説明

カーテンスプレー塗布方法及びインクジェット記録用紙

【課題】 長時間連続塗布を行った時、塗布性(塗布故障、塗布ムラ)が優れたカーテンスプレー塗布方法及びこの方法を使用し製造した記録用紙の提供。
【解決手段】 インク受容層が塗設された基体を搬送し、前記インク受容層上に、カーテンスプレーコータにより、塗布液をスプレー塗布し表面層を形成する、インクジェット記録用紙の表面層のカーテンスプレー塗布方法において、前記カーテンスプレーコータは、気体を供給する第1気体ノズルを形成する第1ブロックと、第2ブロックと、塗布液を供給する塗布液ノズルを形成する第3ブロックと、第2気体ノズルを形成する第4ブロックとを有し、前記第1ブロック〜前記第4ブロックとにより形成された開口端で形成された塗布液のスプレー口と、リップを有し、前記基体の搬送方向の塗布幅をLとした時、前記リップの長さが、1/2×L〜8×Lであることを特徴とするカーテンスプレー塗布方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、支持体上に形成されたインク受容層上に塗布液をスプレーすることでインク受容層上に表面層を形成し、インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)を作製するカーテンスプレー塗布方法及び記録用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基体上に塗布液を塗布する方法は種々知られている。例えば、搬送される長尺の帯状基体(以下、単に基体ともいう)上に塗布液を高精度に塗布する方法としては、Edward Cohen,Edgar Gutoff著「MODERN COATING AND DRYING TECHNOLOGY」に述べられている如く、各種の方法が提案されており、例えば、ディップ塗布法、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、ワイヤーバー塗布法、グラビア塗布法、リバース塗布法、リバースロール塗布法、エクストルージョン塗布法、スライドビード塗布法、カーテン塗布法、スプレー塗布法等が知られている。これら、エクストルージョン塗布法、スライドビード塗布法は前計量型塗布方法と呼ばれ、高速、薄膜、多層同時塗布が可能であり、その特徴によりインクジェット用記録用紙、写真感光材料、磁気記録材料等のコータとして広く用いられている。エクストルージョン塗布法にはクストルージョン型コータ、スライドビード塗布法にはスライド型コータが使用されている。カーテン塗布法にはカーテンスプレーコータが使用されている。
【0003】
その好ましい一例としては、Russell等により米国特許第2,761,791号に提案されたスライドビードコータ、あるいはエクストルージョンコータ等が広く用いられている。又カーテンスプレーコータもダイスを有する流量規制型コータであり、同様に広く用いられている。
【0004】
しかし、これらダイスを有するコータ(コータ)による塗布は、その原理上、ビードやカーテン膜等、コータと基体との間を連続的に塗布液で繋ぐことになる。基体上に均一な厚さの塗布膜を形成するためには、コータからの塗布液流量は、常に一定で、途切れがあってはならない。すなわち、塗布膜を連続的に形成するため、又、塗布膜厚を精度高く一定にするために、所定量以上の塗布液を要することになる。よって、これらの方式において、コータから吐出される塗布液量を極端に少なくすることは、均一な膜厚を得る目的からすると、困難を伴う。
【0005】
そのため、塗布層あたりの溶質量が少ない、つまり、塗布液を塗布し乾燥する前の湿潤膜厚がごく薄い膜(例えば、1〜50μm程度)を形成する場合には、塗布液の溶媒量を増やし、塗布液全体を増量することが必要となる。特に塗布液の粘度が低い場合には、基体上で流れてしまうため、安定な塗布膜を形成することが難しく、塗布液量をますます増やさねばならない。
【0006】
しかし、溶媒量を増やすと、塗布後、溶媒を飛ばして乾燥させる負荷(乾燥負荷)が大きくなり、生産効率上好ましくない。又、溶媒量が多かったり、乾燥に時間が掛かると、当該塗布層の下に別の構成層が存在する場合には、該構成層に当該塗布層の塗布液が過度に浸透、拡散し、悪影響を及ぼす場合がある。よって、薄膜を、塗布膜厚の精度高く、乾燥負荷が少なく、生産性高く設ける塗布方法が望まれている。
【0007】
このような高精度に均一な塗布膜厚の薄膜を、構成層上に設けることが必要となる塗布製造物としては色々あるが、例えばインクジェット記録方法に用いられる記録用紙が挙げられる。記録用紙としては、例えば、普通紙のように紙そのものであるものや、コート紙のように吸収体を兼ねる支持体の上にインク受容層を塗設したもの、あるいは樹脂被覆紙やポリエステルフィルムのような非吸収性の支持体の上にインク受容層を塗設したもの等がある。
【0008】
これら記録用紙としては、光沢感、つや感、深み等銀塩写真のような高品位の質感に対応するため、支持体の上に、インク受容層としてポリビニルピロリドンやポリビニルアルコール等の水溶性バインダを塗設した膨潤型記録用紙や、インク受容層として顔料あるいは顔料とバインダで微細な空隙構造を形成し、この空隙にインクを吸収させる、いわゆる空隙型記録用紙が知られている。最近では、得られる画質、取り扱い性の面から空隙型記録用紙が主流となっている。この様な空隙型記録用紙の例としては、特開平10−119423号、同10−119424号、同10−175364号、同10−193776号、同10−193776号、同10−217601号、同11−20300号、同11−106694号、同11−321079号、同11−348410号、同10−178126号、同11−348409号、特開2000−27093、同2000−94830、同2000−158807、同2000−211241等に記載されているものが知られている。
【0009】
又、記録用紙に求められる性能として、画像の耐久性や画像保存性に対する要求もより高度になり、オゾン、オキシダント、SOx、NOxなど空気中の極微量の活性な有害ガスによる変褪色に対する耐性を持たせるために数々の対応が取られている。例えば、オゾン、オキシダント、SOx、NOxなど空気中の極微量の活性な有害ガスから画像を保護するために、インクが吸着しているインク受容層にこれら有害ガスを入り込ませない様にするためカーテンスプレーコータを用いて、インク受容層上に表面層を形成する方法が知られている。例えば、特開2004−122705には、インク受容層上に、粘度が0.7〜2mPa・sの塗布液を、乾燥前の厚さが10〜50μmになるように、カーテンスプレーコータを用いて平均液滴径が5〜30μmの噴霧状態でインク受容層上に塗布液層を形成する技術が知られている。しかしながら、カーテンスプレーコータを用いてインク受容層上に塗布液層を形成することで、薄膜塗布が出来、乾燥負荷も少なく、画像保存性の面でも効果はあるが、カーテンスプレーコータを用いて塗布液層を形成する時に膜厚のバラツキが大きく、膜厚が一定にならない問題点を有していた。
【0010】
この様に、カーテンスプレーコータを用いて安定した塗布液層を形成する方法が検討されており、例えば、塗布液の粘度、気体を噴出する時の線速度、平均粒径、スプレーコータと被塗布体との距離、塗布速度等を規定することで、基体の幅方向の塗布幅の変動が±20%以下、搬送方向の塗布幅の変動が±10%以下にするカーテンスプレー塗布方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0011】
特許文献1に記載の方法で、カーテンスプレーコータを用いて、インク受容層の上に塗布液層を形成し、塗布液層から溶媒を除去し、表面層を設けることで画像保存性は改良されるのであるが、未だ長時間連続塗布を行った時の塗布液層の安定性が不十分であるのが現状である。特に、カーテンスプレーコータへ噴霧された液滴が跳ねて付着し、これがインク受容層に垂れることにより塗布ムラが発生する。更に、インク受容層に浸透する物質をカーテンスプレーコータを用いて塗布する場合、塗布量の均一性(膜厚、付き量)が不十分である。
【0012】
これらの状況から、長時間連続塗布を行った時、インク受容層の上に塗布する表面層の膜厚が安定したカーテンスプレー塗布方法及びこの方法を使用し製造した記録用紙の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2004−906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、その目的としては、長時間連続塗布を行った時、塗布性(塗布故障、塗布ムラ)が優れたカーテンスプレー塗布方法及びこの方法を使用し製造した記録用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成された。
【0015】
(請求項1)
少なくとも1層のインク受容層が塗設された基体を搬送し、前記インク受容層上に、前記基体の搬送方向と交差する位置に配設されたカーテンスプレーコータにより、前記インク受容層の幅方向の全幅に塗布液をカーテンスプレー塗布し表面層を形成する、インクジェット記録用紙の表面層のカーテンスプレー塗布方法において、
前記カーテンスプレーコータは、気体を供給する第1気体ノズルを形成する先端に平面部を有する第1ブロックと、第2ブロックと、
前記第2ブロックとで塗布液を供給する塗布液ノズルを形成する先端に平面部を有する第3ブロックと、
前記第3ブロックとで気体を供給する第2気体ノズルを形成する先端に平面部を有する第4ブロックとを有し、
前記第1ブロックと、前記第2ブロックと、前記第3ブロックと、前記第4ブロックとにより形成された前記第1気体ノズルと、前記塗布液ノズルと、前記第2気体ノズルとのそれぞれの開口端で形成された塗布液のスプレー口と、
前記第1ブロックと、前記第2ブロックと、前記第3ブロックと、前記第4ブロックとの前記平面部により形成されたリップを有し、
前記基体の搬送方向の塗布幅をLとした時、前記リップの長さが、1/2×L〜8×Lであることを特徴とするカーテンスプレー塗布方法。
【0016】
(請求項2)
前記リップに繋がる第1ブロックの斜面の角度が20〜90°、第4ブロックの斜面の角度が20〜90°であることを特徴とする請求項1に記載のカーテンスプレー塗布方法。
【0017】
(請求項3)
前記スプレー口とインク受容層の表面との距離が5〜100mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のカーテンスプレー塗布方法。
【0018】
(請求項4)
前記スプレー口から噴霧される塗布液の液滴径が5〜100μmであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のカーテンスプレー塗布方法。
【0019】
(請求項5)
前記第1気体ノズル及び第2気体ノズルと塗布液ノズルとのなす角度θ1がそれぞれ10〜60°で、該塗布液ノズルの開口端からの塗布液の噴霧角度θ2が10〜80°であり、且つθ1とθ2との間の関係が、下式(1)で規定する条件を満たすことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のカーテンスプレー塗布方法。
【0020】
式(1) θ2<2/3(2×θ1)
(請求項6)
前記カーテンスプレーコータの温度と、塗布液ノズルに供給する塗布液温度とは、下式(2)で規定する条件を満たすことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のカーテンスプレー塗布方法。
【0021】
式(2) 塗布液温度≦カーテンスプレーコータの温度
(請求項7)
請求項1〜6の何れか1項に記載のカーテンスプレー塗布方法により作製されたことを特徴とするインクジェット記録用紙。
【発明の効果】
【0022】
長時間連続塗布を行った時、塗布性(塗布故障、塗布ムラ)が優れたカーテンスプレー塗布方法及びこの方法を使用し製造した記録用紙を提供することが出来、生産効率の向上が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態を図1〜図5を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
図1はカーテンスプレーコータを使用し、インク受容層上に表面層を形成した記録媒体の塗布製造ラインの一例を示す模式図である。尚、本図では第1塗工部への塗布液の供給系、第2塗工部への塗布液及び空気の供給系、乾燥工程への乾燥用空気の供給系は省略してある。
【0025】
図中、1は塗布製造ラインを示す。塗布製造ライン1は、基体の繰り出し部2と、インク受容層を形成する塗布液の第1塗工部3と、冷却部4と、第1乾燥部5と、インク受容層の上に表面層を形成する塗布液層を塗布する第2塗工部6と、第2乾燥部7と、巻き取り部8とを有している。
【0026】
202は基体201の元巻きロールを示す。繰り出し部2から繰り出された基体201は第1塗工部3でバックアップロール301に巻回された基体201上にコータ302により少なくとも1層のインク受容層を形成するための塗布が行われる。コータ302としては同時に多層の塗布液が塗布出来ることから流量規制型のスライドビードコータが好ましい。
【0027】
基体201上に多孔質インク受容層を形成する塗布液層を有する基体は、多孔質インク受容層用の塗布液が親水性バインダを含有しているので冷却部4で冷却装置401により固定化された状態で第1乾燥部5に搬送され、溶媒が除去されインク受容層203が形成される。501は乾燥箱を示し、502は搬送用のロールを示し、503は塗布面の接触を避けるため基体を浮かせて搬送するための気体を吹き出し塗布膜表面と非接触で反転搬送させるリバーサを示す。これにより、塗布面の接触を避け乾燥することが可能となっている。
【0028】
第1乾燥部5で、塗布液層中の溶媒が除去されインク受容層203が形成された段階(第1乾燥部5で減率乾燥以降が好ましい)で、第1乾燥部5の外側に配置された第2塗工部6で、バックアップロール602に巻回された基体上のインク受容層203の上にカーテンスプレー用塗布液がカーテンスプレーコータ601によりカーテンスプレー塗布される。
【0029】
第2塗工部6で、カーテンスプレー用塗布液がインク受容層203上に塗布された支持体は第2乾燥部7に入り、表面層用に形成された塗布液層204aの溶媒の除去が行われ表面層204が形成される。701は乾燥箱を示し、702は搬送用のロールを示し、703は塗布面の接触を避けるため基体を浮かせて搬送するための気体を吹き出し塗布膜表面と非接触で反転搬送させるリバーサを示す。これにより、塗布面の接触を避け乾燥することが可能となっている。
【0030】
第2乾燥部7でインクカーテンスプレー用塗布液の溶媒の除去が行われ表面層204が形成され、記録用紙が出来上がる。乾燥箱から出た帯状の記録用紙は、巻き取り部8で巻き芯801に巻き取られロール状の記録用紙802が製造される。
【0031】
尚、第1乾燥部5及び第2乾燥部7における乾燥は、温風を吹き付け乾燥する方式が好ましい(温風吹き付け手段は不図示)。
【0032】
第2塗工部6を配設する位置は、第1乾燥部5でインク受容層203の減率乾燥以降が好ましく、塗工後に再度乾燥を行うことが可能であれば特に限定はない。例えば、本図に示す第1乾燥部5と、第2乾燥部7とを合わせ、インク受容層203の減率乾燥以降に乾燥部から出して乾燥箱の上部に設け、塗工後に乾燥箱に入れてもよいし、本図に示す様に第1乾燥部5と第2乾燥部7との間に配設してもかまわない。塗布製造ライン1の配設する環境に合わせ適宜選択することが可能である。
【0033】
図2はカーテンスプレーコータとインク受容層を有する基体との配置関係を示す図1のXで示される部分の拡大概略平面図である。尚、本図ではカーテンスプレーコータの塗布液供給管及び空気供給管等は省略してある。カーテンスプレーコータ601は基体の搬送方向(図中の矢印方向)と交差する位置に配設されている。本発明において、交差するとは、カーテンスプレーコータ601のスプレー口を形成するラインが基体と平行で、且つ基体の進行方向に対して交差する角度をいう。θはカーテンスプレーコータ601と基体との交差する角度を示し、角度θは塗布安定性、塗布する範囲を考慮し、75〜105°が好ましい。本図の場合は、カーテンスプレーコータ601と基体との交差する角度が90°の場合を示している。
【0034】
図3は図1のXで示される部分の拡大概略図である。
【0035】
図中、カーテンスプレーコータ601は、先端に平面部601d1を有する第1ブロック601dと、先端に平面部601e1を有する第2ブロック601eと、先端に平面部601f1を有する第3ブロック601fと、先端に平面部601g1を有する第4ブロック601gとを有している。これらの平面部は、第1ブロック601d〜第4ブロック601gを組み付けでカーテンスプレーコータ601を作製した時、第1ブロック601d〜第4ブロック601gの先端の平面部601d1〜601g1は各スプレー口Pのリップ(601d1〜601g1)を形成する。
【0036】
第1ブロック601dと、第2ブロック601eとで加圧空気ポケット601c1と気体ノズル601c2とを形成している。第2ブロック601eと第3ブロック601fとで塗布液ポケット601a1と塗布液ノズル601a2とを形成している。601a3は塗布液ノズル601a2に挟持された櫛型部材を示す。櫛型部材601a3は、なくてもよく、必要に応じて使用することが可能である。第3ブロック601fと第4ブロック601gとで加圧空気ポケット601b1と気体ノズル601b2とを形成している。
【0037】
601c3は気体ノズル601c2の開口端を示し、601a4は塗布液ノズル601a2の開口端を示し、601b3は気体ノズル601b2の開口端を示す。これら各開口端601c3と、開口端601a4と、開口端601b3とでスプレー口Pを形成している。
【0038】
601d1は第1ブロック601dに配設されたカーテンスプレーコータ601の温度を制御擦るための温水を循環させるための温水流路を示す。601e1は第2ブロック601eに配設されたカーテンスプレーコータ601の温度を制御擦るための温水を循環させるための温水流路を示す。601f1は第3ブロック601fに配設されたカーテンスプレーコータ601の温度を制御擦るための温水を循環させるための温水流路を示す。601g1は第1ブロック601gに配設されたカーテンスプレーコータ601の温度を制御擦るための温水を循環させるための温水流路を示す。
【0039】
9は供給系を示し、塗布液供給系9aと、加圧空気供給系9bとを有している。塗布液供給系9aでは、塗布液タンク9a1で調製された塗布液が送液ポンプ9a2により流量計9a3、フィルター9a4を介してカーテンスプレーコータ601の塗布液供給管601aに塗布液を供給するようになっている。供給された塗布液は、一旦塗布液ポケット601a1に溜められた後、カーテンスプレーコータ601の幅方向に設けられている塗布液ノズル601a2の開口端(塗布液噴出口)601a4より噴出される。
【0040】
加圧空気供給系9bでは、空気が加圧ポンプ9b1により加圧され流量計9b2、フィルター9b3を介してカーテンスプレーコータ601の加圧空気供給管601c(601b)に加圧空気を供給するようになっている。供給された加圧空気は、一旦加圧空気ポケット601c1(601b1)に一旦溜められた後、気体ノズル601c2(601b2)を介して開口端(気体噴出口)601c3(601b3)より噴出される。
【0041】
スプレー口Pでは、開口端(塗布液噴出口)601a4より噴出した塗布液が、開口端(気体噴出口)601c3(601b3)より噴出した空気により液滴状となり、連続搬送される(図中の矢印方向)帯状の基体上のインク受容層203上にカーテンスプレー塗布される。10はスプレー口Pよりスプレーされた液滴状の塗布液を示す。
【0042】
204aは、帯状の支持体201上のインク受容層203上に形成された表面層を形成する表面層用塗布液層を示す。インク受容層203を表面上に有する帯状の基体201は、カーテンスプレーコータ601のスプレー口Pに対して相対的にバックアップローラ602に抱かれて移動させ(搬送させ)、連続的に塗布を行うことが可能となっている。
【0043】
塗布液ノズルの開口端(塗布液噴出口)601a4に送られてくる塗布液は、塗布液ノズルの開口端(塗布液噴出口)601a4の間隙の幅をd1(図4を参照)とした時、フィルター9a4の口径を、ポンプの圧損、塗布液噴出口での異物の詰まり、これに伴う塗布故障を考慮して1/1d1〜1/100d1を使用して濾過されていることが好ましい。
【0044】
気体ノズルの開口端(気体噴出口)601b3(601c3)に送られてくる加圧空気は、気体ノズルの開口端(気体噴出口)601b3(601c3)の間隙の幅をd2(図5を参照)とした時、フィルター9b3の口径を、ポンプ圧損、空気の供給量の安定性、気体ノズルの開口端(気体噴出口)での異物の詰まり、スプレーの安定性を考慮して1/1d2〜1/100d2を使用して濾過されていることが好ましい。
【0045】
図4は図3のSで示される部分の拡大概略図である。図4の(a)は基体の搬送方向の塗布幅とリップの長さの関係を示す図3のSで示される部分の拡大概略図である。図4の(b)は噴霧時のカーテンスプレーコータを構成している各部位関係を示す図3のSで示される部分の拡大概略図である。
【0046】
図中、9はスプレー口Pから噴霧された塗布液の液滴を示す。液滴9の液滴径は、塗着率、粒状性等を考慮し、5〜100μmが好ましく、より好ましくは10〜50μmである。
【0047】
Lはスプレー口Pから噴霧された塗布液の基体の搬送方向の塗布幅を示す。塗布幅Lは、液滴径の安定性、インク受容層に到達した液滴のハネ返り、膜厚安定性、液滴数の分布安定性、塗布均一性等を考慮し、0.2〜10cmが好ましい。Vは第1ブロック601dの先端のリップ(平面部)601d1の長さを示し、Wは第2ブロック601eの先端のリップ(平面部)601e1の長さを示し、Xは第3ブロック601fの先端のリップ(平面部)601f1の長さを示し、Yは第4ブロック601gの先端のリップ(平面部)601g1の長さを示す。
【0048】
各リップ(601d1〜601g1)の各長さ(V〜Y)の合計(カーテンスプレーコータ601のリップの長さとする)は、基体の搬送方向の塗布幅Lに対して、1/2×L〜8×Lである。リップの長さが1/2×L未満の場合は、カーテンスプレーコータのリップを構成している各部材の加工精度が難しくなり、組み立てたカーテンスプレーコータの精度が不安定になるため好ましくない。8×Lを越える場合は、リップ部に噴霧された液滴のハネ返りが多くなり、付着した液滴が垂れることに伴う故障(液タレ故障)が発生するため好ましくない。
【0049】
θ3はリップ601d1の表面を基準とした時の、第1ブロック601dの先端部のリップ601d1に繋がる斜面の角度を示す。角度θ3は、加工のし易さ、噴霧された液滴のハネ付着防止等を考慮し、20〜90°が好ましい。
【0050】
θ4はリップ601g1の表面を基準とした時の、第4ブロック601gの先端部のリップ601g1に繋がる斜面の角度を示す。角度θ4は、加工のし易さ、噴霧された液滴のハネ付着防止等を考慮し、20〜90°が好ましい。尚、θ3、θ4は同じであっても、異なっていてもよいが、カーテンスプレーコータ近傍での風の流れを同じにすることが塗布性によいことからθ3、θ4は同じであることが更に好ましい。
【0051】
Tはスプレー口Pからインク受容層の表面迄の距離を示す。距離Tは、噴霧される液滴径、液滴数の空間分布、噴霧した液滴のインク受容層に到達した時のハネ等を考慮し、5〜100mmが好ましく、より好ましくは10〜30mmである。
【0052】
θ1は気体ノズル601c2(601b2)の塗布液ノズル601a2とのなす角度を示す。角度θ1は、液滴生成容易性、コータの加工性、コータの加工精度等を考慮し、10〜60°が好ましい。
【0053】
θ2は塗布液ノズル601a2の開口端(塗布液噴出口)601a4からの塗布液の噴霧角度を示す。噴霧角度θ2は、噴霧した液滴のインク受容層に到達した時のハネ、液滴数の空間分布等を考慮し、10〜80°が好ましい。尚、噴霧角度θ2は、噴霧状態をカメラで1時間に60回撮影し、得られた画像を画像解析により測定した値である。角度θ1と噴霧角度θ2とは、均一な液滴径の生成、液滴の分布等を考慮して、式(1)で規定する条件を満たすことが好ましい。
【0054】
式(1) θ2<2/3(2×θ1)
塗布液ノズル601a2からの塗布液流量Bは、所望の塗布膜厚、塗布液の濃度、塗布速度等により一概には規定出来ない。又、気体ノズル601c2(601b2)から噴出される気体は、塗布に適して入れば特に限定はなく、一般には空気を用いる。気体ノズル601c2(601b2)からの気体流量Aは、塗布液の供給量、所望の塗布膜厚、塗布液の濃度、塗布速度等により一概には規定出来ない。しかしながら、気体流量Aと塗布液流量Bとの比(A/B)は、噴霧される液滴径、液滴飛散性等を考慮して500〜10,000が好ましい。
【0055】
塗布時のカーテンスプレーコータの温度と、塗布液ノズルに供給する塗布液温度とは、カーテンスプレーコータ上でのコンデンスに伴う液滴がインク受容層に垂れることによる塗布故障を考慮し、下式(2)で規定する条件を満たすことが好ましい。
【0056】
式(2) 塗布液温度≦カーテンスプレーコータの温度
式(2)を満足するために、カーテンスプレーコータの第1ブロック601d〜第4ブロック601gに配設された温水流路601d1〜601g1に温水を通し、温水温度を制御することが可能である。当然、塗布液温度も制御されていることが好ましく、温度としては10〜50℃の範囲で使用することが好ましい。又、塗布液温度とカーテンスプレーコータの温度との温度差の上限は熱源のコストを考慮すると20℃以下が好ましい。Sはカーテンスプレーコータの側面を示す。
【0057】
図5は図1〜図6に示すカーテンスプレーコータの概略分解斜視図である。
【0058】
図中、601i(601j)はブロック601d〜601gを組み付けるための側板を示す。601g及び601fは、加圧空気供給管601bと、加圧空気ポケット601b1(図3を参照)と、所定の距離を有する空気用ノズル601b2(図3を参照)とを形成するためのブロックである。形成された加圧空気ポケット601b1(図3を参照)と、空気用ノズル603b2(図3を参照)とはブロック601g、601fの幅方向に設けられている。
【0059】
601f及び601eは、塗布液ポケット601a1と、塗布液ノズル601a2(図3を参照)を形成するブロックである。ブロック601fには塗布液タンク901a(図3を参照)から供給される塗布液を受け入れ、塗布液ポケット601a1まで連通する塗布液供給管601aが配設されている。塗布液ノズル601a2(図3を参照)には、塗布液ノズル601a2(図3を参照)を垂直方向に分割して塗布幅方向に複数の塗布液ノズルを形成する櫛型部材601a3が挟持されている。塗布液ポケット603a1に滞留した塗布液は、櫛型部材601a3により分割された塗布液ノズル601a2(図3を参照)を流下することになる。601a31は櫛型部材601a3の櫛刃を示し、櫛刃601a31の間隔が塗布液ノズルとなる。本図の場合は11本のノズルが形成される様になっている。
【0060】
ブロック601e及びブロック601dは、加圧空気供給管601cと、加圧空気ポケット601c1と、所定の距離を有する空気用ノズル601c2(図3を参照)とを形成するためのブロックである。形成された加圧空気ポケット601c1と、空気用ノズル601c2(図3を参照)とはブロック601g、601fの幅方向に設けられている。
【0061】
空気供給源(不図示)から加圧空気供給管601b(601c)を介して供給された加圧空気は、一旦、加圧空気ポケット601b1(601c1)に滞留した後、空気用ノズル601b2(601c2)を圧力をもって流下する。
【0062】
櫛型部材601a3により分断された塗布液ノズル601a2(図3を参照)を流下してきた塗布液と、2つの空気用ノズル601b2(601c2)を流下してきた加圧空気とは、スプレー口P(図3を参照)において衝突し、液滴を形成して、被塗布対象物である支持体上のインク吸収層上に飛翔する。
【0063】
図1〜図5に示されるカーテンスプレーコータを使用して、塗布する際の塗布液の湿潤膜厚としては、安定で均一な塗布膜の形成、乾燥工程への乾燥負荷を考慮し、1〜50μmが好ましく、特に5〜30μmが好ましい。一方、気体ノズルから噴出される気体は、塗布に適して入れば特に限定はなく、一般には空気を用いるが、空気の供給条件としては、概ね1〜50CMM/m(塗布幅当たりの流量)の範囲が好ましく、その時の気体ノズルでの内圧としては、塗布の均一性の観点から、10kPa以上であることが好ましい。
【0064】
空気の線速度vは、塗布乾燥性及び塗布収率の観点から126〜400m/sが好ましい。空気の線速度とは、気体ノズル601c2(601b2)の開口端の気体噴出口601c3(601b3)直後における空気の線速度であり、レーザードップラ風速計、例えば、KANOMAX社製の1D FLV system8851により測定して求めることが出来る。又、塗布収率とは、インク受容層上に塗布された塗布液量/供給した全塗布液量×100(%)であり、質量法により算出する。すなわち、インク受容層上に塗布された塗布液量は、インク受容層上への塗布前後の質量変化から算出し、供給した全塗布液量はカーテンスプレーコータへ送液、供給した質量、すなわち、送液流量×塗布時間より求めることが出来る。
【0065】
本発明に係る表面層を形成する塗布液には、特開2004−906号公報、同2004−122705号公報に記載の塗布液を使用することが好ましい。
【0066】
本発明で用いることの出来る基体としては特に限定はなく、例えば、従来インクジェット記録用紙用として公知のものを適宜使用出来、吸水性基体であっても、非吸水性基体であってもかまわない。本発明で用いることの出来る吸水性基体としては、例えば、一般の紙、布、木材等を有するシートや板等を挙げることが出来るが、特に、紙は基材自身の吸水性に優れかつコスト的にも優れるために最も好ましい。紙支持体としては、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、CGP、RMP、TMP、CTMP、CMP、PGW等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等の木材パルプを主原料としたものが使用可能である。又、必要に応じて合成パルプ、合成繊維、無機繊維等の各種繊維状物質も原料として適宜使用することが出来る。
【0067】
上記紙基体中には必要に応じて、サイズ剤、顔料、紙力増強剤、定着剤等、蛍光増白剤、湿潤紙力剤、カチオン化剤等の従来公知の各種添加剤を添加することが出来る。
【0068】
紙基体は、前記の木材パルプなどの繊維状物質と各種添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種抄紙機で製造することが出来る。又、必要に応じて抄紙段階又は抄紙機にスターチ、ポリビニルアルコール等でサイズプレス処理したり、各種コート処理したり、カレンダー処理したりすることも出来る。
【0069】
本発明で好ましく用いることの出来る非吸水性基体には、透明基体及び不透明基体がある。透明基体としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアテセート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料を有するフィルム等が挙げられ、中でもオーバーヘッドプロジェクター(OHP)用として使用された時の輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。この様な透明な基体の厚さとしては、50〜200μmが好ましい。
【0070】
又、不透明基体としては、例えば、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆる、RCペーパー)、特開2004−122705号公報に記載の原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした樹脂被覆紙、ポリエチレンテレフタレートに硫酸バリウム等の白色顔料を添加してなるいわゆるホワイトペットが好ましい。
【0071】
非吸水性基体を使用する場合は、基体上にインク受容層を設けることが好ましい。インク受容層は特開2004−122705に記載の多孔質層で構成されていることが好ましい。インク受容層が多孔質であるとは、5〜200nm程度の孔径をもつ空隙を多数有することを指す。空隙同士は単独に孤立するのではなく、連続的にお互いに導通していることが好ましい。この場合の空隙径の定義としては、例えば、水銀圧入法による測定値を用いることが出来る。以下、好ましい多孔質層について説明する。
【0072】
多孔質層は、主に親水性バインダと無機微粒子の軟凝集により形成されるものである。従来より、皮膜中に空隙を形成する方法は種々知られており、例えば、二種以上のポリマを含有する均一な塗布液を基体上に塗布し、乾燥過程でこれらのポリマを互いに相分離させて空隙を形成する方法、固体微粒子及び親水性又は疎水性樹脂を含有する塗布液を基体上に塗布し、乾燥後に、インクジェット記録用紙を水、あるいは適当な有機溶媒を含有する液に浸漬し、固体微粒子を溶解させて空隙を作製する方法、皮膜形成時に発泡する性質を有する化合物を含有する塗布液を塗布後、乾燥過程でこの化合物を発泡させて皮膜中に空隙を形成する方法、多孔質固体微粒子と親水性バインダを含有する塗布液を基体上に塗布し、多孔質微粒子中や微粒子間に空隙を形成する方法、親水性バインダに対して、概ね等量以上の容積を有する固体微粒子及び又は微粒子油滴と親水性バインダを含有する塗布液を基体上に塗布し、固体微粒子の間に空隙を形成する方法等が知られている。本発明においては多孔質層に、平均液滴径が100nm以下の各種無機固体微粒子を含有させることによって形成されることが、特に好ましい。
【0073】
上記の目的で使用される無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることが出来る。
【0074】
無機微粒子の平均液滴径は、粒子そのものあるいは多孔質層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。無機微粒子としては、シリカ、及びアルミナ又はアルミナ水和物から選ばれた固体微粒子を用いることが好ましい。
【0075】
本発明で用いることの出来るシリカとしては、通常の湿式法で合成されたシリカ、コロイダルシリカ、あるいは気相法で合成されたシリカ等が好ましく用いられるが、本発明において特に好ましく用いられる微粒子シリカとしては、コロイダルシリカ又は気相法で合成された微粒子シリカが好ましく、中でも気相法により合成された微粒子シリカは、高い空隙率が得られるので好ましい。又、アルミナ又はアルミナ水和物は、結晶性であっても非晶質であってもよく、又不定形粒子、球状粒子、針状粒子など任意の形状のものを使用することが出来る。
【0076】
無機微粒子は、その粒径が100nm以下であることが好ましい。例えば、上記気相法微粒子シリカの場合、一次粒子の状態で分散された無機微粒子の一次粒子の平均液滴径(塗設前の分散液状態での粒径)は、100nm以下のものが好ましく、より好ましくは4〜50nm、最も好ましくは4〜20nmである。
【0077】
最も好ましく用いられる、一次粒子の平均液滴径が4〜20nmである気相法により合成されたシリカとしては、例えば、日本アエロジル社製のアエロジルが市販されている。この気相法微粒子シリカは、水中に、例えば、三田村理研工業株式会社製のジェットストリームインダクターミキサーなどにより、容易に吸引分散することで、比較的容易に一次粒子まで分散することが出来る。
【0078】
本発明においては、インク受容層に水溶性バインダを用いることが出来る。本発明で用いることの出来る水溶性バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラーギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性バインダは、二種以上併用することも可能である。
【0079】
本発明で好ましく用いられる水溶性バインダは、ポリビニルアルコールである。
【0080】
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0081】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。又、ケン化度は、70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0082】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖又は側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0083】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0084】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0085】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号及び同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0086】
又、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することも出来る。
【0087】
本発明においては、染料定着剤として多価金属化合物を用いることが好ましく、本発明の目的効果を達成する範囲において、それらの化合物と共に、カチオン性ポリマを併用することを妨げるものではない。
【0088】
カチオン性ポリマの例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン付加重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合物、ポリビニルピリジン、ポリアミジン、キトサン、カチオン化澱粉、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物等が挙げられる。
【0089】
又、化学工業時報平成10年8月15,25日に述べられるカチオン性ポリマ、三洋化成工業株式会社発行「高分子薬剤入門」に述べられる高分子染料固着剤が例として挙げられる。
【0090】
インク受容層で用いられる無機微粒子の添加量は、要求されるインク吸収容量、多孔質層の空隙率、無機顔料の種類、水溶性バインダの種類に大きく依存するが、一般には、記録用紙1m2当たり、通常5〜30g、好ましくは10〜25gである。
【0091】
又、インク受容層に用いられる無機微粒子と水溶性バインダの比率は、質量比で通常2:1〜20:1であり、特に、3:1〜10:1であることが好ましい。
【0092】
又、分子内に第四級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマを含有してもよく、インクジェット記録用紙1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0093】
多孔質層において、空隙の総量(空隙容量)は記録用紙1m2当たり20ml以上であることが好ましい。空隙容量が20ml/m2未満の場合、印字時のインク量が少ない場合には、インク吸収性は良好であるものの、インク量が多くなるとインクが完全に吸収されず、画質を低下させたり、乾燥性の遅れを生じるなどの問題が生じやすい。
【0094】
インク保持能を有する多孔質層において、固形分容量に対する空隙容量を空隙率という。本発明において、空隙率を50%以上にすることが、不必要に膜厚を厚くさせないで空隙を効率的に形成出来るので好ましい。
【0095】
空隙型の他のタイプとして、無機微粒子を用いてインク受容層を形成させる以外に、ポリウレタン樹脂エマルジョン、これに水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ポリビニルアルコールを併用し、更にエピクロルヒドリンポリアミド樹脂を併用させた塗工液を用いてインク受容層を形成させてもよい。この場合のポリウレタン樹脂エマルジョンは、ポリカーボネート鎖、ポリカーボネート鎖及びポリエステル鎖を有する粒子径が3.0μmであるポリウレタン樹脂エマルジョンが好ましく、ポリウレタン樹脂エマルジョンのポリウレタン樹脂がポリカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールを有するポリオールと脂肪族系イソシアネート化合物とを反応させて得られたポリウレタン樹脂が、分子内にスルホン酸基を有し、更にエピクロルヒドリンポリアミド樹脂及び水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ビニルアルコールを有することが更に好ましい。上記ポリウレタン樹脂を用いたインク受容層は、カチオンとアニオンの弱い凝集が形成され、これに伴い、インク溶媒吸収能を有する空隙が形成されて、画像形成出来ると推定される。
【0096】
本発明においては、硬化剤を使用することが好ましい。硬化剤は、インクジェット記録用紙作製の任意の時期に添加することが出来、例えば、インク受容層形成用の塗布液中に添加してもよい。
【0097】
本発明においては、インク受容層形成後に、水溶性バインダの硬化剤を供給する方法を単独で用いてもよいが、好ましくは、上述の硬化剤をインク受容層形成用の塗布液中に添加する方法と併用して用いることである。硬化剤としては、水溶性バインダと硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、ホウ酸及びその塩が好ましいが、その他にも公知のものが使用出来、一般的には水溶性バインダと反応し得る基を有する化合物あるいは水溶性バインダが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、水溶性バインダの種類に応じて適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
【0098】
ホウ酸又はその塩とは、ホウ素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸及び八ホウ酸及びそれらの塩が挙げられる。硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸及びその塩は、単独の水溶液でも、又、二種以上を混合して使用してもよい。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することが出来ないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることが出来、塗布液を濃縮化することが出来る。又、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることが出来る利点がある。上記硬化剤の総使用量は、上記水溶性バインダ1g当たり1〜600mgが好ましい。
【0099】
本発明に係る基体上に設けたインク受容層及び必要に応じて設けられるその他の層には、上述した以外の各種添加剤を使用することが出来る。例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、又はこれらの共重合体、尿素樹脂、又はメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、アニオン性、カチオン性、非イオン性、ベタイン型の各界面活性剤特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている褪色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることも出来る。
【0100】
インク受容層は、2層以上から構成されていてもよく、この場合、それらのインク受容層の構成はお互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0101】
上記のような多孔質層は、特に、インクジェット記録方法に好ましく用いられる。インクジェット記録方法に好ましい多孔質層の空隙容量は10〜30ml/m2である。
【0102】
本発明に係わるインク受容層は、従来公知の塗布方法で塗設することが出来、例えば、グラビアコーティング法、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、押し出し塗布方法、スライドビード塗布方法、カーテン塗布方法、スロットノズルスプレー塗布方法あるいは、米国特許第2,681,294号公報に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法等が、好ましく用いられる。
【0103】
本発明に係るインク受容層の各層には各種添加剤を使用することが出来る。例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、又はこれらの共重合体、尿素樹脂、又はメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、アニオン性、カチオン性、非イオン性、ベタイン型の各界面活性剤特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている褪色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることも出来る。
【0104】
前記各種支持体とインク受容層の接着強度を大きくする等の目的で、インク受容層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。更に、本発明に係る記録用紙は必ずしも無色である必要はなく、着色された記録シートであってもよい。
【実施例】
【0105】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらの例に限定されるものではない。尚、実施例中で「%」は特に断りのない限り質量%を示す。
【0106】
実施例1
図1に示す塗布製造ラインを使用して記録用紙の作製を行った。
【0107】
〈多孔質インク受容層塗布済み帯状の基体の作製〉
(分散液の調製)
カチオン性ポリマ(P1)の15%水溶液100gに、一次粒子の平均粒子径が12μmの微粒子シリカ(トクヤマ製、QS−20)の25%水分散液500g、次いでホウ酸3.0g、ホウ砂0.7gを添加し、高速ホモジナイザーで分散し、青白色澄明な分散液を得た。
【0108】
【化1】

【0109】
(多孔質インク受容層用塗布液の調製)
上記調製した分散液を45℃に昇温し、ポリビニルアルコール(クラレ製、PVA203)の10%水溶液及びポリビニルアルコール(クラレ製、PVA245)の6%水溶液をそれぞれ45℃に昇温した後に添加した。次いで、45℃の純水を加えて液量を調整して、半透明状の塗布液を得た。
【0110】
(多孔質インク受容層用塗布液の塗布)
両面をポリエチレンで被覆した紙支持体(幅1500mm、厚み230μm)上に、スライドビード方塗布機を用いて上記塗布液を塗布、乾燥して、多孔質インク受容層塗布済み帯状の支持体を10000m作製した。塗布スピードは200m/minで行った。多孔質インク受容層塗布済み帯状の基体の下層における各成分の付量は以下の通りで、乾燥膜厚は35μmである。
【0111】
微粒子シリカ 15g/m2
カチオン性ポリマ(Q1) 2.2g/m2
ポリビニルアルコール 2.3g/m2
インク受容層用塗布液の塗布後は、10℃に保った冷却ゾーンを15秒間通過させて膜面の温度を10℃以下にまで低下させた後、以下の温度の風を順次インク受容層表面に吹き付けながら乾燥工程の各ゾーンを通過させて乾燥した。
【0112】
尚、第1乾燥部での全乾燥工程は360秒とし、このうち前半の270秒は、吹き付ける風の平均相対湿度を30%以下とした。270秒以降は、相対湿度が40〜60%の調湿ゾーンとした。
〈カーテンスプレー塗布用の塗布液の調製〉
以下の組成からなるカーテンスプレー塗布用の塗布液を調製した。
【0113】
ポリ塩化アルミニウム 160ml
(多木化学(株)製PAC250A、固形分23.5%)
水 840ml
粘度は25℃で、B型粘度計で測定した結果、0.9mPaであった。尚、表面張力は40mN/mになるように界面活性剤で調整した。
【0114】
〔カーテンスプレーコータの準備〕
基体の搬送方向の塗布幅に対するリップの長さを表1に示す様に変えた図3、図4に示すカーテンスプレーコータを準備しNo.1−1〜1−7とした。尚、カーテンスプレーコータとしては、塗布幅1550mm、塗布液用ノズルの間隙の幅60μm、空気用ノズルの間隙の幅200μm、塗布液用ノズルに対する空気用ノズルの角度を30°とした。
【0115】
【表1】

【0116】
〔カーテンスプレー塗布〕
図1に示す第1乾燥部で乾燥し、インク受容層の減率乾燥が終了した時点で、準備したカーテンスプレーコータNo.1−1〜1−7を使用し、図2に示す様にカーテンスプレーコータのスプレー口を形成するラインが支持体と平行で、且つ基体の進行方向に対して交差する角度が90°になるように配設した。インク受容層上に塗布される塗布液の基体の搬送方向の塗布幅は1.0cmで行った。基体の幅方向の塗布幅は基体の幅と同一として行った。気体ノズルの気体流量と、塗布液ノズルの塗布液流量との比を2000とし、上記準備したカーテンスプレー塗布用の塗布液を、湿潤膜厚として15μmになるように20,000mカーテンスプレー塗布(100分間)し、第2乾燥部で乾燥し、表面層を有する記録材料を作製し試料No.101〜108とした。尚、塗布液の温度は30℃でカーテンスプレーコータの温度は30℃とした。第2乾燥部での全乾燥工程は100秒とし、相対湿度が40〜60%の風を吹き付けた。
【0117】
塗布液は、塗布液用ノズルの間隙の幅60μmに対して1/20の口径のフィルターを使用して濾過したものを使用した。空気は、空気用ノズルの間隙の幅200μmに対して1/50の口径のフィルターを使用して濾過したものを使用した。
【0118】
空気用ノズルから噴出される空気の供給条件としては、18CMM/m(塗布幅当たりの流量)とし、その時の空気用ノズルでの内圧としては8kPaとなるようにした。空気の線速度vは150m/sとした。カーテンスプレーコータのスプレー口とインク受容層との間隙は20mm、塗布速度は200m/minで行った。噴霧角度は30°とし、スプレー口とインク受容層の表面との距離を10mm、スプレー口から噴霧される塗布液の液滴径を20μmとした。
【0119】
(評価)
作製した各試料No.101〜107に付き、以下に示す方法でカーテンスプレーコータのリップ部の液付着性、液タレ故障に付き測定し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表2に示す。
【0120】
カーテンスプレーコータのリップ部の液付着性の測定方法
塗布開始後、100分間後にリップ部への液付着の有無を目視で確認した。
【0121】
カーテンスプレーコータのリップ部の液付着性の評価ランク
○:液付着なし
△:実技上で問題とならない程度の僅かな液付着が確認される
×:全面に液付着が確認される
液タレ故障の測定方法
塗布開始後、10分間隔で100分間後までの塗布試料を塗布幅方向でA4サイズ3枚(右、中央、左)ずつ計30枚採取し、インクジェットプリンター(Epson製PM900)でブラックインクのベタ印字を行いベタ印字部のムラの有り無し(液タレ故障がある場合は、点状に濃度ムラが発生する)を目視で確認した。
【0122】
液タレ故障の評価ランク
○:濃度ムラの発生なし
△:実技上で問題とならない程度の僅かな濃度ムラが確認される
×:全面に濃度ムラの発生が確認される
【0123】
【表2】

【0124】
本発明の有効性が確認された。
【0125】
実施例2
図1に示す塗布製造ラインを使用して記録用紙の作製を行った。
【0126】
(多孔質インク受容層塗布済み帯状の基体の作製)
実施例1で調製した分散液を使用し、実施例1と同じ方法で多孔質インク受容層塗布済み帯状の基体を作製した。
【0127】
〔カーテンスプレーコータの準備〕
図4に示すカーテンスプレーコータの、リップの表面を基準とした時の、第1ブロックの先端部のリップに繋がる斜面の角度θ3と、第4ブロックの先端部のリップに繋がる斜面の角度θ4とを表3に示す様に変えた図4に示すカーテンスプレーコータを準備し、No.2−1〜2−7とした。カーテンスプレーコータとしては、塗布幅1550mm、塗布液用ノズルの間隙の幅60μm、空気用ノズルの間隙の幅200μm、リップの長さは4cm、塗布液用ノズルに対する空気用ノズルの角度を30°とした。
【0128】
【表3】

【0129】
〔カーテンスプレー塗布〕
準備したカーテンスプレーコータNo.2−1〜2−7を使用し、実施例1で準備したカーテンスプレー用塗布液を使用し、実施例1と同じ塗布条件で塗布を行い試料を作製しNo.201〜207とした。
【0130】
(評価)
作製した各試料No.201〜207に付き、カーテンスプレーコータのリップ部及び側面の液付着性、液タレ故障(濃度ムラ)に付き、実施例1と同じ方法で測定し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表4に示す。尚、側面の液付着性は以下の評価ランクに従って評価した。
【0131】
カーテンスプレーコータの側面の液付着性の測定方法
塗布開始後、100分間後に側面への液付着の有無を目視で確認した。
【0132】
カーテンスプレーコータの側面の液付着性の評価ランク
○:液付着なし
△:実技上で問題とならない程度の僅かな液付着が確認される
×:全面に液付着が確認される
【0133】
【表4】

【0134】
本発明の有効性が確認された。
【0135】
実施例3
図1に示す塗布製造ラインを使用して記録用紙の作製を行った。
【0136】
(多孔質インク受容層塗布済み帯状の基体の作製)
実施例1で調製した分散液を使用し、実施例1と同じ方法で多孔質インク受容層塗布済み帯状の基体を作製した。
【0137】
〔カーテンスプレーコータの準備〕
実施例1で準備したカーテンスプレーコータNo.2−4を使用した。
【0138】
〔カーテンスプレー塗布〕
準備したカーテンスプレーコータNo.2−4のスプレー口とインク受容層の表面との距離を表5に示す様に変え、実施例2で準備したカーテンスプレー用塗布液を使用し、実施例2と同じ塗布条件で塗布を行い試料を作製しNo.301〜307とした。
【0139】
(評価)
作製した各試料No.301〜307に付き、実施例2と同じ評価項目を実施例2と同じ方法で測定し、実施例2と同じ評価ランクに従って評価結果を表5に示す。
【0140】
【表5】

【0141】
本発明の有効性が確認された。
【0142】
実施例4
図1に示す塗布製造ラインを使用して記録用紙の作製を行った。
【0143】
(多孔質インク受容層塗布済み帯状の基体の作製)
実施例1で調製した分散液を使用し、実施例1と同じ方法で多孔質インク受容層塗布済み帯状の基体を作製した。
【0144】
〔カーテンスプレーコータの準備〕
実施例1で準備したカーテンスプレーコータNo.2−4を使用した。
【0145】
〔カーテンスプレー塗布〕
準備したカーテンスプレーコータNo.2−4を使用し、スプレー口から噴霧擦る液滴の液滴径を表6に示す様に変え、実施例1で準備したカーテンスプレー用塗布液を使用し、実施例1と同じ塗布条件で塗布を行い試料を作製しNo.401〜407とした。尚、液滴径の変化は、気体ノズルに供給する空気圧を変えることにより行った。
【0146】
(評価)
作製した各試料No.401〜407に付き、実施例2と同じ評価項目を実施例2と同じ方法で測定し、実施例2と同じ評価ランクに従って評価した結果を表6に示す。
【0147】
【表6】

【0148】
本発明の有効性が確認された。
【0149】
実施例5
図1に示す塗布製造ラインを使用して記録用紙の作製を行った。
【0150】
(多孔質インク受容層塗布済み帯状の基体の作製)
実施例1で調製した分散液を使用し、実施例1と同じ方法で多孔質インク受容層塗布済み帯状の基体を作製した。
【0151】
〔カーテンスプレーコータの準備〕
気体ノズルの塗布液ノズルとのなす角度θ1を表7に示す様に変えた図4に示すカーテンスプレーコータを準備し、No.5−1〜5−4とした。カーテンスプレーコータとしては、塗布幅1550mm、塗布液用ノズルの間隙の幅60μm、空気用ノズルの間隙の幅200μm、リップの長さは2cm、リップの表面を基準とした時の第1ブロックの先端部のリップに繋がる斜面の角度θ3を60°と、第4ブロックの先端部のリップに繋がる斜面の角度θ4を60°とした。
【0152】
【表7】

【0153】
〔カーテンスプレー塗布〕
準備したカーテンスプレーコータNo.5−1〜5−4を使用し、基体の進行方向に対して交差する角度が90°になるように配設し、実施例1で準備したカーテンスプレー用塗布液を使用し、図5に示すように、多孔質インク受容層上に塗布されるカーテンスプレー塗布用の塗布液の塗布液ノズルの開口端からの噴霧角度θ2を表8に示す様に変えた他は全て実施例1と同じ条件で塗布を行い試料を作製しNo.501〜513とした。尚、各カーテンスプレーコータNo.5−1〜5−4の噴霧角度の変化は、各カーテンスプレーコータの塗布液ノズルの塗布液流量は一定にし、気体ノズルの気体流量を変えることで行った。又、各カーテンスプレーコータの塗布液ノズルの開口端と多孔質インク受容層の表面との距離を調整し、塗布幅は全て2cmとした。
【0154】
(評価)
作製した各試料No.501〜513に付き、実施例2と同じ評価項目を実施例2と同じ方法で測定し、実施例2と同じ評価ランクに従って評価した結果を表8に示す。
【0155】
【表8】

【0156】
本発明の有効性が確認された。
【0157】
実施例6
図1に示す塗布製造ラインを使用して記録用紙の作製を行った。
【0158】
(多孔質インク受容層塗布済み帯状の基体の作製)
実施例1で調製した分散液を使用し、実施例1と同じ方法で多孔質インク受容層塗布済み帯状の基体を作製した。
【0159】
〔カーテンスプレーコータの準備〕
実施例1で準備したカーテンスプレーコータNo.2−4を使用した。
【0160】
〔カーテンスプレー塗布〕
準備したカーテンスプレーコータNo.2−4を使用し、カーテンスプレーコータの温度と、塗布液の温度とを表9に示す様に変え、実施例1で準備したカーテンスプレー用塗布液を使用し、実施例1と同じ塗布条件で塗布を行い試料を作製しNo.601〜607とした。尚、カーテンスプレーコータの温度は、カーテンスプレーコータに供給する保温水の温度を変えることで調整した。
【0161】
(評価)
作製した各試料No.601〜607に付き、実施例2と同じ評価項目を実施例2と同じ方法で測定し、実施例2と同じ評価ランクに従って評価した結果を表9に示す。
【0162】
【表9】

【0163】
本発明の有効性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】カーテンスプレーコータを使用し、インク受容層上に表面層を形成した記録媒体の塗布製造ラインの一例を示す模式図である。
【図2】カーテンスプレーコータとインク受容層を有する基体との配置関係を示す図1のXで示される部分の拡大概略平面図である。
【図3】図1のXで示される部分の拡大概略図である。
【図4】図3のSで示される部分の拡大概略図である。
【図5】図1〜図6に示すカーテンスプレーコータの概略分解斜視図である。
【符号の説明】
【0165】
1 塗布製造ライン
201 基体
203 インク受容層
3 第1塗工部
6 第2塗工部
601 カーテンスプレーコータ
301、602 バックアップロール
601a2 塗布液ノズル
601c2、601b2 気体ノズル
601b3、601c3 気体ノズルの開口端(気体噴出口)
601a4 塗布液ノズルの開口端(塗布液噴出口)
802 記録用紙
9a 塗布液供給系
9b 加圧空気供給系
9 供給系
θ1、θ3、θ4 角度
θ2 噴霧角度
P スプレー口
L 塗布幅
T 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層のインク受容層が塗設された基体を搬送し、前記インク受容層上に、前記基体の搬送方向と交差する位置に配設されたカーテンスプレーコータにより、前記インク受容層の幅方向の全幅に塗布液をカーテンスプレー塗布し表面層を形成する、インクジェット記録用紙の表面層のカーテンスプレー塗布方法において、
前記カーテンスプレーコータは、気体を供給する第1気体ノズルを形成する先端に平面部を有する第1ブロックと、第2ブロックと、
前記第2ブロックとで塗布液を供給する塗布液ノズルを形成する先端に平面部を有する第3ブロックと、
前記第3ブロックとで気体を供給する第2気体ノズルを形成する先端に平面部を有する第4ブロックとを有し、
前記第1ブロックと、前記第2ブロックと、前記第3ブロックと、前記第4ブロックとにより形成された前記第1気体ノズルと、前記塗布液ノズルと、前記第2気体ノズルとのそれぞれの開口端で形成された塗布液のスプレー口と、
前記第1ブロックと、前記第2ブロックと、前記第3ブロックと、前記第4ブロックとの前記平面部により形成されたリップを有し、
前記基体の搬送方向の塗布幅をLとした時、前記リップの長さが、1/2×L〜8×Lであることを特徴とするカーテンスプレー塗布方法。
【請求項2】
前記リップに繋がる第1ブロックの斜面の角度が20〜90°、第4ブロックの斜面の角度が20〜90°であることを特徴とする請求項1に記載のカーテンスプレー塗布方法。
【請求項3】
前記スプレー口とインク受容層の表面との距離が5〜100mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のカーテンスプレー塗布方法。
【請求項4】
前記スプレー口から噴霧される塗布液の液滴径が5〜100μmであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のカーテンスプレー塗布方法。
【請求項5】
前記第1気体ノズル及び第2気体ノズルと塗布液ノズルとのなす角度θ1がそれぞれ10〜60°で、該塗布液ノズルの開口端からの塗布液の噴霧角度θ2が10〜80°であり、且つθ1とθ2との間の関係が、下式(1)で規定する条件を満たすことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のカーテンスプレー塗布方法。
式(1) θ2<2/3(2×θ1)
【請求項6】
前記カーテンスプレーコータの温度と、塗布液ノズルに供給する塗布液温度とは、下式(2)で規定する条件を満たすことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のカーテンスプレー塗布方法。
式(2) 塗布液温度≦カーテンスプレーコータの温度
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載のカーテンスプレー塗布方法により作製されたことを特徴とするインクジェット記録用紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−312249(P2006−312249A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135041(P2005−135041)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】