説明

カルバメートの製造方法

【課題】カルバメートの新規な製造方法を提供する。
【解決手段】式(I):


(式中、Rは置換もしくは非置換のアルキルなど)で示される化合物に、式(I)で示される化合物に対して2モル当量以上のX−CO−O−Rで示される化合物を塩基の存在下で反応させることを特徴とする、式(II):


(式中、R及びRは置換もしくは非置換のアルキルなど)で示される化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルバメートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エチル[(2,6−ジクロロフェニル)スルホニル]カルバメートの製造方法が記載されている。すなわち、式:
【化1】


で示される化合物をエチルクロロホルメートと炭酸カリウム存在下でアセトン溶媒中反応させ、式:
【化2】


で示される化合物を製造する方法が記載されている。特許文献1では、反応後に中和処理を行い、酢酸エチルで抽出し、有機層を濃縮乾固することにより、目的物を得ている。
非特許文献1には、以下の工程が記載されている。
【化3】


該文献では、エチルクロロホルメートとベンゼンスルホンアミドのアルカリ溶液を酸性にして、N−(ベンゼンスルホニル)カルバメートを析出させることにより、製造している。
【0003】
非特許文献2には、カルバメートからイミドジカルボネートを製造する方法が記載されている。
非特許文献3には、以下の工程が記載されている。
【化4】


非特許文献3では、化合物42に2モル当量のR−C(=O)NLiをテトラヒドロフラン中で反応させ、化合物45や化合物46を製造している。
非特許文献4には、以下の工程が記載されている。
【化5】


非特許文献4では、化合物Iと化合物IIを出発原料として、化合物IIIを経由して、化合物IVを製造している。化合物IVとして、具体的には、メチル N−tert−ブチルスルホニルカルバメート、エチル N−tert−ブチルスルホニルカルバメートなどが、それぞれ収率59%、35%で製造されている。また、該文献には、非特許文献7の方法によっても、エチル N−tert−ブチルスルホニルカルバメートが収率35%で製造できたことが記載されている。
【0004】
非特許文献5には、以下の工程が記載されている。フェニルチオ体(化合物13)を、オキソンを用いて酸化し、ベンゼンスルホニル体(化合物14)を製造している。
【化6】


非特許文献6には、H、NaWOを用いた以下の酸化反応が記載されている。
【化7】


非特許文献7には、RSONHCONHR’で示される化合物の製造方法が記載されている。RSONHCOOR’で示される化合物が中間体として記載されているが、蒸留を試みると分解してしまう旨記載されている。
特許文献2〜4には、式:
【化8】


(式中、RはC1−C6アルキル;C3−C8シクロアルキル;またはハロゲン、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、C1−C6ハロアルキルおよびC1−C6ハロアルコキシから選ばれる1以上で置換されていてもよいフェニルであり、Rはそれぞれ独立してハロゲン、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、C1−C6ハロアルキル、C1−C6ハロアルコキシまたはC1−C6アルキルカルボニルであり、nは0〜2の整数であり、XはSまたはOである。)
で示される化合物が、NPY Y5受容体拮抗作用を有する化合物として、その製造方法と共に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/116304号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/125952号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2009/054434号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2008/134228号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Org.Chem.,Vol.36,No.26,1971 4102-4105
【非特許文献2】J.Org.Chem.,Vol.72,No13,2007 4872-4876
【非特許文献3】Chem.Pharm.Bull. Vol.40,No.1,1992,75-84
【非特許文献4】J.Org.Chem.,Vol.41,No.1,1976 143-145
【非特許文献5】J.Org.Chem.Vol.69,No.13, 2004,4534-4537
【非特許文献6】J.Org.Chem.Vol.58, No.7,1993, 1672-1678
【非特許文献7】J.Org.Chem.Vol.23, 1958, 923
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カルバメートの効率的な製造方法を見出す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、以下の発明を見出した。
(1)
式(I):
【化9】


(式中、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のシクロアルキルである)で示される化合物に、
式(I)で示される化合物に対して2モル当量以上の式(III):
【化10】


(式中、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールであり、Xは脱離基である。)で示される化合物を塩基の存在下で反応させることを特徴とする、
式(II):
【化11】


(式中、R及びRは前記と同意義である。)で示される化合物の製造方法。
(2)
蒸留工程を含まないことを特徴とする、上記(1)記載の製造方法。
(3)
式(II):
【化12】


(式中、R及びRは上記(1)と同意義である。)で示される化合物を塩基性の水溶液に溶解し、有機溶媒で洗浄した後に、酸を加えて酸性にして有機溶媒で抽出する工程を含むことを特徴とする、上記(1)記載の製造方法。
(4)
塩基が無機塩基であることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)
がiso-プロピルまたはtert-ブチルであり、Rがメチルまたはエチルである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
【0009】
(6)
式(IV):
【化13】


(式中、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のシクロアルキルであり、Xは脱離基である)で示される化合物に、
式(V):
【化14】


(式中、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールである。)で示される化合物を塩基の存在下で反応させることを特徴とする、
式(VI):
【化15】


(式中、R及びRは前記と同意義である。)で示される化合物の製造方法。
(7)
式(VI):
【化16】


(式中、R及びRは上記(6)と同意義である。)で示される化合物を塩基性の水溶液に溶解し、有機溶媒で洗浄した後に、酸を加えて酸性にして有機溶媒で抽出する工程を含むことを特徴とする、上記(6)記載の製造方法。
(8)
塩基が有機リチウム塩基である、上記(6)または(7)記載の製造方法。
【0010】
(9)
式(VI):
【化17】


(Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のシクロアルキルであり、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールである。)で示される化合物を酸化することを特徴とする、
式(II):
【化18】


(式中、R及びRは前記と同意義である。)で示される化合物の製造方法。
(10)
m-クロロ過安息香酸、過酸化水素またはオキソン(登録商標)を用いて酸化することを特徴とする、上記(9)記載の製造方法。
(11)
過酸化水素及びタングステン酸2水和物を用いて酸化することを特徴とする、上記(9)記載の製造方法。
【0011】
(12)
式(VII):
【化19】


(式中、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のシクロアルキルである)で示される化合物を、
式(VIII):
【化20】


(式中、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールであり、Xは脱離基である。)で示される化合物に塩基存在下で反応させることを特徴とする、
式(VI):
【化21】


(式中、R及びRは前記と同意義である。)で示される化合物の製造方法。
(13)
式(VI):
【化22】


(式中、R及びRは上記(12)と同意義である。)で示される化合物を塩基性の水溶液に溶解し、有機溶媒で洗浄した後に、酸を加えて酸性にして有機溶媒で抽出する工程を含むことを特徴とする、上記(12)記載の製造方法。
(14)
塩基が有機リチウム塩基である、上記(12)または(13)記載の製造方法。
【0012】
(15)
式(VI):
【化23】


(式中、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のシクロアルキルであり、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールである)で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物。
(16)
がiso-プロピルまたはtert-ブチルであり、Rがメチルまたはエチルである、上記(15)記載の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物。
なお、本明細書中、化合物と化合物を反応させることには、その塩またはそれらの溶媒和物を反応させることを含む。「塩」としては、塩酸、硫酸、硝酸またはリン酸等の無機酸の塩;酢酸、ギ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸またはクエン酸等の有機酸の塩や、ナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩等の無機塩基の塩;トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ジメチルアミノピリジン塩等の有機塩基の塩が挙げられる。「溶媒和物」としては、化合物またはその塩の水和物、アルコール和物等が挙げられる。例えば、化合物またはその塩の1水和物、2水和物、1アルコール和物、2アルコール和物等が挙げられる。
【0013】
としては、置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のシクロアルキルが挙げられる。好ましくは、置換もしくは非置換のアルキルであり、さらには、iso-プロピルまたはtert-ブチルが好ましい。
としては、置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールが挙げられる。好ましくは、置換もしくは非置換のアルキルであり、さらには、メチル、エチルが好ましい。
Xとしては、脱離基が挙げられる。脱離基としては、特に限定されるものではなく、本発明において、脱離する置換基であれば、自由に選択することができる。脱離基としては、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、よう素)、アルキルカルボニルオキシ、アルキルスルホニルオキシなどが挙げられる。特に、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、よう素)が好ましい。
アルキルとは、炭素数1〜6の直鎖または分枝状のアルキルを意味する。炭素数1〜4のアルキル、炭素数1〜3のアルキル等を包含する。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル等が挙げられる。
シクロアルキルとは、炭素数3〜8の環状のアルキルを意味する。炭素数3〜6の環状のアルキル、炭素数5または6の環状のアルキル等を包含する。例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル等が挙げられる。
アリールとは、芳香族炭素環式基を意味し、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。
置換アルキル、置換シクロアルキル、置換アリールの置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、アリール、シクロアルキル、ニトロ、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルスルホニルアミノ、アルキルスルホニル、アルキルスルホニルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシなどである。置換可能な任意の位置が、これらの基で置換された基を意味する。
アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルスルホニルアミノ、アルキルスルホニル、アルキルスルホニルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシのアルキルは、上記アルキルを意味する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、NPYY5受容体拮抗作用を有する化合物の有用な合成中間体である式(II)で示される化合物を効率よく製造することができる。式(I)で示される化合物に対して2モル当量以上の式(III)で示される化合物を反応させることにより、収率よく、純度よく、式(II)で示される化合物を製造することができることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
【化24】


(上記図中、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のシクロアルキルであり、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールであり、Xは脱離基である)
式(I)で示される化合物に式(III)で示される化合物を塩基の存在下で反応させることにより、式(II)で示される化合物を製造する工程である。
本発明者は、本工程において、式(I)で示される化合物に対して2モル当量以上の式(III)で示される化合物を反応させることにより、収率よく、純度よく、式(II)で示される化合物を製造することができることを見出した。これにより、式(II)で示される化合物を蒸留することなく、次の工程に使用することができる。
本工程に使用される塩基は、特に限定されるものではない。有機塩基または無機塩基を用いることができる。有機塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンなどを用いることができる。好ましくは、無機塩基である。無機塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを用いることができる。
【0016】
使用する塩基の量としては、式(I)で示される化合物に対して、1モル当量または過剰に使用することができ、1〜10モル当量、このましくは1〜2モル当量を用いることができる。
式(III)で示される化合物中の脱離基(X)としては、ハロゲン、アルキルカルボニルオキシ、アルキルスルホニルオキシなどが挙げられる。好ましくは、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、よう素)である。
使用する式(III)で示される化合物の量としては、式(I)で示される化合物に対して、2モル当量以上使用することを特徴とする。2モル当量以上使用することにより、収率よく、純度よく、式(II)で示される化合物を製造することができる。このましくは2〜4モル当量を用いることができる。
反応温度は、使用する塩基や溶媒などに依存するが、室温〜加熱還流で行うことができる。
反応溶媒としては、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、トルエン、ベンゼン、キシレンなどを用いることができる。
生成した式(II)で示される化合物は、転溶抽出法により、化合物の純度を高めることができる。たとえば、塩基性の水溶液に溶解し、有機溶媒で洗浄した後に、酸を加えて酸性にして有機溶媒で抽出し、その後有機溶媒を留去することにより、単離精製することができる。これにより、蒸留を行うことなく、収率よく、高い純度で、式(II)で示される化合物を得ることができる。
ここで「有機溶媒で洗浄」とは、塩基性の水溶液と有機溶媒を混ぜ、塩基性の水溶液中に存在していた不純物・分解物を有機層に溶解し、分液操作を行い水層のみを取り出す工程を意味する。なお、その際、分けた有機層を別に用意した塩基性水溶液で抽出し、目的とする式(II)で示される化合物をその塩基性水溶液に抽出して、得られた塩基性水溶液を既に得ている水溶液と一緒にして、その後の操作を行ってもよい。
【0017】
【化25】


(上記図中、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のシクロアルキルであり、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールであり、Xは脱離基である)
式(V)で示される化合物に式(IV)で示される化合物を塩基の存在下で反応させることにより、式(VI)で示される化合物を製造する工程である。
本工程に使用される塩基は、特に限定されるものではない。たとえば、強塩基が好ましい。強塩基としては、水素化ナトリウム、水素化リチウムや有機リチウム塩基が挙げられる。有機リチウム塩基としては、n-ブチルリチウム、リチウムヘキサメチルジシラザン、リチウムジイソプロピルアミド、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウムなどの強塩基を用いることができる。
【0018】
使用する塩基の量としては、式(V)で示される化合物に対して、1モル当量または過剰に使用することができ、1〜5モル当量、このましくは1〜2モル当量を用いることができる。
式(IV)で示される化合物中の脱離基(X)としては、ハロゲン、アルキルカルボニルオキシ、アルキルスルホニルオキシなどが挙げられる。好ましくは、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、よう素)である。
使用する式(V)で示される化合物の量としては、式(IV)で示される化合物に対して、1モル当量または過剰に使用することができ、1〜5モル当量、好ましくは2〜3モル当量を用いることができる。特に、式(V)で示される化合物の量は、式(IV)で示される化合物に対して2モル当量以上の場合が好ましい。
反応温度は、使用する塩基や溶媒などに依存する。たとえば、塩基としてリチウムヘキサメチルジシラザンを用いる場合は、ドライアイス-アセトンバスで反応液を冷却し、リチウムヘキサメチルジシラザンを加える。反応を処理するために、徐々に室温に戻す。たとえば、−78℃〜室温で反応を行うことができる。
反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、ジエチルエーテル,ジオキサン,ジメトキエタン,ジグライム,シクロヘキサン,ペンタン,ベンゼン,エチルベンゼンなどを用いることができる。
生成した式(VI)で示される化合物は、塩基性の水溶液に溶解し、有機溶媒で洗浄した後に、酸を加えて酸性にして有機溶媒で抽出し、その後有機溶媒を留去することにより、単離精製することができる。
なお、「有機溶媒で洗浄」とは、塩基性の水溶液と有機溶媒を混ぜ、塩基性の水溶液中に存在していた不純物・分解物を有機層に溶解し、分液操作を行い水層のみを取り出す工程を意味する。なお、その際、分けた有機層を別に用意した塩基性水溶液で抽出し、目的とする式(VI)で示される化合物をその塩基性水溶液に抽出して、得られた塩基性水溶液を既に得ている水溶液と一緒にして、その後の操作を行ってもよい。
【0019】
【化26】


(上記図中、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のシクロアルキルであり、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールである)
式(VI)で示される化合物を酸化することにより、式(II)で示される化合物を製造する工程である。
酸化剤としては、m-クロロ過安息香酸、過酸化水素、オキソン(Oxone、登録商標)KMnO4(過マンガン酸カリウム)、NaIO4(過ヨウ素酸ナトリウム)、OsO4(四酸化オスミウム)、K2Cr2O7(重クロム酸カリウム)、RuO4(四酸化ルテニウム)、過酸化ベンゾイル、過酢酸、t-BuOOH(t-ブチルヒドロパーオキサイド)が挙げられる。オキソンは、化学式2KHSO5KHSO4K2SO4で表わされる無機化合物であり、カリウムイオンおよび過硫酸水素イオン、硫酸イオンと硫酸水素イオンからなる複塩である。酸化剤として、特に好ましいのは、オキソンである。
酸化剤として過酸化水素などを用いる場合は、触媒として、タングステン(例えばタングステン酸2水和物)、鉄(例えば鉄ポルフィリン錯体)、ルテニウム(例えばメチルトリオオキソルテニウム)、バナジウム(例えばV2O5:酸化バナジウム)などを用いることができる。
酸化剤の量としては、式(VI)で示される化合物に対して、1モル当量または過剰に使用することができ、1〜20モル当量、このましくは1〜10モル当量を用いることができる。
反応溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、塩基性水溶液(たとえば、NaHCO3溶液、NaOH溶液,Na2CO3溶液)、テトラヒドロフラン、水、ジエチルエーテル、メタノール、t-ブチルアルコール、アセトン、ジオキサンなどを用いることができる。
反応温度は、0℃〜30℃、好ましくは室温である。
【0020】
【化27】


(上記図中、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のシクロアルキルであり、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールであり、Xは脱離基である)
【0021】
式(VII)で示される化合物に式(III)で示される化合物を塩基の存在下で反応させることにより、式(VI)で示される化合物を製造する工程である。
本工程に使用される塩基は、特に限定されるものではない。たとえば、強塩基が好ましい。強塩基としては、水素化ナトリウム、水素化リチウムや有機リチウム塩基が挙げられる。有機リチウム塩基としては、n-ブチルリチウム、リチウムヘキサメチルジシラザン、リチウムジイソプロピルアミド、s-ブチルリチウム,t-ブチルリチウムなどの強塩基を用いることができる。
使用する塩基の量としては、式(VII)で示される化合物に対して、1モル当量または過剰に使用することができ、1〜10モル当量、このましくは1〜5モル当量を用いることができる。
式(III)で示される化合物中の脱離基(X)としては、ハロゲン、アルキルカルボニルオキシ、アルキルスルホニルオキシなどが挙げられる。好ましくは、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、よう素)である。
使用する式(III)で示される化合物の量としては、式(VII)で示される化合物に対して、1モル当量または過剰に使用することができ、1〜5モル当量、このましくは2〜4モル当量を用いることができる。
反応温度は、使用する塩基や溶媒などに依存する。たとえば、塩基としてリチウムヘキサメチルジシラザンを用いる場合は、ドライアイス-アセトンバスで反応液を冷却し、リチウムヘキサメチルジシラザンを加える。反応を処理するために、徐々に室温に戻す。たとえば、−78℃〜室温で反応を行うことができる。
反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジメトキエタン、ジグライム、シクロヘキサン、ペンタン、ベンゼン、エチルベンゼンなどを用いることができる。
生成した式(VI)で示される化合物は、塩基性の水溶液に溶解し、有機溶媒で洗浄した後に、酸を加えて酸性にして有機溶媒で抽出し、その後有機溶媒を留去することにより、単離精製することができる。
なお、「有機溶媒で洗浄」とは、塩基性の水溶液と有機溶媒を混ぜ、塩基性の水溶液中に存在していた不純物・分解物を有機層に溶解し、分液操作を行い水層のみを取り出す工程を意味する。なお、その際、分けた有機層を別に用意した塩基性水溶液で抽出し、目的とする式(VI)で示される化合物をその塩基性水溶液に抽出して、得られた塩基性水溶液を既に得ている水溶液と一緒にして、その後の操作を行ってもよい。
【0022】
以下に実施例を挙げて説明するが、以下の記載は本発明を限定するものではない。なお、ATRは、Attenuated Total Reflection法を意味する。
【実施例1】
【0023】
【化28】


1000mLのフラスコに、t-ブチルスルホンアミド(50.0g,364.4mmol)、炭酸カリウム(176.3g,1275.6mmol)を加え、これにアセトン(450mL)を加えて顕濁させた。この顕濁液にクロロ炭酸メチル(86.3g,913.2mmol)を室温下で約30分かけて滴下した。しばらく攪拌した後、オイルバスを用いて徐々に54℃まで温度を上げていった(約15分)。還流下4時間反応した後、室温で一晩放置した。翌日、再度還流条件下で約10時間反応した後、室温で放置した。この反応液(顕濁液)を35%塩酸(266.1g,2551.6mmol)と水(774mL)によって希釈した塩酸水に割り込み処理した。処理液はエバポレーターを用いてしばらく濃縮し、アセトンを留去した。これに酢酸エチル(500mL)で3回抽出を行い、得られた酢酸エチルを合併して濃縮すると、粗生成物(固体)が68.02g得られた(NMR純度:93%,換算収率:89%)。
元素分析
Calcd, C:36.91, H:6.71, N:7.17, S:16.42
Found, C:36.83, H:6.56, N:7.33, S:16.71
質量分析(FABMS)
[M+H]+=196,2[M+H]+=391
NMR(CDCl3, δ) 7.58(brs, 1H, NH), 3.80(s, 3H, CH3), 1.49(s, 9H, C(CH3)3)
【実施例2】
【0024】
実施例1で得られた粗生成物(固体)68.02gに、酢酸エチル500mLを加えて溶解した。次いでこの酢酸エチル溶液に5%重曹水918gを加えて撹拌した。分液操作後、有機(酢酸エチル)層(1)と水層(1)を得た。有機層(1)には再度5%重曹水306.2gを加えて撹拌し、分液後有機層(2)と水層(2)を得た。水層(1)には酢酸エチル250mL加えて撹拌した後、分液を行いそれぞれ有機層(3)と水層(3)を得た。水層(2)に有機層(3)を加え撹拌した後、分液を行い有機層(4)と水層(4)を得た。
水層(3)と水層(4)を合併混合した後、35%塩酸を用い、pH1に調整した。この水層に酢酸エチル500mLを用いて2回抽出を行った。得られた有機(酢酸エチル)層を合併混合した。この抽出液を136.5gまで減圧濃縮した後、濃縮液にn-ヘキサン100mLを加え、晶析した。スラリーを室温で1時間撹拌した後、ろ過を行った。得られた結晶をn-ヘキサンを適量用いて洗浄した後、減圧乾燥し、精製物(固体)を47.93g得た(NMR純度:99%,換算収率:75.0%,通算収率:66.8%)。
【実施例3】
【0025】
【化29】


100mLのフラスコに、メチルカルバメート(1.51g,20.1mmol)を加え、テトラヒドロフラン(20.0mL)に溶解させ、ドライアイス-アセトンバスで冷却した。リチウムヘキサメチルジシラザン(1M, テトラヒドロフラン溶液)(20.0mL, 20.0mmol)を15分かけて滴下した。ドライアイス-アセトンバスで冷却したままで1時間攪拌した後、t-ブチルスルフィニルクロライド(1.41g, 10.0mmol) のテトラヒドロフラン(10mL) 溶液を約5分かけて滴下した。ドライアイス-アセトンバスで冷却した状態でしばらく攪拌した後、徐々に室温まで温度を上げていった(約2時間)。500mL分液ロートに飽和塩化アンモニウム溶液と酢酸エチルを入れた状態で、反応液を加えた。水層のpHが7.8程度であったので、更に飽和塩化アンモニウム溶液と飽和クエン酸溶液を加えて分液したところ、水層のpHは約2.8であった。この水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、エバポレーターで濃縮した。沈殿物があったので、酢酸エチルを加えて再度ろ過、濃縮して残渣(3.43g)を得た。この濃縮残渣に飽和重曹水(50mL)を加え分液した後、更に飽和重曹水(50mL)で2回抽出した。水層を合わせたときのpHは9.1であり、5%塩酸を加えてpHを2.4の酸性とした後、酢酸エチルを加えて分液した。水層を酢酸エチルで更に2回抽出した後、有機層を合わせて濃縮すると、粗生成物(液体)が1.33g得られた(NMR純度:78%,換算収率:58%)。
元素分析
Calcd, C:40.21, H:7.31, N:7.81, S:17.89
Found, C:39.85, H:7.24, N:7.69, S:17.50
質量分析(FABMS)
[M+H]+=180
IR (ATR)
1734,1715,1447,1220,1068
NMR(CDCl3, δ) 6.32(brs, 1H, NH), 3.81(s, 3H, CH3), 1.28(s, 9H, C(CH3)3)
【実施例4】
【0026】
【化30】


m-クロロ過安息香酸での酸化反応
スルフィニルアミド中間体(0.180g,NMR純度:78%,換算mol数:0.781mmol) をジクロロメタン(2.0mL)に溶かして氷浴で冷却し、m-クロロ過安息香酸(0.154g, 0.892mmol)を加えた。氷浴をはずして、室温で3時間20分攪拌した後、m-クロロ過安息香酸(0.157g, 0.911mmol)を室温で加えた。室温で約1時間30分攪拌後、水と酢酸エチルを加えて分液を行った。水層を酢酸エチルで抽出した後、有機層を合わせて、水とアスコルビン酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水層がヨウ化カリウムデンプン紙で発色しないことを確認した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過、濃縮後、残渣をTLCで精製した。(SiO2,200×200×0.25mm,4プレート,ヘキサン:酢酸エチル=60:40)一部分をヨウ素で発色させて、目的物の位置を確認後、目的物のある部分をかきとり、酢酸エチルで抽出、ろ過、濃縮を行うと、目的物(固体)が62.4mg得られた(0.320mmol, 収率:41%)。
元素分析
Calcd, C:36.91, H:6.71, N:7.17, S:16.42
Found, C:36.76, H:6.53, N:7.17, S:16.40
質量分析(FABMS)
[M+H]+=196
IR (ATR)
3242,1761,1461,1331,1185,1122,856
NMR(CDCl3, δ) 6.85(brs, 1H, NH), 3.80(s, 3H, CH3), 1.50(s, 9H, C(CH3)3)
【実施例5】
【0027】
【化31】


オキソン(登録商標)による酸化反応
スルフィニルアミド中間体(0.132g,NMR純度:78%,換算mol数:0.573mmol)にテトラヒドロフラン(1.0mL)、水(1.0mL)を加えて氷浴で冷却した。オキソン(登録商標)(0.987g,1.61mmol)を加えたのち、氷浴をはずして室温で約3時間攪拌した。水(30mL)、酢酸エチル(20mL)をいれた50mLの分液ロートに反応液を加えた。水層を酢酸エチルで抽出し、それぞれの有機層をアスコルビン酸水溶液(20mL)で洗浄後、あわせて濃縮を行うと粗生成物(固体)が81.9mg得られた。(0.419mmol,粗収率:73%)
【実施例6】
【0028】
【化32】


カップリング反応+酸化工程
リチウムヘキサメチルジシラザンを用いたカップリング反応及びオキソン(登録商標、OXONE)による酸化反応
100mLのフラスコに、メチルカルバメート(1.51g,20.1mmol)を加え、テトラヒドロフラン(40.0mL)に溶解させ、ドライアイス-アセトンバスで冷却した。リチウムヘキサメチルジシラザン(1M, テトラヒドロフラン溶液)(20.2mL, 20.2mmol)を15分かけて滴下した。ドライアイス-アセトンバスで冷却したままで45分攪拌した後、t-ブチルスルフィニルクロライド(1.41g, 10.0mmol) のテトラヒドロフラン(10mL) 溶液を約15分かけて滴下した。ドライアイス-アセトンバスで冷却した状態で35分攪拌した後、徐々に室温まで温度を上げていった(約1時間20分)。500mL分液ロートに飽和塩化アンモニウム溶液(100mL)、酢酸エチル(200mL)を入れた状態で、反応液を加えた。水層のpHが8程度であったので、更に飽和塩化アンモニウム溶液(200mL)、酢酸エチル(50mL)を加えて分液したところ、水層のpHは約7.6であった。この水層を酢酸エチル(200mL)で2回抽出し、有機層を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、エバポレーターで濃縮した。沈殿物があったので、酢酸エチルを50mL加えて再度、硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後100mLのフラスコで濃縮し、スルフィニルアミド中間体(液体)を2.29g(理論収量:1.80g)得た。
【0029】
得られた中間体にテトラヒドロフラン(20mL)、水(20mL)を加えて氷浴で冷却した。オキソン(登録商標)(17.20g,28.0mmol)を6分かけて加えたのち、氷浴をはずして室温で1時間20分攪拌した。さらにオキソン(登録商標、OXONE)(6.17g,10.0mmol)を氷浴で冷却しながら加えたのち、室温で約1時間20分攪拌後、一晩放置した。翌日室温でさらに約2時間20分攪拌後、水(200mL)、酢酸エチル(200mL)をいれた500mLの分液ロートに反応液を加えた。水層のpHは約1であり、ヨウ化デンプンカリ試験紙は発色した。有機層を10%亜硫酸ナトリウム水溶液で洗浄した後、ヨウ化デンプンカリ試験紙が発色しないことを確認した。それぞれの水層を酢酸エチル200mLで2回抽出した。有機層を合わせた後、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過、濃縮を行った。濃縮液に5%重曹水(80mL)、酢酸エチル(40mL)を加えたのち分液した。水層を酢酸エチル(40mL)で洗浄したのち、それぞれの有機層を5%重曹水(80mL)でもう一度抽出した。水層を合わせたときのpHは8.5であり、5%塩酸を70mL加えてpHを2.7の酸性とした後、酢酸エチル150mLを加えて分液した。有機層を水100mLで洗浄したのち、それぞれの水層を酢酸エチル150mLで2回抽出した。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過濃縮を行った。濃縮液に酢酸エチル溶解しない不純物があったため、ろ過後更に濃縮を行い、粗結晶を1.46g(理論収量:1.90g)得た。この粗結晶にトルエンを加え、約80℃に加熱溶解ののちヘキサンを加えた。濁りだしたところで、室温まで冷却し一晩放置した。ろ過後、通気乾燥して目的物(固体)1.10gを得た。(理論収量:1.90g,NMR純度:91%,粗収率:56%,換算収率:51%)
【実施例7】
【0030】
【化33】


カップリング反応+酸化工程
リチウムヘキサメチルジシラザンを用いたカップリング反応及びNa2WO4触媒を用いたH2O2酸化反応による通し実験
100mLのフラスコに、メチルカルバメート(0.750g,10.0mmol)を加え、テトラヒドロフラン(10.0mL)に溶解させ、ドライアイス-アセトンバスで冷却した。リチウムヘキサメチルジシラザン(1M, テトラヒドロフラン溶液)(10.0mL, 10.0mmol)を7分かけて滴下した。ドライアイス-アセトンバスで冷却したままで約1時間攪拌した後、t-ブチルスルフィニルクロライド(0.703g, 5.00mmol) のテトラヒドロフラン(5mL) 溶液を約5分かけて滴下し、テトラヒドロフラン(2.5mL)で滴下ロートを洗浄した。ドライアイス-アセトンバスで冷却した状態で約30分攪拌した後、徐々に(約2時間30分)室温まで温度を上げた。反応液をエバポレーターで約半量になるまで濃縮した。200mL分液ロートに飽和塩化アンモニウム溶液(50mL)を入れた状態で、濃縮した反応液を加えた。水層のpHが7.6程度であったので、更に飽和塩化アンモニウム溶液(100mL)と酢酸エチル(100mL)を加えて分液したところ、水層のpHは約6.8であった。この水層を酢酸エチル(70mL)で2回抽出し、有機層を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ過後、200mLのフラスコを用いてエバポレーターで濃縮したところ、スルフィニルアミド中間体(液体)を1.03g(理論収量:0.895g)得た。
【0031】
得られた中間体に5%NaHCO3溶液(16.76g,10.0mmol)を加えて氷浴で冷却した。タングステン酸2水和物(Na2WO4・2H2O)(83.3mg,0.253mmol)を加えたのち、30%過酸化水素(5.67g,50.0mmol)を加えた。氷浴をはずして室温で3時間30分攪拌した。タングステン酸2水和物(Na2WO4・2H2O)(83.3mg,0.253mmol)と30%過酸化水素(5.67g,50.0mmol)を加えた。反応開始から約5時間後に30%過酸化水素(5.72g,50.5mmol)を、約7時間後にタングステン酸2水和物(Na2WO4・2H2O)(166.6mg,0.51mmol)と30%過酸化水素(11.34g,100.0mmol)を、約9時間後に30%過酸化水素(5.67g,50.0mmol)を加えたのち、室温で合計約11時間30分攪拌後、一晩放置した。翌日、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(50mL)、酢酸エチル(50mL)をいれた300mLの分液ロートに反応液を加えた。水層のpHは約1であり、ヨウ化デンプンカリ試験紙は発色した。さらに、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(150mL)、酢酸エチル(50mL)を加えたところ水層のpHは約1であり、ヨウ化デンプンカリ試験紙はまだ発色した。有機層を10%亜硫酸ナトリウム水溶液で2回洗浄した後、2回目の水層は、ヨウ化デンプンカリ試験紙を発色しなかった。それぞれの水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせた後、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過、濃縮を行ったところ、粗結晶を0.74g得た。この粗結晶にトルエンを加え、約80℃に加熱溶解ののちヘキサンを加えた。濁りだしたところで室温まで冷却し、更に氷浴で冷却した。ろ過後、通気乾燥して目的物(固体)0.64gを得た。(理論収量:0.975g,NMR純度:94%,粗収率:66%,換算収率:61%)
【実施例8】
【0032】
【化34】


t-ブチルスルフィニルアミドを原料とした実験
20mLのフラスコに、t-ブチルスルフィニルアミド(0.309g,2.55mmol)を加え、テトラヒドロフラン(3mL)に溶解させ、ドライアイス-アセトンバスで冷却した。リチウムヘキサメチルジシラザン(1M, テトラヒドロフラン溶液)(5.40mL, 5.40mmol)を5分かけて滴下した。ドライアイス-アセトンバスで冷却したままで約1時間攪拌した後、クロロ炭酸メチル(0.420ml, 5.40mmol) を加えた。ドライアイス-アセトンバスで冷却した状態で約1時間20分攪拌した後、冷却したままの反応容器に飽和塩化アンモニウム溶液と酢酸エチルを加えた。室温になってから分液を行い、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、エバポレーターで濃縮したところ、スルフィニルアミド中間体(液体)が0.547g(理論収量:0.457g)得られた。
【0033】
得られた中間体に5%NaHCO3溶液(8.57g,5.10mmol)を加えて氷浴で冷却した。タングステン酸2水和物(Na2WO4・2H2O)(84.7mg,0.257mmol)を加えたのち、30%過酸化水素(5.79g,51.0mmol)を加えた。氷浴をはずして室温で1時間30分攪拌した。タングステン酸2水和物(Na2WO4・2H2O)(84.0mg,0.255mmol)と30%過酸化水素(5.77g,50.9mmol)を氷浴下で加えた。氷浴をはずした後、室温で合計約3時間20分攪拌し、一晩放置した。翌日、冷却した10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(50mL)と酢酸エチル(25mL)の混液の中に反応液をゆっくりと加えた。さらに、10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(80mL)、酢酸エチル(100mL)を加えて、分液した。水層を酢酸エチル(125mL)で抽出した後、それぞれの有機層を10%亜硫酸ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄した。有機層を合わせた後、濃縮を行ったところ、粗生成物を0.442g得た。粗生成物に5%重曹水(35mL)、酢酸エチル(20mL)を加えたのち分液した。水層を酢酸エチル(20mL)で洗浄したのち、それぞれの有機層を5%重曹水(20mL)でもう一度抽出した。水層を合わせたときのpHは9.1であり、5%塩酸を約28mL加えてpHを1.6の酸性とした後、酢酸エチル100mLを加えて分液した。水層を酢酸エチル100mL抽出し、それぞれの有機層を水50mLで洗浄した。有機層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過濃縮を行ったところ、目的物(固体)を0.369g得た。(理論収量:0.497g,NMR純度:96%,粗収率:76%,換算収率:71%)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


(式中、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のシクロアルキルである)で示される化合物に、
式(I)で示される化合物に対して2モル当量以上の式(III):
【化2】


(式中、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールであり、Xは脱離基である。)で示される化合物を塩基の存在下で反応させることを特徴とする、
式(II):
【化3】


(式中、R及びRは前記と同意義である。)で示される化合物の製造方法。
【請求項2】
蒸留工程を含まないことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
式(II):
【化4】


(式中、R及びRは請求項1と同意義である。)で示される化合物を塩基性の水溶液に溶解し、有機溶媒で洗浄した後に、酸を加えて酸性にして有機溶媒で抽出する工程を含むことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
塩基が無機塩基であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
がiso-プロピルまたはtert-ブチルであり、Rがメチルまたはエチルである、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
式(IV):
【化5】


(式中、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のシクロアルキルであり、Xは脱離基である。)で示される化合物に、
式(V):
【化6】


(式中、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールである。)で示される化合物を塩基の存在下で反応させることを特徴とする、
式(VI):
【化7】


(式中、R及びRは前記と同意義である。)で示される化合物の製造方法。
【請求項7】
式(VI):
【化8】


(式中、R及びRは請求項6と同意義である。)で示される化合物を塩基性の水溶液に溶解し、有機溶媒で洗浄した後に、酸を加えて酸性にして有機溶媒で抽出する工程を含むことを特徴とする、請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
塩基が有機リチウム塩基である、請求項6または7記載の製造方法。
【請求項9】
式(VI):
【化9】


(Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のシクロアルキルであり、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールである。)で示される化合物を酸化することを特徴とする、
式(II):
【化10】


(式中、R及びRは前記と同意義である。)で示される化合物の製造方法。
【請求項10】
m-クロロ過安息香酸、過酸化水素またはオキソン(登録商標)を用いて酸化することを特徴とする、請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
過酸化水素及びタングステン酸2水和物を用いて酸化することを特徴とする、請求項9記載の製造方法。
【請求項12】
式(VII):
【化11】


(式中、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のシクロアルキルである)で示される化合物を、
式(VIII):
【化12】


(式中、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールであり、Xは脱離基である。)で示される化合物に塩基存在下で反応させることを特徴とする、
式(VI):
【化13】


(式中、R及びRは前記と同意義である。)で示される化合物の製造方法。
【請求項13】
式(VI):
【化14】


(式中、R及びRは請求項12と同意義である。)で示される化合物を塩基性の水溶液に溶解し、有機溶媒で洗浄した後に、酸を加えて酸性にして有機溶媒で抽出する工程を含むことを特徴とする、請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
塩基が有機リチウム塩基である、請求項12または13記載の製造方法。
【請求項15】
式(VI):
【化15】


(式中、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のシクロアルキルであり、Rは置換もしくは非置換のアルキルまたは置換もしくは非置換のアリールである)で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項16】
がiso-プロピルまたはtert-ブチルであり、Rがメチルまたはエチルである、請求項15記載の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物。

【公開番号】特開2011−256130(P2011−256130A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131604(P2010−131604)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】