を即座に確認することができる。
【0128】
一方で、本実施形態では、合焦モード切替操作部5により手動合焦動作モードが選択され、かつ操作環17が第1の位置に位置している場合には、操作環17の回転に応じて焦点調節を行う図13に示した手動合焦動作が可能である。手動合焦動作では、操作環17は、被係合回転部材18と係合していないことから光軸O周りに制限無く回転可能であり、光学系部材11の焦点調節は操作環17の回転量に応じて行われる。
【0129】
このため、本実施形態のカメラシステム1の手動合焦動作では、距離目盛を使用した距離指定合焦動作よりも細かい焦点調節を行うことができる。
【0130】
以上のように、本実施形態のカメラシステム1では、駆動部15を介した荒い焦点調節(粗調節)として、指標16aと距離目盛18aによって合焦距離と被写界深度が明示されることにより素早い撮影を実現する距離指定合焦動作と、操作環17の回転量に応じて駆動部15を介した細かい焦点調節(微調節)を行うことができる手動合焦動作と、を選択的に実行することができる。そして、距離指定合焦動作と手動合焦動作の切替は、操作環17を前後に移動させるだけで可能であるため、素早く実行可能である。
【0131】
なお、第2のエンコーダ部23の分解能が充分に高ければ、距離指定合焦動作であっても細かい焦点調節が行えることは言うまでもない。また、距離指定合焦動作を絶対合焦動作と称し、手動合焦動作を相対合焦動作と称してもよい。
【0132】
また、本実施形態では、操作環17が第1の位置に位置している場合には、操作環17と被係合回転部材18とが係合していないことから、操作環17が回転しても被係合回転部材18は回転しない。したがって、距離指定合焦動作時において設定された被係合回転部材18の距離表示は、手動合焦動作時に変更されることがない。
【0133】
例えば、使用者が距離指定合焦動作時において合焦距離が3メートルとなるように被係合回転部材18を回転させた後に、操作環17を第1の位置に移動させ、手動合焦動作による焦点調節を行ったとしても、被係合回転部材18は回転しない。よって、この後に使用者が操作環17を第2の位置に移動させて距離指定合焦動作を行う場合には、光学系部材11の合焦距離は3メートルに戻る。したがって、予め距離指定合焦動作時において合焦距離を所望の値に設定しておけば、手動合焦動作を行っている状態から、操作環17を後方に移動させるだけで素早く所望の合焦距離による撮影を行うことができる。
【0134】
以上に説明したように、本実施形態のカメラシステム1は、自動合焦及び手動合焦が可能であり、被写体に対する合焦動作を迅速に行うことが可能である。
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態を説明する。以下では第1の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0135】
図16に示すように、本実施形態のカメラシステム1は、カメラ本体2とレンズ鏡筒10とが離合できず一体に構成されている。本実施形態のように、カメラ本体2とレンズ鏡筒10とが一体であるカメラシステム1では、カメラ本体2とレンズ鏡筒10の双方に制御部を構成する電気回路等を配設する必要はない。
【0136】
図17に示すように、本実施形態では、制御部はカメラ本体2内に配設されたカメラ本体制御部6のみによって構成される。カメラ本体制御部6は、第1の実施形態においてレンズ鏡筒制御部が行っている制御も合わせて実行可能に構成されている。本実施形態のカメラシステム1のその他の構成及び動作は、第1の実施形態の通信部8、通信部25を省いてあり、カメラ本体制御部6に画像処理部7、第1レリーズスイッチ3aと第2レリーズスイッチ3bからなるレリーズスイッチ3、電源スイッチ4、合焦モード切替操作部5、操作環位置検出部22、第1のエンコーダ部21、第2のエンコーダ部23、駆動源15c、画像表示回路30が電気的に接続され、実質的に第1の実施形態と同様である。したがって、本実施形態のカメラシステム1は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
以下に、本発明の第3の実施形態を説明する。第3の実施形態は、第1の実施形態に比して合焦動作モード切替サブルーチンが異なる。以下では第1の実施形態との相違点を説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0137】
図18は、第5の実施形態のカメラシステムの合焦動作モード切替サブルーチンのフローチャートである。なお、以下に説明する合焦動作モード切替サブルーチンは、カメラシステム1が撮影動作を行うためのメインルーチンの中に適宜に組み込まれるものである。カメラシステム1が撮影動作を行うためのメインルーチンについては、周知の技術と同様であるためその説明は省略するものとする。
【0138】
本実施形態では、まず、ステップS51において、操作環位置検出部22の出力信号に基づいて、操作環17が第1の位置に存在するか否かを判定する。ステップS51の判定において、操作環17が第1の位置に存在しないと判定した場合には、ステップS55に移行し、図14に示す距離指定合焦動作を行う。
【0139】
一方、ステップS51の判定において、操作環17が第1の位置に存在すると判定した場合には、ステップS52に移行する。ステップS52では、合焦モード切替操作部5を介して使用者が選択した合焦動作モードが、自動合焦動作モードであるか否かを判定する。
【0140】
ステップS52の判定において、自動合焦動作モードが選択されている場合には、ステップS53に移行し、図12に示す自動合焦動作を行う。一方、ステップS52の判定において、自動合焦動作モードが選択されていない場合には、図13に示す手動合焦動作を行う。
【0141】
以上に説明したように、本実施形態の合焦動作モード切替サブルーチンでは、最初に操作環17が第1の位置及び第2の位置のいずれに位置しているかの判定が行われる。このため、操作環17が第2の位置に位置している場合には、距離指定合焦動作が実行される。
【0142】
したがって、本実施形態のカメラシステム1では、合焦モード切替操作部5を介して使用者が選択した合焦動作モードが、自動合焦動作モード及び手動合焦動作モードのいずれであっても、操作環17が第2の位置に位置している場合には、距離指定合焦動作が行われる。
【0143】
すなわち、本実施形態では、使用者が操作環17を第2の位置に移動させれば、カメラシステム1は必ず距離指定合焦動作を実行する。このため、本実施形態では、自動合焦動作を行っている状態から、即座に距離目盛を使用した距離指定合焦動作に切り替えることができる。
【0144】
また、上述した実施形態において説明したように、操作環17が第1の位置に位置している場合には、操作環17と被係合回転部材18とは係合しておらず、操作環17が回転したとしても被係合回転部材18は回転しない。
【0145】
例えば、操作環17が第2の位置に位置している場合において、合焦距離を3メートルとし、その後、一旦操作環17を第1の位置に移動した後に第2の位置に戻した場合、第1の位置における操作環17の回転の有無や自動合焦動作の有無にかかわらず合焦距離は3メートルとなる。
【0146】
このため、操作環17が第2の位置に位置している場合において、被写界深度指標16bによる表示に基づいて合焦距離をいわゆるパンフォーカスと称される撮影手法が行えるように設定しておけば、自動合焦動作又は手動合焦動作を行っている状態から、操作環17を第2の位置に移動させるだけで素早くパンフォーカス撮影を行う状態に切り替えることができ、利便性が向上する。また逆に、距離指定合焦動作時にパンフォーカス撮影を行っている状態から、操作環17を第1の位置に移動させるだけで素早く自動合焦動作又は手動合焦動作を行う状態に切り替えることができる。
【0147】
また、第1の実施形態で述べたように、本実施形態でも駆動部15が駆動する部材を少なくし、かつ軽量なものとすることができる。これにより、本実施形態では、駆動部15を出力の小さい小型なものとすることができ、レンズ鏡筒10を小型化することができる。また、合焦動作を素早く行うことができる。
【0148】
なお、上述した実施形態では、レンズ鏡筒10の被係合回転部材18に距離目盛18aを表示させ、固定部材16に指標16aを設けたが、これとは逆に固定部材16に距離目盛を表示させ、被係合回転部材18に指標を設けてもよい。
【0149】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うカメラシステム及びレンズ鏡筒もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動合焦動作が可能なカメラシステム及び該カメラシステムに用いられるレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
手動合焦動作及び自動合焦動作が可能なカメラシステムでは、レンズ鏡筒に回転可能な操作環を備え、手動合焦動作時には操作環の回転に応じて合焦距離を変化させ、自動合焦動作時には、モータで合焦距離を変化させる構成が主に採用される。
【0003】
例えば、日本国特開平6−11643号公報には、自動合焦時には操作環が回転せず、操作環の光軸方向への位置の切替により手動合焦が可能となり、操作環の回転に応じて合焦動作を行うことが可能なレンズ鏡筒が開示されている。
【0004】
日本国特開平6−11643号公報に開示されているように、自動合焦を行い、その後に微調整のための手動合焦を行おうとしたときには、操作環を切り換えて手動合焦を行うことになる。しかし、このような構成のもとで手動合焦を行おうとすると余計な操作を必要としてしまい迅速な合焦を行えないということになってしまう。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、自動合焦及び手動合焦が可能であり、被写体に対する合焦動作を迅速に行い得るカメラシステム及び該カメラシステムに用いられるレンズ鏡筒を実現することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るカメラシステムは、固定部材と、駆動源と、合焦用レンズと、前記駆動源により駆動され、前記合焦用レンズを光軸方向に駆動する駆動部と、光軸周りに回転可能な被係合回転部材と、前記合焦用レンズを光軸方向に駆動するため、光軸方向の第1の位置及び第2の位置に位置することが可能で、前記第1の位置及び前記第2の位置それぞれの位置において光軸周りの回転が可能な操作環と、前記操作環が前記第1の位置にあるか、前記第2の位置にあるのかを検出する操作環位置検出手段と、前記操作環が前記第2の位置にあるとき、前記被係合回転部材と前記操作環とを係合させて前記操作環の回転に伴い前記被係合回転部材を回転させ、前記操作環が前記第1の位置にあるとき、前記被係合回転部材及び前記操作環を非係合とし前記操作環が回転しても前記被係合回転部材が回転しないようにする係合手段と、手動により合焦を行うことが可能な手動合焦モードと自動により合焦を行うことが可能な自動合焦モードのいずれかを選択可能な合焦モード切替操作部と、前記合焦モード切替操作部により手動合焦モードが選択され、かつ前記操作環位置検出手段により前記操作環が前記第1の位置にあると検出され、前記操作環が回転されたときには該回転に応じて前記合焦レンズを任意の位置に前記駆動部により駆動し、前記合焦モード切替操作部により手動合焦モードが選択され、かつ前記操作環位置検出手段により前記操作環が前記第2の位置にあると検出されたときには、前記合焦用レンズを前記被係合回転部材と前記固定部材との相対移動位置に応じて前記駆動部により駆動し、前記合焦モード切替操作部により自動合焦モードが選択され、かつ前記操作環位置検出手段により前記操作環が前記第1の位置にあると検出されたときには、前記操作環が回転されたときでも前記合焦レンズを駆動せず、前記合焦モード切替操作部により自動合焦モードが選択され、かつ前記操作環位置検出手段により前記操作環が前記第2の位置にあると検出されたときには、前記合焦用レンズを前記被係合回転部材と前記固定部材との相対移動位置に応じて前記駆動部により駆動する制御を行う制御手段と、
を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】カメラシステムを構成するカメラの前面側を示す斜視図である。
【図2】操作環が第1の位置に位置する状態のレンズ鏡筒の上面図である。
【図3】操作環が第2の位置に位置する状態のレンズ鏡筒の上面図である。
【図4】レンズ鏡筒の断面図である。
【図5】操作環が第1の位置に位置する状態のレンズ鏡筒の断面図である。
【図6】操作環が第2の位置に位置する状態のレンズ鏡筒の断面図である。
【図7】操作環と被係合回転部材との係合が解除された状態を説明する分解斜視図である。
【図8】操作環と被係合回転部材とが係合した状態を説明する分解斜視図である。
【図9】第2のエンコーダ部の構成を説明する斜視図である。
【図10】カメラシステムを構成するカメラの合焦動作に関わる電気回路のブロック図である。
【図11】合焦動作モード切替サブルーチンのフローチャートである。
【図12】自動合焦動作サブルーチンのフローチャートである。
【図13】手動合焦動作サブルーチンのフローチャートである。
【図14】距離指定合焦動作サブルーチンのフローチャートである。
【図15】カメラシステムの合焦動作の切り替わりをまとめた表である。
【図16】第2の実施形態のカメラシステムを構成するカメラの前面側を示す斜視図である。
【図17】第2の実施形態のカメラシステムの合焦動作に関わる電気回路のブロック図である。
【図18】第3の実施形態のカメラシステムの合焦動作モード切替サブルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
(第1の実施形態)
本実施形態のカメラシステム1は、図1に示すように、カメラ本体2及び交換レンズとしてのレンズ鏡筒10を有して構成されている。レンズ鏡筒10は、被写体像を結像するための光学系部材11を保持している。本実施形態では一例として、カメラシステム1は、カメラ本体2とレンズ鏡筒10とが離合可能な形態を有する。なお、カメラシステム1は、カメラ本体とレンズ鏡筒とが一体となった形態を有するものであってもよい。
【0009】
また、本実施形態では一例として、カメラシステム1は、カメラ本体2に撮像素子9が配設されており、いわゆる電子カメラ、デジタルカメラ等と称される、被写体像を電子的に撮像し記録する構成を有している。撮像素子9は、受光面(画素領域)に入射される光に応じた電気信号を所定のタイミングで出力するものであり、例えば電荷結合素子(CCD)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサ等の形態を有する。
【0010】
カメラシステム1は、自動合焦動作(オートフォーカス動作)が可能に構成されており、カメラ本体2に、自動合焦動作に用いられる自動合焦用センサ部が配設されている。本実施形態では一例として、カメラシステム1は、撮像素子9から出力される信号に基づいて被写体像のコントラスト値を検出し、該コントラスト値が最も高くなるように光学系部材11の焦点調節を行う、いわゆるコントラスト検出方式の自動合焦動作を行うように構成されている。すなわち、本実施形態のカメラシステム1では、撮像素子9が自動合焦用センサ部である。
【0011】
なお、カメラシステム1は、いわゆる位相差検出方式の自動合焦動作を行う構成であってもよい。この場合には、カメラ本体2に配設される被写体像の位相差を検出するセンサが自動合焦用センサ部となる。また、自動合焦用センサ部は、赤外線LEDを用いた三角測量方式による測距センサ等の他の形式のものであってもよい。
【0012】
カメラ本体2の上面部には、使用者が撮像動作の指示を入力するためのスイッチ手段であるレリーズスイッチ3、及び使用者がカメラ本体2の電源オン動作及び電源オフ動作の指示を入力するための電源スイッチ4が配設されている。
【0013】
本実施形態では、レリーズスイッチ3は、押しボタン型のスイッチであって、異なる2つのストローク量(押下量)に応じてオン状態となる、2つの第1レリーズスイッチ3a及び第2レリーズスイッチ3bを具備して構成されている。
【0014】
レリーズスイッチ3を全ストローク量の途中まで押下する、いわゆる半押し操作を行うと第1レリーズスイッチ3aがオン状態となり、レリーズスイッチ3をこの半押し操作よりもさらに押下する、いわゆる全押し操作を行うと第2レリーズスイッチ3bがオン状態となる。カメラシステム1は、第2レリーズスイッチ3bがオン状態となった場合に、撮像動作を実行し、画像を記憶する。
【0015】
なお、レリーズスイッチ3は、第1レリーズスイッチ3a及び第2レリーズスイッチ3bが離れた位置に配設される形態であってもよい。また、レリーズスイッチ3は、押しボタン型のスイッチの形態に限られるものではなく、タッチセンサ等の他の形態のスイッチによって構成される形態であってもよい。
【0016】
また、カメラ本体2には、カメラシステム1の合焦動作のモードの切り替えの指示を入力するための合焦モード切替操作部5が配設されている。使用者が合焦モード切替操作部5を操作することによって、カメラシステム1の合焦動作モードは、自動合焦動作を行う自動合焦動作モードと、手動合焦動作を行う手動合焦動作モード、及び自動合焦動作を行う自動合焦動作モードと手動合焦動作を行う手動合焦動作モードとを組み合わせたモード(以下、合焦動作自動切替モードという。)のいずれかが選択される。これらモードのカメラシステム1の動作は後述するものとする。
【0017】
図示する本実施形態の合焦モード切替操作部5は、一例として、ダイヤルスイッチの形態であり、使用者がダイヤルスイッチを回転させることによって、自動合焦動作モード、手動合焦動作モード及び合焦動作自動切替モードのいずれかを選択することが可能に構成されている。
【0018】
なお、合焦モード切替操作部5の形態は本実施形態に限られるものではなく、タッチセンサ、ボタンスイッチ、またはスライドスイッチ等であってもよい。また、合焦モード切替操作部5は、カメラ本体2が画像表示装置を備え、該画像表示装置に表示されるメニューをボタンスイッチやタッチセンサを介して選択する、いわゆるGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)によって、使用者からの合焦動作モードの切替の指示を受け付ける形態であってもよい。この場合、合焦モード切替操作部5は、GUIの表示及び操作を可能とする構成と、GUIを介して入力された使用者からの指示を記憶する構成とによって構成される。なお、合焦モード切替操作部5は、レンズ鏡筒10に配設される形態であってもよい。
【0019】
また、図示しないが、カメラ本体2には、カメラシステム1に電力を供給するための一次電池または二次電池を収容する電池収容部、及び画像を記憶するためのフラッシュメモリを収容する記憶媒体収容部が設けられている。
【0020】
本実施形態では、カメラ本体2とレンズ鏡筒10とは、一般にバヨネット式マウントと称される係合機構によって離合可能である。なお、カメラシステム1において、カメラ本体2とレンズ鏡筒10とを離合可能とする構成は本実施形態に限られるものではなく、例えばネジ機構を用いる一般にスクリュー式マウントと称される構成であってもよい。また、カメラ本体2とレンズ鏡筒10とは、嵌合や磁石等を用いた機構によって離合可能とされる構成であってもよい。
【0021】
レンズ鏡筒10は、基台部12、固定枠(第1の枠)14、合焦用枠13、駆動部15、指標表示枠16、被係合回転部材(第2の枠、表示部材、距離表示手段)18、及び操作環(回転操作部材、操作手段)17を有して構成されている。なお、被係合回転部材18は、主として円筒状の第1の円筒部材からなり、さらにその外周に嵌合される、薄く、軸方向に第1の円筒状部材よりも短い第2の円筒状部材が固定されて構成されている。そして第2の円筒状部材の外周には、後述する距離目盛18aが表示されている。以下では、被係合回転部材18は、これら第1の円筒部材と第2の円筒部材を一体のものとして説明する。
【0022】
図2に示すように、基台部12は、カメラ本体2に係合するバヨネット部12aを有する。基台部12は、バヨネット部(バヨネット爪)12aがカメラ本体2に係合することによって、カメラ本体2に対して固定される。
【0023】
図4に示すように、レンズ鏡筒10は、この基台部12に対して、撮像光学系としての複数のレンズ等からなる光学系部材11を保持する機構を有する。なお、レンズ鏡筒10が保持する光学系部材11の形態は、レンズの他に、絞り、プリズム、ミラー、フィルタ等を含むものであってもよい。
【0024】
光学系部材(光学系要素、撮像光学系)11は、一部又は全部が前記基台部12に対して光学系部材11の光軸O方向に相対的に移動することによって、合焦距離が変化するように構成されている。ここで、合焦距離の変化とは、合焦させようとする被写体までの距離を変化させることを意味する。またこれは、光学系部材11の焦点を合わせる焦点位置を変化させることを意味する。以下では、光学系部材11のうち、合焦距離を変化させる場合に光軸O方向に移動する部材を、合焦用レンズ(合焦用光学要素、合焦用光学系部材)11aと称するものとする。
【0025】
具体的に、本実施形態の光学系部材11は、光軸Oに沿って配設された複数のレンズ及び絞り機構部19を有して構成されている。そして本実施形態では、光学系部材11の複数のレンズのうちの最も後方(像側)に配設されたレンズが、合焦用レンズ11aである。
【0026】
合焦用レンズ11aは、基台部12に対して相対的に光軸O方向に進退移動可能に配設された合焦用枠13によって保持されている。合焦用枠13は、駆動部15によって、光軸O方向に駆動される。
【0027】
駆動部15の構成は特に限定されるものではないが、本実施形態では、光軸Oと略平行に配設されたスクリュー15a、スクリュー15aを回転させる駆動源(モータ)15c、及びスクリュー15aに螺合するナット15bを有して構成されている。本実施形態では一例として、駆動源15cは、ステッピングモータである。ナット15bは、スクリュー15a周りの回転を規制されており、スクリュー15aの回転に伴い光軸Oと略平行に移動する。合焦用枠13は、ナット15bに従動するようにナット15に係合している。
【0028】
駆動部15は、駆動源15cによりスクリュー15aを回転させることによって、合焦用枠15を光軸O方向に駆動する。なお、駆動部15の構成は本実施形態に限られるものではなく、リニアモータ等の他の形式であってもよい。また、駆動部15は、例えば駆動源等の一部の構成部材がカメラ本体2内に配設される構成であってもよい。
【0029】
また、光学系部材11の合焦用レンズ11a以外の部材は、基台部12に対して位置が固定された第1の枠である固定枠14によって保持されている。
【0030】
なお、本実施形態のレンズ鏡筒10は、焦点距離が固定されたいわゆる単焦点レンズの形態を有していることから、合焦用レンズ11a以外の光学系部材11は固定枠14によって保持されているが、レンズ鏡筒10が、全長が伸縮可能な、いわゆる沈胴レンズ鏡筒である場合や、焦点距離を変更可能ないわゆるズームレンズ又はバリフォーカルレンズである場合には、合焦用レンズ11a以外の光学系部材11も、基台部12に対して相対的に移動する枠部材によって保持されることは言うまでもない。
【0031】
レンズ鏡筒10の外周部には、操作環17、指標表示枠16及び表示部材である被係合回転部材18が配設されている。
【0032】
操作環17は、レンズ鏡筒10の外周部において、光学系部材11の光軸O周りに回転可能、かつ光軸O方向に進退移動可能に配設された略円筒状の部材である。操作環17は、少なくとも一部がレンズ鏡筒10の外周面上に露出しており、カメラシステム1の使用者の手指が係るように配設されている。
【0033】
具体的に本実施形態では、操作環17は、図5及び図6の断面図、及び図7及び図8の斜視図に示すように、レンズ鏡筒10の外周面上に露出して、使用者の手指が係るように外周部に凹凸が設けられた略円筒状の操作部17a、及び操作部17aの内側に所定の隙間を有して配設された略円筒状の内側円筒部(係合枠)17bの2つの略円筒状の部位を有している。
【0034】
なお、図示する本実施形態では、操作部17a及び内側円筒部17bは別部材であって、例えばネジや接着剤によって固定されることによって操作環17を構成しているが、操作部17a及び内側円筒部17bは、一体に形成される形態であってもよい。
【0035】
操作環17は、使用者の手指によって操作部17aに加えられる力によって、光軸O周りに回転する。また、操作環17は、図2及び図3に示すように、光軸O方向に所定の範囲で移動可能であって、外部からの力が加えられていない状態では移動範囲の両端のいずれか一方に選択的に位置するように配設されている。操作環17は、使用者の手指によって操作部17aに加えられる力によって、光軸O方向の移動範囲の一端から他端へ、又は他端から一端へと往復移動可能となっている。
【0036】
以下では、操作環17が選択的に位置する2つの位置のうち、光軸O方向の移動範囲の前方側(被写体側)の端部を第1の位置と称し、移動範囲の後方側(像側)の端部を第2の位置と称するものとする。
【0037】
すなわち、図2、図4、図5及び図7は、操作環17が第1の位置に位置している状態を示しており、図3、図6及び図8は、操作環17が第2の位置に位置している状態を示している。
【0038】
図5及び図6に示すように、操作環17の内周面上には、径方向内側に突出し断面が略三角形状である凸状部17cが、周方向に全周にわたって形成されている。凸状部17cは、光軸Oに沿って前方に向かうにつれて内径が小さくなり、該三角形状の頂点に至るように形成された第1斜面部17dと、第1斜面部17dの前方側において該三角形状の頂点から光軸Oに沿って前方に向かうにつれて内径が大きくなるように形成された第2斜面部17eと、を有している。
【0039】
また、操作環17の内側に配設された固定枠14には、凸状部17cに対向する箇所に貫通孔14aが穿設されている。貫通孔14a内には、ボール14bが遊嵌している。ボール14bは、固定枠14の外周面よりも外側に突出可能であって、板バネである付勢部材14cによって、固定枠14の径方向外側に向かって付勢されている。付勢部材14cは、そのバネ部分(板バネ)が固定枠14の内周面に配置されている。付勢部材14c及びボール14bは、周方向に複数箇所に配設されている。
【0040】
ボール14bは、操作環17が第1の位置に位置している場合には、凸状部17cの第1斜面部17dに当接し、操作環17が第2の位置に位置している場合には、凸状部17cの第2斜面部17eに当接する。凸状部17cが略三角形状の断面を有することから、ボール14bは、操作環17の位置に関わらず、第1斜面部17d及び第2斜面部17eのいずれかに常に当接している。
【0041】
したがって、操作環17が移動可能範囲の前方寄りに位置している場合には、操作環17は、第1斜面部17dに当接するボール14bによって前方に向かって付勢され、第1の位置において移動可能範囲の一端に当て付き、位置決めされる。
【0042】
一方、操作環17が移動可能範囲の後方寄りに位置している場合には、操作環17は、第2斜面部17eに当接するボール14bによって後方に向かって付勢され、第2の位置において移動可能範囲の他端に当て付き、位置決めされる。
【0043】
したがって、本実施形態のレンズ鏡筒10では、操作環17に外力が加えられていない場合には、操作環17の光軸O方向の位置は、第1の位置及び第2の位置のいずれかとなる。例えば、操作環17が第1の位置に位置している状態において、操作環17に加えられる後方への外力が、付勢部材14c及びボール14bが発生する付勢力よりも弱い場合には、当該外力が消失すれば操作環17は第1の位置に戻る。また例えば、操作環17が第1の位置に位置している状態において、操作環17に加えられる後方への外力が、付勢部材14c及びボール14bが発生する付勢力よりも強ければ、操作環17は第2の位置へ移動する。
【0044】
また、レンズ鏡筒10には、少なくとも操作環17が第1の位置に位置している場合に、操作環17の光軸O周りの回転方向及び回転量を検出する第1のエンコーダ手段である第1のエンコーダ部(操作環回転検出部、回転検出手段)21が配設されている。また、レンズ鏡筒10には、操作環17が光軸O方向の第1の位置及び第2の位置のいずれに位置しているかを検出する操作環位置検出手段(位置検出部)22が配設されている。
【0045】
第1のエンコーダ部21は、操作環17に周方向に所定の間隔で設けられた複数のスリット(切り欠き)17nの通過を一対のフォトインタラプタで検出し、該一対のフォトインタラプタの出力信号に基づいて、操作環17の回転方向及び回転量を検出する。本実施形態の第1のエンコーダ部21、及び操作環17に設けられたスリット17nは、いわゆるインクリメンタル形式のロータリーエンコーダと同様の形態を有しているものであり、その詳細な説明は省略するものとする。
【0046】
より具体的に本実施形態では、スリット17nは、図7に示すように、内側円筒部17bの前方側端部に形成されている。第1のエンコーダ部21を構成する一対のフォトインタラプタは、図5及び図6に示すように、固定枠14に固定されている。
【0047】
スリット17nが形成された内側円筒部17bの前方側端部は、操作環17が第1の位置に位置している場合にのみ、一対のフォトインタラプタの検出範囲内に位置する。したがって、本実施形態の第1のエンコーダ部21は、操作環17が第1の位置に位置している場合にのみ、操作環17の光軸O周りの回転方向及び回転量を検出することができる。
【0048】
なお、第1のエンコーダ部21の形態は、少なくとも操作環17が第1の位置に位置している場合に、操作環17の光軸O周りの回転方向及び回転量を検出可能なものであればよく、本実施形態に限られるものではない。例えば、第1のエンコーダ部21は、磁気式のロータリーエンコーダの形態を有するものであってもよい。
【0049】
操作環位置検出手段22は、基台部12又は固定枠14に固定されたフォトインタラプタからなる。操作環位置検出手段22は、操作環17が第2の位置に位置している場合に、操作環17の一部がフォトインタラプタの検出範囲内に進出する位置に固定されている。
【0050】
なお、操作環位置検出手段22の形態は、操作環17の光軸O方向の位置を検出可能な構成であれば特に限定されるものではない。例えば、操作環位置検出手段22は、磁気センサ等であってもよい。
【0051】
また、操作環17には、係合手段(係合部)を構成する係合凸部17gが設けられている。係合凸部17gは、操作環17が第2の位置に位置している場合に、後述する被係合回転部材18と係合し、操作環17と被係合回転部材18とを一体に回転させるためのものである。
【0052】
係合凸部17gは、内側円筒部17bの外周面上において、径方向外側に突出する複数の凸部からなる。図7及び図8に示すように、係合凸部17gを構成する複数の凸部は、互いの間に一定の隙間を有して、周方向に等間隔に配列されている。また、複数の凸部は、径方向外側から見た場合に、後方側の一部が、後方側に向かうにつれて幅が狭くなる略V字状の形状を有している。
【0053】
係合凸部17gと被係合回転部材18との係合の構成については後述するものとする。
【0054】
指標表示枠16は、基台部12に対して位置が固定された、レンズ鏡筒10の外装部材の一部であり、固定枠の機能を有した枠部材(第1の枠)である。指標表示枠16は、固定枠14を介して基台部12に固定されている。指標表示枠16は、操作環17が第1の位置に位置している状態において、操作環17の操作部17aよりも前方側となる位置に配設されている。指標表示枠16には、光軸Oと略平行な短い直線状の指標16aが設けられている。指標16aは、後述する被係合回転部材18に設けられた距離目盛18aを指し示すためのものである。
【0055】
また、指標表示枠16には、指標16aを挟んで略対称に周方向両側に、被写界深度目盛16bが配設されている。被写界深度目盛16bは、光学系部材11のF値(絞り値)に対応した被写界深度を表示するためのものである。そして、その被写界深度目盛16bは、同じ数値のF値を表す文字で対となって指標16aを挟むように表示されている。この対は複数の対があり、対同士は互いに異なる数値のF値を有する。尚、本実施形態の説明においては複数の数値(5.6、11、22)が表示されているが、少なくとも同じ数値からなる一対の数値のみが表示されているだけでもよい。
【0056】
第2の枠である被係合回転部材18は、基台部12に対して光軸O周りに相対的に回転可能であって、操作環17の内側に配設された略円筒状の部材である。言い換えれば、被係合回転部材18は、指標表示枠16に対して光軸O周りに相対的に回転可能である。
【0057】
図3に示すように、被係合回転部材18の外周面には、光学系部材11の合焦距離を表す距離目盛18aが設けられている。距離目盛18aは、光学系部材11の最短合焦距離から無限遠までの距離を示す数値が周方向に配列されている。被係合回転部材18が指標表示枠16に対して光軸O周りに相対的に回転することによって、指標16aが指し示す距離目盛18aの数値が変化する。
【0058】
被係合回転部材18は、光軸O周りの回転範囲が制限されており、指標16aによって距離目盛18aが指し示される範囲内でのみ、光軸O周りに回転可能である。すなわち、距離目盛18aは、指標16aとの組み合わせによって、光学系部材11の最短合焦距離から無限遠までの距離の数値を必ず表示する。
【0059】
被係合回転部材18の光軸O周りの回転範囲を制限する構成は特に限定されるものではない。本実施形態では一例として、被係合回転部材18の後方の端部に、後方に向かって突出する凸部18cが形成されており、この凸部18cが、固定枠14に周方向に互いに離間して配列された一対の壁部の間に位置することによって、被係合回転部材18の光軸O周りの回転範囲は、凸部18cが一対の壁部に突き当たるまでの範囲に制限される。
【0060】
すなわち、固定枠14又は指標表示枠16の固定された第1の枠と、第1の枠に対して回転可能な被係合回転部材18(第2の枠)と、の一方に凸部が設けられ、第1の枠と第2の枠との他方に前記凸部と干渉することによって第1の枠に対する第2の枠の相対的な回転の範囲を規制する回転規制手段が設けられている。
【0061】
本実施形態では、図2に示すように、操作環17が第1の位置に位置している場合には、被係合回転部材18の距離目盛18aは、レンズ鏡筒10の外部から見えない状態となる。一方、図3に示すように、操作環17が第2の位置に位置している場合には、被係合回転部材18の距離目盛18aは、レンズ鏡筒10の外部から見える状態となる。
【0062】
具体的には、被係合回転部材18は、操作環17の操作部17aと内側円筒部17bの間に配設されている。言い換えれば、操作環17の操作部17aである円筒部は、被係合回転部材18の外周面よりもさらに径方向外側に配設されている。そして、操作環17が第1の位置に位置している場合には、操作部17aが、距離目盛18a上に進出して距離目盛18aを覆い隠す。また、操作環17が第2の位置に位置している場合には、操作部17aは距離目盛18a上から退避し、距離目盛18aが外部に露出し表示される。言い換えるならば、操作環17が第2の位置に位置している場合に、被係合回転部材18が外部に露出されている状態となる。
【0063】
そして、本実施形態のレンズ鏡筒10では、被係合回転部材18は、操作環17が第2の位置に位置している場合にのみ、操作環17とともに光軸O周りに回転するように構成されている。また、操作環17が第1の位置に位置している場合には、操作環17は、被係合回転部材18と独立して回転可能である。
【0064】
具体的には、被係合回転部材18の内周部(内周面)には、係合手段を構成する1つの係合ピン18bが、径方向内側に突出するように設けられている。本実施形態では、係合ピン18bは、被係合回転部材18と別部材であって、圧入や接着剤によって被係合回転部材18に固定されている。なお、係合ピン18bは、被係合回転部材18と一体に形成される形態であってもよい。
【0065】
被係合回転部材18は、操作環17の操作部17aと内側円筒部17bの間に配設されていることから、係合ピン18bは、被係合回転部材18の内側に配設されている内側円筒部17bに向かって突出する。言い換えれば、被係合回転部材18の係合ピン18bと、操作環17の係合凸部17gは、互いに向かい合う方向に突出している。
【0066】
係合ピン18bの外径は、隣接する係合凸部17g同士の間隔よりも小さく、係合ピン18bは、隣接する係合凸部17g同士の間にすきま嵌めの状態で嵌合する形状を有している。また、係合ピン18bは、径方向内側から見た場合に前方側が略V字状となる断面形状を有している。
【0067】
図5及び図7に示すように、係合ピン18bは、操作環17が第1の位置に位置している場合には、操作環17の係合凸部17gよりも後方側であって、操作環17が光軸O周りに回転しても係合凸部17gと干渉しない位置に配設されている。
【0068】
また、図6及び図8に示すように、係合ピン18bは、操作環17が第2の位置に位置している場合には、係合凸部17gと同一円周方向上に位置している。言い換えれば、操作環17が第2の位置に位置している場合には、係合ピン18bは、光軸O方向について係合凸部17gと重なる位置に配設されている。すなわち、操作環17が第1の位置から第2の位置に相対的に移動すると、係合ピン18bは、隣接する係合凸部17g同士の間に嵌合する。また、逆に、操作環17が第2の位置から第1の位置に相対的に移動すると、係合ピン18bと係合凸部17gとの嵌合が外れる。
【0069】
以上のような構成を有する係合凸部17g及び係合ピン18bからなる係合手段によって、被係合回転部材18は、操作環17が第2の位置に位置している場合には、操作環17とともに光軸O周りに回転し、操作環17が第1の位置に位置している場合には、操作環17が光軸O周りに回転したとしても回転せずに停止したままとなる。
【0070】
なお、前述したように、係合凸部17gの複数の凸部は、径方向外側から見た場合に後方側が略V字状の形状を有しており、かつ係合ピン18bは、径方向内側から見た場合に前方側が略V字状の形状を有していることから、操作環17が第1の位置から第2の位置に移動する際には、この双方に設けられた略V字状の部位同士が倣うことによって被係合回転部材18が僅かに回転し、係合ピン18bと係合凸部17gとが滑らかに係合する。このため、操作環17を光軸O方向に移動する操作に引っかかりが生じることがなく、操作環17の移動を速やかに行うことができる。
【0071】
また、前述したように被係合回転部材18の回転範囲は、距離目盛18aと指標16aとの組み合わせが光学系部材11の最短合焦距離から無限遠までの距離の数値を表示する範囲に制限されている。このため、操作環17は、第2の位置に位置して被係合回転部材18と係合している場合には、被係合回転部材18と同一の回転範囲内でのみ回転することが可能である。すなわち、操作環17が第2の位置に位置している場合には、操作環17の回転範囲に制限がかけられている。
【0072】
以上のように、操作環17が第2の位置に位置している場合には、固定された第1の枠に対する被係合回転部材18(第2の枠)の相対的な回転の範囲を規制する回転規制手段によって、操作環17の回転の範囲も所定の範囲に規制される。
【0073】
一方、操作環17が第1の位置に位置している場合には、操作環17は被係合回転部材18と干渉しないため、操作環17の回転範囲に制限はない。つまり、操作環17が第1の位置に位置している場合には、操作環17は回転規制手段によって回転の範囲が規制されることなく、無制限に回転可能である。
【0074】
また、本実施形態のレンズ鏡筒10には、被係合回転部材18の基台部12に対する光軸O周りの絶対的な回転位置を検出する第2のエンコーダ手段である第2のエンコーダ部(回転位置検出手段)23が配設されている。
【0075】
図9に示すように、本実施形態では一例として、第2のエンコーダ部23は、いわゆるアブソリュート型のロータリーエンコーダの形態を有して構成されている。第2のエンコーダ部23は、導電体からなる所定のビット数のコードパターン23aと、コードパターン23aに摺動する導電体からなる接点部23bを有して構成されている。
【0076】
コードパターン23aは、固定枠14の外周部に配設されており、接点部23bは、被係合回転部材18に配設されている。被係合回転部材18の光軸O周りの回転位置に応じて、接点部23bが接触するコードパターン23aの位置が変化する。図示しないが、第2のエンコーダ部23は、コードパターン23aと接点部23bとの接触の状態を検出する電気回路を有しており、この検出結果から、被係合回転部材18の基台部12に対する光軸O周りの絶対的な回転位置を算出することができる。アブソリュート型のロータリーエンコーダの構成は周知のものであるため、詳細な説明は省略するものとする。
【0077】
なお、第2のエンコーダ部23の構成は、基台部12に対する光軸O周りの絶対的な回転位置を検出することが可能な形態であれば本実施形態に限られるものではない。例えば、第2のエンコーダ部23は、光学式又は磁気式のアブソリュート型ロータリーエンコーダであってもよいし、被係合回転部材18の光軸O周りの回転位置に応じて抵抗値が変化する、いわゆるポテンショメータと同様の構成を有する形態であってもよい。
【0078】
次に、カメラシステム1の合焦動作に関わる部分の電気的な構成を、図10を参照して説明する。
【0079】
前述したように、カメラ本体2には、レリーズスイッチ3、電源スイッチ4、合焦モード切替操作部5、及び自動合焦用センサ部である撮像素子9が配設されている。また、カメラ本体2には、カメラ本体制御部6、画像処理部7、通信部8、画像表示回路30及び画像表示装置31が配設されている。
【0080】
制御部を構成するカメラ本体制御部(制御手段)6は、演算装置(CPU)、記憶装置(RAM)、入出力装置及び電力制御装置等を具備して構成されており、カメラ本体2の動作を、所定のプログラムに基づいて制御するものである。
【0081】
また、画像処理部7は、画像処理を行うための電子回路部であり、撮像素子9から出力される信号から被写体像のコントラスト値を算出することが可能である。なお、画像処理部7のカメラ本体2への実装形態は、画像処理用の演算ハードウェアを搭載するハードウェア的な形態であってもよいし、カメラ本体制御部6の演算装置が所定の画像処理プログラムに基づいて画像処理を行うソフトウェア的な形態であってもよい。
【0082】
通信部8は、有線通信又は無線通信によって、レンズ鏡筒10に設けられた通信部25を介してレンズ鏡筒制御部24との通信を行うためのものである。また、画像処理回路30は、撮像素子9からの被写体像を画像表示装置31に表示するための回路であり、例えば合焦動作中の被写体像を画像表示装置31に表示させる。
【0083】
レンズ鏡筒10には、前述したように、駆動部15、操作環位置検出手段22、第1のエンコーダ部21及び第2のエンコーダ部23が配設されている。また、レンズ鏡筒10には、レンズ鏡筒制御部24及び通信部25が配設されている。これら通信部25、操作環位置検出部22、第1のエンコーダ部21、第2のエンコーダ部23、及び駆動部15のモータ15cがレンズ鏡筒制御部24に電気的に接続されている。
【0084】
制御部を構成するレンズ鏡筒制御部(制御手段)24は、演算装置、記憶装置、及び入出力装置等を具備して構成されており、カメラ本体制御部6と連係してレンズ鏡筒10の動作を、所定のプログラムに基づいて制御するものである。また、通信部8は、有線通信又は無線通信によって、カメラ本体2に設けられた通信部8を介してカメラ本体制御部6との通信を行うためのものである。これら通信部8と通信部25が有るため、カメラ本体2に対しレンズ鏡筒10を着脱可能としている。
【0085】
次に、以上に説明した構成を有するカメラシステム1の動作を説明する。
【0086】
本実施形態のカメラシステム1では、カメラ本体が電源オン状態である場合に、カメラ本体制御部6によって、図11に示す合焦動作モード切替サブルーチンが所定の周期で繰り返し行われる。合焦動作モード切替サブルーチンは、カメラシステム1が有する複数の合焦動作モードのうち、使用者からの指示入力によって選択されたものを判定し、カメラシステム1の合焦動作モードを指示入力に従って切り替えるためのものである。
【0087】
なお、以下に説明する合焦動作モード切替サブルーチンは、カメラシステム1が撮影動作を行うためのメインルーチンの中に適宜に組み込まれるものである。カメラシステム1が撮影動作を行うためのメインルーチンについては、周知の技術と同様であるためその説明は省略するものとする。
【0088】
本実施形態のカメラにおいては、合焦動作モードとして3つのモードを有する。
【0089】
合焦動作モードの第1のモードは、自動焦点調節のための自動合焦モード(オートフォーカスモード)である。自動合焦モードにおいて操作環17が第1の位置にある場合、第1のレリーズスイッチ3aがオンとなったことを検出すると、操作環17が使用者によって回転操作されたか否かに関わりなく、カメラシステム1が撮像素子9からの出力もしくは撮像素子9とは異なる合焦用センサ部からの出力を基に合焦用枠13を駆動源15cにより駆動する、自動合焦動作を行う。この状態で操作環17が回されてもカメラシステム1は何らの動作も行わない。
【0090】
また、自動合焦モードにおいて操作環17が第2の位置ある場合、操作環17が回転させられたことを検出すると、第2のエンコーダ部23の出力に従って指標16aが指す距離目盛18aの距離表示の数値に合焦するように合焦用枠13を駆動源15cにより駆動する。この動作を、距離指定合焦動作という。
【0091】
合焦動作モードの第2のモードは、手動による焦点調節のための手動合焦モード(マニュアルフォーカスモード)である。手動合焦モードにおいて操作環17が第1の位置にある場合、カメラシステム1は、操作環17が回転させられると、第1のエンコーダ部21によって検出される操作環17の回転方向、回転量及び回転速度等に応じて合焦用枠13を駆動源15cにより駆動する、手動合焦動作を行う。本実施形態では一例として、手動合焦動作では、操作環17が後方から見て反時計回りに回転させられた場合に、合焦距離が無限遠側に変化するように合焦用枠13を駆動源15cにより駆動し、操作環17が時計回りに回転させられた場合に、合焦距離が至近側に変化するように合焦用枠13を駆動源15cにより駆動する。また手動合焦動作では、操作環17の回転量に応じて合焦用枠13の駆動量が決定され、操作環17の回転速度に応じて合焦用枠13の駆動速度が決定される。手動合焦動作時には、使用者は、画像表示装置31に表示されるライブビュー画像等により合焦状態を観察できる。
【0092】
また、手動合焦モードにおいて操作環17が第2の位置にある場合、前述した距離指定合焦動作を行う。
【0093】
合焦動作モードの第3のモードは、自動合焦動作と手動合焦動作を組み合わせた動作を行う合焦動作自動切替モードである。合焦動作自動切替モードにおいて、操作環17が第1の位置にある場合、第1のレリーズスイッチ3aがオンとなったことを検出すると、前述した自動合焦モードと同様に、カメラシステム1が撮像素子9からの出力もしくは撮像素子9とは異なる合焦用センサ部からの出力を基に合焦用枠13を駆動源15cにより駆動し合焦を行う。ただし、合焦動作自動切替モードにおいて操作環17が第1の位置にある場合に、操作環17が回転させられると前述した手動合焦モードと同じように合焦用枠13が駆動源15cにより駆動される点が、自動合焦モードとは異なる。
【0094】
また合焦動作自動切替モードにおいて操作環17が第2の位置にある場合、前述した距離指定合焦動作を行う。
【0095】
以下に、図11に示す合焦動作モード切替サブルーチンについてより詳細に説明する。合焦動作モード切替サブルーチンでは、まず、ステップS01において、合焦モード切替操作部5を介して使用者が選択した合焦動作モードが、自動合焦動作モードであるか否かを判定する。ここでは、合焦モード切替操作部5が、例えばダイヤルスイッチである場合には、ダイヤルスイッチからの出力に基づいて判定する。また例えば、合焦モード切替操作部5が、GUIによって構成されたものである場合には、記憶している予め使用者によって指定された情報に基づいて判定する。
【0096】
ステップS01の判定の結果、自動合焦動作モードが選択されている場合には、ステップS02に移行し、操作環位置検出手段22により操作環17の光軸O方向の位置を求める。すなわち操作環17が第1の位置にあるか又は第2の位置にあるかを操作環位置検出手段22により検出する。ステップS02において操作環17が第1の位置にあると判定した場合には、ステップS03に進み、図12に示す自動合焦動作を行う。
【0097】
カメラシステム1において、自動合焦動作を行うタイミングは特に限定されるものではないが、本実施形態では一例として、図12のフローチャートに示すように、第1レリーズスイッチ3aがオン状態となった場合に、自動合焦動作を行うものとする。
【0098】
カメラシステム1が自動合焦動作を行う場合、自動合焦用センサ部である撮像素子9から出力される信号に基づいて被写体像のコントラスト値を検出し、該コントラスト値が最も高くなるように合焦用枠13を光軸O方向に駆動する。若しくは撮像素子9とは異なる位相差式の自動合焦用のセンサからの出力に基づいて合焦動作を行う。
【0099】
本実施形態のように、カメラ本体1とレンズ鏡筒10とが離合可能(着脱可能)に構成されたカメラシステム1では、自動合焦動作時において撮像素子9からの出力に基づいて駆動源15cを駆動するための指令は、カメラ本体制御部6から出力される。この場合、レンズ鏡筒制御部24は、通信部25を介して入力されるカメラ本体制御部6からの指令に応じて、駆動源15cを駆動する。ステップS03の実行により合焦動作モード切替サブルーチンは一旦終了しここでは説明を省略した撮影メインルーチンへリターンする。
【0100】
なお、カメラシステム1は、自動合焦動作モードが選択されており、かつ操作環17が第1の位置にある場合には、第1レリーズスイッチ3aの状態にかかわらず、常に自動合焦動作を行い続ける形態であってもよい。
【0101】
一方、ステップS02において操作環17が第1の位置にない、すなわち操作環17が第2の位置にあると判定した場合には、ステップS04に進み、図14に示す後述する距離指定合焦動作を行う。
【0102】
また、ステップS01の判定の結果、自動合焦動作モードが選択されていない場合には、ステップS05へ移行する。ステップS05では、カメラシステム1が有する複数の合焦動作モードのうち、合焦モード切替操作部5によって手動合焦モードが使用者により選択されているか否かを判定する。ステップS05において、手動合焦モードが選択されていると判定した場合には、ステップS06に進む。
【0103】
ステップS06では、操作環17が第1の位置にあるか又は第2の位置にあるかを操作環位置検出手段22により検出する。ステップS06の判定の結果、操作環17が第1の位置にあるならば、S07に進み、図13に示す手動合焦動作を行う。
【0104】
ステップS07では、カメラシステム1は、図13に示す手動合焦動作サブルーチンを実行する。カメラシステム1は、手動合焦動作を行う場合には、第1のエンコーダ部21によって操作環17の回転を検出した場合(ステップS20)に、操作環17の回転方向、回転量及び回転速度に応じて合焦用枠13を駆動する(ステップS21)。
【0105】
例えば、レンズ鏡筒10を後方から見た場合に、操作環17が時計回り方向に回転したことを検出した場合には、カメラシステム1は、光学系部材11の合焦距離が短くなる方向に合焦用枠13を移動させる。また例えば、レンズ鏡筒10を後方から見た場合に、操作環17が反時計回り方向に回転したことを検出した場合には、カメラシステム1は、光学系部材11の合焦距離が長くなる方向に合焦用枠13を移動させる。手動合焦動作における合焦用枠13の移動距離及び速度は、第1のエンコーダ部21によって検出された操作環17の回転量(回転角度)及び回転速度(回転角速度)に応じて決められる。
【0106】
図13に示す手動合焦動作は、合焦動作モード切替サブルーチンの実行によって、手動合焦動作以外の合焦動作が選択されるまで繰り返し実行される。すなわち、合焦モード切替操作部5により、例えば、自動合焦動作モードが選択されるか、操作環17が第1の位置から第2の位置に移動されるまで、図13に示す手動合焦動作は繰り返し実行される。
【0107】
なお、本実施形態のカメラシステム1の手動合焦動作時においては、使用者は、いわゆるライブビューと称される画像表示装置31に表示される被写体像の様子を観察することにより合焦の様子を観察することができ、この観察結果に基づいて操作環17を操作する。もちろん、他の合焦動作時においても同様に、使用者は、画像表示装置31に表示される被写体像の様子を観察することにより合焦の様子を観察することができる。
【0108】
ステップS06において操作環17が第1の位置にない、すなわち操作環17が第2の位置にあると判定した場合には、ステップS04に進み、図14に示す後述する距離指定合焦動作を行う。
【0109】
また、ステップS05において、合焦モード切替操作部5によって手動合焦モードが使用者により選択されていないと判定した場合には、合焦動作自動切替モードであると判定する。そして、ステップS08に進み、操作環17が第1の位置にあるか又は第2の位置にあるかを操作環位置検出手段22により検出する。ステップS08において、操作環17が第1の位置にない、すなわち操作環17が第2の位置にあると判定した場合には、ステップS04に進み、図14に示す後述する距離指定合焦動作を行う。
【0110】
一方、ステップS08において操作環17が第1の位置にあると判定した場合には、ステップS09に進み、第1レリーズスイッチ3aがオン状態で有るか否かを判定(モニタ)する。ステップS09において、第1レリーズスイッチ3aがオン状態である場合には、ステップS03に進み、図12に示す前述した自動合焦動作を行う。また、ステップS09において、第1レリーズスイッチ3aがオン状態ではない場合には、ステップS07に進み、図13に示す前述した手動合焦動作を行う。
【0111】
以下に、ステップS04の距離指定合焦動作を説明する。距離指定合焦動作は、図14に示す距離指定合焦動作サブルーチンにより行われる。距離指定合焦動作では、カメラシステム1は、第2のエンコーダ部23の出力信号から算出される指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値に応じた位置に合焦用枠13を駆動する。
【0112】
具体的に距離指定合焦動作では、まずステップS30において、レンズ鏡筒制御部24が、第2のエンコーダ部23の出力値を読み取る。第2のエンコーダ部23の出力値は、被係合回転部材18の基台部12に対する光軸O周りの絶対的な回転位置を表す値である。
【0113】
次にステップS31において、レンズ鏡筒制御部24は、第2のエンコーダ部23の出力値から、指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値を算出する。第2のエンコーダ部23の出力値から、指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値への変換は、例えばレンズ鏡筒制御部24が予め記憶している変換テーブルに基づいて行われる。
【0114】
次にステップS32において、レンズ鏡筒制御部24は、第2のエンコーダ部23の出力値から、指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値と、光学系部材11の合焦距離とが、一致又は近似するように合焦用枠13を移動させる。例えば、指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値が3mであれば、光学系部材11の合焦距離が3mとなるように合焦用枠13を移動させる。その後、リターンしてステップS01に戻る。なお、ステップS30からS32の動作は、レンズ鏡筒制御部24のみではなく、レンズ鏡筒制御部24とカメラ本体制御部6の連係によって行われる形態であってもよい。
【0115】
なお、距離指定合焦動作では、指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値と、光学系部材11の合焦距離とが一致することが理想的であるが、第2のエンコーダ部23の分解能が低い場合には両者を一致させることは困難であるため、両者が近似するように合焦用枠13を移動させる。
【0116】
また、レンズ鏡筒制御部24は、算出した指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値を、通信部25を介して、カメラ本体2のカメラ本体制御部6へ出力する。カメラ本体制御部6は、受信した当該数値に応じて露出値を決定したり、当該数値を撮影した画像にメタデータとして付加する。
【0117】
図14に示す距離指定合焦動作は、合焦動作モード切替サブルーチンの実行によって、距離指定合焦動作以外の合焦動作が選択されるまで繰り返し実行される。すなわち、合焦モード切替操作部5により自動合焦動作モードが選択されるか、操作環17が第2の位置から第1の位置に移動されるまで、図14に示す距離指定合焦動作は繰り返し実行される。
【0118】
図15は、以上に説明したカメラシステム1において、操作環17の光軸O方向の位置及び合焦動作モードの選択状態によって決定される、自動合焦動作、手動合焦動作及び距離指定合焦動作の切り替わりを表にまとめたものである。
【0119】
図15に示すように、カメラシステム1の合焦動作モードとして手動合焦モードが選択されており、かつ操作環17が第1の位置にある場合には、操作環17が回転されると操作環17の回転に応じて合焦用枠13が駆動される手動合焦動作となる。一方、カメラシステム1の合焦動作モードとして手動合焦モードが選択されており、かつ操作環17が第2の位置にある場合には、指標16aが指す距離に合焦するように合焦用枠13が駆動される距離指定合焦動作となる。
【0120】
また、カメラシステム1の合焦動作モードとして自動合焦モードが選択されており、かつ操作環17が第1の位置にある場合には、操作環17が回転されても合焦用枠13を駆動せず、第1のレリーズスイッチ3aがオンとなった場合に撮像素子9からの出力を基に合焦用枠13を駆動する、自動合焦動作となる。一方、カメラシステム1の合焦動作モードとして自動合焦モードが選択されており、かつ操作環17が第2の位置にある場合には、指標16aが指す距離に合焦するように合焦用枠13が駆動される距離指定合焦動作となる。
【0121】
また、カメラシステム1の合焦動作モードとして合焦動作自動切替モードが選択されており、かつ操作環17が第1の位置にある場合には、第1のレリーズスイッチ3aがオンとなれば自動合焦動作となり、操作環17が回転されれば手動合焦動作となる。一方、カメラシステム1の合焦動作モードとして合焦動作自動切替モードが選択されており、かつ操作環17が第2の位置にある場合には、指標16aが指す距離に合焦するように合焦用枠13が駆動される距離指定合焦動作となる。
【0122】
以上に説明したように、本実施形態のカメラシステム1は、カメラ本体2に固定される基台部12に対して固定された位置に配設される指標16aと、基台部12に対して回転可能に配設され距離目盛18aを有する被係合回転部材18と、被係合回転部材18の基台部12に対する回転位置を検出する第2のエンコーダ部23と、操作環17とともに回転可能な被係合回転部材18とを有して構成されている。
【0123】
そして、本実施形態のカメラシステム1は、自動合焦動作時には、被係合回転部材18の回転位置に関わらず、合焦用センサ部である撮像素子9の出力に基づいて焦点調節を行う。また、カメラシステム1は、距離指定合焦動作時には、第2のエンコーダ部23の出力信号から算出される指標16aが指す距離目盛18aの距離の数値に応じた位置に合焦用枠13を駆動する。すなわち、カメラシステム1は、距離目盛を使用した手動合焦が可能である。また、カメラシステム1における自動合焦動作及び距離指定合焦動作の切替は、使用者が合焦モード切替操作部5及び操作環17を操作することによって実施可能である。
【0124】
以上のような構成を有するカメラシステム1のレンズ鏡筒10では、駆動部15が駆動する部材は、合焦用レンズ11aを保持する合焦用枠13のみであり、駆動部15が駆動する部材を少なくし、かつ軽量なものとすることができる。これにより、本実施形態では、駆動部15を出力の小さい小型なものとすることができ、レンズ鏡筒10を小型化することができる。また、合焦動作を素早く行うことができる。
【0125】
また、本実施形態では、被係合回転部材18を駆動するための動力を伝達する機構が不要であり、少ない部品点数の単純な構成で駆動部15から被駆動部材である合焦用枠13にまで動力を伝達することができる。このため、焦点調節のために合焦用枠13を駆動する際に発生する音の音量を下げることが容易である。焦点調節時に発生する音量を抑制することは、例えば動画像の撮影時において好ましい。
【0126】
また、本実施形態では、合焦モード切替操作部5により手動合焦動作モードが選択され、かつ操作環17が第2の位置に位置している場合には、距離目盛を使用した手動合焦が可能である。これにより、本実施形態では、距離目盛18aを使用して予め手動で所定の合焦距離に設定しておき、焦点調節動作を行わずに素早く撮影するという撮影手法を実施することができる。
【0127】
例えば本実施形態では、指標表示枠16に被写界深度指標16bが設けられていることから、使用者は、レンズ鏡筒10の外周部に露出している距離目盛18a、指標16a及び被写界深度指標16bを見ることによって、合焦する被写体距離を即座に確認することができる。
【0128】
一方で、本実施形態では、合焦モード切替操作部5により手動合焦動作モードが選択され、かつ操作環17が第1の位置に位置している場合には、操作環17の回転に応じて焦点調節を行う図13に示した手動合焦動作が可能である。手動合焦動作では、操作環17は、被係合回転部材18と係合していないことから光軸O周りに制限無く回転可能であり、光学系部材11の焦点調節は操作環17の回転量に応じて行われる。
【0129】
このため、本実施形態のカメラシステム1の手動合焦動作では、距離目盛を使用した距離指定合焦動作よりも細かい焦点調節を行うことができる。
【0130】
以上のように、本実施形態のカメラシステム1では、駆動部15を介した荒い焦点調節(粗調節)として、指標16aと距離目盛18aによって合焦距離と被写界深度が明示されることにより素早い撮影を実現する距離指定合焦動作と、操作環17の回転量に応じて駆動部15を介した細かい焦点調節(微調節)を行うことができる手動合焦動作と、を選択的に実行することができる。そして、距離指定合焦動作と手動合焦動作の切替は、操作環17を前後に移動させるだけで可能であるため、素早く実行可能である。
【0131】
なお、第2のエンコーダ部23の分解能が充分に高ければ、距離指定合焦動作であっても細かい焦点調節が行えることは言うまでもない。また、距離指定合焦動作を絶対合焦動作と称し、手動合焦動作を相対合焦動作と称してもよい。
【0132】
また、本実施形態では、操作環17が第1の位置に位置している場合には、操作環17と被係合回転部材18とが係合していないことから、操作環17が回転しても被係合回転部材18は回転しない。したがって、距離指定合焦動作時において設定された被係合回転部材18の距離表示は、手動合焦動作時に変更されることがない。
【0133】
例えば、使用者が距離指定合焦動作時において合焦距離が3メートルとなるように被係合回転部材18を回転させた後に、操作環17を第1の位置に移動させ、手動合焦動作による焦点調節を行ったとしても、被係合回転部材18は回転しない。よって、この後に使用者が操作環17を第2の位置に移動させて距離指定合焦動作を行う場合には、光学系部材11の合焦距離は3メートルに戻る。したがって、予め距離指定合焦動作時において合焦距離を所望の値に設定しておけば、手動合焦動作を行っている状態から、操作環17を後方に移動させるだけで素早く所望の合焦距離による撮影を行うことができる。
【0134】
以上に説明したように、本実施形態のカメラシステム1は、自動合焦及び手動合焦が可能であり、被写体に対する合焦動作を迅速に行うことが可能である。
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態を説明する。以下では第1の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0135】
図16に示すように、本実施形態のカメラシステム1は、カメラ本体2とレンズ鏡筒10とが離合できず一体に構成されている。本実施形態のように、カメラ本体2とレンズ鏡筒10とが一体であるカメラシステム1では、カメラ本体2とレンズ鏡筒10の双方に制御部を構成する電気回路等を配設する必要はない。
【0136】
図17に示すように、本実施形態では、制御部はカメラ本体2内に配設されたカメラ本体制御部6のみによって構成される。カメラ本体制御部6は、第1の実施形態においてレンズ鏡筒制御部が行っている制御も合わせて実行可能に構成されている。本実施形態のカメラシステム1のその他の構成及び動作は、第1の実施形態の通信部8、通信部25を省いてあり、カメラ本体制御部6に画像処理部7、第1レリーズスイッチ3aと第2レリーズスイッチ3bからなるレリーズスイッチ3、電源スイッチ4、合焦モード切替操作部5、操作環位置検出部22、第1のエンコーダ部21、第2のエンコーダ部23、駆動源15c、画像表示回路30が電気的に接続され、実質的に第1の実施形態と同様である。したがって、本実施形態のカメラシステム1は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
以下に、本発明の第3の実施形態を説明する。第3の実施形態は、第1の実施形態に比して合焦動作モード切替サブルーチンが異なる。以下では第1の実施形態との相違点を説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0137】
図18は、第5の実施形態のカメラシステムの合焦動作モード切替サブルーチンのフローチャートである。なお、以下に説明する合焦動作モード切替サブルーチンは、カメラシステム1が撮影動作を行うためのメインルーチンの中に適宜に組み込まれるものである。カメラシステム1が撮影動作を行うためのメインルーチンについては、周知の技術と同様であるためその説明は省略するものとする。
【0138】
本実施形態では、まず、ステップS51において、操作環位置検出部22の出力信号に基づいて、操作環17が第1の位置に存在するか否かを判定する。ステップS51の判定において、操作環17が第1の位置に存在しないと判定した場合には、ステップS55に移行し、図14に示す距離指定合焦動作を行う。
【0139】
一方、ステップS51の判定において、操作環17が第1の位置に存在すると判定した場合には、ステップS52に移行する。ステップS52では、合焦モード切替操作部5を介して使用者が選択した合焦動作モードが、自動合焦動作モードであるか否かを判定する。
【0140】
ステップS52の判定において、自動合焦動作モードが選択されている場合には、ステップS53に移行し、図12に示す自動合焦動作を行う。一方、ステップS52の判定において、自動合焦動作モードが選択されていない場合には、図13に示す手動合焦動作を行う。
【0141】
以上に説明したように、本実施形態の合焦動作モード切替サブルーチンでは、最初に操作環17が第1の位置及び第2の位置のいずれに位置しているかの判定が行われる。このため、操作環17が第2の位置に位置している場合には、距離指定合焦動作が実行される。
【0142】
したがって、本実施形態のカメラシステム1では、合焦モード切替操作部5を介して使用者が選択した合焦動作モードが、自動合焦動作モード及び手動合焦動作モードのいずれであっても、操作環17が第2の位置に位置している場合には、距離指定合焦動作が行われる。
【0143】
すなわち、本実施形態では、使用者が操作環17を第2の位置に移動させれば、カメラシステム1は必ず距離指定合焦動作を実行する。このため、本実施形態では、自動合焦動作を行っている状態から、即座に距離目盛を使用した距離指定合焦動作に切り替えることができる。
【0144】
また、上述した実施形態において説明したように、操作環17が第1の位置に位置している場合には、操作環17と被係合回転部材18とは係合しておらず、操作環17が回転したとしても被係合回転部材18は回転しない。
【0145】
例えば、操作環17が第2の位置に位置している場合において、合焦距離を3メートルとし、その後、一旦操作環17を第1の位置に移動した後に第2の位置に戻した場合、第1の位置における操作環17の回転の有無や自動合焦動作の有無にかかわらず合焦距離は3メートルとなる。
【0146】
このため、操作環17が第2の位置に位置している場合において、被写界深度指標16bによる表示に基づいて合焦距離をいわゆるパンフォーカスと称される撮影手法が行えるように設定しておけば、自動合焦動作又は手動合焦動作を行っている状態から、操作環17を第2の位置に移動させるだけで素早くパンフォーカス撮影を行う状態に切り替えることができ、利便性が向上する。また逆に、距離指定合焦動作時にパンフォーカス撮影を行っている状態から、操作環17を第1の位置に移動させるだけで素早く自動合焦動作又は手動合焦動作を行う状態に切り替えることができる。
【0147】
また、第1の実施形態で述べたように、本実施形態でも駆動部15が駆動する部材を少なくし、かつ軽量なものとすることができる。これにより、本実施形態では、駆動部15を出力の小さい小型なものとすることができ、レンズ鏡筒10を小型化することができる。また、合焦動作を素早く行うことができる。
【0148】
なお、上述した実施形態では、レンズ鏡筒10の被係合回転部材18に距離目盛18aを表示させ、固定部材16に指標16aを設けたが、これとは逆に固定部材16に距離目盛を表示させ、被係合回転部材18に指標を設けてもよい。
【0149】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うカメラシステム及びレンズ鏡筒もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、
駆動源と、
合焦用レンズと、
前記駆動源により駆動され、前記合焦用レンズを光軸方向に駆動する駆動部と、
光軸周りに回転可能な被係合回転部材と、
前記合焦用レンズを光軸方向に駆動するため、光軸方向の第1の位置及び第2の位置に位置することが可能で、前記第1の位置及び前記第2の位置それぞれの位置において光軸周りの回転が可能な操作環と、
前記操作環が前記第1の位置にあるか、前記第2の位置にあるのかを検出する操作環位置検出手段と、
前記操作環が前記第2の位置にあるとき、前記被係合回転部材と前記操作環とを係合させて前記操作環の回転に伴い前記被係合回転部材を回転させ、前記操作環が前記第1の位置にあるとき、前記被係合回転部材及び前記操作環を非係合とし前記操作環が回転しても前記被係合回転部材が回転しないようにする係合手段と、
手動により合焦を行うことが可能な手動合焦モードと自動により合焦を行うことが可能な自動合焦モードのいずれかを選択可能な合焦モード切替操作部と、
前記合焦モード切替操作部により手動合焦モードが選択され、かつ前記操作環位置検出手段により前記操作環が前記第1の位置にあると検出され、前記操作環が回転されたときには該回転に応じて前記合焦レンズを任意の位置に前記駆動部により駆動し、前記合焦モード切替操作部により手動合焦モードが選択され、かつ前記操作環位置検出手段により前記操作環が前記第2の位置にあると検出されたときには、前記合焦用レンズを前記被係合回転部材と前記固定部材との相対移動位置に応じて前記駆動部により駆動し、前記合焦モード切替操作部により自動合焦モードが選択され、かつ前記操作環位置検出手段により前記操作環が前記第1の位置にあると検出されたときには、前記操作環が回転されたときでも前記合焦レンズを駆動せず、前記合焦モード切替操作部により自動合焦モードが選択され、かつ前記操作環位置検出手段により前記操作環が前記第2の位置にあると検出されたときには、前記合焦用レンズを前記被係合回転部材と前記固定部材との相対移動位置に応じて前記駆動部により駆動する制御を行う制御手段と、
を具備することを特徴とするカメラシステム。
【請求項2】
さらに、自動合焦を行うためのスイッチ手段、を具備し、
前記制御部は前記操作環が前記第1の位置にあり、前記スイッチ手段からの出力があるとき前記合焦用レンズを合焦位置に駆動することを特徴とする請求項1に記載のカメラシステム。
【請求項3】
前記固定部材には指標と距離目盛のうちの一方が表示され、前記操作環には指標と距離目盛のうちの他方が表示されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラシステム。
【請求項4】
前記固定部材には指標と距離目盛のうちの一方が表示され、前記操作環には指標と距離目盛のうちの他方が表示されていることを特徴とする請求項2に記載のカメラシステム。
【請求項5】
前記固定部材は、前記指標を挟んで少なくとも同じ数値の一対の絞り値を表示していることを特徴とする請求項2に記載のカメラシステム。
【請求項6】
前記固定部材は、前記指標を挟んで少なくとも同じ数値の一対の絞り値を表示していることを特徴とする請求項3に記載のカメラシステム。
【請求項7】
前記レンズ鏡筒は前記カメラに対し着脱可能な交換レンズであることを特徴とした請求項1から6のいずれか一項に記載のカメラシステム。
【請求項1】
固定部材と、
駆動源と、
合焦用レンズと、
前記駆動源により駆動され、前記合焦用レンズを光軸方向に駆動する駆動部と、
光軸周りに回転可能な被係合回転部材と、
前記合焦用レンズを光軸方向に駆動するため、光軸方向の第1の位置及び第2の位置に位置することが可能で、前記第1の位置及び前記第2の位置それぞれの位置において光軸周りの回転が可能な操作環と、
前記操作環が前記第1の位置にあるか、前記第2の位置にあるのかを検出する操作環位置検出手段と、
前記操作環が前記第2の位置にあるとき、前記被係合回転部材と前記操作環とを係合させて前記操作環の回転に伴い前記被係合回転部材を回転させ、前記操作環が前記第1の位置にあるとき、前記被係合回転部材及び前記操作環を非係合とし前記操作環が回転しても前記被係合回転部材が回転しないようにする係合手段と、
手動により合焦を行うことが可能な手動合焦モードと自動により合焦を行うことが可能な自動合焦モードのいずれかを選択可能な合焦モード切替操作部と、
前記合焦モード切替操作部により手動合焦モードが選択され、かつ前記操作環位置検出手段により前記操作環が前記第1の位置にあると検出され、前記操作環が回転されたときには該回転に応じて前記合焦レンズを任意の位置に前記駆動部により駆動し、前記合焦モード切替操作部により手動合焦モードが選択され、かつ前記操作環位置検出手段により前記操作環が前記第2の位置にあると検出されたときには、前記合焦用レンズを前記被係合回転部材と前記固定部材との相対移動位置に応じて前記駆動部により駆動し、前記合焦モード切替操作部により自動合焦モードが選択され、かつ前記操作環位置検出手段により前記操作環が前記第1の位置にあると検出されたときには、前記操作環が回転されたときでも前記合焦レンズを駆動せず、前記合焦モード切替操作部により自動合焦モードが選択され、かつ前記操作環位置検出手段により前記操作環が前記第2の位置にあると検出されたときには、前記合焦用レンズを前記被係合回転部材と前記固定部材との相対移動位置に応じて前記駆動部により駆動する制御を行う制御手段と、
を具備することを特徴とするカメラシステム。
【請求項2】
さらに、自動合焦を行うためのスイッチ手段、を具備し、
前記制御部は前記操作環が前記第1の位置にあり、前記スイッチ手段からの出力があるとき前記合焦用レンズを合焦位置に駆動することを特徴とする請求項1に記載のカメラシステム。
【請求項3】
前記固定部材には指標と距離目盛のうちの一方が表示され、前記操作環には指標と距離目盛のうちの他方が表示されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラシステム。
【請求項4】
前記固定部材には指標と距離目盛のうちの一方が表示され、前記操作環には指標と距離目盛のうちの他方が表示されていることを特徴とする請求項2に記載のカメラシステム。
【請求項5】
前記固定部材は、前記指標を挟んで少なくとも同じ数値の一対の絞り値を表示していることを特徴とする請求項2に記載のカメラシステム。
【請求項6】
前記固定部材は、前記指標を挟んで少なくとも同じ数値の一対の絞り値を表示していることを特徴とする請求項3に記載のカメラシステム。
【請求項7】
前記レンズ鏡筒は前記カメラに対し着脱可能な交換レンズであることを特徴とした請求項1から6のいずれか一項に記載のカメラシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−80246(P2013−80246A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−272022(P2012−272022)
【出願日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【分割の表示】特願2012−530817(P2012−530817)の分割
【原出願日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【分割の表示】特願2012−530817(P2012−530817)の分割
【原出願日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】
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