説明

カード用コネクタ

【課題】簡素な構成でありながら、カードの奥深くまでの誤挿入を確実に防止することができるとともに、誤挿入されたカードであっても確実に取出すことができ、信頼性が高くなるようにする。
【解決手段】スライド部材は、ハウジングの前端縁に向けて延出する側縁保持部と、側縁保持部の前端に連結され、ハウジングの幅方向に延在する前端保持部とを含み、ハウジングの底壁部の一方の側縁に沿って前後方向にスライド可能であり、ハウジングは、前端縁におけるスライド部材の反対側に形成され、誤挿入されたカードの前端又は後端が当接する誤挿入防止凸部を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレーヤ、ゲーム機、車両用ナビゲーション装置等の電子機器においては、SIM(Subscriber Identity Module)カード、MMC(R)(Multi Media Card)、SD(R)(Secure Digital)カード、miniSD(R)カード、xDピクチャーカード(R)(xD−Picture card)、メモリスティック(R)、メモリスティックDuo(R)、スマートメディア(R)、Trans−Flash(R)メモリカード、マイクロSD(R)カード等の各種メモリカードを利用するために、カード用コネクタを備えている。
【0003】
近年、電子機器の急速な小型化に伴って、メモリカード及びカード用コネクタは、急速に小型化される傾向にある。また、カード用コネクタは、表示画面、操作ボタン等の部材の配設場所を避けて、電子機器の側面、裏面等の比較的視認しにくい場所に配設されることが多くなっている。そのため、カードが表裏逆向きで挿入されること、すなわち、誤挿入されてしまうことがある。そして、カードが誤挿入されると、カードの外側のパッド以外の部分がカード用コネクタの接続端子に当接するので、該接続端子が折曲がったり、破損したりしてしまう。そこで、カードの誤挿入を防止するカード用コネクタが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
図11は従来のカード用コネクタのスライダの要部拡大斜視図である。
【0005】
図において、823は、合成樹脂等の絶縁性材料から成るスライダであり、カード用コネクタのハウジングにスライド可能に取付けられ、カード用コネクタに挿入されたカードとともに、スライドする部材である。前記スライダ823は、カードの側縁に沿ってスライド方向に延在する本体部823bと、該本体部823bの前端に直交するように接続され、カードの前縁に沿ってカード用コネクタの幅方向に延在する保持部823cとを備える。
【0006】
また、本体部823bと保持部823cとの接続部分には、カードの前縁の一端側の角部を切欠くように形成された傾斜面部に当接する傾斜当接部824が形成されている。さらに、前記保持部823cから本体部823bに沿って延出する棒状の弾性変形部826が形成されている。該弾性変形部826は、カードの傾斜面部が傾斜当接部824に当接する際にはカードの傾斜面部に当接しないが、カードの前縁の他端側の角部が本体部823bに沿って挿入された際には、前記角部に当接する程度の長さに形成されている。なお、前記角部が本体部823bに沿って挿入された際に、前記角部が傾斜当接部824に当接しないようにするために、該傾斜当接部824には、弾性変形部826の延出する方向にほぼ直交する面825が形成されている。
【0007】
そして、カードが適正な姿勢で挿入された場合、すなわち、正規挿入の場合には、カードの前縁の一端側の角部に形成された傾斜面部が傾斜当接部824に当接し、カードの前縁が保持部823cに保持され、カードの側縁が本体部823bに保持されるので、スライダ823は、カードとともに挿入方向にスライドする。
【0008】
一方、カードが不適正な姿勢、例えば、表裏逆向きで挿入された場合のような誤挿入の場合には、カードの前縁の他端側の角部が弾性変形部826の先端に当接し、該先端に形成された傾斜面826aに乗上げる。そのため、弾性変形部826の先端が下方に弾性的に変位し、傾斜面826aの反対側に形成された係止突起826bが図示されないハウジングの床面に形成された係止凹部と係合する。そのため、スライダ823がスライド不能となるので、誤挿入されたカードのそれ以上の前進が阻止される。これにより、誤挿入されたカードによって、カード用コネクタ内部の接続端子等が損傷を受けることを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−243092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来のカード用コネクタにおいては、カード用コネクタが本来対象とする種類のカード、すなわち、正規種類のカードが表裏逆向きのような不適正な姿勢で挿入された場合には、カードの挿入を防止することが可能であるが、カード用コネクタが本来対象としない種類のカード、すなわち、非正規種類のカードであって、正規種類のカードよりも小型のカードが挿入された場合には、カードの挿入を防止することが不可能である。
【0011】
近年では、多数の種類のカードが市販され、かつ、サイズがほぼ同等でありながら、異なる種類のカードが市販されている。そのため、利用者は、正規種類のカードと取違えて、異なる種類のカードをカード用コネクタに挿入してしまうことがある。特に、異なる種類のカードが、正規種類のカードと同等の長さ寸法でありながら、幅寸法が正規種類のカードよりも小さなカードである場合、弾性変形部826の先端に当接することがないので、カード用コネクタ内への挿入を防止することができない。そして、カード用コネクタ内の奥深くにまで挿入されてしまった場合、カードの姿勢が安定しないので、カードがハウジング等に引掛って取出しが不可能になることがある。
【0012】
本発明は、前記従来のカード用コネクタの問題点を解決して、簡素な構成でありながら、カードの奥深くまでの誤挿入を確実に防止することができるとともに、誤挿入されたカードであっても確実に取出すことができる信頼性の高いカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのために、本発明のカード用コネクタにおいては、端子部材を備えるカードを収容するハウジングと、該ハウジングに取付けられ、前記カードの端子部材と接触する接続端子と、前記ハウジングに挿入されたカードを保持してスライドするスライド部材、及び、該スライド部材をカードの挿入方向と反対の方向に付勢する付勢部材を備え、前記カードをロック位置で保持してカードの端子部材が接続端子と接触している状態を維持し、前記ロック位置で保持されているカードを挿入方向に押込むプッシュ動作によってカードが挿入方向に移動してオーバーストローク位置まで到達すると、前記付勢部材の付勢力によって、前記カードをオーバーストローク位置から挿入方向と反対の方向に移動させて排出するカード案内機構と、前記ハウジングに取付けられ、少なくとも前記ハウジング及び該ハウジングに挿入されたカードの一部を覆うカバー部材とを有し、前記スライド部材は、前記ハウジングの前端縁に向けて延出する側縁保持部と、該側縁保持部の前端に連結され、前記ハウジングの幅方向に延在する前端保持部とを含み、前記ハウジングの底壁部の一方の側縁に沿って前後方向にスライド可能であり、前記ハウジングは、前記前端縁における前記スライド部材の反対側に形成され、誤挿入された前記カードの前端又は後端が当接する誤挿入防止凸部を含む。
【0014】
本発明の他のカード用コネクタにおいては、さらに、前記誤挿入防止凸部は斜めに切欠かれた傾斜部を含み、前記カードは、その前端の一端に形成された傾斜部を含み、正規挿入されると、該傾斜部が前記誤挿入防止凸部の傾斜部に対向する。
【0015】
本発明の更に他のカード用コネクタにおいては、さらに、前記前端保持部の少なくとも先端は、表裏を逆にした姿勢で誤挿入された前記カードの前端における傾斜部外の範囲に当接する。
【0016】
本発明の更に他のカード用コネクタにおいては、さらに、前記ハウジングは、後端縁における前記スライド部材側に形成された挿入口凸部を含み、前記カードと異なる種類のカードであって、前記カードよりも幅の狭い非正規カードが幅方向に傾いて誤挿入されると、前記挿入口凸部又は前記カバー部材の側板部が前記非正規カードの側縁に当接し、前記非正規カードの幅方向の傾きを規制する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カード用コネクタは、簡素な構成でありながら、カードの奥深くまでの誤挿入を確実に防止することができるとともに、誤挿入されたカードであっても確実に取出すことができ、信頼性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタの分解図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタを示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタのシェルを取除いた状態を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタに挿入されるカードの斜視図であり、(a)は斜め上から観た図、(b)は斜め下から観た図である。
【図5】本発明の実施の形態における正規種類のカードを挿入する動作を示すシェルを取除いた状態の第1の平面図であり、(a)は正規挿入の動作を示す図、(b)は第1の誤挿入の動作を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における正規種類のカードを挿入する動作を示すシェルを取除いた状態の第2の平面図であり、(a)は第2の誤挿入の動作を示す図、(b)は第3の誤挿入の動作を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における非正規種類のカードを挿入する動作を示すシェルの天板部を取除いた状態の第1の平面図であり、(a)は第1の誤挿入の動作を示す図、(b)は第2の誤挿入の動作を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態における非正規種類のカードを挿入する動作を示すシェルの天板部を取除いた状態の第2の平面図であり、(a)は第3の誤挿入の動作を示す図、(b)は第4の誤挿入の動作を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態における非正規種類のカードを挿入する動作を示すシェルの天板部を取除いた状態の第3の平面図であり、(a)は第5の誤挿入におけるオーバーストローク位置を示す図、(b)は第5の誤挿入におけるロック位置を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態における非正規種類のカードを挿入する動作を示すシェルの天板部を取除いた状態の第4の平面図である。
【図11】従来のカード用コネクタのスライダの要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタの分解図、図2は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタを示す斜視図、図3は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタのシェルを取除いた状態を示す平面図、図4は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタに挿入されるカードの斜視図である。なお、図4において、(a)は斜め上から観た図、(b)は斜め下から観た図である。
【0021】
図において、1は本実施の形態におけるカード用コネクタであり、図示されない電子機器に取付けられる。そして、前記カード用コネクタ1の内部にはカード101が挿入され、前記カード用コネクタ1を介して、前記電子機器にカード101が装着される。なお、前記電子機器は、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDA、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレーヤ、ゲーム機、車両用ナビゲーション装置等であるが、いかなる種類の機器であってもよい。
【0022】
本実施の形態におけるカード用コネクタ1が本来対象とする種類のカード、すなわち、正規種類のカードとしてのカード101は、例えば、SIMカード、MMC(R)、SD(R)カード、miniSD(R)カード、xDピクチャーカード(R)、メモリスティック(R)、メモリスティックDuo(R)、スマートメディア(R)、Trans−Flash(R)メモリカード等のメモリカードであり、いかなる種類のカードであってもよいが、本実施の形態においては、マイクロSIM(microSIM)カードであるものとして説明する。
【0023】
本実施の形態において、前記カード101は、図4に示されるように、全体的に略矩(く)形の板状の形状を有し、前端111f寄りの部分の下面111aに、端子部材である電極パッドとしての前側コンタクトパッド161が、複数、前端111fに沿って並ぶように配設されている。また、後端111r寄りの部分の下面111aには、端子部材である電極パッドとしての後側コンタクトパッド151が、複数、後端111rに沿って並ぶように配設されている。すなわち、電極パッドは、カード101の幅方向に延在する2本の列を成すように配列され、そのうち、前端111f側の列が前側コンタクトパッド161から成り、後端111r側の列が後側コンタクトパッド151から成る。なお、上面111bには、前側コンタクトパッド161も後側コンタクトパッド151も、配設されていない。さらに、前端111fの左右両端と側縁112とを結合する角部の一方、具体的には、上面111bにおける前方左角部には、斜めに切欠かれた傾斜部としての切欠部111cが形成されている。
【0024】
なお、本実施の形態において、カード用コネクタ1及びカード101の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、カード用コネクタ1、カード101又はそれらの部品が図に示される姿勢である場合に適切であるが、カード用コネクタ1、カード101又はそれらの部品の姿勢が変化した場合には、姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0025】
ここで、前記カード用コネクタ1は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に成形されたハウジング11と、金属等の導電性材料から成る板材に打抜き、折曲げ等の加工を施すことによって一体的に成形され、ハウジング11の上側に取付けられたカバー部材としてのシェル71とを有する。該シェル71は、ハウジング11及び該ハウジング11に挿入されたカード101の少なくとも一部の上方を覆うようになっている。そして、前記カード用コネクタ1は、概略、扁(へん)平な直方体形状を備え、前記電子機器に取付けられ、後方(図2における左上方)の挿入口18から、ハウジング11にカード101が挿入される。具体的には、ハウジング11とシェル71との間に形成される空間内にカード101が挿入される。
【0026】
図に示されるように、ハウジング11は、略矩形の平板状部材である底壁部11b、及び、ハウジング11におけるカード101の挿入方向前方の縁部、すなわち、前端縁11fに沿って延在し、底壁部11bから立設する奥壁部11aを有する。
【0027】
ここで、底壁部11bは、接続端子のうちの後側に配設された後側接続端子としての後側端子51を保持する端子保持凹部としての後側端子保持凹部11cと、接続端子のうちの前側に配設された前側接続端子としての前側端子61を保持する端子保持凹部としての前側端子保持凹部11dとを備える。前記後側端子保持凹部11cは、底壁部11bを板厚方向に貫通する開口であり、ハウジング11におけるカード101の挿入方向後方の縁部、すなわち、後端縁11rに沿ってハウジング11の幅方向に延在する列を成すように、並んで配設されている。そして、各後側端子保持凹部11c内には、後側端子51が1つずつ収容されて保持される。また、前記前側端子保持凹部11dは、底壁部11bを板厚方向に貫通する開口であり、ハウジング11の前端縁11fと後端縁11rとの間においてハウジング11の幅方向に延在する列を成すように、並んで配設されている。そして、各前側端子保持凹部11d内には、前側端子61が1つずつ収容されて保持される。
【0028】
後側端子51は、その基部51aの少なくとも一部が底壁部11bに埋込まれ、また、その他の部分が後側端子保持凹部11c内に露出している。具体的には、後側端子51は、いわゆるオーバーモールド成形によって、すなわち、ハウジング11は、後側端子51をあらかじめ内部にセットした金型のキャビティ内に絶縁性材料を充填(てん)することによって成形され、基部51aの少なくとも一部が、底壁部11bを構成する絶縁性材料によって覆われることにより、底壁部11bに埋込まれて保持されている。
【0029】
同様に、前側端子61も、その基部61aの少なくとも一部が底壁部11bに埋込まれ、また、その他の部分が前側端子保持凹部11内dに露出している。具体的には、前側端子61は、いわゆるオーバーモールド成形によって、すなわち、ハウジング11は、前側端子61をあらかじめ内部にセットした金型のキャビティ内に絶縁性材料を充填することによって成形され、基部61aの少なくとも一部が、底壁部11bを構成する絶縁性材料によって覆われることにより、底壁部11bに埋込まれて保持されている。
【0030】
そして、後側端子51は、基部51aに基端が連結されたカンチレバー状の接触腕部51bと、該接触腕部51bの自由端、すなわち、先端に接続された接触部51cとを備える。前記接触腕部51bは、その基端が後端縁11r側に位置し、その先端が前端縁11fに向けて斜め上方に延在し、少なくとも接触部51cの上面は、カード挿入空間内にカード101が挿入されていない状態では、底壁部11bの上面より上方に位置している。なお、接触部51cは、上方に向けて突出するように湾曲された側面形状を備え、その先端は斜め下方を向いている。図3に示されるように、接触腕部51b及び接触部51cは、上方から観て、後側端子保持凹部11c内に位置する。
【0031】
また、前記後側端子51は、後方に向けて突出する湾曲部を含み、下側前端が基部51aの後端に連結され、上側前端が接触腕部51bの後端に連結される図示されない接触腕支持部と、基部51aの中央に形成された開口部51gとを備える。そして、該開口部51g、湾曲部を含む接触腕支持部、接触腕部51b及び接触部51cは、底壁部11bに埋込まれることなく、後側端子保持凹部11c内に露出している。すなわち、後側端子51は、前方の部分と左右両側方の部分が底壁部11bに埋込まれて固定され、後方の部分は底壁部11bに埋込まれることなく、固定されていない。
【0032】
同様に、前側端子61は、基部61aに基端が連結されたカンチレバー状の接触腕部61bと、該接触腕部61bの自由端、すなわち、先端に接続された接触部61cとを備える。前記接触腕部61bは、その基端が後端縁11r側に位置し、その先端が前端縁11fに向けて斜め上方に延在し、少なくとも接触部61cの上面は、カード挿入空間内にカード101が挿入されていない状態では、底壁部11bの上面より上方に位置している。なお、接触部61cは、上方に向けて突出するように湾曲された側面形状を備え、その先端は斜め下方を向いている。図3に示されるように、接触腕部61b及び接触部61cは、上方から観て、前側端子保持凹部11d内に位置する。
【0033】
なお、前側端子61は、湾曲部を含む接触腕支持部に相当する部分を備えておらず、基部61aは、その前側端子保持凹部11dの後端より後方の部分が底壁部11bに埋込まれており、前記基部61aの前端には接触腕部61bの基端が連結されている。そして、接触腕部61bは、その先端が前端縁11fに向けて斜め上方に延在するカンチレバー状の部材であってばねとして機能する部材であるが、十分なばね長を確保するために、後側端子51の接触腕部51bよりも、長く形成されている。
【0034】
前記後側端子51及び前側端子61は、接触部51c及び接触部61cが、カード用コネクタ1内に保持されたカード101の後側コンタクトパッド151及び前側コンタクトパッド161の各々に接触するように、配設されている。したがって、後側端子51及び前側端子61の数及び配置の形態は、カード101の後側コンタクトパッド151及び前側コンタクトパッド161の数及び配置の形態に適合するように、適宜変更される。図に示される例では、後側端子51及び前側端子61は、3つずつであり、上面から観て、矩形格子状に配列されている。
【0035】
また、後側端子51の基部51aには、図示されない細長い帯状の連結部の一端が連結されている。前記連結部は、ハウジング11の前後方向に延在し、底壁部11bに埋込まれている。そして、前記連結部の他端からはソルダーテール部51dが前方に向けて延出し、前端縁11fから前方に突出するように露出している。そして、ソルダーテール部51dは、前記電子機器における配線基板等に形成された信号線、コンタクトパッド、端子等、すなわち、相手側端子部材に、はんだ付等によって電気的に接続される。なお、各後側端子51の連結部は、前方に位置する前側端子61の側方を通過して前端縁11fに到達するように配置されている。
【0036】
同様に、前側端子61の基部61aにも、図示されない細長い帯状の連結部の一端が連結されている。前記連結部は、ハウジング11の前後方向に延在し、底壁部11bに埋込まれている。そして、前記連結部の他端からはソルダーテール部61dが前方に向けて延出し、前端縁11fから前方に突出するように露出している。そして、ソルダーテール部61dは、前記電子機器における配線基板等に形成された信号線、コンタクトパッド、端子等、すなわち、相手側端子部材に、はんだ付等によって電気的に接続される。
【0037】
そして、ハウジング11は、その一方の側縁に沿って前後方向に延在する側壁部11eを有する。該側壁部11eの内側には、カード案内機構収容部11h、スライドカム部21、及び、付勢部材収容部11gが形成されている。なお、11jは、前記側壁部11eとカード101が挿入されて収容される空間とを仕切る仕切壁部であり、前後方向に延在する。そして、カード案内機構収容部11hには、カード用コネクタ1内に挿入されたカード101を案内するためのカード案内機構のスライド部材23が前後方向にスライド可能に取付けられている。これにより、前記スライド部材23は、底壁部11bの一方の側縁に沿って前後方向にスライドすることができる。また、前記スライドカム部21は、プッシュ/プッシュタイプの動作を行うためのハート状カムのカム機構におけるスライドカムとして機能する部材であり、その上面には、カム溝22が形成されている。さらに、前記付勢部材収容部11g内には、圧縮された状態で付勢力を発揮するコイルスプリングとしての付勢部材82が収容される。なお、前記スライドカム部21の後端面は、付勢部材82の付勢力を受ける付勢力受部として機能するとともに、付勢部材82を係止する係止突起11iが形成され、付勢部材82の一端が取付けられている。
【0038】
前記スライド部材23は、カード101を保持するためのカード保持部23aと、溝状のカード案内機構収容部11h内をスライドするガイド部23dと、一端が前記カム溝22に係合するカム部材としての細長いピン部材81の他端が係合するカム係合部23eと、付勢部材82の一端を係止する係止突起23fとを備える。これにより、前記スライド部材23は、付勢部材82によって、カード101の挿入方向と反対の方向、すなわち、カード101の排出方向に付勢される。なお、前記カード保持部23aは、前方に向けて延出する細長い帯状の側縁保持部23bと、該側縁保持部23bの前端に連結され、ハウジング11の幅方向に延在する細長い帯状の前端保持部23cと、前記カード保持部23aの後端から側縁保持部23bの前端まで延在する内側面部23gとを含んでいる。該内側面部23gは、前後方向に延在する細長い帯状の平坦(たん)面であり、前記仕切壁部11jの内側(図3における右側)に位置し、前記仕切壁部11jの内側の一部を覆っている。そして、スライド部材23は、カード保持部23aの側縁保持部23b及び前端保持部23cによってカード101を保持し、該カード101とともに前後方向に移動する。
【0039】
このようなカード案内機構を備えるカード用コネクタ1は、該カード用コネクタ1内にカード101を挿入する際にも、カード用コネクタ1内からカード101を取出す際にも、カード101を押込む動作を必要とする、いわゆる、プッシュインプッシュアウトタイプ、又は、プッシュ/プッシュタイプと通称されるものである。このような動作は、押ボタンスイッチの分野におけるオルタネイト動作(位置保持型、プッシュオン・プッシュオフ型)と同様のものである。前記ピン部材81とカム溝22とが協働することによって、カード101とともに移動するスライド部材23にプッシュ/プッシュの動作を行わせるようになっている。これにより、前記カード案内機構は、カード101を挿入方向に押込むプッシュ動作によってカード101が挿入方向に移動して終端点まで到達すると、前記付勢部材82の付勢力によって、前記カード101を終端点から挿入方向と反対の方向に移動させて排出することができる。また、ロック位置においては、スライド部材23が停止し、これにより、カード101がカード用コネクタ1の内部に保持される。
【0040】
前記ピン部材81は、シェル71のピン押え部材75によって上から下方向に付勢されることにより保持されている。前記ピン押え部材75は、シェル71の一部をハウジング11の底壁部11bの方向に押圧可能に折曲げ加工することによって形成されたばね性を備える板状の部材であり、ピン部材81は、前記ピン押え部材75とスライド部材23又はハウジング11との間に位置し、スライド部材23又はハウジング11から離脱しないように保持されている。
【0041】
また、前記シェル71は、概略矩形の天板部72と、該天板部72の側縁の複数箇所から立設する複数の側板部74とを有する。該側板部74には、複数の掛止開口73が形成され、図2に示されるように、シェル71をハウジング11の上側に取付けると、該ハウジング11の側壁部11e等の外側面に形成された掛止突起13に前記掛止開口73が掛止され、これにより、シェル71がハウジング11に固定される。
【0042】
また、該ハウジング11の前端縁11fの近傍には、カード101の後側コンタクトパッド151及び前側コンタクトパッド161と後側端子51及び前側端子61とが接触していることを検出して、カード101がカード用コネクタ1に装填されていることを検出するカード検出スイッチが配設されている。該カード検出スイッチは、奥壁部11a及びその近傍に取付けられた第1接点部材62と、大部分が底壁部11bに埋込まれた第2接点部材63とによって形成される。
【0043】
前記第1接点部材62は、奥壁部11aに取付けられた取付部62a、基端が前記取付部62aに接続され、横方向に向けて延出するカンチレバー状の本体部62b、及び、該本体部62bの自由端に接続された当接部62cを有する。そして、前記取付部62aは奥壁部11aの側面とほぼ平行となり、本体部62bは、カード101がカード用コネクタ1に挿入されていない状態においては、奥壁部11aの側面に対して傾斜し、当接部62cは、カード101の挿入方向に関して手前側に向けて、すなわち、後方に向けて突出するように配設されている。そのため、カード101が挿入されると、該カード101の前端111fが当接部62cに当接する。
【0044】
一方、前記第2接点部材63は、底壁部11bにおける奥壁部11a寄りの部分に埋込まれた平板状の取付部63aと、基端が前記取付部63aに接続され、先端が底壁部11bから露出する接触部63bとを有する。
【0045】
そして、カード101が挿入されていない状態においては、図3に示されるように、第1接点部材62の本体部62bが第2接点部材63の接触部63bと接触しているので、第1接点部材62と第2接点部材63とは接触しており、カード検出スイッチは導通状態、すなわち、オン(ON)になっている。
【0046】
しかし、カード101が挿入され、その後側コンタクトパッド151及び前側コンタクトパッド161と後側端子51及び前側端子61とが接触する位置に到達すると、カード101の前端111fによって第1接点部材62の当接部62cが奥壁部11aの方向に向けて押されて変位し、第1接点部材62の本体部62bが第2接点部材63の接触部63bから離間する。これにより、第1接点部材62と第2接点部材63とが非接触となり、カード検出スイッチは非導通状態、すなわち、オフ(OFF)になる。
【0047】
また、ハウジング11の前端縁11fにおける側壁部11eの反対側(図3における右側)の端部には、底壁部11bから立設する第1の誤挿入防止部としての誤挿入防止凸部25が形成されている。該誤挿入防止凸部25は、その上面が奥壁部11aの上面と面一となるように高さ寸法が設定されるとともに、前記奥壁部11aよりも後方へ向けて突出するように形成されている。そして、前記誤挿入防止凸部25の後面部25aにおけるハウジング11の幅方向内側(図3における左側)角部には、斜めに切欠かれた傾斜部としての切欠部25cが形成されている。
【0048】
なお、前記後面部25aは、ハウジング11の幅方向、すなわち、カード101の挿入方向に直交する方向に延在する面であるが、切欠部25cと比較して小さな部分であって、誤挿入防止凸部25におけるハウジング11の幅方向外側(図3における右側)端に位置する。
【0049】
さらに、前記切欠部25cにおけるハウジング11の幅方向内側端には、矩形状に切欠かれた段差部としての補助切欠部25bが形成されている。該補助切欠部25b内には、前記後面部25aと平行な段差面としての補助後面部25dが形成されている。
【0050】
また、ハウジング11の後端縁11rにおける側壁部11e側には、底壁部11bから立設する第2の誤挿入防止部としての挿入口凸部26が形成されている。該挿入口凸部26におけるハウジング11の幅方向内側の端面は、カード保持部23aの内側面部23gとほぼ面一となり、挿入口18の側壁部11e側端を画定する。
【0051】
次に、前記構成のカード用コネクタ1の動作について説明する。まず、正規種類のカードであるカード101が挿入される場合の動作について説明する。
【0052】
図5は本発明の実施の形態における正規種類のカードを挿入する動作を示すシェルを取除いた状態の第1の平面図、図6は本発明の実施の形態における正規種類のカードを挿入する動作を示すシェルを取除いた状態の第2の平面図である。なお、図5において、(a)は正規挿入の動作を示す図、(b)は第1の誤挿入の動作を示す図であり、図6において、(a)は第2の誤挿入の動作を示す図、(b)は第3の誤挿入の動作を示す図である。
【0053】
まず、正規挿入の動作について説明する。この場合、利用者が手指等によってカード101をカード用コネクタ1の後方の挿入口18からハウジング11とシェル71との間に形成されるカード挿入空間内に挿入する。なお、カード101は、前端111fがハウジング11の前端縁11fの方を向き、下面111aが底壁部11bと対向し、上面111bがシェル71の天板部72と対向するような姿勢、すなわち、正規姿勢で挿入される。これにより、カード101は、切欠部111cの形成されていない方の側縁112が内側面部23gに沿って進行する。
【0054】
続いて、利用者がカード101をプッシュして更に押込むと、スライド部材23の側縁保持部23b及び前端保持部23cがカード101の側縁112及び前端111fを保持するので、前記カード101は、スライド部材23によって保持され、該スライド部材23とともに、奥壁部11aに向けて移動する。この際、利用者の手指等が発揮する押圧力は、カード101の前端111fから前端保持部23cを介してスライド部材23に伝達される。そして、該スライド部材23がコイルスプリングから成る付勢部材82を圧縮するので、スライド部材23及びカード101は、付勢部材82の反発力を受けるが、該反発力が利用者の手指等が発揮する押圧力よりも小さいので、前記反発力に抗して移動する。この場合、スライド部材23はカード案内機構収容部11hに沿ってスライドし、カード101はスライド部材23とともに進行する。そして、スライド部材23及びカード101は、最も前進した位置であるオーバーストローク位置に到達してオーバーストローク状態となる。
【0055】
前記カード101の切欠部111cが誤挿入防止凸部25の切欠部25cに対向しており、オーバーストローク状態では、前記切欠部111cと切欠部25cとは近接又は当接する。当接する場合には、当接によってスライド部材23及びカード101が、オーバーストローク位置よりも前進することが防止される。また、スライドカム部21の上面に形成されたカム溝22と係合しているピン部材81の自由端が、カム溝22の一部に掛止されてスライド部材23の動きを停止させることによって、スライド部材23を前記オーバーストローク位置で停止させるようになっているところ、カード101の切欠部111cが誤挿入防止凸部25の切欠部25cに当接することにより、ピン部材81及びカム溝22が過大な負荷を受けることが防止される。
【0056】
続いて、利用者がカード101をプッシュする動作を止め、該カード101に対する押圧力を解除すると、付勢部材82の反発力によって、スライド部材23及びカード101は奥壁部11aから離脱する向きに、すなわち、後方に向けて移動させられる。そして、スライド部材23及びカード101は、図5(a)に示されるように、カード用コネクタ1内でカード101をロックした状態で保持するロック位置で停止する。これは、スライドカム部21の上面に形成されたカム溝22と係合しているピン部材81の自由端が、カム溝22の一部に掛止されてスライド部材23の動きを停止させることによって、スライド部材23を前記ロック位置で停止させているからである。なお、図5(a)においては、説明の都合上、ピン部材81の図示が省略されている。
【0057】
そして、カード101は、ロック位置に保持されることによって、カード用コネクタ1が実装された電子機器の演算手段等との間でデータの送受信を行うことができる状態となる。なお、カード101がロック位置に保持されている場合、カード用コネクタ1の後側端子51及び前側端子61は、その接触部51c及び接触部61cが、カード101の後側コンタクトパッド151及び前側コンタクトパッド161の各々に接触して導通している。また、カード検出スイッチの第1接点部材62の当接部62cは、カード101の前端111fによって前方に押出されて変位し、本体部62bが第2接点部材63の接触部63bから離間している。これにより、第1接点部材62と第2接点部材63とが非接触となり、カード検出スイッチはオフになっている。
【0058】
ところで、利用者がカード101をプッシュする際には、通常、手指等によってカード101の後端111rを押すことになる。仮に、ハウジング11の底壁部11bが前後方向に長く形成され、後端縁11rの位置が、ロック位置で保持されているカード101の後端111rの位置よりも後方であると、利用者がカード101をプッシュしてロック位置よりも前方のオーバーストローク位置にまで前進させる際に、手指等がハウジング11の後端縁11rに当接してしまい、プッシュする動作が行いにくくなる。すなわち、操作性が低下してしまう。
【0059】
しかし、本実施の形態におけるカード用コネクタ1では、前述のように、後側端子51の後方の部分が底壁部11bに埋込まれて固定される必要がないので、後側端子51を後端縁11rに近接した位置に配設することができる。これにより、後端縁11rから接触部51cまでの距離を短くすることができ、カード101の後端111rから後側コンタクトパッド151までの距離が短い場合であっても、カード101をオーバーストローク位置にまで前進させる際に、カード101の後端111rを後端縁11rよりも前方に大きく挿入する必要がない。したがって、操作性が低下することがない。
【0060】
次に、カード101をカード用コネクタ1から排出させる動作について説明する。
【0061】
まず、利用者が手指等によってカード101をプッシュして押込むと、スライド部材23及びカード101は、ロック位置から奥壁部11aに向けて移動させられる。そして、利用者がカード101をプッシュして更に押込むと、スライド部材23及びカード101は、最も前進した位置であるオーバーストローク位置に到達してオーバーストローク状態となる。
【0062】
続いて、利用者がカード101をプッシュする動作を止め、該カード101に対する押込力を解除すると、付勢部材82の付勢力によって、オーバーストローク位置に位置しているスライド部材23及びカード101は、奥壁部11aから離脱する向きに移動させられ、挿入方向と反対の方向に移動させられる。そして、スライド部材23及びカード101は、ロック位置を通過して後方に向けて更に移動し、カード101が挿入口18から排出される。
【0063】
次に、誤挿入の動作について説明する。まず、第1の誤挿入として、図5(b)に示されるように、カード101の表裏を逆にした非正規姿勢での誤挿入について説明する。
【0064】
この場合、カード101は、前端111fがハウジング11の前端縁11fの方を向き、上面111bが底壁部11bと対向し、下面111aがシェル71の天板部72と対向するような姿勢で挿入される。これにより、カード101は、切欠部111cの形成されている方の側縁112が内側面部23gに沿って進行する。
【0065】
続いて、利用者がカード101をプッシュして更に押込むと、スライド部材23の側縁保持部23b及び前端保持部23cがカード101の側縁112及び前端111fを保持するので、前記カード101は、スライド部材23によって保持され、該スライド部材23とともに、奥壁部11aに向けて移動する。なお、前記前端保持部23cの長さは、カード101の表裏を逆にした非正規姿勢での誤挿入であっても、少なくともその先端が前端111fにおける切欠部111c外の範囲に当接する程度に設定されている。
【0066】
しかし、カード101がある程度前進すると、図5(b)に示されるように、カード101の前端111fにおける切欠部111cと反対側(図5(b)における右側)の端が誤挿入防止凸部25の後面部25aに当接することによってカード101の前進が阻止される。すなわち、カード101は、その前端111fが誤挿入防止凸部25の後面部25aに当接することによって停止する。この場合のカード101の位置、すなわち、誤挿入防止凸部25の後面部25aに当接することによるカード101の停止位置は、図5(a)に示されるロック位置よりも挿入方向手前側、すなわち、奥壁部11aからより離れた位置であって、カード101の前端111fがカード検出スイッチの第1接点部材62の当接部62cに当接しない位置である。そのため、第1接点部材62の本体部62bが第2接点部材63の接触部63bとの接触を維持し、第1接点部材62と第2接点部材63とが接触となっていて、カード検出スイッチはオンのままになっている。
【0067】
つまり、カード101の表裏を逆にした非正規姿勢での誤挿入は、カード101の前端111fが誤挿入防止凸部25の後面部25aに当接することによって防止される。この場合、カード検出スイッチがカード101の挿入を検出することもない。また、カード101は、オーバーストローク位置どころかロック位置にも到達せずに停止させられるので、このまま利用者がカード101をプッシュする動作を止めて該カード101に対する押圧力を解除すると、付勢部材82の反発力によって、カード101は、後方に向けて移動させられ、挿入口18から排出される。
【0068】
次に、第2の誤挿入として、図6(a)に示されるように、カード101の表裏を逆にし、かつ、前後を逆にした非正規姿勢での誤挿入について説明する。
【0069】
この場合、カード101は、後端111rがハウジング11の前端縁11fの方を向き、上面111bが底壁部11bと対向し、下面111aがシェル71の天板部72と対向するような姿勢で挿入される。これにより、カード101は、切欠部111cの形成されていない方の側縁112が内側面部23gに沿って進行する。
【0070】
続いて、利用者がカード101をプッシュして更に押込むと、スライド部材23の側縁保持部23b及び前端保持部23cがカード101の側縁112及び後端111rを保持するので、前記カード101は、スライド部材23によって保持され、該スライド部材23とともに、奥壁部11aに向けて移動する。
【0071】
しかし、カード101がある程度前進すると、図6(a)に示されるように、カード101の後端111rにおけるスライド部材23と反対側(図6(a)における右側)の端が誤挿入防止凸部25の後面部25aに当接することによってカード101の前進が阻止される。すなわち、カード101は、その後端111rが誤挿入防止凸部25の後面部25aに当接することによって停止する。この場合のカード101の位置、すなわち、誤挿入防止凸部25の後面部25aに当接することによるカード101の停止位置は、図5(a)に示されるロック位置よりも挿入方向手前側、すなわち、奥壁部11aからより離れた位置であって、カード101の後端111rがカード検出スイッチの第1接点部材62の当接部62cに当接しない位置である。そのため、第1接点部材62の本体部62bが第2接点部材63の接触部63bとの接触を維持し、第1接点部材62と第2接点部材63とが接触となっていて、カード検出スイッチはオンのままになっている。
【0072】
つまり、カード101の表裏を逆にし、かつ、前後を逆にした非正規姿勢での誤挿入は、カード101の後端111rが誤挿入防止凸部25の後面部25aに当接することによって防止される。この場合、カード検出スイッチがカード101の挿入を検出することもない。また、カード101は、オーバーストローク位置どころかロック位置にも到達せずに停止させられるので、このまま利用者がカード101をプッシュする動作を止めて該カード101に対する押圧力を解除すると、付勢部材82の反発力によって、カード101は、後方に向けて移動させられ、挿入口18から排出される。
【0073】
次に、第3の誤挿入として、図6(b)に示されるように、カード101の前後を逆にした非正規姿勢での誤挿入について説明する。
【0074】
この場合、カード101は、後端111rがハウジング11の前端縁11fの方を向き、下面111aが底壁部11bと対向し、上面111bがシェル71の天板部72と対向するような姿勢で挿入される。これにより、カード101は、切欠部111cの形成されている方の側縁112が内側面部23gに沿って進行する。
【0075】
続いて、利用者がカード101をプッシュして更に押込むと、スライド部材23の側縁保持部23b及び前端保持部23cがカード101の側縁112及び後端111rを保持するので、前記カード101は、スライド部材23によって保持され、該スライド部材23とともに、奥壁部11aに向けて移動する。
【0076】
しかし、カード101がある程度前進すると、図6(b)に示されるように、カード101の後端111rにおけるスライド部材23と反対側(図6(b)における右側)の端が誤挿入防止凸部25の後面部25aに当接することによってカード101の前進が阻止される。すなわち、カード101は、その後端111rが誤挿入防止凸部25の後面部25aに当接することによって停止する。この場合のカード101の位置、すなわち、誤挿入防止凸部25の後面部25aに当接することによるカード101の停止位置は、図5(a)に示されるロック位置よりも挿入方向手前側、すなわち、奥壁部11aからより離れた位置であって、カード101の後端111rがカード検出スイッチの第1接点部材62の当接部62cに当接しない位置である。そのため、第1接点部材62の本体部62bが第2接点部材63の接触部63bとの接触を維持し、第1接点部材62と第2接点部材63とが接触となっていて、カード検出スイッチはオンのままになっている。
【0077】
つまり、カード101の前後を逆にした非正規姿勢での誤挿入は、カード101の後端111rが誤挿入防止凸部25の後面部25aに当接することによって防止される。この場合、カード検出スイッチがカード101の挿入を検出することもない。また、カード101は、オーバーストローク位置どころかロック位置にも到達せずに停止させられるので、このまま利用者がカード101をプッシュする動作を止めて該カード101に対する押圧力を解除すると、付勢部材82の反発力によって、カード101は、後方に向けて移動させられ、挿入口18から排出される。
【0078】
このように、カード用コネクタ1のハウジング11に誤挿入防止凸部25が形成されているので、カード101の非正規姿勢での誤挿入が確実に防止される。
【0079】
次に、非正規種類のカードが挿入される場合の動作について説明する。
【0080】
図7は本発明の実施の形態における非正規種類のカードを挿入する動作を示すシェルの天板部を取除いた状態の第1の平面図、図8は本発明の実施の形態における非正規種類のカードを挿入する動作を示すシェルの天板部を取除いた状態の第2の平面図、図9は本発明の実施の形態における非正規種類のカードを挿入する動作を示すシェルの天板部を取除いた状態の第3の平面図、図10は本発明の実施の形態における非正規種類のカードを挿入する動作を示すシェルの天板部を取除いた状態の第4の平面図である。なお、図7において、(a)は第1の誤挿入の動作を示す図、(b)は第2の誤挿入の動作を示す図であり、図8において、(a)は第3の誤挿入の動作を示す図、(b)は第4の誤挿入の動作を示す図であり、図9において、(a)は第5の誤挿入におけるオーバーストローク位置を示す図、(b)は第5の誤挿入におけるロック位置を示す図である。
【0081】
本実施の形態におけるカード用コネクタ1が本来対象とする種類のカード以外の種類のカード、すなわち、非正規種類のカードは多数存在する。しかし、カード用コネクタ1に誤挿入される可能性のある非正規種類のカードは、実質的には、正規種類のカードと同等又はそれ以下のサイズのカードに限られる。また、利用者が正規種類のカードと取違えやすい非正規種類のカードは、正規種類のカードと同等のサイズのカードであると考えられる。特に、正規種類のカードと同等の長さ寸法を備えながら、より小さな幅寸法を備える非正規種類のカードは、カード用コネクタ1の奥深くにまで挿入された場合に、姿勢が安定しないので、ハウジング11等に引掛って取出しが不可能になることがある。
【0082】
そこで、本実施の形態においては、正規種類のカードとしてのカード101がマイクロSIMカードであるものとして説明しているので、非正規種類のカードがマイクロSD(R)カードであるものとし、これを非正規カード201として説明する。
【0083】
該非正規カード201は、図に示されるように、全体的に略矩形の板状の形状を有し、前端211f寄りの部分の下面211aに、端子部材である電極パッドとしてのコンタクトパッド261が、複数、前端211fに沿って並ぶように配設されている。すなわち、電極パッドは、非正規カード201の幅方向に延在する1本の列を成すように配列されている。なお、上面211bには、コンタクトパッド261が配設されていない。さらに、前端211fの左右両端と側縁212とを結合する角部の一方、具体的には、上面211bにおける前方右角部には、切欠かれた切欠部211cが形成されている。
【0084】
また、マイクロSD(R)カードである非正規カード201の長さ寸法(前端211fと後端211rとの間の距離)は、マイクロSIMカードであるカード101と同等の約15.0〔mm〕であり、幅寸法(左右の側縁212間の距離)は、前記カード101よりも小さな約11.0〔mm〕である。
【0085】
まず、非正規カード201の第1の誤挿入として、図7(a)に示されるように、非正規カード201をカード101の正規姿勢と同様の姿勢、すなわち、非正規カード201は、前端211fがハウジング11の前端縁11fの方を向き、下面211aが底壁部11bと対向し、上面211bがシェル71の天板部72と対向するような姿勢として、スライド部材23側に寄せてカード用コネクタ1の挿入口18から挿入する場合について説明する。
【0086】
この場合、非正規カード201は、切欠部211cの形成されている方の側縁212がスライド部材23の内側面部23gに沿って進行するが、非正規カード201の幅寸法がカード101よりも小さいので、スライド部材23と反対側(図7(a)における右側)において、シェル71の側板部74と非正規カード201の側縁212との間に隙(すき)間が生じる。すなわち、スライド部材23の側(図7(a)における左側)においてスライド部材23の内側面部23gと非正規カード201の側縁212とは当接又は近接しているのに対し、スライド部材23と反対側においては、シェル71の側板部74と非正規カード201の側縁212とは大きく離間している。
【0087】
続いて、利用者が非正規カード201をプッシュして更に押込むと、スライド部材23の内側面部23g及び前端保持部23cが非正規カード201の側縁212及び前端211fを保持するので、前記非正規カード201は、スライド部材23によって保持され、該スライド部材23とともに、奥壁部11aに向けて移動する。
【0088】
しかし、非正規カード201がある程度前進すると、図7(a)に示されるように、非正規カード201の前端211fにおける切欠部211cと反対側(図7(a)における右側)の端が誤挿入防止凸部25の切欠部25cに当接することによって非正規カード201の前進が阻止される。すなわち、非正規カード201は、その前端211fが誤挿入防止凸部25の切欠部25cに当接することによって停止する。この場合の非正規カード201の位置、すなわち、誤挿入防止凸部25の切欠部25cに当接することによる非正規カード201の停止位置、又は、非正規カード201を保持するスライド部材23の停止位置は、ロック位置よりも挿入方向手前側、すなわち、奥壁部11aからより離れた位置である。なお、非正規カード201の前端211fは、カード検出スイッチの第1接点部材62の当接部62cに当接する位置である。そのため、第1接点部材62の当接部62cは、非正規カード201の前端211fによって前方に押出されて変位し、本体部62bが第2接点部材63の接触部63bから離間している。これにより、第1接点部材62と第2接点部材63とが非接触となり、カード検出スイッチはオフになっている。
【0089】
つまり、非正規カード201の誤挿入は、非正規カード201の前端211fが誤挿入防止凸部25の切欠部25cに当接することによって防止される。また、非正規カード201は、オーバーストローク位置どころかロック位置にも到達せずに停止させられるので、このまま利用者が非正規カード201をプッシュする動作を止めて該非正規カード201に対する押圧力を解除すると、付勢部材82の反発力によって、非正規カード201は、後方に向けて移動させられ、挿入口18から排出される。
【0090】
次に、非正規カード201の第2の誤挿入として、前記第1の誤挿入と同様に非正規カード201を挿入している過程において、図7(b)に示されるように、非正規カード201の姿勢が幅方向に傾いてしまった場合について説明する。
【0091】
前記第1の誤挿入では、図7(a)に示されるように、スライド部材23と反対側において、シェル71の側板部74と非正規カード201の側縁212との間に隙間が生じているので、何らかの原因で、例えば、利用者が手指等によって非正規カード201をプッシュする力に、図7(a)における右向きの成分が含まれているときのように、非正規カード201の後端211rを右方向に変位させるような外力が加えられると、非正規カード201は、図7(b)に示されるように、その姿勢が右に傾いてしまう。
【0092】
このように傾いた姿勢で非正規カード201がある程度前進すると、図7(b)に示されるように、非正規カード201の前端211fにおける切欠部211cと反対側(図7(b)における右側)の端が誤挿入防止凸部25の補助切欠部25b内の補助後面部25dに当接することによって非正規カード201の前進が阻止される。すなわち、非正規カード201は、その前端211fが誤挿入防止凸部25の補助後面部25dに当接することによって停止する。なお、非正規カード201の傾きは、その後端211rにおけるスライド部材23と反対側の端がシェル71の側板部74に当接することによって制限される。すなわち、図7(b)に示されるように、後端211rにおけるスライド部材23と反対側の端がシェル71の側板部74に当接すれば、それ以上後端211rが右方向に変位することはない。
【0093】
そして、停止した場合の非正規カード201の位置、すなわち、誤挿入防止凸部25の補助後面部25dに当接することによる非正規カード201の停止位置、又は、非正規カード201を保持するスライド部材23の停止位置は、ロック位置よりも挿入方向手前側、すなわち、奥壁部11aからより離れた位置である。なお、非正規カード201の前端211fは、カード検出スイッチの第1接点部材62の当接部62cに当接する位置である。そのため、第1接点部材62の当接部62cは、非正規カード201の前端211fによって前方に押出されて変位し、本体部62bが第2接点部材63の接触部63bから離間している。これにより、第1接点部材62と第2接点部材63とが非接触となり、カード検出スイッチはオフになっている。
【0094】
つまり、非正規カード201の誤挿入は、非正規カード201の前端211fが誤挿入防止凸部25の補助後面部25dに当接することによって防止される。また、非正規カード201は、オーバーストローク位置どころかロック位置にも到達せずに停止させられるので、このまま利用者が非正規カード201をプッシュする動作を止めて該非正規カード201に対する押圧力を解除すると、付勢部材82の反発力によって、非正規カード201は、後方に向けて移動させられ、挿入口18から排出される。
【0095】
次に、非正規カード201の第3の誤挿入として、図8(a)に示されるように、非正規カード201の姿勢をカード101の正規姿勢と同様の姿勢、すなわち、非正規カード201は、前端211fがハウジング11の前端縁11fの方を向き、下面211aが底壁部11bと対向し、上面211bがシェル71の天板部72と対向するような姿勢として、スライド部材23の反対側に寄せてカード用コネクタ1の挿入口18から挿入する場合について説明する。
【0096】
この場合、非正規カード201は、切欠部211cの形成されていない方の側縁212がシェル71の側板部74に沿って進行するが、非正規カード201の幅寸法がカード101よりも小さいので、スライド部材23の側(図8(a)における左側)において、スライド部材23の内側面部23gと非正規カード201の側縁212との間に隙間が生じる。すなわち、スライド部材23と反対側(図8(a)における右側)において、シェル71の側板部74と非正規カード201の側縁212とは当接又は近接しているのに対し、スライド部材23の側においては、スライド部材23の内側面部23gと非正規カード201の側縁212とは大きく離間している。
【0097】
なお、スライド部材23の前端保持部23cは、ハウジング11の幅方向の十分に広い範囲に亘(わた)って延在しているので、スライド部材23の内側面部23gと非正規カード201の側縁212とが大きく離間していても、非正規カード201の前端211fにおける少なくともスライド部材23の側の端に当接して保持している。そのため、利用者が非正規カード201をプッシュして更に押込むと、スライド部材23の前端保持部23cが非正規カード201の前端211fを保持しているので、前記非正規カード201は、スライド部材23によって保持され、該スライド部材23とともに、奥壁部11aに向けて移動する。
【0098】
しかし、非正規カード201がある程度前進すると、図8(a)に示されるように、非正規カード201の前端211fにおける切欠部211cと反対側(図8(a)における右側)の端が誤挿入防止凸部25の後面部25a又は切欠部25cに当接することによって非正規カード201の前進が阻止される。すなわち、非正規カード201は、その前端211fが誤挿入防止凸部25の後面部25a又は切欠部25cに当接することによって停止する。この場合の非正規カード201の位置、すなわち、誤挿入防止凸部25の後面部25a又は切欠部25cに当接することによる非正規カード201の停止位置、又は、非正規カード201を保持するスライド部材23の停止位置は、ロック位置よりも挿入方向手前側、すなわち、奥壁部11aからより離れた位置であって、非正規カード201の前端211fがカード検出スイッチの第1接点部材62の当接部62cに当接しない位置である。そのため、第1接点部材62の本体部62bが第2接点部材63の接触部63bとの接触を維持し、第1接点部材62と第2接点部材63とが接触となっていて、カード検出スイッチはオンのままになっている。
【0099】
つまり、非正規カード201の誤挿入は、非正規カード201の前端211fが誤挿入防止凸部25の後面部25a又は切欠部25cに当接することによって防止される。また、非正規カード201は、オーバーストローク位置どころかロック位置にも到達せずに停止させられるので、このまま利用者が非正規カード201をプッシュする動作を止めて該非正規カード201に対する押圧力を解除すると、付勢部材82の反発力によって、非正規カード201は、後方に向けて移動させられ、挿入口18から排出される。
【0100】
次に、非正規カード201の第4の誤挿入として、前記第3の誤挿入と同様に非正規カード201を挿入している過程において、図8(b)に示されるように、非正規カード201の姿勢が幅方向に傾いてしまった場合について説明する。
【0101】
前記第3の誤挿入では、図8(a)に示されるように、スライド部材23の側において、内側面部23gと非正規カード201の側縁212との間に隙間が生じているので、何らかの原因で、例えば、利用者が手指等によって非正規カード201をプッシュする力に、図8(a)における左向きの成分が含まれているときのように、非正規カード201の後端211rを左方向に変位させるような外力が加えられると、非正規カード201は、図8(b)に示されるように、その姿勢が左に傾いてしまう。
【0102】
なお、スライド部材23の前端保持部23cは、ハウジング11の幅方向の十分に広い範囲に亘って延在しているので、スライド部材23の内側面部23gと非正規カード201の側縁212とが大きく離間し、かつ、非正規カード201の姿勢が左に傾いていても、非正規カード201の前端211fにおける少なくともスライド部材23の側の端に当接して保持している。
【0103】
このように傾いた姿勢で非正規カード201がある程度前進すると、図8(b)に示されるように、非正規カード201の前端211fにおける切欠部211cと反対側(図8(b)における右側)の端が誤挿入防止凸部25の後面部25a又は切欠部25cに当接することによって非正規カード201の前進が阻止される。すなわち、非正規カード201は、その前端211fが誤挿入防止凸部25の後面部25a又は切欠部25cに当接することによって停止する。なお、非正規カード201の傾きは、スライド部材23の側の側縁212が挿入口凸部26に当接することによって制限される。すなわち、図8(b)に示されるように、スライド部材23の側の側縁212が挿入口凸部26に当接すれば、それ以上後端211rが左方向に変位することはない。
【0104】
そして、停止した場合の非正規カード201の位置、すなわち、誤挿入防止凸部25の後面部25a又は切欠部25cに当接することによる非正規カード201の停止位置、又は、非正規カード201を保持するスライド部材23の停止位置は、ロック位置よりも挿入方向手前側、すなわち、奥壁部11aからより離れた位置であって、非正規カード201の前端211fがカード検出スイッチの第1接点部材62の当接部62cに当接しない位置である。そのため、第1接点部材62の本体部62bが第2接点部材63の接触部63bとの接触を維持し、第1接点部材62と第2接点部材63とが接触となっていて、カード検出スイッチはオンのままになっている。
【0105】
つまり、非正規カード201の誤挿入は、非正規カード201の前端211fが誤挿入防止凸部25の後面部25a又は切欠部25cに当接することによって防止される。また、非正規カード201は、オーバーストローク位置どころかロック位置にも到達せずに停止させられるので、このまま利用者が非正規カード201をプッシュする動作を止めて該非正規カード201に対する押圧力を解除すると、付勢部材82の反発力によって、非正規カード201は、後方に向けて移動させられ、挿入口18から排出される。
【0106】
次に、非正規カード201の第5の誤挿入として、図9(a)及び(b)に示されるように、非正規カード201の表裏を逆にした姿勢、すなわち、非正規カード201は、前端211fがハウジング11の前端縁11fの方を向き、上面211bが底壁部11bと対向し、下面211aがシェル71の天板部72と対向するような姿勢として、スライド部材23側に寄せてカード用コネクタ1の挿入口18から挿入する場合について説明する。
【0107】
この場合、非正規カード201は、切欠部211cの形成されていない方の側縁212がスライド部材23の内側面部23gに沿って進行するが、非正規カード201の幅寸法がカード101よりも小さいので、スライド部材23と反対側(図9(a)及び(b)における右側)において、シェル71の側板部74と非正規カード201の側縁212との間に隙間が生じる。すなわち、スライド部材23の側(図9(a)及び(b)における左側)においてスライド部材23の内側面部23gと非正規カード201の側縁212とは当接又は近接しているのに対し、スライド部材23と反対側においては、シェル71の側板部74と非正規カード201の側縁212とは大きく離間している。
【0108】
続いて、利用者が非正規カード201をプッシュして更に押込むと、スライド部材23の内側面部23g及び前端保持部23cが非正規カード201の側縁212及び前端211fを保持するので、前記非正規カード201は、スライド部材23によって保持され、該スライド部材23とともに、奥壁部11aに向けて移動する。そして、スライド部材23及び非正規カード201は、図9(a)に示されるように、最も前進した位置であるオーバーストローク位置に到達してオーバーストローク状態となる。
【0109】
非正規カード201は、切欠部211cの存在によって、前端211fにおける幅寸法がカード101よりもかなり小さいので、切欠部211cの形成されていない方の側縁212がスライド部材23の内側面部23gに沿って進行する場合には、前端211fが誤挿入防止凸部25に当接しない。しかし、スライドカム部21の上面に形成されたカム溝22と係合しているピン部材81の自由端が、カム溝22の一部に掛止されてスライド部材23の動きを停止させることによって、該スライド部材23を前記オーバーストローク位置で停止させるようになっているので、非正規カード201も前記オーバーストローク位置で停止する。
【0110】
続いて、利用者が非正規カード201をプッシュする動作を止め、該非正規カード201に対する押圧力を解除すると、付勢部材82の反発力によって、スライド部材23及び非正規カード201は奥壁部11aから離脱する向きに、すなわち、後方に向けて移動させられる。そして、スライド部材23及び非正規カード201は、図9(b)に示されるように、ロック位置で停止する。これは、スライドカム部21の上面に形成されたカム溝22と係合しているピン部材81の自由端が、カム溝22の一部に掛止されてスライド部材23の動きを停止させることによって、該スライド部材23を前記ロック位置で停止させているからである。
【0111】
なお、非正規カード201がロック位置及びオーバーストローク位置に保持されている場合、カード検出スイッチの第1接点部材62の当接部62cは、非正規カード201の前端211fによって前方に押出されて変位し、本体部62bが第2接点部材63の接触部63bから離間している。これにより、第1接点部材62と第2接点部材63とが非接触となり、カード検出スイッチはオフになっている。
【0112】
しかし、非正規カード201は、ロック位置に保持されることによって、コンタクトパッド261が配設されている下面211aがシェル71の天板部72と対向するような姿勢なので、カード用コネクタ1の後側端子51及び前側端子61のいずれも、コンタクトパッド261と導通することはない。そのため、非正規カード201とカード用コネクタ1が実装された電子機器の演算手段等との間でデータの送受信が行われることはない。
【0113】
そして、データの送受信が行われないことによって、非正規カード201を挿入したことに気が付いた利用者が手指等により非正規カード201をプッシュして押込むと、スライド部材23及び非正規カード201は、ロック位置から奥壁部11aに向けて移動させられる。そして、利用者が非正規カード201をプッシュして更に押込むと、スライド部材23及び非正規カード201は、最も前進した位置であるオーバーストローク位置に到達してオーバーストローク状態となる。
【0114】
続いて、利用者が非正規カード201をプッシュする動作を止め、該非正規カード201に対する押込力を解除すると、付勢部材82の付勢力によって、オーバーストローク位置に位置しているスライド部材23及び非正規カード201は、奥壁部11aから離脱する向きに移動させられ、挿入方向と反対の方向に移動させられる。そして、スライド部材23及び非正規カード201は、ロック位置を通過して後方に向けて更に移動し、非正規カード201が挿入口18から排出される。
【0115】
つまり、非正規カード201が誤挿入されても、カード101が挿入された場合の動作が行われないだけであって、非正規カード201も、カード用コネクタ1も、該カード用コネクタ1が実装された電子機器も、誤動作が行われることがない。また、カード101を排出させる場合と同様のプッシュ動作を行うことによって、非正規カード201は、後方に向けて移動させられ、挿入口18から排出される。
【0116】
次に、非正規カード201の第6の誤挿入として、前記第5の誤挿入と同様に非正規カード201の表裏を逆にした姿勢で、前記第5の誤挿入とは逆にスライド部材23の反対側に寄せてカード用コネクタ1の挿入口18から挿入している過程において、図10に示されるように、非正規カード201の姿勢が幅方向に傾いてしまった場合について説明する。
【0117】
この場合、スライド部材23の側において、内側面部23gと非正規カード201の側縁212との間に隙間が生じているので、何らかの原因で、例えば、利用者が手指等によって非正規カード201をプッシュする力に、図10における左向きの成分が含まれているときのように、非正規カード201の後端211rを左方向に変位させるような外力が加えられると、非正規カード201は、図10に示されるように、その姿勢が左に傾いてしまう。
【0118】
なお、スライド部材23の前端保持部23cは、ハウジング11の幅方向の十分に広い範囲に亘って延在しているので、スライド部材23の内側面部23gと非正規カード201の側縁212とが大きく離間し、かつ、非正規カード201の姿勢が左に傾いていても、非正規カード201の前端211fにおける少なくともスライド部材23の側の端に当接して保持している。
【0119】
このように傾いた姿勢で非正規カード201がある程度前進すると、図10に示されるように、非正規カード201の前端211fにおける切欠部211cの側(図10における右側)の端が誤挿入防止凸部25の後面部25a又は切欠部25cに当接することによって非正規カード201の前進が阻止される。すなわち、非正規カード201は、その前端211fが誤挿入防止凸部25の後面部25a又は切欠部25cに当接することによって停止する。なお、非正規カード201の傾きは、スライド部材23の側の側縁212が挿入口凸部26に当接することによって制限される。すなわち、図10に示されるように、スライド部材23の側の側縁212が挿入口凸部26に当接すれば、それ以上後端211rが左方向に変位することはない。
【0120】
そして、停止した場合の非正規カード201の位置、すなわち、誤挿入防止凸部25の後面部25a又は切欠部25cに当接することによる非正規カード201の停止位置、又は、非正規カード201を保持するスライド部材23の停止位置は、ロック位置よりも挿入方向手前側、すなわち、奥壁部11aからより離れた位置であって、非正規カード201の前端211fがカード検出スイッチの第1接点部材62の当接部62cに当接しない位置である。そのため、第1接点部材62の本体部62bが第2接点部材63の接触部63bとの接触を維持し、第1接点部材62と第2接点部材63とが接触となっていて、カード検出スイッチはオンのままになっている。
【0121】
つまり、非正規カード201の誤挿入は、非正規カード201の前端211fが誤挿入防止凸部25の後面部25a又は切欠部25cに当接することによって防止される。また、非正規カード201は、オーバーストローク位置どころかロック位置にも到達せずに停止させられるので、このまま利用者が非正規カード201をプッシュする動作を止めて該非正規カード201に対する押圧力を解除すると、付勢部材82の反発力によって、非正規カード201は、後方に向けて移動させられ、挿入口18から排出される。
【0122】
なお、利用者が、非正規カード201を、以上説明した以外の姿勢、例えば、後端211rがハウジング11の前端縁11fの方を向くような姿勢でカード用コネクタ1の挿入口18から挿入した場合であっても、また、スライド部材23側にも、スライド部材23の反対側にも寄せずにカード用コネクタ1の挿入口18から挿入した場合であっても、非正規カード201の誤挿入が防止されること、又は、誤挿入されても排出可能であることは、以上の説明から容易に理解し得る。
【0123】
また、本実施の形態においては、カード101の前側端子61の構成が後側端子51の構成と異なるものとして説明したが、前側端子61の構成は後側端子51の構成と同様であってもよい。
【0124】
さらに、本実施の形態においては、カード101が前側コンタクトパッド161及び後側コンタクトパッド151を備え、それに対応して、カード用コネクタ1が前側端子61と後側端子51とを有するものとして説明したが、前記カード101は、前側コンタクトパッド161を備えておらず、後側コンタクトパッド151のみを備えるものであってもよく、その場合、カード用コネクタ1も、前側端子61を有しておらず、後側端子51のみを有するものであってもよい。
【0125】
このように、本実施の形態において、カード用コネクタ1は、少なくとも後側コンタクトパッド151を備えるカード101を収容するハウジング11と、ハウジング11に取付けられ、少なくともカード101の後側コンタクトパッド151と接触する後側端子51と、ハウジング11に挿入されたカード101を保持してスライドするスライド部材23、及び、スライド部材23をカード101の挿入方向と反対の方向に付勢する付勢部材82を備え、カード101をロック位置で保持してカード101の後側コンタクトパッド151が後側端子51と接触している状態を維持し、ロック位置で保持されているカード101を挿入方向に押込むプッシュ動作によってカード101が挿入方向に移動してオーバーストローク位置まで到達すると、付勢部材82の付勢力によって、カード101をオーバーストローク位置から挿入方向と反対の方向に移動させて排出するカード案内機構と、ハウジング11に取付けられ、少なくともハウジング11及びハウジング11に挿入されたカード101の一部を覆うシェル71とを有する。そして、スライド部材23は、ハウジング11の前端縁11fに向けて延出する側縁保持部23bと、側縁保持部23bの前端に連結され、ハウジング11の幅方向に延在する前端保持部23cとを含み、ハウジング11の底壁部11bの一方の側縁に沿って前後方向にスライド可能であり、ハウジング11は、前端縁11fにおけるスライド部材23の反対側に形成され、誤挿入されたカード101の前端111f又は後端111rが当接する誤挿入防止凸部25を含む。
【0126】
これにより、カード用コネクタ1は、簡素な構成でありながら、正規種類のカード101の奥深くまでの誤挿入を確実に防止することができるとともに、正規種類のカード101と同等の長さ寸法でありながらより小さな幅寸法の非正規カード201の奥深くまでの誤挿入も確実に防止することができ、誤挿入されたカード101又は非正規カード201であっても確実に取出すことができ、信頼性を高くすることができる。
【0127】
また、誤挿入防止凸部25は斜めに切欠かれた切欠部25cを含み、カード101は、その前端111fの一端に形成された切欠部111cを含み、正規挿入されると、切欠部111cが誤挿入防止凸部25の切欠部25cに対向する。これにより、誤挿入された正規種類のカード101又は非正規カード201は、誤挿入防止凸部25に当接するので、カード用コネクタ1の奥深くまで進入して、ロック位置やオーバーストローク位置に到達することが確実に防止される。一方、正規挿入された正規種類のカード101は、誤挿入防止凸部25に当接することなく、ロック位置やオーバーストローク位置に到達することができる。
【0128】
さらに、前端保持部23cの少なくとも先端は、表裏を逆にした姿勢で誤挿入されたカード101の前端111fにおける切欠部111c外の範囲に当接する。このように、前端保持部23cの長さが設定されているので、スライド部材23は、表裏を逆にした姿勢で誤挿入されたカード101であっても保持することができ、利用者がカード101をプッシュする動作を止めると、付勢部材82の反発力によって、誤挿入されたカード101が確実に排出される。
【0129】
さらに、ハウジング11は、後端縁11rにおけるスライド部材23側に形成された挿入口凸部26を含み、カード101と異なる種類のカードであって、カード101よりも幅の狭い非正規カード201が幅方向に傾いて誤挿入されると、挿入口凸部26又はシェル71の側板部74が非正規カード201の側縁212に当接し、非正規カード201の幅方向の傾きを規制する。このように、非正規カード201の幅方向の傾きが規制されるため、カード101よりも幅の狭い非正規カード201であっても、あまり大きく傾いた姿勢で挿入されることがないので、カード用コネクタ1内において引掛って取出しが不可能になってしまうことがない。したがって、カード101よりも幅の狭い非正規カード201が誤挿入されても、確実に取出すことができる。
【0130】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は、カード用コネクタに適用することができる。
【符号の説明】
【0132】
1 カード用コネクタ
11 ハウジング
11a 奥壁部
11b 底壁部
11c 後側端子保持凹部
11d 前側端子保持凹部
11e 側壁部
11f 前端縁
11g 付勢部材収容部
11h カード案内機構収容部
11i、23f、826b 係止突起
11j 仕切壁部
11r 後端縁
13 掛止突起
18 挿入口
21 スライドカム部
22 カム溝
23 スライド部材
23a カード保持部
23b 側縁保持部
23c 前端保持部
23d ガイド部
23e カム係合部
23g 内側面部
25 誤挿入防止凸部
25a 後面部
25b 補助切欠部
25c、111c、211c 切欠部
25d 補助後面部
26 挿入口凸部
51 後側端子
51a、61a 基部
51b、61b 接触腕部
51c、61c、63b 接触部
51d、61d ソルダーテール部
51g 開口部
61 前側端子
62 第1接点部材
62a、63a 取付部
62b、823b 本体部
62c 当接部
63 第2接点部材
71 シェル
72 天板部
73 掛止開口
74 側板部
75 ピン押え部材
81 ピン部材
82 付勢部材
101 カード
111a、211a 下面
111b、211b 上面
111f、211f 前端
111r、211r 後端
112、212 側縁
151 後側コンタクトパッド
161 前側コンタクトパッド
201 非正規カード
261 コンタクトパッド
823 スライダ
823c 保持部
824 傾斜当接部
825 面
826 弾性変形部
826a 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)端子部材を備えるカードを収容するハウジングと、
(b)該ハウジングに取付けられ、前記カードの端子部材と接触する接続端子と、
(c)前記ハウジングに挿入されたカードを保持してスライドするスライド部材、及び、該スライド部材をカードの挿入方向と反対の方向に付勢する付勢部材を備え、前記カードをロック位置で保持してカードの端子部材が接続端子と接触している状態を維持し、前記ロック位置で保持されているカードを挿入方向に押込むプッシュ動作によってカードが挿入方向に移動してオーバーストローク位置まで到達すると、前記付勢部材の付勢力によって、前記カードをオーバーストローク位置から挿入方向と反対の方向に移動させて排出するカード案内機構と、
(d)前記ハウジングに取付けられ、少なくとも前記ハウジング及び該ハウジングに挿入されたカードの一部を覆うカバー部材とを有し、
(e)前記スライド部材は、前記ハウジングの前端縁に向けて延出する側縁保持部と、該側縁保持部の前端に連結され、前記ハウジングの幅方向に延在する前端保持部とを含み、前記ハウジングの底壁部の一方の側縁に沿って前後方向にスライド可能であり、
(f)前記ハウジングは、前記前端縁における前記スライド部材の反対側に形成され、誤挿入された前記カードの前端又は後端が当接する誤挿入防止凸部を含むことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
前記誤挿入防止凸部は斜めに切欠かれた傾斜部を含み、
前記カードは、その前端の一端に形成された傾斜部を含み、正規挿入されると、該傾斜部が前記誤挿入防止凸部の傾斜部に対向する請求項1に記載のカード用コネクタ。
【請求項3】
前記前端保持部の少なくとも先端は、表裏を逆にした姿勢で誤挿入された前記カードの前端における傾斜部外の範囲に当接する請求項1又は2に記載のカード用コネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングは、後端縁における前記スライド部材側に形成された挿入口凸部を含み、
前記カードと異なる種類のカードであって、前記カードよりも幅の狭い非正規カードが幅方向に傾いて誤挿入されると、前記挿入口凸部又は前記カバー部材の側板部が前記非正規カードの側縁に当接し、前記非正規カードの幅方向の傾きを規制する請求項1〜3のいずれか1項に記載のカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−16403(P2013−16403A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149635(P2011−149635)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレイテド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】