説明

カーテンウォールの取付け構造

【課題】建物の層間変位に対し追随性が良く、そのうえカーテンウォールの取付け作業性の向上、およびファスナーの部材点数並びに組付け工数の減少を図れるカーテンウォールの取付け構造を提供する。
【解決手段】カーテンウォール1Aを躯体3にファスナー2を介して取付ける。カーテンウォール1Aは押出型材からなる左右の縦枠8,8と上下の横枠10A,10Bにより形成された四方枠5を備え、少なくとも上側又は下側の横枠10A,10Bの裏面側にはガイドレール12を水平方向に一体に成形している。ファスナー2は、躯体3側に固定されて縦長孔64を有する取付金具65と、縦長孔64に挿通される頭付の取付ボルト66からなる。取付ボルト66の頭部66aはガイドレール12内に摺動自在に且つ抜止め状に嵌合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーテンウォールを建物躯体にファスナーを介して取付けるカーテンウォールの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カーテンウォールは、周知のように、各種ファスナーを使用して、地震や風圧などによる建物の層間変位に対し追随するように建物に取り付けられる。ファスナーの機構は、一般的に、躯体側に固定される一次ファスナーと、カーテンウォールに固定される二次ファスナーと、一次ファスナーと二次ファスナーを締結するボルト等の締結部材とにより構成され、一次ファスナーにはルーズ孔を設け、このルーズ孔に締結部材を挿通させて層間変位を吸収するようになしている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−239874号公報(図1)
【特許文献2】特開平11−324190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ファスナーの機構ではカーテンウォールの取り付け時に二次ファスナーを一次ファスナーに対し前後、左右、上下の位置合わせをする必要があり、その位置合わせは甚だ煩わしく、カーテンウォールの取り付け作業に多くの手数を要する。また、二次ファスナーはカーテンウォールとは別途用意し、これをカーテンウォールの所定箇所に固定する必要があるため、部材点数並びに組付け工数の増大を招く。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、建物の層間変位に対し追随性が良いうえ、カーテンウォールの取付け作業性の向上を図ることができ、さらにファスナーの部材点数並びに組付け工数の減少、コスト低減を図れるカーテンウォールの取付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項1に記載のように、カーテンウォールを躯体にファスナーを介して取付けるカーテンウォールの取付け構造において、前記カーテンウォールは押出型材からなる左右の縦枠と上下の横枠により形成された四方枠を備え、前記上側及び/又は下側の横枠の裏面側にはガイドレールを水平方向に一体に成形しており、前記ファスナーは、躯体側に固定されて縦長孔を有する取付金具と、前記縦長孔に挿通される頭付の取付ボルトとからなり、前記取付ボルトの頭部は前記ガイドレール内に水平方向に摺動自在に且つボルト軸方向に抜止め状に嵌合していることに特徴を有するものである。
このように構成したカーテンウォールの取付け構造によれば、躯体側に固定された取付金具の縦長孔に取付ボルトが挿通されるとともに、取付ボルトの頭部がカーテンウォールの四方枠の横枠に一体に成形された水平なガイドレール内に摺動自在に嵌合されているため、建物の層間変位に対し追従できる。
ガイドレールは、カーテンウォールの押出型材からなる四方枠の横枠に一体に成形しているので、前述した従来のファスナー機構のように別途二次ファスナーを用意したり、これをカーテンウォール側に固定したりする必要が無くなり、施工性を向上でき、部材コストを削減できる。
カーテンウォールの取付けに際してはカーテンウォールのガイドレールを躯体側の取付ボルトの頭部に嵌合させることで足り、この嵌合作業は、前述した従来のファスナー機構のように細心の注意を払う必要がある一次ファスナーと二次ファスナーとの位置合わせ作業に比べ、きわめて簡易に行えるため、取付け作業の合理化を図ることができる。
【0007】
請求項1記載のカーテンウォールの取付け構造は、請求項2に記載のように、前記カーテンウォールは前記四方枠の表面側に金属製平板パネルを張り付けたものとする。これによれば、金属製平板パネルにはアルミニウム板、ステンレス板、スチール板などを自由に選択することで各種金属の軽量なカーテンウォールを容易に得ることができる。また、金属製平板パネルは所定大きさに切断するだけで足り、曲げ加工を不要とするので、それだけ各種金属のカーテンウォールを低コストで得ることができる。
従来、高層ビルや大規模のビルに限られていたカーテンウォールにおけるオープンジョイント(等圧ジョイント)システムを中低層ビルに適応するとなると、カーテンウォールが多種少量生産でコスト高となりやすいが、上記のように押出型材からなる四方枠とこれの表面側に張り付ける金属製平板パネルとの組み合わせによるカーテンウォールを採用すれば、中低層ビルにオープンジョイント工法を採用する場合もコスト面において問題なく適応することができる。
【0008】
請求項2記載のカーテンウォールの取付け構造は、請求項3に記載のように、前記金属製平板パネルの表面に硬質セラミック塗装を施したものとすることができる。これによれば耐候性、耐久性に優れ、長期間に亘るメンテナンスフリーを維持できるカーテンウォールが得られる。
【0009】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のカーテンウォールの取付け構造は、請求項4に記載のように、前記取付金具は前記縦長孔を上下2個設け、上部の縦長孔に挿通される取付ボルトの頭部は上下に配されたカーテンウォールのうち上側のカーテンウォールの四方枠の下側の横枠のガイドレールに摺動自在に嵌合され、下部の縦長孔に挿通される取付ボルトの頭部は下側のカーテンウォールの四方枠の上側の横枠のガイドレールに摺動自在に嵌合されているものとすることができる。これによれば、取付金具の所要数を削減できるとともに施工が容易になり、カーテンウォールの取付工事の合理化を図ることができる。
【0010】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のカーテンウォールの取付け構造は、請求項5に記載のように、前記取付金具は前記縦長孔を左右2個設け、一方の縦長孔に挿通される取付ボルトの頭部は左右に並べて配されたカーテンウォールのうち一方のカーテンウォールの四方枠の上側又は下側の横枠のガイドレールに摺動自在に嵌合され、もう一方の縦長孔に挿通される取付ボルトの頭部はもう一方のカーテンウォールの四方枠の上側又は下側の横枠のガイドレールに摺動自在に嵌合されているものとすることができる。これによれば、取付金具の所要数を削減できるとともに施工が容易になり、カーテンウォールの取付工事の合理化を図ることができる。
【0011】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のカーテンウォールの取付け構造は、請求項6に記載のように、前記取付金具には、先端がカーテンウォールの上側の横枠の下面側に当接する調整ボルトを垂直に取り付ける。これにより、調整ボルトを回転させることでカーテンウォールの取付け高さ調整、レベル調整を行うことができ、ひとつの取付金具が建物の層間変位に追従するカーテンウォールの取付け機能と、カーテンウォールの取付け高さ調整機能の二役をこなす。
【0012】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のカーテンウォールの取付け構造は、請求項7に記載のように、前記ガイドレールは断面リップ付き溝形状に形成することができる。これによれば、取付ボルトの頭部を摺動自在に且つ抜止め状に嵌合し得るガイドレールを押出型材の押出加工で容易に一体成形することができる。
【0013】
請求項2ないし7のいずれか1項に記載のカーテンウォールの取付け構造は、請求項8に記載のように、前記金属製平板パネルと前記四方枠とは、前記金属製平板パネルの裏面に予め固着されたスタッドボルトを四方枠に設けたボルト挿通孔に挿通し、該ボルト挿通孔から突出するスタッドボルトの先端にナットを締め付けることで結合することができる。これによれば、金属製平板パネルを四方枠の表面側に簡単かつ強固に一体的に結合することができる。
【0014】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のカーテンウォールの取付け構造は、請求項9に記載のように、前記四方枠の内面側に金属製補強材を装着したものとすることができる。これによりカーテンウォールを大型化する場合もそれ自体の強度を補強することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、建物の層間変位に対し追随性が良いうえ、カーテンウォールの取付け作業性の向上、およびファスナーの部材点数並びに組付け工数の減少、コスト低減を図れる点で有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施例を示すカーテンウォールの取付け構造の外観正面図、図2は図1におけるA−A線断面図、図3は図2における上半分部拡大図、図4は図2における下半分部拡大図、図5は図1におけるB−B線断面図、図6は図1におけるC−C線断面図、図7は図1におけるD−D線断面図である。
【0017】
本発明のカーテンウォールの取付け構造は、図1〜図7に示すように、カーテンウォール1の個々をファスナー2によって階高にまたがって設置された立骨等の躯体3に緊結するものである。
【0018】
図1に示すように、カーテンウォール1は、表面材であるアルミニウム板、ステンレス板、スチール板、アルミニウム鋳造板等の金属製平板パネル4と、金属製の四方枠5とを備えたカーテンウォール1A(以下、「平板パネル張りタイプのカーテンウォール」という。)や、表面材である各種ガラス6と、金属製の四方枠(サッシュ)7とを備えたカーテンウォール1B(以下、「ガラスはめ込みタイプのカーテンウォール」という。)などを含む。
【0019】
図1〜図4に示すように、平板パネル張りタイプのカーテンウォール1Aの四方枠5はアルミニウムなどの金属材料を押出加工した押出型材からなる左右の縦枠8,8と上下の横枠10A,10Bとを四角形に枠組みしてなる。ガラスはめ込みタイプのカーテンウォール1Bの四方枠7は、同じくアルミニウムなどの金属材料を押出加工した押出型材からなる左右の縦枠9,9と上下の横枠11A,11Bとを四角形に枠組みしてなる。
【0020】
平板パネル張りタイプのカーテンウォール1Aの四方枠5と、ガラスはめ込みタイプのカーテンウォール1Bの四方枠7とは断面形状が少し異なるが、共通しているのはそれぞれの上側及び/又は下側の横枠10A,10B,11A,11Bの裏面側に断面リップ付き溝形状のガイドレール12,13を水平方向に一体に成形している点である。
【0021】
図2、図3に示すように、平板パネル張りタイプのカーテンウォール1Aの四方枠5の上側の横枠10Aは中空押出型材からなり、前面板14と、前面板14の上端から後方へ上り傾斜状に連設した傾斜上面板15と、傾斜上面板15の後端から立ち上がり連設した起立板16と、起立板16の上端から前方へ連設した前方開放状の溝形板17と、起立板16と起立板17の後方に間隔を置いて対向配備された後面板18との間に上向き開放状に形成した溝形部19と、後面板18の後端(裏面側)に後ろ向き開放状に形成した断面リップ付き溝形状のガイドレール12と、後面板18の下端と前面板14の後面の上下方向中間部とをつないだ下面板20を有する中空形状に形成している。
【0022】
図2、図4に示すように、平板パネル張りタイプのカーテンウォール1Aの四方枠5の下側の横枠10Bは中空押出型材からなり、前面板21と、前面板21の下端から後方へ連設した下面板22と、下面板22に下向き開放状に形成した第1溝形部23と、前面板21の後面の上下方向中間部から後方へ連設した上面板24と、上面板24の前後方向中間部と第1溝形部23とをつないだ中間板25と、上面板24の中間板より後方の下面に下向き開放状に形成した第2溝形部26と、上面板24の後端(裏面側)に後ろ向き開放状に形成した断面リップ付き溝形状のガイドレール12を有する中空形状に形成している。
【0023】
図6、図7に示すように、平板パネル張りタイプのカーテンウォール1Aの四方枠5の左右の各縦枠8は、前面板27と、前面板27の外側端から後方へ連設した側面板28と、側面板28の前後方向中間部に外方開放状に形成した第1溝形部29と、側面板28の後端部に外方開放状に形成した第2溝形部30と、側面板28の後端に連設した後面板31とを有する形に形成している。
【0024】
図2〜図4、図6、図7に示すように、これら上下の横枠10A,10Bと左右の縦枠8,8からなる四方枠5の表面側には金属製平板パネル4が上下横枠10A,10Bの前面板14,21の外周および左右縦枠8,8の前面板27,27の外周の四方に連続して充填されるシリコン等のシール材32を介して張り付けられる。その際、金属製平板パネル4と四方枠5とは、金属製平板パネル4の裏面の四方に予め固着されたアルミニウム製のスタッドボルト33を左右の縦枠8,8のボルト挿通孔34と上下の横枠10A,10Bの各前面板14,21に設けたボルト挿通孔35に挿通し、該ボルト挿通孔34,35から突出するスタッドボルト33の先端にナット36を締め付けることにより一体的に結合される。金属製平板パネル4の表面には硬質セラミック塗装を施している。図5、図7に示すように、四方枠5の内面側にはカーテンウォール1Aの大きさに応じてそれ自体の強度を補強するためにスチール等金属製補強材37,38を縦横に装着する。
【0025】
図2、図4に示すように、ガラスはめ込みタイプのカーテンウォール1Bの四方枠7の上側の横枠11Aは中空押出型材からなり、前面板39と、前面板39の上端から後方へ上り傾斜状に連設した傾斜上面板40と、傾斜上面板40の後端から立ち上がり連設した起立板41と、起立板41の上端から前方へ連設した前方開放状の溝形板42と、起立板41と該起立板41後方に間隔を置いて対向配備された後面板43との間に上向き開放状に形成した溝形部44と、後面板43の後端(裏面側)に後ろ向き開放状に形成した断面リップ付き溝形状のガイドレール13と、傾斜上面板40の下面の前後方向中間部から下向きに連設した中間板45と、後面板43の上下方向中間部と中間板45の下端とをつないだ下面板46を有する中空形状に形成している。
【0026】
図2、図3に示すように、ガラスはめ込みタイプのカーテンウォール1Bの四方枠7の下側の横枠11Bは中空押出型材からなり、前面板47と、前面板47の下端から後方へ連設した下面板48と、下面板48に下向き開放状に形成した第1溝形部49と、前面板47の後面の上下方向中間部から後方へ連設した上面板50と、上面板50の前後方向中間部と第1溝形部49とをつないだ中間板51と、上面板50の中間板51より後方の下面に下向き開放状に形成した第2溝形部52と、上面板50の後端(裏面側)に後ろ向き開放状に形成した断面リップ付き溝形状のガイドレール13を有する中空形状に形成している。
【0027】
図1、図6に示すように、ガラスはめ込みタイプのカーテンウォール1Bの四方枠7の左右の各縦枠9は、前面板53と、前面板53の後面の左右方向中間部から後方へ連設した側面板54と、側面板54の前後方向中間部に外方開放状に形成した第1溝形部55と、側面板54の後端部に外方開放状に形成した第2溝形部56と、側面板54の後端に連設した後面板57を有する形に形成している。
【0028】
図2、図3、図6に示すように、これら上下の横枠11A,11Bと左右の縦枠9,9からなる四方枠7の表面側にはガラス6がはめ込まれる。その際、上側の横枠11Aの下面板46の下側、下側の横枠11Bの上面板50の前後方向後半部の上側、および左右の縦枠9,9の各側面板54の前後方向後半部の内面側にそれぞれ押縁58,59,60を装着することにより各前面板39,47,53との間にガラス6のはめ込まれる溝61,62,63が形成される。
【0029】
図2〜図7に示すように、ファスナー2は、立骨など躯体3側に溶接等で固定され、縦長孔64を有する取付金具65と、縦長孔64に挿通される頭付の取付ボルト66とからなる。取付ボルト66は頭部66aを縦長孔64から前方へ突出し、縦長孔64の後方へ突出する軸部66bにナット67をばね座金68を介して螺合させている。取付ボルト66の頭部66aはカーテンウォール1A,1Bの上下の横枠10A,10B,11A,11Bにそれぞれ一体に成形されたガイドレール12,13内に水平方向に摺動自在に且つボルト軸方向に抜止め状に嵌合される。
【0030】
図2〜図4に例示する取付金具65は縦長孔64を上下2個設ける。かくして、例えば、図3において、上下に配されて互いに接合されるカーテンウォール1Bの下側の横枠11Bとカーテンウォール1Aの上側の横枠10Aのうち、カーテンウォール1Bの横枠11Bのガイドレール13に上部の縦長孔64に挿通される取付ボルト66の頭部66aが摺動自在に嵌合され、カーテンウォール1Bの横枠11Bのガイドレール12に下部の縦長孔64に挿通される取付ボルト66の頭部66aが摺動自在に嵌合される。図4においては、上下に配されて互いに接合されるカーテンウォール1Aの下側の横枠10Bとカーテンウォール1Bの上側の横枠11Aのうち、カーテンウォール1Aの横枠10Bのガイドレール12に上部の縦長孔64に挿通される取付ボルト66の頭部66aが摺動自在に嵌合され、カーテンウォール1Bの横枠11Aのガイドレール13に下部の縦長孔64に挿通される取付ボルト66の頭部66aが摺動自在に嵌合される。
【0031】
また、図7に示すように、取付金具65は縦長孔64を左右2個設ける。かくして、例えば、図7のように、一方の縦長孔64に挿通される取付ボルト66の頭部66aは左右に並べて配されて互いに接合されるカーテンウォール1A,1Aのうち一方のカーテンウォール1Aの四方枠5の上側又は下側の横枠10A,10Bのガイドレール12に摺動自在に嵌合され、もう一方の縦長孔64に挿通される取付ボルト66の頭部66aはもう一方のカーテンウォール1Aの四方枠5の上側又は下側の横枠10A、10Bのガイドレール12に摺動自在に嵌合される。
【0032】
図2、図3、図5、図7に示すように、金属製平板パネル4を表面材とするカーテンウォール1Aに使用される取付金具65の下端には下片65aを折曲してあり、その下片65aには先端が金属製平板パネル4を表面材とするカーテンウォール1Aの上側の横枠10Aの下面側にライナー69を介して当接する取付け高さ調整、レベル調整用の頭付き調整ボルト70を垂直に取り付けている。この場合、取付金具65の下片65aのボルト挿通孔71の上面側に裏ナット72を溶接し、取付ボルト66に緩み止めナット73を備えている。
【0033】
次に、上記カーテンウォール1A,1Bの個々をファスナー2によって立骨など躯体3に取り付ける要領について説明する。
【0034】
金属製平板パネル4を表面材とするカーテンウォール1Aは、図2、図3、図4に示すように、予め躯体3に溶接等で固定された上下の取付金具65の各縦長孔64に挿通された取付ボルト66の頭部66aに、上下の各横枠10A,10Bのガイドレール12の溝内を該ガイドレール12の横方向一端から差し込んで嵌合させることにより躯体3に取り付けられる。この取付け作業に要するファスナー2は取付金具65と取付ボルト66の二部材のみで足り、しかもカーテンウォール1Aのガイドレール12を取付ボルト66の頭部66aに嵌合させるだけで作業手数少なく、簡単に施工できる。
なお、他の取付け要領として、予め取付ボルト66の頭部66aを横枠10A,10Bのガイドレール12内に嵌合させておいて、カーテンウォール1Aを躯体3に取り付けるときにガイドレール12から後方へ突出する取付ボルト66の軸部65b先端を取付金具65の縦長孔64に差し込み、ナット67をばね座金68を介して締め付けることもできる。
【0035】
このように取り付けられたカーテンウォール1Aの水平方向への変位はガイドレール12に沿って取付ボルト66が左右に移動することにより水平変位を吸収し、カーテンウォール1Aの縦方向への変位は取付金具65の縦長孔64により上下に移動することにより縦方向の変位を吸収し、地震や風圧などによる建物の層間変位に対し追随する。
また、カーテンウォール1Aの取付け時には、左右両端の各取付金具65に取り付けられている調整ボルト70を回転させることによりカーテンウォール1Aの傾きを調整し、所定の取付け高さ位置調整やレベル調整を行うことができる。
【0036】
表面材がガラス6であるカーテンウォール1Bの場合にも同様に、図2、図3、図4に示すように、その上下の各横枠11A,11Bのガイドレール13を、予め躯体3に固定された取付金具65の縦長孔64に挿通された取付ボルト66の頭部66aに嵌合させることにより躯体3に取り付けられる。
【0037】
上記のように躯体3に取り付けられた上側のカーテンウォール1Bの下側の横枠11Bと、下側のカーテンウォール1Aの上側の横枠10Aとの接合部においては、オープンジョイント(等圧ジョイント)工法が採用される。
すなわち、例えば、図3のように、上側のカーテンウォール1Bの下側の横枠11Bの第1溝形部49に、中空状の取付基部74aから第1鰭片74bと第2鰭片74cを直交状に張り出した断面形状で通気性を有するゴム製の雨水仕切部材74の取付基部74aを嵌合することで、第1鰭片74bの先端を下側のカーテンウォール1Aの上側の横枠10Aの傾斜上面板15の上面に当接させ、第2鰭片74cの先端を下側のカーテンウォール1Aの上側の横枠10Aの前方開放状の溝形板17の溝内に当接させる。また上側のカーテンウォール1Bの下側の横枠11Bの第2溝形部52と下側のカーテンウォール1Aの上側の横枠10Aの溝形部19とにそれぞれ嵌合させたゴム製の中空状の気密シール材75,75同士を密着させる。これにより上側のカーテンウォール1Bの下側の横枠11Bの下面板48と下側のカーテンウォール1Aの上側の横枠10Aの傾斜上面板15との間に外部とほぼ等圧にする等圧空気層76を、気密シール材75,75の内側(室内側)に気密層77をそれぞれ形成する。これによれば雨水仕切部材74によって外部から浸入する大部分の雨水を仕切ったうえ、気圧差により等圧空気層76まで浸入する雨水を最小限に抑えることができる。
【0038】
また、図4のように、躯体3に取り付けられた上側のカーテンウォール1Aの下側の横枠10Bと、下側のカーテンウォール1Bの上側の横枠11Aとの接合部においても、上側のカーテンウォール1Aの横枠10Bの第1溝形部23に上記雨水仕切部材74と同様の雨水仕切部材74を嵌合させて、第1鰭片74bの先端を下側のカーテンウォール1Bの横枠11Aの傾斜上面板40の上面に当接させ、第2鰭片74cの先端を下側のカーテンウォール1Bの横枠11Aの前方開放状の溝形板42の溝内に当接させる。また上側のカーテンウォール1Aの横枠10Bの第2溝形部26と下側のカーテンウォール1Bの横枠11Aの溝形部44とにそれぞれ嵌合させたゴム製の中空状の気密シール材75,75同士を密着させる。これにより上側のカーテンウォール1Aの横枠10Bの下面板22と下側のカーテンウォール1Bの横枠11Aの傾斜上面板40との間に外部とほぼ等圧にする等圧空気層76を、気密シール材75,75の内側(室内側)に気密層77をそれぞれ形成することができる。したがって、雨水仕切部材74によって外部から浸入する大部分の雨水を仕切ったうえ、気圧差により等圧空気層76まで浸入する雨水を最小限に抑えることができる。
【0039】
さらに、例えば、図6に示すように、躯体3に取り付けられた左右のカーテンウォール1A,1Bの縦枠8,9同士間の接合部においても、左右のカーテンウォール1A,1Bの各縦枠8,9の第1溝形部29,55にそれぞれ嵌合させたゴム製の雨水仕切部材74,74同士を密着させるとともに、第2溝形部30,56にそれぞれ嵌合させた中空状の気密シール材75,75同士を密着させることにより、側面板28,54同士間に等圧空気層76を、気密シール材75,75の内側に気密層77をそれぞれ形成する、というオープンジョイント工法が採用されて雨水の浸入を防止している。
【0040】
また、図7のように、躯体3に取り付けられた左右のカーテンウォール1A,1Aの縦枠8,8同士間の接合部においても、左右のカーテンウォール1A,1Aの各縦枠8の第1溝形部29,29にそれぞれ嵌合させたゴム製の雨水仕切部材74,74同士を密着させるとともに、第2溝形部30,30にそれぞれ嵌合させた中空状の気密シール材75,75同士を密着させることにより、側面板28,28同士間に等圧空気層76を、気密シール材75,75の内側に気密層77をそれぞれ形成する、というオープンジョイント工法が採用されて雨水の浸入を防止している。
【0041】
上記のようにオープンジョイント工法を採用するにあたって、カーテンウォール1Aは表面材に金属製平板パネル4を採用し、これを押出型材からなる四方枠5に張り付けるパネル構造を採用してあり、金属製平板パネル4は所定大きさに切断するだけで足り、曲げ加工を不要とするので、中低層ビルに対応する多種少量生産においてもコスト削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施例を示すカーテンウォールの取付け構造の外観正面図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】図2における上半分部拡大図である。
【図4】図2における下半分部拡大図である。
【図5】図1におけるB−B線断面図である。
【図6】図1におけるC−C線断面図である。
【図7】図1におけるD−D線断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1(1A,1B) カーテンウォール
2 ファスナー
3 躯体
4 金属製平板パネル
5,7 四方枠
8,9 左右の縦枠
10A,11A 上側の横枠
10B,11B 下側の横枠
12,13 ガイドレール
33 スタッドボルト
34,35 ボルト挿通孔
36 ナット
37,38 金属製補強材
64 縦長孔
65 取付金具
66 取付ボルト
70 調整ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーテンウォールを躯体にファスナーを介して取付けるカーテンウォールの取付け構造において、
前記カーテンウォールは押出型材からなる左右の縦枠と上下の横枠により形成された四方枠を備え、前記上側及び/又は下側の横枠の裏面側にはガイドレールを水平方向に一体に成形しており、
前記ファスナーは、躯体側に固定されて縦長孔を有する取付金具と、前記縦長孔に挿通される頭付の取付ボルトとからなり、
前記取付ボルトの頭部は前記ガイドレール内に水平方向に摺動自在に且つボルト軸方向に抜止め状に嵌合していることを特徴とする、カーテンウォールの取付け構造。
【請求項2】
前記カーテンウォールは前記四方枠の表面側に金属製平板パネルを張り付けている、請求項1記載のカーテンウォールの取付け構造。
【請求項3】
前記金属製平板パネルの表面に硬質セラミック塗装を施している、請求項2記載のカーテンウォールの取付け構造。
【請求項4】
前記取付金具は前記縦長孔を上下2個設け、上部の縦長孔に挿通される取付ボルトの頭部は上下に配されたカーテンウォールのうち上側のカーテンウォールの四方枠の下側の横枠のガイドレールに摺動自在に嵌合され、下部の縦長孔に挿通される取付ボルトの頭部は下側のカーテンウォールの四方枠の上側の横枠のガイドレールに摺動自在に嵌合されている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のカーテンウォールの取付け構造。
【請求項5】
前記取付金具は前記縦長孔を左右2個設け、一方の縦長孔に挿通される取付ボルトの頭部は左右に並べて配されたカーテンウォールのうち一方のカーテンウォールの四方枠の上側又は下側の横枠のガイドレールに摺動自在に嵌合され、もう一方の縦長孔に挿通される取付ボルトの頭部はもう一方のカーテンウォールの四方枠の上側又は下側の横枠のガイドレールに摺動自在に嵌合されている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のカーテンウォールの取付け構造。
【請求項6】
前記取付金具には、先端がカーテンウォールの上側の横枠の下面側に当接する調整ボルトを垂直に取り付けている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のカーテンウォールの取付け構造。
【請求項7】
前記ガイドレールは断面リップ付き溝形状に形成している、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のカーテンウォールの取付け構造。
【請求項8】
前記金属製平板パネルと前記四方枠とは、前記金属製平板パネルの裏面に予め固着されたスタッドボルトを四方枠に設けたボルト挿通孔に挿通し、該ボルト挿通孔から突出するスタッドボルトの先端にナットを締め付けることで結合されている、請求項2ないし7のいずれか1項に記載のカーテンウォールの取付け構造。
【請求項9】
前記四方枠の内面側に、金属製補強材を装着している、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のカーテンウォールの取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−81934(P2008−81934A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260165(P2006−260165)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(500287802)上商株式会社 (6)
【Fターム(参考)】