説明

カラスの営巣防止装置

【課題】電柱頂部への装着が容易で、営巣防止効果が大で、しかも省エネルギー運転が可能なカラスKの営巣防止装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るカラスKの営巣防止装置100は、電柱頂部Tの側面から挿入、固定される固定バンド部10と、固定バンド部10の上部に位置する尖頭部20と、固定バンド部10の外周面に配置されたLED照明装置30とから成るカラスKの営巣防止装置100であって、前記LED照明装置30が、黄色、アンバー色(琥珀色)からオレンジ色の波長範囲内の光を発光する複数のLED照明球31と、前記固定バンド部10の外周面上に固定された太陽電池テープ32と、該太陽電池テープ32で発電された電力を蓄電するバッテリー33と、前記複数のLED照明球31をカラスKの営巣時間帯のみ発光させる照度センサー34と、これら電気部品のCPU35とで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラス(烏)の営巣防止装置に関し、詳しくは電柱頂部の例えば高圧水平アーム等の電線支持部材の上にカラスが飛来して営巣するのをカラスの習性を利用して防止する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電力供給各社が難儀している点として、各種電気供給設備への鳥類の営巣被害がある。
【0003】
営巣をする鳥類としては、カラス、スズメ(雀)、鳩等の種類を問わず、また、営巣をする電気供給設備の種類、場所も対象を問わないが、図5に示すように、中でもカラスKの場合は、電柱頂部に通常取り付ける高圧線支持用の水平アーム(腕金)Fの上が格好の営巣場所となる。
【0004】
なぜならば水平アームFは、電柱Pの高所に取り付けられているため人間から営巣活動を邪魔されにくく、また、その取付態様が水平方向に長く、かつアーム間隔も狭いため、カラスKが口に加えてきた雑木類を上空から落とすと、水平アームF上に蓄積しやすく、容易に営巣Zができるからである。
【0005】
しかし、カラスKを駆除し、その営巣Zを除去するにしても営巣場所は高圧線C近くの高所にあるから、その撤去作業は大掛かりなものとなり、その設備費及び撤去作業費が馬鹿にならないほど高額なものとなる。
【0006】
特に問題なのは、水平アームFの材質は金属製であり、近くを通過している高圧線C(二万ボルト)は所定高さの高圧碍子Gを介して水平アームFと電気的に絶縁されてはいるが、営巣Zが蓄積して上方に延びたり、また、たまたまカラスが運んできた長い雑木が高圧線Cに触れたりすると、高圧線Cが水平アームFと導通して短絡することがある。このような短絡事故は過去に度々あり、一度短絡すると、近隣の一般住宅の停電は勿論、病院、公共機関等を含めた広域停電を招くので、その被害は甚大なものとなる。
【0007】
したがって、従来より電力供給各社は、一定期間ごとに電柱頂部のパトロールを行なっており、カラスKを対象にした営巣防止のために多大の投資を強いられているのが現状である。
【0008】
このようなカラスの営巣防止を対象とした従来技術としては、従来より数多のものがあるが、例えばカラスが電柱周辺に近づくことを防止する手段として発光ダイオードを用いた特許文献1、2に記載の営巣防止装置がある。
【0009】
特許文献1記載の営巣防止装置は、塩ビ製ナットの上に中空容器を固定し、当該中空容器の上に、鳥類が嫌う動物の目に模した青色、黄色、緑色及び赤色をそれぞれ発光する発光ダイオード製本体部を固定したものである。
【0010】
また、特許文献2記載の営巣防止装置は、点滅する光源部と、人物の顔写真、図形等からなる表象部とからなる鳥獣防除装置であり、前記光源として赤色点滅の発光ダイオードを用いたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−199985号公報(段落0021、図5、図6)
【特許文献2】特開2006−304626号公報(段落0021、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術の要旨は、鳥が嫌う動物の目に模した本体部にあり、発光ダイオードの発光色として青色、黄色、緑色及び赤色のものを用いる理由とその効果が定かでない。また、対象鳥類としてもカラスに特化したものではない。
【0013】
また、特許文献2に記載の従来技術の要旨は、点滅光源と、人間の顔写真を用いることにあり(段落0013、図1)、発光ダイオード色として赤色のものが必要な理由も定かではなく、結局いずれの特許文献のものも営巣防止には効果的なものではなかった。
【0014】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべくなされたもので、「カラスが特にスズメ蜂の体表面の色である黄色、アンバー色(琥珀色)乃至はオレンジ色を嫌う。」という習性を利用することにより、営巣防止効果が大であるとともに、電柱頂部への装着が容易で、しかも省エネルギー運転が可能なカラスの営巣防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、請求項1の発明に係るカラスの営巣防止装置は、電柱頂部の側面から挿入、固定される固定バンド部と、該固定バンド部の上部に位置する尖頭部と、前記固定バンド部の外周面に配置されたLED照明装置とから成るカラスの営巣防止装置であって、前記LED照明装置が、黄色、アンバー色(琥珀色)及びオレンジ系色のうちの何れかの光を発光する複数のLED照明球と、該複数のLED照明球の電源と、前記複数のLED照明球をカラスの営巣時間帯のみ発光させる照度センサーと、これら電気部品の制御部と、から成ることを特徴とする(以下、この発明を「第1発明」という。)。
ここで、本発明における「電柱」の概念については、一般に言う電柱を含むほか、送電線用鉄塔等の各種設備も含まれるものとし、これらを総称して「電柱」と称するものとする。
【0016】
したがって、固定バンド部の横断面形状は、装着すべき電気設備の横断面形状に応じて、円形、四角形等の形状に形成することができる。
前記複数のLED照明球の電源は、固定バンド部の外周面上に固定された太陽電池テープと、この太陽電池テープで発電された電力を蓄電するバッテリーとで構成しても良い(以下、この発明を「第2発明」という。)。
【0017】
また、本発明の別例として、前記電柱への固定バンド部と前記尖頭部との間に、表面の一部に曲面を有する傾斜角度調整部が設けられており、前記LED照明装置のうち、少なくとも前記複数のLED照明球が、前記電柱への固定バンド部とは別体のLED照明球固定バンド体の表面に固定されているとともに、該LED照明球固定バンド体が、前記傾斜角度調整部の曲面上に傾斜させて装着可能にしたことにより、前記複数のLED照明球から発光された光を、カラスの営巣位置に直接照射すべく、調整可能にしても良い(以下、この発明を「第3発明」という。)。
【0018】
また、前記尖頭部は、表面が黒色であり、前記複数のLED照明球は、集光レンズ付きのものであって、かつ、黄色、アンバー色(琥珀色)及びオレンジ系色の全ての色を含む発光色の波長領域が560〜620nmの範囲内のものを用いるようにしても良い(以下、この発明を「第4発明」という。)。
【0019】
ここで、複数のLED照明球として、集光レンズ付きのものを用いる理由は、本来、LED照明球は志向性を有するが、集光レンズ付きのものであると、上記波長領域の発光をビームの如く絞ることができるので、カラスの目を直接狙って照射でき、カラスの撃退効果が高いからである。尖頭部表面を黒色にするのは、黄色が際立って見えるからである。
【0020】
前記固定バンド部は、電柱外径よりも狭い幅の開口部を有し、かつ、電柱への装着時においては電柱表面方向への付勢力を有する弾性体で構成されているので、例えば無停電状態で操作できる間接工具S(図1(a)の符号S参照)等の把持具により、電柱頂部に容易に着脱できる(以下、この発明を「第5発明」という。)。
【0021】
弾性体の付勢力の程度としては、営巣防止装置が風の影響や、自重により電柱からずり落ちず、且つ、電柱の円周方向への移動を生じないだけの力が望ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る第1発明によれば、営巣防止装置の下部に電柱頂部の側面に挿入、固定される固定バンド部を有し、特にボルト、ナット等の締結金具は使用せず、前述した無停電状態で操作できる間接工具Sを使用するので、電柱頂部への装着が容易である。
【0023】
また、固定バンド部の上部に位置する尖頭部と、この固定バンド部の外周面に配置されたLED照明装置とを有するので、カラスの飛来を効果的に妨げることができる。
特にLED照明装置は、カラスが生理的に嫌う黄色、アンバー色(琥珀色)からオレンジ色の特定波長領域(560〜620nm)の光を発光する複数のLED照明球を有するので、より一層効果的に営巣を防止することができる。
第2発明によれば、LED照明装置は、その電源が太陽電池テープとバッテリーとで構成されているので、昼夜を問わずメンテナンスフリーの省エネルギー運転が可能となる。
【0024】
第3発明によれば、複数のLED照明球付きのLED照明球固定バンド体が、固定バンド部の球体表面上を傾斜して装着可能であるので、第1発明の効果に加えて、LED照明球から発光された光をカラスの営巣部位置に調整して、直接、且つ正確に照射できる。
第4発明によれば、尖頭部の外表面が黒色であり、前記複数のLED照明球が集光レンズ付きのものであって、かつ、その発光色の黄色、アンバー色(琥珀色)及びオレンジ系色が560〜620nmの特定波長領域のものであるので、第1、第2発明の効果に加えて、営巣防止効果がより一層向上する。
【0025】
第5発明によれば、前記固定バンド部が、電柱外径よりも狭い幅の開口部を有し、かつ、電柱への装着時において電柱からずり落ちず、且つ、電柱円周方向への移動を生じないだけの電柱表面方向への付勢力を有する弾性体で構成されているので、第1〜第3発明の効果に加えて、電柱頂部への把持具による着脱作業が容易になると共に、電柱に対する相対移動が生じないので、より一層、LED照明球から発光された光をカラスの営巣部に向けて正確、かつ直接に照射でき、その分、営巣防止効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るカラスの営巣防止装置の第1実施形態の図面で、図1(a)は、全体斜視図、図1(b)は、図1(a)中の固定バンド部10の縦断面図である。
【図2】図1のLED照明装置30の電気回路図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るカラスKの営巣防止装置100を電柱頂部Tに装着した正面図である。
【図4】本発明に係るカラスの営巣防止装置の第2実施形態の正面図である。
【図5】従来の電柱頂部T付近におけるカラスKの営巣状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るカラスの営巣防止装置の形態を、図面を参照しながら説明する。
【実施形態1】
【0028】
図1(a)は、本発明に係るカラスの営巣防止装置(以下、単に「営巣防止装置」と略称する。)の全体斜視図で、電柱頂部T(図4参照)に装着する前の状態のものである。また、図1(b)は、図1(a)中の固定バンド部10の縦断面図である。
【0029】
図1(a)に示すように、この実施形態の営巣防止装置100は、電柱頂部Tの下方の側面から電柱Pに直交する方向に挿入して、当該電柱に固定する固定バンド部10と、この固定バンド部10の上部に位置する尖頭部20と、前記固定バンド部10の外周面に配置されたLED照明装置30とからなり、これらが溶接、接着又はボルト、ナット等の締結手段(不図示)で一体に構成されている。
【0030】
固定バンド部10は、電柱頂部Tの下方側面から電柱に直交する方向に営巣防止装置100の全体を挿入し、固定するもので、本発明装置100のベース的機能と、後述するLED照明装置30のベース的機能とを有する。
固定バンド部10は、平面視が略円形のバンド状体である。
【0031】
その円周上の一部には、舌状突出部12が設けられており、図示しないバケット車に乗った作業者が電柱頂部Tへの営巣防止装置100の無停電装着を行なう。その装着工具として、電線の把持作業が活線状態で可能な間接活線絶縁操作棒(例えば特開2009−142009号公報に記載のもの。以下、単に「間接工具S」と略称する。)を用いる。
【0032】
また、この舌状突出部12の位置から180度位相を変えた図の右上位置には、電柱外径d(図4参照)よりもやや狭い内幅W(W<d)の開口部13と、開口部13を中心に互いに離れる方向に延びる半径がrの案内曲面を有する一対の電柱案内部14とが設けられている。この場合、電柱案内部14、14同士は、ボルト及びナット等の締結具(不図示)や、適当なワンタッチ機構によるクランプ金具等の電柱に対する確定的な固定手段(不図示)を設けることも考えられるが、営巣防止装置100の装着作業が高所における無停電作業であることが多いことから、安全上、設けない方がよい。すなわち、図1(a)に示す如く、本発明においては、作業者が間接工具Sで舌状突出部12を把持しつつ、一対の開口部13を電柱頂部Tの外周面に押し付けて開口部13、13間を開口させ、次に営巣防止装置100の全体を図の右方向に移動させて電柱頂部Tに挿入し、自身の持つ締め付け力(電柱Pに対する付勢力)により固定するのである。
【0033】
したがって、固定バンド部10の内径Dは、電柱頂部Tへの装着前の図1(a)の状態では、電柱外径dよりも縮径されているが(D<d)、電柱頂部Tへの装着が完了した時点では、電柱外径dに一致する内径D(D=d)となる。そして、この拡径時点(電柱への装着時点)で、営巣防止装置100の全体が自身の重量で電柱からずり落ちず、かつ電柱Pの円周方向に移動しないだけの電柱外周面に対する締め付け力(付勢力)が作用しているのである。
【0034】
このような付勢力が電柱Pに作用可能な材質としては、金属製、合成樹脂製、ゴム製等の如何なるものでもよいが、固定バンド部10の外表面にLED照明装置30を配置する必要上、電気絶縁性を備えている必要がある。このような電気絶縁性を有する材質としては、合成樹脂製、ゴム製またはこれらの組み合わせからなるものが好ましいが、金属製バンドを用いる場合は、その表面に絶縁テープや絶縁コーティングを施すことにより、電気絶縁性が確保されていればよい。
【0035】
また、図1(b)に示すように、固定バンド部10の横断面形状は、電柱P外周面への付勢力を長期にわたって維持するために、縦断面が「コ」字状の形状をしており、その上下のフランジ部11、11は、いずれも中心方向に向いている。もし、固定バンド部10による電柱P外周面に対するより強固な把持力が必要な場合は、このフランジ部11の内周面側に、横断面形状を鋭利なナイフ状に形成した又は平面視形状を鋸刃状や凹凸形状に形成した把持力向上手段(不図示)を施しても良い。
【0036】
次に、LED照明装置30は、電柱頂部Tに飛来し、営巣しようとするカラスKを電柱頂部Tまたはその周囲から撃退するためのもので、複数のLED照明球(以下、単に「LED」と称する場合がある。)31と、太陽電池テープ32と、バッテリー33と、照度センサー34と、これら電気部品の制御部であるCPU35とから構成されている。
上記構成部材のうち、LED照明球31は、カラスKの習性上、嫌いな色とされている「すずめ蜂」の体表面色である黄色、アンバー色(琥珀色)からオレンジ系色の色(これらの色は、波長領域が560〜620nmの範囲内に含まれる色である。)を直接、かつ、ランダムに照射するためのものであり、本実施形態では、図1(b)に示すように、集光レンズ31A付きのものを用いている。
【0037】
集光レンズ31Aは、紫外線吸収剤入りのもので先端部が突出しており、発光角度θを60°以内の狭い照射角度内に絞ることができ、前述した固定バンド部10の外表面の周方向に30〜100mmの範囲内のピッチで等間隔に固定されている。かかる集光レンズ31A付きのLED照明球31を用いる理由は、出願人による種々の実験の結果、カラスKの目を狙って、文字通り直接射るような狭い範囲の光を照射するのが営巣防止に効果があったからである。
【0038】
したがって、集光レンズ31A付きLED照明球31の全体位置、高さ、配設ピッチ、照射角度等は、電柱頂部T周辺の営巣推定位置にカラスKが飛来したと仮定して、集光レンズ31Aの照射光が直接、カラスKの目に届くように適宜調整する。
【0039】
太陽電池テープ32は、上記集光レンズ31A付きのLED照明球31を日中の時間帯だけ発光するに必要な起電力を生じさせ、バッテリー33は、太陽電池テープ32で発電された電力を蓄電するためのものである。
【0040】
照度センサー34は、カラスKが営巣活動を中止する夜間にはLED照明球31を消灯し、また夜間のランダムな点灯は、電柱P周辺の地域住民の迷惑にもなるので消灯するためのものである。
したがって、カラスKが営巣活動をする日中の時間帯のみ、LED照明球31をランダムに点滅するようになっている。この照度センサー34は、勿論、日中の点灯時間帯を任意の時間帯に設定できるが、カラスKの営巣ピークは3〜5月頃に集中するので、当該季節中の点灯については、後述するCPU35に内蔵されているプログラムにより特に点灯間隔、時間等を工夫できるようになっており、そのプログラムを選択スイッチSW1、SW2(図2)で選択できるようになっている。
【0041】
CPU35は、上記個々の電気部品がそれぞれの目的を達成できるようにするための制御回路を構成するものであり、上記集光レンズ31A付きLED照明球31をランダムに点灯させるランダム点灯回路や、太陽電池テープ32で発電したタイムラグのある電力を平滑してバッテリー33に蓄電するキャパシタ回路等が組み込まれている。
【0042】
図2は、図1のLED照明装置30の電気回路図である。
【0043】
図2において、電源33は、前述したバッテリーであり、その他設置環境によっては例えばACアダプターなどの外部電源も使用することができる。直流電源は、直流安定化電源36を経由して、例えば、種々の点滅パターンや点滅周期等を実現したプログラムの切替スイッチSW1、SW2・・・が使用者により選択されてCPU35に通電され、このCPU35が後続の複数のスイッチ37、37・・・をON−OFF制御することで、LED照明球31、31・・・を個々に点滅制御する。
【0044】
CPU35は、乱数点滅用発生用マイクロコントローラーであり、その他例えばロジックIC、ゲートアレイ等を用いることができる。CPU35では乱数発生プログラムにより、LEDの接続数にあわせた任意のランダムパルスをポートに出力させ、LED31、31・・・をランダムに点滅点灯制御する。CPUに内蔵されている具体的なプログラムとして、特にLED照明球を点灯しない時間を作り、その後突然、高速で点滅させたり、或は急激に遅いタイミングで点灯させるなどの点灯間隔、点滅周期をランダムにするものが挙げられ、このような多彩なプログラムによる奇抜な点灯をすることで、カラスを驚かせて撃退することができる。
【0045】
CPU35は、前述したように照度センサー34(図1参照)により、動作を自動的に開始し、日没で動作を停止する。この場合、照度センサー34の信号レベルの変化をA/D変換してCPU内に取り込み、周囲の照度によってLEDの明るさ(duty制御で制御)や、点滅周期、間隔を変化しても良い。
【0046】
切替スイッチは、前述した点滅パターン切替えスイッチSW1、SW2の他、カラスの飛来音や接近を検知するセンサーを水平アームFの近傍に設け、この飛来信号によってCPU35が、近傍のスピーカー(不図示)からスズメ蜂の例えば「ブーン」というカラスの嫌がる羽音や、大音響の撃退音を発するようにしたもの、又はこれら点滅光や撃退音を適宜の周期で組み合わせたものを選択するスイッチであってもよい。
【0047】
LED照明球31は、前述した黄色、アンバー色(琥珀色)からオレンジ色が発光できる波長領域のもので、超高輝度、かつ、レンズによるビーム照射が可能なタイプのものである。LEDの輝度は、PWM制御によりLEDに印加される電力を調整し、点滅時のLEDの輝度に明暗をつけることでより大きな効果が期待できる。その他、3原色内蔵のフルカラーLEDを使用して、数日に一回やランダムに発光色を変化させてもよい。これによって、カラスが黄色、アンバー色、オレンジ色の発光色に慣れてしまうことを防ぐのである。なお、符号Rは、LEDに流れる過電流抑制用抵抗である。
【0048】
次に、尖頭部20は、電柱頂部Tに装着した営巣防止装置100の上にカラスKが飛来して営巣を開始するのを防止するために、上端部が鋭利な尖頭状となった三角形状の板状体21を上記固定バンド部10の上面に、風通し可能な空間部22を交互に介して配置したものである。この尖頭部20は、高さHがカラスKの脚長よりも長くされており、飛来したカラスKが尖頭部20の側面又は固定バンド部10の上面に足を掛けようとしても、最初に尖頭部20の頂点がカラスKの腹に当たるので営巣することができないようになっている。
【0049】
次に、図1及び図2を参照して本発明の作用を説明する。
1.営巣防止装置100の電柱Pへの挿入、固定
まず、図示しないバケット車に乗った作業者が、バケット車内部で間接工具Sの先端部(図1(a)参照)で営巣防止装置100の固定バンド部10の舌状突出部12を挟む。
挟んだらその状態のままでバケット車を上昇させ、営巣防止装置100を挟んだ間接工具Sを電柱頂部T方向に伸ばし、固定バンド部10の開口部13を電柱頂部Tの側方から電柱Pの側面にあてがい、そのまま電柱Pと直交する方向に押し込む。
【0050】
このとき、固定バンド部10の電柱案内部14が電柱P外周面に対する付勢力に抗しつつ開口幅Wが拡がるので、容易に固定バンド部10を電柱Pに装着することができる。
なお、営巣防止装置100の重量により営巣防止装置100が電柱頂部Tからずり落ちようとしても、尖頭部20の全体形状が上方に向かうほど小径になった略円錐形に形成されているので、全重量が電柱頂部Tに加わった時点で、そのくさび効果により営巣防止装置100が電柱頂部Tに静止し、同時に電柱円周方向への移動をも防止する。この状態を示したのが、図3の正面図である。
【0051】
また、常時、固定バンド部10から電柱外周面に付勢力が作用しているので、より一層電柱円周方向への移動が防止される。この場合、暴風雨等があっても、尖頭部20の上記くさび効果及び固定バンド部10の電柱外周面に対する把持効果に加えて、尖頭部20の風通し空間22が風23を逃がすので、営巣防止装置100が周方向に移動したり、風圧により飛ばされたりすることはない。
【0052】
このように、本発明に係る営巣防止装置100は、電柱外周面に対して常に正確な位置を保つことができる。したがって、LED照明装置30の集光レンズ31Aは、常に営巣位置のみに対して正確な照射をすることができる。
2.営巣防止装置100の点灯及び消灯
次に、太陽電池テープ32による発電及びLED照明球31による発光が開始する。
すなわち、太陽光が出ている日中においては、太陽電池テープ32によって発電が開始し、バッテリー33への充電を開始する。充電が所定量に達し、かつ、営巣防止装置100周辺の明るさが規定値に達すると、照度センサー34がこれを検知し、LED照明球31の集光レンズ31Aから前述した黄色、アンバー色(琥珀色)からオレンジ色の光を営巣方向にランダムに照射させる。この照射光は、カラスKの習性として嫌いなすずめ蜂の体表面の色であり、しかも集光レンズ31Aにより照射角が狭い範囲に絞られているので、電柱頂部のフラットバーF等に飛来したカラスKの目を直接射る如く照射する。したがって、太陽光が出ている日中はカラスKの営巣活動を抑制することができる。
【0053】
そして、太陽が沈み電柱周辺が暗くなると、照度センサー34が周辺の照度を検知し、CPU35(制御部)に信号が送られ、LED照明球31の点滅発光を停止する。
【0054】
以上に述べたとおり、本発明に係るカラスKの営巣防止装置100に拠れば、電柱頂部におけるカラスKの営巣行動を効果的に防止することができる。したがって、電力供給会社は、従来、営巣防止に投資していた高額の営巣防止装置の設置費や、定期パトロール費、撤去費等を抑制することができ、多大の効果を発揮する。
【実施形態2】
【0055】
図4は、本発明に係るカラスKの営巣防止装置100の第2実施形態である。
本第2実施形態で第1実施形態と同じ符号が付されている部材は、第1実施形態と同じものを用いているので、その説明は省略する。
【0056】
本実施形態の営巣防止装置100Aが前述の第1実施形態の営巣防止装置100と異なる点は、第一に固定バンド部10Aと尖頭部20Aとの間に、外周面が球状に形成された内部が空洞のLED照明装置30の傾斜角度調整部40を設けたこと、第二にこの傾斜角度調整部40の外周面に、第1実施形態で説明した固定バンド部10付きのLED照明装置30を傾斜角度調整部40の中心Oを中心にしてスライド可能に装着し、水平線Lに対する傾斜角θを自由に調整できるようにしたこと、第三に尖頭部20が第1実施形態では三角形の板状部材21であったのを、傾斜角度調整部40上に立設した複数の針状部材24に変更した点にある。
【0057】
すなわち、第一の相違点の傾斜角度調整部40は、下部の固定バンド部10と、上部の尖頭部20との間に位置する外周面が曲面の具体例として、半径Rの球状の殻体になっている。この傾斜角度調整部40の外周面は、勿論、球面の一部以外のものであってもよい。
【0058】
そして、これら三つの部材が溶接、接着、ビス止め等の固定手段(不図示)により一体に構成されているのである。なお、図示は省略したが固定バンド部10の電柱案内部14には、第1実施形態で説明した開口部13に相当する開口部(不図示)が同様に存在し、内部への電柱Pの受け入れができるようになっている。 そして、固定バンド部10のフランジ11の内周面は、半径Rの球面に接するように三次元曲面に形成されている。
【0059】
また、傾斜角度調整部40及び尖頭部20Aの右側にも電柱P軸方向に延びる開口部13Aが設けられており、固定バンド部10Aの舌状突出部12Aを図示しない間接工具Sで図の右方向に押した場合に、固定バンド部10Aの電柱案内部14Aの拡開に追従して「ハ」字状に若干開くようになっている。
【0060】
なお、上記の異なる点以外の構成は、第1実施形態と同じ構成にされている。
本実施形態の営巣防止装置100Aによれば、第1実施形態の営巣防止装置100と同様に、固定バンド部10の舌状突出部12を図示しない間接工具Sで把持して図の右方向に押せば、営巣防止装置100Aを電柱P内部に受け入れる如く容易に装着することができる。
【0061】
そして、尖頭部20Aの電柱頂部Tに対するクサビ作用により営巣防止装置100Aの全体がしっかり電柱頂部Tに固定できること、固定バンド部10Aは自身の有する電柱P外周面に対する締め付け力(付勢力)により、落下、電柱円周方向への回転を防止できること等の第1実施形態と全く同様の作用効果を奏することができる。
【0062】
特に、固定バンド部10は、自身が有する傾斜角度調整部40の外周面に対する付勢力により、水平線Lに対する傾斜角θを常に維持したままで静止することができる。
【0063】
したがって、本実施形態の営巣防止装置100Aに拠れば、固定バンド部10の舌状突出部12を掴んでLED照明装置30の全体を、傾斜角度調整部40の外周面上でスライドさせて傾斜させることにより、カラスKの営巣位置とその高さに応じた正確な位置調整が可能になり、より一層正確にカラスKの目を狙ってLED発光を照射することができる。
【0064】
なお、本発明の営巣防止装置は、上記第1及び第2の実施形態のものに限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲及び実施形態の範囲で種々の変形、組み合わせが可能であり、これらの変形、組み合わせ例も本発明の範囲に含むことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、カラスを対象とした営巣防止装置であるが、LED照明装置の集光レンズの発光色を調整すれば、他の鳥類に対しても効果的に適用できる。
【符号の説明】
【0066】
10、10A 固定バンド部
13、13A 開口部
20、20A 尖頭部
30 LED照明装置
31 LED照明球
32 太陽電池テープ
33 バッテリー
34 照度センサー
35 CPU
40 傾斜角度調整部
100 カラスの営巣防止装置(第1実施形態)
100A カラスの営巣防止装置(第2実施形態)
F 水平アーム
H 尖頭部の高さ
K カラス
P 電柱
S 間接工具(間接活線絶縁操作棒)
T 電柱Pの頂部
W 開口部13の開口幅
θ 発光角度
θ 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱頂部の側面から挿入、固定される固定バンド部と、該固定バンド部の上部に位置する尖頭部と、前記固定バンド部の外周面に配置されたLED照明装置とから成るカラスの営巣防止装置であって、
前記LED照明装置が、黄色、アンバー色及びオレンジ系色のうちの何れかの光を発光する複数のLED照明球と、該複数のLED照明球の電源と、前記複数のLED照明球をカラスの営巣時間帯のみ発光させる照度センサーと、これら電気部品の制御部と、から成ることを特徴とするカラスの営巣防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載のカラスの営巣防止装置において、
前記複数のLED照明球の電源は、前記固定バンド部の外周面上に固定された太陽電池テープと、該太陽電池テープで発電された電力を蓄電するバッテリーと、から成ることを特徴とするカラスの営巣防止装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカラスの営巣防止装置において、
前記電柱への固定バンド部と前記尖頭部との間に、表面の一部に曲面を有する傾斜角度調整部が設けられており、
前記LED照明装置のうち、少なくとも前記複数のLED照明球が、前記電柱への固定バンド部とは別体のLED照明球固定バンド体の表面に固定されているとともに、該LED照明球固定バンド体が、前記傾斜角度調整部の曲面上に傾斜させて装着可能にしたことにより、
前記複数のLED照明球から発光された光を、カラスの営巣位置に直接照射すべく、調整可能にしたことを特徴とするカラスの営巣防止装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のカラスの営巣防止装置において、
前記尖頭部は、表面が黒色をしており、
前記複数のLED照明球は、集光レンズ付きのものであって、かつ、前記黄色、アンバー色及びオレンジ系色の全ての色を含む発光色の波長領域は、560〜620nmの範囲内にあることを特徴とするカラスの営巣防止装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のカラスの営巣防止装置において、
前記固定バンド部は、電柱装着前は電柱外径よりも狭い幅の開口部を有するとともに、電柱装着後においては電柱外径にまで拡開すべく、電柱方向への付勢力を有する弾性体で構成されていることにより、電柱の任意位置に着脱可能であることを特徴とするカラスの営巣防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−100372(P2012−100372A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243586(P2010−243586)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000221409)東神電気株式会社 (29)
【Fターム(参考)】