説明

カード型媒体の正当性を検証する端末装置および検証方法

【課題】 偽造されたICモジュールが埋め込まれたICカードの不正使用を防止することのできる端末装置を提供する。
【解決手段】端末装置は、スキャナ1aなどで、挿入されたICカード2の券面を走査して、ICカード2の券面のエンボス文字21を読取ることで券面情報を取得し、また、リーダライタ1bを用いて、ICモジュール20からカード情報を取得する。そして、端末装置は、取得した券面情報とカード情報とを照合し、端末装置に挿入されたICカード2の正当性を検証する。券面情報とカード情報との照合に成功すれば、ICカード2は偽造されていないICカード2と判定でき、券面情報とカード情報との照合に失敗すれば、ICカード2は偽造されているICカード2と判定し、挿入されたICカード2の使用を中止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックなどのカード媒体にICモジュールが実装されたICカードを装着し使用する端末装置に関し、更に詳しくは、ICモジュールが埋め込まれたICカードの正当を検証する端末装置および検証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
端末装置と物理的に接触する端子を有する接触型ICカードは、プラスチックなどのカード媒体にICモジュールを接着剤などで固定して製造される。
このように接触型ICカードでは、ICモジュールは物理的にカード媒体に接着されているため、ICカードを偽造する者が、何らかの手段によって、正当なICモジュールをカード媒体から剥離し、正当なICモジュールの代わりに、偽造したICモジュールを埋め込む可能性がある。
【0003】
偽造したICモジュールが埋め込まれたICカードの不正使用を防止する発明としては、ICカードを利用するときに、ICモジュールに記憶された個人口座番号のデジタル画像を読み取り、読み取った個人口座番号のデジタル画像をディスプレイに表示する装置が、特許文献1で開示されている。
【0004】
特許文献1で開示されている発明を実施することで、販売店の店員などは、ICカード券面に印字された個人口座番号と、ディスプレイに表示された個人口座番号とを比較することで、偽造したICモジュールが埋め込まれたICカードの不正使用を防止する。
【特許文献1】特開2005−115908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した技術では、ICカード券面に印字された個人口座番号は店員などによって確認されるため、有人の端末装置においては有効であるが、銀行などに設置されるATMなどの無人の端末装置には適用することはできない問題がある。
【0006】
そこで本発明は、上述した問題を鑑みて、銀行などに設置されるATMなどの無人の端末装置であっても、ICカードに実装されたICモジュールの正当性を検証し、偽造されたICモジュールが埋め込まれたICカードの不正使用を防止することのできる端末装置および検証方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決する第1の発明は、券面に券面情報が印字され、前記券面情報と対になるカード情報が記憶されているICモジュールが実装されたカード型媒体を装着し使用する端末装置であって、
前記端末装置は、前記カード型媒体の券面を光学的に撮像し、券面に印字された前記券面情報を取得する券面情報取得手段と、前記ICモジュールに電気的にアクセスし、前記ICモジュールから前記カード情報を取得するカード情報取得手段を備え、前記端末装置は、前記券面情報と前記カード情報とを前記端末装置の内部で照合し、装着された前記カード型媒体の正当性を検証することを特徴とする。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明に記載の端末装置であって、前記カード型媒体の券面に文字で前記券面情報が印字され、前記端末装置の前記券面情報取得手段は光学式文字読取器を備え、前記端末装置は、前記画像を変換した文字情報と前記カード情報とを、比較、或いは、算術式を用いて照合することを特徴とする。
【0009】
また、第3の発明は、第1の発明に記載の端末装置であって、前記カード型媒体の券面にバーコードで前記券面情報が印字され、前記端末装置の前記券面情報取得手段はバーコード読取器を備え、前記端末装置は、前記券面情報と前記カード情報とを、比較、或いは、算術式を用いて照合することを特徴とする。
【0010】
また、第4の発明は、第1の発明に記載の端末装置であって、前記カード型媒体の券面に絵柄で前記券面情報が印字され、前記端末装置の前記券面情報取得手段は、前記絵柄を光学的に読取り、読取った前記絵柄の特徴を数値化することで前記参照情報を取得する手段で、前記端末装置は、前記絵柄の特徴を数値化した前記参照情報と前記カード情報とを照合することを特徴とする。
【0011】
また、第5の発明は、券面に印字された券面情報と、前記券面情報と対になるカード情報が記憶されているICモジュールが実装されたカード型媒体の正当性を検証する方法であって、前記カード型媒体の券面を光学的に撮像して、券面に印字された前記券面情報を券面から取得し、前記カード型媒体に実装された前記ICモジュールに電気的にアクセスして、前記ICモジュールから前記カード情報を取得し、前記券面情報と前記カード情報とを照合し、装着された前記カード型媒体の正当性を検証することを特徴とする検証方法である。
【発明の効果】
【0012】
上述した本発明によれば、前記カード型媒体の券面から取得した前記券面情報と、前記カード型媒体に実装された前記ICモジュールから取得した前記カード情報とを、前記端末装置の内部で照合することで、銀行などに設置されるATMなどの無人のシステムであっても、ICカードの正当性を検証し、偽造されたICモジュールが埋め込まれたICカードの不正使用を防止することのできる。
なお、ここで、前記カード型媒体とはICカード、SIMおよびUIMなど、カード媒体にICモジュールが実装されているカードを意味している。
【0013】
更に、前記カード型媒体の券面の文字に対応することで、金融系カードの券面に印字された銀行の口座番号やクレジット番号などの数字を利用することができるようになる。なお、前記カード型媒体の券面に印字された文字は、エンボス加工によって形成されたエンボス文字も含む。
【0014】
更に、前記カード型媒体の券面のバーコードに対応することで、診察券や会員券などの様々なカードに対応できるようになる。
更に、前記カード型媒体の券面の絵柄に対応することで、会社のロゴなどを利用できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ここから、本発明に係る端末装置1について、図を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係る端末装置1と使用されるICカード2を説明する図である。本発明に係る端末装置1は、ICカード2を所持するユーザに預金引き出しなどのサービスを提供する前に、ユーザが所持ICカード2の正当性を確認するために、少なくとも、ICカード2に実装されたICモジュール20の正当性を確認する。
【0016】
ユーザが所持するICカード2は、ICモジュール20をカード媒体に接着剤などで固定して製造される接触型ICカードで、図1で示しているように、ICカード2の券面には、券面情報(クレジットカード番号のように、ICカードごとに固有のID番号)を示すエンボス文字21がエンボス加工によって印字されている。
更に、ICカード2に実装されたICモジュール20のメモリには、ICカード2の券面に印字されているエンボス文字21で示されている番号がカード情報として記憶されている。
【0017】
図2は、端末装置1の機能を説明する図である。本発明に係る端末装置1は、取り分け、銀行に設置されるATMなどに適し、端末装置1は、スキャナ1aなどで、挿入されたICカード2の券面を走査し、ICカード2の券面のエンボス文字21を読取ることで券面情報を取得し、リーダライタ1bを用いて、ICモジュール20からカード情報を取得する。
【0018】
そして、端末装置1は、取得した券面情報とカード情報とを照合し、端末装置1に挿入されたICカード2の正当性を検証する。券面情報とカード情報との照合に成功すれば、ICカード2は偽造されていないICモジュール20が実装された正当なICカード2と判定でき、券面情報とカード情報との照合に失敗すれば、ICカード2は偽造されたICカード2と判定し、挿入されたICカード2の使用を中止する。
【0019】
なお、取得した券面情報とカード情報とを照合する方式は如何なる方式であってもよい。例えば、券面情報とカード情報とが一致/不一致を確認する方式でもよく、また、ある算出式を用いて、券面情報とカード情報とを照合する方式であってもよい。
【0020】
図3は、端末装置1のブロック図である。ICカード2を装着し使用する端末装置1には、装着されたICカード2の券面を走査し、ICカード2の券面にエンボス文字21で示される券面情報210を読み取る券面情報取得手段12と、装着されたICカード2と電気的に接続し、ICカード2に実装されたICモジュール20からカード情報200を読み取るカード情報取得手段11と、端末装置1全体を制御するコントローラ10を備え、コントローラ10は、装着されたICカード2の正当性を検証するICカード検証手段100を有している。
【0021】
端末装置1に備えられ、ICカード2の券面にエンボス加工で印字されたエンボス文字21から券面情報210を読み取る券面情報取得手段12は、ICカード2の券面に光を照射し、券面からの反射光をCCD素子で読み取ることで、ICカード2に印字されたエンボス文字21の画像情報を取得し、エンボス文字21の画像情報を解析することで、エンボス文字21によって示される券面情報210を取得する。
【0022】
図2に示したように、券面情報取得手段12は、スキャナと、スキャナが読み取った画像情報から、パターン認識などで文字を特定する光学式文字読取装置(Optical Character Reader)で実現される。
【0023】
端末装置1に備えられ、端末装置1に挿入されたICカード2のICモジュール20からカード情報200を読み取るカード情報取得手段11は、挿入されたICカード2のICモジュール20と物理的に接触することで電気的に接続し、ICカード2に実装されたICモジュール20とデータの送受信を行う電気回路を有するリーダライタの機構と、少なくとも、ICカード2から情報を読み出す命令を記憶している。
【0024】
端末装置1全体を制御するコントローラ10は、中央演算処理装置(CPU)とメモリなどからなるコンピュータ回路で実現され、少なくとも、券面情報取得手段12が読み取った券面情報210と、カード情報取得手段11が読み取ったカード情報200とを照合し、装着されたICカード2の正当性を認証するICカード検証手段100を有している。
【0025】
ここから、端末装置1全体を制御するコントローラ10のICカード検証手段100が、券面情報取得手段12およびカード情報取得手段11を制御し、端末装置1に装着されたICカード2の正当性を認証する手順について説明する。
【0026】
図4は、端末装置1に装着されたICカード2の正当性を検証する手順を示したフロー図である。この手順の最初のステップS1は、端末装置1にICカード2が挿入されるステップである。例えば、端末装置1がATMであるときは、端末装置1のカード挿入口に、ICカード2は挿入される。
【0027】
次のステップS2は、端末装置1の券面情報取得手段12が、ICカード2の券面のエンボス文字21で示される券面情報210を読み取るステップである。このステップでは、端末装置1のコントローラ10は、券面情報取得手段12を作動させ、光学的な手段(例えば、スキャナ)で、ICカード2のエンボス文字21を撮像し、撮像したエンボス文字21の画像情報をパターンマッチングなどの手法で解析することで、エンボス文字21で示される券面情報210を取得する。
なお、このステップで取得した券面情報210は、コントローラ10のRAMなどに一時的に記憶される。
【0028】
次のステップS3は、端末装置1のカード情報取得手段11が、ICモジュール20に記憶されたカード情報200を読み取るステップである。このステップでは、端末装置1のコントローラ10は、カード情報取得手段11を作動させ、カード情報取得手段11は、ICカード2のICモジュール20を活性化させた後、情報を読み出す命令をICカード2に送信し、ICカード2からカード情報200を読み取る。
なお、このステップで読み取ったカード情報200は、コントローラ10のRAMなどに一時的に記憶される。
【0029】
次のステップS4は、券面情報210とカード情報200とを照合し、ICカード2の正当性を検証するステップである。このステップでは、端末装置1のコントローラ10が有するICカード検証手段100が、予め定められた手法で、券面情報210とカード情報200とを照合し、ICカード2の正当性を検証する。
【0030】
ステップS4で、券面情報210とカード情報200との照合に成功した場合はステップS5に進み、券面情報210とカード情報200との照合に失敗した場合は、ICカード2が偽造されている可能性があることを示すメッセージを、端末装置1のディスプレイなどに表示して、この手順を終了する。
【0031】
また、ステップS5では、PIN認証やバイオメトリクス認証などの手段で、ICカード2を所持するユーザの正当性を検証した後、端末装置1は、ユーザが所望するサービス(例えば、預金の引き出し)を提供し、この手順を終了する。
【0032】
なお、上述した実施の形態において、ICカード2の券面には券面情報210がエンボス文字21で印字されていたが、券面情報210は、ICカード2の券面にバーコード(1次元、2次元)或いは一般的な絵柄で印字してもよい。
【0033】
図5は、券面にバーコード(1次元、2次元)や絵柄が印字されたICカード2を示した図で、図5(a)は券面に2次元バーコード21aが印字されたICカード2で、図5(b)は券面に絵柄21bが印字されたICカード2である。
【0034】
図5(a)のように券面に2次元バーコード21aが印字されたICカード2を用いる場合は、端末装置1に備えられた券面情報取得手段12は、CCDカメラ1cなどで光学的に2次元バーコードを読取り、読取った2次元バーコード21aの画像情報を解析して得られる数値を券面情報210として取得する手段になる。
【0035】
また、図5(b)のように券面に絵柄21bが印字されたICカード2を用いる場合は、端末装置1に備えられた券面情報取得手段12は、CCDカメラ1cなどで光学的に絵柄を読取り、読取った絵柄21bの画像情報の特徴点を算出して得られる値を券面情報210として取得する手段になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】端末装置と使用されるICカードを説明する図
【図2】端末装置の機能を説明する図。
【図3】端末装置のブロック図。
【図4】ICカードの正当性を検証する手順を示したフロー図。
【図5】券面にバーコードや絵柄が印字されたICカードを示した図。
【符号の説明】
【0037】
1 端末装置
10 コントローラ
100 ICカード検証手段
11 カード情報取得手段
12 券面情報取得手段
2 ICカード
20 ICモジュール
200 カード情報
21 エンボス文字
210 券面情報



【特許請求の範囲】
【請求項1】
券面に券面情報が印字され、前記券面情報と対になるカード情報が記憶されているICモジュールが実装されたカード型媒体を装着し使用する端末装置であって、
前記端末装置は、前記カード型媒体の券面を光学的に撮像し、券面に印字された前記券面情報を取得する券面情報取得手段と、前記ICモジュールに電気的にアクセスし、前記ICモジュールから前記カード情報を取得するカード情報取得手段を備え、前記端末装置は、前記券面情報と前記カード情報とを前記端末装置の内部で照合し、装着された前記カード型媒体の正当性を検証することを特徴とする端末装置。
【請求項2】
請求項1に記載の端末装置であって、前記カード型媒体の券面に文字で前記券面情報が印字され、前記端末装置の前記券面情報取得手段は光学式文字読取器を備え、前記端末装置は、前記画像を変換した文字情報と前記カード情報とを、比較、或いは、算術式を用いて照合することを特徴とする端末装置。
【請求項3】
請求項1に記載の端末装置であって、前記カード型媒体の券面にバーコードで前記券面情報が印字され、前記端末装置の前記券面情報取得手段はバーコード読取器を備え、前記端末装置は、前記券面情報と前記カード情報とを、比較、或いは、算術式を用いて照合することを特徴とする端末装置。
【請求項4】
請求項1に記載の端末装置であって、前記カード型媒体の券面に絵柄で前記券面情報が印字され、前記端末装置の前記券面情報取得手段は、前記絵柄を光学的に読取り、読取った前記絵柄の特徴を数値化することで前記参照情報を取得する手段で、前記端末装置は、前記絵柄の特徴を数値化した前記参照情報と前記カード情報とを照合することを特徴とする端末装置。
【請求項5】
券面に印字された券面情報と、前記券面情報と対になるカード情報が記憶されているICモジュールが実装されたカード型媒体の正当性を検証する方法であって、前記カード型媒体の券面を光学的に撮像して、券面に印字された前記券面情報を券面から取得し、前記カード型媒体に実装された前記ICモジュールに電気的にアクセスして、前記ICモジュールから前記カード情報を取得し、前記券面情報と前記カード情報とを照合し、装着された前記カード型媒体の正当性を検証することを特徴とするカード型媒体の検証方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−179157(P2007−179157A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374710(P2005−374710)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】