説明

カリウム塩又はカリウム塩含有飲食品の呈味改善剤

【課題】 飲食品本来の香味に影響を与えることなくカリウム塩特有の不快味を改善し、さらに、カリウム塩の食塩代替品としての価値を高め、飲食品のナトリウム量を減少する手段および食塩組成物を提供する。
【解決手段】 キナ酸を除くカルボン酸又はそのカリウム塩以外の塩、さらに、キナ酸又はキナ酸を含有する組成物、スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油およびアリウム属植物抽出物からなる群から選択される少なくとも1種をカリウム塩又はカリウム塩含有飲食品に含有させることにより、カリウム塩特有のエグ味や金属味等の不快味が改善され、さらに塩味及び呈味が増強される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呈味改善剤に関するものであり、特に、カリウム塩含有飲食品の持つ塩味を低下させることなく、更には、飲食品本来のフレーバープロファイルを変えることなく、カリウム塩由来の金属味等の不快味を軽減する優れた呈味改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食塩(塩化ナトリウム)は、飲食品への塩味の付与により味を調え、あるいは保存性や物性の向上など、食品業界においては欠かすことのできない素材である。しかし、食塩を過剰に摂取すると、体内にナトリウムが多くたまり、それと共に、血管の水分量が増加し、血圧が上昇する。つまり、高血圧の発症原因と食塩の過剰摂取が、密接に結びついていることは、今日では常識となっており、しかも、他の合併症(心臓疾患、腎臓疾患など)を引き起こす原因になっていることも、周知の事実であり、人口構成の高齢化に伴い、摂取量の減少が望まれている。
【0003】
そのため近年、世界規模で食塩摂取量を減らそうとした動きがあり、欧米では、1日の目標摂取量を6gと推奨している。一方、日本国内では、厚生労働省は、一日当りの食塩摂取量を10g以下とするように勧告しているが、日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン」では、WHOや欧米の基準を受けて、食塩摂取量は1日6g以下にする方がより望ましいとされている。それに対し、近年の国民栄養調査の結果によれば、日本人は、食塩を1日に約11〜14g摂取していると報告されている。
【0004】
そこで、近年、飲食品中に含まれる食塩の量を減らす減塩あるいは低ナトリウム食品の試み、具体的には、塩味・塩辛味を増強させることにより、用いる食塩の量を減らす試みがいくつか開示されている。
飲食品本来の風味を、阻害せずに塩味を増強させる方法としては、例えば、スピラントールを含有する組成物(特許文献1)や、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸およびコハク酸またはその塩を含有する組成物(特許文献2)が知られている。これら手法により、ナトリウム含量を減少させた場合、塩味をある程度増強させることはできるが、ベース全体の呈味の増強効果はみられないため、ナトリウム含量を減少させたことで生じる全体の呈味不足は補完できないことが指摘されていた。
【0005】
一方、飲食品のナトリウム量を減少させる方法としては、食塩中のナトリウムの一部を塩味を有する塩化カリウムや塩化マグネシウムあるいは塩化カルシウムにより置き換え、ナトリウム量を相対的に減量する方法が提案されている(特許文献3)が、いずれも苦味又はエグ味、金属味など素材由来の不快味を有しており、その使用量、使用分野は大きく制限されている。
【0006】
塩化カリウムの呈味性を改良する目的で、塩化カリウムに無機塩や調味料、甘味料等を配合する試みも数多くなされている。塩化カリウムの呈味を改良する成分として、グルタミン酸塩、核酸系呈味物質(特許文献4、5)、クエン酸塩(特許文献6)、自己分解酵母(特許文献7)、粉末固形苦汁(特許文献8)、昆布エキス(特許文献9)、茶、ドクダミ、麦、グアバ、そば(特許文献10)、キノコ由来成分(特許文献11)等が知られている。
【0007】
また、塩化ナトリウムと塩化カリウムにバインダーを混合し、顆粒化する技術(特許文献12)、塩化カリウムと繊維素系物質等を組み合わせて、塩化カリウムの食感を改善する方法(特許文献13)等が提案されているが、これらの場合も、まだ独特の素材由来の不快味を有しており、その改善は強く望まれている。
また、上記の従来技術は、塩化カリウムと組み合わせる無機塩、調味料等が有している香味、不快味のため使用量が制限され、十分な塩化カリウムの呈味改善効果が得られない場合も多く、品質的に十分満足のできるカリウム含有飲食品の呈味改善剤は、未だ開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭48−35465号公報
【特許文献2】特開2002−345430号公報
【特許文献3】特開昭59−198953号公報
【特許文献4】特開昭58−89160号公報
【特許文献5】特開昭58−94368号公報
【特許文献6】特開平6−189709号公報
【特許文献7】特開昭56−55177号公報
【特許文献8】特開昭59−198953号公報
【特許文献9】特開平6−7111号公報
【特許文献10】特開平6−335361号公報
【特許文献11】特開平7−115933号公報
【特許文献12】特開昭59−66858号公報
【特許文献13】特開昭61−282052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、飲食品本来の香味に影響を与えることなく、カリウム塩特有の不快味を改善することであり、さらに、カリウム塩の食塩代替品としての価値を高め、飲食品中のナトリウム量を減少する手段、およびナトリウム含有量が低減された食塩組成物を提供することである。そして、低ナトリウム量の食塩組成物の不快味の改善効果を有する呈味改善剤を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究した結果、キナ酸を除くカルボン酸又はそのカリウム塩以外の塩、さらにキナ酸又はキナ酸を含有する組成物、スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油およびアリウム属植物抽出物の中から選ばれる少なくとも1種をカリウム塩又はカリウム塩含有飲食品に含有させることにより、カリウム塩特有のエグ味や金属味等の不快味が改善され、さらに塩味及び呈味が増強されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は以下のように構成される。
(1)(a)キナ酸を除くカルボン酸又はそのカリウム塩以外の塩を含有することを特徴とするカリウム塩又はカリウム塩含有飲食品の呈味改善剤。
(2)キナ酸を除くカルボン酸が、酢酸、乳酸、酒石酸、コハク酸およびプロピオン酸からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする上記呈味改善剤。
(3)さらに、(b)キナ酸又はキナ酸を含有する組成物、(c)スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油および(d)アリウム属植物抽出物からなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする上記呈味改善剤。(4)キナ酸を含有する組成物が、茶葉を水で抽出処理して抽出液を得、次いでその抽出液を吸着剤で精製処理して得られる精製物からなることを特徴とする上記呈味改善剤。
(5)キナ酸を含有する組成物が、コーヒー豆抽出物を加水分解処理し、加水分解処理物を精製して得られるキナ酸誘導体を含むコーヒー豆加水分解物からなることを特徴とする上記呈味改善剤。
【0012】
(6)スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油が、オランダセンニチ又はキバナオランダセンニチ由来の抽出物又は精油であることを特徴とする上記呈味改善剤。
(7)アリウム属植物抽出物が、シャロット及び/又はオニオンの抽出物であることを特徴とする上記呈味改善剤。
(8)アリウム属植物抽出物が、アリウム属植物から−20〜0℃でアルコール水溶液にて抽出されたものであることを特徴とする上記呈味改善剤。
(9)上記呈味改善剤を含有することを特徴とするカリウム塩組成物。
(10)上記呈味改善剤を含有することを特徴とするカリウム塩含有飲食品。
【0013】
(11)カリウム塩含有飲食品が減塩飲食品であることを特徴とする上記カリウム塩含有飲食品。
(12)上記呈味改善剤を添加することを特徴とするカリウム塩含有飲食品の呈味改善方法。
(13)カリウム塩含有飲食品が減塩飲食品であることを特徴とする上記カリウム塩含有飲食品の呈味改善方法。
(14)上記呈味改善剤を含有することを特徴とするカリウム塩含有飲食品用香味料組成物。
(15)上記香味料組成物を含有することを特徴とするカリウム塩含有飲食品。
【0014】
(16)カリウム塩含有飲食品が減塩飲食品であることを特徴とする上記カリウム塩含有飲食品。
(17)カリウム塩と上記呈味改善剤を含有することを特徴とする食塩組成物。
(18)上記食塩組成物を含有する飲食品。
(19)飲食品が減塩飲食品であることを特徴とする上記飲食品。
(20)上記食塩組成物を飲食品に添加することを特徴とする飲食品の減塩方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の呈味改善剤は、飲食品本来の香味に影響をあたえることなく、カリウム塩特有の金属味、エグ味等の不快味を改善し、塩味を増強することができるので、減塩食品等への使用が従来よりも容易になり、食塩の代替品としてのカリウム塩の価値を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔A〕呈味改善剤の構成成分
(a)キナ酸を除くカルボン酸又はそのカリウム塩以外の塩
本発明で用いるキナ酸を除くカルボン酸又はそのカリウム塩以外の塩は、好ましくは直鎖状または分枝状の脂肪族カルボン酸又はその塩(カリウム塩を除く)であれば特に限定されるものではなく、酢酸、プロピオン酸等の低級脂肪酸で構成される脂肪族モノカルボン酸、コハク酸等の脂肪族飽和ジカルボン酸、フマル酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸の可食性のカルボン酸が例示できる。
また、キナ酸を除くカルボン酸の塩としては、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等を例示できる。
好ましくは、酢酸、乳酸、乳酸ナトリウム、酒石酸、コハク酸が用いられ、さらに好ましくは、酢酸、乳酸、酒石酸が用いられ、最も好ましくは、酢酸、乳酸が用いられる。上記キナ酸を除くカルボン酸又はそのカリウム塩以外の塩は単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0017】
本発明の呈味改善剤は、キナ酸を除くカルボン酸又はそのカリウム塩以外の塩を必須として含有することを特徴とするが、さらにキナ酸又はキナ酸を含有する組成物、スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油およびアリウム属植物抽出物からなる群から選択される少なくとも1種を組み合わせることにより、その効果を高めることができる。
【0018】
(b)キナ酸
本発明で用いる下記構造式のキナ酸(1,3,4,5−テトラヒドロキシシクロヘキサン
−1−カルボン酸)は、クランベリー果汁等に多く存在する他、クロロゲン酸等のキナ酸誘導体として植物中に広く分布し、植物から抽出等の方法により得ることができる脂環式カルボン酸である。また、化学的に合成することも可能であり、試薬等として市販されている。
【化1】

本発明においては、市販されているキナ酸をそのまま呈味改善剤として使用することが可能であるが、呈味改善剤として、飲食品に使用することを考慮すると、果汁、茶、コーヒー等の可食性植物原料から得られるキナ酸を含有する組成物を使用するのが好ましく、特にキナ酸含有量が多く、入手も容易な茶葉やコーヒー豆を原料とするのが好ましい。具体的には、特開2007−14212号公報に記載されている方法に従い、茶葉を水で抽出処理して得ることができる。また、特開2001−321115号公報に記載されている方法に従い、生コーヒー豆をアルカリ又は酵素で加水分解して得ることができる。
【0019】
(c)スピラントール
本発明で用いる下記構造式のスピラントール(N−イソブチル−2,6,8−デカトリエンアミド;別名「アフィニン」)とは、キク科オランダセンニチ(Spilanthes acmella)、キバナオランダセンニチ(Spilanthes acmella var. oleracea)等に含まれる辛味成分である。
【化2】

スピラントールは前記植物から採取、精製することにより得られる他、化学的に合成することも可能である。本発明では、いずれの方法により得られたスピラントールであっても使用でき、また、純度が高いものである必要はない。他の成分の味やにおいが飲食品の香味に影響を与えない場合は、スピラントールを含有する植物の抽出物や精油等を精製することなく使用してもよい。安全性の観点からは、食経験のある植物から得られる抽出物又は精油を使用することが好ましく、また、供給、価格等の実用性の観点から、スピラントール含量の多いオランダセンニチ又はキバナオランダセンニチの抽出物又は精油を使用するのが特に好ましい。
【0020】
スピラントールは、例えば、スピラントール含量の高いオランダセンニチ又はキバナオランダセンニチの全草又は花頭から抽出又は蒸留により採取することができる。抽出による採取法を例示すると、オランダセンニチ又はキバナオランダセンニチの花頭を乾燥・粉砕した後、有機溶媒で抽出してスピラントールを含有する抽出液を得る。抽出に使用する有機溶媒は特に制限はなく、メタノール、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類を適宜単独で、又は混合して使用することができる。アルコール類のような極性有機溶媒が好ましく、安全性の観点から特にエタノールが好ましい。得られた抽出液から溶媒を除去し、スピラントール含有抽出物が得られる。
【0021】
得られたスピラントール含有抽出物は、そのまま使用することもできるが、抽出物に含まれているスピラントール以外の成分が、飲食品の香味に与える影響が問題となるような場合には、さらに分子蒸留、薄膜蒸留、各種クロマトグラフィー等の精製方法を単独又は適宜組み合わせて用いることにより、スピラントール含量を高めて使用することが好ましい。
【0022】
(d)アリウム属植物の抽出物
本発明で用いられるアリウム属植物とは、アリウム属に属する植物であれば特に限定されるものではなく、ガーリック、オニオン、シャロット、ネギ、ニラ、ワケギ、アサツキ、リーク及び行者ニンニク等が例示される。好ましくはガーリック(Alliumsativum L.)、オニオン(Allium capa L.)及びシャロット(Allium ascalonicum L.)が用いられ、
さらに好ましくはシャロット(Allium ascalonicum L.)及び/又はオニオン(Allium capa L.)が用いられ、最も好ましくは、シャロット(Allium ascalonicum L.)が用いられる。上記アリウム属植物は単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの植物は生のまま細断されるか、或いは目的に応じて乾燥や加熱処理を経て抽出されることもあるが、好ましくは、生のまま細断し、遅滞なく冷却し、抽出することが望ましい。
【0023】
本発明におけるアリウム属植物の抽出温度は、特に限定されることはないが、好ましくは、抽出原料が凍結しない可及的低い温度で行われ、−20℃〜0℃が適当である。さらに好ましくは、−15℃〜0℃、最も好ましくは、−15℃〜−5℃である。アリウム属植物は、溶媒の存在下では−20℃程度では凍結しないが、抽出温度が−20℃より低く、植物中の細胞が凍結破壊される場合は、収率は上がるものの、好ましくない成分までも抽出されるためか、香味的に劣る傾向にある。抽出温度が0℃を越えると、植物中の酵素反応が活発になり、香味をコントロールすることが困難となる傾向がある。
【0024】
本発明のアリウム属植物の抽出で用いられるアルコール性溶媒は、分子内に一つ以上の水酸基をもち上記抽出温度で液体であれば、特に限定されるものではなく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの1価のアルコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールが例示され、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの1価のアルコールが用いられ、最も好ましくは、エタノールが選択される。上記アルコール類は、水溶液の形で使用することができ、好ましくは、30〜95%水溶液、より好ましくは、50〜90%の水溶液、最も好ましくは、60〜85%の水溶液で用いられる。30%未満の場合は、低温で抽出した場合に溶媒が抽出中に凍ってしまう可能性があり、95%を越えた場合は抽出時間が長くなる傾向がある。
【0025】
本発明におけるアリウム属植物の抽出時間は、任意に設定され、特に限定されるものではないが、低温で抽出する場合は、好ましくは、8〜96時間で行われ、さらに好ましくは、24〜84時間、最も好ましくは、48〜72時間で行われる。8時間未満であれば、抽出効率が低くなる可能性があり、96時間以上抽出に費やすことは経済上好ましくない。
【0026】
〔B〕呈味改善剤の使用
本発明の呈味改善剤は、カリウム塩や、カリウム塩含有飲食品に特に制限なく使用することができ、特に食塩代替品として広く用いられている塩化カリウムの呈味改善に好適である。
呈味改善剤をカリウム塩に直接添加する場合は、粉末化した呈味改善剤をカリウム塩と混合した混合粉末として、或いはカリウム塩と呈味改善剤を共に水に溶解して水溶液としてもよく、水溶液にさらにデキストリン等の賦形剤等を加えて噴霧乾燥により粉末化した組成物としてもよい。カリウム塩と食塩、天然塩、にがり等の混合物に呈味改善剤を添加することもできる。
カリウム塩を使用した減塩食品等のカリウム塩含有飲食品に呈味改善剤を使用する場合は、当該飲食品の製造過程において適宜、呈味改善剤を添加することができ、既にカリウム塩を含有している飲食品に呈味改善剤を添加してもよく、上記の呈味改善剤とカリウム塩を混合した組成物を飲食品に添加して、カリウム塩含有飲食品としてもよい。
【0027】
また、本発明の呈味改善剤は、塩化カリウム等の食塩代替品として使用されるカリウム塩の他、グルタミン酸カリウム、クエン酸カリウム等を含有する飲食品に添加し、カリウム化合物の金属味やエグ味等の不快味を軽減し、呈味性を改善することができる。
【0028】
本発明の呈味改善剤のカリウム塩への添加量は、塩化カリウム等による食塩の代替率、カリウム塩の添加濃度、他の食品原材料等に応じて適宜設定すればよく、特に制限はない。
キナ酸を除くカルボン酸又はそのカリウム塩以外の塩は、カリウム塩に対しカルボン酸量として20〜10000ppm、好ましくは200〜5000ppmの添加量が適当である。キナ酸を除くカルボン酸又はそのカリウム塩以外の塩に加え、さらに、キナ酸又はキナ酸を含有する組成物、スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油およびアリウム属植物抽出物からなる群から選択される少なくとも1種を組み合わせて用いる場合には、キナ酸又はキナ酸を含有する組成物は、カリウム塩に対しキナ酸量として20〜2000ppm、好ましくは200〜1000ppm、スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油の場合は、カリウム塩に対しスピラントール量として1〜200ppm、好ましくは10〜100ppm、アリウム属植物抽出物の含量は、カリウム塩に対し抽出物固形分として2〜40000ppm、好ましくは200〜10000ppmとなるように各成分を添加するのが適当である。ここで、カリウム塩に対する呈味改善剤の各成分の添加量が少なすぎると、カリウム化合物の金属味やエグ味等の不快味の軽減が十分ではなく、添加量が多すぎると各成分の味が生じてしまう場合がある。
【0029】
本発明の呈味改善剤を飲食品に直接添加する場合は、飲食品に含まれるカリウム塩の含有量に応じて必要な量の呈味改善剤を添加するが、一般的には、キナ酸を除くカルボン酸又はそのカリウム塩以外の塩は、飲食品に対しカルボン酸量として0.1〜50ppm、
好ましくは1〜25ppmの添加量が適当である。
キナ酸を除くカルボン酸又はそのカリウム塩以外の塩に加え、さらに、キナ酸又はキナ酸を含有する組成物、スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油およびアリウム属植物抽出物からなる群から選択される少なくとも1種を組み合わせて用いる場合には、キナ酸又はキナ酸を含有する組成物は、飲食品に対しキナ酸量として0.1ppm〜10ppm、好ましくは1ppm〜5ppm、スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油の場合は、飲食品に対しスピラントール量として5ppb〜1000ppb、好ましくは50ppb〜500ppb、アリウム属植物抽出物の含量は、飲食品に対し抽出物固形分として0.01ppm〜200pp
m、好ましくは1ppm〜50ppmとなるように各成分を添加するのが適当である。ここで、飲食品に対する呈味改善剤の各成分の添加量が少なすぎると、カリウム化合物の金属味やエグ味等の不快味の軽減が十分ではなく、添加量が多すぎると各成分の味が生じてしまう場合がある。
キナ酸を除くカルボン酸、キナ酸、スピラントールとアリウム属植物抽出物の比率には特に制限はなく、任意の割合で配合して使用することができる。
【0030】
本発明の呈味改善剤は、他の香料成分と任意に組み合わせて、飲食品用の香味料の形態でカリウム塩含有飲食品に使用することもできる。
組み合わせる香料成分は、特に制限はなく、例えば、アセト酢酸エチル、アセトフェノン、アニスアルデヒド、α−アミルシンナムアルデヒド、アントラニル酸メチル、イオノン、イソオイゲノール、イソ吉草酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、イソチオシアン酸アリル、イソチオシアン酸3−ブテニル、イソチオシアン酸4−ペンテニル、イソチオシアン酸ベンジル、イソチオシアン酸3−メチルチオプロピル、イソチオシアネート類、インドール及びその誘導体、γ−ウンデカラクトン、エステル類、エチルバニリン、エーテル類、オイゲノール、オクタノール、オクタナール、オクタン酸エチル、ギ酸イソアミル、ギ酸ゲラニル、ギ酸シトロネリル、ケイ皮酸、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸メチル、
【0031】
ケトン類、ゲラニオール、酢酸イソアミル、酢酸エチル、酢酸ゲラニル、酢酸シクロヘキシル、酢酸シトロネリル、酢酸シンナミル、酢酸テルピニル、酢酸フェネチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル、酢酸l−メンチル、酢酸リナリル、サリチル酸メチル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、1,8−シネオ
ール、脂肪酸類、脂肪族高級アルコール類、脂肪族高級アルデヒド類、脂肪族高級炭化水素類、シンナミルアルコール、シンナムアルデヒド、チオエーテル類、チオール類、デカナール、デカノール、デカン酸エチル、テルピネオール、リモネン、ピネン、ミルセン、タピノーレン、テルペン系炭化水素類、γ−ノナラクトン、バニリン、パラメチルアセトフェノン、ヒドロキシシトロネラール、ヒドロキシシトロネラールジメチルアセタール、ピペロナール、フェニル酢酸イソアミル、フェニル酢酸イソブチル、フェニル酢酸エチル、フェノールエーテル類、フェノール類、フルフラール及びその誘導体、プロピオン酸、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ベンジル、ヘキサン酸、ヘキサン酸アリル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、l−ペリラアルデヒド、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、芳香族アルコール類、芳香族アルデヒド類、d−ボルネオール、マルトール、N−メチルアントラニル酸メチル、
【0032】
メチルβ−ナフチルケトン、dl−メントール、l−メントール、酪酸、酪酸イソアミル、酪酸エチル、酪酸シクロヘキシル、酪酸ブチル、ラクトン類、リナロオール等の合成或いは天然由来の香料の他、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツなどシトラス系精油類、アップル、バナナ、グレープ、メロン、ピーチ、パイナップル、ストロベリーなどフルーツ系の精油或いは回収フレーバー、ミルク、クリーム、バター、チーズ、ヨーグルトなど乳系の抽出香料、緑茶、紅茶、コーヒー、ココアなど嗜好品系の回収フレーバー、ペパーミント、スペアミントなどミント系の精油、アサノミ、アサフェチダ、アジョワン、アニス、アンゼリカ、ウイキョウ、ウコン、オレガノ、オールスパイス、オレンジノピール、カショウ、カッシア、カモミール、カラシナ、カルダモン、カレーリーフ、カンゾウ、キャラウェー、クチナシ、クミン、クレソン、クローブ、ケシノミ、ケーパー、コショウ、ゴマ、コリアンダー、サッサフラス、サフラン、サボリー、サルビア、サンショウ、シソ、シナモン、ジュニパーベリー、ショウガ、スターアニス、スペアミント、セイ
ヨウワサビ、セロリー、ソーレル、タイム、タマリンド、タラゴン、チャイブ、ディル、トウガラシ、ナツメグ、ニガヨモギ、ニジェラ、ニンジン、
【0033】
バジル、パセリ、ハッカ、バニラ、パプリカ、ヒソップ、フェネグリーク、ペパーミント、ホースミント、ホースラディッシュ、マジョラム、ミョウガ、ラベンダー、リンデン、レモングラス、レモンバーム、ローズ、ローズマリー、ローレル、ワサビなどから得られる香辛料抽出物、アイスランドモス、アカヤジオウ、アケビ、アサ、アサフェチダ、アジアンタム、アジョワン、アズキ、アスパラサスリネアリス、アップルミント、アーティチョーク、アニス、アボカド、アマチャ、アマチャズル、アミガサユリ、アミリス、アーモンド、アリタソウ、アルカンナ、アルテミシア、アルニカ、アルファルファ、アロエ、アンゴスツラ、アンゴラウィード、アンズ、アンズタケ、アンゼリカ、アンバー、アンバーグリス、アンブレット、イカ、イカリソウ、イグサ、イースト、イタドリ、イチゴ、イチジク、イチョウ、イノコヅチ、イランイラン、イワオウギ、インペラトリア、インモルテル、ウィンターグリーン、ウォータークレス、ウコギ、ウコン、ウスバサイシン、ウッドラフ、ウニ、ウメ、ウーロンチャ、エゴマ、エノキダケ、エビ、
【0034】
エビスグサ、エリゲロン、エルダー、エレウテロコック、エレカンペン、エレミ、エンゴサク、エンジュ、エンダイブ、欧州アザミ、オウレン、オオバコ、オカゼリ、オキアミ、オーク、オークモス、オケラ、オスマンサス、オポポナックス、オミナエシ、オモダカ、オリガナム、オリス、オリバナム、オリーブ、オールスパイス、オレンジ、オレンジフラワー、カイ、カイニンソウ、カカオ、カキ、カサイ、カシューナッツ、カスカラ、カスカリラ、カストリウム、カタクリ、カツオブシ、カッシー、カッシャフィスチュラ、カテキュ、カニ、カーネーション、カノコソウ、カモミル、カヤプテ、カラシ、カラスウリ、カラスビシャク、ガラナ、カラムス、ガランガ、カーラント、カリッサ、カリン、カルダモン、ガルバナム、カレー、カワミドリ、カンゾウ、ガンビア、カンラン、キウィーフルーツ、キカイガラタケ、キキョウ、キク、キクラゲ、キササゲ、ギシギシ、キダチアロエ、キナ、キハダ、キバナオウギ、ギボウシ、ギムネマシルベスタ、キャットニップ、キャラウェイ、キャロップ、キュウリ、キラヤ、キンミズヒキ、グァバ、グァヤク、クコ、クサスギカズラ、クサボケ、クズ、クスノキ、クスノハガシワ、グーズベリー、クチナシ、クベバ、クマコケモモ、グミ、クミン、グラウンドアイビー、
【0035】
クララ、クラリセージ、クランベリー、クリ、クルミ、クリーム、グレインオブパラダイス、クレタディタニー、グレープフルーツ、クローバー、クローブ、クロモジ、クワ、クワッシャ、ケイパー、ゲットウ、ケード、ケブラコ、ゲルマンダー、ケンチュール、ケンポナシ、ゲンノショウコ、コウジ、コウダケ、コウチャ、コウホネ、コカ、コガネバナ、コクトウ、コクルイ、ココナッツ、ゴシュユ、コショウ、コスタス、コストマリー、コパイパ、コーヒー、コブシ、ゴボウ、ゴマ、コーラ、コリアンダー、コルツフート、ゴールデンロッド、コロンボ、コンサイ、コンズランゴ、コンフリー、サイプレス、魚、サクラ、サクランボ、ザクロ、サケカス、ササ、ササクサ、サーチ、サッサフラス、サフラン、サポジラ、サボテン、サラシナショウマ、サルサパリラ、サルシファイ、サルノコシカケ、サンザシ、サンシュユ、サンショウ、サンタハーブ、サンダラック、サンダルウッド、サンダルレッド、シイタケ、ジェネ、シソ、シダー、シトラス、シトロネラ、シヌス、シベット、シマルーバ、シメジ、シャクヤク、ジャスミン、ジャノヒゲ、ジャボランジ、シュクシャ、ジュニパーベリー、ショウガ、ショウユ、ショウユカス、ジョウリュウシュ、ショウロ、シロタモギタケ、ジンセン、シンナモン、酢、スイカ、スイセン、スギ、スターアニス、スターフルーツ、スチラックス、スッポン、スッポンタケ、ズドラベッツ、スネークルート、スパイクナード、スプルース、スペアミント、スベリヒユ、スローベリー、セイボリー、セキショウ、セージ、ゼドアリー、セネガ、ゼラニウム、セロリー、センキュウ、センタウリア、センゲン、セントジョーンズウォルト、センナ、ソース、ダイオウ、ダイズ、タイム、タケノコ、タコ、タデ、ダバナ、
【0036】
タマゴ、タマゴタケ、タマリンド、ダミアナ、タモギタケ、タラゴン、タラノキ、タンジー、タンジェリン、タンポポ、チェリモラ、チェリーローレル、チェリーワイルド、チガヤ、チコリ、チーズ、チチタケ、チャイブ、チャービル、チャンパカ、チュベローズ、チョウセンゴミシ、チラータ、ツクシ、ツケモノ、ツタ、ツバキ、ツユクサ、ツリガネニンジン、ツルドクダミ、ディアタング、ティスル、ディタニー、ディル、デーツ、テンダイウヤク、テンマ、トウガラシ、トウキ、ドウショクブツタンパクシツ、ドウショクブツユ、トウミツ、トウモロコシ、ドクダミ、トチュウ、ドッググラス、トマト、ドラゴンブラッド、ドリアン、トリュフ、トルーバルサム、トンカ、ナギナタコウジュ、ナシ、ナスターシャム、ナッツ、ナットウ、ナツメ、ナツメグ、ナデシコ、ナメコ、ナラタケ、ニアウリ、ニュウサンキンバイヨウエキ、ニンジン、ネズミモチ、ネットル、ネムノキ、ノットグラス、バイオレット、パイナップル、ハイビスカス、麦芽、ハコベ、バジル、ハス、ハスカップ、パースカップ、パセリ、バター、バターオイル、バターミルク、バーチ、ハチミツ、パチュリー、ハッカ、バックビーン、ハッコウシュ、ハッコウニュウ、ハッコウミエキ、パッションフルーツ、ハツタケ、バッファローベリー、ハトムギ、ハナスゲ、バナナ、バニラ、ハネーサックル、パパイヤ、バーベリー、ハマゴウ、ハマスゲ、ハマナス、ハマボウフウ、ハマメリス、バラ、パルマローザ、バンレイシ、ヒキオコシ、ヒシ、ピスタチオ、ヒソップ、ヒッコリー、ピーナッツ、ヒノキ、ヒバ、ピプシシワ、ヒメハギ、ヒヤシンス、ヒラタケ、ビワ、ビンロウ、フェイジョア、
【0037】
フェネグリーク、フェンネル、フジバカマ、フジモドキ、フスマ、フーゼルユ、プチグレイン、ブチュ、ブドウ、ブドウサケカス、フトモモ、ブナ、ブナハリタケ、ブラックキャラウェイ、ブラックベリー、プラム、ブリオニア、プリックリーアッシュ、プリムローズ、プルネラ、ブルーベリー、ブレッドフルーツ、ヘイ、ベイ、ヘーゼルナッツ、ベチバー、ベーテル、ベニバナ、ペニーロイヤル、ペパーミント、ヘビ、ペピーノ、ペプトン、ベルガモット、ベルガモットミント、ペルーバルサム、ベルベナ、ベロニカ、ベンゾイン、ボアドローズ、ホアハウンド、ホウ、ホウキタケ、ホウショウ、ボウフウ、ホエイ、ホオノキ、ホースミント、ホースラディッシュ、ボタン、ホップ、ポピー、ポプラ、ポポー、ホホバ、ホヤ、ボルドー、ボロニア、マイタケ、マグウォルト、マシュマロー、マジョラム、マスティック、マソイ、マタタビ、マチコ、マツ、マツオウジ、マッシュルーム、マツタケ、マツブサ、マツホド、マテチャ、マメ、マリーゴールド、マルバダイオウ、マルメロ、マレイン、マロー、マンゴー、マンゴスチン、ミカン、ミシマサイコ、ミソ、ミツマタ、ミツロウ、ミート、ミモザ、ミョウガ、ミルク、ミルテ、
【0038】
ミルフォイル、ミルラ、ミロバラン、ムギチャ、ムスク、ムラサキ、メスキート、メドウスィート、メハジキ、メープル、メリッサ、メリロット、メロン、モウセンゴケ、モニリアバイヨウエキ、モミノキ、モモ、モロヘイヤ、ヤクチ、ヤマモモ、ユーカリ、ユキノシタ、ユズ、ユッカ、ユリ、ヨウサイ、ヨロイグサ、ライオンズフート、ライチ、ライフエバーラスティングフラワー、ライム、ライラック、ラカンカ、ラカンショウ、
【0039】
ラズベリー、ラタニア、ラディッシュ、ラブダナム、ラベンダー、ラングウォルト、ラングモス、ランブータン、リキュール、リーク、リツェア、リナロエ、リュウガン、リョウフンソウ、リョクチャ、リンゴ、リンデン、リンドウ、ルー、ルリジサ、レセダ、レモン、レモングラス、レンギョウ、レンゲ、レンブ、ローズマリー、ロベージ、ローレル、ロンゴザ、ワサビ、ワタフジウツギ、ワームウッド、ワームシード、ワラビ、ワレモコウなどから得られる天然香料などが例示され、適宜選択して使用される。
【0040】
〔C〕呈味改善の対象となる飲食品
本発明の呈味改善剤を添加する対象飲食品は、カリウムを含有する飲食品であれば特に限定はなく、呈味性の改善を求めるすべての飲食品へ添加することができる。例えば、(
1)菓子類等、(2)パン類、麺類、ご飯類等、(3)漬物類等、(4)魚介類を用いた加工飲食品等、(5)畜肉を用いた加工飲食品等、(6)調味料等、(7)その他、などが挙げられる。
以下、本発明に係る飲食品を例示する。
【0041】
(1)菓子類等
菓子類としては、例えば、せんべい、あられ、おこし、餅類、饅頭、ういろう、あん類、羊かん、水羊かん、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉、ビスケット、クラッカー、ポテトチップス、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディー、ピーナッツペーストなどのペースト類などが挙げられる。
【0042】
(2)パン類、麺類、ご飯類等
パン類、麺類、ご飯類としては、例えば、パン、うどん、ラーメン、中華麺、すし、五目飯、チャーハン、ピラフ、餃子の皮、シューマイの皮、お好み焼き、たこ焼き、などが挙げられる。
【0043】
(3)漬物類等
漬物類としては、例えば、糠漬け、梅干、福神漬け、べったら漬け、千枚漬け、らっきょう、味噌漬け、たくあん漬け、及び、それらの漬物の素などが挙げられる。
【0044】
(4)魚介類を用いた加工飲食品等
魚介類としては、例えば、サバ、イワシ、サンマ、サケ、マグロ、カツオ、クジラ、カレイ、イカナゴ、アユなどの魚類、スルメイカ、ヤリイカ、紋甲イカ、ホタルイカなどのイカ類、マダコ、イイダコなどのタコ類、クルマエビ、ボタンエビ、イセエビ、ブラックタイガーなどのエビ類、タラバガニ、ズワイガニ、ワタリガニ、ケガニなどのカニ類、アサリ、ハマグリ、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、などが挙げられる。それらを用いた加工飲食品としては、例えば、缶詰、煮魚、佃煮、すり身、水産練り製品(ちくわ、蒲鉾、あげ蒲鉾、カニ足蒲鉾など)、フライ、天ぷら、などが挙げられる。
【0045】
(5)畜肉を用いた加工飲食品等
畜肉としては、例えば、鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などが挙げられる。それらを用いた加工飲食品としては、例えば、カレー、シチュー、ビーフシチュー、ハヤシライスの具、ミートソース、マーボ豆腐、ハンバーグ、餃子、釜飯の素、スープ類、肉団子、角煮、畜肉缶詰などが挙げられる。
【0046】
(6)調味料等
調味料としては、例えば、食卓塩、調味塩、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、ふりかけ、お茶漬けの素、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、ソース、ケチャップ、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素、複合調味料、新みりん、唐揚げ粉・たこ焼き粉などのミックス粉、などが挙げられる。
【0047】
(7)その他
その他、チーズ、バターなどの乳製品、野菜、筑前煮、おでん、鍋物などの煮物類、持ち帰り弁当の具や惣菜類、トマトジュース、スポーツ飲料などにも適用可能である。
【0048】
本発明の呈味改善剤は、特に減塩の目的で食塩の塩化カリウムによる代替率を高めたいにも関わらず、塩化カリウムのエグ味等の呈味性の点で代替率が制限されているような飲食品に好適であり、上記飲食品の中でも特に、かまぼこ、ハム、パン、塩干物、漬物、梅干、醤油、だし、魚醤、みそ、ソース、スープ、バター、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、調味食品、スナック菓子等への使用が好ましい。
【0049】
なお、本発明の呈味改善剤を使用すると、塩化カリウムに限らず、カリウム含有飲食品、例えば、グルタミン酸カリウム、クエン酸カリウム等が含有されている飲食品であっても、それらの金属味やエグ味等の不快味を軽減し、呈味性を改善することができる。
【実施例】
【0050】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例の記載に限定されるものではない。
【0051】
〔製造例1〕<粗スピラントール>
オランダセンニチの花頭乾燥品10kg(約5mmに粉砕したもの)に99容量%エタノール100kgを加え75℃〜還流温度で5時間抽出した。抽出液を40℃まで冷却後、遠心分離装置により固液分離し、その抽出液を減圧下20kgまで濃縮した。濃縮液に活性炭0.2kg加え1時間攪拌後、珪藻土を加え加圧ろ過し活性炭を除去し、さらに減圧下で濃縮し0.43kgのオランダセンニチ濃縮物を得た。この濃縮物に蒸留水2kgを加え、酢酸エチル2kgで3回抽出した。
抽出した酢酸エチル層をまとめ珪藻土を加え加圧ろ過後、減圧で濃縮することにより0.31kgのオランダセンニチ粗抽出物(以下「スピラントール(粗)」と記す)を得た
。収率3.1%。スピラントール含量12.4%。上記オランダセンニチ粗抽出物100gを脂肪酸トリグリセライド100gと混合し、減圧薄膜蒸留装置を使用し、真空度:3〜5Pa、蒸発面温度:110〜150℃で蒸留し、留出液33.3gを得た。収率33%
。スピラントール含量:38.0質量%。
【0052】
〔製造例2〕<精製スピラントール>
オランダセンニチの花頭乾燥品300gを95容量%エタノール3200gで1時間還流抽出した。抽出液を冷却し固液分離した後、珪藻土を加えろ過した。濾液を減圧濃縮によりエタノールを留去後、水300gを加え、ヘキサン300mlで3回抽出した。抽出したヘキサン層を合わせ減圧濃縮によりヘキサンを留去し粗抽出物8.4gを得た。収率2.8%(スピラントール含量9.5%)。粗抽出物8.4gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル200g、Φ5cm)により分画(n−ヘキサン:酢酸エチル=8:2で溶出)し、スピラントール画分(Rf値=0.2〜0.3 n−ヘキサン:酢酸エチル=7:3)を分取し、溶媒を減圧下留去することにより、2.76gの粗スピラントール画分1を得た。
続いてその粗スピラントール画分1を減圧下(0.1mmHg)でクーゲルロー蒸留装置を用いて単蒸留精製(180℃)し、0.98gの粗スピラントール画分2を得た。収率0.33%(スピラントール含量41.9%)。さらにその粗スピラントール画分2 0.98gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル200g、Φ5cm)により分画(n−ヘキサン:酢酸エチル=95:5〜90:10で溶出)し、スピラントール画分(Rf値=0.2 n−ヘキサン:酢酸エチル=7:3)を分取し、溶媒を減圧下留去することにより、精製スピラントール(以下「スピラントール(精製)」と記す)0.52gを得た。収率0.17%。スピラントール含量98質量%。スピラントールの構造はプロトン及びカーボン13NMRを測定し既知の文献データと比較することにより確認した。
【0053】
〔製造例3〕<生コーヒー豆由来のキナ酸含有組成物>
コーヒーの生豆500gを微粉砕した後、70質量%エタノール水溶液5000mlを加え、それを2時間加熱還流した。液を冷却後、遠心濾過器で固液分離し、濾液をエタノール含量5重量%以下まで減圧濃縮し、クロロゲン酸エステラーゼ(キッコーマン社製)1000単位を加え40℃、3時間攪拌した。遠心分離により不溶物を取り除いた後、その処理液を、合成吸着剤(「ダイヤイオン(登録商標) HP−20」)1000mlを充填したカラムに通導し、溶出してきた液を凍結乾燥することにより、生コーヒー豆由来のキナ酸含有組成物(以下「キナ酸(1)」と記す)26.6gを得た。
なお、クロロゲン酸エステラーゼの1単位は30℃の水中において5−カフェオイルキナ酸を1分間に1マイクロモル加水分解する酵素量である。なおこの組成物中には、キナ酸は32%含まれている。
【0054】
〔製造例4〕<紅茶葉由来のキナ酸含有組成物>
紅茶葉100gに蒸留水1000gを加え、それを30分間、常温(15〜30℃)で抽出した。抽出液を遠心濾過器で固液分離し、濾液900gを得た。その濾液に活性炭30gを加え、1時間攪拌して精製処理を行った。その後、活性炭を除去し、濃縮後、濃縮液140gを得た。濃縮液を、陽イオン交換樹脂(「ダイヤイオン(登録商標) SK1B」)100mlを充填したカラムに供し、空間速度SV=2で送液して精製処理を行った(再精製処理1回目)。通過液を濃縮し約40gにした後、95%エタノール52.5g、活性炭2gを加え、撹拌及び冷却後、不溶物を濾過した(再精製処理2回目)。得られた濾液78gを凍結乾燥することにより、紅茶葉抽出物(以下「キナ酸(2)」と記す)4.7gを得た。なおこの組成物中には、キナ酸は16%含まれている。
【0055】
〔製造例5〕<シャロット抽出物>
特開2002−186448号公報に記載の方法により、シャロットを−12℃で76%(v/v)エタノール水溶液を用いて抽出し、抽出液から溶媒を除去したシャロットエキス(固形物含量24%)を得た(以下「シャロット抽出物」と記す)。
【0056】
製造例1〜5により得られたスピラントール(粗)、スピラントール(精製)、キナ酸(1)、キナ酸(2)、シャロット抽出物およびキナ酸を除くカルボン酸としては、食品添加物公定書に定める方法で得られた酢酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、乳酸ナトリウムを用いて、表1のような呈味改善剤を作成した。
なお表1中の数字は、各呈味改善剤を最終製品である飲食品に0.1%添加した際の抽出物固形分又はカルボン酸量を表したものである。それらの呈味改善剤を用いて、カリウム塩又はカリウム塩含有飲食品に対する呈味改善効果を調べた。
なお、以下の試験例において官能評価の採点基準は表2に記載したものを用いた。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
[試験例1]塩化カリウム組成物(1)
塩化カリウム40kgを水400kgに添加して完全溶解させた後、乳酸を最終粉末中での乳酸含量が8%となるように加えて乳酸含有組成物を含む塩化カリウム水溶液を調製した。その水溶液を、入口温度120℃、出口温度80℃で噴霧乾燥して乳酸を8%含有する塩化カリウム粉末38kgを得た(本発明品1)。この粉末を塩化カリウム濃度が1%となるように水に溶解し、本発明の呈味改善剤無添加の塩化カリウム1%水溶液を対照として10名の習熟パネルによる呈味の評価を行った。その結果、過半数のパネルが、本発明品1は対照に比べ、塩化カリウム特有の金属味・エグ味が低減されていると認め、本発明の呈味改善効果を認識した。
【0060】
[試験例2]塩化カリウム組成物(2)
塩化カリウム40kgを水400kgに添加して完全溶解させた後、コハク酸を最終粉末中でのコハク酸含量が6%となるように加えてコハク酸含有組成物を含む塩化カリウム水溶液を調製した。その水溶液を、入口温度120℃、出口温度80℃で噴霧乾燥してコハク酸を6%含有する塩化カリウム粉末38kgを得た(本発明品2)。
この粉末を塩化カリウム濃度が1%となるように水に溶解し、本発明の呈味改善剤無添加の塩化カリウム1%水溶液を対照として10名の習熟パネルによる呈味の評価を行った。その結果、過半数のパネルが、本発明品2は対照に比べ、塩化カリウム特有の金属味・エグ味が低減されていると認め、本発明の呈味改善効果を認識した。
【0061】
[試験例3]塩化カリウム組成物(3)
塩化カリウム40kgを水400kgに添加して完全溶解させた後、乳酸を最終粉末中での乳酸含量が6%、および製造例3のキナ酸含有組成物を最終粉末中でのキナ酸含量が4%となるように加えて、乳酸およびキナ酸含有組成物を含む塩化カリウム水溶液を調製した。その水溶液を、入口温度120℃、出口温度80℃で噴霧乾燥して、乳酸6%およびキナ酸4%含有する塩化カリウム粉末38kgを得た(本発明品3)。
この粉末を塩化カリウム濃度が1%となるように水に溶解し、本発明の呈味改善剤無添加の塩化カリウム1%水溶液を対照として10名の習熟パネルによる呈味の評価を行った。その結果、過半数のパネルが、本発明品3は対照に比べ、塩化カリウム特有の金属味・エグ味が低減されていると認め、本発明の呈味改善効果を認識した。
【0062】
[試験例4]塩化カリウム組成物(4)
製造例1の粗スピラントール10g、加工澱粉20g、デキストリン70gを150gの水に加えて乳化し、これを噴霧乾燥してスピラントール粉末を得た。この粉末0.5g、および乳酸ナトリウム7gを塩化カリウム100gに添加し、均一に混合して塩化カリウム混合粉末を得た(本発明品4)。その粉末を塩化カリウム濃度が1%となるように水に溶解し、本発明の呈味改善剤無添加の塩化カリウム1%水溶液を対照として10名の習熟パネルによる呈味の評価を行った。
その結果、過半数のパネルが、本発明品4は対照に比べ、塩化カリウム特有の金属味・エグ味が低減されていると認め、本発明の呈味改善効果を認識した。また本発明品由来の異味異臭を感じたパネルは見られなかった。
【0063】
[試験例5]食塩組成物(1)
塩化カリウム20kg、自然塩20kgを水400kgに添加して完全溶解させた後、乳酸が最終粉末中の乳酸含量が4%、コハク酸が最終粉末中のコハク酸含量が4%、製造例4のキナ酸含有組成物を最終粉末中のキナ酸含量が4%になるように加えて、乳酸、コハク酸およびキナ酸含有組成物を含む塩化カリウムと食塩の混合水溶液を調製した。その水溶液を入口温度120℃、出口温度80℃で噴霧乾燥して塩化カリウムと食塩の混合粉末38kgを得た(本発明品5)。
その粉末を塩化カリウムと食塩の合計の濃度が1%となるように水に溶解し、本発明の呈味改善剤無添加の塩化カリウムと食塩混合物の1%水溶液を対照として10名の習熟パネルによる呈味の評価を行った。その結果、過半数のパネルが、本発明品5は対照に比べ、塩化カリウム特有の金属味・エグ味が低減されていると認め、本発明の呈味改善効果を認識した。また本発明品由来の異味異臭を感じたパネルは見られなかった。
【0064】
[試験例6]食塩組成物(2)
塩化カリウム20kg、自然塩20kgを水400kgに添加して完全溶解させた後、乳酸が最終粉末中の乳酸含量が4%、酒石酸が最終粉末中の酒石酸含量が4%、製造例4のキナ酸含有組成物を最終粉末中のキナ酸含量が4%になるように加えて、乳酸、酒石酸およびキナ酸含有組成物を含む塩化カリウムと食塩の混合水溶液を調製した。その水溶液を入口温度120℃、出口温度80℃で噴霧乾燥して塩化カリウムと食塩の混合粉末38kgを得た(本発明品6)。
その粉末を塩化カリウムと食塩の合計の濃度が1%となるように水に溶解し、本発明の呈味改善剤無添加の塩化カリウムと食塩混合物の1%水溶液を対照として10名の習熟パネルによる呈味の評価を行った。その結果、過半数のパネルが、本発明品6は対照に比べ、塩化カリウム特有の金属味・エグ味が低減されていると認め、本発明の呈味改善効果を認識した。また本発明品由来の異味異臭を感じたパネルは見られなかった。
【0065】
[試験例7]食塩組成物(3)
塩化カリウム20kg、自然塩20kgを水400kgに添加して完全溶解させた後、乳酸が最終粉末中の乳酸含量が3%、酒石酸が最終粉末中の酒石酸含量が3%、プロピオン酸が最終粉末中のプロピオン酸含量が2%、製造例4のキナ酸含有組成物を最終粉末中のキナ酸含量が3%になるように加えて、乳酸、酒石酸、プロピオン酸およびキナ酸含有組成物を含む塩化カリウムと食塩の混合水溶液を調製した。
その水溶液を入口温度120℃、出口温度80℃で噴霧乾燥して塩化カリウムと食塩の混合粉末38kgを得た(本発明品7)。
その粉末を塩化カリウムと食塩の合計の濃度が1%となるように水に溶解し、本発明の呈味改善剤無添加の塩化カリウムと食塩混合物の1%水溶液を対照として10名の習熟パネルによる呈味の評価を行った。その結果、過半数のパネルが、本発明品7は対照に比べ、塩化カリウム特有の金属味・エグ味が低減されていると認め、本発明の呈味改善効果を認識した。また本発明品由来の異味異臭を感じたパネルは見られなかった。
【0066】
[試験例8]食塩組成物(4)
塩化カリウム20kg、自然塩20kgを水400kgに添加して完全溶解させた後、乳酸が最終粉末中の乳酸含量が3%、酒石酸が最終粉末中の酒石酸含量が3%、プロピオン酸が最終粉末中のプロピオン酸含量が2%、製造例4のキナ酸含有組成物を最終粉末中のキナ酸含量が3%、製造例2の精製スピラントールを最終粉末中のスピラントール含量が2%、製造例5のシャロット抽出物を最終粉末中の抽出物固形分が4%になるように加えて、乳酸、酒石酸、プロピオン酸、キナ酸含有組成物、精製スピラントール及びシャロット抽出部を含む塩化カリウムと食塩の混合水溶液を調製した。
その水溶液を入口温度120℃、出口温度80℃で噴霧乾燥して塩化カリウムと食塩の混合粉末38kgを得た(本発明品8)。
その粉末を塩化カリウムと食塩の合計の濃度が1%となるように水に溶解し、本発明の呈味改善剤無添加の塩化カリウムと食塩混合物の1%水溶液を対照として10名の習熟パネルによる呈味の評価を行った。その結果、過半数のパネルが、本発明品8は対照に比べ、塩化カリウム特有の金属味・エグ味が低減されていると認め、本発明の呈味改善効果を認識した。また本発明品由来の異味異臭を感じたパネルは見られなかった。
【0067】
[試験例9]塩化カリウム水溶液
0.75質量%の塩化カリウム水溶液に、実施例2、3、6、8、14、16、18、
20、21、23、26、28、29、31〜33の呈味改善剤を塩化カリウム水溶液にそれぞれ0.1%添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表2の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表3に示す。
【0068】
【表3】

【0069】
表3から明らかなように、塩化カリウム水溶液に各呈味改善剤を添加することにより、呈味改善効果がみられた。また、複数の呈味改善剤を併用することで、改善効果は更に高まった。
【0070】
[試験例10]減塩うどんつゆ
処方1の減塩うどんつゆに、実施例1〜33の呈味改善剤をそれぞれ0.1%添加し、
呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表2の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表5に示す。
【0071】
【表4】

【0072】
【表5】

【0073】
表5から明らかなように、減塩うどんつゆに本発明の呈味改善剤であるキナ酸を除くカルボン酸、さらにキナ酸含有組成物及びスピラントールを添加すると、塩化カリウム特有の金属味の呈味改善効果がみられ、また、鰹節風味、塩味の増強効果もみられた。この効果は、シャロット抽出物をさらに併用すると一層高まった。また、本発明品に由来する異味異臭を感じたパネルは見られなかった。
【0074】
[試験例11]減塩浅漬けの素(希釈品)
市販品の減塩浅漬けの素(希釈品)に、実施例1〜33の呈味改善剤をそれぞれ0.1%添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表2の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表6に示す。
【0075】
【表6】

【0076】
表6から明らかなように、減塩浅漬けの素に本発明の呈味改善剤であるキナ酸を除くカルボン酸、さらにキナ酸含有組成物及びスピラントールを添加すると、塩化カリウム特有の金属味の呈味改善効果がみられ、特に、シャロット抽出物の併用により浅漬けの素本来の呈味である塩味、旨味などの増強効果もみられた。
【0077】
[試験例12]減塩青ジソドレッシング
処方2の減塩青ジソドレッシングに、実施例1〜33の呈味改善剤をそれぞれ0.1%添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表2の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表8に示す。
【0078】
【表7】

【0079】
【表8】

【0080】
表8から明らかなように、減塩青ジソドレッシングに本発明の呈味改善剤であるキナ酸を除くカルボン酸、さらにキナ酸含有組成物、スピラントール、シャロット抽出物を添加することにより、塩化カリウム特有の金属味の呈味改善効果がみられた。また、シソ風味、塩味、酸味の増強効果が一部みられた。なお、本発明品由来の異味異臭を感じたパネルは見られなかった。
【0081】
[試験例13]減塩イタリアンドレッシング
市販品の減塩イタリアンドレッシングに、実施例1〜33の呈味改善剤をそれぞれ0.1%添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表2の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表9に示す。
【0082】
【表9】

【0083】
表9から明らかなように、減塩イタリアンドレッシングに本発明の呈味改善剤であるキナ酸を除くカルボン酸、さらに、キナ酸含有組成物、スピラントール、シャロット抽出物を添加することにより、塩化カリウム特有の金属味の呈味改善効果がみられた。また、酸味の増強効果が一部みられた。
【0084】
[試験例14]減塩コンソメスープ
処方3の減塩コンソメスープに、実施例1〜33の呈味改善剤をそれぞれ0.1%添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表2の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表11に示す。
【0085】
【表10】

【0086】
【表11】

【0087】
表11から明らかなように、減塩コンソメスープに本発明の呈味改善剤であるキナ酸を除くカルボン酸、さらにキナ酸含有抽出物、スピラントール、シャロット抽出物を添加することにより、塩化カリウム特有のエグ味の呈味改善効果がみられた。また、塩味、チキン風味の増強効果が一部みられた。
【0088】
[試験例15]減塩ラーメンスープ
処方4の減塩ラーメンスープに、実施例1〜33の呈味改善剤をそれぞれ0.1%添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表2の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表13に示す。
【0089】
【表12】

【0090】
上記粉末20gをお湯500gに溶解する。
【0091】
【表13】

【0092】
表13から明らかなように、減塩ラーメンスープに本発明の呈味改善剤であるキナ酸を除くカルボン酸、さらに、キナ酸含有組成物、スピラントール、シャロット抽出物を添加することにより、塩化カリウム特有の金属味の呈味改善効果がみられた他、一部で塩味とチキン風味の増強がみられた。また、本発明品に由来する異味異臭を感じたパネルは見られなかった。
【0093】
[試験例16]減塩豚汁
処方5の減塩豚汁に、実施例1〜33の呈味改善剤をそれぞれ0.1%添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表2の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表15に示す。
【0094】
【表14】

【0095】
【表15】

【0096】
表15から明らかなように、減塩豚汁に本発明の呈味改善剤であるキナ酸を除くカルボン酸、さらに、キナ酸含有組成物、スピラントール、シャロット抽出物を添加することにより、塩化カリウム特有のエグ味の呈味改善効果がみられた。また、塩味及び豚汁特有の旨味に関しても増強効果がみられた。
【0097】
[試験例17]減塩ミネストローネ
処方6の減塩ミネストローネに、実施例1〜33の呈味改善剤をそれぞれ0.1%添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表2の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表17に示す。
【0098】
【表16】

【0099】
【表17】

【0100】
表17から明らかなように、減塩ミネストローネに本発明の呈味改善剤であるキナ酸を除くカルボン酸、さらに、キナ酸含有組成物、スピラントール、シャロット抽出物を添加することにより、塩化カリウム特有の不快味の呈味改善効果がみられた。また、ミネストローネ特有のトマト風味及び酸味に関しては、増強効果が一部でみられた。一方、本発明品に由来する異味異臭を感じたパネルは見られなかった。
【0101】
[試験例18]減塩クリームシチュー
処方7の減塩クリームシチューに、実施例1〜33の呈味改善剤をそれぞれ0.1%添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表2の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表19に示す。
【0102】
【表18】

【0103】
【表19】

【0104】
表19から明らかなように、減塩クリームシチューに本発明の呈味改善剤であるキナ酸を除くカルボン酸、さらに、キナ酸含有抽出物、スピラントール、シャロット抽出物を添加することにより、塩化カリウム特有の不快味の呈味改善効果がみられた。また、クリームシチュー特有のミルク風味や甘味に関しては、増強効果が一部でみられた。
【0105】
[試験例19]減塩ミートソース
処方8の減塩ミートソースに、実施例1〜33の呈味改善剤をそれぞれ0.1%添加し、呈味改善剤無添加品を対照として、習熟した10名のパネルにより、表2の採点基準に基づき官能評価を行った。その結果を表21に示す。
【0106】
【表20】

【0107】
【表21】

【0108】
表21から明らかなように、減塩ミートソースに本発明の呈味改善剤であるキナ酸を除くカルボン酸、さらにキナ酸含有抽出物、スピラントール、シャロット抽出物を添加することにより、塩化カリウム特有の金属味の呈味改善効果がみられた。また、ミートソース特有のトマト風味に関しては増強効果がみられた。さらに、シャロット抽出物を併用した場合には、ミート風味にも増強効果がみられた。一方、本発明品に由来する異味異臭を感じたパネルは見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の呈味改善剤は、飲食品本来の香味に影響をあたえることなく、カリウム塩特有の金属味、エグ味等の不快味を改善し、塩味を増強することができるので、減塩食品等への使用が従来よりも容易になり、カリウム塩の食塩代替品としての価値を高めることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キナ酸を除くカルボン酸又はそのカリウム塩以外の塩を含有することを特徴とするカリウム塩又はカリウム塩含有飲食品の呈味改善剤。
【請求項2】
キナ酸を除くカルボン酸が、酢酸、乳酸、酒石酸、コハク酸およびプロピオン酸からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の呈味改善剤。
【請求項3】
さらに、キナ酸又はキナ酸を含有する組成物、スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油およびアリウム属植物抽出物からなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の呈味改善剤。
【請求項4】
キナ酸を含有する組成物が、茶葉を水で抽出処理して抽出液を得、次いでその抽出液を吸着剤で精製処理して得られる精製物からなることを特徴とする請求項3に記載の呈味改善剤。
【請求項5】
キナ酸を含有する組成物が、コーヒー豆抽出物を加水分解処理し、加水分解処理物を精製して得られるキナ酸誘導体を含むコーヒー豆加水分解物からなることを特徴とする請求項3に記載の呈味改善剤。
【請求項6】
スピラントール又はスピラントールを含有する植物抽出物若しくは植物精油が、オランダセンニチ又はキバナオランダセンニチ由来の抽出物又は精油であることを特徴とする請求項3に記載の呈味改善剤。
【請求項7】
アリウム属植物抽出物が、シャロット及び/又はオニオンの抽出物であることを特徴とする請求項3に記載の呈味改善剤。
【請求項8】
アリウム属植物抽出物が、アリウム属植物から−20〜0℃でアルコール水溶液にて抽出されたものであることを特徴とする請求項3に記載の呈味改善剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかの項に記載の呈味改善剤を含有することを特徴とするカリウム塩組成物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかの項に記載の呈味改善剤を含有することを特徴とするカリウム塩含有飲食品。
【請求項11】
カリウム塩含有飲食品が減塩飲食品であることを特徴とする請求項10記載のカリウム塩含有飲食品。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかの項に記載の呈味改善剤を添加することを特徴とするカリウム塩含有飲食品の呈味改善方法。
【請求項13】
カリウム塩含有飲食品が減塩飲食品であることを特徴とする請求項12記載のカリウム塩含有飲食品の呈味改善方法。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれかの項に記載の呈味改善剤を含有することを特徴とするカリウム塩含有飲食品用香味料組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の香味料組成物を含有することを特徴とするカリウム塩含有飲食品。
【請求項16】
カリウム塩含有飲食品が減塩飲食品であることを特徴とする請求項15記載のカリウム塩含有飲食品。
【請求項17】
カリウム塩と請求項1〜8のいずれかの項に記載の呈味改善剤を含有することを特徴とする食塩組成物。
【請求項18】
請求項17記載の食塩組成物を含有する飲食品。
【請求項19】
飲食品が減塩飲食品であることを特徴とする請求項18記載の飲食品。
【請求項20】
請求項17記載の食塩組成物を飲食品に添加することを特徴とする飲食品の減塩方法。

【公開番号】特開2011−130669(P2011−130669A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290198(P2009−290198)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(591011410)小川香料株式会社 (173)
【Fターム(参考)】