説明

カルボニル−エン官能基化ポリオレフィン

【課題】ルイス酸促進カルボニル−エン反応によりヒドロキシル官能基化ポリマーを製造する方法を提供する。
【解決手段】a)約950乃至約5000の数平均分子量と50モル%を超える末端ビニリデン量とを有するビニリデン末端ポリオレフィンを選択する工程;b)カルボニルエノフィルを選択する工程;c)ルイス酸を選択する工程;そして、d)反応条件下で工程a)、b)、およびc)における成分を接触させて、ヒドロキシル官能基化ポリマーを生成させる工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィンをヒドロキシル基で官能基化するための方法に関する。より具体的には、この方法は、ルイス酸の存在下での反応性アルデヒドとのカルボニル−エン反応によりビニリデン末端ポリオレフィンを官能基化することに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルカンから誘導されるアルコール、より具体的にはポリイソブチルアルコールは、燃料添加剤のためのキャリヤー液として用いられ、燃料組成物において採用されている。その主な理由は、それらの製造が比較的安価にでき、ハロゲンを含まないように製造することができ、一般に採用される他の添加剤と相溶性があり、そしてそれ自身がある種の清浄作用に寄与することである。キャリヤー液は燃料添加剤と共に普通に採用されており、それらはいくつかの機能を提供することがあり、例えば燃料添加剤もしくは活性成分の粘性/相溶性/流動性を改良する。また、キャリヤー液は、添加剤の望ましい性能を補助する場合もある。さらに特許文献1〜6に記載されているように、ポリイソブチルアルコールは、エンジン堆積物を制御する燃料添加剤を製造するための前駆体としても適していた。
【0003】
一般にポリイソブチルアルコールは、ポリイソブチレンから、高温かつ高圧でのヒドロホルミル化(特許文献6および7)もしくはポリイソブテンのヒドロホウ素化と引き続いて行う酸化(特許文献1)により製造される。このヒドロホルミル化反応をポリイソブチレンに応用する場合の有効性はポリマーの種類によって異なり、変換効率は最も反応性が高いポリイソブテンを採用する場合で59〜81%である(特許文献8参照)。先行技術に記載されているポリイソブチルアルコールは、高温と高圧が必要であるため高価な処理装置が必要となる飽和化合物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5055607号明細書
【特許文献2】米国特許第5399178号明細書
【特許文献3】米国特許第5413615号明細書
【特許文献4】米国特許第5827344号明細書
【特許文献5】米国特許第6039733号明細書
【特許文献6】米国特許第4859210号明細書
【特許文献7】米国特許第3429936号明細書
【特許文献8】米国特許第4832702号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、ポリオレフィンをヒドロキシル基で官能基化する方法に関する。より具体的には、この方法は、ルイス酸の存在下、反応性のアルデヒドとのカルボニル−エン反応によってビニリデン末端ポリオレフィンを官能基化することに関する。このように、ある態様は、下記の工程を含むルイス酸促進カルボニル−エン反応によってヒドロキシル官能基化ポリマーを製造する方法に関する:
a)約950乃至約5000の数平均分子量と50モル%を超える末端ビニリデン量とを有するビニリデン末端ポリオレフィンを選択する工程;
b)カルボニルエノフィルを選択する工程;
c)ルイス酸を選択する工程;そして
d)反応条件下で工程a)、b)、およびc)における成分を接触させて、ヒドロキシル官能基化ポリマーを生成させる工程。
【0006】
適切なビニリデン末端ポリオレフィンは、モノオレフィンのポリマーもしくはコポリマーであって、モノオレフィンは特に1−モノオレフィンであり、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、その他である。好ましく使用するモノオレフィンは約2乃至約24の炭素原子を有し、さらに好ましくは約3乃至約12の炭素原子を有する。さらに好ましいモノオレフィンは、プロピレン、ブチレンを含み、特にイソブチレンである。ある態様において、上記ビニリデン末端ポリオレフィンは、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ−1−ブテン、エチレンとイソブチレンとのコポリマー、プロピレンとイソブチレンとのコポリマー、ポリ−1−ペンテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリ−3−メチルブテン−1、およびポリイソプレンからなる群より選ばれる。好ましい態様において、上記ビニリデン末端ポリオレフィンは、約700乃至約3000の数平均分子量を有する。特に好ましいビニリデン末端ポリオレフィンは、イソブチレンから誘導される。
【0007】
好ましいカルボニルエノフィルは、カルボニル基からの誘導もしくは共鳴効果のいずれかによって電子密度を求引するのに適した電子求引置換基を含む電子欠損を持つ。この点に関して、さらに好ましいカルボニルエノフィルは、次の構造を有するアルデヒド類の反応性アルデヒドである:
【0008】
【化1】

【0009】
式中、Rとしては、水素原子、ハロアルキル、アルコキシカルボニル、および少なくとも一つの電子求引基で置換されたアリールがあり、上記電子求引基はニトロ、シアノ、およびアルコキシカルボニルから選ばれる。
【0010】
ある態様において、反応性のアルデヒドはホルムアルデヒドもしくはパラホルムアルデヒドである。別の態様において、上記反応性アルデヒドはグリオキシル酸メチル、グリオキシル酸エチル、グリオキシル酸イソプロピル、グリオキシル酸n−ブチル、およびグリオキシル酸t−ブチルからなる群より選ばれる。さらに別の態様において、上記反応性アルデヒドは、ベンズアルデヒドもしくは少なくとも一つの電子求引基で置換された置換ベンズアルデヒドであって、上記電子求引基はニトロ、シアノ、およびアルキル基が1乃至6の炭素原子を有するアルコキシカルボニルから選ばれる。
【0011】
カルボニル−エン反応はルイス酸により促進され、ルイス酸はカルボニル−エン反応で消費されない触媒としてのルイス酸であってよく、あるいはカルボニル−エン反応の間に消費される(本明細書においてスキーム4として示す)化学量論的なルイス酸であってもよい。触媒としてのルイス酸は、ビス付加生成物およびその混合物を導くことができる。一方、化学量論的なルイス酸は、主にモノ付加生成物を与える。従って、ある態様において、上記ルイス酸は、式R’AlX(3−y)を持ち、R’はC1−6のアルキルであり;Xはハロゲンであり;そして、yは1乃至2の整数である。特に好ましいアルキル基は、メチルおよびエチル基である。特に好ましいハロゲンは塩素である。適切なルイス酸は、MeAlClおよびEtAlClの少なくとも一つから選ばれる。別の態様において、上記ルイス酸はハロゲン化炭化水素シリルである。さらに具体的に、ハロゲン化炭化水素シリルは式:R”SiX4−zを持つ、但し、式中、R”はC1−6のアルキルまたはアリールであり、Xはハロゲンであり、zは1乃至2の整数である。ある態様では、R”はC1−6のアルキルであり、さらに好ましくはメチルもしくはエチルである。別の態様において、R”はアリールである。特に好ましい化合物は、MeSiCl、MeSiCl、EtSiCl、EtSiCl、Ph−SiCl、およびこれらの化合物を一種以上含む混合物である(ここで、Meはメチル、Etはエチル、Phはフェニルの各基である)。
【0012】
さらに別の態様は、上記方法によって生成される生成物に関する。
【0013】
ハロゲン化炭化水素シリル化合物は非自然発火性であることが有利であり、これによりカルボニル−エン反応を促進する際の取り扱いがさらに容易になる。ハロゲン化炭化水素シリルは水蒸気に対して不安定ではなく、水が不純物として存在するか、あるいは反応において水が生じても使用できる。従って、ある態様では、化学量論的な量の式:R”SiX4−zのハロゲン化炭化水素シリルでカルボニル−エン反応を実施することを含むカルボニル−エン反応においてモノ付加生成物を製造する方法であって、R”はC1−6のアルキルもしくはアリールであり、Xはハロゲンであり、zは1乃至2の整数である。この点に関して、適切なエンは、アリル性水素原子を有するアルケンから選ばれ、適切なカルボニルエノフィルは上記の通りである。よって、さらに別の態様は、ルイス酸としてのハロゲン化炭化水素シリルの使用に関する。さらに具体的な態様は、カルボニル−エン反応を促進するため、上記式のハロゲン化炭化水素シリルの使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で使用する場合、使用する用語は以下の意味を有する。
【0015】
本明細書で使用する場合、別に明記しない限り、用語「アルキル」は直鎖もしくは分岐鎖の飽和炭化水素部分を意味する。「低級アルキル」は、1乃至6の炭素原子を有するアルキル基を意味する。
【0016】
本明細書で使用する場合、別に明記しない限り、用語「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素、もしくはヨウ素を意味する。
【0017】
本明細書で使用する場合、別に明記しない限り、用語「ハロアルキル」は以上で定義したアルキル基が一つ以上の以上で定義したハロゲン基で置換されているものを意味し、例としては、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、1−フルオロメチル−2−フルオロエチル、3−ブロモ−2−フルオロプロピル、1−ブロモメチル−2−ブロモエチル、その他である。
【0018】
本明細書で使用する場合、別に明記しない限り、用語「アシル」は−C(O)Rを意味し、Rは水素原子、アルキル、もしくはアリールであって、これらは本明細書で定義した通りである。用語「低級アシル」は、Rが以上で定義した低級アルキルである場合を意味する。
【0019】
本明細書で使用する場合、別に明記しない限り、用語「炭化水素基」は炭素原子と水素原子のみを含む一価の直鎖、分岐鎖、もしくは環状の基を意味する。
【0020】
本明細書で使用する場合、別に明記しない限り、用語「カルボキシル」は−COOHを意味する。
【0021】
本明細書で使用する場合、別に明記しない限り、用語「アルコキシ」は−O−(アルキル)を意味し、アルキルは以上で定義した通りである。
【0022】
本明細書で使用する場合、別に明記しない限り、用語「アルコキシカルボニル」は−C(=O)O−(アルキル)を意味し、アルキルは以上で定義した通りである。
【0023】
本明細書で使用する場合、別に明記しない限り、用語「アルコキシアルキル」は−(アルキル)−O−(アルキル)を意味し、「アルキル」は、それぞれ独立に、以上で定義したアルキル基である。
【0024】
本明細書で使用する場合、別に明記しない限り、用語「アリール」は5乃至14の環構成原子を含む炭素環の芳香族環を意味する。炭素環アリール基の環構成原子は、すべて炭素原子であり、例えばフェニル、トリル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、およびナフチル、並びにベンゾ縮合炭素環部分、例えば5,6,7,8−テトラヒドロナフチルその他を含む。炭素環アリール基は未置換でも1乃至3の置換基により置換されていてもよく、置換基はハロゲン、カルボキシル、アシル、低級アシル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、シアノ、およびニトロから選ばれる。
【0025】
本明細書で使用する場合、別に明記しない限り、用語「アリールオキシ」は−O−アリール基を意味し、アリールは以上で定義した通りである。アリールオキシ基は未置換でも置換されていてもよい。
【0026】
本明細書で使用する場合、別に明記しない限り、用語「アリールアルキル」は−(アルキル)−(アリール)を意味し、アルキルおよびアリールは以上で定義した通りである。
【0027】
本明細書で使用する場合、別に明記しない限り、用語「アリールアルキルオキシ」は−O−(アルキル)−(アリール)を意味し、アルキルおよびアリールは以上で定義した通りである。
【0028】
本明細書で使用する場合、別に明記しない限り、用語「シクロアルキル」は、炭素原子と水素原子とを含み、炭素−炭素間の多重結合を有していない単環式もしくは多環式の飽和環を意味する。シクロアルキル基は、未置換でも置換されていてもよい。シクロアルキル基が単環式の環もしくは二環式の環であることが好ましい。
【0029】
本明細書で使用する場合、別に明記しない限り、用語「ビニリデン末端ポリオレフィン」は、少なくとも一つのビニリデン末端基を含むポリオレフィンを意味し、例としては次の式の化合物を挙げることができる:
【0030】
【化2】

【0031】
式中、Rは水素原子もしくは炭化水素基である。
【0032】
用語「アルキルビニリデン」もしくは「アルキルビニリデン異性体」は、次のビニリデン構造を有するオレフィンを意味する:
【0033】
【化3】

【0034】
式中、Rはアルキルもしくは置換アルキルである。Rは一般には、少なくとも約30の炭素原子を有し、さらに好ましくは少なくとも約50の炭素原子を有する。Rは約1乃至約6の炭素原子を有する低級アルキルである。
【0035】
本明細書で使用する場合、別に明記しない限り、用語「触媒量」は、この技術分野で認識されているものであり、反応体に関する化学量論的な量よりも少ないことを意味する。
【0036】
本明細書で使用する場合、別に明記しない限り、用語「電子求引基」は、電子をそれ自身に、水素原子が同じ位置に求引される場合よりも、求引する機能を意味する。具体的な電子求引基は、カルボニル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、その他を含む。
【0037】
(ポリオレフィン)
適切なビニリデン末端ポリオレフィンは、モノオレフィンのポリマーもしくはコポリマーであって、モノオレフィンは特に1−モノオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、その他である。好ましくは、使用するモノオレフィンは、約2乃至約24の炭素原子、さらに好ましくは約3乃至約12の炭素原子を有する。さらに好ましいモノオレフィンは、プロピレン、ブチレン、特にイソブチレン、1−オクテン、および1−デセンを含む。好ましくは、そのようなモノオレフィンから製造されるポリオレフィンは、ポリプロピレン、ポリブテン、特にポリイソブテンを含む。
【0038】
適切なポリオレフィンは約20乃至約400の炭素原子を含む。さらに好ましいポリオレフィンは30乃至約360の炭素原子を含み、これらのポリマーは約950乃至約5000g/モルの数平均分子量(M)を有する。これらの例は、エチレン、プロピレン、(イソブテンを含む)ブテンのオリゴマー、ペンテン、ヘキセン、オクテンの分岐鎖異性体のオリゴマー、並びにデセンのオリゴマーを含み、オリゴマーの共重合性末端基はビニル、ビニリデン、もしくはアルキルビニリデン基として存在できる。約60乃至約200の炭素原子を有するオリゴプロペンおよびオリゴプロペン混合物、そして特にオリゴイソブテンが好ましく、これらは、例えば独国特許出願公開第2702604号明細書(米国特許第4152499号明細書に対応)に従って製造できる。上記オリゴマーの混合物、例えばエチレンと他のアルファオレフィンとの混合物も適している。他の適切なポリオレフィンは、米国特許第6030930号明細書に記載されており、その記載は参照のため本明細書の記載とする。オリゴマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる従来からの方法で測定できる。ポリオレフィンに関して、実例となるポリマーは、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ−1−ブテン、エチレンとイソブチレンとのコポリマー、プロピレンとイソブチレンとのコポリマー、ポリ−1−ペンテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリイソプレン等を含む。
【0039】
高分子量オレフィンは、一般に異なる分子量を有する分子の混合物であり、鎖に沿って6つの炭素原子当たり少なくとも1つの分岐、好ましくは鎖に沿って4つの炭素原子当たり少なくとも一つの分岐を有することができ、特に好ましくは鎖に沿って2つの炭素原子当たりおよそ一つの分岐が存在する。これらの分岐鎖オレフィンは、約3乃至約6の炭素原子を有するオレフィン、好ましくは約3乃至約4の炭素原子を有するオレフィン、さらに好ましくはプロピレンもしくはイソブチレンの重合により製造されるポリアルケンを都合良く含むことができる。使用される付加重合性オレフィンは、通常は1−オレフィンである。分岐は約1乃至約4の炭素原子であってよく、より一般的には約1乃至約2の炭素原子であり、好ましくはメチルである。
【0040】
好ましいアルキルビニリデン異性体はメチルもしくはエチルビニリデン異性体を含み、さらに好ましくはメチルビニリデン異性体である。
【0041】
特に好ましい高分子量オレフィンは、ポリイソブテンであって、少なくとも約50%、さらに好ましくは少なくとも約70%含まれる。適切なポリイソブテンは、BF触媒を用いて製造されたものを含む。メチルビニリデン異性体が全組成物中に高い割合で含まれているようなポリイソブテンの製造については、米国特許第4152499号および同第4605808号の各明細書に記載がある。
【0042】
本発明に用いるポリイソブテンは、高い割合で末端二重結合を有していることが特徴であり、本発明の目的に関連して、反応性ポリイソブテンもしくは高反応性ポリイソブテンと称する。これは、カルボニル−エン反応スキームにおいて容易に反応を受けることがない−C(CH)=C(CH)−CH(CHのような非反応性鎖末端を有している「従来の」ポリイソブチレンと対照的である。従来のポリイソブテンは一般に、おおよそ90%以上の内部結合を含むため不適切であって、これらの内部オレフィンは本発明のスキームにおいては反応性を示さない。このため、高いモル%でアルキルビニリデンと1,1−ジアルキル異性体、例えばメチルビニリデン異性体とを含む高反応性ポリイソブテンが用いられる。一般にポリイソブテンは、32乃至360の炭素原子を有するポリイソブテンの混合物である。ポリイソブテン混合物は、50モル%を超える反応性メチルビニリデン異性体、好ましくは70モル%を超える反応性メチルビニリデン異性体、さらに好ましくは80モル%を超える反応性メチルビニリデン異性体を含む。
【0043】
ポリイソブテンは、約450乃至約5000の範囲の数平均分子量を有する。約550、1000、1300、もしくは2300の数平均分子量を有するポリイソブテン、およびその混合物が特に有用である。ポリイソブテンは、450乃至5000の数平均分子量を有するように選択され;好ましい態様は450乃至3000の数平均分子量に関し;さらに具体的には700乃至3000の数平均分子量であり、さらにまた好ましくは900乃至2500の数平均分子量を有する。
【0044】
高含有量でオレフィン性不飽和末端基を有する反応性ポリイソブテンは、この技術分野で知られており、一般に三フッ化ホウ素錯体触媒の存在下、イソブテンもしくはイソブテン含有炭化水素蒸気のカチオン重合によって製造される。例えば、適切な方法は、米国特許第4152499号、同第5286823号、同第5408018号、欧州特許出願公開第145235号、欧州特許出願公開第481297号、欧州特許第671419号、欧州特許出願公開第628575号、欧州特許出願公開第807641号の各明細書、および国際公開第99/31151号その他に記載されている。
【0045】
イソブテンを共重合させることは可能であり、イソブテンもしくはイソブテン系炭化水素混合物と、イソブテンとの共重合性があるオレフィン性不飽和モノマーとのモノマー混合物を反応させることができる。イソブテンと適切なコモノマーとのモノマー混合物を共重合させる場合、モノマー混合物は、好ましくは少なくとも5質量%、さらに好ましくは少なくとも10質量%、特に少なくとも20質量%のイソブテンを含み、好ましくは多くとも95質量%、さらに好ましくは多くとも90質量%、特に多くとも80質量%のコモノマーを含む。有用な共重合性モノマーは、ビニル芳香族類、例えばスチレンおよびα−メチルスチレン、C−Cのアルキルスチレン類、例えば2−、3−、および4−メチルスチレン、並びに4−tert−ブチルスチレン、アルカジエン類、例えばブタジエンおよびイソプレン、さらに5乃至10の炭素原子を有するイソオレフィン類、例えば2−メチルブテン、1,2−メチルペンテン、1,2−メチルヘキセン、1,2−エチルペンテン、1,2−エチルヘキセン−1、および2−プロピルヘプテン−1を含む。有用なコモノマーは、シリル基を有するオレフィン類、例えば1−トリメトキシシリル−エテン、1−(トリメトキシシリル)プロペン、1−(トリメトキシシリル)−2−メチルプロペン−2,1−[トリ(メトキシエトキシ)シリル]エテン、1−[トリ(メトキシエトキシ)シリル]プロペン、および1−[トリ(メトキシエトキシ)シリル]−2−メチルプロペン−2、並びにビニルエーテル類、例えばtert−ブチルビニルエーテルでもある。普通に用いられる反応は、金属支持触媒、例えば米国特許出願公開第2008/0293900号明細書に記載されているものを含む。
【0046】
コポリマーを本発明に従う方法で製造する場合、選択的にランダムポリマーもしくは選択的にブロックコポリマーが生成するように方法を設定できる。ブロックコポリマーを製造するため、異なるモノマーを、例えば、連続的に重合反応に供給でき、その場合、第一のコモノマーが既に少なくとも部分的に重合した特定の時に限って、第二のモノマーが加えられる。このようにして、ジブロック、トリブロック、およびさらに高次のブロックコポリマーが得られ、それらはモノマーの添加順序に応じて、末端ブロックとして1つのもしくは別のコモノマーのブロックを有する。ある場合には、全てのコモノマーが重合反応に同時に供給されるが、一種類が顕著に他の種類よりも速く重合する際にも、ブロックコポリマーは生成される。これは、特にイソブテンとビニル芳香族化合物、特にスチレンとを本発明に従う方法において共重合させる場合である。この場合、好ましくはブロックコポリマーを末端ポリイソブテンブロックを伴って生成する。これは、ビニル芳香族化合物、特にスチレンが顕著にイソブテンよりも速く重合するとの事実に帰することができる。
【0047】
他の適切な反応性ビニリデン末端ポリオレフィンは、イソブテンの「リビング」重合もしくは「準リビング」重合と引き続き適切なクエンチングの工程により製造できる。ここで、本明細書が使用する用語「準リビング重合」は、可逆的連鎖終止が実施可能であるが、不可逆的連鎖終止および連鎖転位の速度がゼロに近いリビング重合を意味する。本明細書で使用する用語「クエンチング剤」は、重合反応に加えられ、活性ルイス酸の存在下、ポリマー鎖末端と反応する化学的な化合物を意味する。クエンチング剤は、反応性連鎖末端からプロトンを除くことに寄与する。準リビング重合は、リビング重合と呼ばれ、この技術分野で知られており(真のリビング重合は、測定可能な連鎖転位および連鎖終止なしで進行する重合を意味するのであるが)、様々な系を用いている。それらの系のいくつかは米国特許第5350819号、同第5169914号、および同第4910321号の各明細書に記載されている。準リビング重合は、バッチ処理、連続処理、もしくは準バッチ処理として、あるいは当業者に知られている任意の処理により実施できる。適切なモノマーは、イソブチレン、スチレン、ベータピネン、イソプレン、ブタジエン、もしくは上記種類の置換化合物からなる群より選ばれる。ある態様において、モノマーは、イソブチレン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、もしくはベータピネン、およびそれらの混合物である。ある態様において、モノマーはイソブチレンである。ある態様において、モノマーは4−メチル−1−ペンテンである。
【0048】
カチオン準リビング重合反応は、一般に不活性気体中かつ実質的に無水環境下で行われる。反応容器には、次の反応体を加える:
1.希釈剤、
2.開始剤、
3.電子供与体もしくは共通イオン塩、あるいはその前駆体、
4.1種以上のモノマー、および
5.ルイス酸(一般にチタンもしくはホウ素のハロゲン化物を含む)。
【0049】
反応混合物は、約−130℃乃至約10℃の範囲の望ましい温度にて平衡させる。反応は、任意の望ましい圧力、大気圧、大気圧よりも高い圧力、もしくは大気圧よりも低い圧力で行うことができる。重合反応の進行は、反応混合物中に残存するモノマーの量を測定することにより、その場で観測する。モノマーの高い割合での変換が観察された後、クエンチング剤の添加前、クエンチ前の鎖末端組成物を測定するため、部分標本を取り出す。部分標本における重合反応は、望ましい温度に平衡とさせた適切なアルコールで停止させる。その後、下記を反応混合物に加えて、重合反応をクエンチする:
【0050】
6.1つ以上のクエンチング剤。
【0051】
反応体の濃度は望ましい生成物を得るために変更できるが、反応体のある比率が、高い収率で外部オレフィン鎖末端を得るために好ましいことが認めらる。準リビング重合のための開始剤は、望ましい生成物によって、単官能もしくは多官能のいずれでもよく、そのため、例えば2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタンを用いる場合、ポリイソブテンと区別がつかなくてもよく、他の基、例えばアルキル、芳香族、アルキル芳香族基その他を加えることもできる。これらの開始剤転移剤は、「イニファー」と造語され(米国特許第4276934号および同第4524188号の各明細書参照)、ポリオレフィン中に保たれる。イソブチレンについては、ポリイソブチレンカルベニウムイオンのジェミナル(gem)−ジメチル炭素から、クエンチング剤がプロトンの脱離を選択的に触媒すると信じられている。適切なリビングもしくは準リビングイソブチレン重合および系が知られており、例えば、米国特許出願公開第2007/0155911号、同第2006/0041084号、同第2006/0041083号、同第2006/0041081号、および同第2006/0041072号の各明細書を参照すればよく、これらはさらに様々な適切なクエンチング剤を開示している。
【0052】
典型的な準リビングポリイソブテンの系は、ルイス酸と溶媒の存在下、かつ適切な準リビング重合反応条件下で、イソブテンモノマーを開始剤と接触させることを含み、これにより準リビング炭素カチオン末端ポリマーを得て、その後クエンチする。適切な準リビング炭素カチオン末端ポリマーは、ポリオレフィン鎖末端を、ルイス酸および溶媒の存在下かつ適切な準リビング重合反応条件下で、一般にハロゲン化物でイオン化することにより生成できる。この準リビング炭素カチオン末端ポリマー重合モノマーは、適切な条件下でクエンチング剤と共に実施し、クエンチング剤がポリオレフィンの反応性連鎖末端と反応し、反応性連鎖末端からのプロトンの除去を容易にし、それによりメチル−ビニリデン末端基を生成することを可能にする。よって、適切なクエンチング反応系の条件(温度、ルイス酸、溶媒)を選択することにより、望ましいビニリデン末端ポリマーへの変換を最適化することができる。好ましくは、変換率は90モル%を超え、クエンチング剤が存在しない同じ条件での対照と比較すると100モル%にまで至る。このため、ポリイソブテンポリマー生成物は、高いメチル−ビニリデン量を有することができる。これらの好ましいポリイソブテンは一般に、90モル%を超える、好ましくは95モル%を超える、例えば少なくとも98乃至100モル%のメチル−ビニリデン量を、1.4未満の、好ましくは1.3乃至約1.01、さらに好ましくは約1.1以下の狭い多分散性と共に有する。ポリイソブテンおよびポリイソブテン含有物質は、450乃至5000の数平均分子量を有するものが選択される。別の態様は、450乃至3000の数平均分子量、より具体的には700乃至3000の数平均分子量のものに関する。別の態様は900乃至2500の数平均分子量のものに関する。
【0053】
適切なビニリデン末端ポリオレフィンは、1−オレフィンのホモポリマー、二量体、およびコポリマーであってよく、約2乃至約40の炭素原子、好ましくは約6乃至約30の炭素原子を含み、例えば、デセン、ドデセン、オクタデセン、およびC20−C24の1−オレフィンとC24−C28の1−オレフィンとの混合物であり、さらに好ましくは約10乃至約20の炭素原子である。好ましくは1−オレフィンであって、アルファオレフィンとしても知られ、100乃至4500以上の範囲に数平均分子量を有することが好ましく、200乃至2000の範囲に分子量を有することがさらに好ましい。例えば、アルファオレフィンはパラフィンろうの熱分解から得られる。一般に、これらのオレフィンは、約5乃至約20の炭素原子からなる範囲の長さである。別のアルファオレフィンの供給源は、エチレン成長法であって、偶数炭素のオレフィンを生じる。別のオレフィンの供給源は、適切な触媒、例えばよく知られているチーグラー触媒でアルファオレフィンを二量体化することによる。
【0054】
他の適切なポリオレフィン(高ビニリデンポリオレフィンもしくはアルキルビニリデンポリオレフィンとも呼ばれるもの)は、好ましくはC−C20のオレフィンのポリマーおよびコポリマー、もしくはエチレンとC−C20のオレフィンとのコポリマーである。本発明のコポリマーの製造に使用できる上記高反応性ポリオレフィンは、反応性で、低分子量で、粘性で、実質的に1−オレフィンを含有するポリ(1−オレフィン)およびコポリ(1−オレフィン)も含み、これらは、一種以上のC乃至C20の1−オレフィンを含む原料油から、周期律表のIVb族メタロセンおよびアルミノキサンおよび/またはホウ素含有共触媒を含む触媒を用いて製造できる。そのような反応性で、低分子量で、粘性で、実質的に1−オレフィンを含有するポリ(1−オレフィン)およびコポリ(1−オレフィン)、並びにそれらの製造方法は、米国特許第5688887号明細書および国際公開第93/24539号に記載があり、それらは、その全てについて参照するため本明細書の記載とする。適切な実質的に末端不飽和で、粘性、かつ実質的に1−オレフィンを含有するポリ(1−オレフィン)もしくはコポリ(1−オレフィン)は、流動相条件、好ましくは液相条件下で、1質量%を超える少なくとも一種の揮発性炭化水素液と全原料油に基づき99質量%未満である一種以上のC乃至C20のオレフィンとを含む原料油を、チタン(IV)、ジルコニウム(IV)、もしくはハフニウム(IV)メタロセンおよびアルミノキサン共触媒を含む触媒系を用いて重合することを含む方法により製造できる。上記方法により、約900乃至約5000、最も好ましくは約1300乃至約3000の範囲に数平均分子量を有し、一般に80%を超える末端ビニリデン量を有するポリ(1−オレフィン)もしくはコポリ(1−オレフィン)が生成される。ビス(シクロペンタジエニル)もしくはビス(インデニル)チタン(IV)、ジルコニウム(IV)、もしくはハフニウム(IV)化合物を用いる触媒系、特に二塩化ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム(CPZrCl)もしくは二塩化ビス(インデニル)ジルコニウム(InZrCl)が好ましい。その結果生じるポリマーは、アタクチックである。実質的に末端不飽和であるとは、生成物ポリマーにおいて、好ましくは約90%を超え、さらに好ましくは約95%を超え、最も好ましくは約99%を超えるポリマー鎖が末端不飽和を含むことを意味する。ビニリデン型の末端不飽和が、好ましくは約80%を超え、さらに好ましくは約90%を超え、最も好ましくは約95%を超える。そのようなコポリマーは、1−オレフィンとアルファ−オメガジエンとのコポリマーを含むこともできる。そのようなアルファ−オメガジエンは、限定されるものではないが、7−メチル−1,6−オクタジエンを含むことができる。これらの末端不飽和粘性ポリマーは、実質的にポリ(1−オレフィン)もしくはコポリ(1−オレフィン)である。実質的にポリ(1−オレフィン)もしくはコポリ(1−オレフィン)であるとは、例えばアルファ−オメガジエンを上記のように加える場合を除き、ポリマー鎖において約95%を超え、さらに好ましくは約98%を超える1−オレフィン量を意味する。
【0055】
本発明のコポリマーの製造において、上記高反応性ポリオレフィンとしての使用に適したイソブテンポリマーは、米国特許第4152499号明細書に記載されているものも含み、それらは、その全てについて参照するため本明細書の記載とする。それらのポリマーは、開始剤としての三フッ化ホウ素と共にイソブテンを重合することにより得られる。共触媒、例えば水もしくはアルコールは、重合において使用できる。
【0056】
本発明のコポリマーの製造における使用のために適切な高反応性ポリオレフィンは、末端不飽和がエテニリデン(すなわち、ビニリデン)不飽和を含む末端不飽和エチレンアルファ−オレフィンポリマーも含む。これらについては、米国特許第4668834号、同第5225092号、同第5225091号、同第5229022号、同第5084534号、および同第5324800号の各明細書に開示されており、これら全ての開示内容は、その全てについて参照するため本明細書の記載とする。そのようなポリマーは、エチレンと式HC=CHR’”を有する少なくとも一種のアルファ−オレフィンとのポリマーであって、式中、R’”は1乃至18の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基であり、上記ポリマーは高い頻度で末端エテニリデン不飽和を含む。上記式において、好ましくはR’”は、1乃至8の炭素原子を有するアルキルであり、さらに好ましくは1乃至2の炭素原子を有するアルキルである。そのようなアルファ−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1、デセン−1、ドデセン−1、トリデセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、ヘプタデセン−1、オクタデセン−1、およびそれらの混合物(例、プロピレンと1−ブテンとの混合物、その他)を含む。具体的なポリマーは、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−ブテン−1コポリマーその他である。エチレン・アルファ−オレフィンポリマーにおけるエチレンのモル量は、好ましくは約20乃至約80%の範囲であり、さらに好ましくは約30乃至約70%である。プロピレンおよび/またはブテン−1をエチレンとのコモノマーとして採用する場合、そのようなコポリマーにおけるエチレン量は、最も好ましくは約45乃至約65%である。ただし、より多くもしくはより少ないエチレンの量にすることも可能である。
【0057】
エチレン・アルファ−オレフィンポリマーは、一般に約700乃至約5000の数平均分子量を有する。約1500乃至約3000の範囲に数平均分子量を有するようなエチレン・アルファ−オレフィンポリマーは、本発明において特に有用である。そのようなポリマーは、一般に約0.025乃至約0.9dl/g、好ましくは約0.05乃至約0.5dl/g、最も好ましくは約0.075乃至約0.4dl/gの極限粘度(135℃のテトラリン中で測定)を有する。これらのポリマーは、好ましくはグラフト化するとそれらが実質的に無定形となるような結晶度を示す。これらのエチレン・アルファ−オレフィンポリマーは、さらに、そのようなポリマー鎖の少なくとも約60%、最も好ましくは少なくとも約75%(例えば、75乃至98%)が末端エテニリデン不飽和を示すことを特徴とする。末端エテニリデン不飽和を示すポリマー鎖の割合は、FTIR分光分析滴定もしくはC13NMRで測定できる。
【0058】
エチレン・アルファ−オレフィンポリマーは、米国特許第4668834号、同第5225092号、同第5225091号、同第5229022号、同第5324800号、同第5094534号、および欧州特許出願公開第128045号、同第129368号の各明細書の記載により製造でき、これら全ての開示内容は、その全てについて参照するため本明細書の記載とする。エチレン・アルファ−オレフィンポリマーは、エチレンを他のモノマー、例えば3乃至20の炭素原子(好ましくは3乃至4の炭素原子、すなわちプロピレン、ブテン−1、およびそれらの混合物)を有するアルファ−オレフィンと組み合わせたモノマー混合物を、少なくとも一種のメタロセン(例えば、シクロペンタジエニル−遷移金属化合物)とアルモキサン化合物とを含む触媒系の存在下、重合させることにより製造できる。エチレン・アルファ−オレフィンポリマーのコモノマー量は、メタロセン触媒成分の選択、および様々なモノマーの分圧の制御によって、調節できる。
【0059】
エチレン・アルファ−オレフィンポリマーの生成において使用される触媒は、有機金属配位化合物であって、それらは元素の周期律表(化学および物理のハンドブックの第56版、CRC出版[1975年])のIVb族金属のシクロペンタジエニル誘導体であり、モノ、ジ、およびトリシクロペンタジエニル並びにそれらの遷移金属の誘導体を含む。特に望ましくは、IVb族金属、例えばチタン、ジルコニウム、およびハフニウムのメタロセンである。メタロセンと共に反応生成物を生成する際に用いられるアルモキサンは、それら自身がアルミニウムトリアルキルと水との反応生成物である。一般に、少なくとも一種のメタロセン化合物が触媒の生成に用いられる。メタロセンはシクロペンタジエンの金属誘導体である。エチレン・アルファ−オレフィンポリマーを製造するために使用されるメタロセンは、少なくとも一つのシクロペンタジエン環を有する。金属はIVb族から選ばれ、好ましくはチタン、ジルコニウム、およびハフニウムであり、最も好ましくはハフニウムおよびジルコニウムである。シクロペンタジエニル環は、未置換もしくは一つ以上の置換基(例、1乃至5の置換基)、例えば、炭化水素置換基(例、5つ以下のC乃至Cの炭化水素置換基)もしくは他の置換基、例えばトリアルキルシリル置換基を有していてもよい。メタロセンは、一つ、二つ、もしくは三つのシクロペンタジエニル環を有することができるが、二つの環が好ましい。
【0060】
重合方法で有用なアルモキサン化合物は、環状であっても、鎖状であってもよい。環状アルモキサンは一般式−(R−Al−O)−で表され、一方、鎖状アルモキサンは一般式R(R−Al−O)AlRで表される。一般式におけるRはC−Cのアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、およびペンチルであり、nは3乃至20の整数であり、mは1乃至約20の整数である。好ましくは、Rはメチルであり、nおよびmは4乃至18である。一般に、アルモキサンの製造、例えば、アルミニウムトリメチルと水からの製造では、鎖状および環状化合物の混合物が得られる。重合は一般に、約20乃至約300℃、好ましくは約30乃至200℃の範囲の温度で実施される。反応時間は厳密ではなく、反応温度、共重合させるモノマー、その他のような要因に基づき、数時間以上から数分間以下まで変更できる。当業者は日常的な実験によって容易に、与えられた反応パラメーターの組合せに最適な反応時間を得ることができる。重合における圧力は、好ましくは約10乃至約3000×10パスカルであり、一般に約40×10パスカル乃至約3000×10パスカルの範囲内の圧力であり、最も好ましくは、重合は約50×10パスカル乃至約1500×10パスカルの範囲内の圧力で完了する。重合は、反応媒体として、液状モノマー、例えば液状プロピレン、もしくは液状モノマーの混合物(例えば、液状プロピレンと1−ブテンとの混合物)を用いて実施できる。あるいは重合を、重合に対して不活性な炭化水素、例えばブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソオクタン、デカン、トルエン、キシレン、その他の存在下で実施してもよい。与えられた操作条件の組合せで生成されるポリマー生成物の分子量が、望ましい値よりも高くなるような場合は、従来技術で知られている分子量を制御するための技術、例えば水素の使用および/または重合温度の調節を任意に、ポリマーを製造するための方法において使用できる。
【0061】
(エノフィル)
本発明の態様は、カルボニル化合物もしくはカルボニル前駆体を含む適切なエノフィルの使用を含む。さらに具体的に好ましいエノフィルは、反応性(すなわち、電子欠損を持つ)アルデヒドから選ばれ、その反応性は、エノフィルの立体配置および電子による効果、もしくは反応の結果が立体的な密集状態からの解放となるような緊張状態のエノフィルにより影響される可能性がある。好ましいエノフィルは、次の構造を有する反応性アルデヒドとして示すことができる:
【0062】
【化4】

【0063】
式中、Rは水素原子、ハロアルキル、アルコキシカルボニル、および少なくとも一つの電子求引基で置換されたアリールであって、電子求引基は、ニトロ、シアノ、およびアルコキシカルボニルから選ばれる。
【0064】
好ましくはカルボニル化合物もしくはカルボニル前駆体は、アルデヒドもしくはパラホルムアルデヒドである。適切なアルデヒドはホルムアルデヒドであって、それが重合した状態のパラホルムアルデヒドもしくはトリオキサンであってもよい。ホルムアルデヒドをエノフィルとして、高い反応性のポリイソブテンをエンとして、共に適切なルイス酸を伴う反応条件下で用いる場合、製造される化合物はω−ヒドロキシメチルポリイソブテン化合物である。
【0065】
が水素原子である場合、アルデヒドはホルムアルデヒドである。ホルムアルデヒドは、気体、液体、および固体を含む全ての状態、並びにホルムアルデヒド同等物を意味する。ホルムアルデヒド同等物は、限定されるものではないが、パラホルムアルデヒド(重合ホルムアルデヒド(CHO))もしくは1,3,5−トリオキサン(ホルムアルデヒドの環状三量体)を含む。水および様々なアルコール中のホルムアルデヒド溶液(例、ホルマリン=37%水溶液)は、市販品が利用できる。明らかに、水性の溶液は、水蒸気に対して不安定なルイス酸には適していない。パラホルムアルデヒドは固体であり、一般に約91%乃至93%当量のホルムアルデヒドを含む粉末もしくは薄片状の生成物である。水性ホルマリン溶液は、それらの水留分が及ぼす否定的な効果のため、望ましくない。
【0066】
ホルムアルデヒドの炭素の電子吸引性は相対的に高く、ホルムアルデヒドは一般に他の置換アルデヒドと比較して反応性が高い。すなわち、カルボニルにおける、例えば、アルキルもしくはアリール基による置換はカルボニルを安定化し、ホルムアルデヒドと比較して、その反応性を低くする。ただし、意図的に置換基に配置される電子求引基は、カルボニルの反応性を向上させ、適切な置換アルデヒドを導くことができる。
【0067】
よって、例えば、クロラールおよび他のハロアルキル置換アルデヒドは、適切なルイス酸の存在下で、ポリイソブテンの付加物に対する適度の反応性を有している。ただし、ハロゲン置換基は、商業的なエンジンへの適用については、特に好適とは言えない。
【0068】
特に好ましいアルデヒドでは、上記Rは、1乃至6の炭素原子を有するアルキル基を有するアルコキシカルボニル置換基から選ばれる。これらの化合物は、次の式のグリオキシル酸化合物として示すこともできる:
【0069】
【化5】

【0070】
式中、Rは1乃至6の炭素原子を有するアルキルおよびそれらの混合物である。好ましい化合物は、グリオキシル酸メチル、グリオキシル酸エチル、グリオキシル酸イソプロピル、グリオキシル酸n−ブチル、およびグリオキシル酸t−ブチルを含む。特に好ましいものは、グリオキシル酸メチルである。
【0071】
別の態様は、Rがニトロ、シアノ、およびアルキル基が1乃至6の炭素原子を有するアルコキシカルボニルから選ばれる少なくとも一つの電子求引基で置換されたアリールである場合に関する。上記アリール基は任意に、顕著な立体障害を伝達することがなく、また電子求引基の影響を顕著に否定しない1乃至3の置換基で置換されていてもよい。この点に関して、アリール基がベンゼンである場合、電子求引基は、好ましくはカルボニル基のパラ位に位置する。よって、特に好ましい化合物は置換ベンズアルデヒドであり、さらに好ましくは4−ニトロベンズアルデヒド、4−シアノベンズアルデヒド、およびベンズアルデヒドの4−C1−6のアルキルエステルから選ばれる。
【0072】
アルデヒドを本明細書に記載の反応条件に適用する場合を含め、本発明において使用するためにルイス酸と組み合わせる好ましいアルデヒドを決定するため、スクリーニング試験を採用できる。本明細書に記載のカルボニル−エン反応は、容易に実施でき、必要とする反応時間が比較的短く、試験すべきアルデヒドとルイス酸との組合せおよび最適な反応条件について、広い範囲が許容される。
【0073】
エン対エノフィルのモル比は1:1で良いが、エノフィル化合物に対するエン部分が過剰であると、反応によるモノ付加生成物の収量が向上する。例えば1:1乃至10:1、好ましくは1:1乃至6:1の比率が本発明の方法で採用できる。より具体的に、ポリイソブテン対アルデヒド化合物のモル比は1:1で良いが、アルデヒド化合物に対するポリイソブテン部分が過剰であると反応によるモノ付加生成物の収量が向上する。例えば1:1乃至10:1、好ましくは1:1乃至6:1の比率が本発明の方法で採用できる。
【0074】
(ルイス酸)
適切なルイス酸と反応条件は、カルボニル−エン反応が、ポリイソブテンについて説明した(スキーム1)反応性がより低い三置換オレフィンよりも、メチルビニリデンの異性化が優先的に促進されるように選択する必要がある。
【0075】
スキーム1
ルイス酸触媒によるオレフィンの異性化
【0076】
【化6】

【0077】
ルイス酸および反応条件も、ポリイソブテンの脱重合(スキーム2)が起きないように選択する必要がある。
【0078】
スキーム2
ルイス酸触媒によるポリイソブテンの脱重合
【0079】
【化7】

【0080】
これを実施するためのある種のルイス酸は触媒的な方法で使用することができ、それ以外では化学量論的に使用する必要がある。触媒的な方法で使用することができるルイス酸、例えば三フッ化ホウ素もしくは三フッ化ホウ素錯体(例、三フッ化ホウ素エーテル化合物)は、付加生成物もオレフィンであるため、ポリイソブテンに対するカルボニル化合物のモノおよびビス付加物の双方を生じる。これについての合理的な説明は、三フッ化ホウ素をルイス酸として使用する場合についてスキーム3に示す。モノ付加生成物は、カルボニル化合物に対して過剰なポリイソブテンを用いることにより最大にすることができる。
【0081】
スキーム3
カルボニル−エン反応−触媒的ルイス酸
モノおよびビス生成物
三フッ化ホウ素の例
【0082】
【化8】

【0083】
カルボニル−エン反応で消費されない触媒としてのルイス酸については、上記ルイス酸を、モノ付加ポリイソブテンアルコールを生成するための触媒量で使用する。一般に、ポリイソブテンの当量当たりルイス酸の当量数は、約0.005乃至1の範囲であり、好ましくは約0.005乃至0.5の範囲である。
【0084】
ビー・スナイダー(アカウンツ・オブ・ケミカル・リサーチ(Acc. Chem. Res.)、1980、13、426〜432(1980年))は、塩化ジメチルアルミニウムおよび二塩化エチルアルミニウムのルイス酸が、化学量論的な量で使用した場合、重合体ではなく、ポリイソブテンが影響を受けやすい副反応の主題にもならないオレフィンにカルボニル化合物のモノ付加生成物を与えることを発見している。これについての説明は、塩化ジメチルアルミニウムをルイス酸として使用する場合について、スキーム4に示す。
【0085】
スキーム4
カルボニル−エン反応−化学量論的ルイス酸
モノ生成物
塩化ジメチルアルミニウムの例
【0086】
【化9】

【0087】
本発明者は、ある種のルイス酸を、化学量論的な量で使用すると、ポリマーを劣化させることなく、もしくはオレフィンをより反応性が低い異性体に異性化させることなしに、ポリイソブテンがモノ付加生成物となることを見出した。本発明で使用できる好ましいルイス酸は、式R’AlX(3−y)で表されるハロゲン化アルキル−アルミニウムであって、R’はC1−6のアルキルであり;Xはハロゲンであり;そして、yは1乃至2の整数である。特に好ましいアルキル基はメチルおよびエチルである。好ましいハロゲンは塩素である。特に適しているルイス酸は、MeAlCl、EtAlCl、および主要なカルボニル−エン反応の後、副反応を生成することがない類似のルイス酸である。
【0088】
本発明者は、カルボニル−エン反応において化学量論的に使用した場合、モノ付加生成物を与える別の有用なルイス酸は、式:R”SiX4−zのハロゲン化炭化水素シリルであることも発見した。上記式中、R”はC1−6のアルキルまたはアリールであり、Xはハロゲンであり、zは1乃至2の整数である。これらのハロゲン化炭化水素シリルは、これまで、カルボニル−エン反応を触媒するために使用されたことはなかった。これらは、自然発火性ではなく、それらの取り扱いが容易であるとの利点がある。
【0089】
一般に、化学量論的な量で使用するルイス酸では、ポリイソブテンの当量当たりルイス酸の当量数は、約1〜10の範囲であり、好ましくは約1.1〜2.0の範囲である。
【0090】
(溶媒)
溶媒は、本発明の方法において好ましく使用される。溶媒は、非極性で、比較的低い誘電率を伴い、優先的にルイス酸と錯体を形成しないものを選択する。適切な溶媒は、ハロゲン化アルカン類(例えば、クロロホルム、塩化エチル、塩化n−ブチル、塩化メチレン、塩化メチル、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、塩化n−プロピル、塩化イソプロピル、1,2−ジクロロプロパン、もしくは1,3−ジクロロプロパン)、アルケン類、およびハロゲン化アルケン類(例えば、塩化ビニル、1,1−ジクロロエテン、および1,2−ジクロロエテン)を含む。適切な溶媒は、エステル類、例えば、酢酸エチルを含むことができる。炭化水素溶媒も用いることができ、例えば、直鎖アルカン(例、プロパン、直鎖ブタン、直鎖ペンタン、直鎖ヘキサン、直鎖ヘプタン、直鎖オクタン、直鎖ノナン、および直鎖デカン)および分岐鎖アルカン(例、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、イソヘキサン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、その他)を含むアルカン類、芳香族溶媒(例、ベンゼン、トルエン、キシレン、その他)、並びにハロゲン置換芳香族化合物(例、クロロベンゼン)を含む。溶媒は、ルイス酸触媒のエン反応に使用される上記および他の公知の有機化合物の混合物を含むこともできる。好ましい溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロメタン、およびジクロロエタンを含むことができる。
【0091】
(温度)
本発明の方法で採用する反応条件は、溶媒、反応体もしくは生成物の性質、すなわち沸点もしくは安定性に依存する。反応温度は、一般に−30℃乃至60℃の範囲であり、さらに好ましくは0乃至40℃の範囲である。方法は、任意の適切な圧力、例えば、大気圧、大気圧よりも高い圧力、もしくは減圧において有効である。ただし、ポリイソブテン、エノフィル、もしくは反応生成物が反応温度において揮発性もしくは気体である場合には、反応圧力はそれらを液体状態中(例、溶液中)に保つために充分である必要がある。一般に、反応は、自然環境の圧力もしくは個々の反応温度における反応体による自律的な圧力において実施される。本発明の方法は、バッチ式もしくは連続式のいずれでも実施できる。
【0092】
出発物質およびカルボニル−エンにより生成される副生成物は、クロマトグラフィーもしくはこの技術で知られている他の手段により、容易に除去できる。
【実施例】
【0093】
以下の実施例は、特定の態様と合成による製造とを説明するために、示されており、本発明の範囲を限定するように解釈すべきではない。
【0094】
[実施例1]
(塩化ジメチルアルミニウムによるω−ヒドロキシメチルポリイソブチレンの製造)
【0095】
【化10】

【0096】
磁気攪拌機と窒素取り入れ口とを備えたフラスコに、5gのポリイソブチレン(分子量:1000、80%メチルビニリデン)、136.5mgのパラホルムアルデヒド、および15ミリリットルの無水塩化メチレンを加えた。塩化ジメチルアルミニウム(6.8ミリリットルの1Mヘキサン溶液)を、シリンジを用いて一度に加えた。反応溶液は次に室温で16時間、攪拌した。反応は氷浴中で冷却し、15ミリリットルの1%塩酸溶液を滴下した。結果として得られた二相の溶液を、ヘキサン類で抽出した(3×15ミリリットル)。有機相を一緒にし、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を吸引除去して、粗製生成物を得た。粗製反応生成物は、ヘキサン、および引き続いてのヘキサン中の10%酢酸エチルで溶出させるシリカゲルによるクロマトグラフィーで精製し、3.85gの目的生成物を無色の油として得た。H−NMR(CDCl)δ:4.95(d,1H)、4.85(d,1H)、3.70(t,2H)、2.35(t,2H)、2.00(s,2H)、0.90−1.50(m,137H)。
【0097】
[実施例2]
(塩化ジメチルアルミニウムによるω−4−ニトロフェニルヒドロキシメチルポリイソブチレンの製造)
【0098】
【化11】

【0099】
磁気攪拌機と窒素取り入れ口とを備えたフラスコに、5.35gのポリイソブチレン(分子量:1000、80%メチルビニリデン)、0.74gの4−ニトロベンズアルデヒド、および15ミリリットルの無水塩化メチレンを加えた。塩化ジメチルアルミニウム(6.8ミリリットルの1Mヘキサン溶液)を、シリンジを用いて一度に加えた。反応溶液は次に室温で16時間、攪拌した。反応は氷浴中で冷却し、15ミリリットルの1%塩酸溶液を滴下した。結果として得られた二相の溶液を、ヘキサン類で抽出した(3×15ミリリットル)。有機層を一緒にし、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を吸引除去して、粗製生成物を得た。粗製反応生成物は、ヘキサン、および引き続いてのヘキサン中の10%酢酸エチルで溶出させるシリカゲルによるクロマトグラフィーで精製し、4.3gの目的生成物を褐色の油として得た。H−NMR δ:8.20(d,2H)、7.55(d,2H)、5.05(d,1H)、5.00(d,1H)、4.85(dd,1H)、2.50(d,2H)、2.05(s,2H)、0.80−1.50(m,137H)。
【0100】
[実施例3]
(三フッ化ホウ素エーテル化合物によるω−ヒドロキシメチルポリイソブチレンの製造)
磁気攪拌機と窒素取り入れ口とを備えたフラスコに、20gのポリイソブチレン(分子量:1000、80%メチルビニリデン)、0.6gのパラホルムアルデヒド、および60ミリリットルの無水塩化メチレンを加えた。三フッ化ホウ素エーテル化合物(0.123ミリリットル)を、シリンジを用いて一度に加えた。反応混合物を室温で16時間、攪拌した。混合物を40ミリリットルの塩化メチレンおよび引き続き2ミリリットルの飽和水酸化アンモニウム水溶液で希釈した。沈殿物を濾過で除いた。溶液を、飽和炭酸水素ナトリウムの溶液および引き続いての飽和塩化ナトリウムの溶液で洗浄した。塩化メチレン層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を吸引除去して、粗製生成物を得た。粗製反応生成物は、ヘキサン、および引き続きヘキサン溶液中の10%酢酸エチルで溶出させるシリカゲルによるクロマトグラフィーで精製し、6.85gの目的生成物を得た。
【0101】
[実施例4]
(三フッ化ホウ素エーテル化合物によるω−ヒドロキシメチルポリイソブチレンの製造)
磁気攪拌機と窒素取り入れ口とを備えたフラスコに、100gのポリイソブチレン(分子量:1000、80%メチルビニリデン)、0.6gのパラホルムアルデヒド、および60ミリリットルの無水塩化メチレンを加えた。三フッ化ホウ素エーテル化合物(0.123ミリリットル)を、シリンジを用いて一度に加えた。反応混合物を室温で16時間、攪拌した。混合物を40ミリリットルの塩化メチレンおよび引き続き2ミリリットルの飽和水酸化アンモニウム水溶液で希釈した。沈殿物を濾過で除いた。溶液を、飽和炭酸水素ナトリウムの溶液および引き続き飽和塩化ナトリウムの溶液で洗浄した。塩化メチレン層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を吸引除去して、粗製生成物を得た。粗製反応生成物は、ヘキサン、および引き続いてのヘキサン溶液中の10%酢酸エチルで溶出させるシリカゲルによるクロマトグラフィーで精製して、13.6gの目的生成物を得た。
【0102】
[実施例5]
(三フッ化ホウ素エーテル化合物によるω−4−ニトロフェニルヒドロキシメチルポリイソブチレンの製造)
磁気攪拌機と窒素取り入れ口とを備えたフラスコに、100gのポリイソブチレン(分子量:1000、80%メチルビニリデン)、3.02gの4−ニトロベンズアルデヒド、および60ミリリットルの無水塩化メチレンを加えた。三フッ化ホウ素エーテル化合物(0.123ミリリットル)を、シリンジを用いて一度に加えた。反応混合物を室温で16時間、攪拌した。混合物を40ミリリットルの塩化メチレンおよび引き続き2ミリリットルの飽和水酸化アンモニウム水溶液で希釈した。沈殿物を濾過で除いた。溶液を、飽和炭酸水素ナトリウムの溶液および引き続き飽和塩化ナトリウムの溶液で洗浄した。塩化メチレン層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を吸引除去して、粗製生成物を得た。粗製反応生成物は、ヘキサン、および引き続いてのヘキサン溶液中の10%酢酸エチルで溶出させるシリカゲルによるクロマトグラフィーで精製し、15.2gの目的生成物を得た。
【0103】
[実施例6]
(メチルトリクロロシランによるω−ヒドロキシメチルポリイソブチレンの製造)
【0104】
【化12】

【0105】
磁気攪拌機と窒素取り入れ口とを備えたフラスコに、5.35gのポリイソブチレン(分子量:1000、80%メチルビニリデン)、146mgのパラホルムアルデヒド、および15ミリリットルの無水塩化メチレンを加えた。メチルトリクロロシラン(0.86ミリリットル)を、シリンジを用いて一度に加えた。反応混合物を室温で16時間、攪拌した。反応は氷浴中で冷却し、15ミリリットルの0.5N塩酸溶液を滴下した。酸の添加によって、ケイ素系のゲルが生成した。塩化メチレン/HCl(水)溶液をゲルを傾けて除き、ゲルをヘキサン中の10%酢酸エチル溶液で(三回)洗浄した。水層をヘキサン類で(三回)抽出した。有機層の全てをまとめて、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を吸引除去し、粗製生成物を得た。粗製反応生成物は、ヘキサン、および引き続いてのヘキサン中の10%酢酸エチルで溶出させるシリカゲルによるクロマトグラフィーで精製して、3.85gの目的生成物を無色の油として得た。H−NMR(CDCl)δ:4.95(d,1H)、4.85(d,1H)、3.70(t,2H)、2.35(t,2H)、2.00(s,2H)、0.90−1.50(m,137H)。
【0106】
[実施例7]
(ジメチルジクロロシランによるω−ヒドロキシメチルポリイソブチレンの製造)
磁気攪拌機と窒素取り入れ口とを備えたフラスコに、5.06gのポリイソブチレン(分子量:1000、80%メチルビニリデン)、138mgのパラホルムアルデヒド、および15ミリリットルの無水塩化メチレンを加えた。ジメチルジクロロシラン(0.83ミリリットル)を、シリンジを用いて一度に加えた。反応混合物を室温で16時間、攪拌した。反応は氷浴中で冷却し、15ミリリットルの0.5N塩酸溶液を滴下した。結果として得られた二相の溶液を、ヘキサン類(3×15ミリリットル)で抽出した。有機層を一緒にし、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を吸引除去して、粗製生成物を得た。粗製反応生成物は、ヘキサン、および引き続いてのヘキサン中の10%酢酸エチルで溶出させるシリカゲルによるクロマトグラフィーで精製して、3.0gの目的生成物を得た。
【0107】
[実施例8]
(メチルトリクロロシランによるω−ヒドロキシメチルポリイソブチレンの製造)
【0108】
【化13】

【0109】
磁気攪拌機と窒素取り入れ口とを備えたフラスコに、7.26gのポリイソブチレン(分子量:2300、80%メチルビニリデン)、86mgのパラホルムアルデヒド、および15ミリリットルの無水塩化メチレンを加えた。メチルトリクロロシラン(0.51ミリリットル)を、シリンジを用いて一度に加えた。反応混合物を室温で16時間、攪拌した。反応は氷浴中で冷却し、15ミリリットルの0.5N塩酸溶液を滴下した。酸の添加によって、ケイ素系のゲルが生成した。塩化メチレン/HCl(水)溶液をゲルを傾けて除き、ゲルをヘキサン中の10%酢酸エチル溶液で(三回)洗浄した。組み合わされた有機層を分離し、水層をヘキサン類で(三回)抽出した。有機層の全てをまとめて、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を吸引除去して、粗製生成物を得た。以上の反応により、2.32gの目的生成物を無色の油として得た。H−NMR(CDCl)δ:4.95(d,1H)、4.85(d,1H)、3.70(t,2H)、2.35(t,2H)、2.00(s,2H)、0.90−1.50(m,321H)。
【0110】
[実施例9]
(フェニルトリクロロシランによるω−ヒドロキシメチルポリイソブチレンの製造)
磁気攪拌機と窒素取り入れ口とを備えたフラスコに、5.16gのポリイソブチレン(分子量:1000、80%メチルビニリデン)、141mgのパラホルムアルデヒド、および15ミリリットルの無水塩化メチレンを加えた。フェニルトリクロロシラン(1.1ミリリットル)を、シリンジを用いて一度に加えた。反応混合物を室温で16時間、攪拌した。反応は氷浴中で冷却し、15ミリリットルの0.5N塩酸溶液を滴下した。結果として得られた二相の溶液を、ヘキサン類(3×15ミリリットル)で抽出した。有機層を一緒にし、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を吸引除去して、粗製生成物を得た。以上の反応により、2.1gの目的生成物を得た。
【0111】
[実施例10]
(メチルトリクロロシランによるω−ヒドロキシメチルポリイソブチレンの製造)
磁気攪拌機と窒素取り入れ口とを備えたフラスコに、5.53gのポリイソブチレン(分子量:1000、80%メチルビニリデン)、151mgのパラホルムアルデヒド、および15ミリリットルの無水塩化メチレンを加えた。メチルトリクロロシラン(2.96ミリリットル)を、シリンジを用いて一度に加えた。反応混合物を室温で16時間、攪拌した。反応は氷浴中で冷却し、15ミリリットルの0.5N塩酸溶液を滴下した。酸の添加によって、ケイ素系のゲルが生成した。塩化メチレン/HCl(水)溶液をゲルを傾けて除き、ゲルをヘキサン中の10%酢酸エチル溶液で(三回)洗浄した。有機層を一緒にして分離し、水層をヘキサン類で(三回)抽出した。有機層の全てをまとめて、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を吸引除去して、粗製生成物を得た。以上の反応により、3.8gの目的生成物を無色の油として得た。
【0112】
[実施例11]
(メチルトリクロロシランによるω−ヒドロキシメチルポリイソブチレンの製造)
磁気攪拌機と窒素取り入れ口とを備えたフラスコに、5.14gのポリイソブチレン(分子量:1000、80%メチルビニリデン)、140mgのパラホルムアルデヒド、および15ミリリットルの無水塩化メチレンを加えた。メチルトリクロロシラン(0.66ミリリットル)を、シリンジを用いて一度に加えた。反応混合物を室温で16時間、攪拌した。反応は氷浴中で冷却し、15ミリリットルの0.5N塩酸溶液を滴下した。酸の添加によって、ケイ素系のゲルが生成した。塩化メチレン/HCl(水)溶液をゲルを傾けて除き、ゲルをヘキサン中の10%酢酸エチル溶液で(三回)洗浄した。組み合わされた有機層を分離し、水層をヘキサン類で(三回)抽出した。有機層の全てをまとめて、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を吸引除去して、粗製生成物を得た。以上の反応により、3.28gの目的生成物を無色の油として得た。
【0113】
[実施例12]
(ポリイソブチル−ω−3−メチルペント−2−エン−1,5−ジオールの製造)
【0114】
【化14】

【0115】
磁気攪拌機と窒素取り入れ口とを備えたフラスコに、5.3gのポリイソブチレン(分子量:1000、80%メチルビニリデン)、145mgのパラホルムアルデヒド、および15ミリリットルの無水塩化メチレンを加えた。三フッ化ホウ素エーテル化合物(60マイクロリットル)を、シリンジを用いて一度に加えた。反応混合物を室温で16時間、攪拌した。混合物を10ミリリットルの塩化メチレンおよび引き続き0.5ミリリットルの飽和水酸化アンモニウム水溶液で希釈した。沈殿物を濾過で除いた。溶液を、飽和炭酸水素ナトリウムの溶液および引き続き飽和塩化ナトリウムの溶液で洗浄した。塩化メチレン層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を吸引除去して、粗製生成物を得た。粗製反応生成物は、ヘキサン、および引き続いてのヘキサン溶液中の10%酢酸エチルで溶出させるシリカゲルによるクロマトグラフィーで精製し、2.3gの主に二付加のポリイソブチレンを得た。H−NMR(CDCl)δ:5.30(t,1H)、4.15(d,2H)、3.75(t,2H)、2.10(t,2H)、1.95(s,2H)、0.90−1.50(m,137H)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を含むルイス酸促進カルボニル−エン反応によりヒドロキシル官能基化ポリマーを製造する方法:
a)950乃至5000の数平均分子量と50モル%を超える末端ビニリデン量とを有するビニリデン末端ポリオレフィンを選択する工程;
b)カルボニルエノフィルを選択する工程;
c)ルイス酸を選択する工程;そして
d)反応条件下で工程a)、b)、およびc)の成分を接触させて、ヒドロキシル官能基化ポリマーを生成させる工程。
【請求項2】
上記ビニリデン末端ポリオレフィンが、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ−1−ブテン、エチレンとイソブチレンとのコポリマー、プロピレンとイソブチレンとのコポリマー、ポリ−1−ペンテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリ−3−メチルブテン−1、およびポリイソプレンからなる群より選ばれる請求項1の方法。
【請求項3】
上記ビニリデン末端ポリオレフィンが700乃至3000の数平均分子量を持つ請求項1の方法。
【請求項4】
上記ビニリデン末端ポリオレフィンがカチオン重合により誘導される請求項1の方法。
【請求項5】
上記ビニリデン末端ポリオレフィンがリビング重合法によって誘導される請求項1の方法。
【請求項6】
上記カルボニルエノフィルが、カルボニル基からの誘導もしくは共鳴効果のいずれかを介して電子密度を求引するのに適した電子求引置換基を含む電子欠損を持つ請求項1の方法。
【請求項7】
上記カルボニルエノフィルが下記式の反応性アルデヒドである請求項1の方法:
【化1】

式中、Rは水素原子、ハロアルキル、アルコキシカルボニル、および少なくとも一つの電子求引基で置換されたアリールからなる群より選ばれ、上記電子求引基はニトロ、シアノ、およびアルコキシカルボニルから選ばれる。
【請求項8】
上記反応性アルデヒドがホルムアルデヒドもしくはパラホルムアルデヒドである請求項7の方法。
【請求項9】
上記反応性アルデヒドが、グリオキシル酸メチル、グリオキシル酸エチル、グリオキシル酸イソプロピル、グリオキシル酸n−ブチル、およびグリオキシル酸t−ブチルからなる群より選ばれる請求項7の方法。
【請求項10】
上記反応性アルデヒドがベンズアルデヒドもしくは少なくとも一つの電子求引基で置換された置換ベンズアルデヒドであって、上記電子求引基がニトロ、シアノ、およびアルキル基が1乃至6の炭素原子を有するアルコキシカルボニルから選ばれる請求項7の方法。
【請求項11】
上記少なくとも一つの電子求引基が、アルデヒドのカルボニル基に対してパラ位に位置する請求項10の方法。
【請求項12】
上記ルイス酸をビニリデン末端ポリオレフィンに対して化学量論的な量で加える請求項1の方法。
【請求項13】
上記ルイス酸が式R’AlX(3−y)で表され、式中、R’はC1−6のアルキルであり;Xはハロゲンであり;そして、yは1乃至2の整数である請求項12の方法。
【請求項14】
上記ルイス酸がMeAlClおよびEtAlClの少なくとも一つである請求項12の方法。
【請求項15】
上記ルイス酸が、式:R”SiX4−zのハロゲン化炭化水素シリルであって、式中、R”はC1−6のアルキルまたはアリールであって、Xはハロゲンであり、zは1乃至2の整数である請求項12の方法。
【請求項16】
上記ルイス酸は触媒量で加えられ、カルボニル−エン反応では消費されない請求項1の方法。
【請求項17】
ビニリデン末端ポリオレフィンの当量当たりのルイス酸の量が0.005乃至0.5である請求項16の方法。
【請求項18】
ビニリデン末端ポリマーと比較して、モル当量で過剰量のカルボニルエノフィルを加える請求項17の方法。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか1項に従って生成した生成物。
【請求項20】
下記工程を含むルイス酸促進カルボニル−エン反応によりポリオレフィンアルコールを官能基化する方法:
a)1000乃至5000の数平均分子量と50モル%を超えるメチルビニリデン量とを有する反応性ポリイソブテンを選択する工程;
b)カルボニルエノフィルを選択する工程;
c)ルイス酸を選択する工程;そして
d)反応条件下で工程a)、b)、およびc)を接触させて、ポリオレフィンアルコールを生成させる工程。
【請求項21】
上記ポリイソブテンが700乃至3000の数平均分子量を持つ請求項20の方法。
【請求項22】
上記ポリイソブテンが、炭化水素流を含むイソブテンのルイス酸触媒系を用いてのカチオン重合により誘導される請求項20の方法。
【請求項23】
上記ポリイソブテンがリビング重合法により誘導される請求項20の方法。
【請求項24】
上記カルボニルエノフィルが、カルボニル基からの誘導もしくは共鳴効果のいずれかによって電子密度を求引するのに適した電子求引置換基を含む電子欠損を示す請求項20の方法。
【請求項25】
上記カルボニルエノフィルが、下記式の反応性アルデヒドである請求項20の方法:
【化2】

式中、Rは水素原子、ハロアルキル、アルコキシカルボニル、および少なくとも一つの電子求引基で置換されたアリールからなる群より選ばれ、上記電子求引基はニトロ、シアノ、およびアルコキシカルボニルから選ばれる。
【請求項26】
上記反応性アルデヒドがホルムアルデヒドもしくはパラホルムアルデヒドである請求項25の方法。
【請求項27】
上記反応性アルデヒドが、グリオキシル酸メチル、グリオキシル酸エチル、グリオキシル酸イソプロピル、グリオキシル酸n−ブチル、およびグリオキシル酸t−ブチルからなる群より選ばれる請求項25の方法。
【請求項28】
上記反応性アルデヒドがベンズアルデヒドもしくは少なくとも1つの電子求引基で置換された置換ベンズアルデヒドであって、上記電子求引基はニトロ、シアノ、およびアルキル基が1乃至6の炭素原子を有するアルコキシカルボニルから選ばれる請求項25の方法。
【請求項29】
上記少なくとも1つの電子求引基がアルデヒドのカルボニル基に対してパラ位に位置する請求項28の方法。
【請求項30】
上記ルイス酸をポリイソブテンに対して化学量論的な量で加える請求項20の方法。
【請求項31】
上記ルイス酸が式R’AlX(3−y)で表され、R’はC1−6のアルキルであり;Xはハロゲンであり;そして、yは1乃至2の整数である請求項30の方法。
【請求項32】
上記ルイス酸がMeAlClおよびEtAlClの少なくとも一つである請求項31の方法。
【請求項33】
上記ルイス酸が式:R”SiX4−zのハロゲン化炭化水素シリルであって、R”はC1−6のアルキルもしくはアリールであり、Xはハロゲンであり、zは1乃至2の整数である請求項20の方法。
【請求項34】
化学量論的な量の式:R”SiX4−zのハロゲン化炭化水素シリルについてカルボニル−エン反応を実施することを含むカルボニル−エン反応によりモノ付加生成物を製造するための方法、ただし、R”はC1−6のアルキルもしくはアリールであり、Xはハロゲンであり、zは1乃至2の整数である。

【公表番号】特表2013−514448(P2013−514448A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544764(P2012−544764)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/060555
【国際公開番号】WO2011/075536
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】