説明

カルボン酸のビニルエステルを用いてのモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、そのエステルおよび塩の製法ならびにその使用

本発明は、カルボン酸のビニルエステルを用いてのモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、そのエステルおよび塩を製造する方法に関し、この方法は、a)ホスフィン酸源(I)をオレフィン(IV)と触媒Aの存在下で反応させて、アルキル亜ホスホン酸、その塩またはエステル(II)にすること、b)こうして得られたアルキル亜ホスホン酸、その塩またはエステル(II)を式(V)のカルボン酸のビニルエステルと触媒Bの存在下で反応させて、一官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(VI)にすること、c)こうして得られた一官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(VI)を触媒Cの存在下で反応させて、一官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(VII)にすること、およびd)こうして得られた一官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(VII)を酸化剤と、または触媒Dの存在下で反応させて、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(III)にすることを特徴とし、式中、R、R、R、R、R、Rは、同じかまたは異なり、互いに独立に、特にH、C〜C18アルキル、C〜C18アリール、C〜C18アラルキル、C〜C18アルキルアリールであり、XおよびYは、同じかまたは異なり、互いに独立にH、C〜C18アルキル、C〜C18アリール、C〜C18アラルキル、C〜C18アルキルアリール、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Zn、Ce、Bi、Sr、Mn、Cu、Ni、Li、Na、Kおよび/またはプロトン化窒素塩基であり、触媒AおよびDは、遷移金属および/または遷移金属化合物および/または触媒系であり、前記触媒系は、遷移金属および/または遷移金属化合物および少なくとも1種のリガンドから構成され、触媒Bは、ペルオキシド形成化合物および/またはペルオキソ化合物および/またはアゾ化合物であり、触媒Cは、酸または塩基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸のビニルエステルを用いてのモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、そのエステルおよび塩の製法ならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、経済的に、かつ工業的に大規模に行うことができ、特には高い空間的/時間的収量を可能にする、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、そのエステルおよび塩の製造方法はなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、厄介なハロゲン化合物が出発物質として存在しなくても十分に有効であり、加えて、最終生成物を容易に得るもしくは単離することができ、または目的に応じた反応条件下(例えばエステル交換など)でも狙いを定めて望み通りに製造することができる方法もなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これらの課題は、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、そのエステルおよび塩の製造方法によって解決され、この方法は、
a)ホスフィン酸源(I)を
【化1】

オレフィン(IV)と
【0005】
【化2】

触媒Aの存在下で反応させて、アルキル亜ホスホン酸、その塩またはエステル(II)にすること、
【0006】
【化3】

b)こうして得られたアルキル亜ホスホン酸、その塩またはエステル(II)をカルボン酸のビニルエステル(V)と
【0007】
【化4】

触媒Bの存在下で反応させて、一官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(VI)にすること、
【0008】
【化5】

c)一官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(VI)を触媒Cの存在下で反応させて、一官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(VII)にすること、および
【0009】
【化6】

d)一官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(VII)を、酸化剤と、または酸化剤および水と、または触媒Dの存在下で酸素および水と反応させて、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(III)にすることを特徴とする。
【0010】
【化7】

式中、R、R、R、R、R、R、Rは、同じかまたは異なり、互いに独立にH、C〜C18アルキル、C〜C18アリール、C〜C18アラルキル、C〜C18アルキル−アリール、CN、CHO、OC(O)CHCN、CH(OH)C、CHCH(OH)CH、9−アントラセン、2−ピロリドン、(CHOH、(CHNH、(CHNCS、(CHNC(S)NH、(CHSH、(CHS−2−チアゾリン、(CHSiMe、C(O)R、(CHC(O)R、CH=CHRおよび/またはCH=CH−C(O)Rを意味し(ここで、Rは、C〜CアルキルまたはC〜C18アリールを表し、mは、0〜10の整数を意味する)、XおよびY、は同じかまたは異なり、互いに独立にH、C〜C18アルキル、C〜C18アリール、C〜C18アラルキル、C〜C18アルキル−アリール、(CHOH、CH−CHOH−CHOH、(CHO(CHH、(CH−CH(OH)−(CHH、(CH−CHO)H、(CH−C[CH]HO)H、(CH−C[CH]HO)(CH−CHO)H、(CH−CHO)(CH−C[CH]HO)H、(CH−CHO)−アルキル、(CH−C[CH]HO)−アルキル、(CH−C[CH]HO)(CH−CHO)−アルキル、(CH−CHO)(CH−C[CH]HO)O−アルキル、(CH−CH=CH(CHH、(CHNHおよび/または(CHN[(CHH]を表し(ここで、kは、0〜10の整数を意味する)、および/またはMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Zn、Ce、Bi、Sr、Mn、Cu、Ni、Li、Na、K、H、および/またはプロトン化窒素塩基を表し、触媒AおよびDは、遷移金属および/または遷移金属化合物および/または触媒系であり、前記触媒系は、遷移金属および/または遷移金属化合物および少なくとも1種のリガンドから構成され、触媒Bは、ペルオキシド形成化合物および/またはペルオキソ化合物および/またはアゾ化合物であり、触媒Cは、酸または塩基である。
【0011】
好ましくは、ステップd)に従って得られたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩またはエステル(III)を続いてステップe)で、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Zn、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kの金属化合物および/またはプロトン化窒素塩基と反応させて、これらの金属および/または窒素化合物の対応するモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸塩(III)にする。
【0012】
好ましくは、ステップa)に従って得られたアルキル亜ホスホン酸、その塩またはエステル(II)および/またはステップb)に従って得られた一官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩またはエステル(VI)および/またはステップc)に従って得られた一官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩またはエステル(VII)および/またはステップd)に従って得られたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩またはエステル(III)および/またはその時々に生じるその反応溶液を、アルキレンオキシドまたはアルコールM−OHおよび/またはM’−OHでエステル化し、その時々に生じるアルキル亜ホスホン酸エステル(II)、一官能化ジアルキルホスフィン酸エステル(VI)および/または(VII)および/またはモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸エステル(III)に、さらなる反応ステップb)、c)、d)またはe)を施す。
【0013】
好ましくは、基C〜C18アリール、C〜C18アラルキルおよびC〜C18アルキル−アリールは、SO、C(O)CH、OH、CHOH、CHSO、PO、NH、NO、OCH、SHおよび/またはOC(O)CHで置換されている。
【0014】
好ましくは、R、R、R、R、R、R、Rは、同じかまたは異なり、互いに独立にH、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチルおよび/またはフェニルを意味する。
【0015】
好ましくは、XおよびYは、同じかまたは異なり、それぞれH、Ca、Mg、Al、Zn、Ti、Fe、Ce、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、フェニル、エチレングリコール、プロピルグリコール、ブチルグリコール、ペンチルグリコール、ヘキシルグリコール、アリルおよび/またはグリセリンを意味する。
【0016】
好ましくは、m=1〜10およびk=2〜10である。
【0017】
好ましくは、触媒系AおよびDは、それぞれ、遷移金属および/または遷移金属化合物と少なくとも1種のリガンドとの反応によって形成する。
【0018】
好ましくは、遷移金属および/または遷移金属化合物は、第1、第7および第8亜族からのものである。
【0019】
好ましくは、遷移金属および/または遷移金属化合物は、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウムおよび/または金である。
【0020】
好ましくは、触媒Bは、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化リチウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソホウ酸カリウム、過酢酸、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−tert−ブチルおよび/またはペルオキソ二硫酸であり、および/またはアゾジイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリドおよび/または2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロリドである。
【0021】
好ましくは、触媒Cは、金属、金属水素化物、金属水酸化物、金属アルコキシドおよび鉱酸、例えば硫酸、硝酸、塩酸、リン酸またはこれらの混合物である。
【0022】
好ましくは、カルボン酸のビニルエステル(V)は、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル、ケイ皮酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、酢酸1−プロペニル、プロピオン酸1−プロペニル、酪酸1−プロペニル、ピバル酸1−プロペニル、安息香酸1−プロペニル、ケイ皮酸1−プロペニル、ステアリン酸1−プロペニル、ラウリン酸1−プロペニル、酢酸1−ブテニル、プロピオン酸1−ブテニル、酪酸1−ブテニル、ピバル酸1−ブテニル、安息香酸1−ブテニル、ケイ皮酸1−ブテニル、ステアリン酸1−ブテニル、ラウリン酸1−ブテニルである。
【0023】
好ましくは、一般式M−OHのアルコールは、C〜C18の炭素鎖長を有する直鎖または分枝鎖、飽和および不飽和の一価有機アルコールであり、一般式M’−OHのアルコールは、C〜C18の炭素鎖長を有する直鎖または分枝鎖、飽和および不飽和の多価有機アルコールである。
【0024】
本発明はまた、請求項1〜13のいずれか一つに従って製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、そのエステルおよび塩(III)の、さらなる合成のための中間生成物として、結合剤として、エポキシ樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル樹脂を硬化させる際の架橋剤または促進剤として、ポリマー安定剤として、農薬として、ヒトおよび動物用の治療薬または治療薬添加剤として、金属イオン封鎖剤として、鉱油添加剤として、防食剤として、洗濯洗剤および洗浄剤用途において、ならびに電子用途においての使用にも関する。
【0025】
本発明はまた、請求項1〜13のいずれか一つに従って製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩およびそのエステルの、難燃剤、特にクリヤコートおよび発泡性防炎塗料用の難燃剤、木材および他のセルロース含有製品用の難燃剤として、ポリマー用の反応性および/または非反応性難燃剤として、難燃性ポリマー成形材料を製造するため、難燃性ポリマー成形体を製造するため、および/または含浸によりポリエステルおよびセルロース製の単純および混紡織物を難燃性にするための使用にも関する。
【0026】
本発明はさらに、請求項1〜13のいずれか一つに従って製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩またはそのエステル0.5〜45重量%、熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマーまたはその混合物0.5〜95重量%、添加剤0〜55重量%ならびに充填剤または強化材0〜55重量%(ここで、成分の合計は100重量%である)を含有する難燃性熱可塑性または熱硬化性ポリマー成形材料に関する。
【0027】
最後に本発明は、請求項1〜13のいずれか一つに従って製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩またはそのエステル(III)0.5〜45重量%、熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマーまたはその混合物0.5〜95重量%、添加剤0〜55重量%ならびに充填剤または強化材0〜55重量%(ここで、成分の合計は100重量%である)を含有する難燃性熱可塑性または熱硬化性ポリマー成形体、ポリマーフィルム、ポリマーフィラメントおよびポリマー繊維にも関する。
【0028】
前記の反応は全て、段階的に実施することもでき、同様に、様々な方法ステップにおいて、その時々に生じた反応溶液を使用することもできる。
【0029】
ステップd)によるモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸(III)がエステルである場合、好ましくは、酸性または塩基性加水分解を実施して、遊離のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸またはその塩を得ることもできる。
【0030】
好ましくは、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸は、2−(エチルヒドロキシホスフィニル)酢酸、2−(プロピルヒドロキシホスフィニル)酢酸、2−(i−プロピルヒドロキシホスフィニル)酢酸、2−(ブチルヒドロキシホスフィニル)酢酸、2−(sec−ブチルヒドロキシホスフィニル)酢酸、2−(i−ブチルヒドロキシホスフィニル)酢酸、2−(2−フェニルエチルヒドロキシホスフィニル)酢酸、2−(エチルヒドロキシホスフィニル)−1−メチル酢酸、2−(プロピルヒドロキシホスフィニル)−1−メチル酢酸、2−(i−プロピルヒドロキシホスフィニル)−1−メチル酢酸、2−(ブチルヒドロキシホスフィニル)−1−メチル酢酸、2−(sec−ブチルヒドロキシホスフィニル)−1−メチル酢酸、2−(i−ブチルヒドロキシホスフィニル)−1−メチル酢酸および/または2−(2−フェニルエチルヒドロキシルホスフィニル)−1−メチル酢酸である。
【0031】
好ましくは、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸エステルは、前記のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸のプロピオン酸エステル、メチルエステル、エチルエステル、i−プロピルエステル、ブチルエステル、フェニルエステル、2−ヒドロキシエチルエステル、2−ヒドロキシプロピルエステル、3−ヒドロキシプロピルエステル、4−ヒドロキシブチルエステルおよび/または2,3−ジヒドロキシプロピルエステルまたはこれらの混合物である。
【0032】
好ましくは、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸塩は、前記のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸またはモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸の前記エステルのアルミニウム(III)塩、カルシウム(II)塩、マグネシウム(II)塩、セリウム(III)塩、チタン(IV)塩および/または亜鉛(II)塩である。
【0033】
ここでは、目的化合物として、エステル化または塩形成がホスフィン酸基(式(III)のXで)またはプロピオン酸基(式(III)のYで)で生じているエステルおよび塩も該当する。
【0034】
好ましくは、触媒Aのための遷移金属は、例えばレニウム、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウムおよび白金などの第7および8亜族の元素(現在の命名法では第7、8、9または10族の金属)である。
【0035】
好ましくは、遷移金属および遷移金属化合物の源として、その金属塩を使用する。適切な塩は、アニオンであるフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ素酸イオン、塩素酸イオン、臭素酸イオン、ヨウ素酸イオン、亜フッ素酸イオン、亜塩素酸イオン、亜臭素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、次亜フッ素酸イオン、次亜塩素酸イオン、次亜臭素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、過フッ素酸イオン、過塩素酸イオン、過臭素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、シアン化物イオン、シアン酸イオン、硝酸イオン、窒化物イオン、亜硝酸イオン、オキシド、ヒドロキシド、ホウ酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、硫化物イオン、過硫酸イオン、チオ硫酸イオン、スルファミン酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、リン化物イオン、炭酸イオン、ならびに例えばメタンスルホン酸イオン、クロロスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、ナフチルスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、t−ブチルスルホン酸イオン、2−ヒドロキシプロパンスルホン酸イオンおよびスルホン化イオン交換体樹脂などスルホン酸イオンを含有する鉱酸の塩;および/または例えばアセチルアセトナート、ならびにトリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩など20個までの炭素原子を有するハロゲン化カルボン酸を含めた、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、シュウ酸塩、ステアリン酸塩およびクエン酸塩など20個までの炭素原子を有するカルボン酸の塩などの有機塩である。
【0036】
さらなる遷移金属および遷移金属化合物の源は、遷移金属とテトラフェニルホウ酸アニオンおよびハロゲン化テトラフェニルホウ酸アニオン、例えばペルフルオロフェニルホウ酸との塩である。
【0037】
適切な塩には同様に、1種または複数の遷移金属イオン、ならびに互いに独立に1種または複数のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンおよび有機ホスホニウムイオン、ならびに互いに独立に1種または複数の上記アニオンからなる複塩および錯塩も含まれる。適切な複塩は例えば、ヘキサクロロパラジウム酸アンモニウムおよびテトラクロロパラジウム酸アンモニウムである。
【0038】
好ましくは、遷移金属の源は、元素としての遷移金属および/またはゼロ価状態の遷移金属化合物である。
【0039】
好ましくは、遷移金属を金属として使用するか、またはさらなる金属との合金として使用し、この場合、ホウ素、ジルコニウム、タンタル、タングステン、レニウム、コバルト、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金および/または金が好ましい。この場合、使用される合金中の遷移金属含量は好ましくは、45〜99.95重量%である。
【0040】
好ましくは、遷移金属は、微小分散粒子(mikrodispers)(粒径0.1mm〜100μm)で使用する。
【0041】
好ましくは、遷移金属は、例えば酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マグネシウム、Celite(登録商標)、珪藻土などの金属酸化物に、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウムなどの金属炭酸塩に、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウムなどの金属硫酸塩に、リン酸アルミニウム、リン酸バナジウムなどの金属リン酸塩に、炭化ケイ素などの金属炭化物に、アルミン酸カルシウムなどの金属アルミン酸塩に、ケイ酸アルミニウム、チョーク、ゼオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライトなどの金属ケイ酸塩に、SiliaBond(登録商標)、QuadraSil(商標)などの官能化ケイ酸塩、官能化シリカゲルに、Deloxan(登録商標)などの官能化ポリシロキサンに、金属窒化物に、炭素、活性炭、ムライト、ボーキサイト、輝安鉱、灰重石、ペロブスカイト、ハイドロタルサイト、ヘテロポリアニオンに、官能化および非官能化セルロース、キトサン、ケラチン、ヘテロポリアニオンに、Amberlite(商標)、Amberjet(商標)、Ambersep(商標)、Dowex(登録商標)、Lewatit(登録商標)、ScavNet(登録商標)などのイオン交換体に、Chelex(登録商標)、QuadraPure(商標)、Smopex(登録商標)、PolyOrgs(登録商標)などの官能化ポリマーに、ポリマー結合ホスファン、ホスファンオキシド、ホスフィナート、ホスホナート、ホスファート、アミン、アンモニウム塩、アミド、チオアミド、尿素、チオ尿素、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、チオール、チオールエーテル、チオールエステル、アルコール、アルコキシド、エーテル、エステル、カルボン酸、アセタート、アセタール、ペプチド、ヘタレン、ポリエチレンイミン/二酸化ケイ素および/またはデンドリマーに担持させて使用する。
【0042】
金属塩および/または遷移金属の適切な源は、好ましくはその錯化合物でもある。金属塩および/または遷移金属の錯化合物は、金属塩または遷移金属および1種または複数の錯化剤からなる。適切な錯化剤は例えば、オレフィン、ジオレフィン、ニトリル、ジニトリル、一酸化炭素、ホスフィン、ジホスフィン、ホスフィット、ジホスフィット、ジベンジリデンアセトン、シクロペンタジエニル、インデニルまたはスチレンである。金属塩および/または遷移金属の適切な錯化合物は、上記で挙げられた担持材料に担持されていてよい。
【0043】
好ましくは上記担持遷移金属の含量は、担持材料の全重量に対して、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、特には0.2〜5重量%である。
【0044】
遷移金属および遷移金属化合物の適切な源は例えば、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム;アルミナ担持、シリカ担持、炭酸バリウム担持、硫酸バリウム担持、炭酸カルシウム担持、炭酸ストロンチウム担持、炭素担持、活性炭担持のパラジウム、白金、ニッケルまたはロジウム;白金−パラジウム−金合金、アルミニウム−ニッケル合金、鉄−ニッケル合金、ランタノイド−ニッケル合金、ジルコニウム−ニッケル合金、白金−イリジウム合金、白金−ロジウム合金;Raney(登録商標)ニッケル、ニッケル−亜鉛−鉄酸化物;パラジウム(II)、ニッケル(II)、白金(II)、ロジウムの塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、水素化物、酸化物、過酸化物、シアン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン化物、ホウ化物、クロム酸化物、コバルト酸化物、塩基性炭酸塩、シクロヘキサン酪酸塩、水酸化物、モリブデン酸塩、オクタン酸塩、シュウ酸塩、過塩素酸塩、−フタロシアニン、−5,9,14,18,23,27,32,36−オクタブトキシ−2,3−ナフタロシアニン、スルファミン酸塩、過塩素酸塩、チオシアン酸塩、−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート、プロピオン酸塩、酢酸塩、ステアリン酸塩、2−エチルヘキサン酸塩、アセチルアセトナート、ヘキサフルオロアセチルアセトナート、テトラフルオロホウ酸塩、チオ硫酸塩、トリフルオロ酢酸塩、フタロシアニンテトラスルホン酸四ナトリウム塩、−メチル、−シクロペンタジエニル、−メチルシクロペンタジエニル、−エチルシクロペンタジエニル、−ペンタメチルシクロペンタジエニル、−2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン、−5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン、−ビス(5−[[4−(ジメチルアミノ)フェニル]イミノ]−8(5H)−キノリノン)、−2,11,20,29−テトラ−tert−ブチル−2,3−ナフタロシアニン、−2,9,16,23−テトラフェノキシ−29H,31H−フタロシアニン、−5,10,15,20−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)−21H,23H−ポルフィンおよびそれらの1,4−ビス(ジフェニルホスフィン)ブタン錯体、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン錯体、2−(2’−ジ−tert−ブチルホスフィン)ビフェニル錯体、アセトニトリル錯体、ベンゾニトリル錯体、エチレンジアミン錯体、クロロホルム錯体、1,2−ビス(フェニルスルフィニル)エタン錯体、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリデン)(3−クロロピリジル)錯体、2’−(ジメチルアミノ)−2−ビフェニリル錯体、ジノルボルニルホスフィン錯体、2−(ジメチルアミノメチル)フェロセン錯体、アリル錯体、ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン錯体、(N−スクシンイミジル)ビス−(トリフェニルホスフィン)錯体、ジメチルフェニルホスフィン錯体、メチルジフェニルホスフィン錯体、1,10−フェナントロリン錯体、1,5−シクロオクタジエン錯体、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン錯体、トリフェニルホスフィン錯体、トリ−o−トリルホスフィン錯体、トリシクロヘキシルホスフィン錯体、トリブチルホスフィン錯体、トリエチルホスフィン錯体、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル錯体、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾル−2−イリデン錯体、1,3−ビス(メシチル)イミダゾル−2−イリデン錯体、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン錯体、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン錯体、N−メチルイミダゾール錯体、2,2’−ビピリジン錯体、(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン)錯体、ビス(ジ−tert−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)錯体、ビス(tert−ブチルイソシアニド)錯体、2−メトキシエチルエーテル錯体、エチレングリコールジメチルエーテル錯体、1,2−ジメトキシエタン錯体、ビス(1,3−ジアミノ−2−プロパノール)錯体、ビス(N,N−ジエチルエチレンジアミン)錯体、1,2−ジアミノシクロヘキサン錯体、ピリジン錯体、2,2’:6’,2’’−テルピリジン錯体、ジエチルスルフィド錯体、エチレン錯体、アミン錯体;カリウム、ナトリウム、アンモニウムのヘキサクロロパラジウム酸塩(IV)、カリウム、ナトリウム、アンモニウムのテトラクロロパラジウム酸塩(II)、ブロモ(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(I)ダイマー、(2−メチルアリル)パラジウム(II)クロリドダイマー、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、テトラキス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(0)、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィン)エタン]パラジウム(0)、ビス(3,5,3’,5’−ジメトキシジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)−パラジウム(0)、メソ−テトラフェニルテトラベンゾポルフィンパラジウム、テトラキス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(3,3’,3’’−ホスフィニジン−トリス(ベンゾスルホナト)パラジウム(0)ノナナトリウム塩、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン(1,4−ナフトキノン)パラジウム(0)、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾル−2−イリデン(1,4−ナフトキノン)パラジウム(0)およびそのクロロホルム錯体;
アリルニッケル(II)クロリドダイマー、硫酸ニッケル(II)アンモニウム、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)ジカルボニルニッケル(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィット)ニッケル(0)、ヘキサフルオロニッケル酸(IV)カリウム、テトラシアノニッケル酸(II)カリウム、パラ過ヨウ素酸ニッケル(IV)カリウム、テトラブロモニッケル酸(II)二リチウム、テトラシアノニッケル酸(II)カリウム;
白金(IV)の塩化物、酸化物、硫化物、カリウム、ナトリウム、アンモニウムのヘキサクロロ白金酸塩(IV)、カリウム、アンモニウムのテトラクロロ白金酸塩(II)、テトラシアノ白金酸(II)カリウム、トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)、シス−ジアミンテトラクロロ白金(IV)、トリクロロ(エチレン)白金酸(II)カリウム、ヘキサヒドロキシ白金酸(IV)ナトリウム、テトラクロロ白金酸(II)テトラアミン白金(II)、ヘキサクロロ白金酸(IV)テトラブチルアンモニウム、エチレンビス(トリフェニルホスフィン)白金(0)、白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(0)、白金オクタエチルポルフィリン、クロロ白金酸、カルボプラチン;
クロロビス(エチレン)ロジウムダイマー、ヘキサロジウムヘキサデカカルボニル、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムダイマー、クロロ(ノルボルナジエン)−ロジウムダイマー、クロロ(1,5−ヘキサジエン)ロジウムダイマーである。
【0045】
好ましくは、リガンドは、式(VIII)のホスフィンである。
PR (VIII)
式中、基Rは、互いに独立に、水素、直鎖、分枝鎖または環式C〜C20アルキル、C〜C20アルキルアリール、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C20カルボキシレート、C〜C20アルコキシ、C〜C20アルケニルオキシ、C〜C20アルキニルオキシ、C〜C20アルコキシ−カルボニル、C〜C20アルキルチオ、C〜C20アルキルスルホニル、C〜C20アルキルスルフィニル、シリルおよび/またはこれらの誘導体および/または少なくとも1個のR10で置換されているフェニルまたは少なくとも1個のR10で置換されているナフチルである。R10は、互いに独立に、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、NH、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、ホルミル、直鎖、分枝鎖または環式C〜C20アルキル、C〜C20アルコキシ、HN(C〜C20アルキル)、N(C〜C20アルキル)、−CO−(C〜C20アルキル)、−CON(C〜C20アルキル)、−OCO(C〜C20アルキル)、NHCO(C〜C20アルキル)、C〜C20アシル、−SOM、−SON(R11)M、−COM、−PO、−AsO、−SiOM、−C(CFOM(M=H、Li、NaまたはK)であり、ここで、R11は、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、直鎖、分枝鎖または環式C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C20カルボキシレート、C〜C20アルコキシ、C〜C20アルケニルオキシ、C〜C20アルキニルオキシ、C〜C20アルコキシカルボニル、C〜C20アルキルチオ、C〜C20アルキルスルホニル、C〜C20アルキルスルフィニル、シリルおよび/またはその誘導体、アリール、C〜C20アリールアルキル、C〜C20アルキルアリール、フェニルおよび/またはビフェニルを意味する。好ましくは、基Rは全て、同じである。
【0046】
適切なホスフィン(VIII)は、例えばトリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリイソペンチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリデシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、フェニルジメチルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(p−トリル)ホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、2−ピリジルジフェニルホスフィン、ビス(6−メチル−2ピリジル)フェニルホスフィン、トリ(p−クロロフェニル)ホスフィン、トリ(p−メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル(2−スルホナトフェニル)ホスフィン;ジフェニル(3−スルホナトフェニル)ホスフィン、ビス(4,6−ジメチル−3−スルホナトフェニル)(2,4−ジメチルフェニル)ホスフィン、ビス(3−スルホナトフェニル)フェニルホスフィン、トリス(4,6−ジメチル−3−スルホナトフェニル)ホスフィン、トリス(2−スルホナトフェニル)ホスフィン、トリス(3−スルホナトフェニル)ホスフィンのカリウム、ナトリウムおよびアンモニウム塩;2−ビス(ジフェニルホスフィノエチル)トリメチルアンモニウムヨージド、2’−ジシクロヘキシルホスフィノ−2,6−ジメトキシ−3−スルホナト−1,1’−ビフェニルナトリウム塩、亜リン酸トリメチルおよび/または亜リン酸トリフェニルである。
【0047】
特に好ましくは、リガンドは、下記一般式
M”−Z−M”R (IX)
の二座リガンドである。式中、M”は互いに独立に、N、P、AsまたはSbを表す。好ましくは、両方のM”は同一であり、特に好ましくは、M”はリン原子である。
【0048】
基Rはそれぞれ互いに独立に、式(VIII)で示される基を表す。好ましくは、基Rは全て同一である。
【0049】
Zは好ましくは、少なくとも1個の架橋原子を含有する二価架橋基であり、好ましくは2〜6個の架橋原子が含有されている。架橋原子は、C、N、O、SiおよびS原子から選択することができる。Zは好ましくは、少なくとも1個の炭素原子を含有する有機架橋基である。Zは好ましくは、そのうちの少なくとも2個が炭素原子である1〜6個の架橋原子を含有し、置換または非置換であってよい有機架橋基である。
【0050】
好ましい基Zは、−CH−、−CH−CH−、−CH−CH−CH−、−CH−CH(CH)−CH−、−CH−C(CH−CH−、−CH−C(C)−CH−、−CH−Si(CH−CH−、−CH−O−CH−、−CH−CH−CH−CH−、−CH−CH(C)−CH−、−CH−CH(n−Pr)−CHおよび−CH−CH(n−Bu)−CH−、置換または非置換の1,2−フェニル、1,2−シクロヘキシル、1,1’−もしくは1,2−フェロセニル基、2,2’−(1,1’−ビフェニル)、4,5−キサンテンおよび/またはオキシジ−2,1−フェニレン基である。
【0051】
適切な二座ホスフィンリガンド(IX)は、例えば1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジプロピルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジイソプロピルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジブチルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタンおよび1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン;1,3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン、1,3−ビス(ジイソプロピルホスフィノ)プロパン、1,3−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)プロパンおよび1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン;1,4−ビス(ジイソプロピルホスフィノ)ブタンおよび1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン;1,5−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)ペンタン;1,2−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ベンゼン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)ベンゼン、1,2−ビス(ジシクロペンチルホスフィノ)ベンゼン、1,3−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ベンゼン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)ベンゼンおよび1,3−ビス(ジシクロペンチルホスフィノ)ベンゼン;9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2,7−ジ−tert−ブチルキサンテン、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)キサンテン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、(オキシジ−2,1−フェニレン)ビス(ジフェニルホスフィン)、2,5−(ジイソプロピルホスホラノ)ベンゼン、2,3−O−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、2,2’−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−(ジフェニルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−(ジフェニルホスフィノ)エチルアミン、2−[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]ピリジン;1,2−ビス(ジ−4−スルホナトフェニルホスフィノ)ベンゼン、(2,2’−ビス[[ビス(3−スルホナト−フェニル)ホスフィノ]メチル]−4,4’,7,7’−テトラスルホナト−1,1’−ビナフチル、(2,2’−ビス[[ビス(3−スルホナトフェニル)ホスフィノ]メチル]−5,5’−テトラスルホナト−1,1’−ビフェニル、(2,2’−ビス[[ビス(3−スルホナトフェニル)ホスフィノ]メチル]−1,1’−ビナフチル、(2,2’−ビス[[ビス(3−スルホナトフェニル)ホスフィノ]メチル]−1,1’−ビフェニル、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2,7−スルホナトキサンテン、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−2,7−スルホナトキサンテン、1,2−ビス(ジ−4−スルホナトフェニルホスフィノ)ベンゼン、メソ−テトラキス(4−スルホナトフェニル)ポルフィン、メソ−テトラキス(2,6−ジクロロ−3−スルホナトフェニル)ポルフィン、メソ−テトラキス(3−スルホナトメシチル)ポルフィン、テトラキス(4−カルボキシフェニル)ポルフィンおよび5,11,17,23−スルホナト−25,26,27,28−テトラヒドロキシカリックス[4]アレーンのカリウム塩、ナトリウム塩およびアンモニウム塩である。
【0052】
加えて、式(VIII)および(IX)のリガンドは、基Rおよび/または架橋基を介して、適切なポリマーまたは無機基材に結合していてよい。
【0053】
触媒系は、1:0.01〜1:100、好ましくは1:0.05〜1:10、特には1:1〜1:4の遷移金属/リガンド−モル比を有する。
【0054】
好ましくは、方法ステップa)、b)、c)、d)およびe)における反応を任意選択で、例えば窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素などのさらなる気体成分を含有する雰囲気中で行い;温度は、−20〜340℃、特には20〜180℃であり、全圧は、1〜100バールである。
【0055】
方法ステップa)、b)、c)、d)およびe)の後の生成物および/または遷移金属および/または遷移金属化合物および/または触媒系および/またはリガンドおよび/または出発物質の単離を任意選択で、蒸留もしくは精留により、結晶化もしくは沈殿により、濾過もしくは遠心分離により、吸着もしくはクロマトグラフィーにより、または他の知られている方法により行う。
【0056】
本発明によれば、溶媒、助剤および場合によっては他の揮発性成分を、例えば蒸留、濾過および/または抽出により除去する。
【0057】
好ましくは、方法ステップa)、b)、c)、d)およびe)における反応を任意選択で、吸収カラム、噴霧塔、気泡カラム、撹拌タンク、散水ろ床反応器、流管、ループ型反応器および/または混練機で行う。
【0058】
適切な混合機構は、例えばアンカー型、ブレード型、MIG型、プロペラ型、インペラー型、タービン型、クロス型撹拌機、分散ディスク、中空(ガス吹込)撹拌機、ローター−ステーターミキサー、スタティックミキサー、ベンチュリノズルおよび/またはマンモスポンプである。
【0059】
その際、反応溶液/混合物に1〜1000000、好ましくは100〜100000の回転レイノルズ数に対応する混合強度を加える。
【0060】
好ましくは個々の反応成分などの十分な混合を、0.080〜10kW/m、好ましくは0.30〜1.65kW/mのエネルギー入力下で行う。
【0061】
好ましくは反応の間、触媒AまたはDはそれぞれ、均一または不均一に作用する。したがって、それぞれ不均一系で作用する触媒は、反応の間、懸濁液として、または固相に結合させて作用させる。
【0062】
好ましくは、反応の前に、および/または反応の開始時に、および/または反応の間に、触媒AまたはDをそれぞれ、その場で再生させる。
【0063】
好ましくは、反応をそれぞれ、溶媒中で単相系として均一または不均一な混合物中で、および/または気相で行う。
【0064】
多相系を使用する場合、追加的に相転移触媒を使用することができる。
【0065】
本発明による反応は、液相で、気相で、または超臨界相でも実施することができる。この場合、触媒AまたはDをそれぞれ、液体の場合には好ましくは均一系で、または懸濁液として使用し、気相または超臨界操作では固定床装置が有利である。
【0066】
適切な溶媒は、水、例えばメタノール、エタノール、i−プロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、i−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、i−オクタノール、n−トリデカノール、ベンジルアルコールなどのアルコールである。さらに、単独か、または互いに組み合わせた、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコールなどのグリコール、;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンおよび石油エーテル、石油ベンジン、ケロシン、石油、パラフィン油などの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、四塩化炭素、テトラブロモエチレンなどのハロゲン化炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;アニソール(メチルフェニルエーテル)、tert−ブチルメチルエーテル、ジベンジルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジフェニルエーテル、メチルビニルエーテル、テトラヒドロフラン、トリイソプロピルエーテルなどのエーテル;ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME、モノグリム)、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)、トリエチレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル;アセトン、ジイソブチルケトン、メチル−n−プロピルケトンなどのケトン;メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトンなど;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピルおよび酢酸n−ブチルなどのエステル;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などのカルボン酸が好ましい。
【0067】
使用されるオレフィンおよびホスフィン酸源も、適切な溶媒である。これらは、より高い空間的時間的収量という形の利点をもたらす。
【0068】
好ましくは、反応をオレフィンおよび/または溶媒の固有蒸気圧下で実施する。
【0069】
好ましくは、オレフィン(IV)のR、R、R、Rは同じか、または異なり、互いに独立にH、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチルおよび/またはフェニルを意味する。
【0070】
また、イソチオシアン酸アリル、メタクリル酸アリル、2−アリルフェノール、N−アリルチオ尿素、2−(アリルチオ)−2−チアゾリン、アリルトリメチルシラン、酢酸アリル、アセト酢酸アリル、アリルアルコール、アリルアミン、アリルベンゼン、シアン化アリル、シアノ酢酸アリル、アリルアニソール、トランス−2−ペンテナール、シス−2−ペンテンニトリル、1−ペンテン−3−オール、4−ペンテン−1−オール、4−ペンテン−2−オール、トランス−2−ヘキセナール、トランス−2−ヘキセン−1−オール、シス−3−ヘキセン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、スチレン、−メチルスチレン、4−メチルスチレン、酢酸ビニル、9−ビニルアントラセン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンおよび1−ビニル−2−ピロリドンなどの官能化オレフィンを使用することも好ましい。
【0071】
反応を、好ましくは0.01〜100バールのオレフィン分圧、特に好ましくは0.1〜10バールのオレフィン分圧で行う。
【0072】
反応を、好ましくは1:10000〜1:0.001のホスフィン酸/オレフィン−モル比で、特に好ましくは1:30〜1:0.01の比で行う。
【0073】
反応を、好ましくは1:1〜1:0.00000001のホスフィン酸/触媒−モル比で、特に好ましくは1:0.01〜1:0.000001で行う。
【0074】
反応を、好ましくは1:10000〜1:0のホスフィン酸/溶媒−モル比、特に好ましくは1:50〜1:1で行う。
【0075】
式(II)の化合物を製造する本発明による方法は、ホスフィン酸源をオレフィンと、触媒の存在下で反応させ、生成物(II)(アルキル亜ホスホン酸またはその塩、エステル)から触媒、遷移金属または遷移金属化合物、リガンド、錯生成剤、塩および副生成物を除去することを特徴とする。
【0076】
本発明では、補助剤1を加え、触媒、触媒系、遷移金属および/または遷移金属化合物を抽出および/または濾過により除去することにより、触媒、触媒系、遷移金属および/または遷移金属化合物を分離する。
【0077】
本発明では、補助剤2で抽出し、および/または補助剤2と共に蒸留することにより、リガンドおよび/または錯化剤を分離する。
【0078】
補助剤1は、好ましくは水および/または金属捕捉剤群のうちの少なくとも1種の物質である。好ましい金属捕捉剤は、例えば酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マグネシウム、Celite(登録商標)、珪藻土などの金属酸化物、例えば炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウムなどの金属炭酸塩、例えば硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウムなどの金属硫酸塩、例えばリン酸アルミニウム、リン酸バナジウムなどの金属リン酸塩、例えば炭化ケイ素などの金属炭化物、例えばアルミン酸カルシウムなどの金属アルミン酸塩、例えばケイ酸アルミニウム、チョーク、ゼオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライトなどの金属ケイ酸塩、例えばSiliaBond(登録商標)、QuadraSil(商標)などの官能化ケイ酸塩、官能化シリカゲル、例えばDeloxan(登録商標)などの官能化ポリシロキサン、金属窒化物、炭素、活性炭、ムライト、ボーキサイト、輝安鉱、灰重石、ペロブスカイト、ハイドロタルサイト、官能化および非官能化セルロース、キトサン、ケラチン、ヘテロポリアニオン、例えばAmberlite(商標)、Amberjet(商標)、Ambersep(商標)、Dowex(登録商標)、Lewatit(登録商標)、ScavNet(登録商標)などのイオン交換体、例えばChelex(登録商標)、QuadraPure(商標)、Smopex(登録商標)、PolyOrgs(登録商標)などの官能化ポリマー、ポリマー結合ホスファン、酸化ホスファン、ホスフィナート、ホスホナート、ホスファート、アミン、アンモニウム塩、アミド、チオアミド、尿素、チオ尿素、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、チオール、チオールエーテル、チオールエステル、アルコール、アルコキシド、エーテル、エステル、カルボン酸、アセタート、アセタール、ペプチド、ヘタレン、ポリエチレンイミン/二酸化ケイ素および/またはデンドリマーである。
【0079】
好ましくは、補助剤1を、補助剤1に対して0.1〜40重量%の金属負荷に対応する量で加える。
【0080】
好ましくは、補助剤1を20〜90℃の温度で使用する。
【0081】
好ましくは、補助剤1の滞留時間は、0.5〜360分である。
【0082】
補助剤2は好ましくは、方法ステップa)において好ましく使用される通りの本発明による前記の溶媒である。
【0083】
モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸(III)または一官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(VI)および/または(VII)またはアルキル亜ホスホン酸誘導体(II)およびホスフィン酸源(I)をエステル化して対応するエステルにすることは、例えば、生じる水を共沸蒸留により除去しながら高沸点アルコールと反応させることにより、またはエポキシド(酸化アルキレン)と反応させることにより、達成することができる。
【0084】
好ましくはこの場合、下記で述べられている通り、ステップa)の後に、アルキル亜ホスホン酸(II)を一般式M−OHおよび/またはM’−OHのアルコールで、またはアルキレンオキシドとの反応により直接エステル化する。
【0085】
好ましくは、M−OHは、C〜C18の炭素鎖長を有する第1級、第2級または第3級アルコールである。メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、アミルアルコールおよび/またはヘキサノールが特に好ましい。
【0086】
好ましくは、M’−OHは、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリスヒドロキシメチルエタン、トリスヒドロキシメチルプロパン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、マンニトール、α−ナフトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよび/またはEO−POブロックポリマーである。
【0087】
M−OHおよびM’−OHとして、例えばn−ブテン−2−オール−1、1,4−ブテンジオールおよびアリルアルコールなどのC〜C18の炭素鎖長を有する一価または多価不飽和アルコールも適している。
【0088】
M−OHおよびM’−OHとして、一価アルコールと、1つまたは複数のアルキレンオキシド分子との、特に好ましくは、エチレンオキシドおよび1,2−プロピレンオキシドとの反応生成物も適している。2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−n−ブトキシエタノール、2−(2’−エチルヘキシルオキシ)−エタノール、2−n−ドデコキシエタノール、メチルジグリコール、エチルジグリコール、イソプロピルジグリコール、脂肪族アルコールポリグリコールエーテルおよびアリールポリグリコールエーテルが好ましい。
【0089】
好ましくはまた、M−OHおよびM’−OHは、多価アルコールと、1つまたは複数のアルキレンオキシド分子との反応生成物、特にはジグリコールおよびトリグリコールならびにエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド1〜6分子とグリセリン、トリスヒドロキシメチルプロパンまたはペンタエリトリトールとの付加生成物である。
【0090】
M−OHおよびM’−OHとして、水と1つまたは複数のアルキレンオキシド分子との反応生成物も使用することができる。100〜1000g/mol、特に好ましくは150〜350g/molの平均分子量を有する様々な分子量のポリエチレングリコールおよびポリ−1,2−プロピレングリコールが好ましい。
【0091】
M−OHおよびM’−OHとして、エチレンオキシドとポリ−1,2−プロピレングリコールまたは脂肪族アルコールプロピレングリコールとの反応生成物;同様に、1,2−プロピレンオキシドとポリエチレングリコールまたは脂肪族アルコールエトキシレートとの反応生成物も好ましい。100〜1000g/mol、特に好ましくは150〜450g/molの平均分子量を有するこのような反応生成物が好ましい。
【0092】
M−OHおよびM’−OHとして、アルキレンオキシドとアンモニア、第1級または第2級アミン、硫化水素、メルカプタン、リンの酸素酸およびC〜Cジカルボン酸の反応生成物も使用可能である。エチレンオキシドと窒素化合物との適切な反応生成物は、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、n−ブチルジエタノールアミン、n−ドデシルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、n−ブチルメチルエタノールアミン、ジ−n−ブチルエタノールアミン、n−ドデシルメチルエタノールアミン、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミンまたはペンタヒドロキシエチルジエチレントリアミンである。
【0093】
好ましいアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシエチルベンゼン、(2,3−エポキシプロピル)ベンゼン、2,3−エポキシ−1−プロパノールおよび3,4−エポキシ−1−ブテンである。
【0094】
適切な溶媒は、方法ステップa)で挙げられた溶媒、さらに、使用されるアルコールM−OHおよびM'−OHならびにアルキレンオキシドである。これらは、より高い空間的時間的収量の形で利点をもたらす。
【0095】
好ましくは、反応を、使用されるアルコールM−OHおよびM’−OHならびにアルキレンオキシドおよび/または溶媒の固有蒸気圧下で実施する。
【0096】
好ましくは、反応を0.01〜100バールの使用されるアルコールM−OHおよびM'−OHならびにアルキレンオキシドの分圧、特に好ましくは0.1〜10バールのオレフィン分圧で行う。
【0097】
好ましくは、反応を−20〜340℃の温度で、特に好ましくは20〜180℃の温度で実施する。
【0098】
好ましくは、反応を1〜100バールの全圧で行う。
【0099】
好ましくは、反応を、10000:1〜0.001:1のアルコールまたはアルキレンオキシド成分と、ホスフィン酸源(I)またはアルキル亜ホスホン酸(II)または一官能化ジアルキルホスフィン酸(VI)および/または(VII)またはモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸(III)とのモル比で、特に好ましくは1000:1〜0.01:1の比で行う。
【0100】
好ましくは、反応を、1:10000〜1:0のホスフィン酸源(I)またはアルキル亜ホスホン酸(II)または一官能化ジアルキルホスフィン酸(VI)および/または(VII)またはモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸(III)と、溶媒とのモル比で、特に好ましくは1:50〜1:1のホスフィン酸/溶媒−モル比で行う。
【0101】
方法ステップb)で、アルキル亜ホスホン酸、その塩またはエステル(II)とカルボン酸のビニルエステル(V)とを反応させて一官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩およびエステル(VI)にするために使用される好ましい触媒Bは、ペルオキソ一硫酸、一過硫酸カリウム(ペルオキソ一硫酸カリウム)、Caroat(商標)、Oxone(商標)、ペルオキソ二硫酸、過硫酸カリウム(ペルオキソ二硫酸カリウム)、過硫酸ナトリウム(ペルオキソ二硫酸ナトリウム)、過硫酸アンモニウム(ペルオキソ二硫酸アンモニウム)などのペルオキソ化合物である。
【0102】
加えて、好ましい触媒Bは、過酸化ナトリウム、過酸化ナトリウム水和物、過酸化ナトリウム二ペルオキソ水和物、過酸化リチウム、過酸化リチウム水和物、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、過酸化バリウム、過酸化マグネシウム、過酸化亜鉛、超酸化カリウム、超酸化カリウム水和物、ペルオキソホウ酸ナトリウム、ペルオキソホウ酸ナトリウム水和物、ペルオキソホウ酸カリウムペルオキソ水和物、ペルオキソホウ酸マグネシウム、ペルオキソホウ酸カルシウム、ペルオキソホウ酸バリウム、ペルオキソホウ酸ストロンチウム、ペルオキソホウ酸カリウム、ペルオキソ一リン酸、ペルオキソ二リン酸、ペルオキソ二リン酸カリウム、ペルオキソ二リン酸アンモニウム、ペルオキソ二リン酸カリウムアンモニウム、炭酸ナトリウムペルオキソ水和物、尿素ペルオキソ水和物、シュウ酸アンモニウムペルオキシド、過酸化バリウムペルオキソ水和物、過酸化バリウムペルオキソ水和物、過酸化水素カルシウム、過酸化カルシウムペルオキソ水和物、アンモニウムトリホスフェートジペルオキソホスフェート水和物、フッ化カリウムペルオキソ水和物、フッ化カリウム三ペルオキソ水和物、フッ化カリウム二ペルオキソ水和物、ピロリン酸ナトリウム二ペルオキソ水和物、ピロリン酸ナトリウム二ペルオキソ水和物八水和物、酢酸カリウムペルオキソ水和物、リン酸ナトリウムペルオキソ水和物、ケイ酸ナトリウムペルオキソ水和物など、溶媒系中で過酸化物を形成し得る化合物である。
【0103】
好ましい触媒Bはまた、過酸化水素、過ギ酸、過酢酸、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−tert−ブチル、過酸化ジクミル、過酸化2,4−ジクロロベンゾイル、過酸化デカノイル、過酸化ラウリル、クメンヒドロペルオキシド、ピネンヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、過酸化コハク酸、ペルオキシ二炭酸ジセチル、ペルオキシ酢酸tert−ブチル、ペルオキシマレイン酸tert−ブチル、ペルオキシ安息香酸tert−ブチル、過酸化アセチルシクロヘキシルスルホニルである。
【0104】
加えて好ましい触媒Bは、水溶性アゾ化合物である。特に好ましいのは、Dupont−Biesteritz社のVAZO(登録商標)52 2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、VAZO(登録商標)64(アゾビス(イソブチロニトリル)、AIBN)、VAZO(登録商標)67 2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、VAZO(登録商標)88 1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、VAZO(登録商標)68、Wako ChemicalsのV−70 2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、V−65 2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、V−601 ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、V−59 2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、V−40 1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1-カルボニトリル)、VF−096 2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、V−30 1−[(シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、VAm−110 2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、VAm−111 2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、VA−046B 2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパンジスルファート二水和物、VA−057 2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]四水和物、VA−061 2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、VA−080 2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド、VA−085 2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、VA−086 2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などのアゾ開始剤である。
【0105】
2−tert−ブチルアゾ−2−シアノプロパン、アゾジイソ酪酸ジメチル、アゾジイソブチロニトリル、2−tert−ブチルアゾ−1−シアノシクロヘキサン、1−tert−アミルアゾ−1−シアノシクロヘキサンなどのアゾ開始剤も適している。さらに、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、3,3−ビス(tert−ブチルペルオキシ)酪酸エチル、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどのアルキルペルケタールも好ましい。
【0106】
好ましくは、触媒Bを、個々のカルボン酸のビニルエステル(V)に対して0.05〜5mol%の量で使用する。
【0107】
好ましくは、触媒Bを、リン含有化合物に対して0.001〜10mol%の量で使用する。
【0108】
好ましくは、開始剤Bを、リン含有化合物に対して、1時間当たり触媒0.01〜10mol%の速度で配量添加する。
【0109】
好ましくは、触媒Bを反応の間、連続的に配量添加する。
【0110】
好ましくは、触媒Bを反応の間、オレフィン(IV)中の溶液の形態で連続的に配量添加する。
【0111】
好ましくは、触媒Bを反応の間、使用される溶媒中の溶液の形態で連続的に配量添加する。
【0112】
適切な溶媒は、上記で方法ステップa)において使用されたものである。
【0113】
好ましくは、アルキル亜ホスホン酸(II)とカルボン酸のビニルエステル(V)との反応を0〜250℃の温度で、特に好ましくは20〜200℃で、特には50〜150℃で行う。
【0114】
好ましくは、反応の際に、構成成分である溶媒とカルボン酸のビニルエステル(V)の合計量に対して50〜99.9重量%、好ましくは70〜95%のカルボン酸のビニルエステル(V)を含む雰囲気が存在する。
【0115】
好ましくは、カルボン酸のビニルエステル(V)を添加する間、反応を1〜20バールの圧力で行う。
【0116】
本方法のさらなる実施形態では、方法ステップa)および/またはb)に従って得られた生成物混合物を後処理する。
【0117】
本方法のさらなる実施形態では、方法ステップa)に従って得られた生成物混合物を後処理し、その後、方法ステップb)に従って得られた一官能化ジアルキルホスフィン酸および/またはそのエステルおよびアルカリ金属塩を方法ステップc)で反応させる。
【0118】
一官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩およびエステル(VII)にするためのステップc)に記載の反応は、酸または塩基を使用して水の存在下で、一官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩またはエステル(VI)を酸性またはアルカリ性加水分解することにより達成する。
【0119】
一官能化ジアルキルホスフィン酸塩(VII)が得られる場合、これを鉱酸と反応させて対応する酸にし、アルコールM−OHもしくはM’−OHまたはアルキレンオキシドでエステル化することができる。
【0120】
一官能化ジアルキルホスフィン酸(VII)が得られる場合、これを塩基と反応させて、一官能化ジアルキルホスフィン酸塩にすることができる。
【0121】
適切な鉱酸は、例えば塩酸、硫酸、硝酸もしくはリン酸またはこれらの酸の混合物である。
【0122】
適切な塩基は、例えばリチウム、水素化リチウム、水素化アルミニウムリチウム、メチルリチウム、ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウム、水素化ナトリウム、ホウ水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドまたはナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシドまたはカリウムブトキシド、および加えて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムなどの金属、金属水素化物および金属アルコキシドである。
【0123】
好ましくは、酸性またはアルカリ性加水分解は、水および不活性溶媒の存在下で行うことができる。適切な不活性溶媒は、方法ステップa)で挙げられた溶媒であり、1〜6個の炭素原子を有する低分子量のアルコールが好ましい。飽和脂肪族アルコールの使用が特に好ましい。適切なアルコールの例は、メタノール、エタノール、プロパノール、i−プロパノール、ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−3−ブタノール、3−メチル−1−ブタノールまたは2−メチル−1−ブタノールである。
【0124】
アルカリ性加水分解を実施するための好ましい塩基(触媒C)は、例えばリチウム、水素化リチウム、水素化アルミニウムリチウム、メチルリチウム、ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウム、水素化ナトリウム、ホウ水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドまたはナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシドまたはカリウムブトキシド、および加えて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムおよび水酸化アンモニウムなどの金属、金属水素化物および金属アルコキシドである。好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化バリウムを使用する。
【0125】
酸性加水分解を実施するための好ましい鉱酸(触媒C)は、例えば硫酸、硝酸、塩酸、リン酸またはそれらの混合物である。好ましくは、硫酸または塩酸を使用する。
【0126】
加水分解を実施する際には、水が存在することが必須である。水の量は、最小量としての化学量論的必要量から、過剰までであってよい。
【0127】
好ましくは、加水分解を、1:1〜1:1000、特に好ましくは1:1〜1:10のリン/水−モル比で行う。
【0128】
好ましくは、加水分解は、1:1〜1:300、特に好ましくは1.1〜1:20のリン/塩基または酸−モル比で行う。
【0129】
使用されるアルコール量は一般に、一官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩またはエステル(VI)1kg当たり0.5〜1.5kg、好ましくは0.6〜1.0kgである。
【0130】
反応温度は、50℃〜140℃、好ましくは80℃〜130℃である。
【0131】
好ましくは、反応を1〜100バールの全圧で、特に好ましくは1〜10バールの全圧で行う。
【0132】
好ましくは、反応時間は、0.2〜20時間、特に好ましくは1〜13時間である。
【0133】
モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩およびエステル(III)にするためのステップd)に記載の反応は、酸化剤により、酸化剤および水により、または酸素および水により触媒Dの存在下で一官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩またはエステル(VII)を選択的に酸化させることにより達成する。
【0134】
好ましい酸化剤および/または酸素発生剤は、過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、三酸化クロム、重クロム酸カリウム、重クロム酸ピリジン、クロロクロム酸ピリジン、Collins試薬、Jones試薬、Corey−Gilman−Ganem試薬、(Dess−Martin)ペルヨージナン、o−ヨードキシ安息香酸、四酸化ルテニウム、二酸化ルテニウム、テトラ−n−プロピル−ペルルテネート、三塩化ルテニウム/過ヨウ素酸ナトリウム、二酸化ルテニウム/過ヨウ素酸ナトリウム、塩素、次亜塩素酸塩、例えば過酸化水素、過ギ酸および過酢酸などの過酸、例えば2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシド(TEMPO)などのニトロキシルラジカルである。
【0135】
上記の酸化剤および/または酸素発生剤に加えて、方法ステップb)において触媒Bとして挙げられたものも全て、適している。
【0136】
好ましくは、反応を1:10〜1:0.1のジアルキルホスフィン酸/酸化剤−モル比、特に好ましくは1:2〜1:0.25のジアルキルホスフィン酸/酸化剤−モル比で行う。
【0137】
一官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(VII)と酸素および水とを反応させて、最終生成物のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(III)にするための方法ステップd)で使用される触媒Dは好ましくは、触媒Aであってよい。
【0138】
加えて好ましくは、触媒Dのための遷移金属は、例えば金などの第1亜属の元素である。
【0139】
触媒Aに関して列挙された遷移金属および遷移金属化合物の源に加えて、下記の遷移金属および遷移金属化合物も使用することができる:
金、コロイド金、ルテニウム、活性炭担持、炭素担持、アルミナ担持のルテニウム、白金−パラジウム−金合金、金−ニッケル合金、金−ゲルマニウム合金、金−白金合金、金−パラジウム合金、金−ベリリウム合金、白金−ルテニウム合金、パラジウム−ルテニウム合金、金(I)および/または金(III)、ルテニウム(II)および/またはルテニウム(III)および/またはルテニウム(IV)の塩化物、臭化物、ヨウ化物、酸化物、シアン化物、カリウムシアン化物、ナトリウムシアン化物、硫化物、硫酸塩、水素化物、ニトロシル塩化物、ニトロシル硝酸塩、バソフェナントロリン二スルホン酸ナトリウム塩、チオ硫酸塩、過塩素酸塩、シクロペンタジエニル、エチルシクロペンタジエニル、ペンタメチルシクロペンタジエニル、インデニル、2−メチルアリル、プロピオン酸塩、酢酸塩、アセチルアセトナート、ヘキサフルオロアセチルアセトナート、テトラフルオロホウ酸塩、カリウムチオシアン酸塩、ナトリウムチオシアン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、2−ピリジンカルボン酸塩ならびにこれらの1,4−ビス(ジフェニルホスフィン)ブタン錯体、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン錯体、2−(2’−ジ−tert−ブチルホスフィン)ビフェニル錯体、アセトニトリル錯体、ベンゾニトリル錯体、ジノルボルニルホスフィン錯体、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン錯体、ジメチルフェニルホスフィン錯体、メチルジフェニルホスフィン錯体、トリフェニルホスフィン錯体、トリ−o−トリルホスフィン錯体、トリシクロヘキシルホスフィン錯体、トリブチルホスフィン錯体、トリ−tert−ブチルホスフィン錯体、トリメチルホスフィン錯体、トリエチルホスフィン錯体、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル錯体、1,3−ビス(メシチル)イミダゾール−2−イリデン錯体、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン錯体、(1,1’−ビフェニル−2−イル)ジ−tert−ブチルホスフィン錯体、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン錯体、2−ジシクロヘキシル(2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル)ホスフィン錯体、ジメチルスルフィド錯体、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィット錯体、トリス(パラ−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン錯体、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン錯体、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン錯体、N−メチルイミダゾール錯体、1,10−フェナントロリン錯体、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン錯体、1,5−シクロオクタジエン錯体、1,3,5−シクロオクタトリエン錯体、ナフタレン錯体、p−シメン錯体、3−メチル−2−ブテニリデン錯体、ベンジリデン錯体、ピリジン錯体、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン錯体、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン錯体、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン錯体、トリ−o−トリルホスフィン錯体、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル錯体、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン錯体、2,2’−ビピリジン錯体、(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン)錯体、ビス(ジ−tert−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)錯体、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)エチルアミン錯体、(2−(ジフェニルホスフィノ)エチルアミン錯体、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン錯体、1,2−ジアミノシクロヘキサン錯体、ピリジン錯体、カルボニル錯体、エチレンジアミン錯体、アミン錯体;ジシアノ金酸(I)カリウム、テトラクロロ金酸(III)ナトリウム、塩化カリウム金(III)、金チオリンゴ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸トリス(トリフェニルホスフィン金)オキソニウム、テトラブロモ金酸(III)水素;ヘキサクロロルテニウム酸(IV)アンモニウム、アクアペンタクロロルテニウム酸(III)カリウム、(1,5−シクロオクタジエン)−(1,3,5−シクロオクタトリエン)ルテニウム、トリルテニウムドデカカルボニル、Grubbs触媒。
【0140】
好ましくは、使用される一官能化ジアルキルホスフィン酸(VII)に対する触媒Dの割合は、0.00001〜20mol%、特に好ましくは0.0001〜10mol%である。
【0141】
好ましくは、1:10000〜1:0のホスフィン酸−溶媒モル比で、特に好ましくは1:50〜1:1のホスフィン酸−溶媒モル比で、反応を行う。
【0142】
好ましくは、酸化を、30〜120℃の温度で、特に好ましくは50〜90℃で行う。
【0143】
好ましくは、反応時間は、0.1〜20時間である。
【0144】
好ましくは、反応を1〜100バールの全圧で行う。
【0145】
方法ステップd)のための適切な溶媒は、上記で方法ステップa)において使用されたものである。
【0146】
好ましくは、反応を、0.01〜100バール、特に好ましくは0.1〜10バールの酸素分圧で行う。
【0147】
酸化は、液相で、気相で、または超臨界相でも実施することができる。この場合、触媒を、液体の場合には好ましくは均一系で、または懸濁液として使用し、気相または超臨界操作では固定床装置が有利である。
【0148】
好ましくは、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を加えることにより、反応溶液のpHをpH6〜12の範囲に、特に好ましくはpH6〜9の範囲に維持する。
【0149】
好ましいアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムである。ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウムが特に好ましい。
【0150】
好ましいアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物は、その酸化物、水酸化物、炭酸塩およびカルボン酸塩である。
【0151】
好ましいアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物は、リチウム、水酸化リチウム、水素化リチウム、ナトリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム、水酸化カリウムである。
【0152】
好ましくは、酸素を、純粋な酸素として、またはその代わりに、例えば空気または酸素富化空気などの酸素含有混合物として使用する。
【0153】
好ましくは、酸素を、例えば過酸化水素などの酸素発生剤の形態で使用する。
【0154】
好ましくは、酸素とリン含有化合物(VII)との比は、1:1〜1500:1である。
【0155】
モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸またはその塩(III)を続いて反応させて、さらなる金属塩にすることができる。
【0156】
好ましくは、方法ステップe)で使用される金属化合物は、金属Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Zn、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、K、特に好ましくはMg、Ca、Al、Ti、Zn、Sn、Ce、Feの化合物である。
【0157】
方法ステップe)のための適切な溶媒は、上記で方法ステップa)において使用されたものである。
【0158】
好ましくは、方法ステップe)での反応を水性媒体中で行う。
【0159】
好ましくは、方法ステップe)において、方法ステップd)に従って得られたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、そのエステルおよび/またはアルカリ金属塩(III)をMg、Ca、Al、Zn、Ti、Sn、Zr、CeまたはFeの金属化合物と反応させて、これらの金属のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸塩(III)にする。
【0160】
この反応は、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸/そのエステル/塩(III)と金属とのモル比8:1〜1:3(四価金属イオンまたは安定な四価酸化状態を有する金属の場合)、6:1〜1:3(三価金属イオンまたは安定な三価酸化状態を有する金属の場合)、4:1〜1:3(二価金属イオンまたは安定な二価酸化状態を有する金属の場合)および3:1〜1:4(一価金属イオンまたは安定な一価酸化状態を有する金属)で行う。
【0161】
好ましくは、方法ステップd)で得られたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸エステル/その塩(III)を対応するジアルキルホスフィン酸に変換し、方法ステップe)において、これを、Mg、Ca、Al、Zn、Ti、Sn、Zr、CeまたはFeの金属化合物と反応させて、これらの金属のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸塩(III)にする。
【0162】
好ましくは、方法ステップd)で得られたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸/そのエステル(III)をジアルキルホスフィン酸アルカリ金属塩に変換し、方法ステップe)においてこれを、Mg、Ca、Al、Zn、Ti、Sn、Zr、CeまたはFeの金属化合物と反応させて、これらの金属のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸塩(III)にする。
【0163】
好ましくは、方法ステップe)のためのMg、Ca、Al、Zn、Ti、Sn、Zr、CeまたはFeの金属化合物は、金属、金属の酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、ホウ酸塩、炭酸塩、ヒドロキソ炭酸塩、ヒドロキソ炭酸塩水和物、混合ヒドロキソ炭酸塩、混合ヒドロキソ炭酸塩水和物、リン酸塩、硫酸塩、硫酸塩水和物、ヒドロキソ硫酸塩水和物、混合ヒドロキソ硫酸塩水和物、オキシ硫酸塩、酢酸塩、硝酸塩、フッ化物、フッ化物水和物、塩化物、塩化物水和物、オキシ塩化物、臭化物、ヨウ化物、ヨウ化物水和物、カルボン酸誘導体および/またはアルコキシドである。
【0164】
好ましくは、金属化合物は、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸チタニル、硝酸亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛および/または硫酸亜鉛である。
【0165】
金属アルミニウム、アルミニウムのフッ化物、塩酸塩、臭化物、ヨウ化物、硫化物、セレン化物;リン化物、次亜リン酸塩、アンチモン化合物、窒化物;炭化物、ヘキサフルオロケイ酸塩;水素化物、カルシウム水素化物、ホウ水素化物;塩素酸塩;硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、アルミニウムアンモニウムの硫酸塩、硝酸塩、メタリン酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、マグネシウムケイ酸塩、炭酸塩、ハイドロタルサイト、ナトリウム炭酸塩、ホウ酸塩;チオシアン酸塩;酸化物、オキシ水酸化物、これらの対応する水和物および/またはポリアルミニウムヒドロキシ化合物も適しており、これらは好ましくは、9〜40重量%のアルミニウム含量を有する。
【0166】
例えばアルミニウムの二酢酸塩、アセト酒石酸塩、ギ酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、8−オキシキノラートなど、モノカルボン酸、ジカルボン酸、オリゴカルボン酸、ポリカルボン酸のアルミニウム塩も適している。
【0167】
同様に、元素状の金属亜鉛、および例えば亜鉛ハロゲン化物(フッ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛)などの亜鉛塩も適している。
【0168】
亜鉛のホウ酸塩、炭酸塩、ヒドロキシ炭酸塩、ケイ酸塩、ヘキサフルオロケイ酸塩、スズ酸塩、ヒドロキシスズ酸塩、マグネシウム−アルミニウム−ヒドロキシ炭酸塩;硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩;硫酸塩、リン化物、セレン化物、テルル化物および第7主族のオキソ酸の亜鉛塩(ヒポハロゲナイト(hypohalogenite)、ハロゲナイト(halogenite)、ハロゲン酸塩、例えばヨウ素酸亜鉛、過ハロゲン酸塩、例えば過塩素酸亜鉛);擬ハロゲン化物の亜鉛塩(亜鉛のチオシアン酸塩、シアン酸塩、シアン化物);亜鉛の酸化物、過酸化物、水酸化物または混合亜鉛酸化物水酸化物(Zinkoxidhydroxide)も適している。
【0169】
遷移金属のオキソ酸の亜鉛塩(例えば、亜鉛のヒドロキシクロム酸(VI)塩(chromat(VI)hydroxyd)、亜クロム酸塩、モリブデン酸塩、過マンガン酸塩、モリブデン酸塩)が好ましい。
【0170】
例えば亜鉛のギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、カプリル酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、乳酸塩、アクリル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、アミノ酸の塩(グリシン)、酸ヒドロキシル官能基の塩(亜鉛フェノキシドなど)、亜鉛のp−フェノールスルホン酸塩、アセチルアセトナート塩、スズ酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩など、モノカルボン酸、ジカルボン酸、オリゴカルボン酸、ポリカルボン酸の亜鉛塩も適している。
【0171】
チタン化合物では、金属チタン、ならびにチタン(III)および/または(IV)の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、臭化物、フッ化物、酸塩化物、オキシ硫酸塩、酸化物、n−プロポキシド、n−ブトキシド、イソプロポキシド、エトキシド、2−エチルヘキシルオキシドなどが適している。
【0172】
金属スズおよびスズ塩(塩化スズ(II)および/または(IV));酸化スズ、および例えばスズ(IV)tert−ブトキシドなどのスズアルコキシドも適している。
【0173】
セリウム(III)のフッ化物、塩化物および硝酸塩も適している。
【0174】
ジルコニウム化合物では、金属ジルコニウム、ならびにジルコニウムの塩化物、硫酸塩などのジルコニウム塩、酢酸ジルコニル、塩化ジルコニルが好ましい。さらに、酸化ジルコニウムおよびジルコニウム(IV)tert−ブトキシドが好ましい。
【0175】
好ましくは、方法ステップe)での反応を、0.1〜70重量%、好ましくは5〜40重量%のモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸塩の固体含量で行う。
【0176】
好ましくは、方法ステップe)での反応を、20〜250℃、好ましくは80〜120℃の温度で行う。
【0177】
好ましくは、方法ステップe)での反応を、0.01〜1000バール、好ましくは0.1〜100バールの圧力で行う。
【0178】
好ましくは、方法ステップe)での反応を、1×10−7〜1000時間の反応時間内で行う。
【0179】
好ましくは、方法ステップe)の後に反応混合物から濾過および/または遠心分離により分離されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸塩(III)を乾燥させる。
【0180】
好ましくは、方法ステップd)により得られる生成物混合物を、さらに精製することなく金属化合物と反応させる。
【0181】
好ましい溶媒は、方法ステップa)で挙げられた溶媒である。
【0182】
方法ステップd)および/またはe)における反応は、ステップa)、b)および/またはc)によって示された溶媒系中で行うことが好ましい。
【0183】
方法ステップe)における反応は、改変された所与の溶媒系中で行うことが好ましい。このために、酸性成分、可溶化剤、消泡剤などを加える。
【0184】
本方法のさらなる実施形態では、方法ステップa)、b)、c)および/またはd)に従って得られる生成物混合物を後処理する。
【0185】
本方法のさらなる実施形態では、方法ステップd)に従って得られた生成物混合物を後処理し、その後、方法ステップd)に従って得られたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸および/またはその塩またはエステル(III)を方法ステップe)で、金属化合物と反応させる。
【0186】
好ましくは、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸および/またはその塩またはエステル(III)を、溶媒系の除去、例えば蒸発濃縮により単離して、方法ステップd)による生成物混合物を後処理する。
【0187】
好ましくは、金属Mg、Ca、Al、Zn、Ti、Sn、Zr、CeまたはFeのモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸塩(III)は任意選択で、
0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜1重量%の残留水分、
0.1〜2000μm、好ましくは10〜500μmの平均粒径、
80〜800g/l、好ましくは200〜700g/lの嵩密度、
0.5〜10、好ましくは1〜5のPfrengle流動性を有する。
【0188】
特に好ましくは、成形体、フィルム、フィラメントおよび繊維は、請求項1〜13のいずれか一つに従って製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸/そのエステル/塩5〜30重量%、ポリマーまたはその混合物5〜90重量%、添加剤5〜40重量%および充填剤5〜40重量%を含有する(ここで、成分の合計は常に100重量%である)。
【0189】
好ましくは、添加剤は、酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤、さらなる難燃剤、熱安定剤、耐衝撃性改良剤、加工助剤、滑剤、光安定剤、滴下防止剤(Antidrippingmittel)、相容剤、強化剤、充填剤、核生成剤、成核剤、レーザーマーキング用の添加剤、加水分解安定剤、鎖延長剤、着色顔料、軟化剤および/または可塑剤である。
【0190】
モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、そのエステルおよび塩(III)0.1〜90重量%ならびにさらなる添加剤、特に好ましくはジオール0.1〜50重量%を含有する難燃剤が好ましい。
【0191】
好ましい添加剤はまた、アルミニウム三水和物、酸化アンチモン、臭素化芳香族または脂環式炭化水素、フェノール、エーテル、クロロパラフィン、ヘキサクロロシクロペンタジエン付加物、赤リン、メラミン誘導体、シアヌル酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムおよび水酸化マグネシウムである。好ましい添加剤はまた、さらなる難燃剤、特にジアルキルホスフィン酸の塩である。
【0192】
とりわけ本発明は、本発明によるモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、そのエステルおよび塩(III)の難燃剤としての、またはポリエステル、ポリスチレンもしくはポリアミドなどの熱可塑性ポリマーおよび不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンもしくはアクリレートなどの熱硬化性ポリマーのための難燃剤を製造する際の中間体としての使用に関する。
【0193】
適切なポリエステルは、ジカルボン酸およびそのエステルおよびジオールに、および/またはヒドロキシカルボン酸またはその対応するラクトンに由来するものである。テレフタル酸およびエチレングリコール、プロパン−1,3−ジオールおよびブタン−1,3−ジオールを使用することが特に好ましい。
【0194】
適切なポリエステルは特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(Celanex(登録商標)2500、Celanex(登録商標)2002、Celanese社;Ultradur(登録商標)、BASF社)、ポリ−1,4−ジメチロールシクロヘキサンテレフタレート、ポリヒドロキシベンゾエート、ならびにヒドロキシル末端基を有するポリエーテルに由来するブロックポリエーテルエステル;さらに、ポリカーボネートまたはMBSで改変されたポリエステルである。
【0195】
永続的な難燃性を有する合成線状ポリエステルは、リン含有鎖メンバー(Kettenglieder)として、本発明によるモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸およびそのエステルのジカルボン酸成分、ジオール成分から、または本発明の方法に従って製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸およびそのエステルから構成される。リン含有鎖リンカーは、ポリエステルのジカルボン酸成分の2〜20重量%を占める。ポリエステル中で生じるリン含量は、好ましくは0.1〜5重量%、特に好ましくは0.5〜3重量%である。
【0196】
下記のステップを、本発明に従って製造された化合物を用いて、またはそれを加えて実施することができる。
【0197】
好ましくは、遊離ジカルボン酸およびジオールから出発して、まず直接エステル化し、次いで、重縮合させることにより成形材料を製造する。
【0198】
好ましくは、ジカルボン酸エステル、特にジメチルエステルから出発して、まずエステル交換し、次いで、このために慣用の触媒を使用して重縮合させる。
【0199】
好ましくは、ポリエスエルを製造する際に、慣用の触媒の他に、慣用の添加剤(架橋剤、艶消剤および安定剤、成核剤、染料および充填剤など)を加えることができる。
【0200】
ポリエステルを製造する際のエステル化および/またはエステル交換は、好ましくは100〜300℃、特に好ましくは150〜250℃の温度で行う。
【0201】
好ましくは、ポリエステルを製造する際の重縮合は、0.1〜1.5mbarの圧力および150〜450℃、特に好ましくは200〜300℃の温度で行う。
【0202】
本発明に従って製造された難燃性ポリエステル成形材料は、好ましくは、ポリエステル成形体中で使用する。
【0203】
好ましいポリエステル成形体は、ジカルボン酸成分として主にテレフタル酸およびジオール成分として主にエチレングリコールを含有するフィラメント、繊維、フィルムおよび成形体である。
【0204】
好ましくは、難燃性ポリエステルから製造されたフィラメントおよび繊維中で生じるリン含量は、0.1〜18%、好ましくは0.5〜15重量%であり、フィルムの場合、0.2〜15%、好ましくは0.9〜12重量%である。
【0205】
適切なポリスチレンは、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)および/またはポリ(アルファ−メチルスチレン)である。
【0206】
適切なポリスチレンは、好ましくは、例えばスチレン−ブタジエン、スチレン−アクリロニトリル、スチレン−アルキルメタクリレート、スチレン−ブタジエン−アルキルアクリレートおよびスチレン−ブタジエン−アルキルメタクリレート、スチレン−マレイン酸無水物、スチレン−アクリロニトリル−メチルアクリレートなどのスチレンまたはα−メチルスチレンとジエンまたはアクリル酸誘導体とのコポリマー;スチレンコポリマーと、例えばポリアクリレート、ジエンポリマーまたはエチレン−プロピレン−ジエンターポリマーなど他のポリマーとからなる高耐衝撃性の混合物;および例えばスチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンまたはスチレン−エチレン/プロピレン−スチレンなどのスチレンのブロックコポリマーである。
【0207】
好ましくは、適切なポリスチレンは、例えばポリブタジエン上のスチレン、ポリブタジエン−スチレンコポリマーまたはポリブタジエン−アクリロニトリルコポリマー上のスチレン、ポリブタジエン上のスチレンおよびアクリロニトリル(またはメタアクリロニトリル);ポリブタジエン上のスチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート;ポリブタジエン上のスチレンおよびマレイン酸無水物;ポリブタジエン上のスチレン、アクリロニトリルおよびマレイン酸無水物またはマレイン酸イミド;ポリブタジエン上のスチレンおよびマレイン酸イミド、ポリブタジエン上のスチレンおよびアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレート、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー上のスチレンおよびアクリロニトリル、ポリアルキルアクリレートまたはポリアルキルメタクリレート上のスチレンおよびアクリロニトリル、アクリレート−ブタジエンコポリマー上のスチレンおよびアクリロニトリル、ならびにこれらの混合物(例えばいわゆるABS、MBS、ASAまたはAESポリマーとしても知られている)などスチレンまたはα−メチルスチレンのグラフトコポリマーでもある。
【0208】
好ましくは、ポリマーは、ポリアミド2,12、ポリアミド4、ポリアミド4,6、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,9、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド6,66、ポリアミド7,7、ポリアミド8,8、ポリアミド9,9、ポリアミド10,9、ポリアミド10,10、ポリアミド11、ポリアミド12など、ジアミンおよびジカルボン酸に、および/またはアミノカルボン酸または対応するラクタムに由来する、ポリアミドおよびコポリアミドである。このようなポリアミドは、例えば、Nylon(登録商標)(DuPont社)、Ultramid(登録商標)(BASF社)、Akulon(登録商標)K122(DSM社)、Zytel(登録商標)7301(DuPont社);Durethan(登録商標)B29(Bayer社)およびGrillamid(登録商標)(Ems Chemie社)という商品名で知られている。
【0209】
m−キシレン、ジアミンおよびアジピン酸から出発した芳香族ポリアミド;ヘキサメチレンジアミンおよびイソフタル酸および/またはテレフタル酸および場合により改変剤としてのエラストマーから製造されるポリアミド、例えばポリ−2,4,4−トリメチルヘキサメチレン−テレフタルアミドまたはポリ−m−フェニレンイソフタルアミド、上記ポリアミドと、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、イオノマーまたは化学的に結合またはグラフトされたエラストマーとの、またはポリエーテルとの、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリテトラメチレングリコールなどとのブロックコポリマーも適している。さらに、EPDMまたはABSで改変されたポリアミドまたはコポリアミド;および加工の間に縮合されたポリアミド(「RIMポリアミド系」)も適している。
【0210】
請求項1〜13のいずれか一つに従って製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸/そのエステル/その塩は、好ましくは、成形材料中で使用し、これをさらに、ポリマー成形体を製造するために使用する。
【0211】
特に好ましくは、難燃性成形材料は、請求項1〜13のいずれか一つに従って製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩またはエステル5〜30重量%、ポリマーまたはその混合物5〜90重量%、添加剤5〜40重量%および充填剤5〜40重量%(ここで、成分の合計は常に100重量%である)を含有する。
【0212】
本発明は、請求項1〜13のいずれか一つに従って製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩またはエステルを含有する難燃剤にも関する。
【0213】
さらに本発明は、本発明に従って製造された金属Mg、Ca、Al、Zn、Ti、Sn、Zr、CeまたはFeのモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸塩(III)を含有するポリマー成形材料ならびにポリマー成形体、ポリマーフィルム、ポリマーフィラメントおよびポリマー繊維に関する。
【発明を実施するための形態】
【0214】
本発明を下記の例により詳述する。
【0215】
難燃性ポリマー成形材料および難燃性ポリマー成形体の製造、加工および試験
【0216】
難燃性成分を、ポリマーペレットおよび場合によっては添加剤と混合し、二軸スクリュー押出機(Leistritz LSM(登録商標)30/34型)に230〜260℃(PBT−GV)または260〜280℃(PA66−GV)の温度で加える。均質なポリマーストランドを押し出し、水浴中で冷却し、次いで、ペレット化した。
【0217】
十分に乾燥させた後に、成形材料を射出成形装置(Aarburg Allrounder型)で、240〜270℃(PBT−GV)または260〜290℃(PA66−GV)の成形温度で加工して、試験片にした。試験片をUL94試験(Underwriter Laboratories)により、可燃性(難燃性)に関して試験し、等級付けする。
【0218】
各混合物からの試験片で、1.5mm厚の試験片を用いて燃焼等級UL94(Underwriter Laboratories)を決定した。
【0219】
UL94には、下記の燃焼等級がある。
V−0:10秒より長い残炎がなく、10回の点火での残炎時間の合計が50秒以下であり、火炎滴下がなく、試験品が完全には燃え尽きず、点火の終了後に30秒より長い試験片の残光がない
V−1:点火の終了後に30秒より長い残炎がなく、10回の点火での残炎時間の合計が250秒以下であり、点火の終了後に60秒より長い試験片の残光がなく、他の基準はV−0と同様
V−2:燃焼滴下により綿が着火、他の基準はV−1と同様
等級外(nkl):燃焼等級V−2を満たさない。
【0220】
複数の試験片でさらに、LOI値を測定した。LOI値(限界酸素指数)を、ISO4589に従って決定する。ISO4589では、LOIは、酸素および窒素の混合物中においてプラスチックの燃焼がかろうじてなお維持される最低酸素濃度(体積パーセント)に対応する。LOI値が高いほど、被験材料は燃えにくい。
LOI 23 可燃性
LOI 24〜28 条件付きで可燃性
LOI 29〜35 耐燃性
LOI >36 特に耐燃性
【0221】
使用される化学薬品および略語
VE水 完全脱塩水
AIBN アゾ−ビス−(イソブチロニトリル)、(WAKO Chemicals GmbH社)
WakoV65 2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(WAKO Chemicals GmbH社)
Deloxan(登録商標)THP II 金属捕捉剤(Evonik Industries AG社)
【0222】
例1
室温で、撹拌機および強力凝縮器(intensivkuehler)を備えた三つ口フラスコにまず水188gを投入し、撹拌および窒素導通下で、脱ガスする。次いで、窒素下で、硫酸パラジウム(II)0.2mgおよびトリス(3−スルホフェニル)ホスフィン三ナトリウム塩2.3mgを加え、撹拌し、次いで、水66g中のホスフィン酸66gを加える。反応溶液を2lBuechi反応器に移し、撹拌しながら加圧下でエチレンを入れ、反応混合物を80℃に加熱する。エチレン28gが吸収された後に冷却し、遊離のエチレンを排出する。反応混合物から、回転蒸発器で溶媒を除去する。残渣にVE水100gを加え、室温、窒素雰囲気下で撹拌し、次いで、濾過し、濾液をトルエンで抽出し、その後、回転蒸発器で溶媒を除去し、得られたエチル亜ホスホン酸を回収する。こうして、エチル亜ホスホン酸92g(理論量の98%)が得られる。
【0223】
例2
例1におけると同様にして、ホスフィン酸99g、ブタノール396g、エチレン42g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム6.9mg、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン9.5mgを反応させ、次いで、精製のために、Deloxan(登録商標)THP IIを充填したカラムに通し、次いで、n−ブタノールを再び加える。80〜110℃の反応温度で、生じた水を共沸蒸留により除去する。生成物(エチル亜ホスホン酸ブチルエステル)を減圧下での蒸留により精製する。こうして、エチル亜ホスホン酸ブチルエステル189g(理論量の84%)が得られる。
【0224】
例3
例1におけると同様にして、ホスフィン酸198g、水198g、エチレン84g、硫酸パラジウム(II)6.1mg、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2,7−スルホナトキサンテン二ナトリウム塩25.8mgを反応させ、次いで、精製のために、Deloxan(登録商標)THP IIを充填したカラムに通し、その後、n−ブタノールを加える。80〜110℃の反応温度で、生じた水を共沸蒸留により除去する。生成物(エチル亜ホスホン酸ブチルエステル、374g(理論量の83%))を減圧下での蒸留により精製する。
【0225】
例4
ガス入口管、温度計、強力撹拌機およびガス燃焼を伴う還流凝縮器を備えた500ml五つ口フラスコに、まずエチル亜ホスホン酸94g(1mol)(例1におけると同様にして製造)を投入する。室温で、エチレンオキシドを導入する。冷却下で、反応温度を70℃に調節し、80℃でさらに1時間反応させる。エチレンオキシド吸収は、65.7gである。生成物の酸価は、1mgKOH/g未満である。(エチル亜ホスホン酸2−ヒドロキシエチルエステル)129g(理論量の94%)が、無色透明の生成物として得られる。
【0226】
例5
エチル亜ホスホン酸564g(6mol)を水860gに溶かし、温度計、還流凝縮器、強力撹拌機および滴下漏斗を備えた5l五つ口フラスコにまず投入する。反応混合物を100℃に加熱した後に、大気圧で、酢酸ビニル602g(7mol)および5%ペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液500g(酢酸ビニルに対して1.5mol%)を1時間以内で滴加する。続いて、水を真空下で留去する。残渣をテトラヒドロフランに入れ、不溶性の塩を濾別する。濾液の溶媒を真空中で分離する。クロマトグラフィーによる精製の後に、エチル−(2−アセトキシエチル)ホスフィン酸1.026g(理論量の95%)がオイルとして得られる。
【0227】
例6
ブタノール200g中のエチル亜ホスホン酸94g(1mol)(例1におけると同様にして製造)および酢酸ビニル86g(1mol)を撹拌機、還流凝縮器、温度計および窒素入口を備えた四つ口丸底フラスコ内のエタノール200ml中にまず投入し、加温する。1時間以内、約100℃で、5%AlBNのエタノール溶液98.4gを滴加する。その後、溶媒を真空中で留去した。クロマトグラフィーによる精製の後に、エチル−(2−アセトキシエチル)ホスフィン酸215g(理論量の91%)が得られる。
【0228】
例7
エチル亜ホスホン酸ブチルエステル150g(1mol)(例2に従って製造)および酪酸ビニル137g(1.2mol)をトルエン217g中で約100℃に加温する。撹拌下で、トルエン中10%のWakoV65溶液124gを配量添加する。溶媒を真空中で留去する。クロマトグラフィーによる精製の後に、エチル−(2−ブチルオキシエチル)ホスフィン酸ブチルエステル227g(理論量の86%)が得られる。
【0229】
例8
撹拌装置に、エチル(2−アセトキシエチル)ホスフィン酸(例6におけると同様にして製造)180g(1mol)を濃塩酸200ml(2mol)に溶かす。混合物を十分に撹拌しながら、約90℃に加温し、この温度で、約8時間反応させた。続いて、水を真空中で完全に留去する。残渣を酢酸に入れ、抽出する。濾液の溶媒を真空中で分離する。エチル−(2−ヒドロキシエチル)ホスフィン酸143g(理論量の94%)がオイルとして得られる。
【0230】
例9
撹拌装置に、ブタノール150g、水65g、水酸化ナトリウム150g(3.75mol)およびエチル(2−ブチルオキシエチル)−ホスフィン酸ブチルエステル330g(1.25mol)(例7におけると同様にして製造)をまず投入する。混合物を十分に撹拌しながら約120℃に加温し、この温度で約6時間反応させた。続いて、水250mlを加え、ブタノールを、蒸留により反応混合物から除去した。さらなる水500mlを加えた後に、濃硫酸約184g(1.88mol)を加えることにより、混合物を中和した。続いて、水を真空中で留去する。残渣をテトラヒドロフランに入れ、抽出する。不溶性の塩を濾別する。濾液の溶媒を真空中で留去する。エチル−(2−ヒドロキシエチル)ホスフィン酸220g(理論量の98%)がオイルとして得られる。
【0231】
例10
エチル−(2−ヒドロキシエチル)ホスフィン酸13.8g(0.1mol)(例8におけると同様にして製造)を水150mlに溶かし、2NのNaOH溶液を用いてpH9にする。続いて、Pt5%およびBi1%を含む活性炭0.45gを加え、この懸濁液を70℃に加温し、空気(10l/h)を懸濁液に導通させる。この際、懸濁液のpHを、2NのNaOH溶液を加えることによりpH=9に保持する。反応の終了後に、反応溶液から触媒を濾別し、洗浄し、塩酸で酸性にし、水を真空中で留去する。残渣をテトラヒドロフランに入れ、抽出する。不溶性の塩を濾別する。2−(エチルヒドロキシホスフィニル)酢酸14.0g(理論量の92%)が無色の固体として得られる。
【0232】
例11
エチル−(2−ヒドロキシエチル)ホスフィン酸13.8g(0.1mol)(例9におけると同様にして製造)を水150mlに溶かし、2NのNaOH溶液を用いてpH9に調節する。続いて、Pd5%およびBi1%を含む活性炭0.25gを加え、この懸濁液を70℃に加温し、30%過酸化水素溶液を1時間当たり1モル当量の流速で懸濁液に導通させる。この際、懸濁液のpHを、2NのNaOH溶液を加えることによりpH=9に保持する。反応の終了後に、反応溶液から触媒を濾別し、洗浄し、塩酸で酸性にし、水を真空中で留去する。残渣をテトラヒドロフランに入れ、抽出する。不溶性の塩を濾別する。2−(エチルヒドロキシホスフィニル)酢酸14.0g(理論量の92%)が無色の固体として得られる。
【0233】
例12
アセトン500ml中のエチル−(2−ヒドロキシエチル)ホスフィン酸13.8g(0.1mol)(例8におけると同様にして製造)に、Jones試薬0.11mol(水36.7mlおよび濃硫酸11.0ml中の三酸化クロム12.7g)を0℃で滴加した。反応混合物をさらに、氷冷しながら3時間半、および室温で1時間撹拌した。イソプロパノール12mlを加えた後に、氷水を加える。続いて、易揮発性成分を真空中で留去する。残渣をテトラヒドロフランに入れ、抽出する。不溶性の塩を濾別した。濾液の溶媒を真空中で分離し、残渣をアセトンから再結晶化させた。2−(エチルヒドロキシホスフィニル)酢酸12.3g(理論量の81%)が無色の固体として得られる。
【0234】
例13
2−(エチルヒドロキシホスフィニル)酢酸304g(2mol)の水溶液(例10に従って製造)を50%水酸化ナトリウム水溶液約160gと反応させ、水を真空中で留去する。2−(エチルヒドロキシホスフィニル)酢酸ナトリウム塩384g(理論量の98%)が無色の固体として得られた。
【0235】
例14
2−(エチルヒドロキシホスフィニル)酢酸912g(6mol)(例12におけると同様にして製造)を水860gに溶かし、温度計、還流凝縮器、強力撹拌機および滴下漏斗を備えた5l五つ口フラスコにまず投入し、50%水酸化ナトリウム溶液約960g(12mol)で中和する。85℃で、Al(SO・14HOの46%水溶液2583gである混合物を加える。続いて、得られた固体を濾別し、熱水で洗浄し、130℃、真空で乾燥させる。収量:無色の塩としての2−(エチルヒドロキシホスフィニル)酢酸アルミニウム(III)塩958g(理論量の95%)
【0236】
例15
2−(エチルヒドロキシホスフィニル)酢酸152g(1mol)(例11におけると同様にして製造)およびチタンテトラブチラート170gをトルエン500ml中で40時間還流加熱する。この際に生じるブタノールをトルエン成分と共に時々留去する。生じた溶液から、続いて溶媒を除去する。2−(エチルヒドロキシホスフィニル)酢酸チタン塩167g(理論量の96%)が得られる。
【0237】
例16
2−(エチルヒドロキシホスフィニル)酢酸456g(3mol)(例10におけると同様にして製造)を85℃で、トルエン400mlに溶かし、ブタノール888g(12mol)を加える。約100℃の反応温度で、生じた水を共沸蒸留により除去する。生成物2−(エチルブトキシホスフィニル)酢酸ブチルエステル(705g(理論量の89%))を減圧下で蒸留により精製する。
【0238】
例17
2−(エチルヒドロキシホスフィニル)酢酸456g(3.0mol)(例11におけると同様にして製造)を80℃でトルエン400mlに溶かし、1,4−ブタンジオール594g(6.6mol)を加え、水分離器を備えた蒸留装置中、約100℃で4時間エステル化させる。エステル化が終了した後に、トルエンを真空中で分離する。2−(エチル−4−ヒドロキシブチルホスフィニル)酢酸4−ヒドロキシブチルエステル781g(理論量の88%)が無色のオイルとして得られる。
【0239】
例18
2−(エチルブトキシホスフィニル)酢酸ブチルエステル528g(2mol)(例16におけると同様にして製造)にエチレングリコール155g(2.5mol)およびチタニルシュウ酸カリウム0.4gを加え、200℃で2時間撹拌する。徐々に排気することにより、易揮発性成分を留去する。リン12.2%を含有する2−(エチル−2−ヒドロキシエトキシホスフィニル)酢酸2−ヒドロキシエチルエステル494g(理論量の98%)が得られる。
【0240】
例19
2−(エチル−2−ヒドロキシエトキシホスフィニル)酢酸2−ヒドロキシエチルエステル25.4g(例18におけると同様にして製造)に、テレフタル酸290g、エチレングリコール188g、酢酸亜鉛0.34gを加え、200℃に2時間加熱する。次いで、リン酸三ナトリウム無水物0.29gおよび酸化アンチモン(III)0.14gを加え、280℃に加熱し、その後、排気する。得られた溶融物(355g、リン含量0.9%)から、酸素指数(LOI)をISO4589−2により測定するため、および火炎試験UL94(Underwriter Laboratories)のための厚さ1.6mmの試験片を射出成形する。こうして得られた試験片は38%のLOIを示し、UL94による火炎等級V−0を満たした。2−(エチル−2−ヒドロキシエトキシホスフィニル)−酢酸2−ヒドロキシエチルエステルを含有しない対応する試験片は、僅か31%のLOIを示し、UL94による火炎等級V−2を満たすのみであった。したがって、2−(エチル−2−ヒドロキシエトキシホスフィニル)−酢酸2−ヒドロキシエチルエステルを含有するポリエステル成形体は明らかに、難燃特性を示す。
【0241】
例20
2−(エチルヒドロキシホスフィニル)−酢酸12.8g(例10におけると同様にして製造)に、1,3−プロピレングリコール12.9gを加え、エステル化で生じた水を160℃で除去する。次いで、テレフタル酸ジメチル378g、1,3−プロパンジオール152g、チタン酸テトラブチル0.22gおよび酢酸リチウム0.05gを加え、混合物を撹拌しながら130〜180℃に2時間加熱し、その後、減圧下で270℃に加熱する。ポリマー(434g)は、リン0.6%を含有し、LOIは34である。
【0242】
例21
2−(エチルヒドロキシホスフィニル)−酢酸12.8g(例12におけると同様にして製造)に、テレフタル酸ジメチル367g、1,4−ブタンジオール170g、チタン酸テトラブチル0.22gおよび酢酸リチウム0.05gを加え、混合物を撹拌しながら、まず130〜180℃に2時間、次いで、減圧下で270℃に加熱する。ポリマー(424g)はリン0.6%を含有し、LOIは34であり、未処理のポリブチレンテレフタレートのLOIは23である。
【0243】
例22
還流凝縮器、撹拌機、温度計および窒素入口を備えた250ml五つ口フラスコで、エポキシ値0.55mol/100gを有するビスフェノール−A−ビスグリシジルエーテル100g(Beckopox EP 140、Solutia社)および2−(エチルヒドロキシホスフィニル)−酢酸19.8g(0.13mol)(例12においてと同様に製造)を撹拌しながら、最高150℃に加熱する。30分後に、透明な溶融物が生じる。150℃でさらに1時間撹拌した後に、溶融物を冷却し、乳鉢で破砕する。リン含量3.3重量%を有する白色の粉末118.5gが得られる。
【0244】
例23
撹拌機、水分離器、温度計、還流凝縮器および窒素入口を備えた2lフラスコで、フタル酸無水物29.4g、マレイン酸無水物19.6g、プロピレングリコール24.8g、2−(エチル−2−ヒドロキシエチルホスフィニル)−酢酸2−ヒドロキシエチルエステル17.7g(例18におけると同様にして製造)、キシレン20gおよびヒドロキノン50mgを撹拌しながら、および窒素を通過させながら100℃に加熱する。発熱反応が始まったら、加熱を外す。反応が和らいだ後に、約190℃でさらに撹拌する。水14gを分離した後に、キシレンを留去し、ポリマー溶融物を冷却する。2.3重量%のリン含量を有する白色の粉末88.7gが得られる。
【0245】
例24
ポリブチレンテレフタレート50重量%、2−(エチルヒドロキシホスフィニル)−酢酸アルミニウム(III)塩20重量%(例14におけると同様にして製造)とガラス繊維30重量%の混合物を二軸スクリュー押出機(Leistritz LSM 30/34型)で230〜260℃の温度で配合して、ポリマー成形材料にする。均質なポリマーストランドを押し出し、水浴中で冷却し、続いてペレット化する。乾燥の後に、成形材料を射出成形装置(Aarburg Allrounder型)で240〜270℃で加工してポリマー成形体にすると、UL−94等級V−0と決定される。
【0246】
例25
ポリアミド6.6 53重量%、ガラス繊維30重量%、2−(エチルヒドロキシホスフィニル)−酢酸チタン塩17重量%(例15におけると同様にして製造)の混合物を二軸スクリュー押出機(Leistritz LSM 30/34型)で配合してポリマー成形材料にする。均質なポリマーストランドを押し出し、水浴中で冷却し、続いてペレット化する。乾燥の後に、成形材料を射出成形装置(Aarburg Allrounder型)で260〜290℃で加工してポリマー成形体にすると、UL−94等級V−0が得られる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、そのエステルおよび塩を製造する方法において、
a)ホスフィン酸源(I)を
【化1】

オレフィン(IV)と
【化2】

触媒Aの存在下で反応させて、アルキル亜ホスホン酸、その塩またはエステル(II)にすること、
【化3】

b)こうして得られたアルキル亜ホスホン酸、その塩またはエステル(II)をカルボン酸のビニルエステル(V)と
【化4】

触媒Bの存在下で反応させて、一官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(VI)にすること、
【化5】

c)前記一官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(VI)を触媒Cの存在下で反応させて、一官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(VII)にすること、および
【化6】

d)前記一官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(VII)を、酸化剤と、または酸化剤および水と、または触媒Dの存在下で酸素および水と反応させて、モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸誘導体(III)にすることを特徴とする方法
【化7】

[式中、R、R、R、R、R、R、Rは同じか、または異なり、互いに独立にH、C〜C18アルキル、C〜C18アリール、C〜C18アラルキル、C〜C18アルキル−アリール、CN、CHO、OC(O)CHCN、CH(OH)C、CHCH(OH)CH、9−アントラセン、2−ピロリドン、(CHOH、(CHNH、(CHNCS、(CHNC(S)NH、(CHSH、(CHS−2−チアゾリン、(CHSiMe、C(O)R、(CHC(O)R、CH=CHRおよび/またはCH=CH−C(O)Rを意味し(ここで、Rは、C〜C−アルキルまたはC〜C18−アリールであり、mは、0〜10の整数を表す)、XおよびYは同じか、または異なり、互いに独立にH、C〜C18アルキル、C〜C18アリール、C〜C18アラルキル、C〜C18アルキル−アリール、(CHOH、CH−CHOH−CHOH、(CHO(CHH、(CH−CH(OH)−(CHH、(CH−CHO)H、(CH−C[CH]HO)H、(CH−C[CH]HO)(CH−CHO)H、(CH−CHO)(CH−C[CH]HO)H、(CH−CHO)−アルキル、(CH−C[CH]HO)−アルキル、(CH−C[CH]HO)(CH−CHO)−アルキル、(CH−CHO)(CH−C[CH]HO)O−アルキル、(CH−CH=CH(CHH、(CHNHおよび/または(CHN[(CHH](ここで、kは、0〜10の整数を意味する)、および/またはMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Zn、Ce、Bi、Sr、Mn、Cu、Ni、Li、Na、K、H、および/またはプロトン化窒素塩基を表し、前記触媒AおよびDは、遷移金属および/または遷移金属化合物および/または触媒系であり、前記触媒系は、遷移金属および/または遷移金属化合物および少なくとも1種のリガンドから構成され、前記触媒Bは、ペルオキシド形成化合物および/またはペルオキソ化合物および/またはアゾ化合物であり、前記触媒Cは、酸または塩基である]。
【請求項2】
ステップd)に従って得られた前記モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩またはそのエステル(III)を続いてステップe)で、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Zn、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kの金属化合物および/またはプロトン化窒素塩基と反応させて、これらの金属および/または窒素化合物の対応するモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸塩(III)にすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa)に従って得られた前記アルキル亜ホスホン酸、その塩またはエステル(II)および/またはステップb)に従って得られた前記一官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩またはエステル(VI)および/またはステップc)に従って得られた前記一官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩またはエステル(VII)および/またはステップd)に従って得られた前記モノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩またはエステル(III)および/またはそれぞれ生じるその反応溶液を、アルキレンオキシドまたはアルコールM−OHおよび/またはM’−OHでエステル化し、その時々に生じるアルキル亜ホスホン酸エステル(II)、一官能化ジアルキルホスフィン酸エステル(VI)および/または(VII)および/またはモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸エステル(III)に、さらなる反応ステップb)、c)、d)またはe)を施すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基C〜C18アリール、C〜C18アラルキルおよびC〜C18アルキル−アリールが、SO、COCH、OH、CHOH、CHSO、PO、NH、NO、OCH、SHおよび/またはOC(O)CHで置換されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
、R、R、R、R、R、Rが、同じかまたは異なり、互いに独立にH、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチルおよび/またはフェニルを意味することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
XおよびYが、同じかまたは異なり、それぞれH、Ca、Mg、Al、Zn、Ti、Fe、Ce、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、フェニル、エチレングリコール、プロピルグリコール、ブチルグリコール、ペンチルグリコール、ヘキシルグリコール、アリルおよび/またはグリセリンを意味することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記遷移金属および/または遷移金属化合物が、第1、第7および第8亜族からのものであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記遷移金属および/または遷移金属化合物が、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウムおよび/または金であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記触媒Bが、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化リチウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソホウ酸カリウム、過酢酸、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチルおよび/またはペルオキソ二硫酸、および/またはアゾジイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)−ジヒドロクロリドおよび/または2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレン−イソブチルアミジン)ジヒドロクロリドであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記触媒Cが、金属、金属水素化物、金属水酸化物および金属アルコキシド、ならびに鉱酸、例えば硫酸、硝酸、塩酸、リン酸またはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記酸化剤が、過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、三酸化クロム、重クロム酸カリウム、重クロム酸ピリジン、クロロクロム酸ピリジン、Collins試薬、Jones試薬、Corey−Gilman−Ganem試薬、(Dess−Martin)ペルヨージナン、o−ヨードキシ安息香酸、四酸化ルテニウム、二酸化ルテニウム、テトラ−n−プロピル−ペルルテネート、三塩化ルテニウム/過ヨウ素酸ナトリウム、二酸化ルテニウム/過ヨウ素酸ナトリウム、塩素、次亜塩素酸塩およびペルオキソ化合物であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記カルボン酸のビニルエステル(V)が、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル、ケイ皮酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、酢酸1−プロペニル、プロピオン酸1−プロペニル、酪酸1−プロペニル、ピバル酸1−プロペニル、安息香酸1−プロペニル、ケイ皮酸1−プロペニル、ステアリン酸1−プロペニル、ラウリン酸1−プロペニル、酢酸1−ブテニル、プロピオン酸1−ブテニル、酪酸1−ブテニル、ピバル酸1−ブテニル、安息香酸1−ブテニル、ケイ皮酸1−ブテニル、ステアリン酸1−ブテニル、ラウリン酸1−ブテニルであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
一般式M−OHの前記アルコールが、C〜C18の炭素鎖長を有する直鎖または分枝鎖、飽和および不飽和の一価有機アルコールであり、一般式M’−OHの前記アルコールが、C〜C18の炭素鎖長を有する直鎖または分枝鎖、飽和および不飽和の多価有機アルコールであることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一つの記載に従って製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、そのエステルおよび塩の、さらなる合成のための中間生成物として、結合剤として、エポキシ樹脂、ポリウレタンおよび不飽和ポリエステル樹脂を硬化させる際の架橋剤または促進剤として、ポリマー安定剤として、農薬として、ヒトおよび動物用の治療薬または治療薬添加剤として、金属イオン封鎖剤として、鉱油添加剤として、防食剤として、洗濯洗剤および洗浄剤用途において、ならびに電子用途においての使用。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか一つの記載に従って製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩およびエステルの、難燃剤、特にクリヤコートおよび発泡性防炎塗料用の難燃剤、木材および他のセルロース含有製品用の難燃剤として、ポリマー用の反応性および/または非反応性難燃剤として、難燃性ポリマー成形材料を製造するため、難燃性ポリマー成形体を製造するため、および/または含浸によりポリエステルおよびセルロース製の純粋および混紡織物を難燃性にするための使用。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか一つの記載に従って製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩またはエステル0.5〜45重量%、熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマーまたはその混合物0.5〜95重量%、添加剤0〜55重量%ならびに充填剤または強化材0〜55重量%(ここで、成分の合計は100重量%である)を含有する難燃性熱可塑性または熱硬化性ポリマー成形材料。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか一つの記載に従って製造されたモノカルボキシ官能化ジアルキルホスフィン酸、その塩またはエステル0.5〜45重量%、熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマーまたはその混合物0.5〜95重量%、添加剤0〜55重量%ならびに充填剤または強化材0〜55重量%(ここで、成分の合計は100重量%である)を含有する難燃性熱可塑性または熱硬化性ポリマー成形体、ポリマーフィルム、ポリマーフィラメントおよびポリマー繊維。

【公表番号】特表2012−510479(P2012−510479A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538847(P2011−538847)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007136
【国際公開番号】WO2010/063342
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】