説明

カーボンナノチューブの製造方法および製造用触媒

【課題】 簡単な設備で、スケールアップが容易であり、かつ、低コストで生産することができ、さらに、高収率で、高品質のカーボンナノチューブを得ることのできるカーボンナノチューブの製造方法および製造用触媒を提供すること。
【解決手段】 加熱下、炭素含有ガスおよび水素ガスを、一般式ABO(式中、Aは希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは希土類元素を除く遷移元素およびAlから選ばれる少なくとも1種の元素を示す。)で示される複合酸化物からなる触媒と接触させて、カーボンナノチューブを製造する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブを製造する方法と、カーボンナノチューブを製造するための触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
現在まで、カーボンナノチューブの製造方法としては、例えば、アーク放電法(特許文献1および特許文献2参照)、レーザ照射法(特許文献3および特許文献4参照)およびCVD法(特許文献5および特許文献6参照)が、広く知られている。
アーク放電法では、対向する黒鉛電極に直流電圧を印加し、アーク放電によって陽極を蒸発させて、カーボンナノチューブを含む生成物を陰極上に堆積させる。
【0003】
レーザ照射法では、パルス状の可視レーザ光を黒鉛回転円盤に集中照射して炭素を蒸発させ、カーボンナノチューブを得る。
CVD法では、原料ガスと不活性なキャリアガスとの混合気体を、真空下、加熱した基材上に供給し、その表面上で加水分解、自己分解、光分解、酸化還元、置換などの化学反応によって、生成物を蒸着させ、カーボンナノチューブを得る。
【特許文献1】特開平11−263610号公報
【特許文献2】特開2003−081616号公報
【特許文献3】特開平10−273308号公報
【特許文献4】特開2002−080211号公報
【特許文献5】特開2003−171108号公報
【特許文献6】特開2003−277033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1や特許文献2に記載されるアーク放電法によるカーボンナノチューブの製造方法では、陰極上に堆積する生成物が増えるに従って、アーク放電が不安定になるため、電力効率が不良で、炭素収率が低いといった不具合がある。そのため、工業的な大量生産には不向きである。
また、特許文献3や特許文献4に記載されるレーザ照射法によるカーボンナノチューブの製造方法では、得られるカーボンナノチューブ中に不純物が多く、配向性が低いといった不具合がある。そのため、カーボンナノチューブの精製や配向性を制御する必要を生じ、製造工程が煩雑となる。
【0005】
さらに、特許文献5や特許文献6に記載されるCVD法によるカーボンナノチューブの製造方法では、真空反応装置が必要となり、工業的な大量生産では設備コストが上昇するといった不具合がある。
本発明の目的は、簡単な設備で、スケールアップが容易であり、かつ、低コストで生産することができ、さらには、高収率で、高品質のカーボンナノチューブを得ることのできる、カーボンナノチューブの製造方法および製造用触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、加熱下、炭素含有ガスおよび水素ガスを、一般式ABOで示される複合酸化物からなる触媒と接触させて、カーボンナノチューブを製造することを特徴としている。
また、本発明のカーボンナノチューブの製造方法においては、一般式ABOで示される前記複合酸化物において、式中、Aは希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは希土類元素を除く遷移元素およびAlから選ばれる少なくとも1種の元素を示すことが好適である。
【0007】
さらに、本発明のカーボンナノチューブの製造方法において、前記一般式ABOが、さらに一般式(1)
AB1−m (1)
(式中、Aは希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは貴金属および希土類元素を除く遷移元素およびAlから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Nは貴金属を示す。mは、0<m≦0.5の数値範囲のNの原子割合を示す。)で示されることが好適である。
【0008】
また、本発明のカーボンナノチューブの製造方法では、一般式ABOで示される前記複合酸化物において、Bが、Feを示すことが好適である。
また、本発明のカーボンナノチューブの製造方法において、一般式ABOで示される前記複合酸化物が、ペロブスカイト型構造を有することが好適である。
また、本発明は、一般式ABO
(式中、Aは希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは希土類元素を除く遷移元素およびAlから選ばれる少なくとも1種の元素を示す。)で示される、複合酸化物からなるカーボンナノチューブの製造用触媒を含んでいる。
【0009】
さらに、本発明のカーボンナノチューブの製造用触媒において、前記一般式ABOが、さらに一般式(1)
AB1−m (1)
(式中、Aは希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは貴金属および希土類元素を除く遷移元素およびAlから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Nは貴金属を示す。mは、0<m≦0.5の数値範囲のNの原子割合を示す。)で示されることが好適である。
【0010】
また、本発明のカーボンナノチューブの製造用触媒は、一般式ABOで示される前記複合酸化物において、Bが、Feを示すことが好適である。
また、本発明のカーボンナノチューブの製造用触媒は、一般式ABOで示される前記複合酸化物が、ペロブスカイト型構造を有することが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカーボンナノチューブの製造方法によれば、真空反応装置などの設備を必要とせず、化学的プロセスを用いた合成方法で、スケールアップが容易であり、かつ、原料としてCO、COなどを用いるため、低コストで実施することができる。また、本発明のカーボンナノチューブ製造用触媒として、一般式ABOで示される複合酸化物を用いることにより、高収率で、高品質のカーボンナノチューブを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のカーボンナノチューブの製造方法では、加熱下、炭素含有ガスおよび水素ガスを、一般式ABOで示される複合酸化物からなる触媒と接触させて、カーボンナノチューブを製造する。
一般式ABOで示される複合酸化物は、一般式ABO(Aは、Aサイトの配位原子、Bは、Bサイトの配位原子を示す。)の結晶構造を有する複合酸化物であって、特に制限されないが、ペロブスカイト型の結晶構造、イルメナイト型の結晶構造、蛍石型の結晶構造などを有する複合酸化物である。好ましくは、ペロブスカイト型の結晶構造を有する複合酸化物が用いられる。
【0013】
一般式ABOで示される複合酸化物において、式中、Aは希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは希土類元素を除く遷移元素およびAlから選ばれる少なくとも1種の元素を示す。
すなわち、この複合酸化物は、ABO型構造を有し、Aサイトには、希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素が配置され、Bサイトには、希土類元素を除く遷移金属およびAlから選ばれる少なくとも1種の元素が配置されている。
【0014】
さらに、一般式ABOで示される複合酸化物は、貴金属を含有していることが好ましく、貴金属は、複合酸化物に担持されていてもよく、また、複合酸化物に組成として含有されていてもよい。貴金属を組成として含有している複合酸化物は、例えば、下記一般式(1)で示される。
AB1−m (1)
(式中、Aは希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは貴金属および希土類元素を除く遷移元素およびAlから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Nは貴金属を示す。mは、0<m≦0.5の数値範囲のNの原子割合を示す。)
すなわち、この複合酸化物は、ABO型構造を有し、Aサイトには、希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素が配置され、Bサイトには、貴金属および希土類元素を除く遷移金属およびAlから選ばれる少なくとも1種の元素、および、貴金属が配置されている。
【0015】
Aで示される希土類元素としては、例えば、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Nd(ネオジム)、Pm(プロメチウム)、Gd(ガドリニウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Lu(ルテチウム)などの3価以外に価数変動しない希土類元素、例えば、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)、Tb(テルビウム)などの3価または4価に価数変動する希土類元素、例えば、Sm(サマリウム)、Eu(ユーロピウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)などの2価または3価に価数変動する希土類元素などが挙げられる。
【0016】
これら希土類元素は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。好ましくは、3価以外に価数変動しない希土類元素、および、任意的に3価または4価に価数変動する希土類元素が用いられ、さらに好ましくは、Y、La、Nd、および、任意的にCe、Prが用いられる。
Aで示されるアルカリ土類金属としては、例えば、Be(ベリリウム)、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Ra(ラジウム)などが挙げられる。これらのアルカリ土類金属は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。好ましくは、Mg、Ca、Sr、Baが挙げられる。
【0017】
Bで示される希土類元素を除く遷移金属としては、周期律表(IUPAC、1990年)において、原子番号22(Ti)〜原子番号30(Zn)、原子番号40(Zr)〜原子番号48(Cd)、および、原子番号72(Hf)〜原子番号80(Hg)の各元素が挙げられる。Bで示される希土類元素を除く遷移金属およびAlとしては、特に制限されないが、具体的には、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)およびAl(アルミニウム)が挙げられる。これらの遷移元素およびAlは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。好ましくは、Feが挙げられる。
【0018】
Nで示される貴金属としては、例えば、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)などが挙げられる。これらの貴金属は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。好ましくは、Rh、Pd、Ptが挙げられる。
Bサイトには、希土類元素を除く遷移金属およびAlから選ばれる少なくとも1種の元素が必ず配置される。また、Bサイトにおいては、貴金属の原子割合mが、0<m≦0.5の数値範囲となるように、貴金属が含まれている。
【0019】
このような一般式ABOで示される複合酸化物は、特に制限されることなく、複合酸化物を調製するための適宜の方法、例えば、共沈法、クエン酸錯体法、アルコキシド法などによって、製造することができる。
共沈法では、例えば、上記した各元素の塩を所定の化学量論比で含む混合塩水溶液を調製し、この混合塩水溶液に中和剤を加えて共沈させた後、得られた共沈物を乾燥後、熱処理する。
【0020】
各元素の塩としては、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、りん酸塩などの無機塩、例えば、酢酸塩、しゅう酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。また、混合塩水溶液は、例えば、各元素の塩を、所定の化学量論比となるような割合で水に加えて、攪拌混合することにより調製することができる。
その後、この混合塩水溶液に、中和剤を加えて共沈させる。中和剤としては、例えば、アンモニア、例えば、トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン類などの有機塩基、例えば、カセイソーダ、カセイカリ、炭酸カリ、炭酸アンモンなどの無機塩基が挙げられる。なお、中和剤は、その中和剤を加えた後の溶液のpHが6〜10程度となるように加える。
【0021】
そして、得られた共沈物を、必要により水洗し、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば、約500〜1000℃、好ましくは、約600〜950℃で熱処理することにより、一般式ABOで示される複合酸化物を製造することができる。
また、クエン酸錯体法では、例えば、クエン酸と上記した各元素の塩とを、上記した各元素に対し化学量論比よりやや過剰のクエン酸水溶液を加えてクエン酸混合塩水溶液を調製し、このクエン酸混合塩水溶液を乾固させて、上記した各元素のクエン酸錯体を形成させた後、得られたクエン酸錯体を仮焼成後、熱処理する。
【0022】
各元素の塩としては、上記と同様の塩が挙げられ、また、クエン酸混合塩水溶液は、例えば、上記と同様に混合塩水溶液を調製して、その混合塩水溶液に、クエン酸の水溶液を加えることにより、調製することができる。
その後、このクエン酸混合塩水溶液を乾固させて、上記した各元素のクエン酸錯体を形成させる。乾固は、形成されるクエン酸錯体が分解しない温度、例えば、室温〜150℃程度で、水分を除去する。これによって、上記した各元素のクエン酸錯体を形成させることができる。
【0023】
そして、形成されたクエン酸錯体を仮焼成後、熱処理する。仮焼成は、例えば、真空または不活性雰囲気下において250〜350℃で加熱すればよい。その後、例えば、約500〜1000℃、好ましくは、約600〜950℃で熱処理することにより、一般式ABOで示される複合酸化物を製造することができる。
また、アルコキシド法では、例えば、上記した各元素のアルコキシドを、上記した化学量論比で含む混合アルコキシド溶液を調製し、この混合アルコキシド溶液に、水を加えて加水分解により沈殿させた後、得られた沈殿物を乾燥後、熱処理する。
【0024】
また、貴金属を組成として含有する複合酸化物を製造する場合において、アルコキシド法では、例えば、貴金属を除く上記した各元素のアルコキシドを、上記した化学量論比で含む混合アルコキシド溶液を調製し、この混合アルコキシド溶液に、貴金属の塩を含む水溶液を加えて加水分解により沈殿させた後、得られた沈殿物を乾燥後、熱処理する。
各元素のアルコキシドとしては、例えば、各元素と、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシなどのアルコキシとから形成されるアルコラートや、下記一般式(2)で示される各元素のアルコキシアルコラートなどが挙げられる。
【0025】
E[OCH(R)−(CH−OR]j (2)
(式中、Eは、各元素を示し、Rは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示し、iは、1〜3の整数、jは、2〜4の整数を示す。)
アルコキシアルコラートは、より具体的には、例えば、メトキシエチレート、メトシキプロピレート、メトキシブチレート、エトキシエチレート、エトキシプロピレート、プロポキシエチレート、ブトキシエチレートなどが挙げられる。
【0026】
そして、混合アルコキシド溶液は、例えば、各元素のアルコキシドを、上記した化学量論比となるように有機溶媒に加えて、攪拌混合することにより調製することができる。有機溶媒としては、各元素のアルコキシドを溶解できれば、特に制限されないが、例えば、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類などが用いられる。好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類が挙げられる。
【0027】
貴金属を組成として含有する複合酸化物を製造する場合には、その後、この混合アルコキシド溶液に、所定の化学量論比で貴金属の塩を含む水溶液を加えて沈殿させる。貴金属の塩を含む水溶液としては、例えば、硝酸塩水溶液、塩化物水溶液、ヘキサアンミン塩化物水溶液、ジニトロジアンミン硝酸水溶液、ヘキサクロロ酸水和物、シアン化カリウム塩などが挙げられる。
【0028】
そして、得られた沈殿物を、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば、約500〜1000℃、好ましくは、約500〜850℃で熱処理することにより、一般式ABOで示される複合酸化物を製造することができる。
また、貴金属を組成として含有する複合酸化物を製造する場合に、このようなアルコキシド法においては、例えば、上記した混合アルコキシド溶液に、貴金属の有機金属塩を含む溶液を混合して、均一混合溶液を調製し、これに水を加えて沈殿させた後、得られた沈殿物を乾燥後、熱処理することにより、調製することもできる。
【0029】
貴金属の有機金属塩としては、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩などから形成される貴金属のカルボン酸塩、例えば、下記一般式(2)で示されるβ−ジケトン化合物またはβ−ケトエステル化合物、および/または、下記一般式(3)で示されるβ−ジカルボン酸エステル化合物から形成される貴金属の金属キレート錯体が挙げられる。
COCHRCOR (2)
(式中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基またはアリール基、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリール基または炭素数1〜4のアルキルオキシ基、Rは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
CH(COOR (3)
(式中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、Rは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
上記一般式(2)および上記一般式(3)中、R、RおよびRの炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、t−アミル、t−ヘキシルなどが挙げられる。また、R5およびR7の炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチルなどが挙げられる。また、RおよびRの炭素数1〜6のフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチルなどが挙げられる。また、RおよびRのアリール基としては、例えば、フェニルが挙げられる。また、Rの炭素数1〜4のアルキルオキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシなどが挙げられる。
【0030】
β−ジケトン化合物は、より具体的には、例えば、2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘキサンジオン、2,2−ジメチル−3,5−ヘキサンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、1−トリフルオロメチル−1,3−ブタンジオン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、ジピバロイルメタンなどが挙げられる。また、β−ケトエステル化合物は、例えば、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、t−ブチルアセトアセテートなどが挙げられる。また、β−ジカルボン酸エステル化合物は、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルなどが挙げられる。
【0031】
また、貴金属の有機金属塩を含む溶液は、例えば、貴金属の有機金属塩を、上記した化学量論比となるように有機溶媒に加えて、攪拌混合することにより調製することができる。有機溶媒としては、上記した有機溶媒が挙げられる。
その後、このようにして調製された貴金属の有機金属塩を含む溶液を、上記した混合アルコキシド溶液に混合して、均一混合溶液を調製した後、この均一混合溶液に水を加えて沈殿させる。そして、得られた沈殿物を、例えば、真空乾燥や通風乾燥などにより乾燥させた後、例えば、約400〜1000℃、好ましくは、約500〜850℃で熱処理することにより、貴金属を組成として含有する複合酸化物を製造することができる。
【0032】
また、貴金属を担持している複合酸化物は、例えば、一般式ABOで示される複合酸化物に、上記した貴金属が担持されているものが挙げられる。
また、得られた一般式ABOで示される複合酸化物に貴金属を担持するには、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、貴金属を含む塩の溶液を調製し、この含塩溶液を一般式ABOで示される複合酸化物に含浸させた後、焼成すればよい。含塩溶液としては、実用的には、硝酸塩水溶液、ジニトロジアンミン硝酸溶液、塩化物水溶液などが用いられる。より具体的には、ロジウム塩溶液として、例えば、硝酸ロジウム溶液、塩化ロジウム溶液など、パラジウム塩溶液として、例えば、硝酸パラジウム溶液、塩化パラジウム溶液など、白金塩溶液として、例えば、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液、塩化白金酸溶液、4価白金アンミン溶液などが挙げられる。
【0033】
そして、一般式ABOで示される複合酸化物に含塩溶液を含浸させて、例えば、50〜200℃で1〜48時間乾燥した後に、500〜1200℃で1〜12時間焼成する。
一般式ABOで示される複合酸化物に対する貴金属の担持量は、例えば、一般式ABOで示される複合酸化物100重量部に対して、20重量部以下、好ましくは、0.5〜5重量部である。
【0034】
このようにして得られる一般式ABOで示される複合酸化物は、そのまま、カーボンナノチューブの製造用触媒として用いることもできるが、触媒担体上に担持させて用いることもできる。
触媒担体としては、特に制限されず、例えば、コージェライトなどからなるハニカム状のモノリス担体など、公知の触媒担体が用いられる。
【0035】
触媒担体上に担持させるには、例えば、まず、得られた一般式ABOで示される複合酸化物に、水を加えてスラリーとした後、これを触媒担体上にコーティングし、乾燥させ、その後、約300〜800℃、好ましくは、約300〜600℃で熱処理する。
なお、上記した一般式ABOで示される複合酸化物のなかでは、貴金属を組成として含有している複合酸化物が好ましく用いられる。とりわけ、本発明において、このような貴金属を含有する複合酸化物として、貴金属がRhである場合には、下記一般式(6)で示されるRh含有複合酸化物が好ましく用いられる。
【0036】
1−pA’1−qRh (6)
(式中、Aは、La、Nd、Yから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、A’は、Ceおよび/またはPrを示し、Bは、Fe、Mn、Alから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、pは、0≦p<0.5の数値範囲のA’の原子割合を示し、qは、0<q≦0.8の数値範囲のRhの原子割合を示す。)
また、貴金属がPdである場合には、下記一般式(7)で示されるPd含有複合酸化物が好ましく用いられる。
【0037】
AB1−rPd (7)
(式中、Aは、La、Nd、Yから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは、Fe、Mn、Alから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、rは、0<r<0.5の数値範囲のPdの原子割合を示す。)
また、貴金属がPtである場合には、下記一般式(8)で示されるPt含有複合酸化物が好ましく用いられる。
【0038】
1−sA’1−t−uB’Pt (8)
(式中、Aは、La、Nd、Yから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、A’は、Mg、Ca、Sr、Ba、Agから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは、Fe、Mn、Alから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、B’は、Rh、Ruから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、sは、0<s≦0.5の数値範囲のA’の原子割合を示し、tは、0≦t<0.5の数値範囲のB’の原子割合を示し、uは、0<u≦0.5の数値範囲のPtの原子割合を示す。)
そして、本発明のカーボンナノチューブの製造方法では、例えば、図1に示すように、外周部にヒーター2を有する筒状の反応管1内に、触媒粉末3を採取した耐熱容器4を設置して、炭素含有ガスおよび水素ガスを含む送入ガスを、反応管1の一端部入口から送入し、他端部出口から送出し、その途中の触媒粉末3上でカーボンナノチューブを形成させる。
【0039】
炭素含有ガスは、例えば、CO、COなどが用いられる。水素ガスは、例えば、Hガスが用いられる。炭素含有ガスおよび水素ガスの送入ガス全量に対する送入割合は、例えば、炭素含有ガスが1〜50体積%、水素ガスが1〜50体積%である。送入ガスには、炭素含有ガスおよび水素ガス以外に、例えば、キャリアガスとして、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスが用いられる。好ましくは、窒素ガスが用いられる。キャリアガスの送入ガス全量に対する送入割合は、炭素含有ガスおよび水素ガスの送入割合の残りの割合とされる。
【0040】
ヒーター2としては、反応管1の内部を所望の温度に加熱できるものであれば、特に制限されず、例えば、コイルヒーター、カートリッジヒーター、コードヒーターなどが用いられる。
ヒーター2の加熱温度は、例えば、400〜800℃である。加熱温度が、この範囲内であれば、一般式ABOで示される複合酸化物の耐久性を向上させることができ、カーボンナノチューブを、効率よく得ることができる。
【0041】
また、触媒粉末3が採取された耐熱容器4は、上方が開放される皿状をなし、反応管1内の加熱温度に対して、耐熱性を有する容器であれば、特に制限されず、例えば、セラミックス製ボートなどが用いられる。
また、触媒粉末3は、上記で得られた一般式ABOで示される複合酸化物の粉末であって、例えば、その比表面積(BET法)が、例えば、10m/g以上のものが好ましく用いられる。
【0042】
また、工業的には、上記したような、触媒担体に担持した一般式ABOで示される複合酸化物を用いて、上記した送入ガスを、その触媒担体に通過させることにより、大量生産が可能となる。
そして、このような本発明のカーボンナノチューブの製造方法によれば、真空反応装置などの設備を必要とせず、化学的プロセスを用いた合成方法で、スケールアップが容易であり、かつ、原料としてCO、COなどを用いるため、低コストで実施することができる。また、本発明のカーボンナノチューブ製造用触媒として、一般式ABOで示される複合酸化物を用いることにより、高収率で、高品質のカーボンナノチューブを得ることができる。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に何ら限定されるものではない。
触媒製造例1
(LaFe0.95Pd0.05の製造)
ランタンエトキシエチレート 40.6g(0.100モル)
鉄エトキシエチレート 30.7g(0.095モル)
上記の成分を、500mL容量の丸底フラスコに加え、トルエン200mLを加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。この混合アルコキシド溶液に、パラジウムアセチルアセトナート1.52g(0.005モル)をトルエン100mLに溶解した溶液を加え、LaFePd含有均一混合溶液を調製した。
【0044】
次いで、この均一混合溶液に、脱イオン水を200mL、約15分間滴下して加水分解した。そうすると、加水分解により褐色の粘稠沈殿が生成した。その後、室温下において2時間攪拌した。
次いで、トルエンおよび水を減圧下において留去して、LaFePd複合酸化物の前駆体を得た。これを、シャーレに移して、60℃、24時間通風乾燥後、大気中、電気炉にて、800℃、1時間熱処理(焼成)を行ない、LaFe0.95Pd0.05からなる貴金属を含有するペロブスカイト型複合酸化物の黒褐色粉末を得た。
【0045】
なお、この粉末は、X線回折の結果、LaFe0.95Pd0.05からなるペロブスカイト型複合酸化物の単一結晶相を有していることが確認された。また、このペロブスカイト型複合酸化物の黒褐色粉末のBET法による比表面積は11m/gであった。
触媒製造例2
(CaTi0.98Pd0.02の製造)
カルシウムイソプロポキシド 15.8g(0.100モル)
チタンイソプロポキシド 27.9g(0.098モル)
上記の成分を、500mL容量の丸底フラスコに加え、トルエン200mLを加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。この混合アルコキシド溶液に、脱イオン水を200mL滴下して加水分解した。そうすると、加水分解により白色の粘稠沈殿が生成した。この混合アルコキシド溶液からトルエンを留去し、スラリー水溶液とした後、このスラリー水溶液に硝酸パラジウム水溶液4.24g(Pd含量:5.00重量% 0.002モル)を加え、室温下において1時間攪拌した。
【0046】
次いで、水を減圧下において留去乾固してCaTiPd複合酸化物の前駆体を得た。これを、シャーレに移して、大気中、電気炉にて、950℃、2時間熱処理(焼成)を行ない、CaTi0.98Pd0.02からなる貴金属を含有するペロブスカイト型複合酸化物の褐色粉末を得た。
なお、この粉末は、X線回折の結果、CaTi0.98Pd0.02からなるペロブスカイト型複合酸化物の単一結晶相を有していることが確認された。また、このペロブスカイト型複合酸化物の褐色粉末のBET法による比表面積は41m/gであった。
【0047】
触媒製造例3
(LaFe0.95Pt0.05の製造)
ランタンエトキシエチレート 40.6g(0.100モル)
鉄エトキシエチレート 30.7g(0.095モル)
上記の成分を、500mL容量の丸底フラスコに加え、トルエン200mLを加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。この混合アルコキシド溶液に、白金アセチルアセトナート1.965g(0.005モル)をトルエン100mLに溶解した溶液を加え、LaFePt含有均一混合溶液を調製した。
【0048】
次いで、この均一混合溶液に、脱イオン水を200mL、約15分間滴下して加水分解した。そうすると、加水分解により粘稠沈殿が生成した。その後、室温下において2時間攪拌した。
次いで、トルエンおよび水を減圧下において留去して、LaFePt複合酸化物の前駆体を得た。これを、シャーレに移して、60℃、24時間通風乾燥後、大気中、電気炉にて、800℃、1時間熱処理(焼成)を行ない、LaFe0.95Pt0.05からなる貴金属を含有するペロブスカイト型複合酸化物の粉末を得た。
【0049】
なお、この粉末は、X線回折の結果、LaFe0.95Pt0.05からなるペロブスカイト型複合酸化物の単一結晶相を有していることが確認された。また、このペロブスカイト型複合酸化物の粉末のBET法による比表面積は8m/gであった。
触媒製造例4
(LaFeOの製造)
ランタンイソプロポキシド 31.6g(0.100モル)
鉄メトキシプロピレート 32.3g(0.100モル)
上記の成分を、500mL容量の丸底フラスコに加え、トルエン200mLを加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。
【0050】
次いで、この混合アルコキシド溶液に、脱イオン水を200mL滴下して加水分解した。そうすると、加水分解により粘稠沈殿が生成した。
次いで、トルエンおよび水を減圧下において留去して、大気中、電気炉にて、1000℃、2時間熱処理(焼成)を行ない、LaFeOからなるペロブスカイト型複合酸化物の粉末を得た。
【0051】
なお、この粉末は、X線回折の結果、LaFeOからなるペロブスカイト型複合酸化物の単一結晶相を有していることが確認された。また、このペロブスカイト型複合酸化物の粉末のBET法による比表面積は8m/gであった。
触媒製造例5
(BaTi0.95Rh0.05の製造)
バリウムイソプロポキシド 25.6g(0.100モル)
チタンイソプロポキシド 27.0g(0.095モル)
上記の成分を、500mL容量の丸底フラスコに加え、トルエン200mLを加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。この混合アルコキシド溶液に、脱イオン水を200mL滴下して加水分解した。そうすると、加水分解により粘稠沈殿が生成した。この混合アルコキシド溶液からトルエンを留去して、スラリー水溶液とした後、このスラリー水溶液に硝酸ロジウム水溶液(Rh含量:2.18重量% 0.005モル)を加え、室温下において1時間攪拌した。
【0052】
次いで、水を減圧下において留去乾固してBaTiRh複合酸化物の前駆体を得た。これを、シャーレに移して、大気中、電気炉にて、1000℃、2時間熱処理(焼成)を行ない、BaTi0.95Rh0.05からなる貴金属を含有するペロブスカイト型複合酸化物の粉末を得た。
なお、この粉末は、X線回折の結果、BaTi0.95Rh0.05からなるペロブスカイト型複合酸化物の単一結晶相を有していることが確認された。また、このペロブスカイト型複合酸化物の粉末のBET法による比表面積は7m/gであった。
【0053】
触媒製造例6
(MgTi0.95Rh0.05の製造)
マグネシウムメトキシプロピレート 20.0g(0.100モル)
チタンイソプロポキシド 27.0g(0.095モル)
上記の成分を、500mL容量の丸底フラスコに加え、トルエン200mLを加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。この混合アルコキシド溶液に、脱イオン水を200mL滴下して加水分解した。そうすると、加水分解により粘稠沈殿が生成した。この混合アルコキシド溶液からトルエンを留去して、スラリー水溶液とした後、このスラリー水溶液に硝酸ロジウム水溶液(Rh含量:4.19重量% 0.005モル)を加え、室温下において1時間攪拌した。
【0054】
次いで、水を減圧下において留去乾固してMgTiRh複合酸化物の前駆体を得た。これを、シャーレに移して、大気中、電気炉にて、950℃、2時間熱処理(焼成)を行ない、MgTi0.95Rh0.05からなる貴金属を含有するイルメナイト型複合酸化物の粉末を得た。
なお、この粉末は、X線回折の結果、MgTi0.95Rh0.05からなるイルメナイト型複合酸化物の単一結晶相を有していることが確認された。また、このイルメナイト型複合酸化物の粉末のBET法による比表面積は30m/gであった。
【0055】
触媒製造例7
(MgZr0.95Rh0.05の製造)
マグネシウムメトキシプロピレート 20.0g(0.100モル)
ジルコニウムイソプロポキシド 42.5g(0.095モル)
上記の成分を、500mL容量の丸底フラスコに加え、トルエン200mLを加えて攪拌溶解させることにより、混合アルコキシド溶液を調製した。この混合アルコキシド溶液に、脱イオン水を200mL滴下して加水分解した。そうすると、加水分解により粘稠沈殿が生成した。この混合アルコキシド溶液からトルエンを留去して、スラリー水溶液とした後、このスラリー水溶液に硝酸ロジウム水溶液(Rh含量:3.11重量% 0.005モル)を加え、室温下において1時間攪拌した。
【0056】
次いで、水を減圧下において留去乾固してMgZrRh複合酸化物の前駆体を得た。これを、シャーレに移して、大気中、電気炉にて、950℃、2時間熱処理(焼成)を行ない、MgZr0.95Rh0.05からなる貴金属を含有する蛍石型複合酸化物の粉末を得た。
なお、この粉末は、X線回折の結果、MgZr0.95Rh0.05からなる蛍石型複合酸化物の単一結晶相を有していることが確認された。また、この蛍石型複合酸化物の粉末のBET法による比表面積は47m/gであった。
【0057】
実施例1
(LaFe0.95Pd0.05を用いたカーボンナノチューブの製造)
触媒製造例1で得たペロブスカイト型複合酸化物(LaFe0.95Pd0.05)からなる触媒粉末を、セラミックス製ボートに1.0g採取し、平らにならした後、そのセラミックス製ボートを、外周部にヒーターを有する石英管からなる反応管(直径10cm、長さ50cm)の内部に設置した。ヒーターを800℃まで加熱しながら、H(2.5体積%)、CO(7.5体積%)および窒素ガス(90.0体積%)からなる組成の送入ガスを、20L/minの送入速度で、1時間送入し、触媒粉末の上にカーボンナノチューブを得た。得られたカーボンナノチューブを顕微鏡で観察した。その結果を図2に示す。
【0058】
実施例2
(CaTi0.98Pd0.02を用いたカーボンナノチューブの製造)
触媒製造例2で得たペロブスカイト型複合酸化物(CaTi0.98Pd0.02)からなる触媒粉末を、セラミックス製ボートに1.0g採取し、平らにならした後、そのセラミックス製ボートを、外周部にヒーターを有する石英管からなる反応管(直径10cm、長さ50cm)の内部に設置した。ヒーターを800℃まで加熱しながら、H(2.5体積%)、CO(7.5体積%)および窒素ガス(90.0体積%)からなる組成の送入ガスを、20L/minの送入速度で、1時間送入し、触媒粉末の上にカーボンナノチューブを得た。得られたカーボンナノチューブを顕微鏡で観察した。その結果を図3に示す。
【0059】
実施例3
(LaFe0.95Pt0.05を用いたカーボンナノチューブの製造)
触媒製造例3で得たペロブスカイト型複合酸化物(LaFe0.95Pt0.05)からなる触媒粉末を、セラミックス製ボートに1.0g採取し、平らにならした後、そのセラミックス製ボートを、外周部にヒーターを有する石英管からなる反応管(直径10cm、長さ50cm)の内部に設置した。ヒーターを800℃まで加熱しながら、H(2.5体積%)、CO(7.5体積%)および窒素ガス(90.0体積%)からなる組成の送入ガスを、20L/minの送入速度で、1時間送入し、触媒粉末の上にカーボンナノチューブを得た。得られたカーボンナノチューブを顕微鏡で観察した。その結果を図4および図5に示す。
【0060】
実施例4
(LaFeOを用いたカーボンナノチューブの製造)
触媒製造例4で得たペロブスカイト型複合酸化物(LaFeO)からなる触媒粉末を、セラミックス製ボートに1.0g採取し、平らにならした後、そのセラミックス製ボートを、外周部にヒーターを有する石英管からなる反応管(直径10cm、長さ50cm)の内部に設置した。ヒーターを800℃まで加熱しながら、H(2.5体積%)、CO(7.5体積%)および窒素ガス(90.0体積%)からなる組成の送入ガスを、20L/minの送入速度で、1時間送入し、触媒粉末の上にカーボンナノチューブを得た。得られたカーボンナノチューブを顕微鏡で観察した。その結果を図6に示す。
【0061】
実施例5
(BaTi0.95Rh0.05を用いたカーボンナノチューブの製造)
触媒製造例5で得たペロブスカイト型複合酸化物(BaTi0.95Rh0.05)からなる触媒粉末を、セラミックス製ボートに1.0g採取し、平らにならした後、そのセラミックス製ボートを、外周部にヒーターを有する石英管からなる反応管(直径10cm、長さ50cm)の内部に設置した。ヒーターを800℃まで加熱しながら、H(2.5体積%)、CO(7.5体積%)および窒素ガス(90.0体積%)からなる組成の送入ガスを、20L/minの送入速度で、1時間送入し、触媒粉末の上にカーボンナノチューブを得た。得られたカーボンナノチューブを顕微鏡で観察した。その結果を図7に示す。
【0062】
実施例6
(MgTi0.95Rh0.05を用いたカーボンナノチューブの製造)
触媒製造例6で得たイルメナイト型複合酸化物(MgTi0.95Rh0.05)からなる触媒粉末を、セラミックス製ボートに1.0g採取し、平らにならした後、そのセラミックス製ボートを、外周部にヒーターを有する石英管からなる反応管(直径10cm、長さ50cm)の内部に設置した。ヒーターを800℃まで加熱しながら、H(2.5体積%)、CO(7.5体積%)および窒素ガス(90.0体積%)からなる組成の送入ガスを、20L/minの送入速度で、1時間送入し、触媒粉末の上にカーボンナノチューブを得た。得られたカーボンナノチューブを顕微鏡で観察した。その結果を図8に示す。
【0063】
実施例7
(MgZr0.95Rh0.05を用いたカーボンナノチューブの製造)
触媒製造例7で得た蛍石型複合酸化物(MgZr0.95Rh0.05)からなる触媒粉末を、セラミックス製ボートに1.0g採取し、平らにならした後、そのセラミックス製ボートを、外周部にヒーターを有する石英管からなる反応管(直径10cm、長さ50cm)の内部に設置した。ヒーターを800℃まで加熱しながら、H(2.5体積%)、CO(7.5体積%)および窒素ガス(90.0体積%)からなる組成の送入ガスを、20L/minの送入速度で、1時間送入し、触媒粉末の上にカーボンナノチューブを得た。得られたカーボンナノチューブを顕微鏡で観察した。その結果を図9に示す。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明のカーボンナノチューブの製造装置の一実施形態である。
【図2】実施例1のカーボンナノチューブの顕微鏡写真である。
【図3】実施例2のカーボンナノチューブの顕微鏡写真である。
【図4】実施例3のカーボンナノチューブの顕微鏡写真(50万倍拡大写真)である。
【図5】実施例3のカーボンナノチューブの顕微鏡写真(20万倍拡大写真)である。
【図6】実施例4のカーボンナノチューブの顕微鏡写真である。
【図7】実施例5のカーボンナノチューブの顕微鏡写真である。(なお、カーボンナノチューブは、顕微鏡写真の中において矢印を付して示す。)
【図8】実施例6のカーボンナノチューブの顕微鏡写真である。(なお、カーボンナノチューブは、顕微鏡写真の中において矢印を付して示す。)
【図9】実施例7のカーボンナノチューブの顕微鏡写真である。(なお、カーボンナノチューブは、顕微鏡写真の中において矢印を付して示す。)
【符号の説明】
【0065】
1 反応管
2 ヒーター
3 触媒粉末
4 耐熱容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱下、炭素含有ガスおよび水素ガスを、一般式ABOで示される複合酸化物からなる触媒と接触させて、カーボンナノチューブを製造することを特徴とする、カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項2】
一般式ABOで示される前記複合酸化物において、式中、Aは希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは希土類元素を除く遷移元素およびAlから選ばれる少なくとも1種の元素を示すことを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項3】
前記一般式ABOが、さらに一般式(1)
AB1−m (1)
(式中、Aは希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは貴金属および希土類元素を除く遷移元素およびAlから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Nは貴金属を示す。mは、0<m≦0.5の数値範囲のNの原子割合を示す。)
で示されることを特徴とする、請求項1または2に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項4】
一般式ABOで示される前記複合酸化物において、Bが、Feを示すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項5】
一般式ABOで示される前記複合酸化物が、ペロブスカイト型構造を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項6】
一般式ABO
(式中、Aは希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは希土類元素を除く遷移元素およびAlから選ばれる少なくとも1種の元素を示す。)
で示される、複合酸化物からなることを特徴とする、カーボンナノチューブの製造用触媒。
【請求項7】
前記一般式ABOが、さらに一般式(1)
AB1−m (1)
(式中、Aは希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bは貴金属および希土類元素を除く遷移元素およびAlから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Nは貴金属を示す。mは、0<m≦0.5の数値範囲のNの原子割合を示す。)
で示されることを特徴とする、請求項6に記載のカーボンナノチューブの製造用触媒。
【請求項8】
一般式ABOで示される前記複合酸化物において、Bが、Feを示すことを特徴とする、請求項6または7のいずれかに記載のカーボンナノチューブの製造用触媒。
【請求項9】
一般式ABOで示される前記複合酸化物が、ペロブスカイト型構造を有することを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載のカーボンナノチューブの製造用触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−62953(P2006−62953A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217664(P2005−217664)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】