説明

カロチノイド含有組成物及びその製造方法

【課題】保存安定性に優れたカロチノイド含有組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】カロチノイド類と、アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種と、乳化剤とを含有し、前記アスコルビン酸及びその誘導体から選択された少なくとも1種が、前記カロチノイド類の総モル数に対して、アスコルビン酸換算で30倍モル以上190倍モル以下の範囲となる量で含有され、且つ、pHが6.5以上9.0以下の範囲であるカロチノイド含有組成物、及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カロチノイド含有組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カロチノイドの高い機能性に着目して、カロチノイドを含有する種々の組成物が提案されている。一般にカロチノイドは難溶性の素材として広く知られていることから、通常、乳化組成物の形態が採用されている。
カロチノイドを含む乳化組成物として例えば、特許文献1には、カロチノイド類の吸収性を高めるために、カロチノイド類を油脂に溶解してなる油相をポリグリセリン脂肪酸エステル及びレシチンの存在下に多価アルコールを含む水相に乳化してなり、かつ上記油相の平均粒子径が100nm以下であるカロチノイド含有組成物が開示されている。
【0003】
一方、特許文献2には、カロチノイド系色素の退色を十分に防止することを目的として、可溶性卵殻膜と、水溶性抗酸化剤とを含有するカロチノイド系色素含有材料が開示されている。また、特許文献3には、アスコルビン酸が不溶性である分散剤中において、アスコルビン酸塩の固体粒子を、カロチノイド、レチノイド及び不飽和脂肪酸から選択された酸化感受性物質ための酸化防止剤として使用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−157159号公報
【特許文献2】特許3846054号公報
【特許文献3】特表2006−502127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カロチノイド含有組成物については、更なる保存安定性の向上が望まれている。保存安定性の低下の問題は、カロチノイド含有組成物が、微細な乳化粒子を含む乳化組成物や粉末組成物である場合に著しい。カロチノイド類の中でもリコピン及びフコキサンチンは、不安定で酸化分解を受け易いことから、このようなカロチノイド類を含有するカロチノイド含有組成物における保存安定性の低下は特に問題となる。
しかしながら、かかる保存安定性の問題を解決したカロチノイド含有組成物は、未だ提供されていないのが現状である。
【0006】
従って、本発明の目的は、保存安定性に優れたカロチノイド含有組成物及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の通りである。
[1] カロチノイド類と、アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種と、乳化剤とを含有し、前記アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種が、前記カロチノイド類の総モル数に対して、アスコルビン酸換算で30倍モル以上190倍モル以下の範囲となる量で含有され、且つ、pHが6.5以上9.0以下の範囲であるカロチノイド含有組成物。
[2] 前記カロチノイド類が、リコピン及びフコキサンチンから選択された少なくとも1種である[1]に記載のカロチノイド含有組成物。
[3] 前記アスコルビン酸及びその誘導体から選択された少なくとも1種が、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、及びL−アスコルビン酸カルシウムから選択された少なくとも1種である[1]又は[2]に記載のカロチノイド含有組成物。
[4] 更に、芳香族カルボン酸類、ケイ皮酸類、及びエラグ酸類からなるフェノール系酸化防止剤、並びに、トコフェロール類から選択された少なくとも1種を含有する[1]〜[3]のいずれか1項に記載のカロチノイド含有組成物。
[5] 更に、水溶性包括剤を含有する[1]〜[4]のいずれか1項に記載のカロチノイド含有組成物。
[6] 更に、グリセリン単位が1〜6であり脂肪酸単位の数が1〜6であって、グリセリン単位の水酸基を少なくとも1つ有する(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルを含有する[1]〜[5]のいずれか1項に記載のカロチノイド含有組成物。
[7] 平均粒子径が50nm〜300nmの範囲であり、前記カロチノイド類を含む分散粒子を含有する水中油型乳化組成物である[1]〜[6]のいずれか1項に記載のカロチノイド含有組成物。
[8] 前記水中油型の乳化組成物における前記分散粒子が、更に、前記アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種を含む[7]に記載のカロチノイド含有組成物。
[9] 粉末組成物である[1]〜[6]のいずれか1項に記載のカロチノイド含有組成物。
[10] [1]〜[7]のいずれか1項に記載のカロチノイド含有組成物の製造方法であって、前記カロチノイド類を含有する油相組成物、及び、アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種と、乳化剤とを含有する水相組成物を混合し、加圧乳化して水中油型の乳化組成物を得ること、を含むカロチノイド含有組成物の製造方法。
[11] 前記油相組成物が、前記カロチノイド類と、グリセリン単位が1〜6であり脂肪酸単位の数が1〜6であって、グリセリン単位の水酸基を少なくとも1つ有する(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルと、を混合して油相成分混合液を得た後、該油相成分混合液を、前記カロチノイド類の融点以上の温度条件で加熱することにより得られる[10]に記載のカロチノイド含有組成物の製造方法。
[12] 前記水中油型の乳化組成物を乾燥して粉末組成物を得ること、を含む[10]又は[11]に記載のカロチノイド含有組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、保存安定性に優れたカロチノイド含有組成物及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のカロチノイド含有組成物及びその製造方法について詳細に説明する。
【0010】
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本発明において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル」との表現には、グリセリン単位及び脂肪酸単位をそれぞれ1つずつ含むグリセリン脂肪酸エステル、いずれか一方を複数含むグリセリン脂肪酸エステル、いずれも複数含むグリセリン脂肪酸エステルのすべてが包含され、これらのグリセリン脂肪酸エステルを区別せずに用いる場合に使用される。
【0011】
[カロチノイド含有組成物]
本発明のカロチノイド含有組成物は、カロチノイド類と、アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種と、乳化剤とを含有し、前記アスコルビン酸及びその誘導体から選択された少なくとも1種が、前記カロチノイド類の総モル数に対して、アスコルビン酸換算で30倍モル以上190倍モル以下の範囲となる量で含有され、且つ、pHが6.5以上9.0以下の範囲であるカロチノイド含有組成物である。
【0012】
本発明のカロチノイド含有組成物は、上記の構成を有することにより、優れた保存安定性を発揮する。
【0013】
本発明のカロチノイド含有組成物は、如何なる形態であってもよい。本発明のカロチノイド含有組成物の好適な形態として、例えば、水中油型の乳化組成物、及び該水中油型の乳化組成物を乾燥して得られた粉末組成物が挙げられる。特に、本発明のカロチノイド含有組成物は、粉末組成物の形態を採る場合においても優れた保存安定性を発揮する。
以下、本発明のカロチノイド含有組成物における各構成要素について詳細に説明する。
【0014】
<カロチノイド類>
本発明のカロチノイド含有組成物は、カロチノイド類を含有する。
本発明におけるカロチノイド類は、黄色から赤のテルペノイド類の色素であり、植物類、藻類、及びバクテリアに由来するものを、その例として挙げることができる。また、カロチノイド類は、天然由来のものに限定されず、常法に従って得られるものであればいずれのものであってもよい。
【0015】
本発明におけるカロチノイド類として、具体的には、リコピン、α−カロチン、β−カロチン、γ−カロチン、δ−カロチン、アクチニオエリスロール、ビキシン、カンタキサンチン、カプソルビン、β−8’−アポ−カロテナール(アポカロテナール)、β−12’−アポ−カロテナール、キサントフィル類(例えば、アスタキサンチン、フコキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、カプサンチン、β−クリプトキサンチン、ビオラキサンチン等)、フコキサンチン及びこれらのヒドロキシル又はカルボキシル誘導体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせ使用してもよい。
【0016】
好適なカロチノイド類には、リコピン及びフコキサンチンが含まれる。
中でも、酸化防止効果、美白効果等が非常に高いことで知られ、従来より食品、化粧品、医薬品の原材料及びそれらの加工品等への添加が要望、検討、実施されている点から、カロチノイド類としては、リコピンが好ましい。
リコピン(場合によって、「リコペン(lycopene)」と称される場合がある)は、化学式C4056(分子量536.87)のカロチノイドであり、カロチノイドの1種カロチン類に属している。474nm(アセトン)に吸収極大を示す赤色色素である。
リコピンには、分子中央の共役二重結合のcis−、trans−の異性体も存在し、例えば、全trans−、9−cis体と13−cis体などが挙げられるが、本発明においては、これらのいずれであってもよい。
【0017】
リコピンは、それを含有する天然物から分離・抽出されたリコピン含有オイルやリコピン含有ペーストとして、本発明のカロチノイド含有組成物に含まれていてもよい。
リコピンは、天然においては、トマト、柿、スイカ、ピンクグレープフルーツに含まれており、上記のリコピン含有オイルはこれらの天然物から分離・抽出されたものであってもよい。
また、本発明におけるリコピンは、天然物からの抽出物、また、更にこの抽出物を必要に応じて適宜精製したものでもよく、また、合成品であってもよい。
本発明においては、リコピンとしては、トマトから抽出されたものが、品質、生産性の点から特に好ましい。
【0018】
また、本発明では、広く市販されているトマト抽出物をリコピン含有オイル又はペーストとして用いることができ、例えば、サンブライト(株)より販売されているLyc−O−Mato 15%、Lyc−O−Mato 6%、協和発酵工業(株)より販売されているリコピン18等が挙げられる。
【0019】
本発明におけるカロチノイド類は、単体であってもよく、また、天然物から抽出する際に用いられた油分(オイル)と共にカロチノイド類を構成してもよい。
【0020】
本発明におけるカロチノイド類は、結晶性カロチノイドであっても、非結晶性カロチノイドであってもよい。カロチノイド類が結晶性カロチノイドである場合には、その少なくとも90質量%が非結晶状態でカロチノイド含有組成物中に存在することが好ましい。
【0021】
カロチノイド類が結晶性カロチノイドである場合に、該結晶性カロチノイドが組成物中に非結晶状態で存在するので、結晶体の存在に起因して損なわれる可能性がある効果が損なわれることがなく、また、体内でのカロチノイド成分の吸収性を高めることができる。
【0022】
結晶性カロチノイドが非結晶であることは、結晶構造を検出するための公知の手段を用いて確認すればよい。また、結晶性カロチノイドであることは、常法によって確認すればよく、例えば、示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry、DSC)、偏光顕微鏡観察、X線回折等を利用することができる。これらの公知の技術により結晶体の検出が確認できないことをもって、非結晶とすることができる。特に本発明では、DSC吸熱ピークの存在に基づいて、非結晶であることを確認することが好ましい。具体的には、DSC Q2000(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株))を使用し、乳化物のものは凍結乾燥し水分を除去して、粉末組成物のものは粉末状態で、30℃〜200℃の温度範囲で昇温−降温(15℃/min)の1サイクルで吸熱及び発熱温度を求め、認識可能な吸熱ピークの存在が認められないことをもって、非結晶状態とする。
【0023】
また、カロチノイド類が結晶性カロチノイドである場合、該結晶性カロチノイドの少なくとも90〜100質量%が非結晶であればよく、動態吸収性の点で95〜100質量%が非結晶であることが好ましい。例えば、カロチノイド類に含まれる結晶性カロチノイドの少なくとも90質量%が非結晶であることは、示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry、DSC)で測定した本発明のカロチノイド含有組成物中のカロチノイド結晶由来の吸熱ピークの吸熱量をカロチノイド結晶標品の吸熱ピークの吸熱量と比較することによって確認することができる。
【0024】
ここで、「結晶性カロチノイド」は、特定のカロチノイドを示すものではなく、カロチノイドを含むオイル、もしくは、ペースト等の形態である場合に、その製法、あるいは処理、保存等の様々な要因により−5℃〜35℃の温度領域のいずれかの温度において結晶体として存在し得るカロチノイド類を意味する。特に、前述したカロチノイド類の中でも、リコピン、β−カロチン、δ−カロチン、ゼアキサンチン、ルテイン、アスタキサンチン、フコキサンチン等は結晶体が存在しやすいカロチノイド類である。
【0025】
本発明におけるカロチノイド類としては、1種のみであってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
カロチノイド類の含有量としては、カロチノイド含有組成物中の固形分(水を除く全成分)の全質量に対して0.1質量%〜5質量%が好ましく、0.2質量%〜4質量%がより好ましく、0.3質量%〜3質量%が更に好ましい。カロチノイド類の含有量が、この範囲であれば、カロチノイド類による効果をより期待できる。
【0027】
<アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩>
本発明のカロチノイド含有組成物は、アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種を含有する。
【0028】
アスコルビン酸としては、L体、D体、及びDL体のいずれであってもよいが、入手性等の観点からL体が好ましい。
【0029】
アスコルビン酸塩、アスコルビン酸誘導体及びその塩としては、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸カリウム、L−アスコルビン酸カルシウム、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビル酸パルミチン酸エステル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビル等;ステアリン酸L−アスコルビルエステル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビルエステル、パルミチン酸L−アスコルビルエステル等のアスコルビン酸の脂肪酸エステル類等を挙げることができる。また、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸誘導体及びその塩としては、適宜、市販品を使用してもよい。
【0030】
上記のアスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩の中でも、カロチノイド類の安定性の観点から、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸カルシウム、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビル酸パルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、テトライソパルミチン酸L−アスコルビルが好ましい。
【0031】
アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩の特に好適な態様の一つは、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、及びL−アスコルビン酸カルシウムから選択された少なくとも1種である。これらは、本発明のカロチノイド含有組成物を食品等として適用する場合においても、カロチノイド含有組成物に好適に含有させることができる。
【0032】
本発明のカロチノイド含有組成物において、アスコルビン酸及びその誘導体は、前記カロチノイド類の総モル数に対して、アスコルビン酸換算で30倍モル以上190倍モル以下の範囲の量で含有されることを要し、35倍モル以上150倍モル以下の量で含有されることが好ましく、40倍モル以上120倍モル以下の量で含有されることがより好ましい。
【0033】
ここで、アスコルビン酸換算とは、カロチノイド含有組成物に含有されるアスコルビン酸及びその誘導体のうち、アスコルビン酸についてはそれ自体のモル量を採用し、アスコルビン酸誘導体については、当該誘導体に含まれるアスコルビン酸由来の部分構造のモル量を、等量のアスコルビン酸に換算したモル量を採用することを意味する。
【0034】
カロチノイド含有組成物に含有されるアスコルビン酸の量、及び、アスコルビン酸誘導体におけるアスコルビン酸由来の部分構造の量は、アスコルビン酸の1骨格相当の分子量を1モルとすることにより定量することができる。
例えば、アスコルビン酸カルシウムの場合であれば、該アスコルビン酸カルシウムは、アスコルビン酸2骨格からなることから、アスコルビン酸カルシウムの分子量390.34を2モルとみなし、195.17gをもって1モルとする。
【0035】
<乳化剤>
本発明のカロチノイド含有組成物は、乳化剤を含有する。
乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。
また、乳化剤は、乳化力の観点から、HLBが10以上であることが好ましく、12以上が更に好ましい。HLBが低すぎると、乳化力が不十分となることがある。なお、抑泡効果の観点からHLB=5以上10未満の乳化剤を併用してもよい。
ここで、HLBは、通常界面活性剤の分野で使用される親水性−疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えば川上式等が使用できる。川上式を次に示す。
HLB=7+11.7log(M/M
ここで、Mは親水基の分子量、Mは疎水基の分子量である。
また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。
また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の乳化剤を得ることができる。
【0036】
カロチノイド含有組成物における乳化剤の含有量は、組成物の形態によって設定することができる。
カロチノイド含有組成物における乳化剤の含有量は、乳化組成物の形態を採る場合であれば、組成物全体の0.5〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましく、2〜15質量%が更に好ましく、粉末組成物の形態を採る場合であれば、組成物全体の0.1〜50質量%が好ましく、5〜45質量%がより好ましく、10〜30質量%が更に好ましい。この範囲内であれば、油相/貧溶媒相間の界面張力を下げ易く、過剰量とすることがなく乳化組成物の泡立ちがひどくなる等の問題を生じ難い点で好ましい。
【0037】
また、乳化剤の総質量は、カロチノイド含有組成物がいずれの形態を採る場合においても、カロチノイド類を含む油性成分の合計質量の0.1倍〜10倍の範囲で用いることができる。カロチノイド含有組成物を乳化組成物とした場合の分散粒子の微細化と発泡抑制の点から、0.5倍〜8倍が好ましく、0.8倍〜5倍が特に好ましい。この範囲内であれば、カロチノイド含有組成物を乳化組成物とした場合における分散安定性を良好なものにすることができる。
【0038】
乳化剤の中でも、低刺激性であること、環境への影響が少ないこと等から、非イオン性界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤の例としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0039】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、カロチノイド含有組成物を乳化組成物とした場合における分散粒子の安定性の観点から、ショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数が12〜20であるものが好ましく、14〜16であるものがより好ましい。
【0040】
ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられ、これらの中でも、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステルがより好ましい。
本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0041】
本発明のカロチノイド含有組成物には、乳化剤として、後述する特定のポリグリセリン脂肪酸エステルとは別にHLBが10以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを含むことができる。
このようなポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、平均重合度が2以上、好ましくは6〜15、より好ましくは8〜10のポリグリセリンと、炭素数8〜18の脂肪酸、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びリノール酸と、のエステルである。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。
これらの中でも、より好ましくは、デカグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル(HLB=13)、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル(HLB=14)、デカグリセリンモノラウリン酸エステル(HLB=16)などである。
これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0042】
本発明におけるソルビタン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
本発明においては、これらのソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0043】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。また、ポリオキシエチレンのエチレンオキサイドの長さ(付加モル数)としては、2〜100が好ましく、4〜50がより好ましい。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ポリオキシエチレンモノカプリル酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
これらのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0044】
更に、本発明における乳化剤として、レシチンなどのリン脂質を含有してもよい。
本発明に用いうるリン脂質は、グリセリン骨格と脂肪酸残基及びリン酸残基を必須構成成分とし、これに、塩基や多価アルコール等が結合したもので、レシチンとも称されるものである。リン脂質は、分子内に親水基と疎水基を有しているため、従来から、食品、医薬品、化粧品分野で、広く乳化剤として使用されている。
【0045】
産業的にはレシチン純度60%以上のものがレシチンとして利用されており、本発明でも利用できるが、微細な油滴粒径の形成及び機能性油性成分の安定性の観点から、好ましくは一般に高純度レシチンと称されるものであり、これはレシチン純度が80%以上、より好ましくは90%以上のものである。
【0046】
リン脂質としては、植物、動物及び微生物の生体から抽出分離された従来公知の各種のものを挙げることができる。
このようなリン脂質の具体例としては、例えば、大豆、トウモロコシ、落花生、ナタネ、麦等の植物や、卵黄、牛等の動物及び大腸菌等の微生物等から由来する各種レシチンを挙げることができる。
このようなレシチンを化合物名で例示すると、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ビスホスアチジン酸、ジホスファチジルグリセリン(カルジオリピン)等のグリセロレシチン;スフィンゴミエリン等のスフィンゴレシチン等を挙げることができる。
また、本発明においては、上記の高純度レシチン以外にも、水素添加レシチン、酵素分解レシチン、酵素分解水素添加レシチン、ヒドロキシレシチン等を使用することができる。本発明で用いることができるこれらのレシチンは、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
【0047】
<pH>
本発明のカロチノイド含有組成物のpHは、6.5以上9.0以下の範囲であり、6.5以上8.0以下が好ましく、7.0以上8.0以下がより好ましい。
【0048】
カロチノイド含有組成物におけるpHの調整は、アルカリ剤の添加、分解もしくは反応することによりアルカリ性を示す化合物の添加により行うことができ、アルカリ剤の添加がより好ましい。
【0049】
アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素アンモニウムが挙げられる。これらのアルカリ剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。保存安定性の観点からは、アルカリ剤としては、炭酸ナトリウムがより好ましい。
アルカリ剤の添加量は、カロチノイド含有組成物のpHに応じて適宜設定することができる。
【0050】
本発明のカロチノイド含有組成物が液状物である場合には、そのpHは、該液状物について25℃で測定したpHである。
なお、カロチノイド含有組成物が粉末組成物である場合、固形分濃度17.7質量%の水溶液とし25℃で測定したpHが、6.5以上9.0以下の範囲であれば、当該粉末組成物は本発明のカロチノイド含有組成物に包含される。但し、粉末組成物が固形分濃度17.7質量%まで溶けない場合は、飽和水溶液を25℃で測定したpHが、6.5以上9.0以下の範囲であれば、当該粉末組成物は本発明のカロチノイド含有組成物に包含される。
【0051】
<フェノール系酸化防止剤、トコフェロール類>
本発明のカロチノイド含有組成物は、芳香族カルボン酸類、ケイ皮酸類、及びエラグ酸類からなるフェノール系酸化防止剤、並びに、トコフェロール類から選択された少なくとも1種(以下、適宜「特定酸化防止剤)と称する。)を含有することが好ましい。
【0052】
特定酸化防止剤であるフェノール系酸化防止剤及びトコフェロール類は、単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。2種以上の特定酸化防止剤を併用する場合、フェノール系酸化防止剤及びトコフェロール類の一方から選択された2種以上であってもよいし、双方から選択された2種以上であってもよい。
【0053】
<<フェノール系酸化防止剤>>
本発明におけるフェノール系酸化防止剤は、芳香族カルボン酸類、ケイ皮酸類及びエラグ酸類からなる群より選択される少なくとも1種である。
これらのフェノール系酸化防止剤は、フェノール性水酸基を分子内に1つ有し、カロチノイド類として結晶性カロチノイドが適用される場合において、該結晶性カロチノイドの結晶を溶解させるための加熱処理時に、結晶性カロチノイドの分解又は消失を抑制して高い効率での利用を可能にする。
【0054】
芳香族カルボン酸類の例としては、没食子酸(3,4,5−ヒドロキシ安息香酸)、並びにそれら誘導体を挙げることができる。没食子酸(3,4,5−ヒドロキシ安息香酸)の誘導体としては、没食子酸プロピル、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等の没食子酸エステル、ガロタンニン等の没食子酸配糖体を挙げることができる。
ケイ皮酸類の例としては、フェルラ酸及びクロロゲン酸等、並びにそれらの誘導体を挙げることができる。フェルラ酸及びクロロゲン酸の誘導体としては、フェルラ酸エステルを挙げることができる。具体的には、フェルラ酸、γ−オリザノール(米ぬか抽出物)、コーヒー酸(カフェ酸又は3,4−ジヒドロキシケイ皮酸)、クロロゲン酸、グリセリルフェルラ酸、ジヒドロフェルラ酸等を挙げることができる。
エラグ酸類としては、エラグ酸を挙げることができる。
【0055】
また、フェノール系酸化防止剤としては、カロチノイド成分の安定性の観点から低分子量であることが好ましく、例えば、100〜3000であることが好ましく、100〜1000であることがより好ましい。
【0056】
フェノール系酸化防止剤としては、カロチノイド成分の安定性の観点からケイ皮酸類であることが好ましく、中でも、共に米ぬか抽出物として得られるフェルラ酸又はγ−オリザノール並びにこれらの混合物であることがより好ましい。
【0057】
特定酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤が含有される場合、その組成物における総含有量は、カロチノイド成分の分解又は消失を抑制するために有効な量であればよく、カロチノイド成分の1.3倍モル〜15.0倍モルとすることができ、2倍モル〜10倍モルとすることが好ましく、3倍モル〜8倍モルとすることがより好ましい。フェノール系酸化防止剤の総含有量がカロチノイド成分の1.3倍モル以上であれば、カロチノイド成分の分解又は消失低下抑制効果の発揮に充分であり、15.0倍モル以下であれば、充分な量のカロチノイド成分の配合を損なうことがない。
【0058】
特定酸化防止剤であるトコフェロール類としては、特に限定されず、例えばトコフェロール及びその誘導体からなる化合物群、並びにトコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群から選ばれるものを挙げられる。これらは単独で用いても、複数併用して用いてもよい。またトコフェノール及びその誘導体からなる化合物群とトコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群からそれぞれ選択されたものを組み合わせて使用してもよい。
【0059】
トコフェロール及びその誘導体からなる化合物群としては、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−dl−α−トコフェロール、リノール酸−dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等が含まれる。これらの内で、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、及び、これらの混合物(ミックストコフェロール)がより好ましい。また、トコフェロール誘導体としては、これらのカルボン酸エステル、特に酢酸エステルが好ましく用いられる。
トコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群としては、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等が含まれる。また、トコトリエノール誘導体としては、これらの酢酸エステルが好ましく用いられる。
【0060】
特定酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤が含有される場合、その組成物における総含有量は、0.1質量%〜10質量%が好ましく、0.5質量%〜8.0質量%がより好ましく、1.0質量%〜5.0質量%が更に好ましい。
【0061】
<水溶性包括剤>
本発明のカロチノイド含有組成物を、乳化組成物を乾燥して得られる粉末組成物とする場合には、乾燥時の粉末化過程や粉末保存時に油滴を保護するために、水溶性包括剤を含有することが好ましい。これにより、油滴粒径を微細な状態に保つと共に油滴中のカロチノイド成分の劣化を小さくすることができる。
また、水溶性包括剤は、粉末組成物を水に再溶解したときには油性成分の水分散性を良好なものにすることができると共に、再溶解後の透明性も良好なものにすることができる。
【0062】
水溶性包括剤の例としては、グルコース、果糖、乳糖、麦芽糖、ショ糖、デキストリン類、マルトデキストリン(粉飴を含む)、シクロデキストリン、マルトース、フルクトース、トレハロースなどの、単糖類、二糖類、及び、多糖類などが挙げられる。
【0063】
水溶性包括剤の好適な態様の一つとしては、トレハロースが挙げられる。
また、水溶性包括剤の他の好適な態様としては、果糖単位を少なくとも2つ含む糖単位からなる果糖ポリマー及びオリゴマーから選ばれた少なくとも1種である多糖類(以下、単に「果糖ポリマー又はオリゴマー」と称する)が挙げられる。
【0064】
トレハロースは、2分子のD−グルコースが、α、α−1、1で結合した非還元性二糖である。本発明においては、高純度含水結晶トレハロースを好適に用いることができる。
トレハロースは、例えば、ブドウ糖溶液中で酵母を培養して、酵母菌体中にトレハロースを作らせ、このトレハロースを菌体から分離する方法、又はブドウ糖溶液中でバクテリアを培養し、培養液中にトレハロースを作らせ、このトレハロースを培養液から分離するホフ法などで製造することができる。
また、トレハロースとしては市販品を用いてもよく、該市販品としては、例えば(株)林原から入手することができる。
【0065】
果糖ポリマー又はオリゴマーは、果糖(フルクトース)を繰り返し単位として含むと共に、複数の糖単位が脱水縮合で結合した糖単位からなるポリマー又はオリゴマーを指す。本発明では、果糖単位を含む糖の繰り返し単位が20個未満のものを果糖オリゴマー、20個以上のものを果糖ポリマーと称する。
【0066】
この糖単位の繰り返し個数は、乾燥適性と再溶解性時の油滴微細化の観点から好ましくは2〜60個であり、より好ましくは4〜20個である。繰り返し個数(果糖の重合度)が2個以上であれば吸湿性が強すぎることがなく、乾燥過程で乾燥容器に付着して回収率が低下するといったことを効果的に防止することができ、一方、60個以下であれば水再溶解時における油滴粒径の粗大化を効果的に防止することができる。
【0067】
果糖ポリマー又はオリゴマーには、果糖以外に、分子の末端または鎖中に他の単糖類を含んでもよい。ここで含むことのできる他の単糖単位としては、グルコース(ブドウ糖)、ガラクトース、マンノース、イドース、アルトロース、グロース、タロース、アロース、キシロース、アラビノース、リキソース、リボース、トレオース、エリトロース、エリトルロース、キシルロース、リブロース、プシコース、ソルボース、タガトース等があるが、これに限定されることはない。これらの単糖のうちグルコースが入手の容易性の観点から好ましい。また、結合位置は果糖鎖の末端に存在することが再溶解時の油滴微細化の観点から好ましい。
果糖以外の糖類を含む場合、その含有比率は乾燥適性と再溶解性時の油滴微細化の観点から果糖単位数に対して重合度で50%以下であり、好ましくは30%以下である。
【0068】
色素の保存安定性及び入手の容易性等の観点から、本発明に好ましく用いられる水可溶性包括剤としては、トレハロース及びイヌリンが挙げられ、これらを併用することも好ましい。
【0069】
本発明におけるイヌリンは、末端にブドウ糖を1個有する果糖ポリマーまたは果糖オリゴマーをいう。イヌリンは広く自然界に存在することが知られており、チコリ、キクイモ、ダリア、ニンニク、ニラ、タマネギなどに多く含まれる。イヌリンの詳細に関してはHandbook of Hydrocolloids, G.O.Phillips,P.A.WilliamsEd.,397-403,(2000) CRC Pressに記載されている。一般に、ブドウ糖単位をG、果糖単位をFとして鎖長を表現する。本発明のイヌリンには、GFで表記されるスクロースは含まれない。
通常天然から抽出されるイヌリンは、GF2(ケストース)、GF3(ニストース)、GF4(フラクトシルニストース)からGF60程度までのポリマーかオリゴマー、またはそれらの混合物である。
【0070】
本発明では、イヌリンはチコリ、キクイモ、ダリアなどの根から分離熱水抽出され、この水溶液を濃縮、スプレードライにより粉末化販売されているものを含むことができる。この例としては、チコリ根から抽出されたFrutafit(SENSUS社製)、同じくチコリ根から抽出されたベネオ(オラフティ社)、ダリア根由来試薬((株)和光純薬、シグマ社)、チコリ根抽出試薬(シグマ社)等を挙げることができる。
また、本発明における果糖オリゴマー及びポリマーには、β−フルクトフラノシダーゼのフラクタン転移活性を利用して、ショ糖(スクロース)から調製するものも含むことができる。この例としては、フジFF(フジ日本精糖(株)製)、GF2(明治製菓(株))を挙げることができる。
【0071】
本発明に用いられるイヌリンは、再溶解時の油滴の微細化の観点から、果糖の繰り返し数(重合度)で2〜60であることが好ましく、より好ましくは、噴霧乾燥時の装置への付着性と水への溶解性の観点から、果糖の重合度は4〜20である。
【0072】
また、水溶性包括剤の他の例としては、他の水溶性ポリマーやオリゴマーが挙げられる。他の水溶性ポリマー、オリゴマーの例としては、アガロース、澱粉、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ジェランガム、ガラクトマンナン、カゼイン、トラガンドガム、キシログルカン、βーグルカン、カードラン、水溶性大豆繊維、キトサン、アルギン酸、アルギン酸アトリウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
水溶性包括剤は、乳化組成物を調製する際における乳化時に添加されていることが好ましいが、その一部または全部を乳化後に添加することもできる。
【0074】
水溶性包括剤は、カロチノイド含有組成物において、形状維持と溶解性の観点から組成物における油性成分の全質量に対して好ましくは0.5倍量〜50倍量、より好ましくは1倍量〜20倍量、更に好ましくは1倍量〜10倍量であり、より更に好ましくは2倍量〜5倍量である。
なお、水溶性包括剤は、カロチノイド含有組成物である乳化組成物の水相に含まれていればよく、後述する本発明のカロチノイド含有組成物の製造方法において、加圧乳化の際に水相組成物として含まれていてもよく、加圧乳化後のカロチノイド含有組成物の水相に添加してもよい。
【0075】
<特定(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル>
本発明のカロチノイド含有組成物は、グリセリン単位が1〜6であり脂肪酸単位の数が1〜6であって、グリセリン単位の水酸基を少なくとも1つ有する(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(以下、適宜「特定(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル」と称する。)を含有することが好ましい。特定(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルは、カロチノイド類として結晶性カロチノイドが適用される場合において、特に好適に含有される。
なお、本発明における「乳化剤」には、特定(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルは含まれない。
【0076】
このような特定の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルは、カロチノイド類として結晶性カロチノイドが適用された場合において、該結晶性カロチノイドと高い相溶性を示し、結晶性カロチノイドの融点を低下させる。また、特定(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルと結晶性カロチノイドとの共溶解物では、結晶性カロチノイドの再結晶化が抑制される。
【0077】
グリセリン単位が7以上の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルでは、親水性が高まりカロチノイドとの親和性が低くなり、一方、脂肪酸単位の数が7以上の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルでは、カロチノイドの結晶抑制効果が期待できない。また、グリセリン単位の水酸基を含まない(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド等では、理由は定かではないがカロチノイドの結晶化を充分に抑制できなく、一定量の水酸基が必要であり、カロチノイドの結晶抑制効果が期待できない。
【0078】
特定(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルは、再結晶抑制等の観点から、グリセリン単位数(平均重合度)が1〜6、より好ましくは1〜4であるグリセリンと、脂肪酸単位が1〜6、より好ましくは1〜5であり且つ、炭素数8〜22の脂肪酸(例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸及びベヘン酸)、より好ましくは炭素数14〜18の脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
これらの特定(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル中でも、共溶解時における均一溶解性の観点から、分子量が10000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましく、2500以下であることが更に好ましい。また、カロチノイドとの親和性の観点から、HLBが9以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましい。
【0079】
また、カロチノイド含有組成物を、乳化組成物を乾燥することによって得られる粉末組成物とする場合には、常温で固体の特定(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルであることが、粉末組成物中のカロチノイド濃度及び該組成物製造時の熱風乾燥時における収率の観点から好ましい。即ち、常温で固体であれば、包括剤の増量の必要がなく、充分な量のカロチノイドを含むことができる。また常温で固体であれば、熱風乾燥時に接触面に付着しにくく、粉末組成物の収率の低下を抑制できる。このような常温で固体の特定(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素に分岐、不飽和結合がないミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸ジグリセリル、モノステアリン酸テトラグリセリル、トリステアリン酸テトラグリセリル、ペンタステアリン酸テトラグリセリル、モノステアリン酸ヘキサグリセリル、トリステアリン酸ヘキサグリセリル、テトラベヘン酸ヘキサグリセリル、ペンタステアリン酸ヘキサグリセリル等を挙げることができる。
【0080】
本発明のカロチノイド含有組成物に適用可能な特定(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸モノグリセリル、モノステアリン酸ジグリセリル、モノステアリン酸トリグリセリル、ペンタステアリン酸ヘキサグリセリル、ジパルミチン酸トリグリセリル、ジステアリン酸グリセリル、トリステアリン酸テトラグリセリル、ペンタステアリン酸テトラグリセリル、モノステアリン酸ヘキサグリセリル、トリステアリン酸ヘキサグリセリル、テトラベヘン酸ヘキサグリセリル等が挙げられ、再結晶抑制および均一溶解性の観点から、ミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸ジグリセリル、ペンタステアリン酸テトラグリセリル、ペンタステアリン酸ヘキサグリセリルが好ましい。
【0081】
特定(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルの含有量(質量)は、用いられる結晶性カロチノイドの種類又は含有量によって異なるが、カロチノイド含有組成物の安定性の観点から、結晶性カロチノイドの全質量に対して0.01倍〜10倍であることが好ましく、0.1倍〜8倍であることがより好ましく、0.3倍〜5倍であることが更に好ましい。カロチノイド含有組成物における特定ポリグリセリン脂肪酸エステルの全質量が、結晶性カロチノイドの全質量の0.01倍量であれば、充分な結晶抑制効果が期待でき、一方、10倍量以下であれば乳化物としたときの分散粒子の粒子径の増大を抑制することができる。
【0082】
<他の成分>
本発明のカロチノイド含有組成物には、上記の各成分の他、通常油相成分として用いられる他の油性成分を含んでもよい。
このような他の油性成分としては、水性媒体に溶解せず、油性媒体に溶解する成分であれば、特に限定はなく、目的に応じた物性や機能性を有するものを適宜選択して使用することができ、例えば、不飽和脂肪酸類、ココナッツ油等の油脂類等の脂溶性ビタミン、ユビキノン類が好ましく用いられる。
【0083】
不飽和脂肪酸としては、例えば、炭素数10以上、好ましくは18〜30の一価高度不飽和脂肪酸(ω−9、オレイン酸など)又は多価高度不飽和脂肪酸(ω−3、ω−6)が挙げられる。このような不飽和脂肪酸類は公知のもののいずれであってよく、例えば、ω−3油脂類としては、リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)並びにこれらを含有する魚油などを挙げることができる。
ユビキノン類としては、コエンザイムQ10のようなコエンザイムQ類等が挙げられる。
【0084】
脂溶性ビタミン類としては、ビタミンA類、ビタミンD類、エリソルビン酸の油溶化誘導体を挙げることができる。ここで、他の成分として含有される脂溶性ビタミン類には、特定酸化防止剤として含有しうるトコフェロールは包含されない。
【0085】
ビタミンA類としては、レチノール,3−ヒドロレチノール,レチナール,3−ヒドロレチナール,レチノイン酸,3−デヒドロレチノイン酸,ビタミンAアセテート等を挙げることができる。ビタミンD類としては、ビタミンD乃至D等のビタミンD類を挙げることができる。またその他の脂溶性ビタミン物質としては、ニコチン酸ビタミンE等のエステル類;ビタミンK乃至K等のビタミンK類を挙げることができる。
【0086】
また、パルミチン酸エリソルビルエステル、テトライソパルミチン酸エリソルビルエステル等のエリソルビン酸の脂肪酸エステル類;ジパルミチン酸ピリドキシン、トリパルミチン酸ピリドキシン、ジラウリン酸ピリドキシン、ジオクタン酸ピリドキシン等のビタミンBの脂肪酸エステル類等も、脂溶性ビタミン類として挙げることができる。
【0087】
上記以外の油脂としては、常温で、液体の油脂(脂肪油)及び固体の油脂(脂肪)が挙げられる。
前記液体の油脂としては、例えばオリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アボガド油、月見草油、タートル油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルチミン酸グリセリン、サラダ油、サフラワー油(ベニバナ油)、パーム油、ココナッツ油、ピーナッツ油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、ウォルナッツ油、グレープシード油、スクワレン、スクワラン等が挙げられる。
また、前記固体の油脂としては、牛脂、硬化牛脂、牛脚脂、牛骨脂、ミンク油、卵黄油、豚脂、馬脂、羊脂、硬化油、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム硬化油、モクロウ、モクロウ核油、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
上記の中でも、エマルション組成物の粒子径、安定性の観点から、中鎖脂肪酸トリグリセライドであるココナッツ油が好ましく用いられる。
【0088】
<その他の添加成分>
上記成分の他、食品等の分野において通常用いられる成分を、本発明のカロチノイド含有組成物に、当該組成物の形態に応じて適宜配合してもよい。
カロチノイド含有組成物が、乳化組成物である場合、添加成分は、添加成分の特性によって、油相成分混合液、カロチノイド含有油相組成物又は水相組成物の成分として配合してもよく、カロチノイド含有組成物の水相への添加成分として配合してもよい。
【0089】
このような他の成分としては、グリセリン、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール;グルコース、果糖、乳糖、麦芽糖、ショ糖、ペクチン、カッパーカラギーナン、ローカストビーンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアガム、キサンタンガム、カラヤガム、タマリンド種子多糖、アラビアガム、トラガカントガム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、デキストリン等の単糖類又は多糖類;ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクトース、マルトトリイトール、キシリトールなどの糖アルコール;塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの無機塩;カゼイン、アルブミン、メチル化コラーゲン、加水分解コラーゲン、水溶性コラーゲン、ゼラチン等の分子量5000超のタンパク質;カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、酸化エチレン・酸化プロピレンブロック共重合体等の合成高分子;ヒドロキシエチルセルロース・メチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体;フラボノイド類(カテキン、アントシアニン、フラボン、イソフラボン、フラバン、フラバノン、ルチン)、フェノール酸類(クロロゲン酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピル)、リグナン類、クルクミン類、クマリン類などを挙げることができ、その機能に基づいて、例えば機能性成分、賦形剤、粘度調整剤、ラジカル捕捉剤などとして含んでもよい。
その他、例えば、種々の薬効成分、pH緩衝剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料、着色剤など、通常、その用途で使用される他の添加物を併用することができる。
【0090】
(水中油型乳化組成物、粉末組成物)
前述したように、本発明のカロチノイド含有組成物は、油相組成物と水相組成物とを乳化混合して得られた水中油型乳化組成物としてもよく、当該水中油型乳化組成物を乾燥して得られた粉末組成物としてもよい。
【0091】
<<油相組成物>>
油相組成物は、少なくともカロチノイド類を含み、更に、カロチノイド含有組成物の構成成分に包含される各成分から選択された油性成分を含むものであることが好ましい。
アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩は、油相組成物の構成成分として含まれてもよい。
また、特定酸化防止剤、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルは、油相組成物の構成成分として含まれることが好ましい。
【0092】
カロチノイド類としては、カロチノイド含有組成物の成分として説明したものが挙げられ、その好適な範囲も同様である。
アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩としては、カロチノイド含有組成物の成分として説明したものが挙げられ、その好適な範囲も同様である。
特定酸化防止剤としては、カロチノイド含有組成物の成分として説明したものが挙げられ、その好適な範囲も同様である
【0093】
油相組成物の含有量は、油性成分の機能発揮の観点から、乳化組成物の場合には、好ましくは0.1質量%〜50質量%、より好ましくは0.5質量%〜25質量%、更に好ましくは0.2質量%〜10質量%である。また、粉末組成物の場合には、油相組成物の含有量は、粉末組成物全質量の10質量%〜50質量%であることが好ましく、10質量%〜40質量%であることがより好ましく、10質量%〜30質量%であることが更に好ましい。
【0094】
水中油型乳化組成物とする場合には、上記成分の他、油相成分として使用可能な乳化剤を含んでもよい。このような油相成分として使用可能な乳化剤としては、例えば、前述した乳化剤のうちHLBが7以下のものが挙げられる。
【0095】
<<水相組成物>>
水相組成物は、水性媒体、特に水で構成されており、少なくとも、アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩から選択された少なくとも一種と、乳化剤とを含むものであることが好ましい。
【0096】
水溶性包括剤、アルカリ剤は、水相組成物に含有されることが好ましい。
【0097】
アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩としては、カロチノイド含有組成物の成分として説明したものが挙げられ、その好適な範囲も同様である
乳化剤としては、カロチノイド含有組成物の成分として説明した乳化剤が挙げられ、その好適な範囲も同様である。
【0098】
水相組成物には、上述した特定ポリグリセリン脂肪酸エステルとは別にHLBが10以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを含むことができる。
【0099】
本発明のカロチノイド含有組成物が、水中油型乳化組成物である場合、該乳化組成物に含まれる分散粒子の平均粒子径は、50nm〜300nmの範囲であることが好ましく、透明性の観点から、50nm〜200nmの範囲であることがより好ましく、50nm〜150nmの範囲であることが更に好ましい。
また、本発明のカロチノイド含有組成物が、水中油型乳化組成物を乾燥して得られた粉末組成物である場合、水等の水性媒体を添加することで該粉末組成物を再溶解して得られた水中油型乳化組成物に含まれる分散粒子の平均粒子径は、50nm〜300nmの範囲であることが好ましく、透明性の観点から、50nm〜200nmの範囲であることがより好ましく、50nm〜150nmの範囲であることが更に好ましい。
【0100】
ここで、分散粒子の平均粒径とは、乳化組成物中の分散粒子(油滴)の粒径を意味し、粉末組成物の場合には、1質量%の液体としたとき(再溶解時)の分散粒子(油滴)粒径を意味する。
【0101】
分散粒子の粒径は市販の粒度分布計等で計測することができる。エマルションの粒度分布測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
【0102】
本発明における粒径範囲及び測定の容易さから、本発明における分散粒子の粒径測定では動的光散乱法が好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられるが、本発明における粒径は、粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))を用いて25℃で測定した値を採用する。
即ち、粒径の測定方法は、水中油型乳化組成物の場合には20倍となるように純水を添加し、粉末組成物の場合には固形分濃度が1質量%となるように純水を添加し、粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))を用いてメジアン径(d=50)として求める。
【0103】
また、分散粒子の粒径は、組成物の成分以外に、製造方法における攪拌条件(せん断力・温度・圧力)や、油相と水相比率、などの要因によって調整することができる。
【0104】
(用途)
本発明のカロチノイド含有組成物は、保存安定性に優れ、カロチノイドによる所期の効果が充分に期待されるカロチノイド含有組成物である。このため、食品組成物、化粧品組成物、医薬品組成物に好ましく適用しうる。
【0105】
本発明のカロチノイド含有組成物を含有する食品又は化粧品には、必要に応じて、食品又は化粧品に添加可能な成分を適宜添加することができる。カロチノイド含有組成物を、特に食品に用いた場合には、粉末状の食品として長期保存が可能であり、水性媒体に溶解したときには、微細な分散粒子を有する透明性に優れた分散組成物となる。
本発明のカロチノイド含有組成物を含む食品、化粧品等は、結晶体の存在に起因して充分に発揮されない場合がある効果、例えばカロチノイドの良好な吸収性を示し得る。
【0106】
化粧品組成物としては、例えば、化粧水、美容液、乳液、クリームパック・マスク、パック、洗髪用化粧品、フレグランス化粧品、液体ボディ洗浄料、UVケア化粧品、防臭化粧品、オーラルケア化粧品等などで好適に使用される。
また、食品としては、栄養ドリンク、滋養強壮剤、嗜好性飲料、冷菓などの一般的な食品類のみならず、錠剤状・顆粒状・カプセル状の栄養補助食品なども好適に使用される。
機能性食品として用いられる場合には、本発明にかかる粉末組成物の添加量は、製品の種類や目的などによって異なり一概には規定できないが、製品に対して、0.01〜10質量%、好ましくは、0.05〜5質量%の範囲となるように添加して用いることができる。添加量が0.01質量%以上であれば目的の効果の発揮が期待でき、10質量%以下であれば、適切な効果を効率よく発揮できることが多い。
【0107】
本発明のカロチノイド含有組成物は、以下に詳述するカロチノイド含有組成物の製造方法(本発明の製造方法)により、好適に製造することができる。
【0108】
[カロチノイド含有組成物の製造方法]
本発明のカロチノイド含有組成物は、カロチノイド類を含有する油相組成物と、アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種と、乳化剤とを含有する水相組成物とを混合し、加圧乳化して水中油型の乳化組成物を得ること、を含む製造方法(以下、適宜「本発明の製造方法」と称する。)により製造することが好ましい。
【0109】
なお、本発明の製造方法において用いる各成分の詳細は、本発明のカロチノイド含有組成物が含有する各成分として説明したものであり、その好適な範囲も同様である。
【0110】
カロチノイド類として結晶性カロチノイドを含む場合、前記油相組成物を得るための好ましい態様の一つは、カロチノイド類と、グリセリン単位が1〜6であり脂肪酸単位の数が1〜6であって、グリセリン単位の水酸基を少なくとも1つ有する(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルと、を混合して油相成分混合液を得ること(油相成分混合工程という)、油相成分混合液を、前記結晶性カロチノイド成分の融点以上の温度条件で加熱すること(油相成分加熱工程という)を含む態様である。
【0111】
なお、カロチノイド類として結晶性カロチノイドを含む場合であっても、油相組成物の調製は油相成分混合工程及び油相成分加熱工程を含む上記態様にて必ずしも実施される必要はなく、油相組成物の調製態様はカロチノイド類の種類に応じて適宜選択される。
【0112】
油相組成物が、油相成分混合工程及び油相成分加熱工程を含む態様にて調製される場合、油相成分混合液を、結晶性カロチノイド成分の融点以上の温度で加熱するので、カロチノイド成分中の結晶性カロチノイドの再結晶化を抑制して、非結晶状態を安定して維持されたカロチノイド含有組成物を得ることができる。
【0113】
油相成分混合工程では、油相組成物としてのカロチノイド含有組成物を構成する各油相成分を混合する。油相成分の混合には特に制限はない。油相成分混合工程によって、油相成分混合液が得られる。
【0114】
油相成分加熱工程では、前記油相成分混合液を、カロチノイド成分の融点以上の温度条件で加熱する。油相成分混合液を加熱するときの温度は、カロチノイド成分の融点以上の温度であることが必要である。カロチノイド成分の融点未満では、結晶性カロチノイドが溶解せず、多量の結晶体がカロチノイド含有組成物に存在することになる。油相成分加熱工程では、結晶性カロチノイドが前記(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルと共に共溶解するため、より低い温度で結晶体を溶解することができる。
【0115】
カロチノイド成分の融点とは、カロチノイド成分中の結晶性カロチノイドが溶解する温度を意味する。結晶性カロチノイド単体でカロチノイド成分が構成されている場合には、結晶性カロチノイドの融点が該当する。一方、カロチノイド成分に結晶性カロチノイド以外の成分が含まれる場合には、カロチノイド成分中のカロチノイドが溶解する温度を意味する。
例えば、カロチノイド成分として天然物由来のカロチノイド含有オイルを用いた場合には、不純物等が含まれる場合があり、結晶性カロチノイドの融点よりも低い温度でカロチノイド成分中の結晶性カロチノイドが溶解することが知られている。この場合には、カロチノイド成分中の結晶性カロチノイドが溶解する温度が、本発明における「カロチノイド成分の融点」に該当する。
カロチノイド成分の融点は、融点を確認するために一般に用いられている方法によって確認することができ、例えば、DSCによって確認することができる。
【0116】
油相成分加熱工程に適用される加熱温度(共溶解温度)は、具体的には、用いられる結晶性カロチノイド又はカロチノイド成分の種類等によって異なるが、一般に、リコピンを含むカロチノイド成分の場合、150℃〜200℃とすることができ、熱分解の抑制の観点から150℃〜180℃であることが好ましく、150℃〜170℃であることがより好ましい。
【0117】
また、油相成分加熱工程に適用される最大の加熱温度としては、結晶性カロチノイドの分解抑制の観点から、過熱処理における最高温度が、カロチノイド成分の融点との差が10℃以内の温度であることが好ましく、融点をわずかに、例えば5℃以内の温度であることがより好ましい。
【0118】
油相成分加熱工程に適用される加熱時間は、油相成分混合液中のカロチノイド成分が溶解する時間であればよく、効率よく結晶体の非結晶化および過剰な熱による結晶性カロチノイドの分解を抑制する観点から10分〜60分であることが好ましく、15分〜45分であることがより好ましいが、これに限定されない。
【0119】
なお、油相成分加熱工程では、油相成分混合液全体が均一な温度となるようにすることが重要であるため、加熱しながら充分に攪拌することが好ましく、密閉容器を用い攪拌しながら過熱し一定温度に保持することが望ましい。
上記油相成分加熱工程によって、油相組成物が得られる。
【0120】
本発明の製造方法においては、カロチノイド類を含有する油相組成物と、アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種と、乳化剤とを含有する水相組成物とを混合し、加圧乳化すること(乳化工程)により、乳化組成物を得る。
【0121】
これにより、カロチノイド成分を含む油相成分が油滴(分散粒子)として水中に微細分散された水中油滴型の乳化組成物を得ることができる。この乳化組成物では、結晶性カロチノイドを含むカロチノイド成分が安定して維持される。
【0122】
乳化における油相と水相との比率(質量)は、特に限定されるものではないが、油相/水相比率(質量%)として0.1/99.9〜50/50が好ましく、0.5/99.5〜30/70がより好ましく、1/99〜20/80が更に好ましい。
油相/水相比率を0.1/99.9以上とすることにより、有効成分が低くならないためエマルション組成物の実用上の問題が生じない傾向となり好ましい。また、油相/水相比率を50/50以下とすることにより、乳化剤濃度が薄くなることがなく、乳化組成物の乳化安定性が悪化しない傾向となり好ましい。
【0123】
乳化は、1ステップの乳化操作を行うことでもよいが、2ステップ以上の乳化操作を行うことが均一で微細な分散粒子を得る点から好ましい。
具体的には、剪断作用を利用する通常の乳化装置(例えば、スターラーやインペラー攪拌、ホモミキサー、連続流通式剪断装置等)を用いて乳化するという1ステップの乳化操作に加えて、高圧ホモジナイザー等を通して乳化する等の方法で2種以上の乳化装置を併用するのが特に好ましい。高圧ホモジナイザーを使用することで、乳化物を更に均一な微粒子の液滴に揃えることができる。また、更に均一な粒子径の液滴とする目的で複数回行ってもよい。
【0124】
ここで使用可能な乳化手段は、自然乳化法、界面化学的乳化法、電気乳化法、毛管乳化法、機械的乳化法、超音波乳化法等一般に知られている乳化法のいずれも使うことができる。
【0125】
分散粒子を微細化するための有用な方法として、PIT乳化法、ゲル乳化法等の界面化学的乳化法が知られている。この方法は消費するエネルギーが小さいという利点があり、熱で劣化しやすい素材を微細に乳化する場合に適している。
【0126】
また、汎用的に用いられる乳化法として、機械力を用いた方法、すなわち外部から強い剪断力を与えることで油滴を分裂させる方法が適用されている。機械力として最も一般的なものは、高速、高剪断攪拌機である。このような攪拌機としては、ホモミキサー、ディスパーミキサーおよびウルトラミキサーと呼ばれるものが市販されている。
【0127】
また、微細化に有用な別な機械的な乳化装置として高圧ホモジナイザーがあり、種々の装置が市販されている。高圧ホモジナイザーは、攪拌方式と比べて大きな剪断力を与えることが出来るために、乳化剤の量を比較的少なくても微細化が可能である。
高圧ホモジナイザーには大きく分けて、固定した絞り部を有するチャンバー型高圧ホモジナイザーと、絞りの開度を制御するタイプの均質バルブ型高圧ホモジナイザーがある。
チャンバー型高圧ホモジナイザーの例としては、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)、ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)、アルティマイザー((株)スギノマシン製)等が挙げられる。
均質バルブ型高圧ホモジナイザーとしては、ゴーリンタイプホモジナイザー(APV社製)、ラニエタイプホモジナイザー(ラニエ社製)、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)、ホモゲナイザー(三和機械(株)製)、高圧ホモゲナイザー(イズミフードマシナリ(株)製)、超高圧ホモジナイザー(イカ社製)等が挙げられる。
【0128】
比較的エネルギー効率の良い分散装置で、簡単な構造を有する乳化装置として超音波ホモジナイザーがある。製造も可能な高出力超音波ホモジナイザーの例としては、超音波ホモジナイザーUS−600、同US−1200T,同RUS−1200T、同MUS−1200T(以上、(株)日本精機製作所製)、超音波プロセッサーUIP2000,同UIP−4000、同UIP−8000,同UIP−16000(以上、ヒールッシャー社製)等が挙げられる。これらの高出力超音波照射装置は25kHz以下、好ましくは15〜20kHzの周波数で使用される。
【0129】
また、他の公知の乳化手段として、外部からの攪拌部を持たず、低エネルギーしか必要としない、スタチックミキサー、マイクロチャネル、マイクロミキサー、膜乳化装置等を使う方法も有用な方法である。
【0130】
本発明における乳化分散する際の温度条件は、特に限定されるものでないが、機能性油性成分の安定性の観点から10℃〜100℃であることが好ましく、取り扱う機能性油性成分の融点などにより、適宜好ましい範囲を選択することができる。
また、本発明において高圧ホモジナイザーを用いる場合には、その圧力は、好ましくは50MPa以上、より好ましくは50MPa〜280MPa、更に好ましくは100MPa〜280MPaで処理することが好ましい。
また、乳化分散された組成物である乳化液はチャンバー通過直後30秒以内、好ましくは3秒以内に何らかの冷却器を通して冷却することが、分散粒子の粒子径保持の観点から好ましい。
【0131】
また、本発明の製造方法においては、乳化工程によって得られた水中油型乳化組成物を乾燥して粉末組成物を得ること(以下、「粉末化工程」ということがある。)を含んでもよい。この粉末組成物としてのカロチノイド含有組成物は、優れた保存安定性を備えた粉末化形態の組成物である。また、結晶性カロチノイドを含む場合であっても、粉末組成物を水性媒体に再溶解させた乳化組成物には、結晶性カロチノイドの結晶化が抑制された組成物である。
【0132】
粉末化工程で用いられる乾燥手段としては、公知の乾燥手段を用いることができ、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、高周波乾燥、超音波乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等が挙げられる。これらの手段は単独で用いてもよいが、2種以上の手段を組み合わせて用いることもできる。
本発明では熱に比較的弱い機能性素材を含むことが多いため、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥が好ましい。また、真空乾燥の一つであるが、0℃以下氷結温度以上の温度を保ちながら真空(減圧)乾燥する方法も好ましい。
真空乾燥又は減圧乾燥する場合、突沸による飛散を回避するため、徐々に減圧度を上げながら濃縮を繰り返しつつ、乾燥させることが好ましい。
【0133】
本発明の製造方法においては、凍結状態にある材料から氷を昇華させて水分を除去する凍結乾燥が好ましい。この凍結乾燥方法では、通常、乾燥過程が0℃以下、通常は−20℃〜−50℃程度で進行するため、素材の熱変性が起こらず、復水過程で味、色、栄養価、形状、テクスチャーなどが乾燥以前の状態に復元し易い事が大きなメリットとして挙げられる。
市販の凍結乾燥機の例としては、凍結乾燥機VD−800F(タイテック(株))、フレキシドライMP(FTSシステムズ社)、デュラトップ・デュラストップ(FTSシステムズ社)、宝真空凍結乾燥機A型((株)宝エーテーエム)、卓上凍結乾燥機FD−1000(東京理化器械(株))、真空凍結乾燥機FD−550(東京理化器械(株))、真空凍結乾燥機((株)宝製作所)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0134】
また、本発明の製造方法では、乾燥手段として、生産効率と品質を両立する観点から噴霧乾燥法が特に好ましい。噴霧乾燥は対流熱風乾燥の一種である。液状の組成物が熱風中に数100μm以下の微小な粒子として噴霧され、乾燥されながら塔内を落下して行くことで固体粉末として回収される。素材は一時的に熱風に曝されるが、曝されている時間が非常に短いことと水の蒸発潜熱のため余り温度が上がらないことから、凍結乾燥同様に素材の熱変性が起きにくく、復水による変化も小さいものである。非常に熱に弱い素材の場合、熱風の代わりに冷風を供給することも可能である。その場合、乾燥能力は落ちるが、よりマイルドな乾燥を実現できる点で好ましい。
【0135】
市販の噴霧乾燥機の例としては、噴霧乾燥機スプレードライヤSD−1000(東京理化器械(株))、スプレードライヤL−8i(大川原化工機(株))、クローズドスプレードライヤCL−12(大川原化工機(株))、スプレードライヤADL310(ヤマト科学(株))、ミニスプレードライヤB−290(ビュッヒ社)、PJ−MiniMax(パウダリングジャパン(株))、PHARMASD(ニロ社)等が挙げられるがこれに限定されることはない。
また、例えば流動層造粒乾燥機MP−01((株)パウレック)、流動層内蔵型スプレードライヤFSD(ニロ社)等のように。乾燥と造粒とを同時に行える装置で、乾燥と同時に取り扱い性の優れた顆粒状にすることも好ましい。
【実施例】
【0136】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の記載で「部」と「%」表示してあるものは、特に断らない限り質量基準である。
【0137】
<油相組成物の調製>
下記に示される油相成分を、攪拌しながら室温から155℃〜160℃の範囲となるように調整昇温し、155℃〜160℃の範囲の温度で約10分間加熱保持しながら溶解して、冷却しカロチノイド含有油相組成物1を得た。
<水相組成物の調製>
下記に示される水相成分(炭酸ナトリウムを除く)を、70℃で加熱しながら、混合攪拌して溶解した後、600W超音波ホモジナイザー((株)日本精機製作所社製 US−150T)にて90秒間、粗分散して、水性組成物1を得た。
【0138】
[油相成分1]
・リコピンペースト(リコピン濃度18%) 5.90g
・モノステアリン酸ジグリセリル 0.59g
・アスコルビン酸カルシウム50%溶液 4.72g
・フェルラ酸 1.78g
【0139】
[水相成分1]
・ショ糖ラウリン酸エステル 11.10g
・レシチン 1.81g
・トレハロース 6.55g
・アスコルビン酸 7.97g
・アスコルビン酸ナトリウム 7.97g
・炭酸ナトリウム(乳化液に添加する。) 7.07g
・水 246.90g
【0140】
なお、リコピンペーストはリコピン18((株)協和ウエルネス製)、モノステアリン酸ジグリセリルはNIKKOL DGMS(HLB=5.0、日光ケミカルズ(株)製)、ショ糖ラウリン酸エステルはリョートーシュガーエステルL−1695(HLB=16、三菱化学フーズ(株)製)、レシチンはレシオンP(理研ビタミン(株)製)、トレハロースは(株)林原製、アスコルビン酸は第一ファインケミカル(株)製ビスコリン(STDM)、アスコルビン酸ナトリウムは第一ファインケミカル(株)製L−アスコルビン酸ナトリウム、炭酸ナトリウムは関東化学(株)製(食品添加物)をそれぞれ使用した。
【0141】
リコピン18の融点は、153℃である(DSC吸熱ピーク値)。DSC吸熱ピーク値は、DSC Q2000(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株))を使用して測定した。
【0142】
<乳化物の調製>
油相組成物1を攪拌しながら70℃に保温し、これに、上記で調製し70℃に保温された水相組成物1を全量添加して、600W超音波ホモジナイザーにて3分間分散を行い、粗分散乳化物1を得た(カロチノイド濃度0.354%)。
次いで、粗分散乳化物1を、スターバーストミニ(株式会社スギノマシン製)を用いて、245MPaの圧力及び30℃での高圧乳化処理を4回繰り返して、乳化液1aを得た。
更に、得られた乳化液1aに、炭酸ナトリウムを攪拌しながら加え、溶解して、カロチノイド含有油相組成物である乳化物1を得た(カロチノイド濃度0.36%)。
【0143】
次いで、得られた乳化物1を、スプレードライ(スプレードライヤADL310型、ヤマト科学製)を用いて、噴霧圧力0.15MPa、出口温度80℃、処理量7ml/分の条件にて噴霧乾燥した後、サイクロンで粉末を捕集し、カロチノイド濃度2.00%のカロチノイド含有油相組成物である粉末組成物1を得た。
【0144】
上記により得られたカロチノイド含有油相組成物1、乳化物1、及び粉末組成物1の水溶解物について、偏光顕微鏡観察を行い、カロチノイド類由来が結晶の存在について評価した。
偏光顕微鏡観察は、PCLIPSE LV100POL ((株)ニコン)を使用して、カロチノイド含有油相組成物1及び乳化物1はそれら自体について、粉末組成物1は、固形分濃度が1%となるように水に分散させて乳化物としたものについて、目視にて行った。その結果、結晶性カロチノイドであるリコピン由来が殆ど認められないことを確認した。このことは、結晶性カロチノイドの少なくとも90質量%以上が非結晶であることに相当する。
【0145】
[実施例2]
<油相組成物の調製>
70℃の恒温水槽で加温しながら、下記に示される油相成分のうち、トリ(カプリル酸・カプロン酸)グリセリンに、ミックストコフェロール及びフェルラ酸を加えて溶解分散し、分散液を得た。次いで、得られた分散液に、フコキサンチンペーストを加え十分に攪拌溶解し、カロチノイド含有油相組成物2を得た。
<水相組成物の調製>
下記に示される水相成分(炭酸ナトリウムを除く)を、70℃で加熱しながら、混合攪拌して溶解した後、600W超音波ホモジナイザー((株)日本精機製作所社製 US−150T)にて90秒間、粗分散して、水性組成物1を得た。
【0146】
[油相成分2]
・フコキサンチンペースト(フコキサンチン濃度15%) 3.54g
・トリ(カプリル酸・カプロン酸)グリセリン 4.15g
・ミックストコフェロール 0.60g
・フェルラ酸 0.89g
【0147】
[水相成分2]
・ショ糖ラウリン酸エステル 11.84g
・レシチン 1.93g
・トレハロース 10.86g
・アスコルビン酸 7.97g
・アスコルビン酸ナトリウム 7.97g
・炭酸ナトリウム(乳化液に添加する) 3.36g
・水 246.90g
【0148】
なお、フコキサンチンペーストはフコキサンチン15(北京金可グループ製、フコキサンチン15%ペースト)、トリ(カプリル酸・カプロン酸)グリセリンはココナードMTは(HLB=1、花王(株)製)、ミックストコフェロールは理研Eオイル800(理研ビタミン(株)製)、フェルラ酸は築野食品工業(株)製、ショ糖ラウリン酸エステルはリョートーシュガーエステルL−1695(HLB=16、三菱化学フーズ(株)製)、レシチンはレシオンP(理研ビタミン(株)製)、トレハロースは(株)林原製、アスコルビン酸は第一ファインケミカル(株)製ビスコリン(STDM)、アスコルビン酸ナトリウムは第一ファインケミカル(株)製L−アスコルビン酸ナトリウム、炭酸ナトリウムは関東化学(株)製(食品添加物)をそれぞれ使用した。
【0149】
<乳化物の調製>
油相組成物2を攪拌しながら70℃に保温し、上記で得られた70℃に保温された水相組成物1中に、油相組成物2を全量添加して、600W超音波ホモジナイザーにて3分間分散を行い、粗分散乳化物2を得た。
次いで、粗分散乳化物2を、スターバーストミニ(株式会社スギノマシン製)を用いて、245MPaの圧力及び30℃での高圧乳化処理を4回繰り返して、乳化液を得た。
さらに炭酸ナトリウムを攪拌しながら加え、溶解して、カロチノイド含有油相組成物である乳化物2を得た(カロチノイド濃度0.177%)。
【0150】
次いで、得られた乳化物2を、スプレードライ(スプレードライヤADL310型、ヤマト科学製)を用いて、噴霧圧力0.15MPa、出口温度80℃、処理量7ml/分の条件にて噴霧乾燥した後、サイクロンで粉末を捕集し、カロチノイド含有油相組成物であるカロチノイド濃度1.00%の粉末組成物2を得た。
【0151】
[実施例3]
油相成分及び水相成分の種類及び含有量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、油相組成物3、及び水相組成物3を得た。実施例1と同様にして、油相組成物3と、水相組成物3とを用いて乳化を行って、乳化物3を得た(カロチノイド濃度0.36%)。
更に噴霧乾燥を行って、カロチノイド濃度2.00%の粉末組成物3を得た。
【0152】
[実施例4]
油相成分及び水相成分の種類及び含有量を表1に示すように変更した以外は、実施例2と同様にして油相組成物4、及び水相組成物4を得た。実施例2と同様にして、油相組成物4と、水相組成物4とを用いて乳化を行って乳化物4を得た(カロチノイド濃度0.18%)。
更に噴霧乾燥を行って、カロチノイド濃度1.00%の粉末組成物4を得た。
【0153】
[実施例5]
油相成分及び水相成分の種類及び含有量を表1に示すように変更した以外は、実施例2と同様にして油相組成物5、及び水相組成物5を得た。実施例2と同様にして、油相組成物5と、水相組成物5とを用いて乳化を行って乳化物5を得た(カロチノイド濃度0.177%)。
更に噴霧乾燥を行って、カロチノイド濃度0.85%の粉末組成物5を得た。
【0154】
[実施例6]
油相成分及び水相成分の種類及び含有量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、油相組成物6、及び水相組成物6を得た。実施例1と同様にして、油相組成物6と、水相組成物6とを用いて乳化を行って、乳化物6を得た(カロチノイド濃度0.36%)。
更に噴霧乾燥を行って、カロチノイド濃度2.00%の粉末組成物3を得た。
【0155】
[実施例7]
油相成分及び水相成分の種類及び含有量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、油相組成物3、及び水相組成物3を得た。炭酸ナトリウムの添加に代えて、所期のpHになる迄1mol水酸化ナトリウム溶液を添加し、最後に全体の質量が300gとなるように蒸留水にて調製した以外は、実施例1と同様にして、油相組成物3と、水相組成物3とを用いて乳化を行って、乳化物3を得た(カロチノイド濃度0.36%)。
更に噴霧乾燥を行って、カロチノイド濃度2.00%の粉末組成物3を得た。
【0156】
[比較例1]
油相成分及び水相成分の種類及び含有量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、油相組成物C1、及び水相組成物C1を得た。実施例1と同様にして、油相組成物C1と、水相組成物Cを用いて乳化を行って乳化物C1を得た(カロチノイド濃度0.0.35%)。
更に噴霧乾燥を行って、カロチノイド濃度2.00%の粉末組成物C1を得た。
【0157】
[比較例2]
油相成分及び水相成分の種類及び含有量を表1に示すように変更した以外は、実施例2と同様にして油相組成物C2、及び水相組成物C2を得た。実施例2と同様にして、油相組成物C2と、水相組成物C2とを用いて乳化を行って乳化物C2を得た(カロチノイド濃度0.18%)。
更に噴霧乾燥を行って、カロチノイド濃度1.00%の粉末組成物C2を得た。
【0158】
[比較例3]
油相成分及び水相成分の種類及び含有量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、油相組成物C3、及び水相組成物C3を得た。実施例1と同様にして、油相組成物C3と、水相組成物C3を用いて乳化を行って乳化物C1を得た(カロチノイド濃度0.35%)。
更に噴霧乾燥を行って、カロチノイド濃度2.00%の粉末組成物C3を得た。
【0159】
[比較例4]
油相成分及び水相成分の種類及び含有量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、油相組成物C4、及び水相組成物C4を得た。実施例1と同様にして、油相組成物C4と、水相組成物C4を用いて乳化を行って乳化物C4を得た(カロチノイド濃度0.36)。
更に噴霧乾燥を行って、カロチノイド濃度2.00%粉末組成物C4を得た。
【0160】
実施例3〜7で得られた乳化物3〜7及び粉末組成物3〜7は、いずれも実施例のカロチノイド含有組成物である。また、比較例1〜4で得られた乳化物C1〜C4及び粉末組成物C1〜C4は、いずれも比較用のカロチノイド含有組成物である。
【0161】
なお、表1中、モノステアリン酸グリセリルは、MGS−F50V(グリセリン数1、ステアリン酸数1、日光ケミカルズ(株)製、HLB=3.5)、γ−オリザノールはオリザ油化(株)製、モノステアリン酸デカグリセリルは、Decaglyn−50SV(日光ケミカルズ(株)製、HLB=15)、イヌリンはフジFF(フジ日本精糖(株)製)、アスコルビン酸カルシウムは、DSM Nutriional Rroducts,Inc製Calucium Ascorbate、炭酸水素ナトリウムは関東化学(株)製(食品添加物)、水酸化ナトリウムは和光純薬工業(株)製1mol水酸化ナトリウム溶液をそれぞれ使用した。
【0162】
【表1】

【0163】
<評価>
[1]粉末組成物及び乳化物の物性評価
乾燥工程前の乳化物と、得られた粉末組成物の評価は、以下のとおりに行った。
【0164】
(a)保存安定性評価
カロチノイド含有組成物の保存安定性は、各実施例及び比較例にて得られた粉末組成物1〜7、C1〜C4、及び、乳化物1〜2、4、6、C1〜C4について、以下のごとくカロチノイド残存率(%)を算出することにより評価した。
【0165】
<調製直後のカロチノイド残存率>
各実施例及び比較例で得られた粉末組成物1〜7、C1〜C4については、0.005%容量のカロチノイド濃度となるように純水を添加して乳化物とした後に5.65倍に希釈し充分に溶解させ、アセトンで1062倍希釈し充分に溶解させた。
また、各実施例及び比較例で得られた乳化物1〜2、4、6、C1〜C4については、0.005容量%のカロチノイド濃度となるように、アセトンで1062倍希釈して充分に溶解させた。
ついで、得られた各溶解物を0.45μmのフィルタで濾過した後、その濾過物について最大ピーク波長の吸光度(465nm〜475nm)を、分光光度計V−630(日本分光(株)製)で測定した。
【0166】
カロチノイド残存率の評価は、実施例1、3、6、7、比較例1、3、4については、リコピン18をリコピン濃度0.005容量%となるようにアセトンで希釈して同様にピーク波長の吸光度を測定し、このリコピンの吸光度を100%とした時の割合を各組成物におけるカロチノイド残存率とした。
また、実施例2、4、5、比較例2については、フコキサンチン15をフコキサンチン濃度0.005容量%となるようにアセトンで希釈して同様にピーク波長の吸光度を測定し、このフコキサンチンの吸光度を100%とした時の割合を各組成物におけるカロチノイド残存率とした。結果を表2に示す。
【0167】
<経時後のカロチノイド残存率>
各実施例及び比較例で得られた粉末組成物1〜7、C1〜C4、及び、乳化物1〜2、4、6、C1〜C4の各々を、40℃で4ヶ月間保存した後、調製直後の場合と同様にして吸光度を測定し、各組成物におけるカロチノイド残存率を得た。結果を表2に示す。
【0168】
(b)平均粒子径
各実施例及び比較例で得られた乳化物1〜7、C1〜C4の各々については、各乳化物に純水を添加して20倍に希釈し、また粉末組成物1〜7、C1〜C4については、各粉末組成物に固形分濃度が1%となるように純水を添加して乳化物とした後に、それぞれ、粒子径アナライザー FPARE−1000(大塚電子(株))を用いて25℃でのd=50の値を平均粒子径として読み取った。結果を表2に示す。
【0169】
【表2】

【0170】
表1及び表2から示されるように、実施例1〜7のカロチノイド含有組成物は、乳化物形態であっても粉末形態であっても、優れた保存安定性を有することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カロチノイド類と、アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種と、乳化剤とを含有し、前記アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種が、前記カロチノイド類の総モル数に対して、アスコルビン酸換算で30倍モル以上190倍モル以下の範囲となる量で含有され、且つ、pHが6.5以上9.0以下の範囲であるカロチノイド含有組成物。
【請求項2】
前記カロチノイド類が、リコピン及びフコキサンチンから選択された少なくとも1種である請求項1に記載のカロチノイド含有組成物。
【請求項3】
前記アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種が、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、及びL−アスコルビン酸カルシウムから選択された少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載のカロチノイド含有組成物。
【請求項4】
更に、芳香族カルボン酸類、ケイ皮酸類、及びエラグ酸類からなるフェノール系酸化防止剤、並びに、トコフェロール類から選択された少なくとも1種を含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のカロチノイド含有組成物
【請求項5】
更に、水溶性包括剤を含有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のカロチノイド含有組成物。
【請求項6】
更に、グリセリン単位が1〜6であり脂肪酸単位の数が1〜6であって、グリセリン単位の水酸基を少なくとも1つ有する(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルを含有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のカロチノイド含有組成物。
【請求項7】
平均粒子径が50nm〜300nmの範囲であり、前記カロチノイド類を含む分散粒子を含有する水中油型の乳化組成物である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のカロチノイド含有組成物。
【請求項8】
前記水中油型の乳化組成物における前記分散粒子が、更に、前記アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種を含む請求項7に記載のカロチノイド含有組成物。
【請求項9】
粉末組成物である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のカロチノイド含有組成物。
【請求項10】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のカロチノイド含有組成物の製造方法であって、カロチノイド類を含有する油相組成物、及び、アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種と、乳化剤とを含有する水相組成物を混合し、加圧乳化して水中油型乳化組成物を得ること、を含むカロチノイド含有組成物の製造方法。
【請求項11】
前記油相組成物が、前記カロチノイド類と、グリセリン単位が1〜6であり脂肪酸単位の数が1〜6であって、グリセリン単位の水酸基を少なくとも1つ有する(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルと、を混合して油相成分混合液を得た後、該油相成分混合液を、前記カロチノイド類の融点以上の温度条件で加熱することにより得られる請求項10に記載のカロチノイド含有組成物の製造方法。
【請求項12】
前記油相組成物が、アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種を含む請求項10又は請求項11に記載のカロチノイド含有組成物の製造方法。
【請求項13】
前記水中油型の乳化組成物を乾燥して粉末組成物を得ること、を含む請求項10〜請求項12のいずれか1項に記載のカロチノイド含有組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−214462(P2012−214462A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−74017(P2012−74017)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】