説明

カメラ

【課題】駆動機構を汎用化してカメラの製造コストを低減する。
【解決手段】制御回路101は、カム220の回転位相を検出する位相検出スイッチからの信号出力状態の変化を検出後、さらに遅延時間Tdが経過した後、逆通電ブレーキによる駆動モータ122の制動を開始する。これにより、従来のカメラと異なり、位相検出スイッチを構成する電極252,253の形状を変更しなくても逆通電ブレーキによる制動を開始するタイミングを変更できるので、検知回路基板251の設計が容易となるとともに、逆通電ブレーキによる制動開始タイミングについての設計上の自由度を増すことができる。すなわち、絞り制御機構200を様々な機種のカメラにも適用できるようになるので、駆動モータ122の駆動力を利用する駆動機構を汎用化してカメラの製造コストを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ内部の駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの駆動力によってメインミラーなどの撮像に必要な各部を駆動するカメラが知られている。このカメラでは、モータによって駆動されるカムに位相検出用の接片(位相接片)を取り付け、この位相接片をカムとともにパターン基板の制御パターン上で移動させることでカムの回転位相を検出している。そして、カムの回転位相が所定の位相(ブレーキ開始位相)であることを検出したときに逆通電ブレーキおよびショートブレーキによるモータ停止制御を行い、モータを停止させている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−207842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
逆通電ブレーキおよびショートブレーキによるモータ停止制御を行う際、逆通電ブレーキを掛け始めてからカムが完全に停止するまでに、ある程度カムが回転する。そのため、逆通電ブレーキを掛け始めてからカムが完全に停止するまでのカムの回転量を考慮して、ブレーキ開始位相がカムを停止させるべき位相(停止位相)の手前側に設定される。そして、このブレーキ開始位相に合わせて制御パターンの形状が決められている。
【0005】
モータを変更したり、シャッタを変更するなどして、モータの停止特性や負荷が変化すると、逆通電ブレーキを掛け始めてからカムが完全に停止するまでのカムの回転量も変化する。停止位相でカムを停止させるためにはブレーキ開始位相を変更する必要があるが、そのためには制御パターンの形状を変更しなければならい。したがって、従来のカメラでは、モータを変更したり、シャッタを変更するなどした場合には、制御パターンが設けられたパターン基板を新たに設計して製作し直さなければならなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 請求項1の発明によるカメラは、少なくともレリーズボタンが操作された後から被写体光が撮像されるまでの間に駆動される駆動機構と、駆動機構を駆動するための駆動力を提供する駆動源と、駆動源によって駆動され駆動機構を構成する被駆動部材の位置を検出する検出手段と、検出手段で被駆動部材が所定の位置に駆動されたことを検出した後、所定時間の経過後に駆動源を停止させるための信号を出力する信号出力手段とを備えることを特徴とする。
(2) 請求項2の発明は、請求項1に記載のカメラにおいて、信号出力手段は、あらかじめ任意に設定された所定時間を記憶し、検出手段で被駆動部材が所定の位置に駆動されたことを検出した後、記憶した所定時間の経過後に駆動源を停止させるための信号を出力することを特徴とする。
(3) 請求項3の発明は、請求項2に記載のカメラにおいて、所定時間は、駆動機構の特性に合わせて設定された時間であることを特徴とする。
(4) 請求項4の発明は、請求項3に記載のカメラにおいて、特性は、信号が出力されてから被駆動部材の駆動が停止されるまでの特性であることを特徴とする。
(5) 請求項5の発明は、請求項3または請求項4に記載のカメラにおいて、所定時間は、駆動源が停止した際に被駆動部材を所定の位置で停止させるために設定された時間であることを特徴とする。
(6) 請求項6の発明によるは、撮影光路中に挿入されるダウン姿勢と、撮影光路から退避したアップ姿勢との2姿勢の間で駆動されるミラーと、少なくともミラーを駆動するための駆動力を出力する駆動源と、駆動源の駆動力を少なくともミラーに伝達する駆動機構と、駆動源によって駆動され駆動機構を構成する被駆動部材の位置を検出する検出手段と、検出手段で被駆動部材が所定の位置に駆動されたことを検出した後、所定時間の経過後に駆動源を停止させる信号を出力する信号出力手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、駆動機構を汎用化してカメラの製造コストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1〜13を参照して、本発明によるカメラの絞り機構の一実施の形態を説明する。図1は、本発明によるカメラの絞り機構を適用したカメラである一眼レフタイプのカメラボディ1とカメラボディ1に装着する撮影レンズ2を示した斜視図である。なお、本実施の形態では、CCDやCMOS等の固体撮像素子を用いた電子カメラを例に説明するが、電子カメラに限らず、銀塩フィルムを用いる銀塩カメラであってもよい。カメラボディ1にはレリーズボタン4と、カメラボディ1の各部を制御する制御回路101とが設けられている。なお、制御回路101には、カメラボディ1の各部を制御するための各種演算を行う演算回路と、演算回路による演算結果に基づいてカメラボディ1の各部に信号を出力したり電力を供給する各種のドライバと、後述する遅延時間Tdを記憶するメモリ101aとが設けられている。
【0009】
301は、撮影レンズ2からの被写体像をCCD5に導くための撮影光路である。カメラボディ1に撮影レンズ2を装着すると、レンズ側絞りレバー3とカメラ側の絞り連動レバー323の当接部323aとが当接する。レンズ側絞りレバー3は、カメラ側の絞り連動レバー323により駆動されて所定の絞り値に制御される。なお、本実施の形態では、撮影レンズ2が取り付けられるカメラボディ1の前方を正面と呼び、CCD5が設けられるカメラボディ1の後方を背面と呼ぶ。また、カメラボディ1の上下左右方向を各図に記載したように規定する。
【0010】
図2は、カメラボディ1に組み込まれるミラーボックス、絞り機構、およびシャッタ機構を示す分解図である。なお、図2では、互いに当接する部材の当接状態を説明するために、一部の部材については図示上下左右方向の長さが誇張されている(リセットレバー208、伝達レバー216、シーケンス駆動レバー218)。また、互いに当接すべき部分が左右方向にずれて記載されている部材もある(突起部208d、突起218c)。したがって、図2に図示された状態と後述する説明とで食い違う点については、後述する説明によるものとする。駆動モータ122は、後述するように、撮影時にミラーをアップ/ダウンさせるとともに、絞り制御機構200の駆動、および、シャッタ機構400のチャージなど、各部を駆動するための駆動力を提供する駆動源であり、制御回路101によって制御される。
【0011】
−−−ミラーボックス300−−−
図3,4はミラーボックスおよびシャッタ機構を側面から見た図である。なお、図3は、撮影開始前の状態(ミラーダウン状態)を示す図であり、図4は、レリーズ後の状態(ミラーアップ状態)を示す図である。ミラーボックス300の内部にはメインミラー321が設けられている。ミラーボックス300の側面には軸326,332が設けられ、絞り連動レバー323と、シャッタチャージレバー324と、絞り駆動レバー325とが軸326に回動可能に取り付けられ、ミラーアップレバー342が軸332に回動可能に取り付けられている。さらにミラーボックス300には、後述する絞り制御機構200とシャッタ機構400とが取り付けられる(図2)。
【0012】
メインミラー321は、撮影光路中301にあって不図示のファインダーに被写体像を導くダウン姿勢と、撮影光路301から退避してCCD5に被写体像を導くアップ姿勢との2姿勢の間で駆動される。メインミラー321は、ミラー支軸321aを介してミラーボックス300に回動可能に支持され、ミラーダウンバネ322により、図示時計方向の付勢力を受け、ダウン姿勢である略45度の傾斜位置(ミラーダウン位置)に不図示のミラー受けで保持される。メインミラー321と一体に設けられたミラー駆動ピン321bは、後述するミラーアップレバー342で駆動されることにより、メインミラー321をミラーダウン位置からアップ姿勢(ミラーアップ位置)まで反時計方向に跳ね上げる。ミラーダウンバネ322は、一端がシャッタチャージレバー324に係止され、他端がメインミラー321のミラー駆動ピン321bに係止されて、上述のように、メインミラー321に図示時計方向の付勢力を与える。
【0013】
絞り連動レバー323は、カメラボディに取り付けられた撮影レンズ2の絞りレバー3を当接部323aで駆動して、撮影レンズ2の絞りを所定の絞り値に制御するレバーであり、絞り駆動バネ327によって図示時計方向に付勢されている。絞り連動レバー323は、撮影開始前のミラーダウン状態ではレバー当接部323bが絞り駆動レバー325のレバー当接部325aと当接することで、図示時計方向への旋回(右旋)が規制されて、撮影レンズ2の絞りを開放状態とする角度位置に保持される。また、ミラーアップ過程の絞り制御時には、絞り連動レバー323は、レバー当接部323cが後述する絞り機構200の伝達レバーに当接することで、撮影レンズ2の絞りを所定の絞り値とする角度位置に保持される。
【0014】
絞り駆動レバー325は、絞り連動レバー323を駆動するレバーであり、絞り連動レバー323と絞り駆動バネ327で結合されるとともに、ミラーボックス300と絞り戻しバネ328で結合されている。後述するシーケンス駆動レバー218の先端部218bが図3において左方向に駆動されると、絞り駆動レバー325は、シーケンス駆動レバー218の先端部218bによって図示時計方向に旋回されて、絞り駆動バネ327を介して絞り連動レバー323を絞り込み方向(図示時計方向)に駆動する。また、シーケンス駆動レバー218の先端部218bが図4において右方向に駆動されると、絞り駆動レバー325は、レバー当接部325aに当接した絞り連動レバー323とともに絞り戻しバネ328によって絞り開放方向(図示反時計方向)に復帰される。
【0015】
シャッタチャージレバー324は、後述するシャッタ機構400をチャージするとともに、ミラーアップレバー342を駆動するレバーであり、シャッタ駆動端324aとミラーアップレバー駆動ピン324bとを有する。ミラーアップレバー342は、メインミラー321をミラーアップするレバーであり、ミラー駆動端342aと長穴342bとを有する。ミラーアップレバー342の長穴342bには、シャッタチャージレバー324のミラーアップレバー駆動ピン324bが挿入されている。
【0016】
シャッタチャージレバー324は、ミラーアップバネ331によって図3において図示時計方向に付勢されるとともに、後述するシーケンス駆動レバー218の先端部218bによって図示時計方向への回動位置が規制されている。シーケンス駆動レバー218の先端部218bが図3において左方向に駆動されると、シャッタチャージレバー324は、ミラーアップバネ331によって図示時計方向に旋回して、ミラーアップレバー駆動ピン324bで軸332を中心にミラーアップレバー342を図示時計方向に駆動する。これにより、ミラーアップレバー342は、ミラー駆動端342aでミラー駆動ピン321bを駆動して、メインミラー321をミラーダウン位置から反時計方向に跳ね上げる。
【0017】
シーケンス駆動レバー218の先端部218bが図4において右方向に駆動されると、シャッタチャージレバー324は、ミラーアップバネ331の付勢力に抗して、シーケンス駆動レバー218の先端部218bによって図示反時計方向に旋回される。シャッタチャージレバー324の図示反時計方向の旋回によって、上述とは逆にミラーアップレバー342が図示反時計方向に旋回されるとともに、ミラーダウンバネ322がミラー駆動ピン321bを下方に駆動して、メインミラー321をミラーダウン位置まで図示時計方向に駆動する。また、シャッタチャージレバー324の図示反時計方向の旋回によって、シャッタ駆動端324aが下方に駆動されてシャッタ機構400をチャージする。
【0018】
−−−絞り制御機構200−−−
図5は、絞り機構200を示す斜視図である。絞り機構200は、各部品が配設された制御基板230と駆動基板290とから構成される。制御基板230には、自己保持型ソレノイド10と、係止レバー50と、ラチェット207と、エンコーダギヤ210と、フォトインタラプタ117と、第2増速ギヤ212と、第1増速ギヤ213と、スラック取りギヤ235と、スラック取りバネ236とが配設されている。駆動基板290には、上述の制御基板230と、リセットレバー208と、リセットレバー戻しバネ214と、伝達レバー216と、伝達レバーバネ211と、シーケンス駆動レバー218と、カム220と、位相接片(ブラシ)225と、蓋基板250とが配設されている(図2,5)。
【0019】
図6(a),(b)〜図8(a),(b)は、カメラボディ1の左側から右側に向かって見たときの制御基板230の構造を示す図であり、図6(a)〜図8(a)は制御基板230の左側側面を示し、図6(b)〜図8(b)は駆動基板290の左側側面を示す。図6(a)に示すように、自己保持型ソレノイド10は、挿入された可動鉄心20を永久磁石で吸着して保持するとともに、励磁コイルに通電されることによって可動鉄心20を離脱可能に釈放する公知のコンビネーションマグネットである。自己保持型ソレノイドから露出している可動鉄心20の端部には、円周方向の溝である係合溝部22が設けられている。この係合溝部22は、係止レバー50の切り欠き部51と係合する(図2,図6(a))。
【0020】
係止レバー50は、一端に設けられたU字型の切り欠き部51を可動鉄心20の係合溝部22と係合させた状態で、制御基板230に設けられた軸231に回動可能に軸支される。係止レバー50の他端には、ラチェット207に係合する爪53が形成されている。係止レバー50には、ねじりバネ206によって爪53がラチェット207に係合する方向(左回転方向)に付勢力が与えられている。なお、後述するリセットレバー208と当接できるように、切り欠き部51の両側の部材のうち一方は他方より長く伸びた腕54を形成している。
【0021】
自己保持型ソレノイド10が可動鉄心20を吸着した状態では、図6(a)に示すように、係合溝部22で係合している係止レバー50は、ねじりバネ206の付勢力に抗して右旋している。自己保持型ソレノイド10の励磁コイルが励磁されると、永久磁石に吸着されていた可動鉄心20が釈放され、ねじりバネ206の付勢力によって係止レバー50は左回転方向に回転して、図7(a)に示すように、爪53がラチェット207を係止する。
【0022】
第1増速ギヤ213および第2増速ギヤ212は、それぞれ歯数の少ない小ギヤ部212a,213aと、歯数の多い大ギヤ部212b,213bとを有する。エンコーダギヤ210は、円盤210aと、円盤210aの表裏面にそれぞれ設けられた第1ギヤ210bおよび第2ギヤ210cとを有する(図5)。円盤210aには小穴210dが複数設けられている。ラチェット207は、エンコーダギヤ210と同軸であってエンコーダギヤ210とともに回転するように配設されている。フォトインタラプタ117は、エンコーダギヤ210の回転量を検知するセンサであり、エンコーダギヤ210の円盤210aを挟み込むように配設されて、円盤210aの小穴210dの通過を検出してパルス信号を制御回路101に出力する。エンコーダギヤ210の回転量は、フォトインタラプタ117から出力されるパルス信号の計数値に比例する。
【0023】
図5,図6(a),(b)に示すように、後述する伝達レバー216の上端部に設けられた扇形ギヤ部216aは、第1増速ギヤ213の小ギヤ部213aと噛合し、第1増速ギヤ213の大ギヤ部213bは、第2増速ギヤ212の小ギヤ部212aと噛合し、第2増速ギヤ212の大ギヤ部212bは、エンコーダギヤ210の第1ギヤ210bと噛合する。すなわち、第1増速ギヤ213および第2増速ギヤ212は、駆動基板290に配設された伝達レバー216の動きを増速して、エンコーダギヤ210とともに回転するラチェット207に伝達する役割を果たしている。
【0024】
このように、伝達レバー216、第1増速ギヤ213、第2増速ギヤ212,およびエンコーダギヤ210により増速ギヤ列が構成されている。伝達レバー216の旋回量は、この増速ギヤ列によって拡大されて、エンコーダギヤ210の回転量としてフォトインタラプタ117から出力されるパルス信号数として上述のように制御回路101に入力される。
【0025】
スラック取りギヤ235およびスラック取りバネ236は、上述した増速ギヤ列のバックラッシュに起因するがたつきを抑制するために、上述した増速ギヤ列に付勢力を与える部材である。スラック取りギヤ235は、スラック取りバネ236によって図5において図示時計方向に付勢され、第2ギヤ210cと噛合してエンコーダギヤ210を図示反時計方向に付勢している。なお、図5において、スラック取りバネ236の付勢力によって、第2増速ギヤ212は図示時計方向に付勢され、第1増速ギヤ213は図示反時計方向に付勢され、伝達レバー216は図示時計方向に付勢されている。
【0026】
伝達レバー216は、撮影レンズ2の絞り値を絞り機構200で検出するために絞り連動レバー323の駆動量を伝達するレバーであり、ビス217によって駆動基板290に取り付けられ、ビス217の中心と同軸に回動可能である。図6(b)に示すように、伝達レバー216の上端部に設けられた扇形ギヤ部216aは、上述のように第1増速ギヤ213の小ギヤ部213aと噛合している。伝達レバー216の下端部216bは、ミラーボックス300に設けられた絞り連動レバー323のレバー当接部323cの背面側の端面と当接し、絞り連動レバー323と連動して駆動される(図5)。すなわち、撮影レンズ2の絞り値を規定する絞り連動レバー323の駆動量は、伝達レバー216を含む上述の増速ギヤ列に伝達されることで拡大されて、エンコーダギヤ210の回転量としてフォトインタラプタ117で検出される。伝達レバー216の上端部近傍には、バネ係止部216cが突設されている。なお、図2〜5からも明らかなように、伝達レバー216は、撮影レンズ2のレンズ側絞りレバー3を駆動する部材である絞り連動レバー323とは異なる部材であり、絞り連動レバー323に当接されて撮影レンズ2の絞り値を絞り連動レバー323の駆動量として絞り機構200に伝達している。
【0027】
伝達レバーバネ211は、ねじりコイルバネであり、一方の腕が伝達レバー216のバネ係止部216cに係止され、他方の腕が駆動基板290に係止されて、伝達レバー216を図5において図示時計方向に付勢している。すなわち、伝達レバーバネ211は、伝達レバー216に一端が当接し、伝達レバー216が往復動可能に取り付けられる駆動基板290に他端が当接することで、伝達レバー216の駆動基板290に対する往復動の一方向に伝達レバー216を直接付勢している。これにより、伝達レバー216の下端部216bは、伝達レバーバネ211によって、絞り連動レバー323のレバー当接部323cの背面側端面と当接するように付勢されている。
【0028】
リセットレバー208は、駆動基板290に設けられた軸292に回動可能に軸支され、ビス215によって抜け止めがなされる(図2,図6(b))。リセットレバー208は、ピン208cがリセットレバー戻しバネ214によって押されて、図6(b)において反時計方向に付勢されている。また、リセットレバー208にはピン208bと腕208eが設けられている。腕208eの端部には突起部208dが設けられている。後述するように、突起部208dは、図6(b)において左右方向に揺動するシーケンス駆動レバー218の突起218cと係合してリセットレバー208を右旋させる。なお、図2では、突起部208dと突起218cの左右方向の位置がずれているが、実際には、突起部208dと突起218cの左右方向の位置は略同じである。図8(a),(b)に示すように、リセットレバー208の図示時計方向の旋回によって、ピン208bは係止レバー50の腕54をねじりバネ206の付勢力に抗して押圧する。
【0029】
シーケンス駆動レバー218は、駆動基板290の下端側に設けられた軸295に対して回動可能に軸支される。図9(a)〜(c)は、撮影開始前のシーケンス駆動レバー218とカム220の回転位相との関係を示す図である。また、図10(a)〜(c)は、レリーズ後のシーケンス駆動レバー218とカム220の回転位相との関係を示す図である。図9(a)および図10(a)は、シーケンス駆動レバー218をカメラの下方から見た図(図2の矢印A方向から見た図)であり、図9(b)および図10(b)は、シーケンス駆動レバー218をカメラの上方から見た図(図2の矢印B方向から見た図)である。
【0030】
また、図9(c)および図10(c)は、カム220に取り付けられたブラシ225と蓋基板250(図2参照)に設けられたパターン基板(検知回路基板)251の制御パターン(電極)252,253との関係を示す図である。図9(c)および図10(c)において、254,255は電極252と電極253との境界部分を示している。なお、図9(c)および図10(c)では、後述する位置信号についての説明を容易とするため、後述するモニター信号の出力に関係するブラシ225の接点および検知回路基板251の電極については記載を省略している。
【0031】
シーケンス駆動レバー218には2つのローラ219a,219bが設けられている。カム220の回転に応じてローラ219a,219bが押圧されると、シーケンス駆動レバー218は軸295を中心に揺動する。シーケンス駆動レバー218には、駆動基板290の上方に向かって直立するように設けられた腕218d(図2参照)が設けられている。シーケンス駆動レバー218の動き、すなわち、カム220の動きは、腕218dの先端部218bからシャッタチャージレバー324および絞り駆動レバー325に伝達される。シーケンス駆動レバー218には、突起218cが設けられている。上述のように、突起218cは、リセットレバー208の突起部208dと係合して、リセットレバー208を回動させる。
【0032】
カム220は、駆動基板290の軸294に回動可能に軸支され、蓋基板250により抜け止めがなされている(図2)。カム220には、不図示のギヤと噛合するギヤ部221と、カム面222を形成するカム部223とが一体に形成されている。駆動モータ122の回転は不図示のギヤを介してカム220に伝達される。すなわちカム220は、駆動源である駆動モータ122によって駆動される被駆動部材である。また、駆動モータ122によって駆動されるカム220、シーケンス駆動レバー218、ミラーアップレバー342や、その他駆動モータ122によって駆動される各部材によってカメラの駆動機構が構成されている。
【0033】
上述したように、カム220にはカム220とともに回動するブラシ225が設けられている。ブラシ225の2つの接点225a、および225bは、蓋基板250に設けられた検知回路基板251の電極252,253と接触可能である。電極252は制御回路101に接続されている。また、電極253は、接地されている。ブラシ225は、カム220の回転位相に応じて電極252と253とを電気的に閉路および開路する。すなわち、ブラシ225と電極252,253とによってカムの回転位相を検出する検出手段(スイッチ)が構成されている。以下の説明では、このスイッチを位相検出スイッチと呼ぶ。
【0034】
撮影開始前は、図9(c)に示すように、ブラシ225の2つの接点225a、および225bは、ともに接地している。すなわち、電極252と電極253とは電気的に開路した状態である。このとき、位相検出スイッチは、High状態の信号を制御回路101に出力する。
【0035】
レリーズ後ミラーアップ完了時は、図10(c)に示すように、ブラシ225の接点225aは電極253に、接点225bは電極252にそれぞれ接触している。すなわち、電極252と電極253とは電気的に閉路した状態である。このとき、位相検出スイッチは、Low状態の信号を制御回路101に出力する。カムの回転位相と位相検出スイッチの信号変化のタイミングとの関係については後に詳述する。
【0036】
−−−シャッタ機構400−−−
シャッタ機構400は、シャッタ先幕およびシャッタ後幕の走行によって所定時間だけ被写体像をCCD5に導く公知の装置である。レリーズボタン4が押圧されると、シャッタ機構400は、制御回路101からの信号に基づいて、先幕および後幕が所定の時間差で走行して、被写体像をCCD5に導く。また、シャッタ機構400は、図3に示すように、シャッタチャージレバー324が図示反時計方向に駆動されると、シャッタ駆動端324aによってチャージされる。
【0037】
−−−各部の動作説明−−−
本実施の形態のカメラによる撮像動作について説明する。図9(a)は、撮影開始前のシーケンス駆動レバー218とカム220の状態を示す。カム面222がローラ219aを押圧することにより、シーケンス駆動レバー218が図示左回転方向に駆動されて停止している。メインミラー321はミラーダウン位置となっている。また、シャッタチャージは完了した状態となっている。
【0038】
撮影開始前、レンズ絞りは開放状態である。すなわち、絞り連動レバー323により駆動される伝達レバー216は図2において左旋(図5において右旋)した状態であり、図3に示す状態となっている。図6(a)に示すように、自己保持型ソレノイド10は、可動鉄心20を吸着保持した状態である。係止レバー50はねじりバネ206の付勢力に抗して右旋されて、爪53とラチェット207との係合が解除された状態である。
【0039】
レリーズボタン4が押圧されると、カム220が駆動モータ122の回転により、略180度左旋して図9(a)の状態から図10(a)の状態となって停止する。駆動モータ122の停止制御については後に詳述する。カム面222がローラ219bを押圧してシーケンス駆動レバー218を図示右回転方向に駆動している。このとき、腕218dがカメラの背面側に移動するので、図7(b)に示すように、腕218dの下部に設けられた突起218cがリセットレバー208の突起部208dと係合する。
【0040】
腕218dとともに先端部218bがカメラの背面側に移動するので、ミラーアップバネ331の付勢力によってシャッタチャージレバー324が図4に示すように右旋される。シャッタチャージレバー324の右旋により、シャッタ機構400のチャージが解除されるとともに、ミラーアップレバー342が右旋されてメインミラー321がミラーアップされる。
【0041】
また、レリーズボタン4が押圧されると、絞り込み動作が行われる。すなわち、先端部218bがカメラの背面側に移動することで絞り駆動レバー325が右旋されると、絞り連動レバー323は、絞り駆動バネ327の付勢力によって旋回を開始して、レンズ絞りを開放状態から絞り込む。絞り連動レバー323により駆動される伝達レバー216は、伝達レバーバネ211の付勢力に抗して図2において右旋(図5において左旋)を開始する。伝達レバー216の回動は、上述のように第1増速ギヤ213および第2増速ギヤ212で増速されて、エンコーダギヤ210およびラチェット207に伝達される。エンコーダギヤ210の回転数は、上述のように、円盤210aに設けられた小穴210dがフォトインタラプタ117を通過することで発生するパルス信号を制御回路101によって計測して検出する。これにより、絞り連動レバー323の駆動量、すなわちレンズの絞り値は、フォトインタラプタ117で発生するパルス信号数で計測できる。
【0042】
制御回路101によって計測されたフォトインタラプタ117で発生するパルス信号数が、所望の絞り値に相当する計数値になると、制御回路101からの信号に基づいて自己保持型ソレノイド10の励磁コイルに電圧が印加される。この結果、可動鉄心20が釈放されて、ねじりバネ206による付勢力により係止レバー50が左旋し、爪53がラチェット207に係合してラチェット207の回転を停止させる(図7(a))。
【0043】
上述の絞り制御装置の動作に続き、シャッタ機構400が作動して撮影動作が行われ、引き続き各部のリセット動作が行われる。以下、リセット動作について説明する。
【0044】
リセット動作では、駆動モータ122の回転により、図10(a)の状態からカム220が略180度左旋して図9(a)の状態に戻って停止する。カム面222がローラ219aを押圧することにより、シーケンス駆動レバー218は図示左回転方向に駆動されている。このとき、腕218dがカメラの正面側に移動するが、上述したように、腕218dの下部に設けられた突起218cがリセットレバー208の突起部208dと係合しているので(図7(b))、カメラの正面側に移動する腕218dがリセットレバー208を図7(b)に示す状態から図8(b)に示す状態へと右旋させる。このとき、リセットレバー208に設けられたピン208bは係止レバー50の腕54をねじりバネ206の付勢力に抗して押圧する。押圧された係止レバー50は、ラチェット207を係止している爪53がラチェット207から離れて、拘束していたラチェット207の回転を開放する。
【0045】
係止レバー50の右旋により、切り欠き部51に係合している可動鉄心20は、カメラの正面側に移動されて永久磁石に吸着される。可動鉄心20が永久磁石に吸着されてカメラ正面方向への移動が停止されると、係止レバー50は、その右旋が停止される(図8(a),(b))。シーケンス駆動レバー218はその後も駆動されるので、リセットレバー208の腕208eがたわみ、突起部208dと突起218cとの係合が外れる。これにより、リセットレバー208はリセットレバー戻しバネ214の付勢力によって左旋される。この状態が図6(a),(b)に示す状態である。シーケンス駆動レバー218は、カム220が図9(a)に示す位相になるまで駆動されて停止する。
【0046】
また、リセット動作では、上述のように腕218dがカメラ正面側に移動するので、先端部218bもカメラ正面側に移動する。これにより、上述したように、図4に示す状態からシャッタチャージレバー324が左旋されることよって、ミラーアップレバー342が左旋されるとともに、ミラーダウンバネ322がミラー駆動ピン321bを下方に駆動して、メインミラー321をミラーダウン位置まで駆動する。また、シャッタチャージレバー324の左旋によって、シャッタ駆動端324aが下方に駆動されてシャッタ機構400をチャージする。
【0047】
先端部218bがカメラ正面側に移動すると、絞り戻しバネ328の付勢力で絞り連動レバー323および絞り駆動レバー325が、図4に示す状態から図3に示す状態となるように左旋されて、レンズ絞りは開放状態となる。絞り連動レバー323の左旋によって、レバー当接部323cの背面側端面は、伝達レバー216の下端部216bから離れる方向に駆動される。伝達レバー216は、上述のように伝達レバーバネ211によって付勢されているので、絞り連動レバー323の左旋に追従して、すなわち、レバー当接部323cの背面側端面と下端部216bとが離間しないように旋回される。この結果、伝達レバー216は、図3、図6(b)に示す状態に復帰する。以上の動作により、絞り開放動作が完了する。すなわちリセット動作が完了する。
【0048】
−−−タイミングチャートによる動作タイミングの説明−−−
図11に示すタイミングチャートを参照して、本実施の形態のカメラによる撮像時の各部の動作タイミングを説明する。レリーズボタン4が押圧されることで、制御回路101は、以下に説明するように図11のタイミングチャートに示すタイミングで各部を制御する。レリーズボタン4が押圧されると、不図示のレリーズスイッチからLow状態の信号が制御回路101に出力される。これにより、制御回路101は、チャージされたシャッタ機構400を保持するように公知のシャッタ先幕マグネットおよびシャッタ後幕マグネットを励磁する(図11(h),(i))。これと略同時に、駆動モータ122に電圧を印加して駆動モータ122を駆動させる(図11(d))。
【0049】
上述の絞り込み動作が開始されて、フォトインタラプタ117で発生するパルス数が、所望の絞り値に相当する計数値になると(図11(e))、自己保持型ソレノイド10の励磁コイルに一定時間電圧を印加する(図11(f))。
【0050】
駆動モータ122の回転によりカム220が駆動されると、カム220に設けられたブラシ225のうち、モニター信号出力用の不図示の接点が検知回路基板251の不図示のモニター区間の電極に接触して通過する間、Low状態のモニター信号が出力される(図11(b))。制御回路101は、Low状態のモニター信号が出力されている時間を計時することで、カム220の回転速度を演算し、駆動モータ122をデューティ制御するためのデューティ比をカム220の回転速度に応じて演算する。そして制御回路101は、算出したデューティ比による駆動モータ122のデューティ制御を開始する。これにより、駆動モータ122の回転速度、すなわちカム220の回転速度が漸減する。
【0051】
カム220がさらに回動されて、カム220に設けられたブラシ225が電極252と253とを電気的に閉路すると、上述した位相検出スイッチはLow状態の信号を演算回路101に出力する(図11(c))。演算回路101は、位相検出スイッチからの信号がHigh状態からLow状態に変化したことを検出すると、あらかじめ定められた遅延時間Tdの経過の後、逆通電ブレーキおよびショートブレーキによるモータ停止制御を行う(図11(d))。具体的には、制御回路101は、位相検出スイッチからの信号出力状態の変化を検出後、さらに遅延時間Tdが経過した後、駆動モータ122が逆転する方向に一定時間だけ電圧を印加し(すなわち駆動源である駆動モータ122を停止させるための信号を出力し)、その後、駆動モータ122の端子間を短絡させる。これにより、駆動モータ122は、電気的にブレーキがかけられた状態となって速やかに減速して停止する。
【0052】
上述したモータ停止制御によって、図9(a)に示す角度位置から駆動されたカム220が図10(a)に示す角度位置(停止位相)で停止する。この時点では、メインミラー321はミラーアップ位置まで回動されている(図11(g))。ミラーアップ後、上述したモータ停止制御が行われると(図11(d))、シャッタ先幕マグネットおよびシャッタ後幕マグネットへの通電が停止される(図11(h),(i))。これにより、まずシャッタ先幕が、次いでシャッタ後幕が走行し、露光が行われる。
【0053】
後幕がCCD5の撮像領域を完全に遮光し、走行完了するまでに要する時間だけ待機した後、駆動モータ122は再び駆動される(図11(d))。その後、上述したレリーズ動作の場合と同様に、制御回路101は、モニター信号のLow状態(図11(b))の継続時間に基づいてデューティ比を演算して駆動モータ122をデューティ制御する(図11(d))。
【0054】
カム220がさらに回動されて、カム220に設けられたブラシ225が電極252と253とを電気的に開路すると上述した位相検出スイッチは、High状態の信号を演算回路101に出力する(図11(c))。制御回路101は、位相検出スイッチからの信号がLow状態からHigh状態に変化したことを検出すると、さらに遅延時間Tdが経過した後、上述したのと同様に逆通電ブレーキおよびショートブレーキによるモータ停止制御を行う(図11(d))。これにより、駆動モータ122は、電気的にブレーキがかけられた状態となって速やかに減速して停止する。
【0055】
このモータ停止制御によって、図10(a)に示す角度位置から駆動されたカム220が図9(a)に示す角度位置(停止位相)で停止する。そして次の撮影のスタンバイ状態となる。
【0056】
−−−遅延時間Tdについて−−−
上述したように、遅延時間Tdは、位相検出スイッチの信号出力状態が変化した時点から逆通電ブレーキによる制動開始時点までの時間差であり、カメラの設計段階、もしくはカメラの工場出荷段階で設定されている遅延時間であり、制御回路101のメモリ101aに記憶されている。このように、本実施の形態のカメラでは、制御回路101は、位相検出スイッチからの信号出力状態の変化を検出後、さらに遅延時間Tdが経過した後、逆通電ブレーキによる制動を開始する。これに対して、従来のカメラでは、制御回路は、位相検出スイッチからの信号出力状態の変化を検出するとすぐに逆通電ブレーキによる制動を開始している。すなわち従来のカメラでは、制御回路は、位相検出スイッチからの信号出力状態の変化をトリガとして逆通電ブレーキによる制動を開始している。しかし、従来のカメラでは、次のような問題があった。
【0057】
たとえば、上述した絞り機構200などを他の機種のカメラに組み込む場合や、駆動モータ122のコストダウンの要請等によって駆動モータ122の種類を変更する必要が生じることがある。駆動モータ122の種類を変更すると、逆通電ブレーキによる制動開始から駆動モータ122が停止するまでに駆動モータ122が回転する回転量や停止に要する時間(以下、駆動モータの停止特性と呼ぶ)が変化する。駆動モータの停止特性が変化すると、駆動モータ122によって駆動されるカム220についても同様に、逆通電ブレーキによる制動開始からカム220が停止するまでにカム220が回転する回転量や停止に要する時間(以下、カムの停止特性と呼ぶ)が変化する。
【0058】
また、駆動モータの停止特性が変化しなくても、シャッタ機構400を別のものに変更するなど、負荷側の構成や状態などが変化することで駆動モータ122に対する負荷が変化しても、カムの停止特性が変化する。このように、カムの停止特性が変化しても、カム220の停止位相を変更できないため、駆動モータ122の制動方法を変更しなければならない。
【0059】
駆動モータ122の制動方法の変更には、いくつかの方法が考えられる。たとえば、駆動モータ122の制動方法を変更するために、モータ停止制御を行う前のデューティ制御のデューティ比を変更することが考えられるが、以下に述べるようにデューティ比による調整代が少なく、困難である。
(1) デューティ比を低下させるとカム220の回転速度が低下するため、ミラーアップの所要時間が長くなり、レリーズタイムラグおよび1コマの撮像に要するサイクルタイムが長くなり不都合である。また、デューティ比をある程度以下とすると、負荷の影響で駆動モータ122が停止する恐れがある。したがって、デューティ比をあまり低下させることができず、デューティ比の低下代は少ない。
(2) 上述したようにデューティ比の低下代が少ないため、デューティ比を増加させるとしても増加代が少ない。
【0060】
たとえば、駆動モータ122の制動方法を変更するために、逆通電ブレーキによる制動開始タイミングや逆通電ブレーキによる制動継続時間を変更することが考えられる。しかし、従来のカメラでは、逆通電ブレーキによる制動開始タイミングを変更するには、位相検出スイッチからの信号出力状態の変化タイミングを変更する必要があり、検知回路基板251の電極252,253の形状を変更しなければならない。具体的には、図9(c),図10(c)に示した電極252と電極253との境界部分254,255の角度位置を変更する必要がある。そのため、検知回路基板251を作成し直さなければならず、時間的にもコスト的にも負担が大きい。また、境界部分254,255の適切な角度位置を見いだすために何度も検知回路基板251を作成し直さなければならず、設計段階での負担も大きい。
【0061】
従来、逆通電ブレーキによる制動継続時間は、駆動モータ122の回転数が略ゼロとなるように設定されている。そのため、逆通電ブレーキによる制動継続時間を変更する場合、逆通電ブレーキによる制動継続時間を従来よりも短くして、逆通電ブレーキによる制動の終了時点での駆動モータ122の回転数を増加させることとなる。そして、逆通電ブレーキによる制動継続時間の短縮割合(短縮時間)変更することで逆通電ブレーキによる制動の終了時点での駆動モータ122の回転数を変更して、駆動モータ122の回転力を残しつつショートブレーキによる制動により駆動モータ122を停止させ、駆動モータ122の回転量を制御することとなる。このように、逆通電ブレーキによる制動継続時間を変更することで、逆通電ブレーキによる制動開始から駆動モータ122が停止するまでに駆動モータ122が回転する回転量を調節することが理論上は可能であるが、実際には極めて困難である。
【0062】
そこで、本実施の形態のカメラでは、位相検出スイッチからの信号出力状態が変化した後、逆通電ブレーキによる制動を開始するまでの間に遅延時間Tdを設け、この遅延時間Tdを調節することで、逆通電ブレーキによる制動開始タイミングを変更することとしている。すなわち、従来のカメラよりも早いタイミングで位相検出スイッチからの信号出力状態が変化するように、境界部分254,255の角度位置を変更する。そして、位相検出スイッチからの信号出力状態が変化した時点から逆通電ブレーキによる制動を開始すべき時点までの時間差を遅延時間Tdとして設定する。このように構成することで、カムの停止特性が変化しても、その変化分を遅延時間Tdの短縮または延長で吸収して、適切なタイミングで逆通電ブレーキによる制動を開始できる。その結果、カムの停止特性が変化しても、カム220の停止位相の変動を極力抑制できる。
【0063】
たとえば、図12,13は、異なる種類の駆動モータ122を逆通電ブレーキにて制動したときの駆動モータ回転数およびカム220の回転角度の時間変化を示すグラフであり、図12は、遅延時間Tdを設定しなかった場合を示し、図13は遅延時間Tdを設定した場合を示している。なお、図12,13に示したグラフは、カムの停止特性を調べるためのデータをグラフ化したものであり、各モータa〜cの回転数が0になった後も逆通電ブレーキを継続している。そのため、図12,13に示したグラフでは各モータa〜cは停止後に逆向きに回転し始め、カム220も逆転し始めている。
【0064】
図12,13において、各モータa〜cは、グラフ上のa0〜c0の地点で逆通電ブレーキによる制動が開始されている。グラフ上のa1〜c1は、それぞれ各モータa〜cが停止した地点を示し、a2〜c2は、各モータa〜cが停止したときのカム220の角度位置を示している。図12に示すように遅延時間Tdを設定しなかった場合、カム220の停止角度の範囲は略21.5度〜略29.2度と7.5度以上の角度範囲となるが、図13に示すように遅延時間Tdを適切に設定すると、カム220の停止角度の範囲は略29.3度〜略30度と1度以下の角度範囲となる。図12と図13とを比較すると明らかなように、カムの停止特性が変化しても、遅延時間Tdを適切に設定することで、カム220の停止角度位置のずれを効果的に抑制できる。
【0065】
本実施の形態のカメラで遅延時間Tdを調整することは、従来のカメラにおける検知回路基板251の電極252,253の形状(境界部分254,255の角度位置)の変更に相当する。遅延時間Tdはソフト的に容易に調節可能であるため、従来のカメラにおける検知回路基板251の作成し直しを極めて容易にするのと同様の作用効果を奏する。
【0066】
すなわち、本実施の形態のカメラでは、次の作用効果を奏する。
(1) 制御回路101が位相検出スイッチからの信号出力状態の変化を検出後、さらに遅延時間Tdが経過した後、逆通電ブレーキによる駆動モータ122の制動を開始するように構成した。これにより、従来のカメラと異なり、位相検出スイッチを構成する電極252,253の形状を変更しなくても逆通電ブレーキによる制動を開始するタイミングを変更できるので、検知回路基板251の設計(境界部分254,255の角度位置の決定)が容易となるとともに、逆通電ブレーキによる制動開始タイミングについての設計上の自由度を増すことができる。すなわち、絞り制御機構200を様々な機種のカメラにも適用できるようになるので、駆動モータ122の駆動力を利用する駆動機構を汎用化してカメラの製造コストを低減できる。
【0067】
(2) 遅延時間Tdは容易に変更できるので、何度も検知回路基板251を作成し直さす必要がなくなり、設計および試作段階での負担を大幅に軽減できる。
【0068】
(3) カムの停止特性に合わせて遅延時間Tdを設定できるので、カムの停止特性の変化に容易に対応できる。すなわち、絞り機構200などを他の機種のカメラに組み込む場合や、駆動モータ122のコストダウンの要請等によって駆動モータ122の種類を変更する必要が生じても容易に対応可能となるのでカメラの設計が容易となり開発期間を短縮できる。
【0069】
(4) カムの停止特性が変化しても、その変化分を遅延時間Tdの短縮または延長で吸収して、適切なタイミングで逆通電ブレーキによる制動を開始し、カム220の停止位相の変動を極力抑制するように構成した。これにより、カメラの駆動機構の動作を安定化できる。
【0070】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、駆動モータ122の駆動力を利用してカム220を駆動し、このカム200の駆動によってメインミラー321のアップダウンや、シャッタ機構400のチャージ、絞り制御機構200のリセットなどを行うように構成していたが、本発明はこれに限定されない。カム200の駆動によって、少なくとも、メインミラー321のアップダウンや、シャッタ機構400のチャージ、絞り制御機構200のリセットのうちのいずれか一つが行われるように構成されていればよく、カメラ内のすべての駆動部分の駆動力が必ずしも駆動モータ122の駆動力に由来するものでなくてもよい。
【0071】
(2) 上述の説明では、遅延時間Tdは制御回路101のメモリ101aに記憶されているが、すなわち、遅延時間Tdはソフト的に設定されて記憶されているが、制御回路101上でハード的に設定されていてもよい。
(3)上述した実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0072】
なお、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、少なくともレリーズボタンが操作された後から被写体光が撮像されるまでの間に駆動される駆動機構と、駆動機構を駆動するための駆動力を提供する駆動源と、駆動源によって駆動され駆動機構を構成する被駆動部材の位置を検出する検出手段と、検出手段で被駆動部材が所定の位置に駆動されたことを検出した後、所定時間の経過後に駆動源を停止させるための信号を出力する信号出力手段とを備える各種構造のカメラを含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明によるカメラの絞り機構を適用したカメラである一眼レフタイプのカメラボディ1とカメラボディ1に装着する撮影レンズ2を示した斜視図である。
【図2】カメラボディ1に組み込まれるミラーボックス、絞り機構、およびシャッタ機構を示す分解図である。
【図3】ミラーボックスおよびシャッタ機構を側面から見た図である。
【図4】ミラーボックスおよびシャッタ機構を側面から見た図である。
【図5】絞り機構200を示す斜視図である。
【図6】カメラボディ1の左側から右側に向かって見たときの制御基板230の構造を示す図であり、(a)は制御基板230の左側側面を示し、(b)は駆動基板290の左側側面を示す。
【図7】カメラボディ1の左側から右側に向かって見たときの制御基板230の構造を示す図であり、(a)は制御基板230の左側側面を示し、(b)は駆動基板290の左側側面を示す。
【図8】カメラボディ1の左側から右側に向かって見たときの制御基板230の構造を示す図であり、(a)は制御基板230の左側側面を示し、(b)は駆動基板290の左側側面を示す。
【図9】撮影開始前のシーケンス駆動レバー218とカム220の回転位相との関係を示す図であり、(a)は図2の矢印A方向から見た図であり、(b)は図2の矢印B方向から見た図であり、(c)はブラシ225とパターン基板(検知回路基板)251の制御パターン(電極)252,253との関係を示す図である。
【図10】レリーズ後のシーケンス駆動レバー218とカム220の回転位相との関係を示す図であり、(a)は図2の矢印A方向から見た図であり、(b)は図2の矢印B方向から見た図であり、(c)はブラシ225とパターン基板(検知回路基板)251の制御パターン(電極)252,253との関係を示す図である。
【図11】本実施の形態のカメラによる撮像時の各部の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【図12】異なる種類の駆動モータ122を逆通電ブレーキにて制動したときの駆動モータ回転数およびカム220の回転角度の時間変化を示すグラフであり、遅延時間Tdを設定しなかった場合を示す。
【図13】異なる種類の駆動モータ122を逆通電ブレーキにて制動したときの駆動モータ回転数およびカム220の回転角度の時間変化を示すグラフであり、遅延時間Tdを設定した場合を示す。
【符号の説明】
【0074】
4 レリーズボタン 101 制御回路
122 駆動モータ 200 絞り制御機構
208 リセットレバー 220 カム
218 シーケンス駆動レバー 225 位相接片(ブラシ)
250 蓋基板 251 パターン基板(検知回路基板)
252,253 電極 300 ミラーボックス
321 メインミラー 323 絞り連動レバー
324 シャッタチャージレバー 325 絞り駆動レバー
342 ミラーアップレバー 400 シャッタ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともレリーズボタンが操作された後から被写体光が撮像されるまでの間に駆動される駆動機構と、
前記駆動機構を駆動するための駆動力を提供する駆動源と、
前記駆動源によって駆動され前記駆動機構を構成する被駆動部材の位置を検出する検出手段と、
前記検出手段で前記被駆動部材が所定の位置に駆動されたことを検出した後、所定時間の経過後に前記駆動源を停止させるための信号を出力する信号出力手段とを備えることを特徴とするカメラ。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラにおいて、
前記信号出力手段は、あらかじめ任意に設定された前記所定時間を記憶し、前記検出手段で前記被駆動部材が所定の位置に駆動されたことを検出した後、記憶した前記所定時間の経過後に前記駆動源を停止させるための信号を出力することを特徴とするカメラ。
【請求項3】
請求項2に記載のカメラにおいて、
前記所定時間は、前記駆動機構の特性に合わせて設定された時間であることを特徴とするカメラ。
【請求項4】
請求項3に記載のカメラにおいて、
前記特性は、前記信号が出力されてから前記被駆動部材の駆動が停止されるまでの特性であることを特徴とするカメラ。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のカメラにおいて、
前記所定時間は、前記駆動源が停止した際に前記被駆動部材を所定の位置で停止させるために設定された時間であることを特徴とするカメラ。
【請求項6】
撮影光路中に挿入されるダウン姿勢と、撮影光路から退避したアップ姿勢との2姿勢の間で駆動されるミラーと、
少なくとも前記ミラーを駆動するための駆動力を出力する駆動源と、
前記駆動源の駆動力を少なくとも前記ミラーに伝達する駆動機構と、
前記駆動源によって駆動され前記駆動機構を構成する被駆動部材の位置を検出する検出手段と、
前記検出手段で前記被駆動部材が所定の位置に駆動されたことを検出した後、所定時間の経過後に前記駆動源を停止させる信号を出力する信号出力手段とを備えることを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−32908(P2008−32908A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204752(P2006−204752)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】