説明

カーカスプライの製造装置

【課題】カーカスプライ片を精度良く安定して供給し、人手によるカーカスプライ材料の送出しが容易にできるカーカスプライの製造装置を提供する。
【解決手段】カーカスプライの製造装置は、長尺状のカーカスプライ材料Cpを切断するカッター11と、カーカスプライ材料Cpを把持して送出すチャック14、チャック14の送出しと連動してカーカスプライ材料Cpをカッター11に向けて送る駆動ローラ2およびピンチローラ3、チャック14をカッター11の方向に往復動させるエアシリンダ9、エアシリンダ9に取り付けられチャック14の往復動に合わせ往復動するラックギア4、ラックギア4に噛み合わされたピニオンギア5、ラックギア4の往動に合わせピニオンギア5を回転させるワンウエイクラッチ12、ピニオンギア5の回転を駆動ローラ2に伝達する伝達機構を備えた送出し機構とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーカスプライの製造装置に関し、詳しくは、長尺状に成形されたカーカスプライ材料(JLC)を、精度良く短冊状にカットして供給することができるカーカスプライの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤのユニフォミティを向上させるために、図2に示すように、内圧インフレート時のタイヤ内面形状に近似した外周面を有する中子(剛体コア)31の外面に、短冊状にカットされた複数のカーカスプライ片を、タイヤ周方向に連続して貼り付け、カーカスプライCを成形させることが行われている(例えば特許文献1)。
【0003】
上記した短冊状のカーカスプライ片は、従来より、図3に示すようなカーカスプライの製造装置を用いて、長尺状に成形されたカーカスプライ材料Cpを所定寸法にカットすることにより製造されている。図3は従来のカーカスプライの製造装置の概要を模式的に示す図であり、(a)は正面図、(b)はA−A矢視図である。図3に示すように、カーカスプライの製造装置には、チャック42、エアシリンダ43、上下のカッター刃44aおよび44bからなるカッター44が備えられている。そして、エアシリンダ43は、チャック42を開閉させてカーカスプライ材料Cpを把持すると共に、チャック42を図3(a)の左右に往復動するように、チャック42に連結されている。
【0004】
チャック42は、予め長尺状に成形されたカーカスプライ材料Cpを把持した後、エアシリンダ43の往動に合わせて図3(a)の左方向に移動し、カーカスプライ材料Cpを所定の長さ送出す。その後、押さえ板45でカーカスプライ材料Cpを押さえ、上部カッター刃44aを下降させて送出されたカーカスプライ材料Cpを切断する。所定の長さで短冊状に切断されたカーカスプライ片は、図示しない受け台に落とされる。カットが完了した後は、チャック42は開いてカーカスプライ材料Cpの把持を解除した状態で、エアシリンダ43の復動に合わせて、図3(a)の右方向に移動し、元の位置に戻る。この動作が繰り返されることにより、所定の長さにカットされた短冊状のカーカスプライ片が順次作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−39915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記のカーカスプライの製造装置では、チャックとカッターとの距離が長いため、カーカスプライ材料の撓みが発生したり、チャックにカーカスプライ材料が密着したりして、送出し寸法にバラツキを招く可能性やカーカスプライ材料の巻き込みトラブルの発生を招く可能性があった。
【0007】
この結果、従来のカーカスプライの製造装置では、所定寸法にカットされた短冊状のカーカスプライ片を、精度良く、安定して供給することが困難であった。
【0008】
さらに、必要に応じて、人手によりカーカスプライ材料の送出しを行う場合、容易に送出しを行うことが困難であった。
【0009】
このため、カーカスプライ材料の撓みが発生したり、チャックにカーカスプライ材料が密着したりすることがなく、送出し寸法のバラツキの低減や、カーカスプライ材料の巻き込みトラブルの発生の低減ができ、その結果、所定寸法にカットされた短冊状のカーカスプライ片を、精度良く、安定して供給することができるカーカスプライの製造装置が求められていた。さらに、人手によるカーカスプライ材料の送出しを容易に行うことができるカーカスプライの製造装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、
長尺状に成形されたカーカスプライ材料を切断するカッターと、前記カーカスプライ材料を一定の長さで前記カッターに向けて送出す送出し機構とを備えており、
前記送出し機構は、
前記カーカスプライ材料を把持して前記カッターに向けて送出すチャックと、
前記チャックの送出しと連動して、前記カーカスプライ材料を前記カッターに向けて送る上下一対の駆動ローラおよびピンチローラと、
前記チャックを前記カッターの方向に往復動させるエアシリンダと、
前記エアシリンダに取り付けられて、前記チャックの往復動に合わせて往復動するラックギアと、
前記ラックギアと噛み合って回転するピニオンギアと、
前記ラックギアが往動するときにのみ前記ピニオンギアを回転させるワンウエイクラッチと、
ピニオンギアの回転を前記駆動ローラに伝達する伝達機構と
を備えており、
前記エアシリンダの往動時には、前記チャックが前記カーカスプライ材料を把持して前記カッターに向けて送り出すと共に、ピニオンギアの回転により前記駆動ローラを回転させることにより前記カーカスプライ材料を前記カッターに向けて送る
ことを特徴とするカーカスプライの製造装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、
手動送出し用リューズが、前記ピニオンギアに連結して設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカーカスプライの製造装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カーカスプライ材料の撓みが発生したり、チャックにカーカスプライ材料が密着したりすることがなく、送出し寸法のバラツキの低減や、カーカスプライ材料の巻き込みトラブルの発生の低減ができ、その結果、所定寸法にカットされた短冊状のカーカスプライ片を、精度良く、安定して供給することができるカーカスプライの製造装置を提供することができる。また、人手によるカーカスプライ材料の送出しを容易に行うことができるカーカスプライの製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係るカーカスプライの製造装置の主要部を模式的に示す図である。
【図2】空気入りタイヤの製造において、中子にカーカスを巻き付ける工程を模式的に示す図である。
【図3】従来のカーカスプライの製造装置の主要部を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施の形態に基づき、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
1.カーカスプライの製造装置
最初に、本実施の形態に係るカーカスプライの製造装置について説明する。図1は本実施の形態に係るカーカスプライの製造装置の主要部を模式的に示す図であり、(a)は正面図、(b)はA−A矢視図である。
【0016】
図1において、1はカーカスプライの製造装置であり、2は駆動ローラ、3はピンチローラ、4はラックギア、5はピニオンギア、6および7はギア、8はタイミングベルト、9はエアシリンダ、10は押さえ板、11は上下のカッター刃11aおよび11bよりなるカッター、12はワンウエイクラッチ、13は手動送出し用リューズ、14はチャック、Cpはカーカスプライ材料である。なお、駆動ローラ2およびピンチローラ3は、図1(a)に示すように、カッター11に近接して設けられている。
【0017】
本実施の形態において、カーカスプライ材料Cpは以下のように送出される。
【0018】
まず、図1の右側から搬入される長尺状に成形されたカーカスプライ材料Cpを、エアシリンダ9に連結されたチャック14により把持する。
【0019】
次に、エアシリンダ9が、チャック14にカーカスプライ材料Cpを把持させた状態で、チャック14をカッター11の方向に往復動させる。エアシリンダ9には、ラックギア4が連結して設けられているため、エアシリンダ9の往復動、即ち、チャック14の往復動に合わせて、ラックギア4も往復動する。そして、ラックギア4には、ピニオンギア5が噛み合わされており、エアシリンダ9の往復動に連動したラックギア4の往復動がピニオンギア5の回転に変えられる。
【0020】
そして、ピニオンギア5にはワンウエイクラッチ12が設けられ、ピニオンギア5と同軸のギア6が設けられている。このワンウエイクラッチ12の働きによりラックギア4が往動するときにのみピニオンギア5の回転がギア6に伝達される。
【0021】
さらに、ギア6にはギア7が噛み合わされており、ギア7と同軸のプーリと駆動ローラ2の間には、タイミングベルト8が懸架されている。これにより、ギア7の回転が駆動ローラ2に伝達され、駆動ローラ2が順回転する。前記したように、ラックギア4が往動するときにのみピニオンギア5の回転がギア6に伝達されるため、駆動ローラ2は逆回転することがなく、エアシリンダ9の復動時におけるカーカスプライ材料の引き戻し動作が解消される。
【0022】
このように、エアシリンダ9の往動にのみ連動して、チャック14の往動に合わせて駆動ローラ2が駆動することにより、チャック14に把持されたカーカスプライ材料Cpが、所定の長さ、カッター11に向けて送出される。なお、この間、押さえ板10および上部カッター刃11aは上昇している。
【0023】
所定の長さ送出されたカーカスプライ材料Cpは、押さえ板10が下降することにより押さえ付けられた後、上部カッター刃11aが下降して、カーカスプライ材料Cpを切断する。これにより、所定寸法にカットされた短冊状のカーカスプライ片が作製される。
【0024】
2.本実施の形態における効果
上記のようなカーカスプライの製造装置を用いることにより、以下の効果を得ることができる。
【0025】
本実施の形態に係るカーカスプライの製造装置においては、従来のカーカスプライの製造装置のように、単に、エアシリンダに連結されたチャックの往動のみにより、カーカスプライ材料を送出すのではなく、チャック14の往動と駆動ローラ2の回転を連動させることによりカーカスプライ材料を送出している。
【0026】
そして、送出しローラ、即ち駆動ローラ2およびピンチローラ3が、カッター11に近接して設けられている。
【0027】
この結果、従来のように、カーカスプライ材料の撓みが発生したり、チャックにカーカスプライ材料が密着したりすることが抑制されて、送出し寸法のバラツキが低減されたり、カーカスプライ材料の巻き込みトラブルの発生が低減される。これにより、所定寸法にカットされた短冊状のカーカスプライ片を、精度良く、安定して供給することができる。
【0028】
そして、駆動ローラ2の回転は、カーカスプライ材料Cpを送出す方向にのみ回転して逆回転しないように、ラックギア4とピニオンギア5により制御されているため、エアシリンダ9が戻り動作する際に、カーカスプライ材料Cpの引き戻しが発生せず、バックラッシュの発生を抑制することができる。
【0029】
さらに、本実施の形態においては、ピニオンギア5に手動送出し用リューズ13が連結して設けられており、この手動送出し用リューズ13を手動で回すことにより、カーカスプライ材料Cp取替え時などに、新しく搬入されたカーカスプライ材料Cpの送出しを、容易に行うことができ、作業者の負担を軽減させることができる。
【0030】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1、41 カーカスプライの製造装置
2 駆動ローラ
3 ピンチローラ
4 ラックギア
5 ピニオンギア
6、7 ギア
8 タイミングベルト
9、43 エアシリンダ
10、45 押さえ板
11、44 カッター
11a、44a 上部カッター刃
11b、44b 下部カッター刃
12 ワンウエイクラッチ
13 手動送出し用リューズ
14、42 チャック
31 中子
C カーカスプライ
Cp カーカスプライ材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状に成形されたカーカスプライ材料を切断するカッターと、前記カーカスプライ材料を一定の長さで前記カッターに向けて送出す送出し機構とを備えており、
前記送出し機構は、
前記カーカスプライ材料を把持して前記カッターに向けて送出すチャックと、
前記チャックの送出しと連動して、前記カーカスプライ材料を前記カッターに向けて送る上下一対の駆動ローラおよびピンチローラと、
前記チャックを前記カッターの方向に往復動させるエアシリンダと、
前記エアシリンダに取り付けられて、前記チャックの往復動に合わせて往復動するラックギアと、
前記ラックギアと噛み合って回転するピニオンギアと、
前記ラックギアが往動するときにのみ前記ピニオンギアを回転させるワンウエイクラッチと、
ピニオンギアの回転を前記駆動ローラに伝達する伝達機構と
を備えており、
前記エアシリンダの往動時には、前記チャックが前記カーカスプライ材料を把持して前記カッターに向けて送り出すと共に、ピニオンギアの回転により前記駆動ローラを回転させることにより前記カーカスプライ材料を前記カッターに向けて送る
ことを特徴とするカーカスプライの製造装置。
【請求項2】
手動送出し用リューズが、前記ピニオンギアに連結して設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカーカスプライの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−250424(P2012−250424A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124380(P2011−124380)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】