説明

カラーフィルター用インクジェットインク、カラーフィルターの製造方法、カラーフィルター、液晶表示装置及び有機発光表示装置

【課題】カラーフィルターの高コントラスト化の要求を達成し、インクジェット用途に適したインクジェットインク、当該インクジェットインクを用いた、高コントラストなカラーフィルター及びその製造方法並びに当該カラーフィルターを有する液晶表示装置及び有機発光表示装置を提供する。
【解決手段】ジケトピロロピロール系顔料と、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体と、顔料分散剤と、少なくとも1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と、硬化剤と、溶剤とを含有する、カラーフィルター用インクジェットインク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター用インクジェットインク、当該カラーフィルター用インクジェットインクを用いたカラーフィルターの製造方法及びカラーフィルター、並びに当該カラーフィルターを用いた液晶表示装置及び有機発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴って、液晶ディスプレイの需要が増加している。家庭用の液晶テレビの普及率も高まっており、益々液晶ディスプレイの市場は拡大する状況にある。また、最近においては、自発光により視認性が高い有機ELディスプレイのような有機発光表示装置も、次世代画像表示装置として注目されている。これらの画像表示装置の性能においては、コントラストや色再現性の向上といったさらなる高画質化や消費電力の低減が強く望まれている。
これらの液晶表示装置や有機発光表示装置には、カラーフィルターが用いられており、このような状況下、カラーフィルターにおいても、高輝度化や高コントラスト化、色再現性の向上といった要望が高まっている。
液晶表示装置のカラー画像の形成は、カラーフィルターを通過した光がそのままカラーフィルターを構成する各画素の色に着色されて、それらの色の光が合成されてカラー画像を形成する。また、有機発光表示装置では、白色発光の有機発光素子にカラーフィルターを用いた場合は液晶表示装置と同様にカラー画像を形成する。
【0003】
このようなカラーフィルターにおいては、通常、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3色の着色パターンを備え、R、G、Bのそれぞれの画素に対応する電極をON、OFFさせることで液晶がシャッターとして作動し、R、G、Bのそれぞれの画素を光が通過してカラー表示が行われる。
【0004】
従来より行われているカラーフィルターの製造方法としては、例えば、フォトリソグラフィー法がある。この方法は、まず基板上に顔料を分散した感光性樹脂層を形成し、これをパターニングすることにより単色のパターンを得る。さらにこの工程を3回繰り返すことにより、R、G、およびBのカラーフィルター層を形成する。
さらに他の方法としては、電着法や、熱硬化樹脂に顔料を分散させてR、G、およびBの3回印刷を行った後、樹脂を熱硬化させる方法等を挙げることができる。
【0005】
しかしながら、いずれの方法も、R、G、及びBの3色を着色するために、同一の工程を3回繰り返す必要があり、コスト高になるという問題や、同様の工程を繰り返すため歩留まりが低下するという問題があった。
【0006】
特許文献1では、熱硬化性樹脂を含有する着色インクをインクジェット方式で基板上に吹き付け、加熱することにより着色層(画素部)を形成することが記載されている。この方法によれば、同時に3色の画素を形成することができ、コストを抑え、歩留まりが向上できる。しかしながら、特許文献1に記載の着色インクは粘度が高く、得られる画素は凸型形状であった。そのため、特許文献1に記載のカラーフィルターはコントラストの低いものであった。
【0007】
特許文献2では、着色剤中に分散した顔料粒子の凝集を防止し、流動性に優れ、カラーフィルター作成時の塗膜中の異物発生を防止することを目的とした顔料分散剤として、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体が記載され、当該顔料誘導体を含有する顔料着色剤が記載されている。しかし特許文献2に記載の顔料着色剤を用いて得られたカラーフィルターは、加熱による微小な析出物の発生を抑制する効果が十分でないため、コントラストが不十分であった。
【0008】
特許文献3では、顔料の長期分散安定性、液滴の吐出安定性、コントラスト等に優れたカラーフィルターの製造を目的として、特定のスルホン化顔料誘導体を含有するインクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるカラーフィルター用インクが開示されている。しかしながら、特許文献3に記載のインクは、顔料分散性が不十分であり、当該インクを用いて形成されたカラーフィルターは画素形状が悪く、更なるコントラストの向上が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−21910号公報
【特許文献2】特開2009−29886号公報
【特許文献3】特開2009−145804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような状況下においてなされたものであり、カラーフィルターの高コントラスト化の要求を達成し、インクジェット用途に適したインクジェットインク、当該インクジェットインクを用いた、高コントラストなカラーフィルター及びその製造方法並びに当該カラーフィルターを有する液晶表示装置及び有機発光表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ジケトピロロピロール系顔料と、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体と、顔料分散剤と、少なくとも1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と、硬化剤と、溶剤とを含有するインクがカラーフィルター用インクジェットインクに適しており、加熱によるコントラストの低下を抑制し、カラーフィルターの高コントラスト化を達成できるとの知見を得た。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0012】
本発明は、ジケトピロロピロール系顔料と、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体と、顔料分散剤と、少なくとも1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と、硬化剤と、溶剤とを含有する、カラーフィルター用インクジェットインクを提供する。
【0013】
本発明に係るカラーフィルター用インクジェットインクにおいては、前記ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体が、下記式(1)で表される化合物であることが、加熱による顔料の凝集および析出を抑制し、カラーフィルターの高コントラスト化の要求を達成可能な点から好ましい。
【0014】
【化1】

(式(1)中、Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、フェニル基、N,N−ジメチルアミノ基、トリフルオロメチル基、シアノ基を表す。kは1〜4の整数である。)
【0015】
また、本発明に係るカラーフィルター用インクジェットインクにおいては、前記ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体が、下記式(2)で表される化合物であることが加熱による顔料の凝集および析出を抑制することにより、カラーフィルターの高コントラスト化が達成され、添加することによる色相の変化が小さいことにより、高輝度化の要求を達成可能な点から好ましい。
【0016】
【化2】

(式(2)中、Xは、それぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表す。Rは、それぞれ独立に、水素原子、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表すか、或いはR同士が結合して環構造を形成していてもよい。Rは、ヘテロ原子を含んでいても良く、置換基を有していてもよく、直鎖状でも分岐状でも良い。nは0〜4の整数であり、mは1〜4の整数である。)
【0017】
本発明に係るカラーフィルター用インクジェットインクにおいては、更に、下記式(3)で表される顔料誘導体を含有することが、微細化した顔料の分散性及び分散安定性が良好で、インクジェットインクの粘度を低下させ、高輝度及び高コントラストな赤色着色層が形成可能となる点から好ましい。
【0018】
【化3】

(式(3)中、A〜Aは、それぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表す。nは1〜5の整数である。)
【0019】
本発明に係るカラーフィルター用インクジェットインクにおいては、前記分散剤が、ポリエチレンイミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体よりなる群から選択される1種以上であることが、顔料の分散性及び分散安定性が良好で、インクジェットインクの粘度を低下させ、吐出安定性が向上し、着色層の形状が良好となる点から好ましい。
【0020】
本発明に係るカラーフィルター用インクジェットインクにおいては、前記ポリアリルアミン誘導体が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有することが、顔料の分散性及び分散安定性が良好で、インクジェットインクの粘度を低下させ、吐出安定性が向上し、着色層の形状が良好となる点から好ましい。
【0021】
【化4】

(式(I)中、XおよびYは、それぞれ独立に水素原子、重合開始剤残基又は連鎖移動触媒残基のいずれかを、Rは遊離のアミノ基、下記一般式(II)又は(III)で示される基を、nは2〜1,000の整数を表す。但しn個のR中、少なくとも1個は一般式(III)で示される基を表す。)
【0022】
【化5】

(式(II)及び式(III)中、Rは遊離のカルボン酸を有するポリエステル、遊離のカルボン酸を有するポリアミド、または遊離のカルボン酸を有するポリエステルアミドのいずれかからカルボキシル基を除いた残基を表す。)
【0023】
本発明は、透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルターであって、当該着色層の少なくとも1つが本発明のカラーフィルター用インクジェットインクを用いて形成された、カラーフィルターを提供する。
【0024】
本発明は、透明基板上の所定領域に、前記本発明のカラーフィルター用インクジェットインクをインクジェット方式によって選択的に付着させて、インキ層を形成する工程と、
当該インキ層を加熱することにより硬化させて、所定パターンの硬化層を形成する工程を有する、カラーフィルターの製造方法を提供する。
【0025】
本発明は、前記本発明のカラーフィルターの製造方法により得られたカラーフィルター又は前記本発明のカラーフィルターと、対向基板と、前記カラーフィルターと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする液晶表示装置を提供する。
また、本発明は、前記本発明のカラーフィルターの製造方法により得られたカラーフィルター又は前記本発明のカラーフィルターと、有機発光体とを有することを特徴とする有機発光表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、カラーフィルターの高コントラスト化の要求を達成し、インクジェット用途に適したインクジェットインク、当該インクジェットインクを用いた、高コントラストなカラーフィルター及びその製造方法並びに当該カラーフィルターを有する液晶表示装置及び有機発光表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のカラーフィルターの一例を示す概略図である。
【図2】本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るカラーフィルター用インクジェットインク、カラーフィルターの製造方法、カラーフィルター、液晶表示装置及び有機発光表示装置について順に説明する。
なお、本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波、さらには放射線が含まれ、放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線のことを言う。また本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルのいずれかであることを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートのいずれかであることを意味する。
【0029】
1.カラーフィルター用インクジェットインク
本発明に係るカラーフィルター用インクジェットインクは、ジケトピロロピロール系顔料と、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体と、顔料分散剤と、少なくとも1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と、硬化剤と、溶剤とを含有することを特徴とする。
【0030】
本発明のカラーフィルター用インクジェットインクは、ジケトピロロピロール系顔料と、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体と、顔料分散剤と、少なくとも1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と、硬化剤と、溶剤とを含有することにより、加熱によるコントラストの低下が抑制されるため、カラーフィルターの高コントラスト化が達成される。
【0031】
上記特定の組み合わせにより、上記のような効果を発揮する作用としては、未解明であるが以下のように推定される。
溶媒中での顔料分散過程においては、微細化された顔料表面に顔料分散剤が適切に吸着して溶媒中での顔料の安定化が達成される。
この分散過程において、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体は、ジケトピロロピロール系顔料の類似骨格部分により、ジケトピロロピロール系顔料の表面に吸着して顔料表面を安定化させ、一方、スルホン化部分は、顔料分散剤と相互作用して分散剤が顔料表面に吸着しやすくするため、微細化した顔料がより安定して分散されるものと推定される。
また、カラーフィルター製造工程では、基板にインクを塗布した後、加熱することにより、インクが硬化される。この加熱工程においてジケトピロロピロール系顔料の凝集・析出が起こりやすくコントラスト低下の原因となる。
インクジェットインクがジケトピロロピロール系顔料と、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体と、顔料分散剤と、少なくとも1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と、硬化剤と、溶剤とを含有することにより、まず上記の理由で顔料が安定に分散されているため、加熱硬化時における凝集が抑制され、さらに顔料表面近傍にエポキシの硬化を促進する官能基が多く存在するために、顔料表面近傍のエポキシ化合物の硬化が促進され、凝集が抑制されると推定される。
よって、加熱によるコントラストの低下が抑えられるため、高コントラストなカラーフィルターが得られる。
【0032】
さらに、本願のインクジェットインクは、微細化されたジケトピロロピロール系顔料が安定して分散されているため、吐出安定性に優れ、目詰まりを起こしにくく、安定してカラーフィルターを製造することが可能である。
【0033】
本発明のカラーフィルター用インクジェットインクは、少なくとも、ジケトピロロピロール系顔料と、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体と、顔料分散剤と、少なくとも1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と、硬化剤と、溶剤とを含有するものであり、必要に応じて他の成分を含有していても良いものである。
以下、このような本発明のカラーフィルター用インクジェットインクの各成分について順に説明する。
【0034】
<ジケトピロロピロール系顔料>
本発明において用いられるジケトピロロピロール系顔料とは、下記式(4)で表される構造を有する。
【0035】
【化6】

(式(4)中、Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、フェニル基、N,N−ジメチルアミノ基、トリフルオロメチル基、シアノ基を表す。)
【0036】
ジケトピロロピロール系顔料としては、中でも、高輝度及び高コントラストなカラーフィルターを形成可能な点から、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド270、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73が好ましく、色相及び着色力の点から、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255であることがより好ましい。
ジケトピロロピロール系顔料は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0037】
本発明に用いられるジケトピロロピロール系顔料の平均一次粒径としては、カラーフィルターの着色層とした場合に、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されない。コントラストを向上させる点から、10〜50nmの範囲内であることが好ましく、10〜30nmの範囲内であることがより好ましい。顔料の平均一次粒径が上記範囲であることにより、本発明のインクジェットインクを用いて製造されたカラーフィルターを高コントラストで、かつ高品質なものとすることができる。
なお、上記顔料の平均粒径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、個々の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、その平均をその粒子の粒径とした。次に、100個以上の粒子について、それぞれの粒子の体積(質量)を、求めた粒径の直方体と近似して求め、体積平均粒径を求めそれを平均粒径とした。なお、電子顕微鏡は透過型(TEM)または走査型(SEM)のいずれを用いても同じ結果を得ることができる。
【0038】
<ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体>
本発明において用いられるジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体は、少なくとも1つのスルホ基(−SOH)、スルホナト基及び/又はスルホンアミド基が前記ジケトピロロピロール系顔料に結合した構造を有するものであり、更に、スルホ基の一部、若しくは全部がアミンやアンモニウムヒドロキシド、クロリド、ブロミド等や、金属等によって塩形成され、スルホン酸塩となっていても良い。
【0039】
ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体は、前記ジケトピロロピロール系顔料と類似の骨格を有するため、顔料分散液中にジケトピロロピロール系顔料と共存させた場合、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体のジケトピロロピロール部位が、ジケトピロロピロール系顔料の表面に吸着若しくは結合し、スルホン化誘導体のスルホ基、スルホナト基及び/又はスルホンアミド基部分が、分散剤と相互作用することにより、分散工程における顔料同士の凝集を抑制し、インクジェットインク中の顔料の分散性、分散安定性が向上するものと推定される。
【0040】
本発明に用いられるジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体は、カラーフィルターの高コントラスト化の要求を達成可能な点から、中でも、下記式(1)で表される化合物又は下記式(2)で表される化合物であることが好ましく、更に、カラーフィルターの高コントラスト化及び添加することによる色相の変化が小さいことにより、高輝度化の要求を達成可能な点から、下記式(2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0041】
【化7】

(式(1)中、Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、フェニル基、N,N−ジメチルアミノ基、トリフルオロメチル基、シアノ基を表す。kは1〜4の整数である。)
【0042】
【化8】

(式(2)中、Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、フェニル基、N,N−ジメチルアミノ基、トリフルオロメチル基、シアノ基を表す。Rは、それぞれ独立に、水素原子、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表すか、或いはR同士が結合して環構造を形成していてもよい。Rは、ヘテロ原子を含んでいても良く、置換基を有していてもよく、直鎖状でも分岐状でも良い。nは0〜4の整数であり、mは1〜4の整数である。)
【0043】
化学式(1)及び(2)におけるXは、前記化学式(4)で表されるジケトピロロピロール系顔料におけるXと同様のものとすることができる。
【0044】
化学式(2)中、Rにおける、飽和又は不飽和アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等、炭素数1〜20の飽和又は不飽和アルキル基が挙げられる。Rにおける、飽和又は不飽和アルキル基は直鎖であっても良く、分岐を有していても良い。
【0045】
Rにおける、飽和又は不飽和シクロアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、シクロプロピル基、シクロへキシル基等、炭素数3〜20の飽和又は不飽和シクロアルキル基が挙げられる。
【0046】
Rにおける、アリール基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、トリル基等の炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。また、Rにおける、アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、3−フェニルプロピル基等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられる。
【0047】
R同士が結合して環構造を形成しているとは、R同士が窒素原子を介して環構造を形成していることをいう。環構造は特に限定されないが、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環等が挙げられる。
【0048】
Rが更に有していても良い置換基としては、特に限定されないが、例えば、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0049】
化学式(2)で表されるジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体のRとしては、高輝度及び高コントラスト化を達成する点から、2つのRのうち、一方が水素原子であり、他方がアミノアルキル基(−(CH−NR’R”)、カルボキシアルキル基(−(CH−COOH)又はスルホナトアルキル基(−(CH−SOH)のうちの一つであることが好ましい。中でも、インクジェットインクの粘度が低下して、高輝度及び高コントラスト化を達成する点から、2つのRのうち、一方が水素原子で、他方がカルボキシアルキル基(−(CH−COOH)であることがより好ましい。なお、pは1〜6の整数であることが好ましい。
【0050】
アミノアルキル基(−(CH−NR’R”)において、R’及びR”はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の置換されていても良い飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基若しくは芳香族炭化水素基、又は、隣接する窒素原子と共に更に窒素、酸素、若しくは硫黄原子を含んでいても良い複素環を形成したものを表し、アミノアルキル基(−(CH−NR’R”)としては例えば、ピペリジノメチル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、ジエチルアミノプロピル、ジブチルアミノプロピル、ピペリジノエチル、ピペコリノエチル、モルホリノエチル、ピペリジノプロピル、ピペコリノプロピル、ジエチルアミノヘキシル、ジエチルアミノエトキシプロピル、ジエチルアミノブチル、ジメチルアミノアミル、N−N−メチル−ラウリル−アミノプロピル、2−エチルヘキシルアミノエチル、ステアリルアミノエチル、オレイルアミノエチル等が挙げられる。
【0051】
上記式(1)においてスルホ基の置換数kは1〜4である。中でも、立体障害や分散剤との親和性の点から1〜3であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、更に1であることがより好ましい。
【0052】
また、上記式(2)において、スルホ基の置換数nは0〜4であり、スルホンアミド基の置換数mは1〜4である。中でも、立体障害や分散剤との親和性の点から、n及びmの和が1〜4であることが好ましく、1〜3であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。
【0053】
ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体は、例えば、ジケトピロロピロール系顔料を、濃硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸又はこれらの混合液などに投入してスルホン化反応を行うことにより製造することができる。スルホン化反応後、反応液を大量の水で希釈するか、あるいはアミン塩を製造する際にはアミン水溶液で中和することが好ましく、得られた懸濁液を濾過した後に水系の洗浄液で洗浄し、乾燥する。用いられるアミン水溶液のアミンを適宜選択することにより、スルホン酸のアミン塩を適宜設計通りに導入できる。また、スルホン酸アミドを製造する際には、上述の方法で得られたジケトピロロピロール系顔料のスルホン化物に塩化チオニルを作用させ、スルホン酸クロリドとした後にアミンと混合することでスルホン化アミドを適宜設計どおりに導入できる。
【0054】
上記の方法でスルホン化を行う場合、反応液濃度、反応温度、反応時間などを調整することにより1分子当たりのスルホン酸基やスルホンアミド基の導入量を制御することができる。
【0055】
ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体としては、1種単独で又は2種類以上混合して用いることができる。例えば、スルホン酸基及び/又はスルホンアミド基の種類、置換位置又は置換数が異なるジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体を2種以上混合して用いても良い。
【0056】
本発明のカラーフィルター用インクジェットインクにおいて、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体の含有量は特に限定されない。中でも、顔料の分散性及び分散安定性を向上し、高輝度及び高コントラストな赤色着色層が形成可能な点から、前記ジケトピロロピロール系顔料100質量部に対して、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体が1〜30質量部であることが好ましく、5〜15質量部であることがより好ましい。
【0057】
<顔料分散剤>
本発明において、顔料分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、次に例示するような高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。また、溶媒に少量溶解するような顔料誘導体を顔料分散剤として用いてもよい。
【0058】
高分子分散剤としては、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;アミノ基を有するポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体のアミノ基の(部分)酸変性物;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩類等を挙げることができる。
【0059】
本発明に係るカラーフィルター用インクジェットインクにおいては、高分子分散剤の中でも、顔料同士の凝集を抑制することが可能で、インクの吐出安定性が向上し、分散性及び分散安定性が良好で、高輝度及び高コントラストな着色層が形成可能で、着色層の形状が良好となる点から、ポリエチレンイミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体よりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0060】
ここで、本発明において用いられるポリエチレンイミン誘導体とは、6−ヒドロキシヘキサン酸と、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシデカン酸および4−ヒドロキシデカン酸から選択される少なくとも1の他のヒドロキシカルボン酸とから誘導しうる複数の繰り返し単位を各々が含有している複数のポリ(カルボニルアルキレンオキシ)鎖を有していて、6−ヒドロキシヘキサン酸から誘導しうる単位の他のヒドロキシカルボン酸(単数または複数)から誘導しうる単位に対する質量比が90:10〜10:90の範囲内であるポリエチレンイミン基、あるいはそれらの酸との塩を含む分散剤である。
好ましくは、6−ヒドロキシヘキサン酸から誘導しうる単位の、他のヒドロキシカルボン酸(単数または複数)から誘導しうる単位に対する質量比は、20:80から80:20の範囲内であり、特には20:80から50:50の範囲内である。
【0061】
上記ポリエチレンイミン(以下、「PEI」と称する場合がある)基は、分枝でも直鎖でもよく、典型的には少なくとも500、好ましくは少なくとも1,000、特には少なくとも10,000の質量平均分子量を有している。平均分子量は、好ましくは600,000より小さく、より好ましくは200,000より小さく、特には50,000より小さい。
上記ポリ(カルボニルアルキレンオキシ)鎖(本明細書の以下において「PCAO鎖」と称す)は、上記のヒドロキシカルボン酸(または、適当ならば対応するラクトン類)の重合によって誘導しうるポリエステル鎖であり、上記鎖は、6−ヒドロキシヘキサン酸と上記の他のヒドロキシカルボン酸の少なくとも1とから誘導しうる複数のカルボニルアルキレンオキシ(以下、「CAO」と称する場合がある)繰り返し単位を、ブロックまたはランダム配置中に含むコポリエステル鎖である。PCAO鎖は典型的には、平均で、2から100、好ましくは3から40、より好ましくは4から15の上記CAO基を含有しており、鎖終止末端基(chain−stopping terminal group)を、例えば、置換されていてもよいアルキルカルボニル、特には12以上の炭素原子を含有しているアルキルカルボニル基のようなオキシ末端に有していてもよい。
【0062】
PCAO鎖は、PEI基とPCAO鎖のヒドロキシカルボン酸との間に形成される共有アミドおよび/またはイオン性塩結合によってPEI基に付着されていてもよい。当該酸は、本明細書中以下において、PCAO酸と称する場合がある。そのようなアミド結合は、PCAO酸の末端カルボキシレート基とPEI中の第一級または第二級アミノ基との反応によって形成されてもよい一方、塩結合は、PCAO酸の末端カルボキシレート基とPEI中の置換アンモニウム基の正に帯電した窒素原子との間に形成される。
PCAO鎖のPEI基に対する質量比は、典型的には、2:1から30:1、好ましくは3:1から20:1、より好ましくは8:1から20:1、そして特には10:1から15:1の範囲内である。
【0063】
ポリエチレンイミン誘導体は、PCAO鎖に結合していないPEI基中の窒素原子が遊離アミノ基として存在しているようなポリアミンの形態、または上記窒素原子が、有機および/または無機酸から誘導しうる対イオンと会合した置換アンモニウム基として存在しているような塩の形態、または遊離アミノ基と置換アンモニウム基とを含有する中間体形態であってもよい。
ポリエチレンイミン誘導体は、PEIをPCAO酸(単数または複数)またはその前駆体と反応させることにより調製することができる。
【0064】
また、本発明において顔料分散剤として用いられるポリアリルアミン誘導体とは、ポリアリルアミンの側鎖のアミノ基をポリエステル、ポリアミド、ポリエステルとポリアミドの共縮合物(ポリエステルアミド)のいずれかで修飾したものが挙げられる。具体的には、顔料の分散されるべき樹脂に対する相溶性の範囲が広く、且つ優れた顔料分散能を有する、下記一般式(I)で表されるポリアリルアミン誘導体が挙げられる。
【0065】
【化9】

(式(I)中、XおよびYは、それぞれ独立に水素、重合開始剤残基又は連鎖移動触媒残基のいずれかを、Rは遊離のアミノ基、下記一般式(II)又は(III)で示される基を、nは2〜1,000の整数を表す。但しn個のR中、少なくとも1個は一般式(III)で示される基を表す。)
【0066】
【化10】

(式(II)及び(III)中、Rは遊離のカルボン酸を有するポリエステル、遊離のカルボン酸を有するポリアミド、または遊離のカルボン酸を有するポリエステルアミドのいずれかからカルボキシル基を除いた残基を表す。)
【0067】
本発明に用いられるポリアリルアミン誘導体は、例えばポリアリルアミンと、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミド又はエステルとアミドの共縮合物(ポリエステルアミド)の3種の化合物の中から選ばれる1種以上の化合物とを反応させて得られる。
更に具体的には、上記ポリアリルアミン誘導体は、例えば、重合度2〜1,000のポリアリルアミンと、遊離のカルボキシル基を有する、下記一般式(IV)または(V)で表されるポリエステルおよび下記一般式(VI)または(VII)で表されるポリアミドの1種を単独でまたは2種以上を併用して原料として作成することができる。
【0068】
【化11】

(式中Rは、炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐のアルキレン基を、そしてaは2〜100の整数を示す。)
【0069】
【化12】

(式中Rは、炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐のアルキレン基、CまたはCH=CHを、Rは炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐のアルキレン基、ポリアルキレングリコールから2つの水酸基を除いた残基を、そしてbは2〜100の整数を示す。また、前記鎖中にエーテル結合を有することもある。)
【0070】
【化13】

(式中Rは、炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐のアルキレン基を、そしてcは2〜100の整数を示す。)
【0071】
【化14】

(式中Rは、炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐のアルキレン基、CまたはCH=CHを、Rは炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐のアルキレン基を、そしてdは2〜100の整数を示す。)
【0072】
なお、本発明に用いられるポリアリルアミン誘導体はポリアリルアミンに、一般式(IV)と一般式(V)の繰り返し成分がランダムに重合したポリエステル、一般式(VI)と一般式(VII)の繰り返し成分がランダムに重合したポリアミド、更に一般式(IV)並びに/又は(V)、及び一般式(VI)並びに/又は(VII)の繰り返し成分がランダムに重合したポリエステルアミドを反応させても製造することができる。このポリアリルアミン誘導体は、例えば、重合度2〜1,000のポリアリルアミンと、遊離のカルボキシル基を有する、下記一般式(IV)または(V)で表されるポリエステルおよび下記一般式(VI)または(VII)で表されるポリアミドの1種を単独でまたは2種以上を併用して原料として作成することができる。
【0073】
本発明に用いられるポリアリルアミン誘導体は、中でもRが遊離のカルボン酸を有するポリエステルからカルボキシル基を除いた残基であることが好ましい。また、上記ポリエステルは500〜20,000の範囲内の数平均分子量を有することが好ましい。
また、式(I)において、n個のR中、一般式(III)のポリアリルアミンのアミノ基に対する割合が60〜95%であることが好ましい。
【0074】
上記ポリアリルアミン誘導体の市販品としてはアジスパーPB821、アジスパーPB881(味の素ファインテクノ株式会社製)等を、上記ポリエチレンイミン誘導体の市販品としてはSolsperse33500(日本ルーブリゾール社製)等を用いることができる。
【0075】
<少なくとも1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物>
本発明のインクジェットインクにおいて、少なくとも1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物は、熱硬化性成分として用いられる。当該エポキシ化合物を用いることにより、本発明のインクジェットインクを用いて形成された膜は、硬化収縮が小さく、基板との密着性が良好なものとなる。
本発明において、エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロへキシル基等を示すことができる。エポキシ化合物としては、カルボン酸により硬化し得る公知の多価エポキシ化合物を挙げることができ、このようなエポキシ化合物は、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新社刊(昭和62年)等に広く開示されており、これらを用いることが可能である。
【0076】
上記エポキシ化合物1分子中に有するエポキシ基の数は、2個以上であればよく、特に限定されない。中でも、1分子中に2〜50個のエポキシ基を有することが好ましく、2〜20個のエポキシ基を有することがより好ましい。
【0077】
少なくとも1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物としては、比較的分子量の高い重合体であるエポキシ化合物(以下、「バインダ性エポキシ化合物」ということがある)を用いることができる。
バインダ性エポキシ化合物としては、少なくとも下記式(VIII)で表される構成単位及び下記式(IX)で表される構成単位から構成され、且つグリシジル基を2個以上有する重合体を用いることができる。
【0078】
【化15】

(R11は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、R12は炭素数1〜12の炭化水素基である。)
【0079】
【化16】

(R13は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。)
【0080】
式(VIII)で表される構成単位をバインダ性エポキシ化合物の構成単位として用いることにより、本発明の樹脂組成物から形成される硬化塗膜に充分な硬度および透明性を付与することができる。式(VIII)において、R11として好ましいのは水素またはメチル基である。R12は、炭素数1〜12の炭化水素基であり、直鎖脂肪族、脂環式、芳香族いずれの炭化水素基であってもよく、さらに付加的な構造、例えば二重結合、炭化水素基の側鎖、スピロ環の側鎖、環内架橋炭化水素基等を含んでいてもよい。
【0081】
上記式(VIII)で表される構成単位を誘導するモノマーとして具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、パラ−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等を例示することができる。
【0082】
式(IX)で表される構成単位は、重合体中にエポキシ基(エポキシの反応点)を導入するために用いられる。当該重合体を含有する樹脂組成物は保存安定性に優れており、保存中および吐出作業中に粘度上昇を生じ難いが、その理由の一つは式(IX)中のエポキシ基がグリシジル基だからであると推測される。
式(IX)において、R13として好ましいのは水素またはメチル基である。式(IX)で表される構成単位を誘導するモノマーとして、具体的にはグリシジル(メタ)アクリレートを例示することができ、特にグリシジルメタクリレート(GMA)が好ましい。
【0083】
上記重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。また、上記重合体は、カラーフィルターの各細部に必要とされる性能、例えば硬度や透明性等が確保できる限り、式(VIII)あるいは式(IX)以外の主鎖構成単位を含んでいてもよい。そのようなモノマーとして具体的には、アクリロニトリル、スチレン等を例示することができる。
【0084】
上記バインダ性エポキシ化合物中の式(VIII)の構成単位と式(IX)の構成単位の含有量は、10:90〜90:10の範囲にあるのが好ましい。式(VIII)の構成単位の量が上記の比90:10よりも過剰な場合には、硬化の反応点が少なくなって架橋密度が低くなるおそれがあり、一方、式(IX)の構成単位の量が上記の比10:90よりも過剰な場合には、嵩高い骨格が少なくなって硬化収縮が大きくなるおそれがある。
【0085】
また、上記バインダ性エポキシ化合物の質量平均分子量は、ポリスチレン換算質量平均分子量で表した時に3,000以上、特に4,000以上であることが好ましい。上記バインダ性エポキシ化合物の分子量が3,000よりも小さすぎるとカラーフィルターの細部としての硬化層に要求される強度、耐溶剤性等の物性が不足し易いからである。一方、上記バインダ性エポキシ化合物の質量平均分子量は、ポリスチレン換算質量平均分子量で表した時に20,000以下であることが好ましく、更に15,000以下であることが特に好ましい。当該分子量が20,000よりも大きすぎると粘度上昇が起こり易くなり、インクジェット方式で吐出ヘッドから吐出する時の吐出量の安定性や吐出方向の直進性が悪くなるおそれや、長期保存の安定性が悪くなるおそれがあるからである。なお上記バインダ性エポキシ化合物は、例えば特開2006−106503号公報の段落番号0148に記載されているような方法で合成することができる。
【0086】
また、少なくとも1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物としては、上記バインダ性エポキシ化合物よりも分子量が小さいもの(以下、「多官能エポキシ樹脂」ということがある。)を用いても良い。中でも、上記バインダ性エポキシ化合物と当該多官能性エポキシ化合物を併用することが好ましい。この場合、多官能エポキシ化合物のポリスチレン換算の質量平均分子量は、これと組み合わせるバインダ性エポキシ化合物よりも小さいことを条件に、4,000以下が好ましく、3,000以下が特に好ましい。樹脂組成物に比較的分子量が小さい多官能エポキシ化合物を添加すると、樹脂組成物中にエポキシ基が補充されてエポキシの反応点濃度が増加し、架橋密度を高めることができる。
【0087】
多官能エポキシ化合物の中でも、酸−エポキシ反応の架橋密度を上げるためには、一分子中にエポキシ基を4個以上有するエポキシ化合物を用いるのが好ましい。特に、インクジェット方式の吐出ヘッドからの吐出性を向上させるために前記バインダ性エポキシ化合物の質量平均分子量を10,000以下とした場合には、硬化層の強度や硬度が低下し易いので、そのような4官能以上の多官能エポキシ化合物を樹脂組成物に配合して架橋密度を充分に上げるのが好ましい。
【0088】
多官能エポキシ化合物としては、一分子中にエポキシ基を2個以上含有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを使用できる。
【0089】
より具体的には、商品名エピコート828(ジャパンエポキシレジン社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名YDF−175S(東都化成社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂、商品名YDB−715(東都化成社製)などの臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名EPICLON EXA1514(大日本インキ化学工業社製)などのビスフェノールS型エポキシ樹脂、商品名YDC−1312(東都化成社製)などのハイドロキノン型エポキシ樹脂、商品名EPICLON EXA4032(大日本インキ化学工業社製)などのナフタレン型エポキシ樹脂、商品名エピコートYX4000H(ジャパンエポキシレジン社製)などのビフェニル型エポキシ樹脂、商品名エピコート157S70(ジャパンエポキシレジン社製)などのビスフェノールA型ノボラック系エポキシ樹脂、商品名エピコート154(ジャパンエポキシレジン社製)、商品名YDPN−638(東都化成社製)などのフェノールノボラック型エポキシ樹脂、商品名YDCN−701(東都化成社製)などのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、商品名EPICLON HP−7200(大日本インキ化学工業社製)などのジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、商品名エピコート1032H60(ジャパンエポキシレジン社製)などのトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、商品名VG3101M80(三井化学社製)などの3官能型エポキシ樹脂、商品名エピコート1031S(ジャパンエポキシレジン社製)などのテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、商品名デナコールEX−411(ナガセ化成工業社製)などの4官能型エポキシ樹脂、商品名ST−3000(東都化成社製)などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名エピコート190P(ジャパンエポキシレジン社製)などのグリシジルエステル型エポキシ樹脂、商品名YH−434(東都化成社製)などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、商品名YDG−414(東都化成社製)などのグリオキザール型エポキシ樹脂、商品名エポリードGT−401(ダイセル化学社製)、商品名EHPE3150(ダイセル化学社製)などの脂環式多官能エポキシ化合物、トリグリシジルイソシアネート(TGIC)などの複素環型エポキシ樹脂などを例示することができる。また、必要であれば、エポキシ反応性希釈剤として、商品名ネオトートE(東都化成社製)などを混合することができる。
【0090】
上記バインダ性エポキシ化合物と、必要に応じて配合される多官能エポキシ化合物の配合割合は、質量比ではバインダ性エポキシ化合物を10〜80質量部と多官能エポキシ化合物を10〜60質量部の割合で配合するのが好ましく、バインダ性エポキシ化合物を20〜60質量部と多官能エポキシ化合物を20〜50質量部の割合で配合するのが更に好ましく、バインダ性エポキシ化合物を30〜40質量部と多官能エポキシ化合物を25〜35質量部の割合で配合するのが特に好ましい。
【0091】
<硬化剤>
本発明のカラーフィルター用インクジェットインクにおいては、前記エポキシ化合物と共に硬化剤が組み合わせて配合される。硬化剤としては、例えば、多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸を用いる。
多価カルボン酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ジメチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、無水ナジン酸などの脂肪族または脂環族ジカルボン酸無水物;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族多価カルボン酸二無水物;無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸無水物;エチレングリコールビストリメリテイト、グリセリントリストリメリテイトなどのエステル基含有酸無水物を挙げることができ、特に好ましくは、芳香族多価カルボン酸無水物を挙げることができる。また、市販のカルボン酸無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤も好適に用いることができる。
また、本発明に用いられる多価カルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸などの脂肪族多価カルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族多価カルボン酸、およびフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸を挙げることができ、好ましくは芳香族多価カルボン酸を挙げることができる。
【0092】
これら硬化剤は、1種単独でも2種以上の混合でも用いることができる。本発明に用いられる硬化剤の配合量は、熱硬化性樹脂として、エポキシ基を有する化合物を用いる場合には、エポキシ基を含有する成分(バインダ性エポキシ化合物と多官能エポキシ化合物の合計量)100質量部当たり、通常は1〜100質量部の範囲であり、好ましくは5〜50質量部である。硬化剤の配合量が1質量部未満であると、硬化が不充分となり、強靭な塗膜を形成することができないおそれがある。また、硬化剤の配合量が100質量部を超えると、塗膜の基板に対する密着性が劣るおそれがある。
【0093】
<溶剤>
本発明のカラーフィルター用インクジェットインクにおいて、溶剤としては、該熱硬化性樹脂組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であればよい。中でもインクの急激な粘度上昇や目詰まりが発生せず、吐出の直進性や安定性に悪影響を及ぼさないで吐出性を向上させる点から、沸点が180℃〜260℃、特に210℃〜260℃で且つ常温(特に18℃〜25℃の範囲)での蒸気圧が0.5mmHg(66.7Pa)以下、特に0.1mmHg(13.3Pa)以下の溶剤成分を主溶剤として用いることが好ましい。例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アジピン酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、及び、コハク酸ジエチルなどを例示することができる。なお、「主溶剤」とは、溶剤全量のうち50重量%以上を占める溶剤のことである。主溶剤は、できるだけ高い配合割合で用いるのが望ましく、具体的には70重量%以上、好ましくは90重量%以上とし、最も好ましくは100重量%の単独溶剤である。
【0094】
これらの主溶剤は乾燥が遅いためインクジェットでの間欠吐出性に優れる一方、塗膜形成時に乾燥が遅いことから、生産効率に問題がある場合があるので、生産効率を向上させる目的で、主溶剤に、より低沸点溶剤を混合しても良い。主溶剤と組み合わせて用いることが好ましい他の副溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルのようなグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールオリゴマーエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールオリゴマーエーテルエステル類;酢酸エチル、安息香酸プロピルのような脂肪族又は芳香族エステル類;炭酸ジエチルのようなジカルボン酸ジエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチルのようなアルコキシカルボン酸エステル類;アセト酢酸エチルのようなケトカルボン酸エステル類;エタノール、イソプロパノール、フェノールのようなアルコール類又はフェノール類;ジエチルエーテル、アニソールのような脂肪族又は芳香族エーテル類;2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールのようなアルコキシアルコール類;ジエチレングリコール、トリプロピレングリコールのようなグリコールオリゴマー類;2−エトキシエチルアセテートのようなアルコキシアルコールエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類等が挙げられる。
【0095】
<他の成分>
(他の顔料誘導体)
本発明の効果が損なわれない限り、他の顔料誘導体を含んでいても良い。本発明のカラーフィルター用インクジェットインクにおいて好適に用いられる他の顔料誘導体としては、下記化学式(3)で表される顔料誘導体が挙げられる。
【0096】
【化17】

(式(3)中、A〜Aは、それぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表す。nは1〜5の整数である。)
【0097】
<化学式(3)で表される顔料誘導体>
本発明のカラーフィルター用インクジェットインクにおいては、上記化学式(3)で表される顔料誘導体を、更に併用することが好ましい。併用する場合には、ジケトピロロピロール系顔料をより微細化して分散することが可能になり、分散性及び分散安定性を向上し、インクジェットインクの粘度を低下させ、高輝度及び高コントラストな赤色着色層が形成可能となる。
【0098】
化学式(3)中、A〜Aはそれぞれ独立に、水素原子、塩素原子又は臭素原子を表わす。中でも、カラーフィルターの高コントラストを達成しやすい点から、A〜Aのうち4つ以上が塩素原子であることが好ましく、更にA〜Aのうち6つ以上が塩素原子であることが好ましく、中でも、A〜Aの全てが塩素原子であることがより好ましい。
【0099】
化学式(3)で表される顔料誘導体におけるnは1〜5である。中でも、立体障害や分散剤との親和性の点から、1〜3であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、更に1であることがより好ましい。
【0100】
本発明のカラーフィルター用インクジェットインクにおいて、化学式(3)で表される顔料誘導体を用いる場合、当該顔料誘導体の含有量は特に限定されない。中でも、ジケトピロロピロール系顔料をより微細化して分散することができ、分散性及び分散安定性を向上し、インクジェットインクの粘度を低下させ、高輝度及び高コントラストな赤色着色層が形成可能な点から、前記ジケトピロロピロール系顔料100質量部に対して、化学式(3)で表される顔料誘導体が1〜30質量部であることが好ましく、5〜15質量部であることがより好ましい。
【0101】
化学式(3)で表される顔料誘導体は、例えば、濃硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸又はこれらの混合液などに上記キノフタロン系顔料を投入してスルホン化反応を行うことにより製造することができる。
上記の方法でスルホン化を行う場合、反応液濃度、反応温度、反応時間などを調整することにより1分子当たりのスルホン酸基の導入量を制御することができる。
キノフタロン系顔料としては、C.I.ピグメントイエロー138が好適に用いられる。
【0102】
(他の顔料)
本発明のカラーフィルター用インクジェットインクにおいては、本発明の効果が損なわれない限り、他の顔料を含んでいても良い。他の顔料としては、例えば、カラーフィルター用インクジェットインクを所望の色に調製するために用いられる、赤色顔料、黄色顔料等が挙げられる。
他の赤色顔料としては、例えば、例えば、C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド4、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド8、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド10、C.I.ピグメントレッド11、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド14、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド18、C.I.ピグメントレッド19、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド30、C.I.ピグメントレッド31、C.I.ピグメントレッド32、C.I.ピグメントレッド37、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド40、C.I.ピグメントレッド41、C.I.ピグメントレッド42、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド49:1、C.I.ピグメントレッド49:2、C.I.ピグメントレッド50:1、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド57:2、C.I.ピグメントレッド58:2、C.I.ピグメントレッド58:4、C.I.ピグメントレッド60:1、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド63:2、C.I.ピグメントレッド64:1、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド83、C.I.ピグメントレッド88、C.I.ピグメントレッド90:1、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド101、C.I.ピグメントレッド102、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド105、C.I.ピグメントレッド106、C.I.ピグメントレッド108、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド113、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド151、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド172、C.I.ピグメントレッド174、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド188、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド193、C.I.ピグメントレッド194、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド243、C.I.ピグメントレッド265等が挙げられる。
【0103】
他の赤色顔料を用いる場合、その含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、高輝度を達成する点から、当該他の赤色顔料の含有量は、ジケトピロロピロール系顔料100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、ジケトピロロピロール系顔料のみを用いることが更により好ましい。
また、高コントラスト化を達成する点からは、他の顔料として、C.I.ピグメントレッド177を用いることが好ましい。C.I.ピグメントレッド177を用いる場合、C.I.ピグメントレッド177の含有量は、ジケトピロロピロール系顔料100質量部に対して、5〜30質量部であることが好ましく、5〜10質量部であることがより好ましい。
【0104】
また、他の黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー20、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー31、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー60、C.I.ピグメントイエロー61、C.I.ピグメントイエロー65、C.I.ピグメントイエロー71、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー81、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー100、C.I.ピグメントイエロー101、C.I.ピグメントイエロー104、C.I.ピグメントイエロー106、C.I.ピグメントイエロー108、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー113、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー116、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー119、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー126、C.I.ピグメントイエロー127、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー152、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
他の顔料は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0105】
(触媒)
本発明のカラーフィルター用インクジェットインクにおいては、硬化層の硬度および耐熱性を向上させるために、酸−熱硬化性官能基間の熱硬化反応を促進できる触媒を添加してもよい。そのような触媒としては、加熱硬化時に活性を示す熱潜在性触媒を用いることができる。
熱潜在性触媒は、加熱されたとき、触媒活性を発揮し、硬化反応を促進し、硬化物に良好な物性を与えるものであり、必要により加えられるものである。この熱潜在性触媒は、60℃以上の温度で酸触媒活性を示すものが好ましく、このようなものとしてプロトン酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、オニウム化合物類等が挙げられ、特開平4−218561号公報に記載されているような各種の化合物を使用することができる。
熱潜在性触媒を用いる場合には、少なくとも1分子中にエポキシ基を2個以上有する化合物及び硬化剤の合計100質量部に対して、通常は0.01〜10.0質量部程度の割合で配合する。
【0106】
その他、本発明において任意に用いることができる添加剤としては、例えば重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等などが挙げられる。
これらの中で、用いることができる界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリエステル類、3級アミン変性ポリウレタン類等を挙げることができる。また、その他にもフッ素系界面活性剤も用いることができる。
さらに、可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジル等が挙げられる。消泡剤、レベリング剤としては、例えばシリコン系、フッ素系、アクリル系の化合物等が挙げられる。
【0107】
<カラーフィルター用インクジェットインクにおける各成分の配合割合>
顔料誘導体を含む顔料の合計の含有量は、カラーフィルター用インクジェットインクの固形分全量に対して、10〜50質量%、より好ましくは20〜40質量%の割合で配合することが好ましい。顔料が少なすぎると、カラーフィルター用インクジェットインクを所定の膜厚(通常は1.0〜5.0μm)とした際の透過濃度が十分でないおそれがあり、また顔料が多すぎると、カラーフィルター用インクジェットインクを用いて形成した着色層の基板への密着性、表面荒れ、硬さ等の着色層としての特性が不十分となるおそれがあり、またインクジェットインク中の顔料分散に使われる分散剤の量の比率も多くなるために、耐熱性等の特性も不十分になるおそれがある。尚、本発明において固形分は、上述した溶媒以外のもの全てであり、溶媒中に溶解しているバインダ成分等も含まれる。
また、顔料分散剤の合計の含有量は、カラーフィルター用インクジェットインクの固形分全量に対して、1〜40質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも5〜30質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が、カラーフィルター用インクジェットインクの固形分全量に対して、1質量%未満の場合には、顔料を均一に分散することが困難になる恐れがあり、40質量%を超える場合には、硬化性の低下を招く恐れがある。
少なくとも1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物は、これらの合計量が、カラーフィルター用インクジェットインクの固形分全量に対して15〜89質量%、好ましくは25〜80質量%の割合で配合するのが好ましい。
また、溶剤の含有量としては、着色層を精度良く形成することができるものであれば特に限定されるものではない。該溶剤を含むカラーフィルター用インクジェットインクの全量に対して、通常、65〜95質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも75〜88質量%の範囲内であることが好ましい。上記溶剤の含有量が、上記範囲内であることにより、吐出性に優れたものとすることができる。
【0108】
次に、本発明に係るカラーフィルター及びカラーフィルターの製造方法について説明する。
2.カラーフィルター
本発明のカラーフィルターは、透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルターであって、当該着色層の少なくとも1つが前記本発明のインクジェットインクを用いて形成されたことを特徴とする。
このような本発明のカラーフィルターについて、図を参照しながら説明する。図1は、本発明のカラーフィルターの一例を示す概略断面図である。図1によれば、本発明のカラーフィルター10は、透明基板1と、遮光部2と、着色層(硬化層)3とを有している。
【0109】
<着色層>
本発明のカラーフィルターに用いられる着色層(硬化層)は、前述した本発明のインクジェットインクを用いて形成された着色層が含まれていれば、特に限定されないが、通常、後述する透明基板上の遮光部の開口部に形成され、3色以上の着色層を含む着色パターンから構成される。
また、当該着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
当該着色層の厚みは、本発明のインクジェットインクの固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、1〜5μmの範囲であることが好ましい。
【0110】
<遮光部>
本発明のカラーフィルターにおける遮光部は、後述する透明基板上にパターン状に形成されるものであって、一般的なカラーフィルターに遮光部として用いられるものと同様とすることができる。
当該遮光部のパターン形状としては、特に限定されず、例えば、ストライプ状、マトリクス状等の形状が挙げられる。この遮光部としては、例えば、黒色顔料をバインダ樹脂中に分散又は溶解させたものや、クロム、酸化クロム等の金属薄膜等が挙げられる。この金属薄膜は、CrO膜(xは任意の数)及びCr膜が2層積層されたものであってもよく、また、より反射率を低減させたCrO膜(xは任意の数)、CrN膜(yは任意の数)及びCr膜が3層積層されたものであってもよい。
当該遮光部が黒色着色剤をバインダ樹脂中に分散又は溶解させたものである場合、この遮光部の形成方法としては、遮光部をパターニングすることができる方法であればよく、特に限定されず、例えば、遮光部用樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法、印刷法、インクジェット法等を挙げることができる。
【0111】
上記の場合であって、遮光部の形成方法として印刷法やインクジェット法を用いる場合、バインダ樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、カルボキシメチルセルロース樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0112】
また、上記の場合であって、遮光部の形成方法としてフォトリソグラフィー法を用いる場合、バインダ樹脂としては、例えば、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する感光性樹脂が用いられる。この場合、黒色着色剤及び感光性樹脂を含有する遮光部用カラーフィルター用樹脂組成物には、光重合開始剤を添加してもよく、さらには必要に応じて増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、難燃剤等を添加してもよい。
【0113】
一方、遮光部が金属薄膜である場合、この遮光部の形成方法としては、遮光部をパターニングすることができる方法であればよく、特に限定されず、例えば、フォトリソグラフィー法、マスクを用いた蒸着法、印刷法等を挙げることができる。
【0114】
遮光部の膜厚としては、金属薄膜の場合は0.2〜0.4μm程度で設定され、黒色着色剤をバインダ樹脂中に分散又は溶解させたものである場合は0.5〜2μm程度で設定される。
【0115】
<透明基板>
本発明のカラーフィルターにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルターに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明のカラーフィルターの用途に応じて、例えば100μm〜1mm程度のものを使用することができる。
なお、本発明のカラーフィルターは、上記透明基板、遮光部及び着色層以外にも、例えば、オーバーコート層や透明電極層、さらには配向膜や柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。
【0116】
3.カラーフィルターの製造方法
本発明に係るカラーフィルターの製造方法は、透明基板上の所定領域に、前記本発明のカラーフィルター用インクジェットインクをインクジェット方式によって選択的に付着させて、インキ層を形成する工程と、当該インキ層を加熱することにより硬化させて、所定パターンの硬化層を形成する工程を有する。
以下、本発明のカラーフィルターの製造方法を説明する。なお、着色層、透明基板、及び遮光部は、前記本発明のカラーフィルターと同様のものすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0117】
まず、前記本発明のカラーフィルター用インクジェットインクを含み、その他必要に応じて各色用の顔料がそれぞれ配合されたカラーフィルター用樹脂組成物を用意する。そして、透明基板1の表面に、遮光部2のパターンにより画成された各色の着色層形成領域に、対応する色のカラーフィルター用樹脂組成物をインクジェット方式によって選択的に付着させてインキ層を形成する。このインキの吹き付け工程において、カラーフィルター用樹脂組成物は、インクジェットヘッドの先端部で粘度増大を起こし難く、良好な吐出性を維持し続ける必要がある。各色のカラーフィルター用樹脂組成物を、複数のヘッドを使って同時に基板上に吹き付けることもできるので、印刷等の方法で各色ごとに着色層を形成する場合と比べて作業効率を向上させることができる。
次に、各色のインキ層を乾燥し必要に応じてプリベークした後、適宜加熱することにより硬化させる。インキ層を適宜加熱すると、インクジェットインク中に含まれる硬化性樹脂の架橋要素が架橋反応を起こし、インク層が硬化して着色層3が形成される。
【0118】
次に、本発明の液晶表示装置について説明する。
4.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、前記本発明のカラーフィルター又は前記本発明のカラーフィルターの製造方法により得られたカラーフィルター(以下、本発明のカラーフィルター等という場合がある)と、対向基板と、前記本発明のカラーフィルター等と前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする。
このような本発明の液晶表示装置について、図を参照しながら説明する。図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。図2に例示するように本発明の液晶表示装置40は、カラーフィルター10と、TFTアレイ基板等を有する対向基板20と、上記カラーフィルター10と上記対向基板20との間に形成された液晶層30とを有している。
なお、本発明の液晶表示装置は、この図2に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルターが用いられた液晶表示装置として公知の構成とすることができる。
【0119】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
また、対向基板としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
さらに、液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0120】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。
真空注入方式では、例えば、あらかじめカラーフィルター及び対向基板を用いて液晶セルを作製し、液晶を加温することにより等方性液体とし、キャピラリー効果を利用して液晶セルに液晶を等方性液体の状態で注入し、接着剤で封鎖することにより液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
また液晶滴下方式では、例えば、カラーフィルターの周縁にシール剤を塗布し、このカラーフィルターを液晶が等方相になる温度まで加熱し、ディスペンサー等を用いて液晶を等方性液体の状態で滴下し、カラーフィルター及び対向基板を減圧下で重ね合わせ、シール剤を介して接着させることにより、液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【0121】
次に、本発明の有機発光表示装置について説明する。
5.有機発光表示装置
本発明の有機発光表示装置は、前述した本発明のカラーフィルター等と、有機発光体とを有することを特徴とする。
このような本発明の有機発光表示装置について、図を参照しながら説明する。図3は、本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。図3に例示するように本発明の有機発光表示装置100は、カラーフィルター10と、有機発光体80とを有している。
カラーフィルター10と、有機発光体80との間に、有機保護層50や無機酸化膜60を有していても良い。
【0122】
有機発光体80の積層方法としては、例えば、カラーフィルター上面へ透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体80を無機酸化膜60上に貼り合わせる方法などが挙げられる。有機発光体80における、透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76、その他の構成は、公知のものを適宜用いることができる。このようにして作製された有機発光表示装置100は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
なお、本発明の有機発光表示装置は、この図3に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルターが用いられた有機発光表示装置として公知の構成とすることができる。
【実施例】
【0123】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0124】
(合成例1:ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体(i)の合成)
20%発煙硫酸300.0gを10℃に冷却しながら攪拌し、ピグメントレッド254 30.0gを加えた。次いで、63℃で6時間攪拌した。
反応液を氷水3000gに加え、15分間攪拌した後、沈殿物をろ過した。得られたウェットケーキを2000mlの水で洗浄、ろ過した。80℃で真空乾燥し、スルホン化誘導体(i)を得た。
【0125】
【化18】

【0126】
(合成例2:ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体(ii)の合成)
クロロ硫酸289.18gを10℃に冷却しながら攪拌し、ピグメントレッド255 28.83gを加えた。次いで、16〜20℃で2時間攪拌した。45℃まで昇温し、塩化チオニル29.07gを加え、40〜47℃で3時間攪拌した。放冷後、反応液を氷水3000gに加え、攪拌し、沈殿をろ過した。得られたウェットケーキを氷水800gで洗浄、ろ過した。氷水400gにジエチルアミノプロピルアミン111.58gを加え、攪拌し、5℃以下となるよう冷却しながらウェットケーキを加えた。10℃以下で3時間攪拌後、40〜50℃で1時間攪拌した。放冷後、塩酸を加えpH9.0に調整し、沈殿をろ過した。ウェットケーキを0.5%炭酸ナトリウム水溶液273gで洗浄し、ろ過した。次いで水280gで洗浄、ろ過した。80℃で真空乾燥し、スルホン化誘導体(ii)を得た。
【0127】
【化19】

【0128】
(合成例3:ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体(iii)の合成)
クロロ硫酸289.18gを10℃に冷却しながら攪拌し、ピグメントレッド255 28.83gを加えた。次いで、10〜20℃で2時間攪拌した。45℃まで昇温し、塩化チオニル29.07gを加え、40〜47℃で3時間攪拌した。放冷後、反応液を氷水3000gに加え、攪拌し、沈殿をろ過した。ウェットケーキを氷水800gで洗浄、ろ過した。氷水285gにβ−アラニン46.33gと33%NaOH水68.02gを加え、攪拌し、5℃以下となるよう冷却しながらウェットケーキを加えた。5℃以下で3時間攪拌後、25℃で1.5時間攪拌した。次いで40〜50℃で30分間攪拌し、60〜70℃で30分間攪拌した。
放冷後、塩酸を加えpH2.0に調整し、沈殿をろ過した。得られたウェットケーキを水420mlで洗浄・ろ過した。80℃で真空乾燥し、スルホン化誘導体(iii)を得た。
【0129】
【化20】

【0130】
(合成例3:顔料のスルホン化誘導体(iv)の合成)
11%発煙硫酸374.76gを10℃に冷却しながら攪拌し、ピグメントイエロー138 74.96gを加えた。次いで、90℃で6時間攪拌した。
反応液を氷水1600gに加え、15分間攪拌した後、沈殿物をろ過した。得られたウェットケーキを800mlの水で3回洗浄した。ウェットケーキを80℃で真空乾燥し、顔料のスルホン化誘導体(iv)を得た。
【0131】
【化21】

【0132】
(製造例1:顔料分散液1の調製)
ジケトピロロピロール系顔料、合成例1で得られたジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体(i)、顔料分散剤、及び溶剤を下記の割合で混合してマヨネーズビンに入れ、直径2mmのジルコニアビーズを30重量部加え、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて1時間振とうし、次いでその分散液30質量部と粒径0.1mmのジルコニアビーズ60質量部とをマヨネーズビンに入れ、ペイントシェーカーにて60時間振とうして、顔料分散液1を得た。
<顔料分散液1の組成>
・ジケトピロロピロール系顔料 C.I.ピグメントレッド254(平均粒径10−40nm):2.7重量部
・ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体(i):0.3重量部
・顔料分散剤 ポリアリルアミン誘導体(味の素ファインテクノ株式会社製、アジスパーPB881):2.1重量部
・溶剤 BCA(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート):24.9重量部
【0133】
(顔料分散液2の調製)
前記顔料分散液1の調製において、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体(i)を、合成例2で得られたジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体(ii)に変えた以外は顔料分散液1の調製と同様にして顔料分散液2を得た。
【0134】
(顔料分散液3の調製)
前記顔料分散液1の調製において、顔料分散液の組成を以下のように変えた以外は、顔料分散液1の調製と同様にして顔料分散液3を得た。
<顔料分散液3の組成>
・ジケトピロロピロール系顔料 C.I.ピグメントレッド254(平均粒径10−40nm):2.85重量部
・ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体(iii):0.15重量部
・顔料分散剤 ポリアリルアミン誘導体(味の素ファインテクノ株式会社製、アジスパーPB881):2.1重量部
・溶剤 BCA(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート):24.9重量部
【0135】
(顔料分散液4の調製)
前記顔料分散液1の調製において、顔料分散液の組成を以下のように変えた以外は、顔料分散液1の調製と同様にして顔料分散液3を得た。
<顔料分散液4の組成>
・ジケトピロロピロール系顔料 C.I.ピグメントレッド254(平均粒径10−40nm):2.7重量部
・ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体(i):0.15重量部
・合成例3で得られた顔料のスルホン化誘導体(iv):0.15重量部
・顔料分散剤 ポリアリルアミン誘導体(味の素ファインテクノ株式会社製、アジスパーPB881):2.1重量部
・溶剤 BCA(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート):24.9重量部
【0136】
(顔料分散液5の調製)
前記顔料分散液1の調製において、顔料分散液の組成を以下のように変えた以外は、顔料分散液1の調製と同様にして顔料分散液5を得た。
<顔料分散液5の組成>
・ジケトピロロピロール系顔料 C.I.ピグメントレッド254(平均粒径10−40nm):2.7重量部
・ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体(ii):0.15重量部
・合成例3で得られた顔料のスルホン化誘導体(iv):0.15重量部
・顔料分散剤 ポリアリルアミン誘導体(味の素ファインテクノ株式会社製、アジスパーPB881):2.1重量部
・溶剤 BCA(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート):24.9重量部
【0137】
(顔料分散液6の調製)
前記顔料分散液1の調製において、顔料分散液の組成を以下のように変えた以外は、顔料分散液1の調製と同様にして顔料分散液6を得た。
<顔料分散液6の組成>
・ジケトピロロピロール系顔料 C.I.ピグメントレッド254(平均粒径10−40nm):2.7重量部
・ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体(iii):0.15重量部
・合成例3で得られた顔料のスルホン化誘導体(iv):0.15重量部
・顔料分散剤 ポリアリルアミン誘導体(味の素ファインテクノ株式会社製、アジスパーPB881):2.1重量部
・溶剤 BCA(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート):24.9重量部
【0138】
(比較顔料分散液1の調製)
前記顔料分散液1の調製において、顔料分散液の組成を以下のように変えた以外は、顔料分散液1の調製と同様にして比較顔料分散液1を得た。
<比較顔料分散液1の組成>
・ジケトピロロピロール系顔料 C.I.ピグメントレッド254(平均粒径10−40nm):3重量部
・顔料分散剤 ポリアリルアミン誘導体(味の素ファインテクノ株式会社製、アジスパーPB881):2.1重量部
・溶剤 BCA(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート):24.9重量部
【0139】
(実施例1:カラーフィルター用インクジェットインクの調製)
顔料分散液1及び、その他の成分を下記の割合で充分に混合して、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体(i)を含有する実施例1のインクジェット用インクを得た。
<組成>
・顔料分散液1:100重量部
・グリシジルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体(共重合比=20/80、Mw=10,000):6.5重量部
・多官能エポキシ化合物(エピコート154、油化シェルエポキシ社製):1.3重量部
・ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル:0.65重量部
・トリメリット酸:1.3重量部
・BCA:57.5重量部
【0140】
(実施例2〜6:カラーフィルター用インクジェットインクの調製)
実施例1のカラーフィルター用インクジェットインクの調製において、顔料分散液1の代わりに、それぞれ顔料分散液2〜6を用いた以外は、実施例1のインクジェットインクの調製と同様にして、実施例2〜6のカラーフィルター用インクジェットインクを調製した。
【0141】
(比較例1)
実施例1のカラーフィルター用インクジェットインクの調製において、顔料分散液1の代わりに、比較顔料分散液1を用いた以外は、実施例1のインクジェットインクの調製と同様にして、比較例1のカラーフィルター用インクジェットインクを調製した。
【0142】
<粘度>
実施例1〜6及び比較例1のカラーフィルター用インクジェットインクについて、それぞれ、日本シイベルヘグナー(株)社製「MCR301(型番)」を用いて、せん断速度が100rpmのときのせん断粘度を測定した。
【0143】
<コントラスト及び輝度>
実施例1〜6及び比較例1のカラーフィルター用インクジェットインクをそれぞれガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した後、減圧乾燥装置にて溶剤を除去、90℃のホットプレートで5分間プリベークし、240℃のオーブンで40分間ポストベークして、赤色カラーフィルター基板を作成した。
90℃でプリベークした後と240℃でポストベークした後の赤色カラーフィルター基板のコントラスト値を壺坂電気(株)社製「コントラスト測定装置CT−1B」を用いて測定した。
得られた赤色カラーフィルター基板について、C光源を用いて、顕微分光測光装置(OSP‐SP200、オリンパス(株)製)で透過スペクトルを測定し、x=0.6500としたときの輝度とyを算出した。
実施例及び比較例の粘度、コントラスト及び輝度とyの結果を表1に示す。
【0144】
【表1】

【0145】
[結果のまとめ]
ジケトピロロピロール系顔料と、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体とを含有する実施例1〜6のインクジェットインクを用いて形成された赤色カラーフィルター基板は、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体を含有しない比較例1のインクジェットインクを用いて形成された赤色カラーフィルター基板と比較してコントラストが高かった。これは、実施例1〜5のポストベーク前のコントラストが比較例1に比べて高いうえ、実施例1〜5ではポストベーク時のコントラストの低下が抑制されているためである。
スルホンアミドを有する、顔料誘導体(ii)及び顔料誘導体(iii)を用いた実施例2及び3は、顔料誘導体(i)を用いた実施例1よりも、輝度が高かった。
顔料誘導体(i)〜(iii)に、顔料誘導体(iv)を組み合わせて用いた実施例4〜6のインクジェットインクは、実施例1〜3と比較してそれぞれ輝度が向上した。また、実施例4〜6のインクジェットインクは、インクの粘度が低く、インクジェット用途として特に適していることが分かった。
【符号の説明】
【0146】
1 透明基板
2 遮光部
3 着色層(硬化層)
10 カラーフィルター
20 対向基板
30 液晶層
40 液晶表示装置
50 有機保護層
60 無機酸化膜
71 透明陽極
72 正孔注入層
73 正孔輸送層
74 発光層
75 電子注入層
76 陰極
80 有機発光体
100 有機発光表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジケトピロロピロール系顔料と、ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体と、顔料分散剤と、少なくとも1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と、硬化剤と、溶剤とを含有する、カラーフィルター用インクジェットインク。
【請求項2】
前記ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体が、下記式(1)で表される、請求項1に記載のカラーフィルター用インクジェットインク。
【化1】

(式(1)中、Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、フェニル基、N,N−ジメチルアミノ基、トリフルオロメチル基、シアノ基を表す。kは1〜4の整数である。)
【請求項3】
前記ジケトピロロピロール系顔料のスルホン化誘導体が、下記式(2)で表される、請求項1に記載のカラーフィルター用インクジェットインク。
【化2】

(式(2)中、Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、フェニル基、N,N−ジメチルアミノ基、トリフルオロメチル基、シアノ基を表す。Rは、それぞれ独立に、水素原子、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表すか、或いはR同士が結合して環構造を形成していてもよい。Rは、ヘテロ原子を含んでいても良く、置換基を有していてもよく、直鎖状でも分岐状でも良い。nは0〜4の整数であり、mは1〜4の整数である。)
【請求項4】
更に、下記式(3)で表される顔料誘導体を含有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカラーフィルター用インクジェットインク。
【化3】

(式(3)中、A〜Aは、それぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表す。nは1〜5の整数である。)
【請求項5】
前記分散剤が、ポリエチレンイミン誘導体及びポリアリルアミン誘導体よりなる群から選択される1種以上である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のカラーフィルター用インクジェットインク。
【請求項6】
前記ポリアリルアミン誘導体が、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のカラーフィルター用インクジェットインク。
【化4】

(式(I)中、XおよびYは、それぞれ独立に水素原子、重合開始剤残基又は連鎖移動触媒残基のいずれかを、Rは遊離のアミノ基、下記一般式(II)又は(III)で示される基を、nは2〜1,000の整数を表す。但しn個のR中、少なくとも1個は一般式(III)で示される基を表す。)
【化5】

(式(II)及び式(III)中、Rは遊離のカルボン酸を有するポリエステル、遊離のカルボン酸を有するポリアミド、または遊離のカルボン酸を有するポリエステルアミドのいずれかからカルボキシル基を除いた残基を表す。)
【請求項7】
透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルターであって、当該着色層の少なくとも1つが請求項1乃至6のいずれか一項に記載のカラーフィルター用インクジェットインクを用いて形成された、カラーフィルター。
【請求項8】
透明基板上の所定領域に、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のカラーフィルター用インクジェットインクをインクジェット方式によって選択的に付着させて、インキ層を形成する工程と、
当該インキ層を加熱することにより硬化させて、所定パターンの硬化層を形成する工程を有する、カラーフィルターの製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載のカラーフィルター又は請求項8に記載のカラーフィルターの製造方法により得られたカラーフィルターと、対向基板と、前記カラーフィルターと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
請求項7に記載のカラーフィルター又は請求項8に記載のカラーフィルターの製造方法により得られたカラーフィルターと、有機発光体とを有することを特徴とする有機発光表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−207106(P2012−207106A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73158(P2011−73158)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】