説明

カードロックシステム

【目的】 夏時間の開始又は解除に係る時間設定を容易に行えるカードロックシステムを提供する。
【構成】 時間情報が重畳された標準電波を受信し、この受信した標準電波と予め記憶された夏時間データとに基づいて夏時間の有無に応じた時間にカード発行側内部時計11cを自動修正し、夏時間の開始又は解除を示す夏時間情報を、カード式電気錠30の施解錠に必要な施解錠情報とともにカード2に書き込む。錠前を施解錠する際には、カード2から夏時間情報を読み取り、この読み取った夏時間情報に基づいて錠用内部時計31bを夏時間に移行又は夏時間から解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード発行器から発行される例えば磁気カード、ICカード、非接触型IC搭載カードなどのカード状記憶媒体(以下、カードと記す)を用いて例えば建物等の入出口に設けられるカード式電気錠の施解錠を行うカードロックシステムに係り、国や地域によって異なる夏時間の設定を簡便に行えるカードロックシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ホテルやオフィスビル等の商業施設や公共施設の入出口、集合住宅や一般住宅のエントランスや玄関等にはカード式電気錠が広く普及している。このカード式電気錠は、各所の電気錠毎に予め割り当てられた特定の暗号や施解錠情報等の各種データが記憶されたカードを用い、このカードに記憶されている各種データ(例えば特定の暗号による施解錠データや利用者に関する情報など)を読み取り、読み取った各種データを予め登録された情報と照合して正当性を判別し、正常に認証した場合のみ施解錠を行うものである。
【0003】
この種のカード式電気錠は、ピッキング等の不正な施解錠行為を防止し、且つ、鍵の複製が非常に困難なため、セキュリティー面において信頼されている。また、各カード毎の各種データをホストコンピューターで管理しているため、データ破損等の心配がなく、カードを紛失した場合においてもカードを再発行することが可能である。
【0004】
そして、このようなカード式電気錠を用いたシステムとしては、例えば下記特許文献1に開示される出入管理システムが知られている。
【0005】
特許文献1に開示される出入管理システム101は、図5に示すように、出入管理ゲートとしてのドア102と、ドア102に取り付けられた電気錠103と、ドア102を通過しようとする人の個人情報を識別する複数の個人識別装置として作用する複数の磁気カードリーダ104および105と、これら複数の磁気カードリーダ104および105に接続され、電気錠103を制御するカードコントローラ106とを備えて概略構成される。
【0006】
カードコントローラ106は、電気錠103に接続された唯一の電気錠駆動部K(104,105)と、複数の磁気カードリーダ104および105のうちいずれかが識別した個人情報が、ドア103の通過を許可されている人の情報か否かを判定し、通過を許可されている人の情報であれば、電気錠駆動部K(104,105)に電気錠103を駆動する信号を発生させ、ドア103を開にする判定部107とを有している。また、カードコントローラ106には、管理ソフトウエアを搭載したコンピュータ108が通信ケーブル109で接続される。
【0007】
ところで、上記出入管理システム101のようにカードを用いて電気錠を自動的に施解錠する場合、各電気錠毎に施解錠用のカードを発行する必要がある。この場合、発行されるカードの種類としては、例えば磁気面に各種データが書き込まれる磁気カード、プロセッサチップのメモリに各種データが記憶されるICカード等がある。
【0008】
そして、上記カードを発行する場合には、例えば図6に示すようなカード発行システム111が従来から用いられている。図6に示すカード発行システム111は、カード発行制御器112、カード発行器113、操作表示器114を備えて概略構成される。カード発行制御器112は、表示画面上に設けられたタッチキーを操作することにより、カードを発行するために必要な各種データの入力が行えるようになっている。カード発行器113は、通信ケーブル115により操作表示器114を介してカード発行制御器112と接続される。カード発行器113は、カード発行制御器112または操作表示器114が操作されて各種データが入力されると、この入力された各種データをカードに書き込んでカードを発行している。操作表示器114は、テンキーやファンクションキーなどの各種入力キーおよび表示器を備えており、カードを発行するための各種データを入力する入力器として用いられる。
【0009】
このように、図6に示すカード発行システム111では、カード発行制御器112または操作表示器114を操作して各種データを入力することにより、この各種データがカード発行器113に転送されてカードに各種データが書き込まれ、カードの発行が行われるようになっている。
【特許文献1】特開2001−241226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、現在欧米を中心とした各国では、日中の時間を有効的に活用できるとともに省エネ効果も得られることから夏時間制度が実施されている。例えばアメリカ合衆国では、毎年4月の第1週の日曜日から10月の第1週の土曜日までが夏時間適用期間であり、この期間以外の期間が冬時間適用期間である。そして、夏時間適用期間と冬時間適用期間とでは、1時間のずれがあるため、夏時間適用期間では冬時間適用期間よりも時刻が1時間進められる。
【0011】
そして、上述したホテルやオフィスビルなどに採用されるカードロックシステムでは、時計機能を備えたカード式電気錠が一般的に用いられるため、夏時間適用期間が開始されるときは内部時計の時刻を1時間進め、冬時間適用期間が開始されるときには内部時計の時刻を1時間遅らせる必要があった。
【0012】
そこで、従来は、カード式電気錠が設置された国や地域で夏時間が発生すると、例えば前述したカード発行システム111によって夏時間に移行するための情報が書き込まれた夏時間設定変更カードを発行し、この夏時間設定変更カードの情報をカード式電気錠に読み込ませ、この読み込んだ情報に基づいてカード式電気錠の内部時計を夏時間に移行させていた。また、そのカード式電気錠が設置された国や地域で夏時間が解除された場合には、カード発行システム111によって夏時間を解除するため情報が書き込まれた夏時間設定変更カードを発行し、この夏時間設定変更カードの情報をカード式電気錠に読み込ませ、この読み込んだ情報に基づいてカード式電気錠の内部時計の夏時間を解除していた。
【0013】
このように、従来、カード式電気錠の時計機能を夏時間適用期間又は冬時間適用期間において時間修正を行う場合には、夏時間及び冬時間の開始及び解除する度にカード式電気錠の内部時計の時間修正を行う必要があった。しかも、設置された全ての電気錠に夏時間設定変更カードの情報を読み込ませて時間修正を行うため、そのメンテナンス作業が非常に煩雑であった。
【0014】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、夏時間の開始及び終了時期に伴う時間修正を簡便に行うことができるカードロックシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した目的を達成するために、請求項1記載のカードロックシステムは、時間情報が重畳された標準電波と、予め国や地域毎に設定された夏時間の開始日時と解除日時に関する夏時間データとに基づいて内部時計を夏時間の有無に応じた時間に自動修正し、この修正された前記内部時計の時間に応じた夏時間の開始又は解除の有無を示す夏時間情報を、錠前を施解錠するために必要な施解錠情報とともに書き込んでカードを発行するカード発行制御部と、
前記カード発行部で発行されたカードから読み取った施解錠情報の正当性の判別結果に基づいて錠前を施解錠するとともに、前記カードの夏時間情報に基づいて内部時計を夏時間へ移行又は夏時間から解除するカード式電気錠とを具備することを特徴とする。
【0016】
請求項2記載のカードロックシステムは、時間情報が重畳された標準電波と、予め国や地域毎に設定された夏時間の開始日時と解除日時に関する夏時間データとに基づいて内部時計を夏時間の有無に応じた時間に自動修正し、この修正された前記内部時計の時間に応じた夏時間の開始又は解除の有無を示す夏時間情報を、錠前を施解錠するために必要な施解錠情報とともに書き込んでカードを発行するカード発行制御部と、
前記カード発行部で発行されたカードから読み取った施解錠情報の正当性の判別結果に基づいて錠前を施解錠するとともに、前記カードの夏時間情報と前回の施解錠時に読み取った夏時間情報とを比較し、今回の夏時間情報と前回の夏時間情報とが異なるときに、今回読み取った夏時間情報に従って内部時計を自動修正するカード式電気錠とを具備することを特徴とする。
【0017】
請求項3記載のカードロックシステムは、請求項2記載のカードロックシステムにおいて、
前記カード式電気錠は、前記カードから読み取った前記夏時間情報を錠前の施解錠後に更新記憶する記憶手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のカードロックシステムによれば、カードを媒体として、カード式電気錠の施解錠時に同時に夏時間の設定を行うので、工数を必要とせず、半自動的にカード式電気錠の夏時間設定を変更することができる。また、各カード式電気錠に国や地域にあった時間修正用のプログラムを必要とせず、カードを媒体として施解錠時に夏時間設定の変更を行うことができる。さらに、カードを媒体として夏時間設定の変更を自動的に行うことができるので、例えば半年に一回などの夏時間のセット/リセットを行ったり、従来のような各カード式電気錠毎に夏時間の設定を行う必要がなく、夏時間設定に係るメンテナンス作業が簡便、かつ効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、添付した図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明に係るカードロックシステムの概略構成図、図2は同カードロックシステムの機能ブロック図、図3は同カードロックシステムの夏時間開始時の動作例を示すフローチャート、図4は同カードロックシステムの夏時間解除時の動作例を示すフローチャートである。
【0020】
まず、本例のカードロックシステムの構成について図1と図2を参照しながら説明する。図1に示すように、本例のカードロックシステム1は、カード2の発行に関する各種情報の入出力制御を行う発行制御部10と、発行制御部10からの各種情報に基づいてカード2を発行するカード発行部20と、カード2から取得した各種情報の正当性を判別して錠前を自動的に施解錠するカード式電気錠30とを備えて概略構成される。
【0021】
図2に示すように、発行制御部10は、カード発行側時計管理部11、入出力手段12を備えて構成される。発行制御部10は、外部からの標準電波に基づいて内部時計を自動修正するとともに、カード2を発行するために必要な各種情報(例えば施解錠情報、利用者の情報、時間情報など)を無線又は有線で接続されたカード発行部20に出力している。
【0022】
図2に示すように、カード発行側時計管理部11は、電波受信手段11a、カード発行側時計データ制御手段11b、カード発行側内部時計11c、夏時間データ記憶手段11dを備えた電波時計で構成される。電波時計としてのカード発行側時計管理部11は、標準電波送信所から送信される時間情報(セシウム原子時計により得られる「時、分、通算日、年(西暦下2桁)、曜日、うるう秒情報、時と分に対応するパリティ、予備ビット、停波予告情報」といった情報が、モールス信号のような形で電波の断続によって時間を示す符号となったものを指す)を重畳した標準電波を、カード2を発行する際に電波受信手段11aが受信して増幅を行い、この増幅した受信パルスをカード発行側時計データ制御手段11bに送出している。カード発行側時計データ制御手段11bでは、電波受信手段11aからの時間信号を解読している。カード発行側内部時計11cは、カード発行側時計データ制御手段11bが解読した時計情報と夏時間データ記憶手段11dに記憶された夏時間データとに基づいて時間が自動修正される。
【0023】
夏時間データ記憶手段11dには、各国や地域毎に設定された夏時間の開始日時と解除日時に関する夏時間データが記憶されている。カード発行側時計管理部11では、標準電波の時間情報と、夏時間データ記憶手段11dに記憶されている夏時間データとに基づき、カード式電気錠30が設置されている場所が現在夏時間であるか否かを判別し、この判別結果に基づいてカード発行側内部時計11cを夏時間の有無に応じた時間に自動的に修正するとともに、夏時間の開始又は解除の有無を示す夏時間情報(例えばビット情報)をカード発行部20に無線又は有線により送出している。なお、夏時間情報には、夏時間の開始又は解除の有無を示す情報だけでなく、そのときのカード発行側内部時計11cの時間情報を付加することもできる。
【0024】
入出力手段12は、テンキーやファンクションキーなどの各種入力キーや表示器を備えている。この入出力手段12では、例えば施解錠情報、利用者が入退出する日時の期限や利用者の詳細情報などカード式電気錠30の施解錠に必要な各種情報が、表示器に表示されるメニュー画面に従い管理者の操作によって入力される。この入力手段12から入力された各種情報は、カード発行部20に無線又は有線により送出される。
【0025】
図2に示すように、カード発行部20は、情報読書手段21を備えて構成され、発行制御部10からカード2を発行するために必要な各種情報(施解錠情報、夏時間情報を含む)を発行制御部10から取得し、使用するカード2の種類や使用環境に応じて必要な情報の書き込みを行う。
【0026】
情報読書手段21は、例えば磁気カードリーダー/ライターやICカードリーダー/ライターなどで構成される。情報読書手段21は、発行制御部10から各種情報を読み込み、この読み込んだ各種情報からカード式電気錠30の施解錠に必要な情報(施解錠情報)をカード2に書き込んでいる。また、情報読書手段21は、カード発行側時間管理部11からの夏時間の開始又は解除の有無を示す夏時間情報が入力されると、この夏時間情報を上述した施解錠情報に付加してカード2に書き込んでいる。すなわち、夏時間が開始される場合には、夏時間の開始有りを示す夏時間情報が施解錠情報とともにカード2に書き込まれる。また、夏時間が解除される場合は、夏時間の解除有りを示す夏時間情報が施解錠情報とともにカード2に書き込まれる。さらに、夏時間の開始又は解除が無い場合には、夏時間の開始無し又は解除無しの夏時間情報が施解錠情報とともにカード2に書き込まれる。
【0027】
カード式電気錠30は、錠前を施解錠するために必要な施解錠情報が記憶されたカード2を用い、このカード2に記憶された施解錠情報の正当性を判別し、この判別結果に基づいて錠前を自動的に施解錠するものであり、図2に示すように、錠側時計管理部31、施解錠制御部32、駆動機構33、電源部34を備えて構成される。
【0028】
図2に示すように、錠側時計管理部31は、錠側時計データ制御手段31a、錠側内部時計31bを備えて構成され、カード2に対して施解錠情報とともに書き込まれた夏時間情報に基づいて錠側内部時計31bを夏時間に移行又は夏時間から解除している。
【0029】
また、錠側時計管理部31は、カード2に対して施解錠情報とともに書き込まれた夏時間情報と、前回の施解錠時に読み取られて後述する記憶手段32cに記憶された夏時間情報とを比較し、前回の夏時間情報と今回読み取った夏時間情報とが異なるときに、今回読み取った夏時間情報に基づいて錠側内部時計31bの時間修正を行うこともできる。
【0030】
錠側時計データ制御手段31aは、カード2に記憶された夏時間情報が夏時間の開始を示す情報であるときに、錠側内部時計31bを現在の時刻から夏時間に修正している。これに対し、夏時間情報が夏時間の解除を示す情報であるときには、錠側内部時計31bを通常の時間に戻すように修正している。この夏時間の開始又は解除にあたっては、カード式電気錠30が設置された国や地域によって修正する時刻が異なる。例えばアメリカ合衆国の場合、夏時間が開始されたときは、錠側内部時計31bの時刻を1時間進め、夏時間が解除された場合は、冬時間適用期間が開始されたと見なして、錠側内部時計31bの時刻を1時間遅らせている。
【0031】
なお、錠側時計データ制御手段31aは、カード2に記憶された夏時間情報と前回の施解錠時に読み取った夏時間情報とを比較した後、今回読み込んだ夏時間情報を最新の夏時間情報として記憶手段32cに書き込んで更新記憶することもできる。
【0032】
施解錠制御部32は、カード発行部20で発行されて利用者が所有するカード2から錠前を施解錠するために必要な施解錠情報を読み取り、この読み取った施解錠情報の正当性を判別し、その判別結果に基づいて錠前の施解錠制御を行っている。図2に示すように、施解錠制御部32は、カード情報読取手段32a、電気錠制御手段32b、記憶手段32c、時計制御用通信手段32d、外部機器用通信手段32eを備えて構成される。
【0033】
カード情報読取手段32aは、例えば磁気カード、ICカード、非接触ICチップ内蔵カードなどの各種施解錠用のカード2に記憶された各種情報(施解錠情報、夏時間情報)を読み取るカードリーダで構成される。カード情報読取手段32aは、利用者の所定操作によりカード2から錠前を施解錠するために必要な施解錠情報と時間修正に必要な夏時間情報とを読み取っている。そして、施解錠情報を電気錠制御手段32bに出力し、夏時間情報を錠側時計データ制御手段31aに出力している。
【0034】
電気錠制御手段32bは、例えばCPUなどのマイクロコンピュータなどで構成され、カード情報読取手段32aからの施解錠情報と、記憶手段32cに予め記憶された認証用施解錠情報とを照合してその正当性を判別し、正常に認証されたときのみ錠前を施解錠制御している。また、電気錠制御手段32bは、錠前の施解錠に関する施解錠情報の入出力制御の他、錠前の施解錠時に駆動機構33を駆動させるための駆動制御信号の出力、電源部34から駆動機構33への電源供給の制御、錠前からモニタ情報として入力される状態信号(例えば、扉の開閉状態信号、錠前の施解錠状態信号)の判別処理などを行っている。
【0035】
記憶手段32cは、例えば磁気的、光学的記憶媒体若しくはROM、RAMなどの半導体メモリで構成される。この記憶手段32cは、カード式電気錠30を構成している各機器の機器情報、カード情報読取手段32aからの施解錠情報が錠前を施解錠する正当な情報であるか否かを判別するための認証用施解錠情報、モニタ情報としての状態信号(扉の開閉状態信号や錠前の施解錠状態信号)などの施解錠制御に関する各種データを記憶している。また、錠側内部時計31bの時間情報に基づく錠前の施解錠情報のログを保存する他、錠側時計データ制御手段31aによる錠側内部時計31bの修正データを一時的に記憶したり、標準電波の更新履歴、夏時間の開始又は解除に関する夏時間情報など錠側時計管理部31に関する各種情報も記憶することができる。なお、カード情報読取手段32aで読み取った夏時間情報は、錠前の施解錠後に前回の夏時間情報に上書して更新しても良い。
【0036】
時計制御用通信手段32dは、例えば赤外線通信するための送受信部やケーブルなどを介して配線接続するためのコネクタなどを有している。この時計制御用通信手段32dは、錠側時計管理部31の故障や電波障害等に起因して標準電波が受信できない状態のときに、専用の時間設定機(不図示)が接続可能とされ、時間設定機から錠側内部時計31bの時間設定が行えるようになっている。
【0037】
外部機器用通信手段32eは、例えば赤外線通信するための送受信部やケーブルなどを介して配線接続するためのコネクタなどを有している。この外部機器用通信手段32eは、例えば記憶手段32cに記憶された各種データや新たに記憶手段32cに記憶させたい情報などを不図示の外部機器(例えばパソコンや携帯型データ収録装置など)とデータ通信する際に使用される。
【0038】
駆動機構33は、例えばモータやソレノイドなどの駆動装置と錠前で構成され、電気錠制御手段32bから入力される駆動制御信号により錠前を施錠または解錠するべく駆動し、扉枠の係止穴に対してデッドボルトを突出(施錠時)又は引き込む(解錠時)ことにより錠前が施解錠される。
【0039】
電源部34は、例えば商用電源(AC100V)である外部電源で構成され通電金具を介してカード式電気錠30を構成する各部に電源を供給する。また、電源部34は、錠前やエスカチオン(化粧板)の内部に着脱可能に設けられる電池で構成し、この電池からカード式電気錠30を構成する各部に電源を供給することもできる。
【0040】
次に、上記のように構成されたカードロックシステムにおいて、夏時間の開始及び解除する場合の一連の動作について図3や図4を参照しながら具体的に説明する。ここでは、カード式電気錠30の解錠時に夏時間の開始及び解除を行う場合を例にとって説明するが、カード式電気錠30の施錠時に夏時間の開始及び解除を行うこともできる。
【0041】
図3に示すように、カード式電気錠30が設置された場所が夏時間を開始する時期になり(ST1)、発行制御部10が標準電波を受信すると、この受信した時間情報と夏時間データ記憶手段11dに記憶された夏時間データとに基づいて、カード発行側時間データ制御手段11bがカード発行側内部時計11cの時間を自動的に夏時間に修正し、夏時間を開始する(ST2)。その後、カード発行部20がカード発行側時計データ制御手段11bからの夏時間情報(夏時間有り)を施解錠情報(解錠情報)とともにカード2に書き込んでカード2を発行する(ST3)。そして、カード式電気錠30の錠前を解錠する際、カード2のカード情報(施解錠情報、夏時間情報)をカード情報読取手段32aが読み込む(ST4)。この読み込んだカード情報における施解錠情報の正当性を電気錠制御手段32bが判別し、正常に認識したときのみ自動的に錠前を解錠する(ST5)。また同時に、錠側時計データ制御手段31aがカード情報における夏時間情報(夏時間有り)に基づいて錠側内部時計31bを夏時間に修正する(ST6)。
【0042】
次に、図4に示すように、カード式電気錠30が設置された場所が夏時間を解除する時期になり(ST11)、発行制御部10が標準電波を受信すると、この受信した時間情報と夏時間データ記憶手段11dに記憶された夏時間データとに基づいて、カード発行側時間データ制御手段11bがカード発行側内部時計11cの夏時間を解除して通常の時間に自動的に修正する(ST12)。その後、カード発行部20がカード発行側時計データ制御手段11bからの夏時間情報(夏時間無し)を施解錠情報(解錠情報)とともにカード2に書き込んでカード2を発行する(ST13)。そして、カード式電気錠30の錠前を解錠する際、カード2のカード情報(施解錠情報、夏時間情報)をカード情報読取手段32aが読み込む(ST14)。この読み込んだカード情報における施解錠情報の正当性を電気錠制御手段32bが判別し、正常に認識したときのみ自動的に錠前を解錠する(ST15)。また同時に、錠側時計データ制御手段31aがカード情報における夏時間情報(夏時間無し)に基づいて錠側内部時計31bの夏時間を解除し、通常の時間に修正する(ST16)。
【0043】
なお、上述した動作において、カード2に対して施解錠情報とともに書き込まれた夏時間情報と、前回の施解錠時に読み取られて記憶手段32cに記憶された夏時間情報とを比較し、前回の夏時間情報と今回読み取った夏時間情報とが異なるときに、今回読み取った夏時間情報に基づいて錠側内部時計31bの時間を自動的に修正しても良い。この場合、夏時間情報には、夏時間の開始又は解除を示す情報の他、時間情報も含まれる。
【0044】
このように、上述したカードロックシステムは、発行制御部10で標準電波を受信し、この受信した標準電波からカード発行側内部時計11cを正確な時間に修正し、この時間情報と、予め記憶された夏時間データとに基づいて夏時間の開始又は解除するための夏時間情報を施解錠情報とともに書き込んでカード2を発行し、カード式電気錠30の錠前の施解錠時に、カード2から施解錠情報と夏時間情報とを読み取り、この読み取った施解錠情報の正当性を判別し、正常に認識したときのみ錠前を自動的に施解錠し、同時に夏時間情報に基づいて夏時間の開始又は解除を自動的に行っている。
【0045】
これにより、カード2を媒体として、カード式電気錠30の施解錠時に同時に夏時間の設定を行うので、工数を必要とせず、半自動的にカード式電気錠30の夏時間設定を変更することができる。これにより、カード式電気錠30では、半自動的に夏時間のセット/リセットが行え、施解錠時に正確なログの記録を行うことができる。その結果、盗難時間の追跡ができ、施解錠時のログを事件の証拠・証明に用いることができる。また、夏時間設定の変更忘れを防止することができる。
【0046】
また、各カード式電気錠30に国や地域にあった時間修正用のプログラムを必要とせず、カード2を媒体として施解錠時に夏時間設定の変更を行うことができる。これにより、小容量のメモリでプログラミングすることができ、安価なCPUでハードを構成することができる。
【0047】
さらに、カード2を媒体として夏時間設定の変更を自動的に行うことができるので、例えば半年に一回などの夏時間のセット/リセットを行ったり、従来のような各カード式電気錠30毎に夏時間の設定を行う必要がなく、夏時間設定に係るメンテナンス作業が簡便、かつ効率的に行うことができる。
【0048】
また、標準電波による時間情報から夏時間の開始又は解除を行うため、標準電波が受信できる場所であれば設置場所を問わず、夏時間の開始や解除の日時を発行制御部10側に予めデータベースとして記憶しておくだけで設置した国や地域に限定されることなく常に正確な時間で電気錠の管理を行うことができる。
【0049】
ところで、上述した実施の形態では、発行制御部10とカード発行部20とが別体の構成として説明したが、発行制御部10にカード発行部20のカード発行機能を持たせて一体化し、カード発行制御部として構成することもできる。
【0050】
以上、本発明を用いて最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係るカードロックシステムの概略構成図である。
【図2】本発明に係るカードロックシステムの機能ブロック図である。
【図3】本発明に係るカードロックシステムの夏時間開始時の動作例を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係るカードロックシステムの夏時間解除時の動作例を示すフローチャートである。
【図5】特許文献1に開示される出入管理システムの一例を示す概略構成図である。
【図6】従来のカード発行システムの一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0052】
1 カードロックシステム
2 カード
10 発行制御部
11 カード発行側時計管理部
11a 電波受信手段
11b カード発行側時計データ制御手段
11c カード発行側内部時計
11d 夏時間データ記憶手段
12 入出力手段
20 カード発行部
21 情報読書手段
30 カード式電気錠
31 錠側時計管理部
31a 錠側時計データ制御手段
31b 錠側内部時計
32 施解錠制御部
32a カード情報読取手段
32b 電気錠制御手段
32c 記憶手段
32d 時計制御用通信手段
32e 外部機器用通信手段
33 駆動機構
34 電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間情報が重畳された標準電波と、予め国や地域毎に設定された夏時間の開始日時と解除日時に関する夏時間データとに基づいて内部時計を夏時間の有無に応じた時間に自動修正し、この修正された前記内部時計の時間に応じた夏時間の開始又は解除の有無を示す夏時間情報を、錠前を施解錠するために必要な施解錠情報とともに書き込んでカードを発行するカード発行制御部と、
前記カード発行部で発行されたカードから読み取った施解錠情報の正当性の判別結果に基づいて錠前を施解錠するとともに、前記カードの夏時間情報に基づいて内部時計を夏時間へ移行又は夏時間から解除するカード式電気錠とを具備することを特徴とするカードロックシステム。
【請求項2】
時間情報が重畳された標準電波と、予め国や地域毎に設定された夏時間の開始日時と解除日時に関する夏時間データとに基づいて内部時計を夏時間の有無に応じた時間に自動修正し、この修正された前記内部時計の時間に応じた夏時間の開始又は解除の有無を示す夏時間情報を、錠前を施解錠するために必要な施解錠情報とともに書き込んでカードを発行するカード発行制御部と、
前記カード発行部で発行されたカードから読み取った施解錠情報の正当性の判別結果に基づいて錠前を施解錠するとともに、前記カードの夏時間情報と前回の施解錠時に読み取った夏時間情報とを比較し、今回の夏時間情報と前回の夏時間情報とが異なるときに、今回読み取った夏時間情報に従って内部時計を自動修正するカード式電気錠とを具備することを特徴とするカードロックシステム。
【請求項3】
前記カード式電気錠は、前記カードから読み取った前記夏時間情報を錠前の施解錠後に更新記憶する記憶手段を備えたことを特徴とする請求項2記載のカードロックシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−214234(P2006−214234A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30629(P2005−30629)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】