カーテンエアバッグ
【課題】エアバッグ固定布の組み付け作業が容易であり、エアバッグ展開時に耐えうる十分な引張強度を有する固定布を設けたカーテンエアバッグを提供する。
【解決手段】エアバッグ本体と、取り付け部材を挿入する取り付け孔を有した複数のエアバッグ固定布とを備えたカーテンエアバッグであって、該エアバッグ固定布が、一枚の基布を折り重ねてなり、かつ、折り曲げ部を少なくとも上端に3つおよび左右端に2つずつ有するカーテンエアバッグである。
【解決手段】エアバッグ本体と、取り付け部材を挿入する取り付け孔を有した複数のエアバッグ固定布とを備えたカーテンエアバッグであって、該エアバッグ固定布が、一枚の基布を折り重ねてなり、かつ、折り曲げ部を少なくとも上端に3つおよび左右端に2つずつ有するカーテンエアバッグである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンエアバッグに関し、詳細には、エアバッグ展開時にも十分な引張強度を有するエアバッグ固定布を設けたカーテンエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
車両が衝突したときの衝撃から乗員を保護する乗員保護用の安全装置として、エアバッグ装置が普及している。その種類については、従来の運転席や助手席用のエアバッグ装置に加えて、近年では、カーテンエアバッグ装置も車両に搭載されるようになっている。カーテンエアバッグとは、側面衝突の衝撃から乗員を保護するために車内側壁と乗員との間に展開するエアバッグである。このカーテンエアバッグは、車両サイドガラス上側に沿って数箇所を固定布によって固定されており、バッグ膨張時にはサイドガラスを覆うように上側から下側に展開するため、該固定布および該固定布とエアバッグ本体との接合(縫合)部には、十分な引張強度が要求される。
【0003】
前記固定布とエアバッグ本体との接合部の強度を上げるためには、エアバッグ本体布と固定布とを一体的に裁断し、そもそも接合部を設けないという方法や、縫合の際の縫製糸を太くしたり、運針数を上げたり、縫製回数を増やしたり、縫製代の基布用尺を増やしたりするという方法などがあげられる。
【0004】
また、固定布自体の強度を上げる方法として、特許文献1には、エアバッグ本体布と固定布とを一体的に裁断し、固定布部分に設けられている取り付け孔の周りの少なくとも展開膨張方向とは反対側に高耐力部を設けることが開示されている。そして、これにより、エアバッグ展開時の反力により、取付孔から破れが発生・進行することを防止することができ、さらに、部品増加に伴うコスト増加が生じることはないことが記載されている。しかし、基布糸の滑脱の懸念が残る。図4に関して、取付部の該当する部位にエアバッグ袋体基布の一般部の織糸(経糸)より高密度の織糸(経糸)を織り込むことが記載されているが、いずれか一方の織糸(経糸)のみを高密度化させることで、緯糸と経糸とが交差する交差点が減少してしまうため、緯糸の滑脱が生じやすいことが予想される。また、太い糸を使用した図9などに示される例においても、糸を太くすることで織糸の強度を上げることができるが、密度が低下するため、やはり滑脱が生じやすい。ここでいう滑脱とは、緯糸が経糸間からすべり抜けること(もしくは経糸が緯糸間からすべり抜けること)を表しており、一般に、織糸を細く、織り密度を高密度化(折り目を狭く)するほど、滑脱は生じにくくなる。
【0005】
また、別の方法として、固定部分一箇所に使用する固定布の枚数を増やすことも提案されている。しかし、枚数を増やしすぎると、固定点が厚くなり、組み付けがしにくくなる。さらには、部品数が多くなるため、付け忘れなどの不具合も発生しやすく、取り付けの作業性も複雑化してしまう。
【0006】
そこで、特許文献2には、固定布を裁断された一枚の布を中心線を上縁部として二つ折りした構成とする方法が開示されている。これにより、高い張力が作用する上縁部が折り返し部となっており、高い張力が作用しない下縁部が、縫合、接着等による接合部となっているため、エアバッグ袋体展開初期における基布の破れ、目ずれの発生を効果的に抑制できるというものである。上縁部が折り返されているため、ボルト取り付け孔より上の緯糸が経糸間を滑脱して抜けるのを抑制することはできるが、ボルト取り付け孔付近の緯糸が滑脱して抜けるのを防止することができないという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開2003−205817号公報
【特許文献2】特開2000−33846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記問題を解決するものであり、エアバッグ固定布の組み付け作業が容易であり、エアバッグ展開時に耐えうる十分な引張強度を有する固定布を設けたカーテンエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、エアバッグ本体と、取り付け部材を挿入する取り付け孔を有した複数のエアバッグ固定布とを備えたカーテンエアバッグであって、該エアバッグ固定布が、一枚の基布を折り重ねてなり、かつ、折り曲げ部を少なくとも上端に3つおよび左右端に2つずつ有するカーテンエアバッグに関する。
【0010】
前記エアバッグ固定布が、左右端にさらにスリットを有することが好ましい。
【0011】
前記エアバッグ固定布が、見かけ上6枚以上の基布からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、固定布の枚数を増やすことなく、エアバッグ展開時に耐えうる十分な引張強度を有する固定布を設けたカーテンエアバッグを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のカーテンエアバッグは、エアバッグ本体と、取り付け部材を挿入する取り付け孔を有した複数のエアバッグ固定布とを備えており、該エアバッグ固定布が、一枚の基布を折り重ねてなり、かつ、折り曲げ部を少なくとも上端に3つおよび左右端に2つずつ有している。
【0014】
なお、折り曲げ部とは、1枚の基布を2つに折り曲げたときにできる輪の部分のことであり、(見かけ上)2枚重ねの基布を2つに折り曲げると、2つの折り曲げ部ができることになる。また、前記折り曲げ部は、上端または左右端の全長に亘って形成されている必要はなく、少なくとも固定布の取り付け孔より上部側に形成されていればよい。
【0015】
前記エアバッグ固定布(以下、単に固定布と称す)とは、エアバッグ本体を車内に固定するために該エアバッグ本体の上縁部に取り付けられる布である。エアバッグ本体とエアバッグ固定布とは、一体的に裁断されていてもよく、それぞれ別に裁断されており、後に接合されてもよい。
【0016】
本発明のカーテンエアバッグは、それに設けられた固定布の構成(形状・折り重ね法)を特徴とするものであり、その一例を図面により説明する。なお、以下の説明は、本発明の特定の実施形態を詳細に説明するものであり、本発明は係る実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【0017】
図1は、本発明のカーテンエアバッグ1を示す概略平面図である。エアバッグ本体2は、同型の2枚の基布を重ね合わせなるものであり、一部を除く周辺部を外周縫製糸4により縫製されている。なお、縫製されていない開口部分において、インフレータ(図示せず)に取り付けられている。固定布3は、エアバッグ本体布2の上縁部に固定布縫製糸5により、複数個取り付けられている。固定布3には、ボルトなどの取り付け部材を車内側から挿入して、ピラーなどに固定できるように、取り付け孔6が設けられている。
【0018】
本発明で使用される固定布3は、たとえば、図2(a)に示すように矩形であり、取り付け孔6を有している。取り付け孔6を通るb−b線における断面図を図2(b)に、a−a線における断面図を図2(c)に示す。図2(b)および(c)で示されるように、固定布3は、その上端に折り曲げ部7を3つ、左右端に折り曲げ部8および9をそれぞれ2つずつ有している。なお、図2に示す固定布3は、見かけ上、基布6枚が重ね合わされており、左右端の折り曲げ部は、後述するように、取り付け孔6から固定布上端にかけて形成されている。
【0019】
固定布3は、見かけ上6枚以上の基布からなっていることが好ましい。上限は、とくに限られないが、固定部の厚みが厚くなりすぎると縫製しにくくなることから、10枚以下であることが好ましい。また、固定布の重ね合わせ枚数が6枚より少ないと、強度が低下する傾向にある。
【0020】
前記折り曲げ部は、固定布3の少なくとも上端に3つおよび左右端にそれぞれ2つずつに設けられていることが重要である。エアバッグ展開時には、取り付け孔6に挿入されたボルトを始点として、カーテンエアバッグが下方に引っ張られるため、ボルト(取り付け孔)から上端部にかけての固定布に負荷がかかる。そのため、固定布上端部に複数の折り曲げ部7を設けることで、上端部の基布端から緯糸が滑脱することを防ぎ、さらに、左右の端部に折り曲げ部8および9を設けることで、緯糸を中央上部に引っ張られる力による緯糸の端部の糸抜けを防止するのである。上端部と左右端とに折り曲げ部を同時に設けることにより、このような作用が働き、同じ(見かけ)枚数であっても、その引張強度を飛躍的に向上させることができるのである。なお、折り曲げ部は、4辺全部に設けられていてもよいが、前記作用を考慮すると、下端には必ずしも設ける必要はない。
【0021】
前記固定布3は、図3に示す裁断布11から作製することができる。裁断布11は、得られる固定布3が見かけ上6枚重ねになるように、固定布3の出来上がりサイズの6倍の面積を有している。さらに、固定布3の上端および左右端に折り曲げ部が形成されるような形状であり、たとえば、図3のような形状であるが、これに限定されるものではない。得られた裁断布11を折り線(破線)にそって3回折り重ねることで、本発明で使用される固定布3を得ることができる。なお、取り付け孔6は、裁断布11を折り重ねる前に、あらかじめそれぞれ6箇所に切り抜いてもよいし、重ね合わせた後に、6枚重ねの状態で切り抜いてもよい。
【0022】
裁断布11は、経糸と緯糸とに沿って裁断されていてもよいし、経糸と緯糸とを切断するようにバイアスに裁断されていてもよい。
【0023】
また、折り重ねやすくするため、折り線部分の左右端にスリット10(実線)を設けることが好ましい。図3では、取り付け孔6から緯糸方向に伸ばしたラインと折り線とが交差する点から、固定布の下端方向にかけて、スリットを設けている。ここで、エアバッグ展開時における緯糸の糸抜けを防止するためには、前記の通り、固定布の左右端に複数の折り曲げ部が必要である。しかし、その負荷は、取り付け孔を始点として、固定布上端部にかけてかかるため、取り付け孔より下側の左右端には必ずしも折り曲げ部が存在していなくてもよい。なお、これは、裁断布が、経糸と緯糸とに沿って裁断されている場合に当てはまる。裁断布がバイアスに裁断されている場合は、図19に示すように、取り付け孔付近の緯糸が固定布の左右端と交わるラインが、固定布に対して斜めになるため、左右端の折り曲げ部は、少なくともその交わった点から上部にかけて存在していることが好ましい。なお、図19(c)は、a−a´−a線における断面図である。
【0024】
図2では、見かけ上6枚重ねの固定布を例示したが、その他の例として、見かけ上4枚重ねの固定布を図4に示す。図2と同様に、平面図を図4(a)に、取り付け孔6を通るb−b線における断面図を図4(b)に、a−a線における断面図を図4(c)に示す。図4(b)および(c)で示されるように、固定布3は、その上端に折り曲げ部7を3つ、左右端に折り曲げ部8および9を2つずつ有している。
【0025】
前記固定布3は、図5に示す裁断布11から作製することができる。裁断布11は、得られる固定布3が見かけ上4枚重ねになるように、固定布3の出来上がりサイズの約4倍の面積を有している。さらに、固定布3の上端および左右端に折り曲げ部が形成されるような形状であり、たとえば、図5のような形状であるが、これに限定されるものではない。得られた裁断布11を折り線にそって3回折り重ねることで、本発明で使用される固定布3を得ることができる。
【0026】
ここで、図5に示すように、裁断布11に折り代12を設けることにより、折り重ねた場合に、得られる固定布3の上端に3つの折り曲げ部を、左右端にそれぞれ2つの折り曲げ部を形成することができる。折り代12の形状は、とくに限定されず、図5に示すように曲線を有していてもよいし、直線であってもよい。なかでも、裁断後に糸のほつれがでにくい点で、曲線を有していることが好ましい。
【0027】
本発明で使用される固定布3は、取り付け孔6にボルトを通して500mm/分の速度で引っ張り、破断したときの強度(破断強度)が、2000N以上であることが好ましい。固定布の破断強度が、2000Nより小さいと、実際にカーテンエアバッグが展開したときに、乗員を保護することが難しくなる傾向にある。さらには、破断したときの強度(破断強度)が、3000N以上であることが好ましい。破断強度が3000N以上であると、エアバッグに設置する固定布自体の数を低減させることができる。
【0028】
本発明のカーテンエアバッグは、以下のようにして製造することができる。
まず、基布を所望のカーテンエアバッグの形状に裁断して、2枚の本体布を得る。ついで、本体布を重ね合わせ、外周縫製糸4により縫合し、エアバッグ本体2とする。得られたエアバッグ本体2の上端部に、前記のようにして作製された固定布3を接合して、本発明のカーテンエアバッグ1を得る。
【0029】
固定布3の接合は、縫合または接着などによる。また、エアバッグ本体布と裁断布11とを一体的に裁断し、その一体化した状態で裁断布11を折り重ねて固定布3の形状として、本発明のカーテンエアバッグを得ることも可能である。
【0030】
エアバッグ本体2に接合される固定布3の数は、2個以上であればよく、求められる引張り強度や、基布の材質などにより適宜決定することができる。なかでも、強度の点で、3個以上であることが好ましい。
【0031】
本発明で使用されるエアバッグ本体布を構成する基布と固定布を構成する基布とは、同じ材質のものでもよいし、異なっていてもよい。
【0032】
前記基布は、繊維からなるものであり、これを布帛の形態にして用いる。
用いられる繊維としては、例えば、ナイロン6、66および46などのポリアミド繊維、パラフェニレンテレフタルアミドと芳香族エーテルとの共重合体などに代表される芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、超高分子量ポリエチレンなどのポリオレフィン繊維、ポリオキシメチレン繊維、パラフェニレンサルフォンおよびポリサルフォンなどのサルフォン系繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリエーテルイミド繊維およびポリイミド繊維などの有機繊維、および、ガラス繊維、セラミックス繊維、炭素繊維および金属繊維などの無機繊維などがあげられ、これらを単独または併用して使用しても良い。なかでも、強度、耐久性およびコストなど総合的な観点から、ナイロン6、66および46などのポリアミド繊維が好ましい。
【0033】
これら繊維には、紡糸性や、加工性、耐久性などを改善するために通常使用されている各種の添加剤、例えば、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐光安定剤、老化防止剤、潤滑剤、平滑剤、顔料、撥水剤、撥油剤、酸化チタンなどの隠蔽剤、光沢付与剤、難燃剤、可塑剤などの1種または2種以上を使用してもよい。また、カラミ織を製織する上で望ましい場合には、加撚、嵩高加工、捲縮加工、捲回加工、糊付け加工などの加工を施してもよい。さらに、糸条の形態は、長繊維フィラメント以外に、短繊維の紡績糸、これらの複合糸などを用いてもよい。
【0034】
また、前記布帛の組織としては、織物、編物または不織布などの何れであってもよい。
前記繊維布帛が織物の場合は、平織、斜子織(バスケット織)、格子織(リップストップ織)、綾織、畝織、絡み織、模紗織、あるいはこれらの複合組織などいずれでもよい。場合によっては、経糸、緯糸の二軸以外に、斜め60度を含む多軸設計としても良く、その場合の糸の配列は、経糸または緯糸と同じ配列に準じればよい。なかでも構造の緻密さ、物理特性や性能の均等性が確保できる点で、平織が好ましい。
【0035】
織物の製造は、通常の工業用織物を製織するのに用いられる各種織機から適宜選定すればよく、例えばシャトル織機、ウォータージェット織機、エアージェット織機、レピア織機、プロジェクタイル織機などから選定すればよい。
【0036】
前記繊維布帛が編物の場合は、シングルトリコット編、シングルコード編、シングルアトラス編などのたて編や、平編、ゴム編、パール編などのよこ編、などの編組織を単独またはそれらを組み合わせた二重組織などからなるものが挙げられる。また、前記繊維布帛が不織布の場合は、ケミカルボンド、サーマルボンド、ニードルパンチ、スパンレース、ステッチボンド、スパンボンド、メルトブロー、湿式などにより製造されるものが挙げられる。
【0037】
また、本発明で使用する糸の単糸太さは、同じでも異なってもいずれでも良く、例えば、0.5〜8dtexの範囲にあれば好ましい。また、単糸の強度は、エアバッグとしての物理的特性を満足させるためには、5.4cN/dtex以上であることが好ましく、8cN/dtex以上であることが好ましい。
【0038】
前記繊維の単繊維の断面形状については、丸、扁平、三角、長方形、平行四辺形、中空、星型など特に限定されるものではないが、生産性やコスト面からは丸断面のものが好ましく、また、基布の厚みを薄くでき、バッグの収納性がよくなるという点では、扁平断面のものが好ましい。また、太さや断面形状などが異なる複数の糸を、合糸、撚り合わせ、などにより一体化したものを用いてもよい。
【0039】
また、これら合成繊維の総繊度については、155〜500デシテックスであることが好ましい。155デシテックス未満では布帛の強度を維持することができないおそれがあり、500デシテックスより大きくなると、基布の厚みが増大し、バッグの収納性が悪くなるおそれがある。
【0040】
前記基布は、目付けが190g/m2以下、引張強力が600N/cm以上であることが好ましい。目付けと引張強力がこの範囲であれば、軽くて物理特性に優れているといえる。なお、ここでいう目付けは、後述する不通気処理剤を塗布する前の未加工の状態の基布重量をいう。
【0041】
前記基布が織物である場合のカバーファクターについては、1500〜2500であることが好ましい。カバーファクターが1500より小さいと、織物の開口部が大きくなってしまいバッグの気密性を得ることが困難であり、またカバーファクターが2500より大きいと、織物の厚みが増大し、バッグの収納性が悪くなるおそれがある。ここで、カバーファクターとは基布のタテ糸総繊度をD1(dtex)、タテ糸密度をN1(本/2.54cm)とし、ヨコ糸総繊度をD2(dtex)、ヨコ糸密度をN2(本/2.54cm)とすると(D1×0.9)1/2×N1+(D2×0.9)1/2×N2で表される。
【0042】
これらの布帛は、耐熱性の向上および通気度の低下を目的として、樹脂などによりコーティングされていてもよい。
【0043】
コーティングに用いられる樹脂としては、例えば、クロロプレンゴム、ハイバロンゴム、フッ素ゴムなどの含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレン三元共重合ゴム、ニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、ウレタンゴムおよびアクリルゴムなどのゴム類、および、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂およびフッ素樹脂などの含ハロゲン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、オレフィン樹脂およびシリコーン樹脂などの樹脂類があげられ、これらは単独または併用して使用される。なかでも、耐熱性および耐候性に優れる点で、シリコーンゴムおよびシリコーン樹脂が好ましい。
【0044】
前記樹脂の付着量は、乾燥重量で40g/m2以下であることが好ましい。下限は、5g/m2であることが好ましい。付着量が5g/m2より少ないと、布帛の通気性が高くなってエアバッグの気密性に問題が発生する傾向にあり、付着量が40g/m2をこえると、布帛の厚みが厚くなってエアバッグの収納性に問題が発生するおそれがある。
【0045】
さらに、エアバッグを滑らかに展開させる目的で、前記不通気処理剤により得られる被膜の摩擦を低減する処理をおこなうことが好ましい。前記処理としては、具体的には、被膜にタルク等の微粉体を塗布する方法、処理剤に有機チタン化合物等の硬化後の粘着性を低減する物質を配合して被覆をおこなう方法、および、被膜にエンボス加工装置などを用いて凹凸を付与する方法などがあげられる。
【0046】
前記外周縫製糸4および固定布縫製糸5に用いられる縫製糸は、一般に化合繊縫い糸と呼ばれるものや工業用縫い糸として使用されているものの中から適宜選定すればよい。例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ポリエステル、高分子ポリオレフィン、含フッ素、ビニロン、アラミド、カーボン、ガラス、スチールなどがあり、紡績糸、フィラメント合撚糸またはフィラメント樹脂加工糸のいずれでもよい。
【0047】
また、縫合は、本縫い、二重環縫い、片伏せ縫い、かがり縫い、安全縫い、千鳥縫い、扁平縫いなどの通常のエアバッグに適用されている縫い目により行えばよい。
【0048】
前記縫製糸の太さは700dtex(20番手相当)〜2800dtex(0番手相当)、運針数は2〜10針/cmであることが好ましい。複数列の縫い目線が必要な場合は、縫い目線間の距離は2.2〜8.0mm程度として、多針型ミシンを用いればよいが、縫製部距離が長くない場合には、1本針ミシンで複数回縫合してもよい。エアバッグ本体として複数枚の裁断基布を用いる場合には、複数枚を重ねて縫合してもよいし、一枚ずつ縫合してもよい。
【0049】
本発明のカーテンエアバッグには、乗員側へのエアバッグの突出抑制や膨張時の厚みの制御のために、内側に吊り紐またはガス流調整布、エアバッグ外側にフラップと呼ばれる帯状布または抑え布などを設けてもよい。
【0050】
また、使用するインフレータの特性に応じて、インフレータ噴出口周囲に熱ガスから保護するための耐熱保護布や力学的な補強布を設けてもよい。これらの保護布や補強布は、布自体が耐熱性の材料、例えば、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、PBO繊維、ポリイミド繊維、含フッ素繊維などの耐熱性繊維材料を用いてもよいし、エアバッグ本体用基布より太い糸を用いて別途作製した布帛を用いてもよい。また、布帛に耐熱性被覆剤を施したものを用いてもよい。
【0051】
実施例
以下に、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもその実施例に限定されるものではない。
【0052】
<破断強度の評価方法>
(株)島津製作所製 オートグラフ(AG−IS)を用いて、取り付け孔6にボルトを通した固定布3の下端を掴み、500mm/分の速度で引っ張り、破断したときの強度を測定した。さらに、そのときの破断の状況を確認した。
【0053】
実施例1
総繊度470dtex、72フィラメントのナイロン66繊維(単糸の強度8.5cN/デシテックス、丸断面)を経糸、緯糸の織密度がともに46本/2.54cmになるようにウォータージェットルームで製織し、カバーファクターが1885、目付け180g/m2、引張強力600N/cmの平織物を得た。なお、織物の引張強力は、幅50mm×長さ550mmにカットしたサンプルを、オートグラフ引張り試験機にて速度200mm/分で引張り、破断した時の強力である。
前記織物を精練、185℃×30秒間で熱セットした後、シリコーンコーティング樹脂(主成分メチルビニルシリコーンゴム、加熱硬化型)を用いてナイフコーターにより塗布量が35g/m2になるようにてコーティング後、180℃×2分間で熱処理おこなってコーティング布帛を得た。
【0054】
得られたコーティング布帛を、140mm×102mmの矩形に裁断し、同時にΦ5mmのボルトにて取り付け孔を6箇所打ち抜いて、図3に示す形状の裁断布を得た。取り付け孔は、折り曲げ後の図2形状にて上端折り曲げ部から15mm下側であって、左右端の中央に設けている。さらに、折り曲げしやすいように、折り曲げ予定部において、取り付け孔から裁断布外側へ10mmの位置から端部にかけてスリットを設けた(図3実線部)。得られた裁断布を70mm×34mmの長方形になるように3回折り重ねて、固定布を得た。固定布は、見かけ上6枚の基布からなっており、上端および左右端に折り曲げ部を有していた。得られた固定布の破断強度を測定したところ、4500Nであり、カーテンエアバッグの展開にも耐えうる高い値を有していた。取り付け孔6から上部において、緯糸の解れや抜けはなく、緯糸が切断されることにより破断していた。
【0055】
比較例1
実施例1と同様にしてコーティング布帛を得、70mm×34mmの長方形に6枚裁断し、同時にそれぞれの裁断布にΦ5mmのボルトにて取り付け孔を1箇所ずつ打ち抜いた。得られた裁断布6枚を重ねあわせ、図6に示す形状の固定布を得た。得られた固定布は、折り曲げ部を有しておらず、引張強度は1800Nであった。取り付け孔6から上部において、緯糸が解れて抜けていた。
【0056】
比較例2
実施例1と同様にしてコーティング布帛を得、140mm×34mmの長方形に3枚裁断し、同時にそれぞれの裁断布にΦ5mmのボルトにて取り付け孔を2箇所ずつ打ち抜いて、図8に示す形状の裁断布を得た。得られた裁断布3枚を重ね合わせ、長辺を二つ折りにし、70mm×34mmの固定布を得た(図7)。得られた固定布は、見かけ上6枚重ねであるが、折り曲げ部はその上端にのみ存在しており、引張強度は2900Nであった。取り付け孔6から上部において、緯糸が解れ、抜けも見られた。
【0057】
比較例3
実施例1と同様にしてコーティング布帛を得、70mm×102mmの長方形に2枚裁断し、同時にそれぞれの裁断布にΦ5mmのボルトにて取り付け孔を3箇所ずつ打ち抜いて、図10に示す形状の裁断布を得た。得られた裁断布2枚を重ね合わせ、長辺を三つ折りにし、70mm×34mmの固定布を得た(図9)。得られた固定布は、見かけ上6枚重ねであるが、折り曲げ部はその左右端にのみ存在しており、引張強度は1800Nであった。比較例1と同じく、緯糸が上部より解れて抜けていた。
【0058】
実施例2
裁断布の大きさを140mm×60mmとした以外は、実施例1と同様にして裁断布を得た(図11)。さらに、折り曲げしやすいように、折り曲げ予定部において、取り付け孔から裁断布外側へ10mmの位置から端部にかけてスリットを設けた(図11実線部)。この裁断布を70mm×20mmの長方形に3回折り重ねて、固定布を得た。固定布は、見かけ上6枚の基布からなっており、上端および左右端に折り曲げ部を有していた(図12)。得られた固定布の引張強度を測定したところ、2700Nであり、カーテンエアバッグの展開にも耐えうる高い値を有していた。取り付け孔6から上部において、緯糸の解れや抜けはなく、緯糸が切断されることにより破断していた。また、この引張強度は、比較例1に示す場合よりも高く、裁断形状が小さいにもかかわらず、十分な強度が得られていることがわかる。
【0059】
実施例3
裁断の大きさを140mm×84mmとした以外は、実施例1と同様にして裁断布を得た(図13)。さらに、折り曲げしやすいように、折り曲げ予定部において、取り付け孔から裁断布外側へ10mmの位置から端部にかけてスリットを設けた(図13実線部)。この裁断布を70mm×28mmの長方形になるように3回折り重ねて、固定布を得た。固定布は、見かけ上6枚の基布からなっており、上端および左右端に折り曲げ部を有していた(図14)。得られた固定布の引張強度を測定したところ、4000Nであり、カーテンエアバッグの展開にも耐えうる高い値を有していた。取り付け孔6から上部において、緯糸の解れや抜けはなく、緯糸が切断されることにより破断していた。この引張強度は、比較例2に示す場合よりも高く、裁断形状が小さいにもかかわらず、十分な強度が得られていることがわかる。
【0060】
実施例4
実施例1と同様にして、140mm×102mmの矩形の裁断布を得、Φ5mmのボルトにて取り付け孔を6箇所打ち抜いて、図13に示す形状の裁断布を得た。さらに、折り曲げしやすいように、折り曲げ予定部において、取り付け孔から裁断布内部へ10mmの位置から長さ5mmのスリットと、同じく取り付け孔から裁断布外側へ10mmの位置から端部にかけてスリットとを設けた(図15実線部)。この裁断布を70mm×34mmの長方形になるように3回折り重ねて、固定布を得た(図16)。固定布は、見かけ上6枚の基布からなっており、上端および左右端に折り曲げ部を有している(スリットは、左右端折り曲げ部の全部には設けられていない)。得られた固定布の引張強度を測定したところ、4200Nであり、カーテンエアバッグの展開にも耐えうる高い値を有していた。取り付け孔6から上部において、緯糸の解れや抜けはなく、緯糸が切断されることにより破断していた。この引張強度は、取り付け孔より上部側に一部スリットを入れたため、実施例1よりも低いものの、上端および左右端の折り曲げ部が1枚の布帛から一体的に形成されているため、比較例1と比べて極めて高く、十分な強度が得られていることがわかる
【0061】
実施例5
裁断形状を図5のようにした以外は、実施例1と同様に裁断布を得た。この裁断布を70mm×34mmの長方形になるように3回折り重ねて、固定布を得た(図4)。固定布は、見かけ上4枚の基布からなっており、上端および左右端に折り曲げ部を有していた。得られた固定布の引張強度を測定したところ、2700Nであり、カーテンエアバッグの展開にも耐えうる高い値を有していた。取り付け孔6から上部において、緯糸の解れや抜けはなく、緯糸が切断されることにより破断していた。この引張強度は、比較例1に示す重ね枚数6枚の場合よりも高く、重ね枚数が少ないにもかかわらず、十分な強度が得られていることがわかる。
【0062】
比較例4
比較例1と同様にして、4枚の裁断布を得た。得られた裁断布4枚を重ねあわせ、固定布を得た(図示せず)。得られた固定布は、折り曲げ部を有しておらず、引張り強度は1200Nであった。比較例1と同じく、取り付け孔6から上部において、緯糸が解れて抜けていた。
【0063】
比較例5
裁断形状を図18のようにした以外は、実施例5と同様に裁断布を得た。この裁断布を70mm×34mmの長方形になるように3回折り重ねて、固定布を得た(図17)。固定布は、見かけ上4枚の基布からなっており、上端および左右端に折り曲げ部を有しているが、それぞれ1つずつであった。得られた固定布の引張強度を測定したところ、1800Nであり、比較例4よりも高い値であったが、固定点としては安心できる引張り強度では無かった。取り付け孔6から上部においては、緯糸が切断されることにより破断していたが、左右の緯糸の解れも見られた。
【0064】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のカーテンエアバッグの一例を示す模式平面図である。
【図2】本発明で使用される固定布3の一例を示す模式平面図(a)および模式断面図(b)・(c)である。
【図3】図2の固定布を構成する裁断布、および、その折りたたみ手順を示す模式平面図である。
【図4】本発明で使用される固定布3の他の例を示す模式平面図(a)および模式断面図(b)・(c)である。
【図5】図4の固定布を構成する裁断布を示す模式平面図である。
【図6】比較例1の固定布を示す模式平面図(a)および模式断面図(b)・(c)である。
【図7】比較例2の固定布を示す模式平面図(a)および模式断面図(b)・(c)である。
【図8】図7の固定布を構成する裁断布を示す模式平面図である。
【図9】比較例3の固定布を示す模式平面図(a)および模式断面図(b)・(c)である。
【図10】図9の固定布を構成する裁断布を示す模式平面図である。
【図11】実施例2の固定布を構成する裁断布を示す模式平面図である。
【図12】実施例2の固定布を示す模式平面図(a)および模式断面図(b)・(c)である。
【図13】実施例3の固定布を構成する裁断布を示す模式平面図である。
【図14】実施例3の固定布を示す模式平面図(a)および模式断面図(b)・(c)である。
【図15】実施例4の固定布を構成する裁断布を示す模式平面図である。
【図16】実施例4の固定布を示す模式平面図(a)および模式断面図(b)・(c)である。
【図17】比較例5の固定布を構成する裁断布を示す模式平面図である。
【図18】比較例5の固定布を示す模式平面図(a)および模式断面図(b)・(c)である。
【図19】本発明で使用される固定布3の他の一例を示す模式平面図(a)および模式断面図(b)・(c)である。
【符号の説明】
【0066】
1 カーテンエアバッグ
2 エアバッグ本体
3 エアバッグ固定布
4 外周縫製糸
5 固定布縫製糸
6 取り付け孔
7 上端折り曲げ部
8 右端折り曲げ部
9 左端折り曲げ部
10 スリット
11 固定布用裁断布
12 折り代
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンエアバッグに関し、詳細には、エアバッグ展開時にも十分な引張強度を有するエアバッグ固定布を設けたカーテンエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
車両が衝突したときの衝撃から乗員を保護する乗員保護用の安全装置として、エアバッグ装置が普及している。その種類については、従来の運転席や助手席用のエアバッグ装置に加えて、近年では、カーテンエアバッグ装置も車両に搭載されるようになっている。カーテンエアバッグとは、側面衝突の衝撃から乗員を保護するために車内側壁と乗員との間に展開するエアバッグである。このカーテンエアバッグは、車両サイドガラス上側に沿って数箇所を固定布によって固定されており、バッグ膨張時にはサイドガラスを覆うように上側から下側に展開するため、該固定布および該固定布とエアバッグ本体との接合(縫合)部には、十分な引張強度が要求される。
【0003】
前記固定布とエアバッグ本体との接合部の強度を上げるためには、エアバッグ本体布と固定布とを一体的に裁断し、そもそも接合部を設けないという方法や、縫合の際の縫製糸を太くしたり、運針数を上げたり、縫製回数を増やしたり、縫製代の基布用尺を増やしたりするという方法などがあげられる。
【0004】
また、固定布自体の強度を上げる方法として、特許文献1には、エアバッグ本体布と固定布とを一体的に裁断し、固定布部分に設けられている取り付け孔の周りの少なくとも展開膨張方向とは反対側に高耐力部を設けることが開示されている。そして、これにより、エアバッグ展開時の反力により、取付孔から破れが発生・進行することを防止することができ、さらに、部品増加に伴うコスト増加が生じることはないことが記載されている。しかし、基布糸の滑脱の懸念が残る。図4に関して、取付部の該当する部位にエアバッグ袋体基布の一般部の織糸(経糸)より高密度の織糸(経糸)を織り込むことが記載されているが、いずれか一方の織糸(経糸)のみを高密度化させることで、緯糸と経糸とが交差する交差点が減少してしまうため、緯糸の滑脱が生じやすいことが予想される。また、太い糸を使用した図9などに示される例においても、糸を太くすることで織糸の強度を上げることができるが、密度が低下するため、やはり滑脱が生じやすい。ここでいう滑脱とは、緯糸が経糸間からすべり抜けること(もしくは経糸が緯糸間からすべり抜けること)を表しており、一般に、織糸を細く、織り密度を高密度化(折り目を狭く)するほど、滑脱は生じにくくなる。
【0005】
また、別の方法として、固定部分一箇所に使用する固定布の枚数を増やすことも提案されている。しかし、枚数を増やしすぎると、固定点が厚くなり、組み付けがしにくくなる。さらには、部品数が多くなるため、付け忘れなどの不具合も発生しやすく、取り付けの作業性も複雑化してしまう。
【0006】
そこで、特許文献2には、固定布を裁断された一枚の布を中心線を上縁部として二つ折りした構成とする方法が開示されている。これにより、高い張力が作用する上縁部が折り返し部となっており、高い張力が作用しない下縁部が、縫合、接着等による接合部となっているため、エアバッグ袋体展開初期における基布の破れ、目ずれの発生を効果的に抑制できるというものである。上縁部が折り返されているため、ボルト取り付け孔より上の緯糸が経糸間を滑脱して抜けるのを抑制することはできるが、ボルト取り付け孔付近の緯糸が滑脱して抜けるのを防止することができないという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開2003−205817号公報
【特許文献2】特開2000−33846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記問題を解決するものであり、エアバッグ固定布の組み付け作業が容易であり、エアバッグ展開時に耐えうる十分な引張強度を有する固定布を設けたカーテンエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、エアバッグ本体と、取り付け部材を挿入する取り付け孔を有した複数のエアバッグ固定布とを備えたカーテンエアバッグであって、該エアバッグ固定布が、一枚の基布を折り重ねてなり、かつ、折り曲げ部を少なくとも上端に3つおよび左右端に2つずつ有するカーテンエアバッグに関する。
【0010】
前記エアバッグ固定布が、左右端にさらにスリットを有することが好ましい。
【0011】
前記エアバッグ固定布が、見かけ上6枚以上の基布からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、固定布の枚数を増やすことなく、エアバッグ展開時に耐えうる十分な引張強度を有する固定布を設けたカーテンエアバッグを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のカーテンエアバッグは、エアバッグ本体と、取り付け部材を挿入する取り付け孔を有した複数のエアバッグ固定布とを備えており、該エアバッグ固定布が、一枚の基布を折り重ねてなり、かつ、折り曲げ部を少なくとも上端に3つおよび左右端に2つずつ有している。
【0014】
なお、折り曲げ部とは、1枚の基布を2つに折り曲げたときにできる輪の部分のことであり、(見かけ上)2枚重ねの基布を2つに折り曲げると、2つの折り曲げ部ができることになる。また、前記折り曲げ部は、上端または左右端の全長に亘って形成されている必要はなく、少なくとも固定布の取り付け孔より上部側に形成されていればよい。
【0015】
前記エアバッグ固定布(以下、単に固定布と称す)とは、エアバッグ本体を車内に固定するために該エアバッグ本体の上縁部に取り付けられる布である。エアバッグ本体とエアバッグ固定布とは、一体的に裁断されていてもよく、それぞれ別に裁断されており、後に接合されてもよい。
【0016】
本発明のカーテンエアバッグは、それに設けられた固定布の構成(形状・折り重ね法)を特徴とするものであり、その一例を図面により説明する。なお、以下の説明は、本発明の特定の実施形態を詳細に説明するものであり、本発明は係る実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【0017】
図1は、本発明のカーテンエアバッグ1を示す概略平面図である。エアバッグ本体2は、同型の2枚の基布を重ね合わせなるものであり、一部を除く周辺部を外周縫製糸4により縫製されている。なお、縫製されていない開口部分において、インフレータ(図示せず)に取り付けられている。固定布3は、エアバッグ本体布2の上縁部に固定布縫製糸5により、複数個取り付けられている。固定布3には、ボルトなどの取り付け部材を車内側から挿入して、ピラーなどに固定できるように、取り付け孔6が設けられている。
【0018】
本発明で使用される固定布3は、たとえば、図2(a)に示すように矩形であり、取り付け孔6を有している。取り付け孔6を通るb−b線における断面図を図2(b)に、a−a線における断面図を図2(c)に示す。図2(b)および(c)で示されるように、固定布3は、その上端に折り曲げ部7を3つ、左右端に折り曲げ部8および9をそれぞれ2つずつ有している。なお、図2に示す固定布3は、見かけ上、基布6枚が重ね合わされており、左右端の折り曲げ部は、後述するように、取り付け孔6から固定布上端にかけて形成されている。
【0019】
固定布3は、見かけ上6枚以上の基布からなっていることが好ましい。上限は、とくに限られないが、固定部の厚みが厚くなりすぎると縫製しにくくなることから、10枚以下であることが好ましい。また、固定布の重ね合わせ枚数が6枚より少ないと、強度が低下する傾向にある。
【0020】
前記折り曲げ部は、固定布3の少なくとも上端に3つおよび左右端にそれぞれ2つずつに設けられていることが重要である。エアバッグ展開時には、取り付け孔6に挿入されたボルトを始点として、カーテンエアバッグが下方に引っ張られるため、ボルト(取り付け孔)から上端部にかけての固定布に負荷がかかる。そのため、固定布上端部に複数の折り曲げ部7を設けることで、上端部の基布端から緯糸が滑脱することを防ぎ、さらに、左右の端部に折り曲げ部8および9を設けることで、緯糸を中央上部に引っ張られる力による緯糸の端部の糸抜けを防止するのである。上端部と左右端とに折り曲げ部を同時に設けることにより、このような作用が働き、同じ(見かけ)枚数であっても、その引張強度を飛躍的に向上させることができるのである。なお、折り曲げ部は、4辺全部に設けられていてもよいが、前記作用を考慮すると、下端には必ずしも設ける必要はない。
【0021】
前記固定布3は、図3に示す裁断布11から作製することができる。裁断布11は、得られる固定布3が見かけ上6枚重ねになるように、固定布3の出来上がりサイズの6倍の面積を有している。さらに、固定布3の上端および左右端に折り曲げ部が形成されるような形状であり、たとえば、図3のような形状であるが、これに限定されるものではない。得られた裁断布11を折り線(破線)にそって3回折り重ねることで、本発明で使用される固定布3を得ることができる。なお、取り付け孔6は、裁断布11を折り重ねる前に、あらかじめそれぞれ6箇所に切り抜いてもよいし、重ね合わせた後に、6枚重ねの状態で切り抜いてもよい。
【0022】
裁断布11は、経糸と緯糸とに沿って裁断されていてもよいし、経糸と緯糸とを切断するようにバイアスに裁断されていてもよい。
【0023】
また、折り重ねやすくするため、折り線部分の左右端にスリット10(実線)を設けることが好ましい。図3では、取り付け孔6から緯糸方向に伸ばしたラインと折り線とが交差する点から、固定布の下端方向にかけて、スリットを設けている。ここで、エアバッグ展開時における緯糸の糸抜けを防止するためには、前記の通り、固定布の左右端に複数の折り曲げ部が必要である。しかし、その負荷は、取り付け孔を始点として、固定布上端部にかけてかかるため、取り付け孔より下側の左右端には必ずしも折り曲げ部が存在していなくてもよい。なお、これは、裁断布が、経糸と緯糸とに沿って裁断されている場合に当てはまる。裁断布がバイアスに裁断されている場合は、図19に示すように、取り付け孔付近の緯糸が固定布の左右端と交わるラインが、固定布に対して斜めになるため、左右端の折り曲げ部は、少なくともその交わった点から上部にかけて存在していることが好ましい。なお、図19(c)は、a−a´−a線における断面図である。
【0024】
図2では、見かけ上6枚重ねの固定布を例示したが、その他の例として、見かけ上4枚重ねの固定布を図4に示す。図2と同様に、平面図を図4(a)に、取り付け孔6を通るb−b線における断面図を図4(b)に、a−a線における断面図を図4(c)に示す。図4(b)および(c)で示されるように、固定布3は、その上端に折り曲げ部7を3つ、左右端に折り曲げ部8および9を2つずつ有している。
【0025】
前記固定布3は、図5に示す裁断布11から作製することができる。裁断布11は、得られる固定布3が見かけ上4枚重ねになるように、固定布3の出来上がりサイズの約4倍の面積を有している。さらに、固定布3の上端および左右端に折り曲げ部が形成されるような形状であり、たとえば、図5のような形状であるが、これに限定されるものではない。得られた裁断布11を折り線にそって3回折り重ねることで、本発明で使用される固定布3を得ることができる。
【0026】
ここで、図5に示すように、裁断布11に折り代12を設けることにより、折り重ねた場合に、得られる固定布3の上端に3つの折り曲げ部を、左右端にそれぞれ2つの折り曲げ部を形成することができる。折り代12の形状は、とくに限定されず、図5に示すように曲線を有していてもよいし、直線であってもよい。なかでも、裁断後に糸のほつれがでにくい点で、曲線を有していることが好ましい。
【0027】
本発明で使用される固定布3は、取り付け孔6にボルトを通して500mm/分の速度で引っ張り、破断したときの強度(破断強度)が、2000N以上であることが好ましい。固定布の破断強度が、2000Nより小さいと、実際にカーテンエアバッグが展開したときに、乗員を保護することが難しくなる傾向にある。さらには、破断したときの強度(破断強度)が、3000N以上であることが好ましい。破断強度が3000N以上であると、エアバッグに設置する固定布自体の数を低減させることができる。
【0028】
本発明のカーテンエアバッグは、以下のようにして製造することができる。
まず、基布を所望のカーテンエアバッグの形状に裁断して、2枚の本体布を得る。ついで、本体布を重ね合わせ、外周縫製糸4により縫合し、エアバッグ本体2とする。得られたエアバッグ本体2の上端部に、前記のようにして作製された固定布3を接合して、本発明のカーテンエアバッグ1を得る。
【0029】
固定布3の接合は、縫合または接着などによる。また、エアバッグ本体布と裁断布11とを一体的に裁断し、その一体化した状態で裁断布11を折り重ねて固定布3の形状として、本発明のカーテンエアバッグを得ることも可能である。
【0030】
エアバッグ本体2に接合される固定布3の数は、2個以上であればよく、求められる引張り強度や、基布の材質などにより適宜決定することができる。なかでも、強度の点で、3個以上であることが好ましい。
【0031】
本発明で使用されるエアバッグ本体布を構成する基布と固定布を構成する基布とは、同じ材質のものでもよいし、異なっていてもよい。
【0032】
前記基布は、繊維からなるものであり、これを布帛の形態にして用いる。
用いられる繊維としては、例えば、ナイロン6、66および46などのポリアミド繊維、パラフェニレンテレフタルアミドと芳香族エーテルとの共重合体などに代表される芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、超高分子量ポリエチレンなどのポリオレフィン繊維、ポリオキシメチレン繊維、パラフェニレンサルフォンおよびポリサルフォンなどのサルフォン系繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリエーテルイミド繊維およびポリイミド繊維などの有機繊維、および、ガラス繊維、セラミックス繊維、炭素繊維および金属繊維などの無機繊維などがあげられ、これらを単独または併用して使用しても良い。なかでも、強度、耐久性およびコストなど総合的な観点から、ナイロン6、66および46などのポリアミド繊維が好ましい。
【0033】
これら繊維には、紡糸性や、加工性、耐久性などを改善するために通常使用されている各種の添加剤、例えば、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐光安定剤、老化防止剤、潤滑剤、平滑剤、顔料、撥水剤、撥油剤、酸化チタンなどの隠蔽剤、光沢付与剤、難燃剤、可塑剤などの1種または2種以上を使用してもよい。また、カラミ織を製織する上で望ましい場合には、加撚、嵩高加工、捲縮加工、捲回加工、糊付け加工などの加工を施してもよい。さらに、糸条の形態は、長繊維フィラメント以外に、短繊維の紡績糸、これらの複合糸などを用いてもよい。
【0034】
また、前記布帛の組織としては、織物、編物または不織布などの何れであってもよい。
前記繊維布帛が織物の場合は、平織、斜子織(バスケット織)、格子織(リップストップ織)、綾織、畝織、絡み織、模紗織、あるいはこれらの複合組織などいずれでもよい。場合によっては、経糸、緯糸の二軸以外に、斜め60度を含む多軸設計としても良く、その場合の糸の配列は、経糸または緯糸と同じ配列に準じればよい。なかでも構造の緻密さ、物理特性や性能の均等性が確保できる点で、平織が好ましい。
【0035】
織物の製造は、通常の工業用織物を製織するのに用いられる各種織機から適宜選定すればよく、例えばシャトル織機、ウォータージェット織機、エアージェット織機、レピア織機、プロジェクタイル織機などから選定すればよい。
【0036】
前記繊維布帛が編物の場合は、シングルトリコット編、シングルコード編、シングルアトラス編などのたて編や、平編、ゴム編、パール編などのよこ編、などの編組織を単独またはそれらを組み合わせた二重組織などからなるものが挙げられる。また、前記繊維布帛が不織布の場合は、ケミカルボンド、サーマルボンド、ニードルパンチ、スパンレース、ステッチボンド、スパンボンド、メルトブロー、湿式などにより製造されるものが挙げられる。
【0037】
また、本発明で使用する糸の単糸太さは、同じでも異なってもいずれでも良く、例えば、0.5〜8dtexの範囲にあれば好ましい。また、単糸の強度は、エアバッグとしての物理的特性を満足させるためには、5.4cN/dtex以上であることが好ましく、8cN/dtex以上であることが好ましい。
【0038】
前記繊維の単繊維の断面形状については、丸、扁平、三角、長方形、平行四辺形、中空、星型など特に限定されるものではないが、生産性やコスト面からは丸断面のものが好ましく、また、基布の厚みを薄くでき、バッグの収納性がよくなるという点では、扁平断面のものが好ましい。また、太さや断面形状などが異なる複数の糸を、合糸、撚り合わせ、などにより一体化したものを用いてもよい。
【0039】
また、これら合成繊維の総繊度については、155〜500デシテックスであることが好ましい。155デシテックス未満では布帛の強度を維持することができないおそれがあり、500デシテックスより大きくなると、基布の厚みが増大し、バッグの収納性が悪くなるおそれがある。
【0040】
前記基布は、目付けが190g/m2以下、引張強力が600N/cm以上であることが好ましい。目付けと引張強力がこの範囲であれば、軽くて物理特性に優れているといえる。なお、ここでいう目付けは、後述する不通気処理剤を塗布する前の未加工の状態の基布重量をいう。
【0041】
前記基布が織物である場合のカバーファクターについては、1500〜2500であることが好ましい。カバーファクターが1500より小さいと、織物の開口部が大きくなってしまいバッグの気密性を得ることが困難であり、またカバーファクターが2500より大きいと、織物の厚みが増大し、バッグの収納性が悪くなるおそれがある。ここで、カバーファクターとは基布のタテ糸総繊度をD1(dtex)、タテ糸密度をN1(本/2.54cm)とし、ヨコ糸総繊度をD2(dtex)、ヨコ糸密度をN2(本/2.54cm)とすると(D1×0.9)1/2×N1+(D2×0.9)1/2×N2で表される。
【0042】
これらの布帛は、耐熱性の向上および通気度の低下を目的として、樹脂などによりコーティングされていてもよい。
【0043】
コーティングに用いられる樹脂としては、例えば、クロロプレンゴム、ハイバロンゴム、フッ素ゴムなどの含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレン三元共重合ゴム、ニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、ウレタンゴムおよびアクリルゴムなどのゴム類、および、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂およびフッ素樹脂などの含ハロゲン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、オレフィン樹脂およびシリコーン樹脂などの樹脂類があげられ、これらは単独または併用して使用される。なかでも、耐熱性および耐候性に優れる点で、シリコーンゴムおよびシリコーン樹脂が好ましい。
【0044】
前記樹脂の付着量は、乾燥重量で40g/m2以下であることが好ましい。下限は、5g/m2であることが好ましい。付着量が5g/m2より少ないと、布帛の通気性が高くなってエアバッグの気密性に問題が発生する傾向にあり、付着量が40g/m2をこえると、布帛の厚みが厚くなってエアバッグの収納性に問題が発生するおそれがある。
【0045】
さらに、エアバッグを滑らかに展開させる目的で、前記不通気処理剤により得られる被膜の摩擦を低減する処理をおこなうことが好ましい。前記処理としては、具体的には、被膜にタルク等の微粉体を塗布する方法、処理剤に有機チタン化合物等の硬化後の粘着性を低減する物質を配合して被覆をおこなう方法、および、被膜にエンボス加工装置などを用いて凹凸を付与する方法などがあげられる。
【0046】
前記外周縫製糸4および固定布縫製糸5に用いられる縫製糸は、一般に化合繊縫い糸と呼ばれるものや工業用縫い糸として使用されているものの中から適宜選定すればよい。例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ポリエステル、高分子ポリオレフィン、含フッ素、ビニロン、アラミド、カーボン、ガラス、スチールなどがあり、紡績糸、フィラメント合撚糸またはフィラメント樹脂加工糸のいずれでもよい。
【0047】
また、縫合は、本縫い、二重環縫い、片伏せ縫い、かがり縫い、安全縫い、千鳥縫い、扁平縫いなどの通常のエアバッグに適用されている縫い目により行えばよい。
【0048】
前記縫製糸の太さは700dtex(20番手相当)〜2800dtex(0番手相当)、運針数は2〜10針/cmであることが好ましい。複数列の縫い目線が必要な場合は、縫い目線間の距離は2.2〜8.0mm程度として、多針型ミシンを用いればよいが、縫製部距離が長くない場合には、1本針ミシンで複数回縫合してもよい。エアバッグ本体として複数枚の裁断基布を用いる場合には、複数枚を重ねて縫合してもよいし、一枚ずつ縫合してもよい。
【0049】
本発明のカーテンエアバッグには、乗員側へのエアバッグの突出抑制や膨張時の厚みの制御のために、内側に吊り紐またはガス流調整布、エアバッグ外側にフラップと呼ばれる帯状布または抑え布などを設けてもよい。
【0050】
また、使用するインフレータの特性に応じて、インフレータ噴出口周囲に熱ガスから保護するための耐熱保護布や力学的な補強布を設けてもよい。これらの保護布や補強布は、布自体が耐熱性の材料、例えば、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、PBO繊維、ポリイミド繊維、含フッ素繊維などの耐熱性繊維材料を用いてもよいし、エアバッグ本体用基布より太い糸を用いて別途作製した布帛を用いてもよい。また、布帛に耐熱性被覆剤を施したものを用いてもよい。
【0051】
実施例
以下に、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもその実施例に限定されるものではない。
【0052】
<破断強度の評価方法>
(株)島津製作所製 オートグラフ(AG−IS)を用いて、取り付け孔6にボルトを通した固定布3の下端を掴み、500mm/分の速度で引っ張り、破断したときの強度を測定した。さらに、そのときの破断の状況を確認した。
【0053】
実施例1
総繊度470dtex、72フィラメントのナイロン66繊維(単糸の強度8.5cN/デシテックス、丸断面)を経糸、緯糸の織密度がともに46本/2.54cmになるようにウォータージェットルームで製織し、カバーファクターが1885、目付け180g/m2、引張強力600N/cmの平織物を得た。なお、織物の引張強力は、幅50mm×長さ550mmにカットしたサンプルを、オートグラフ引張り試験機にて速度200mm/分で引張り、破断した時の強力である。
前記織物を精練、185℃×30秒間で熱セットした後、シリコーンコーティング樹脂(主成分メチルビニルシリコーンゴム、加熱硬化型)を用いてナイフコーターにより塗布量が35g/m2になるようにてコーティング後、180℃×2分間で熱処理おこなってコーティング布帛を得た。
【0054】
得られたコーティング布帛を、140mm×102mmの矩形に裁断し、同時にΦ5mmのボルトにて取り付け孔を6箇所打ち抜いて、図3に示す形状の裁断布を得た。取り付け孔は、折り曲げ後の図2形状にて上端折り曲げ部から15mm下側であって、左右端の中央に設けている。さらに、折り曲げしやすいように、折り曲げ予定部において、取り付け孔から裁断布外側へ10mmの位置から端部にかけてスリットを設けた(図3実線部)。得られた裁断布を70mm×34mmの長方形になるように3回折り重ねて、固定布を得た。固定布は、見かけ上6枚の基布からなっており、上端および左右端に折り曲げ部を有していた。得られた固定布の破断強度を測定したところ、4500Nであり、カーテンエアバッグの展開にも耐えうる高い値を有していた。取り付け孔6から上部において、緯糸の解れや抜けはなく、緯糸が切断されることにより破断していた。
【0055】
比較例1
実施例1と同様にしてコーティング布帛を得、70mm×34mmの長方形に6枚裁断し、同時にそれぞれの裁断布にΦ5mmのボルトにて取り付け孔を1箇所ずつ打ち抜いた。得られた裁断布6枚を重ねあわせ、図6に示す形状の固定布を得た。得られた固定布は、折り曲げ部を有しておらず、引張強度は1800Nであった。取り付け孔6から上部において、緯糸が解れて抜けていた。
【0056】
比較例2
実施例1と同様にしてコーティング布帛を得、140mm×34mmの長方形に3枚裁断し、同時にそれぞれの裁断布にΦ5mmのボルトにて取り付け孔を2箇所ずつ打ち抜いて、図8に示す形状の裁断布を得た。得られた裁断布3枚を重ね合わせ、長辺を二つ折りにし、70mm×34mmの固定布を得た(図7)。得られた固定布は、見かけ上6枚重ねであるが、折り曲げ部はその上端にのみ存在しており、引張強度は2900Nであった。取り付け孔6から上部において、緯糸が解れ、抜けも見られた。
【0057】
比較例3
実施例1と同様にしてコーティング布帛を得、70mm×102mmの長方形に2枚裁断し、同時にそれぞれの裁断布にΦ5mmのボルトにて取り付け孔を3箇所ずつ打ち抜いて、図10に示す形状の裁断布を得た。得られた裁断布2枚を重ね合わせ、長辺を三つ折りにし、70mm×34mmの固定布を得た(図9)。得られた固定布は、見かけ上6枚重ねであるが、折り曲げ部はその左右端にのみ存在しており、引張強度は1800Nであった。比較例1と同じく、緯糸が上部より解れて抜けていた。
【0058】
実施例2
裁断布の大きさを140mm×60mmとした以外は、実施例1と同様にして裁断布を得た(図11)。さらに、折り曲げしやすいように、折り曲げ予定部において、取り付け孔から裁断布外側へ10mmの位置から端部にかけてスリットを設けた(図11実線部)。この裁断布を70mm×20mmの長方形に3回折り重ねて、固定布を得た。固定布は、見かけ上6枚の基布からなっており、上端および左右端に折り曲げ部を有していた(図12)。得られた固定布の引張強度を測定したところ、2700Nであり、カーテンエアバッグの展開にも耐えうる高い値を有していた。取り付け孔6から上部において、緯糸の解れや抜けはなく、緯糸が切断されることにより破断していた。また、この引張強度は、比較例1に示す場合よりも高く、裁断形状が小さいにもかかわらず、十分な強度が得られていることがわかる。
【0059】
実施例3
裁断の大きさを140mm×84mmとした以外は、実施例1と同様にして裁断布を得た(図13)。さらに、折り曲げしやすいように、折り曲げ予定部において、取り付け孔から裁断布外側へ10mmの位置から端部にかけてスリットを設けた(図13実線部)。この裁断布を70mm×28mmの長方形になるように3回折り重ねて、固定布を得た。固定布は、見かけ上6枚の基布からなっており、上端および左右端に折り曲げ部を有していた(図14)。得られた固定布の引張強度を測定したところ、4000Nであり、カーテンエアバッグの展開にも耐えうる高い値を有していた。取り付け孔6から上部において、緯糸の解れや抜けはなく、緯糸が切断されることにより破断していた。この引張強度は、比較例2に示す場合よりも高く、裁断形状が小さいにもかかわらず、十分な強度が得られていることがわかる。
【0060】
実施例4
実施例1と同様にして、140mm×102mmの矩形の裁断布を得、Φ5mmのボルトにて取り付け孔を6箇所打ち抜いて、図13に示す形状の裁断布を得た。さらに、折り曲げしやすいように、折り曲げ予定部において、取り付け孔から裁断布内部へ10mmの位置から長さ5mmのスリットと、同じく取り付け孔から裁断布外側へ10mmの位置から端部にかけてスリットとを設けた(図15実線部)。この裁断布を70mm×34mmの長方形になるように3回折り重ねて、固定布を得た(図16)。固定布は、見かけ上6枚の基布からなっており、上端および左右端に折り曲げ部を有している(スリットは、左右端折り曲げ部の全部には設けられていない)。得られた固定布の引張強度を測定したところ、4200Nであり、カーテンエアバッグの展開にも耐えうる高い値を有していた。取り付け孔6から上部において、緯糸の解れや抜けはなく、緯糸が切断されることにより破断していた。この引張強度は、取り付け孔より上部側に一部スリットを入れたため、実施例1よりも低いものの、上端および左右端の折り曲げ部が1枚の布帛から一体的に形成されているため、比較例1と比べて極めて高く、十分な強度が得られていることがわかる
【0061】
実施例5
裁断形状を図5のようにした以外は、実施例1と同様に裁断布を得た。この裁断布を70mm×34mmの長方形になるように3回折り重ねて、固定布を得た(図4)。固定布は、見かけ上4枚の基布からなっており、上端および左右端に折り曲げ部を有していた。得られた固定布の引張強度を測定したところ、2700Nであり、カーテンエアバッグの展開にも耐えうる高い値を有していた。取り付け孔6から上部において、緯糸の解れや抜けはなく、緯糸が切断されることにより破断していた。この引張強度は、比較例1に示す重ね枚数6枚の場合よりも高く、重ね枚数が少ないにもかかわらず、十分な強度が得られていることがわかる。
【0062】
比較例4
比較例1と同様にして、4枚の裁断布を得た。得られた裁断布4枚を重ねあわせ、固定布を得た(図示せず)。得られた固定布は、折り曲げ部を有しておらず、引張り強度は1200Nであった。比較例1と同じく、取り付け孔6から上部において、緯糸が解れて抜けていた。
【0063】
比較例5
裁断形状を図18のようにした以外は、実施例5と同様に裁断布を得た。この裁断布を70mm×34mmの長方形になるように3回折り重ねて、固定布を得た(図17)。固定布は、見かけ上4枚の基布からなっており、上端および左右端に折り曲げ部を有しているが、それぞれ1つずつであった。得られた固定布の引張強度を測定したところ、1800Nであり、比較例4よりも高い値であったが、固定点としては安心できる引張り強度では無かった。取り付け孔6から上部においては、緯糸が切断されることにより破断していたが、左右の緯糸の解れも見られた。
【0064】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のカーテンエアバッグの一例を示す模式平面図である。
【図2】本発明で使用される固定布3の一例を示す模式平面図(a)および模式断面図(b)・(c)である。
【図3】図2の固定布を構成する裁断布、および、その折りたたみ手順を示す模式平面図である。
【図4】本発明で使用される固定布3の他の例を示す模式平面図(a)および模式断面図(b)・(c)である。
【図5】図4の固定布を構成する裁断布を示す模式平面図である。
【図6】比較例1の固定布を示す模式平面図(a)および模式断面図(b)・(c)である。
【図7】比較例2の固定布を示す模式平面図(a)および模式断面図(b)・(c)である。
【図8】図7の固定布を構成する裁断布を示す模式平面図である。
【図9】比較例3の固定布を示す模式平面図(a)および模式断面図(b)・(c)である。
【図10】図9の固定布を構成する裁断布を示す模式平面図である。
【図11】実施例2の固定布を構成する裁断布を示す模式平面図である。
【図12】実施例2の固定布を示す模式平面図(a)および模式断面図(b)・(c)である。
【図13】実施例3の固定布を構成する裁断布を示す模式平面図である。
【図14】実施例3の固定布を示す模式平面図(a)および模式断面図(b)・(c)である。
【図15】実施例4の固定布を構成する裁断布を示す模式平面図である。
【図16】実施例4の固定布を示す模式平面図(a)および模式断面図(b)・(c)である。
【図17】比較例5の固定布を構成する裁断布を示す模式平面図である。
【図18】比較例5の固定布を示す模式平面図(a)および模式断面図(b)・(c)である。
【図19】本発明で使用される固定布3の他の一例を示す模式平面図(a)および模式断面図(b)・(c)である。
【符号の説明】
【0066】
1 カーテンエアバッグ
2 エアバッグ本体
3 エアバッグ固定布
4 外周縫製糸
5 固定布縫製糸
6 取り付け孔
7 上端折り曲げ部
8 右端折り曲げ部
9 左端折り曲げ部
10 スリット
11 固定布用裁断布
12 折り代
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグ本体と、取り付け部材を挿入する取り付け孔を有した複数のエアバッグ固定布とを備えたカーテンエアバッグであって、該エアバッグ固定布が、一枚の基布を折り重ねてなり、かつ、折り曲げ部を少なくとも上端に3つおよび左右端に2つずつ有するカーテンエアバッグ。
【請求項2】
前記エアバッグ固定布が、左右端にさらにスリットを有する請求項1記載のカーテンエアバッグ。
【請求項3】
前記エアバッグ固定布が、見かけ上6枚以上の基布からなる請求項1または2記載のカーテンエアバッグ。
【請求項1】
エアバッグ本体と、取り付け部材を挿入する取り付け孔を有した複数のエアバッグ固定布とを備えたカーテンエアバッグであって、該エアバッグ固定布が、一枚の基布を折り重ねてなり、かつ、折り曲げ部を少なくとも上端に3つおよび左右端に2つずつ有するカーテンエアバッグ。
【請求項2】
前記エアバッグ固定布が、左右端にさらにスリットを有する請求項1記載のカーテンエアバッグ。
【請求項3】
前記エアバッグ固定布が、見かけ上6枚以上の基布からなる請求項1または2記載のカーテンエアバッグ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−30342(P2010−30342A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192072(P2008−192072)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]