説明

カードコネクタ

【課題】
カードの誤挿入防止を確実にし、かつ、カードの誤挿入が判別しやすいカードコネクタを提供する。
【解決手段】
カードコネクタCは、スライダ4、カム機構(44,7)、およびストッパ5を備える。カム機構(44,7)は、カードに押されたスライダ4を、カードへの押込力を開放した後もスライダの排出方向への移動を阻止するロック位置に導く第1カム溝441と、第1カム溝41の途中から分岐してカードへの押込力の解放によりスライダ4を付勢力により排出方向に移動させる第2カム溝442とを有する。ストッパ5は、カードが正規の姿勢で挿入された場合にはスライダ4をロック位置に移動させ、カードが不正な姿勢で挿入されてきた場合にはカードに押されて挿入方向に移動することにより第2カム溝442に案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される電子機器に、ICが内蔵されたカードを装着するためのコネクタとしてカードコネクタが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、いわゆるプッシュ/プッシュ形式のカードイジェクト機構を有するカードコネクタが示されている。このカードコネクタは、カードが挿入される空洞内に、このカードに押し込まれるカムスライダを備えている。一旦挿入されたカードが再び押されると、スライダのロックが解除され、スライダによってカードが押し出される。空洞を形成するハウジングには、スライダを案内するリブが突出して設けられている。特許文献1のカードコネクタでは、リブが、誤挿入されたカードの前端に衝突してカードの挿入を阻止する。
【0004】
また、特許文献2には、プッシュ/プッシュ形式のカードイジェクト機構を有するカードコネクタが示されている。このカードコネクタでは、絶縁ハウジングとともに空洞を形成するメタルシェルに誤挿入防止用突起が設けられている。この誤挿入防止用突起は、誤挿入されたカードの前端に衝突してカードの挿入を阻止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−220787号公報
【特許文献2】特開2004−127731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示すカードコネクタでは、リブが突出する高さが、空洞内でスライダとすれ違える程度に抑えられている。この場合、誤挿入されたカードが強い力で押されると、カードがリブの上に乗り上げるようにして奥まで挿入されるおそれがある。この結果、カードコネクタまたはカードが破損するおそれがある。このことは、誤挿入防止用突起をメタルシェルに有する特許文献2のカードコネクタについても同様である。
【0007】
ここで、カードを阻止するリブや突起の高さを確保するため、リブや突起をスライダに形成することが考えられる。しかしこの場合、誤挿入されたカードがリブや突起に当たると、スライダが最奥の位置まで移動することとなる。この結果、プッシュ/プッシュ形式の動作を行うスライダは、カードの誤挿入を許容したままロック状態となってしまう。
【0008】
本発明は上記問題点を解決し、カードの誤挿入防止を確実とすることが可能であり、かつ、カードの誤挿入が判別しやすいカードコネクタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明のカードコネクタは、
カードを受け入れる受入空間が形成されたハウジングと、
上記カードの電気接点に接触するコンタクトと、
上記カードの挿入方向にスライド自在であって、カードが上記受入空間から押し出される排出方向に付勢され、受入空間に挿入されてきたカードの前端縁に押され受入空間奥側に移動するスライダと、
正規の姿勢で挿入されてきたカードに押された上記スライダを、カードへの押込力を開放した後もこのスライダの上記排出方向への移動を阻止するロック位置に導く第1カム溝と、この第1カム溝の途中から分岐してカードへの押込力の解放によりこのスライダを付勢力によりこの排出方向に移動させる第2カム溝とを有するカム機構と、
上記スライダに上記挿入方向に遊びを持ってこのスライダに支持され、カードが正規の姿勢で挿入されてきた場合には上記スライダの上記第1カム溝への侵入を許容し、カードが不正な姿勢で挿入されてきた場合にはカードに押されて上記挿入方向に移動することによりこのスライダを上記第2カム溝に案内するストッパとを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明のカードコネクタでは、スライダの移動を禁止するストッパがスライダに支持されている。このため、ストッパのうち少なくともカードに当たる部分の高さを、スライダに合わせて抑える必要がない。ストッパの、カードに当たる部分の高さを受入空間の高さに合わせて高くすることによって、カードがストッパに乗り上げる事態が防止される。
【0011】
またさらに、ストッパは、カードが不正な姿勢で挿入されてきた場合には奥側に移動することによって、カムピンを第2カム溝に導く。この後、カードの押込力の解放によりスライダが移動するのに伴い、第2カム溝にあるカムピンは、ロック位置ではなくイジェクト位置に戻る。このため、スライダは最終の排出位置まで移動し、カードが排出される。よって、本発明のカードコネクタは、カードの誤挿入防止を確実とすることが可能であり、かつ、カードの誤挿入が判別しやすい。
【0012】
ここで、上記本発明のカードコネクタは、上記ストッパを上記排出方向に向かって付勢するストッパ付勢部材を備えたものであることが好ましい。
【0013】
カードが正規の姿勢で挿入されてきた場合には、ストッパが、カムピンを第1溝に案内する排出方向に移動し、スライダがロック位置に導かれる。
【0014】
また、上記本発明のカードコネクタにおいて、上記ストッパが、金属製の部材であることが好ましい。
【0015】
ストッパが金属製の部材であることによって、カードが強い力で挿入された場合でもストッパの破損や変形が抑えられる。したがって、カードの誤挿入が確実に防止される。
【0016】
また、上記本発明のカードコネクタにおいて、上記カム機構が、上記ハウジングに支持されるとともに第1カム溝または上記第2カム溝を案内されるカムピンを備えたものであり、
上記ストッパが、上記カムピンを上記第1カム溝に沿って導く第1誘導片と、このカムピン7をこの第1カム溝から第2カム溝へ導く傾斜案内面を有する第2誘導片とを備えたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、カードの誤挿入防止を確実とすることが可能であり、かつ、カードの誤挿入が判別しやすいカードコネクタが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態であるカードコネクタの平面図である。
【図2】スライダおよびストッパをそれぞれ示す平面図である。
【図3】スライダおよびストッパをそれぞれ示す側面図である。
【図4】スライダおよびストッパが組み合わせられた状態を示す図であり、パート(A)は平面図、パート(B)はパート(A)のB−B線における断面図である。
【図5】図4に対し、ストッパが前方位置に位置した状態を示す図である。
【図6】正規の姿勢でカードがカードコネクタに挿入された状態を示す図である。
【図7】スライダがロック位置に移動した状態を示す平面図である。
【図8】不正な姿勢でカードがカードコネクタに挿入された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態であるカードコネクタの平面図である。図1には、カードコネクタCと、カードコネクタCに装着されるカードJが示されている。ここで、カードJは、ICが内蔵されたICカードであり、例えばマイクロSIMカードである。図1には、カードJが、カードコネクタCに挿入される正規の姿勢で示されている。カードJがカードコネクタCに挿入される方向を挿入方向Xと称する。カードJは、概略矩形の板状であり、挿入方向Xにおける前端縁Eの、左右一方に切欠きNが形成されている。本実施形態におけるカードJの切欠きNは、図1に示す正規の姿勢において、カードコネクタCに向かって左の端に形成されている。また、カードJには、6つの電気接点P(P1〜P6)が設けられている。電気接点P1〜P6は、図1に示す正規の姿勢において下面すなわち、図1に現れる面の反対面に配置されている。
【0021】
カードコネクタCは、ハウジング1、シェル2、6つのコンタクト3、スライダ4、ストッパ5、コイルばね6、カムピン7、および、板ばね8を備えている。なお、図1では、シェル2が取り外された状態が実線で示され、シェル2は外形のみが破線で示されている。
【0022】
ハウジング1は、絶縁性の樹脂材料で形成されている。シェル2は、金属板を打抜き加工および折曲げ加工することで形成されている。ハウジング1およびシェル2は、双方とも略矩形状の外形を有している。シェル2は、ハウジング1の上を覆うようにハウジング1に取り付けられている。ハウジング1とシェル2の間には、板状のカードJを受け入れる受入空間11が形成されている。受入空間11は、挿入口11aで外部に開口した空洞である。カードJは挿入口11aから受入空間11に、挿入方向Xに挿入される。ここで、挿入方向Xに垂直な、ハウジング1からシェル2を向いた方向、すなわち図1における紙面を貫く方向を高さ方向Zと称する。ハウジング1の、受入空間11の挿入方向Xにおける奥には、移動してくるスライダ4を制止するための制止壁14が設けられている。また、制止壁14には、ストッパ5を付勢するための板ばね8が設けられている。
【0023】
コンタクト3は、カードJの電気接点P1〜P6と電気的に接続するための部材である。コンタクト3は、金属板を打抜き加工および折曲げ加工することで形成されている。コンタクト3は、ハウジング1内にインサート成形等によって固定されている。ハウジング1には、コンタクト穴11hが設けられており、コンタクト3の先端は、コンタクト穴11hを通して、受入空間11内に入り込んでいる。コンタクト3の他端は、カードコネクタCが取り付けられる図示しない基板の導体パターンに半田接続される。
【0024】
スライダ4、ストッパ5、コイルばね6、カムピン7、および、板ばね8は、ハウジング1とシェル2との間に形成された受入空間11に配置されている。スライダ4、ストッパ5、コイルばね6、および、カムピン7は、プッシュ/プッシュ形式のイジェクト機構を構成する。スライダ4は、ハウジング1に、挿入方向Xにスライド自在に支持されている。より詳細には、ハウジング1の、スライダ4が配置された側の縁には、挿入方向Xに延びる立壁12が設けられている。また、ハウジング1には、挿入方向Xに延びる案内溝13も設けられている。案内溝13には、スライダ4が有する突起41が入り込んでいる。スライダ4は、ハウジング1の立壁12および案内溝13に案内されて挿入方向Xにスライドする。
【0025】
図2は、スライダおよびストッパをそれぞれ示す平面図である。また、図3は、スライダおよびストッパをそれぞれ示す側面図である。
【0026】
スライダ4は、樹脂材料を成型することで形成されている。スライダ4は、上述した突起41に加え、スライダ本体42、押当て部43、カム部44、および、ばね係合部45を備えている。
【0027】
スライダ本体42は挿入方向Xに長く延びている。スライダ本体42には、高さ方向Zに突出した案内壁421が設けられている。案内壁421は、カードJの厚みに相当する高さを有し、挿入方向Xに延びている。案内壁421は、カードJ(図1参照)の挿入時にカードJの側縁に接触して、カードJを案内する。
【0028】
押当て部43は、スライダ本体42から鉤状に延びた部分である。押当て部43は、カードJ(図1参照)の挿入時にカードJの前端縁E(図1参照)に対面した位置に配置されており、カードJの前端縁Eに押し当てられる部分となる。押当て部43は、カードJの厚みに相当する高さを有する。スライダ4は、押当て部43がカードJ(図1参照)に押され、受入空間11(図1参照)の奥側に移動する。またこの逆に、スライダ4は、挿入方向Xとは逆向きの排出方向に移動するとき押当て部43でカードJを押す。スライダ本体42の、押当て部43が突出する根本部分には、ストッパ5を支持するとともに移動を規制するストッパ規制部422が設けられている。
【0029】
カム部44は、スライダ本体42に続いて設けられている。カム部44およびカムピン7は、スライダ4を導くカム機構を構成している。カム部44には第1カム溝441が形成されている。第1カム溝441は、図1に示すようにカムピン7の先端が入り込んでおり、カムピン7とともにスライダ4の位置決めを行う。第1カム溝441は、第1極限位置441a、ロック位置441b、第2極限位置441c、およびイジェクト位置441dの4つの位置を頂点とするハートカム溝であり、概略ハート形状である。
【0030】
また、カム部44には、第2カム溝442が付加的に形成されている。第2カム溝442は、第1極限位置441aとイジェクト位置441dとの途中で第1カム溝441から分岐している。第2カム溝442は、挿入方向Xにおける第1極限位置441aと同じ位置まで延びている。第2カム溝442の先は行き止まりとなっている。
【0031】
第1カム溝441における上記4つの位置の間には、カムピン7の移動方向を規定する段差sが設けられている。このため、第1カム溝441は、スライダ4が移動するのに伴い、カムピン7(図1参照)を、第1極限位置441a、ロック位置441b、第2極限位置441c、およびイジェクト位置441dの順に循環的に案内する。例えば、イジェクト位置441dから第1極限位置441aに案内されたカムピン7(図1参照)は、次にロック位置441bに案内される。第1極限位置441aは、本発明にいう極限位置の一例に相当する。
【0032】
イジェクト位置441dにあるカムピン7は、第1カム溝441から、第2カム溝442にも案内され得る。第1カム溝441のイジェクト位置441dと第2カム溝442との間には、段差は設けられていない。このため、後述するように、第2カム溝442に案内されたカムピン7は、ロック位置441bではなくイジェクト位置441dに戻ることとなる。
【0033】
ばね係合部45は、コイルばね6(図1参照)の一端が取り付けられる突起である。コイルばね6については後に説明する。
【0034】
ストッパ5は、スライダ4に組み合わされる部材である。ストッパ5は、金属板を打抜き加工および折曲げ加工することで形成されている。ストッパ5は、ストッパ本体51、切欠対応部52、および経路切替部53を有する。ストッパ本体51は、挿入方向Xに長く延びている。ストッパ5の切欠対応部52は、図1に示すように、カードJが受入空間11に正規の姿勢で挿入されるときの、切欠きNに対面した位置に配置されている。切欠対応部52は、正規の姿勢で挿入されたカードJ(図1参照)の切欠きNに入る。
【0035】
切欠対応部52は、ストッパ本体51に続いており、図3に示すように、断面が略U字状に曲がっている。ストッパ5がスライダ4に組み合わされるとき、切欠対応部52は、U字状に曲がった両側の縁部52a,52bを挿入方向Xに向けてストッパ規制部422を跨ぐように配置される。切欠対応部52の挿入方向Xにおける内側の長さL11は、ストッパ規制部422の挿入方向Xにおける長さL2よりも長い。このため、ストッパ5は、挿入方向Xに遊びを持って支持されている。ストッパ5の縁部52a,52bのうち、挿入口11a(図1参照)に面した縁部52aは、押当て部43や案内壁421と同様に、カードJの厚みに相当する高さを有する。
【0036】
経路切替部53は、スライダ4のカム部44の上に位置し、カムピン7(図1参照)の移動経路を切換える部分である。経路切替部53は、第1誘導片531および第2誘導片532を有する。第2誘導片532は、カムピン7を導く傾斜案内面532aを有する。傾斜案内面532aは、カム部44の第2カム溝442に向かって傾斜している。
【0037】
図4は、スライダおよびストッパが組み合わせられた状態を示す図である。図4のパート(A)は平面図であり、パート(B)はパート(A)のB−B線における断面図である。
【0038】
先に説明したように、ストッパ5は、挿入方向Xに遊びを持ってスライダ4に支持されている。ストッパ5がスライダ4上で最も挿入方向Xに移動した位置を前方位置と称し、挿入方向Xとは反対方向である排出方向に最も移動した位置を後方位置と称する。図4には、ストッパ5が、スライダ4上における後方位置に位置した状態が示されている。この状態では、経路切替部53の第1誘導片531が、第2カム溝442への経路を遮っている。つまり、この状態では、ストッパ5は、イジェクト位置441dから第1溝441を移動してくるカムピン7(図1参照)を、第1極限位置441aに導くこととなる。
【0039】
図5は、図4に対し、ストッパが前方位置に位置した状態を示す図である。
【0040】
図5に示す状態では、経路切替部53の第1誘導片531が、第2カム溝442から退避するとともに、第2誘導片532が、第1カム溝441の第1極限位置441aへの経路を遮っている。つまり、この状態では、ストッパ5は、イジェクト位置441dから第1溝441を移動してくるカムピン7(図1参照)を、第2誘導片532に設けられた傾斜案内面532a(図2参照)に沿って第2カム溝442に導くこととなる。
【0041】
再び図1を参照して説明する。コイルばね6は、ハウジング1のばね係合部1aと、スライダ4のばね係合部45(図2参照)との間に設けられた圧縮ばねである。コイルばね6は、スライダ4を、挿入方向Xとは逆の方向き、すなわちカードJを受入空間11から押し出す方向に付勢している。
【0042】
カムピン7は、両端部分が略直角に折れ曲がった概略U字状の棒である。カムピン7は、金属棒を折曲げ加工することで形成されている。カムピン7の折れ曲がった一端7aはハウジング1に挿入されており、カムピン7はこの一端7aを軸として、ハウジング1に回転自在に支持されている。カムピン7の他端7bは、スライダ4の第1カム溝441に嵌入している。第1カム溝441および第2カム溝442(図2参照)が形成されたカム部44並びにカムピン7で構成されたカム機構が、スライダ4の位置決めを行う。
【0043】
板ばね8は、ストッパ5を挿入方向Xとは逆の排出方向に向かって付勢するための部材である。板ばね8は、本発明にいうストッパ付勢部材の一例に相当する。
【0044】
[正規の姿勢でのカード挿入]
上述した構成のカードコネクタCでは、カードJの誤挿入が防止される。ここではまず、カードJが正規の姿勢でカードコネクタCに挿入された場合の各部の動作を説明する。
【0045】
図6は、正規の姿勢でカードがカードコネクタに挿入された状態を示す図である。
【0046】
カードJが図1に示すカードコネクタCの受入空間11(図1参照)に正規の姿勢で挿入されると、カードJの前端縁Eが、スライダ4の押当て部43に当たる。スライダ4は、カードJの前端縁Eに押され、コイルばね6の付勢力に抗して、受入空間11の、挿入方向Xにおける奥側に移動する。このとき、ストッパ5もスライダ4に押されて挿入方向Xに移動する。スライダ4は、図6に示すように、押当て部43が制止壁14に当たる最奥位置まで移動することができる。図6には、スライダ4が最奥位置まで移動して、押当て部43が制止壁14に当たり、スライダ4の挿入方向Xへの更なる移動が阻止された状態が示されている。このとき、ストッパ5は、板ばね8に接し、板ばね8によって、挿入方向Xとは反対の排出方向に付勢される。また、ストッパ5の切欠対応部52の一部はカードJの前端縁Eの切欠きNに入り込む。したがって、ストッパ5は、スライダ4に対し相対的に挿入方向Xとは反対の排出方向に移動し、図4に示した、スライダ4上の後方位置に位置する。
【0047】
このとき、カムピン7は、スライダ4の移動に伴い、イジェクト位置441dを離れ、第1カム溝441に沿って案内される。先に説明したように、ストッパ5は、スライダ4上における後方位置に位置した状態では、カムピン7を第1極限位置441aに導く。したがって、カムピン7は、第1カム溝441の第1極限位置441aに案内される。
【0048】
次に、カードJへの押込力が解放されると、スライダ4が、コイルばね6の付勢力によって、カードを押し出す向き、すなわち排出方向にわずかに戻る。
【0049】
図7は、スライダがロック位置に移動した状態を示す平面図である。
【0050】
カードJへの押込力が解放されてスライダ4が動くと、第1極限位置441aにあったカムピン7は、今度はロック位置441bに入り込む。ロック位置441bに入り込んだカムピン7は、スライダ4の更なる動きを阻止する。カードJは、図7に示す位置で停止する。カムピン7がロック位置441bに入り込んだ状態における、スライダ4の位置もロック位置と称する。ロック位置では、カードJがカードコネクタCに完全に装着された状態となる。ロック位置では、カードコネクタCのコンタクト3(図1参照)の先端が、カードJの電気接点P1〜P6(図1参照)に弾性接触する。
【0051】
スライダ4がロック位置にあるときに、カードJに再び押込力が付与されると、カードJがスライダ4を、コイルばね6の付勢力に抗して挿入方向Xに押す。スライダ4は、押当て部43がハウジング1の奥に設けられた制止壁14に当たるまで移動する。また、スライダ4の移動に伴い、カムピン7は、第1カム溝441のロック位置441bから第2極限位置441cに案内される。
【0052】
次に、カードJへの押込力が解放されると、スライダ4が、コイルばね6の付勢力によってカードを押し出す向き、すなわち挿入方向Xとは反対の排出方向に動く。また、カムピン7は、第1カム溝441の第2極限位置441cからイジェクト位置441dに案内される。したがって、スライダ4は、図1に示す排出位置まで移動しながら、カードJを押し出す。排出位置までスライダ4が移動することによって、カードJの多くの部分が、カードコネクタCの外に露出する。したがって、カードJを手指でつまんで取り出すことができる。
【0053】
[不正な姿勢でのカード挿入]
続いて、カードJが不正な姿勢でカードコネクタCに挿入された場合の各部の動作を説明する。
【0054】
図8は、不正な姿勢でカードがカードコネクタに挿入された状態を示す。
【0055】
図8に示すカードJは、図6に示す正規の姿勢のカードJに対し表裏及び左右が反転している。したがって、電気接点P1〜P6は実線で表されている。また、切欠きNは前端縁Eの右側に配置されている。
【0056】
図8に示す姿勢のカードJがカードコネクタCに挿入されると、スライダ4は、カードJに押されて挿入方向Xに移動する。カードJの前端縁Eの左側には切欠きNがないため、ストッパ5の切欠対応部52もカードJに押される。その一方で、スライダ4は、コイルばね6によって、挿入方向Xとは逆向きに付勢される。このようにして、ストッパ5は、スライダ4上で挿入方向Xに移動し前方位置に位置した状態となる。
【0057】
本実施形態のカードコネクタCにおけるストッパ5の切欠対応部52の、カードJに突き当たる縁部52aの高さh(図2参照)は、カードJの厚みに相当する高さとなっている。このため、たとえカードJが強い力で押し込まれても、カードJが切欠対応部52に乗り上がる事態が防止され、カードJの誤挿入防止が確実となる。また、ストッパ5は金属製であり、カードJが強い力で押し込まれても切欠対応部52が破損し難い。またさらに、スライダ4と、ストッパ5の切欠対応部52との双方によってカードJの移動が阻止されるため力が分散し、切欠対応部52が破損し難い。
【0058】
カムピン7は、スライダ4の移動に伴い、第1カム溝441のイジェクト位置441dから離れる。しかしこのとき、ストッパ5は、図5で示した、スライダ4上で前方位置に位置した状態となる。この状態では、カムピン7は、第2カム溝442に導かれる。つまり、カムピン7は、第1極限位置441aに到達しない。第1極限位置441aに到達しないカムピン7は、その次の位置であるロック位置441bに移行し得ない。このため、後にカードJへの押込力が解放され、コイルばね6の付勢力によってスライダ4が動くと、カムピン7は、ロック位置441bに入らず、イジェクト位置441dまで戻ることとなる。このとき、カードJは、スライダ4によって受入空間11から押し出される。
【0059】
本実施形態のカードコネクタCでは、不正な姿勢でカードが挿入された場合に、カードJが受入空間11から押し出される。このため、カードJが正常に挿入されなかったことが判別しやすい。
【0060】
なお、図8には、不正な姿勢として、正規の姿勢に対し表裏が反転しているカードJが示されている。しかし、カードJが、正規の姿勢に対し前後のみ、又は前後及び表裏を反転するようにした姿勢であっても、カムピン7の第1極限位置441aへの移動は禁止される。この結果、カードJは受入空間11から押し出される。
【0061】
また、本発明にいうストッパ付勢部材の例として、板ばね8が示されている。ただし、本発明はこれに限られるものではなく、ストッパ付勢部材は、例えばコイルばねやゴムであってもよい。
【0062】
また、上述した実施形態が対象とするカードの例として、マイクロSIMカードが示されている。ただし、本発明はこれに限られるものではなく、例えばSDカードに代表されるICカードであってもよい。また、コンタクトも6以外の複数であってよい。
【符号の説明】
【0063】
C カードコネクタ
1 ハウジング
2 シェル
3 コンタクト
4 スライダ
44 カム部
441 第1カム溝
441a 第1極限位置
441b ロック位置
441c 第2極限位置
441d イジェクト位置
442 第2カム溝
5 ストッパ
52 切欠対応部
53 経路切替部53
531 第1誘導片
532 第2誘導片
532a 傾斜案内面
7 カムピン
8 板ばね(ストッパ付勢部材)
11 受入空間
J カード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードを受け入れる受入空間が形成されたハウジングと、
前記カードの電気接点に接触するコンタクトと、
前記カードの挿入方向にスライド自在であって、該カードが前記受入空間から押し出される排出方向に付勢され、該受入空間に挿入されてきたカードの前端縁に押され該受入空間奥側に移動するスライダと、
正規の姿勢で挿入されてきたカードに押された前記スライダを、該カードへの押込力を開放した後も該スライダの前記排出方向への移動を阻止するロック位置に導く第1カム溝と、該第1カム溝の途中から分岐して該カードへの押込力の解放により該スライダを付勢力により該排出方向に移動させる第2カム溝とを有するカム機構と、
前記スライダに前記挿入方向に遊びを持って該スライダに支持され、カードが正規の姿勢で挿入されてきた場合には前記スライダを前記ロック位置に移動させ、カードが不正な姿勢で挿入されてきた場合には該カードに押されて前記挿入方向に移動することにより前記第2カム溝に案内するストッパとを備えたことを特徴とするカードコネクタ。
【請求項2】
前記ストッパを前記排出方向に向かって付勢するストッパ付勢部材を備えたものであることを特徴とする請求項1記載のカードコネクタ。
【請求項3】
前記ストッパが、金属製の部材であることを特徴とする請求項1または2記載のカードコネクタ。
【請求項4】
前記カム機構が、前記ハウジングに支持されるとともに第1カム溝または前記第2カム溝を案内されるカムピンを備えたものであり、
前記ストッパが、前記カムピンを前記第1カム溝に沿って導く第1誘導片と、該カムピン7を該第1カム溝から第2カム溝へ導く傾斜案内面を有する第2誘導片とを備えたものであることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項記載のカードコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−69524(P2013−69524A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206991(P2011−206991)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000227995)タイコエレクトロニクスジャパン合同会社 (340)
【Fターム(参考)】