説明

カメラ

【課題】被写体にインタラクションと興味を持たせつつ、被写体に眩しさを与えることがないカメラを提供すること。
【解決手段】ストロボ装置5を備えたカメラ1において、前記ストロボ装置1のストロボ光よりも輝度が低く設定された補助光を被写体に向けて照射する補助光発光手段7を設ける。又、前記補助光発光手段7による補助光の出力レベルを時間の経過と共に段階的に上げ、その出力レベルを所定時間保持する。そして、補助光の発光をストロボ光が発光する前から発光し終わるまで行う。更に、補助光発光手段7を前記ストロボ装置5の設置箇所以外の箇所(例えば、筐体2の撮影レンズ4部分の周囲)に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストロボ装置を備えたカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等のカメラの多くにはストロボ装置が内蔵されているが、このストロボ装置は、夜間や雨天時等のように周囲が暗い環境下においても所定の撮影有効範囲内での撮影を可能とするためにストロボ光を被写体に向けて照射するものであって、自動発光モードに設定しておくと、周りの状況を判断して明るさが不足する場合にはストロボ光を自動的に発光する。
【0003】
ところで、特許文献1には、ストロボ装置を備えたカメラにおいて、被写体である人の興味を引き付けて被写体の豊かな表情を撮影することができるようにするために、シャッタースイッチが押下されてから撮影動作が行われるまでの時間、ストロボ装置の発光部を収容位置から突出位置までの間で移動させることによって、カメラの外観上の形態を変化させる提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−157287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図9にストロボ装置から出射されるストロボ光の発光波形を示すが、同図に示すように、ストロボ光は短い発光時間に0%〜100%に発光強度が変化するため、被写体である人には眩しく感じる。尚、一般的にストロボ光の発光時間tは、発光強度が1フラッシュの光量の半値幅(発光波形の50%−50%間の値)を示す間の時間と規定される。
【0006】
又、特許文献1において提案されたカメラでは、明るい場所では外観の形態変化を認識することができるが、ストロボ光の発光を必要とするような暗い場所では形態の変化を視認することができず、被写体の興味を引き付けることができないという問題がある。しかも、形態を変化させる箇所としてストロボ装置の発光部を選択し、この発光部を出没させて外観上の形態を変化させているが、被写体の視覚的注意はストロボ装置に向かい、そのストロボ装置でストロボ光が発光すれば、眩しさを一層感じ易くなってしまうという問題もある。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、被写体にインタラクションと興味を持たせつつ、被写体に眩しさを与えることがないカメラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ストロボ装置を備えたカメラにおいて、前記ストロボ装置のストロボ光よりも輝度が低く設定された補助光を被写体に向けて照射する補助光発光手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記補助光発光手段による補助光の出力レベルを時間の経過と共に段階的に上げることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記補助光の各出力レベルを所定時間保持することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記補助光の発光をストロボ光が発光する前から発光し終わるまで行うことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記補助光発光手段を前記ストロボ装置の設置箇所以外の箇所に配置したことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記補助光発光手段を筐体のレンズ部分の周囲を囲むように配置したことを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6の何れかに記載の発明において、前記補助光を指向性を有さない拡散光としたことを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の発明において、前記補助光発光手段の光源から出射する光を拡散させるフィルタを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、ストロボ装置から輝度の高いストロボ光が発光する前に、ストロボ光よりも輝度が低く設定された補助光を被写体に向けて照射することによって、背景輝度とのコントラスト差が小さく抑えられ、被写体である人が補助光による明るい環境に順応するため、その後に輝度の高いストロボ光が発光しても、人が感じる眩しさが低減される。又、ストロボ光が発光する前に補助光が発光することによって被写体である人はその補助光に視覚的な注意を向けるため、人は「写真を撮るよ!」というインタラクションと興味を持つことができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、補助光の出力レベルを時間の経過と共に段階的に上げることによって、被写体である人に「写真を撮るよ!」というインタラクションを確実に与えることができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、補助光の各出力レベルを所定時間保持することによって、シャッターが切られるタイミングを被写体に知らせることができる。因に、補助光の出力レベルが瞬時に変化したり、補助光が点滅するだけでは、被写体である人は何時シャッターが切られるのかを判断しづらく、又、「写真を撮るよ!」というインタラクションを得にくい。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、ストロボ光が発光しているときに補助光も同時に発光させるようにしたため、被写体である人の視線が補助光以外の場所、例えばストロボ光の方向へと移行することがなく、ストロボ光を眩しく感じる度合いが低く抑えられる。因に、ストロボ光が発光する前に補助光が消灯してしまうと、被写体である人の視線が補助光以外のストロボ光の方へと移行してしまい、ストロボ光を眩しいと感じてしまう。
【0020】
請求項5及び6記載の発明によれば、補助光発光手段をストロボ装置の設置箇所以外の場所(例えば、筐体のレンズ部分の周囲)に配置したため、補助光を視認していた被写体である人の視線がストロボ光に向かうまでの時間(反応時間)が長くなり、その分だけストロボ光を直接視認する時間が短縮されるために眩しさを感じる度合いが低く抑えられる。
【0021】
請求項7及び8記載の発明によれば、補助光を指向性を有さない拡散光としたため、この拡散光によってストロボ光発光前の背景輝度とのコントラスト差が一層効果的に小さく抑えられ、被写体である人が補助光による明るい環境に順応し、その後のストロボ光に対して感じる眩しさの度合いが低く抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るカメラの正面図である。
【図2】本発明に係るカメラの撮影動作手順を示すフローチャートである。
【図3】補助光の発光時間に対する輝度レベルの変化を示す図である。
【図4】被写体の視覚的注意を説明する概念図である。
【図5】(A)〜(D)はストロボ光の眩しさの実験対象と補助光提示条件を示す図である。
【図6】ストロボ光の眩しさ実験の結果を示す図である。
【図7】本発明に係るカメラの他の形態を示す正面図である。
【図8】本発明に係るカメラの他の形態を示す正面図である。
【図9】ストロボ光の発光波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は本発明に係るカメラの正面図であり、図示のカメラ1はデジタルカメラであって、その筐体2の前面には鏡胴3が配設され、この鏡胴3には撮影レンズ4が設けられている。又、カメラ1の筐体2の前面の横上方にはストロボ装置5が配設され、筐体2の上面には、撮影操作を行うためのシャッタースイッチ6が配設されている。
【0025】
ところで、本実施の形態では、前記鏡胴3(撮影レンズ4)の周囲に4つのカギ括弧状の補助光発光手段7が配設されている。この補助光発光手段7は、ストロボ装置5のストロボ光よりも輝度が低く設定された補助光を被写体に向けて照射するためのものであって、補助光としては指向性を有さない拡散光が使用される。尚、図示しないが、補助光発光手段7には、LED等の光源から出射する光を拡散させるフィルタが設けられ、後述のように補助光発光手段7からは指向性を有さない拡散光が補助光として被写体に向けて照射される。
【0026】
次に、以上のように構成されたカメラ1の撮影動作を図2及び図3に基づいて説明する。尚、図2はカメラの撮影動作手順を示すフローチャート、図3は補助光の発光時間に対する輝度レベルの変化を示す図である。
【0027】
本実施の形態に係るカメラ1においては、眩しさ制御モードを設定することができ、撮影が開始されると(図2のステップS1)、先ず、眩しさ制御モードが設定されたか否かが判断される(ステップS2)。そして、眩しさ制御モードが設定されていない場合(ステップS2での判断結果がNoである場合)には、シャッタースイッチ6が押下され(ステップS3)、ストロボ発光が必要か否かが判断される(ステップS4)。
【0028】
周囲が明るくストロボ発光が不要である場合(ステップS4での判断結果がNoである場合)には、そのまま撮影が実行され(ステップS5)、一連の撮影動作が終了する(ステップS6)。
【0029】
他方、周囲が暗くて撮影に必要な光量が不足するためにストロボの発光が必要である場合(ステップS4での判断結果がYesである場合)には、発光準備がなされ(ステップS7)、その後、ストロボ装置5によってストロボ光が発光され(ステップS8)、その状態で撮影がなされて(ステップS9)、一連の撮影動作が終了する(ステップS6)。
【0030】
又、眩しさ制御モードが設定されている場合(ステップS2での判断結果がYesである場合)には、シャッタースイッチ6が押下されると(ステップS10)、補助光発光手段7の発光準備がなされる(ステップS11)。
【0031】
而して、補助光発光手段7は、前述のようにストロボ装置5のストロボ光よりも輝度が低く設定された補助光を被写体に向けて照射するが、この補助光発光手段7によって照射される補助光は、図3に示すように、その出力レベルが時間の経過と共に0.3秒の間に10%、20%、30%(ストロボ光の最大輝度を100%としたときの割合)と3段階に上げられ、各出力レベルは0.5秒間保持される。尚、補助光の出力レベルとその上昇段階数及び各出力レベルの保持時間は任意である。
【0032】
従って、補助光発光手段7からは先ず出力レベル10%の補助光が発光され(ステップS12)、その出力レベルが0.5秒間保持された後、0.3秒の間に出力レベル20%の補助光が発光され(ステップS13)、その出力レベルが0.5秒間保持される。次に、0.3秒の間に出力レベル30%の補助光が発光され(ステップS14)、その出力レベルがその後のストロボ装置5によるストロボ光の発光が終わるまで保持される(ステップS15,S16及び図3参照)。つまり、本実施の形態では、ストロボ光が発光しているときにも出力レベル30%の補助光が同時に発光するようにしている。
【0033】
そして、上述のようにストロボ光と出力レベル30%の補助光が同時に発光している状態で撮影がなされ(ステップS17)、一連の撮影動作が終了する(ステップS6)。
【0034】
以上のように、本実施の形態では、ストロボ装置5から輝度の高いストロボ光が発光する前に、ストロボ光よりも輝度が低く設定された補助光を被写体に向けて照射するようにしたため、背景輝度とのコントラスト差が小さく抑えられ、被写体である人が補助光による明るい環境に順応する。このため、その後に輝度の高いストロボ光が発光しても、人が感じる眩しさが低減される。又、ストロボ光が発光する前に補助光が発光することによって被写体である人はその補助光に視覚的な注意を向けるため、人は「写真を撮るよ!」というインタラクションと興味を持つことができる。
【0035】
そして、本実施の形態では、補助光の出力レベルを時間の経過と共に10%、20%、30%と段階的に上げるようにしたため、被写体である人に「写真を撮るよ!」というインタラクションを確実に与えることができる。又、補助光の各出力レベルを所定時間(本実施の形態では、0.5秒間)保持するようにしたため、被写体である人にシャッターが切られるタイミングを知らせることができる。因に、補助光の出力レベルが瞬時に変化したり、補助光が点滅するだけでは、被写体である人は何時シャッターが切られるのかを判断しづらく、又、「写真を撮るよ!」というインタラクションを得にくい。
【0036】
更に、本実施の形態では、ストロボ光が発光しているときに補助光も同時に発光させるようにしたため、被写体である人の視線が補助光以外の場所、例えばストロボ光の方向へと移行することがなく、ストロボ光を眩しく感じる度合いが低く抑えられる。因に、ストロボ光が発光する前に補助光が消灯してしまうと、被写体である人の視線が補助光以外のストロボ光の方へと移行してしまい、ストロボ光を眩しいと感じてしまう。
【0037】
ここで、図4に示す概念図によって視覚的注意について説明する。
【0038】
目標刺激(ストロボ発光)に先行して目標刺激の提示位置を知らせるための先行手掛かり(補助光)が提示される場合、先行手掛かり(補助光)が目標位置を正確に示している場合(有効条件)には、先行手掛かりが提示されない場合(中立条件)や目標刺激が正確に示されていない場合(無効条件)よりも反応時間が短縮されてしまう。つまり、中立条件や無効条件よりも早く目線が向くことになってしまい、より眩しさを感じてしまう。
【0039】
実際に図5(A)〜(D)に示す形態について補助光の提示を行って眩しさの評価を実施した。
【0040】
ここで、実験条件として、図5(A)は補助光発光手段7がない場合、図5(B)はストロボ装置5が設けられた位置に補助光発光手段7を配置した場合、図5(C)は補助光発光手段7をストロボ装置5とは反対側の片側に配置した場合、図5(D)は図1に示すと同様にカギ括弧状の補助光発光手段7を撮影レンズ4の周囲に配置した場合をそれぞれ示す。
【0041】
而して、補助光を図5(A)〜(D)に示す4条件として提示し、各場合の眩しさの主観評価を行った。その結果を図6に示すが、図5(C),(D)に示すように補助光発光手段7をストロボ装置5が設置された箇所以外の場所に設けた場合(図4の無効条件に相当)には、図6にC,Dにて示すように眩しさの低下が見られた。
【0042】
しかしながら、図5(A)に示すように補助光発光手段7がない場合と図5(B)に示すようにストロボ装置5が設けられた位置に補助光発光手段7を配置した場合(図4の中立条件と有効条件に相当)には、図6にA,Bにて示すように眩しさの低下は見られなかった。特に、図5(B)に示す場合には、補助光発光手段7とストロボ装置5が同一位置に設置されているため、より一層注意が引かれてるために眩しさを感じ易い結果となった。
【0043】
図5(D)に示すように補助光発光手段7を撮影レンズの周囲に配置した場合には、補助光によって主観的な輪郭が得られるため、被写体である人は補助光に注意がより一層引かれるためにストロボ光の眩しさが低下する。
【0044】
而して、本実施の形態では、図1に示すように、カギ括弧状の補助光発光手段7をストロボ装置5の設置箇所以外の場所、具体的には筐体2の鏡胴3(撮影レンズ4)の周囲に配置したため、補助光を視認していた被写体である人の視線がストロボ光に向かうまでの時間(反応時間)が長くなり、その分だけストロボ光を直接視認する時間が短縮されるために眩しさを感じる度合いが低く抑えられる。
【0045】
従って、補助光発光手段7はストロボ装置5の設置箇所以外の場所に設置されるべきであって、例えば図7に示すように筐体2の鏡胴3(撮影レンズ4)の周囲にリング状の補助光発光手段7を配置したり、図8に示すように、筐体2のストロボ装置5が設けられた側とは反対側の上部片側に補助光発光手段7を配置しても良い。
【0046】
又、本実施の形態では、補助光を指向性を有さない拡散光としたため、この拡散光によってストロボ光発光前の背景輝度とのコントラスト差が一層効果的に小さく抑えられ、被写体である人が補助光による明るい環境に順応し、その後のストロボ光に対して感じる眩しさの度合いが低く抑えられる。
【0047】
尚、以上は本発明をデジタルカメラに対して適用した形態について説明したが、本発明は、デジタルカメラ以外のフィルム式カメラやビデオカメラ等に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
1 カメラ
2 カメラの筐体
3 鏡胴
4 撮影レンズ
5 ストロボ装置
6 シャッタースイッチ
7 補助光発光手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストロボ装置を備えたカメラにおいて、
前記ストロボ装置のストロボ光よりも輝度が低く設定された補助光を被写体に向けて照射する補助光発光手段を設けたことを特徴とするカメラ。
【請求項2】
前記補助光発光手段による補助光の出力レベルを時間の経過と共に段階的に上げることを特徴とする請求項1記載のカメラ。
【請求項3】
前記補助光の各出力レベルを所定時間保持することを特徴とする請求項2記載のカメラ。
【請求項4】
前記補助光の発光をストロボ光が発光する前から発光し終わるまで行うことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のカメラ。
【請求項5】
前記補助光発光手段を前記ストロボ装置の設置箇所以外の箇所に配置したことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のカメラ。
【請求項6】
前記補助光発光手段を筐体のレンズ部分の周囲を囲むように配置したことを特徴とする請求項5記載のカメラ。
【請求項7】
前記補助光を指向性を有さない拡散光としたことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のカメラ。
【請求項8】
前記補助光発光手段の光源から出射する光を拡散させるフィルタを設けたことを特徴とする請求項7記載のカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−169846(P2010−169846A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11576(P2009−11576)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】