説明

カルバミン酸エステルおよび芳香族ヒドロキシ化合物を含む組成物を用いるイソシアネートの製造方法、ならびにカルバミン酸エステル移送用および貯蔵用組成物

【課題】本発明の目的は、ホスゲンを使用せずイソシアネートを製造するに際し、先行技術にみられるような種々の問題点がなく、カルバミン酸エステルおよび芳香族ヒドロキシ化合物を含む組成物を用いたイソシアネートの製造方法、ならびに、カルバミン酸エステルを移送もしくは貯蔵するためのカルバミン酸エステル組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明は、カルバミン酸エステルと、特定の芳香族ヒドロキシ化合物と、を含む組成物を使用する、特定の工程を含むイソシアネートの製造方法、および、カルバミン酸エステルと、特定の芳香族ヒドロキシ化合物と、を含む、カルバミン酸エステルの移送用または貯蔵用組成物を開示する。


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【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルバミン酸エステルと芳香族ヒドロキシ化合物とを含む組成物を用いてイソシアネートを製造する製造方法であって、
該組成物を、該カルバミン酸エステルの熱分解反応がおこなわれる反応器に移送する工程を含み、
該カルバミン酸エステルを構成するエステル基のモル数;A
該芳香族ヒドロキシ化合物のモル数;B
のAに対するBの比率が0.1〜50の範囲であり、
該カルバミン酸エステルの融点が200℃以下であり、
該芳香族ヒドロキシ化合物の融点が190℃以下であって、下記式(1)で表される、少なくとも1つの置換基R1を有する芳香族ヒドロキシ化合物である、
イソシアネートを製造する製造方法。
【化1】

(式中:
環Aは、置換基を有してもよい、炭素数6〜20の芳香族炭化水素環を表し、単環でも複数環でもよく、
1は、炭素、酸素、窒素からなる群から選ばれる原子を含む、炭素数1〜20の脂肪族基、炭素数1〜20の脂肪族アルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアラルキル基、または炭素数7〜20のアラルキルオキシ基を表し、更にR1は、Aと結合して環構造を形成してもよい。)。
【請求項2】
以下の工程(1)、工程(3)、工程(4)および工程(5)を含む工程、または、工程(2)、工程(3)、工程(4)および工程(5)を含む工程、によりイソシアネートを製造する請求項1記載の製造方法;
工程(1):アミン化合物と炭酸エステルとを反応させて、カルバミン酸エステルとアルコールと炭酸エステルを含有する混合物を得る工程、
工程(2):アミン化合物と尿素とアルコールとを反応させて、カルバミン酸エステルとアルコールと尿素化合物とを含有する混合物を得る工程、
工程(3):工程(1)または工程(2)の該混合物と芳香族ヒドロキシ化合物とを用いて、該混合物に含有されるアルコール、および、炭酸エステルまたは尿素を分離して、該カルバミン酸エステルと芳香族ヒドロキシ化合物とを含む組成物を製造する工程、
工程(4):工程(3)で得られる該組成物を、液体の状態で工程(5)が実施される反応器に移送する工程、
工程(5):工程(4)で移送した該組成物を用いてイソシアネートを製造する工程。
【請求項3】
芳香族ヒドロキシ化合物の標準沸点が、カルバミン酸エステルのエステル基を構成するRO(Rはアルキル基を表し、Oは酸素原子を表す)に水素原子が付加した構造を有する化合物ROHの標準沸点よりも高い請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
該芳香族ヒドロキシ化合物の標準沸点が、カルバミン酸エステルのエステル基を構成する基RO(Rはアルキル基を表し、Oは酸素原子を表す)がカルボニル基を介して結合した構造を有する化合物ROCOORの標準沸点よりも高い請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
工程(3)が、工程(1)または工程(2)の混合物と、芳香族ヒドロキシ化合物との混合物から、アルコール、および、炭酸エステルまたは尿素を分離し、カルバミン酸エステルと芳香族ヒドロキシ化合物とを含む組成物を得る工程である、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
工程(3)が蒸留塔においておこなわれ、工程(1)または工程(2)の該混合物を、芳香族ヒドロキシ化合物との混合物として蒸留塔に供給し、塔頂から、アルコール、および、炭酸エステルまたは尿素を回収し、塔底より、カルバミン酸エステルと芳香族ヒドロキシ化合物とを含む組成物を得る工程である、請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
工程(3)が、工程(1)または工程(2)の混合物から、一部または全部のアルコール、および/または、一部の、炭酸エステルまたは尿素を分離して得られる混合物と、芳香族ヒドロキシ化合物とを混合して混合液を得、該混合液から、炭酸エステルまたは尿素を分離する工程である、請求項4記載の製造方法。
【請求項8】
工程(3)が蒸留塔においておこなわれ、下記の工程(3−1)および工程(3−2)を含む工程である請求項7記載の製造方法:
工程(3−1):工程(1)または工程(2)の混合物を蒸留塔に供給し、塔頂から、アルコール、および/または、炭酸エステルまたは尿素を回収し、塔底より、カルバミン酸エステルと、アルコール、および/または、炭酸エステルまたは尿素を含有する混合液を回収する工程、
工程(3−2);工程(3−1)の混合液を、芳香族ヒドロキシ化合物との混合物として蒸留塔に供給し、塔頂からアルコール、および/または、炭酸エステルまたは尿素を回収し、塔底より、カルバミン酸エステルと芳香族ヒドロキシ化合物とを含む組成物を回収する工程。
【請求項9】
工程(3)で分離した炭酸エステルまたは尿素を、工程(1)の炭酸エステル、または工程(2)の尿素として再利用する工程を含む請求項2記載の製造方法。
【請求項10】
工程(4)が180℃以下でおこなわれる請求項2記載の製造方法。
【請求項11】
工程(5)が、工程(4)の組成物に含有されるカルバミン酸エステルを熱分解反応に付す工程であって、該熱分解反応によって生成する低沸点成分を、気体成分として、該熱分解反応がおこなわれる反応器から回収し、カルバミン酸エステルおよび/または芳香族ヒドロキシ化合物を含有する混合物の一部または全部を、該反応器の底部から回収する工程である請求項2記載の製造方法。
【請求項12】
該低沸点成分が、カルバミン酸エステルに由来するアルコールである請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
工程(5)が、工程(4)の該組成物を加熱して、該組成物に含有されるカルバミン酸エステルと芳香族ヒドロキシ化合物とを反応させて、該芳香族ヒドロキシ化合物に由来する基を有するカルバミン酸アリールを得、次いで、該カルバミン酸アリールを熱分解反応に付してイソシアネートを製造する工程である請求項2記載の製造方法。
【請求項14】
工程(5)が、次の工程(5−1)および工程(5−2)を含む請求項13記載の製造方法;
工程(5−1):工程(4)の該組成物に含有されるカルバミン酸エステルと芳香族ヒドロキシ化合物とを反応させて、生成する低沸点成分を気体成分として回収し、該カルバミン酸アリールと該芳香族ヒドロキシ化合物とを含む反応液を、該反応がおこなわれる反応器底部から取り出す工程、
工程(5−2):工程(5−1)の反応液を、熱分解反応がおこなわれる反応器に供給して該カルバミン酸アリールを熱分解反応に付し、生成するイソシアネートと芳香族ヒドロキシ化合物のうち、少なくとも一方の化合物を気体成分として回収し、気体成分として回収されない、イソシアネートおよび/または芳香族ヒドロキシ化合物および/またはカルバミン酸アリールを含有する混合液の一部または全部を該反応器底部から回収する工程。
【請求項15】
工程の(5−1)の低沸点成分が、該カルバミン酸エステルに由来するアルコールである請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
請求項11記載の、反応器底部から回収されたカルバミン酸エステルおよび/または芳香族ヒドロキシ化合物を含有する混合物、または、請求項14記載の工程(5−1)の反応液、請求項14記載の工程(5−2)で反応器底部から回収された混合液および/または気体成分として回収された化合物から、芳香族ヒドロキシ化合物を回収し、該芳香族ヒドロキシ化合物を工程(3)の芳香族ヒドロキシ化合物として再利用する請求項11または14の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項2記載の工程(3)で分離されるアルコール、および/または、請求項10および/または請求項13のアルコールを、請求項2記載の工程(2)におけるアルコールの一部または全部として使用する請求項2記載の製造方法。
【請求項18】
該芳香族ヒドロキシ化合物の分子量が、120〜370の範囲である請求項4記載の製造方法。
【請求項19】
該芳香族ヒドロキシ化合物が、該芳香族ヒドロキシ化合物を構成する芳香族炭化水素環に直接結合するヒドロキシル基を1つ有する化合物である請求項18記載の製造方法。
【請求項20】
該芳香族ヒドロキシ化合物が、環Aが、ベンゼン環、ナフタレン環およびアントラセン環からなる群から選ばれる少なくとも1つの構造を含有する構造である請求項1記載の製造方法。
【請求項21】
該芳香族ヒドロキシ化合物が、下記式(2)で表される化合物である請求項20記載の製造方法:
【化2】

(式中:
2、R3、R4、R5およびR6は、各々独立に、水素原子、もしくは、炭素、酸素、窒素からなる群から選ばれる原子を含む、炭素数1〜20の脂肪族基、炭素数1〜20の脂肪族アルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数7〜20のアラルキル基、または炭素数7〜20のアラルキルオキシ基を表し、R2、R3、R4、R5およびR6のうち、少なくとも1つは水素原子以外である。)。
【請求項22】
該芳香族ヒドロキシ化合物が、上記式(2)で表される化合物のうち、R2が水素原子ではない化合物である請求項21記載の製造方法。
【請求項23】
該芳香族ヒドロキシ化合物が、上記式(2)で表される化合物のうち、R2とR6を構成する炭素原子の合計数が2〜20である請求項22記載の製造方法。
【請求項24】
工程(1)のアミン化合物がポリアミン化合物である請求項2記載の製造方法。
【請求項25】
該アミン化合物が、下記式(3)で表される化合物である請求項24記載の製造方法。
【化3】

(式中、
7は、炭素、酸素から選ばれる原子を含む、炭素数1〜20の脂肪族基および炭素数6〜20の芳香族基からなる群から選ばれる1つの基であって、nに等しい原子価を有する基を表し、
nは、2〜10の整数である。)
【請求項26】
該ポリアミン化合物が、式(3)においてnが2であるジアミン化合物である請求項25記載の製造方法。
【請求項27】
該ジアミン化合物が、式(3)において、R7が、炭素、酸素から選ばれる原子を含む、炭素数1〜20の脂肪族基である化合物である請求項26記載の製造方法。
【請求項28】
該ジアミン化合物が、下記式(4)、(5)および(6)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物である請求項27記載の製造方法。
【化4】

【請求項29】
該炭酸エステルが、下記式(7)で表される化合物である請求項2記載の製造方法:
【化5】

(式中、R8は、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜8のアルキル基を表す。)。
【請求項30】
該炭酸エステルが、以下の工程(A)および工程(B)を含む工程によって製造される請求項29記載の製造方法:
工程(A):スズ−酸素−炭素結合を有する有機スズ化合物と二酸化炭素とを反応させて炭酸エステルを含有する反応混合物を得る工程、
工程(B):該反応混合物から該炭酸エステルを分離するとともに残留液を得る工程。
【請求項31】
請求項30記載の工程(A)および工程(B)に加えて、以下の工程(C)および工程(D)をおこなう請求項30記載の製造方法:
工程(C):工程(B)で得られた該残留液とアルコールを反応させて、スズ−酸素−炭素結合を有する有機スズ化合物と水を形成し、該水を反応系より除去する工程、
工程(D):工程(C)で得られたスズ−酸素−炭素結合を有する該有機スズ化合物を、工程(A)のスズ−酸素−炭素結合を有する有機スズ化合物として再利用する工程。
【請求項32】
請求項2記載の工程(3)で分離されるアルコール、および/または、請求項10および/または請求項13のアルコールを、請求項31記載の工程(C)におけるアルコールの一部または全部として使用する請求項31記載の製造方法。
【請求項33】
工程(1)のアルコールが、炭酸エステルに由来するアルキル基を有するアルコールである請求項2記載の製造方法。
【請求項34】
工程(1)のアミン化合物と炭酸エステルとの反応が、金属アルコキシド化合物存在下におこなわれる請求項2記載の製造方法。
【請求項35】
該金属アルコキシド化合物が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルコキシド化合物である請求項34記載の製造方法。
【請求項36】
該炭酸エステルを構成するアルキル基と、該金属アルコキシド化合物を構成するアルキル基が同一である請求項35記載の製造方法。
【請求項37】
工程(2)のアルコールが、下記式(8)で表される化合物である請求項2記載の製造方法:
【化6】

(式中、
9は、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜10のアルキル基を表す。)。
【請求項38】
該カルバミン酸エステルが、ポリカルバミン酸エステルである請求項2記載の製造方法。
【請求項39】
該ポリカルバミン酸エステルが、下記式(9)で表される化合物である請求項38記載の製造方法。
【化7】

(式中;
7は、上記定義した基を表し、
11は、炭素、酸素から選ばれる原子を含む、炭素数1〜10の脂肪族基または芳香族基を表し、
nは、2〜10の整数である。)
【請求項40】
該ポリカルバミン酸エステルが、式(9)で表される化合物のうち、nが2である化合物である請求項39記載の製造方法。
【請求項41】
該ポリカルバミン酸エステルが、式(9)で表される化合物のうち、R11が炭素、酸素から選ばれる原子を含む、炭素数1〜10の脂肪族基である請求項40記載の製造方法。
【請求項42】
該ポリカルバミン酸エステルが、式(9)で表される化合物のうち、R7が、炭素数1〜20のアルキル基、および炭素数5〜20のシクロアルキル基からなる群から選ばれる1つの基である化合物である請求項41記載の製造方法。
【請求項43】
該ポリカルバミン酸エステルが、下記式(10)、(11)、および(12)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項42記載の製造方法:
【化8】

(式中:
11は上記定義した基である。)。
【請求項44】
カルバミン酸エステルと芳香族ヒドロキシ化合物とを含む、カルバミン酸エステル移送用および貯蔵用組成物であって、
該カルバミン酸エステルを構成するエステル基のモル数;A
該芳香族ヒドロキシ化合物のモル数;B
のAに対するBの比率が0.1〜50の範囲であり、
該カルバミン酸エステルの融点が200℃以下であり、
該芳香族ヒドロキシ化合物の融点が190℃以下である、
カルバミン酸エステル移送用および貯蔵用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−97123(P2012−97123A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−37847(P2012−37847)
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【分割の表示】特願2009−507484(P2009−507484)の分割
【原出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】