説明

カメラ

【課題】シーンを認識する際の処理時間を短縮しつつ、その認識精度の低下を防止して撮影画像に画像処理を施すことのできるカメラを提供することを目的とする。
【解決手段】被写体の画像を取得する撮像素子105と、撮像素子105よりも画素数の小さな被写体の画像を取得する撮像素子102と、撮像素子102により取得された画像から、撮像素子105により取得された画像を高画質化するためのパラメータを抽出する画像処理部103と、画像処理部103により抽出されたパラメータを用いて、撮像素子105により取得された画像に高画質化処理を施す画像処理部106とを備えるカメラ1を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーン認識を行うカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、撮影画像から人物の顔等の特定部分を自動的に認識して、撮影画像に画像処理を行う技術が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。具体的には、撮影画像から人物の顔を検出して人物の有無を判断し、人物が写っていない場合には風景写真画像と判断し、人物が写っている場合には顔の面積及び人数によって人物・記念写真画像またはポートレート画像と判断し、各画像に応じた画像処理を行うようになっている。
【特許文献1】特開2005−173932号公報
【特許文献2】特開平7−128031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1および特許文献2に開示されている技術のように、人物の顔を検出する際には、検出に要する処理時間を短縮するために、撮影した大きなサイズの画像から、顔画像等のシーン認識用の縮小画像を別途作成することが一般的である。
【0004】
しかしながら、縮小画像を作成する過程で、周波数成分の折り返しを防ぐために、ローパスフィルタ処理等により高周波成分を除去する必要があり、本来シーン認識に必要となる高周波成分まで除去してしまう可能性がある。これにより、人の顔などの輪郭を抽出して顔認識する際の精度が低下してしまうという不都合があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、シーンを認識する際の処理時間を短縮しつつ、その認識精度の低下を防止して撮影画像に画像処理を施すことのできるカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、被写体の画像を取得する第1の撮像素子と、該第1の撮像素子よりも画素数の小さな被写体の画像を取得する第2の撮像素子と、該第2の撮像素子により取得された画像から、前記第1の撮像素子により取得された画像を高画質化するためのパラメータを抽出するパラメータ抽出部と、該パラメータ抽出部により抽出されたパラメータを用いて、前記第1の撮像素子により取得された画像に高画質化処理を施す画像処理部とを備えるカメラを採用する。
【0007】
本発明によれば、第2の撮像素子により顔画像等のシーン認識用の画像が取得され、このシーン認識用の画像から抽出されたパラメータを用いて、第1の撮像素子により取得された画像に対して高画質化処理が施される。
このように、シーン認識用の画像を、第1の撮像素子により取得された画像から作成するのではなく、第2の撮像素子により取得することで、シーン認識用の画像を取得するにあたり、ローパスフィルタ処理等により高周波成分を除去する必要性を排除することができる。これにより、シーン認識用の画像における高周波成分の欠落による画質の低下を防止することができ、シーンの認識精度を向上させることが可能となる。また、2つの撮像素子を用いることで、シーン認識用の画像と高画質化処理の対象画像とを同時に取得することができるので、高画質化処理を施す際の処理時間を短縮することができる。
【0008】
上記発明において、前記画像処理部が、前記第1の撮像素子により取得された画像に対して、γ補正、色分離、色マトリックス変換の少なくともいずれかの処理を施すこととしてもよい。
このようにすることで、画像処理部により画像の色バランス等を調整することができ、第1の撮像素子により取得された画像の画質を効果的に向上させることができる。
【0009】
上記発明において、前記第1の撮像素子により取得された画像および前記第2の撮像素子により取得された画像を表示する表示部を備えることとしてもよい。
このようにすることで、高画質化処理の対象画像とシーン認識用の画像の両方を表示部に表示させることができ、高画質化処理の効果および根拠を確認することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シーンを認識する際の処理時間を短縮しつつ、その認識精度の低下を防止して撮影画像に画像処理を施すことのできるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係るカメラについて、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るカメラ1は、被写体の画像を取得するサブ撮像系10およびメイン撮像系20と、サブ撮像系10およびメイン撮像系20により取得された画像を記録する記録部107と、記録部107に記録された画像を表示する表示部108と、ISO感度や露出などの撮影条件の設定や撮影操作をユーザに行わせる操作部109と、これらを制御する制御部110とを備えている。
【0012】
サブ撮像系10は、撮像光学系101と、撮像素子(第2の撮像素子)102と、画像処理部(パラメータ抽出部)103とを有しており、顔画像等のシーン認識用の画像として、メイン撮像系20により取得される画像よりも画素数の小さなサブ画像を取得するようになっている。
【0013】
撮像光学系101は、例えばレンズであり、被写体からの光を撮像素子102の撮像面に結像させるようになっている。
撮像素子102は、例えばCCDであり、撮像光学系101により結像された像を電気信号に変換して、サブ画像として画像処理部103に出力するようになっている。
【0014】
画像処理部103は、撮像素子102により取得されたサブ画像に対してγ補正、色分離、色マトリックス変換等の高画質化処理を施すようになっている。また、画像処理部103は、撮像素子102により取得されたサブ画像から、メイン撮像系10により取得されるメイン画像を高画質化するためのパラメータを抽出し、抽出したパラメータを画像処理部106に出力するようになっている。
【0015】
メイン撮像系20は、撮像光学系104と、撮像素子(第1の撮像素子)105と、画像処理部106とを有しており、高画質処理の対象とするメイン画像を取得するようになっている。
【0016】
撮像光学系104は、例えばレンズであり、被写体からの光を撮像素子105の撮像面に結像させるようになっている。
撮像素子105は、例えばCCDであり、撮像光学系104により結像された像を電気信号に変換して、メイン画像として画像処理部106に出力するようになっている。
【0017】
画像処理部106は、画像処理部103により抽出された高画質化処理のためのパラメータを用いて、撮像素子105により取得されたメイン画像に対して、γ補正、色分離、色マトリックス変換等の高画質化処理を施すようになっている。このようにすることで、メイン画像の色バランス等を調整することができ、メイン画像の画質を効果的に向上させることができる。
【0018】
記録部107は、サブ撮像系10により取得されたシーン認識用のサブ画像およびメイン撮像系20により取得されたメイン画像を記録する記録メディアである。
表示部108は、例えば液晶ディスプレイであり、記録部107に記録されたシーン認識用のサブ画像および高画質化処理が施されたメイン画像を読み出して、ユーザに目視可能に表示するようになっている。
【0019】
上記構成を有するカメラ1の作用について、図2のフローチャートを用いて以下に説明する。
撮影を開始し、ユーザにより操作部109が操作されると、サブ撮像系10およびメイン撮像系20により被写体の撮影が行われる(S1)。
【0020】
これにより、メイン撮像系20において、撮像光学系104によって取得された被写体からの光は、撮像素子105の撮像面に結像され、撮像素子105によって電気信号に変換される。そして、このように電気信号に変換された被写体の像は、メイン画像として取得され、画像処理部106に出力される(S2)。
【0021】
一方、サブ撮像系10において、撮像光学系101によって取得された被写体からの光は、撮像素子102の撮像面に結像され、撮像素子102によって電気信号に変換される。そして、このように電気信号に変換された被写体の像は、シーン認識用のサブ画像として取得され、画像処理部103に出力される(S3)。
【0022】
次に、画像処理部103により、撮像素子102により取得されたサブ画像から、メイン撮像系10により取得されるメイン画像を高画質化するためのパラメータが抽出される(S4)。
【0023】
次に、画像処理部106により、画像処理部103により抽出された高画質化処理のためのパラメータを用いて、撮像素子105により取得されたメイン画像に対して、γ補正、色分離、色マトリックス変換等の高画質化処理が施される(S5)。
【0024】
このようにして、高画質化処理が施されたメイン画像は、外部記録媒体である記録部107に書き込まれ(S6)、表示部108に表示されて撮影を終了する。
【0025】
上記動作を行うカメラの効果について、図3から図4に示す具体例を用いて以下に説明する。
例えば、サブ撮像系10の撮像素子102の画素数が、メイン撮像系20の撮像素子105の画素数の1/4の場合には、サブ画像の読み出し時間は、メイン画像の読み出し時間の1/4となる。したがって、メイン撮像系20においてメイン画像の読み出しを行っている間に、サブ撮像系10においてサブ画像の読み出しおよび高画質化処理のためのパラメータを抽出することができる。これにより、メイン画像を読み出した直後に、サブ撮像系10により抽出されたパラメータを用いて、メイン画像に対して高画質化処理を施すことができ、全体の処理時間を短縮することができる。
【0026】
また、図4に示すように、人物の画像を取得する際に、逆光等により顔が暗くなってしまう場合には、サブ撮像系10により人物の顔部分の領域を抽出し、メイン撮像系20によりゲインアップを行うことができる。この際、サブ撮像系10において、被写体部分の領域を抽出して画像処理により背景部分を鮮明化するとともに、人物の顔部分の領域を抽出して高画質化処理のためのパラメータが抽出される。そして、メイン撮像系20において、サブ撮像系10により抽出されたパラメータを用いて、メイン画像に対して逆光補正が行われる。
【0027】
また、夕焼けのシーンを撮影する場合や、夜景のシーンを撮影する場合にも、人物の画像を取得する場合と同様の処理を行うことで、サブ撮像系10により抽出されたパラメータを用いて、メイン画像に対してゲインアップ等の高画質化処理を施すことができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態に係るカメラ1によれば、シーン認識用のサブ画像を、メイン撮像系20により取得されたメイン画像から作成するのではなく、メイン撮像系20とは別に設けられたサブ撮像系10により取得される。このようにすることで、シーン認識用のサブ画像を取得するにあたり、ローパスフィルタ処理等により高周波成分を除去する必要性を排除することができる。これにより、シーン認識用のサブ画像における高周波成分の欠落による画質の低下を防止することができ、シーンの認識精度を向上させることが可能となる。また、2つの撮像素子(撮像素子102,105)を用いることで、サブ画像とメイン画像とを同時に取得することができるので、メイン画像に対して高画質化処理を施す際の処理時間を短縮することができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、画像処理部103または画像処理部106により高画質化処理が施される前の画像についても、記録部107に記録し、表示部108に表示できるようにしてもよい。このようにすることで、高画質化処理が施される前後におけるメイン画像とサブ画像を表示部108に表示させることができ、高画質化処理の効果および根拠を確認することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係るカメラの機能ブロック図である。
【図2】図1に示すカメラにより実行される処理を示すフローチャートである。
【図3】図1に示すカメラにおける撮影時のタイミングチャートである。
【図4】図1に示すカメラの人物を撮影する際の効果を説明する図である。
【符号の説明】
【0031】
1 カメラ
10 サブ撮像系
20 メイン撮像系
101 撮像光学系
102 撮像素子
103 画像処理部
104 撮像光学系
105 撮像素子
106 画像処理部
107 記録部
108 表示部
109 操作部
110 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の画像を取得する第1の撮像素子と、
該第1の撮像素子よりも画素数の小さな被写体の画像を取得する第2の撮像素子と、
該第2の撮像素子により取得された画像から、前記第1の撮像素子により取得された画像を高画質化するためのパラメータを抽出するパラメータ抽出部と、
該パラメータ抽出部により抽出されたパラメータを用いて、前記第1の撮像素子により取得された画像に高画質化処理を施す画像処理部とを備えるカメラ。
【請求項2】
前記画像処理部が、前記第1の撮像素子により取得された画像に対して、γ補正、色分離、色マトリックス変換の少なくともいずれかの処理を施す請求項1に記載のカメラ。
【請求項3】
前記第1の撮像素子により取得された画像および前記第2の撮像素子により取得された画像を表示する表示部を備える請求項1または請求項2に記載のカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−136025(P2010−136025A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309044(P2008−309044)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】