説明

カルボキシル基含有ニトリルゴムの製造方法

【課題】カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスに凝固剤を加え、カルボキシル基含有ニトリルゴム成分を凝固させることによりカルボキシル基含有ニトリルゴムを製造する方法において、操業性の向上、ならびに製造プロセスおよび製造機器の削減を可能とし、設備費の低減および製造コストの低減を図ること。
【解決手段】カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと、凝固剤を含有する凝固液と、を破砕機能付きのポンプ10に供給し、前記ラテックスと前記凝固剤とを接触させることにより、カルボキシル基含有ニトリルゴム成分を凝固させ、クラム状のカルボキシル基含有ニトリルゴムを含むクラムスラリーを得る工程を有するカルボキシル基含有ニトリルゴムの製造方法であって、前記カルボキシル基含有ニトリルゴム成分の凝固を40℃以上の温度で行うことを特徴とするカルボキシル基含有ニトリルゴムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスに凝固剤を加え、カルボキシル基含有ニトリルゴム成分を凝固させることにより、カルボキシル基含有ニトリルゴムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成ゴムの製造工程においては、たとえば、大型の凝固タンクおよび洗浄タンクで構成される凝固・洗浄装置によりゴム状重合体成分を析出させ、洗浄を行い、次いで、スクイザーにより脱水を行い、その後、バンドドライヤー、気流乾燥機または押出乾燥機などの乾燥装置により乾燥状態のゴム状重合体を得ている。なお、乾燥装置の下流側には、通常ベーラーが接続してあり、乾燥後のゴム状重合体は最終的にはベール状に加工されて製品化されることが多い。
【0003】
しかしながら、このような工程によりゴム状重合体を製造する場合には、大型の凝固タンクおよび洗浄タンクからなる凝固・洗浄装置を必要としていたため、操作が煩雑であり、操業性が悪く、しかも多大な設置スペースを必要とし、設備コストおよび製造コストを増大させていた。
【0004】
この問題を解決するために、たとえば、特許文献1では、セメント状のゴム溶液に凝固液を加えることによりゴム状重合体を製造する方法において、破砕機能付きポンプを使用して、セメント状のゴム溶液と凝固液とを接触させて、ゴム状重合体成分を析出させる方法が開示されている。この文献記載の方法によると、操業性が向上し、しかも製造プロセスおよび製造機器の削減を可能とし、設備費の低減および製造コストの低減を図ることができるという旨が記載されている。しかしながら、この文献に開示されている方法は、溶液重合により得られるセメント状のゴム溶液からゴム状重合体を製造するための方法であり、たとえば、この文献に開示されている方法を、重合体ラテックスに適用しようとした場合に、重合体の種類(例えば、カルボキシル基含有ニトリルゴム重合体のラテックスは、水分含有量が多く粘着性が強いクラムになり易い)によっては、良好なゴム状重合体を得ることができないという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平10−100145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスに凝固剤を加え、カルボキシル基含有ニトリルゴム成分を凝固させることによりカルボキシル基含有ニトリルゴムを製造する方法において、操業性の向上、ならびに製造プロセスおよび製造機器の削減を可能とし、設備費の低減および製造コストの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスに凝固剤を加え、カルボキシル基含有ニトリルゴム成分を凝固させることによりカルボキシル基含有ニトリルゴムを製造する方法において、カルボキシル基含有ニトリルゴム成分の凝固を破砕機能付きのポンプを使用して行い、しかも、カルボキシル基含有ニトリルゴム成分を凝固させる際における凝固温度を制御することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと、凝固剤を含有する凝固液と、を破砕機能付きのポンプに供給し、前記ラテックスと前記凝固剤とを接触させることにより、カルボキシル基含有ニトリルゴム成分を凝固させ、クラム状のカルボキシル基含有ニトリルゴムを含むクラムスラリーを得る工程を有するカルボキシル基含有ニトリルゴムの製造方法であって、
前記カルボキシル基含有ニトリルゴム成分の凝固を40℃以上の温度で行うことを特徴とするカルボキシル基含有ニトリルゴムの製造方法が提供される。
【0009】
好ましくは、前記カルボキシル基含有ニトリルゴム成分を凝固させる際における凝固剤の濃度が、前記カルボキシル基含有ニトリルゴム以外の全成分の合計に対して、0.1〜20重量%となるように、前記カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスおよび前記凝固液を前記ポンプに供給する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カルボキシル基含有ニトリルゴム成分の凝固を破砕機能付きのポンプを使用して行うため、従来用いていた大型のタンクからなる凝固装置が不要となり、これにより、製造プロセスおよび製造機器の削減が可能となり、設備費の低減および製造コストの低減を図ることができる。しかも、本発明によれば、破砕機能付きのポンプによる凝固を40℃以上の温度で行うため、カルボキシル基含有ニトリルゴム成分を良好かつ十分に凝固させることができ、良好なクラム(クラム内に水分がほとんど取り込まれておらず、粘着性も低く、クラムが互着していない)を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス
まず、本発明に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスについて説明する。
本発明に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスを構成するカルボキシル基含有ニトリルゴムとしては、特に限定されず、乳化重合で製造され、フリーのカルボキシル基(金属塩などで置換されていないカルボキシル基)を含有するニトリルゴム(不飽和ニトリル−共役ジエン共重合体ゴム)でも良いし、あるいは、これを水素化したものであっても良いが、特に、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単位およびα,β−エチレン性不飽和カルボン酸単位を有するカルボキシル基含有ニトリルゴムが好ましい。
【0012】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単位を形成するα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば限定されず、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリル;などが挙げられる。これらのなかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましい。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単位の含有量は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%、さらに好ましくは20〜50重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単位の含有量が少なすぎると、架橋物とした場合に、耐油性が低下する場合があり、多すぎると、耐寒性が低下する場合がある。
【0013】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単位を構成するα,β−エチレン性不飽和カルボン酸としては、炭素数3〜12のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、炭素数4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸、炭素数3〜11のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜8のアルカノールとのモノエステルが挙げられる。
【0014】
炭素数3〜12のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などが挙げられる。
炭素数4〜12のα,β−不飽和ジカルボン酸としては、フマル酸またはマレイン酸などのブテンジオン酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸などが挙げられる。
炭素数3〜11のα,β−不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜8のアルカノールとのモノエステルとしては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn−ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn−ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル;などが挙げられる。これらのなかでも、イタコン酸モノn−ブチル、フマル酸モノn−ブチルおよびマレイン酸モノn−ブチルが特に好ましい。
【0015】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単位の含有量は、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは1.5〜10重量%である。α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単位の含有量が、少なすぎると、架橋物とした場合における架橋が不十分となり、引裂強さおよび引張強さが低下する場合がある。一方、多すぎると疲労性が低下する可能性がある。
【0016】
カルボキシル基含有ニトリルゴムは、上記のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単位およびα,β−エチレン性不飽和カルボン酸単位の他に、架橋物がゴム弾性を保有するために、通常、ジエン単位および/またはα−オレフィン単位をも有する。
【0017】
ジエン単位を構成するジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどの炭素数が4以上の共役ジエン;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどの好ましくは炭素数が5〜12の非共役ジエンが挙げられる。これらの中でも、共役ジエンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。α−オレフィン単位を構成するα−オレフィンとしては、好ましくは炭素数が2〜12のものであり、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。ジエン単位および/またはα−オレフィン単位の含有量は、好ましくは25〜85重量%、より好ましくは35〜80重量%、さらに好ましくは45〜75重量%である。ジエン単位またはα−オレフィン単位の含有量が少なすぎると、架橋物とした場合に、ゴム弾性が低下する場合があり、多すぎると耐熱性や耐化学的安定性が損なわれる場合がある。
【0018】
また、カルボキシル基含有ニトリルゴムは、上記各単量体と共重合可能な他の単量体の単位を有していてもよい。このような他の単量体としては、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル、芳香族ビニル、フッ素含有ビニル、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物、共重合性老化防止剤などが挙げられる。これら他の単量体の単位の含有量は、好ましくは80重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0019】
本発明に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムにおけるカルボキシル基の含有量は、カルボキシル基含有ニトリルゴム100g当たりのカルボキシル基数で、好ましくは5×10−4〜5×10−1ephr、より好ましくは1×10−3〜1×10−1ephr、さらに好ましくは5×10−3〜6×10−2ephrである。カルボキシル基含有量が少なすぎると、架橋物とした場合における架橋が不十分となり、引裂強さおよび引張強さが低下する場合がある。一方、多すぎると疲労性が低下する可能性がある。
【0020】
本発明に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムは、ムーニー粘度〔ML1+4、100℃〕が、好ましくは15〜200、より好ましくは30〜100、さらに好ましくは45〜90である。
【0021】
本発明に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスは、たとえば重合タンク等を用いて、乳化重合法により、上記した単量体を共重合することにより調製することができる。また、必要に応じて、共重合して得られた共重合体のヨウ素価が、好ましくは120以下、より好ましくは80以下、さらに好ましくは50以下、特に好ましくは25以下となるように、共重合体の水素化(水素添加反応)を行っても良い。
【0022】
カルボキシル基含有ニトリルゴムの製造方法
本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴムの製造方法は、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと、凝固剤を含有する凝固液と、を破砕機能付きのポンプに供給し、前記ラテックスと前記凝固剤とを接触させることにより、カルボキシル基含有ニトリルゴム成分を凝固させ、クラム状のカルボキシル基含有ニトリルゴムを含むクラムスラリーを得る工程を有するカルボキシル基含有ニトリルゴムの製造方法であって、
前記カルボキシル基含有ニトリルゴム成分の凝固を40℃以上の温度で行うことを特徴とする。
【0023】
ここで、破砕機能付きポンプとしては、前記カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと凝固液とを接触させてカルボキシル基含有ニトリルゴムを凝固させることができ、それにより得られたクラムスラリーを破砕できる機能を有するポンプであればよい。また、破砕機能付きポンプとしては、得られたクラムスラリーをポンプ外部に吐出させる機能を有する回転翼を備えるものが好ましい。具体的には、さらに回転刃が装着された刃付きポンプ、ホモジナイザーやハイシェアミキサー等の刃無し型ポンプ、等が使用できる。前記回転翼はクラムスラリーの破砕機能を兼ね備えていてもよいが、生産性やクラム分散性等の観点からさらに回転刃を有する刃付きポンプが好ましい。回転刃を有する刃付きポンプとしては、特に限定されないが、いわゆるクラッシングポンプと称されるものが好ましい。
【0024】
次に、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスから、カルボキシル基含有ニトリルゴムを製造する方法について、説明する。図1は本発明の一実施形態に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムの製造方法に用いる製造装置の概略図、図2は本発明の一実施形態に係る破砕機能付きポンプの要部断面図、図3は本発明の一実施形態に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムの製造方法に用いる製造装置の一部を示す概略図である。
【0025】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムの製造装置は、破砕機能付きポンプ10と、撹拌装置12と、ロータリースクリーン14と、スクイザー16と、を有する。
【0026】
破砕機能付きポンプ10は、図2に示すように、吸込み口26と吐出口28とを有するポンプケーシング24内に、第1翼32および第2翼34を有する円形の回転体30が、回転自在に装着された構成となっている。回転体30は、回転軸36に接続されたモーター(図示省略)により、第1翼32および第2翼34と共に、回転駆動される。また、第1翼32と第2翼34との間には、第1翼32を覆うように、ステーター(固定枠)38が、配置されている。
【0027】
第1翼32および第2翼34は、回転体30上に複数設けられており、回転体30と共に回転することにより、吸込み口26から流体を吸込み、流体中に含まれるクラムを破砕・分散し、破砕されたクラムを流体と共に、吐出口28より排出させることができる。
【0028】
第1翼32は、吸込み口26から吸込まれる流体に含まれるクラムを破砕するための回転翼である。第1翼32は、クラムを粉砕できるような構造を有していればよいが、好ましくは、粉砕されるクラムに与える剪断速度(シェアレート)が、200[1/s]以上となるようにする。なお、剪断速度の上限は、2000[1/s]以下が好ましい。
【0029】
第2翼34は、第1翼32により破砕されたクラムの分散および排出を行うための回転翼である。第2翼34は、破砕されたクラムを分散、および排出することができるような構造を有していればよく、特に限定されないが、ステーター38とポンプケーシング24との隙間に、クラムの詰まりが発生しないような構造とすることが好ましい。すなわち、第2翼34は、ステーター38の外周を回転することにより、ステーター38とポンプケーシング24との間に排出されるクラムをほぼ完全に分散させることができるような構造とすることが好ましい。
【0030】
本実施形態においては、第1翼32と共に、第1翼の外周側に第2翼を形成しているため、ポンプの吐出揚程を、好ましくは10m以上、より好ましくは12m以上と高くすることができる。なお、ポンプの吐出揚程の上限は、100m以下が好ましい。そのため、ポンプ内部におけるクラムの詰まりを有効に防止することが可能となる。特に、本実施形態においては、ステーター38の外周に、第2翼34を設けているため、ステーター38とポンプケーシング24との隙間へのクラムの詰まりの発生を有効に防止することができる。
【0031】
ステーター38は、第1翼32と第2翼34との間に、第1翼32を覆うように配置されており、ステーター38は、吸込み口26側には吸込み孔38aを、側面部には通孔38bを有している。吸込み孔38aは、吸込み口26から吸込まれる流体を第1翼32方向へと送るための通り孔である。一方、通孔38bは、第1翼32により粉砕され、一定以下の大きさとなったクラムを第1翼32から第2翼34方向へと排出するための通り孔であり、この通孔38bの大きさを調整することにより、排出されるクラムの大きさを制御することができる。通孔38bの形状や、大きさは特に限定されないが、第1翼32により粉砕され、第2翼34方向へ排出されるクラムの最大幅が、3〜20mmとなるように調整することが好ましい。通孔38bが、小さ過ぎるとクラムの粉砕に要する時間が長くなり、生産性が低下する傾向にある。一方、大き過ぎるとポンプ10内でクラムが詰まってしまうおそれがある。
なお、本発明の効果がより一層顕著になることから、破砕機能付きポンプを用いて凝固を行う際の比動力(破砕機能付きポンプで消費した動力/凝固時にポンプ内に存在するカルボキシル基含有ニトリルゴムの重量)は、好ましくは0.01〜1kwh/kg、特に好ましくは0.03〜0.1kwh/kgである。
【0032】
吸込み口26には、アダプタ40が装着されている。アダプタ40には、溶液状態のカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスが送り込まれるラテックス送り手段としてのラテックス輸送配管42と、凝固剤を含有する凝固液が送り込まれる凝固液送り手段としての凝固液輸送配管44とが形成してある。
【0033】
凝固液輸送配管44により輸送される凝固液は、凝固剤と水との混合液である。凝固剤としては、特に限定されず、たとえば硫酸、塩酸などの無機酸類;酢酸などの有機酸類;塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化バリウムなどの無機塩類;およびこれらの混合物などが挙げられるが、重合体ラテックスに使用されている乳化剤の種類などにより適宜決定すればよい。これらのなかでも、無機塩類が好ましい。なお、凝固液中の凝固剤濃度は、1〜30重量%が好ましい。
【0034】
アダプタ40は、ラテックス輸送配管42および凝固液輸送配管44によりそれぞれ送られたカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと凝固液とが、第1翼32および第2翼34にて混合等される前に接触するように、吸込み口26内に挿入されている。なお、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスの固形分濃度は、2〜50重量%が好ましく、3〜30重量%が特に好ましい。
【0035】
本実施形態においては、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと凝固液とを、吸込み口26により、ラテックス輸送配管42および凝固液輸送配管44を介して、それぞれ別々に、第1翼32の流れ方向手前に供給し、このカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと凝固液とを第1翼32の流れ方向手前で接触させて、第1翼32の近傍付近で、カルボキシル基含有ニトリルゴムを凝固させる。そして、凝固したカルボキシル基含有ニトリルゴムは、第1翼32および第2翼34により破砕・分散され、輸送されるのに適当な大きさのカルボキシル基含有ニトリルゴムのクラムを含むスラリー(クラムスラリー)となり、吐出口28から排出される。
なお、クラムスラリー中のクラム濃度(固形分濃度)は、1〜40重量%が好ましく、2〜20重量%が特に好ましい。
【0036】
ここで、本実施形態では、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと凝固液とを接触させ、カルボキシル基含有ニトリルゴムを凝固させる際における温度を、40℃以上、好ましくは50〜70℃、より好ましくは54〜65℃とする。カルボキシル基含有ニトリルゴムを凝固させる際における温度を、上記範囲に制御することにより、ゴム状重合体としてのカルボキシル基含有ニトリルゴムの、破砕機能付きポンプ10による凝固を良好に行うことができ、良好なクラムを得ることができる。一方で、カルボキシル基含有ニトリルゴムを凝固させる際における温度が上記範囲未満であると、凝固不良が発生してしまい、得られるクラムが、粘着性が高く、クラム内に水分が取り込まれており、クラムが互着しているものとなってしまう。そして、結果として、後述するハイシェアミキサー12でクラムスラリーを撹拌・滞留させる際に、タンク18内でクラムの互着が発生したり、ロータリースクリーン14で洗浄を行う際に、スクリーンに目詰まりが発生したりする。また、温度が高すぎると、クラムが小さくなり、後述するスクイザー16からクラムが抜けてしまうおそれがある。
【0037】
なお、カルボキシル基含有ニトリルゴムを凝固させる際の温度を制御する方法としては、特に限定されないが、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと凝固液とを接触させる際における、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスおよび凝固液の温度が上記範囲となるように調整すれば良い。凝固させる際の温度を制御する具体的な方法としては、たとえば、実際に凝固が行われる破砕機能付きポンプ10内部の温度を加温手段を用いて調整する方法の他、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスおよび凝固液の温度を、予め上記範囲に調整した状態で、破砕機能付きポンプ10に供給する方法などが挙げられる。カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスおよび凝固液の温度を、予め上記範囲に調整する方法としては、ラテックス輸送配管42および凝固液輸送配管44に供給する前の原料タンクに入れた状態において、これらを加温しておく方法や、ラテックス輸送配管42および凝固液輸送配管44を加温しておき、これらを通過する間に、温度が上記範囲となるように調整する方法などが挙げられる。また、これらの方法は適宜組み合わせても良い。
【0038】
また、本実施形態においては、カルボキシル基含有ニトリルゴムを凝固させる際における凝固剤の濃度が、カルボキシル基含有ニトリルゴム以外の全成分の合計に対して、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.2〜10重量%、特に好ましくは0.3〜5重量%となるように、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスおよび凝固液を供給する。凝固剤の濃度を、上記範囲とすることにより、本発明の効果がより一層顕著なものとなる。また、カルボキシル基含有ニトリルゴムの凝固を十分に進行させることができ、未凝固分を低減することができ、収率の向上が可能となる。なお、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスは、カルボキシル基含有ニトリルゴムと水とを含有してなるものであり、また、凝固液は、凝固剤と水とを含有してなるものであるため、通常は、ラテックス中の水と、凝固液中の凝固剤および水と、の合計に対する凝固剤の濃度を上記範囲とすれば良い。また、ラテックスおよび凝固液以外の成分、たとえば、後述の希釈水を用いる場合には、これらに希釈水を加えたものに対する凝固剤の濃度を上記範囲とすれば良い。
【0039】
さらに、本実施形態においては、重合体ラテックスおよび凝固液の他に、必要に応じての希釈水を使用することができ、希釈水としては、後に説明するタンク18からのオーバーフロー水、洗浄工程において回収される洗浄排水を使用することが好ましい。なお、希釈水は、予めカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス、あるいは凝固液と混合された状態で破砕機能付きポンプ10に投入される。また、希釈水を使用する場合においても、カルボキシル基含有ニトリルゴムを凝固させる際の温度が、上記範囲となるように調整すれば良い。
【0040】
図2、図3に示すように、ポンプ10は、クラムスラリーを上方に排出するための吐出口28を有している。この吐出口28の内径(直径)Dは、50〜200mmであることが好ましい。また、図3に示すように、吐出口28には、スラリー供給配管46が接続されており、吐出口28から排出されるクラムスラリーは、スラリー供給配管46を通って、一度大気中に開放され、スラリー供給配管46と撹拌装置12との接続部に形成された側壁48に衝突させられ、落下し、タンク18内へと供給される。このスラリー供給配管46は、ポンプ10の吐出口28から開放部までの長さである配管長さLを有しており、この配管長さLは、図3に示すL1とL2との和(L=L1+L2)であり、L=200〜2000mm程度である。ただし、ポンプを横向きに設置できる場合や、ポンプの吐出口が、予めポンプケーシング横方向・横接線方向に取り付けられている場合等、その配置如何によっては、配管長さLが0、すなわち配管を介さずにポンプ吐出口がそのまま撹拌装置12に接続されていても良い。また、図3中のL1とL2との長さの比については、特に限定されず、設備の設置スペース等に応じて、適宜調整可能である。
【0041】
本実施形態においては、吐出口28の内径Dと、スラリー供給配管46の長さLとの比(L/D)を20以下とすることが好ましく、より好ましくは18以下とする。吐出口28の内径Dと、スラリー供給配管46の長さLとの比(L/D)を上記範囲とすることにより、配管46内でのクラムの詰まりを有効に防止することができ、その結果、開放時におけるスラリー中のクラムの分散性を良好とすることができる。
【0042】
次いで、スラリー供給配管46から大気中に開放されたクラムスラリーを、ハイシェアミキサー12で撹拌・滞留させる。ハイシェアミキサー12は、図3に示すように、タンク18と、タンク18の底部に回転刃および固定刃を備えた撹拌機20とを有しており、撹拌機20に形成された回転刃(図示省略)の攪拌効果により、スラリーに循環流を発生させることにより、スラリーを撹拌・滞留させる構造となっている。クラムスラリーを、ハイシェアミキサー12を使用し、撹拌・滞留させることにより、カルボキシル基含有ニトリルゴム成分への凝固剤の付着を促進させ、カルボキシル基含有ニトリルゴム成分の凝固を、ほぼ完全に進行させることができる。なお、クラムスラリーの撹拌・滞留は、1〜20分程度とすることが好ましい。また、撹拌機20としては、カルボキシル基含有ニトリルゴム成分への凝固剤の接触を促進させるという観点より、撹拌動力(攪拌に消費した動力をクラムスラリーの体積で割り算して求めた値)は、好ましくは1kW/m以上、より好ましくは2kW/m以上、さらに好ましくは5kW/m以上、特に15kW/m以上であるものを使用することが好ましい。クラムスラリーの撹拌・滞留を、ハイシェアミキサーを使用して行うことにより、クラムスラリー中のカルボキシル基含有ニトリルゴム成分への凝固剤の付着を効率的に行うことができ、短時間の撹拌・滞留で、クラムスラリー中のカルボキシル基含有ニトリルゴム成分の凝固を、ほぼ完全に進行させることができる。
なお、クラムスラリー中のクラム濃度(固形分濃度)は、1〜40重量%が好ましく、2〜20重量%が特に好ましい。
また、上記撹拌・滞留時の温度は、10〜50℃が好ましい。
【0043】
次いで、ロータリースクリーン14を使用して、クラムスラリーの洗浄を行い、クラム状のカルボキシル基含有ニトリルゴム表面に付着した凝固剤を除去し、水分とクラム状のカルボキシル基含有ニトリルゴムとを分離し、含水状態のクラムを得る。
【0044】
クラムスラリーの洗浄は、ロータリースクリーン14内に洗浄水を送り込み、スクリーンを回転させることにより行われ、洗浄により、凝固剤濃度が1000ppm程度以下に低減される。洗浄に供する水の量は、カルボキシル基含有ニトリルゴム成分に対して、重量比で1〜10倍程度であることが好ましい。
【0045】
なお、洗浄工程により発生する洗浄排水のうち、比較的凝固剤濃度の低い洗浄排水については回収を行い、希釈水として、再び破砕機能付きポンプ10に投入することが好ましい。
【0046】
次いで、スクイザー16を使用して、洗浄された含水状態のクラムの脱水を行う。スクイザー16は、内部に回転自在なスクリュー22を有しており、このスクリュー22により、クラムから水分を絞り出すことにより脱水を行い、水分含有量が10重量%程度に調整されたクラムが得られる。
【0047】
次いで、脱水されたクラムについて、バンドドライヤーにより、加熱乾燥を行い、実質的に水分をほとんど含まない状態(水分含有量は0.5重量%以下)のクラムを得る。クラムを乾燥する際の温度は、40〜100℃程度とする。
【0048】
次いで、乾燥されたクラムは、たとえば、フレーク状で排出された後、ベーラー(図示省略)に導入されて圧縮され、適当な大きさとされて製品(ベール)化される。
【0049】
本実施形態に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムの製造方法においては、ゴム状重合体成分の凝固を、破砕機能付きポンプ10を使用して行うことにより、従来用いていた大型のタンクからなる凝固装置が不要となるため、製造プロセスおよび機器の削減を可能とし、設備費の低減および製造コストの低減を図ることができる。また、本実施形態においては、ゴム状重合体成分の凝固を、高クラム濃度で行うことができるため、洗浄水や凝固剤の使用量を削減することができる。また、操作が単純になり、生産すべきゴム状重合体の種類の切り替え時などでも製品のロスが低減され、かつ切り替え時間の短縮を図ることができ、操業性が向上する。
【0050】
しかも、本実施形態においては、破砕機能付きポンプ10によるカルボキシル基含有ニトリルゴムの凝固を、40℃以上の温度で行うことにより、カルボキシル基含有ニトリルゴムの凝固を良好、かつ十分に行うことができる。そして、その結果として、クラム内に水分がほとんど取り込まれておらず、粘着性も低く、クラムが互着していないカルボキシル基含有ニトリルゴムのクラムを得ることができる。
【0051】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0052】
たとえば、上述した実施形態では、破砕機能付きポンプ10により、ゴム状重合体成分を凝固させて得られたクラムスラリーを、ハイシェアミキサー12で撹拌・滞留させる工程を有するゴム状重合体の製造方法を例示したが、クラムスラリーを、撹拌・滞留させる工程を経ずに、ロータリースクリーンに投入するような工程を採用することも可能である。
【0053】
また、上述した実施形態では、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと凝固液とを、それぞれ別々に破砕機能付きポンプ10に投入するような方法を例示したが、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと凝固液とを、あらかじめ混合した状態で破砕機能付きポンプ10に投入する方法や、破砕機能付きポンプ10に投入する直前に混合させて、破砕機能付きポンプ10に投入する方法とすることも可能である。
【0054】
さらに、上述した実施形態では、ロータリースクリーン14を使用して、クラムスラリーの洗浄を行ったが、クラムスラリーの洗浄は、ウエッジ型のスクリーンを使用して行うことも可能である。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を、さらに具体的な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0056】
実施例1
まず、イオン交換水にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アクリロニトリル、マレイン酸モノn−ブチル、t−ドデシルメルカプタンの順に仕込み、内部の気体を窒素置換した後、1,3−ブタジエン、クメンハイドロパーオキサイドを加え、5℃で乳化重合反応した後、パラジウム触媒を用いて重合体の二重結合を水素添加して得られたカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(アクリロニトリル単位:34重量%、ブタジエン単位:59重量%、マレイン酸n−モノブチル単位:7重量%、ヨウ素価:10、固形分濃度:10.8重量%)、および凝固液としての硫酸マグネシウム水溶液(凝固剤濃度:7.5重量%)を準備した。尚、凝固・乾燥後得られたカルボキシル基含有ニトリルゴムのML1+4(100℃)は、40であった。
【0057】
そして、準備したカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスおよび硫酸マグネシウム水溶液を使用して、図1〜図3に示す破砕機能付きポンプ10を有する製造装置を用いて、カルボキシル基含有ニトリルゴムの製造を行った。
【0058】
本実施例においては、破砕機能付きポンプ10としては、Inline Mixer(Silverson社製 型式450LS)に、図2に示すように、第1翼32の外周に第2翼34を形成したポンプを使用した。ポンプ回転数を3000rpm、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスの流量を1861kg/h(カルボキシル基含有ニトリルゴムの流量201kg/h)、硫酸マグネシウム水溶液の流量を1138kg/h(硫酸マグネシウムの流量20kg/h、なお上記で準備した凝固剤濃度7.5重量%の硫酸マグネシウム溶液267kg/hに希釈水871kg/hを混合している)とし、破砕機能付きポンプ10から吐出させるクラムスラリー中のクラム濃度を6.7重量%、破砕機能付きポンプ10内の硫酸マグネシウム濃度〔硫酸マグネシウムの重量/(ラテックス中の水の重量+希釈水と混合した後の硫酸マグネシウム水溶液の重量)〕を0.71重量%とした。また、破砕機能付きポンプ10の吐出揚程は20mであり、凝固させる際における破砕機能付きポンプ10の比動力は、カルボキシル基含有ニトリルゴムの重量当たりで、0.038kwh/kgであった。
【0059】
さらに、本実施例では、カルボキシル基含有ニトリルゴムの凝固温度が55℃となるように、供給するカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスおよび硫酸マグネシウム水溶液の温度、および破砕機能付きポンプ10内の温度を調整した。
【0060】
本実施例においては、上記条件で、カルボキシル基含有ニトリルゴムの製造を行った際における、破砕機能付きポンプ10から吐出した後のクラムの状態、破砕機能付きポンプ10から吐出した後のセラム水中の未凝固成分量の測定を、下記方法にしたがって行った。
【0061】
クラムの状態
破砕機能付きポンプ10から吐出した後のクラムスラリーから、スクリーンを用いて、カルボキシル基含有ニトリルゴムのクラムを取り出し、取り出したクラムを目視観察することにより、凝固後のクラムの状態を評価した。なお、評価基準は下記によった。結果を表1に示す。
◎ … クラム内に水分がほとんど取り込まれておらず、粘着性も低い状態。
○ … クラム内に若干水分が取り込まれており、やや粘着性のある状態。
× … クラム内に水分が取り込まれており、粘着性の高い状態で、クラムが互着している。
【0062】
未凝固成分量
破砕機能付きポンプ10から吐出した後のクラムスラリー中から、セラム水を採取し、採取したセラム水中の未凝固成分をろ紙により濾過して抽出乾燥し、重量を測定することにより、セラム水に対するセラム水中の未凝固成分の含有割合(重量%)を測定した。結果を表1に示す。なお表1中の「>1」は、1重量%より多いことを示す。
【0063】
実施例2、3、比較例1、2
用いるカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスの固形分濃度、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスの流量、硫酸マグネシウム水溶液の流量、および、凝固温度を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、カルボキシル基含有ニトリルゴムの製造を行い、実施例1と同様にして評価を行った。なお、カルボキシル基含有ニトリルゴムの重量当たりの破砕機能付きポンプ10の比動力は、実施例2および3で0.038kwh/kg、比較例1で0.023kwh/kgであった。
【0064】
【表1】

【0065】
表1に示すように、カルボキシル基含有ニトリルゴムの凝固を、破砕機能付きポンプ10を用いて行い、しかも凝固温度を40℃以上とすることにより、得られるカルボキシル基含有ニトリルゴムのクラムを、良好なものとすることができた(実施例1〜3)。また、これら実施例1〜3においては、図1に示すハイシェアミキサー12のタンク18内でクラムの互着や、スクリーン14の詰まり等が発生せず、カルボキシル基含有ニトリルゴムの製造を良好に行うことができた。
特に、凝固温度を40℃以上、好ましくは50〜70℃とすることに加え、凝固時における硫酸マグネシウム濃度を特定範囲に制御することにより、より粘着性が低く、より良好なクラムとすることができ、しかもセラム水中に残存する未凝固成分の量をより低減できる結果となった(実施例1〜3)。
【0066】
これに対して、カルボキシル基含有ニトリルゴムの凝固を40℃未満の温度で行った場合には、カルボキシル基含有ニトリルゴムの凝固が不十分となってしまい、得られるクラムは、クラム内に水分が取り込まれており、粘着性の高い状態で、クラムが互着している結果となった(比較例1,2)。なお、比較例1においては、得られるクラムが、その内部に水分を多く含んでおり粘着性が高いものであるため、ポンプ10による凝固時におけるモーターの負荷が低くなり、結果として、ポンプ10の比動力が、実施例1〜3のポンプ10の比動力よりも低くなる結果となった。また、比較例1,2においては、図1に示すハイシェアミキサー12のタンク18内でクラムの互着や、スクリーン14の詰まりが発生する結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムの製造方法に用いる製造装置の概略図である。
【図2】図2は本発明の一実施形態に係る破砕機能付きポンプの要部断面図である。
【図3】図3は本発明の一実施形態に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムの製造方法に用いる製造装置の一部を示す概略図である。
【符号の説明】
【0068】
10… 破砕機能付きポンプ
12… ハイシェアミキサー
14… ロータリースクリーン
16… スクイザー
18… タンク
20… 撹拌機
22… スクリュー
24… ポンプケーシング
26… 吸込み口
28… 吐出口
30… 回転体
32… 第1翼
34… 第2翼
36… 回転軸
38… ステーター
40… アダプタ
42… ラテックス輸送配管
44… 凝固液輸送配管
46… スラリー供給配管
48… 側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと、凝固剤を含有する凝固液と、を破砕機能付きのポンプに供給し、前記ラテックスと前記凝固剤とを接触させることにより、カルボキシル基含有ニトリルゴム成分を凝固させ、クラム状のカルボキシル基含有ニトリルゴムを含むクラムスラリーを得る工程を有するカルボキシル基含有ニトリルゴムの製造方法であって、
前記カルボキシル基含有ニトリルゴム成分の凝固を40℃以上の温度で行うことを特徴とするカルボキシル基含有ニトリルゴムの製造方法。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有ニトリルゴム成分を凝固させる際における凝固剤の濃度が、前記カルボキシル基含有ニトリルゴム以外の全成分の合計に対して、0.1〜20重量%となるように、前記カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスおよび前記凝固液を前記ポンプに供給する請求項1に記載のカルボキシル基含有ニトリルゴムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−203272(P2009−203272A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44322(P2008−44322)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】