説明

カルシウム強化大豆ベース乳児用栄養配合物

配合物100kcal当たり(A)脂質、好ましくは約8.0gまで(B)炭水化物、好ましくは約8.0gから約16.0g(C)フィターゼ処理大豆タンパク質、好ましくは約3.5gまで、および(D)カルシウム、好ましくは約90mgまでを含み、栄養配合物が、カルシウムの対脂質重量比が約0.002から約0.020である乳児用配合物であり、配合物が、配合物100kcal当たり約8.4mgを超えないフィチン酸を含む、粉末状、液体または濃縮状の実施形態を含むカルシウム強化大豆ベース乳児用栄養配合物を開示する。特に、市販の大豆配合物およびフィターゼ処理以外の脱フィチン化方法(例えばイオン交換)から誘導された大豆ベース配合物を含む、他の大豆ベース配合物を与えた乳児と比べて、これらのカルシウム強化フィターゼ処理大豆ベース栄養配合物が、乳児集団の便を軟らかくすることが認められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳幼児の便をより軟らかくし、便秘の頻度を減少させるカルシウム強化大豆ベース乳児用配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
市販されているか、乳児用配合物の技術分野で知られている多くの異なる乳児用栄養配合物がある。これらの乳児用配合物は、成長する乳児の栄養的必要性を満たす栄養の範囲を含み、一般的に、脂質、炭水化物、タンパク質、ビタミン、ミネラル、および最適な乳児の成長および発育を助ける他の栄養を含む。これらの配合物は、一般的に牛乳または大豆タンパク質分離物もしくは濃縮物から部分的に誘導する。
【0003】
大豆ベース乳児用配合物はよく知られており、オハイオ州コロンバスのアボットラボラトリーズのロス製造部(Ross Products Division, Abbott Laboratories)のSimilac(登録商標)Isomil(登録商標)Advance(登録商標)乳児用配合物を含む多くの市場の供給源から容易に入手できる。これらの大豆ベース配合物は、特に偏食(fussiness)、おなら、嘔吐などの授乳障害を有する乳児のために調製されるが、親が非乳ベース配合物を初回授乳として選択または母乳に対するサプリメントとして選択した乳児のためにも調整される。これらの大豆ベース配合物は、牛乳タンパク質に対してアレルギーまたは感受性を示す乳児、および牛乳のラクトースを避けなければならない障害を有する乳児において特に有用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一部の大豆ベース配合物は、一部の乳児において、母乳育ちの乳児より便を硬くする傾向を歴史的に有し、そのため、一部の乳児では便秘につながる可能性がある。鉄およびカルシウムともに硬い便の形成を更に進めてしまう可能性があることがよく知られているので、このことは鉄およびカルシウム強化の大豆ベース配合物では特に問題がある可能性がある。しかし、これらの栄養素は、乳児の最適の成長および発育のためには必要であり、乳児に与える配合物として、配合物のなかに供給するか、他の食事または補足的食事のなかに供給しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、栄養を供給し、より軟らかな便形成をもたらすカルシウム強化大豆ベース乳児用配合物を配合することは、本発明の目的である。さらに、大豆ベース配合物を与えた乳児の便秘の頻度を減少させる配合物を提供することも本発明の目的である。さらに、カルシウム強化乳児用配合物によるそのような有益性を提供し、カルシウムおよび鉄強化配合物によるそのような有益性を提供することも本発明の目的である。
【0006】
本発明のこれらの目的および他の目的を以下により詳細に記載または提案する。
【0007】
本発明は、乳児のカルシウム強化大豆ベース乳児用栄養配合物を対象とし、前記配合物は、(A)約5.4重量%までの脂質、(B)約5.4重量%から約10.8重量%までの炭水化物、(C)約2.4重量%までのフィターゼ処理大豆タンパク質、および(E)1リットルの配合物当たり、約600mgまでのカルシウムを含み、本配合物は、乳児用配合物であり、カルシウムの対脂質重量比が約0.002から約0.020までであり、本配合物は、フィターゼ処理大豆タンパク質の0.3重量%以下、好ましくは0パーセントのフィチン酸を含む。
【0008】
また、本発明は粉末状、液体または濃縮物状のカルシウム強化大豆ベース栄養配合物を対象とする。これらの栄養配合物は(A)好ましくは、約8.0gまでの脂質、(B)好ましくは、約8.0gから約16.0gまでの炭水化物、(C)好ましくは、約3.5gまでのフィターゼ処理大豆タンパク質、および(D)好ましくは、約90mgまでのカルシウムを100kcal当たり含み、本栄養配合物が、カルシウムの対脂質重量比が約0.002から約0.020までである配合物であり、本配合物が、配合物100kcal当たり約8.4mg以下のフィチン酸を含む。
【0009】
総カルシウムの対脂質重量比が約0.002から約0.020までで、タンパク質成分が、フィターゼ処理タンパク質の0.3重量%以下、好ましくは0パーセントのフィチン酸を含む組成を提供するフィターゼ処理タンパク質を含む場合において、本発明の大豆ベース配合物は、乳児のより軟らかな便形成の頻度を増加することが認められている。フィチン酸含有量の低いフィターゼ処理大豆タンパク質を選択し、ここに定義される対脂質比のカルシウムを選択することによって、ここに定義される乳児の便の硬さが、他のより一般的な大豆ベース配合物と比べて、さらにイオン交換法または他の類似した脱フィチン化法(すなわち、フィターゼ処理以外の方法)などの製造方法により誘導された低フィチン酸濃度を有する他の大豆ベース配合物と比べて、最適化または改善することができることが認められている。
【0010】
本発明のカルシウム強化大豆ベース乳児用配合物は、フィターゼ処理大豆タンパク質、脂質および炭水化物栄養素を含む特定の栄養素成分を必須要素として含み、脂質成分との関係を定義されたカルシウム強化を含む。本発明における、これらおよびその他の栄養的組成の必須特性または任意の特性は、以下で更に詳細に記載する。
【0011】
本明細書では、「乳児」という用語は、約2歳未満の小児を一般に指し、最も典型的には約1歳未満を指し、本明細書の「乳児用配合物」という用語は、本発明の組成を指し、単独での、初期の、またはサプリメントとしての栄養必要性を満たすために、その使用をそのような乳児に限定することを意味する。
【0012】
本明細書では、「カルシウム強化」という用語は、すぐに与えられる製品としての配合物または粉末もしくは濃縮物を使用前に希釈もしくは水で還元した時、配合物1リットル当たり約10mgから約600mgまでのカルシウムを含む、本発明の乳児用配合物を指す。これに関連して、このカルシウム強化は、元素カルシウムに関して算出し、カルシウムの添加および他の添加栄養素または配合物成分に固有のカルシウムの両方を含む。
【0013】
本明細書では、「フィチン酸」という用語は、一般にイノシトール六リン酸を指すが、本発明の状況において、イノシトール五リン酸、イノシトール四リン酸、イノシトール三リン酸、イノシトールニリン酸、イノシトール一リン酸なども含むことを意味し、塩およびその分子複合体も含む。本発明の乳児用配合物のフェチン酸濃度を定める目的で、フェチン酸濃度をSandberg, A., and Ahderinne, R., Phytic Acid Measurement Method, Journal of Food Science, 52:547(1986)の開示の方法により測定することができる。
【0014】
本明細書では、「脂質」という用語は、特に明記しない限り、脂肪、油およびその組合せを意味する。
【0015】
本明細書では、すべてのパーセンテージ、部分および比率は、特に明記しない限り、全組成における重量である。記載された材料に関するすべてのそのような重量は、活性レベルを基にし、したがって、特に明記しない限り、市販されている物質に含まれる可能性のある溶媒または副産物は含まない。
【0016】
本明細書では、数値的な範囲は、特に開示されているか開示されていないかに関わらず、その範囲内に含まれるすべての数および数のサブセットを含むように意図している。さらに、これらの数値的な範囲は、その範囲内に含まれる数のすべての数またはサブセットを対象とする請求項を支持するものとして解釈するべきである。例えば、1から10までの開示は、2から8、3から7、1から9、3.6から4.6、3.5から9.9などの範囲をサポートものとして解釈するべきである。
【0017】
本発明に単一の特性または制限に関するすべての参照は、参照された文脈によって明記されるか、明白に反することが示されない限り、対応する複数の特性または制限を含み、又その逆も同様である。
【0018】
本明細書では、方法または工程段階のすべての組合せは、組合せが参照された文脈によって明記されるか、明白に反することが示されない限り、あらゆる順序で実施することができる。
【0019】
ここに記載の多くの実施形態を含む本発明の乳児用配合物は、ここに記載の本発明の必須要素および限定、だけでなく、ここに記載または乳児用栄養配合物の適用に有用な追加または任意の材料、成分または限定を、含み、またはそれらからなり、またはそれらから基本的になることができる。
【0020】
I.栄養素
本発明の乳児用配合物は、乳児にとって、初期の、またはサプリメントとしての栄養必要性を満たすために役立つ栄養素の十分な種類と量を含む。これらの栄養素は、脂質、タンパク質および炭水化物を含み、好ましくは、ビタミン、ミネラル(以下に記載のカルシウム成分に加えて)またはその組合せをさらに含む。
【0021】
本発明の乳児用配合物は、製品の形態などの因子によって異なる濃度範囲の脂質、炭水化物およびタンパク質栄養素を含む。本発明の乳児用配合物のこれらの栄養素濃度は、以下の表1に記載する。
【0022】
【表1】

炭水化物、脂質、タンパク質、ミネラルおよびビタミンの多くの異なる供給源および種類が知られており、そのような栄養素が、選択された配合において必須材料および他の添加される材料と適合性があり、意図した使用において安全かつ有効で、さもなければ製品性能を過度に損なわないならば、本発明の栄養組成において使用することができる。
【0023】
炭水化物
本発明の乳児用配合物は、炭水化物栄養素を含み、この炭水化物栄養素はトウモロコシ、タピオカ、イネまたはジャガイモから供給され、加水分解された、または無処理の、自然におよび/または化学的に改変した糊状または非糊状のデンプンを含むことができる。ここで使用される、適した炭水化物源の非限定的な他の例は、加水分解されたコーンスターチ、マルトデキストリン、グルコースポリマー、スクロース、トウモロコシシロップ、トウモロコシシロップ固形物、グルコース、フルクトース、高フルクトーストウモロコシシロップおよびその組合せを含む。この炭水化物成分は、ラクトースを含んでも、または実質的にラクトースを含まなくてもよい。
【0024】
脂質
また、本発明の乳児用配合物は、必須要素として、脂質栄養素を含み、この脂質は、ヤシ油、大豆油、トウモロコシ油、オリーブ油、サフラワー油、高オレイン酸サフラワー油、MCT油(中鎖脂肪)、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、構造トリグリセリド、パーム油およびパーム核油、パームオレイン、カノーラ油、魚油、綿実油、ならびにその組合せを含むことができる。
【0025】
その他の適した脂質または乳児用配合物の使用に適した関連物質は、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸またはその混合物を含む特定の脂肪酸を供給する脂質または関連物質を含む。これらの物質は、脳および視覚の発達の亢進などの有益な作用を乳児にもたらすことが知られており、その解説は米国特許第5492938号(Kyle et al.)に記載される(本記載は本願明細書に参照により組込まれる)。アラキドン酸およびドコサヘキサエン酸の適した供給源の非限定的な例は、魚油、卵由来油、真菌油、藻類油およびその組合せを含む。
【0026】
本発明の乳児用配合物の脂質成分は、1種もしくは複数のアラキドン酸、ドコサヘキサエン酸またはその組合せを単独、あるいはリノール酸およびリノレン酸との更なる組合せで含むことができる。アラキドン酸濃度は、配合物の総脂肪酸の、好ましくは約2.0重量%まで、より好ましくは約0.2重量%から約1.0重量%まで、さらに好ましくは約0.35重量%から約0.9重量%まで、最も好ましくは約0.4重量%から約0.5重量%までの範囲である。ドコサヘキサエン酸濃度は、配合物の総脂肪酸の好ましくは約1.0重量%まで、より好ましくは約0.1重量%から約1.0重量%まで、さらに好ましくは約0.14重量%から約0.36重量%までの範囲である。リノール酸濃度は、配合物の総脂肪酸の好ましくは約30重量%まで、より好ましくは約10重量%から約30重量%まで、さらに好ましくは約15重量%から約20重量%までの範囲である。リノレン酸濃度は、好ましくは約4%まで、より好ましくは約1.5%から約4%まで、さらに好ましくは約2%から約3%まで、さらに好ましくは約2.2%から約2.6%までの範囲である。これらの脂肪物質は、米国特許第6495599号(Auestad et al.)に記載される(本記載は本願明細書に参照により組込まれる)。
【0027】
タンパク質
また、本発明の乳児用配合物に配合されると、本書に定義するような低フィチン酸配合物を供給するように、本発明の乳児用配合物は、生成したタンパク質分離物の固有のフィチン酸濃度を効果的に減少させるために知られた、または適したあらゆるフィターゼ処理法により誘導した大豆タンパク質分離物を全体的または部分的に、好ましくは全体的に必須要素として含む。
【0028】
これに関連して、「低フィチン酸」配合物は、この配合物に使用される大豆タンパク質が、大豆タンパク質分離物の約0.3重量%以下、好ましくは約0.2重量%以下、さらにより好ましくは0.05重量%以下、さらにより好ましくは0重量%のフィチン酸を含む配合物である。対照的に、多くの通常の大豆タンパク質分離物は、一般的に脱フィチン化されておらず、したがって、分離物の一般に約1.2重量%から4.0重量%までのフィチン酸を含む。本発明の様々の粉末配合物、液体配合物および濃縮配合物の実施形態を定義する目的で、「低フィチン酸」配合物は、フィチン酸を100kcal当たり8.4mg以下、好ましくは2.8mg以下、より好ましくは1.4mg以下、さらにより好ましくは0mg含む、ような配合物であることが好ましい。
【0029】
大豆に自然に存在するフィチン酸は、ヒトの胃腸管において二価陽イオンなどの栄養素に結合し、その生物学的利用能を減少させる傾向があることがよく知られている。したがって、より栄養価の高い乳児用配合物のためのタンパク質源を提供するために、低フィチン酸大豆タンパク質分離物を製造する方法の開発に対して、長年にわたって多くの研究が焦点を当てている。長年にわたって開発されたそのような方法の例は、米国特許出願第20020127288Al(Wong et al.)に記載の方法などのフィターゼ処理法、米国特許第5248804号(Nardelli et al.)に記載の方法などのイオン交換法を含む(2つの記載を本願明細書に参照により組込まれる)。低フィチン酸タンパク質分離物を製造する他の方法は、例えば欧州特許出願第0380343A2(Simell et al.)で参照または記載される。
【0030】
本発明の乳児用配合物を定義する目的で、タンパク質分離物成分は、低フィチン酸タンパク質分離物を生産するために知られている、または適しているあらゆるフィターゼ処理法により誘導することができる。ただし、フィターゼ処理法がフィターゼを使用するか、フィチン酸濃度を減少させる類似機能を有する他の酵素を使用し、得られた乳児用配合物において生じたフィチン酸濃度が、ここに定義した低フィチン酸濃度の範囲内に下がることを条件とする。
【0031】
本発明の乳児用配合物は、大豆タンパク質材料をフィターゼ含有酵素で処理後、フィチン酸濃度を酵素処理により、得られる酵素処理大豆タンパク質の0.3重量%未満にし、その完了直後に酵素処理材料を水で洗浄することによって調製したフィターゼ処理大豆タンパク質からなる配合物の実施形態を含む。そのような実施形態は、米国特許出願第20020127288(Wong et al.)に従って調製された低フィチン酸大豆タンパク質分離物からなる栄養配合物を含む。そのような方法に従って調整された分離物は、灰分が非常に低いことが認められており、この低い灰分は、マンガン、リン、アルミニウム、カルシウムなどのフィターゼ処理大豆タンパク質に関連したミネラルの減少により特徴づけられる。
【0032】
好ましくはないが、本発明の乳児用配合物は、本書記載の低フィチン酸濃度を顕著に増加しないならば、大豆タンパク質分離物成分に加えて、他のタンパク質材料を更に含むことができる。そのような他のタンパク質材料は、無処理タンパク質および加水分解タンパク質、遊離アミノ酸、ならびにこの組合せを含むことができ、この非限定的な例は、加水分解タンパク質、部分的に加水分解したタンパク質または非加水分解タンパク質を含み、牛乳(例えば、カゼイン、乳清、ラクトース不含乳タンパク質分離物)、動物(例えば、肉、魚)、穀類(例えば、米、トウモロコシ)またはその組合せなどの知られた供給源、または適した供給源から誘導することができる。
【0033】
そのような他のタンパク質材料としての使用に適する非限定的な遊離アミノ酸は、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−シスチン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−タウリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリンおよびその組合せを含む。
【0034】
また、本発明は、フィターゼ処理タンパク質分離物の存在が高分子リボ核酸(すなわち固有の大豆タンパク質関連RNA)におけるその単量体単位への著明なシフトによって間接的に判定される、それらの乳児用配合物の実施形態を対象とする。これに関連して、これらの実施形態は、いかなるフィチン酸の減少もない(例えば、タンパク質分離物の重量の約2.2%のフィチン酸を有するタンパク質分離物成分)大豆ベース乳児用配合物におけるTPAN(総潜在有効ヌクレオシド)濃度に対して、重量の少なくとも75%、より一般的に少なくとも約90%のTPAN減少を有する乳児用配合物として提示する。TPANの解説、分析および検出は、例えば、LeachらのTotal Potentially Available Nucleosides of Human Milk by Stage of Lactation, Am J Clin Nutr, 1995;61:1224−30(1995)に記載される。
【0035】
カルシウム強化
本発明の乳児用配合物は、乳児の目標栄養必要量を満たすために十分なカルシウム量を必須要素として含み、本乳児用配合物は対脂質重量比で0.020未満、好ましくは約0.002から約0.020まで、より好ましくは約0.009から約0.018まで、より好ましくは約0.010から約0.017までのカルシウムを有する。
【0036】
この乳児用配合物に用いるカルシウムは、乳児用配合物に目標のカルシウム栄養素を供給する、あらゆる知られた栄養源または有効な栄養源から誘導することができる。適したカルシウム源の非限定的な例は、他の栄養素または配合物成分に由来する固有のカルシウム、あるいはクエン酸カルシウム、リン酸カルシウムまたは乳児用配合物の使用に適したその他のカルシウム源など別々に添加するカルシウム源のようなカルシウムを含む。
【0037】
この乳児用配合物のカルシウム濃度は、対象乳児集団の栄養必要量および、例えば、粉末、すぐに与えられる液体、濃縮物などの所望の製品形態などの因子によって異なる。すぐに与えられる液体配合物では、総カルシウム量は、乳児用配合物1リットル当たり、好ましくは約600mgまで、より好ましくは約100mgから約550mgまで、さらにより好ましくは乳児用配合物1リットル当たり約300mgから約540mgまでの範囲である。これらのカルシウム濃度は元素カルシウム濃度に基づき、すなわちカルシウム塩の総重量よりむしろ元素カルシウムに基づいて算出される。また、これらのカルシウム濃度は、また選択された乳児用配合物の100kcal当たり、好ましくは約90mgまで、より好ましくは約10mgから約85mgまで、さらにより好ましくは乳児用配合物100kcal当たり約50mgから約80mgまでの濃度として特徴付けられる。
【0038】
本発明の乳児用配合物が、カルシウム強化がここに記載のカルシウム対脂質の重量比で維持されている条件で乳児に与えたとき、便の軟度を最適化または改善する、カルシウム強化大豆ベース製品として配合可能なことが分かっている。大豆ベース配合物およびカルシウム強化が硬い便形成の頻度を増加し、一部の個人では便秘の頻度すら増加することが知られていることは、よく知られているので、特に驚かされた。
【0039】
任意選択の材料
本発明の乳児用配合物は、活性または不活性のいずれかの、その他の任意の材料を更に含み、配合物の物理的、化学的、審美的または加工特性を変更するか、対象集団において使用されるとき、製薬または追加栄養成分として働くことができるそれらの物質を含むことができる。そういう多くの任意の材料は、乳児用配合物を含む食品および栄養食品における使用において知られており、そのような任意の材料が、ここに記載の必須成分と適合性を有し、意図した使用において安全かつ有効で、さもなければ製品性能を過度に損なわないならば、本発明の乳児用配合物においても使用することができる。そのような任意の材料の非限定的な例は、防腐剤、抗酸化剤、乳化剤、調合薬、緩衝剤、着色剤、香料、ヌクレオチドおよびヌクレオシド、糊料、安定剤、ならびにその他の賦形剤または加工助剤を含む。
【0040】
本発明の乳児用配合物は、様々なビタミンのいずれかを好ましくは含み、このビタミンの非限定的な例は、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、ビタミンB12、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンC、コリン、イノシトール、その塩および誘導体、ならびにその組合せを含む。
【0041】
ここに記載のカルシウム強化に加えて、この乳児用配合物は、乳児用配合物またはその他の栄養配合物において、知られているあるいは使用に適しているその他のミネラルを更に含み、これらの非限定的な例は、リン、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、銅、ヨウ素、ナトリウム、カリウム、塩化物、セレンおよびその組合せを含む。
【0042】
本発明の選択された実施形態は、配合物100kcal当たり、次に掲げるビタミンA(約250から約750IUまで)、ビタミンD(約40から約100IUまで)ビタミンK(約4μmを超える)、ビタミンE(約0.3IU以上)ビタミンC(約8mg以上)、チアミン(約8μg以上)、ビタミンB12(約0.15μg以上)、ナイアシン(約250μg以上)、葉酸(約4μg以上)、パントテン酸(約300μg以上)、ビオチン(約1.5μg以上)、コリン(約7mg以上)およびイノシトール(約2mg以上)の1種または複数を含む乳児用配合物を含む。
【0043】
また、本発明の選択された実施形態は、配合物100kcal当たり、次に掲げるリン(約25mg以上)、マグネシウム(約6mg以上)、鉄(約0.15mg以上)、ヨウ素(約5μg以上)、亜鉛(約0.5mg以上)、銅(約60μg以上)、マンガン(約5μg以上)、ナトリウム(約20から約60mgまで)、カリウム(約80から約200mgまで)、塩化物(約55から約150mgまで)およびセレン(約0.5mcg以上)の1種または複数を含む乳児用配合物を含む。
【0044】
II.製造法
本発明の乳児用配合物は、フィターゼ処理大豆タンパク質分離物成分を含むように適切に技術を変更し、ここに記載の他の必須成分を組み入れるように適切に技術を変更するならば、本発明の所望の乳児栄養としての粉末実施形態または液体実施形態の製造および配合に適した、あらゆる知られている技術または、有効な技術によって調製することができる。
【0045】
例えば、適量のフィターゼ処理大豆タンパク質分離物を、水中(または油溶性ビタミンと合わせた油)で分散または可溶化させて、タンパク質溶液またはタンパク質液を生成することができる。所望の配合物の炭水化物成分(例えば、トウモロコシシロップ固形物、マルトデキストリン、スクロース)を、水中で溶解または分散させて炭水化物溶液または炭水化物液を生成する。あらゆる添加カルシウム含有ミネラルを含む適切なミネラルを、水中で溶解または分散させて、ミネラル溶液またはミネラル液を生成する。生成された、3種の溶液または液体(タンパク質、炭水化物およびミネラル)を適切な量で混合する(または必要に応じて油溶性ビタミンと合わせた油と更に混合する)。次に、得られた混合物を、熱処理および均質化し(均質化後に水溶性ビタミンを添加)、容器に入れ、滅菌して、所望の最終材料濃度によって、すぐに与えられる液体または希釈可能濃縮物のいずれかとして、本発明の液体の乳児用配合物実施形態を生成する。また、均質化した液体を、(一般的に1.5〜3.0%の含水量に)噴霧乾燥し、容器に入れて、本発明の粉末の実施形態を生成することができる。
【0046】
本発明の乳児用配合物の配合に使用されるフィターゼ処理大豆タンパク質分離物は、ここに記載の濃度範囲の、フィチン酸をほとんどあるいはまったく含まない大豆タンパク質分離物が得られる、米国特許出願第20020127288Al(Wong et al.)に開示の方法によって調整することが好ましい。その1具体例として、243ポンドの大豆タンパク質分離物を、2,959ポンドの水に添加して、7.6%の固形物を含む大豆タンパク質分離物スラリーを形成する。スラリーのpHを塩化水素酸によって4.5に調製し、スラリーの温度を50℃に上げる。凝乳固形物1000KPU/kgの活性を有し、フィターゼ酵素単独または酸性ホスファターゼを併せて含む適切なフィターゼ酵素を含む酵素製剤をスラリーに添加する。本目的のための適切な市販の酵素は、Natuphos(登録商標)(BASF社、ドイツ、ルートヴィヒスハーフェン)、Finase(登録商標)(Alko社、フィンランド、Rajamaki)または他の同等の機能を有するフィターゼ含有酵素システムを含む。スラリーを酵素製剤で2時間処理し、その後スラリーのpHを、水酸化カリウムと水酸化ナトリウムの腐蝕性の混合物で、5.1に調整する。次に、スラリーを水で固形物4.2%の濃度まで希釈し、ボウル遠心機で洗浄する。洗浄した275ポンドのスラリーを、水酸化カリウムと水酸化ナトリウムの腐蝕性の混合物で中和する。中和した物質を150℃でジェットクッキングにより加熱処理し、約26トルの圧を有する真空室へ射出することより53℃に瞬間冷却する。次に、本発明の乳児用配合物への配合のために、加熱処理したスラリーを噴射乾燥して、精製大豆タンパク質分離物15.5ポンドを回収する。
【0047】
本発明の乳児用配合物は、カロリー密度で約19kcal/fl ozから約24kcal/fl ozまで、より一般的に約20kcal/fl ozから約21kcal/fl ozまでの配合物とするか、あるいは希釈または再構成によって当該値が得られるように、最も一般的に、配合する。
【0048】
III.使用方法
本発明はまた、大豆ベース配合物による乳児の便秘の発生率を減少させる方法に加えて、大豆ベース配合物により乳児の便を軟らかくする方法を対象としており、これらの方法は、本発明のカルシウム強化大豆ベース乳児用配合物を乳児に与えることを含む。本発明はまた、便秘または極端に硬い便形成の頻度を減少させる一方、乳児に日々の栄養およびカルシウム強化をもたらす方法を対象とする。
【0049】
本発明の方法において、乳児に与えられる栄養は、乳児に対する単独の、初期の、またはサプリメントとしての栄養必要性を満たすために使用することができる。粉末の実施形態のために、各方法は、最も一般的には水または母乳からなる水性の溶媒で粉末を還元する工程も含み、このことにより、所望のカロリー密度を作り出し、経口的にまたは経腸的に乳児に与えて、所望の栄養を供給する。粉末を、水、または母乳などの他の適当な液体量で還元し、およそ1回の授乳に適した量を作り出す。一般に、約8gから約9gまでの本栄養粉末を、約55mLから約65mLまでの水で還元して、所望の栄養密度を作り出す。この乳児用配合物の実施形態は、様々なカロリー密度で還元または配合できるが、約19から約24kcal/fl ozまで、より一般的には約20から約21kcal/fl ozまでのカロリー密度範囲に、最も一般的に、還元または配合されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
IV実施例
以下の実施例は、本発明の乳児用配合物の特定の実施形態を例証するものであり、このなかには配合物を製造する方法、大豆ベース乳児用配合物による便秘の発生率を減少し、および/または極端に硬い便形成の頻度を減少させる日々の栄養を供給する配合物を使用する方法を含む。本実施例は、単に実証する目的だけに提供するもので、本発明の制限として解釈するものではなく、その多くのバリエーションが、本発明の精神や範囲を逸脱しないで可能である。
【実施例1】
【0051】
以下の実施例は、本発明のカルシウム強化大豆ベース乳児用配合物に関する栄養粉末の実施形態を例証する。例証された粉末配合物は、下記の表に詳しく記載する。
【0052】
【表2】

最初に、炭水化物(スクロース固形物)およびミネラルを適切な熱および撹拌により水に分散して、炭水化物−ミネラルスラリーを形成することによって、この例証された配合物を調製する。次に、大豆タンパク質分離物をすべての油溶性ビタミン、乳化剤および抗酸化剤とともに、適切な熱および撹拌により植物油(大豆、ココナツ、高オレイン酸サフラワー)に分散して、タンパク質−油スラリーを形成する。次に、形成したスラリーを、トウモロコシシロップとともに混合し、適切なアルカリ性溶液で6.0および7.0の間にpHを調製する。得られた混合物の最終の総固形分は、45〜50.5%である。次に、この混合物を100〜400psi(約0.7〜2.8MPa)で乳状にし、160〜170°F(約71〜77℃)で高温蒸気処理(HTST)にかけ、900〜1300psi(約6.2〜9.0MPa)/400psi圧での2段階均質化工程により均質化する。次に、アスコルビン酸などの水溶性ミネラルおよび他の水溶性ビタミン、メチオニン、ならびに微量元素を、均質化した混合物に添加し、次に、220〜250°F(約104〜121℃)で超高温(UHT)処理にかける。次に、熱処理した混合物を160〜180°F(約71〜82℃)に冷却し、約2300psi(約15.9MPa)、約3gal/分(約0.7m3hr)で噴霧乾燥し、含水量が粉末の2〜3重量%の完成した乳児栄養粉末を産生する。
【実施例2】
【0053】
以下の実施例は、本発明のカルシウム強化大豆ベース乳児用配合物に関する液体の実施形態を例証する。例証された配合物は、下記の表に詳しく記載する。
【0054】
【表3】

最初に、炭水化物(スクロース固形物)およびミネラルを適切な熱および撹拌により水に分散して、炭水化物−ミネラルスラリーを形成することによって、この例証された配合物を調製する。次に、大豆タンパク質分離物をすべての油溶性ビタミン、乳化剤および抗酸化剤とともに、適切な熱および撹拌により植物油(大豆、ココナツ、高オレイン酸サフラワー)に分散して、タンパク質−油スラリーを形成する。次に、形成したスラリーを、トウモロコシシロップとともに混合し、適切なアルカリ性溶液で6.0および7.0の間にpHを調製する。得られた混合物の最終の総固形分は、20〜30%である。次に、この混合物を100〜500psi(約0.7〜3.4MPa)で乳状にし、143〜154℃で高温蒸気処理(HTST)にかけ、3000〜4000psi(約20.1〜27.8MPa)/500psi圧での2段階均質化工程により均質化する。次に、アスコルビン酸などの水溶性物質および他の水溶性ビタミン、メチオニン、ならびに微量元素を、均質化した混合物に添加する。この混合物を、固形分が12〜13%となるように水で希釈し、適当な容器に詰めて密閉し、次に115〜126℃で滅菌する。
【0055】
(臨床データ)
3種の異なるカルシウム強化大豆ベース乳児用配合物のうちの1種を使用して、乳児を評価する試験を実施した。本研究の主な目的は、定めた期間に3種の被験配合物のうちの1種を与えた1〜3ヵ月齢の満期産児の便の硬さを評価および比較することであった。
【0056】
3種の被験配合物は以下の通りであった。配合物1)米国オハイオ州コロンバスのアボットラボラトリーズのロス製造部より市販されているIsomil(登録商標)ブランドの大豆ベース乳児用配合物、配合物2)フィターゼ処理法により脱フィチン化した大豆タンパク質分離物を含む大豆ベース乳児用配合物、配合物3)イオン交換法により脱フィチン化した大豆タンパク質分離物を含む大豆ベース乳児用配合物。
【0057】
3種の各被験配合物は、それぞれカロリー密度が20kcal/fl ozで、これらを包装済みのすぐに与えられる液体として調製した。配合物は以下の表3.1に記載した。表に記載されている成分量は、被験配合物の1リットル当たりのものである。
【0058】
【表4】


被験乳児用配合物の成分リスト
配合物1:水、トウモロコシシロップ、スクロース、大豆タンパク質分離物、高オレイン酸サフラワー油、ヤシ油、大豆油、クエン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、塩化カリウム、モノグリセリドおよびジグリセリド、大豆レシチン、塩化マグネシウム、カラゲナン、アスコルビン酸、L−メチオニン、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、塩化コリン、硫酸第一鉄、タウリン、m−イノシトール、α−トコフェロールアセテート、硫酸亜鉛、L−カルニチン、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、硫酸第二銅、ビタミンAパルミチン酸塩、βカロチン、塩酸チアミンクロライド、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、葉酸、硫酸マンガン、フィロキノン、ヨウ化カリウム、ビオチン、セレン酸ナトリウム、ビタミンD3シアノコバラミン、ならびにβカロチン。
【0059】
配合物2:水、トウモロコシシロップ、スクロース、脱フィチン化大豆タンパク質分離物(イオン交換)、高オレイン酸サフラワー油、ヤシ油、大豆油、クエン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、塩化カリウム、モノグリセリドおよびジグリセリド、大豆レシチン、塩化マグネシウム、カラゲナン、アスコルビン酸、L−メチオニン、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、塩化コリン、硫酸第一鉄、タウリン、m−イノシトール、α−トコフェロールアセテート、硫酸亜鉛、L−カルニチン、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、硫酸第二銅、ビタミンAパルミチン酸塩、βカロチン、塩酸チアミンクロライド、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、葉酸、硫酸マンガン、フィロキノン、ヨウ化カリウム、ビオチン、セレン酸ナトリウム、ビタミンD3シアノコバラミン、ならびにβカロチン。
【0060】
配合物3:水、トウモロコシシロップ、スクロース、脱フィチン化大豆タンパク質分離物(フィターゼ処理)、高オレイン酸サフラワー油、ヤシ油、大豆油、クエン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、塩化カリウム、モノグリセリドおよびジグリセリド、大豆レシチン、塩化マグネシウム、カラゲナン、アスコルビン酸、L−メチオニン、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、塩化コリン、硫酸第一鉄、タウリン、m−イノシトール、α−トコフェロールアセテート、硫酸亜鉛、L−カルニチン、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、硫酸第二銅、ビタミンAパルミチン酸塩、βカロチン、塩酸チアミンクロライド、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、葉酸、硫酸マンガン、フィロキノン、ヨウ化カリウム、ビオチン、セレン酸ナトリウム、ビタミンD3シアノコバラミン、ならびにβカロチン。
【0061】
試験デザイン
本試験は、便の特徴に関する無作為化盲検クロスオーバー試験であり、登録時に満期産児を無作為に2つの哺乳順序のうちの1つに割り付けた。最初の順序(ここではパートIと呼ぶ)では、クロスオーバーデザインで乳児に配合物1(市販の大豆配合物)または配合物2(イオン交換脱フィチン化から得られた大豆タンパク質分離物による大豆配合物)のいずれかを各7日与えた。基準に従って登録した被験者12例による本試験パート1が無事完了するとすぐ、新たな被験者12例によるパートIIが無事完了するまで、2つの更なる哺乳順序のうちの1つを続けて行った。
【0062】
本試験のパートIIにおいて、配合物1(市販の大豆配合物)または配合物3(フィターゼ脱フィチン化から誘導した大豆タンパク質分離物による大豆配合物)のいずれかを乳児に与えた。これらの配合物1および配合物3もクロスオーバーデザインで各7日間与えた。親または介護者は、各試験期間中の便の特性および摂取量を記録し、各期間の終了時に乳児哺乳および便パターンに関する質問票に答えた。
【0063】
本試験で使用された3種の配合物は、それぞれ大豆タンパク質分離物を含み、それぞれカルシウムが強化されていたという点において類似していた(表3.1参照)。また、この配合物は、配合物1ではカルシウムの対脂質重量比が0.0224で、配合物2および3ではカルシウムの対脂質重量比が0.014であったという以外は、多くの他の添加した栄養素または配合物成分に関して類似していた。更なる対比点として、配合物1は、通常の大豆タンパク質分離物を使用し、1リットル当たり、フィチン酸濃度が0.418gであったが、配合物2および3は、それぞれ、イオン交換法およびフィターゼ処理法により脱フィチン化され、フィチン酸濃度は、1リットル当たりわずか0.019gであった。
【0064】
組み入れ基準
出生時体重2,500g以上の28〜56日齢または57〜84日齢の同数の満期健常乳児を、親または法的代理人による書面による同意に基づき登録した。乳児は、大豆ベース配合物不耐の既往について事前に報告はなく、親の報告では試験開始前の1週間に抗生物質を服用していなかった。本試験で登録した乳児の素因については下記の表3.2を参照のこと。
【0065】
【表5】


試験変数および主要評価項目
主要評価項目は便の硬さであった。本評価項目は、平均中間順位便硬度(MRSC)値として、各参加者および対応する試験群について評価および報告した。MRSC採点および評価システムは、乳児用配合物の技術分野でよく知られており、1〜5の尺度(1−水様、2−ゆるい、3−軟らかい、4−形状あり、5−硬い)を基にした。
【0066】
被験配合物
本試験の焦点は、イオン交換により脱フィチン化された大豆タンパク質分離物から誘導された配合物2およびフィターゼ処理により脱フィチン化された大豆タンパク質分離物から誘導された配合物3の2種の脱フィチン化乳児用配合物である。配合物2および配合物3は、カルシウム濃度(530mg/L)およびカルシウムの対脂質重量比(0.0143)が同等であったが、配合物1(対照としての市販大豆配合物)は、カルシウム濃度(700mg/L)およびカルシウムの対脂質重量比(0.0224)が高かった。
【0067】
試験結果
本試験の結果を要約し、以下の表3.3および表3.4に示す。
【0068】
【表6】

【0069】
【表7】

【0070】
パートI:配合物1対配合物2−平均中間順位便硬度(MRSC)は、配合物1哺乳群および配合物2哺乳群の間に有意な差は認められなかった。配合物1群のMRSCは、より若い乳児では3.28、年齢が上の乳児では3.38だった。配合物2群のMRSCは、より若い乳児では3.10、年齢が上の乳児では2.82だった。
【0071】
パートII:配合物1および配合物3−MRSCは、年齢が上の乳児に配合物3(MRSC2.45)を与えたほうが、配合物1(MRSC3.10)を与えたより有意に軟らかく(p=0.0055)、より若い乳児では、配合物3(MRSC2.33)を与えたほうが、配合物2(MRSC2.72)を与えたより、ボーダーラインレベルの有意差で軟らかかった。
【0072】
結論
本試験の結果(表3.3および表3.4参照)より、フィターゼ処理タンパク質分離物より誘導した大豆ベース配合物(配合物3)では、市販の大豆配合物(配合物1)と比べて、便がより軟らかくなることを認めることができる。同様の有益性は、イオン交換タンパク質分離物から誘導した大豆ベース配合物(配合物2)では認められなかった。
【0073】
本試験の結果は、驚くべきものであった。本試験は、大豆ベース乳児用配合物が、多くの大豆ベース乳児用配合物の使用にしばしば伴う問題である、便秘または極端に硬い便形成の頻度を減少させるために乳児に今回配合および使用することができることを示した。配合物1または配合物2のいずれかの使用に比較して、配合物3の使用により便がより軟らかくなることは、カルシウムの対脂質比が約0.020未満で、フィターゼ酵素またはフィターゼ機能酵素により脱フィチン化された大豆タンパク質分離物を使用した配合物3の直接的な結果によると今回考えられている。驚いたことに、イオン交換による脱フィチン化は、同様の有意な結果を生じなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)約5.4%重量までの脂質、
(B)約5.4重量%から約10.8重量%の炭水化物、
(C)約2.4重量%までのフィターゼ処理大豆タンパク質、および
(D)1リットルの配合物当たり、約10mgから約600mgのカルシウムを含み、カルシウム対脂質重量比が約0.002から約0.020、前記フィターゼ処理大豆タンパク質のフィチン酸含有量が0.3重量%を超えない液体乳児用配合物。
【請求項2】
約2.7重量%から約4.5重量%の脂質を含む請求項1に記載の液体配合物。
【請求項3】
約6.1重量%から約8.8重量%の炭水化物を含む請求項1に記載の液体配合物。
【請求項4】
約1.0重量%から約2.3重量%のフィターゼ処理大豆タンパク質を含む請求項1に記載の液体配合物。
【請求項5】
1リットル当たり約300mgから約550mgのカルシウムを含む請求項1に記載の液体配合物。
【請求項6】
カルシウム対脂質重量比が約0.010から約0.017である請求項1に記載の液体配合物。
【請求項7】
配合物100kcal当たりのフィチン酸含有量が約8.4mgを超えない請求項1に記載の液体配合物。
【請求項8】
配合物100kcal当たりのフィチン酸含有量が約1.4mgを超えない請求項1に記載の液体配合物。
【請求項9】
大豆タンパク質材料をフィターゼ含有酵素で処理し、酵素処理完了直後に前記酵素処理材料を水で洗浄することによって、得られる酵素処理大豆タンパク質のフィチン酸濃度を約0.3重量%未満にして、フィターゼ処理大豆タンパク質を調製する請求項1に記載の液体配合物。
【請求項10】
大豆タンパク質材料をフィターゼ含有酵素で処理し、酵素処理完了直後に酵素処理材料を水で洗浄することによって、得られる酵素処理大豆タンパク質のフィチン酸濃度を酵素処理により0.05重量%未満にしてフィターゼ処理大豆タンパク質を調製する請求項1に記載の液体配合物。
【請求項11】
配合物100kcal当たり
(A)脂質、
(B)炭水化物、
(C)フィターゼ処理大豆タンパク質、および
(D)カルシウム
を含み、前記配合物のカルシウム対脂質重量比が約0.002から約0.020であり、配合物100kcal当たりのフィチン酸含有量が約8.4mgを超えない乳児用配合物。
【請求項12】
(A)約8.0gまでの脂質、
(B)約8.0gから約16.0gの炭水化物、
(C)約3.5gまでのフィターゼ処理大豆タンパク質、および
(D)約50mgから約90mgのカルシウム
を含む請求項11に記載の乳児用配合物。
【請求項13】
配合物100kcal当たり約4gから約6.6gの脂質を含む請求項11に記載の乳児用配合物。
【請求項14】
配合物100kcal当たり約9gから約13gの炭水化物を含む請求項11に記載の乳児用配合物。
【請求項15】
配合物100kcal当たり約1.5gから約3.4gのフィターゼ処理大豆タンパク質を含む請求項11に記載の乳児用配合物。
【請求項16】
配合物100kcal当たり約74mgから約90mgのカルシウムを含む請求項11に記載の乳児用配合物。
【請求項17】
カルシウム対脂質重量比が約0.010から約0.017である請求項11に記載の乳児用配合物。
【請求項18】
配合物100kcal当たりのフィチン酸含有量が約8.4mgを超えない請求項11に記載の乳児用配合物。
【請求項19】
配合物100kcal当たりのフィチン酸含有量約1.4mgを超えない請求項11に記載の乳児用配合物。
【請求項20】
大豆タンパク質材料をフィターゼ含有酵素で処理し、酵素処理完了直後に酵素処理材料を水で洗浄することによって、得られる酵素処理大豆タンパク質のフィチン酸濃度を0.3重量%未満にしてフィターゼ処理大豆タンパク質を調製する請求項11に記載の乳児用配合物。
【請求項21】
大豆タンパク質材料をフィターゼ含有酵素で処理し、酵素処理完了直後に酵素処理材料を水で洗浄することによって、得られる酵素処理大豆タンパク質のフィチン酸濃度を0.05重量%未満にしてフィターゼ処理大豆タンパク質を調製する請求項11に記載の乳児用配合物。
【請求項22】
請求項1に記載の配合物を乳児に与えることを含む、乳児に栄養を供給する方法。
【請求項23】
請求項1に記載の配合物を乳児に与えることを含む、栄養を供給し、乳児の便を軟化する方法。
【請求項23】
請求項1に記載の配合物を乳児に与えることを含む、栄養を供給し、乳児の便を軟化する方法。
【請求項24】
請求項1に記載の配合物を乳児に与えることを含む、栄養を供給し、乳児の便秘の頻度を減少させる方法。
【請求項25】
請求項11に記載の配合物を乳児に与えることを含む、乳児に栄養を供給する方法。
【請求項26】
請求項11に記載の配合物を乳児に与えることを含む、栄養を供給し、乳児の便を軟化する方法。
【請求項27】
請求項11に記載の配合物を乳児に与えることを含む、栄養を供給し、乳児の便秘の頻度を減少させる方法。

【公表番号】特表2007−502617(P2007−502617A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523878(P2006−523878)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/025162
【国際公開番号】WO2005/018343
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】