説明

カメラ調整方法およびカメラ調整システム

【課題】複数種の車両が混在する場合であっても、1種類の車両で車両の各検査対象部に応じて設置されるカメラの調整ができるカメラ調整方法の提供を目的とする。
【解決手段】複数種の車両から基準となる1種の車両を基準車両として選択する段階(ステップS2)と、前記基準車両の検査対象部に対する他種の車両の検査対象部の位置の変位量を算出する段階(ステップS2)と、前記基準車両に取り付けられ、前記位置の変位量を示す変位量表示装置を設定する段階(ステップS4)と、前記設定された変位量表示装置に基づいて、前記複数種の車両の検査対象部を撮像するカメラを調整する段階(ステップS6,S7)と、を含むことを特徴とするカメラ調整方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ調整方法およびカメラ調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両、たとえば、自動車のドアミラー、ワイパー、ブレーキランプなどの構成部品には、その品質を保証する特定の品質保証マーク(たとえば、刻印された部品コード)が取り付けられる。自動車が完成して市場に出荷する場合には、品質に問題がないことを確認するために、自動車の各構成部品に部品コードが刻印されたものであるか否かを検査する必要がある。従来は、作業者が実際に自分の目で見て確認することにより、この検査作業が行われていた。しかし、近年のデジタルカメラの高性能化により、自動車の構成部品に特定の品質保証マークがあるか否かを判別するために、カメラを用いた画像検査装置を用いることが可能になった。
【0003】
画像検査装置は、たとえば、自動車の検査ラインに用いられ、カメラが撮像する撮像領域に自動車が進入して停止したときに、自動車の構成部品をカメラにより撮像し、撮像された画像結果により、各構成部品に品質保証マークがあるか否かを判別する。
【0004】
この画像検査装置により構成部品(検査対象部)の品質保証マークを正確に判別するためには、自動車の検査対象部がカメラの撮像範囲に収まるようにカメラの位置またはピントを調整することが必要である。また、自動車全体を一つのカメラで撮像するなどカメラの解像度を下げて撮像しても、カメラの画素数の制限などにより、品質保証コードの判別が困難となる。したがって、検査対象部の品質保証コードが認識可能に撮像できるように、検査対象部に応じたカメラを設けて調整する必要がある。
【0005】
従来のカメラの位置決め方法として、走行台車の停止位置の誤差を表すためにスケールやマーカを取り付けた検査対象部をカメラで撮像し、撮像された画像に写ったマーカを確認してカメラ位置を調整する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−93570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、自動車検査ラインのように多種多様な形状の自動車が混在する場所にカメラを設置する場合は、全種類の自動車をカメラで撮像する必要が生じ、ドアミラー一つとっても車種によりその位置が異なるため、カメラの調整が困難であるという問題があった。すなわち、自動車検査ラインでは、1台ずつ自動車が進入し検査されるため、カメラ位置を調整するに際し、異なる車種の自動車の検査対象部を一度にカメラで撮像することができない。そのため、1種の自動車に対してカメラ位置を調整しては、カメラの撮像範囲に他種の自動車の検査対象部が撮像されるか否かの確認・調整作業が繰り返し行われ、カメラ位置の調整に多大な時間を要していた。
【0007】
以上より、本発明は、上記問題点を解決し、複数種の車両が混在する場合であっても、1種類の車両のみでカメラを調整することで、全種の車両の検査対象部を撮像することができるカメラ調整方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0009】
本発明のカメラ調整方法は、複数種の車両から1種の車両を基準車両として選択し、基準車両の検査対象部に対する他種の車両の検査対象部の位置の変位量を算出し、その変位量を示した変位量表示装置に基づいてカメラを調整することを特徴とする。
【0010】
本発明のカメラ調整システムは、複数種の車両から1種の車両を基準車両として選択し、基準車両の検査対象部に対する他種の車両の検査対象部の位置の変位を算出する算出手段と、変位量を示した変位量表示装置と、カメラとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数種の車両が混在する場合であっても、実際に全種類の車両を用意する必要がなく、1種類の車両でカメラを調整することで、全種の車両の検査対象部を撮像することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態のカメラ調整方法およびそのシステムを説明する。
【0013】
本発明の実施形態のカメラ調整方法は、複数種の車両から1種の車両を選択し、その1種の車両の検査対象部に対する他種の車両の検査対象部の位置の変位量を算出し、その変位量を示した変位量表示装置に基づいてカメラを調整することに特徴を有するものである。
【0014】
なお、本発明の実施形態では、複数種の自動車の検査対象部をカメラにより撮像して検査する自動車検査ラインに、カメラ調整方法を適用した場合を例にとって説明する。すなわち、本実施形態では、車両の一例として自動車を採用する。
【0015】
まず、自動車検査ラインについて、図1を参照しながら、簡単に説明する。図1は、本実施形態のカメラ調整方法が適用される自動車検査ラインの一例を示す図である。
【0016】
自動車検査ライン1は、自動車2が進入する走行路3、走行路3上に設置される自動車2の停止位置となる車止め4、自動車2の各検査対象部を撮像するカメラ5a〜5f、カメラ5a〜5fそれぞれの取り付け台6、およびカメラ5a〜5fの撮像結果を受信し、表示する画像検査装置7が配置されている。
【0017】
カメラ5a〜5fは、自動車2の各検査対象部、たとえば、ドアミラー、ワイパー、ホイール、およびブレーキランプなどの構成部品を撮像するものであって、撮像手段として機能する。カメラ5a〜5fは、CCD素子などの撮像素子とその他の光学系によって構成可能であり、その構成自体は、一般的なカメラと同様であるので、詳しい説明を省略する。カメラ5a〜5fにより撮像された撮像結果は、ケーブルなどの通信手段(図示せず)を介して画像検査装置7に送信される。なお、本実施形態において、カメラの台数は6台と例示したが、実際に必要とするカメラの台数は、自動車の検査対象部の数に応じて設置される数は決まる。
【0018】
取り付け台6は、走行路3の両側に設置され、各検査対象部を撮像することができるように各検査対象部に応じたカメラを取り付けるための台であって、カメラの配置によって様々な形状で設置することができる。
【0019】
画像検査装置7は、たとえば、自動車2の各検査対象部をカメラ5a〜5fにより撮像し、撮像された画像結果により、各検査対象部に特定の部品コードがあるか否かを判別し、その結果を画像検査装置7が有する表示部に表示させる。画像検査装置7は、カメラ5a〜5fで撮像された画像データと予め記憶されている部品コードのデータ(基準データ)とを整合して、画像データ中の部品コードを検出するものである。画像検査方法は、従来の画像検査方法と同様に、たとえば、撮像した画像データ中の構成物品が表示された画面上で基準データを走査させ、画像データ中の部品コードを検出することで行われる。なお、部品コードとは、たとえば、自動車を構成する構成部品に刻印されたコードであって、その構成部品ごとに品質を保証する品質保証マークである。部品コードの大きさは、たとえば、約1.5cm〜2cmである。
【0020】
以下、本実施形態のカメラ調整システムについて、詳細に説明する。本実施形態のカメラ調整システムは、自動車検査ライン1に設置されるカメラ5a〜5fを調整するためのものであって、車種による検査対象部の位置の変位量を算出するコンピュータ10、コンピュータ10により算出された位置の変位量を示すための変位量表示装置20を有する。
【0021】
コンピュータ10は、複数種の自動車から基準となる1種の自動車を基準自動車として選択し、基準自動車の検査対象部に対する他種の自動車の検査対象部の位置の変位量を算出するものであって、算出手段として機能する。コンピュータ10は、たとえば、種々の演算を行うためのCPU、データを一時的に格納するとともにワーキングエリアとして機能するRAM、プログラムを格納するROM、複数種の自動車の設計データを記憶する記憶装置、および表示部から構成されている。コンピュータ10によって算出された位置の変位量は、たとえば、表示部に表示される。ここで、位置の変位量とは、たとえば、自動車の側面からみた前車輪の中央(車軸位置)で、かつ、自動車の正面からみた中心の位置を原点としたときの、基準自動車の各検査対象部に対する他種の自動車の各検査対象部の相対位置である。位置の変位量の算出手段については後述する。
【0022】
変位量表示装置20は、基準自動車に取り付けられ、コンピュータ10によって算出された各検査対象部の位置の変位量を示すものである。変位量表示装置20は、図2に示すように、棒状の第1部材21、第1部材21と交差する棒状の第2部材22、第1部材21および第2部材22で表される平面と所定の角度を有する棒状の第3部材23、および第1部材21と第2部材22とを揺動可能にする揺動部24を有する。また、変位量表示装置20は、第1部材21、第2部材22、および第3部材23にそれぞれマーカ(21a、22a、23a)が取り付けられ、それぞれのマーカを移動させることで、コンピュータ10によって算出された位置の変位量を3次元的にあらわすことができる。第1部材21および第2部材22は、カメラの視野角(カメラから見た上下左右方向)の調整に用いられ、第3部材23は、カメラからみた奥行き方向の調整に用いる。なお、前記所定の角度とは、第1部材21、第2部材22、および第3部材23によって3次元の変位量を表すことができる角度である。第3部材は、たとえば、第1部材21および第2部材22で表される平面の法線方向に向かって設置されることができる。
【0023】
変位量表示装置20は、さらに、自動車2に取り付けるための取り付け手段25を有し、取り付け手段25は、図2に示すように、タイヤなどのワークの一部に引っ掛けるフックである。
【0024】
以上のように構成されたカメラ調整システムを用いて、本実施の形態に係るカメラ調整方法が実行される。
【0025】
次に、図3に示すフローチャートに基づいて、本実施形態のカメラ調整方法を説明する。なお、以下に示す処理では、車両形状が異なる3種類の自動車2A,2B,2Cに対して自動車検査ライン1上のカメラ5a〜5fを調整する場合を例示して説明する。そして、実際に自動車検査ライン1上に走行させて、カメラを調整するための基準となる基準自動車を自動車2Aとする。また、自動車検査ライン1上で検査する自動車の各検査対象部は、一例として、ドアミラー、ワイパー、バックライト、ホイールの構成部品であるとする。さらに、カメラ5aはホイール、カメラ5bはドアミラー、カメラ5c,5dはバックライト、カメラ5e,5fはワイパーを撮像するものとする。
【0026】
まず、自動車検査ライン1上に自動車の各検査対象部に応じてカメラ5a〜5fを設置する(ステップS1)。このカメラ5a〜5fの設置は、たとえば、自動車の構成部品の位置、高さを考慮して、作業者の経験によって設置することができる。
【0027】
次いで、基準となる1種類の自動車2Aに対してその他の自動車2B,2Cにある検査対象部の相対位置、すなわち、位置の変位量を、コンピュータ10を用いて、CAD図面上から算出する(ステップS2)。ここで、位置の変位量を算出するに際し、自動車の側面からみた前車輪の中央(車軸位置)で、かつ、自動車の正面からみた中心の位置を原点とし、自動車の進行する方向をx軸方向、車の高さ方向をy軸方向、x軸方向とy軸方向とに直角の方向をz軸方向とする。各検査対象部の位置の変位量は、たとえば、自動車2Aの検査対象部の中心(刻印された部品コードの中心位置)から、それに対して自動車2Bおよび自動車2Cの検査対象部の中心の位置までの変位量である。このとき、一例として、図4を参照しながら、xy軸平面における自動車2A(図4に示す実線)と、自動車2B(図4に示す波線)との位置の変位量を説明する。図4には、検査対象部の一部としてワイパー(a1、b1)、ドアミラー(a2、b2)、バックライト(a3、b3)、ホイール(a4、b4)が示されている。自動車2Aと自動車2Bとの位置の変位量は、ワイパー(x軸方向に10mm、y軸方向に80mm)、ドアミラー(x軸方向に180mm、y軸方向に130mm)、バックライト(x軸方向に455mm、y軸方向に120mm)、およびホイール(x軸方向に270mm)である。なお、xy軸方向の位置の変位量と同様に、z軸方向の位置の変位量も同様に求めることができるが、ここでは説明を省略する。
【0028】
さらに、カメラ5a〜5fが撮像する撮像領域に停止する自動車2Aの停止位置のずれ量を自動車検査ライン1にある車止め4と車輪ガイド8、自動車2Aのタイヤサイズから停止位置のバラつき量を算出する。車止め4は、図5(a)に示すように、自動車検査ライン1上の走行路3に設けられ、自動車2Aの進入の行き過ぎを制限するものである。車止め4は、自動車2Aの進行方向を制限するものであるから、車止め4からx軸方向のバラつきを算出する。車輪ガイド8は、図6(b)に示すように、たとえば、走行路3の両端に沿って設けられるものであって、自動車2Aが走行路3の中央を走行し、停止するように制限するものである。車輪ガイド8は、z軸方向を制限するものであるから、車輪ガイド8からz軸方向のバラつきを算出する。なお、車輪ガイド8は、作業者が中に入り作業するためのピットが設けられる場合、脱輪ガードとしての役割も担うことができる。
【0029】
次いで、基準自動車である自動車2Aを自動車検査ライン1の走行路3に投入し、車止め4および車輪ガイド8に応じた位置で停止させる(ステップS3)。
【0030】
次いで、コンピュータ10で算出した位置の変位量を変位量表示装置20上にマークする(ステップS4)。まず、カメラ5aを調整するために、カメラ5aが撮像して検査するホイールの位置変化量を変位量表示装置20上にマークする。具体的には、算出した位置の変位量に基づいて、作業者が、変位量表示装置20の各部材に取り付けられているマークを移動させることにより、その変位量を変位量表示装置20上に表現させる。変位量表示装置20のマークの移動は、たとえば、その揺動部24の中心を自動車2Aの検査対象部の中心(刻印された部品コードの中心位置)とし、それに対して自動車2Bおよび自動車2Cの検査対象部の中心の位置の変位量を動かして設定する。さらに、自動車2Aの停止位置のずれ量分、変位量表示装置20のマークを移動させる。
【0031】
次いで、位置の変位量を設定した変位量表示装置20を自動車2Aの各検査対象部に取り付ける(ステップS5)。取り付ける位置は、上記のように自動車2Aの検査対象部の中心に揺動部24が当接若しくは近接するように、設けることが望ましい。この取り付け方法は、図2で示すように、タイヤの一部に引っ掛けるフックを用いて取り付けることができる。なお、ガラスに取り付ける場合はクランプ式ガラス吸盤ステー(図6(a)参照)、およびボディーの金属に取り付ける場合はマグネットクランプステー(図6(b)参照)を用いることができる。また、取り付け手段の形状を考慮して、位置の変位量を適宜調整することができることはもちろんである。さらに、変位量表示装置20の揺動部24を調整することで、車体が斜めに停止しているなどの誤差を調整することができる。
【0032】
次いで、カメラ5aが撮像した撮像結果を、たとえば、画像検査装置7のモニタを見ながら、カメラ5aの角度、取り付け位置の調整を行う(ステップS6)。すなわち、変位量表示装置20のマーカが撮像されるように、検査対象部をカメラ5aで撮像し、撮像された画像に写ったマーカを確認してカメラ5aの位置を調整する。
【0033】
次いで、カメラ5aが撮像した撮像結果を、たとえば、画像検査装置7のモニタを見ながら、カメラアンプを設定する(ステップS7)。すなわち、カメラアンプを設定することで、カメラ5aの焦点距離を設定することができる。
【0034】
カメラから見て奥行き方向の調整は、図7に示すように、車体形状差による変位量を計算し、さらに車両停止位置のバラつき量を加えて、カメラから見た最大深度と最小深度の中間にカメラ焦点距離が来るように調整する。図8に示すように、検査対象部の変位量がカメラ被写界深度の1/2以上ある場合は、カメラ設定位置により被写界深度を外れる可能性がある為、変位量表示装置20の第3部材のマークを使用してカメラ位置の調整をする。
【0035】
なお、車種ごとの検査対象部の位置の変位量がカメラ被写界深度の1/2未満であれば、車種ごとの検査対象部はすべて被写界深度に収まる。したがって、第3部材23を用いない第1部材21および第2部材22からなる2軸の変位量表示装置20を使用して視野角(カメラから見た上下左右方向)の調整を行うことができる。また、カメラの視野角の設定は、検査対象部を撮影したときに正誤判定ができる解像度以上に検査対象部が移動することがわかっている場合は、1台のカメラではなく複数台のカメラにするか、カメラの性能(画素数)の高い機種を使用する。
【0036】
次いで、カメラ5b〜5fも繰り返して調整作業を行う(ステップS8:No)。全カメラ5a〜5fの調整が終了すれば(ステップS8:Yes)、自動車2Aを自動車検査ライン1から退出させて、自動車2Aの調整作業を終了する。
【0037】
次いで、自動車2Bを自動車検査ライン1の走行路3に投入し、車止め4および車輪ガイド8に応じた位置で停止させる(ステップS9)。
【0038】
次いで、調整されたカメラ5a〜5fで自動車2Bの各検査対象部が撮像可能であるか検証し、撮像可能であって、カメラ位置の変更が必要であれば(ステップS10:No)、再度、自動車2Aの調整作業を行う。なお、この調整作業は、もちろん、自動車2Bの撮像が不可能であったカメラのみを調整すればよい。
【0039】
そして、自動車2Bの各検査対象部が撮像可能であるか検証した結果、カメラ位置の変更が無ければ(ステップS10:Yes)、次のステップS11に移る。
【0040】
次いで、自動車2Cを自動車検査ライン1の走行路3に投入し、車止め4および車輪ガイド8に応じた位置で停止させる(ステップS11)。
【0041】
次いで、調整されたカメラ5a〜5fで自動車2Cの各検査対象部が撮像可能であるか検証し、撮像可能であって、カメラ位置の変更が必要であれば(ステップS12:No)、再度、自動車2Aの調整作業を行う。なお、この調整作業は、上記ステップS10同様、自動車2Cの撮像が不可能であったカメラのみを調整すればよい。
【0042】
次いで、自動車2Cの各検査対象部が撮像可能であるか検証した結果、カメラ位置の変更が無ければ(ステップS12:Yes)、カメラ調整処理を終了する。
【0043】
以上のように、本実施形態のカメラ調整方法によれば、実際に全種類の車両を用意する必要がなく、1種類の車両で検査対象部に応じて設置されるカメラの調整をすることができ、作業者がカメラを調整するための処理時間を短縮することができる。
【0044】
ここで、参考例として、従来のカメラ調整方法を、図9を参照して簡単に説明する。自動車検査ラインでは、通常、1台ずつ自動車が進入し検査されるため、カメラ位置を調整するに際し、異なる車種の自動車の検査対象部を一度にカメラで撮像することができない。そのため、1種の自動車2Aに対して調整作業(A)をした後、自動車2Bを投入し、自動車2Bに対して調整作業(A)と同様の調整作業(B)をする。そして、再度、自動車2Aを投入し、検証し、カメラ位置変更が必要であれば、再度自動車2Aの調整作業(A)をする必要がある。また、自動車2Cに対して調整作業(C)をした後も同様であり、自動車2Aまたは2Bの調整作業(A),(B)が繰り返し行われていた。さらに、自動車の車体形状の数が増えれば増えるほど、1種の自動車で調整されたカメラの撮像範囲に他種の自動車の検査対象部が撮像されるか否かの確認・調整作業が繰り返し行われ、カメラ位置の調整に多大な時間を要していた。
【0045】
したがって、本実施形態のカメラ調整方法によれば、従来とは異なり、基準車両に対する他種の車両の検査対象部の位置の変位量を示す変位量表示装置に基づいてカメラ調整するので、実際にカメラ調整作業するのは、一種の基準車両のみであり、他種の車両の調整作業を無くすことができる。
【0046】
また、基準車両の検査対象部に対する他種の車両の検査対象部の位置の変位量を算出するのに、検査する複数種の車両の設計データを用いることで、車両の組立が実際に完了していなくても、画像検査装置の設備調整段階で、それらを考慮してカメラを調整できる。
【0047】
さらに、変位量表示装置が、棒状の第1部材、当該第1部材と交差する棒状の第2部材、および前記第1部材と前記第2部材とを揺動可能にする揺動部を有することで、カメラの設置に応じた角度に自由に調整できる。また、変位量表示装置の第1部材および第2部材それぞれに取り付けられたマーカを移動させることで、前記変位量を視覚化して、作業者に認識しやすくし、カメラの調整を容易にすることができる。
【0048】
さらに、変位量表示装置が、前記第1部材および前記第2部材で表される平面と所定の角度を有する棒状の第3部材を含み、前記第1部材、第2部材、および第3部材それぞれに取り付けられたマーカを移動させることで、カメラの奥行き方向も可視化することができる。
【0049】
さらに、カメラが撮像する撮像領域に停止する基準車両の停止位置のずれ量分前記マーカを移動させることで、作業者が運転する車両の停止位置のばらつきがあっても、カメラが検査対象部を確実に撮像することができる。
【0050】
さらに、変位量表示装置に、車両に取り付ける取り付け手段、たとえば、吸盤、マグネットクランプ、またはワークの一部に引っ掛けるフックを取り付けることで、車両の取り付け場所を選ばず、容易に基準車両に変位量表示装置を取り付けることができる。
【0051】
以上のように本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、以上の実施形態に限定されるべきものではなく、特許請求の範囲に表現された思想および範囲を逸脱することなく、種々の変形、追加、および省略が当業者によって可能である。
【0052】
たとえば、本実施形態では、コンピュータ10により、設計データを用いて基準車両の検査対象部に対する他種の車両の検査対象部の位置の変位量を算出したが、これに限られず、作業者自身で設計図面から位置の変位量を机上で算出することもできる。
【0053】
また、本実施形態では、変位量表示装置は、棒状の第1部材、第2部材、第3部材を用いて変位量を表示したが、形状自体はこれに限られず、たとえば、第1部材および第2部材の代わりに、平面の板を用いて、その平板上に変位量をマークしてもよい。
【0054】
さらに、本実施形態では、車両の一例として自動車を用いたが、自動車に限られず、自動二輪車など他の車両に用いることもできることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態のカメラ調整方法が適用される自動車検査ラインの一例を示す図である。
【図2】本実施形態で用いる変位量表示装置の一例を示す図である。
【図3】本実施形態のカメラ調整方法を示すフローチャートである。
【図4】自動車の設計データ上の位置の変位量を示す図である。
【図5】カメラが撮像する撮像領域に停止する自動車の停止位置のずれ量を説明するための図である。
【図6】変位量表示装置の取り付け手段の一例を示す図である。
【図7】カメラの被写界深度を説明するための図である。
【図8】カメラの被写界深度を説明するための図である。
【図9】従来のカメラ調整方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
1 自動車検査ライン、
2 自動車、
3 走行路、
4 車止め、
5a〜5f カメラ、
6 取り付け台、
7 画像検査装置、
10 コンピュータ、
20 変位量表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の車両から基準となる1種の車両を基準車両として選択する段階と、
前記基準車両の検査対象部に対する他種の車両の検査対象部の位置の変位量を算出する段階と、
前記基準車両に取り付けられ、前記位置の変位量を示す変位量表示装置を設定する段階と、
前記設定された変位量表示装置に基づいて、前記複数種の車両の検査対象部を撮像するカメラを調整する段階と、
を含むことを特徴とするカメラ調整方法。
【請求項2】
前記変位量を算出する段階は、前記複数種の車両の設計データにより前記変位量を算出することを特徴とする請求項1に記載のカメラ調整方法。
【請求項3】
前記変位量表示装置は、棒状の第1部材、当該第1部材と交差する棒状の第2部材、および前記第1部材と前記第2部材とを揺動可能にする揺動部を有し、
前記変位量表示装置を設定する段階は、前記第1部材および前記第2部材それぞれに取り付けられたマーカを移動させることで前記変位量を示すことを特徴とする請求項1に記載のカメラ調整方法。
【請求項4】
前記変位量表示装置は、さらに、前記第1部材および前記第2部材で表される平面と所定の角度を有する棒状の第3部材を含み、
前記変位量表示装置を設定する段階は、前記第1部材、第2部材、および第3部材それぞれに取り付けられたマーカを移動させることで前記変位量を示すことを特徴とする請求項4に記載のカメラ調整方法。
【請求項5】
前記変位量表示装置を設定する段階は、さらに、前記カメラが撮像する撮像領域に停止する基準車両の停止位置のずれ量分前記マーカを移動させる段階を含むことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のカメラ調整方法。
【請求項6】
前記変位量表示装置は、前記車両に取り付ける取り付け手段を有することを特徴とする請求項1に記載のカメラ調整方法。
【請求項7】
前記取り付け手段は、吸盤、マグネットクランプ、またはワークの一部に引っ掛けるフックであることを特徴とする請求項6に記載のカメラ調整方法。
【請求項8】
複数種の車両から基準となる1種の車両を基準車両として選択し、前記基準車両の検査対象部に対する他種の車両の検査対象部の位置の変位量を算出する算出手段と、
前記車両に取り付けられ、前記位置の変位量を示した変位量表示装置と、
前記変位量表示装置に基づいて調整された前記複数種の車両の検査対象部を撮像するカメラと、
を含むことを特徴とするカメラ調整システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−68920(P2009−68920A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235900(P2007−235900)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】