説明

カラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物

【課題】
良好な硬化性と保存安定性を有し、かつ、硬化後に得られた硬化膜の耐熱性、耐溶剤性、耐熱着色性、密着性等の基本性能を備えた上で、優れた平坦化能を有するカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物、ならびにその樹脂硬化物の層を有するカラーフィルターを提供する。
【解決手段】
重量平均分子量(Mw)が3,000〜300,000であり、かつ、オキセタン当量が140〜1,000g/molである、特定の構成単位を有するオキセタニル基含有重合体(A)と、多価カルボン酸(b1)のカルボキシル基がビニルエーテル化合物(b2)により潜在化された多価カルボン酸誘導体(B)とを含み、固形分に対して、該(A)成分を20〜80重量%、該(B)成分を20〜80重量%含有することを特徴とするカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置(LCD)、固体撮像素子(CCD等)、エレクトロルミネッセンス装置(ELD)等に用いられるカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物、該熱硬化性樹脂組成物を用いたカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶表示装置(LCD)、固体撮像素子(CCD等)、エレクトロルミネッセンス装置(ELD)等に用いられるカラーフィルターには、RGBレジストの凹凸を平坦化する目的で、或いは、RGBレジストよりブリードアウトするイオン性物質より液晶等を保護する目的で、RGBレジストと、液晶配向膜またはITO層等との間に保護膜と呼ばれる層が設けられている。この保護膜には透明性、耐薬品性、耐熱性、密着性、耐ITO形成プロセス性、平坦性等の性能が要求される。
近年、カラーフィルターの構成材料であるブラックマトリックス(以下BM)が、LCD表示モードの多様化や環境問題により、クロムBMから樹脂BMに代替されるようになってきた。従来のクロムBMは膜厚0.15〜0.20μmで基板上に形成されていたのに対し、樹脂BMでは十分な光学濃度(OD値)を得るために1.0〜1.5μmの膜厚が必要になる。この膜厚のために、樹脂BMと重なったRGB画素端部に大きな段差が生じる。IPS(In Plane Switching)モードのようなカラーフィルターとTFTアレイ基板間のギャップ(液晶層の厚み)精度が要求される高品質LCDにおいては、この段差が問題となるため、保護膜の性能の中でも特に平坦性に対する要求が高まっている。
平坦性を含めた上記性能を満たすべく、これまで数多くの研究がなされてきた。
【0003】
特許文献1においては(メタ)アクリレートおよびグリシジル基を2個以上有するポリマーとカルボン酸誘導体を用いることにより保存安定性を向上させたカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物が開示されている。
特許文献2においては、エポキシ基を含有するアクリル型共重合体、カルドエポキシ樹脂、エポキシ基を2個以上有する脂環式エポキシ樹脂、低分子エポキシ化合物を必須成分とし平坦性を向上させたカラーフィルター保護膜用の樹脂組成物が開示されている。
特許文献3においては、オキセタニル基含有化合物とカチオン性重合開始剤とオルガノアルコキシドシランを必須成分とし、平坦性および保存安定性を向上させたカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物が開示されている。
特許文献4においては、水酸基およびカルボキシル基、エポキシ基、オキセタニル基を有するアクリル共重合体を必須成分とし密着性、透明性、硬度を向上させたカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物が開示されている。
特許文献5においては、オキセタニル基含有メタクリレート、2個以上のカルボキシル基を有する化合物、第4オニウム塩を用いる事により密着性、透明性、耐熱性を向上させた熱硬化性樹脂組成物が開示されている。
【0004】
一方で近年、液晶表示装置はその技術の進歩に相まって要求性能も高度化しており、材料に対しても、より高度な性能が強く求められるようになってきている。液晶表示装置の高画質・高精細化に伴い、各画素の幅をより狭くしたカラーフィルターの開発が進められるようになってきた。
このため、カラーフィルター保護膜にはより高い平坦性が要求されており、例えば、初期の段差に対して、70%の塗布膜厚でカラーフィルター保護膜を設けた後の段差低減率が80%以上であることが望まれる。しかし、前記の開示技術のいずれによっても、このような高い平坦性を達成するには至っていない。
【0005】
【特許文献1】特開2001−350010号公報
【特許文献2】特開2004−069930号公報
【特許文献3】特開2001−098048号公報
【特許文献4】特開2000−239497号公報
【特許文献5】特開平11−236438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第一の目的は、良好な硬化性と保存安定性を有し、かつ、硬化後に得られた硬化膜の耐熱性、耐溶剤性、耐熱着色性、密着性等の基本性能を備えた上で、優れた平坦化能を有するカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の第二の目的は、耐熱性、耐溶剤性、耐熱着色性、密着性等の基本性能を備えた上で、平坦性に優れた樹脂硬化物の層を有するカラーフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するオキセタニル基含有重合体(A)および潜在化された多価カルボン酸誘導体(B)を特定量配合した、カラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物が上記課題を解決する知見を得て、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は次の〔1〕〜〔3〕である。
〔1〕重量平均分子量(Mw)が3,000〜300,000であり、かつ、オキセタン当量が140〜1,000g/molである下記式(1)で示される構成単位を有するオキセタニル基含有重合体(A)と、多価カルボン酸(b1)のカルボキシル基がビニルエーテル化合物(b2)により潜在化された多価カルボン酸誘導体(B)とを含み、固形分に対して、該(A)成分を20〜80重量%、該(B)成分を20〜80重量%含有することを特徴とするカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R、Rは水素原子又は直鎖状、分岐鎖状の炭素数1〜5の炭化水素基であり、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数1〜5の炭化水素基を示す。)
〔2〕さらに、多価オキセタニルエーテル(C)を、固形分に対して60重量%以下含有することを特徴とする前記の〔1〕に記載のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物。
〔3〕前記の〔1〕または〔2〕に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物の層を有するカラーフィルター。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物は、良好な硬化性と保存安定性を有し、かつ、硬化後に得られた硬化膜の耐熱性、耐溶剤性、耐熱着色性、密着性等の基本性能を備えた上で、優れた平坦化能を有する。
また、本発明によれば、耐熱性、耐溶剤性、耐熱着色性、密着性等の基本性能を備えた上で、平坦性に優れた樹脂硬化物の層を有するカラーフィルターを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下において本発明を詳しく説明する。
本発明において、カラーフィルター保護膜とは、カラーフィルターを有する表示装置、および固体撮像素子に用いられる保護膜を広く意味し、より詳しくは、液晶表示装置(LCD)、固体撮像素子(CCD等)、エレクトロルミネッセンス装置(ELD)等に用いられるカラーフィルター部分、発光ないし受光の素子部分、電極部分等に直接に接して、これらを保護する保護膜、またはこれら部分を他の材料を介して間接的に保護する保護膜を意味する。
また、本発明において配合割合を特定するため、固形分とは、溶剤を除く全ての配合成分の総和をいうものであり、エポキシ基含有化合物等液状の成分も固形分に含まれる。
1.カラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物
<オキセタニル基含有重合体(A)>
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物は、重量平均分子量(Mw)が3,000〜300,000であり、かつ、オキセタン当量が140〜1,000g/molである下記式(1)で示される構成単位を有するオキセタニル基含有重合体(A)と、多価カルボン酸(b1)のカルボキシル基がビニルエーテル化合物(b2)により潜在化された多価カルボン酸誘導体(B)とを含み、固形分に対して、該(A)成分を20〜80重量%、該(B)成分を20〜80重量%含有することを特徴とする。
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R、Rは水素原子又は直鎖状、分岐鎖状の炭素数1〜5の炭化水素基であり、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数1〜5の炭化水素基を示す。)
【0014】
本発明に用いるオキセタニル基含有重合体(A)は、オキセタニル基含有モノマーを単独で重合することにより、または、オキセタニル基含有モノマーと他のモノマーとを共重合させることにより得ることができる。その分子形態としては、直鎖状であっても、分岐構造を持っていても良く、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等いずれの形態であっても良い。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物における、オキセタニル基含有重合体(A)は、常法の重合法により重合することができる。すなわち、重合方法は特に限定されず、ラジカル重合、イオン重合等の重合法を採ることができ、より具体的には重合開始剤の存在下、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の重合法を採ることができる。重合方法によってはモノマーが多量に残存する場合があるが、このモノマーが塗布・硬化後の保護膜物性に影響を与える場合には、減圧留去法や再沈澱形成法等によってモノマーを除去しても良い。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物におけるオキセタニル基含有重合体(A)は、さらに、下記の式(2)〜(4)で表される構成単位を有していても良い。
【0015】
【化3】

【0016】
(式中のRは水素原子または炭素数1〜12のアルキル基であり、Rは炭素数1〜12のアルキル基、主環構成炭素数3〜12の脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、アリールオキシ基、またはポリアルキレングリコール残基である。)
【0017】
【化4】

【0018】
(式中のRは水素原子または炭素数1〜12のアルキル基であり、Rは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシ基、シロキシアルキル基、または芳香族炭化水素基である。)
【0019】
【化5】

【0020】
(式中のRは、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、または芳香族炭化水素基である。)
前記式(1)で表される構成単位は、下記式(5)で表されるオキセタニル基含有モノマーから誘導される。
【0021】
【化6】

【0022】
(式中、R、R、R、およびRは式(1)におけるものと同じ)
前記式(5)において、Rとして好ましいのは、メチル基またはエチル基であり、Rとして好ましいのは水素原子またはメチル基であり、Rとして好ましいのは、メチレン基である。前記式(5)において好ましいのは、入手性の面から(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートである。ここで、本発明における(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートのいずれであっても良いことを意味する。
また前記式(2)〜(4)で表される構成単位は、下記式(6)〜(8)で表されるモノマーから誘導される。
【0023】
【化7】

【0024】
(式中、RおよびRは式(2)におけるものと同じ)
【0025】
前記式(6)において、Rで表される主環構成炭素数3〜12の脂環式炭化水素基は、付加的な構造、例えば環内二重結合、炭化水素基の側鎖、スピロ環の側鎖、環内架橋炭化水素基等を含んでいてもよい。
前記式(6)において、Rとして好ましいのは水素またはメチル基であり、Rとしては好ましいのは炭素数1〜6のアルキル基、シクロヘキシル基、またはジシクロペンタニル基である。
【0026】
【化8】

【0027】
(式中、RおよびRは式(3)におけるものと同じ)
前記の式(7)において、Rとしては好ましいのは水素またはメチル基であり、Rとしては好ましいのは炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基である。
【0028】
【化9】

【0029】
(式中、Rは式(4)におけるものと同じ)
前記式(8)において、Rとしては好ましいのはシクロヘキシル基、およびフェニル基である。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物において、オキセタニル基含有重合体(A)は、オキセタン当量が140〜1,000g/molとなる範囲に配合される。また、前記式(1)で表されるオキセタニル基含有構成単位のうち少なくとも1種類以上をオキセタニル基含有重合体(A)中、10〜100重量%、好ましくは25〜70重量%有する。前記式(1)で表されるオキセタニル基含有構成単位が、オキセタニル基含有重合体(A)中、10重量%未満であったりオキセタン当量が140g/mol未満であったりする配合では、望ましい架橋密度が得られず保護膜の物性が低下する場合がある。また、オキセタン当量が1,000g/molを上回る配合では、本願の効果である樹脂硬化物の平坦化を達することができない。
【0030】
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物におけるオキセタニル基含有重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、3,000〜300,000であり、好ましくは3,000〜30,000の範囲である。重量平均分子量(Mw)が3,000未満であると保護膜の硬度の低下が観測され、300,000を上回ると塗布・硬化後の平坦性が低下する可能性がある。なお、オキセタニル基含有重合体(A)の重量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0031】
また、本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物におけるオキセタニル基含有重合体(A)のオキセタン当量は、140〜1,000g/molであり、好ましくは200〜550g/molである。オキセタン当量が140g/mol未満であると塗布・硬化後の保護膜が強靭性を失う傾向があり、1,000g/molを上回ると硬化膜の硬度の低下が発生する可能性がある。さらに、高い密着性が要求される用途の場合には、保護膜に強靭性が求められるため、250〜550g/molであることが好ましい。オキセタニル基含有重合体(A)のオキセタン当量が250g/mol以下であると、強靭性が低くなり、密着性試験において縁欠けが生じる可能性が高い。この際のオキセタン当量とは樹脂についてのオキセタニル基の当量を指し、JIS K7236:2001「エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方」に準じて測定される。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物において、オキセタニル基含有重合体(A)は、分子量やコモノマー種の異なるものを2種類以上混合して用いても良い。
【0032】
<多価カルボン酸誘導体(B)>
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物における多価カルボン酸誘導体(B)は、多価カルボン酸化合物(b1)のカルボキシル基が下記式(9)で表されるビニルエーテル化合物(b2)(ビニル基およびエーテル基含有化合物)によって潜在化(以降、ブロック化という。)された化合物である。
本発明の熱硬化性樹脂組成物における、多価カルボン酸誘導体(B)は、硬化剤として用いられる難溶性の多価カルボン酸化合物(b1)のカルボキシル基をブロック化することにより、溶解性の高い多価カルボン酸誘導体(B)の形にして用いる。この多価カルボン酸誘導体(B)は、ブロック化されていない多価カルボン酸化合物に比べて流動性が著しく向上する。さらに、多価カルボン酸誘導体(B)は当該化合物に応じた所定の温度以上に加熱しなければカルボキシル基を再生しない。従って、多価カルボン酸誘導体(B)含有熱硬化性樹脂組成物は、良好な保存安定性を備えた上に、カラーフィルターへ塗布した際には、保護膜の平坦性に寄与する流動性が保たれる時間が長くなり、膜面を平坦化する作用が優れることから、保護膜の平坦性は著しく向上する。
【0033】
オキセタニル基はエポキシ基に比べ反応性が低いため、カルボン酸や酸無水物を硬化剤とした場合には、無触媒系や通常用いられる塩基性触媒系では反応速度が遅すぎて、現実的な使用に適わない。そこで、オキセタニル基を含有する硬化性組成物において、従来用いられているのが、オニウム塩等の酸性触媒であるが、酸性触媒を用いた場合、カルボン酸や酸無水物との反応を完遂させようとすると、それよりも反応速度の速いオキセタニル基同士の重合反応が優先的に起こってしまい、本願効果である流動性保持時間の延長による平坦化効果を得ることができない。
【0034】
【化10】

【0035】
(ここで、R10は炭素数1〜10の炭化水素基である。)
多価カルボン酸(b1)のカルボキシル基がビニルエーテル化合物(b2)によりブロック化された多価カルボン酸誘導体(B)は、より具体的には、式(10)で表される官能基を2個以上有する化合物である。
【0036】
【化11】

【0037】
(ここで、R10は式(9)に同じ)
式(9)で表されるビニルエーテル化合物(b2)の具体例としては、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル化合物が挙げられる。それらの中でも、入手性および硬化温度が保護膜のプロセスに適合する点から、n−プロピルビニルエーテルおよびi−ブチルビニルエーテルが好ましく挙げられる。
ビニルエーテル化合物(b2)は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物における多価カルボン酸誘導体(B)に使用する多価カルボン酸(b1)として、炭素数4〜20で2〜8価のカルボン酸であることが好ましい。入手性および平坦性に寄与する流動性の点から、好ましい例としてイタコン酸、マレイン酸、コハク酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、メリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸、およびこれらの水素化物が挙げられる。これらのカルボン酸の中において、さらに硬度の点から、3価以上のカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸誘導体(B)として、アルコール化合物と酸無水物との反応により得られるハーフエステル体も使用できる。
この反応の際に用いられるアルコール化合物としては、エタノール、プロパノール、ヘキサノール、オクタノール、i−プロピルアルコール等の1価のアルコール化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール等の2価のアルコール化合物;グリセリン、ペンタントリオール、へキサントリオール、シクロヘキサントリオール、ベンゼントリオール、トリメチロールプロパン等の3価のアルコール化合物;ペンタエリスリトール等の4価のアルコール化合物が好ましい例として挙げられ、より好ましくはヘキサノール、i−プロピルアルコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
また、この反応の際に用いられる酸無水物としては、具体的には、無水フタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物(以下、無水トリメリット酸と呼ぶ)、1,3,4−シクロヘキサントリカルボン酸−3,4−無水物、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸が好ましい例として挙げられる。なお、以上のハーフエステル体の中では、架橋密度が高く密着性の高い保護膜が得られることから、炭素数3〜6の2価以上の多価アルコールと無水トリメリット酸またはメチルヘキサヒドロ無水フタル酸との組み合わせにより得られるものが(b1)として好適に挙げられ、中でも透明性と保存安定性の面から、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を選択することが好ましく挙げられる。
【0039】
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物における多価カルボン酸誘導体(B)は、前記の多価カルボン酸(b1)と、前記のビニルエーテル化合物(b2)とを室温ないし150℃の範囲の温度で反応させることにより得ることができる。ブロック化反応は平衡反応であるため、多価カルボン酸(b1)に対しビニルエーテル化合物(b2)を若干多く使用すると反応が促進され、収率を向上させることができる。具体的には、多価カルボン酸(b1)のカルボキシル基に対するビニルエーテル化合物(b2)のビニル基のモル当量比[(ビニル基/カルボキシル基)のモル当量比]は、1/1〜2/1であることが望ましい。このモル当量比が2/1を越える場合、反応温度を上げることができず、反応速度が著しく低い場合がある。モル当量比が1/1を下回る場合、ブロック化されないカルボキシル基が残存するため、流動性が低下して、本発明の効果が得られない。
ブロック化反応を行う際、反応を促進させる目的で酸触媒を使用することも出来る。そのような触媒としては例えば、下記式(11)で表される酸性リン酸エステル化合物が挙げられる。
【0040】
【化12】

【0041】
(式中のR11は炭素数3〜10のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基、mは1または2である。)
また、ブロック化反応を行う際、反応系を均一にし、反応を容易にする目的で有機溶剤も使用してもよい。この際に使用する有機溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素、エーテル類、エステルおよびエーテルエステル類、ケトン類、リン酸エステル類、ニトリル類、非プロトン性極性溶媒、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類等が挙げられる。より好ましくは、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。
前記の有機溶媒は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。前記の有機溶媒の使用量は、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して、通常、5〜95質量部、好ましくは、20〜80質量部である。
【0042】
<多価オキセタニルエーテル(C)>
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物は、さらに、多価オキセタニルエーテル(C)を配合することにより、保護膜の段差低減率がさらに向上する。本発明において、多価オキセタニルエーテル(C)とは、炭素数1〜4の分岐を有していてもよい脂肪族アルキル基を有する3−アルキル−3−ヒドロキシメチルオキセタンと、2〜8価で1〜18の脂肪族または芳香族アルキル基を有するアルキルポリオール化合物と、もしくは3−アルキル−3−ヒドロキシメチルオキセタン自身とのエーテル縮合物をいう。
【0043】
本発明に用いる多価オキセタニルエーテル(C)としては、より具体的には例えば、ビス((3−エチル−3−オキセタニル)メチル)エーテル、1,4−ビス(((3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ)メチル)ベンゼン、1,4−ビス(((3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ)メチル)ベンゼン、4,4’−ビス(((3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ)メチル)ビフェニル、3,3’,5,5’−メチル−4,4’−ビス(((3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ)メチル)ビフェニル、1,4−ビス((3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス((3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ)ビフェニル、3,3’,5,5’−メチル−4,4’−ビス((3−エチル−3−オキセタニル)メチル)ビフェニル等が挙げられる。
これらの、多価オキセタニルエーテル(C)の中でも、1,4−ビス(((3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ)メチル)ベンゼン、およびビス(1−エチル(3−オキセタニル))メチルエーテルが、光線透過率等、硬化して得られる保護膜の物性の面から好ましい。
多価オキセタニルエーテル(C)は、1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
<上記(A)、(B)、(C)成分の配合割合>
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物は、塗布プロセスの種類によって最適な粘度が異なるため、溶剤によって任意に希釈しても良い。さらに、本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物は、後述するようなフィラーや添加剤を任意の量、添加しても良い。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物は、固形分に対して、オキセタニル基含有重合体(A)を20〜80重量%、多価カルボン酸誘導体(B)を20〜80重量%含有するものである。
オキセタニル基含有重合体(A)成分の配合割合は、好ましくは25〜70重量%であり、より好ましくは30〜60重量%である。オキセタニル基含有重合体(A)の配合割合が20重量%未満の場合には保護膜の密着性等の性能が低下し、80重量%を上回ると保護膜の基本要求を達せなくなる。
【0045】
多価カルボン酸誘導体(B)の配合割合は、20〜80重量%であるが、好ましくは30〜70重量%である。多価カルボン酸誘導体(B)の配合割合が20重量%未満の場合には本発明の効果を得ることが難しくなり、80重量%を上回るとカルボン酸が過剰となり透明性が低下する。
多価オキセタニルエーテル(C)の配合割合は、60重量%未満であるが、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜20重量%であり、さらに好ましくは5〜10重量%である。多価オキセタニルエーテル(C)の配合割合が多すぎると保護膜の基本性能を損なうこととなる。
【0046】
前記のオキセタニル基含有重合体(A)と多価カルボン酸誘導体(B)と多価オキセタニルエーテル(C)の配合量の比は以下の範囲であることが好ましい。多価カルボン酸誘導体(B)のビニルエーテル化合物の脱離(脱潜在化、脱ブロック)後に生成するカルボキシル基のモル濃度と、オキセタニル基含有重合体(A)と多価オキセタニルエーテル(C)のオキセタニル基の合計モル濃度との比(カルボキシル基/オキセタニル基)は、0.2/1〜1.6/1であり、好ましくは0.7/1〜1.2/1であり、より好ましくは0.8/1〜1.1/1である。カルボキシル基とオキセタニル基とのモル濃度比が0.2/1.0未満であると、硬化後にオキセタニル基が多量に残留するため、架橋密度が低くなり、保護膜が基本性能を損なう可能性がある。また、カルボキシル基とオキセタニル基とのモル濃度比が1.6/1を上回ると、カルボキシル基が過剰となり、多くの場合樹脂物性が低下する。なお、本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物における必須成分である(A)〜(C)の各成分に含まれない追加成分として、カルボキシル基、およびオキセタニル基と反応しうる官能基を含む化合物を添加する際には、追加成分の官能基のモル濃度を上記のカルボキシル基のモル濃度に加えて計算すればよい。
【0047】
なおここで、カルボキシル基のモル濃度は、簡便には化合物構造式(分子量)と配合量とから算出され、より正確には、JIS K 0070:1992「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」に準じて測定された酸当量より算出される。
【0048】
<その他の成分>
<硬化促進剤>
本発明のカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物には、本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物の無色透明性を損なわない範囲において、硬化促進剤を適宜使用することもできる。添加しうる硬化促進剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルシクロヘキシルアミン等の3級アミン類;1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン、亜リン酸トリフェニル等の有機リン系化合物;テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩類;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類;オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトネート錯体等の有機金属化合物類;テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類;三フッ化ホウ素、トリフェニルボレート等のホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化物が挙げられる。さらには、高融点イミダゾール化合物、ジシアンジアミド、アミン等エポキシ樹脂等に付加したアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性促進剤;イミダゾール系、リン系、ホスフィン系促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性促進剤;アミン塩型潜在性硬化促進剤、ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の潜在性硬化促進剤等に代表される潜在性硬化促進剤も使用することができる。
硬化促進剤は、硬化物の液晶非汚染性等の観点から、ハロゲンフリーの酸性の硬化促進剤であることが好ましい。さらに、樹脂組成物の保存安定性の観点を加味すると、ハロゲンフリーの酸性の硬化促進剤のなかでも、具体的にはルイス酸塩高温解離型の潜在性硬化促進剤がより好ましく、市販品としてはノフキュアーLCAT−1およびノフキュアーLCAT−2(いずれも商品名、日本油脂(株)製)が挙げられる。これらの硬化促進剤は1種単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。前記の硬化促進剤は、固形分に対して、通常0.01〜10重量%の割合で配合される。
【0049】
<密着性向上助剤>
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物には、基材との間により高度な密着性が要求される場合、密着性を向上させるための助剤としてシラン系カップリング剤、および金属石鹸を含むチタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムキレート剤等の密着性向上剤を添加することもできる。添加し得るシラン系カップリング剤としては、例えば、エポキシ基を有するシラン系カップリング剤、アミノ基を有するシラン系カップリング剤、(メタ)アクリロイル基を有するシラン系カップリング剤またはその重合物等を挙げることができる。チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤としては、カルボン酸塩を含む金属石鹸タイプでもよい。これらのカップリング剤は1種単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて添加することができる。
前記のシラン系カップリング剤は、固形分に対して通常1〜30重量%、好ましくは2〜25重量%、より好ましくは3〜20重量%で添加される。シラン系カップリング剤が1重量%未満では密着性の向上が不十分であり、30重量%を越えると保護膜の硬度等の性能が低下する。チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤は、固形分に対して通常0.001〜20重量%、好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.2〜15重量%である。チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤が0.001重量%未満では密着性の向上が不十分であり、20重量%を上回ると保護膜の透明性が損なわれる。
【0050】
<界面活性剤>
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物には、該熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる保護膜の外観を向上させる目的で、あるいは、各配合成分の相溶性を向上させる目的で、界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤は1種単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
前記の界面活性剤は、固形分に対して、通常0.001〜3重量%で配合することが好ましい。
【0051】
<有機溶剤>
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物には、粘度等を調整する目的で有機溶剤を使用しても良い。この際に使用する有機溶剤としては、芳香族炭化水素、エーテル類、エステルおよびエーテルエステル類、ケトン類、リン酸エステル類、ニトリル類、非プロトン性極性溶媒、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類等が挙げられる。
これらの有機溶剤は1種単独または2種以上を適宜組み合わせて使用できる。
また、これら有機溶剤の使用量については特に制限はされず、所定膜厚、表明の平滑性、および成膜方法等に応じ、任意の量添加し、塗布適性を付与することができる。
【0052】
<エポキシ基含有化合物>
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物には、平坦性が損なわれない範囲において、エポキシ基含有化合物を含有していてもよい。エポキシ基含有化合物として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベンゼン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、DPP(ジ−n−ペンチルフタレート)型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートやビニルシクロヘキセンジエポキサイド等の脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ヘキサヒドロ無水フタル酸のジグリシジルエステル等の多塩基酸のポリグリシジルエステル、ブチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル等のエポキシ基を1個有するグリシジルエーテル等が挙げられる。また上記エポキシ樹脂の核水添物も使用できる。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物において、エポキシ基含有化合物は、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
<その他の添加剤>
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物には、さらに、粘度調整の目的で、増粘剤、チキソ剤等の粘度調整剤を添加しても良い。また、赤外線や紫外線吸収剤を添加しても良い。
また、線膨張係数の調整、平坦性向上、表面硬度の向上、粘度調整、屈折率の調整、所定波長の光線吸収、密着性の向上等の目的で、本発明の樹脂組成物に任意量フィラーを添加することができる。この際用いられるフィラーとしては、透明性を妨げるものでなければ特に限定されないが、シリカゾル、シリカゲル、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等が例として挙げられる。これらのフィラーは1種単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
また、本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で、必要に応じて、エチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族ポリオール、フェノール化合物等の炭酸ガス発生防止剤、ポリアルキレングリコール等の可撓性付与剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、表面処理剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、レベリング剤、イオントラップ剤、摺動性改良剤、各種ゴム、有機ポリマービーズ、ガラスビーズ、揺変性付与剤、表面張力低下剤、消泡剤、光拡散剤、抗酸化剤、蛍光剤等の添加剤を配合することができる。
上記添加剤は、本発明の効果が損なわれない範囲で、任意量用いることができるが、この際には遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属原子が、固形分に対して、通常0.1重量%以上混入しないようにすることが好ましい。
【0054】
<樹脂組成物の製造方法>
以下に本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物の配合、攪拌、分散の手法に関して説明する。
本発明の樹脂組成物において、上記(A)〜(C)の成分をはじめとする各成分を一括配合しても良いし、各成分を溶剤に溶解した後に逐次配合しても良い。また、配合する際の投入順序や作業条件は特に制約を受けない。例えば、全成分を同時に溶剤に溶解して樹脂組成物を調製してもよいし、必要に応じては各成分を適宜2つ以上の溶液としておいて、使用時(塗布時)にこれらの溶液を混合して樹脂組成物として調製してもよい。
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物において、上記(A)〜(C)の成分をはじめとする各成分混合後の攪拌に関しては、羽根形撹拌機、デソルバー、ニーダー、ボールミル混和機、ロール分散機等を用いて撹拌をおこなってもよいし、各成分をガロン瓶等の容器に配合してから容器ごとミックスローターで回転させて攪拌してもよい。混合および攪拌の温度は、配合成分にもよるが、通常、結露や溶剤の揮散を避けるために、10〜60℃が好ましい。
【0055】
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物に粘度調整剤やフィラーを添加する場合には、モーターミル、シェイカー等の高シェア分散機を用いた分散を行っても良い。この際には、本発明における上記(A)〜(C)の成分をはじめとする各成分をバインダーとしたマスターバッチを予め作製しておき、使用時に配合するなどといった手法も取ることができる。ただし、本発明の多価カルボン酸誘導体(B)は熱により脱ブロック反応が進行するため、多価カルボン酸誘導体(B)を含む組成物を分散する際には、80℃以上に加熱しないよう配慮が必要となる。
【0056】
2.カラーフィルター
本発明のカラーフィルターは、上記本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物の層を有する。
上記カラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物の層は、一般的に保護膜と称されているものに特に限定されず、例えば、カラーフィルターの基板上に形成されたRGB画素と、液晶配向膜、ITO層、発光体、又は受光体等との間に形成される樹脂硬化物の層をいう。また、RGB画素に直接接していなくても、他の材料を介して間接的に保護する保護膜のような場合も含まれ、例えば、固体撮像素子のマイクロレンズとカラーフィルターの間に用いる中間膜、或いはカラーフィルターと電極の間に用いる中間膜も含まれる。
【0057】
本発明のカラーフィルターは、上記本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物の層を有するので、耐熱性、耐溶剤性、耐熱着色性、密着性等の基本性能を備えた上で、平坦性の優れた樹脂硬化物の層を有するカラーフィルターを得ることができる。
カラーフィルターは、一例として、透明基板に所定のパターンで形成されたブラックマトリックスと、当該ブラックマトリックスに所定のパターンで形成した画素部と、当該画素部を覆うように形成された保護膜を備えている。保護膜上に必要に応じて液晶駆動用の透明電極が形成される場合もある。また、ブラックマトリックス層が形成された領域に合わせて、透明電極板上若しくは画素部上若しくは保護膜上に柱状スペーサーが形成される場合もある。
上記本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物の層は、上記本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物を適宜粘度調整して塗布液とし、まず、それを例えばカラーフィルターの着色層を形成した側の表面に塗布する。
【0058】
本発明のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物を塗布する方法に関しては、特に限定されるものではなく、通常用いられる塗布手法として、例えば、スピンコーター塗布法、浸漬塗布法、スプレーコーター塗布法、ロールコーター塗布法、スクリーン印刷塗布法、オフセット印刷塗布法、スリットコーター塗布法、ダイコーター塗布法等の単独または組み合わせにより、基材に塗布することができる。
次に、得られた塗膜を乾燥し、さらに必要に応じて予備加熱(以下、プリベーク)を行った後、本硬化加熱(以下、ポストベーク)を経て樹脂硬化物の層を形成する。この際には、プリベーク条件として40〜140℃、0〜1時間、ポストベーク条件として150〜280℃、0.2〜2時間が好ましい条件として挙げられる。また、この際の加熱手法としては、特に限定されるものではなく、例えば、密閉式硬化炉や連続硬化が可能なトンネル炉等の硬化装置を採用することができる。加熱源は特に制約されることなく、熱風循環、赤外線加熱、高周波加熱等の方法で行うことができる。
【0059】
本発明において、樹脂硬化物の層は、塗布・硬化後の膜厚として0.2〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜4μmである。塗布・硬化後の膜厚が0.2μm未満の場合には、バリア性、平坦性等の保護膜に要求される性能を得ることが難しく、5μmを上回ると透明性等の性能が低下するおそれがあり好ましくない。ただし、高い平坦性が望まれる用途に関しては、塗布・硬化後の膜厚が5〜20μmであっても良い。
このようにして本発明において得られるカラーフィルター保護膜用の樹脂硬化物の層は、架橋構造が多価カルボン酸誘導体とオキセタニル基含有化合物によるエステル結合からなるため、耐薬品性、耐熱性(加熱による膜減りや変色の程度など)に優れている。さらには、本発明における樹脂硬化物の層は適切な樹脂組成からなるため、密着性に優れる。
オキセタニル基はエポキシ基に比べカルボキシル基との反応性が低いため、カルボン酸を硬化剤とした場合には、オキセタニル基含有重合体(A)を含む熱硬化性樹脂組成物はエポキシ基含有重合体を含むものに比べ、硬化反応が完結するまでの時間が長くなる。そのため保護膜の平坦性に寄与する流動性が保たれる時間が長くなり、膜面がより平坦化されるので、本発明のカラーフィルター用保護膜の平坦性は向上する。さらに、オキセタニル基はエポキシ基より硬化反応に伴う体積減少量が少ないため、保護膜の平坦性はさらに向上する。
【0060】
本発明においては、硬化剤として用いられる難溶性の多価カルボン酸(b1)のカルボキシル基をブロック化することにより溶解性の高い多価カルボン酸誘導体(B)の形にしてから溶剤に溶解、分散させて用いる。この多価カルボン酸誘導体(B)は、ブロック化されていない多価カルボン酸(b1)より著しく流動性が向上する。さらには、多価カルボン酸誘導体(B)は当該化合物に応じた所定の温度以上に加熱しなければカルボキシル基を再生しないことから、樹脂組成物の流動性が保たれる時間が長くなるので膜面を平坦化する効果が十分に作用する。その結果、本発明におけるカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物の硬化膜は、多価カルボン酸誘導体(B)を用いることにより、ブロック化されていない多価カルボン酸(b1)と比較して優れた平坦性を有する。
本発明において、カラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物にオキセタニル基含有重合体(A)および多価カルボン酸(b1)のカルボキシル基がビニルエーテル化合物(b2)によりブロック化された多価カルボン酸誘導体(B)を組み合わせて適用することによりそれぞれの平坦性向上作用に関する相乗効果が発現し、優れた平坦性を得ることができる。例えば、初期の段差が3μmであるカラーフィルターに対して、2μmの塗布膜厚でカラーフィルター保護膜を設けた後の段差低減率が80%以上とすることができる。
【実施例】
【0061】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
以下に本実施例および比較例で用いた測定方法、評価方法を示す。
<重量平均分子量>
重量平均分子量(Mw)は、東ソー(株)製ゲルパミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8220GPCを用い、カラムとして昭和電工(株)製SHODEX K−801を用い、THFを溶離液とし、RI検出器により測定してポリスチレン換算により求めた。
<固形分>
固形分は、溶液1gを精秤し、熱風オーブンで170℃、1時間乾燥後に乾燥前後の重量変化から算出した残存率より算出した。
<粘度>
粘度は、循環式恒温水浴を装備したB型粘度計(東機産業(株)製)を用いて温度20℃で測定した。
【0062】
<オキセタン当量>
オキセタン当量は、JIS K7236:2001「エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方」によって規定される方法に準じて測定した。
<エポキシ当量>
エポキシ当量は、JIS K7236:2001「エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方」によって規定される方法によって測定した。
<全酸当量>
全酸当量は、JIS K0070:1992「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」の加水分解酸価測定によって測定した。
【0063】
<鉛筆硬度>
JIS K5600−5−4:1999「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」のうち、手掻き法で3H以上の鉛筆硬度を示す時に良好と判定した。
<耐熱着色性試験>
保護膜を形成したサンプルを250℃の温度で1時間放置後の保護膜の400nm光線透過率が90%以上の時に良好と判定した。
<密着性>
保護膜を形成したサンプルをPCT(121℃で湿度100%の環境下において8時間放置)の処理を行なった後に、JIS K5600−5−6:1999「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法)」を行い剥離が無いときに良好と判定した。
<段差低減率>
透明ガラス基板上に光硬化性レジストを用いて、常法によりストライプ状の凹凸をガラス基板に作製した(ライン/スペース=25μm/25μm)。この基板の表面の凹凸(段差)を微細形状測定機((株)小坂研究所製;商標;サーフコーダー ET400)によって測定した結果、3.0μmであった。(以下、この基板を「評価基板」と呼ぶ。)
【0064】
次に、カラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物を孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過した後、スピンコーターを用いて、ガラス基板(日本電気硝子(株)製;商品名;OA−10、無アルカリガラス)に塗布した。その後、ガラス基板を80℃のクリーンオーブン中にて5分間乾燥処理後、230℃のクリーンオーブン中にて30分間処理し、硬化膜を得た。得られた硬化膜をガラス面が露出するように削り、微細形状測定機を用いて硬化膜の膜厚を測定した。このようにして膜厚を測定して、膜厚が1.8〜2.2μmになるようにスピンコーターの回転数を調整した。次に、同カラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物を孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過した後、スピンコーターを上記の回転数により評価基板に塗布した。この評価基板を80℃のクリーンオーブン中にて5分間乾燥処理後、230℃のクリーンオーブン中にて30分間処理した。微細形状測定機を用いて得られた硬化膜の段差を測定し、段差低減率の試験を行った。段差低減率は、次式から算出される。
段差低減率(%)={(カラーフィルター保護膜形成前のカラーフィルターの段差−カラーフィルター保護膜形成後のカラーフィルターの段差)/カラーフィルター保護膜形成前のカラーフィルターの段差}×100
【0065】
重合例1
<オキセタニル基含有重合体(a−1)の重合>
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた容量500mLの4つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PMA)を160重量部仕込み、攪拌しながら加熱して80℃に昇温した。次いで、80℃の温度で大阪有機化学工業(株)製「OXE−30」(;商品名)(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート184重量部、メチルメタクリレート(以下、MMA)16重量部、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(日本油脂(株)製の過酸化物系重合開始剤「パーヘキシルO」、純度93%、以下PHO)7重量部、およびPMA33重量部を予め均一混合したもの(滴下成分)を、2時間かけて滴下ロートより等速滴下した。滴下終了後、80℃の温度を7時間維持した後、反応を終了した。重量平均分子量(Mw)30,000、固形分52%、粘度10Pa・s(20℃)および溶液のオキセタン当量410g/molのオキセタニル基含有重合体溶液(オキセタニル基含有重合体のオキセタン当量210g/mol)を得た。
【0066】
重合例2〜6
<オキセタニル基含有重合体(a−2〜4の重合)>
重合例1と同様にオキセタニル基含有重合体(a−2〜4)を得た。各原料の仕込み比、滴下温度、重量平均分子量、固形分、粘度およびオキセタン当量を表1に示す。
<エポキシ基含有重合体(a’−5)の重合>
重合例1と同様にエポキシ基含有重合体(a’−5)を得た。各原料の仕込み比、滴下温度、重量平均分子量、固形分、粘度およびエポキシ当量を表1に示す。
<加水分解縮合物(a’−6)の反応>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えた容量500mLの3つ口フラスコに、ビニルトリメトキシシランを169重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート210重量部を仕込み攪拌した。次いで、蒸留水62重量部、シュウ酸0.02重量部を加え120℃に昇温した。反応によって生成するメタノール、および水を留去しながら、120℃で2時間攪拌した後、反応を終了した。
【0067】
【表1】

【0068】
なお、表中の略号は以下の通りである。
*1:シクロヘキシルメタクリレート
*2:(3−メチル−3−オキセタニル)アクリレート
*3:ジシクロペンタニルメタクリレート
*4:グリシジルメタクリレート
【0069】
合成例1
<多価カルボン酸誘導体(b−1)の合成>
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、PMA27重量部、三菱瓦斯化学(株)製トリメリット酸(以下、TMA)27重量部、n−プロピルビニルエーテル(以下、nPr−VE)46重量部を仕込み、攪拌しながら加熱し70℃に昇温した。次いで、温度を保ちながら攪拌し続け、混合物の酸価が2.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了し、溶液の酸価0.64mgKOH/gのブロック化されたカルボキシル基を2個以上有する多価カルボン酸誘導体(B)の溶液を得た。
合成例2〜6
<多価カルボン酸誘導体(b−2〜6)の合成>
合成例1と同様に多価カルボン酸誘導体(b−2〜6)を得た。各原料の仕込み比、反応温度、酸価および全酸当量を表2に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
*1:ペンタエリスリトール(以下、PE)と無水トリメリット酸のハーフエステル化物。
*2:1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸
*3:プロピレングリコール(以下、PG)とメチルヘキサヒドロ無水フタル酸(以下、MHHPA)のハーフエステル化物。
*4:i−プロピルビニルエーテル
*5:アジピン酸
*6:マレイン酸
実施例1〜7
表3に示す配合割合で溶解混合したカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物の段差低減率の試験を行った。結果を表4に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
*1:重合例1、合成例1の固形分のみを記述した。溶剤は全て下段の欄に計上した。
*2:エピコート828(ジャパンエポキシレジン(株)製商品、エポキシ当量約190g/mol、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)
*3:アクリル系ノニオン界面活性剤(ビッグケミー・ジャパン(株)製商品BYK−355)
*4:オクチル酸亜鉛とN−メチルモルホリンの反応物(特開2001−350010号公報記載:LCAT−1、日本油脂(株)製商品)
*5:1,4−ビス(((3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ)メチル)ベンゼン(東亜合成(株)製商品「アロンオキセタンOXT−121」)
比較例1〜4
表4に示す配合割合で溶解混合したカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物の溶液から、実施例と同様の手法によって硬化膜を得、段差低減率の試験を行った。結果を表5に示す。
なお、比較例1の場合を除き、実施例および比較例の全ての場合において、得られた塗膜の表面は極めて平滑であり、ピンホール等は全く見られなかった。比較例1の場合、組成物が溶剤に溶解せず不均一となり、製膜不可能であった。
【0074】
【表4】

【0075】
*1:ビス((3−エチル−3−オキセタニル)メチル)シクロヘキサン−1,4−ジカルボキシレート
*2:アルミニウムトリスアセチルアセトネート
*3:アクリル系ノニオン界面活性剤(ビッグケミー・ジャパン(株)製商品BYK−355)
*4:LCAT−1(日本油脂(株)製商品)
*5:フルオレンビスフェノール系エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製商品ESF−300、エポキシ当量250g/mol、分子量463)24.4重量部、3,4−エポキシシクロへキシル−3’,4’−シクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業(株)製商品CEL−2021P)19.0重量部、液状3官能脂肪族エポキシ樹脂(東都化成(株)製商品ZX1542、エポキシ当量125g/mol)8.1重量部の混合物
*6:無水トリメリット酸16.3重量部とb−1成分9.90重量部の混合物
*7:硬化反応に1時間かかるとされているため、ポストベーク時間を1時間とした。
【0076】
【表5】

【0077】
*1:◎は光線透過率が95%以上を、○は90%以上95%未満を示す。*2:◎は剥離が無いことを、○は剥離は無いがクロスカット時に縁欠けが生じたことを示す。
表5の結果より、実施例1〜7は、本発明の樹脂組成物を用いることにより、基本性能を満たした上で平坦性の性能が極めて優れており、本発明の目的の効果が申し分なく得られていることがわかる。
これに対し、比較例1は、組成物が不均一となり製膜不可能であった。
比較例2は、本発明のオキセタニル基含有重合体(A)とは異なるエポキシ基含有重合体を用いている為、保護膜の膜面を平坦化する作用に乏しく、近年必要とされる平坦性を得ることができなかった。
比較例3は、本発明の多価カルボン酸誘導体(B)を用いているものの固形分中の配合量は少量であり、また、オキセタニル基含有重合体(A)を用いていない為、保護膜の膜面を平坦化する作用に乏しく、近年必要とされる平坦性を得ることができなかった。
比較例4および5は、本発明の多価カルボン酸誘導体(B)を用いていない為、保護膜の膜面を平坦化する作用に乏しく、近年求められるような平坦性を得ることができなかった。
以上のように、本発明のカラーフィルター保護膜用熱硬化性樹脂組成物は、基本性能を備えた上で、オキセタニル基含有重合体(A)および多価カルボン酸(b1)のカルボキシル基がビニルエーテル化合物(b2)によりブロック化された多価カルボン酸誘導体(B)を組み合わせて適用することにより、それぞれの平坦性向上作用に関する相乗効果が発現し、優れた平坦性を得ることができることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量(Mw)が3,000〜300,000であり、かつ、オキセタン当量が140〜1,000g/molである下記式(1)で示される構成単位を有するオキセタニル基含有重合体(A)と、多価カルボン酸(b1)のカルボキシル基がビニルエーテル化合物(b2)により潜在化された多価カルボン酸誘導体(B)とを含み、固形分に対して、該(A)成分を20〜80重量%、該(B)成分を20〜80重量%含有することを特徴とするカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物。
【化1】


(式中、R、Rは水素原子又は直鎖状、分岐鎖状の炭素数1〜5の炭化水素基であり、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数1〜5の炭化水素基を示す。)
【請求項2】
さらに、多価オキセタニルエーテル(C)を、固形分に対して60重量%以下含有することを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルター保護膜用の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物の層を有するカラーフィルター。

【公開番号】特開2007−79365(P2007−79365A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269702(P2005−269702)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【Fターム(参考)】