説明

カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、カラムスペーサ及び液晶表示素子

【課題】液晶表示素子の製造に使用するカラムスペーサとして用いた際に、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】液晶表示素子のカラムスペーサを製造するために用いるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物であって、反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、及び、光反応開始剤を含有し、前記反応性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体が特定の(メタ)アクリル酸アルケニルまたは(メタ)アクリル酸エポキシアルキルの構造単位を有するものであるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子の製造に使用するカラムスペーサとして用いた際に、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、該カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示素子は、2枚のガラス基板の間隙を一定に維持するためのスペーサを具備し、これらの他に透明電極や偏光板及び液晶物質を配向させる配向層等から構成されている。現在スペーサとしては、主に粒子径が数μm程度の微粒子スペーサが用いられている。しかし、従来の液晶表示素子の製造方法では、ガラス基板上に微粒子スペーサをランダムに散布していたことから、画素部内に微粒子スペーサが配置されてしまうことがあった。画素部内に微粒子スペーサがあると、スペーサ周辺の液晶配向の乱れから光が漏れて画像のコントラストが低下したりする等、画像品質を低下させることがあるという問題がある。これに対して、微粒子スペーサが画素部に配置されないような微粒子スペーサの配置方法が種々検討されているが、いずれも操作が煩雑であり実用性に乏しいものであった。
【0003】
また、近年、液晶表示素子の生産性を上げるために、ワンドロップフィル法(One Drop Fill Technology:ODF法)が提案されている。この方法は、ガラス基板の液晶封入面上に、所定量の液晶を滴下し、もう一方の液晶パネル用基板を真空下で所定のセルギャップを維持できる状態で対峙させ、貼り合わせることにより液晶表示素子を製造する方法である。この方法によれば、従来の方法に比べて液晶表示素子が大面積化し、セルギャップが狭小化しても、液晶の封入が容易であることから、今後はODF法が液晶表示素子の製造方法の主流になると考えられる。
しかし、ODF法において微粒子スペーサを用いると、液晶の滴下時、又は、対向基板の貼り合わせ時に散布した微粒子スペーサが液晶の流動とともに流されて、基板上における微粒子スペーサの分布が不均一となる問題が生じる。微粒子スペーサの分布が不均一になると、液晶セルのセルギャップにバラツキが生じ、液晶表示に色ムラが発生してしまうという問題があった。
【0004】
これに対して、従来の微粒子スペーサに代って、液晶基板上にフォトリソグラフの手法によってセルギャップを均一保持するための凸型パターンを形成したカラムスペーサが提案され、実用化されるようになってきている(例えば、特許文献1、特許文献2等)。
このようなカラムスペーサを用いれば、画素部内にスペーサが配置されてしまう問題や、ODF法においてスペーサムラが生じてしまう問題を解決することができる。
【0005】
しかしながら、カラムスペーサを用いてODF法により製造した大型液晶表示素子においては、表示装置の使用中に液晶セル内の液晶が下方へ流動することにより、表示パネルの上半面と下半面において色ムラが生じる「重力不良」と呼ばれる欠陥が発生することがあり、大きな問題となっていた。この「重力不良」の現象は、バックライトより発生する熱によって液晶セル内の液晶が膨張してセルギャップを押し広げ、その際にカラムスペーサから基板が浮き上がってしまい、このスペーサによって保持されなくなった体積分の液晶が重力によって下方への流動することにより生じると考えられる。
【0006】
このような「重力不良」を解消するためには、バックライトより発生する熱によって液晶セル内の液晶が膨張してセルギャップを押し広げる際に、いったん圧縮されていたカラム
スペーサを圧縮変形からの弾性回復によりセルギャップの変化に追随できるようにし、基板とカラムスペーサとの間に隙間が生じないようにすれば解決可能であると考えられる。しかし、従来の方法では、カラムスペーサに高い変形回復力を持たせるためには、カラムスペーサを形成する樹脂を高度に架橋し圧縮時に塑性変形を起こりにくくする必要があるところ、このような高度な架橋構造を有する樹脂は一般的に圧縮弾性率が高く、硬くなってしまう傾向にある。このような硬い樹脂によりカラムスペーサを形成した場合には、カラムスペーサを圧縮変形させる課程において、大きな圧力が必要であり、得られた液晶表示素子においては、圧縮されたカラムスペーサによる液晶セルを押し広げようとする大きな力を内包することになる。このようなカラムスペーサが液晶セルを押し広げようとする力が大きい場合、低温時に液晶セル内の液晶の体積収縮が起こると液晶セル内の内圧が急激に低下して気泡が発生する「低温発泡」という現象を生じてしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2001−91954号公報
【特許文献2】特開2001−159707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、液晶表示素子の製造に使用するカラムスペーサとして用いた際に、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、該カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明1は、液晶表示素子のカラムスペーサを製造するために用いるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物であって、反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、及び、光反応開始剤を含有し、前記反応性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体は、下記式(1)及び/又は(2)で表される構造単位を有するカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物である。
【化1】

式(1)及び(2)中、Xは、水素又はメチル基を表し、Rは、原子数10以上の主鎖構造を有し、エーテル結合、ウレタン結合及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも一の結合が含まれていてもよい炭化水素鎖を表す。
【0009】
本発明2は、液晶表示素子のカラムスペーサを製造するために用いるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物であって、反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、及び、光反応開始剤を含有し、前記反応性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体は、下記式(3)で表される構造単位を有するカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物である。
【化2】

式(3)中、Xは、水素又はメチル基を表し、Rは、6原子以上の主鎖構造を有し、エーテル結合、ウレタン結合及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも一の結合が含まれていてもよい炭化水素鎖を表す。
【0010】
本発明3は、液晶表示素子のカラムスペーサを製造するために用いるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物であって、反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、及び、光反応開始剤を含有し、前記反応性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体は、重量平均分子量1万以上のホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下である反応性単量体が30〜90重量%共重合されてなるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、カラムスペーサ用硬化性樹脂として、特定の構造の反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体と、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物とを併用することにより、優れた柔軟性と高い圧縮回復特性とを有するカラムスペーサを得ることができ、このようなカラムスペーサによれば加熱時の液晶の膨張による「重力不良」と、低温時の液晶の収縮による「低温発泡」とを同時に抑制可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
なお、本発明者らは、上記知見に基づき本発明1〜3のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を完成させたが、本発明1〜3における反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体以外の構成要素は、いずれも同様のものが挙げられる。従って、以下の説明では、まず、本発明1〜3のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物における反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体についてそれぞれ説明し、その他の本発明1〜3のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物に共通する構成要素については、「本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物」の構成要素としてまとめて説明する。
【0013】
本発明1のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、液晶表示素子のカラムスペーサを製造するために用いるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物であって、反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、及び、光反応開始剤を含有し、上記反応性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体は、上記式(1)及び/又は(2)で表される構造単位を有する。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0014】
本発明1のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物において、上記反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、上記式(1)及び/又は(2)に示す構造単位
を有する。
上記式(1)及び(2)において、Xは、水素又はメチル基を表し、Rは、10原子以上の主鎖構造を有する炭化水素鎖を表す。
上記「主鎖構造」とは、式(1)及び(2)に示す構造単位おいてRに結合している酸素−炭素間を結ぶ直鎖のことをいい、「10原子以上の主鎖構造」とは、上記主鎖構造を構成する原子のうち、直鎖の形成に直接関与している原子の数が10以上であることをいう。
【0015】
本発明1のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物において、上記式(1)及び(2)で表される構造単位のRは、エーテル結合、ウレタン結合及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも一の結合を含む炭化水素鎖であってもよい。なかでも、上記式(1)及び(2)で表される構造体中のRにウレタン結合有する場合、上記式(1)及び(2)で表される構造単位は非常に柔軟性に優れたものとなり、本発明1のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサに高い架橋性を保ったまま優れた柔軟性を付与することができる。
図1(a)〜(d)に上記式(1)及び(2)に示す単位構造におけるRの具体例を示す。なお、図1(a)〜(d)において、丸付数値は直鎖の形成に直接関与する原子を示し、(a)は、Rがアルキル鎖である場合、(b)は、Rがエーテル結合を有する場合、(c)は、Rがウレタン結合を有する場合、及び、(d)は、Rがエステル結合を有する場合を示す。
【0016】
なお、本発明1のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物において、上記式(1)及び/又は(2)に示す構造単位におけるRは、図1に示す構造に限定されることはなく、例えば、上記主鎖構造におけるエーテル結合、ウレタン結合及びエステル結合の結合位置が図1に示した位置と異なっていてもよく、上記エーテル結合、ウレタン結合又はエステル結合がR中に複数個存在してもよく、更に、異なる種類の結合が任意の組み合わせで存在してもよい。
【0017】
上記主鎖構造が10原子未満であると、本発明1のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサの柔軟性が不充分となり、該カラムスペーサを用いた液晶表示素子に低温発泡を生ずることなく重力不良による色むらが発生することを抑制することができなくなる。これは、上記式(1)及び/又は(2)で表される構造単位の末端にある反応性官能基(不飽和二重結合を有する官能基及び/又はエポキシ基)が反応して架橋構造の中に取り込まれ、高度な架橋構造の中に柔軟性を与える長い直鎖構造が形成されるからであると考えられる。
上記主鎖構造の原子数の上限は特にないが、本発明1のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサの実用的な柔軟性を考慮すると、40である。
【0018】
上記反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体における上記式(1)及び/又は(2)で表される構造単位の構成比率としては特に限定されないが、好ましい下限は5重量%、好ましい上限は60重量%である。5重量%未満であると、上記反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体の架橋が不充分となり、本発明1のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサの柔軟性や圧縮回復性が低くなって、該カラムスペーサを用いた液晶表示素子に低温発泡を生ずることなく重力不良による色むらが発生することを抑制することができないことがある。60重量%を超えると、本発明1のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物のアルカリ可溶性が不充分となることがある。より好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は50重量%である。
【0019】
上記反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、例えば、側鎖に
水酸基又はカルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体に、一方の末端に不飽和二重結合を有する官能基又はエポキシ基を有し、他方の末端に、上記側鎖に水酸基又はカルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体と反応しうる官能基を有する多官能性化合物を反応させて、上記(メタ)アクリル共重合体の水酸基又はカルボキシル基の一部を変性して構造単位の一部を上記式(1)及び/又は(2)で表される構造単位とすることにより得ることができる。
【0020】
上記側鎖に水酸基又はカルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体は、水酸基又はカルボキシル基含有単官能不飽和化合物と、(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを、ラジカル重合開始剤及び必要に応じて分子量調節剤を用いて塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、乳化重合等の従来公知の方法により共重合することにより得ることができる。
【0021】
上記水酸基含有単官能不飽和化合物としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートや、「プラクセルFM」、「プラクセルFA」(いずれも、ダイセル化学工業社製)等が挙げられる。
【0022】
上記カルボキシル基含有単官能不飽和化合物としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
【0023】
上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等が挙げられる。
【0024】
上記一方の末端に不飽和二重結合を有する官能基又はエポキシ基を有し、他方の末端に、上記側鎖に水酸基又はカルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体と反応しうる官能基を有する多官能性化合物としては特に限定されず、例えば、2−(メタ)アクリロイルエチルイソシアネート等の(メタ)アクリル基とイソシアネート基とを一分子内に有する化合物や、(メタ)アクリル酸グリシジル(「サイクロマーM100」、「サイクロマーA100」(ダイセル化学社製))等の(メタ)アクリル基とエポキシ基とを一分子内に有する化合物が挙げられる。
【0025】
本発明1のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物において、上記反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、上記式(1)及び/又は(2)で表される構造単位以外の重合性不飽和化合物由来の構造単位が含有された共重合体であってもよい。
上記重合性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等の(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;無水マレイン酸等の不飽
和ジカルボン酸無水物;フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミド、o−クロロフェニルマレイミド等の芳香族置換マレイミド;メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のアルキル置換マレイミド等が挙げられる。
【0026】
更に、本発明1のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体における上記式(1)及び/又は(2)で表される構造単位以外の構造単位は、後述する本発明2のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体を構成する式(3)で表される構造単位及び/又は後述する本発明3のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体を構成する重量平均分子量1万以上のホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下である反応性単量体であってもよい。
【0027】
本発明2のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、液晶表示素子のカラムスペーサを製造するために用いるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物であって、反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、及び、光反応開始剤を含有し、上記反応性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体は、上記式(3)で表される構造単位を有する。
【0028】
本発明2のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物において、上記反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、上記式(3)で表される構造単位を有する。
上記式(3)において、Xは、水素又はメチル基を表し、Rは、6原子以上の主鎖構造を有する炭化水素鎖を表す。
なお、上記「主鎖構造」とは、上述した本発明1のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体の説明において、式(1)及び(2)のRで説明した「主鎖構造」と同様の意味である。
【0029】
また、上記式(3)で表される構造単位のRは、エーテル結合、ウレタン結合及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも一の結合を含む炭化水素鎖であってもよい。なかでも、上記式(3)で表される構造体中のRにウレタン結合有する場合、上記式(3)で表される構造単位は非常に柔軟性に優れたものとなり、本発明2のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサに高い架橋性を保ったまま優れた柔軟性を付与することができる。これは、上記式(3)で表される構造単位の末端にあるカルボキシル基が反応して架橋構造の中に取り込まれ、高度な架橋構造の中に柔軟性を与える長い直鎖構造が形成されるからであると考えられる。
【0030】
上記式(3)で表される構造単位のRの具体例としては、上述した本発明1のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体の説明において、図1に示した式(1)及び(2)のRの具体例と同様のものが挙げられる。なお、本発明2のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物において、上記式(3)で表される構造単位のRは、図1に示す構造に限定されることはなく、例えば、上記主鎖構造におけるエーテル結合、ウレタン結合及びエステル結合の結合位置が図1に示した位置と異なっていてもよく、上記エーテル結合、ウレタン結合又はエステル結合がR中に複数個存在してもよく、更に、異なる種類の結合が任意の組み合わせで存在してもよい。
【0031】
上記主鎖構造が6原子未満であると、本発明2のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサの柔軟性が不充分となり、該カラムスペーサを用いた液晶表示素子に低温発泡を生ずることなく重力不良による色むらが発生することを抑制することができなくなる。
上記主鎖構造の原子数の上限は特にないが、本発明2のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサの実用的な柔軟性、及び、合成の容易さを考慮すると、20である。
【0032】
本発明2のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体における上記式(3)で表される構造単位の構成比率としては特に限定されないが、好ましい下限は5重量%、好ましい上限は30重量%である。5重量%未満であると、上記反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体の架橋が不充分となり、本発明2のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサの柔軟性や圧縮回復性が不充分となって、該カラムスペーサを用いた液晶表示素子に低温発泡を生ずることなく重力不良による色むらが発生することを抑制することができないことがある。30重量%を超えると、現像性が低下することがある。より好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は25重量%である。
【0033】
上記反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、例えば、上述した主鎖構造及びカルボキシル基を有する不飽和化合物と、(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを、ラジカル重合開始剤及び必要に応じて分子量調節剤を用いて塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、乳化重合等の従来公知の方法により共重合することにより得ることができる。
【0034】
上記主鎖構造及びカルボキシル基を有する不飽和化合物としては特に限定されず、例えば、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
【0035】
上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等が挙げられる。
【0036】
本発明2のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物において、上記反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、上記式(3)で表される構造単位以外の重合性不飽和化合物由来の構造単位が含有された共重合体であってもよい。
上記重合性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等の(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミド、o−クロロフェニルマレイミド等の芳香族置換マレイミド;メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のアルキル置換マレイミド等が挙げられる。
【0037】
更に、本発明2のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体における上記式(3)で表される構造単位以外の構造単位は、上述した本発明1のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体を構成する式(1)及び/若しくは(2)で表される構造単位並びに/又は後述する本発明3のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の反応性
官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体を構成する重量平均分子量1万以上のホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下である反応性単量体であってもよい。
【0038】
本発明3のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、液晶表示素子のカラムスペーサを製造するために用いるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物であって、反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、及び、光反応開始剤を含有し、上記反応性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体は、重量平均分子量1万以上のホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下である反応性単量体が30〜90重量%共重合されてなる。
なお、本明細書において、「ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)」は、示差走査熱量測定法(DSC)に基づいて測定される値を意味する。具体的には、特定の単官能単量体に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを3重量%となる割合で添加して溶解した後、5J/cmの紫外線を照射して重量平均分子量1万以上のホモポリマーを製造し、このホモポリマーのDSC測定(昇温速度20℃/min)を行い、示差熱曲線の2次転移点の温度をガラス転移温度(Tg)とする。
【0039】
本発明3のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物において、上記反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、重量平均分子量1万以上のホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下である反応性単量体が共重合されてなる。
上記重量平均分子量1万以上のホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下である反応性単量体としては特に限定されず、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸エトキシ−ジエチレングリコール、アクリル酸メトキシ−トリエチレングリコール、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸フェノキシ−ポリエチレングリコール、アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソミリスチル等が挙げられる。
【0040】
上記反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体における上記反応性単量体の共重合比の下限は30重量%、上限は90重量%である。30重量%未満であると、本発明3のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサの柔軟性が不充分となり、該カラムスペーサを用いた液晶表示素子に低温発泡を生ずることなく重力不良による色むらが発生することを抑制することができなくなる。90重量%を超えると、上記反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体の架橋が不充分となって、本発明3のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサに高い圧縮回復性が得られなくなったり、アルカリ可溶性が低下したりする。好ましい下限は35重量%、好ましい上限は80重量%である。
【0041】
また、本発明3のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、上記重量平均分子量1万以上のホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下である反応性単量体と、例えば、カルボキシル基含有単官能不飽和化合物及び不飽和二重結合を有する単官能化合物とを共重合することで得ることができる。
【0042】
上記カルボキシル基含有単官能不飽和化合物としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
【0043】
上記不飽和二重結合を有する単官能化合物としては特に限定されず、例えば、(メタ)ア
クリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体が挙げられる。
【0044】
また、上記反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体は、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミド、o−クロロフェニルマレイミド等の芳香族置換マレイミド;メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のアルキル置換マレイミド等からなる成分を含有してもよい。
【0045】
更に、本発明3のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物において、反応性官能基を有するアルカリ可溶(メタ)アクリル共重合体は、上記重量平均分子量1万以上のホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下である反応性単量体と、上述した本発明1のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体を構成する式(1)及び/若しくは(2)で表される構造単位並びに/又は上述した本発明2のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体を構成する式(3)で表される構造単位であってもよい。
【0046】
以下、本発明1〜3のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の共通する構成要素について説明する。
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含有する。
上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物としては特に限定されないが、例えば、多官能(メタ)アクリレート化合物が好適である。
【0047】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物の2官能のモノマーとしては、例えば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物の3官能のモノマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタン(メタ)アクリレートジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
また、上記多官能(メタ)アクリレート化合物の4官能以上のモノマーとしては、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
また、上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物として、多官能のエポキシアクリレート化合物、ウレタンアクリレート化合物も好適である。
【0051】
また、上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物としては、カプロラクトン変性された(メタ)アクリレート化合物であってもよい。上記カプロラクトン変性された(メタ
)アクリレート化合物を用いることで、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサは、圧縮変形からの高い回復性と、柔軟で低弾性率であることとを両立させることができる。
なお、カプロラクトン変性とは、(メタ)アクリレート化合物のアルコール由来部位と(メタ)アクリロイルオキシ基との間に、カプロラクトンの開環体又は開環重合体が導入されることを指す。また、カプロラクトン変性体とは、このようなカプロラクトン変性が施された化合物を意味する。
【0052】
上記(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性する具体的な方法としては特に限定されず、例えば、触媒の存在下に高温でアルコールとカプロラクトンとを反応させ、カプロラクトン変性アルコールを合成した後に、このカプロラクトン変性アルコールと(メタ)アクリル酸とを酸性触媒の存在下脱水溶媒を使用してエステル化反応させる方法や、(メタ)アクリル酸とカプロラクトンとを反応させ、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸を合成した後に、アルコールとエステル化反応させる方法等が挙げられる。
【0053】
上記カプロラクトン変性された(メタ)アクリレート化合物としては特に限定されないが、3官能のものとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタン(メタ)アクリレートジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性体が好適である。
また、上記カプロラクトン変性された(メタ)アクリレート化合物の4官能以上のものとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性体が好適である。
これらのエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0054】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物において、上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物は、上記カプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。カプロラクトン変性を行った分子内に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物は、一般にカプロラクトン変性を行わない化合物に比べて反応性が低下するため、分子内の官能基数が多いものが感度的に有利となるからである。
【0055】
上記カプロラクトン変性された3官能以上の(メタ)アクリレート化合物は、上述の方法により(メタ)アクリレート化合物をカプロラクトン変性して用いてもよいし、日本化薬社製の「KAYARAD DPCA−120」(カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、新中村化学工業社製の「NKエステル AD−TMP−4CL」(カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート)等の市販品を用いてもよい。
【0056】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物において、上記反応性官能を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体と上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物との配合比としては特に限定されないが、上記反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体100重量部に対する上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の配合量の好ましい下限は25重量部、好ましい上限は900重量部である。25重量部未満であると、充分に光硬化せずにフォトリソグラフィーによりカラムスペーサのパターンを形成することができないことがあり、900重量部を超えると、カラムスペーサを製造する際のアルカリ現像液への溶解性が不足し、現像性が不充分となることがある。より好ましい下限は50重量部、より好ましい上限は500重量部である。
【0057】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、光反応開始剤を含有する。
上記光反応開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンジル、チオキサントン及びこれらの誘導体等の従来公知の光反応開始剤を用いることができる。具体的には、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ミヒラーケトン、(4−(メチルフェニルチオ)フェニル)フェイルメタノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1(4−メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらの光反応開始剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0058】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物における上記光重合開始剤の配合量としては、上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物100重量部に対して好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が50重量部である。0.01重量部未満であると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物が光硬化しないことがあり、50重量部を超えると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてカラムスペーサを製造する際に、フォトリソグラフィーにおいてアルカリ現像できないことがある。より好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は20重量部である。
【0059】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、酸素による反応障害を軽減するために反応助剤が含有されていてもよい。このような反応助剤と水素引き抜き型の光反応開始剤とを併用することにより光照射したときの硬化速度を向上させることができる。
【0060】
上記反応助剤としては特に限定されず、例えば、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンテトラミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン系;トリ−n−ブチルホスフィン等のホスフィン系;s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルフィネート等のスルホン酸のもの等が挙げられる。これらの反応助剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、更に、2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有することが好ましい。上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物は、熱架橋剤として働き、このような2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有することで、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物に熱硬化性を付与することができる。
【0062】
上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物としては特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及び、これらのオリゴマーからなる多官能イソシアネートを、活性メチレン系、オキシム系、ラクタム系、アルコ−ル系等のブロック剤化合物によりブロック化することにより得られるものが挙げられる。これらの2以上のブロックイソシアネート基を有す
る化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
このような2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デュラネート17B−60PX、デュラネートE−402−B80T(以上、旭化成ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0064】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物に上記2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物が含有されている場合、その配合量としては、上記反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体100重量部に対して好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が50重量部である。0.01重量部未満であると、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物が充分に熱硬化しないことがあり、50重量部を超えると、得られる硬化物の架橋度が高くなりすぎて後述する弾性特性を満たさないことがある。より好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は20重量部である。
【0065】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、粘度を調整するために希釈剤により希釈されていてもよい。
上記希釈剤としては特に限定されず、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組との相溶性、塗工方法、乾燥時の膜均一性、乾燥効率等を考慮して選択すればよく、例えば、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組をスピンコーター、スリットコーター等を用いて塗工する場合には、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、エチルセルソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、イソプロピルアルコール等の有機溶媒が好適である。これらの希釈剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0066】
また、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、基板との密着性を向上させるためにシランカップリング剤等の従来公知の添加剤が含有されていてもよい。
【0067】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いれば、光硬化(及び熱硬化)させることにより圧縮変形からの高い回復性と、柔軟で低弾性率であることとを両立したカラムスペーサを製造することができる。このようなカラムスペーサを用いれば、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制した液晶表示素子を得ることができる。
【0068】
このような本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物は、硬化させたときの硬化物の25℃における15%圧縮時の弾性係数の好ましい下限が0.2GPa、好ましい上限が1.0GPaである。0.2GPa未満であると、軟らかすぎてセルギャップの保持が困難となることがあり、1.0GPaを超えると、硬すぎて基板貼り合わせ時にカラーフィルター層に突入してしまったり、回復に必要な充分な弾性変形が得られなかったりすることがある。より好ましい下限は0.3GPa、より好ましい上限は0.9GPaであり、更に好ましい下限は0.5GPa、更に好ましい上限は0.7GPaである。
【0069】
なお、本明細書において硬化物とは、光照射(及び加熱)により本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物をほぼ完全に硬化させたときの硬化物を意味する。ほぼ完全に硬化させる条件は、少なくとも、50mJ/cmの紫外線を照射し、更に、200〜250℃の温度で20分程度の熱処理を加えることによりほぼ完全に硬化させることできる。
また、本発明において15%圧縮とは、カラムスペーサの高さの変形率が15%となるように圧縮することを意味する。また、弾性係数及び回復率は、以下の方法により測定したものである。
即ち、まず、基板上に形成したカラムスペーサを10mN/sの荷重印加速度で圧縮し、初期高さHの85%に相当する高さになるまで圧縮する。ここで1mNの荷重を印加し
た際のカラムスペーサ高さをH、Hの85%に相当するカラムスペーサ高さをH、Hに達した時点での荷重をFとする。次いで、この荷重Fを5秒間保持し、定荷重での変形を与えた後、10mN/秒の荷重印加速度で負荷を取り除き弾性回復によるカラムスペーサ高さの回復変形を測定する。この間の圧縮変形が最大となった時点のカラムスペーサ高さをHとし、カラムスペーサの変形を回復する過程における1mNの荷重印可時のカラムスペーサ高さをHとする。弾性計数及び回復率は、下記式(1)及び下記式(2)により算出することができる。
【0070】
弾性係数E=F/(D×S) (1)
回復率R=(H−H)/(H−H)×100 (2)
【0071】
なお、式(1)中、Fは荷重(N)を表し、Dはカラムスペーサの高さの変形率=(H−H)/Hを表し、Sはカラムスペーサの断面積(m)を表す。
【0072】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、光反応開始剤、及び、必要に応じて添加される2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物、希釈剤等を従来公知の方法により混合する方法が挙げられる。
【0073】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてカラムスペーサを製造する方法としては特に限定されないが、例えば、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物をガラス基板上に塗工して塗膜を形成する塗膜形成工程と、得られた塗膜に所定のパターンが形成されたマスクを介して活性光線を照射し、上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と光反応開始剤とを反応させて光硬化させ光硬化物を得る光硬化工程と、上記光硬化工程後の光硬化物をアルカリ現像して所定のパターンを形成する現像工程とを有する方法が好適である。
【0074】
上記カラムスペーサの製造方法では、まず、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物をガラス基板上に塗工して塗膜を形成する塗膜形成工程を行う。塗工の方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート、スリットコート、スプレーコート、ディップコート、バーコート等の従来公知の塗工法を用いることができる。塗工した後、一定時間乾燥させることにより塗膜が形成される。
【0075】
次いで、得られた塗膜上に、所定のパターンが形成されたマスクを介して紫外線等の活性光線を照射し、光照射部において、上記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と光反応開始剤とを反応させて光硬化物を得る光硬化工程を行う。
上記活性光線の照射量としては、少なくとも、紫外線の場合で100mJ/cm以上であることが好ましい。100mJ/cm未満であると、光硬化が不充分で現像工程においてアルカリ処理したときに露光部まで溶解しパターンが形成されないことがある。
【0076】
次いで、光硬化工程後の光硬化物をアルカリ現像して所定のパターンを形成する現像工程を行う。現像方法としては特に限定されず、水酸化カルシウム等のアルカリ溶液で未露光部分を溶解した後、純水で洗浄する等の従来公知の方法を用いることができる。
【0077】
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物が2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有する場合には、更に、現像工程後のパターン化された光硬化物を加熱することにより、上記反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体と、2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物とが反応する。
上記加熱の条件としては、上記パターンの大きさや厚さ等を考慮して適宜決定すればよい
が、少なくとも、200℃、20分間以上であることが好ましい。
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサもまた、本発明の1つである。
【0078】
本発明のカラムスペーサは、その高さをセルギャップより若干高くなるように設計して、ODF法等の従来公知の方法により製造することにより、低温発泡を生ずることなく重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制することができる液晶表示素子を得ることができる。
本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、又は、本発明のカラムスペーサを用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0079】
本発明によれば、液晶表示素子の製造に使用するカラムスペーサとして用いた際に、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、該カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0080】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0081】
(実施例1)
(1)反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体の合成
3Lのセパラブルフラスコに、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル60重量部を仕込み、窒素雰囲気下にて90℃に昇温した後、メタクリル酸6.0重量部、メタクリル酸メチル13重量部、メタクリル酸ブチル13重量部、プラクセルFM−2D(ダイセル化学社製)8重量部、アゾビスバレロニトリル2.0重量部を、3時間かけて連続的に滴下供給した。その後、90℃で30分間保持した後、温度を105℃に昇温し、3時間重合を継続して式(1)に示す構造単位を有する反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液を得た。
得られた共重合体溶液に対し、ラウリン酸ジブチル錫0.10重量部、ヒドロキノン0.05重量部を仕込み、40℃に昇温した後、2−アクロイルエチルイソシアネート(昭和電工社製、カレンズAOI)3.2重量部(共重合体溶液中に含まれる水酸基量に相当)を2時間かけて滴下し、更に40℃で3時間熟成した。
得られた共重合体溶液をサンプリングし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により分子量を測定したところ、共重合体の重量平均分子量(Mw)は12300(PSt換算)、分子量分布(Mw/Mn)1.48であった。
【0082】
(2)カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の調製
得られた反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液100重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学製、「DPE−6A」)40重量部、光反応開始剤としてイルガキュアー907(チバスペシャリティケミカルズ社製)8重量部及びDETX−S(日本化薬製)8重量部、熱架橋剤としてデュラネート17B−60PX(旭化成ケミカルズ社製)8重量部、並びに、溶剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル120重量部を混合してカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製した。
【0083】
(3)カラムスペーサの製造
透明導電膜が形成されたガラス基板上に、得られたカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物をスピンコートにより塗工し、80℃、3分間乾燥して塗膜を形成した。得られた塗膜に、
30μm角のドットパターンマスクを介して200mJ/cmの強度で紫外線を照射した。0.04%KOH溶液により60秒現像した後、純水にて30秒間洗浄して、断面形状が30μm×30μm(断面積900μm)、高さが5.0μmのカラムスペーサを得た。
【0084】
(4)液晶表示素子の製造
得られたカラムスペーサが形成されたガラス基板上に、シール剤(積水化学工業社製)を長方形の枠を描く様にディスペンサーで塗布した。続いて、液晶(チッソ社製、JC−5004LA)の微小滴をガラス基板の枠内全面に滴下塗布し、すぐに他方のガラス基板を重ねあわせてシール部に高圧水銀ランプを用い紫外線を50mW/cmで60秒照射した。その後、液晶アニールを120℃にて1時間行い熱硬化させ、液晶表示素子を作製した。
【0085】
(実施例2)
実施例1で得られた反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液100重量部、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬社製、「DPCA―120」)80重量部、光反応開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、「イルガキュアー369」)10重量部、及び、溶剤としてジエチレングリコールジメチルエーテル120重量部を混合してカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製し、更に、実施例1と同様にして液晶表示素子を製造した。
【0086】
(実施例3)
実施例1におけるプラクセルFM−2D(ダイセル化学社製)の代わりに、プラクセルFM−5(ダイセル化学社製)を用い、2−アクロイルエチルイソシアネート(昭和電工社製、カレンズAOI)の添加量を1.6重量部とした以外は、実施例1と同様にして、アルカリ可溶(メタ)アクリル共重合体を合成した。得られたアルカリ可溶(メタ)アクリル共重合体の分子量をGPCで測定したところ、重量平均分子量(Mw)11300(PSt換算)、分子量分布(Mw/Mn)1.52であった。
【0087】
得られた反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製し、その後、実施例1と同様にして液晶表示素子を製造した。
【0088】
(実施例4)
3Lのセパラブルフラスコに、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル60重量部を仕込み、窒素雰囲気下にて90℃に昇温した後、2−アクリロイロキシエチルコハク酸(新中村化学社製、NKエステルA−SA)10.0重量部、メタクリル酸メチル15重量部、メタクリル酸ブチル15重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル4.0重量部、アゾビスバレロニトリル2.0重量部を、3時間かけて連続的に滴下供給した。その後、90℃で30分間保持した後、温度を105℃に昇温し、3時間重合を継続した。得られた共重合体溶液に対し、ラウリン酸ジブチル錫0.10部、ヒドロキノン0.05部を仕込み、40℃に昇温した後、2−アクロイルエチルイソシアネート(昭和電工社製、カレンズAOI)4.4部を2時間かけて滴下し、更に40℃で3時間熟成し、式(3)に示す構造単位を有する反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液を得た。
得られた共重合体溶液をサンプリングし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により分子量を測定したところ、共重合体の重量平均分子量(Mw)は11500(PSt換算)、分子量分布(Mw/Mn)1.43であった。
【0089】
得られた反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液を用いた以
外は、実施例1と同様にしてカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製し、その後、実施例1と同様にして液晶表示素子を製造した。
【0090】
(実施例5)
3Lのセパラブルフラスコに、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル60重量部を仕込み、窒素雰囲気下にて90℃に昇温した後、メタクリル酸(MAA)6.0重量部、メタクリル酸n−ブチル(n−BMA)15重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル(2−EHA、ガラス転移温度:−85℃)15重量部、及び、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)4.0重量部を、3時間かけて連続的に滴下供給した。なお、2−EHAのガラス転移温度は、分子量1万以上のホモポリマーとしたときのガラス転移温度とした。
その後、90℃で30分間保持した後、温度を105℃に昇温し、3時間重合を継続し、反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液を得た。
得られた共重合体溶液をサンプリングし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により分子量を測定したところ、共重合体の重量平均分子量(Mw)は12200(PSt換算)、分子量分布(Mw/Mn)1.51であった。
【0091】
得られた反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製し、その後、実施例1と同様にして液晶表示素子を製造した。
【0092】
(実施例6)
3Lのセパラブルフラスコに、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル60重量部を仕込み、窒素雰囲気下にて90℃に昇温した後、メタクリル酸(MAA)6.0重量部、メタクリル酸n−ブチル(n−BMA)15重量部、メタクリル酸n−ラウリル(LMA、ガラス転移温度:−65℃)15重量部、及び、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)4.0重量部を、3時間かけて連続的に滴下供給した。なお、LMAのガラス転移温度は、分子量1万以上のホモポリマーとしたときのガラス転移温度とした。その後、90℃で30分間保持した後、温度を105℃に昇温し、3時間重合を継続し、反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液を得た。
得られた共重合体溶液をサンプリングし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により分子量を測定したところ、共重合体の重量平均分子量(Mw)は10900(PSt換算)、分子量分布(Mw/Mn)1.42であった。
【0093】
得られた反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製し、その後、実施例1と同様にして液晶表示素子を製造した。
【0094】
(比較例1)
実施例1におけるプラクセルFM−2Dの代わりに、メタクリル酸メチルを使用した以外は実施例1と同様にして、アルカリ可溶(メタ)アクリル共重合体を合成した。得られたアルカリ可溶(メタ)アクリル共重合体の分子量をGPCで測定したところ、重量平均分子量(Mw)13500(PSt換算)、分子量分布(Mw/Mn)1.50であった。得られた反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製し、その後、実施例1と同様にして液晶表示素子を製造した。
【0095】
(比較例2)
実施例4における2−アクリロイロキシエチルコハク酸の代わりに、メタクリル酸を使用した以外は実施例4と同様にして、アルカリ可溶(メタ)アクリル共重合体を合成した。
得られたアルカリ可溶(メタ)アクリル共重合体の分子量をGPCで測定したところ、重量平均分子量(Mw)12200(PSt換算)、分子量分布(Mw/Mn)1.61であった。
得られた反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製し、その後、実施例1と同様にして液晶表示素子を製造した。
【0096】
(比較例3)
実施例5におけるアクリル酸2−エチルヘキシルの代わりに、メタクリル酸メチルを使用した以外は、実施例4と同様にして、アルカリ可溶(メタ)アクリル共重合体を合成した。得られたアルカリ可溶(メタ)アクリル共重合体の分子量をGPCで測定したところ、重量平均分子量(Mw)11200(PSt換算)、分子量分布(Mw/Mn)1.53であった。
得られた反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体溶液を用いた以外は、実施例1と同様にしてカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を調製し、その後、実施例1と同様にして液晶表示素子を製造した。
【0097】
(カラムスペーサの評価)
温度25℃に調整した室内において、実施例1〜6及び比較例1〜3で得られたカラムスペーサを10mN/sの荷重印加速度で圧縮し、初期高さHの85%に相当する高さになるまで圧縮した。ここで10mNの荷重を印加した際のカラムスペーサ高さをH、Hの85%に相当するカラムスペーサ高さをH、Hに達した時点での荷重をFとした。次いで、この荷重Fを5秒間保持し、定荷重での変形を与えた後、10mN/秒の荷重印加速度で負荷を取り除き弾性回復によるカラムスペーサ高さの回復変形を測定した。この間の圧縮変形が最大となった時点のカラムスペーサ高さをHとし、カラムスペーサの変形を回復する過程における10mNの荷重印可時のカラムスペーサ高さをHとした。得られた各値を用いて、式(1)及び式(2)により15%圧縮時の弾性係数及び15%圧縮変形したときの回復率を算出した。
【0098】
弾性係数E=F/(D×S) (1)
回復率R=(H−H)/(H−H)×100 (2)
【0099】
(液晶表示素子の評価)
実施例1〜6及び比較例1〜3で得られた液晶表示素子を点灯表示し、セルギャップの均一性を表示画面を目視にて観察して、以下の基準により評価した。次に、各液晶表示素子を垂直に立てた状態で、60℃の条件下にて2日間放置した。放置後、目視により表示画像を観察し、重力不良の発生について以下の基準により評価した。
セルギャップの評価
〇:均一
×:色ムラあり
重力不良の評価
〇:均一
×:色ムラあり
【0100】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明によれば、液晶表示素子の製造に使用するカラムスペーサとして用いた際に、低温発泡を生ずることなく、重力不良による色ムラの発生を効果的に抑制できるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、該カラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなるカラムスペーサ及び液晶表示素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】(a)〜(d)は、本発明のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物の反応性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体の構造単位の一例を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示素子のカラムスペーサを製造するために用いるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物であって、
反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、及び、光反応開始剤を含有し、
前記反応性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体は、下記式(1)及び/又は(2)で表される構造単位を有する
ことを特徴とするカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。
【化1】

式(1)及び(2)中、Xは、水素又はメチル基を表し、Rは、10原子以上の主鎖構造を有し、エーテル結合、ウレタン結合及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも一の結合が含まれていてもよい炭化水素鎖を表す。
【請求項2】
液晶表示素子のカラムスペーサを製造するために用いるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物であって、
反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、及び、光反応開始剤を含有し、
前記反応性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体は、下記式(3)で表される構造単位を有する
ことを特徴とするカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。
【化2】

式(3)中、Xは、水素又はメチル基を表し、Rは、6原子以上の主鎖構造を有し、エーテル結合、ウレタン結合及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも一の結合が含まれていてもよい炭化水素鎖を表す。
【請求項3】
液晶表示素子のカラムスペーサを製造するために用いるカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物であって、
反応性官能基を有するアルカリ可溶性(メタ)アクリル共重合体、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、及び、光反応開始剤を含有し、
前記反応性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体は、重量平均分子量1万以上のホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下である反応性単量体が30〜90重量%共重合されてなる
ことを特徴とするカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
硬化させたときの硬化物が、25℃における15%圧縮時の弾性係数が0.2〜1.0GPaであることを特徴とする請求項1、2又は3記載のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
更に、2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物を用いてなることを特徴とするカラムスペーサ。
【請求項7】
請求項1、2、3、4又は5記載のカラムスペーサ用硬化性樹脂組成物、又は、請求項6記載のカラムスペーサを用いてなることを特徴とする液晶表示素子。

【図1】
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【公開番号】特開2006−267966(P2006−267966A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90008(P2005−90008)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】