説明

カラーフィルタの検査方法および検査装置ならびにカラーフィルタ

【課題】インクジェット方式により着色されたカラーフィルタの検査方法において、ハーフ白抜け欠陥等の膜厚不足を引き起こしているカラーフィルタ画素を判定する検査方法を提供すること。
【解決手段】カラーフィルタの表面に対して斜め方向に照明し、その反射光を撮像手段にて入力した画像の中に輝度が異常となる部分を有するカラーフィルタ画素を検出することができる検査方法であって、高輝度の異常部がカラーフィルタ画素の長辺方向または短辺方向に略連続している場合に、該当画素に膜厚不足の欠陥が発生していると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式により製造されたカラーフィルタの検査方法およびカラーフィルタの検査装置ならびにカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラーフィルタの製造コストを下げるために、基板サイズの大型化が進んでおり、また、製造方式として、従来のフォトリソグラフィ工程を繰り返す顔料分散法ではインクの使用量が多いため、さらなるコストダウン化のためにインクの使用量の少ないインクジェット装置を用いた方法が開発されている。
【0003】
インクジェット方式によりカラーフィルタの製造を行う際に、インクジェットヘッドにおいてノズル詰まりやヘッド内への空気異物の混入が発生すると不吐出が発生し、その結果カラーフィルタ上にハーフ白抜け欠陥が発生する。ここでハーフ白抜け欠陥とは、一画素内全体に着色層が薄くなった状態の膜厚不足の欠陥を指している。この欠陥は、インクジェットヘッドの不調により多数発生する恐れがあり、製品の良品率を下げる大きな要因となる。そこで、ハーフ白抜け欠陥を早い段階で正確に検出し、インクジェットヘッドのメンテナンスを行うことによって欠陥品の発生を抑制することが求められている。
【0004】
カラーフィルタの検査方法としては、特許文献1に開示されているように、カラーフィルタを光源により照明し、その透過光および反射光を撮像手段にて撮影して得られた信号を画像処理することによって、欠陥を検出するカラーフィルタの欠陥検査装置および欠陥検査方法が提案されている。
【0005】
フォトリソ方式で作成されたカラーフィルタにおいては、各着色フィルタ上の異物、レジストカス等は反射照明による検査において輝度値あるいは明度値が正常部より低くなることから反射系黒色欠陥として、また、各着色フィルタの白抜け(ピンホール)等は透過照明による検査において輝度値あるいは明度値が正常部より高くなることから透過系白色欠陥として、それぞれ抽出される。なお、輝度値(輝度)は、撮像手段に入力する光による画像の明るさを一般に表現し、明度値(明度)は、対象物が選択的に光を通す/または反射することによる明るさに注目した表現であるが、カラーフィルタの検査に関しては、類似の意味を表すので、以下の文では、輝度という表現に統一する。
【0006】
インクジェット方式で製造されたカラーフィルタにおいては、前記欠陥に加えて上述のハーフ白抜け欠陥も検出を行う必要があるが、前記記載の方法ではハーフ白抜け欠陥を抽出できない。
【特許文献1】特開2003−344299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みて成されたものであり、その課題とするところは、インクジェット方式により着色されたカラーフィルタの検査方法において、ハーフ白抜け欠陥等の膜厚不足を引き起こしているカラーフィルタ画素を判定する検査方法を提供することである。また、本発明の他の課題は、膜厚不足のカラーフィルタ画素の発生状況により、インクジェットヘッドの一部の不吐出を発見して対処する手段を提供することである。
【0008】
また、本発明の他の課題は、インクジェット方式により着色されたカラーフィルタの検査装置において、ハーフ白抜け欠陥を検出することができるカラーフィルタの検査装置を
提供することである。また、本発明の他の課題は、インクジェット方式により着色されたカラーフィルタにおいて、ハーフ白抜け欠陥を検出することができるカラーフィルタの検査方法を使用して製造されたカラーフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、インクジェット方式により製造されたカラーフィルタの検査方法において、該カラーフィルタの表面に対して斜め方向に照明し、その反射光を撮像手段にて入力した画像の中に輝度が異常となる部分を有するカラーフィルタ画素を検出することができる検査方法であって、高輝度の異常部がカラーフィルタ画素の長辺方向または短辺方向に略連続している場合に、該当画素に膜厚不足の欠陥が発生していると判定することを特徴とするカラーフィルタの検査方法。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の検査方法において、前記入力した画像の中に輝度が異常となる部分を有するカラーフィルタ画素の輝度の異常部がカラーフィルタ画素の長辺方向および短辺方向のいずれにも殆ど連続しない場合に、該当画素に膜厚不足以外の欠陥が発生していると判定することを特徴とするカラーフィルタの検査方法である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の検査方法において、カラーフィルタ画素の前記高輝度の異常部の複数個が離れて一画素内に存在する場合で、前記高輝度の異常部どうしの隙間が許容範囲内の場合には、前記高輝度の異常部を連結させる画像処理を行って新たな高輝度の異常部として判定することを特徴とするカラーフィルタの検査方法である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか記載の検査方法において、カラーフィルタ画素の前記高輝度の異常部が一画素内に前記カラーフィルタ画素の長辺方向または短辺方向に同一方向の複数の直線形状に存在する場合で、上記直線間の距離が許容範囲内であれば、該許容範囲内の複数の直線形状の高輝度の異常部を同一直線形状に存在するとみなすことを特徴とするカラーフィルタの検査方法である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか記載の検査方法において、膜厚不足の欠陥発生画素が、インクジェットヘッドの塗布方向に複数個連続している場合に、ヘッドの吐出量不足であると判定し、インクジェット装置にメンテナンス指示を行うことを特徴とするカラーフィルタの検査方法である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、インクジェット方式により製造されたカラーフィルタの検査装置において、該カラーフィルタの表面に対して斜め方向に照明する手段と、その反射光を撮像する手段を設置し、入力した画像の中に輝度が異常となる部分を有するカラーフィルタ画素を検出する手段を設けた検査装置であって、高輝度の異常部がカラーフィルタ画素の長辺方向または短辺方向に略連続している場合に、該当画素に膜厚不足の欠陥が発生していると判定する手段を備えたことを特徴とするカラーフィルタの検査装置である。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の検査装置において、膜厚不足の欠陥が発生したと判定した場合に該当するカラーフィルタを不良品として判定することを特徴とするカラーフィルタの検査装置である。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか記載の検査方法を使用して製造されたカラーフィルタである。
【発明の効果】
【0017】
上記請求項1に係る発明によれば、インクジェット方式で吐出された各画素毎の着色イ
ンク層において、ハーフ白抜け欠陥等の膜厚不足を引き起こしている画素を検出することができる。
【0018】
上記請求項2に係る発明によれば、上記請求項1に記載の方法で検出されるものと同類の輝度の異常であっても画素内で連続性が乏しい場合には膜厚不足以外の欠陥が発生していると判定することができるので、膜厚不足の欠陥画素とその他の欠陥画素とを明確に区別することができる。
【0019】
上記請求項3または4に係る発明によれば、前記高輝度の異常部がカラーフィルタ画素内で出現する形態に応じて、その画像の捉え方の基準を与えることができるので、上記膜厚不足を引き起こしているカラーフィルタ画素の判定を標準化して容易にすることができる。
【0020】
上記請求項5に係る発明によれば、膜厚不足のカラーフィルタ画素の発生状況により、インクジェットヘッドの一部の不吐出を発見することができるため、不吐出が発生したカラーフィルタの下流への流出を防ぐことが可能である。またインクジェット工程の直後に検査工程を設置することにより、上記インクジェットヘッドの一部の不吐出という不具合が発生した時には速やかにインクジェットヘッドのメンテナンスの指示を送り、ヘッドの不具合を早期に復旧することに繋げることが出来るため、製造工程全体の安定維持に資するものである。
【0021】
上記請求項6に係る発明によれば、インクジェット方式により着色されたカラーフィルタの検査装置において、ハーフ白抜け欠陥等の膜厚不足のカラーフィルタ画素を検出するカラーフィルタの検査装置を提供することができるので、不吐出が発生したカラーフィルタの下流への流出を防ぐことが可能である。またインクジェット工程の直後に本発明の検査装置を設置、稼動することにより、不具合発生時には速やかにインクジェットヘッドのメンテナンスの指示を送り、ヘッドの不具合を早期に復旧することに繋げることが出来るため、製造工程全体の安定維持に資するものである。
【0022】
上記請求項7に係る発明によれば、インクジェット方式により着色されたカラーフィルタの検査装置において、ハーフ白抜け欠陥等の膜厚不足のカラーフィルタ画素を検出するカラーフィルタの検査装置を提供することができ、カラーフィルタの不良品としての判定を速やかに行うことができるので、不良カラーフィルタの下流への流出を防ぐとともに、製造工程全体の効率を高めることが可能である。
【0023】
上記請求項8に係る発明によれば、インクジェットヘッドにおいて発生する不吐出の検出と判定を終えたカラーフィルタを提供できるため、不吐出起因の欠陥を有する不良のカラーフィルタの下流への流出を防ぐことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明に係るカラーフィルタの基材は任意のものであって良いが、ガラス基板の様に透明で平板状のものが好ましい。
【0025】
一般にカラーフィルタは、2次元平面上に分割形成された色別の領域を通して、色の分離機能を有し、色の分離または合成を行うために使用される部品であって、上記の分割形成された色別の領域を画素または着色画素と称する。例えば表示のための画素サイズは人間の視覚の適性に応じて、数十〜数百μm程度が多いが、これらの微細な着色画素間を光学的に仕切る黒表示物をブラックマトリクスと呼び、表示特性の向上のために使用される。
【0026】
インクジェット方式により製造されたカラーフィルタにおけるブラックマトリクスは着色画素間を光学的に仕切る本来の役割に加えて、着色インクの液滴を溜める堰を兼ねている。ブラックマトリクスの形状のタイプは、着色画素の1画素毎に四辺の仕切りを与えるセル形状タイプと、1方向に同色を連ねて色別の着色列を垂直方向に並べさせる規制を与えるためのストライプ形状タイプとに分けられるが、本発明の検査方法においては、セル形状タイプのブラックマトリクスを有するカラーフィルタの場合が特に好ましい。ストライプ形状タイプであると着色インクの流動により画素膜厚が平均化されるので、ヘッドノズルの一部の不吐出が検出しづらくなるからである。
【0027】
本発明のカラーフィルタに含まれる画素部は、インクジェット方式により吐出された着色インクの層であり、吐出直後の液状の着色インクをオーブンやホットプレートにより乾燥したものであることが望ましい。
【0028】
次に、図面を参照して本発明の検査方法と検査装置を説明する。図1は本発明の検査方法及び検査装置を説明する概念図である。
【0029】
図1において、1はインクジェット方式により塗布されたカラーフィルタを示している。このカラーフィルタはステージ11上に載置されており、四角形の表面を有するガラス基板上には先行してブラックマトリクスが形成されており、この表面の一辺から対向する辺に向けてインクジェット方式により塗り分けられた着色層を設けたもので、2で示す一点鎖線は不吐出によるハーフ白抜け欠陥の列を模式的に示している。
【0030】
カラーフィルタ1を載置するステージ11としては任意のもので良いが、ステージ表面からの反射ノイズ光を防ぐため、表面黒色のステージを用いることが望ましい。例えば、表面をアルマイト処理して黒色としたアルミニウム製のステージである。
【0031】
カラーフィルタ1の載置・固定は、例えば、ステージ11の上面に真空吸着機構を設けて、この機構によって吸着することによって載置・固定することが可能である。また、リフタを使用してステージ上方の中空位置に固定しても良く、クランプによってカラーフィルタ1の端面を把持することによりステージ上方の中空位置に固定することも可能である。このように中空位置に固定することによって、ステージ表面からの反射ノイズ光を防ぐことができる。
【0032】
また、図1中3は光源を示しており、10は撮像系を示している。撮像系10を構成する4はレンズ、5はカメラである。光源3から射出した照明光8は、カラーフィルタ1の表面で反射され、この反射光9がレンズ4を通してカメラ5に入射する。カメラとして通常はラインカメラを使用する。
【0033】
また、図1中、下部のブロック矢印はステージ11の移動を示しており、図示しない駆動装置を移動手段として直線状にステージを移動させることができる。このステージ移動に伴い、前記カラーフィルタ1も同じ方向に移動する。この移動は相対的なものであって、ステージ11を移動させる代わりに、光源3と撮像系10を移動させても良い。なお、移動手段としては、上記とは垂直方向の平面移動も適宜加えて周知の手段を利用できる。
【0034】
このように、カラーフィルタ1と撮像系10を相対的に移動させながら、前記光源3から照明光8を照射し、カメラ5によってその反射光9の強度を測定する。なお、照明光8のカラーフィルタ1への照射は、カラーフィルタ表面に対して一定の角度を保って斜め方向から照射することが望ましく、撮像系10は、上記照明光8のカラーフィルタ1の表面での鏡面反射される反射光9を中心に捉える角度に設定する。
【0035】
照明光8により測定色に近い波長の反射光9の強度を測定するため、光源3としては、白色LED、ハロゲンランプあるいは測定色付近に波長のピークを持つ単色LEDを使用することが望ましい。
【0036】
カメラ5としては、カラーのラインカメラが好ましく利用できるが、白黒のカメラであっても良い。また、カメラとしては分解能20μm以上の高感度カメラを使用することが望ましい。
【0037】
反射光9の強度をカメラ5で捉えた結果の出力はA/D変換によりデジタル信号化され、256階調の輝度値または明度値に変換される。以降、輝度値に限定して測定例を示す。
【0038】
前述の検査方法により、着色層が正常に形成されたカラーフィルタ画素の通常部と着色層が膜厚不足状態のハーフ白抜け部とのそれぞれの輝度値を比較測定すると、輝度値に差異が生じる。図2および図3を用いて、その検出原理を以下に説明する。
【0039】
図2は、本発明のハーフ白抜け欠陥を検出する原理を説明するために、通常部における光源からの照明光とその反射光、および撮像系との関係を示す概念図である。また、図3は、本発明のハーフ白抜け欠陥を検出する原理を説明するために、ハーフ白抜け部における光源からの照明光とその反射光、および撮像系との関係を示す概念図である。
【0040】
図2および図3に示すように、通常部6では着色インクの盛り量はハーフ白抜け部7より多く、インク表面の湾曲もハーフ白抜け部より大きくなる傾向がある。このため、図2では、光源3からの照明光8による反射光9が通常部6の表面で拡散傾向を有し、カメラ5の位置より外れる反射光の割合が大きくなるため、相対的に暗くなる。一方、ハーフ白抜け部7は図3に示すように、通常部6よりもインクの盛り量が少なく、インク表面の湾曲が小さくなり、結果として反射光9のインク表面での拡散傾向が小さいため、カメラ5に捕捉される反射光の割合が大きくなり、通常部より相対的に明るくなる。よって、画像処理後の輝度値も通常部よりハーフ白抜け部の方が高くなる。
【0041】
また、ハーフ白抜けが発生した場合には、インク表面の湾曲はカラーフィルタ画素の長辺方向または短辺方向に対し一様に小さくなり平坦面に近付くのに対して、カラーフィルタ画素の通常部6の場合には、インク表面の湾曲はカラーフィルタ画素の長辺方向より短辺方向に大きく湾曲する。従って、例えば照明光8と反射光9とを画素の長辺を含む平面を傾斜させる方向に設定した場合の方がそうでない方向に照射/反射させる場合より、ハーフ白抜けによる高輝度の異常部の検出は通常部での輝度値との比率が高くなるので、検出しやすくなり、上記高輝度の異常部はカラーフィルタ画素の長辺方向に連続して現れやすい。但し、例えば、照明光8と反射光9とを画素の短辺を含む平面を傾斜させる方向に設定しても、ハーフ白抜けによる高輝度の異常部の検出は感度は落ちるが可能であり、上記高輝度の異常部はカラーフィルタ画素の短辺方向に連続して現れることになる。
【0042】
上記ハーフ白抜け等の膜厚不足の欠陥の検出状況をさらに詳しく説明するために、図4を示す。図4は、本発明のハーフ白抜け欠陥を検出する状況を説明するために、カラーフィルタ画素内の高輝度の異常部の発生形態を示した模式図である。
【0043】
カラーフィルタはブラックマトリクス15によって区画された画素単位のそれぞれにRGB着色部(カラーフィルタ画素)14をインクジェットで液盛りして形成される。通常、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)が、図4の縦方向にカラーフィルタ画素14の一区画ずつ順次並び、繰り返し配列される。なお、図の横方向の区画の配列は左右の隣り合う画素と同色が続く場合と色が変わっていく場合とがあり、限定されない。
【0044】
図4のRGB着色部(カラーフィルタ画素)14内に検出されるハーフ白抜けによる高輝度の異常部の代表例を12aで示す。カラーフィルタ画素14の区画の長辺方向にインクジェットヘッドのノズルを複数個並べて液滴を吐出する場合、特定の画素内に液滴を吐出するノズルの内、不吐出ノズルがあると、該当画素内の液滴の総量が通常部より減少し、膜厚不足のハーフ白抜け欠陥を生じる。ハーフ白抜け欠陥は、このような場合に、上述の高輝度の異常部12aとして捉えられる撮像画像が、画素内の略中央部に長辺方向に連続して現れ、欠陥の種類としては、該当画素全体としての膜厚不足を示すものである。なお、上述の高輝度の異常部として捉えられる撮像画像は、画素内の略中央部に長辺方向に連続して現れる例が最も一般的であるが、前述したとおり、照射光と反射光とのカラーフィルタ表面に対する傾斜の方向によっては、短辺方向に高輝度の異常部の撮像画像が連続出現する場合もある。
【0045】
膜厚不足のハーフ白抜け以外にも、基板内に異物が発生した場合や画素内の微小な凹凸により、欠陥13のようなハーフ白抜け以外による高輝度の異常部が発生する場合もあるが、この場合はランダムな位置に発生しやすく、画素の長辺方向または短辺方向に連続して発生することは少ない。また、上記ハーフ白抜け以外の輝度異常には、低輝度異常の撮像画像が出現することもあり、その場合も、輝度の大きさとその撮像画像の連続性の乏しさから、該当画素に膜厚不足以外の欠陥が発生していると判定することができる。
【0046】
上記の各種の現象を実際に判定するに当たっては、通常部の輝度値とハーフ白抜け部の輝度値との間に閾値を設け、かつ、その閾値より高い輝度値を有する画像の箇所の位置座標が画素の長辺方向または短辺方向に連続する場合にハーフ白抜け等による膜厚不足の欠陥として扱うことができる。連続性については、任意に設定すればよいが、少なくともカラーフィルタ画素の一単位のサイズの30%以上の連続性が望ましい。または、長辺方向または短辺方向に連続する欠陥の長さについて閾値を設けることにより、一定の長さを上回るとハーフ白抜け等による膜厚不足の欠陥であると判定することも可能である。
【0047】
また、高輝度の異常部12bのように、ハーフ白抜けによる高輝度の異常部のうち、異常部の一部の位置にずれが生じたものもある。カラーフィルタ画素形状の微妙な変化により、画素の長辺方向に連続的に発生する高輝度の異常部の短辺方向の位置がずれて、代表例のような一本の直線形状から変化する場合もある。これは、高輝度の異常部が一画素内に前記カラーフィルタ画素の長辺方向に同一方向の複数の直線形状に存在する場合であって、上記直線間の距離が許容範囲内であれば、該許容範囲内の複数の直線形状の高輝度の異常部を同一直線形状に存在するとみなすことにより、12aのような高輝度の異常部の代表例と同様に捉え直すことができる。上記のようにみなすために必要な直線間の距離の許容範囲としては、任意に設定できるようにするが、例えば、カメラ画素の一単位を超え、カラーフィルタ画素の一単位のサイズの10%程度を限度とすることが望ましい。
【0048】
また、高輝度の異常部12cのように、ハーフ白抜けによる高輝度の異常部のうち、異常部どうしの位置が離れたものもある。上述のように、カラーフィルタ画素形状の微妙な変化により、高輝度の異常部の座標が長辺方向に連続せずに途切れてしまう場合もある。カラーフィルタ画素の前記高輝度の異常部の複数個が離れて一画素内に存在する場合で、前記高輝度の異常部どうしの隙間が設定する許容範囲内の場合には、前記高輝度の異常部を連結させる画像処理を行って新たな高輝度の異常部として判定する。上記設定する許容範囲としては、任意に設定できるようにするが、例えば、カメラ画素の一単位を超え、カラーフィルタ画素の一単位のサイズの10%程度を限度とすることが望ましい。
【0049】
また、インクジェット方式により塗布されたカラーフィルタにおいて、ヘッドノズルの一部からの不吐出が発生すると、インクジェット装置の塗布方向と同一方向にハーフ白抜
けとなる膜厚不足の欠陥を有するカラーフィルタ画素が連続発生する。図4において、インクジェットのヘッドノズルが図の横方向に並び、図の縦方向に順次塗布するとすると、膜厚不足の欠陥を有するカラーフィルタ画素が3行毎の同一色の塗布で連続して発生する。この現象を利用すると、画素の長辺方向または短辺方向に連続して発生した高輝度異常部により検出される膜厚不足の欠陥を有するカラーフィルタ画素が、インクジェット装置の塗布方向と同一方向に、同一色の画素で連続して発生すると、一部のノズルの不吐出起因によるインクジェットヘッドの吐出量不足が生じていると判定することができる。
【0050】
ノズルの不吐出欠陥が発生した場合には、該当基板を以降の工程に流さないように設定することができ、またその情報をインクジェット塗工機に送信することにより、インクジェットヘッドのメンテナンスを行うように指示することが可能となる。
【0051】
上述した検査方法を用いて、インクジェット方式により製造されたカラーフィルタの検査を行うための検査装置を提供することができる。該検査装置は、該カラーフィルタの表面に対して斜め方向に照明する手段と、その反射光を撮像する手段を設置し、入力した画像の中に輝度が異常となる部分を有するカラーフィルタ画素を検出する手段を設けた検査装置であって、高輝度の異常部がカラーフィルタ画素の長辺方向または短辺方向に略連続している場合に、該当画素に膜厚不足の欠陥が発生していると判定する手段を備えたものである。上記の検出および判定の手段には、付随して、判定に必要な設定値を入力する手段、判定結果を電気信号またはプリント出力の形で出力する手段、等も設置される。また、検査状況を把握するためのモニタも有用である。上記の各手段は、各種の検査装置において、個別手段毎に多く用いられており、容易に採用することができる。
【0052】
また、カラーフィルタの欠陥検査において、一般的には、欠陥の種類と大きさ、発生頻度に応じて、検査後の処置を選択するように検査装置毎に判断基準を有するが、本発明のインクジェット方式のカラーフィルタにおいて膜厚不足が検出された場合には、欠陥の重大さと連続発生の傾向から、直ちに不良品と判定することが望ましい。
【0053】
上記の方法による検査方法を使用して製造されたカラーフィルタは、インクジェット方式による塗布工程における不吐出が原因で発生したハーフ白抜け欠陥の有無を検査されたものである。すなわち、インクジェットの不吐出の状況を正しく把握されたカラーフィルタであり、あるいは、必要に応じて良品または不良品の判定による選別仕分けが実施されたカラーフィルタである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の検査方法及び検査装置を説明する概念図である。
【図2】本発明のハーフ白抜け欠陥を検出する原理を説明するために、通常部における光源からの照明光とその反射光、および撮像系との関係を示す概念図である。
【図3】本発明のハーフ白抜け欠陥を検出する原理を説明するために、ハーフ白抜け部における光源からの照明光とその反射光、および撮像系との関係を示す概念図である 。
【図4】本発明のハーフ白抜け欠陥を検出する状況を説明するために、カラーフィルタ画素内のハーフ白抜けによる高輝度の異常部の発生形態を示した模式図である。
【符号の説明】
【0055】
1・・・カラーフィルタ
2・・・不吐出によるハーフ白抜け欠陥の列
3・・・光源
4・・・レンズ
5・・・カメラ
6・・・通常部
7・・・ハーフ白抜け部
8・・・照明光
9・・・反射光
10・・撮像系
11・・ステージ
12a・・ハーフ白抜けによる高輝度の異常部
12b・・ハーフ白抜けによる高輝度の異常部のうち、異常部の一部の位置にずれが生じたもの
12c・・ハーフ白抜けによる高輝度の異常部のうち、異常部どうしの位置が離れたもの13・・ハーフ白抜け以外による高輝度の異常部
14・・RGB着色部(カラーフィルタ画素)
15・・ブラックマトリクス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式により製造されたカラーフィルタの検査方法において、該カラーフィルタの表面に対して斜め方向に照明し、その反射光を撮像手段にて入力した画像の中に輝度が異常となる部分を有するカラーフィルタ画素を検出することができる検査方法であって、高輝度の異常部がカラーフィルタ画素の長辺方向または短辺方向に略連続している場合に、該当画素に膜厚不足の欠陥が発生していると判定することを特徴とするカラーフィルタの検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の検査方法において、前記入力した画像の中に輝度が異常となる部分を有するカラーフィルタ画素の輝度の異常部がカラーフィルタ画素の長辺方向および短辺方向のいずれにも殆ど連続しない場合に、該当画素に膜厚不足以外の欠陥が発生していると判定することを特徴とするカラーフィルタの検査方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の検査方法において、カラーフィルタ画素の前記高輝度の異常部の複数個が離れて一画素内に存在する場合で、前記高輝度の異常部どうしの隙間が許容範囲内の場合には、前記高輝度の異常部を連結させる画像処理を行って新たな高輝度の異常部として判定することを特徴とするカラーフィルタの検査方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の検査方法において、カラーフィルタ画素の前記高輝度の異常部が一画素内に前記カラーフィルタ画素の長辺方向または短辺方向に同一方向の複数の直線形状に存在する場合で、上記直線間の距離が許容範囲内であれば、該許容範囲内の複数の直線形状の高輝度の異常部を同一直線形状に存在するとみなすことを特徴とするカラーフィルタの検査方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の検査方法において、膜厚不足の欠陥発生画素が、インクジェットヘッドの塗布方向に複数個連続している場合に、ヘッドの吐出量不足であると判定し、インクジェット装置にメンテナンス指示を行うことを特徴とするカラーフィルタの検査方法。
【請求項6】
インクジェット方式により製造されたカラーフィルタの検査装置において、該カラーフィルタの表面に対して斜め方向に照明する手段と、その反射光を撮像する手段を設置し、入力した画像の中に輝度が異常となる部分を有するカラーフィルタ画素を検出する手段を設けた検査装置であって、高輝度の異常部がカラーフィルタ画素の長辺方向または短辺方向に略連続している場合に、該当画素に膜厚不足の欠陥が発生していると判定する手段を備えたことを特徴とするカラーフィルタの検査装置。
【請求項7】
請求項6記載の検査装置において、膜厚不足の欠陥が発生したと判定した場合に該当するカラーフィルタを不良品として判定することを特徴とするカラーフィルタの検査装置。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか記載の検査方法を使用して製造されたカラーフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−139923(P2010−139923A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318021(P2008−318021)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】